(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029863
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20230228BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20230228BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20230228BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20230228BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20230228BHJP
H05B 3/84 20060101ALI20230228BHJP
B60J 1/20 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
C03C27/12 M
B32B17/00
B32B7/027
B60J1/00 H
B60S1/02 300
B60S1/02 400Z
H05B3/84
B60J1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185800
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2018519604の分割
【原出願日】2017-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2016105185
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016158277
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】小川 良平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 和喜
(72)【発明者】
【氏名】小川 永史
(57)【要約】
【課題】曇りを効果的に防止することができる、合わせガラスを提供する。
【解決手段】本発明に係る合わせガラスは、第1辺と、及び前記第1辺と対向する第2辺を有する、矩形状の第1ガラス板と、前記第1ガラス板と対向配置され、前記第1ガラスと略同形状の第2ガラス板と、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置される中間膜と、前記第1辺側の端部に沿って延びる第1バスバーと、前記第2辺側の端部に沿って延びる第2バスバーと、前記第1バスバーと第2バスバーとを連結するように延びる複数の加熱線と、を備えており、前記複数の加熱線の少なくとも一部は、長さの異なる加熱線により構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1辺と、及び前記第1辺と対向する第2辺を有する、矩形状の第1ガラス板と、
前記第1ガラス板と対向配置され、前記第1ガラス板と略同形状の第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置される中間膜と、
を備え、
前記中間膜は、
前記第1辺側の端部に沿って延びる第1バスバーと、
前記第2辺側の端部に沿って延びる第2バスバーと、
前記第1バスバーと第2バスバーとを連結するように延びる複数の加熱線と、
を備えており、
前記複数の加熱線の少なくとも一部は、長さの異なる加熱線により構成されている、合わせガラス。
【請求項2】
長さの長い前記加熱線の少なくとも一部の幅が、長さの短い前記加熱線の幅よりも大きい、請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記中間膜は、
接着層と、
前記接着層に接するか、あるいは前記接着層の内部に配置される、少なくとも前記加熱線を含む発熱層と、
を備え、
前記接着層は、前記加熱線の形状に追従するように変形可能な材料で形成されている、請求項1または2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記発熱層は、少なくとも前記加熱線を支持するシート状の基材を備えており、前記接着層の内部に配置されている、請求項3に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記接着層の厚みは、少なくとも前記加熱線の厚みよりも大きい、請求項3または4に記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記接着層の厚みは、0.5mm以上である、請求項3から5のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記複数の加熱線において、前記接着層と接する面が平坦に形成されている、請求項3から6のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記複数の加熱線の厚みは、前記両バスバーの間で一定である、請求項3から6のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記第1バスバーと第2バスバーとの間において、前記第1辺と第2辺とを結ぶ第1方向に沿って、発熱量が異なる複数の領域が形成されるように、前記複数の各加熱線中で、長さ、幅、間隔の少なくとも1つが異なる、請求項1から8のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項10】
前記加熱線は、長さ方向に幅の異なる複数の部位を有しており、
隣接する前記部位の接続箇所で、幅が広い部位の両側縁に形成される角部の曲率半径が1μm以上である、請求項9に記載の合わせガラス。
【請求項11】
前記加熱線は、長さ方向に幅の異なる複数の部位を有しており、
隣接する前記部位の接続箇所で、幅が狭い部位の両側縁と幅の広い部位とで形成される角部の曲率半径が1μm以上である、請求項9に記載の合わせガラス。
【請求項12】
前記各部位は、長さ方向に沿って幅が変化するように形成されている、請求項10または11に記載の合わせガラス。
【請求項13】
前記中間膜は、
接着層と、
前記接着層の内部に配置される、少なくとも前記加熱線を含む発熱層と、
を備え、
前記接着層は、前記加熱線の形状に追従するように変形可能な材料で形成されている、請求項9から12のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項14】
前記第1ガラス板、前記第2ガラス板、及び前記中間膜は、
前記第1辺側に配置され、光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置と対向し、前記光が通過する情報取得領域と、
前記情報取得領域と前記第2辺との間の中央領域と、
前記情報取得領域の両側の前記第1辺と前記第2辺との間の側方領域と、を有し、
前記中央領域に配置される前記加熱線の長さは、前記側方領域に配置される前記加熱線の長さよりも短く、
前記中央領域に配置される前記加熱線の幅は、前記側方領域に配置される前記加熱線の幅よりも大きい、請求項1から13のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項15】
前記中央領域は、前記第1辺と第2辺とを結ぶ第1方向に沿って、発熱量の異なる複数の部位を備えており、
前記複数の部位のうち、前記情報取得領域側の部位が前記第2辺側の部位よりも発熱量が大きい、請求項14に記載の合わせガラス。
【請求項16】
前記加熱線は、長さ方向に幅の異なる複数の部位を有しており、
隣接する前記部位の接続箇所で、幅が広い部位の両側縁に形成される角部の曲率半径が1μm以上である、請求項15に記載の合わせガラス。
【請求項17】
前記加熱線は、長さ方向に幅の異なる複数の部位を有しており、
隣接する前記部位の接続箇所で、幅が狭い部位の両側縁と幅の広い部位とで形成される角部の曲率半径が1μm以上である、請求項15に記載の合わせガラス。
【請求項18】
前記各部位は、長さ方向に沿って幅が変化するように形成されている、請求項16または17に記載の合わせガラス。
【請求項19】
前記中間膜は、
接着層と、
前記接着層の内部に配置される、少なくとも前記加熱線を含む発熱層と、
を備え、
前記接着層は、前記加熱線の形状に追従するように変形可能な材料で形成されている、請求項15から18のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項20】
前記第1バスバーにおいて、少なくとも前記情報取得領域と対応する第1部位は、当該情報取得領域よりも前記第2辺側に配置されている、請求項14に記載の合わせガラス。
【請求項21】
前記第1バスバーは、前記第1部位と、前記側方領域と対応する第2部分と、を有しており、
前記第2部位は、前記第1部位よりも前記第1辺側に配置されている、請求項20に記載の合わせガラス。
【請求項22】
前記第1バスバーにおいて、少なくとも前記情報取得領域と対応する第1部位は、当該情報取得領域よりも前記第1辺側に配置されている、請求項14に記載の合わせガラス。
【請求項23】
前記第1バスバーは、前記第1辺に沿うように形成されている、請求項22に記載の合わせガラス。
【請求項24】
前記第1ガラス板及び第2ガラス板の第2辺は、前記第1辺より長く形成され、
前記第1バスバー、第2バスバー、及び前記複数の加熱線は、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置され、
隣接する前記加熱線間の間隔の少なくとも1つは、前記第1バスバー側が前記第2バスバー側よりも狭くなっており、
前記加熱線の少なくとも1つの線幅は、前記第1バスバー側において前記第2バスバー側よりも大きくなっている、請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項25】
前記複数の加熱線の少なくとも一部は、前記第1バスバーから前記第2バスバー側にいくにしたがって漸進的に線幅が小さくなるように形成されている、請求項24に記載の合わせガラス。
【請求項26】
前記第1ガラス板、前記第2ガラス板、及び前記中間膜は、複数の領域により構成されており、
前記複数の加熱線は、前記領域毎に、最大線幅が相違する、請求項24または25に記載の合わせガラス。
【請求項27】
前記複数の領域は、
JIS R3212で規定された試験領域Aである、第1領域と、
JIS R3212で規定された試験領域Bである、第2領域と、
光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置と対向し前記光が通過する、第3領域と、
前記第1から第3領域以外の領域である、第4領域と、
を備えている、請求項26に記載の合わせガラス。
【請求項28】
前記複数の領域は、少なくとも、ワイパーが通過する領域と、ワイパーが通過しない領域とを含む、請求項26に記載の合わせガラス。
【請求項29】
