(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030001
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】誘導肝細胞およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20230228BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230228BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20230228BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230228BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230228BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230228BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230228BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20230228BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20230228BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20230228BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20230228BHJP
【FI】
C12N5/071
C12P21/02 A
A61K35/407
A61P1/16
A61P35/00
A61P31/14
A61P31/20
A61K48/00
A61L27/50
A61L27/38
A61L27/36 400
C12N5/0735 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022197839
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2021018054の分割
【原出願日】2015-11-25
(31)【優先権主張番号】62/085,185
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】514149598
【氏名又は名称】アクセラレイテッド・バイオサイエンシズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジャウ-ナン
(72)【発明者】
【氏名】リー,トニー・トゥン-イーン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユータ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,イン-メイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】栄養膜幹細胞から誘導された肝細胞、該細胞を誘導するための方法、およびそれらの組成物を提供する。前記誘導肝細胞を利用することによって疾患または障害(例えば、肝臓関連)を処置する方法も提供する。
【解決手段】インビトロで誘導肝細胞に分化するように栄養膜幹(TS)細胞を誘導する方法であって、栄養膜幹細胞を馴化培地と接触させて、栄養膜幹細胞の誘導肝細胞への分化を誘導することを含み、該馴化培地は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ステロイド、およびサイトカインを含む、上記方法とする。
【選択図】
図12-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロで誘導肝細胞に分化するように栄養膜幹(TS)細胞を誘導する方法であって、
栄養膜幹細胞を馴化培地と接触させて、栄養膜幹細胞の誘導肝細胞への分化を誘導すること
を含み、該馴化培地は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ステロイド、およびサイトカインを含む、上記方法。
【請求項2】
前記馴化培地に前記ステロイドおよび前記サイトカインを添加する前に、前記栄養膜幹細胞を前記FGFと接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記馴化培地に前記ステロイドおよび前記サイトカインを添加する前に、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、8時間、少なくとも12時間、少なくとも16時間、少なくとも20時間、または少なくとも24時間、前記栄養膜幹細胞を前記FGFと接触させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記栄養膜幹細胞を、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、または少なくとも7日インキュベートすることをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記誘導肝細胞が、肝臓前駆細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分化が、4つの段階:原始線条から胚体内胚葉(DE)への段階、肝臓特異的な内胚葉の段階、肝芽細胞の段階、ならびに胎児および成体の肝細胞の段階
の1つまたはそれより多くを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、BSEP、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記4つの段階の1つまたはそれより多くで発現される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記原始線条からDEへの段階で発現される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
CXCR4、FOXA2、SOX17、および/またはHHEXの発現レベルが、前記原始線条からDEへの段階で、前記原始線条からDEへの段階の前のレベルと比べて増加する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
増加した前記発現レベルが、遺伝子発現の増加したレベルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
CXCR4、FOXA2、SOX17および/またはHHEXの前記発現レベルが、前記原始線条からDEへの段階の前のレベルより約1倍~約10,000倍高く増加する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
CXCR4、FOXA2、SOX17および/またはHHEXの前記発現レベルが、前記原始線条からDEへの段階の前のレベルより約10倍~約1000倍高く増加する、請
求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、CYP7A1、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記肝臓特異的な内胚葉の段階で発現される、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の発現レベルが、前記肝臓特異的な内胚葉の段階で、前記肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルと比べて増加する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
増加した前記発現レベルが、遺伝子発現の増加したレベルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の前記発現レベルが、前記肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルより約1倍~約1000倍高く増加する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の前記発現レベルが、前記肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルより約10倍~約100倍高く増加する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、BSEP、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記肝芽細胞の段階で発現される、請求項5~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの発現レベルが、前記肝芽細胞の段階で、前記肝芽細胞の段階の前のレベルと比べて増加する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
増加した前記発現レベルが、遺伝子発現の増加したレベルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの前記発現レベルが、前記肝芽細胞の段階の前のレベルより約1倍~約1000倍高く増加する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの前記発現レベルが、前記肝芽細胞の段階の前のレベルより約10倍~約100倍高く増加する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記胎児および成体の肝細胞様細胞の段階で発現される、請求項6~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの発現レベルが、前記胎児および成体の肝細胞様細胞の段階で、前記胎児および成体の肝細胞様細胞の段階の前のレベルと比べて増加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
増加した前記発現レベルが、遺伝子発現の増加したレベルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの前記発現レベルが、前記胎児および成体の肝細胞の段階の前のレベルより約10倍~約1000倍高く増加する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの前記発現レベルが、前記胎児および成体の肝細胞の段階の前のレベルより少なくとも100倍高く増加する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
前記TS細胞が、ヒトTS細胞である、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ステロイドが、デキサメタゾンである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記サイトカインが、オンコスタチンMである、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記オンコスタチンMが、ヒトオンコスタチンMである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒトオンコスタチンMが、組換えヒトオンコスタチンMである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記馴化培地が、骨形成タンパク質(BMP)をさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記BMPが、約1~100ng/mlの濃度で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記BMPが、約1~50ng/mlの濃度で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記BMPが、約20ng/mlの濃度で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記BMPが、BMP1、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10、またはBMP15である、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記BMPが、BMP4である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記馴化培地が、肝細胞増殖因子(HGF)をさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記HGFが、約0.1~50ng/mlの濃度で存在する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記HGFが、約0.1~25ng/mlの濃度で存在する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記HGFが、約5ng/mlの濃度で存在する、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記誘導肝細胞が、免疫特権を有する、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記誘導肝細胞が、TGFβ1を発現する、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記誘導肝細胞が、細胞外マトリックス(ECM)中でTGFβ1、フィブロネクチン、およびコラーゲンIVを発現する、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記誘導肝細胞が、HLA-Gを発現する、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記誘導肝細胞が、HLA-Gおよびstem-121を発現する、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記誘導肝細胞が、CD4+Foxp3+Treg細胞を動員する、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記誘導肝細胞が、3次元構造の組織を形成する、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記誘導肝細胞が、クラスター化または集合化する、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記誘導肝細胞が、三日月形の細胞塊を形成する、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記誘導肝細胞が、末梢の区画および中央の区画を含む、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記誘導肝細胞が、前記末梢の区画中において基底膜を超えてECMに沿って不規則に分布する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記誘導肝細胞が、前記中央の区画中において基底から中央領域に向かって分布する、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記誘導肝細胞が、TGFβ1、HLA-G、stem 121、C-kit、CK19、CK18、ALB、α-AFP、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、GATA4、CYP1A1、CYP2B6、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記誘導肝細胞が、TGFβ1、HLA-G、stem 121、C-kit、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、CYP2B6、ASGR1、CXCR4、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記誘導肝細胞が、CPS1、CYP2B6、およびそれらの組合せからなる群より選
択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項1~57のいずれか一項に記載の方法によって生産された、誘導肝細胞。
【請求項59】
