IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アサヒビール株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029823
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12H 1/22 20060101AFI20230224BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230224BHJP
   C12G 3/021 20190101ALI20230224BHJP
【FI】
C12H1/22
A23L2/00 S
C12G3/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134117
(22)【出願日】2021-08-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和3年1月6日 「アサヒビール株式会社 2021年 事業方針説明会」 2.令和3年3月30日 「アサヒビール株式会社 スーパードライ生ジョッキ缶 メディア先行体験会」 3.令和3年4月1日 製品名「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」の販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 4.令和3年1月6日 製品名「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」についてのプレスリリース<https://www.asahibeer.co.jp/news/2021/0106_1.html> 5.令和3年4月8日 製品名「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」についてのプレスリリース<https://www.asahibeer.co.jp/news/2021/0408.html>
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 6.令和3年4月21日 製品名「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」についてのプレスリリース<https://www.asahibeer.co.jp/news/2021/0421_1.html> 7.令和3年5月7日 製品名「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」についてのプレスリリース<https://www.asahibeer.co.jp/news/2021/0507.html>
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 8.令和3年5月21日 製品名「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」についてのプレスリリース<https://www.asahibeer.co.jp/news/2021/0521.html> 9.令和3年7月20日 製品名「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」についてのプレスリリース<https://www.asahibeer.co.jp/news/2021/0720.html>
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 10.令和3年4月29日 テレビ東京 「カンブリア宮殿 新時代の幕開け! アサヒビールの戦略に迫る」 11.令和3年3月30日 TBSテレビ 「ゴゴスマ~GOGO!Smile!」 12.令和3年2月24日 日経デザイン 2021年3月号 31~33ページ 「特集-コロナ禍に勝つブランディング-〔事例4 キーワード 「新体験」で看板商品の価値を高める〕-アサヒビール/アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶-発売前から話題!既成概念捨てて生まれた“泡の新体験”」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 13.令和3年3月4日 日経トレンディ 2021年4月号 125ページ 「TRENDY WHAT’S NEW-ヒットアラート-〔飲料〕-アサヒビール 「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」-蓋を開けると泡が自然発生 既成概念捨てて生まれた“泡の新体験”」 14.令和3年6月21日 日経流通MJ (流通新聞) 第14ページ 「ヒット商品番付 開発担当者に聞く▲2▼ アサヒビール『スーパードライ 生ジョッキ缶』」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 15.令和3年8月5日 日本経済新聞 朝刊 第12ページ 「Nextストーリー アサヒ、逆境こそチャンス 10年埋もれた生ジョッキ缶 店で飲むビールの「泡」再現 全国で品切れ 機会損失に」 16.令和3年8月30日 日経クロストレンド [「刺さる」プレゼンの極意 第67回] 「アサヒ「生ジョッキ缶」の資料 消費者のナマ声伝える動画がカギ」、<https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00112/00071/>