隣接する加熱線の少なくとも一組において、当該隣接する加熱線を接続する、少なくとも1つのバイパス用加熱線をさらに備えている、請求項1から28のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項30】
前記第1バスバー、前記第2バスバー、前記複数の加熱線が同一の材料により一体的に形成されている、請求項1から29のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項31】
前記加熱線の線幅は、500μm以下である、請求項1から30のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項32】
前記第1辺は、上辺または下辺である、請求項1から31のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項33】
前記第1ガラス板の第1面、第2面、前記第2ガラス板の第1面、第2面の少なくとも1つの面に、視野を遮蔽する遮蔽領域をさらに備えており、
前記第1及び第2バスバーは、前記遮蔽領域と重なる位置に配置されている、請求項1から32のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項34】
前記遮蔽領域の少なくとも一部は、当該合わせガラスの周縁に配置されている、請求項33に記載の合わせガラス。
【請求項35】
前記バスバーと前記加熱線との接続部分においては、前記加熱線の幅を他の部分よりも広く形成する、請求項1から34のいずれかに記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
気温の低い日や寒冷地では、自動車のウインドシールドが曇ることがあり、運転に支障を来している。そのため、ウインドシールドの曇りを除去する種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ウインドシールドの内部に、バスバー及び加熱線を配置し、その発熱によって曇りを除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的なウインドシールドのような合わせガラスは、下辺が上辺よりも長い台形状に形成されている。そのため、加熱すべき領域は、下辺側の方が広くなっている。しかしながら、上記特許文献1では、上辺側のバスバーと下辺側のバスバーが水平方向に同じ長さであるため、下側のバスバーは、ウインドシールドの下辺全体に亘って配置されていない。そして、加熱線は、両バスバーを連結するように配置されているため、このウインドシールドの下辺側の両側には加熱線が配置されておらず、曇りを除去することができない。
【0005】
さらに、次のような問題もある。車種によっては、ウインドシールドの両端部に、デフロスターからの送風が当たらないものがある。にもかかわらず、上記の従来技術では、その様な車種であっても、ウインドシールドの両端部を加熱線により加熱する事ができなかった。また、ウインドシールドの両端部はワイパーで除雪したときに、雪がたまる場所であるにもかかわらず、解氷する事ができなかった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、下辺の長い台形状の合わせガラスにおいても、ガラス全体に亘って曇りを防止することができる、合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の合わせガラスは、第1辺と、及び前記第1辺と対向する第2辺を有する、矩形状の第1ガラス板と、前記第1ガラス板と対向配置され、前記第1ガラス板と略同形状の第2ガラス板と、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置される中間膜と、を備え、前記中間膜は、前記第1辺側の端部に沿って延びる第1バスバーと、前記第2辺側の端部に沿って延びる第2バスバーと、前記第1バスバーと第2バスバーとを連結するように延びる複数の加熱線と、を備えており、前記複数の加熱線の少なくとも一部は、長さの異なる加熱線により構成されている。
【0008】
但し、複数の加熱線のすべてが、長さの異なる加熱線でなくてもよく、例えば、複数の加熱線の一部が、他の複数の加熱線と異なる長さとなるように構成することもできる。
【0009】
上記合わせガラスにおいて、長さの長い前記加熱線の少なくとも一部の幅が、長さの短い前記加熱線の幅よりも大きくすることができる。
【0010】
上記各合わせガラスにおいて、前記中間膜は、接着層と、前記接着層に接するか、あるいは前記接着層の内部に配置される、少なくとも前記加熱線を含む発熱層と、を備え、前記接着層は、前記加熱線の形状に追従するように変形可能な材料で形成することができる。
【0011】
上記合わせガラスにおいて、前記発熱層は、少なくとも前記加熱線を支持するシート状の基材を備えており、前記接着層の内部に配置することができる。
【0012】
上記各合わせガラスにおいて、前記接着層の厚みは、少なくとも前記加熱線の厚みよりも大きくすることができる。
【0013】
上記各合わせガラスにおいて、前記接着層の厚みは、0.5mm以上とすることができる。
【0014】
上記各合わせガラスでは、前記複数の加熱線において、前記接着層と接する面が平坦に形成することができる。
【0015】
上記各合わせガラスにおいて、前記複数の加熱線の厚みは、前記両バスバーの間で一定とすることができる。
【0016】
上記各合わせガラスでは、前記第1バスバーと第2バスバーとの間において、前記第1辺と第2辺とを結ぶ第1方向に沿って、発熱量が異なる複数の領域が形成されるように、前記複数の各加熱線中で、長さ、幅、間隔の少なくとも1つが異なるように構成することができる。
【0017】
上記合わせガラスにおいて、前記加熱線は、長さ方向に幅の異なる複数の部位を有しており、隣接する前記部位の接続箇所で、幅が広い部位の両側縁に形成される角部の曲率半径が1μm以上にすることができる。
【0018】
上記合わせガラスにおいて、前記加熱線は、長さ方向に幅の異なる複数の部位を有しており、隣接する前記部位の接続箇所で、幅が狭い部位の両側縁と幅の広い部位とで形成される角部の曲率半径が1μm以上にすることができる。
【0019】
上記各合わせガラスにおいて、前記各部位は、長さ方向に沿って幅が変化するように形成することができる。
【0020】
上記各合わせガラスにおいて、前記中間膜は、接着層と、前記接着層の内部に配置される、少なくとも前記加熱線を含む発熱層と、を備え、前記接着層は、前記加熱線の形状に追従するように変形可能な材料で形成することができる。
【0021】
上記合わせガラスにおいて、前記第1ガラス板、前記第2ガラス板、及び前記中間膜は、前記第1辺側に配置され、光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置と対向し、前記光が通過する情報取得領域と、前記情報取得領域と前記第2辺との間の中央領域と、前記情報取得領域の両側の前記第1辺と前記第2辺との間の側方領域と、を有し、前記中央領域に配置される前記加熱線の長さは、前記側方領域に配置される前記加熱線の長さよりも短く、前記中央領域に配置される前記加熱線の幅は、前記側方領域に配置される前記加熱線の幅よりも大きいものとすることができる。
【0022】
上記合わせガラスにおいて、前記中央領域は、前記第1辺と第2辺とを結ぶ第1方向に沿って、発熱量の異なる複数の部位を備えており、前記複数の部位のうち、前記情報取得領域側の部位が前記第2辺側の部位よりも発熱量を大きくすることができる。
【0023】
上記合わせガラスにおいて、前記加熱線は、長さ方向に幅の異なる複数の部位を有しており、隣接する前記部位の接続箇所で、幅が広い部位の両側縁に形成される角部の曲率半径が1μm以上とすることができる。
【0024】
上記合わせガラスにおいて、前記加熱線は、長さ方向に幅の異なる複数の部位を有しており、隣接する前記部位の接続箇所で、幅が狭い部位の両側縁と幅の広い部位とで形成される角部の曲率半径が1μm以上とすることができる。
【0025】
上記各合わせガラスにおいて、前記各部位は、長さ方向に沿って幅が変化するように形成することができる。
【0026】
上記各合わせガラスにおいて、前記中間膜は、接着層と、前記接着層の内部に配置される、少なくとも前記加熱線を含む発熱層と、を備え、前記接着層は、前記加熱線の形状に追従するように変形可能な材料で形成することができる。
【0027】
上記合わせガラスでは、前記第1バスバーにおいて、少なくとも前記情報取得領域と対応する第1部位は、当該情報取得領域よりも前記第2辺側に配置することができる。
【0028】
上記合わせガラスにおいて、前記第1バスバーは、前記第1部位と、前記側方領域と対応する第2部分と、を有しており、前記第2部位は、前記第1部位よりも前記第1辺側に配置することができる。
【0029】
上記合わせガラスでは、前記第1バスバーにおいて、少なくとも前記情報取得領域と対応する第1部位は、当該情報取得領域よりも前記第1辺側に配置することができる。
【0030】
上記合わせガラスにおいて、前記第1バスバーは、前記第1辺に沿うように形成することができる。
【0031】
上記合わせガラスにおいて、前記第1ガラス板及び第2ガラス板の第2辺は、前記第1辺より長く形成され、前記第1バスバー、第2バスバー、及び前記複数の加熱線は、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置され、隣接する前記加熱線間の間隔の少なくとも1つは、前記第1バスバー側が前記第2バスバー側よりも狭くなっており、前記加熱線の少なくとも1つの線幅は、前記第1バスバー側において前記第2バスバー側よりも大きくなっているものとすることができる。
【0032】
上記合わせガラスにおいて、前記加熱線の少なくとも一部は、前記第1バスバーから前記第2バスバー側にいくにしたがって漸進的に線幅が小さくなるように形成することができる。
【0033】
上記合わせガラスにおいて、前記第1ガラス板、前記第2ガラス板、及び前記中間膜は、複数の領域により構成されており、前記複数の加熱線は、前記領域毎に、最大線幅が相違するように構成することができる。
【0034】
上記合わせガラスにおいて、前記複数の領域は、JIS R3212で規定された試験領域Aである、第1領域と、JIS R3212で規定された試験領域Bである、第2領域と、光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置と対向し前記光が通過する、第3領域と、前記第1から第3領域以外の領域である、第4領域と、を備えることができる。
【0035】
上記合わせガラスにおいて、前記複数の領域は、少なくとも、ワイパーが通過する領域と、ワイパーが通過しない領域とを含むことができる。
【0036】
上記合わせガラスにおいては、光の照射及び/または受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置を配置可能とし、前記複数の領域を、JIS R3212で規定された試験領域Aである、第1領域と、JIS R3212で規定された試験領域Bである、第2領域と、前記情報取得装置により、前記光の照射及び/または受光が行われる、第3領域と、前記第1から第3領域以外の領域である、第4領域と、を備えることができる。
