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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029892
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】抗CD3抗体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230228BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230228BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230228BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230228BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230228BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230228BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230228BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230228BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K16/30
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12P21/08
A61P43/00 121
A61P37/02
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 L
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P19/02
A61P1/04
A61P7/04
A61P25/00
A61P17/06
A61P25/02
A61P13/12
A61P21/04
A61P9/14
A61P3/10
A61P27/02
A61K45/00
A61P37/04
A61K47/68
A61K31/573
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022187918
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2021003968の分割
【原出願日】2016-05-31
(31)【優先権主張番号】62/180,462
(32)【優先日】2015-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, チンウェイ ヴィヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】デニス, マーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】フー, ジャーメイン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌治療において使用するための有効な二重特異性抗体を提供する。
【解決手段】抗表面抗原分類3(CD3)抗体及びその使用方法を開示する。該抗CD3抗体は、免疫エフェクター細胞上に位置するCD3及び免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上で低コピー数で発現される細胞表面抗原に結合する二重特異性抗体であり、第1の結合ドメインを含む抗CD3アームと、第2の結合ドメインを含む抗細胞表面抗原アームとを含む。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、Ly6G6Dを含む腫瘍抗原である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗表面抗原分類3(CD3)抗体であって、前記抗CD3抗体が、次の6つの超可変領域(HVR):
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、結合ドメインを含む、前記抗表面抗原分類3(CD3)抗体。
【請求項2】
前記結合ドメインが、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)と同様のVHドメイン及び(b)と同様のVLドメインを含む、請求項1に記載の抗CD3抗体。
【請求項3】
前記VHドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗CD3抗体。
【請求項4】
前記VLドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗CD3抗体。
【請求項5】
抗CD3抗体であって、前記抗CD3抗体が、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む結合ドメインを含む、前記抗CD3抗体。
【請求項6】
前記抗CD3抗体が、0.5nM以下のKで前記ヒトCD3εポリペプチドに結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項7】
前記抗CD3抗体が、0.3nM以下のKで前記ヒトCD3εポリペプチドに結合する、請求項6に記載の抗CD3抗体。
【請求項8】
前記抗CD3抗体が、0.1nM以下のKで前記ヒトCD3εポリペプチドに結合する、請求項7に記載の抗CD3抗体。
【請求項9】
前記抗CD3抗体が、Fc領域において、エフェクター機能を低減する置換突然変異を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項10】
前記置換突然変異が、非グリコシル化部位突然変異である、請求項9に記載の抗CD3抗体。
【請求項11】
前記非グリコシル化部位突然変異が、アミノ酸残基N297、L234、L235、及び/またはD265(EU番号付け)にある、請求項10に記載の抗CD3抗体。
【請求項12】
前記非グリコシル化部位突然変異が、N297G、N297A、L234A、L235A、及びD265Aからなる群から選択される、請求項11に記載の抗CD3抗体。
【請求項13】
前記抗CD3抗体が、モノクローナル、ヒト、ヒト化、またはキメラである、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項14】
前記抗CD3抗体が、CD3に結合する抗体断片である、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項15】
前記抗体断片が、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)断片からなる群から選択される、請求項14に記載の抗CD3抗体。
【請求項16】
前記抗CD3抗体が、完全長抗体である、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項17】
前記抗CD3抗体が、IgG抗体である、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項18】
前記抗CD3抗体が、単一特異性抗体である、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項19】
前記抗CD3抗体が、多重特異性抗体である、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項20】
前記多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、請求項19に記載の抗CD3抗体。
【請求項21】
前記二重特異性抗体が、第2の生物学的分子に結合する第2の結合ドメインを含み、前記第2の生物学的分子が、免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上の細胞表面抗原である、請求項20に記載の抗CD3抗体。
【請求項22】
前記細胞表面抗原が、前記標的細胞上で低コピー数で発現される、請求項21に記載の抗CD3抗体。
【請求項23】
前記細胞表面抗原が、1標的細胞あたり35,000コピー未満発現される、請求項22に記載の抗CD3抗体。
【請求項24】
前記細胞表面抗原が、1標的細胞あたり約100コピー~1標的細胞あたり約30,000コピー発現される、請求項22または23に記載の抗CD3抗体。
【請求項25】
前記細胞表面抗原が、腫瘍抗原である、請求項21~24のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項26】
前記腫瘍抗原が、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座G61)である、請求項25に記載の抗CD3抗体。
【請求項27】
Ly6G6Dが、1標的細胞あたり約20,000コピー~1標的細胞あたり約30,000コピー発現される、請求項26に記載の抗CD3抗体。
【請求項28】
抗CD3抗体であって、前記抗CD3抗体が、免疫エフェクター細胞上に位置するCD3及び前記免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上で低コピー数で発現される細胞表面抗原に結合する、二重特異性抗体であり、前記二重特異性抗体が、次の6つのHVR:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(C)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、第1の結合ドメインを含む抗CD3アームと、
第2の結合ドメインを含む抗細胞表面抗原アームと、を含む、前記抗CD3抗体。
【請求項29】
前記細胞表面抗原が、腫瘍抗原である、請求項28に記載の抗CD3抗体。
【請求項30】
前記腫瘍抗原が、Ly6G6Dである、請求項29に記載の抗CD3抗体。
【請求項31】
前記抗CD3抗体が、1つ以上の重鎖定常ドメインを含み、前記1つ以上の重鎖定常ドメインが、第1のCH1(CH1)ドメイン、第1のCH2(CH2)ドメイン、第1のCH3(CH3)ドメイン、第2のCH1(CH1)ドメイン、第2のCH2(CH2)ドメイン、及び第2のCH3(CH3)ドメインから選択される、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項32】
前記1つ以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1つが、別の重鎖定常ドメインと対合される、請求項31に記載の抗CD3抗体。
【請求項33】
前記CH3及びCH3ドメインが各々、突起または空隙を含み、前記CH3ドメインにおける前記突起または空隙が、それぞれ、前記CH3ドメインにおける前記空隙または突起に位置付け可能である、請求項32に記載の抗CD3抗体。
【請求項34】
前記CH3及びCH3ドメインが、前記突起と前記空隙との間の境界面において接触する、請求項33に記載の抗CD3抗体。
【請求項35】
前記CH2及びCH2ドメインが各々、突起または空隙を含み、前記CH2ドメインにおける前記突起または空隙が、それぞれ、前記CH2ドメインにおける前記空隙または突起に位置付け可能である、請求項31~34のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項36】
前記CH2及びCH2ドメインが、前記突起と前記空隙との間の境界面において接触する、請求項35に記載の抗CD3抗体。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体をコードする、単離核酸。
【請求項38】
請求項37に記載の単離核酸を含む、ベクター。
【請求項39】
請求項38に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項40】
前記宿主細胞が、哺乳類細胞である、請求項39に記載の宿主細胞。
【請求項41】
前記哺乳類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項42】
前記宿主細胞が、原核細胞である、請求項39に記載の宿主細胞。
【請求項43】
前記原核細胞が、E.coliである、請求項42に記載の宿主細胞。
【請求項44】
請求項39に記載の宿主細胞を培養培地中で培養することを含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体の産生方法。
【請求項45】
前記方法が、前記抗CD3抗体を前記宿主細胞または前記培養培地から回収することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体及び細胞傷害性薬剤を含む、免疫複合体。
【請求項47】
請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体を含む、組成物。
【請求項48】
薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物が、薬学的組成物である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記組成物が、PD-1軸結合アンタゴニストまたは追加の治療剤をさらに含む、請求項47~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
医薬品として使用するための、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項52】
細胞増殖性障害または自己免疫障害の治療またはその進行の遅延を必要とする対象において、前記治療またはその進行の遅延に使用するための、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項53】
細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する対象における免疫機能の増強に使用するための、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体。
【請求項54】
前記細胞増殖性障害が癌である、請求項52または53に記載の抗CD3抗体。
【請求項55】
前記癌が、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、多発性骨髄腫、腎臓癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、膠芽腫、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓周辺帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病、分類不能脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、αH鎖病、γH鎖病、μH鎖病、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL下肢型、加齢性EBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において生じる大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫との間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫からなる群から選択される、請求項54に記載の抗CD3抗体。
【請求項56】
前記癌が食道癌である、請求項55に記載の抗CD3抗体。
【請求項57】
前記癌が腺癌である、請求項54に記載の抗CD3抗体。
【請求項58】
前記腺癌が、転移性腺癌である、請求項57に記載の抗CD3抗体。
【請求項59】
前記腺癌が、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌である、請求項57または58に記載の抗CD3抗体。
【請求項60】
前記自己免疫障害が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェグナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、重症筋無力症、脈管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)、及びIgGニューロパチーからなる群から選択される、請求項52または53に記載の抗CD3抗体。
【請求項61】
細胞増殖性障害または自己免疫障害を治療する、またはその進行を遅延させるための医薬品の製造における、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体の使用。
【請求項62】
細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する対象において免疫機能を増強するための医薬品の製造における、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体の使用。
【請求項63】
前記細胞増殖性障害が癌である、請求項61または62に記載の使用。
【請求項64】
前記癌が、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、多発性骨髄腫、腎臓癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、膠芽腫、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓周辺帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病、分類不能脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、αH鎖病、γH鎖病、μH鎖病、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL下肢型、加齢性EBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において生じる大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫との間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫からなる群から選択される、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
前記癌が食道癌である、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
前記癌が腺癌である、請求項63に記載の使用。
【請求項67】
前記腺癌が転移性腺癌である、請求項66に記載の使用。
【請求項68】
前記腺癌が、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌である、請求項66または67に記載の使用。
【請求項69】
前記自己免疫障害が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェグナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、重症筋無力症、脈管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)、及びIgGニューロパチーからなる群から選択される、請求項61または62に記載の使用。
【請求項70】
細胞増殖性障害または自己免疫障害の治療またはその進行の遅延を必要とする対象における、前記障害の治療方法またはその進行の遅延方法であって、前記対象に請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体を投与することを含む、前記方法。
【請求項71】
細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する対象における免疫機能の増強方法であって、前記対象に有効量の請求項1~36のいずれか1項に記載の抗CD3抗体を投与することを含む、前記方法。
【請求項72】
前記細胞増殖性障害が癌である、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記癌が、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、多発性骨髄腫、腎臓癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、膠芽腫、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓周辺帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病、分類不能脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、αH鎖病、γH鎖病、μH鎖病、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL下肢型、加齢性EBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において生じる大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫との間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記癌が食道癌である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記癌が腺癌である、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記腺癌が転移性腺癌である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記腺癌が、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌である、請求項75または76に記載の方法。
【請求項78】
前記自己免疫障害が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェグナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、重症筋無力症、脈管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)、及びIgGニューロパチーからなる群から選択される、請求項70または71に記載の方法。
【請求項79】
前記抗CD3抗体が、(a)免疫エフェクター細胞上に位置するCD3分子、及び(b)前記免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上に位置する第2の生物学的分子に結合する、請求項70~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記抗CD3抗体が、(a)及び(b)への結合に続いて前記免疫エフェクター細胞を活性化する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記活性化された免疫エフェクター細胞が、前記標的細胞に対して細胞傷害性作用及び/またはアポトーシス作用を及ぼすことができる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記抗CD3抗体が、前記対象に約0.01mg/kg~約10mg/kgの投薬量で投与される、請求項70~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記抗CD3抗体が、前記対象に約0.1mg/kg~約10mg/kgの投薬量で投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記抗CD3抗体が、前記対象に約1mg/kgの投薬量で投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記対象に、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/または追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項70~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記PD-1軸結合アンタゴニストまたは追加の治療剤が、前記抗CD3抗体の前記投与の前または後に投与される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記PD-1軸結合アンタゴニスト追加の治療剤が、前記抗CD3抗体と同時に投与される、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、請求項85~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが、PD-1結合アンタゴニストである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記PD-1結合アンタゴニストが、MDX1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニストである、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが、PD-L2結合アンタゴニストである、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記PD-L2結合アンタゴニストが、抗体またはイムノアドヘシンである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
細胞増殖性障害または自己免疫障害の治療またはその進行の遅延を必要とする対象における、前記障害の治療方法またはその進行の遅延方法であって、前記方法が、前記対象に抗CD3抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストを投与することを含み、前記抗CD3抗体が、抗CD3アーム及び抗Ly6G6Dアームを含む、前記方法。
【請求項96】
細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する対象における免疫機能の増強方法であって、前記方法が、前記対象に抗CD3抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストを投与することを含み、前記抗CD3抗体が、抗CD3アーム及び抗Ly6G6Dアームを含む、前記方法。
【請求項97】
(a)前記抗CD3アームが、
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメインと、
(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインと、を含む、第1の結合ドメインを含み、
(b)前記PD-1軸結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、請求項95または96に記載の方法。
【請求項98】
前記細胞増殖性障害が癌である、請求項95~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記癌が食道癌である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記癌が腺癌である、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
前記腺癌が転移性腺癌である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記腺癌が、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌である、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
前記対象にグルココルチコイドを投与することをさらに含む、請求項70~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記グルココルチコイドが、デキサメタゾンである、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記対象にリツキシマブを投与することをさらに含む、請求項70~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記対象にオビヌツズマブを投与することをさらに含む、請求項70~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記対象に抗体-薬物複合体(ADC)を投与することをさらに含む、請求項70~106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記抗CD3抗体が、皮下、静脈内、筋肉内、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、埋め込み、吸入、くも膜内、膀胱内、または鼻腔内で投与される、請求項70~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記抗CD3抗体が、皮下投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記抗CD3抗体が、静脈内投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
前記対象が、ヒトである、請求項70~110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
(a)請求項47~50のいずれか1項に記載の組成物と、
(b)細胞増殖性障害または自己免疫障害の治療またはその進行の遅延のために、対象に前記組成物を投与するための説明書を含む添付文書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2016年5月31日に作成された該ASCIIコピーは、50474-118WO2_Sequence_Listing_5_31_16_ST25と名付けられ、39,627バイトのサイズである。
【0002】
本発明は、抗表面抗原分類3(CD3)抗体及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌などの細胞増殖性障害は、細胞亜集団の無制御な成長を特徴とする。これらは先進国世界における死因の第1位、及び発展途上国における死因の第2位であり、毎年1千2百万を超える新たな癌症例が診断され、7百万の癌死亡が生じている。米国癌協会は、2015年には50万人を超えるアメリカ人が癌によって死亡すると推定しており、これは、ほぼ米国の死亡4例中1例の割合を占める。癌の発症確率は70歳を過ぎると2倍を超えて高くなるため、高齢者人口が成長するにつれて、癌の発生数も同時に上昇している。このため、癌治療は、重大かつ増え続ける社会的負担を意味する。
【0004】
癌治療への長期間にわたるアプローチには、化学療法、放射線療法、及び固形腫瘍を除去する手術が含まれる。最近では、T細胞を標的とする治療抗体が開発されている。これらの治療抗体は、T細胞上の細胞表面抗原及び腫瘍細胞上の細胞表面抗原に同時に結合することができる二重特異性抗体を含み、それによって、結合したT細胞が腫瘍細胞の破壊に寄与することを可能にする。
【0005】
現在、癌を治療するための臨床治験を経ている既存の二重特異性抗体は、それらの短い半減期及び/またはばらついた有効性により限定されている。このため、癌治療において使用するための有効な二重特異性抗体の開発の分野において満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、抗表面抗原分類3(CD3)抗体及びその使用方法に関する。
【0007】
一態様では、本発明は、抗CD3抗体を特徴とし、該抗CD3抗体は、次の6つの超可変領域(HVR):(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)と同様のVHドメイン及び(b)と同様のVLドメインを含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン及び(b)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、0.7nM以下のK(例えば、0.6nM以下のK、例えば、0.5nM以下のK、例えば、0.4nM以下のK、例えば、0.3nM以下のK、例えば、0.2nM以下のK、例えば、0.1nM以下のK)で、ヒトCD3εポリペプチドに結合する。
【0008】