栄養膜幹細胞から誘導された、単離された誘導肝細胞であって、該肝細胞は、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGFβ1)、表面抗原分類4(CD4)、フォークヘッドボックスP3(Foxp3)、ヒト細胞質マーカーのstem 121(stem 121)、マスト/幹細胞増殖因子受容体C-kit(C-kit)、ベータトロフィン、アポリポタンパク質F(APOF)、アルコールデヒドロゲナーゼ-1(ADH1)、カルバモイルリン酸シンターゼ1(CPS1)、GATA転写因子4(GATA4)、シトクロムP450ファミリー1のサブファミリーAのポリペプチド1(CYP1A1)、シトクロムP450 2B6(CYP2B6)、アシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4(CXCR4)、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)、多剤耐性タンパク質-2(MRP2)、コネクシン32(CX32)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、ヘキソサミニダーゼAアルファポリペプチド(HEXA)、造血系で発現されるホメオボックス(HHEX)、トランスチレチン(TTR)、アルブミン(ALB)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、シトクロムP450 7A1(CYP7A1)、グルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)、セルピンペプチダーゼ阻害剤クレードA(アルファ-1抗プロテイナーゼ、アンチトリプシン)のメンバー1(SERPINA1)、ATP結合カセットのサブファミリーC(ABCC2)、CCAAT-エンハンサー結合タンパク質ベータ(C/EBPβ)、肝細胞核因子1-アルファ(HNF1α)、肝細胞核因子4-アルファ(HNF4α)、アルファ-1-フェトプロテイン(AFP)、サイトケラチン8(CK8)、ミトコンドリアのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ2(PCK2)、グリコーゲンシンターゼ2(GYS2)、肝細胞核因子6(HNF6)、アルコールデヒドロゲナーゼ1C(クラスI)ガンマポリペプチド(ADH1C)、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)、プロスペロホメオボックス1(PROX1)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、サイトケラチン18(CK18)、およびサイトケラチン19(CK19)からなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーを発現する、上記肝細胞。
【請求項60】
肝臓前駆細胞である、先行するいずれもの請求項に記載の肝細胞。
【請求項61】
前記肝細胞が、4つの段階:原始線条から胚体内胚葉(DE)への段階、肝臓特異的な内胚葉の段階、肝芽細胞の段階、ならびに胎児および成体の肝細胞の段階のうち1つにある、先行するいずれもの請求項に記載の肝細胞。
【請求項62】
CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、BSEP、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記4つの段階の1つまたはそれより多くで発現される、請求項61に記載の肝細胞。
【請求項63】
CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記原始線条からDEへの段階で発現される、請求項61または62に記載の肝細胞。
【請求項64】
CXCR4、FOXA2、SOX17、および/またはHHEXの発現レベルが、前記原始線条からDEへの段階で、前記原始線条からDEへの段階の前のレベルと比べて増加
する、請求項63に記載の肝細胞。
【請求項65】
増加した前記発現レベルが、遺伝子発現の増加したレベルである、請求項64に記載の肝細胞。
【請求項66】
CXCR4、FOXA2、SOX17および/またはHHEXの前記発現レベルが、前記原始線条からDEへの段階の前のレベルより約1倍~約10,000倍高く増加する、請求項64または65に記載の肝細胞。
【請求項67】
CXCR4、FOXA2、SOX17および/またはHHEXの前記発現レベルが、前記原始線条からDEへの段階の前のレベルより約10倍~約1000倍高く増加する、請求項64または65に記載の肝細胞。
【請求項68】
SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、CYP7A1、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記肝臓特異的な内胚葉の段階で発現される、請求項60~67のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項69】
SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の発現レベルが、前記肝臓特異的な内胚葉の段階で、前記肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルと比べて増加する、請求項68に記載の肝細胞。
【請求項70】
増加した前記発現レベルが、遺伝子発現の増加したレベルである、請求項69に記載の肝細胞。
【請求項71】
SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の前記発現レベルが、前記肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルより約1倍~約1000倍高く増加する、請求項69または70に記載の肝細胞。
【請求項72】
SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の前記発現レベルが、前記肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルより約10倍~約100倍高く増加する、請求項69または70に記載の肝細胞。
【請求項73】
TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記肝芽細胞の段階で発現される、請求項60~72のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項74】
TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの発現レベルが、前記肝芽細胞の段階で、前記肝芽細胞の段階の前のレベルと比べて増加する、請求項73に記載の肝細胞。
【請求項75】
増加した前記発現レベルが、遺伝子発現の増加したレベルである、請求項74に記載の肝細胞。
【請求項76】
TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの前記発現レベルが、前記肝芽細胞の段階の前のレベルより約1倍~約1000倍高く増加する、請求項74または75に記載の肝細胞。
【請求項77】
TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEP
の前記発現レベルが、前記肝芽細胞の段階の前のレベルより約10倍~約100倍高く増加する、請求項74または75に記載の肝細胞。
【請求項78】
HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーが、前記胎児および成体の肝細胞様細胞の段階で発現される、請求項60~77のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項79】
HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの発現レベルが、前記胎児および成体の肝細胞様細胞の段階で、前記胎児および成体の肝細胞様細胞の段階の前のレベルと比べて増加する、請求項78に記載の肝細胞。
【請求項80】
増加した前記発現レベルが、遺伝子発現の増加したレベルである、請求項79に記載の肝細胞。
【請求項81】
HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの前記発現レベルが、前記胎児および成体の肝細胞の段階の前のレベルより約10倍~約1000倍高く増加する、請求項79または80に記載の肝細胞。
【請求項82】
HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの前記発現レベルが、前記胎児および成体の肝細胞の段階の前のレベルより少なくとも100倍高く増加する、請求項79または80に記載の肝細胞。
【請求項83】
前記栄養膜幹細胞が、ヒト栄養膜幹細胞である、請求項59~82のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項84】
前記肝細胞が、免疫特権を有する、請求項59~83のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項85】
前記肝細胞が、TGFβ1を発現する、請求項59~84のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項86】
前記肝細胞が、細胞外マトリックス(ECM)中で、TGFβ1、フィブロネクチン、およびコラーゲンIVを発現する、請求項59~85のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項87】
前記肝細胞が、HLA-Gを発現する、請求項59~86のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項88】
前記肝細胞が、HLA-Gおよびstem-121を発現する、請求項59~87のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項89】
前記肝細胞が、CD4+Foxp3+Treg細胞を動員する、請求項59~88のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項90】
前記肝細胞が、3次元構造の組織を形成する、請求項59~89のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項91】
前記肝細胞が、クラスター化または集合化する、請求項59~90のいずれか一項に記
載の肝細胞。
【請求項92】
前記肝細胞が、三日月形の細胞塊を形成する、請求項59~91のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項93】
前記肝細胞が、末梢の区画および中央の区画を含む、請求項59~92のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項94】
前記肝細胞が、前記末梢の区画中において基底膜を超えてECMに沿って不規則に分布する、請求項93に記載の肝細胞。
【請求項95】
前記肝細胞が、前記中央の区画中において基底から中央領域に向かって分布する、請求項93または94に記載の肝細胞。
【請求項96】
前記肝細胞が、TGFβ1、HLA-G、stem 121、C-kit、CK19、CK18、ALB、α-AFP、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、GATA4、CYP1A1、CYP2B6、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項59~95のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項97】
前記肝細胞が、TGFβ1、HLA-G、stem 121、C-kit、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、CYP2B6、ASGR1、CXCR4、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項96に記載の肝細胞。
【請求項98】
前記肝細胞が、CPS1、CYP2B6、およびそれらの組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項97に記載の肝細胞。
【請求項99】
前記肝細胞が、stem 121、C-kit、CK19、CK18、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項96に記載の肝細胞。
【請求項100】
前記肝細胞が、ALB、AFP、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、GATA4、CYP1A1、CYP2B6、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項96に記載の肝細胞。
【請求項101】
前記肝細胞が、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する、請求項96に記載の肝細胞。
【請求項102】
状態の処置または予防で使用するための治療的化合物をスクリーニングする方法であって、
a)請求項55~101のいずれか一項に記載の単離された肝細胞を、該治療的化合物と接触させること;および
b)該単離された肝細胞中のバイオマーカーの発現レベルを検出すること
を含む、上記方法。
【請求項103】
前記単離された肝細胞中のバイオマーカーの前記発現レベルが、前記治療的化合物と接触させていない等価な単離された肝細胞と比較して増加する、請求項102に記載の方法
。
【請求項104】
前記単離された肝細胞中のバイオマーカーの前記発現レベルが、前記治療的化合物と接触させていない等価な単離された肝細胞と比較して減少する、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記発現レベルが、遺伝子発現レベルである、請求項102~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記バイオマーカーが、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、またはCYP7A1を含む、請求項102~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記治療的化合物が、小分子薬物、ペプチド、またはタンパク質である、請求項102~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記治療的化合物が、合成化学薬物である、請求項102~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記状態が、肝不全である、請求項102~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記状態が、肝臓関連の疾患または障害である、請求項102~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記肝臓関連の疾患または障害が、アラジール症候群、アルファ1抗トリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(任意選択で、妊娠性急性脂肪肝、妊娠中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎、ウィルソン病、またはそれらのあらゆる組合せを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
請求項55~101のいずれか一項に記載の単離された肝細胞を含む組成物。
【請求項113】
請求項55~101のいずれか一項に記載の単離された肝細胞を含む医薬組成物。
【請求項114】
請求項55~101のいずれか一項に記載の単離された肝細胞を、対象に該肝細胞を植え付けるのに有効な量で含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における状態を処置する方法。
【請求項115】
前記肝細胞が、医薬的に許容される担体中で投与される、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記医薬的に許容される担体が、リン酸緩衝塩類溶液を含む、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
前記肝細胞が、1ml当たり約10×106から約40×106個の細胞を含有する懸濁液中で投与される、請求項114~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記肝細胞が、約10mlから約150mlの体積で投与される、請求項114~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記対象が、ヒトである、請求項114~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記投与が、注射を含む、請求項114~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記注射が、静脈注射である、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記注射が、肝静脈に投与される、請求項120に記載の方法。
【請求項123】
前記注射が、肝臓動脈に投与される、請求項120に記載の方法。
【請求項124】
前記状態が、肝臓関連の疾患または障害である、請求項114~123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記状態が、肝不全である、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記肝臓関連の疾患または障害が、アラジール症候群、アルファ1抗トリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(任意選択で、妊娠性急性脂肪肝、妊娠中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎、ウィルソン病、またはそれらのあらゆる組合せを含む、請求項124に記載の方法。