【0037】
上記各合わせガラスでは、隣接する加熱線の少なくとも一組において、当該隣接する加熱線を接続する、少なくとも1つのバイパス用加熱線をさらに備えることができる。
【0038】
上記各合わせガラスにおいては、前記第1バスバー、前記第2バスバー、前記複数の加熱線を同一の材料により一体的に形成することができる。
【0039】
上記各合わせガラスにおいて、前記加熱線の線幅は、500μm以下とすることができる。
【0040】
上記各合わせガラスにおいて、前記第1辺は、上辺または下辺とすることができる。
【0041】
上記各合わせガラスにおいては、前記第1ガラス板の第1面、第2面、前記第2ガラス板の第1面、第2面の少なくとも1つの面に、視野を遮蔽する遮蔽領域をさらに備えており、前記第1及び第2バスバーは、前記遮蔽領域と重なる位置に配置することができる。
【0042】
上記各合わせガラスにおいては、前記遮蔽領域の少なくとも一部は、当該合わせガラスの周縁に配置されているものとすることができる。
【0043】
上記各合わせガラスにおいては、前記バスバーと前記加熱線との接続部分においては、前記加熱線の幅を他の部分よりも広く形成することができる。
【0044】
本発明に係る第2の合わせガラスは、第1辺と、及び前記第1辺と対向し当該第1辺よりも長さの長い第2辺を有する矩形状の第1ガラス板と、前記第1ガラス板と対向配置され、前記第1ガラスと略同形状の第2ガラス板と、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置される中間膜と、を備え、前記中間膜は、前記上辺側の端部に沿って延びる第1バスバーと、前記下辺側の端部に沿って延びる第2バスバーと、前記第1バスバーと第2バスバーとを連結するように延びる複数の加熱線と、を備えており、隣接する前記加熱線間の間隔は、前記第1バスバー側が前記第2バスバー側よりも狭くなっており、前記加熱線の線幅は、前記第1バスバー側において前記第2バスバー側よりも大きくなっている。
【0045】
上記合わせガラスにおいて、前記加熱線は、前記第1バスバーから前記第2バスバー側にいくにしたがって漸進的に線幅が小さくなるように形成することができる。
【0046】
上記各合わせガラスを複数の領域により構成し、前記複数の加熱線が、前記領域毎に、最大線幅が相違するようにすることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、下辺の長い台形状の合わせガラスにおいても、ガラス全体に亘って曇りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明に係る合わせガラスをウインドシールドに適用した一実施形態の正面図である。
【
図3】湾曲状の合わせガラスのダブリ量を示す正面図(a)及び断面図(b)である。
【
図4】、湾曲形状のガラス板と、平面形状のガラス板の、一般的な周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。
【
図5】合わせガラスの厚みの測定位置を示す概略平面図である。
【
図10A】中間膜の他の例を示すウインドシールドの分解断面図である。
【
図10B】中間膜の他の例を示すウインドシールドの断面図である。
【
図11A】中間膜の他の例を示すウインドシールドの分解断面図である。
【
図11B】中間膜の他の例を示すウインドシールドの断面図である。
【
図13】ウインドシールド内の発熱量の相違を説明する平面図である。
【
図14A】
図13のウインドシールドに用いられる加熱線を示す平面図である。
【
図14B】
図13のウインドシールドに用いられる他の加熱線を示す平面図である。
【
図15】
図13のウインドシールドに用いられる他の加熱線を示す平面図である。
【
図17】接続材の他の例を示す合わせガラスの断面図である。
【
図18】ウインドシールドの他の例を示す正面図である。
【
図19】ウインドシールドの他の例を示す正面図である。
【
図20】ウインドシールドの他の例を示す正面図である。
【
図22】ウインドシールドの他の例を示す正面図である。
【
図23】ウインドシールドの他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明に係る合わせガラスをウインドシールドに適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るウインドシールドの平面図、
図2は
図1の断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るウインドシールドは、外側ガラス板(第2ガラス板)1、内側ガラス板(第1ガラス板)2、及びこれらガラス板1,2の間に配置される中間膜3を備えている。また、内側ガラス板2の上端部及び下端部には、切欠き部21,22がそれぞれ形成されており、各切欠き部21,22では、中間膜3から延びる接続材41,42がそれぞれ露出している。以下、各部材について説明する。
【0050】
<1.合わせガラスの概要>
<1-1.ガラス板>
各ガラス板1,2は、ともに、下辺が上辺よりも長い台形状に形成されており、上述したように、内側ガラス板2の上端部及び下端部には、円弧状の切欠き部がそれぞれ形成されている。以下では、内側ガラス板2の上端部に形成された切欠き部を第1切欠き部21、下端部に形成された切欠き部を第2切欠き部22と称することとする。また、各ガラス板11,12としては、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板11、12は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板11により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板12により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの組成の一例を示す。
【0051】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
R2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.08~0.14質量%
【0052】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl2O3)をT-Fe2O3、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0053】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65~80質量%
Al2O3:0~5質量%
CaO:5~15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10~18質量%
K2O:0~5質量%
MgO+CaO:5~15質量%
Na2O+K2O:10~20質量%
SO3:0.05~0.3質量%
B2O3:0~5質量%
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.02~0.03質量%
【0054】
上記のように、各ガラス板1、2は台形状に形成されているが、上辺と下辺の長さの比は、例えば、1:1.04~1:1.5とすることができる。例えば、上辺が1200mmの場合、下辺を1250~1800mmとすることができる。具体的には、上辺を1195mm、下辺を1435mmとすることができる。なお、以上説明した比は、ウインドシールドを正面から投影したときの2次元平面での比である。すなわち、
図1では、下辺が長い例を挙げているが、上辺が長いウインドシールドにも適用可能である。例えば、一人用の小型車のウインドシールドは、上辺が500mmの場合、下辺を350~450mmとすることができる。具体的には、上辺を500mm、下辺を425mmとすることができる。
【0055】
本実施形態に係る合わせガラスの厚みは特には限定されないが、軽量化の観点からは、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みの合計を、2.4~4.6mmとすることが好ましく、2.6~3.4mmとすることがさらに好ましく、2.7~3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板1と内側ガラス板2との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みを決定することができる。
【0056】
外側ガラス板1は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、例えば、この合わせガラスを自動車のウインドシールドとして用いる場合には、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板1の厚みは1.0~3.0mmとすることが好ましく、1.6~2.3mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0057】
内側ガラス板2の厚みは、外側ガラス板1と同等にすることができるが、例えば、合わせガラスの軽量化のため、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.6~2.0mmであることが好ましく、0.8~1.8mmであることがさらに好ましく、1.0~1.6mmであることが特に好ましい。更には、0.8~1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板2についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る外側ガラス板1及び内側ガラス板2の形状は、湾曲形状であってもよい。但し、各ガラス板1、2が湾曲形状である場合には、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ガラス板の曲げを示す量であり、例えば、
図3に示すように、ガラス板の上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ直線Lを設定したとき、この直線Lとガラス板との距離のうち最も大きいものをダブリ量Dと定義する。
【0059】
図4は、湾曲形状のガラス板と、平面形状のガラス板の、一般的な周波数と音響透過損失の関係を示すグラフである。
図4によれば、湾曲形状のガラス板は、ダブリ量が30~38mmの範囲では、音響透過損失(STL:Sound Transmission Loss)に大きな差はないが、平面形状のガラス板と比べると、4000Hz以下の周波数帯域で音響透過損失が低下していることが分かる。したがって、湾曲形状のガラス板を作製する場合、ダブリ量は小さい方が好ましい。具体的には、ダブリ量を30mm未満とすることが好ましく、25mm未満とすることがさらに好ましく、20mm未満とすることが特に好ましい。