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】春名 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】猪本 久美子
(72)【発明者】
【氏名】金子 莉子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 高樹
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B115LP02
4B117LC08
4B117LE10
4B117LG16
4B117LP05
4B117LP17
4B128AC13
4B128AG09
4B128AP18
4B128AP26
4B128AP31
4B128AT08
4B128AT20
4B128CP23
4B128CP39
(57)【要約】
【課題】本発明は、開缶時に自発的かつ速やかに泡が形成される、容器詰ビール様発泡性飲料を製造する方法を提供する。
【解決手段】発酵原料液に酵母を接種して発酵させて発酵液を得る発酵工程と、前記発酵工程で得られた発酵液を貯酒タンクに移し、一定期間貯蔵して熟成させる貯酒工程と、前記貯酒工程後に、熟成後の発酵液を濾過する濾過工程と、前記濾過工程後に、濾過後の発酵液を、内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器に充填して密封する充填工程と、を有し、前記貯酒工程における貯蔵期間が、50日間以内である、容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵原料液に酵母を接種して発酵させて発酵液を得る発酵工程と、
前記発酵工程で得られた発酵液を貯酒タンクに移し、一定期間貯蔵して熟成させる貯酒工程と、
前記貯酒工程後に、熟成後の発酵液を濾過する濾過工程と、
前記濾過工程後に、濾過後の発酵液を、内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器に充填して密封する充填工程と、
を有し、
前記貯酒工程における貯蔵期間が、50日間以内である、容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項2】
前記貯蔵期間が、7~45日間である、請求項1に記載の容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項3】
前記発酵原料液は、麦芽を含む発酵原料の糖化液であり、前記発酵原料に占める麦芽比率が10質量%以上である、請求項1又は2に記載の容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項4】
アルコール濃度が0.5~8.0g/100mLである容器詰ビール様発泡性飲料を製造する、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項5】
前記容器が、開封時に、容器天面の面積の30%以上の領域が開口される金属製容器である、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項6】
製造された容器詰ビール様発泡性飲料は、4℃で24時間保存後のカバー秒数が、5秒間以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項7】
ビール様発泡性飲料が金属製容器に充填されている容器詰ビール様発泡性飲料であって、
前記金属製容器が、内面に起泡性凹凸構造が設けられており、かつ開封時に容器天面の面積の30%以上の領域が開口される容器であり、
4℃で24時間保存後のカバー秒数が、5秒間以下である、容器詰ビール様発泡性飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開缶時に自発的に泡が起泡し、かつ起泡性が維持される容器詰ビール様発泡性飲料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール様発泡性飲料においては、飲用時に白くクリーミーな泡が形成されることが商品価値の一つとなっている。缶や瓶に充填されている容器詰ビール様発泡性飲料は、通常、飲用時にグラスやジョッキ等の別の容器に注ぎ入れる際に発泡し、泡の層が形成される。また、当該別の容器に注ぎ入れた後、超音波振動をかけることによって、より肌理の細かい泡を形成させることも行われている。
【0003】
ビール様発泡性飲料においては、形成された泡がより長く保持されることも、好ましい製品品質として要求される場合が多い。泡はビール様発泡性飲料の品質劣化を防ぐ役割を担っており、泡持ちが良好であるほど、容器に注いだ状態でより長く、美味しく飲むことができる。ビール様発泡性飲料の泡持ちを改善するために様々な方法が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、植物タンパク質をプロテアーゼ処理して得られたタンパク分解物を添加して発酵させることにより、泡立ち、泡持ち成分である高分子ペプチドを保持して、製品の泡持ちと香味の良好なビール様発泡性飲料が製造できることが開示されている。