【請求項127】
治療用タンパク質を生産するための、請求項55~101のいずれか一項に記載の単離された肝細胞を含む組成物の使用。
【請求項128】
前記治療用タンパク質が、主要な血漿タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、可溶性血漿フィブロネクチン、α-フェトプロテイン、C反応性タンパク質、および数々のグロブリン;血流遮断および線維素溶解に関与するタンパク質、例えば凝血カスケードに関与する凝血因子、α2-マクログロブリン、α1-アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、プロテインS、プロテインC、プラスミノゲン、α2-抗プラスミン、および補体成分3;担体タンパク質、例えばアルブミン、セルロプラスミン、トランスコルチン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、IGF結合タンパク質、主要な尿タンパク質、レチノール結合タンパク質、性ホルモン結合グロブリン、トランスチレチン、トランスフェリン、およびビタミンD結合タンパク質;ホルモン、例えばインスリン様増殖因子1、トロンボポエチン、ヘプシジン、およびベータトロフィン;プロホルモン、例えばアンギオテンシノゲン;またはアポリポタンパク質を含む、請求項127に記載の使用。
【請求項129】
肝再生のための、請求項55~101のいずれか一項に記載の肝細胞を含む組成物の使用。
【請求項130】
前記肝再生が、エクスビボにおける肝再生である、請求項129に記載の使用。
【請求項131】
前記エクスビボにおける肝再生が、バイオプリンティング方法である、請求項130に記載の使用。
【請求項132】
前記バイオプリンティング方法が、3次元バイオプリンティング方法である、請求項131に記載の使用。
【請求項133】
バイオプリンティングのための、請求項55~101のいずれか一項に記載の肝細胞を含む組成物の使用。
【請求項134】
前記バイオプリンティングが、3次元バイオプリンティングである、請求項133に記載の使用。
【請求項135】
組織足場の生成のための、請求項55~101のいずれか一項に記載の肝細胞の使用。
【請求項136】
前記組織足場が、3次元の組織足場である、請求項135に記載の使用。
【請求項137】
遺伝子治療のための、請求項55~101のいずれか一項に記載の肝細胞を含む組成物の使用。
【請求項138】
前記遺伝子治療が、エクスビボにおける遺伝子治療である、請求項137に記載の使用。
【請求項139】
請求項55~101のいずれか一項に記載の肝細胞から生成した人工組織。
【請求項140】
前記組織が、3次元である、請求項139に記載の組織。
【請求項141】
前記組織において血管新生が起こる、請求項139または140に記載の組織。
【請求項142】
請求項55~101のいずれか一項に記載の肝細胞から生成した人工臓器。
【請求項143】
前記肝細胞、組織、または臓器が、AFP、ALB、アルファ-1-アンチトリプシン、グルコース、またはグリコーゲンを生産する、前記請求項のいずれか一項に記載の肝細胞、組織、または臓器。
【請求項144】
前記肝細胞、組織、または臓器が、脂質、コレステロール、または炭水化物を代謝する、前記請求項のいずれか一項に記載の肝細胞、組織、または臓器。
【請求項145】
前記肝細胞、組織、または臓器が、医薬または有毒物質を代謝する、前記請求項のいずれか一項に記載の肝細胞、組織、または臓器。
【請求項146】
前記肝細胞、組織、または臓器が、アンモニアまたは胆汁酸を取り込む、前記請求項のいずれか一項に記載の肝細胞、組織、または臓器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
相互参照
[0001]本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる2014年11月26日付けで出願された米国仮出願第62/085,185号の利益を主張する。
【0002】
参照による組み入れ
[0002]本明細書で開示される全ての公報、特許、および特許出願は、それぞれ個々の公報、特許、または特許出願が具体的かつ個々に参照により組み入れられるように提示されるのと同じ程度に参照により組み入れられる。本明細書で開示される用語および組み入れられた参考文献に記載の用語との間に矛盾が生じる場合には、本明細書に記載の用語が優先される。
【発明の概要】
【0003】
[0003]多くの形態の1つにおいて、インビトロで誘導肝細胞に分化するように栄養膜幹(TS)細胞を誘導する方法であって、栄養膜幹細胞を馴化培地と接触させて(例えば、十分な時間にわたり)、栄養膜幹細胞の誘導肝細胞への分化を誘導することを含み、馴化培地は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ステロイド、およびサイトカインを含む、上記方法が本明細書で開示される。一部の実施態様において、インビトロで誘導肝細胞に分化するように栄養膜幹(TS)細胞を誘導する方法であって、(a)栄養膜幹細胞を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ステロイド、およびサイトカインを含む馴化培地中で接触させること;および(b)細胞を、十分な時間にわたりインキュベートして、栄養膜幹細胞の誘導肝細胞への分化を誘導することを含む、上記方法が本明細書で開示される。一部の実施態様において、本方法は、馴化培地にステロイドおよびサイトカインを添加する前に、栄養膜幹細胞をFGFと接触させることをさらに含む。一部の実施態様において、馴化培地にステロイドおよびサイトカインを添加する前に、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、8時間、少なくとも12時間、少なくとも16時間、少なくとも20時間、または少なくとも24時間、栄養膜幹細胞をFGFと接触させる。一部の実施態様において、本方法は、栄養膜幹細胞を、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、または少なくとも7日インキュベートすることをさらに含む。一部の実施態様において、ステロイドおよびサイトカインは、同時または逐次的に馴化培地に添加される。
【0004】
[0004]一部の実施態様において、本明細書に記載の誘導肝細胞は、肝臓前駆細胞である。一部の実施態様において、FGFは、TS細胞において、miRNA-124aをアップレギュレートする。一部の実施態様において、miRNA-124aの上昇したレベルは、TS細胞において胚体内胚葉(DE)の特定化を開始させる。一部の実施態様において、DEの特定化は、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、グースコイド(GSC)、またはホメオドメインタンパク質MIXL1を含むバイオマーカーと関連する。一部の実施態様において、DEの特定化は、SOX17、FOXA2、およびGSCの上昇した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加したタンパク質発現レベルである。一部の実施態様において、DEの特定化は、MIXL1の減少した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、減少した発現レベルは、減少したタンパク質発現レベルである。一部の実施態様において、SOX17、FOXA2、およびGSCの上昇したタンパク質発現レベルならびにMIXL1の減少したタンパク質発現レベルは、DEの特定化を受けていない等価なTS細胞におけるSOX17、FOXA2、GSC、およびMIXL1のタンパク質発現レベルと比較したレベルである。一部の実施態様において、DEの特定化は
さらに、SOX2、NANOG、およびOCT4の上昇した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、SOX2、NANOG、およびOCT4の上昇した発現レベルは、タンパク質発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、SOX2、NANOG、およびOCT4の上昇した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、SOX2、NANOG、およびOCT4の上昇した発現レベルは、DEの特定化を受けていない等価なTS細胞におけるSOX2、NANOG、およびOCT4の発現レベルと比較したレベルである。一部の実施態様において、本明細書に記載の方法により誘導された分化は、4つの段階:原始線条から胚体内胚葉(DE)への段階、肝臓特異的な内胚葉の段階、肝芽細胞の段階、ならびに胎児および成体の肝細胞の段階の1つまたはそれより多くを含む。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、BSEP、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、4つの段階の1つまたはそれより多くで発現される。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、原始線条からDEへの段階で発現される。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17、および/またはHHEXの発現レベルは、原始線条からDEへの段階で、原始線条からDEへの段階の前のレベルと比べて増加する。一部の実施態様において、増加した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17および/またはHHEXの発現レベルは、原始線条からDEへの段階の前のレベルより約1倍~約10,000倍高く増加する。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17および/またはHHEXの発現レベルは、原始線条からDEへの段階の前のレベルより約10倍~約1000倍高く増加する。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、CYP7A1、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、肝臓特異的な内胚葉の段階で発現される。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階で、肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルと比べて増加する。一部の実施態様において、増加した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルより約1倍~約1000倍高く増加する。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルより約10倍~約100倍高く増加する。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、BSEP、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、肝芽細胞の段階で発現される。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの発現レベルは、肝芽細胞の段階で、肝芽細胞の段階の前のレベルと比べて増加する。一部の実施態様において、増加した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの発現レベルは、肝芽細胞の段階の前のレベルより約1倍~約1000倍高く増加する。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの発現レベルは、肝芽細胞の段階の前のレベルより約10倍~約100倍高く増加する。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階で発現される。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、
G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの発現レベルは、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階で、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階の前のレベルと比べて増加する。一部の実施態様において、増加した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの発現レベルは、胎児および成体の肝細胞の段階の前のレベルより約10倍~約1000倍高く増加する。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの発現レベルは、胎児および成体の肝細胞の段階の前のレベルより少なくとも100倍高く増加する。
【0005】
[0005]一部の実施態様において、本明細書に記載の栄養膜幹細胞は、ヒト栄養膜幹細胞である。一部の実施態様において、ステロイドは、デキサメタゾンである。一部の実施態様において、サイトカインは、オンコスタチンMである。一部の実施態様において、オンコスタチンMは、ヒトオンコスタチンMである。一部の実施態様において、ヒトオンコスタチンMは、組換えヒトオンコスタチンMである。一部の実施態様において、馴化培地は、骨形成タンパク質(BMP)をさらに含む。一部の実施態様において、BMPは、約1~100ng/mlの濃度で存在する。一部の実施態様において、BMPは、約1~50ng/ml、例えば、約20ng/mlの濃度で存在する。一部の実施態様において、BMPは、BMP1、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10、またはBMP15である。一部の実施態様において、BMPは、BMP4である。一部の実施態様において、馴化培地は、肝細胞増殖因子(HGF)をさらに含む。一部の実施態様において、HGFは、約0.1~50ng/mlまたは約0.1~25ng/ml、例えば、約5ng/mlの濃度で存在する。
【0006】
[0006]一部の実施態様において、本明細書で開示される肝細胞は、免疫特権を有する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、TGFβ1を発現する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、細胞外マトリックス(ECM)中でTGFβ1、フィブロネクチン、およびコラーゲンIVを発現する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、HLA-Gを発現する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、HLA-Gおよびstem-121を発現する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、CD4+Foxp3+Treg細胞を動員する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、3次元構造の組織を形成する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、クラスター化または集合化する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、三日月形の細胞塊を形成する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、末梢の区画および中央の区画を含む。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、末梢の区画中において基底膜を超えてECMに沿って不規則に分布する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、中央の区画中において基底から中央領域に向かって分布する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、TGFβ1、HLA-G、stem 121、C-kit、CK19、CK18、ALB、α-AFP、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、GATA4、CYP1A1、CYP2B6、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、TGFβ1、HLA-G、stem 121、C-kit、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、CYP2B6、ASGR1、CXCR4、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、CPS1、CYP2B6、およびそれらの組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。
【0007】
[0007]一形態において、本明細書で開示されるいずれかの方法によって生産された誘導
