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特開2023-298643次元的に積層造形体を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029864
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】3次元的に積層造形体を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/02 20060101AFI20230228BHJP
   B22C 1/22 20060101ALI20230228BHJP
   B22C 9/10 20060101ALI20230228BHJP
   B22C 9/12 20060101ALI20230228BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20230228BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230228BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20230228BHJP
【FI】
B22C9/02 103Z
B22C1/22 C
B22C9/10 E
B22C9/12 Z
B29C64/165
B33Y10/00
B33Y70/10
【審査請求】有
【請求項の数】45
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185854
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2019564105の分割
【原出願日】2018-06-05
(31)【優先権主張番号】102017112681.3
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516319588
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ASK CHEMICALS GMBH
【住所又は居所原語表記】Reisholzstrasse 16-18, 40721 Hilden (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】フルケス,ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】バルテルス,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,イェンス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基材鋳型材料および酸または樹脂成分からなる、印刷されていない付着性の混合物から、容易にかつ鋭い輪郭を伴って取り除かれることが可能な3次元造形体を層ごとに製造することを可能にする、3次元造形体を層ごとに構築するための結合剤を提供する。
【解決手段】結合剤は、少なくとも1つのフラン樹脂と、樹脂成分に対して29~49重量%のモノマー性フルフリルアルコールと、酸とを含有する樹脂成分を用いて、層ごとに構築することによって積層造形体を3次元的に製造する。少なくとも1つの基材鋳型材料層を吐出することと、前記結合剤層の少なくとも1つの成分を塗布することとの順番が段階的に繰り返される方法である。この方法で製造される造形体は、とりわけ、金属鋳造用の鋳造型および鋳造中子として好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化した3次元造形体を層ごとに構築するための方法であって、耐火性基材鋳型材料は、基材鋳型材料層を生成するために層ごとに吐出され、結合剤の少なくとも1つの成分は、前記耐火性基材鋳型材料とは別に、前記基材鋳型材料に対して層ごとに、プリントヘッドによって選択的に塗布され、
前記結合剤は、
a)少なくともアルデヒド化合物およびフルフリルアルコールからの反応生成物としてのフラン樹脂、ならびに所望により窒素を含有する化合物、および/またはフェノール化合物を含む樹脂成分であって、前記樹脂成分の窒素含有量が5重量%未満であり、前記樹脂成分が、前記樹脂成分に対して29~49重量%のモノマー性フルフリルアルコールを含む、樹脂成分と、
b)触媒成分としての酸との、少なくとも2つの成分を含み、
少なくとも1つの前記基材鋳型材料層を吐出することと、前記結合剤層の少なくとも1つの成分を塗布することとの順番が段階的に繰り返される、方法。
【請求項2】
(A)少なくとも前記耐火性基材鋳型材料および前記酸が、前記基材鋳型材料層を形成するように、前記耐火性基材鋳型材料が、添加される前記酸と共に層ごとに吐出され、前記樹脂成分が前記基材鋳型材料層に前記プリントヘッドによって層ごとに塗布されるか、または、
(B)少なくとも前記耐火性基材鋳型材料および前記樹脂成分が、前記基材鋳型材料層を形成するように、前記耐火性基材鋳型材料が、添加される前記樹脂成分と共に層ごとに吐出され、前記酸が前記基材鋳型材料層に前記プリントヘッドによって層ごとに塗布されるかのいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記樹脂成分が、10重量%超かつ45重量%未満のモノマー性フルフリルアルコールを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂成分が、15重量%超かつ40重量%未満のモノマー性フルフリルアルコールを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記樹脂成分が、15重量%超かつ90重量%未満の前記フラン樹脂を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂成分が、25重量%超かつ80重量%未満の前記フラン樹脂を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フラン樹脂は、フルフリルアルコールおよびホルムアルデヒド、ならびに場合により尿素などの窒素を含有する化合物からの反応生成物であり、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドのモル比が1以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