また、特許文献2には、低発酵ビール様発泡性飲料において、起泡剤であるアルギン酸エステルと、泡持ち成分であるコラーゲンペプチドの両方を配合することにより、グラス等の別の容器に注ぎ入れた場合に、泡の肌理と泡持ちの両方を改善できることが開示されている。
特許文献3には、大豆多糖類、アラビアガム、ジェランガム、キサンタンガム、及びグァーガムが、発泡性飲料の起泡剤と泡安定剤(泡持ち改善剤)として使用できることが開示されており、特許文献4には、大豆サポニンが発泡性飲料の起泡剤と泡安定剤として使用できることが開示されている。
【0005】
一方、缶ビール等は、別の容器に注ぎ入れるのではなく、直接飲用される場合がある。そのような場合においても、開缶時に、別の容器に飲料を注出したときのような泡が自発的に形成されれば、望ましいと考えられる。このような要望へ応えるべく、発泡性飲料を充填する飲料用缶について、容器の内面の構造を工夫することにより、発泡性を高める技術が知られている。
【0006】
例えば、特許文献5には、金属板を成形して缶体とした飲料用缶であって、缶体の内面底部が所定の表面粗さを有することを特徴とする発泡飲料用缶が開示されている。
また、特許文献6には、缶の内面に形成された有機樹脂被覆層に、所定の高融点大径粒子が離脱して生じた凹部および/または残留して生じた凸部と、所定の低融点小径粒子が離脱して生じた凹部とが形成されていることを特徴とする発泡性飲料用缶が開示されている。
特許文献7には、内面に、断面が略V字状をなす凹部が形成されていることを特徴とする発泡性液体用容器が開示されている。
特許文献8には、内部にCO含有飲料が充填される飲料缶の缶蓋であって、缶蓋本体の平坦面とされた内面に有機樹脂被覆が積層され、該有機樹脂被覆の内面に凹部又は凸部又は凹凸部が形成されていることを特徴とする缶蓋が開示されている。
特許文献9には、発泡性をさらに向上させた飲料用缶として、胴部の内面に、10~60μmの平均直径を有する複数のカルデラ状構造が、1mmあたり7~30個設けられている発泡性飲料用缶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-135662号公報
【特許文献2】特開2020-187号公報
【特許文献3】特開2007-181427号公報
【特許文献4】特開2006-314282号公報
【特許文献5】特開2001-180671号公報
【特許文献6】特開2007-8493号公報
【特許文献7】特開平5-97149号公報
【特許文献8】特開2004-123208号公報
【特許文献9】特開2021-80014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明においては、開缶時に自発的かつ速やかに泡が形成される、容器詰ビール様発泡性飲料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、容器詰ビール様発泡性飲料の製造において、充填する容器の内面に凹凸構造を設けることにより、開缶時に自発的に泡が起泡し、かつ起泡性が維持されることを見出した。さらに、貯酒期間を短くしたほうが、貯酒期間を長くした場合よりも、開缶時の泡の形成がより速やかになされることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明に係る発明は、下記[1]~[7]である。
[1] 発酵原料液に酵母を接種して発酵させて発酵液を得る発酵工程と、
前記発酵工程で得られた発酵液を貯酒タンクに移し、一定期間貯蔵して熟成させる貯酒工程と、
前記貯酒工程後に、熟成後の発酵液を濾過する濾過工程と、
前記濾過工程後に、濾過後の発酵液を、内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器に充填して密封する充填工程と、
を有し、
前記貯酒工程における貯蔵期間が、50日間以内である、容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
[2] 前記貯蔵期間が、7~45日間である、前記[1]の容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
[3] 前記発酵原料液は、麦芽を含む発酵原料の糖化液であり、前記発酵原料に占める麦芽比率が10質量%以上である、前記[1]又は[2]の容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
[4] アルコール濃度が0.5~8.0g/100mLである容器詰ビール様発泡性飲料を製造する、前記[1]~[3]のいずれかの容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
[5] 前記容器が、開封時に、容器天面の面積の30%以上の領域が開口される金属製容器である、前記[1]~[4]のいずれかの容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
[6] 製造された容器詰ビール様発泡性飲料は、4℃で24時間保存後のカバー秒数が、5秒間以下である、前記[1]~[5]のいずれかの容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法。
[7] ビール様発泡性飲料が金属製容器に充填されている容器詰ビール様発泡性飲料であって、
前記金属製容器が、内面に起泡性凹凸構造が設けられており、かつ開封時に容器天面の面積の30%以上の領域が開口される容器であり、