いくつかの実施形態では、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つは、モノクローナル、ヒト、ヒト化、またはキメラであり得る。いくつかの実施形態では、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つは、CD3に結合する抗体断片であり得る。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)断片からなる群から選択される。他の実施形態では、抗CD3抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、IgG抗体(例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3抗体)である。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、単一特異性抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、Bispecific T-Cell Engager(BiTE(登録商標))抗体)である。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、Ly6G6D TDB抗体などの二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、第2の生物学的分子に結合する第2の結合ドメインを含み、この第2の生物学的分子は、細胞表面抗原(例えば、免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上の細胞表面抗原)である。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、標的細胞上で低コピー数で発現される。例えば、細胞表面抗原は、1標的細胞あたり35,000コピー未満発現され得る。いくつかの実施形態では、低コピー細胞表面抗原は、1標的細胞あたり約100コピー~1標的細胞あたり約30,000コピー発現され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座G61);Ly6-D、MEGT1);CD20;FcRH5(Fc受容体様5);HER2;LYPD1;PMEL17(シルバーホモログ;SILV;D12S53E;PMEL17;(SI);(SIL);ME20;gp100);Ly6E(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座E;Ly67、RIG-E、SCA-2、TSA-1);CD19;CD33;CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム);CD79a(CD79A、CD79a、免疫グロブリン関連アルファ;BMPR1B(骨形成タンパク質受容体IB型);CD79b(CD79B、CD79β、1Gb(免疫グロブリン関連ベータ)、B29);EDAR(エクトジスプラシンA受容体);GFRA1(GDNF-Ra1);MRP4(多剤耐性タンパク質4);RET;STEAP1(前立腺の6膜貫通上皮抗原);TENB2(推定膜貫通プロテオグリカン);E16(LAT1、SLC7A5);0772P(CA125、MUC16);MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン);Napi2b(NAPI-2B、NPTIIb、SLC34A2、溶質キャリアファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性リン酸輸送体3b);Sema5b;PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA2700050C12、RIKEN cDNA2700050C12遺伝子);ETBR(エンドセリンB型受容体);MSG783(RNF124、仮想タンパク質FLJ20315);STEAP2;TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容体電位陽イオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4);CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形腫由来成長因子);CD21(CR2(補体受容体2)またはC3DR(C3d/エプスタインバーウイルス受容体)またはHs.73792);FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C);NCA;MDP;IL20Rα;ブレビカン;EphB2R;ASLG659;PSCA;GEDA;BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3);CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1;HLA-DOB(MHCクラスII分子のベータサブユニット);P2X5(プリン受容体P2Xリガンドゲート化イオンチャンネル5;CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2);LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質);FcRH1(Fc受容体様タンパク質1);IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2);TMEFF1;TMEM46(シガホモログ2(アフリカツメガエル);SHISA2);LGR5(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5;GPR49、GPR67);LY6K(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K;LY6K;HSJ001348;FLJ35226);GPR19(Gタンパク質共役受容体19;Mm4787);GPR54(KISS1受容体;KISS1R;GPR54;HOT7T175;AXOR12);ASPHD1(アスパラギン酸ベータ-ヒドロキシラーゼドメイン含有1;LOC253982);チロシナーゼ(TYR;OCAIA;OCA1A;チロシナーゼ;SHEP3);TMEM118(リングフィンガータンパク質、膜貫通2;RNFT2;FLJ14627);GPR172A(Gタンパク質共役受容体172A;GPCR41;FLJ11856;D15Ertd747e);GPC3(グリピカン3);CLL1(C型レクチン様分子1);B7-H4(B7x;B7S1);RNF43(リングフィンガータンパク質43);CD70;CXORF61(X染色体オープンリーディングフレーム61);HAVCR1;エピレグリン;アンフィレグリン;EGFR;EGFR-L858R;EGFR-L861Q;EGFR-G719A;EGFR-G719S;EGFR-G719C;EGFR-T790M;EGFR-S768I;アディポフィリン;AIM-2;ALDH1A1;アルファ-アクチニン-4;アルファ-フェトプロテイン;ARTC1;B-RAF;BAGE-1;BCLX(L);BCR-ABL融合タンパク質(b3a2);ベータ-カテニン;BING-4;CALCA;CASP-5;CASP-8;CD45;Cdc27;CDK4;CDKN2A;CEA;CLPP;COA-1;CPSF;Cw6;サイクリンD1;サイクリン-A1;dek-can融合タンパク質;DKK1;DR1;DR13;EFTUD2;伸長因子2;ENAH(hMena);EpCAM;EphA3;ETV6-AML1融合タンパク質;EZH2;FLT3-ITD;FN1;G250;MN;CAIX;GAGE-1;2;8;GAGE-3;4;5;6;7;グリピカン-3;GnTVf;gp100/Pmel17;GPNMB;HERV-K-MEL;hsp70-2;IDO1;IGF2B3;IL13Rアルファ2;腸カルボキシルエステラーゼ;K-ras;カリクレイン4;KIF20A;KK-LC-1;KM-HN-1;LAGE-1;LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質;レングシン;M-CSF;MAGE-A1;MAGE-A10;MAGE-A12;MAGE-A2;MAGE-A3;MAGE-A4;MAGE-A6;MAGE-A9;MAGE-C1;MAGE-C2;マンマグロビン-A;MART2;MCSP;mdm-2;ME1;メランA/MART-1;メロウ(Meloe);MMP-2;MMP-7;MUC1;MUC5AC;ムチン;MUM-1f;MUM-2;MUM-3;ミオシンクラスI;N-ras;NA88-A;neo-PAP;NFYC;NY-BR-1;NY-ESO-1/LAGE-2;OA1;OGT;OS-9;p53;PAP;PAX5;PBF;pml-RARアルファ融合タンパク質;PRAME;PRDX5;PSMA;PTPRK;RAB38/NY-MEL-1;RAGE-1;RBAF600;RGS5;RhoC;RNF43;RU2AS;SAGE;セセルニン1;SIRT2;SNRPD1;SOX10;Sp17;SSX-2;SSX-4;STEAP1;サバイビン;SYT-SSX1または-SSX2融合タンパク質;TAG-1;TAG-2;テロメラーゼ;TGF-ベータRII;TRAG-3;トリオースリン酸イソメラーゼ;TRP-1/gp75;TRP-2;TRP2-INT2;チロシナーゼ;VEGF;WT1;XAGE-1b/GAGED2a;及びSLC35D3からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、LY6G6D、CD20、FcRH5、HER2、LYPD1、PMEL17、LY6E、CD19、CD33、CD22、CD79A、CD79B、EDAR、GFRA1、MRP4、RET、Steap1、及びTenB2からなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、標的細胞の細胞表面上に1標的細胞あたり約20,000コピー~1標的細胞あたり約30,000コピー存在し得る、Ly6G6Dである。いくつかの実施形態では、コピー数は、スキャッチャードプロット解析によって決定され得る。
【0012】
関連する態様では、本発明は、抗CD3抗体を特徴とし、該抗CD3抗体は、免疫エフェクター細胞上に位置するCD3及び免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上で低コピー数で発現される細胞表面抗原に結合する二重特異性抗体であり、該二重特異性抗体は、次の6つのHVR:(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、第1の結合ドメインを含む抗CD3アームと、第2の結合ドメインを含む抗細胞表面抗原アームとを含む。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、Ly6G6Dである。
【0013】
いくつかの実施形態では、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つは、Fc領域において、エフェクター機能を低減する置換突然変異を含んでもよい。いくつかの実施形態では、置換突然変異は、非グリコシル化部位突然変異である。いくつかの実施形態では、非グリコシル化部位突然変異は、アミノ酸残基N297、L234、L235、及び/またはD265(EU番号付け)にある。いくつかの実施形態では、非グリコシル化部位突然変異は、N297G、N297A、L234A、L235A、及びD265Aからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、突然変異は、N297G突然変異である。いくつかの実施形態では、非グリコシル化部位突然変異は、抗CD3抗体のエフェクター機能を低減する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つは、1つ以上の重鎖定常ドメインを含むことができ、1つ以上の重鎖定常ドメインは、第1のCH1(CH1)ドメイン、第1のCH2(CH2)ドメイン、第1のCH3(CH3)ドメイン、第2のCH1(CH1)ドメイン、第2のCH2(CH2)ドメイン、及び第2のCH3(CH3)ドメインから選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1つは、別の重鎖定常ドメインと対合される。いくつかの実施形態では、CH3及びCH3ドメインは各々、突起または空隙を含み、CH3ドメインにおける該突起または空隙は、それぞれ、CH3ドメインにおける空隙または突起に位置付け可能である。いくつかの実施形態では、CH3及びCH3ドメインは、該突起と空隙との間の境界面において接触する。いくつかの実施形態では、CH2及びCH2ドメインは各々、突起または空隙を含み、CH2ドメインにおける該突起または空隙は、それぞれ、CH2ドメインにおける空隙または突起に位置付け可能である。いくつかの実施形態では、CH2及びCH2ドメインは、該突起と空隙との間の境界面において接触する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞傷害性薬剤に複合される前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つを含む免疫複合体を特徴とする。また、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つを含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、本組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、薬学的組成物である。いくつかの実施形態では、本組成物は、PD-1軸結合アンタゴニストまたは追加の治療剤をさらに含む。別の態様では、本発明は、本明細書に開示される抗CD3抗体のうちのいずれかをコードする単離核酸を特徴とする。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体をコードする核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)が提供される(例えば、抗CD3抗体を発現させるためのベクター)。
【0016】
別の態様では、本発明は、前述の核酸及び/またはベクターを含む宿主細胞を特徴とする。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳類細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)である。他の実施形態では、宿主細胞は、原核細胞(例えば、E.coli細胞)である。前述の抗CD3抗のうちのいずれか1つの産生方法もまた提供され、本方法は、抗CD3抗体を産生する宿主細胞を培養することと、宿主細胞または培養培地から抗CD3抗体を回収することとを含む。
【0017】
いくつかの態様では、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つは、医薬品として使用するためのものであり得る。いくつかの実施形態では、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つは、細胞増殖性障害または自己免疫障害の治療またはその進行の遅延を必要とする対象において、治療またはその進行の遅延に使用するためのものであり得る。いくつかの実施形態では、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つは、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する対象において免疫機能の増強に使用するためのものであり得る。
【0018】
いくつかの態様では、本発明は、細胞増殖性障害または自己免疫障害を治療するまたはその進行を遅延させるための医薬品の製造における、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つの使用を特徴とする。いくつかの態様では、本発明は、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する対象において免疫機能を増強するための医薬品の製造における、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つの使用を特徴とする。
【0019】
本発明のさらなる態様は、細胞増殖性障害または自己免疫障害の治療またはその進行の遅延を必要とする対象における、障害の治療方法またはその進行の遅延方法であり、本方法は、対象に、有効量の前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つを投与することを含む。別の態様では、本発明は、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する対象における免疫機能の増強方法を特徴とし、本方法は、対象に、前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つを投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、(a)免疫エフェクター細胞上に位置するCD3分子、及び(b)免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上に位置する第2の生物学的分子に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、(a)及び(b)への結合に続いて免疫エフェクター細胞を活性化する。いくつかの実施形態では、活性化された免疫エフェクター細胞は、標的細胞に対して細胞傷害性作用及び/またはアポトーシス作用を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、対象に、約0.01mg/kg~約10mg/kgの投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、対象に、約0.1mg/kg~約10mg/kgの投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、対象に、約1mg/kgの投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、皮下、静脈内、筋肉内、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、埋め込み、吸入、くも膜内、膀胱内、または鼻腔内で投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、静脈内投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象にPD-1軸結合アンタゴニストまたは追加の治療剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗CD3抗体の投与の前または後に投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗CD3抗体と同時に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、またはPD-1とPD-L1及び/もしくはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、もしくは妨害する他の分子である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、CT-011(ピディリズマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MED1-0680である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、REGN2810である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、BGB-108である。
【0022】
他の実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、またはPD-L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、もしくは妨害する他の分子である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。さらに別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)である。具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70である。別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MDX-1105である。別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MSB0015718Cである。さらに別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MEDI4736である。
【0023】
他の実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、またはPD-L2とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、もしくは妨害する他の分子である。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0024】
いくつかの態様では、本発明は、細胞増殖性障害または自己免疫障害の治療またはその進行の遅延を必要とする対象における、障害の治療方法またはその進行の遅延方法を特徴とし、本方法は、対象に抗CD3抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストを投与することを含み、抗CD3抗体は、抗CD3アーム及び抗Ly6G6Dアームを含む。いくつかの態様では、本発明は、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する対象における免疫機能の増強方法を特徴とし、本方法は、対象に抗CD3抗体及びPD-1軸結合アンタゴニストを投与することを含み、抗CD3抗体は、抗CD3アーム及び抗Ly6G6Dアーム(すなわち、Ly6G6D TDB抗体)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3アームは、(i)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、第1の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、対象に、抗CD3抗体であって、(i)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを有する抗CD3アーム、ならびに(ii)抗Ly6G6Dアーム(すなわち、Ly6G6D TDB抗体)を含む、抗CD3抗体と、抗PD-L1抗体であるPD-1軸結合アンタゴニストとを投与することを含む。
【0025】
他の実施形態では、抗CD3抗体(例えば、Ly6G6D TDB)は、FOLFOX(5-フルオロウラシル及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標)))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、CapeOx(XELOX;オキサリプラチンを含むカペシタビン)、ロイコボリン(葉酸)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、レゴラフェニブ(STIVARGA(登録商標))、イリノテカン(CPT-11;CAMPTOSAR(登録商標))、及びFLOX(オキサリプラチンを含む5-フルオロウラシル)から選択される、1つ以上の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11個の)追加の治療剤と、(単独または複数の(例えば、1、2、3、4、5、または6つ以上の)組成物(例えば、製剤)として同時に)共投与される。他の実施形態では、抗CD3抗体(例えば、Ly6G6D TDB)は、次のもののうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、または11個すべてなどの、1つ以上の追加の治療剤の前に投与される:FOLFOX(5-フルオロウラシル及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標)))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、CapeOx(XELOX;オキサリプラチンを含むカペシタビン)、ロイコボリン(葉酸)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、レゴラフェニブ(STIVARGA(登録商標))、イリノテカン(CPT-11;CAMPTOSAR(登録商標))、及びFLOX(オキサリプラチンを含む5-フルオロウラシル)。他の実施形態では、抗CD3抗体(例えば、Ly6G6D TDB)は、次のもののうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、または11個すべてなどの、1つ以上の追加の治療剤の後に投与される:FOLFOX(5-フルオロウラシル及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標)))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、CapeOx(XELOX;オキサリプラチンを含むカペシタビン)、ロイコボリン(葉酸)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、レゴラフェニブ(STIVARGA(登録商標))、イリノテカン(CPT-11;CAMPTOSAR(登録商標))、及びFLOX(オキサリプラチンを含む5-フルオロウラシル)。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象にグルココルチコイドを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン、ならびにそれらの薬学的に許容されるエステル、塩、及び複合体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、グルココルチコイドはデキサメタゾンである。いくつかの実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾンの薬学的に許容されるエステル、塩、または複合体である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象にリツキシマブを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、対象にオビヌツズマブを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、対象に抗体-薬物複合体(ADC)を投与することをさらに含む。
【0028】
前述の使用または方法のうちのいずれかでは、細胞増殖性障害は癌であり得る。いくつかの実施形態では、癌は、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、多発性骨髄腫、腎臓癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、膠芽腫、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓周辺帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病、分類不能脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、αH鎖病、γH鎖病、μH鎖病、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL下肢型、加齢性EBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(Primary mediastinal(thymic)large B-cell lymphoma)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において生じる大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫との間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、癌は食道癌である。いくつかの実施形態では、癌は、腺癌、例えば、転移性(metatstatic)腺癌(例えば、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌)である。
【0030】
前述の使用または方法のうちのいずれかでは、自己免疫障害は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェグナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、重症筋無力症、脈管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)、及びIgGニューロパチーからなる群から選択され得る。
【0031】
別の態様では、本発明は、(a)前述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つを含む組成物と、(b)細胞増殖性障害の治療またはその進行の遅延のために、対象に組成物を投与するための説明書を含む添付文書とを含む、キットを特徴とする。
【0032】
前述の使用または方法のうちのいずれかでは、対象は、ヒトであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】抗CD3抗体38E4v11の軽鎖可変ドメイン(VL)のアミノ酸配列を示す(配列番号8)。HVR-L1(配列番号4)、HVR-L2(配列番号5)、及びHVR-L3(配列番号6)配列は、示されるボックスによって境界を定められる。
図1B】抗CD3抗体38E4v11の重鎖可変ドメイン(VH)のアミノ酸配列を示す(配列番号7)。HVR-H1(配列番号1)、HVR-H2(配列番号2)、及びHVR-H3(配列番号3)配列は、示されるボックスによって境界を定められる。
図2】インビトロ標的細胞殺傷アッセイにおいて、異なる抗CD3アーム:Ly6G6D(38E4v11)TDB、Ly6G6D(40G5c)TDB、及びLy6G6D(38E4v1)TDBを有する、3つの異なるLy6G6D TDBについてのLy6G6D TDB抗体濃度の関数として、Ly6G6Dでトランスフェクトされた293標的細胞のうちの殺傷された割合を示すグラフである。
図3A】フローサイトメトリー分析によって評価した、3つの異なるLy6G6D TDB(Ly6G6D(38E4v11)TDB、Ly6G6D(40G5c)TDB、及びLy6G6D(38E4v1)TDB)についてのLy6G6D TDB抗体濃度の関数として、CD69+CD25+活性化CD8+T細胞の割合を示すグラフである。エフェクター細胞:標的細胞比=5:1。
図3B】フローサイトメトリー分析によって評価した、3つの異なるLy6G6D TDB(Ly6G6D(38E4v11)TDB、Ly6G6D(40G5c)TDB、及びLy6G6D(38E4v1)TDB)についてのLy6G6D TDB抗体濃度の関数として、CD69+CD25+活性化CD4+T細胞の割合を示すグラフである。エフェクター細胞:標的細胞比=5:1。
【発明を実施するための形態】
【0034】
I.定義
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者には容易にわかるそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0035】
本明細書における目的で、「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下に定義される、ヒト免役グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免役グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれは、アミノ酸配列変化を含有し得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免役グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0036】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合による相互作用の合計の強度を指す。別途指定されない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(K)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載の方法を含む、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0037】
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)において1つ以上の変化を有し、かかる変化が抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす、抗体を指す。
【0038】
「抗CD3抗体」及び「CD3に結合する抗体」という用語は、抗体がCD3を標的とする際に診断剤及び/または治療剤として有用であるように、CD3に十分な親和性で結合可能である抗体を指す。一実施形態では、無関係の非CD3タンパク質への抗CD3抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定されるとき、CD3への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、CD3に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。ある特定の実施形態では、抗CD3抗体は、異なる種に由来するCD3間で保存されているCD3のエピトープに結合する。
【0039】
「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、種々の抗体構造を包含する。
【0040】
「抗体断片」とは、無傷の抗体が結合する抗原に結合する、無傷の抗体の一部を含む無傷の抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);二重特異性抗体;線状抗体(linear antibodies);1本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「結合ドメイン」とは、標的エピトープ、抗原、リガンド、または受容体に特異的に結合する化合物または分子の一部を意味する。結合ドメインは、抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、組換え、ヒト化、及びキメラ抗体)、抗体断片またはその部分(例えば、Fab断片、Fab’、scFv抗体、SMIP、ドメイン抗体、ダイアボディ、ミニボディ、scFv-Fc、アフィボディ、ナノボディ、ならびに抗体のVH及び/またはVLドメイン)、受容体、リガンド、アプタマー、及び特定された結合パートナーを有する他の分子を含むが、これらに限定されない。
【0042】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(とりわけクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンガンマ1I及びカリケアミシンオメガ1I(例えば、Nicolaou et al.,Angew.Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい);CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;ダイネシンAを含むダイネシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連クロモタンパク質エネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキシルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシンCなどのミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標)、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、及び5-フルオロウラシル(5-FU);コンブレタスタチン;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミピリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、及びドセタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(TAXOTERE(登録商標)、Rhome-Poulene Rorer,Antony,France);クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ剤、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合が微小管を形成するのを防止するビンカ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボビン;ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロン酸塩;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);例えば、レチノイン酸(ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含む、レチノイド;ビスホスホン酸塩、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常細胞増殖に関わるシグナル伝達経路における遺伝子(例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮成長因子受容体(EGF-R))の発現を阻害するもの(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標)));細胞増殖を低減するVEGF-A;ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えば、オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピキサントロン;EGFR阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;セリン-トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファルニブ(SCH6636、SARASAR(商標);及び上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキシルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニソロンの複合療法の省略形)、及びFOLFOX(5-FU及びロイコボビンと複合されたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標)による治療計画の省略形);及び上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0043】