フルフリルアルコールとホルムアルデヒドの前記モル比が、1:0.3~1:0.7である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ホルムアルデヒドおよびフルフリルアルコールから前記反応生成物を生成するための前記酸触媒が、2.7~6のpKa値を有する酸である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ホルムアルデヒドおよびフルフリルアルコールから前記反応生成物を生成するための前記酸触媒が、3~5のpKa値を有する酸である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ホルムアルデヒドおよびフルフリルアルコールから前記反応生成物を生成するための前記酸触媒が、乳酸またはアジピン酸、ならびにそれらの組み合わせである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂成分が0~25重量%のホルムアルデヒドと尿素との反応生成物を含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂成分が3~15重量%のホルムアルデヒドと尿素との反応生成物を含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記窒素を含有する化合物が尿素であり、および/または、前記樹脂成分中の窒素の総量が5重量%未満となるように、前記窒素を含有する化合物の量が選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記窒素を含有する化合物が尿素であり、および/または、前記樹脂成分中の窒素の総量が2重量%未満となるように、前記窒素を含有する化合物の量が選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂成分中の水の総量は、最大40重量%である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記樹脂成分中の水の総量は、最大30重量%である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記樹脂成分が、1~25個の炭素原子を有する、フルフリルアルコールでない有機溶媒をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記有機溶媒がエタノールである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記有機溶媒の量が30重量%の量を超えない、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記有機溶媒の量が20重量%の量を超えない、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記樹脂成分が、25℃で2mPas~70mPasの粘性を有する(DIN EN ISO 2555、Brookfield、25℃)、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記樹脂成分が、25℃で5mPas~50mPasの粘性を有する(DIN EN ISO 2555、Brookfield、25℃)、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
20℃での前記樹脂成分が、10mN/m~70mN/mの表面張力を有し、Kruss K100 force tensiometerによりウィルヘルミープレート法によって20℃で測定される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
20℃での前記樹脂成分が、20mN/m~50mN/mの表面張力を有し、Kruss K100 force tensiometerによりウィルヘルミープレート法によって20℃で測定される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記樹脂成分の量が、前記耐火性基材鋳型材料に対して0.1重量%~5.3重量%の間であるか、または、前記鋳型材料混合物に対して0.1重量%~5重量%の間である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記樹脂成分の量が、前記耐火性基材鋳型材料に対して0.5%~3.1重量%の間であるか、または、前記鋳型材料混合物に対して0.5重量%~3重量%の間である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記樹脂成分を硬化するために使用される前記酸が、25℃で4未満のpKa値を有する有機酸もしくは無機酸、またはそれらの混合物である、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記樹脂成分を硬化するために使用される前記酸が、25℃で1.5未満のpKa値を有する有機酸もしくは無機酸、またはそれらの混合物である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記結合剤の前記酸成分が、p-トルエンスルホン酸、硫酸、もしくは乳酸、またはこれらの混合物である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記酸の量が、前記耐火性基材鋳型材料に対して0.1重量%~3.1重量%の間の酸であるか、