4℃で24時間保存後のカバー秒数が、5秒間以下である、容器詰ビール様発泡性飲料。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、コップへの移し替えや超音波による振動を与えなくとも、開缶時に自発的かつ迅速にきめ細かな白い泡が起泡するとともに、起泡性が維持される容器詰ビール様発泡性飲料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明及び本願明細書において、「ビール様発泡性飲料」とは、炭酸ガスを含有する飲料のうち、「ビールらしさ」を有している飲料を意味する。「ビールらしさ」とは、製品名称・表示にかかわらず、香味上ビールを想起させる呈味のことを意味する。つまり、「ビール様発泡性飲料」とは、アルコール含有量、麦芽及びホップの使用の有無、発酵の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティー(飽きずに何杯も飲み続けられる性質)を有する発泡性飲料を意味する。
【0013】
本発明及び本願明細書において、「発酵ビール様発泡性飲料」とは、発酵工程を経て製造されるビール様発泡性飲料を意味する。発酵方法は特に限定されるものではなく、単発酵であってもよく、単行複発酵であってもよく、並行複発酵であってもよいが、伝統的なビールの製造と同様に、麦芽等の原料に含まれるでんぷんを1~3糖に分解する糖化工程と、酵母により糖からアルコールを生成する発酵工程を、別個に経て製造される単行複発酵であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法により製造される容器詰ビール様発泡性飲料(以下、単に「本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料」ということがある。)としては、具体的には、ビールや、発泡酒、ローアルコールビール様発泡性飲料、ノンアルコールビール等のうち、発酵工程を経て製造される飲料が挙げられる。その他、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。
【0015】
なお、アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。例えば、原料用アルコールであってもよく、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等の蒸留酒等を用いることができる。
【0016】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法は、発酵原料液に酵母を接種して発酵させて発酵液を得る発酵工程と、前記発酵工程で得られた発酵液を貯酒タンクに移し、一定期間貯蔵して熟成させる貯酒工程と、前記貯酒工程後に、熟成後の発酵液を濾過する濾過工程と、前記濾過工程後に、濾過後の発酵液を、内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器に充填して密封する充填工程と、を有し、前記貯酒工程における貯蔵期間が、50日間以内であることを特徴とする。内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器に充填密封することにより、開缶時に自発的に泡が形成され、さらに起泡性が維持される。また、貯酒工程における貯蔵期間(以下、「貯酒期間」ということがある。)を50日間以内にすることにより、開缶時の泡の形成がより迅速に行われる。
【0017】
(内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器)
本発明において使用される容器としては、内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器であれば特に限定されるものではない。「起泡性凹凸構造」とは、飲料の起泡性(発泡性)を向上させる機能を有する凹凸構造である。本発明において使用される容器が備える起泡性凹凸構造は、平坦な構造に比べて飲料の起泡性を向上させるような凹凸構造であればよく、特に限定されない。例えば、内面に凹部のみを備える容器であってもよく、内面に凸部のみを備える容器であってもよく、凹部と凸部の両方を備える容器であってもよい。本発明において使用される「内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器」としては、例えば、特許文献5~9に記載の容器を用いることができる。
【0018】
なお、「凹部」とは、深さが1μm以上の構造をいい、「凸部」とは、高さが1μm以上の構造をいう。各凹部は、概ね円形である。容器内面の凹凸構造は、例えば、容器内面のレーザー顕微鏡写真の画像解析により計測することができる。
【0019】
本発明において使用される容器としては、金属製であり、筒状の胴部、下面(底面)、及び上面(缶蓋天面)を有しており、胴部には、起泡性凹凸構造が設けられているものが好ましい。中でも、起泡性凹凸構造として、胴部内面に、0.5μm以上20μm以下の直径の凹部を1mm当たり5000~25000個含むものが好ましく、直径が0.5μm以上5μm未満の凹部を1mm当たり5000~20000個含み、直径が5μm以上20μm以下の凹部を1mm当たり200~2000個含むものがより好ましい。このような起泡性凹凸構造を有する容器は、例えば、金属製の容器の内面に、凹凸を有する樹脂層を設けることにより、実現することができる。金属製の容器としては、アルミニウム缶やスチール缶等の発泡性飲料の充填に汎用されている飲用缶を用いることができる。例えば、容器の製造時に、金属製容器の内面に、ワックス粒子を含む樹脂組成物を塗布し、焼き付ける。ワックス粒子としては、焼き付け時に揮散するような成分を使用する。これにより、焼き付け時にワックス粒子が脱離し、樹脂層に凹凸構造が形成される。