【0060】
ここで、ガラス板が湾曲している場合の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、
図5に示すように、ガラス板の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線S上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM-112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にガラス板の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでガラス板の端部を挟持して測定する。
【0061】
<1-2.中間膜>
続いて、中間膜3について説明する。中間膜3は、発熱層31、及びこの発熱層31を挟持する一対の接着層32,33、を有する3層で構成されている。以下では、外側ガラス板1側に配置される接着層を第1接着層32、内側ガラス板2側に配置される接着層を第2接着層33と称することとする。
【0062】
<1-2-1.発熱層>
まず、発熱層31について説明する。発熱層31は、シート状の基材311と、この基材311上に配置される、第1バスバー312、第2バスバー313、及び複数の加熱線314を備えている。基材311は、上記ガラス板1,2と対応するように台形状に形成することができるが、必ずしも両ガラス板1,2と同形状でなくてもよく、両ガラス板1,2よりも小さい形状であってもよい。例えば、
図1に示すように、上下方向には、内側ガラス板2の切欠き部21,22と干渉しないように、両切欠き部21,22間の長さよりも短くすることができる。また、基材311の左右方向の長さも両ガラス板1,2の幅よりも短くすることができる。
【0063】
そして、第1バスバー312は、基材311の上辺に沿って延びるように形成されている。一方、第2バスバー313は、基材311の下辺に沿って延びるように形成されているが、第1バスバー312よりは長く形成されている。但し、各バスバー312,313は、中間膜3が両ガラス板1,2に挟持されたときに、上述した切欠き部21,22から、それぞれ露出しないように、切欠き部21,22よりも内側に配置される。なお、各バスバー312,313の上下の幅は、例えば、5~50mmであることが好ましく、10~30mmであることがさらに好ましい。これは、バスバー312,313の幅が5mmより小さいと、ヒートスポット現象が生じ、加熱線よりも高く発熱するおそれがある一方、バスバー312,313の幅が50mmよりも大きいと、バスバー312,313により視野が妨げられるおそれがあることによる。また、各バスバー312,313は、正確に基材311に沿って形成されていなくてもよい。すなわち、基材311の端縁と完全に平行でなくてもよく、曲線状などにすることもできる。
【0064】
複数の加熱線314は、両バスバー312,313を結ぶように、上下方向に延びるように形成されている。また、
図6に示すように、複数の加熱線314は、第1バスバー312と第2バスバー313の長さが相違することから、下方にいくにしたがって隣接する加熱線314の間隔が広がるように配置されている。また、各加熱線314の幅は、第1バスバー312側から第2バスバー313側にいくにしたがって漸進的に小さくなっている。具体的には、加熱線314の線幅及び間隔は、次のように設定することができる。すなわち、各加熱線314の線幅は、3~500μmであることが好ましく、5~20μmであることがさらに好ましく、8~10μmであることが特に好ましい。そして、加熱線314において第1バスバー312と接続される上端の幅と、第2バスバー313と接続される下端の幅との比は、例えば、1:0.67~1:0.96とすることができる。
【0065】
また、隣接する加熱線314の間隔は、1~4mmであることが好ましく、1.25~3mmであることがさらに好ましく、1.25~2.5mmであることが特に好ましい。そして、隣接する加熱線314において第1バスバー312と接続される上端の間隔と、第2バスバー313と接続される下端の間隔との比は、例えば、1:1.04~1:1.5とすることができる。
【0066】
なお、各加熱線314は、直線状に形成できるほか、波形など、種々の形状にすることができる。特に、各加熱線314を正弦波形状にすることで、熱の分布が均一になるほか、光学的に、加熱線314がウインドシールドの視野を妨げるのを防止することができる。
【0067】
また、
図6に示すように、加熱線314の長さLは、加熱線314と第1バスバー312との交点Aと、その加熱線314と第2バスバー313との交点Bとの距離をいう。ここでいう交点は、各加熱線314の幅方向の概ね中心と各バスバー312,313との交点である。加熱線314が波形の場合であっても、加熱線314の距離は、上記のように交点A,B間の距離とする。これは、加熱線314は波形であっても、伸ばしたときの長さは、交点A,B間の距離に比例するからである。
【0068】
一方、加熱線314の幅は、例えば、VHX-200(キーエンス社製)などのマイクロスコープを1000倍にして測定することができる。なお、発熱量が影響するのは実際には加熱線314の断面積であるが、幅と断面積は技術的にはほぼ同義である。そして、幅が小さいほど、視認しがたくなるため、本実施形態に係るウインドシールドには適している。
【0069】
また、加熱線314間の間隔は、例えば、加熱線314が直線の場合には、
図6に示すように、加熱線314の幅方向の端縁と第1バスバー312との交点Cと、これと対向する加熱線314の幅方向の端縁と第1バスバー312との交点Dとの距離とする。一方、加熱線314が波形の場合には、
図7に示すように、ある加熱線(以下、第1加熱線314Xという)において、隣接する加熱線(以下、第2加熱線314Yという)とは反対側に凸の隣接する2箇所を選択し、これら凸の頂部E,Fを結ぶ直線Mを規定する。そして、第2加熱線314Yにおいて、頂部E,F間に位置し、第1加熱線314Xに最も近い凸の部分の頂部Gを選択する。そして、上記直線Mと頂部Gとの距離L(直線Mの法線を通る長さ)を加熱線間の間隔とする。
【0070】
次に、発熱層31の材料について説明する。基材311は、両バスバー312,313、加熱線314を支持する透明のフィルムであり、その材料は特には限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどで形成することができる。また、両バスバー312,313及び加熱線314は、同一の材料で形成することができ、銅(またはメッキされた銅)、タングステン、銀など、種々の材料で形成することができる。
【0071】
続いて、両バスバー312,313、加熱線314の形成方法について説明する。これら両バスバー312,313、加熱線314は、予め形成された細線(ワイヤなど)などを基材311上に配置することで形成できるが、特に、加熱線314の線幅をより細くするには、基材311上にパターン形成することで、加熱線314を形成することができる。その方法は、特には限定されないが、印刷、エッチング、転写など、種々の方法で形成することができる。このとき、各バスバー312,313、加熱線314を別々に形成することもできるし、これらを一体的に形成することもできる。なお、「一体的」とは、材料間に切れ目がなく(シームレス)、界面が存在しないことを意味する。
【0072】
また、両バスバー312,313を基材311上で形成し、加熱線314用の基材311を残して、両バスバー312,313に対応する部分の基材311を剥離して取り外す。その後、両バスバー312,313の間の基材上に加熱線を配置することもできる。
【0073】
特に、エッチングを採用する場合には、一例として、次のようにすることができる。まず、基材311にプライマー層を介して金属箔をドライラミネートする。金属箔としては、例えば、銅を用いることができる。そして、金属箔に対して、フォトリソグラフィー法を利用したケミカルエッチング処理を行うことにより、基材311上に、両バスバー312,313、複数の加熱線314を一体的にパターン形成することができる。特に、加熱線314の線幅を小さくする場合(例えば、15μm以下)には、薄い金属箔を用いることが好ましく、薄い金属層(例えば、5μm以下)を基材311上に蒸着やスパッタリング等により形成し、その後、フォトリソグラフィーによりパターニングを実施してもよい。
【0074】
<1-2-2.接着層>
両接着層32,33は、発熱層31を挟持するとともに、ガラス板1,2への接着を行うためのシート状の部材である。両接着層32,33は、両ガラス板1,2と同じ大きさに形成されているが、両接着層32,32には、内側ガラス板2の切欠き部21,22と対応する位置に同形状の切欠き部がそれぞれ形成されている。また、これら接着層32,33は、種々の材料で形成することができるが、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、アイオノマーなどによって形成することができる。特に、ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性のほか、耐貫通性にも優れるので好ましい。なお、接着層と発熱層との間に界面活性剤の層を設けることもできる。このような界面活性剤により両層の表面を改質することができ、接着力を向上することができる。
【0075】
また、これらの材料は、後述するオートクレーブのように高温(例えば、70~150℃)において軟化し、加熱線314やバスバー312,313の形状に追従するように変形する。したがって、特に、第2接着層33は、加熱線314やバスバー312,313の形状に沿うように変形し、加熱線314やバスバー312,313が、第2接着層33の内部に埋め込まれたような態様となる。その結果、両者の間に隙間が生じるのを防止することができる。なお、本発明における「接着層」は、本実施形態に係る第1及び第2接着層32,33をまとめて表したものであり、第1及び第2接着層32,33の間に発熱層31が配置されている態様が、本発明における接着層の内部に発熱層が配置されていることに対応する。
【0076】
この観点から、接着層32,33は、加熱線等312~314の形状に追従するように変形するように、例えば、ビカット軟化点が約50~100℃程度の材料で形成することが好ましい。ビカット軟化点は、JIS K7206にしたがって測定することができる。例えば、上述したPVBのビカット軟化点は、80℃であり、アイオノマーの軟化点は50℃である。また、接着層32,33の厚み(特に、第2接着層33の厚み)は、加熱線等312~314が埋め込まれるようにするためには、その厚みが加熱線等312~314よりも大きいことが好ましく、例えば、0.5mm以上とすることができる。
【0077】
<1-2-3.中間膜の厚み>