または、前記鋳型材料混合物に対して0.1重量%~3重量%の間である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記酸の量が、前記耐火性基材鋳型材料に対して0.1%~2.1重量%の間の酸であるか、または、前記鋳型材料混合物に対して0.1重量%~2重量%の間である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記耐火性基材鋳型材料が、ケイ砂、ジルコニウム砂、クロム鉱石砂、かんらん石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土、ガラスパール、ガラス顆粒、ケイ酸アルミニウム微小球、およびそれらの混合物からなる群の1つ以上の構成成分を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記耐火性基材鋳型材料が、30μm~500μmの間の平均粒子径を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記耐火性基材鋳型材料が、50μm~250μmの間の平均粒子径を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記耐火性基材鋳型材料が、前記鋳型材料混合物に対して80重量%超で使用される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記耐火性基材鋳型材料が、前記鋳型材料混合物に対して95重量%超で使用される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記酸が層ごとに吐出された前記耐火性基材鋳型材料に添加され、混合物が前記酸および前記基材鋳型材料から生成され、前記酸および前記基材鋳型材料からなる前記混合物の選択された領域が前記樹脂成分と共に選択的に印刷される前の、前記酸および前記基材鋳型材料からなる前記混合物の層厚さが、0.03mm~3mmである、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記酸が層ごとに吐出された前記耐火性基材鋳型材料に添加され、混合物が10℃~45℃で前記酸および前記基材鋳型材料から生成され、前記酸および前記基材鋳型材料からなる前記混合物の選択された領域が前記樹脂成分と共に選択的に印刷される前の、前記酸および前記基材鋳型材料からなる前記混合物の層厚さが、0.03mm~1.5mmである、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記プリントヘッドの温度が20℃~80℃の間である、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
i)層ごとの構築が完了した後、オーブン内で、または電子レンジにかけることによって本体を硬化するステップと、続いて、
ii)前記酸または前記樹脂成分、および前記基材鋳型材料からなる印刷されていない前記混合物を、少なくとも部分的に硬化された鋳造型から取り出すステップと、をさらに含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記プリントヘッドが複数のノズルを有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記複数のノズルが、選択的に単独で制御可能であって、前記プリントヘッドがインクジェットまたはピエゾシステムを備えるドロップ・オン・デマンド型プリントヘッドである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記プリントヘッドがコンピュータによって少なくとも1つの平面上で移動可能に制御され、前記ノズルが少なくとも1つの成分を層ごとに塗布し、および/または前記プリントヘッドが加熱可能である、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記硬化した3次元造形体が鋳型または中子である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのフラン樹脂と、5重量%超および50重量%未満のモノマー性フルフリルアルコールと、酸とを含有する樹脂成分を用いて、層ごとに構築することによって積層造形体を3次元的に製造するための方法に関する。この方法で製造される造形体は、とりわけ、金属鋳造用の鋳造型および鋳造中子として好適である。
【背景技術】
【0002】
3次元的に造形された物体を層ごとに構築するための、さまざまな方法が知られている。これらの方法の助けを借りれば、最も複雑な形状を有する物体であっても、CADデータから3D印刷によって成形ツールなしで直接層ごとに製造することができる。これは、鋳型を必要とする従来の方法では不可能である。
【0003】
特許文献1は、層ごとに構築するためのさまざまな結合剤について開示している。とりわけ、結合剤成分として、少なくとも50%のフルフリルアルコールおよび最大4%のエチレングリコールを有するフラン樹脂(これ以上説明はしない)を使用することについても言及している。結合剤の樹脂成分を、固まっていない基材鋳型材料の作業面全体に対して層ごとに吹き付け、続いて層ごとにも硬化させるが、有機酸などの硬化剤を選択的に塗布することを伴う。
【0004】
特許文献2は、液体結合剤と、とりわけまたこれ以上説明はしないフラン樹脂との両方、ならびに液体硬化剤を、樹脂成分、続いて硬化剤の順番で、硬化させるべき断面に選択的にかつ層ごとに連続して塗布するという点でこの方法を変化させている。
【0005】
特許文献3によれば、結合剤の樹脂成分をプリントヘッドによって層ごとに塗布はせず、むしろ基材鋳型材料と直接混合して、基材鋳型材料と共に層ごとに塗布する。続いて、樹脂成分および基材鋳型材料からなるこの混合物を、硬化剤を選択的に塗布することによって硬化させる。
【0006】