本明細書で定義される化学療法剤は、癌の成長を促進し得るホルモンの効果を調節、低減、遮断、または阻害するように作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌治療薬」を含む。それらは、それら自体がホルモンであってもよく、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストーン、及びFARESTON.cndot.トレミフェンを含む、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM);例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどの、副腎におけるエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの、抗アンドロゲン;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、具体的には、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子(例えば、PKC-アルファ、Raf、及びH-Rasなど)の発現を阻害するもの;リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標)ribozyme)及びHER2発現阻害剤;遺伝子療法ワクチンなどのワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン(米国特許第4,675,187号を参照されたい)、ならびに上述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上述のうちの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部分が特定の源または種に由来し、重鎖及び/または軽鎖の残りの部分が異なる源または種に由来する抗体を指す。
【0045】
「表面抗原分類3」または「CD3」という用語は、本明細書で使用されるとき、別途指示されない限り、霊長動物(例えばヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD3を指し、例えば、CD3ε、CD3γ、CD3α、及びCD3β鎖を含む。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないCD3(例えば、プロセシングされていない、もしくは修飾されていないCD3εまたはCD3γ)、ならびに細胞内のプロセシングから得られるCD3の任意の形態を包含する。この用語は、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を含む、CD3の自然発生変異型も包含する。CD3は、例えば、207のアミノ酸長であるヒトCD3εタンパク質(NCBI RefSeq番号NP_000724)、及び182のアミノ酸長であるヒトCD3γタンパク質(NCBI RefSeq番号NP_000064)を含む。
【0046】
抗体の「クラス」とは、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体には5つの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAにさらに分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと称される。
【0047】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」ことを含むことが理解される。
【0048】
本明細書で使用される「細胞傷害性薬剤」という用語は、細胞機能を阻害するもしくは阻止する、及び/または細胞死もしくは破壊を引き起こす、物質を指す。細胞傷害性薬剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);化学療法剤もしくは化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びそれらの断片;抗生物質;細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片及び/または変異型を含む)などの毒素;ならびに下に記載される種々の抗腫瘍または抗癌薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患を含むが、これらに限定されない、治療から利益を受けるであろう任意の状態である。
【0050】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は、癌である。一実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0051】
「癌」及び「癌性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。癌の例としては、転移性腺癌(例えば、転移性結腸直腸腺癌、転移性胃腺癌、または転移性膵臓腺癌)であり得る、腺癌(例えば、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌)、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかる癌のより具体的な例としては、食道癌、小腸癌、大腸癌、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、肺癌、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、例えば、胃腸癌及び胃腸間質癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端性黒子性黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症等)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するもの等)、メーグス症候群、脳癌、ならびに頭頸部癌、及び関連転移が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明の抗体による治療に適する癌には、転移性腺癌(例えば、転移性結腸直腸腺癌、転移性胃腺癌、または転移性膵臓腺癌)であり得る、腺癌(例えば、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌)、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、卵巣癌、中皮腫、及び多発性骨髄腫が含まれる。いくつかの実施形態では、癌は、転移性腺癌(例えば、転移性結腸直腸腺癌、転移性胃腺癌、または転移性膵臓腺癌)であり得る、腺癌(例えば、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌)、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、小細胞肺癌、神経膠芽腫(gliblastoma)、神経芽細胞腫、黒色腫、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、及び肝細胞癌から選択される。さらに、いくつかの実施形態では、癌は、腺癌(例えば、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌)、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、神経膠芽腫及び乳癌(それらの癌の転移型を含む)から選択される。他の実施形態では、癌は、ホジキンリンパ腫を除外するが、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓周辺帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病、分類不能脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、αH鎖病、γH鎖病、μH鎖病、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨以外の形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL下肢型、加齢性EBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において生じる大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫との間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫を含む、成熟B細胞癌のクラスから選択される。
【0052】
「腫瘍」とは、本明細書で使用される場合、悪性か良性かを問わず、すべての腫瘍性細胞の成長及び増殖、ならびにすべての前癌性及び癌性細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
【0053】
本明細書で使用される「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍細胞上に提示される抗原として理解され得る。これらの抗原は、分子の膜貫通及び細胞質部分に結合していることが多い細胞外部分とともに細胞表面に提示されることがある。これらの抗原は、腫瘍細胞によりのみ提示され得、正常細胞によっては決して提示され得ない。腫瘍抗原は、腫瘍細胞上にのみ発現され得るか、または正常細胞と比較して腫瘍特異的な突然変異を表すことがある。この場合、それらは腫瘍特異的抗原と称される。腫瘍細胞及び正常細胞により提示される腫瘍抗原がより一般的であり、それらは腫瘍関連抗原と称される。これらの腫瘍関連抗原は、正常細胞と比較して過剰発現される場合があるか、または正常組織と比較して腫瘍組織の構造が小さくないことから腫瘍細胞中で抗体結合を起こしやすい。腫瘍抗原は、ある特定の型の腫瘍細胞上で一貫性がない発現を示すことがあるか、または低コピー数で発現されることがある。標的腫瘍抗原が腫瘍細胞上で低コピー数で発現される(すなわち、弱く発現される)場合には、CD3または免疫エフェクター細胞上に位置する別の分子に対して高親和性のアームを有する本発明のTDB抗体を使用することが望ましくあり得る。一態様では、腫瘍抗原は、下記の表1に記載されるものから選択される。
【0054】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより異なる、抗体のFc領域に起因するそれらの生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害作用(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化が挙げられる。
【0055】
化合物、例えば、本発明の抗CD3抗体またはその組成物(例えば、薬学的組成物)の「有効量」は、特定の障害(例えば、細胞増殖性障害、例えば、癌)の測定可能な改善または予防など、少なくとも所望の治療的または予防的結果を達成するのに必要な最低限の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な効果が治療の任意の毒性効果または有害効果を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除もしくは低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬物治療の効果の増強(例えば、標的化による)、疾患の進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。癌または腫瘍の場合、有効量の薬物は、癌細胞の数を低減させ、腫瘍サイズを低減させ、癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度減速させるか、または望ましくは停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度減速させるか、または望ましくは停止し)、腫瘍成長をある程度阻害し、及び/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明の目的で、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、予防的または治療的治療を直接または間接的に達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成される場合も、されない場合もある。したがって、「有効量」とは、1つ以上の治療剤を投与することに関連して考慮され得、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併せたときに、望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられるとみなされ得る。
【0056】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、しない場合もある。本明細書で別途指定がない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも称される、EU番号付け方式に従う。
【0057】
「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン、すなわち、FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は一般に、VH(またはVL)において以下の配列、すなわち、FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で現れる。
【0058】
「完全長抗体」、「無傷の抗体」、及び「全抗体」という用語は、天然の抗体構造に実質的に類似した構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指して、本明細書で互換的に使用される。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「成長阻害剤」とは、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態では、成長阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を予防または低減する成長阻害抗体である。別の実施形態では、成長阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく低減するものであり得る。成長阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。従来のM期遮断剤には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、ならびにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が含まれる。G1を停止する薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤は、S期停止にも波及する。さらなる情報は、Mendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1,entitled“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”(Murakamiらによる)(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えば、13頁で見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗癌薬である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体由来の微小管の構築を促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定させ、細胞内での有糸分裂を阻害する。
【0060】
「HER2陽性」癌という用語は、正常レベルよりも高いHER2を有する癌細胞を含む。HER2陽性癌の例としては、HER2陽性乳癌及びHER2陽性胃癌が挙げられる。任意に、HER2陽性癌は、2+もしくは3+の免疫組織化学(IHC)スコア、及び/または2.0以上のインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)増幅率を有する。
【0061】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が中に導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらは、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫を含む。子孫は、核酸含量において親細胞と完全に同一でない場合があるが、突然変異を含有し得る。元々形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0062】
「ヒト抗体」とは、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された、またはヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する、抗体のアミノ酸配列、または他のヒト抗体コード配列に対応する、アミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載の方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してかかる抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されたトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することにより調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)に関して米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関しては、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)も参照されたい。
【0063】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免役グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免役グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位群から行われる。一般に、配列の下位群は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるような下位群である。一実施形態では、VLについて、下位群は、上記のKabatらにあるような下位群カッパIである。一実施形態では、VHについて、下位群は、上記のKabatらにあるような下位群IIIである。
【0064】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含む、キメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになり、そのHVR(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のものに対応し、そのFRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の、「ヒト化型」とは、ヒト化を経た抗体を指す。
【0065】
本明細書で使用される「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が高度に変化する(「相補性決定領域」または「CDR」)、及び/または構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する、及び/または抗原接触残基(「抗原接触面」)を含有する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、このうち3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。本明細書における例示的なHVRには、以下のものが含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)で生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))、
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で生じる抗原接触部(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))、ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/または(c)の組み合わせ。
【0066】
別途指定されない限り、可変ドメインにおけるHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において上記のKabatらに従って番号付けされる。
【0067】
「免疫複合体」とは、細胞傷害性薬剤を含むがこれに限定されない1つ以上の異種性分子(複数可)に複合された抗体である。
【0068】
「対象」または「個体」とは、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、対象または個体は、ヒトである。
【0069】
「単離」抗体は、その自然環境の構成成分から分離されたものである。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えばSDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ法(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定するとき、95%超または99%超の純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説に関しては、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照されたい。
【0070】
「単離された」核酸とは、その天然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸には、核酸分子を通常含有する細胞内に含有される核酸分子が含まれるが、その核酸分子は、染色体外にまたはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0071】
「抗CD3抗体をコードする単離核酸」とは、抗体の重鎖及び軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別個のベクター内のかかる核酸分子(複数可)を含み、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0072】
本明細書で使用される「Ly6G6D」または「リンパ球抗原6複合体、遺伝子座G61」という用語は、別途指示されない限り、霊長動物(例えばヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然Ly6G6Dを指し、「完全長」のプロセスされていないLy6G6D、ならびに細胞内のプロセシングからもたらされる任意の形態のLy6G6Dを包含する。この用語は、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を含む、Ly6G6Dの自然発生変異型も包含する。Ly6G6Dはまた、G6D、Ly6-D、C6orf23、巨核球増強遺伝子転写物1(MEGT1)、及びNG25とも称され、米国特許第7,951,546号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に、TAT201として開示され、配列番号92のアミノ酸配列及び配列番号36のヌクレオチド配列DNA234441を有する。Ly6G6Dは、例えば、133アミノ酸長である、ヒトLy6G6Dタンパク質(NCBI RefSeq番号NP_067079.2)を含む。
【0073】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、例えば、自然発生突然変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する、考えられる変異型抗体(かかる変異型は一般に少量で存在する)を除いて、同一であり、及び/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない、様々な技法によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載される。
【0074】
「裸の抗体」とは、異種性部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識に複合されていない抗体を指す。裸の抗体は、薬学的製剤中に存在してもよい。
【0075】
「天然抗体」とは、様々な構造を有する、自然発生免役グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインとも称される可変領域(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも称される可変領域(VL)、続いて定常軽(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と称される2つの型うちの1つが割り当てられ得る。
【0076】
「添付文書」という用語は、治療剤製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含有する、かかる治療剤製品のパッケージに通例含まれる指示書を指して使用される。
【0077】
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するようにPD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞殺傷)を復元または増強する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。
【0078】
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-L1、PD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1及び/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、機能障害T細胞の機能障害の程度を下げる(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)ように、PD-1を介して媒介されたシグナル伝達など、Tリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、CT-011(ピディリズマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MED1-0680である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、REGN2810である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、BGB-108である。
【0079】
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及び/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、機能障害T細胞の機能障害の程度を下げる(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)ように、PD-L1を介して媒介されたシグナル伝達など、Tリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。さらに別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)である。具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70である。別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MDX-1105である。別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MSB0015718Cである。さらに別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MEDI4736である。
【0080】
「PD-L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2アンタゴニストは、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、機能障害T細胞の機能障害の程度を下げる(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)ように、PD-L2を介して媒介されたシグナル伝達など、Tリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減する。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0081】
本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、別途指示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然タンパク質を指す。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないタンパク質、ならびに細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のタンパク質を包含する。この用語は、タンパク質の自然発生変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型も包含する。本発明によるタンパク質には、例えば、表1に列挙される任意のタンパク質が含まれる。
【0082】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、最大の配列同一性パーセントを達成するために配列を整列させ、かつ必要に応じてギャップを導入した後に、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮に入れずに、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的でのアライメントは、当該技術分野における技術の範囲内である種々の方式で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的では、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)においてユーザ文書とともに申請されており、これは、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードから編集され得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用する場合は編集すべきである。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変更はない。
【0083】
アミノ酸配列比較のためにALIGN-2が用いられる場合、所与のアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比した、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比したある特定のアミノ酸配列同一性%を有する、またはそれを含む、所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、次のように算出される:
100×分数X/Y
(式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムのA及びBのアライメントにおいて完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくはならないことが理解されよう。特に別途定めのない限り、本明細書で使用されるすべてのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるように、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0084】
「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
【0085】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
本明細書で使用されるとき、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中のいずれかに実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるために、または疾患の進行を減速させるために使用される。
【0087】
本明細書で使用されるとき、障害または疾患の「進行を遅延させること」とは、疾患または障害(例えば細胞増殖性障害、例えば癌)の発達を延期する、妨げる、減速させる、遅滞させる、安定化させる、及び/または延滞させることを意味する。この遅延は、治療されている病歴及び/または個体に応じて異なる期間であり得る。当業者には明らかであろうが、十分なまたは著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。例えば、転移の発症などの末期癌を遅延させることができる。
【0088】
「低減する」または「阻害する」とは、例えば、20%以上の、50%以上の、または75%、85%、90%、95%の、もしくはそれを超える全体的な減少を生じる能力を意味する。ある特定の実施形態では、低減する、または阻害するとは、抗体Fc領域によって媒介される抗体のエフェクター機能を指すことができ、かかるエフェクター機能は、具体的に補体依存性細胞傷害作用(CDC)、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)を含む。
【0089】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれ、VH及びVL)の可変ドメインは、一般に、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む同様の構造を有する(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology、6thed.,W.H.Freeman and Co.,page91(2007)を参照されたい。)単一のVHまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、抗原に結合する抗体のVHまたはVLドメインを使用して単離して、それぞれ、相補的VLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature352:624-628(1991)を参照されたい。
【0090】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが連結している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語には、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびに導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。ある特定のベクターは、作動的に連結された核酸の発現を導くことが可能である。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0091】