また、中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3~6.0mmであることが好ましく、0.5~4.0mmであることがさらに好ましく、0.6~2.0mmであることが特に好ましい。また、発熱層31の基材311の厚みは、0.01~2.0mmであることが好ましく、0.03~0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各接着層32,33の厚みは、発熱層31の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~1.0mmであることがさらに好ましい。なお、第2接着層33と基材311とを密着させるため、その間に挟まれる両バスバー312,313、加熱線314の厚みは、3~20μmであることが好ましい。
【0078】
発熱層31及び接着層32,33の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH-5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、発熱層31及び接着層32,33の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値を発熱層31及び接着層32,33の厚みとする。
【0079】
なお、中間膜3の発熱層31及び接着層32,33の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間膜3の発熱層31及び接着層32,33の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。中間膜3が楔形の場合、外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、平行に配置されないが、このような配置も本発明におけるガラス板に含まれるものとする。すなわち、本発明においては、例えば、1m当たり3mm以下の変化率で厚みが大きくなる発熱層31及び接着層32,33を用いた中間膜3を使用した時の外側ガラス板1と内側ガラス板2の配置を含む。
【0080】
<1-3.接続材>
次に、接続材について説明する。接続材41,42は、各バスバー312,313と接続端子(陽極端子又は陰極端子:図示省略)とを接続するためのものであり、導電性の材料によりシート状に形成されている。以下では、第1バスバー312に接続される接続材を第1接続材41、第2バスバー313に接続される接続材を第2接続材42と称することとする。また、両接続材41,42の構成は同じであるため、以下では主として第1接続材41について説明する。
【0081】
第1接続材41は、矩形状に形成されており、第1バスバー312と第2接着層33との間に挟まれる。そして、半田などの固定材5によって第1バスバー312に固定される。固定材5としては、後述するウインドシールドの組立て時にオートクレーブで同時に固定することができるよう、例えば、150℃以下の低融点の半田を用いることが好ましい。また、第1接続材41は、第1バスバー312から外側ガラス板1の上端縁まで延び、内側ガラス板2に形成された第1切欠き部21から露出するようになっている。そして、この露出部分において、電源へと延びるケーブルが接続された接続端子が半田などの固定材によって接続される。このように、両接続材41,42は、両ガラス板1,2の端部から突出することなく、内側ガラス板2の切欠き部21,22から露出した部分に接続端子が固定されるようになっている。なお、両接続材41,42は、薄い材料で形成されているため、
図2に示すように、折り曲げた上で、端部を固定材5でバスバー312に固定することができる。
【0082】
<2.ウインドシールドの製造方法>
次に、ウインドシールドの製造方法について説明する。まず、ガラス板の製造ラインについて説明する。
【0083】
ここで、成形型について、
図8及び
図9を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
図8は成形型が通過する炉の側面図、
図9は成形型の平面図である。
図9に示すように、この成形型800は、両ガラス板1,2の外形と概ね一致するような枠状の型本体810を備えている。この型本体810は、枠状に形成されているため、内側には上下方向に貫通する内部空間820を有している。そして、この型本体810の上面に平板状の両ガラス板1,2の周縁部が載置される。そのため、このガラス板1,2には、下側に配置されたヒータ(図示省略)から、内部空間820を介して熱が加えられる。これにより、両ガラス板1,2は加熱により軟化し、自重によって下方へ湾曲することとなる。なお、型本体810の内周縁には、熱を遮蔽するための遮蔽板840を配置することがあり、これによってガラス板1,2が受ける熱を調整することができる。また、ヒータは、成形型800の下方のみならず、上方に設けることもできる。
【0084】
そして、平板状の外側ガラス板1及び内側ガラス板2は重ね合わされ、上記成形型800に支持された状態で、
図8に示すように、加熱炉802を通過する。加熱炉802内で軟化点温度付近まで加熱されると、両ガラス板1,2は自重によって周縁部よりも内側が下方に湾曲し、曲面状に成形される。続いて、両ガラス板1,2は加熱炉802から徐冷炉803に搬入され、徐冷処理が行われる。その後、両ガラス板1,2は、徐冷炉803から外部に搬出されて放冷される。
【0085】
こうして、外側ガラス板11及び内側ガラス板12が成形されると、これに続いて、中間膜3を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟む。具体的には、まず、外側ガラス板1、第1接着層32、発熱層31、第2接着層33、及び内側ガラス板2をこの順で積層する。このとき、発熱層31は、第1バスバー312等が形成された面を第2接着層33側に向ける。また、発熱層31の上下の端部は、内側ガラス板2の切欠き部21,22よりも内側に配置される。さらに、第1及び第2接着層32,33の切欠き部を、内側ガラス板2の切欠き部21,22と一致させる。これにより、内側ガラス板2の切欠き部21,22からは、外側ガラス板1が露出する。続いて、各切欠き部21,22から、発熱層31と第2接着層33との間に、各接続材41,42を挿入する。このとき、各接続材41,42には固定材5として低融点の半田を塗布しておき、この半田が各バスバー312,313上に配置されるようにしておく。
【0086】
こうして、両ガラス板1,2、中間膜3、及び接続材41,42が積層された積層体を、ゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70~110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能であり、次の方法を採ることもできる。例えば、上記積層体をオーブンにより45~65℃で加熱する。次に、この積層体を0.45~0.55MPaでロールにより押圧する。続いて、この積層体を、再度オーブンにより80~105℃で加熱した後、0.45~0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0087】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた積層体を、オートクレーブにより、例えば、8~15気圧で、100~150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で135℃の条件で本接着を行うことができる。以上の予備接着及び本接着を通して、両接着層32,33が、発熱層31を挟んだ状態で各ガラス板1,2に接着される。また、接続材41,42の半田が溶融し、各接続材41,42が各バスバー312,313に固定される。こうして、本実施形態に係る合わせガラスが製造される。
【0088】
<3.ウインドシールドの使用方法>
上記のように構成されたウインドシールドは、車体に取付けられ、さらに各接続材41,42には、接続端子が固定される。その後、各接続端子に通電すると、接続材41,42、各バスバー312,313を介して加熱線314に電流が印加され、発熱する。この発熱により、ウインドシールドの曇りを除去することができる。
【0089】
<4.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0090】
(1) 両ガラス板1,2が台形状に形成されていることから、これに合わせて複数の加熱線314は、両バスバー312、313の間で、上方から下方にいくにしたがって間隔が広くなるように形成されている。そのため、ガラス板1,2の下部の方が、上部に比べ、各加熱線314の加熱すべき領域が広くなる。そこで、本実施形態においては、各加熱線314の幅を、上方から下方にいくにしたがって、小さくなるように形成している。これにより、各加熱線314の発熱量が、下方に行くほど大きくなるため、加熱できる領域が広くなる。したがって、両ガラス板1,2の下方において、隣接する加熱線314の間隔が広くなっても、ガラス板1,2の曇りを確実に除去することができる。
【0091】
特に、車種によっては、ウインドシールドの両端部に、デフロスターからの送風が当たらないものがあるが、本実施形態では、ウインドシールドの両端部を確実に加熱して曇りを除去することができる。また、ウインドシールドの両端部はワイパーで除雪したときに、雪がたまる場所であるので、そのような場所に雪が溜まったとしても、加熱線により確実に解氷することができる。
【0092】
(2) 両バスバー312,313と加熱線314とが同じ材料で形成されているため、両バスバー312,313及び加熱線314の線膨張係数が同じになる。これにより、次のような利点がある。両バスバー312,313と加熱線314を異なる材料で形成した場合には、線膨張係数が異なるため、例えば、これらの部材を別々に作製して固定した場合には、ヒートサイクル試験などの過酷な環境変化によって、バスバーから加熱線が剥がれたり、これに起因して合わせガラスを構成する2枚のガラス板が互いに浮き上がる、といった不具合が生じる可能性があるが、本実施形態のように、両バスバー312,313と加熱線314とが同じ材料で形成すると、そのような不具合を防止することができる。
【0093】
(3) 両バスバー312,313と加熱線314とを一体的に形成しているため、両者の間の接触不良,ひいては発熱不良を防止することができる。発熱不良について詳細に説明すると、以下の通りである。一般的に、防曇のためにガラス板を加熱する場合には、ガラスクラックの発生を防止するため、加熱温度の上限値を、例えば70~80℃となるように電流値を制御することが求められる。これに対して、上記のような接触抵抗による局所的な発熱があれば、その部分を加熱温度の上限値として電流値の制御を行う必要がある。その結果、加熱線が全体的に十分に発熱するように制御できないという問題がある。しかしながら、上記構成によれば、局所的な発熱を防止できるため、加熱線も全体的に十分に発熱できるよう制御することができる。
【0094】