【0020】
本発明において使用される容器としては、開封時に、容器天面の面積の30%以上の領域が開口される金属製容器であることが好ましい。例えば缶の場合、蓋を開けると、缶蓋天面の面積の30%以上の領域が開口されるタイプの缶、いわゆるフルオープン缶であることが好ましい。開口される領域は、好ましくは、容器天面の面積の50%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは容器天面全体である。
【0021】
フルオープン缶は、通常の容器とは異なり、発泡を視覚的に捉えることができることから、ジョッキに注いだビールをユーザに想起させることができる。加えて、通常の容器よりも、同一角度で口の中に流入する液量が多いことから、ユーザは、泡と液を一度に楽しむことができる。
【0022】
本発明において使用されるフルオープン缶としては、缶蓋天面が円形であり、その全周にわたってスコア(切欠き)加工が施されているものが挙げられる。そのスコア加工により、缶蓋天面全体が缶本体から脱離し、開口される。一方で、缶蓋天面は、必ずしも全てが脱離する必要はなく、容器として、缶蓋天面の一部が開缶後も缶本体に残っているような構成が用いられてもよい。
【0023】
本発明において使用される容器の容量(飲料液が充填される量)は、特に限定されるものではなく、例えば、135~1000mL容、好ましくは320~500mL容である。また、容器天面が円形である場合、容器の口径は、特に限定されるものではないが、例えば200~211径、好ましくは202~206径(JIS Z 1571:2016)である。
【0024】
(貯酒期間)
貯酒工程は、後発酵工程ともいい、発酵工程(前発酵)の後、得られた発酵液を貯酒タンクへ移して、低温条件下で貯蔵して熟成させる工程である。発酵液中に残った発酵性糖を、酵母が消化して後発酵が進む。後発酵により、前発酵で生じたアセトアルデヒドや硫化水素等の不快臭原因物質が低減され、香味が熟成される。また、タンパク質やポリフェノール等の高分子が凝集して沈殿することにより、後発酵液(貯酒液)は清澄化する。ただし、貯酒期間が長くなりすぎると、残存する酵母による泡タンパク質の分解や酵母の自己消化が進み、泡保持性の低下や香味の劣化が引き起こされる。これらの品質低下を避けるために、貯酒期間においては、他の高分子と共に沈殿する酵母が、定期的に除去される。貯酒期間は、ビール様発泡性飲料の種類や酵母の種類、求める製品品質等により様々である。貯酒タンクが大きい場合、例えば50kL容量以上の貯酒タンクを使用する場合には、タンク内の半製品から不快臭原因物質や混濁原因物質を十分低減させるために、少なくとも1か月程度は貯酒期間が必要である。
【0025】
貯酒期間が長くなるにつれ、製造された容器詰ビール様発泡性飲料の起泡性が低下する。そこで、本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法では、貯酒期間を50日間以下、好ましくは45日間以下、より好ましくは30日、さらに好ましくは25日間以下とする。香味の安定化や清澄化が十分になされるため、貯酒期間は、7日間以上が好ましい。貯酒期間が長くなるにつれて起泡性が低下する理由は明らかではないが、貯酒液中のプロテアーゼによるタンパク質の分解が進行してペプチド分が多くなり、これにより開封時に容器内壁の起泡性凹凸構造からの発泡が阻害されるためと推察される。
【0026】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料としては、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料のアルコール濃度は、特に限定されるものではないが、0.5~8.0g/100mLであることが好ましい。
【0027】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法においては、発酵原料として、麦芽を用いてもよく、麦芽を用いなくてもよい。麦芽を用いる場合、発酵原料に占める麦芽比率は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。発酵原料に占める麦芽比率が低いほど、本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の開封時の起泡性がより良好になる。麦芽比率が低いほど、開封時の起泡性が改善される理由は明らかではないが、麦芽由来のタンパク質等の各種成分の含有量が少なくなるためと推察される。
【0028】
日本においては、酒税法により、ビールや発泡酒において使用できる原材料やその使用のタイミングが制限されている。例えば、プロテアーゼ等の酵素剤は、仕込工程でのみ使用が認められており、発酵工程中や貯酒工程において起泡剤を添加したり、炭酸ガス圧を調整することは認められていない。本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法を用いることにより、麦芽比率が高い場合であっても、起泡剤の使用や炭酸ガス圧の調整等を行うことなく、起泡性が良好な容器詰ビール様発泡性飲料を製造することができる。