肝細胞が本明細書において提供される。別の形態において、栄養膜幹細胞から誘導された、単離された誘導肝細胞が本明細書において提供される。別の形態において、栄養膜幹細胞から誘導された、単離された肝細胞が本明細書において提供される。一部の実施態様において、肝細胞は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGFβ1)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、表面抗原分類4(CD4)、フォークヘッドボックスP3(Foxp3)、ヒト細胞質マーカーのstem 121(stem 121)、マスト/幹細胞増殖因子受容体C-kit(C-kit)、ベータトロフィン、アポリポタンパク質F(APOF)、アルコールデヒドロゲナーゼ-1(ADH1)、カルバモイルリン酸シンターゼ1(CPS1)、GATA転写因子4(GATA4)、シトクロムP450ファミリー1のサブファミリーAのポリペプチド1(CYP1A1)、シトクロムP450 2B6(CYP2B6)、アシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4(CXCR4)、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)、多剤耐性タンパク質-2(MRP2)、コネクシン32(CX32)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、ヘキソサミニダーゼAアルファポリペプチド(HEXA)、造血系で発現されるホメオボックス(HHEX)、トランスチレチン(TTR)、アルブミン(ALB)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、シトクロムP450 7A1(CYP7A1)、グルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)、セルピンペプチダーゼ阻害剤クレードA(アルファ-1抗プロテイナーゼ、アンチトリプシン)メンバー1(SERPINA1)、ATP結合カセットのサブファミリーC(ABCC2)、CCAAT-エンハンサー結合タンパク質ベータ(C/EBPβ)、肝細胞核因子1-アルファ(HNF1α)、肝細胞核因子4-アルファ(HNF4α)、アルファ-1-フェトプロテイン(AFP)、サイトケラチン8(CK8)、ミトコンドリアのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ2(PCK2)、グリコーゲンシンターゼ2(GYS2)、肝細胞核因子6(HNF6)、アルコールデヒドロゲナーゼ1C(クラスI)ガンマポリペプチド(ADH1C)、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)、プロスペロホメオボックス1(PROX1)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、サイトケラチン18(CK18)、およびサイトケラチン19(CK19)からなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーを発現する。
【0008】
[0008]一部の実施態様において、本明細書に記載の肝細胞は、肝臓前駆細胞である。一部の実施態様において、FGFは、TS細胞において、miRNA-124aをアップレギュレートする。一部の実施態様において、miRNA-124aの上昇したレベルは、TS細胞において胚体内胚葉(DE)の特定化を開始させる。一部の実施態様において、DEの特定化は、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、グースコイド(GSC)、またはホメオドメインタンパク質MIXL1を含むバイオマーカーと関連する。一部の実施態様において、DEの特定化は、SOX17、FOXA2、およびGSCの上昇した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加したタンパク質発現レベルである。一部の実施態様において、DEの特定化は、MIXL1の減少した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、減少した発現レベルは、減少したタンパク質発現レベルである。一部の実施態様において、SOX17、FOXA2、およびGSCの上昇したタンパク質発現レベルならびにMIXL1の減少したタンパク質発現レベルは、DEの特定化を受けていない等価なTS細胞におけるSOX17、FOXA2、GSC、およびMIXL1のタンパク質発現レベルと比較したレベルである。一部の実施態様において、DEの特定化はさらに、SOX2、NANOG、およびOCT4の上昇した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、SOX2、NANOG、およびOCT4の上昇した発現レベルは、タンパク質発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、SOX2、NANOG、およびOCT4の上昇した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、SOX2、NANOG、およびOCT4の上昇した発現レベルは、DE
の特定化を受けていない等価なTS細胞におけるSOX2、NANOG、およびOCT4の発現レベルと比較したレベルである。一部の実施態様において、本明細書で開示される肝細胞は、4つの段階:原始線条から胚体内胚葉(DE)への段階、肝臓特異的な内胚葉の段階、肝芽細胞の段階、ならびに胎児および成体の肝細胞の段階のうち1つにある。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、BSEP、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、4つの段階の1つまたはそれより多くで発現される。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、原始線条からDEへの段階で発現される。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17、および/またはHHEXの発現レベルは、原始線条からDEへの段階で、原始線条からDEへの段階の前のレベルと比べて増加する。一部の実施態様において、増加した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17および/またはHHEXの発現レベルは、原始線条からDEへの段階の前のレベルより約1倍~約10,000倍高く増加する。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17および/またはHHEXの発現レベルは、原始線条からDEへの段階の前のレベルより約10倍~約1000倍高く増加する。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、CYP7A1、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、肝臓特異的な内胚葉の段階で発現される。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階で、肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルと比べて増加する。一部の実施態様において、増加した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルより約1倍~約1000倍高く増加する。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、および/またはCYP7A1の発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階の前のレベルより約10倍~約100倍高く増加する。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、肝芽細胞の段階で発現される。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの発現レベルは、肝芽細胞の段階で、肝芽細胞の段階の前のレベルと比べて増加する。一部の実施態様において、増加した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの発現レベルは、肝芽細胞の段階の前のレベルより約1倍~約1000倍高く増加する。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および/またはBSEPの発現レベルは、肝芽細胞の段階の前のレベルより約10倍~約100倍高く増加する。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのバイオマーカーは、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階で発現される。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの発現レベルは、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階で、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階の前のレベルと比べて増加する。一部の実施態様において、増加した発現レベルは、遺伝子発現の増加したレベルである。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および
/またはHNF4αの発現レベルは、胎児および成体の肝細胞の段階の前のレベルより約10倍~約1000倍高く増加する。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、および/またはHNF4αの発現レベルは、胎児および成体の肝細胞の段階の前のレベルより少なくとも100倍高く増加する。一部の実施態様において、栄養膜幹細胞は、ヒト栄養膜幹細胞である。
【0009】
[0009]一部の実施態様において、本明細書に記載の肝細胞は、免疫特権を有する。一部の実施態様において、肝細胞は、TGFβ1を発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、細胞外マトリックス(ECM)中でTGFβ1、フィブロネクチン、およびコラーゲンIVを発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、HLA-Gを発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、HLA-G および stem-121を発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、CD4+Foxp3+Treg細胞を動員する。一部の実施態様において、肝細胞は、3次元構造の組織を形成する。一部の実施態様において、肝細胞は、クラスター化または集合化する。一部の実施態様において、肝細胞は、三日月形の細胞塊を形成する。一部の実施態様において、肝細胞は、末梢の区画および中央の区画を含む。一部の実施態様において、肝細胞は、末梢の区画中において基底膜を超えてECMに沿って不規則に分布する。一部の実施態様において、肝細胞は、中央の区画中において基底から中央領域に向かって分布する。一部の実施態様において、肝細胞は、TGFβ1、HLA-G、stem 121、C-kit、CK19、CK18、ALB、α-AFP、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、GATA4、CYP1A1、CYP2B6、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、TGFβ1、HLA-G、stem 121、C-kit、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、CYP2B6、ASGR1、CXCR4、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、CPS1、CYP2B6、およびそれらの組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、stem 121、C-kit、CK19、CK18、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、ALB、AFP、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、GATA4、CYP1A1、CYP2B6、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。一部の実施態様において、肝細胞は、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、Cx32、およびそれらのあらゆる組合せからなる群より選択される1つまたはそれより多くのマーカーを発現する。
【0010】
[0010]また、状態の処置または予防で使用するための治療的化合物をスクリーニングする方法であって、本明細書で開示される単離された肝細胞を、治療的化合物と接触させること;および単離された肝細胞中のバイオマーカーの発現レベルを検出することを含む、上記方法も本明細書で開示される。一部の実施態様において、単離された肝細胞中のバイオマーカーの発現レベルは、治療的化合物と接触させていない等価な単離された肝細胞と比較して増加する。一部の実施態様において、単離された肝細胞中のバイオマーカーの発現レベルは、治療的化合物と接触させていない等価な単離された肝細胞と比較して減少する。一部の実施態様において、発現レベルは、遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、バイオマーカーは、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、またはCYP7A1を含む。一部の実施態様において、治療的化合物は、小分子薬物、ペプチド、またはタンパク質である。一部の実施態様において、治療的化合物は、合成化学薬物である。一部の実施態様において、状態は、肝不全である。一部の実施態様において、状態は、肝臓関連の疾患または障害
である。一部の実施態様において、肝臓関連の疾患または障害は、アラジール症候群、アルファ1抗トリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(任意選択で、妊娠性急性脂肪肝、妊娠中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎、ウィルソン病、またはそれらのあらゆる組合せを含む。
【0011】
[0011]一形態において、本明細書で開示されるいずれかの肝細胞を含む組成物(例えば、医薬組成物)が本明細書で開示される。
[0012]別の形態において、本明細書に記載の単離された肝細胞を、対象に(例えば、対象の肝臓に)肝細胞を植え付けるのに有効な量で含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における状態を処置する方法が本明細書で開示される。一部の実施態様において、肝細胞は、医薬的に許容される担体中で投与される。一部の実施態様において、医薬的に許容される担体は、リン酸緩衝塩類溶液を含む。一部の実施態様において、肝細胞は、1ml当たり約1×106から約100×106個の細胞、1ml当たり約1×106から約250×106個の細胞、1ml当たり約1×106から約500×106個の細胞、または1ml当たり約10×106から約40×106個の細胞を含有する懸濁液中で投与される。一部の実施態様において、肝細胞は、約1~5ml、約1~10ml、約1~50ml、約1~100ml、または約10~150mlの体積で投与される。一部の実施態様において、対象は、ヒトである。一部の実施態様において、投与は、注射、例えば、静脈注射を含む。一部の実施態様において、注射は、肝静脈になされる。一部の実施態様において、注射は、肝臓動脈になされる。一部の実施態様において、状態は、肝臓関連の疾患または障害である。一部の実施態様において、状態は、肝不全である。一部の実施態様において、肝臓関連の疾患または障害は、アラジール症候群、アルファ1抗トリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(任意選択で、妊娠性急性脂肪肝、妊娠中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎、ウィルソン病、またはそれらのあらゆる組合せを含む。
【0012】
[0013]別の形態において、治療用タンパク質を生産するための本明細書に記載の肝細胞を含む組成物の使用が本明細書で開示される。一部の実施態様において、治療用タンパク質は、主要な血漿タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、可溶性血漿フィブロネクチン、α-フェトプロテイン、C反応性タンパク質、および数種のグロブリン;血流遮断および線維素溶解に関与するタンパク質、例えば凝血カスケードに関与する凝血因子、α2-マクログロブリン、α1-アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、プロテインS、プロテインC、プラスミノゲン、α2-抗プラスミン、および補体成分3;担体タンパク質、例えばアルブミン、セルロプラスミン、トランスコルチン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、IGF結合タンパク質、主要な尿タンパク質、レチノール結合タンパク質、性ホルモン結合グロブリン、トランスチレチン、トランスフェリン、およびビタミンD結合タンパク質;ホルモン、例えばインスリン様増殖因子1、トロンボポエチン、ヘプシジン、およびベータトロフィン;プロホルモン、例えばアンギオテンシノゲン;またはアポリポタンパク質を含む。