(4) 両バスバー312,313と加熱線314が配置された発熱層31を,接着層32,33によって挟持し、これを両ガラス板1,2の間に配置している。そのため、発熱層31を,両ガラス板1,2に対して確実に固定することができる。また、第2接着層33により、両バスバー312,313と加熱線314を覆うことで、これらがガラス板に接触するのを防止することができる。その結果、ガラス板の割れなどを未然に防ぐことができる。
【0095】
(5) 上記実施形態では、2つの接続材41,42を用いて各バスバー312,313と外部の端子とを接続するようにしているが、例えば、幅の広いバスバーを準備し、このバスバーの不要な部分をカットした上で、一部を切欠き部21,22から露出させることで、接続材の代わりにすることも考えられる。しかしながら、このようにすると、カットしたバスバーの角部で局所的な発熱が生じることも考えられる。これに対して、本実施形態では、各バスバー312,313に別体の接続材41,42を固定しているため、そのような局所的な発熱を防止することができる。
【0096】
(6) 接着層32,33は、変形可能な材料で形成されているため、接着層32,33と加熱線314またはバスバー312,313とが密着し、両者の間に隙間が形成されないようにすることができる。そのため、例えば、上述したオートクレーブ時に気泡が残留するのを防止することができる。
【0097】
このような気泡の残留を防止するという観点からすると、加熱線314やバスバー312,313において、第2接着層33と接する面は、凹凸がなく、平坦であることが好ましい。この場合、例えば、加熱線314の厚み(接着層32,33の積層方向の厚み)が長さ方向に沿って変化していてもよく、第2接着層33と接する面に段差や急激な凹凸がなければよい。したがって、加熱線314やバスバー312,313の厚みが全体に亘って一定であることがより好ましい。この点は、後述する変形例においても同じである。
【0098】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は、上記実施形態とともに、適宜組合せが可能である。
【0099】
<5-1>
上記実施形態では、中間膜3を発熱層31と、一対の接着層32,33の合計3層で形成したが、これに限定されるものではない。すなわち、中間膜3には、少なくとも両バスバー312,313及び加熱線314が含まれていればよい。したがって、例えば、接着層を1層だけにしたり、発熱層31を接着剤などで両ガラス板1,2の間に挟むこともできる。また、発熱層31に基材311を設けないこともできる。
【0100】
基材311を設けない場合、発熱層31は少なくとも加熱線314を含むことになる(あるいは加熱線314とバスバー312,313)が、この場合は、両接着層32,33の間に発熱層31が配置され、オートクレーブのように高温に曝されると、両接着層32,33は一体化し、区別が付きにくい状態(あるいは区別が付かない状態)となる。また、両接着層32,33は同じ材料で形成する以外に、例えば、一方に可塑剤などを配合することもできる。また、組成や添加剤などの配合量を変えることもできる。
【0101】
このように、基材311を設けない場合には、
図10Aに示すように、第1接着層32上に加熱線314などをエッチングなどで形成した後、この第1接着層32を第2接着層33と重ね、加熱線314が両接着層32,33の間に挟まれるようにする。その後、上記のようなオートクレーブを行うと、両接着層32,33が一体化し、
図10Bに示すように、接着層32,33の内部に加熱線314やバスバー312,313を含む発熱層31が配置される態様となる。
【0102】
あるいは、
図11Aに示すように、加熱線314が配置された第1接着層32を、加熱線314が外側ガラス板1と向き合うように配置し、第2接着層33を内側ガラス板2と向き合うように配置することもできる。すなわち、2つの接着層32,33を重ね合わせ、両ガラス板1,2の間に配置することもできる。その後、オートクレーブを行うと、両接着層32,33が一体化するとともに、
図11Bに示すように、加熱線314が直接外側ガラス板1に接触するため、ガラス板をより高温で加熱することができる。但し、加熱線等312~314は、より柔軟な接着層32,33に接した方が隙間が形成されるのが防止されるため、気泡発生の観点からすると、加熱線等312~314は接着層32,33の内部に配置されることが好ましい。
【0103】
<5-2>
発熱層31は、種々の形状にすることができる。例えば、予め基材311上に両バスバー312,313と加熱線314が形成されたシート状の発熱層31を準備しておき、これを適宜切断し、適当な形状にした上で、両ガラス板1,2の間に配置することができる。したがって、例えば、ガラス板1,2の端縁が湾曲していれば、それに合わせて基材311の端縁を湾曲させてもよい。また、発熱層31をガラス板1,2の形状と完全に一致させる必要はなく、防曇効果を得たい部分にのみ配置することができるため、ガラス板1,2よりも小さい形状など種々の形状にすることができる。なお、ガラス板1,2も完全な矩形以外に種々の形状にすることができる。
【0104】
上記実施形態では、基材311上に両バスバー312,313と加熱線314を配置しているが、少なくとも加熱線314が配置されていればよい。したがって、例えば、両バスバー312,313を両接着層32,33の間に配置することもできる。また、隣接する加熱線314間の距離が下方にいくにしたがって広くなっているかぎり、各バスバー312,313の長さは特には限定されない。したがって、両バスバー312,313の長さが同じであってもよい。
【0105】
<5-3>
加熱線314の線幅の設定方法は特には限定されない。上記実施形態では、加熱線314の幅が下方にいくにしたがって漸進的に小さくなるようにしているが、
図12Aに示すように、段階的に小さくしたり、
図12Bに示すように、上方の幅を広くし、下方の幅を狭くしたり、
図12Cに示すように、加熱線314の一部を下方にいくにしたがって漸進的に幅が狭くなるようにし、他の部分の幅を一定にすることもできる。この点は、加熱線314間の距離についても同様であり、下方にいくにしたがって漸進的に距離が大きくなるほか、段階的に距離を大きくしてもよい。
【0106】
また、
図12A,
図12Bに示すような態様の場合、幅の広い部位Aと狭い部位Bとの接続箇所の角部は、ヒートスポットになりやすい。すなわち、異常発熱が生じる場合がある。具体的には、上記接続箇所における、幅が広い部位Aの両側縁に形成される角部301や、幅が狭い部位Bの両側縁と幅の広い部位Aとで形成される角部302がヒートスポットになりやすい。したがって、ヒートスポットになることを防止するためには、これらの角部301,302の曲率半径を、例えば、1μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがさらに好ましい。
【0107】
<5-4>
上記のように、複数の加熱線314の幅等を変化させることで、例えば、
図13に示すように、合わせガラスの上下方向(第1方向)に沿って、発熱量の異なる複数の領域(
図13では3つ:601,602,603)をより明確に形成することができる。このような領域を形成するためには、各加熱線314が上下方向において、発熱量の異なる部位を有するように構成する。具体的には、各加熱線を、幅(あるいは断面積)の異なる複数の部位を組み合わせることで形成する。なお、発熱量が影響するのは実際には加熱線314の断面積であるが、断面積を変化させるには、加熱線314の厚みを変化させるよりも幅を変化させる方が容易であるため、厚さはほとんど変化させずに幅を変化させることがある(特にエッチングの場合)。したがって、幅と断面積は技術的にはほぼ同義であるため、以下では、両者を区別なく使用することがある。
【0108】
図14Aに示すように、この例では、各加熱線が上下方向に並ぶ3つの部位、つまり上から下に向かって並ぶ第1部位61、第2部位62、及び第3部位63を組み合わせることで形成されている。このうち、第1部位61、第2部位62、第3部位63の順で幅が狭くなっている。一の加熱線314においては、電流が一定であるので、以下の式(1)より、断面積(幅)が小さい部位は抵抗が大きくなり、発熱量が大きくなる。
W=IE=I
2R=I
2ρ(L/A) (1)
但し、W:電力、E:電圧、I:電流、R:抵抗、L:長さ、A:断面積、ρ:電気抵抗率
【0109】
したがって、発熱量は、第3部位63、第2部位62、第1部位61の順に小さくなる。そして、
図13に示すように、このような加熱線314を、両バスバー312,313の間に、左右方向に概ね平行に並べると、第1部位、第2部位、及び第3部位に対応する3つの領域、つまり第1領域601,第2領域602,及び第3領域603の発熱量を異ならせることができる。この例では、第1領域601の発熱量が最も低く、第3領域603の発熱量が最も高くなる。
【0110】
なお、
図14Bに示すように、加熱線314においてバスバー312、313との接続部分61a,63aは、他の部分よりも幅を大きくすることもできる。これにより加熱線314とバスバー312,313との接続部分における断線を防止することができる。
【0111】
なお、加熱線の幅は、
図14Aに示すように、各部位61~63において、一定とすることもできるし、
図15に示すように、変化させることもできる。
図15の例では、各領域の中でも発熱量を変化させるときに適用する。特に、上述したように、上下方向において、加熱線314間の間隔が変化する場合には、このような形状を適用することが好ましい。すなわち、
図15の例では、下方にいくにしたがって加熱線314間の間隔が広くなる態様に対応するため、下方にいくにしたがって加熱線314の幅を小さくしていき、加熱線314間の間隔が広くなるにしたがって発熱量を大きくしている。
【0112】
また、発熱量を変化させる場合、ワイパーが通過する領域と、通過しない領域とで発熱量を変化させることができる。例えば、
図13の第3領域603は、ワイパーが通過する領域であり、第1及び第2領域601,602はワイパーが通過しない領域である。したがって、この場合には、ワイパーで氷を除去できる第3領域603の発熱量を小さくし、他の領域601,602の発熱量を大きくすることができる。
【0113】
以上のように、合わせガラス内の領域毎に発熱量を異ならせるようにすることで、限られた電力を有効に振り分けることができる。すなわち、特に曇りが発生しやすい領域、あるいは曇りを迅速に除去しなければならない領域の発熱量を大きくし、その他の領域の発熱量を小さくすることができる。
【0114】
<5-5>
また、隣接する加熱線314同士を少なくとも1つのバイパス線で接続することもできる。これにより、例えば、一の加熱線314が断線したとしても、隣接する加熱線314から通電が可能となる。このようなバイパス線を設けるには、種々の態様があるが、例えば、
図16に示すようにすることができる。すなわち、隣接する加熱線314の間に、少なくとも1つのバイパス線315を設け、加熱線314同士を接続することができる。バイパス線315の位置、数は特には限定されない。また、バイパス線315の形状も特には限定されず、
図16のように斜めに延びるように配置したり、波形にするなど、種々の形状にすることができる。なお、バイパス線315は、加熱線314と同じ金属材料で形成し、加熱線314と一体的に形成することができる。