【0029】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の全窒素濃度は、例えば10~200(mg/100mL)、好ましくは15~100(mg/100mL)、より好ましくは20~80(mg/100mL)、更に好ましくは25~60(mg/100mL)である。全窒素濃度は、「ビール酒造組合分析法8.9」に規定される方法により測定できる。
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の総ポリフェノールは、例えば10~300(mg/L)、好ましくは30~250(mg/L)、より好ましくは100~230、更に好ましくは130~200(mg/Lである。総ポリフェノールは、「ビール酒造組合分析法8.19」に規定される方法により測定できる。
【0030】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法においては、原料としてホップを用いてもよく、用いなくてもよい。ホップを用いることにより、イソα酸を含む容器詰ビール様発泡性飲料を製造できる。本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の苦味価としては、特に限定されるものではなく、例えば、8BU以上であることが好ましく、8BU以上30BU以下であることがより好ましい。原料としてホップを用いない場合には、本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の苦味価は、0.5BU以下が好ましい。
【0031】
本発明及び本願明細書においては、特に記載のない限り、「ホップ」には、生ホップ、乾燥ホップ、ホップペレット等に加えて、ホップ加工品も含まれる。ホップ加工品としては、例えば、ホップから苦味成分を抽出したホップエキス、イソ化ホップエキス、テトラハイドロイソフムロン、ヘキサハイドロイソフムロン等のホップ中の苦味成分をイソ化した成分を含むホップ加工品が挙げられる。すなわち、「ホップを原料とせずに」とは、原料として、ホップ自体を用いない場合のみならず、ホップ加工品を原料として用いない場合も含まれる。
【0032】
本発明及び本願明細書において、苦味価とは、イソフムロンを主成分とするホップ由来物質群により与えられる苦味の指標であり、ビール様発泡性飲料をはじめとする飲料の苦味価は、ビール酒造組合編集:BCOJビール分析法、8.15(2004)に記載の方法により測定することができる。
【0033】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の色度(EBC)は、例えば3~12、好ましくは4~10、より好ましくは55~9である。ビールの色度は、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica-EBC標準法、又はこれに準じた方法により測定できる。
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料のpHは、例えば3.5~5.0、好ましくは3.7~4.5、より好ましくは3.9~4.3である。
【0034】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の製造方法は、貯酒期間を50日間以内とすることと、ビール様発泡性飲料を充填する容器を起泡性凹凸構造が設けられている容器とすること以外は、一般的な発酵ビール様発泡性飲料と同様にして製造できる。発酵ビール様発泡性飲料は、一般的には、仕込(発酵原料液調製)、発酵、貯酒、濾過の工程で製造することができる。
【0035】
まず、仕込工程(発酵原料液調製工程)として、穀物原料及び糖質原料からなる群より選択される1種以上の発酵原料から発酵原料液を調製する。具体的には、発酵原料と原料水とを含む混合物を加温し、澱粉質を糖化して糖液を調製する。得られた糖液を煮沸し、その後固体分の少なくとも一部を除去して、発酵原料液を調製する。
【0036】
穀物原料としては、例えば、大麦や小麦、これらの麦芽等の麦類、米、トウモロコシ、大豆等の豆類、イモ類等が挙げられる。穀物原料は、穀物シロップ、穀物エキス等として用いることもできるが、粉砕処理して得られる穀物粉砕物として用いることが好ましい。穀物類の粉砕処理は、常法により行うことができる。穀物粉砕物としては、麦芽粉砕物、コーンスターチ、コーングリッツ等のように、粉砕処理の前後において通常なされる処理を施したものであってもよい。用いられる穀物粉砕物は、麦芽粉砕物であることが好ましい。麦芽粉砕物を用いることにより、ビールらしさがよりはっきりとした発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。麦芽粉砕物は、大麦、例えば二条大麦を、常法により発芽させ、これを乾燥後、所定の粒度に粉砕したものであればよい。また、穀物原料としては、1種類の穀物原料であってもよく、複数種類の穀物原料を混合したものであってもよい。例えば、主原料として麦芽粉砕物を、副原料として米やトウモロコシの粉砕物を用いてもよい。糖質原料としては、例えば、液糖等の糖類が挙げられる。
【0037】
当該混合物には、穀物原料等と水以外の副原料を加えてもよい。当該副原料としては、例えば、ホップ、食物繊維、酵母エキス、果汁、苦味料、着色料、香草、香料等が挙げられる。また、必要に応じて、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤を添加することができる。