特許文献4では、添加する順番が逆転している。最初に、基材鋳型材料を硬化剤と予備混合し、続いて樹脂成分を層ごとに選択的に塗布する。とりわけ、水性p-トルエンスルホン酸などの酸が硬化剤として記載されており、再びなかでもフラン樹脂が樹脂成分として記載されているが、再度さらに特定すると、少なくとも50%のフルフリルアルコールを有するフラン樹脂を使用している。
【0007】
特許文献5には、基材鋳型材料を、アルカリフェノール樹脂、エステルおよび所望により無機添加剤によって層状に硬化する方法が記載されている。
【0008】
特に、特許文献4に相当する酸/フラン樹脂系、および特許文献5に相当するエステル/アルカリフェノール樹脂系は、成形体の層ごとの構築においては実際にある程度受け入れられてきており、新しい鋳造部品の開発で、および個々の部品または小規模なシリーズの製造で、成形ツールを伴う従来の製造があまりに複雑かつ高価となる場合、またはそれぞれ複雑な中子パッケージでのみ表すことができる場合に使用されている。
【0009】
特に、酸/フラン樹脂系は、この方法に従って製造される造形体を、基材鋳型材料および酸または樹脂成分からなる、付着性の、かつ印刷されていない混合物から、複雑な方法で最初に取り除かなければならないという欠点がある。この作業を行う個人は、塵埃ならびに溶媒および結合剤の蒸気に暴露される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2001/068336A2号
【特許文献2】欧州特許第1268165B1号
【特許文献3】欧州特許第1509382B1号
【特許文献4】欧州特許第1638758B1号
【特許文献5】独国特許出願公開第102014106178A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、基材鋳型材料および酸または樹脂成分からなる、印刷されていない、付着性の混合物から、容易にかつ鋭い輪郭を伴って取り除かれることが可能な3次元造形体を、層ごとに製造することを可能にする、3次元造形体を層ごとに構築するための結合剤を提供することである。大幅に時間を節約すること以上に、この場合、溶媒および結合剤の蒸気への暴露が低減されるということが追加の利点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、少なくとも以下を含む結合剤が見出された:
(a)少なくとも1つのアルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドを、フルフリルアルコールおよび場合により追加のモノマー、ならびに樹脂成分に対して5重量%超、好ましくは10重量%超、および特に好ましくは15重量%超、ならびに50重量%未満、好ましくは45重量%未満、および特に好ましくは40重量%未満のモノマー性フルフリルアルコールと反応させることによって得られる、少なくとも1つのフラン樹脂を含有する、樹脂成分と、
(b)酸であって、
酸および基材鋳型材料、または樹脂成分および基材鋳型材料からなる印刷されていない混合物による、この方法で製造される造形体に対する付着の問題を著しく低減させる、酸。
【0013】
これらの、およびその他の目的は、独立請求項の主題によって達成され、有利な発展形は、従属請求項の主題であるか、または下記に記載されている。
【0014】
したがって、本発明は、酸、ならびに少なくとも1つのフラン樹脂を含み、樹脂成分に対し、一方では5重量%超、好ましくは10重量%超、および特に好ましくは15重量%超のフルフリルアルコール、ならびに他方では50重量%未満、好ましくは45重量%未満、および特に好ましくは40重量%未満のモノマー性フルフリルアルコールをそれぞれの場合で含有する樹脂成分を含む、結合剤を含む。
【0015】
フラン樹脂は、フルフリルアルコールと共に、ならびに場合により追加のモノマー、例えば特に尿素、フルフリルアルコール誘導体(したがって定義上、フルフリルアルコール誘導体はフルフリルアルコール自体に含まれない)および/またはフェノール誘導体と共に、アルデヒド化合物(類)、特にホルムアルデヒドから構成されるという点を特徴とする。この場合、フラン樹脂は、使用される全てのモノマーに対して、全体的に60重量%超、好ましくは70重量%超、および特に好ましくは80重量%超でのモノマーとして、フルフリルアルコールおよびホルムアルデヒドから特に構成される。
【0016】
この結合剤によって、3‐Dプリンターのいわゆるジョブボックスを、より効率的に空間的に使用することができる。すなわち、砂の付着する傾向が低減すると、造形体の「融合」が妨げられるため、造形体を空間内で互いにより近づけて製造することができる。また、これにより、基材鋳型材料および酸または樹脂成分からなる、固まっていない、未印刷の混合物の再使用可能性が著しく増大する。モノマー性フルフリルアルコールの割合を低減させると、印刷プロセスの際に、いわゆるジョブボックス内部のフルフリルアルコールの蒸気を著しく低減させることができ、設置スペースおよびプリントヘッドにおける不純物を最小化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
驚くべきことに、フラン樹脂と、(樹脂成分に対して)50重量%未満、好ましくは45重量%未満、および特に好ましくは40重量%未満のモノマー性フルフリルアルコールと、酸とを含有する樹脂成分によって製造される3次元造形体は、3次元造形体を層ごとに製造することによる3‐D印刷方法を用いる場合、少なくとも50重量%のモノマー性フルフリルアルコールを有するフラン樹脂からなる系によって製造された造形体よりも、基材鋳型材料および酸または樹脂成分からなる印刷されていない混合物の付着がより著しく少ないということを明示することが見出された。
【0018】
本発明による方法は、第1の好ましい代替案による次のステップを含む:
ia)特に10~45℃の温度で、耐火性基材鋳型材料および酸からなる混合物を生成するステップであって、鋳型材料混合物に対して好ましくは80重量%超、特に90重量%超、特に好ましくは95重量%超の耐火性基材鋳型材料が使用され、耐火性基材鋳型材料に対して0.1重量%~3.1重量%の間、好ましくは0.1重量%~2.6重量%の間、および特に好ましくは0.1%~2.1重量%の間の酸が使用されるか、または0.1重量%~3重量%の間、好ましくは0.1重量%~2.5重量%の間、および特に好ましくは0.1重量%~2重量%の間が鋳型材料混合物に対して使用される、ステップと、
ib)基材鋳型材料層として0.03mm~3mm、好ましくは0.03~1.5mmの層厚さを有する、酸および耐火性基材鋳型材料からなる(固まっていない)混合物を、層ごとに延展するステップと、
ic)少なくとも酸および基材鋳型材料からなる延展された混合物の選択された領域を、樹脂成分と共に印刷するステップであって、樹脂成分の量は、鋳型材料混合物に対して0.1重量%~5重量%の間、好ましくは0.3重量%~4重量%の間、および特に好ましくは0.5重量%~3重量%の間であり、プリントヘッドの温度が好ましくは20~80℃の間である、ステップと、
id)ステップib)およびic)を複数回繰り返す、ステップ。
【0019】
本発明による方法は、第2の代替案による次のステップを含む:
iia)特に10~45℃の温度で、耐火性基材鋳型材料および樹脂成分からなる混合物を生成するステップであって、鋳型材料混合物に対して、好ましくは80重量%超、特に90重量%超、特に好ましくは95重量%超の耐火性基材鋳型材料が使用され、耐火性基材鋳型材料に対して、0.1重量%~5.3重量%の間、好ましくは0.3重量%~4.3重量%の間、および特に好ましくは0.5%~3.1重量%の間の樹脂成分が使用されるか、または0.1重量%~5重量%の間、好ましくは0.3重量%~4重量%の間、および特に好ましくは0.5重量%~3重量%の間が鋳型材料混合物に対して使用される、ステップと、
iib)基材鋳型材料層として0.03mm~3mm、好ましくは0.03~1.5mmの層厚さを有する、樹脂成分および基材鋳型材料からなる(固まっていない)混合物を、層ごとに延展するステップと、
iic)樹脂成分および基材鋳型材料からなる、延展された混合物の選択された領域を酸と共に印刷するステップであって、酸の量は、鋳型材料混合物に対して0.1重量%~3重量%の間、好ましくは0.1重量%~2.5重量%の間、および特に好ましくは0.1重量%~2重量%の間であり、プリントヘッドの温度が好ましくは20~80℃の間である、ステップと、
iid)ステップiib)およびiic)を複数回繰り返す、ステップ。
【0020】
本発明による方法は、第3の代替案による次のステップを含む:
【0021】
上記の第1および第2の代替案の方法ステップであって、ただし、基材鋳型材料および任意の添加剤だけが層ごとに(基材鋳型材料層として)延展され、酸および樹脂成分が、全て上記で示されたそれぞれの濃度で、2つの別々のプリントヘッドによって添加され、適用可能である場合、ただ1つのプリントヘッドのみが選択的に、およびその他が広範囲に塗布する、ステップ。
【0022】
「鋳型材料混合物」は、硬化する直前の成分の全てを含有する全体的な組成物であると理解されるが、少なくとも樹脂成分、酸および基材鋳型材料が対応する体積の一部に存在し、その結果体積の一部が硬化することができる程度に限る。
【0023】
酸または樹脂成分を含有しないジョブボックス内の体積の一部は、鋳型材料混合物によるものではなく、しかしその代わりに、耐火性基材鋳型材料および樹脂成分からなる混合物、または耐火性基材鋳型材料および酸からなる混合物として識別される。この混合物はまた、その他の成分(ただし酸または樹脂成分のどちらも含まない)を常に含有し得る。硬化する直前の、その後全体的に硬化される鋳型、またはそれぞれ硬化される中子を生成するその他の成分の全てを含む、この混合物に酸を加えたもの(第1の場合)、または樹脂成分を加えたもの(第2の場合)のどちらか一方が、鋳型材料混合物である。
【0024】
個々の成分を以下に記載する。
【0025】
(1)耐火性基材鋳型材料
任意の粒子状固形物を、耐火性基材鋳型材料として使用することができる。耐火性基材鋳型材料は、自由流動性の状態にある。鋳造型を製造するための耐火性基材鋳型材料として、従来の、よく知られた材料を、純粋な形態で、ならびにそれらの混合物の形態で使用することができる。例えば、ケイ砂、ジルコニウム砂またはクロム鉱石砂、かんらん石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土、および人工的に製造されるか、またはそれぞれ(中空微小球体などの)合成材料から得られる耐火性基材鋳型材料が好適である。
【0026】
高融点(融解温度)を有する材料は、耐火性基材鋳型材料であると考えられる。好ましくは、耐火性基材鋳型材料の融点は、600℃より高く、好ましくは900℃より高く、特に好ましくは1200℃より高く、および特に好ましくは1500℃より高い。
【0027】
基材鋳型材料は、好ましくは80重量%超、特に90重量%超、特に好ましくは95重量%超の鋳型材料混合物を含む。
【0028】
耐火性基材鋳型材料の平均直径は、一般に30μm~500μmの間、好ましくは40μm~400μmの間、および特に好ましくは50μm~250μmの間である。粒子サイズは、例えばDIN ISO 3310に従いふるい分けすることによって測定することができる。
【0029】
(2)結合剤
結合剤は、少なくとも樹脂成分と、樹脂成分を硬化させるための触媒としての酸とを含む多成分系である。
【0030】
成分を、以下でさらに詳細に記載する。
【0031】
(2a)樹脂成分
樹脂成分は、少なくとも以下の構成成分を含む:
i)ガスクロマトグラフィーによって測定される、樹脂成分に対して5重量%超、好ましくは10重量%超、および特に好ましくは15重量%超、ならびに50重量%未満、好ましくは45重量%未満、および特に好ましくは40重量%未満のモノマー性フルフリルアルコールと、(VDGメモ70頁「Bindemittelprufung,Prufung von flussigen saurehartbaren Furanharzen」、第3版、1989年4月を参照のこと)
【0032】