【0115】
<5-6>
接続材41,42の形態や内側ガラス板2の切欠き部21,22の構成も特には限定されない。例えば、
図17に示すように、内側ガラス板2に、接続材41,42の厚み程度の小さい切欠き部21,22を形成し、各バスバー312,313から延びる接続材41,42をこの切欠き部21,22で折り返し、内側ガラス板2の表面に貼り付けておくこともできる。こうすることで、接続材41,42が合わせガラスの端部から面方向に突出するのを防止することができる。
【0116】
<5-7>
本発明に係る合わせガラスは、車内側に設けられ、車間距離などを測定するセンサ、赤外線カメラ、光ビーコンなどの情報取得装置が設けられたウインドシールドにも適用することができる。
図18に示す例では、ガラス板1,2の周縁に、外部からの視野を遮蔽するため、黒色などの濃色のセラミックなどを塗布し,これを加熱して成形した周縁領域101が形成されている。そして、周縁領域101のうち、上辺の中央に、下方に延びる延在部102を設ける。この延在部102も黒色のセラミックで形成されており、この延在部102には、セラミックが形成されていない窓部(情報取得領域)103が形成されている。この窓部103は、上述した上得取得装置が、車内側から光の照射及び/または受光を行うためのものである。この例では窓部103を1つしか設けていないが、ステレオカメラなど、情報取得装置の種類に応じて窓部の数は適宜設定される。また、上記周縁領域101と延在部102とで外部からの視野を遮蔽する遮蔽領域が形成される。この遮蔽層は、内側ガラス板2の外面(第1面)、内面(第2面)、外側ガラス板1の外面(第1面)、内面(第2面)のいずれかに形成することができる。また、内側ガラス板2の内面及び外側ガラス板1の内面、の2箇所に形成することもできる。
【0117】
このような情報取得装置が設けられた場合、合わせガラスの上辺に沿って第1バスバー312を設け、下辺に沿って第2バスバー313を設ける。第1バスバー312は、周縁領域101の上辺と対応する部分、及び延在部102を通過するように配置する。より詳細には、第1バスバー312は、延在部102においては、窓部103の両側及び下側を通過する。そして、延在部102を通過した第1バスバー312の両側は周縁領域101に配置される。一方、第2バスバーは、周縁領域101の下辺に対応する部分を通過する。このように、各バスバー312、313は、遮蔽領域に沿って設けられるため、車外または車内から見えないようになっている。
【0118】
なお、上記のように第1バスバー312を窓部103の両側及び下側に配置すると、次の効果を得ることができる。例えば、第1バスバー312が窓部103の上側を通過し加熱線314が窓部103を跨いでしまうと、例えば、対向車のヘッドライトが拡散(光芒)し、情報取得装置への情報が乱れる原因となるからである。したがって、上記のように第1バスバー312を配置すると、情報取得装置において、正確に情報を取得することができる。また、第1バスバー312が窓部103を通らないため、加熱線314から発せられる電磁界が情報取得装置に対してノイズを発生させるのを防止することができる。さらに、第1バスバー312のうち、窓部と対応しない部分は、窓部103よりも上方に配置しているため、ドライバーにとって視野を広げることができる。
【0119】
そして、複数の加熱線314は、第1バスバー312と第2バスバー313とを結ぶように、上下方向に延び、所定間隔をあけて概ね平行に配置されている。このとき、窓部103の下方に配置される複数の加熱線(以下、第1加熱線314aという。本例では5本)は、窓部103の両側に配置される複数の加熱線(以下、第1加熱線314bという)よりも短くなっている。また、第1加熱線314aの線幅は、第2加熱線314bの線幅よりも小さくなっている。これは、第1加熱線314aは、第2加熱線314bよりも短いため、抵抗が小さくなるため、これを補い、発熱量が低下しないようにするためである。なお、第1加熱線314aのうち、両側に配置されている2本の加熱線314aは中央の3本の加熱線314aよりも長さが長くなっているため、中央の3本の加熱線314aよりも線幅を大きくすることもできる。なお、このウインドシールドにおいて、第1加熱線314aが配置されている領域が本発明の中央領域に相当し、第2加熱線314bが配置されている領域が本発明の側方領域に対応する。
【0120】
また、加熱線の長さと幅の例としては、例えば、555mm,673mm,790mmの長さの加熱線の幅は、それぞれ、10μm,12.1μm,14.2μmとすることができる。
【0121】
また、これら第1及び第2加熱線314a,314bは概ね平行に配置されているため、上方から下方にいくにしたがって、線幅を変える必要はなく、線幅を一定にしている。但し、
図1のように、下方にいくにしたがって隣接する加熱線間の間隔が大きくなる場合には、上記のように、下方にいくにしたがって線幅を小さくすることができる。
【0122】
なお、第1加熱線314aが配置されている中央領域において、上下方向に沿って、発熱量を変化させることもできる。例えば、
図18に示すように、合わせガラスを上下の2つの第1領域701及び第2領域702に区切り、窓部103に近い側の第1領域701の発熱量を、第2領域702よりも大きくすることができる。これにより、窓部103の近くの発熱量が大きくなるため、窓部103における曇りをより効果的に除去することができる。このように、発熱量の異ならせるには、上述したように加熱線314aの幅を長さ方向に沿って変化させればよい。すなわち、
図18の例では、第1領域701の加熱線314aの幅を小さくし、第2領域702の加熱線314aの幅を大きくすればよい。
【0123】
また、この例では、第1バスバー312の中央領域と対応する部分のみを、窓部103よりも下方に配置しているが、例えば、
図19に示すように、第1バスバー312全体を窓部103よりも下方に配置することもできる。
【0124】
<5-8>
図20に示すように、第1バスバー312を窓部103の上方に配置することもできる。これにより、加熱線314が窓部103を通過するため、窓部103の曇りを確実に除去することができる。この場合、第1バスバー312は、ガラス板1,2の上辺に沿って、直線状あるいは曲線状に形成することができる。
【0125】
<5-9>
また、各ガラス板1,2に複数の領域を設定し、各領域毎に加熱線314の線幅を相違させることができる。このような領域は、例えば、次のように設定することができる。まず、ウインドシールドには、
図21で示したように、窓を有する遮蔽領域が形成されている。また、JIS R3212において、所定の光学特性、つまり二重像、透視歪み、色の識別の試験を行うための領域(試験領域A及び試験領域B)が規定されている。これら試験領域A,Bは、概ね
図21に示すとおりである。但し、試験領域Aは、右ハンドルの車両に対応する領域である。また、
図21において、バスバー312,313及び加熱線314は省略しているが、
図18~
図20と同様に構成することができる。
【0126】
以上のようなウインドシールドにおいて、例えば、試験領域Aを第1領域、試験領域Bを第2領域、窓部103が設けられている領域(情報取得領域)を第3領域、それ以外の領域を第4領域とする。そして、これら4つの領域毎に、各領域に配置される加熱線314の最大線幅を相違させることができる。例えば、第1領域及び第2領域が曇ると運転に支障を来すため、特に防曇効果を高める必要がある。したがって、これらの領域では加熱線314の線幅を特に小さくし、発熱量を大きくすることができる。また、第3領域も曇ってしまうと、情報取得装置による測定が正しく行われない可能性がある。したがって、第3領域に配置される加熱線314も発熱量を大きくするため、線幅を小さくすることができる。
【0127】
以上のように、例えば、第1~第3領域では、特に加熱線314の最大線幅を小さくし、第4領域ではそれよりも加熱線314の最大線幅を大きくすることができる。また、第1,第2,第3,第4領域の順に最大線幅を大きくすることもできる。なお、領域の設定方法はこれに限定されず、用途などに応じて適宜設定することができる。
【0128】
なお、最大線幅は、次のように測定する。まず、加熱線314に電流を流し、発熱量が大きい箇所及び小さい箇所を特定する。ここで、大きい箇所と小さい箇所の両方を特定する理由は、加熱線314を直列に繋ぐ場合と並列に繋ぐ場合とで線幅が最大になったり、最小になったりするからである。そして、その大きい箇所と小さい箇所の中で、10mmピッチでマイクロスコープを用いて線幅を測定し、最も大きい線幅の部分を最大線幅とする。
【0129】
<5-10>
各ガラス板1,2の構成も特には限定されない。例えば、上述した遮蔽領域は、シート材を貼り付けることで形成してもよい。また、遮蔽領域の形状は特には限定されず、各バスバーは、遮蔽領域と対応するように配置することができる。また、ガラス板1,2は、上記のような自重によって湾曲させるほか、成形型でプレスしてガラス板を湾曲させることもできる。
【0130】
<5-11>
上記実施形態では、上辺が短いウインドシールドについて説明したが、上辺が下辺よりも長いウインドシールドに対しても適用することができる。この場合、上辺と下辺の長さの比は、例えば、1:0.67~1:0.96とすることができる。すなわち、例えば、上辺が500mmの場合、下辺を333~480mmとすることができる。具体的には、上辺を500mm、下辺を425mmとすることができる。なお、以上説明した比は、ウインドシールドを正面から投影したときの2次元平面での比である。
【0131】
この場合、加熱線314の線幅は、下辺側に行くにしたがって大きくなり、加熱線314において第1バスバー312と接続される上端の幅と、第2バスバー313と接続される下端の幅との比を、例えば、1:1.04~1:1.5とすることができる。また、隣接する加熱線314の間隔は下辺側にいくにしたがって小さくなり、第1バスバー312と接続される上端の間隔と、第2バスバー313と接続される下端の間隔との比は、例えば、1:0.67~1:0.96とすることができる。
【0132】
<5-12>
加熱線314の構成は、特には限定されず、種々の態様が可能である。この点について、
図22を参照しつつ説明する。
図22の例が、上記実施形態と相違するのは、主としてバスバー及び加熱線の配置であるため、以下では、相違部分のみを説明し、同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0133】
図22に示すように、この例において、複数の加熱線6は、両バスバー312,313を結ぶように、並列に配置されている。各加熱線6は、3つの部位と2つの折り返し部によって構成されている。すなわち、第1バスバー312から第2バスバー313へ近接する位置まで延びる第1部位61、第1部位61の下端部から第1折り返し部64を介して上方へ延び、第1バスバー312に近接する位置まで延びる第2部位62、及び第2部位62の上端部から第2折り返し部65を介して下方へ延び、第2バスバー313に連結される第3部位63を備えている。このように形成された複数の加熱線6が両バスバー312,313の左右方向に所定間隔をおいて並んでいる。