【0013】
[0014]また、肝再生のための、本明細書に記載の肝細胞を含む組成物の使用も本明細書で開示される。一部の実施態様において、肝再生は、エクスビボにおける肝再生である。一部の実施態様において、エクスビボにおける肝再生は、バイオプリンティング方法である。一部の実施態様において、バイオプリンティング方法は、3次元バイオプリンティング方法である。
【0014】
[0015]一形態において、バイオプリンティングのための、本明細書に記載の肝細胞を含む組成物の使用が本明細書で開示される。一部の実施態様において、バイオプリンティングは、3次元バイオプリンティングである。
【0015】
[0016]また、組織足場の生成のための、本明細書に記載の肝細胞の使用も本明細書で開示される。一部の実施態様において、組織足場は、3次元の組織足場である。
[0017]一形態において、遺伝子治療のための、本明細書に記載の肝細胞を含む組成物の使用が本明細書で開示される。一部の実施態様において、遺伝子治療は、エクスビボにおける遺伝子治療である。
【0016】
[0018]別の形態において、本明細書に記載の肝細胞から生成した人工組織が本明細書で開示される。一部の実施態様において、組織は、3次元である。一部の実施態様において、組織において血管新生が起こる。
【0017】
[0019]また、本明細書に記載の肝細胞から生成した人工臓器も本明細書で開示される。
[0020]一部の実施態様において、本明細書で開示される肝細胞、組織、または臓器は、AFP、ALB、アルファ-1-アンチトリプシン、グルコース、またはグリコーゲンを生産する。一部の実施態様において、肝細胞、組織、または臓器は、脂質、コレステロール、または炭水化物を代謝する。一部の実施態様において、肝細胞、組織、または臓器は、調合薬または有毒物質を代謝する。一部の実施態様において、肝細胞、組織、または臓器は、アンモニアまたは胆汁酸を取り込む。
【0018】
[0021]一部の実施態様において、本明細書に記載の肝細胞は、初代肝細胞に匹敵する表現型の(例えば、免疫表現型の)特性を有する。一部の実施態様において、本明細書に記載の肝細胞は、初代肝細胞に匹敵する形態学的な特性を有する。一部の実施態様において、本明細書に記載の肝細胞は、初代肝細胞に匹敵する機能特性を有する。
【0019】
[0022]一部の実施態様において、本明細書で開示される肝細胞、組織、または臓器は、脂肪酸、トリグリセリド、コレステロール、胆汁酸塩、またはリン脂質の合成;外因性または内因性化合物(例えば、薬物、防虫剤、ステロイド、アンモニア、重金属、または毒素)の解毒、改変、および排出;炭水化物の代謝;タンパク質(例えば、血清アルブミン、フィブリノーゲン、リポタンパク質、アポタンパク質、セルロプラスミン、トランスフェリン、補体、または糖タンパク質)の合成;タンパク質の貯蔵;または胆汁の形成もしくは分泌のうち1つまたはそれより多くの機能を有する。一部の場合において、肝細胞は、肝臓前駆細胞(例えば、肝細胞様細胞)もしくは幹細胞から誘導肝細胞;肝幹細胞;または初代肝細胞(例えば、新たに単離されたかまたは肝臓から得られた無培養の低温保存肝細胞であるかまたはそれに匹敵する)であってもよい。
【0020】
[0023]一部の実施態様において、子宮外妊娠における細胞塊(ectopic pregnancy mass)(例えば、卵管)から誘導された栄養膜幹細胞が本明細書で開示される。一部の実施態様において、本明細書に記載の栄養膜幹細胞を単離する方法は、子宮外妊娠における細胞塊(例えば、卵管)から栄養膜の絨毛を得る工程;栄養膜の絨毛から細胞を収集する工程;および培養培地中で収集された細胞を培養して、単離された栄養膜幹細胞を得る工程を含む。一部の実施態様において、本方法は、栄養膜の絨毛を細かく切断することをさらに
含む。一部の実施態様において、本方法は、栄養膜の絨毛を酵素で処理することをさらに含む。一部の実施態様において、ヒト栄養膜幹細胞は、細胞に突然変異が導入されるように遺伝子改変されている。一部の実施態様において、妊娠における細胞塊は、破裂させない方式で得られる。一部の実施態様において、妊娠における細胞塊は、7または8週以下の在胎期間におけるものである。一部の実施態様において、培養培地は、フィーダー層非含有である。一部の実施態様において、本方法は、培養培地中で胚様体(embryonic body:EB)を形成する工程;EBを酵素で処理する工程;および酵素処理したEBから細胞を収集して、単離されたヒト栄養膜幹細胞を得る工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1-1】
図1A~C。[0024]
図1A~1Fは、DE系統の免疫反応性マーカーを例示する。
図1A~1Dは、hTS細胞における対照と比較した、4時間のbFGF誘導におけるFOXA2およびSOX17(
図1A)、GSC(
図1B)、およびMIXL1(
図1C)を検出するための免疫細胞化学を示す。
図1Dは、bFGF誘導の最初の8時間におけるGSC、ブラキュリ、MIXL1、SOX17、およびFOXA2などのDE関連の転写因子の経時的なウェスタンブロットを示す。エラーバーは、平均の標準偏差(SD)を示す。N=3、
*:p<0.05を統計的に有意とする。
図1Eは、誘導後4日目におけるAFPおよびアルブミン(上のパネル)ならびにABCC2およびBSEP(下のパネル)を示す肝細胞関連の共局在を示す。
図1Fは、hTS細胞におけるウェスタンブロッティングアッセイによる様々な肝細胞特異的なマーカーを示す肝細胞様細胞分化のための2段階レジメンを示す。α-チューブリンはローディング対照である。
【
図2A】[0025]
図2A~2Mは、DEの特定化に関する調節分子メカニズムを例示する。
図2Aは、CREB1がmiR-124aのmRNAのプロモーターにおける3つの部位を標的化することを同定するmiR-124a分析(ChIP-qPCR)を表す。コンセンサスmiR-124aの結合部位の略図(上のパネル)。C:抗体なしの対照。エラーバーは、3回反復のSDを示す。
図2Bは、CREB1のノックダウンが、bFGFによって誘導されたmiR-124a発現を低減することを免疫ブロッティングアッセイによって例示する。エラーバーは、3回反復のSDを示す。
*:p<0.05。
図2Cは、8時間の誘導中における蛍光体(p)-CREB1およびmiRNA-124aのbFGFによって誘導された発現をqPCRアッセイにより示す。エラーバーは、4つの複製のSDを示す。
図2Dは、miR-124aが、プロモーターの2つの部位を標的化することを介してSmad4発現を抑制することをルシフェラーゼレポーターアッセイによって同定するSmad4のChIP-qPCRを示す。コンセンサスmiR-124aの結合部位の略図(上のパネル)。空のベクターは対照である;pSmad4はSmad4プラスミドを表し、エラーバーは、3回反復のSDを示す。
*:p<0.05。
図2Eは、DE関連の転写因子の発現への、bFGF、miR-124a、および抗miR-124a抗体の作用をウェスタンブロットによって示す。β-アクチンをローディング対照として使用した。
図2Fは、shRNAを使用したSmad4のノックダウンがSmad4およびMIXL1の発現を抑制することをウェスタンブロットによってを示す。β-アクチンをローディング対照として使用した。
図2Gおよび
図2Hは、4時間の誘導におけるルシフェラーゼレポーターアッセイによって、miR-124aにより阻害性GSK3βを同定するChIP-qPCRアッセイを示し(
図2G)、一方でqPCRアッセイは、β-カテニンによって阻害性FOXA2を示した(
図2H)。コンセンサスmiR-124aの結合部位の略図(G、上のパネル)。空のベクターは対照である;pGSK3βはGSK3βプラスミドを表し、エラーバーは、3回反復のSDを示す。
*:p<0.05。
図2Iは、ルシフェラーゼレポーターアッセイによって、miR-124aにより阻害性CDX2を同定するChIP-qPCRアッセイを示す。コンセンサスmiR-124aの結合部位の略図(上のパネル)。空のベクターは対照である;pCDX2はCDX2プラスミドを表し、エラーバーは、3回反復のSDを示す。
*:p<0.05。
図2Jは、hTS細胞での4時間のbFGF誘導におけるCDX2とOCT4との相互の阻害メカニズムを解明したイメージングを示す。
図2Kは、DE分化中における多能性転写因子CDX2およびOCT4(上のパネル)ならびにNANOGおよびSOX2(下のパネル)のタイムラインにおけるウェスタンブロットを示す。エラーバーは、3回反復のSDを示す。
*:p<0.05。
図2Lは、SOX17遺伝子のプロモーターの2つの部位におけるOCT4の結合を同定するChIP-qPCRアッセイを示す。エラーバーは、3回反復のSDを示す。
図2Mは、hTS細胞のDE系統への分化におけるbFGF誘導の概略図を示す。
【
図3A】[0026]
図3A~3Cは、肝細胞様細胞の形態形成を例示する。
図3Aは、誘導の6~8日目に板状の組織構造を形成する、分化における細胞の形態学的変化を示す。
図3Bは、以下の基礎構造:大きい細胞質/細胞核の比率、多量のミトコンドリア(m)、ゴルジ装置(Gi)、よく組織化された小胞体(RER)、毛細胆管の内腔(Cn)を形成するための接着複合体(白色の矢印)、残りの細胞外空間からの空間を密封する接着複合体(二重の矢印)、細胞質における層状の内包物、およびデスモソーム結合(矢印)を明らかにした電子顕微鏡写真を示す。
図3Cは、肝臓の板状の組織の免疫組織化学を示し、肝細胞の免疫反応性細胞膜マーカー:CXCR4、CX32、BSEP、およびMRP2(ABCC2)ならびに細胞質マーカー:ベータトロフィン、HNF4α、アルブミン、AFP、CYP2B6、APOF、CPS1、およびADH1を示す。
【
図4A】[0027]
図4A~4Dは、分化した肝細胞様細胞の肝機能を例示する。
図4Aは、自動分析器(日立7080;東京、日本)によって測定された、分化した肝細胞様細胞(4日)の、アルブミンおよび尿素などの培地中におけるタンパク質分泌能力の提示を示す。エラーバーは、3回反復のSDを示す。
**:p<0.01。
図4Bおよび
図4Cは、LDLの取り込みアッセイを示し、免疫反応性LDL受容体(LDLR、中央のパネル)およびLDLの染色(左のパネル)(
図4B)、ならびに分化した肝細胞様細胞における脂肪滴を示すオイル-O-レッド試験(
図4C)を例示する。
図4Dは、グリコーゲン貯蔵試験を示し、それにおいて細胞中のグリコーゲンの存在は、肝細胞様細胞(左の3つのパネル)および肝臓の板状の組織(右のパネル)における、グリコーゲンを消化するためのジアスターゼによって証明された(上のパネル)、および蛍光PAS染色によって確認された(下のパネル)過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色によって同定される。
【
図5A】[0028]
図5A~5Iは、分化した肝細胞様細胞における様々なCYP450酵素活性を例示する。フェーズI~IIのCYP450酵素活性は、CYP1A2(
図5A)、CYP2B6(
図5B)、CYP2C8(
図5C)、CYP2C9(
図5D)、CYP2C19(
図5E)、CYP2D6(
図5F)、CYP2E1(
図5G)、CYP3A4(
図5H)、およびCYP7A1(
図5I)を包含する薬物-薬物相互作用および解毒試験(誘導物質、阻害剤)によって推測される。使用された誘導物質および阻害剤はそれぞれ、(リファンピン、Rifおよびシプロフロキサシン、Cip)、(フェノバルビタール、phenおよびCip)、(Rifおよびゲムフィプロジル、Gem)、(RifおよびGem)、(Rifおよびチクロピジン、Tico)、(誘導物質単独としてRif)、(誘導物質単独としてRif)、(Rif、およびイトラコナゾール、Itra)、ならびに(THA、2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノンおよびCDCA、ケノデオキシコール酸)である。hTSはhTS細胞を表し、hTHLはヒト栄養膜から誘導された肝細胞様細胞を表し;Huh7はヒト肝癌Huh7細胞を表す。
【
図6】[0029]
図6は、肝細胞分化の異なる段階におけるバイオマーカーの発現(例えばmRNA)を示す表を例示する。
【
図7】[0030]
図7は、TissueFAX分析によるDE形成の細胞プロセスを例示する。bFGF(10ng/mL)を使用して、MIXL1のアップレギュレーション(黒色)によって表されるhTS細胞の内中胚葉への分化を誘導した。その後、内中胚葉は、約4時間の誘導で、MIXL1のダウンレギュレーション(灰色)を表すDE系統に分化した。nは、計数された細胞の総数を表す。
【
図8A】[0031]
図8は、本明細書で説明されるバイオマーカーの発現レベルの分析を例示する。
図8Aは、FGFR阻害剤(PD166866)が、bFGFによって誘導されたPI3Kをブロックすることを例示し、β-アクチンはローディング対照である。
図8Bは、PI3KのsiRNAは、PI3Kおよびp-AKTの発現を阻害することを例示する。非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を対照として使用した。β-アクチンを、ローディング対照として使用した。
図8Cは、AKTサブユニットに対するsiRNAは、p-AKTおよびp-CREB1のbFGFによって誘導された発現を阻害することを示す。非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を対照として使用した。β-アクチンを、ローディング対照として使用した。
図8Dは、IPアッセイによれば、AKTは、CREB1と直接的に相互作用することを示す。
【
図9A】[0032]
図9は、hTS細胞におけるqPCR分析による誘導後の肝臓の発達に関連する31種の遺伝子の遺伝学的変動のプロファイルを例示する。
【
図10-1】[0033]
図10A~10Dおよび10AS~10FSは、DE形成中の免疫反応性マーカーを例示する。(10A)最初の誘導(8時間)における原始線条およびDEマーカーの代表的なマーカーの経時的なウェスタンブロット分析。データは、平均±SD、n=3を表す。
*:p<0.05を統計的に有意とする。(10B)4時間のbFGF誘導における、Foxa2およびSox17(左のパネル)、Gsc(中央のパネル)、およびMixl1(右のパネル)の免疫細胞化学。(10C)ChIP-qPCRによる、miR-124aにおけるプロモーターの3つの部位での標的化において、CREB1がそのレベルを増加させることの同定(上のパネル)。C:対照として。データは、平均±SD、n=3を表す。
*:p<0.05を統計的に有意とする。(10D)bFGFは、qPCRアッセイによれば、蛍光体(p)-CREB1とmiRNA-124aとの平行な発現を誘導する。データは、平均±SD、n=4を表す。
*:p<0.05を統計的に有意とする。(10AS)シフトは、TissueFAX分析による誘導4時間以内の細胞におけるMixl1強度を意味する。ブランク領域は対照として、青色の領域は内中胚葉段階として、赤色の領域はDE段階としてである。(10BS)ウェスタンブロッティングによれば、FGFR阻害剤(PD166866)は、bFGFによって誘導されたPI3Kをブロックする。β-アクチンをローディング対照として使用した。(10CS)PI3KのsiRNAは、PI3Kおよびp-Aktの発現を阻害する。非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を、対照として使用した。β-アクチンをローディング対照として使用した。(10DS)Aktサブユニットに対するsiRNAは、p-Aktおよびp-CREB1のbFGFによって誘導された発現を阻害する。非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を、対照として使用した。β-アクチンをローディング対照として使用した。(10ES)Aktは、IPアッセイによれば、CREB1に直接的に相互作用する。(10FS)bFGFによって誘導されたmiR-124aは、CREB1のshRNAを使用することによって阻害される。データは、平均±SD、n=3を表す。
*:p<0.05を統計的に有意とする。
【
図11-1】[0034]
図11A~11Iおよび11AS~11CSは、DEの特定化に関する分子メカニズムを例示する。(11A、11B、11C)遺伝子のプロモーターを標的化することによりSmad4プラスミド(pSmad4)(A)、pGSK3β(B)、およびpCdx2(C)の発現を抑制するmiR-124aのルシフェラーゼレポーターアッセイ(上のパネル)。空のベクター:対照。データは、平均±SD、n=3を表す。
*:p<0.05を統計的に有意とする。(11D)ChIP-qPCRアッセイによれば、β-カテニンは、経時的にFoxa2遺伝子におけるプロモーターの領域(-2.1kb)に結合する。エラーバーは、3回反復のSDを示す。(11E)ChIPアッセイによれば、Foxa2は、ベータトロフィンのプロモーターを標的化し、12時間の誘導でベータトロフィンの生産を示す(矢印)。インプット:陽性対照としての全細胞。陰性対照としてのIgG。(11F)ウェスタンブロット分析による、4時間のbFGF誘導におけるmiR-124aおよび抗miR-124a抗体に応答する様々な転写因子の発現。β-アクチン:ローディング対照。(11G)免疫細胞化学的な4時間のbFGF誘導におけるCdx2(緑色)とOct4(赤色)との相互の阻害機能。(11H)ChIP-qPCRアッセイによれば、Oct4は、bFGF誘導2時間でSox17遺伝子におけるプロモーターの2つの領域(-1および-1.8kb)に結合する。エラーバーは、3回反復のSDを示す。(11I)hTS細胞のDE分化における分子レギュレーションの概略図。(11AS)免疫ブロッティングアッセイによれば、Smad4のshRNAは、Mixl1の発現を阻害する。(11BS)DE形成中における経時的なOct4、Cdx2、Nanog、およびSox2の発現。データは、平均±SD、n=3を表す。
