(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002991
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】風力により動く模型
(51)【国際特許分類】
A63H 33/40 20060101AFI20221228BHJP
A63H 33/00 20060101ALI20221228BHJP
A63H 13/02 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A63H33/40
A63H33/00 Q
A63H13/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103888
(22)【出願日】2021-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】719002160
【氏名又は名称】六山 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】六山 昌彦
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150BC01
2C150CA26
2C150DA37
2C150EB16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型の扇風機や家庭用のエアコンの風によって作動し、波打つように動く、単純な構造の模型を提供する。
【解決手段】ハブ4と右羽5と左羽6とからなる揺動部3を軸2に揺動軸心15まわりに揺動自在に複数個取り付ける。このとき、該右羽5と該左羽6の重さが釣り合うようにし、かつ該揺動部3の重心が該揺動軸心15よりも下に位置するようにする。風がない状態では該揺動部3は水平方向に安定し、釣り合いがとれているおかげで弱い風でも動くことになる。扇風機やエアコンの風によって該揺動部3はシーソーのように揺動し、複数の羽根のコンビネーションで波打つような動きが実現される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、複数個の揺動部からなる模型であって、前記揺動部は、ハブと、前記ハブの左右に設けられた左羽と右羽とからなり、前記ハブは前記軸に揺動軸心まわりに揺動自在に取り付けられており、前記揺動軸心を略水平にした際、前記揺動部の重心が前記揺動軸心よりも下に位置し、かつ前記左羽と前記右羽の重量が略釣り合うことを特徴とする模型。
【請求項2】
前記揺動軸心を略水平にした際、水平面に垂直で前記揺動軸心を通る平面を対称面として、前記揺動部の前記左羽と前記右羽が略面対称である請求項1に記載の模型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇風機やエアコンなどの風を受けて、波打つように動く模型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、波打つように動くということが特徴であるが、風力により複数の羽を動かすことによって波打つような動きを実現するというのが基本的な考えのため、羽を羽ばたかせる装置と波打つように動く装置を背景技術として取り上げる。
【0003】
風力により羽を羽ばたかせる装置で、本発明に考え方が近いものとしては、下記特許文献1の「風力により羽ばたく模型」及び下記特許文献2の「羽撃き装置」が挙げられる。この二つは、羽に風圧を直接作用させて羽を動かす点で、本発明の考え方に近いと言える。
【0004】
また、羽に風圧を直接作用させるわけではないが、風力で羽を羽ばたかせるものとして、下記特許文献3の「風車ではばたきをする鳥」が挙げられる。この装置では、クランク機構を用いて、風車の回転運動を直線運動に変換している。
【0005】
風ではなくモーターで羽を動かすものとしては、下記特許文献4の「羽ばたき形象玩具」が挙げられる。この装置も、クランク機構を用いて回転運動を直線運動に変換している。
【0006】
波打つように動く装置としては、下記特許文献5の「振動翼付き水中航走体」が挙げられる。この装置では、アクチュエータを使って複数の翼を振動させることで、エイのひれが波打つような動きを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-179062公報
【特許文献2】特開平09-173651公報
【特許文献3】実全平01-084696公報
【特許文献4】実登3222891公報
【特許文献5】特開2003-231496公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の羽ばたき装置、及び波打つように動く装置には、いくつか課題を指摘できる。上記特許文献1や2の装置は、羽に風圧を直接作用させる構造だが、左右の羽が分離しているため、羽の重さによっては比較的強い風が必要になる。紙やプラ板などの薄い素材を使えば弱い風でも動くが、折れ曲がりやすいなど、丈夫さに問題が出てくる。