本明細書で使用されるとき、「投与する」とは、ある投薬量の化合物(例えば、本発明の抗CD3抗体もしくは本発明の抗CD3抗体をコードする核酸)または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、本発明の抗CD3抗体を含む薬学的組成物)を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載される方法に利用される組成物は、例えば、筋肉内、静脈内、皮内、経皮的、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所(topically)、腫瘍内、腹膜内、皮下、結膜下、小胞内、経粘膜、心膜内、臍帯内、眼球内、経口、局所(topically)、局所(locally)、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞に直接流す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームとして、または脂質組成物として投与することができる。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて多様であり得る。
【0092】
II.組成物及び方法
一態様では、本発明は、部分的に抗CD3抗体に基づく。ある特定の実施形態では、抗CD3抗体は、多重特異性(例えば、二重特異性)であり、CD3またはその断片に加えて、第2の生物学的分子(例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原)に結合する。本発明の抗体は、例えば、細胞増殖性障害(例えば、癌)または自己免疫障害の進行の治療もしくは遅延のために、またはかかる障害を有する対象における免疫機能の増強のために有用であり得る。
【0093】
A.親和性が改善された抗CD3抗体
一態様では、本発明は、CD3(例えば、CD3ε及び/またはCD3γ)に結合する単離抗体を提供する。いくつかの事例では、抗CD3抗体は、ヒトCD3ポリペプチドまたはカニクイザル(cyno)CD3ポリペプチドに結合する。いくつかの事例では、ヒトCD3ポリペプチドまたはカニクイザルCD3ポリペプチドは、それぞれヒトCD3εポリペプチド(配列番号73)またはカニクイザルCD3εポリペプチド(配列番号74)である。いくつかの事例では、ヒトCD3ポリペプチドまたはカニクイザルCD3ポリペプチドは、それぞれヒトCD3γポリペプチド(配列番号75)またはカニクイザルCD3γポリペプチド(配列番号76)である。いくつかの事例では、抗CD3抗体は、ヒトCD3εのアミノ酸1~26(配列番号77)または1~27(配列番号78)からなるCD3の断片(例えば、ヒトCD3ε)内のエピトープに結合する。
【0094】
いくつかの事例では、CD3結合ドメインは、Gln1、Asp2、Asn4、Glu6、及びMet7から選択されるヒトCD3εのアミノ酸からなるエピトープに結合する。特定の一実施形態では、CD3結合ドメインは、具体的にGlu6を含むエピトープに結合する。ある特定の他の実施形態では、ヒトCD3εアミノ酸Glu5を含むエピトープに結合しないCD3結合ドメインが提供される。ある特定の他の実施形態では、ヒトCD3εアミノ酸Gly3及びGlu5を含むエピトープに結合しないCD3結合ドメインが提供される。
【0095】
CD3エピトープは、エピトープのペプチド断片に結合するCD3結合ドメインにより決定され得る。代替的に、CD3エピトープは、アラニンスキャニング変異誘発により決定され得る。一実施形態では、CD3結合ドメインの突然変異したCD3への結合が20%、30%、50%、80%以上低減していることは、アラニンスキャニング変異誘発アッセイにおいて突然変異させたCD3のアミノ酸残基がそのCD3結合ドメインのエピトープ残基であることを示す。代替的に、CD3エピトープは、質量分析により決定され得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、結晶解析(例えば、結晶解析法)により決定される。いくつかの実施形態では、結晶解析により決定されるCD3エピトープは、CD3のアミノ酸Q1-M7を使用して決定される。いくつかの実施形態では、結晶解析により決定されるCD3エピトープは、CD3のアミノ酸QDGNEEMGGITQTPYK(配列番号79)を使用して決定される。
【0096】
いくつかの実施形態では、結晶解析により決定されるCD3エピトープは、10mg/mlで0.15M NaCl、25mMトリス(pH7.5)に溶解させた抗CD3抗体Fabを2倍モル過剰(1mg)のCD3εペプチドと合わせ、シッティングドロップ蒸気拡散形式において、沈殿物の疎行列を最初にスクリーニングすることにより行われ得る。最適化された結晶は、70%v/vメチル-ペンタンジオールを含有するリザーバ溶液及びpH7.5の0.1M HEPES緩衝剤の1:1混合物から成長させられ得る。リザーバは凍結保護剤として使用され得る。結晶は、液体窒素中への急激な浸漬により極低温に移されてもよい。
【0097】
結晶の回折データは、MAR300 CCD検出器を使用して、Advanced Photon Source beam line22IDで収集することができる。記録した回折を統合し、プログラムHKL2000を使用してスケール化することができる。
【0098】
構造は、プログラムPhaserを使用する分子置換(MR)方法によって解析することができる。例えば、MRサーチモデルは、HGFA/Fab複合体(PDBコード:2R0L)の結晶構造に由来するFabサブユニットである。CD3εペプチドは、Fo-Fcマップに基づいた構造に組み込まれる。構造は、その後、収束を達成するために、最大尤度標的関数、異方性の個別B因子精密化方法、及びTLS精密化を使用してプログラムREFMAC5及びPHENIXで精密化することができる。
【0099】
いくつかの事例では、本発明は、TQSFILRTのHVR-L3配列(配列番号6)、ならびに(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、及び(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2から選択される、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのHVRを少なくとも含む結合ドメインを有する、抗CD3抗体を提供する。
【0100】
いくつかの事例では、本発明は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む結合ドメインを有する、抗CD3抗体を提供する。いくつかの事例では、抗CD3抗体は、配列番号7もしくはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び/または配列番号8もしくはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを有し得る。特定の事例では、抗CD3抗体は、38E4v11、またはその誘導体もしくはクローン類縁体であり得る。
【0101】
いくつかの事例では、抗CD3抗体は、それぞれ配列番号9~12の配列を含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)、及び/またはそれぞれ配列番号13~16の配列を含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)を含んでもよい。
【0102】
上記の実施形態のいずれかでは、抗CD3抗体は、ヒト化されている。一実施形態では、抗CD3抗体は、上記の実施形態のうちのいずれかにあるようなHVRを含み、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークをさらに含む。
【0103】
別の態様では、抗CD3抗体が提供され、この抗体は、上記に提供される実施形態のうちのいずれかにあるようなVH、及び上記に提供される実施形態のうちのいずれかにあるようなVLを含み、可変ドメイン配列の一方または両方が、翻訳後修飾を含む。
【0104】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に提供される抗CD3抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、ある特定の実施形態では、配列番号7のVH配列及び配列番号8のVL配列を含む抗CD3抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。ある特定の実施形態では、ヒトCD3εのアミノ酸1~26(配列番号77)または1~27(配列番号78)からなるCD3の断片(例えば、ヒトCD3ε)内のエピトープに結合する抗体が提供される。
【0105】
本発明のさらなる態様では、上記の実施形態のうちのいずれかによる抗CD3抗体は、モノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗CD3抗体は、キメラまたはヒト抗体である。一実施形態では、抗CD3抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)断片である。別の実施形態では、抗体は、全長抗体、例えば無傷のIgG抗体(例えば、無傷のIgG1抗体)、または本明細書で定義されるような他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
【0106】
さらなる態様では、上記の実施形態のうちのいずれかによる抗CD3抗体は、下記の1~8節に記載される特徴のうちのいずれかを、単独でまたは組み合わせで組み込み得る。
【0107】
1.抗体親和性
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0108】
一実施形態では、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施形態では、RIAは、目的とする抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて実施される。例えば、抗体に対するFabの溶液結合親和性は、未標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最低濃度の(125I)標識抗原と平衡させ、次いで、抗Fab抗体をコーティングしたプレートで結合した抗体を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中2(w/v)%のウシ血清アルブミンで2~5時間にわたって室温(約23℃)でブロッキングする。非吸着プレート(Nunc番号269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的とするFabの段階希釈(Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における、抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致)と混合する。その後、目的とするFabを一晩インキュベートするが、確実に平衡に達するために、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)継続してもよい。その後、室温での(例えば、1時間の)インキュベーションのために混合物を捕捉プレートに移す。溶液を次いで除去し、プレートをPBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)で10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0109】
別の実施形態によると、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いたアッセイが、約10応答単位(RU)で固定化した抗原CM5チップを用いて25℃で行われる。一実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE,Inc.)が、供給業者の指示書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈した後に、5μl/分の流速で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原の注入後、1Mエタノールアミンを注入して、未反応基をブロッキングする。動態測定のために、Fab(0.78nM~500nM)の2倍段階希釈物が、25℃で、およそ25μl/分の流速で、0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入される。会合速度(kon、またはk)及び解離速度(koff、またはk)は、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムとを同時に当てはめることによって算出される。平衡解離定数(K)は、koff/konとして算出する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオンレートが10M-s-を超える場合、オンレートは、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される場合に、漸増する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定することができる。
【0110】
2.抗体断片
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたく、また、WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0111】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載される。
【0112】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
【0113】
抗体断片は、本明細書に記載されるように、無傷の抗体のタンパク質消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むがこれらに限定されない、様々な技法によって作製することができる。
【0114】
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載される。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれから変更された、「クラススイッチされた」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0115】
ある特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的に、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減するために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、例えば、HVR(またはそれらの部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの部分)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。任意に、ヒト化抗体はまた、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元するまたは改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0116】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説されており、また例えば、Riechmann et al.,Nature332:323-329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトについて記載)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング」について記載)、Dall’Acqua et al.,Methods36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」について記載)、ならびにOsbourn et al.,Methods36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載)にさらに記載される。
【0117】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞成熟)フレームワーク領域またはヒト生殖系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングから導かれるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)が含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
4.ヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を用いて産生することができる。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載される。
【0119】
ヒト抗体は、免疫原を、抗原チャレンジに応答して無傷のヒト抗体またはヒト可変領域を含む無傷の抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に投与することによって、調製されてもよい。かかる動物は典型的に、内因性免役グロブリン遺伝子座を置き換える、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体中にランダムに組み込まれている、ヒト免役グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部分を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免役グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術について記載)、米国特許第5,770,429号(HuMab(登録商標)技術について記載)、米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術について記載)、ならびに米国特許出願公開第US2007/0061900号(VelociMouse(登録商標)技術について記載)も参照されたい。かかる動物によって生成された無傷の抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに修飾されてもよい。
【0120】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載される。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体もまた、Li et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載される。さらなる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載の方法が含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)もまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載される。
【0121】
ヒト抗体はまた、Fvクローン可変ドメイン配列をヒト由来ファージディスプレイライブラリから単離することによって、生成されてもよい。かかる可変ドメイン配列は次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わされてもよい。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が下記に記載される。
【0122】
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることにより単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、かかるライブラリを、所望の結合特性を保有する抗体についてスクリーニングするための、多様な方法が当該技術分野で知られている。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)で概説されており、また、例えば、McCafferty et al.,Nature348:552-554、Clackson et al.,Nature352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Marks and Bradbury,Methods in Molecular Biology248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods284(1-2):119-132(2004)にさらに記載される。
【0123】
ある特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングし、ファージライブラリ内でランダムに組換え、次いでこれを、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載のように抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは典型的に、1本鎖Fv(scFv)断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された源からのライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al.,EMBO J.12:725-734(1993)に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、いかなる免疫化も伴うことなく、広範な非自己抗原及び自己抗原に対する単一源の抗体を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、再配列されていないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を達成することによって、合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載している特許公報には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が含まれる。
【0124】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書でヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0125】
6.多重特異性抗体
上記の態様のうちのいずれか1つにおいて、本明細書に提供される抗CD3抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対して結合特異性を有する抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、CD3の2つの異なるエピトープ(例えば、CD3εまたはCD3γ)に結合し得る。ある特定の実施形態では、結合特異性のうちの一方は、CD3(例えば、CD3εまたはCD3γ)に対するものであり、他方は、任意の他の抗原(例えば、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原)に対するものである。したがって、二重特異性抗CD3抗体は、CD3及び第2の生物学的分子、例えば、表1に列挙され、本明細書及び米国公開第2010/0111856号に記載される第2の生物学的分子(例えば、腫瘍抗原)に対して結合特異性を有し得る。
表1.本発明の二特異性抗CD3抗体の腫瘍抗原標的
【0126】
二重特異性抗CD3抗体(例えば、上述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つ)は、CD3及び第2の生物学的分子、例えば、MHCによって細胞表面上に提示されるヒト白血球抗原(HLA)-ペプチド複合体に対して結合特異性を有し得る。二重特異性抗CD3抗体(例えば、上述の抗CD3抗体のうちのいずれか1つ)は、CD3及び第2の生物学的分子、例えば、HLA-ペプチド複合体のペプチドなどに対して結合特異性を有し得、この第2の生物学的分子は、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座G6D;Ly6-D、MEGT;NP_067079.2);0772P(CA125、MUC16;Genbank受託番号AF36148);アディポフィリン(ペリリピン-2、脂肪分化関連タンパク質、ADRP、ADFP、MGC10598;NCBI参照配列NP_001113.2);AIM-2(Absent In Melanoma2、PYHIN4、インターフェロン誘導タンパク質AIM2;NCBI参照配列NP_004824.1);ALDH1A1(アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリー、メンバーA1、ALDH1、PUMB1、レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ1、ALDC、ALDH-E1、ALHDII、RALDH1、EC1.2.1.36、ALDH11、HEL-9、HEL-S-53e、HEL12、RALDH1、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ1、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1、可溶性、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、肝サイトゾル、ALDHクラス1、精巣上体管腔タンパク質12、精巣上体管腔タンパク質9、精巣上体分泌精子結合タンパク質Li53e、レチナールデヒドロゲナーゼ1、RalDH1、アルデヒドデヒドロゲナーゼファミリー1メンバーA1、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、サイトゾル、EC1.2.1;NCBI参照配列NP_000680.2);アルファ-アクチニン-4(ACTN4、アクチニン、アルファ4、FSGS1、巣状分節性糸球体硬化症1、非筋肉アルファ-アクチニン4、F-アクチン架橋結合タンパク質、FSGS、アクチニン-4、アクチニンアルファ4アイソフォーム、アルファ-アクチニン-4;NCBI参照配列NP_004915.2);アルファ-フェトプロテイン(AFP、HPAFP、FETA、アルファ-1-フェトプロテイン、アルファ-フェトグロブリン、アルファ-1-フェトプロテイン、アルファ-フェトグロブリン、HP;GenBank:AAB58754.1);アンフィレグリン(AREG、SDGF、シュワン細胞腫由来成長因子、結腸直腸細胞由来成長因子、AR、CRDGF;GenBank:AAA51781.1);ARTC1(ART1、ADP-リボシルトランスフェラーゼ1、モノ(ADP-リボシル)トランスフェラーゼ1、ADP-リボシルトランスフェラーゼC2及びC3毒素様1、ART2、CD296、RT6、ADP-リボシルトランスフェラーゼ2、GPI結合NAD(P)(+)--アルギニンADP-リボシルトランスフェラーゼ1、EC2.4.2.31、CD296抗原;NP);ASLG659;ASPHD1(アスパラギン酸ベータ-ヒドロキシラーゼドメイン含有1、アスパラギン酸ベータ-ヒドロキシラーゼドメイン含有タンパク質1、EC1.14.11.-、EC1.14.11;GenBank:AAI44153.1);B7-H4(VTCN1、V-Setドメイン含有T細胞活性化阻害剤1、B7H4、B7スーパーファミリーメンバー1、免疫共刺激タンパク質B7-H4、B7h.5、T細胞共刺激分子B7x、B7S1、B7X、VCTN1、H4、B7ファミリーメンバー、PRO1291、B7ファミリーメンバー、H4、T細胞共刺激分子B7x、V-Setドメイン含有T細胞活性化阻害剤1、タンパク質B7S1;GenBank:AAZ17406.1);BAFF-R(TNFRSF13C、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー13C、BAFFR、B細胞活性化因子受容体、BAFF受容体、BLyS受容体3、CVID4、BROMIX、CD268、B細胞活性化因子受容体、プロリキシン、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13C、BR3、CD268抗原;NCBI参照配列NP_443177.1);BAGE-1;BCLX(L);BCR-ABL融合タンパク質(b3a2);ベータ-カテニン(CTNNB1、カテニン(カドヘリン関連タンパク質)、ベータ1、88kDa、CTNNB、MRD19、カテニン(カドヘリン関連タンパク質)、ベータ1(88kD)、アルマジロ、カテニンベータ-1;GenBank:CAA61107.1);BING-4(WDR46、WDリピートドメイン46、C6orf11、BING4、WDリピート含有タンパク質BING4、第6染色体オープンリーディングフレーム11、FP221、UTP7、WDリピート含有タンパク質46;NP);BMPR1B(骨形成タンパク質受容体IB型、Genbank受託番号NM_00120;NP);B-RAF(ブレビカン(BCAN、BEHAB、Genbank受託番号AF22905);ブレビカン(BCAN、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン7、脳エンリッチドヒアルロナン結合タンパク質(Brain-Enriched Hyaluronan-Binding Protein)、BEHAB、CSPG7、ブレビカンプロテオグリカン、ブレビカンコアタンパク質、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンBEHAB;GenBank:AAH27971.1);CALCA(カルシトニン関連ポリペプチドアルファ、CALC1、カルシトニン1、カルシトニン、アルファ型CGRP、カルシトニン遺伝子関連ペプチドI、CGRP-I、CGRP、CGRP1、CT、KC、カルシトニン/カルシトニン関連ポリペプチド、アルファ、ケタカルシン;NP);CASP-5(CASP5、カスパーゼ5、アポトーシス関連システインペプチダーゼ、カスパーゼ5、アポトーシス関連システインプロテアーゼ、プロテアーゼICH-3、プロテアーゼTY、ICE(rel)-III、ICE(rel)III、ICEREL-III、ICH-3、カスパーゼ-5、TYプロテアーゼ、EC3.4.22.58、ICH3、EC3.4.22;NP);CASP-8;CD19(CD19-B-リンパ球抗原CD19アイソフォーム2前駆体、B4,CVID3[ホモサピエンス]、NCBI参照配列NP_001761.3);CD20(CD20-B-リンパ球抗原CD20、膜貫通4-ドメイン、サブファミリーA、メンバー1、B1,Bp35,CD20,CVID5,LEU-16,MS4A2,S7;NCBI参照配列NP_690605.1);CD21(CD21(CR2(補体受容体またはC3DR(C3d/Epstein Barrウイルス受容体)またはHs.73792Genbank受託番号M2600);(CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム、BL-CAM、Lyb-8、Lyb8、SIGLEC-2、FLJ22814、Genbank受託番号AK02646);CD22;CD33(CD33分子、CD33抗原(Gp67)、シアル酸結合Ig様レクチン3、シアル酸結合Ig様レクチン3、SIGLEC3、gp67、SIGLEC-3、骨髄性細胞表面抗原CD33、p67、Siglec-3、CD33抗原;GenBank:AAH28152.1);CD45;CD70(CD70-腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー7;表面抗原CD70;Ki-24抗原;CD27リガンド;CD27-L;腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー7;種ホモサピエンスについてのNCBI参照配列:NP_001243.1);CD72(CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-;359アミノ酸、pI:8.66、分子量:40225、TM:1[P]遺伝子染色体:9p13.3、Genbank受託番号NP_001773.);CD79a(CD79a(CD79A、CD79a、免疫グロブリン関連アルファ、Igベータ(CD79B)と共有結合により相互作用し、表面上でIg M分子との複合体を形成するB細胞特異的タンパク質は、B細胞分化に関与するシグナルを伝達する)、pI:4.84、分子量:25028TM:2[P]遺伝子染色体:19q13.2、Genbank受託番号NP_001774.1);CD79b(CD79b(CD79B、CD79b、IGb(免疫グロブリン関連ベータ)、B29、Genbank受託番号NM_000626または1103867);Cdc27(細胞分裂周期27、D0S1430E、D17S978E、後期促進複合体サブユニット3、後期促進複合体サブユニット3、ANAPC3、APC3、CDC27Hs、H-NUC、CDC27ホモログ、細胞分裂周期27ホモログ(S.Cerevisiae)、HNUC、NUC2、後期促進複合体、タンパク質3、細胞分裂周期27ホモログ、細胞分裂周期タンパク質27ホモログ、Nuc2ホモログ;GenBank:AAH11656.1);CDK4(サイクリン依存性キナーゼ4、細胞分裂タンパク質キナーゼ4、PSK-J3、 EC2.7.11.22、CMM3、EC2.7.11;NCBI参照配列NP_000066.1);CDKN2A(サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A、MLM、CDKN2、MTS1、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A(黒色腫、P16、CDK4を阻害する)、サイクリン依存性キナーゼ4阻害剤A、複数腫瘍抑制因子1、CDK4I、MTS-1、CMM2、P16、ARF、INK4、INK4A、P14、P14ARF、P16-INK4A、P16INK4、P16INK4A、P19、P19ARF、TP16、CDK4阻害剤P16-INK4、細胞周期負調節因子ベータ、p14ARF、p16-INK4、p16-INK4a、p16INK4A、p19ARF;NP);CEA;CLL1(CLL-1(CLEC12A、MICL、及びDCAL、C型レクチン/C型レクチン様ドメイン(CTL/CTLD)スーパーファミリーのメンバーをコードする。このファミリーのメンバーは、共通のタンパク質折り畳みを共有し、細胞接着、細胞間シグナル伝達、糖タンパク質ターンオーバー、ならびに炎症及び免疫応答における役割などの多様な機能を有する。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、顆粒球及び単球の機能の負の調節因子である。この遺伝子のいくつかの代替的なスプライス転写物変異型が記載されているが、これらの変異型のうちの一部については全長の性質がわかっていない。この遺伝子は、染色体12p13上のナチュラルキラー遺伝子複合体領域における他のCTL/CTLDスーパーファミリーメンバーと緊密に関連している(Drickamer K Curr.Opin.Struct.Biol.9):585-90、van Rhenen A,et al.,Blood110):2659-66、Chen CH,et al.Blood 107):1459-67、Marshall AS,et al.Eur.J.Immunol.36):2159-69、Bakker AB,et al Cancer Res.64:8443-50、Marshall AS,et al J.Biol.Chem.279:14792-80。CLL-1は、単一のC型レクチン様ドメイン(カルシウムまたは糖のいずれにも結合することが予測されていない)、stalk領域、膜貫通ドメイン、及びITIMモチーフを含む短い細胞質尾部を含む、II型膜貫通受容体であることが示されている。);CLPP(カゼイン分解性ミトコンドリアマトリックスペプチダーゼタンパク質分解性サブユニット、エンドペプチダーゼClp、EC3.4.21.92、PRLTS3、ATP依存性プロテアーゼClpAP(E.Coli)、ClpP(カゼイン分解性プロテアーゼ、ATP依存性、タンパク質分解性サブユニット、E.Coli)ホモログ、ClpPカゼイン分解性ペプチダーゼ、ATP依存性、タンパク質分解性サブユニットホモログ(E.Coli)