*:p<0.05。(11CS)肝細胞様細胞において、免疫反応性のアルブミン(ABL)およびAFPが発現される。
【
図12-1】[0035]
図12A~12Dおよび12ASは、肝細胞様細胞の生物学的な特徴を例示する。(12A)三日月形の細胞塊のH&E染色(左のパネル、挿入図)。多数のクラスター化した細胞は、豊富な小さい胚性前駆細胞様の縮合核を含む細胞を含有する外側の周辺層で不規則に分布していた(右下)。柱状の木のようなECMが、周辺層から中央領域に放射状に広がる肝細胞様細胞の内層に沿って存在する(右上)。(12B)CCl4による損傷を受けた肝臓組織における肝細胞様細胞であり、免疫反応性stem-121陽性細胞(左上)、C-kit陽性細胞(右上、矢印)、CK19(左下、矢印)、およびCK18(右下、矢印)を示す。(12C)組織学的に三日月形の細胞塊で観察された肝臓発達中における様々な特異的な免疫反応性マーカー。細胞表面マーカーが、小さい挿入図で見られる肝細胞の多角形の形状を作り出す。(12D)代表的な電子顕微鏡写真であり、上の顕微鏡写真に、大きい細胞質/細胞核の比率、多量のミトコンドリア(m)、小胞体(rer)、脂質滴、ディッセ腔(SD)、細胞外マトリックス(ecm)、細胞核(n)、および洞様血管、左下の顕微鏡写真に、ロゼット形成を伴うグリコーゲン(gly)貯蔵(赤色の丸)を示し、右下の顕微鏡写真は、毛細胆管の内腔(bc)および接着複合体(上の)および密着結合(下)を示す。(12AS)hTS細胞の分化中における肝細胞様細胞への経時的な形態学的変化。
【
図13-1】[0036]
図13A~13Bおよび13ASは、肝細胞様細胞培養培地におけるセクレトミクス(secretomics)を例示する。(13A)細胞培養前(対照として、左のパネル)および5日の細胞培養後(右のパネル)の培養培地のプロテオーム分析であり、タンパク質の新しい形成が解明される(番号413と指定、丸)。(13B)誘導前(上のパネル)および5日間の誘導後の、hTS細胞で発現された非免疫反応性TGFβ1、コラーゲンIV(COL4)、およびフィブロネクチン(FN)であり、それらの共発現は、3D構造で肝細胞様細胞間の柱状のECMとして分布する(下のパネル)。(13AS)マスコット(Mascot)MS/MSイオンサーチシステム分析20151001_LiP_413、トランスフォーミング増殖因子ベータによって誘導されたタンパク質ig-h3前駆体[ヒト]。
【
図14A】[0037]
図14A~14Eは、肝細胞様細胞の機能的な特徴を例示する。(14A)自動分析器(日立7080;東京、日本)によれば、肝細胞様細胞は、アルブミン(左)および尿素(右;1日間の5mM塩化アンモニウムの刺激により)を培養された培地に分泌する。エラーバーは、3回反復のSDを示す。
**:p<0.01。(14B)LDLの取り込みアッセイは、細胞中の免疫反応性LDL(赤色、左)、LDL受容体(LDLR、緑色、中央)、およびそれらの統合された画像(右)を示す。(14C)オイル-O-レッド試験は、細胞中の脂肪滴(赤色)を示す。(14D)グリコーゲン貯蔵試験は、ジアスターゼ処理を使用した過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色によって(上のパネル)、さらには蛍光PAS染色によっても(下のパネル)、グリコーゲンの存在(ピンク色および赤色)を同定する。(14E)qPCR分析による、24時間の処理における肝細胞様細胞中の誘導物質(緑色)および阻害剤(ピンク色)に応答する様々なフェーズI~IIのCYP450酵素活性。略語:Rif、リファンピン;Cip、シプロフロキサシン;Itra、イトラコナゾール;Phen、フェノバルビタール;Gem、ゲムフィプロジル;THA、2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン;CDCA、ケノデオキシコール酸;およびTico、チクロピジン。
【
図15A】[0038]
図15A~15Fは、肝細胞様細胞による静脈内移植の応答性を例示する。(15A)ASTおよびALTの血清レベルは、経時的に、細胞療法グループ(CCl4+細胞;n=8)において、対照グループ(CCl
4のみ;n=8)より高い。データは、平均±標準誤差、n=を表す。スチューデント検定:
*:p<0.01。(15B)hTS細胞(上)および肝臓組織中に存在する肝細胞様細胞(下)における免疫反応性stem-121の発現。(15C)CCl
4による損傷を受けた肝臓組織中のStem-121陽性肝細胞であり、細胞変性の特徴を表す(挿入図)。PTは門脈三管を表す。(15D)埋め込まれた肝細胞様細胞における免疫反応性のStem-121およびHLA-Gの共発現。バーのスケール:20μm。(15E、15F)CCl4による損傷を受けた肝細胞の免疫細胞化学における免疫反応性CD4
+Foxp3
+Treg細胞(15E)および中心静脈の免疫組織化学周辺の免疫反応性CD4
+細胞(赤色)(15F)の分布。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0039] 本明細書で開示されるのは、栄養膜幹細胞から誘導肝細胞を生成するための、
方法、組成物、細胞、製造プロセス、およびキットである。一部の実施態様において、インビトロで誘導肝細胞に分化するように栄養膜幹(TS)細胞を誘導する方法であって、(a)栄養膜幹細胞を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ステロイド、およびサイトカインを含む馴化培地中で接触させること;および(b)細胞を十分な時間にわたりインキュベートして、栄養膜幹細胞の誘導肝細胞への分化を誘導することを含む、上記方法が、本明細書で説明される。
【0023】
[0040]また、栄養膜幹細胞から誘導された、単離された誘導肝細胞であって、該単離された誘導肝細胞は、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4(CXCR4)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、ヘキソサミニダーゼA(アルファポリペプチド)(HHEX)、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)、トランスチレチン(TTR)、アルブミン(ALB)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、シトクロムP450 7A1(CYP7A1)、グルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)、セルピンペプチダーゼ阻害剤クレードA(アルファ-1抗プロテイナーゼ、アンチトリプシン)のメンバー1(SERPINA1)、ATP結合カセットのサブファミリーC(ABCC2)、CCAAT-エンハンサー結合タンパク質ベータ(C/EBPβ)、肝細胞核因子1-アルファ(HNF1α)、肝細胞核因子4-アルファ(HNF4α)、アルファ-1-フェトプロテイン(AFP)、ケラチン8(KRT8)、ミトコンドリアのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ2(PCK2)、シトクロムP450 2B6(CYP2B6)、グリコーゲンシンターゼ2(GYS2)、肝細胞核因子6(HNF6)、ミトコンドリアのカルバモイルリン酸シンターゼ1(CPS1)、アルコールデヒドロゲナーゼ1C(クラスI)ガンマポリペプチド(ADH1C)、コネクシン32(CX32)、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)、プロスペロホメオボックス1(PROX1)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質F(APOF)、ケラチン18(KRT18)、ケラチン19(KRT19)、または第19染色体のオープンリーディングフレーム80(アンジオポエチン様タンパク質8、肝細胞癌関連遺伝子TD26、リパシン(lipasin))(ベータトロフィン)を含む1つまたはそれより多くのバイオマーカーの発現の上昇したレベルを含む、上記肝細胞も本明細書で説明される。
【0024】
[0041]さらに、疾患または障害の処置または予防で使用するための化合物をスクリーニングする方法であって、(a)本明細書に記載の単離された誘導肝細胞を化合物と接触させること;および(b)単離された誘導肝細胞におけるバイオマーカーの発現レベルを検出することを含む、上記方法が本明細書で説明される。
【0025】
[0042]加えて、本明細書で開示される単離された誘導肝細胞を含む組成物(例えば医薬組成物)、本明細書で開示される単離された誘導肝細胞を含む組成物(例えば医薬組成物)を生成するための製造プロセス、および本明細書で開示される単離された誘導肝細胞または本明細書で開示される単離された誘導肝細胞を含む組成物を用いて疾患または障害(例えば肝臓関連の疾患または障害)を処置する方法が本明細書で説明される。
【0026】
[0043]一部の形態において、肝臓発達における初代肝細胞に類似した分子的、遺伝学的、および生物学的な特徴を提示する、子宮外妊娠から誘導されたヒト栄養膜(hTS)幹細胞からの肝細胞様細胞の高効率の生成が本明細書で開示される。一部の実施態様において、分化中に胚体内胚葉形成を制御するマイクロRNA-124aのメカニズムが本明細書で開示される。一部の実施態様において、肝細胞様細胞は、細胞培養中で3Dの肝臓の板状の構造を構築して、HLA-Gを発現し、TGFβ1を分泌することにより、静脈内への埋め込み後に免疫寛容のために肝臓組織中でCD4+Foxp3+Treg細胞を維持することができる。一部の実施態様において、本明細書に記載の細胞は、CCl4によって誘導された急性肝不全のラットモデルにおいて、肝再生を助け、促進する。一部の実施態様において、本明細書に記載のhTS細胞から誘導された肝細胞様細胞は、緊急時の肝不全管理または再生医療において適用することができる。一部の実施態様において、1週間以内(例えば、4~6日)のhTS細胞の機能的な肝細胞への効率的な2段階の分化が本明細書で開示される。一部の実施態様において、miR-124aは、肝形成中のDE形成を制御する。一部の実施態様において、肝細胞様細胞は、初代肝細胞を模擬した生物学的機能を有する3Dの組織構造を構築することが本明細書で開示される。一部の実施態様において、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は単独で、マイクロRNA(miRNA)-124aの活性化を誘導し、結果として初期分化におけるDEの特定化を制御する。一部の実施態様において、ある特定の条件下で、DEは、肝臓内胚葉、それに続いて肝芽細胞を生じさせ、最終的に、初代ヒト肝細胞に類似した遺伝学的、分子的および生物学的な特徴を有する胎児/成体の肝細胞様細胞に分化する。
【0027】
[0044]一部の形態において、ラット動物モデルにおいて、肝細胞様細胞の静脈内注入は、CCl4による損傷を受けた肝臓組織にホーミングし、肝再生を促進することができることが本明細書で開示される。一部の実施態様において、hTS細胞とその誘導肝細胞様細胞の両方は、HLA-Gを発現して、移植後に免疫寛容を獲得することができることが本明細書で開示される。一部の実施態様において、ホーミングした肝細胞様細胞は、TGFβ1を分泌して、フィブロネクチンおよびコラーゲンの形成を介した傷害後の新しいECMの構築を助けることが本明細書で開示される。一部の実施態様において、肝細胞様細胞によって分泌されたTGFβ1は、骨髄の線維細胞の肝臓への移動を引き起こし、肝再生のために肝臓星細胞を活性化し、免疫寛容のために肝臓組織中でCD4+Foxp3+Treg細胞を維持する。
【0028】
[0045]一部の形態において、肝細胞様細胞は、インビトロで3次元(3D)の組織構造を構築することができ、このような細胞の静脈内注入は、肝臓のホーミングを引き起こし、肝臓を損傷から保護する。一部の実施態様において、本明細書で使用される組織培養培地組成物は、およそ血清および培養培地を含む。一部の実施態様において、培養培地は、合成卵管培地(Synthetic Oviductal Fluid、SOF)、改変イーグル培地(MEM)、
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640、F-12、IMDM、アルファ培地、またはマッコイ培地である。一部の実施態様において、血清は、同種血清、自己血清、または異種血清である。一部の実施態様において、hTS細胞は、DE形成(例えば、8時間)後に、線維芽細胞増殖因子(例えば、bFGF)、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、サイトカイン(例えば、オンコスタチンM)、骨形成タンパク質(例えば、BMP4)、および肝細胞増殖因子(HGF)の組合せを用いて培養される。一
部の実施態様において、結果得られた細胞は、分散した線維芽細胞様の細胞を形成する。一部の実施態様において、結果得られた細胞は次第に集合化して、三日月形の細胞塊を形成する。一部の実施態様において、2つの別個の末梢および中央の区画は、3次元(3D)の組織構造を構築する。一部の実施態様において、末梢部分において、多数のクラスター化した小細胞は、基底膜を超えて細胞外マトリックス(ECM)中に不規則に分布する。一部の実施態様において、細胞は、偏心的に配置されていることが多い縮合核、ならびに胚性幹/前駆細胞に類似した好酸性細胞質中に豊富な顆粒および小胞を有する。一部の実施態様において、中央の部分において、多くの独立した柱状のECMは、両側における細胞の内層により、基底領域から中央領域に向かって分布する。これらの細胞は、豊富な好酸性細胞質を含有し、単一の円形の細胞核中に、肝細胞の表現型を模擬する1または2つの中心的な核小体と共にクロマチンを分散させている。一部の実施態様において、ヒト肝臓における肝細胞板に類似した数個の二核細胞が形成され得る。
【0029】
[0046]一部の実施態様において、本明細書に記載の肝細胞または肝細胞様細胞は、i)ヒト細胞に関するヒト細胞質マーカーのstem 121(商標)、肝臓固有の幹細胞に関するマスト/幹細胞増殖因子受容体C-kit、胆管細胞に関するCK19、および肝細胞に関するCK18;ならびにii)免疫組織化学的に肝細胞に関する細胞質中の、アルブミン(ALB)、α-フェトプロテイン(AFP)、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、GATA4、CYP1A1、およびCYP2B6である特異的なマーカーを提示する。一部の実施態様において、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、およびCx32を包含する表面マーカーのサブセットは、初代ヒト肝細胞に類似した多角形の細胞形状、例えば、大きい細胞質対細胞核の比率、多量のミトコンドリア、よく組織化された小胞体、密着結合、多数の脂質小胞、グリコーゲン貯蔵、接着複合体を含む毛細胆管の拡張した内腔、および多重ECMなどの初代肝細胞に類似した微細構造を構築する。
【0030】
[0047]細胞培養された培地中の9つの新たにアップレギュレートされた分泌タンパク質のなかでも、重要なことに、タンパク質(番号413)は、マスコットMS/MSイオンサーチシステム(ESI-QUAD-TOF、ブルカーインパクトHD(Bruker Impact HD)、マトリックスサイエンス(Matrix Science)、米国)によって、ペプチド配列の46%がマッチしたことにより、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)によって誘導されたタンパク質ig-h3前駆体(TGFβ1)であることを予測する。TGFβ1は、主要な線維形成誘導性の多機能なサイトカインである、自己分泌およびパラ分泌方式の両方として作用し、肝臓星細胞(HSC)におけるフィブロネクチンおよびコラーゲン形成を強化する。一部の実施態様において、TGFβ1は、ECM中で発現される。一部の実施態様において、TGFβ1、フィブロネクチン、およびコラーゲンIVは、ECM中で共発現される。一部の実施態様において、TGFβ1、フィブロネクチン、およびコラーゲンIVは、肝細胞板における肝細胞の増殖および分化を支えることができる肝細胞様細胞の3Dの組織構造中で、ECMの足場を少なくとも部分的に構成する。
【0031】
[0048]一部の形態において、肝細胞様細胞は、原始線条、DE形成、肝臓内胚葉、肝芽細胞、および最終的に肝細胞様細胞を包含する一連の細胞プロセスを介して、多能性hTS細胞から効率的に生成することができる。原始線条分化の開始は、最初の誘導(例えば、30分)時に、GSC、ブラキュリ、およびMixl1のアップレギュレーションによって検証することができる。即座に減少したMixl1は、内中胚葉前駆細胞の内胚葉への潜在性に影響を与える可能性がある。さらに、Sox7を発現する細胞は、胚体外の内胚葉には元々存在するがDE系統には存在しない可能性がある。発達が進行するにつれて、Sox17およびFoxa2の明らかなアップレギュレーションに加えてMixl1のダウンレギュレーションは、DEの形成を定義することができ、ここでOct4は、多能性の維持において、hES細胞またはiPS細胞から誘導されたDEにおけるNanog