【0009】
丈夫さを重視して厚さ1~2ミリメートルの木の板やプラスチックの板で羽を作ると、卓上扇風機のような小さな扇風機の風では動きにくいという問題が生じる。動きやすくするために風を強くすると、風の音が大きくなり、扇風機の付属品として活用するなら問題ないかもしれないが、インテリアとしては問題がある。
【0010】
その他、上記特許文献3や上記特許文献4のように、風力やモーターによる回転運動をクランク機構を介して上下運動に変換して羽を羽ばたかせるような場合、構造が多少複雑になるという短所がある。
【0011】
また、いずれの羽ばたき模型、装置も、左右二枚の羽が上下へと動くだけで、動きに意外性がなく、興味を引きにくい、という課題を指摘できる。
【0012】
波打つように動く装置として、上記特許文献5の装置は、多くのアクチュエータとそれらの制御装置からなり、構造がかなり複雑である。また、翼の数だけアクチュエータを使用するため、波打つように動くのは動くが、あまり意外性はないと言える。
【0013】
以上の事柄を踏まえ、卓上扇風機や一般的な家庭用エアコンの比較的弱い風でも動作することと、波打つような動きを単純な構造で実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
軸と、複数個の揺動部からなる模型であって、前記揺動部は、ハブと、前記ハブの左右に設けられた左羽と右羽とからなり、前記ハブは前記軸に揺動軸心まわりに揺動自在に取り付けられており、前記揺動軸心を略水平にした際、前記揺動部の重心が前記揺動軸心よりも下に位置し、かつ前記左羽と前記右羽の重量が略釣り合うようにする。
【0015】
好ましくは、前記揺動軸心を略水平にした際、水平面に垂直で前記揺動軸心を通る平面を対称面として、前記揺動部の前記左羽と前記右羽が略面対称であるようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の模型には、卓上扇風機や一般的な家庭用エアコンの比較的弱い風でも作動し、波打つような面白みのある動きを単純な構造で実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明の模型の実施例1の説明図である。
【
図2】
図2は本発明の模型の実施例1の説明図である。
【
図3】
図3は本発明の模型の実施例1の説明図である。
【
図4】
図4は本発明の模型の実施例1の説明図である。
【
図5】
図5は本発明の模型の実施例2の説明図である。
【
図6】
図6は本発明の模型の実施例2の説明図である。
【
図7】
図7は本発明の模型の実施例2の説明図である。
【
図8】
図8は本発明の模型の実施例3の説明図である。
【
図9】
図9は本発明の模型の実施例3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、実施例1から実施例11を挙げ、
図1から
図20を用いて、発明を実施するための形態を説明していく。いずれの図においても、機能が同一である部分は同じ符号で示している。
【実施例0019】
図1は実施例1の模型1の風を受けていない状態の斜視図、
図2は実施例1の模型1の揺動部3の斜視図、
図3は実施例1の模型1と扇風機12の位置関係を示す斜視図、
図4は実施例1の模型1が、実際に風を受けて波打つように動く際、どのような感じの動きになるか、一瞬を切り取った斜視図である。
【0020】
図1のように、模型1は、16個の板状の揺動部3を軸2に取り付けた構造として表されている。揺動部3は、
図2のように、細長い薄い板のちょうど中間部にハブ4を設けた構造になっており、ハブ4を境に右羽5と左羽6に分けられている。揺動部3は、ハブ4の穴に軸2を通すことで軸2に取り付けられる。ハブ4の下に板を接着しているという形から分かるように、揺動部3の重心は揺動軸心15よりも下に位置する。
【0021】
図1のように、ハブ4とハブ4の間にはスペーサー7が取り付けてある。実施例1ではスペーサー7としてワッシャーを3枚入れている。軸2の両端部にはハブ4とスペーサー7が移動したり、はずれたりしないようにするための固定用部品8が取り付けてある。
【0022】
各揺動部3の重心は、揺動軸心15よりも下に位置し、右羽5と左羽6の重量が釣り合っているため、風を受けていない時は、揺動部3は自然と水平な状態に保たれる。その均衡を破るだけの力が加われば揺動部3は動くため、比較的弱い風でも動くということになる。揺動部3が動く際は、揺動軸心15まわりにシーソーのように揺動する。軸2を支点として右羽5と左羽6の重さの釣り合いをとる点が、羽を分離させている構造の上記特許文献1や2との違いと言える。