、ClpPカゼイン分解性プロテアーゼ、ATP依存性、タンパク質分解性サブユニットホモログ(E.Coli)、ヒト、タンパク質分解性サブユニット、ATP依存性プロテアーゼClpAP、タンパク質分解性サブユニット、ヒト、ClpPカゼイン分解性ペプチダーゼATP依存性、タンパク質分解性サブユニット、ClpPカゼイン分解性ペプチダーゼ、ATP依存性、タンパク質分解性サブユニットホモログ、ClpPカゼイン分解性プロテアーゼ、ATP依存性、タンパク質分解性サブユニットホモログ、推定ATP依存性Clpプロテアーゼタンパク質分解性サブユニット、ミトコンドリア;NP);COA-1;CPSF;CRIPTO(CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形癌腫由来成長因子、Genbank受託番号骨髄腫NP_003203またはNM_00321);Cw6;CXCR5 CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1、CXCL13ケモカインによって活性化され、リンパ球遊走及び液性防御において機能し、HIV-2感染ならびにおそらくはAIDS、リンパ腫、骨髄腫、及び白血病の発症において役割を果たすGタンパク質共役型受容体);372アミノ酸、pI:8.54分子量:41959TM:7[P]遺伝子染色体:11q23.3、Genbank受託番号NP_001707.);CXORF61CXORF61-X染色体オープンリーディングフレーム61[ホモサピエンス]、NCBI参照配列NP_001017978.1);サイクリンD1(CCND1、BCL1、PRAD1、D11S287E、B細胞CLL/リンパ腫1、B細胞リンパ腫1タンパク質、BCL-1癌遺伝子、PRAD1癌遺伝子、サイクリンD1(PRAD1:副甲状腺腺腫症1)、G1/S特異的サイクリンD1、副甲状腺腺腫症1、U21B31、G1/S特異的サイクリン-D1、BCL-1;NCBI参照配列NP_444284.1);サイクリン-A1(CCNA1、CT146、サイクリンA1;GenBank:AAH36346.1);dek-can融合タンパク質;DKK1(Dickkopf WNTシグナル伝達経路阻害剤1、SK、hDkk-1、Dickkopf(Xenopus Laevis)ホモログ1、Dickkopf1ホモログ(Xenopus Laevis)、DKK-1、Dickkopf1ホモログ、Dickkopf関連タンパク質-1、Dickkopf-1様、Dickkopf様タンパク質1、Dickkopf関連タンパク質1、Dickkopf-1、Dkk-1;GenBank:AAQ89364.1);DR1(転写の下方調節因子1、TBP結合(負の補因子2)、負の補因子2-ベータ、TATA結合タンパク質関連リンタンパク質、NC2、NC2-ベータ、タンパク質Dr1、NC2-ベータ、転写の下方調節因子1;NCBI参照配列NP_001929.1);DR13(主要組織適合性複合体、クラスII、DRベータ1、HLA-DR1B、DRw10、DW2.2/DR2.2、SS1、DRB1、HLA-DRB、HLAクラスII組織適合性抗原、DR-1ベータ鎖、ヒト白血球抗原DRB1、リンパ球抗原DRB1、MHCクラスII抗原、MHCクラスIIHLA-DRベータ1鎖、MHCクラスIIHLA-DR-ベータ細胞表面糖タンパク質、MHCクラスIIHLA-DRw10-ベータ、DR-1、DR-12、DR-13、DR-14、DR-16、DR-4、DR-5、DR-7、DR-8、DR-9、DR1、DR12、DR13、DR14、DR16、DR4、DR5、DR7、DR8、DR9、DRw11、DRw8、HLA-DRB2、クローンP2-ベータ-3、MHCクラスII抗原DRB1*1、MHCクラスII抗原DRB1*10、 MHCクラスII抗原DRB1*11、MHCクラスII抗原DRB1*12、MHCクラスII抗原DRB1*13、MHCクラスII抗原DRB1*14、MHCクラスII抗原DRB1*15、MHCクラスII抗原DRB1*16、MHCクラスII抗原DRB1*3、MHCクラスII抗原DRB1*4、MHCクラスII抗原DRB1*7、MHCクラスII抗原DRB1*8、MHCクラスII抗原DRB1*9;NP);E16(E16(LAT1、SLC7A5、Genbank受託番号NM_00348);EDAR(EDAR-腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーEDAR前駆体、EDA-A1受容体;ダウンレス(downless)ホモログ;エクトジスプラシンA受容体;外胚葉異形成受容体;無汗型エクトジスプラシン受容体1、DL;ECTD10A;ECTD10B;ED1R;ED3;ED5;EDA-A1R;EDA1R;EDA3;HRM1[ホモサピエンス];NCBI参照配列NP_071731.1);EFTUD2(伸長因子Tu GTP結合ドメイン含有2、伸長因子Tu GTP結合ドメイン含有タンパク質2、hSNU114、SNU114ホモログ、U5SnRNP特異的タンパク質、116KDa、MFDGA、KIAA0031、116KD、U5SnRNP特異的タンパク質、116KDa U5核内低分子リボ核タンパク質成分、MFDM、SNRNP116、Snrp116、Snu114、U5-116KD、SNRP116、U5-116KDa;GenBank:AAH02360.1);EGFR(上皮成長因子受容体、ERBB、プロト癌遺伝子C-ErbB-1、受容体チロシン-タンパク質キナーゼErbB-1、ERBB1、HER1、EC2.7.10.1、上皮成長因子受容体(トリ赤芽球性白血症ウイルス(V-Erb-B)癌遺伝子ホモログ)、赤芽球性白血症ウイルス(V-Erb-B)癌遺伝子ホモログ(Avian)、PIG61、トリ赤芽球性白血症ウイルス(V-Erb-B)癌遺伝子ホモログ、細胞成長阻害タンパク質40、細胞増殖誘導タンパク質61、mENA、EC2.7.10;GenBank:AAH94761.1);EGFR-G719A;EGFR-G719C;EGFR-G719S;EGFR-L858R;EGFR-L861Q;EGFR-S768I;EGFR-T790M;伸長因子2(EEF2、真核生物翻訳伸長因子2、EF2、ポリペプチジル-TRNAトランスロカーゼ、EF-2、SCA26、EEF-2;NCBI参照配列NP_001952.1);ENAH(hMena)(イネーブルド(Enabled)ホモログ(Drosophila)、MENA、哺乳類イネーブルド、ENA、NDPP1、タンパク質イネーブルドホモログ;GenBank:AAH95481.1)-「ENAH(hMena)」ではなく「ENAH」のみの結果;EpCAM(上皮細胞接着分子、M4S1、MIC18、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子1、TACSTD1、TROP1、腺癌関連抗原、細胞表面糖タンパク質Trop-1、上皮糖タンパク質314、主要な胃腸腫瘍関連タンパク質GA733-2、EGP314、KSA、DIAR5、HNPCC8、モノクローナル抗体によって特定される抗原AUA1、EGP-2、EGP40、ESA、KS1/4、MK-1、ヒト上皮糖タンパク質2、膜成分、第4染色体、表面マーカー(35kD糖タンパク質)、EGP、Ep-CAM、GA733-2、M1S2、CD326抗原、上皮細胞表面抗原、hEGP314、KS1/4抗原、ACSTD1;GenBank:AAH14785.1);EphA3(EPH受容体A3、ETK1、ETK、TYRO4、HEK、Eph様チロシンキナーゼ1、チロシン-タンパク質キナーゼ受容体ETK1、EK4、EPH様キナーゼ4、EC2.7.10.1、EPHA3、HEK4、エフリンA型受容体3、ヒト胚キナーゼ1、TYRO4タンパク質チロシンキナーゼ、hEK4、ヒト胚キナーゼ、チロシン-タンパク質キナーゼTYRO4、EC2.7.10;GenBank:AAH63282.1);EphB2R;エピレグリン(EREG、ER、プロエピレグリン;GenBank:AAI36405.1);ETBR(EDNRB、エンドセリン受容体型B、HSCR2、HSCR、エンドセリン受容体非選択型、ET-B、ET-BR、ETRB、ABCDS、WS4A、ETB、エンドセリンB受容体;NP);ETV6-AML1融合タンパク質;EZH2(Zesteホモログのエンハンサー2(Drosophila)、リジンN-メチルトランスフェラーゼ6、ENX-1、KMT6EC2.1.1.43、EZH1、WVS、Zeste(Drosophila)ホモログのエンハンサー2、ENX1、EZH2b、KMT6A、WVS2、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼEZH2、Zesteホモログのエンハンサー2、EC2.1.1;GenBank:AAH10858.1);FcRH1(FCRL1、Fc受容体様1、FCRH1、Fc受容体ホモログ1、FcR様タンパク質1、免疫受容体移行関連タンパク質5、IFGP1、IRTA5、hIFGP1、IFGPファミリータンパク質1、CD307a、Fc受容体様タンパク質1、免疫グロブリンスーパーファミリーFc受容体、Gp42、FcRL1、CD307a抗原;GenBank:AAH33690.1);FcRH2(FCRL2、Fc受容体様2、SPAP1、SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1、Fc受容体ホモログ2、FcR様タンパク質2、免疫グロブリン受容体移行関連タンパク質4、FCRH2、IFGP4、IRTA4、IFGPファミリータンパク質4、SPAP1A、SPAP1B、SPAP1C、CD307b、Fc受容体様タンパク質2、免疫受容体移行関連タンパク質4、免疫グロブリンスーパーファミリーFc受容体、Gp42、SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1、FcRL2、CD307b抗原;GenBank:AAQ88497.1);FcRH5(FCRL5、Fc受容体様5、IRTA2、Fc受容体ホモログ5、FcR様タンパク質5、免疫受容体移行関連タンパク質2、BXMAS1、FCRH5、CD307、CD307e、PRO820、Fc受容体様タンパク質5、免疫グロブリンスーパーファミリー受容体移行関連2(IRTA2)、FcRL5、CD307e抗原;GenBank:AAI01070.1);FLT3-ITD;FN1(フィブロネクチン1、寒冷不溶性グロブリン、FN、遊走刺激因子、CIG、FNZ、GFND2、LETS、ED-B、FINC、GFND、MSF、フィブロネクチン;GenBank:AAI43764.1);G250(MN、CAIX、炭酸アンヒドラーゼIX、炭酸デヒドラターゼ、RCC関連タンパク質G250、炭酸デヒドラターゼIX、膜抗原MN、腎細胞癌関連抗原G250、CA-IX、P54/58N、pMW1、RCC関連抗原G250、炭酸アンヒドラーゼ9;NP);-「G250/MN/CAIX」ではなく「G250」のエイリアス結果;GAGE-1,2,8;GAGE-3,4,5,6,7;GDNF-Ra1(GDNFファミリー受容体アルファ1;GFRA1;GDNFR;GDNFRA;RETL1;TRNR1;RET1L;GDNFR-アルファ1;GFR-アルファ-;U95847;BC014962;NM_145793NM_005264);GEDA(Genbank受託番号AY26076);GFRA1-GDNFファミリー受容体アルファ-1;GDNF受容体アルファ-1;GDNFR-アルファ-1;GFR-アルファ-1;RETリガンド1;TGF-ベータ関連神経栄養因子受容体1[ホモサピエンス];ProtKB/Swiss-Prot:P56159.2;グリピカン-3(GPC3、グリピカン3、SDYS、グリピカンプロテオグリカン3、腸タンパク質OCI-5、GTR2-2、MXR7、SGBS1、DGSX、OCI-5.SGB、SGBS、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、分泌グリピカン-3、OCI5;GenBank:AAH35972.1);GnTVf;gp100(PMEL、プレメラノソームタンパク質、SILV、D12S53E、PMEL17、SIL
、メラニン細胞タンパク質Pmel17、メラニン細胞系列特異的抗原GP100、黒色腫関連ME20抗原、シルバー遺伝子座タンパク質ホモログ、ME20-M、ME20M、P1、P100、シルバー(マウスホモログ)様、シルバーホモログ(マウス)、ME20、SI、メラニン細胞タンパク質Mel17、メラニン細胞タンパク質PMEL、メラノソームマトリックスタンパク質17、シルバー、マウス、のホモログ;GenBank:AAC60634.1);GPC;GPNMB(糖タンパク質(膜貫通)Nmb、糖タンパク質NMB、糖タンパク質Nmb様タンパク質、オステオアクチビン、膜貫通糖タンパク質HGFIN、HGFIN、NMB、膜貫通糖タンパク質、膜貫通糖タンパク質NMB;GenBank:AAH32783.1);GPR172A(Gタンパク質共役型受容体172A;GPCR41;FLJ11856;D15Ertd747e);NP_078807.1;NM_024531.3);GPR19(Gタンパク質共役型受容体19;Mm.478;P_006134.1;NM_006143.2);GPR54(KISS1受容体;KISS1R;GPR54;HOT7T175;AXOR1;NP_115940.2;NM_032551.4);HAVCR1(A型肝炎ウイルス細胞受容体1、T細胞免疫グロブリンムチンファミリーメンバー1、腎障害分子1、KIM-1、KIM1、TIM、TIM-1、TIM1、TIMD-1、TIMD1、T細胞免疫グロブリンムチン受容体1、T細胞膜タンパク質1、HAVCR、HAVCR-1、T細胞免疫グロビン(Immunoglobin)ドメイン及びムチンドメインタンパク質1、HAVcr-1、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有タンパク質1;GenBank:AAH13325.1);HER2(ERBB2、V-Erb-B2トリ赤芽球性白血症ウイルス癌遺伝子ホモログ2、NGL、NEU、神経芽細胞/神経膠芽腫由来癌遺伝子ホモログ、転移性リンパ節遺伝子19タンパク質、プロト癌遺伝子C-ErbB-2、プロト癌遺伝子Neu、チロシンキナーゼ型細胞表面受容体HER2、MLN19、 p185erbB2、EC2.7.10.1、V-Erb-B2トリ赤芽球性白血症ウイルス癌遺伝子ホモログ2(神経芽細胞/神経膠芽腫由来癌遺伝子ホモログ)、CD340、HER-2、HER-2/neu、TKR1、C-ErbB2/Neuタンパク質、ハースタチン、神経芽細胞腫/神経膠芽腫由来癌遺伝子ホモログ、受容体チロシン-タンパク質キナーゼErbB-2、V-Erb-B2赤芽球性白血症ウイルス癌遺伝子ホモログ2、神経芽細胞/神経膠芽腫由来癌遺伝子ホモログ、MLN19、CD340抗原、EC2.7.10;NP);HER-2/neu-上記のエイリアス;HERV-K-MEL;HLA-DOB(ペプチド結合し、それらをCD4+Tリンパ球に提示するMHCクラスII分子のベータサブユニット(Ia抗原));273アミノ酸、pI:6.56、分子量:30820.TM:1[P]遺伝子染色体:6p21.3、Genbank受託番号NP_002111);hsp70-2(HSPA2、熱ショック70kDaタンパク質2、熱ショック70kDタンパク質2、HSP70-3、熱ショック関連70KDaタンパク質2、熱ショック70KDaタンパク質2;GenBank:AAD21815.1);IDO1(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1、IDO、INDO、インドールアミン-ピロール2,3-ジオキシゲナーゼ、IDO-1、インドールアミン-ピロール2,3ジオキシゲナーゼ、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ、インドール2,3ジオキシゲナーゼ、EC1.13.11.52;NCBI参照配列NP_002155.1);IGF2B3;IL13Rアルファ2(IL13RA2,インターロイキン13受容体、アルファ2、癌/精巣抗原19、インターロイキン-13結合タンパク質、IL-13R-アルファ-2、IL-13RA2、IL-13受容体サブユニットアルファ-2、IL-13Rサブユニットアルファ-2、CD213A2、CT19、IL-13R、IL13BP、インターロイキン13結合タンパク質、インターロイキン13受容体アルファ2鎖、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2、IL13R、CD213a2抗原;NP);IL20Rα;腸カルボキシルエステラーゼ;IRTA2(FcRH5のエイリアス);カリクレイン4(KLK4、カリクレイン関連ペプチダーゼ4、PRSS17、EMSP1、エナメルマトリックスセリンプロテイナーゼ1、カリクレイン様タンパク質1、セリンプロテアーゼ17、KLK-L1、PSTS、AI2A1、カリクレイン4(プロスターゼ、エナメルマトリックス、前立腺)、ARM1、EMSP、アンドロゲン調節性メッセージ1、エナメルマトリックスセリンプロテアーゼ1、カリクレイン、カリクレイン-4、プロスターゼ、EC3.4.21.-、プロスターゼ、EC3.4.21;GenBank:AAX30051.1);KIF20A(キネシンファミリーメンバー20A、RAB6KIFL、RAB6相互作用、キネシン様(Rabキネシン6)、有糸分裂a;LAGE-1;LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質;レングシン(LGSN、レングシン、グルタミンシンテターゼドメインを有するレンズタンパク質、GLULD1、グルタミン酸アンモニアリガーゼドメイン含有タンパク質1、LGS、グルタミン酸アンモニアリガーゼ(グルタミンシンテターゼ)ドメイン含有1、グルタミン酸アンモニアリガーゼ(グルタミンシンテターゼ)ドメイン含有1、レンズグルタミンシンテターゼ様;GenBank:AAF61255.1);LGR5(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役型受容体5;GPR49、GPR6;NP_003658.1;NM_003667.2;LY64(リンパ球抗原64(RP10、ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質、 B細胞活性化及びアポトーシスを調節し、機能喪失は、全身性エリテマトーデスを有する患者における疾患活性の増加に関連付けられる);661アミノ酸、pI:6.20、分子量:74147TM:1[P]遺伝子染色体:5q12、Genbank受託番号NP_005573.;Ly6E(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座E;Ly67,RIG-E,SCA-2,TSA-;NP_002337.1;NM_002346.2);LY6K(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K;LY6K;HSJ001348;FLJ3522;NP_059997.3;NM_017527.3);LyPD1-LY6/PLAURドメイン含有1、PHTS[ホモサピエンス]、GenBank:AAH17318.1);MAGE-A1(黒色腫抗原ファミリーA、1(抗原MZ2-Eの発現を導く、MAGE1、黒色腫抗原ファミリーA1、MAGEA1、黒色腫抗原MAGE-1、黒色腫関連抗原1、黒色腫関連抗原MZ2-E、抗原MZ2-E、癌/精巣抗原1.1、CT1.1、MAGE-1抗原、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー1、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー1、MAGE1A;NCBI参照配列NP_004979.3);MAGE-A10(MAGEA10、黒色腫抗原ファミリーA、10、MAGE10、MAGE-10抗原、黒色腫関連抗原10、癌/精巣抗原1.10、CT1.10、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー10、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー10;NCBI参照配列NP_001238757.1);MAGE-A12(MAGEA12、黒色腫抗原ファミリーA、12、MAGE12、癌/精巣抗原1.12、CT1.12、MAGE12F抗原、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー12、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー12、黒色腫関連抗原12、MAGE-12抗原;NCBI参照配列NP_001159859.1);MAGE-A2(MAGEA2、黒色腫抗原ファミリーA、2、MAGE2、癌/精巣抗原1.2、CT1.2、MAGEA2A、MAGE-2抗原、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー2、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー2、黒色腫抗原2、黒色腫関連抗原2;NCBI参照配列NP_001269434.1);MAGE-A3(MAGEA3、黒色腫抗原ファミリーA、3、MAGE3、MAGE-3抗原、抗原MZ2-D、黒色腫関連抗原3、癌/精巣抗原1.3、CT1.3、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー3、HIP8、HYPD、MAGEA6、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー3;NCBI参照配列NP_005353.1);MAGE-A4(MAGEA4、黒色腫抗原ファミリーA、4、MAGE4、黒色腫関連抗原4、癌/精巣抗原1.4、CT1.4、MAGE-4抗原、MAGE-41抗原、MAGE-X2抗原、MAGE4A、MAGE4B、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー4、MAGE-41、MAGE-X2、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー4;NCBI参照配列NP_001011550.1);MAGE-A6(MAGEA6、黒色腫抗原ファミリーA、6、MAGE6、MAGE-6抗原、黒色腫関連抗原6、癌/精巣抗原1.6、CT1.6、MAGE3B抗原、癌/精巣抗原ファミリー1、黒色腫抗原ファミリーA6、メンバー6、MAGE-3b、MAGE3B、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー6;NCBI参照配列NP_787064.1);MAGE-A9(MAGEA9、黒色腫抗原ファミリーA、9、MAGE9、MAGE-9抗原、黒色腫関連抗原9、癌/精巣抗原1.9、CT1.9、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー9、癌/精巣抗原ファミリー1、メンバー9、MAGEA9A;NCBI参照配列NP_005356.1);MAGE-C1(MAGEC1、黒色腫抗原ファミリーC、1、癌/精巣抗原7.1、CT7.1、MAGE-C1抗原、癌/精巣抗原ファミリー7、メンバー1、CT7、癌/精巣抗原ファミリー7、メンバー1、黒色腫関連抗原C1;NCBI参照配列NP_005453.2);MAGE-C2(MAGEC2、黒色腫抗原ファミリーC、2、MAGEE1、癌/精巣抗原10、CT10、HCA587、黒色腫抗原、ファミリーE、1、癌/精巣特異的、肝細胞癌関連抗原587、MAGE-C2抗原、MAGE-E1抗原、肝細胞癌抗原587、黒色腫関連抗原C2;NCBI参照配列NP_057333.1);マンマグロビン-A(SCGB2A2、セクレトグロビン、ファミリー2A、メンバー2、MGB1、マンマグロビン1、UGB2、マンマグロビンA、マンマグロビン-A、マンマグロビン-1、セクレトグロビンファミリー2Aメンバー2;NP);MART2(HHAT、ヘッジホッグアシルトランスフェラーゼ、SKI1、T細胞2によって認識される黒色腫抗原、スキニーヘッジホッグタンパク質1、Skn、T細胞2によって認識される黒色腫抗原、タンパク質-システインN-パルミトイルトランスフェラーゼHHAT、EC2.3.1.-;GenBank:AAH39071.1);M-CSF(CSF1、コロニー刺激因子1(マクロファージ)、MCSF、CSF-1、ラニモスチム(Lanimostim)、マクロファージコロニー刺激因子1、ラニモスチム;GenBank:AAH21117.1);MCSP(SMCP、精子ミトコンドリア関連システインリッチタンパク質、MCS、ミトコンドリアカプセルセレノタンパク質、HSMCSGEN1、精子ミトコンドリア関連システインリッチタンパク質;NCBI参照配列NP_109588.2);XAGE-1b/GAGED2a;WT1(ウィルムス腫瘍1、WAGR、GUD、WIT-2、WT33、EWSのアミノ末端ドメイン、NPHS4、WT1のDNA結合ドメインの最後の3つのジンクフィンガー、AWT1、ウィルムス腫瘍タンパク質、EWS-WT1;GenBank:AAB33443.1);VEGF;チロシナーゼ(TYR;OCAIA;OCA1A;チロシナーゼ;SHEP;NP_000363.1;
NM_000372.4;GenBank:AAB60319.1);TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4、Genbank受託番号NM_01763);TRP2-INT2;TRP-2;TRP-1/gp75(チロシナーゼ関連タンパク質1、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸オキシダーゼ、CAS2、CATB、TYRP、OCA3、カタラーゼB、b-タンパク質、糖タンパク質75、EC1.14.18.,黒色腫抗原Gp75、TYRP1、TRP、TYRRP、TRP1、SHEP11、DHICAオキシダーゼ、EC1.14.18、GP75、EC1.14.18.1;トリオースリン酸イソメラーゼ(トリオースリン酸イソメラーゼ1、TPID、トリオースリン酸イソメラーゼ、HEL-S-49、TIM、精巣上体分泌タンパク質Li49、TPI、トリオースリン酸イソメラーゼ、EC5.3.1.1;TRAG-3(CSAGファミリーメンバー2、癌/精巣抗原ファミリー24、CSAG3B、メンバー2、CSAGファミリーメンバー3B、癌/精巣抗原ファミリー24メンバー2、癌/精巣抗原24.2、軟骨肉腫関連遺伝子2/3タンパク質、タキソール耐性関連遺伝子3タンパク質、軟骨肉腫関連遺伝子2/3タンパク質様、CT24.2、タキソール耐性関連遺伝子3、TRAG-3、CSAG3A、TRAG3;);TMEM46(shisaホモログ2(Xenopus laevis);SHISA;NP_001007539.1;NM_001007538.1;TMEM118(リングフィンガータンパク質、 膜貫通2;RNFT2;FLJ1462;NP_001103373.1;NM_001109903.1;TMEFF1(EGF様及び2つのフォリスタチン様ドメインを有する膜貫通タンパク質1;トモレグリン-;H7365;C9orf2;C9ORF2;U19878;X83961;NM_080655;NM_003692;TGF-ベータRII(TGFBR2、トランスフォーミング成長因子、ベータ受容体II(70/80kDa)、TGFベータ-RII、MFS2、tベータR-II、TGFR-2、TGF-ベータ受容体型IIB、TGF-ベータ型II受容体、TGF-ベータ受容体型-2、EC2.7.11.30、トランスフォーミング成長因子ベータ受容体型IIC、AAT3、TベータR-II、トランスフォーミング成長因子、ベータ受容体II(70-80kD)、TGF-ベータ受容体型II、FAA3、トランスフォーミング成長因子-ベータ受容体型II、LDS1B、HNPCC6、LDS2B、LDS2、RIIC、EC2.7.11、TAAD2;TENB2(TMEFF2、トモレグリン、TPEF、HPP1、TR、推定膜貫通プロテオグリカン、EGF/ヘレグリンファミリーの成長因子及びフォリスタチンに関連);374アミノ酸、NCBI受託:AAD55776、AAF91397、AAG49451、NCBI RefSeq:NP_057276;NCBI遺伝子:23671;OMIM:605734;SwissProt Q9UIK5;Genbank受託番号AF179274;AY358907、CAF85723、CQ782436;TAG-2;TAG-1(コンタクチン2(軸索)、TAG-1、AXT、アクソニン-1細胞接着分子、TAX、コンタクチン2(一過性で発現される)、TAX1、コンタクチン-2、軸索糖タンパク質TAG-1、一過性で発現される軸索糖タンパク質、一過性軸索糖タンパク質、アクソニン-1、TAX-1、TAG1、FAME5;PRF:444868);SYT-SSX1または-SSX2融合タンパク質;サバイビン;STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺癌関連遺伝子1、前立腺癌関連タンパク質1、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2、6回膜貫通前立腺タンパク質、Genbank受託番号AF45513;STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原、Genbank受託番号NM_01244;SSX-4;SSX-2(SSX2、滑膜肉腫、Xレークポイント2、Xブレークポイント2、SSX、Xブレークポイント2B、癌/精巣抗原5.2、X染色体関連2、腫瘍抗原HOM-MEL-40、CT5.2、HD21、癌/精巣抗原ファミリー5、HOM-MEL-40、アイソフォームB、癌/精巣抗原ファミリー5メンバー2a、メンバー2a、タンパク質SSX2、肉腫、肉腫、滑膜、X-染色体関連2、滑膜、滑膜肉腫、Xブレークポイント2B、滑膜肉腫m、SSX2A;Sp17;SOX10(SRY(性決定領域Y)-ボックス10、マウス、PCWH、DOM、WS4、WS2E、WS4C、優性巨大結腸症、マウス、優性巨大結腸症、SRY関連HMG-ボックス遺伝子10のヒトホモログ、転写因子SOX-10のヒトホモログ;GenBank:CAG30470.1);SNRPD1(核内低分子リボ核タンパク質D1、核内低分子リボ核タンパク質D1、ポリペプチド16kDa、ポリペプチド(16kD)、SNRPD、HsT2456、Sm-D1、SMD1、Sm-D自家抗原、核内低分子リボ核タンパク質D1ポリペプチド16kDa偽遺伝子、SnRNPコアタンパク質D1、核内低分子リボ核タンパク質Sm D1;SLC35D3(可溶性キャリアファミリー35、メンバーD3、FRCL1、フリンジ接続様タンパク質1、bA55K22.3、Frc、フリンジ様1、可溶性キャリアファミリー35メンバーD3;NCBI GenBank:NC_000006.11NC_018917.2NT_025741.16);SIRT2(サーチュイン2、NAD依存性デアセチラーゼサーチュイン-2、SIRL2、サイレントインフォメーション調節因子2、調節タンパク質SIR2ホモログ2、Sir2関連タンパク質2型、SIR2様タンパク質2、サーチュイン2型、サーチュイン(サイレント接合型インフォメーション調節2ホモログ)2(S.Cerevisiae)、サーチュイン-2、サーチュイン(サイレント接合型インフォメーション調節2、S.Cerevisiae、ホモログ)2、EC3.5.1.,SIR2;GenBank:AAK51133.1);Sema5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7回トロンボスポンジンリピート(1型及び1型様)、膜貫通ドメイン(TM)及び短い細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B、Genbank受託番号AB04087;セセルニン1(SCRN1、SES1、KIAA0193、セセリン(secerin)-1;GenBank:EAL24458.1);SAGE(SAGE1、肉腫抗原1、癌/精巣抗原14、CT14、推定腫瘍抗原;NCBI参照配列NP_061136.2);RU2AS(KAAG1、腎関連抗原1、RU2AS、RU2アンチセンス遺伝子タンパク質、腎関連抗原1;GenBank:AAF23613.1);RNF43-E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43前駆体[ホモサピエンス]、RNF124;URCC;NCBI参照配列NP_060233.3;RhoC(RGS5(G-タンパク質シグナル伝達の調節因子5、MSTP032、G-タンパク質シグナル伝達(Signalling)の調節因子5、MSTP092、MST092、MSTP106、MST106、MSTP129、MST129;GenBank:AAB84001.1);RET(retプロト癌遺伝子;MEN2A;HSCR1;MEN2B;MTC1;PTC;CDHF12;Hs.168114;RET51;RET-ELE;NP_066124.1;NM_020975.4);RBAF600(UBR4、ユビキチンタンパク質リガーゼE3成分N-レコグニン4、ジンクフィンガー、UBR11型、ZUBR1、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼUBR4、RBAF600、600KDa網膜芽細胞腫タンパク質関連因子、ジンクフィンガーUBR1型タンパク質1、EC6.3.2.,N-レコグニン-4、KIAA0462、p600、EC6.3.2、KIAA1307;GenBank:AAL83880.1);RAGE-1(MOK、MOKタンパク質キナーゼ、腎腫瘍抗原、RAGE、MAPK/MAK/MRK重複キナーゼ、腎腫瘍抗原1、腎細胞癌抗原、RAGE-1、EC2.7.11.22、RAGE1;UniProtKB/Swiss-Prot:Q9UQ07.1);RAB38/NY-MEL-1(RAB38、NY-MEL-1、RAB38、メンバーRAS癌遺伝子ファミリー、黒色腫抗原NY-MEL-1、Rab関連GTP結合タンパク質、Ras関連タンパク質Rab-38、rrGTPbp;GenBank:AAH15808.1);PTPRK(DJ480J14.2.1(タンパク質チロシンホスファターゼ、K受容体型R-PTP-カッパ、タンパク質チロシンホスファターゼカッパ、タンパク質チロシンホスファターゼカッパ)、タンパク質チロシンホスファターゼ、K受容体型、タンパク質-チロシンホスファターゼカッパ、タンパク質-チロシンホスファターゼ、カッパ受容体型、R-PTP-カッパ、チロシン-タンパク質ホスファターゼカッパ受容体型、EC3.1.3.48、PTPK;GenBank:AAI44514.1);PSMA;PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA2700050C12、RIKEN cDNA2700050C12遺伝子、Genbank受託番号AY358628);PSCA(前立腺幹細胞抗原前駆体、Genbank受託番号AJ29743;PRDX5(ペルオキシレドキシン5、EC1.11.1.15、TPx VI型、B166、抗酸化酵素B166、HEL-S-55、肝組織2D-Page Spot71B、PMP20、ペルオキシソーム抗酸化酵素、PRDX6、チオレドキシンペルオキシダーゼPMP20、PRXV、AOEB166、精巣上体分泌タンパク質Li55、Aluコリプレッサー1、ペルオキシレドキシン-5、ミトコンドリア、ペルオキシレドキシンV、prx-V、チオレドキシンレダクターゼ、Prx-V、ACR1、Aluコリプレッサー、PLP;GenBank:CAG33484.1);PRAME(黒色腫において優先的に発現される抗原、優先的に発現される黒色腫の抗原、MAPE、OIP-4、OIPA、CT130、癌/精巣抗原130、腫瘍において優先的に発現される黒色腫抗原、Opa相互作用タンパク質4、Opa相互作用タンパク質OIP4;GenBank:CAG30435.1);pml-RARアルファ融合タンパク質;PMEL17(シルバーホモログ;SILV;D12S53E;PMEL17;SI;SIL);ME20;gp10BC001414;BT007202;M32295;M77348;NM_006928;PBF(ZNF395、ジンクフィンガータンパク質395、PRF-1、ハンチントン病調節、HD遺伝子調節領域結合タンパク質、領域結合タンパク質2、タンパク質2、パピローマウイルス調節因子1、HD調節因子2、パピローマウイルス調節因子、PRF1、HDBP-2、Si-1-8-14、HDBP2、ハンチントン病遺伝子調節領域結合タンパク質2、HDRF-2、パピローマウイルス調節因子PRF-1、PBF;GenBank:AAH01237.1);PAX5(ペアードボックス5、ペアードボックスホメオティック遺伝子5、BSAP、ペアードボックスタンパク質Pax-5、B細胞系列特異的活性化因子、ペアードドメインGene5、ペアードボックス遺伝子5(B細胞系列特異的活性化因子タンパク質)、B細胞特異的転写因子、ペアードボックス遺伝子5(B細胞系列特異的活性化因子);PAP(REG3A、再生膵島由来3アルファ、INGAP、PAP-H、肝腸膵臓タンパク質、PBBCGF、ヒト