【0038】
糖化処理は、穀物原料等由来の酵素や、別途添加した酵素を利用して行う。糖化処理時の温度や時間は、用いた穀物原料等の種類、発酵原料全体に占める穀物原料の割合、添加した酵素の種類や混合物の量、目的とする発酵ビール様発泡性飲料の品質等を考慮して、適宜調整される。例えば、糖化処理は、穀物原料等を含む混合物を35~70℃で20~90分間保持する等、常法により行うことができる。
【0039】
糖化処理後に得られた糖液を煮沸することにより、煮汁(糖液の煮沸物)を調製することができる。糖液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。また、この糖液の濾液の替わりに、麦芽エキスに温水を加えたものを用い、これを煮沸してもよい。煮沸方法及びその条件は、適宜決定することができる。
【0040】
煮沸処理前又は煮沸処理中に、香草等を適宜添加することにより、所望の香味を有する発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。例えば、ホップを煮沸処理前又は煮沸処理中に添加し、ホップの存在下で煮沸処理することにより、ホップの風味・香気成分、特に苦味成分を効率よく煮出することができる。ホップの添加量、添加態様(例えば数回に分けて添加する等)及び煮沸条件は、適宜決定することができる。
【0041】
煮沸処理後に得られた煮汁には、沈殿により生じたタンパク質等の粕が含まれている。そこで、煮汁から粕等の固体分の少なくとも一部を除去する。粕の除去は、いずれの固液分離処理で行ってもよいが、一般的には、ワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去する。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50~100℃程度で行われる。粕を除去した後の煮汁(濾液)は、プレートクーラー等により適切な発酵温度まで冷却する。この粕を除去した後の煮汁が、発酵原料液となる。
【0042】
次いで、発酵工程として、冷却した発酵原料液に酵母を接種して、発酵を行う。冷却した発酵原料液は、そのまま発酵工程に供してもよく、所望のエキス濃度に調整した後に発酵工程に供してもよい。発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよいが、大型醸造設備への適用が容易であることから、下面発酵酵母であることが好ましい。
【0043】
さらに、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させる。その後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、発酵ビール様発泡性飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が0.4~1.0μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。
【0044】
濾過工程後に、充填工程として、濾過後の発酵液(発酵ビール様発泡性飲料)を、内面に起泡性凹凸構造が設けられている容器に充填して密封することにより、目的の容器詰ビール様発泡性飲料を得ることができる。容器への充填及び密封は、常法により行うことができる。
【0045】
濾過後の発酵液は、容器に充填される前に、ガス圧が所望の範囲内となるように炭酸ガスを導入してもよい。本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料のガス圧としては、0.10MPa以上とすることが好ましく、0.21MPa以上とすることがより好ましく、0.21~0.30MPaとすることがさらに好ましい。
【0046】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料は、室温で保管することができるが、飲用前には冷却されていることが好ましい。冷却温度は、10℃以下が好ましく、3~10℃がより好ましく、3~6℃がさらに好ましい。
【0047】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料は、開封時の起泡性が高められていることから、開封するだけで、容器内のビール様発泡性飲料を発泡させることができる。これにより、他の容器に注出しなくても、生ビールをジョッキに注いだ時に生じるような泡の層を形成することができる。
【0048】
本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料の起泡性は、カバー秒数を指標にして評価することができる。「カバー秒数」とは、容器を開封してから飲料の上表面全体が泡で覆われるまでの時間(秒)である。本発明に係る容器詰ビール様発泡性飲料は、4℃で24時間保存後のカバー秒数が、5秒間以下であることが好ましい。
【実施例0049】
次に実施例等を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
容器内面に起泡性凹凸構造を備える容器に充填した容器詰ビール様発泡性飲料の起泡性に対する、貯酒期間の影響を調べた。
【0051】
<容器詰ビール様発泡性飲料の製造>