【0023】
図2のように、実施例1では揺動部3は細長い薄い板のちょうど中間部にハブ4を設けた構造になっている。
図3の扇風機12のような小型の扇風機で動かすためには板の材質と寸法が重要になってくるが、発明者が実際に作った際は、厚さ2ミリメートル、幅5ミリメートル、長さ11センチメートルのヒノキの板を用い、両端からちょうど5.5センチメートルのところにハブ4の穴が来るようにハブ4を接着した。ハブ4は厚さ0.1ミリメートルの薄い銅板を曲げて作成した。
【0024】
揺動部3は、プラスチック等の材質で作ることも当然可能である。プラスチックで作る場合、ハブ4と右羽5、左羽6をすべて一体化させて作るのが効率よく、強度も高い。羽部分をプラスチックで作る場合は、ヒノキの比重が約0.4g/cm3、ABS樹脂の比重が約1g/cm3であることを踏まえると、幅と長さを同じにするとして、厚さを約1ミリメートル弱にすると、ヒノキで作る場合と同様の動きやすさで動く。
【0025】
図3のように、模型1に風を当てて作動させる場合は、支持部9と土台10を設けて模型1を空中に配置する必要がある。
図3では、扇風機12の風が、軸2の方向に向けて、模型1の16個の揺動部3に対して斜め下から当たるように配置している。ここでは扇風機12は羽径が約11センチメートルのものを使用しており、風が各揺動部3に十分よく当たるようになっている。ただし、
図3では模型1に対して斜め下から風を当てているが、斜め上から当てても同様に作動する。
【0026】
図4は、模型1が実際に風を受けた際、どのような感じの動きになるか、一瞬を切り取った図である。一個の揺動部3だけに注目すると、風を受けてもシーソーのように揺動するだけであまり面白い動きとは言えないが、他の揺動部3とのコンビネーションで波打つような動きが実現される。
【0027】
風の移動とともに揺動部3のシーソー状の動きが次の揺動部3へと伝播していくように動作する。静止図だとイメージしにくいが、軸2の左右で交互に波が移動するような感じで動作する。また、波打つように動作するものの、揺動部3の動きはかなり早いため、多くの羽を持つトンボが羽ばたくようにも見える。
【0028】
実施例1では、揺動部3の個数を16個としたが、これは扇風機12の風の範囲に合わせ、かつ波が伝播する動きを細かく可視化するために揺動部3の個数を多くしたもので、揺動部3の個数は自由に決めてよい。扇風機の羽径、風量、波の可視化の細かさ、揺動部3の動きやすさ等を鑑みて適切に決めればよい。
【0029】
揺動部3の個数は、1個だけとしても波打つような動きを表していると理論的には言い張れないこともないが、複数個にして波の動きを可視化するというのが本発明の基本的考え方である。実施例1の揺動部3の寸法だと、揺動部3が5個くらいあれば波打つような動きを観察することはできる。
【0030】
図1ではハブ4とハブ4の間は、スペーサー7としてワッシャーを3枚入れており、ハブ4とハブ4の間が約1ミリメートルあくようにしている。これは揺動部3が動きやすくするためと、揺動部3が隣の揺動部3と当たって干渉するのを避けるためであり、揺動部3同士で干渉しないようにできるのであれば、スペーサー7は必須ではない。ハブ4とハブ4の間の距離も、狭くする必要があるわけではなく、ある程度幅があっても波打つような動きは観察できる。
【0031】
図1のように揺動部3と隣の揺動部3の間の幅が狭い場合は、揺動部3が風を受けたとき、上下にのみ運動するようにし、隣の揺動部3と当たって干渉しないようにするのが、きれいな動きを実現するために重要である。ハブ4の穴の直径を、軸2の直径よりごくわずかだけ大きいようにすると、動きのぶれが少なくなる。
【0032】
波打つような動きだけでも視覚効果は比較的あるが、揺動部3のハブ4や右羽5及び左羽6の表面にホログラムシールを貼るなどの装飾を施すと、揺動部3が動いて角度が変わるにつれ色や光り方も変わるため、視覚効果がさらに大きくなる。
【0033】
また、実施例1では、軸2と揺動部3のみで装飾的要素はないが、昆虫の頭のような飾りをつけで昆虫を模したり、あるいはヒラメやエイの頭のような飾りをつけて魚類を模したり、様々な見た目にすることができる。
【0034】
実施例1は、
図3の扇風機12のような卓上で使える小型の扇風機の弱い風でも作動する例として提示したが、床に設置するタイプのより大きいサイズの扇風機を使用すれば、より大きな寸法のものも容易に作動させることができる。
実施例1では、軸2に揺動部3とスペーサー7を挿し込んでいる構造上、軸2を水平から傾けると、地面に近い方の揺動部3に、上に位置する揺動部3やスペーサー7の重さがかかって動きにくくなるという欠点があった。実施例2では、軸2を傾けても揺動部3が動きやすいという長所がある。また揺動部3を軸2に取り付ける際も、ハブ4を軸2にはめこむだけでよいため、端から挿し込んでいくよりも早く作ることができる。