プロ膵島ペプチド、REG-III、膵炎関連タンパク質1、Reg3、RegIII-アルファ、肝癌-腸-膵臓、再生膵島由来タンパク質III-アルファ、膵臓ベータ細胞成長因子、HIP、PAP相同タンパク質、HIP/PAP、増殖誘導タンパク質34、PAP1、増殖誘導タンパク質42、REG-3-アルファ、再生膵島由来タンパク質3-アルファ、膵炎関連タンパク質;GenBank:AAH36776.1);p53(TP53、腫瘍タンパク質P53、TPR53、P53、細胞腫瘍抗原P53、抗原NY-CO-13、変異体腫瘍タンパク質53、リンタンパク質P53、P53腫瘍サプレッサー、BCC7、トランスフォーメーション関連タンパク質53、LFS1、腫瘍タンパク質53、リ・フラウメニ症候群、腫瘍サプレッサーP53;P2X5(プリン作動性受容体P2Xリガンド開口型イオンチャネル5、シナプス伝達及び神経発生に関与し得る、 細胞外ATPによって開閉されるイオンチャネル、不足すると突発性排尿筋不安定の病態生理に寄与し得る);422アミノ酸)、pI:7.63、分子量:47206TM:1[P]遺伝子染色体:17p13.3、Genbank受託番号NP_002552.;OGT(O結合型N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)トランスフェラーゼ、O-GlcNAcトランスフェラーゼP110サブユニット、O結合型N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)トランスフェラーゼ(UDP-N-アセチルグルコサミン:ポリペプチド-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、UDP-N-アセチルグルコサミン--ペプチドN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ110KDaサブユニット、UDP-N-アセチルグルコサミン:ポリペプチド-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、ウリジンジホスホ-N-アセチルグルコサミン:ポリペプチドベータ-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、O-GlcNAcトランスフェラーゼサブユニットP110、EC2.4.1.255、O結合型N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼ110KDaサブユニット、EC2.4.1、HRNT1、EC2.4.1.186、O-GLCNAC;GenBank:AAH38180.1);OA1(骨関節炎QTL1、OASD;GenBank:CAA88742.1);NY-ESO-1/LAGE-2(癌/精巣抗原1B、CTAG1B、NY-ESO-1、LAGE-2、ESO1、CTAG1、CTAG、LAGE2B、癌/精巣抗原1、自己免疫性癌/精巣抗原NY-ESO-1、Ancer抗原3、癌/精巣抗原6.1、New York食道扁平細胞癌1、L抗原ファミリーメンバー2、LAGE2、CT6.1、LAGE2A;GenBank:AAI30365.1);NY-BR-1(ANKRD30A、アンキリンリピートドメイン30A、乳癌抗原NY-BR-1、血清学的規定乳癌抗原NY-BR-1、アンキリンリピートドメイン含有タンパク質30A;NCBI参照配列NP_443723.2);N-ras(NRAS、神経芽細胞腫RASウイルス(V-Ras)癌遺伝子ホモログ、NRAS1、トランスフォーミングタンパク質N-Ras、GTPase NRas、ALPS4、N-Rasタンパク質パート4、NS6、癌遺伝子ホモログ、HRAS1;GenBank:AAH05219.1);NFYC(核転写因子Y、ガンマ、HAP5、HSM、核転写因子YサブユニットC、トランス活性化因子HSM-1/2、CCAAT結合因子サブユニットC、NF-YC、CCAAT転写結合因子サブユニットガンマ、CAATボックスDNA結合タンパク質サブユニットC、ヒストンH1転写因子ラージサブユニット2A、CBFC、核転写因子Yサブユニットガンマ、CBF-C、トランス活性化因子HSM-1、H1TF2A、転写因子NF-Y、Cサブユニット;ネオ-PAP(PAPOLG、ポリ(A)ポリメラーゼガンマ、ネオ-ポリ(A)ポリメラーゼ、核ポリ(A)ポリメラーゼガンマ、ポリヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼガンマ、SRP RNA3’アデニル化酵素/Pap2、PAP-ガンマ、ネオ-PAP、SRP RNA3’-アデニル化酵素、PAP2、EC2.7.7.19、PAPG;NCBI参照配列NP_075045.2);NCA(CEACAM6、Genbank受託番号M1872);Napi3b(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、可溶性キャリアファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性リン酸輸送体3b、Genbank受託番号NM_00642);ミオシンクラスI;MUM-3;MUM-2(TRAPPC1、輸送タンパク質粒子複合体1、BET5、BET5ホモログ、MUM2、黒色腫遍在変異2、多発性骨髄腫タンパク質2、輸送タンパク質粒子複合体サブユニット1;MUM-1f;ムチン(MUC1、ムチン1、細胞表面関連、PEMT、PUM、CA15-3、MCKD1、ADMCKD、髄質性嚢胞腎疾患1(常染色体優性)、ADMCKD1、ムチン1、膜貫通、CD227、乳癌関連抗原DF3、MAM6、癌抗原15-3、MCD、癌関連ムチン、MCKD、Krebs Von Den Lungen-6、MUC-1/SEC、ピーナツ反応性尿ムチン、MUC1/ZD、腫瘍関連上皮膜抗原、DF3抗原、腫瘍関連ムチン、エピシアリン、EMA、H23抗原、H23AG、ムチン-1、KL-6、腫瘍関連上皮ムチン、MUC-1、エピシアリン、PEM、CD227抗原;UniProtKB/Swiss-Prot:P15941.3);MUC5AC(ムチン5AC、オリゴマー粘液/ゲル形成、気管気管支ムチンMUC5、TBM、ムチン5、サブタイプA及びC、気管気管支/胃、leB、胃ムチン、ムチン5AC、オリゴマー粘液/ゲル形成偽遺伝子、ルイスB血液型抗原、LeB、主要気道糖タンパク質、MUC-5AC、ムチン-5サブタイプAC、気管気管支;MUC1(ムチン1、細胞表面関連、PEMT、PUM、CA15-3、MCKD1、ADMCKD、髄質性嚢胞腎疾患1(常染色体優性)、ADMCKD1、ムチン1、膜貫通、CD227、乳癌関連抗原DF3、MAM6、癌抗原15-3、MCD、癌関連ムチン、MCKD、Krebs Von Den Lungen-6、MUC-1/SEC、ピーナツ反応性尿ムチン、MUC-1/X、多形上皮ムチン、MUC1/ZD、腫瘍関連上皮膜抗原、DF3抗原、腫瘍関連ムチン、エピシアリン、EMA、h23抗原、H23AG、ムチン-1、KL-6、腫瘍関連上皮ムチン、MUC-1、エピシアリン、PEM、CD227抗原;MSG783(RNF124、仮想タンパク質FLJ20315、Genbank受託番号NM-01776;MRP4-多剤耐性関連タンパク質4アイソフォーム3、MOAT-B;MOATB[ホモサピエンス];NCBI参照配列NP_001288758.1;MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン、Genbank受託番号NM_00582;MMP-7(MMP7、マトリライシン、MPSL1、マトリン、マトリックスメタロプロテイナーゼ7(マトリライシン、子宮)、子宮マトリライシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ-7、EC3.4.24.23、Pump-1プロテアーゼ、マトリン、子宮メタロプロテイナーゼ、PUMP1、MMP-7、EC3.4.24、PUMP-1;GenBank:AAC37543.1);MMP-2(MMP2、マトリックスメタロペプチダーゼ2(ゼラチナーゼA、72kDaゼラチナーゼ、72kDaIV型コラゲナーゼ)、MONA、CLG4A、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(ゼラチナーゼA、72kDゼラチナーゼ、72kDIV型コラゲナーゼ)、CLG4、72kDaゼラチナーゼ、72kDaIV型コラゲナーゼ)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-2、MMP-II、72KDaゼラチナーゼ、コラゲナーゼ型IV-A、MMP-2、マトリックスメタロプロテイナーゼ-II、TBE-1、神経栄養ゼラチナーゼ、EC3.4.24.24、EC3.4.24;GenBank:AAH02576.1);ならびにメロウからなる群から選択され得る。
【0127】
例えば、いくつかの事例では、TQSFILRTのHVR-L3配列(配列番号6)、ならびに(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、及び(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2から選択される、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのHVRを少なくとも含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体は、Ly6G6Dに結合する第2の結合ドメインを有してもよい。いくつかの事例では、CD3に結合する第1の結合ドメインは、それぞれ配列番号9~12の配列を含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)、及び/またはそれぞれ配列番号13~16の配列を含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)を含む。いくつかの事例では、CD3に結合する第1の結合ドメインは、例えば、配列番号8またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含んでもよい。いくつかの事例では、例えば、本明細書に記載される抗CD3抗体38E4v11によって保有される、CD3に結合する第1の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号8またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、及び(b)配列番号7またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメインを含んでもよい。
【0128】
他の事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上の細胞表面抗原(例えば、腫瘍抗原)に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0129】
いくつかの事例では、細胞表面抗原は、標的細胞上で低コピー数で発現され得る。例えば、いくつかの事例では、細胞表面抗原は、1標的細胞あたり35,000コピー未満発現されるかまたは存在する。いくつかの実施形態では、低コピー数細胞表面抗原は、1標的細胞あたり100~35,000コピー、1標的細胞あたり100~30,000コピー、1標的細胞あたり100~25,000コピー、1標的細胞あたり100~20,000コピー、1標的細胞あたり100~15,000コピー、1標的細胞あたり100~10,000コピー、1標的細胞あたり100~5,000コピー、1標的細胞あたり100~2,000コピー、1標的細胞あたり100~1,000コピー;または1標的細胞あたり100~500コピー存在する。細胞表面抗原のコピー数は、例えば、標準スキャッチャードプロットを用いて決定することができる。
【0130】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、Ly6G6Dに結合する第2の結合ドメインを有してもよい。Ly6G6Dは、標的細胞上で低コピー数で、例えば、標的細胞に応じて、1標的細胞あたり約20,000コピー~1標的細胞あたり約30,000コピー(例えば、1標的細胞あたり約20,000コピー~1標的細胞あたり約25,000コピー、または1標的細胞あたり約25,000コピー~1標的細胞あたり約30,000コピー)発現され得るかまたは存在し得る。Ly6G6Dのコピー数は、標準スキャッチャードプロットを用いて決定することができる。いくつかの事例では、CD3に結合する第1の結合ドメインは、それぞれ配列番号9~12の配列を含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)、及び/またはそれぞれ配列番号13~16の配列を含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)を含む。いくつかの事例では、CD3に結合する第1の結合ドメインは、例えば、配列番号8またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含んでもよい。いくつかの事例では、例えば、本明細書に記載される抗CD3抗体38E4v11によって保有される、CD3に結合する第1の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号8またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、及び(b)配列番号7またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメインを含んでもよい。
【0131】
他の事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、CD20に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。例えば、抗CD20抗体2H7.v16によって保有される、CD20に結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含んでもよい(米国特許第7,799,900に記載される)。いくつかの事例では、CD20に結合する第2の結合ドメインは、それぞれ配列番号23~26の配列を含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)、及び/またはそれぞれ配列番号27~30の配列を含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)を含む。いくつかの事例では、例えば、抗CD20抗体2H7.v16によって保有される、CD20に結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号31またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号32またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)と同様のVHドメイン及び(b)と同様のVLドメインを含んでもよい(米国特許第7,799,900に記載される)。
【0132】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、FcRH5に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。例えば、抗FcRH5抗体1G7によって保有される、FcRH5に結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含んでもよい。いくつかの事例では、FcRH5に結合する第2の結合ドメインは、それぞれ配列番号39~42の配列を含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)、及び/またはそれぞれ配列番号43~46の配列を含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)を含む。いくつかの事例では、FcRH5に結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号47またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号48またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)と同様のVHドメイン及び(b)と同様のVLドメインを含んでもよい。
【0133】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、PMEL17に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0134】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、LY6Eに結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0135】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、CD19に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0136】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、CD33に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0137】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、CD22に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0138】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、CD79Aに結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0139】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、CD79Bに結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0140】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、EDARに結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0141】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、GFRA1に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0142】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、MRP4に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0143】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、RETに結合する第2の結合ドメインを有してもよい。例えば、抗RET抗体41205.v6によって保有される、RETに結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号52のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含んでもよい。いくつかの事例では、RETに結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号55またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号56またはその配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)と同様のVHドメイン及び(b)と同様のVLドメインを含んでもよい。
【0144】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、Steap1に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0145】
いくつかの事例では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する、抗CD3抗体、例えば38E4v11は、TenB2に結合する第2の結合ドメインを有してもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体をまた使用して、細胞傷害性薬剤を、腫瘍抗原、例えば、表1に列挙される腫瘍抗原(例えば、Ly6G6D、CD20、FcRH5、HER2、LYPD1、PMEL17、LY6E、CD19、CD33、CD22、CD79A、CD79B、EDAR、GFRA1、MRP4、RET、Steap1、またはTenB2)を発現する細胞に局在化させてもよい。二重特異性抗体はまた、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0147】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、及び「ノブ・イン・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体の「ノブ・イン・ホール」操作を利用して、ノブを含有する第1のアーム、及び第1のアームのノブが結合され得るホールを含有する第2のアームを生成してもよい。本発明の多重特異性抗体のノブは、一実施形態では、抗CD3アームであり得る。代替的に、本発明の多重特異性抗体のノブは、一実施形態では、抗標的/抗原アームであり得る。本発明の多重特異性抗体のホールは、一実施形態では、抗CD3アームであり得る。代替的に、本発明の多重特異性抗体のホールは、一実施形態では、抗標的/抗原アームであり得る。多重特異性抗体はまた、免疫グロブリンクロスオーバー(別名、Fabドメイン交換またはCrossMab形式)技術を使用して操作されてもよい(例えば、WO2009/080253、Schaefer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,108:11187-11192(2011)を参照されたい)。多重特異性抗体はまた、静電ステアリング効果を操作して抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照されたい)、及び一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載される三重特異性抗体を調製することによって、作製されてもよい。
【0148】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作抗体も本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0149】
抗体またはその抗体断片はまた、CD3、ならびに別の異なる抗原(例えば、第2の生物学的分子)に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も含み得る(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
【0150】
7.抗体変異型
ある特定の実施形態では、本発明の抗CD3抗体のアミノ酸配列変異型(例えば、CD3に、例えば高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。抗体のアミノ酸配列変異型は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/またはそこへの残基の挿入、及び/またはその内の残基の置換が含まれる。最終構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせることができるが、但し、その最終構築物が、所望の特徴、例えば、抗原結合性を有することを条件とする。
【0151】
a.置換、挿入、及び欠失変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異型が提供される。置換型変異誘発に対する目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表2の「好ましい置換」という見出しの下に示される。より実質的な変化は、表2の「例示的な置換」という見出しの下に示され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換が目的とする抗体中に導入され、その産物が、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについて、スクリーニングされてもよい。
表2.例示的なアミノ酸置換及び好ましいアミノ酸置換
【0152】
アミノ酸は、次の共通の側鎖特性に従って群分けされ得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0153】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴う。
【0154】
ある種類の置換型変異型は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究ために選択される結果として生じる変異型(複数可)は、親抗体と比較したある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、及び/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有する。例示的な置換型変異型は、例えば、本明細書に記載の技法などのファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成され得る、親和性成熟抗体である。簡潔に述べると、1つ以上のHVR残基が突然変異させられ、変異型抗体がファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0155】
変化(例えば、置換)をHVRにおいて行って、例えば、抗体親和性を改善してもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を経るコドンによってコードされた残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/または抗原に接触する残基において行われてもよく、結果として生じる変異型VHまたはVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリの構築及びそれからの再選択による親和性成熟については、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001).)に記載される。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性が、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟させるために選択された可変遺伝子に導入される。二次ライブラリが次いで作り出される。ライブラリは次いで、所望の親和性を有する任意の抗体変異型を特定するために、スクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6つの残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に特定され得る。特にCDR-H3及びCDR-L3が標的とされることが多い。
【0156】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つ以上のHVR内で生じてもよい。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)がHVRで行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上記に提供される変異型VH及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されないか、またはわずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含有するにすぎないかのいずれかである。
【0157】
変異誘発の標的とされ得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と称され、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載される。この方法では、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電残基)を特定し、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えて、抗体の抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の場所に導入されてもよい。代替的に、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異型をスクリーニングして、それらが所望の特性を有するかどうかを決定することができる。
【0158】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドに及ぶ長さのアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異型には、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が含まれ、これは抗体の血清半減期を増加させる。
【0159】
b.グリコシル化変異型
ある特定の実施形態では、本発明の抗CD3抗体(例えば、CD3に、好ましくは高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変することができる。本発明の抗CD3抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を作り出すかまたは除去するようにアミノ酸配列を改変することによって、好都合に遂行され得る。
【0160】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合している分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」においてGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ある特定の改善された特性を有する抗体変異型を作り出すために、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾が行われてもよい。
【0161】
一実施形態では、Fc領域に(直接または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗CD3抗体変異型が提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載のMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合したすべての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対するAsn297の糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって、決定される。Asn297は、Fc領域における約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変化に起因して、297位から約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位~300位にも位置し得る。かかるフコシル化変異型は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第US2003/0157108号(Presta,L.)、第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異型に関する公報の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US2003/0157108A1号(Presta,L)、及びWO2004/056312A1(Adams et al.)、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0162】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗CD3抗体変異型がさらに提供される。かかる抗体変異型は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異型の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umanaら)、及びUS2005/0123546(Umanaら)に記載される。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異型も提供される。かかる抗体変異型は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異型は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載される。
【0163】
c.Fc領域変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾を本発明の抗CD3抗体(例えば、CD3に、好ましくは高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)のFc領域に導入して、それによってFc領域変異型を生成してもよい(例えば、US2012/0251531を参照されたい)。Fc領域変異型は、1つ以上のアミノ酸位にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4Fc領域)を含み得る。
【0164】
ある特定の実施形態では、本発明は、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を保有し、それにより、インビボでの抗体の半減期が重要であっても、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不必要または有害である用途に対して望ましい候補となる、抗CD3抗体変異型を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを実施して、CDC及び/またはADCC活性の低減/除去を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁、表3に要約される。目的とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059-7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA82:1499-1502(1985)、5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載される。代替的に、非放射性アッセイ法が用いられてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に、または追加的に、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA95:652-656(1998)に開示のものなどの動物モデルで評価され得る。抗体がC1qに結合することができず、それ故にCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイを実施してもよい。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.J.Immunol.Methods202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.Blood.101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie Blood.103:2738-2743(2004)を参照されたい)。当該技術分野で既知の方法を使用して、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定を行うこともできる(例えば、Petkova,S.B.et al.Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0165】