【0134】
以上の例では、各加熱線に折り返し部64、65を設けることで、各加熱線6を長くすることができる。これらによって、各加熱線6における発熱量を小さくすることができる。
【0135】
なお、加熱線6の形態は特には限定されず、本実施形態では、2つの折り返し部64,65を有するように形成しているが、3以上の折り返し部を設け、両バスバー212,213の間で延びる加熱線6の長さをさらに長くすることもできる。
【0136】
<5-13>
また、各加熱線6を長くするには、
図23のような中継バスバーを設けることもできる。この点について、詳細に説明する。
【0137】
図23に示すように、このウインドシールドでは、第1バスバー312が、各ガラス板1,2の下辺12の左側に配置され、第2バスバー313が、下辺12の右側に沿って配置されている。これに加え、ガラス板1,2の上辺11の左側に帯状の第1中継バスバー71、下辺12の第1及び第2バスバー312,313の間に帯状の第2中継バスバー72、ガラス板1,2の上辺11の右側に帯状の第3中継バスバー73が設けられている。第1中継バスバー71は、第1バスバー312及び第2中継バスバー72と対向する位置に配置され、第1バスバー312の左端部から第2中継バスバー72の中央付近までとほぼ同じ長さに形成されている。また、第3中継バスバー73は、第2中継バスバー72及び第2バスバー313と対向する位置に配置され、第1バスバー312の左端部から第2中継バスバー72の中央付近までとほぼ同じ長さに形成されている。
【0138】
複数の加熱線6は、4つの部分により構成されている。すなわち、複数の加熱線6は、それぞれ、第1バスバー312と第1中継バスバー71とを接続する第1部分601、第1中継バスバー71と第2中継バスバー72とを接続する第2部分602、第2中継バスバー72と第3中継バスバー73とを接続する第3部位603、及び第3中継バスバー73と第2バスバー313とを接続する第4部分604により構成されている。複数の第1部分601は、第1バスバー312から上方に向かって概ね平行に延びており、第1中継バスバー71の左半分に接続されている。複数の第2部分602は、第1中継バスバー71の右半分から下方に向かって概ね平行に延びており、第2中継バスバー72の左半分に接続されている。また、複数の第3部分603は、第2中継バスバー72の左半分から上方に向かって概ね平行に延びており、第3中継バスバー73に接続されている。そして、複数の第4部分604は、第3中継バスバー73の右半分から下方に向かって概ね平行に延びており、第2バスバー213に接続されている。
【0139】
以上の例では、第1バスバー312と第2バスバー313との間に、3つの中継バスバー71~73を設け、これらを介して並列に配置された複数の加熱線6が第1バスバー312と第2バスバー313とを接続するように構成されている。したがって、第1バスバー312と第2バスバー313との間の加熱線6の長さを長くすることができる。これらによって、各加熱線6における発熱量を小さくすることができる。
【0140】
なお、この例では、両バスバー312,313を下辺12に沿って配置しているが、上辺11に沿って配置することもできる。すなわち、
図23から両バスバー312,313及び3つの中継バスバー71~73を上下反対の位置に配置することができる。また、中継バスバーの数は特には限定されず、2つ、または4以上設けることもでき、すべての中継バスバーを通過して加熱線の両端部が第1バスバー312及び第2バスバー313に接続されていればよい。
【0141】
<5-14>
上述した例では、合わせガラスをウインドシールドに適用した例を示したが、これをサイドガラスに適用することもできる。
図24に示すように、このサイドガラスを構成する各ガラス板1,2は、ともに、上辺11、下辺12、前側辺13、後側辺14を備える矩形状に形成されている。なお、両ガラス板1,2は同形状であるため、以下では、各辺を示す符号11~14は、各ガラス板1,2で同じものを用いることとする。ここで、矩形状とは、外形上、上辺11、下辺12、前側辺13、後側辺14が特定できるような形状を意味し、必ずしも矩形である必要はない。
【0142】
上辺11と下辺12とは平行に形成されており、上辺11が下辺12よりも短くなっている。前側辺13は、下辺12の前端から後方に向かって傾斜するように上方へ延びる第1部位131と、第1部位131の上端からさらに後方に向かって傾斜するように延びる第2部位132とを備えている。また、後側辺14は、前側辺13の第1部位131とほぼ平行に、下辺12の後端から後方に向かってやや湾曲しながら傾斜するように上方へ延びている。したがって、上辺11の後端は、下辺12の後端よりもやや後方に位置している。また、上述したように、内側ガラス板2の下辺の前端部及び後端部には、円弧状の切欠き部21,22がそれぞれ形成されている。以下では、内側ガラス板2の前端部に形成された切欠き部を第1切欠き部21、後端部に形成された切欠き部を第2切欠き部22と称することとする。
【0143】
上記外側ガラス板1及び内側ガラス板2により構成されるサイドガラスは、車両のドアに取り付けられるものであるが、ドアの内部に設けられた図示を省略する昇降モジュール(レギュレータ)によって支持され、昇降するようになっている。そして、サイドガラスが上昇し、窓が閉じた状態となっているときには、サイドガラスの下辺12は、ドアのベルトモールBよりも下方に位置するようになっている。したがって、サイドガラスの下辺12は、窓の開閉にかかわらず、車外及び車内から見えないようになっている。また、サイドガラスが上昇する過程では、前側辺13の第1部位131及び後側辺14は、ドアフレームのガイド(例えば、サッシュ部)に支持され、このガイドに沿って上下動する。したがって、前側辺13の第1部位131及び後側辺14は、ガイドに収容されているため、車外及び車内からは見えないようになっている。そして、窓が閉じた状態となったときには、前側辺13の第2部位132及び上辺11も、ドアフレーム内に収容され、車外及び車内からは見えないようになっている。
【0144】
続いて、両ガラス板1,2の間に配置される中間膜について説明する。この中間膜も上記実施形態と同様に、接着層及び発熱層を有しているが、接着層の構成はほぼ同じであるため、以下では発熱層について説明する。発熱層31は、シート状の基材311と、この基材311上に配置される、第1バスバー312、第2バスバー313、及び複数の加熱線314を備えている。基材311は、上記ガラス板1,2と対応する形成することができるが、必ずしも両ガラス板1,2と同形状でなくてもよく、両ガラス板1,2よりも小さい形状であってもよい。例えば、
図1に示すように、上下方向には、内側ガラス板2の切欠き部21,22と干渉しないように、ガラス板1,2の上下方向の長さよりも短くすることができる。また、基材311の左右方向の長さも両ガラス板1,2の幅よりも短くすることができる。
【0145】
各バスバー312,313は帯状に形成されており、第1バスバー312は、基材311上で、ガラス板1,2の前側辺13の第1部位131に沿って延びるように形成されている。一方、第2バスバー313は、基材311上で、ガラス板1,2の後側辺14に沿って延びるように形成されている。但し、各バスバー312,313の下端部は、中間膜3が両ガラス板1,2に挟持されたときに、上述した切欠き部21,22から、それぞれ露出しないように、切欠き部21,22よりも上方に配置される。なお、各バスバー312,313の前後の幅は、概ね上述したとおりである。
【0146】
複数の加熱線314は、両バスバー312,313を結ぶように、前後方向に延びるように形成されている。また、複数の加熱線314は並列に延びるように形成されているが、すべてが平行に配置されているわけではない。例えば、最下部に配置された加熱線は、第1バスバー312の下端部と第2バスバー313の下端部とを結ぶように下辺12に沿って延びているが、最上部に配置されている加熱線314は、第1バスバー312の上端部から前側辺13の第2部位132及び上辺11に沿って、第2バスバー313の上端部まで延びている。すなわち、第1バスバー312が、第2バスバー313よりも上下方向の長さが短いため、複数の加熱線314は、隣接する加熱線314間の間隔が概ね広がるように後方に向かって延びている。したがって、複数の加熱線314の長さは相違している。但し、複数の加熱線314の長さを同じにすることもできる。
【0147】
そして、このサイドガラス内の発熱量を変化させることもできる。例えば、ドアミラーが配置される前側辺13側の発熱量を大きくし、他を小さくすることもできる。そのためには、上述したように、加熱線314の幅、間隔などを適宜変更することができる。
【0148】
<5-15>
以上の加熱線の態様をまとめると、以下の通りである。
(1) 加熱線の間隔が上方から下方にいくにしたがって広がる場合には、加熱線の幅は下方にいくにしたがって狭くなる。反対に、加熱線の間隔が上方から下方にいくにしたがって狭くなる場合には、加熱線の幅は下方にいくにしたがって広くなる。
(2) 加熱線の間隔が一定である場合、すなわち、加熱線が平行に配置されている場合には、各加熱線の幅は、一定である。
(3) 加熱線の長さに差がある場合、短い加熱線の幅は、長い加熱線の幅よりも小さくなる。
【0149】
これら(1)~(3)を適宜組み合わせた加熱線を配置することができる。加熱線の長さについては、上記のような遮蔽領域、窓部を設けることによって、長さが変わるほか、ガラス板の形状などによって一部の加熱線の長さを変更することができる。
【0150】
図1に示す例では、合わせガラスが台形状に形成され、下方にいくにしたがって加熱線314間の間隔が大きくなるため、両側に配置されている加熱線314の長さは、中央側に配置されている加熱線314の長さよりも若干長くなる。そのため、上記(3)にしたがって、両側の加熱線314の幅を、中央側の加熱線314の幅よりも大きくすることができる。
【0151】
また、上記(1)~(3)を適宜組み合わせた加熱線を配置することで、合わせガラス内の複数の領域の発熱量を異なるようにすることができる。
【0152】
また、すべての加熱線の長さが相違していなくてもよく、例えば、上記実施形態においては、左右対称であるため、左右方向の中心を挟んで配置される加熱線は互いに同じ長さになることがある。同様に、上記(1)~(3)の態様もすべての加熱線に適用しなくてもよく、一部のみであってもよい。
【0153】
また、合わせガラスの形状は、上記のような台形ではなく、上辺と下辺とが同じ長さであってもよい。この場合は、加熱線は、平行に配置することができる。
【0154】
<5-16>
上記実施形態では、本発明の合わせガラスを自動車のウインドシールドに適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、電車などの他の乗り物、建物の窓ガラスなどに適用することもできる。
【符号の説明】
【0155】
1 外側ガラス板
2 内側ガラス板
3 中間膜
31 発熱層
311 基材
312 第1バスバー
313 第2バスバー
314 加熱線