とは異なる主要な役割を果たす。
【0032】
[0049]一部の形態において、miR-124aの一過性の上昇は、典型的には3’UTR中の標的化されたmRNAへの結合を介して複数の遺伝子発現を転写後に負に調節して、DEの特定化を制御することができる。初期の肝臓分化において、機能的にサイレンシングされたmiR-124aが存在する可能性がある。その場合、4時間の誘導でピークに達した後にダウンレギュレートされたmiR-124aは、原腸胚形成で細胞移動が始まり、hES細胞において3つの胚性胚葉が形成される場合のシナリオとの類似性を有する。
【0033】
[0050]一部の形態において、DEの特定化後の肝臓系統の分化開始は、bFGF、デキサメタゾン、オンコスタチンM、BMP4、およびHGFの組合せによって達成することができる。段階依存的な遺伝子プロファイルは、肝臓特異的な内胚葉における関与する工程を示す可能性がある(表3、第2列)。例えば、α-フェトプロテイン(AFP)の発現は、肝臓内胚葉の最初の分化を示唆し、C/EBPβとHnf4αの両方は、尿素回路における最初の肝臓特異的な活性を制御する。α-1-アンチトリプシン(SERPINA1)の発現は、細胞を損傷から保護し、CYP7A1、CYP3A4、およびCYP2B6などの酵素の代謝活性を促進することができる。これらの事実は、肝臓内胚葉は、初期分化においてコレステロール、薬物、および毒素の代謝が可能であることを表す。Sox17は、ジンクフィンガータンパク質202(ZFP202)を直接誘導して、マスターとなる肝臓遺伝子レギュレーターHnf4αを抑制することから、Sox17の離脱は、DE段階の後におけるHnf4α発現の開始を促進し、順に、肝細胞の細胞運命を制御する肝臓前駆細胞の特定化を特徴付けた。持続的なFoxa2は、アルブミン、AFP、ミトコンドリアタンパク質TAT、およびベータトロフィンの結果として起こる発現に関与する可能性があるが、ベータトロフィン発現は、初期の肝臓分化におけるβ細胞の増殖および脂質代謝の促進における初期の能力を反映する。
【0034】
[0051]一部の形態において、分化が進むにつれ、PROX1、G6PC、Hnf1α、ABCC2、およびTDO2、加えてCK8、CK18、およびCK19などのサイトケラチンなどの多数の肝臓マーカーが出現し始める。例えばPROX1は、肝芽細胞の移動に必要であり、肝芽細胞においてそれが除去されると、欠陥のある肝細胞特定化を引き起こし、胆管細胞の関与を促進する。CK8は、CK18と重合して上皮の細胞骨格の要素を形成する中間体フィラメントタンパク質であり、プラスミノゲン受容体として作用する。2日から4日の分化の間における肝芽細胞は、それぞれ胆管上皮細胞および肝細胞への分化における二分化能を模擬した、胆管細胞マーカーCK19ならびに肝臓前駆細胞マーカーCK8およびCK18を発現することができる(表3)。Foxa2、Hnf1α、Hnf4α、およびHnf6などの肝細胞で豊富な転写因子クラスターの発現は、実質性の肝芽細胞を肝細胞に方向付け、肝細胞の成熟を促進する肝芽細胞分化の重大時点に相当する可能性がある。代謝に関して、肝胆汁排出輸送体MRP2(ABCC2)および肝臓のギャップジャンクションタンパク質Cx32の発現は、細胞膜を通過する様々な分子の輸送を容易にすることができる。しかしながら、HHEXのアップレギュレーションは、肝芽細胞における造血能力の存在を意味する可能性がある。
【0035】
[0052]一部の形態において、埋め込まれたhTS細胞から誘導された肝細胞様細胞は、静脈内移植後に対象の肝臓に到達するように生存することができる。一部の実施態様において、本明細書に記載の細胞は、ホーミング本能を有する。一部の実施態様において、これらの細胞は、非古典的HLAクラスI分子であるHLA-Gを発現することができ、HLA-Gは、膜結合するかまたは可溶化されると、異なる免疫細胞タイプ(NK、T、B、単球/樹状細胞)に強く作用して、免疫細胞の表面で発現される阻害性受容体との相互作用を介して先天免疫と適応免疫の両方を阻害する。加えて、これらの肝細胞様細胞は、
着床後にCD4+Foxp3+調節性T(Treg)細胞集団を動員することができ、これは、炎症促進性T細胞の阻害および調節性を有するT細胞の誘導による免疫抑制環境の生成に寄与する。一部の実施態様において、hTS細胞から誘導された肝細胞様細胞は、免疫特権を有する。
【0036】
[0053]一部の形態において、肝細胞または肝細胞様細胞を対象に移植するための組成物および方法が本明細書において提供される。一部の実施態様において、対象に、hTS細胞によって誘導された肝細胞が注射される(例えば、静脈内、筋肉内、経皮、内視鏡的逆行性注射、または腹腔内に)。一部の実施態様において、対象は、移植前に免疫抑制剤で処置されない。一部の実施態様において、本方法は、免疫抑制剤、例えば、FK-506、シクロスポリン、またはGAD65抗体で患者を処置することをさらに含む。
【0037】
特定の用語
[0054]別段の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用語は、特許請求された主題が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、特許請求されたいかなる主題も限定しないことが理解されると予想される。本出願において、単数形の使用は、別段の規定がない限り複数形を包含する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」お
よび「その(the)」は、文章中に明らかな別段の指示がない限り複数形の指示対象を包
含することに留意すべきである。本出願において、「または」の使用は、別段の指定がない限り「および/または」を意味する。さらに、用語「包含すること」、加えて他の形態、例えば「包含する(include)」、「包含する(includes)」、および「包含された」
の使用は、非限定的である。
【0038】
[0055]本明細書で使用される場合、範囲および量は、「およその(約)」特定の値または範囲、例えば参照された数値の±15%として表すことができる。約は、正確な量も包含する。したがって「約5μL」は、「約5μL」に加えて「5μL」も意味する。一般的に、用語「約」は、実験誤差以内と予測される量を包含する。
【0039】
[0056]本明細書で使用される章の見出しは、単に系統化する目的のためであり、説明される主題を限定するものとして解釈されないものとする。
概説
[0057]肝臓は、解毒、タンパク質合成、タンパク質の貯蔵、および消化に必要な生化学的成分の生産などの機能のダイナミックレンジを有する。肝臓は、2つの主要なタイプの細胞、実質および非実質細胞を含む。実質細胞は、肝臓体積の約80%を占め、肝細胞とも称される。非実質細胞は、肝臓体積の約6.5%に寄与するが、肝臓細胞の総数の約40%を構成する。一部の場合において、非実質細胞は、洞様血管の肝内皮細胞、クッパー細胞、および肝臓星細胞を含む。
【0040】
肝細胞
[0058]肝細胞、または実質細胞は、肝臓の機能に関与する。一部の場合において、肝細胞は、タンパク質合成、タンパク質の貯蔵、コレステロール、胆汁酸塩およびリン脂質の合成、胆汁の形成および分泌、炭水化物の代謝、ならびに外因性および内因性物質の解毒、改変、および排出に関与する。
【0041】
[0059]一部の場合において、肝細胞から合成されるタンパク質としては、主要な血漿タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、可溶性血漿フィブロネクチン、α-フェトプロテイン、C反応性タンパク質、および数々のグロブリン;血流遮断および線維素溶解に関与するタンパク質、例えば凝血カスケードに関与する凝血因子、α2-マクログロブリン、
α1-アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、プロテインS、プロテインC、プラスミノゲン、α2-抗プラスミン、および補体成分3;担体タンパク質、例えばアルブミン、セルロプラスミン、トランスコルチン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、IGF結合タンパク質、主要な尿タンパク質、レチノール結合タンパク質、性ホルモン結合グロブリン、トランスチレチン、トランスフェリン、およびビタミンD結合タンパク質;ホルモン、例えばインスリン様増殖因子1、トロンボポエチン、ヘプシジン、およびベータトロフィン;プロホルモン、例えばアンギオテンシノゲン;ならびにアポリポタンパク質が挙げられる。
【0042】
[0060]炭水化物の形成、分解、および相互変換に加えて、一部の場合において、炭水化物の代謝はまた、糖新生、グリコーゲン分解、および糖生成も含む。糖新生は、特定のアミノ酸、乳酸塩またはグリセロールからグルコースを合成することである。グリコーゲン分解は、グリコーゲンを分解してグルコースにすることである。糖生成は、グルコースからグリコーゲンを形成することである。
【0043】
[0061]一部の場合において、肝細胞内の脂質代謝は、コレステロール合成および脂質生成、トリグリセリドまたは脂肪の生産を包含する。
[0062]一部のケースにおいて、組織損傷または組織損失などの傷害の後、肝細胞は、再び細胞周期に入り、増殖と、それに続く損傷部分、例えば障害を受けたまたは失われた組織の再生をもたらすことができる。一部の場合において、肝臓組織除去後、残りの肝細胞は、少なくとも1回、2回、3回、またはそれより多くのDNA合成を経て、失われた組織質量の再生をもたらす。
【0044】
[0063]一部の実施態様において、肝細胞は、製薬調査に利用される。一部の実施態様において、これらの調査は、薬物代謝、酵素誘導、肝毒性、肝細胞再生、および移植を包含する。
【0045】
[0064]肝細胞という用語は、脂肪酸、トリグリセリド、コレステロール、胆汁酸塩、またはリン脂質の合成;外因性または内因性化合物(例えば、薬物、防虫剤、ステロイド、アンモニア、重金属、または毒素)の解毒、改変、および排出;炭水化物の代謝;タンパク質(例えば、血清アルブミン、フィブリノーゲン、リポタンパク質、アポタンパク質、セルロプラスミン、トランスフェリン、補体、または糖タンパク質)の合成;タンパク質の貯蔵;または胆汁の形成もしくは分泌のうち1つまたはそれより多くの機能を有する肝細胞または肝臓前駆細胞を指す。一部の場合において、肝細胞は、肝臓前駆細胞(例えば、肝細胞様細胞)もしくは幹細胞から誘導された肝細胞;肝幹細胞;または初代肝細胞(例えば、新たに単離されたかまたは肝臓から得られた無培養の低温保存肝細胞であるかまたはそれに匹敵する)であってもよい。
【0046】
[0065]一部の実施態様において、肝幹細胞は、肝実質の約0.5%~2.5%を構成する小さい上皮細胞接着分子を発現する(EpCAMを発現する)細胞である。一部の実施態様において、肝細胞としては、これらに限定されないが、胚幹細胞、成体幹細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、単為発生幹細胞、または栄養膜幹細胞が挙げられる。一部の実施態様において、幹細胞は、ヒト幹細胞である。一部の実施態様において、幹細胞は、栄養膜幹細胞である。一部の実施態様において、栄養膜幹細胞は、ヒト栄養膜幹細胞である。一部の実施態様において、ヒト栄養膜幹細胞は、子宮外妊娠から誘導されたヒト栄養膜幹細胞である。一部の場合において、幹細胞から誘導された肝細胞は、誘導肝細胞とも称される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、ヒト栄養膜幹細胞から誘導される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、子宮外妊娠から誘導されたヒト栄養膜幹細胞から誘導される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、肝細胞への分化プロセスを経た栄養膜幹細胞、および分化した栄養膜幹細胞を含む。一部の実施態様において、肝細胞への
分化プロセスを経た栄養膜幹細胞は、未成熟の誘導肝細胞とも称される。一部の実施態様において、分化した栄養膜幹細胞は、成熟した誘導肝細胞とも称される。
【0047】
[0066]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、初代肝細胞と同様に機能する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、初代肝細胞によって提示される細胞機能を含む。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、例えば、初代肝細胞で観察される、タンパク質合成、タンパク質の貯蔵、コレステロール、胆汁酸塩およびリン脂質の合成、胆汁の形成および分泌、炭水化物の代謝、ならびに外因性および内因性物質の解毒、改変、および排出などの細胞機能に参加する。一部の実施態様において、本明細書に記載の肝細胞は、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、およびCx32を包含する表面マーカーのサブセットを発現し、初代ヒト肝細胞に類似した多角形の細胞形状、例えば、大きい細胞質対細胞核の比率、多量のミトコンドリア、よく組織化された小胞体、密着結合、多数の脂質小胞、グリコーゲン貯蔵、接着複合体を含む毛細胆管の拡張した内腔、および多重ECMなどの初代肝細胞に類似した微細構造を構築する。
【0048】
[0067]一部の場合において、誘導肝細胞から合成されるタンパク質としては、主要な血漿タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、可溶性血漿フィブロネクチン、α-フェトプロテイン、C反応性タンパク質、および数々のグロブリン;血流遮断および線維素溶解に関与するタンパク質、例えば凝血カスケードに関与する凝血因子、α2-マクログロブリン、α1-アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、プロテインS、プロテインC、プラスミノゲン、α2-抗プラスミン、および補体成分3;担体タンパク質、例えばアルブミン、セルロプラスミン、トランスコルチン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、IGF結合タンパク質、主要な尿タンパク質、レチノール結合タンパク質、性ホルモン結合グロブリン、トランスチレチン、トランスフェリン、およびビタミンD結合タンパク質;ホルモン、例えばインスリン様増殖因子1、トロンボポエチン、ヘプシジン、およびベータトロフィン;プロホルモン、例えばアンギオテンシノゲン;ならびにアポリポタンパク質が挙げられる。
【0049】
[0068]一部の実施態様において、炭水化物の形成、分解、および相互変換などの炭水化物の代謝、糖新生、グリコーゲン分解、糖生成、コレステロール合成および脂質生成を包含する脂質代謝、トリグリセリドまたは脂肪の生産が、誘導肝細胞で観察される。
【0050】
[0069]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、初代肝細胞と類似する微細構造、または細胞構成を含む。一部の場合において、これは、透過型電子顕微鏡画像に基づく比較を介して達成される。
【0051】
[0070]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、薬物代謝、酵素誘導、肝毒性、肝細胞再生、および移植などの製薬調査に利用される。一部の場合において、TS細胞は、哺乳類TS細胞である。例示的な哺乳動物としては、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、フェレット、コウモリ、カンガルー、アザラシ、イルカ、およびヒトが挙げられる。一部の実施態様において、TS細胞は、ヒトTS(hTS)細胞である。
【0052】
栄養膜幹細胞(hTS細胞)
[0071]栄養膜幹細胞(TS細胞)は、分化した胎盤細胞の前駆体である。一部の場合において、TS細胞は、胚盤胞の極栄養外胚葉(TE)または胚体外外胚葉(ExE)細胞から誘導される。一部のケースにおいて、TSは、未分化の状況ではインビトロで不確定な増殖が可能であり、インビトロにおける潜在的な多系統分化能を維持することが可能である。
【0053】
[0072]一部の場合において、TS細胞は、ファロピウス管から得られる。ファロピウス管は、受精部位であり、子宮外妊娠の一般的な部位であり、そこで、内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉との区別などの生物学的な事象、および主要な後成的変化を伴う全能性から多能性へのスイッチが起こる。一部の場合において、これらの観察は、ファロピウス管が、着床前期に胚盤胞関連の幹細胞を回収するためのニッシェ様の貯蔵部位であることの裏付けを提供する。胚盤胞は、初期段階の着床前胚であり、続いて胎芽を形成するICM、および栄養膜と呼ばれ、胎盤になる外層を含む。
【0054】
[0073]一部の実施態様において、TS細胞は、例えば肝細胞などの前駆細胞の生成に使用される幹細胞である。一部の実施態様において、TS細胞は、子宮外妊娠から誘導される。一部の実施態様において、TS細胞は、ヒトTS細胞である。一実施態様において、子宮外妊娠から誘導されるヒトTS細胞は、ヒト胎芽の破壊を含まない。別の実施態様において、子宮外妊娠から誘導されるヒトTS細胞は、生存可能なヒト胎芽の破壊を含まない。別の実施態様において、ヒトTS細胞は、生存可能ではない子宮外妊娠に関連する栄養膜組織から誘導される。別の実施態様において、子宮外妊娠は、保存が不可能である。別の実施態様において、子宮外妊娠は、生存可能なヒト胎芽を生じないと予想される。別の実施態様において、子宮外妊娠は、母親の生命を脅かす。別の実施態様において、子宮外妊娠は、卵管、腹部、卵巣または頸管である。