低減したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が含まれる(米国特許第6,737,056号及び同第8,219,149号)。かかるFc変異体には、アミノ酸265、269、270、297、及び327位のうちの2つ以上における置換を有するFc変異体、例えば、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)。
【0166】
ある特定の実施形態では、抗体の野生型ヒトFc領域の329位におけるプロリンが、グリシンもしくはアルギニン、または、Fcのプロリン329とFcgRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成される、Fc/Fc.ガンマ.受容体界面内のプロリンサンドイッチを破壊するのに十分に大きなアミノ酸残基で置換される(Sondermann et al.Nature.406,267-273,2000)。ある特定の実施形態では、抗体は、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を含む。一実施形態では、さらなるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、またはP331Sであり、さらに、別の実施形態では、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1Fc領域のL234A及びL235A、またはヒトIgG4Fc領域のS228P及びL235Eであり(例えば、US2012/0251531を参照されたい)、さらに、別の実施形態では、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1Fc領域のL234A及びL235AならびにP329Gである。
【0167】
FcRへの結合が改善または減少されたある特定の抗体変異型が記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい)。
【0168】
ある特定の実施形態では、抗体変異型は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)における置換を有する、Fc領域を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、改変した(すなわち、改善されたかまたは減少したかのいずれか)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害活性(CDC)をもたらす改変が、Fc領域において行われ、これは例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載される。
【0170】
半減期が増加し、かつ、母体IgGを胎児に移行させる役割を負う新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された、抗体(Guyer et al.,J.J.Immunol.117:587(1976)、及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))が、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載される。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を中に有するFc領域を含む。かかるFc変異型には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7,371,826号)。
【0171】
Fc領域変異型の他の例に関しては、Duncan & Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0172】
いくつかの態様では、抗CD3抗体(例えば、二重特異性抗CD3抗体)は、N297G突然変異を含むFc領域を含む。いくつかの実施形態では、N297G突然変異を含む抗CD3抗体は、次の6つのHVR:(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、第1の結合ドメインを含む抗CD3アームと、抗Ly6G6Dアームとを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、N297G突然変異を含む抗CD3抗体は、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、第1の結合ドメインを含む抗CD3アームと、抗Ly6G6Dアームとを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、N297G突然変異を含む抗CD3抗体は、1つ以上の重鎖定常ドメインを含み、この1つ以上の重鎖定常ドメインは、第1のCH1(CH1)ドメイン、第1のCH2(CH2)ドメイン、第1のCH3(CH3)ドメイン、第2のCH1(CH1)ドメイン、第2のCH2(CH2)ドメイン、及び第2のCH3(CH3)ドメインから選択される。いくつかの事例では、1つ以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1つは、別の重鎖定常ドメインと対合される。いくつかの事例では、CH3及びCH3ドメインは各々、突起または空隙を含み、CH3ドメインにおける該突起または空隙は、それぞれ、CH3ドメインにおける空隙または突起に位置付け可能である。いくつかの事例では、CH3及びCH3ドメインは、該突起と空隙との間の境界面において接触する。いくつかの事例では、CH2及びCH2ドメインは各々、突起または空隙を含み、CH2ドメインにおける該突起または空隙は、それぞれ、CH2ドメインにおける空隙または突起に位置付け可能である。他の事例では、CH2及びCH2ドメインは、該突起と空隙との間の境界面において接触する。いくつかの事例では、抗CD3抗体は、IgG1抗体である。
【0175】
他の実施形態では、N297G突然変異を含む抗CD3抗体は、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、第1の結合ドメインを含む抗CD3アームと、抗Ly6G6Dアームとを含み、(a)抗CD3アームは、T366S、L368A、Y407V、及びN297G置換突然変異を含み、(b)抗Ly6G6Dアームは、T366W及びN297G置換突然変異を含む。
【0176】
d.システイン操作された抗体変異型
ある特定の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「thioMab」を作り出すことが望ましくあり得る。特定の実施形態では、置換される残基は、抗体の接触可能部位において生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基がそれにより抗体の接触可能部位に位置付けられ、それを使用して、薬物部分またはリンカー-薬物部分などの他の部分に抗体を複合して、本明細書にさらに記載される免疫複合体を作り出すことができる。ある特定の実施形態では、次の残基、軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のうちの任意の1つ以上が、システインで置換されてもよい。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0177】
e.抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される本発明の抗CD3抗体(例えば、CD3に、好ましくは高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)は、当該技術分野で知られており、容易に入手可能である、追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってもよく、分岐していても非分岐であってもよい。抗体に結合したポリマーの数は、様々であってもよく、1つを超えるポリマーが結合している場合、それらは、同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善対象の抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下で療法において使用されるかどうかなどを含むが、これらに限定されない考慮事項に基づいて、決定することができる。
【0178】
別の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体及び非タンパク質性部分の複合体が提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は、任意の波長のものであってもよく、一般の細胞を害さないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅させられる温度まで加熱する波長が含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
7.マスク抗体変異型
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD3抗体のうちのいずれか1つ(例えば、二重特異性抗CD3抗体、例えば、Ly6G6D TDB抗体)は、ポリペプチドマスクを含んでもよく、このポリペプチドマスクは、配列番号78の少なくともアミノ酸残基1~3のアミノ酸配列を含むマスキング部分(MM)を含む(例えば、配列番号78のアミノ酸残基1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、1~17、1~18、1~19、1~20、1~21、1~22、1~23、1~24、1~25、1~26、または1-27を含むMMを含むポリペプチドマスク)、またはそのN末端環化グルタミン誘導体(例えば、5-オキソピロリジン-2-カルボン酸(PCA)を含むMMを含むポリペプチドマスク)。例えば、いくつかの実施形態では、MMは、1位の残基が、グルタミン残基の代わりにN末端環化グルタミン(PCA)残基であることを除いて、配列番号78の少なくとも初めの3つのアミノ酸残基を含む(例えば、MMは、アミノ酸配列PCA-D-Gを含む)。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、少なくとも1つの抗CD3アーム(例えば、38E4v11の重鎖可変(VH)ドメイン及び軽鎖可変(VL)ドメインを含む抗CD3アーム)を含み、ポリペプチドマスクは、抗CD3アームに(例えば、抗CD3アームのVHドメインまたはVLドメインを介して)連結されている。いくつかの実施形態では、MMは、C末端で配列番号78の残りの配列のすべてまたはその一部の長さだけ伸長される。例えば、いくつかの実施形態では、MMは、配列番号78の少なくともアミノ酸残基1~5のアミノ酸配列、またはそのN末端環化グルタミン誘導体を含む(例えば、1位の残基が、グルタミンの代わりにPCAであることを除いて、配列番号1の少なくとも初めの5つのアミノ酸残基を含むMMを含むポリペプチドマスク)。他の実施形態では、MMは、配列番号78の少なくともアミノ酸残基1~6のアミノ酸配列、またはそのN末端環化グルタミン誘導体を含む(例えば、1位の残基が、グルタミンの代わりにPCAであることを除いて、配列番号78の少なくとも初めの6つのアミノ酸残基を含むMMを含むポリペプチドマスク)。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体及びMMは、互いに対して、N末端からC末端の方向に(MM)-(抗CD3抗体)として位置付けられる。いくつかの事例では、MMは、切断可能な部分(CM)及び/またはリンカー部分(LM)などの非天然CD3ポリペプチド配列によって、一方の端(すなわち、C末端の端)で、直接であれ間接的であれ伸長される。
【0180】
上述のように、マスク抗CD3抗体(例えば、マスク二重特異性抗CD3抗体、例えば、マスクLy6G6D TDB抗体)は、MM及び切断可能な部分(CM)の両方を有するポリペプチドマスクを含んでもよい。いくつかの実施形態では、CMは、プロテアーゼなどの酵素によって切断することができるアミノ酸配列を含有する。他の実施形態では、CMは、還元によって切断することができるシステイン-システインジスルフィド結合を提供する。さらなる実施形態では、CMは、酸性pH環境の存在下で切断される酸不安定性リンカーを提供する。さらに他の実施形態では、CMは、光分解によって活性化可能である光分解基質を提供する。
【0181】
したがって、CMを有するポリペプチドマスクを含むマスク抗CD3抗体(例えば、マスクLy6G6D TDB抗体)は、切断状態または切断されていない状態のいずれでも存在し得る。本明細書で使用されるとき、切断状態という用語は、例えば、プロテアーゼによるCMの修飾、CMのシステイン-システインジスルフィド結合の還元、及び/または光活性化の後の抗CD3抗体の状態を指す。切断されていない状態という用語は、本明細書で使用されるとき、例えばプロテアーゼによるCMの切断の不在下、CMのシステイン-システインジスルフィド結合の還元の不在下、酸性pH環境の不在下(例えば、中性または塩基性pH環境)、及び/または光の不在下での抗CD3抗体の状態を指す。いくつかの実施形態では、切断された抗CD3抗体は、例えば、プロテアーゼによるCMの切断により少なくともMMが放出されることに起因して、MMを欠き得ることが、当業者には明らかであろう。それ故に、マスク抗CD3抗体が切断されていない状態にあるとき、抗体の結合ドメインがCD3標的分子から有効にマスクされるため、マスク抗CD3抗体は、CD3への結合の低下を示すであろう。切断状態では、抗CD3抗体は、抗体の結合ドメインがポリペプチドマスクのMMによってもはや阻害されないため、切断されていない状態の抗体が示す親和性よりも、CD3に対してより高い親和性を示すであろう。
【0182】
CMが酵素(例えば、プロテアーゼ)によって切断することができ、マスク抗CD3抗体がTDBであるとき、酵素は、組織内でTDBの所望の標的と共局在化されるプロテアーゼに基づいて選択され得る。目的とする標的がプロテアーゼと共局在化される様々な異なる条件が知られており、このプロテアーゼの基質が当該技術分野で知られている。癌の例では、標的組織は、癌性組織、特に固形腫瘍の癌性組織であり得る。固形腫瘍などのいくつかの癌において、既知の基質を有するプロテアーゼのレベルが増加することが、当該技術分野で知られている(例えば、La Rocca et al.British J.of Cancer.90(7):1414-1421、2004及びLopez-Otin et al.Nat Rev Cancer.7:800-808,2007を参照されたい)。例となるCMには、WO2010/081173、WO2009/025846、WO2010/096838において明記される酵素(例えば、プロテアーゼ)のうちの1つ以上、及び/または下記の表3中に列挙される次の酵素のうちの1つ以上によって切断可能である基質が含まれ得るが、これらに限定されない。
表3.例示的な酵素
【0183】
代替的にまたは追加的に、マスク抗CD3抗体は、システイン対のジスルフィド結合を含み、それ故に還元剤によって切断可能である、CMを含み得る。これらには、固形腫瘍の組織またはその周辺に大量に存在し得る、グルタチオン(GSH)、チオレドキシン、NADPH、フラビン、アスコルビン酸塩などの細胞還元剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0184】
他の実施形態では、マスク抗CD3抗体は、PCT公開第WO2006/108052号(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン、イミノ、エステル、またはアミド基)を含み、それ故に酸性pH環境の存在下で切断可能である、CMを含み得る。これには、細胞のリソソーム中または腫瘍微環境に存在し得る酸性pH環境が含まれるが、これに限定されない。
【0185】
CMは、抗CD3抗体及びMMに対して、N末端からC末端の方向に(MM)-(CM)-(抗CD3抗体)として位置付けられ得る。
【0186】
他の実施形態では、マスク抗CD3抗体(例えば、マスクLy6G6D TDB抗体)は、そのポリペプチドマスク内に1つ以上の(例えば、2つまたは3つ以上の)明確に異なるCMを含み得る。
【0187】
上述のように、マスク抗CD3抗体(例えば、マスクLy6G6D TDB抗体)は、MM及びリンカー部分(LM)の両方、または代替的に、3つすべての部分(すなわち、MM、LM、及びCM)を有するポリペプチドマスクを含み得る。本明細書に記載されるポリペプチドマスクにおいて使用するのに好適なLMは、一般に、マスクに、抗CD3抗体のCD3への結合の阻害の度合いを促進または調節する可動性及び/または長さを提供するものである。かかるLMはまた、可動性リンカーとも称され得る。好適なLMは、容易に選択され得、1アミノ酸(例えば、1つのグリシン(G)または1つのセリン(S)残基)から30アミノ酸(例えば、GS反復配列を含むLM)などの異なる好適な長さのものであり得る。LMは、好ましくは、1つを超えるアミノ酸長(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30またはそれを超えるアミノ酸長)である。いくつかの事例では、LMは、5~24アミノ酸長、例えば、5~15アミノ酸長であり得る。LMは、G及び/またはS含量(すなわち、G/S豊富なLM)が高くてもよく、GS反復を含み得る。例えば、LMは、グリシン重合体(G)、グリシン-セリン重合体(例えば、(GS)、(GSGGS)及び(GGGS)(nは少なくとも1の整数である)を含む)、グリシン-アラニン重合体、アラニン-セリン重合体、及び当該技術分野で既知の他の可動性リンカーの組み合わせを含み得る。グリシン及びグリシン-セリン重合体は、比較的構造化されておらず、したがって、ポリペプチドマスクのMM構成成分を抗CD3抗体に間接的にまたは直接連結する中性LMとしての役割を果たすことが可能であり得る。グリシンは、アラニンと比べてさえもphi-psiスペースへのアクセスが著しく多く、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ない(例えば、Scheraga.Rev.Computational Chem.11173-142,1992を参照されたい)。例示的な可動性リンカーとしては、Gly-Gly-Ser-Gly、Gly-Gly-Ser-Gly-Gly、Gly-Ser-Gly-Ser-Gly、Gly-Ser-Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Ser-Gly、Gly-Ser-Ser-Ser-Glyなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、ポリペプチドマスクの設計が、完全にまたは部分的に可動性であるLMを含み得ることを認識するであろう。例えば、LMが、可動性部分、ならびにあまり可動性でない構造を付与する1つ以上の部分を含むことにより、CD3結合の阻害の所望の度合いを示すマスク抗CD3抗体を得てもよく、阻害の度合いは、例えば、下記に詳述されるファージ結合ELISAなどのアッセイを用いて評価することができる。
【0188】
ポリペプチドマスクがCMを含まないとき、LMは、抗CD3抗体及びMMに対して、N末端からC末端の方向に(MM)-(LM)-(抗CD3抗体)として位置付けられ得る。ポリペプチドマスクがCMを含むとき、LMは、抗CD3抗体、MM、及びCMに対して、N末端からC末端の方向に(MM)-(LM)-(CM)-(抗CD3抗体)または(MM)-(CM)-(LM)-(抗CD3抗体)として位置付けられ得る。
【0189】
他の実施形態では、マスク抗CD3抗体(例えば、マスクLy6G6D TDB抗体)は、そのポリペプチドマスク内に1つ以上の(例えば、2つまたは3つ以上の)明確に異なるCMを含み得る。
【0190】
B.組換え方法及び組成物
本発明の抗CD3抗体(例えば、CD3に、好ましくは高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載される組換え方法及び組成物を使用して、産生され得る。一実施形態では、本明細書に記載される抗CD3抗体をコードする単離核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/または抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。さらなる実施形態では、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのかかる実施形態では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらで形質転換されている)。一実施形態では、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態では、抗CD3抗体の作製方法が提供され、本方法は、上記に提供される抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0191】
抗CD3抗体の組換え産生のために、例えば上述の、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクターに挿入される。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0192】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、細菌中で産生され得る。細菌中の抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(また、E.coli内での抗体断片の発現を記載するCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003)、245~254頁も参照されたい。)発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製することができる。
【0193】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物が、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、これには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌及び酵母株が含まれる。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0194】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されている。
【0195】
植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物中で抗体を産生させるためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載する)を参照されたい。
【0196】
脊椎動物細胞も宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳類細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載される293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳房腫瘍(MMT060562);例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞株には、DHFRCHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980))を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにY0、NS0、及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ)、255~268頁(2003)を参照されたい。
【0197】
C.アッセイ
本明細書に提供される本発明の抗CD3抗体(例えば、CD3に、好ましくは高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)は、それらの物理的/化学的特性及び/または生物学的活性について、当該技術分野で既知の種々のアッセイによって特定されるか、スクリーニングされるか、または特徴付けられてもよい。
【0198】
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様では、本発明の抗CD3抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの既知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
【0199】
別の態様では、競合アッセイを用いて、CD3への結合について本発明の抗CD3抗体と競合する抗体が特定され得る。
【0200】
例示的な競合アッセイでは、固定化されたCD3が、CD3に結合する第1の標識抗体と、CD3への結合について第1の抗体と競合するその能力について試験されている第2の未標識抗体とを含む溶液中で、インキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化されたCD3が、第1の標識抗体を含むが第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のCD3への結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、過剰な非結合抗体が除去され、固定化されたCD3と会合する標識の量が測定される。固定化されたCD3と会合する標識の量が、対照試料と比較して試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗体がCD3への結合について第1の抗体と競合していることを示す。例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual.Ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
【0201】
2.活性アッセイ
一態様では、生物学的活性を有するその抗CD3抗体を特定するためのアッセイが提供される。生物学的活性には、例えば、CD3(例えば、T細胞の表面上のCD3)、またはそのペプチド断片に、インビボ、インビトロ、またはエクスビボのいずれかで結合することが含まれ得る。本発明の多重特異性(例えば、二重特異性)抗CD3抗体(例えば、1つの抗CD3アーム、例えば38E4v11、及び第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原を認識する1つのアームを有する、TDB抗体)の場合、生物学的活性にはまた、例えば、エフェクター細胞活性化(例えば、T細胞(例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)の活性化)、エフェクター細胞集団の拡大(すなわち、T細胞数の増加)、標的細胞集団の低減(すなわち、それらの細胞表面上に第2の生物学的分子を発現する細胞集団の減少)及び/または標的細胞殺傷も含まれ得る。インビボ及び/またはインビトロでかかる生物学的活性を有する抗体が提供される。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、本明細書における下記の実施例2に詳述されるように、かかる生物学的活性について試験される。
【0202】
さらに、細胞は、GlutaMaxを補充した10%FBS、ペニシリン、及びストレプトマイシンを含有するRPMI培地中で洗浄され得、約20万個の懸濁細胞が96ウェルU底プレートに添加される。細胞は、加湿標準細胞培養インキュベータにおいて37℃で、10%FBSを補充したRPMI1640中で培養され得る。BJAB細胞殺傷アッセイでは、20,000個のBJAB細胞が、種々の濃度のTDB抗体の存在下で24時間にわたって、1アッセイあたりで指示される割合で、huPBMCまたは精製T細胞のいずれかとしてのエフェクター細胞とともにインキュベートされ得る。内因性B細胞殺傷アッセイでは、200,000個のhuPBMCが、24時間にわたって種々の濃度のTDB抗体とともにインキュベートされ得る。
【0203】
培養後、細胞は、FACS緩衝液(0.5%のBSA、PBS中0.05%のアジ化ナトリウム)で洗浄され得る。次いで細胞は、FACS緩衝液中で染色され、FACS緩衝液で洗浄され、1μg/mlのヨウ化プロピジウムを含有する100μlのFACS緩衝液中で懸濁され得る。データが、FACSCaliburフローサイトメーターで収集され、FlowJoを使用して分析され得る。生存B細胞が、FACSによってPI-CD19+またはPI-CD20+B細胞としてゲートアウト(gated out)され得、細胞絶対数が、内部計数対照として反応混合物に添加されるFITCビーズを用いて得られてもよい。細胞殺傷パーセント(%)は、非TDB処理対照に基づいて算出され得る。活性化T細胞は、抗CD69-FITC及び抗CD25-PEを使用してCD69及びCD25表面発現によって検出され得る。
【0204】
D.免疫複合体
本発明はまた、化学療法剤もしくは化学療法薬、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体などの1つ以上の細胞傷害性薬剤と複合された本明細書の抗CD3抗体を含む、免疫複合体を提供する。
【0205】
一実施形態では、免疫複合体は、抗体が、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第EP0425235 B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、及び同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993)、ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic & Med.Chem.Letters16:358-362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.& Med.Chem.Letters12:1529-1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002)、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065を含むがこれらに限定されない1つ以上の薬物と複合されている抗体薬物複合体(ADC)である。
【0206】
別の実施形態では、免疫複合体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むがこれらに限定されない酵素活性毒素またはその断片に複合された、本明細書に記載される抗CD3抗体を含む。
【0207】
別の実施形態では、免疫複合体は、放射性原子に複合されて、放射性複合体(radioconjugate)を形成する、本明細書に記載される抗CD3抗体を含む。様々な放射性同位体が、放射性複合体の産生のために利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性複合体が検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または再びヨード-123、ヨード-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄などの核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、mri)のためのスピン標識を含み得る。
【0208】
抗体及び細胞傷害性薬剤の複合体は、N-サクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、サクシニミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシニミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al.,Science238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素14標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体に複合するための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内での細胞傷害性薬剤物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号)を使用してもよい。
【0209】
本明細書のイムヌオ複合体(immunuoconjugates)またはADCは、市販(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aより)されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない、架橋剤試薬で調製されたかかる複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0210】
E.診断及び検出のための方法及び組成物
ある特定の実施形態では、本発明の抗CD3抗体のうちのいずれか(例えば、CD3に、好ましくは高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)は、生体試料中のCD3の存在を検出するのに有用である。本明細書で使用される「検出すること」という用語は、定量または定性検出を包含する。ある特定の実施形態では、生体試料は、細胞または組織を含む。
【0211】
一実施形態では、診断または検出方法において使用するための抗CD3抗体が提供される。さらなる態様では、生体試料中のCD3の存在の検出方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、抗CD3抗体のCD3への結合を許容する条件下で、生体試料を本明細書に記載される抗CD3抗体と接触させることと、複合体が抗CD3抗体とCD3との間で形成されるかどうかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。
【0212】
ある特定の実施形態では、標識された抗CD3抗体が提供される。標識としては、直接検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、電子密度の高い標識、化学発光標識、及び放射性標識など)、ならびに間接的に、例えば、酵素反応または分子相互作用により検出される酵素またはリガンドなどの部分が挙げられるが、これらに限定されない。例となる標識には、放射性同位体32P、14C、125I、H、及び131I、フルオロフォア、例えば希土類キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルのルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼなど)とカップリングした複素環オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0213】
F.薬学的製剤