発酵原料として麦芽とコーンスターチを用い、ホップを原料として用いて、常法により発酵ビール様発泡性飲料を製造した。発酵原料の全量に対する麦芽比率は、70質量%とした。具体的には、200Lスケールの仕込設備を用いて製造した。まず、仕込槽に、28kgの麦芽の粉砕物、12kgのコーンスターチ、及び160Lの仕込水を投入し、常法に従って糖化液を製造した。得られた糖化液を、麦汁濾過槽を用いて濾過し、麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加した後、煮沸した。次いで、麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去し、その後、約10℃に冷却した。冷麦汁を発酵槽に導入し、ビール酵母を接種し、約10℃で8日間発酵させた。得られた発酵液を貯酒タンクへ移し、表1に記載の貯酒期間、-2℃で保存した。
【0052】
続いて、得られた貯酒液を珪藻土濾過した。その後、濾液を、フルオープン缶に充填し密封して、容器詰ビール様発泡性飲料を得た。フルオープン缶としては、アルミニウム製の2ピース缶を用いた。具体的には、底面が閉じられた缶胴と、缶胴の上面を塞ぐ缶蓋とを有する容器を用いた。缶蓋の全周には、上面の全体が開口するようにスコア(切欠き)が設けられていた。缶胴としては、胴部の内面に樹脂コーティングが施されているものを使用した。樹脂コーティングには、起泡性凹凸構造が設けられていた。具体的には、起泡性凹凸構造として、直径が5μm以上20μm以下の凹部が1mmあたり200~2000個設けられており、直径が0.5μm以上5μmの凹部が、1mmあたり5,000~20,000個設けられていた。
【0053】
<カバー秒数の測定>
各容器詰ビール様発泡性飲料について、4℃の冷蔵庫内で24時間保存した後、缶蓋を開けてから飲料の上表面全体が泡で覆われるまでの時間(秒)を目視により測定した。各サンプルについて、10本の容器を開缶し、平均値をカバー秒数の結果とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、貯酒期間(酒令)が長いほど、開缶時から表面が泡で覆われるまでのカバー秒数が長くなり、起泡性が低下していた。
【0056】
[実施例2]
貯酒期間を表2に記載された日数とした以外は実施例1と同様にして、容器詰ビール様発泡性飲料を製造し、各サンプルの起泡性タンパク質(12kDa)と泡持ちタンパク質(40kDa)の含有量、並びに、NIBEM値とカバー秒数を測定した。測定結果を表2に示す。
【0057】
NIBEM値は、注がれた泡の崩壊速度を電気伝導度で測定したものであり、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica-EBC標準法に準じた方法により測定した。
【0058】
起泡性タンパク質と泡持ちタンパク質の含有量は、マイクロチップ型電気泳動装置バイオアナライザ装置「Agilent2100」(Agilent Technologies社製)を用いたオンチップ法により測定し、アルブミン換算のタンパク濃度として求めた。具体的には、まず、前処理として、15分間の超音波処理で脱気したサンプル200μLに、8μLのアルブミン(500ppm)を添加した後、脱塩スピンカラムを用いて脱塩処理した。その後、当該サンプルを遠心エバポレーターで1時間濃縮した後、10μLの超純水を添加して、攪拌して溶解させた。前処理後のサンプルは、バイオアナライザ装置「Agilent2100」と、当該装置でタンパク質を分析するための測定用キット「AgilentProtein80キット」を用いて測定した。
【0059】
【表2】
【0060】
また、より貯酒期間を長くした場合の起泡性タンパク質等に対する影響を調べるために、貯酒期間を表3に記載された日数とした以外は同様にして、容器詰ビール様発泡性飲料を製造し、各サンプルの起泡性タンパク質(12kDa)と泡持ちタンパク質(40kDa)の含有量、並びに、NIBEM値とカバー秒数を測定した。測定結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表2の結果から、貯酒期間が30日程度の場合、起泡性タンパク質(12kDa)と泡持ちタンパク質(40kDa)の濃度は、貯酒期間に応じて若干の変動はあったものの、NIBEM値にはほとんど影響がなく、グラスに注いだ場合の泡品質には、貯酒期間はあまり影響がないことがわかった。また、表3の結果から、貯酒期間が70日程度の場合、起泡性タンパク質(12kDa)は、貯酒期間が長くなるにつれて濃度がやや増大する傾向が観察されたが、泡持ちタンパク質(40kDa)ではこのような傾向は観察されなかった。サンプルのNIBEM値は、貯酒期間が長くなるにつれてやや改善される傾向が観察された。
【0063】
一方で、表2と表3のいずれの結果においても、カバー秒数は貯酒期間が長くなるについれて明らかに長くなっており、従来の泡品質の指標であるNIBEM値とは相関性はなかった。これらの結果から、容器内面に起泡性凹凸構造を備える容器に充填した容器詰ビール様発泡性飲料の起泡性は、貯酒期間に依存して低下してしまうことが示された。
【0064】
[実施例3]
発酵原料全量に対する麦芽比率を表4に示す値にした以外は実施例1と同様にして、容器詰ビール様発泡性飲料を製造し、カバー秒数を測定して起泡性を調べた。
【0065】
【表4】
【0066】
この結果、麦芽比率が高いサンプルほど、カバー秒数が長くなる傾向が観察された。これは、麦芽使用比率が低くなるほど麦芽由来の泡タンパクが少なくなるため 、開缶時の起泡性が向上したためではないかと推察された。