ii)樹脂成分に対して15重量%超、好ましくは20重量%超、および特に25重量%超、ならびに90重量%未満、好ましくは85重量%未満、および特に80重量%未満のフラン樹脂。
フラン樹脂は、アルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドとフルフリルアルコールとの反応生成物である。加えて、アルデヒド化合物とフルフリルアルコールとを反応させるときに、例えば尿素などの窒素を含有するモノマー、フルフリルアルコール誘導体および/またはフェノール化合物などのその他のモノマーを反応させることができる。この反応は、好ましくは25℃で2.5以上のpK値を有する、好ましくは2.7~6のpK値を有する、および特に好ましくは3~5のpK値を有する酸触媒の存在下で生じる。好ましくは、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとの反応生成物が使用され、ここで、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとのモル比は1以上であり、好ましくは1:0.2~1:0.9の間、好ましくは1:0.2~1:0.8の間、および特に好ましくは1:0.3~1:0.7の間である。この場合、モノマーとして使用されるフルフリルアルコールおよびホルムアルデヒドの総量は、使用される全てのモノマーに対して、60重量%より多く、好ましくは70重量%より多く、および特に好ましくは80重量%より多い。
好ましくは25℃で2.5以上のpK値を有する、好ましくは2.7~6のpK値を有する、および特に好ましくは3~5のpK値を有する弱酸、それらの混合物、ならびにそれらの塩が、フルフリルアルコールとホルムアルデヒドとを反応させるための酸触媒として使用される。これには、好ましくは安息香酸、乳酸、アジピン酸、クエン酸またはサリチル酸などの有機酸が挙げられる。金属塩の一例として、酢酸亜鉛が挙げられる。
上記の反応生成物の種類および生成は、例えば独国実用新案第202011110617U1号および独国特許出願公開第102014002679A1号の主題である。
【0033】
iii)さらに、窒素を含有するモノマー、および場合によりフルフリルアルコールまたはフルフリルアルコール誘導体と、アルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドとの反応から得られるポリマーの、樹脂成分に対して追加の0~25重量%、好ましくは1~20重量%、および特に3~15重量%を、さらなる構成成分として樹脂成分に添加することができる。特に、これらはアルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドと、窒素を含有する化合物、好ましくは尿素との反応生成物であり、ここで、尿素とホルムアルデヒドとのモル比は1以下であり、好ましくは1:1~1:5の間、好ましくは1:1~1:4の間、および特に好ましくは1:1.2~1:3の間である。
好ましくは25℃で2.5以下のpK値を有する、好ましくは2.5~3のpK値を有する、および特に好ましくは2~0のpK値を有する強酸、それらの混合物、ならびにそれらの塩が、尿素とホルムアルデヒドとを反応させるための酸触媒として使用される。これには、好ましくはp-トルエンスルホン酸またはリン酸ナトリウムなどのリン酸の塩が挙げられる。
iii)の下に記載される樹脂成分の構成成分を使用することにより、層ごとに構築することによって製造される造形体の強度の発達にプラスの効果があり、好ましい実施形態では、これらは示された制限内での樹脂成分の構成成分である。
【0034】
iv)所望により、アルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドと、フェノール化合物、特にフェノール自体との反応生成物の、樹脂成分に対して追加の0重量%~25重量%、好ましくは0重量%~20重量%、および特に0重量%~15重量%を、塩基的に触媒作用を受けたレゾール樹脂の形態でのポリマーとして樹脂成分に添加することができる。
【0035】
v)所望により、樹脂成分に対して、0重量%~25重量%、好ましくは0重量%~20重量%、および特に0.2重量%~15重量%の量の可塑剤または硬化調整剤を、樹脂成分に添加することができる。
【0036】
vi)所望により、樹脂成分に対して0~5重量%、好ましくは0.01%~2重量%の間、および特に好ましくは0.05%~1重量%の間の量の表面改質剤を、樹脂成分に添加することができる。
【0037】
フルフリルアルコール自体に加えて、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランのメチルエーテルもしくはエチルエーテル、または5-ヒドロキシメチルフルフラールなどのフルフリルアルコール誘導体を使用することができる。
【0038】
一般に、式R-CHOのアルデヒドがアルデヒドとして使用され、式中、Rは水素原子、または好ましくは1~8個、特に好ましくは1~3個の炭素原子を有する炭素原子残基である。
【0039】
例としては、例えば水溶液の形態でのホルムアルデヒド、または、トリオキサンもしくはp-ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、フルフリルアルデヒド(フルフラール)、ブチルアルデヒド、グリオキサールの形態でのポリマー、およびそれらの混合物である。ホルムアルデヒド、または(アルデヒドのモル量に対して)主にホルムアルデヒドを含有する混合物が特に好ましい。
【0040】
好適な窒素を含有する化合物は、例えば、尿素自体、メラミンもしくはエチレン尿素などの尿素誘導体、またはアンモニアおよびトリエチルアミンなどのアミン、モノエタノールアミンもしくは2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどのアミノアルコールである。尿素、トリエチルアミンまたはモノエタノールアミン、特に尿素が、特に好ましい実施形態において使用される。
【0041】