本発明の抗CD3抗体(例えば、CD3に、好ましくは高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)の薬学的製剤は、所望の純度を有するかかる抗体を1つ以上の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、それらには、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸及びメチオニン;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;単糖、二糖、及び他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/または非イオン界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書の例となる薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤をさらに含む。rHuPH20を含む、ある特定の例となるsHASEGP及び使用方法が、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPが、コンドロイチナーゼなどの1つ以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0214】
例となる凍結乾燥抗体製剤が、米国特許第6,267,958号に記載される。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されるものが含まれ、後者の製剤にはヒスチジン-酢酸緩衝液が含まれる。
【0215】
本明細書の製剤はまた、治療されている特定の適応症の必要に応じて、1つよりも多くの活性成分、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有する成分を含有してもよい。例えば、追加の治療剤(例えば、本明細書の上記に列挙されるものなど、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、成長阻害剤、及び/または抗ホルモン剤)をさらに提供することが望ましい場合がある。かかる活性成分は、意図される目的のために有効である量で組み合わされて存在するのが好適である。
【0216】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示される。
【0217】
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の好適な例としては、本抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
【0218】
インビボ投与に使用される製剤は、一般に、滅菌のものである。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜を介する濾過によって容易に達成され得る。
【0219】
G.治療法及び組成物
本発明の抗CD3抗体のうちのいずれか(例えば、CD3に、好ましくは高い親和性で結合し(例えば、38E4v11)、第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体が、治療法に使用され得る。本発明親和性(the invention affinity)の高親和性抗CD3抗体、例えば、38E4v11は、腫瘍細胞上に低コピー数で発現される細胞表面抗原に結合する標的化アームと対合されるときに特に有用である。いくつかの実施形態では、低コピー数細胞表面抗原は、Ly6G6Dである。
【0220】
一態様では、医薬品として使用するための抗CD3抗体が提供される。さらなる態様では、細胞増殖性障害(例えば、癌、例えば、食道癌または腺癌)または自己免疫障害(例えば、関節炎)の治療またはその進行の遅延において使用するための抗CD3抗体が提供される。ある特定の実施形態では、治療方法において使用するための抗CD3抗体が提供される。ある特定の実施形態では、本発明は、個体に有効量の抗CD3抗体を投与することを含む、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する個体の治療方法において使用するための抗CD3抗体を提供する。1つのかかる実施形態では、本方法は、個体に、例えば、以下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、本発明は、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する個体の免疫機能の増強において使用するための抗CD3抗体を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、個体に、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡大する(増加させる)、標的細胞(例えば、本発明の二重特異性TDB抗体などの、本発明の抗CD3抗体により認識される第2の生物学的分子を発現する細胞)集団を低減する、及び/または標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)を殺傷するのに有効の抗CD3抗体を投与することを含む、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する個体における免疫機能の増強方法において使用するための抗CD3抗体を提供する。上記の実施形態のうちのいずれかによる「個体」とは、ヒトであり得る。
【0221】
さらなる態様では、本発明は、医薬品の製造または調製における抗CD3抗体の使用を提供する。一実施形態では、医薬品は、細胞増殖性障害(例えば、癌、例えば、食道癌または腺癌)または自己免疫障害(例えば、関節炎)の治療のためのものである。さらなる実施形態では、医薬品は、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する個体に有効量の医薬品を投与することを含む、細胞増殖性障害または自己免疫障害の治療方法において使用するためのものである。1つのかかる実施形態では、本方法は、個体に、例えば、以下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、医薬品は、個体において、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡大する(増加させる)、標的細胞(例えば、本発明の二重特異性TDB抗体などの、本発明の抗CD3抗体により認識される第2の生物学的分子を発現する細胞)集団を低減する、及び/または標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)を殺傷するためのものである。さらなる実施形態では、医薬品は、個体に、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡大する(増加させる)、標的細胞(例えば、本発明の二重特異性TDB抗体などの、本発明の抗CD3抗体により認識される第2の生物学的分子を発現する細胞)集団を低減する、及び/または標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)を殺傷するのに有効な量の医薬品を投与することを含む、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する個体における免疫機能の増強方法において使用するためのものである。上記の実施形態のうちのいずれかによる「個体」とは、ヒトであり得る。
【0222】
さらなる態様では、本発明は、細胞増殖性障害(例えば、癌、例えば、食道癌または腺癌)または自己免疫障害(例えば、関節炎)を治療するための方法を提供する。一実施形態では、本方法は、かかる細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する個体に、有効量の抗CD3抗体を投与することを含む。1つのかかる実施形態では、本方法は、個体に、例えば、以下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。上記の実施形態のうちのいずれかによる「個体」とは、ヒトであり得る。
【0223】
さらなる態様では、本発明は、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する個体において、細胞増殖性障害または自己免疫障害を有する個体における免疫機能を増強するための方法を提供する。一実施形態では、本方法は、個体に、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡大する(増加させる)、標的細胞(例えば、本発明の二重特異性TDB抗体などの、本発明の抗CD3抗体により認識される第2の生物学的分子を発現する細胞)集団を低減する、及び/または標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)を殺傷するのに有効な量の抗CD3抗体を投与することを含む。一実施形態では、「個体」とは、ヒトである。
【0224】
さらなる態様では、本発明は、有効量の本発明の抗CD3抗体、例えば本発明の二重特異性TDB抗体、例えば抗Ly6G6D標的化TDB、例えば、親和性成熟(例えば、高親和性)抗CD3アーム、例えば38E4v11と、抗Ly6G6Dアームとを有するLy6G6D TDBを投与することによって、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸直腸癌、または転移性腺癌(例えば、転移性結腸直腸腺癌、転移性胃腺癌、または転移性膵臓腺癌)であり得る、腺癌(例えば、結腸直腸腺癌、胃腺癌、または膵臓腺癌)を治療するための方法を提供する。他の実施形態では、Ly6G6D TDBは、次のもののうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、または11個すべてなどの、1つ以上の追加の治療剤と(単一または複数の組成物(製剤)として同時に)共投与される:FOLFOX(5-フルオロウラシル及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標)))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、CapeOx(XELOX;オキサリプラチンを含むカペシタビン)、ロイコボリン(葉酸)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、レゴラフェニブ(STIVARGA(登録商標))、イリノテカン(CPT-11;CAMPTOSAR(登録商標))、及びFLOX(オキサリプラチンを含む5-フルオロウラシル)。他の実施形態では、Ly6G6D TDBは、次のもののうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、または11個すべてなどの、1つ以上の追加の治療剤の前に投与される:FOLFOX(5-フルオロウラシル及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標)))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、CapeOx(XELOX;オキサリプラチンを含むカペシタビン)、ロイコボリン(葉酸)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、レゴラフェニブ(STIVARGA(登録商標))、イリノテカン(CPT-11;CAMPTOSAR(登録商標))、及びFLOX(オキサリプラチンを含む5-フルオロウラシル)。他の実施形態では、Ly6G6D TDBは、次のもののうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、または11個すべてなどの、1つ以上の追加の治療剤の後に投与される:FOLFOX(5-フルオロウラシル及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標)))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、CapeOx(XELOX;オキサリプラチンを含むカペシタビン)、ロイコボリン(葉酸)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、レゴラフェニブ(STIVARGA(登録商標))、イリノテカン(CPT-11;CAMPTOSAR(登録商標))、及びFLOX(オキサリプラチンを含む5-フルオロウラシル)。
【0225】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の抗CD3抗体、例えば本発明の二重特異性TDB抗体、例えば抗B細胞標的化TDB、例えば抗CD3アームと抗CD20アームとを有するCD20-TDBを投与することによって、B細胞癌(例えば、成熟B細胞リンパ腫)などの血液癌を治療するための方法を提供する。この実施形態のさらなる態様では、成熟B細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。この実施形態のさらなる態様では、NHLは、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓周辺帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病、分類不能脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、αH鎖病、γH鎖病、μH鎖病、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨以外の形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL下肢型、加齢性EBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において生じる大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫との間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫を含む群から選択される。本発明の好ましい実施形態では、本方法は、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、またはバーキットリンパ腫(BL)を含む癌を治療することを含む。
【0226】
さらなる態様では、本発明は、例えば、上の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供される抗CD3抗体のいずれかを含む、薬学的製剤を提供する。一実施形態では、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗CD3抗体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施形態では、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗CD3抗体のうちのいずれかと、例えば以下に記載されるような少なくとも1つの追加の治療剤とを含む。
【0227】
本発明の抗体は、治療法において、単独で、または他の薬剤と組み合わせてのいずれかで使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性薬剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、または他の薬剤、例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標))、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、Gleevec(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、本発明の抗CD3抗体以外の抗体、例えば、次の標的、ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-ベータ、BlyS、APRIL、BCMA VEGF、もしくはVEGF受容体(複数可)TRAIL/Apo2、PD-1、PD-L1、PD-L2のうちの1つ以上に結合する抗体、または別の生物活性もしくは有機化学剤である。
【0228】
いくつかの実施形態では、本発明は、追加の治療剤がグルココルチコイドである方法を提供する。一実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾンである。
【0229】
上述のかかる併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別個の製剤中に含まれる)、及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本発明の抗体の投与は、追加の治療剤(単数または複数)の投与の前、それと同時、及び/またはその後に生じ得る。一実施形態では、抗CD3抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約1ヶ月以内、または約1週間、2週間、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。本発明の抗CD3抗体(例えば、CD3及び第2の生物学的分子、例えば細胞表面抗原、例えば腫瘍抗原に結合する、本発明の二重特異性抗CD3抗体、例えば本発明のTDB抗体またはその変異型)はまた、放射線療法と併用することもできる。
【0230】
本発明の抗体(及び/または任意の追加の治療剤)は、非経口投与、肺内投与、及び鼻腔内投与、ならびに局所治療で所望される場合、病変内投与を含む、任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体は、皮下投与により投与される。いくつかの実施形態では、皮下注射により投与された抗CD3抗体は、患者において、静脈内注射により投与された同じ抗CD3抗体よりも低い毒性応答を呈する。投薬は、投与が短時間であるか慢性的であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内または皮下注射などの注射によるものであり得る。単回または種々の時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない、種々の投薬スケジュールが本明細書で企図される。
【0231】
本発明の抗体は、良好な医療行為と一致する様式で、製剤化され、投薬され、投与されるだろう。この文脈における考慮の要因には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的病態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール管理、及び医療従事者に既知の他の要因が含まれる。抗体は必然的にではなく任意に、問題の障害を予防または治療するために現在使用される1つ以上の薬剤とともに製剤化される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療の種類、及び上記で考察された他の要因に依存する。これらは一般に、本明細書に記載されるものと同じ投薬量及び投与経路で、または本明細書に記載される投薬量の約1~99%で、または適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0232】
疾患の予防または治療に関して、本発明の抗体の適切な投薬量は(単独で、または1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴、及び抗体への応答、ならびに主治医の裁量に左右される。抗体は好適に、1回で、または一連の治療にわたって患者に投与される。
【0233】
一般的な提案として、ヒトに投与される治療有効量の抗CD3抗体は、1回以上の投与によるかにかかわらず、約0.01~約100mg/患者の体重kgの範囲であろう。いくつかの実施形態では、使用される抗体は、例えば、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、または約0.01~約1mg/kgであり、毎日投与される。一実施形態では、本明細書に記載される抗CD3抗体は、21日周期の1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、または約1400mgの用量でヒトに投与される。この用量は、注入などの、単回用量または複数回用量(例えば、2または3回用量)で投与され得る。病態に応じて数日間以上にわたる反復投与では、治療は一般に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されるだろう。抗体の1つの例示的な投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲だろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kgの1つ以上の用量(またはそれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与され得る。かかる用量は、断続的に、例えば、毎週、または3週間毎に投与されてもよい(例えば、患者が、約2回~約20回、または例えば、約6回用量の抗CD3抗体を受容するようにする)。初回のより高い負荷用量、続いて1回以上のより低い用量が投与されてもよい。この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易に監視される。
【0234】
いくつかの実施形態では、本方法は、追加の療法をさらに含み得る。追加の療法は、放射線療法、手術、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述のものの組み合わせであってもよい。追加の療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態では、追加の療法は、小分子酵素阻害剤または抗転移薬の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/または重症度を軽減するよう意図された薬剤、例えば、制吐剤など)の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、外科手術である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法と外科手術との組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の療法は、ガンマ照射である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、上述の治療剤のうちの1つ以上の別個の投与であってもよい。
【0235】
H.製品
本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防、及び/または診断に有用な材料を含有する製品が提供される。製品は、容器と、容器上のまたは容器に関連付けられたラベルまたは添付文書とを含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル瓶、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、それ自体で、または別の組成物と組み合わせて、病態の治療、予防、及び/または診断に有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静注液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアル瓶であり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、選定した病態を治療するために使用されることを示す。さらに、製品は、(a)本発明の抗体を含む組成物をその中に収容した第1の容器、及び(b)さらなる細胞傷害性薬剤あるいは治療剤を含む組成物をその中に収容した第2の容器を含み得る。本発明のこの実施形態の製品は、組成物を使用して特定の病態を治療することができることを示す添付文書をさらに含み得る。代替的に、または追加的に、製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2(または第3)の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0236】
III.実施例
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上記に提供される概説を考慮すれば、種々の他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0237】
実施例1.親和性成熟抗CD3抗体の生成
NNKライブラリ構築及びパニング
ヒト化抗CD3抗体、38E4v1(それぞれ配列番号57~62のHVR-H1~H3及びHVR-L1~L3、ならびに配列番号63及び64のVH及びVL配列を有する)の親和性をさらに改善するために、ファージライブラリを一価Fabファージディスプレイ用に、Fab-アンバー形式で変異型38E4v1から、32個のコドンで20個のアミノ酸すべてをコードするNNK縮重コドンを用いて軽鎖HVR残基(すなわち、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3)または重鎖HVR残基(すなわち、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3)のいずれかをランダム化して、構築した(例えば、Brenner et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA89(12):5381-5383、1992を参照されたい)。ライブラリは、3つの軽鎖または重鎖HVRの各々において1つのNNK突然変異を許容するように設計した。得られたライブラリDNAをE.coli XL1細胞中にエレクトロポレーションで導入して、およそ10個の形質転換体を得た。
【0238】
ファージライブラリを、1%BSA及び0.05%Tweenを含むPBS中で30分間インキュベートし、次いで第1回目のパニングのためにCD3ε固定化プレート上に適用した。後続の2回においては、選択厳格度を増加させるために、SuperBlock緩衝液中、競合物としての1000×非ビオチン化CD3εとともに、減少した濃度のビオチン化CD3ε抗原を使用した。3回目のパニングのファージミドをディープシーケンシング解析のために調製した。
【0239】
38E4v1親和性成熟ライブラリのディープシーケンシング
ディープシーケンシングのために、ファージミド2本鎖DNAを、最初のファージライブラリ及び3回目の選択からのファージミドベクターを保有するE.coli XL-1細胞から単離した。精製DNAをテンプレートとして用いて、PHUSION(登録商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して、限定サイクルPCRに基づいてVL及びVH領域を増幅した。PCR産物をアガロースゲル抽出・クリーンアップ(Qiagenゲル抽出キット)によって精製した。溶出したアンプリコンDNAをベースとして用いて、TRUSEQ(商標)DNA試料調製キット(Illumina)を使用して、標準的なIlluminaライブラリ調製法によりディープシーケンシングライブラリを調製した。アダプターライゲーションしたライブラリを単一サイクルPCRに供し、Illumina MISEQ(登録商標)において、アンプリコンの全長を網羅するように、適宜、200bpまたは300bpの挿入サイズで、ペアエンドシーケンシングを使用して配列決定した。
【0240】
38E4v1親和性成熟ライブラリのディープシーケンシング解析
シーケンシングデータを、統計プログラミング言語R(例えば、R Core Team,R:A language and environment for statistical computing,2013を参照されたい)及びShortReaパッケージ(Morgan et al.Bioinformatics25(19):2607-2608)を用いて解析した。特定されたHVR配列に対して品質管理を行った。各HVR配列を正しい長さについて検査し、最大1つのNNK突然変異のみを保有すること許容し、非NNK突然変異の保有は許容しなかった。それぞれのランダム化位置のすべての突然変異の頻度を算出することによって、位置重み行列を生成した。以前に記載されたように(Fowler et al.Nature Methods7(9):741-746,2010)、選別した試料中の所与の位置における所与の突然変異の頻度を、選別していない試料中の全く同じ突然変異の頻度で除することによって、各突然変異の集中率(Enrichment ratio)を算出した。高い集中率を有する軽鎖及び重鎖ライブラリからの単一の突然変異を選択して合成し、Flagタグを有する哺乳類Fab発現構築物中にクローニングした。重鎖及び軽鎖の両方を有するプラスミドを、293T細胞中にトランスフェクトして30ml発現させ、抗Flagカラムを使用してFabを精製した。
【0241】
BIACORE(登録商標)SPRによるFab親和性決定
選択したFab変異型のCD3εに対する結合親和性を、BIACORE(登録商標)T200機器によるSPRによって測定した。簡潔に述べると、SシリーズセンサーチップCM5を、供給業者の指示に従って、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びN-ヒドロキシサクシンイミド(NHS)試薬で活性化し、10mM酢酸ナトリウム(pH4.0)中5μg/mlのCD3εをカップリングして、FC1(基準としての役割を果たした)を除いて、100応答単位(RU)を得た。未反応の基を次いで、1Mエタノールアミンによりブロッキングした。次に、低(0.02nM)から高(20nM)までの、HBS-P緩衝液(0.01MのHEPES(pH7.4)、0.15MのNaCl、0.005%の界面活性剤P20)中のFabの3倍段階希釈液を流速30μl/分で注入した。Fabに対する結合応答は、空のフローセルからRUを減算することによって訂正した。センサグラムを記録し、基準及び緩衝液の分を減算してから、BIACORE(登録商標)T200評価ソフトウェア(第2.0版)によって評価した。会合速度(k)及び解離速度(k)を、単純な1対1Langmuir結合モデルを使用して算出した。平衡解離定数(K)を、k/kの比率として算出した。結合親和性動態を、図1に記載される重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列を有する高親和性抗CD3Fab、38E4v11について決定した。その親の結合親和性と比較して、38E4v11は、CD3に対する結合親和性において10倍を超える増加を示した(すなわち、38E4v1と比較してKにおける10倍超の減少)(表4)。
表4.38E4v1と比べた38E4v11結合親和性動態
【0242】
実施例2.例となるLy6G6D/CD3TDB(Ly6G6D TDB)の生成及び特徴付け
38E4v11のCD3に対する高い親和性を所与として、発明者らは、「T細胞依存性二重特異性」(TDB)抗体とも称される、T細胞標的化治療抗体の関連性において、それらの有用性を試験した。TDB抗体は、T細胞上の細胞表面抗原(例えば、CD3)及び腫瘍細胞上の細胞表面抗原に同時に結合することができ、それによって、結合したT細胞が腫瘍細胞の破壊に寄与することを可能にする。しかしながら、腫瘍細胞の表面上の低コピー数細胞表面抗原標的に指向されるTDB抗体は、減少した有効性を示し得る。したがって、T細胞上の細胞表面抗原に指向される高親和性アームを有するTDB抗体、例えばCD3が、低コピー数標的に指向されるアームとの対合に特に有用であり得る。
【0243】
かかる関連性において高親和性38E4v11の有用性を試験するために、発明者らは、CD3に指向される1つの高親和性アーム(38E4v11)と、ある特定の腫瘍の表面上でしばしば低コピー数でまたは一貫性なく発現される細胞表面抗原Ly6G6Dに指向される1つのアームとを有する、Ly6G6D TDB抗体を生成した(例えば、米国特許第7,951,546号を参照されたく、それは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。Ly6G6D TDBを、ヒトIgG1として、ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)形式で完全長抗体として産生させた(Atwell et al.J.Mol.Biol.270:26-35,1997)。半抗体をE.coliまたはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内で発現させ、プロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製し、適切な半抗体対を、以前に記載されたように(Spiess et al.Nat.Biotechnol.2013)、インビトロでアニーリングした。CHO細胞中でTDB抗体産生が行われた場合、抗体は、例えば、残基N297(例えば、N297G)において非グリコシル化突然変異を含み、そのため、TDB抗体はエフェクター欠損変異型であり、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害活性(ADCC)を開始することが不可能であった。アニーリング後、Ly6G6D TDB抗体を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製し、分析用ゲル濾過、質量分析、及びポリアクリルアミドゲル電気泳動によって特徴付けた。これらの方法により、本明細書でLy6G6D(38E4v11)TDBと称される、抗CD3アームとして38E4v11を有するLy6G6D TDBを生成した。さらに、同じ抗Ly6G6Dアームを共有するが、それぞれ、抗CD3アーム40G5c(それぞれ配列番号65~70のHVR-H1~H3及びHVR-L1~L3、ならびに配列番号71及び72のVH及びVL配列を有する)または抗CD3アーム38E4v1(上述)のいずれかを有する、本明細書でLy6G6D(40G5c)TDB及びLy6G6D(38E4v1)TDBと称される、2つの他のLy6G6D TDBもまた生成した。
【0244】
これら3つのLy6G6D TDB(Ly6G6D(38E4v11)TDB、Ly6G6D(40G5c)TDB、及びLy6G6D(38E4v1)TDB)を次いで、インビトロ細胞傷害性アッセイ及びT細胞活性化アッセイにおいて試験した。細胞殺傷アッセイに関しては、ヒトLy6G6D抗原(293-Ly6G6D)を過剰発現する15,000個の293細胞を、細胞染色色素のカルボキシフルオセインスクシンイミジルエステル(CFSE)でまず標識し、エフェクター細胞として75,000個のヒトPBMCとともに、エフェクター細胞:標的細胞5:1の比で、種々の濃度のLy6G6D TDB抗体の存在下で24時間インキュベートした。各アッセイの終わりに、生存293細胞を、FACSによってPI-CFSE+細胞としてゲートアウトし、フローサイトメトリーによって細胞絶対数を得た。細胞殺傷の割合を、非TDB処理対照に基づいて算出した。Ly6G6D(40G5c)TDB及びLy6G6D(38E4v1)TDBと比較して、Ly6G6D(38E4v11)TDBは、より低い濃度で増強された細胞殺傷性を示した(図2)。
【0245】
インビトロT細胞活性化アッセイにおいてT細胞の細胞傷害効果を活性化するそれらの能力について試験したとき、これら3つのTDBは再び、様々な有効性を示した。T細胞活性化アッセイにおいて、293-Ly6G6D細胞を、Ficoll分離によって健常ドナーの全血から単離したヒトPBMCとともに24時間、上述のように、種々の濃度のLy6G6D TDB抗体の存在下でインキュベートした。活性化CD8+及びCD4+T細胞を、フローサイトメトリー分析によってCD69及びCD25表面発現から検出した。Ly6G6D(38E4v11)TDBは、試験された他のLy6G6D TDB、特に、CD3に対して51nMの比較的低い結合親和性を有するLy6G6D(40G5c)TDBと比較して、CD8+T細胞活性化(図3A)及びCD4+T細胞活性化(図3B)の両方において増強された有効性を示した。
【0246】
他の実施形態
上述の発明は、明確な理解のために例示説明及び例としてある程度詳細に記載されたが、これらの説明及び例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書で引用されるすべての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
【配列表】
2023029892000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】