これらの窒素を含有する化合物は、フルフリルアルコールもしくはフルフリルアルコール誘導体、およびアルデヒド化合物と、もしくはそれらの前縮合物と直接反応させられることが可能であり、または、好ましい変形形態では、特に、好ましくは尿素自体などの尿素誘導体の形態で、独立した前縮合物として添加され、アルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドと縮合し、所望により、好ましくはフルフリルアルコールもしくはフルフリルアルコール誘導体と縮合する。
【0042】
Kjeldahl(DIN 16916-02-B2またはVDGメモランダム70頁による)に従って測定された樹脂成分の全体的な窒素含有量(N)が、5重量%未満、好ましくは3.5重量%未満、および特に好ましくは2重量%未満になるように窒素含有化合物の量が選択され、その結果、窒素の存在に起因する鋳造部品の表面傷が、低減されるかまたは回避される。
【0043】
好適なフェノール化合物は、1つ以上の芳香環およびこれらの環上の少なくとも1つのヒドロキシ置換によって特徴づけられる。フェノール自体に加えて、例としては、クレゾールもしくはノニルフェノール、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、カシューナット殻油、すなわち、カルダノールおよびカードルからなる混合物、もしくは1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などの置換フェノール、もしくはビスフェノールAなどのフェノール化合物、またはそれらの混合物である。フェノール成分として、フェノールが特に好ましい。
【0044】
これらのフェノールは、フルフリルアルコールおよびアルデヒド化合物、またはそれらの前縮合物と直接反応させられることが可能である。さらに、アルカリ性条件下で生成される、レゾール樹脂の形態のフェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物を、樹脂成分に添加することができる。
【0045】
樹脂成分中の遊離フェノールの全体的な含有量は、好ましくは1重量%未満である(ガスクロマトグラフィーによって測定される)。
【0046】
さらに、上述した樹脂成分を2mPas~70mPas、好ましくは5mPas~60mPas、および特に好ましくは5mPas~50mPas(Brookfield、25℃)の印刷プロセスに必要とされる粘度範囲まで希釈するために、樹脂成分は、水、またはエタノール、プロパノール、5-ヒドロキシ-1,3-ジオキサン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソランもしくはテトラヒドロフルフリルアルコールのようなアルコール、トリメチロールプロパンオキセタンなどのオキセタン、アセトンなどのケトン、もしくはトリアセチンおよびプロピレンカーボネートなどのエステルなどの、1~25個の炭素原子からなる、フルフリルアルコールではない有機溶媒などの追加の溶媒を含有し得る。水およびエタノール、ならびにそれらの混合物が特に好ましい。
【0047】
樹脂成分の全体的な含水量(DIN 51777に従ってカール‐フィッシャー滴定により測定される)が5重量%と40重量%未満との間、好ましくは5重量%~35重量%未満の間、特に、7重量%~30重量%未満の間となるように、樹脂成分に添加される溶媒(類)の量が選択され、フルフリルアルコールではない追加の溶媒または水の量は、それぞれの場合、樹脂成分に対して0重量%~30重量%の間、好ましくは0.5重量%~25重量%、および特に1重量%~20重量%である。
【0048】
さらに、樹脂成分は硬化調整剤または可塑剤などの追加の添加剤を含有し得る。これには、樹脂成分に対して0重量%~25重量%の量で、好ましくは0重量%~20重量%、および特に好ましくは0.2~15重量%の量で使用される、例えば2~12個の炭素原子を有するジオールまたはポリオール、脂肪酸、シリコーンもしくはフタレートが挙げられる。エチレングリコールなどのグリコール、ならびにオレイン酸などの脂肪酸が特に好ましい。
【0049】
既に述べた成分に加えて、樹脂成分は、例えばシランを含む表面改質剤(例えば欧州特許第1137500B1号による)などの、好適な添加剤を含有し得る。好適なシランとは、例えば、γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシ-シクロヘキシル)-トリメトキシシランおよびN-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの、アミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ヒドロキシシランならびにウレイドシラン、またはその他のポリシロキサンである。添加されるシランの量は、それぞれの場合、樹脂成分に対して、特に0重量%~5重量%の間、特に0.01重量%~2重量%の間、および特に好ましくは0.05重量%~1重量%の間である。
【0050】
上述したように、印刷媒体としての樹脂成分は、それぞれの場合、25℃で2mPas~70mPas、好ましくは5mPas~60mPas、および特に好ましくは5mPas~50mPasの粘度(Brookfield、25℃、スピンドル21、DIN EN ISO 2555)を有する。また、それらとは独立して、表面張力は10mN/m~70mN/m、好ましくは15mN/m~60mN/m、特に好ましくは15mN/m~55mN/m、および特に好ましくは20mN/m~50mN/mであり、20℃で測定したKruss K100 force tensiometerによって、ウィルヘルミープレート法を用いて測定される。表面張力を低下させるために、樹脂成分はさらに、アニオン性界面活性剤として、カルボキシレート、スルホネートもしくはナトリウム-2-エチルヘキシルサルフェートなどのサルフェート、カチオン性界面活性剤としてエステルクワットのような第四級アンモニウム化合物、もしくは非イオン性界面活性剤としてアルコール、エーテルもしくはポリアルキレングリコールエーテルのようなエトキシレートなどを有する、カチオン性、アニオン性、または非イオン性界面活性剤などの界面活性物質によって改質することができる。
【0051】
この文脈においては、印刷温度、すなわちプリントヘッドの温度は、室温に制限されないが、その代わり、20℃~80℃の間、特に20~40℃であることが可能であり、それにより、さらに高粘度の結合剤であっても、容易に印刷され得ることが言及される。
【0052】
それらとは独立して、樹脂成分の温度は、印刷中は15℃~80℃の間、特に20~40℃である。
【0053】
鋳型材料混合物中の樹脂成分の量は、鋳型材料混合物に対して0.1重量%~5重量%の間、好ましくは0.3重量%~4重量%の間、および特に好ましくは0.5重量%~3重量%の間である。
【0054】
(2b)
鋳造型を製造するための従来の酸またはそれらの混合物は、25℃で4未満のpK値を有する、好ましくは3.9以下のpK値を有する、好ましくは3未満のpK値を有する、および特に好ましくは1.5未満のpK値を有する、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸もしくは乳酸のような有機酸、ならびに硫酸もしくはリン酸のような無機酸、または種々の有機酸および無機酸の混合物などの、樹脂成分を硬化させるための触媒として使用することができる。
【0055】
水性p-トルエンスルホン酸、硫酸および/または水性乳酸、ならびにそれらの混合物が、酸として特に好ましい。
【0056】
鋳型材料混合物中の酸の量は、鋳型材料混合物に対して0.1重量%~3重量%の間、好ましくは0.1重量%~2.5重量%の間、および特に好ましくは0.1重量%~2重量%の間である。
【0057】
さらに、技術的な砂の特性を最適化するために、酸はその他の添加剤を有し得る。これには、例えば酸に対して0重量%~15重量%、好ましくは0重量%~10重量%、および特に0%~7重量%の量で使用されるグリコール、特にエチレングリコール、またはエタノールのようなアルコールなどの硬化調整剤が含まれる。
【0058】
(3)基材鋳型材料添加剤
所望により、鋳造欠陥を防止するために、酸化鉄、シリケート、アルミネート、中空微小球体、おがくず、もしくはデンプン、ならびにそれらの混合物などの有機添加剤または鉱物添加剤を(それぞれの場合、鋳型材料混合物に対して)10重量%未満の量で、好ましくは7重量%未満の量で、および特に好ましくは5重量%未満の量で鋳型材料混合物に添加することができる。
【0059】
本発明を、それらに制限されない試験例を参照して、以下で説明する。
【0060】
実施例
フラン樹脂の生成-樹脂1
フルフリルアルコール(79重量%)、パラホルムアルデヒド92%(12.1重量%)、アジピン酸(4.8重量%)、乳酸80%(0.7重量%)、尿素(1.7重量%)、水(1.7重量%)フルフリルアルコール2,370g、パラホルムアルデヒド363g、およびアジピン酸144gを、撹拌しながら添加する。続いて、21gの乳酸80%を添加し、反応バッチを110℃まで加熱する。約240分後、バッチを100℃まで冷却し、この温度でさらに120分間撹拌する。続いて、反応バッチを80℃まで冷却し、尿素51gおよび水51gを添加する。
【0061】
反応生成物の量は以下からなる。
フルフリルアルコール、ホルムアルデヒドおよび尿素:67重量%
モノマー性フルフリルアルコールの量: 22重量%
水の量: 11重量%
遊離ホルムアルデヒドの量: 0.3重量%
窒素の量: 0.8重量%
ii)項による樹脂成分の説明に従った構成成分
【0062】
ホルムアルデヒドと尿素との反応生成物-樹脂2
Hexion社による市販の製品を、ホルムアルデヒドと尿素との反応生成物として使用した。
Hexion社製Borden(商標)CPU 16147
ホルムアルデヒドと尿素との反応生成物の量**:65重量%
水の量:30重量%
遊離ホルムアルデヒドの量:0.3重量%
窒素の量:23重量%
【0063】
砂の付着する傾向に関して、以下で調査された樹脂成分の組成を表1に記載する。
**ii)項による樹脂成分の説明に従った構成成分
【0064】
【表1】
【0065】
付着の低減についての調査
酸および基材鋳型材料からなる混合物の、結合剤成分の全てを含有する硬化した鋳型材料混合物に対する付着の低減について調査するために、基材鋳型材料として3kgのケイ砂H32と、酸として基材鋳型材料に対して0.4重量%の65%p-トルエンスルホン酸とを、実験室条件下、Beba社によるパドル翼式混合器のボウル内で、75RPMにて1分間激しく混合した。(室温=砂の温度=20℃、湿度=30%)続いてこの混合物を、400mm×230mm×22.5mmの寸法を有する木型内で圧縮し、続いて樹脂成分0.5gを点状に細かく滴下した。再現性を確認するために、酸および基材鋳型材料からなる混合物の表面上の、総計8つの点において、この手順を行った。このようにして作成した木型を室温で24時間保存し、結合剤を硬化させた。続いて、酸および基材鋳型材料からなる固まっていない混合物から、基材鋳型材料/酸/樹脂成分からなる形成された中子を取り出し、重量測定的に評価した。
【0066】
この実験により、本発明による結合剤を使用することによって、砂の付着が著しく低減され得ることを実証することができた(表2)。これは、先行技術に記載されている結合剤系との比較において、大きな利点である。
【0067】
評価は、1(砂の付着が極めて少ない)から6(砂の付着が非常に多い)までの等級を基準とした。
【0068】
【表2】
a)モノマー性フルフリルアルコールの量は、フラン樹脂(樹脂1)を生成する間に反応しなかった未反応のフルフリルアルコールの量、および別々に添加されたフルフリルアルコールの量から構成される
b)この量は、樹脂1(上記を参照)のフルフリルアルコール、ホルムアルデヒドおよび尿素からの反応生成物の量に相当する
c)この量は、樹脂2(上記を参照)のホルムアルデヒドおよび尿素からの反応生成物の量に相当する
d)水の量は、樹脂1および樹脂2からの水の量、ならびに別に添加された水の量から構成される