【0055】
[0074]正常な胚盤胞の発達中に、ICMの接触それ自体またはその誘導された拡散可能な「誘導物質」は、極栄養外胚葉における高速の細胞増殖を引き起こして、胚盤胞段階全体にわたり細胞の壁側の領域への動きをもたらし、栄養外胚葉のICMからの区別の後でさえも継続することができる。ICMを覆う壁側の栄養外胚葉細胞は、ICMの「細胞記憶」を保持することができる。埋め込みの開始時に、ICMとは逆の壁側の細胞は、子宮内膜からの機械的な制約のために分割をやめる。しかしながら、ファロピウス管内に胎芽が配置される子宮外妊娠において、ファロピウス管中に制約は存在しないため、極栄養外胚葉細胞の分割の継続が起こり、停滞した胚盤胞中で胚体外外胚葉(ExE)を形成する。一部の場合において、ExEによって誘導されたTS細胞は、増殖状況で最大20日間存在する。そのようなものとして、臨床的介入が起こるまで、細胞プロセスは、着床前胚中に不確定な多数のhTS細胞を生産することができ、このような細胞は、ICMからの細胞記憶を保持することができる。
【0056】
[0075]一部の場合において、TS細胞は、ICMの特異的な遺伝子(例えばOCT4、NANOG、SOX2、FGF4)および栄養外胚葉の特異的な遺伝子(例えばCDX2、Fgfr-2、Eomes、BMP4)を有し、3つの一次胚葉、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の要素を発現する。一部の場合において、TS細胞は、胚性幹(例えばヒト胚性幹)細胞関連の表面マーカー、例えば特異的な段階の胚性抗原(SSEA)-1、-3および-4、ならびに間充織幹細胞関連のマーカー(CD44、CD90、CK7およびビメンチン)を発現する。他の例において、造血幹細胞マーカー(CD34、CD45、α6-インテグリン、E-カドヘリン、およびL-セレクチン)は、発現されない。
【0057】
誘導肝細胞の調製方法
[0076]ある特定の実施態様において、インビトロで誘導肝細胞に分化するように栄養膜幹(TS)細胞を誘導する方法であって、栄養膜幹細胞を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ステロイド、およびサイトカインを含む馴化培地中で接触させること;および細胞を十分な時間にわたりインキュベートして、栄養膜幹細胞の誘導肝細胞への分化を誘導することを含む、上記方法が本明細書で開示される。一部の実施態様において、TS細胞は、ヒトTS(hTS)細胞である。一部の実施態様において、FGF、ステロイド、およびサイトカインは、ヒトFGF、ヒトステロイド、およびヒトサイトカインである。
【0058】
[0077]一部の実施態様において、線維芽細胞増殖因子(FGF)は、血管新生、創傷治癒、胚発生、および細胞増殖および分化プロセスに関与する増殖因子のファミリーである。一部の場合において、FGFは、ヘパリン結合タンパク質であり、ヘパリン硫酸プロテオグリカンと相互作用する。一部の場合において、FGFファミリーの22種のメンバーがある。例示的なFGFとしては、FGF1、FGF2(また、塩基性FGFまたはbFGFまたはFGF-βとしても公知)、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF15/19、FGF20、FGF21、FGF22、およびFGF23が挙げられる。一部の実施態様において、線維芽細胞増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF、また、FGF2またはFGF-βとしても公知)である。一部の実施態様において、bFGFは、ヒトbFGFである。一部の実施態様において、ヒトbFGFは、組換えヒトbFGF、またはそれらのフラグメントである。
【0059】
[0078]一部の実施態様において、FGFは、約0.001から約5000ng/mLの間、約0.01から約500ng/mLの間、約0.1から約100ng/mLの間、または約1から約50ng/mLの間の濃度で、培養された培地に導入される。
【0060】
[0079]一部の場合において、FGFは、少なくとも0.001、0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500、1000ng/mLまたはそれより高い濃度で、培養された培地に導入される。一部の実施態様において、FGFは、最大で0.001、0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500、1000ng/mLまたはそれより低い濃度で、培養された培地に導入される。
【0061】
[0080]一部の実施態様において、bFGFは、約0.001から約5000ng/mLの間の、約0.01から約500ng/mLの間、約0.1から約100ng/mLの間、または約1から約50ng/mLの間の濃度で、培養された培地に導入される。
【0062】
[0081]一部の場合において、FGFは、少なくとも0.001、0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500、1000ng/mLまたはそれより高い濃度で、培養された培地に導入される。一部の実施態様において、bFGFは、最大で0.001、0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500、1000ng/mLまたはそれより低い濃度で、培養された培地に導入される。
【0063】
[0082]一部の実施態様において、線維芽細胞増殖因子を、hTS細胞を含む培養された培地に導入して、hTS細胞分化事象を開始させる。一部の実施態様において、線維芽細胞増殖因子は、bFGFである。一部の実施態様において、ステロイドおよびサイトカインは、FGF(例えばbFGF)の添加後に、培養された培地に導入される。
【0064】
[0083]一部の実施態様において、ステロイドは、ストレス応答、免疫応答、炎症のレギュレーション、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質レベル、および挙動などの多様な生理学的プロセスに関与する化学物質である。一部の場合において、ステロイ
ドはまた、ステロイドホルモン、例えばグルココルチコイド、鉱質コルチコイド、アンドロゲン、エストロゲン、およびプロゲストーゲンも包含する。一部の実施態様において、ステロイドとしては、これらに限定されないが、ヒドロコルチゾンタイプ、例えばヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、チクソコルトールピバル酸エステル、ブレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、およびプレドニゾン;アセトニド、例えばトリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、およびハルシノニド;ベタメタゾンタイプ、例えばベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、およびフルオコルトロン;ハロゲン化された、例えばヒドロコルチゾン-17-吉草酸エステル、ハロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-酪酸エステル、クロベタゾール-17-プロピオン酸エステル、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、および酢酸フルプレドニデン;不安定性のプロドラッグエステル、例えばヒドロコルチゾン-17-酪酸エステル、ヒドロコルチゾン-17-アセポン酸エステル、ヒドロコルチゾン-17-ブテプレート、シクレソニド、およびプレドニカルベートが挙げられる。一部の実施態様において、ステロイドは、天然に誘導されるステロイドまたは化学的に改変されたステロイドである。一部の実施態様において、ステロイドは、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ブレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、またはヒドロコルチゾンである。一部の実施態様において、ステロイドは、デキサメタゾンである。本明細書で使用される場合、用語「デキサメタゾン」は、デキサメタゾンおよびその誘導体を指す。一部の実施態様において、デキサメタゾンは、hTS細胞が肝臓系統に分化するように方向付けるために利用される。一部の実施態様において、デキサメタゾンは、hTS細胞が肝臓系統に分化するように方向付けるために、別の薬剤と組み合わせて利用される。一部の実施態様において、別の薬剤は、サイトカインである。
【0065】
[0084]一部の実施態様において、ステロイドは、約0.001から約100μMの間、約0.005から約5μMの間、約0.01から約1μMの間、または約0.05から約0.5μMの間の濃度で、培養された培地に導入される。
【0066】
[0085]一部の場合において、ステロイドは、少なくとも0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10μM、またはそれより高い濃度で、培養された培地に導入される。一部の実施態様において、ステロイドは、最大で0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10μM、またはそれより低い濃度で、培養された培地に導入される。
【0067】
[0086]一部の実施態様において、デキサメタゾンは、約0.001から約100μMの間、約0.005から約5μMの間、約0.01から約1μMの間、または約0.05から約0.5μMの間の濃度で、培養された培地に導入される。
【0068】
[0087]一部の実施態様において、デキサメタゾンは、少なくとも0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0
.8、0.9、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10μM、またはそれより高い濃度で、培養された培地に導入される。一部の実施態様において、デキサメタゾンは、最大で0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10μM、またはそれより低い濃度で、培養された培地に導入される。
【0069】
[0088]一部の実施態様において、サイトカインは、細胞のシグナル伝達に関与する約5~20dKaの低分子量タンパク質のカテゴリーである。一部の場合において、サイトカインとしては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子が挙げられる。ケモカインは、細胞の移動をガイドする化学誘引物質としての役割を果たすことができ、4つのサブファミリー:CXC、CC、CX3C、およびXCに分類することができる。例示的なケモカインとしては、CCサブファミリーからのケモカイン:CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL4、CCL5(RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9(またはCCL10)、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、およびCCL28;CXCサブファミリーからのケモカイン:CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、およびCXCL17;XCサブファミリーからのケモカイン:XCL1およびXCL2;およびCX3Cサブファミリーからのケモカイン:CX3CL1が挙げられる。
【0070】
[0089]インターフェロン(IFN)は、I型インターフェロン(例えばIFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ、およびIFN-ω)、II型インターフェロン(例えばIFN-γ)、およびIII型インターフェロンを含む。一部の実施態様において、IFN-αは、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、およびIFNA21を包含する約13種のサブタイプにさらに分類される。
【0071】
[0090]インターロイキンは、白血球(leukocyte)または白血球(white blood cell)
によって発現され、それらはTおよびBリンパ球ならびに造血細胞の発生および分化を促進する。例示的なインターロイキンとしては、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8(CXCL8)、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35、およびIL-36が挙げられる。
【0072】
[0091]腫瘍壊死因子(TNF)は、アポトーシスを調節するサイトカインのグループである。一部の場合において、TNFファミリー内の約19種のメンバーがあり、これらに限定されないが、TNFα、リンフォトキシン-アルファ(LT-アルファ)、リンフォトキシン-ベータ(LT-ベータ)、T細胞抗原gp39(CD40L)、CD27L、CD30L、FASL、4-1BBL、OX40L、およびTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を包含する。
【0073】
[0092]一部の実施態様において、デキサメタゾンは、hTS細胞が肝臓系統に分化するように方向付けるために、サイトカインと組み合わせて利用される。一部の場合において
、サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、または腫瘍壊死因子である。一部の場合において、サイトカインは、インターロイキンである。一部の実施態様において、デキサメタゾンは、hTS細胞が肝臓系統に分化するように方向付けるために、インターロイキンと組み合わせて利用される。一部の実施態様において、インターロイキンは、IL-6である。一部の場合において、IL-6はさらに、Gp130受容体サブユニットを介したその相互作用に基づいて追加のサイトカインにグループ分けされる。一部の場合において、IL-6グループの追加のメンバーは、オンコスタチンM(OSM)、IL-11、毛様体神経向性因子(CNTF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)、および白血病抑制因子(LIF)を包含する。一部の実施態様において、デキサメタゾンは、hTS細胞が肝臓系統に分化するように方向付けるために、IL-6と組み合わせて利用される。一部の実施態様において、デキサメタゾンは、hTS細胞が肝臓系統に分化するように方向付けるために、IL-6グループのメンバーと組み合わせて利用される。一部の実施態様において、デキサメタゾンは、hTS細胞が肝臓系統に分化するように方向付けるために、OSM、IL-11、CNTF、CT-1、CLC、またはLIFと組み合わせて利用される。一部の実施態様において、デキサメタゾンは、hTS細胞が肝臓系統に分化するように方向付けるために、OSMと組み合わせて利用される。一部の実施態様において、サイトカインのIL-6グループは、ヒトIL-6サイトカインまたはそれらのフラグメントである。一部の実施態様において、OSMは、ヒトOSMである。一部の実施態様において、ヒトOSMは、組換えヒトOSM、またはそれらのフラグメントである。
【0074】
[0093]一部の実施態様において、サイトカインは、約0.001から約5000ng/mLの間、約0.01から約500ng/mLの間、約0.1から約100ng/mLの間、または約1から約50ng/mLの間の濃度で、培養された培地に導入される。
【0075】
[0094]一部の実施態様において、サイトカインは、少なくとも0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500、1000ng/mLまたはそれより高い濃度で、培養された培地に導入される。一部の実施態様において、サイトカインは、最大で0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500、1000ng/mLまたはそれより低い濃度で、培養された培地に導入される。
【0076】
[0095]一部の実施態様において、OSMは、約0.001から約5000ng/mLの間、約0.01から約500ng/mLの間、約0.1から約100ng/mLの間、または約1から約50ng/mLの間の濃度で、培養された培地に導入される。
【0077】
[0096]一部の実施態様において、OSMは、少なくとも0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500、1000ng/mLまたはそれより高い濃度で、培養された培地に導入される。一部の実施態様において、OSMは、最大で0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、200、300、400、500、1000ng/mLまたはそれより低い濃度で、培養された培地に導入される。
【0078】
[0097]一部の実施態様において、線維芽細胞増殖因子(例えばbFGF)は、hTS細
胞中のバイオマーカーの発現を調節する。一部の実施態様において、バイオマーカーは、マイクロRNA(miR)である。一部の実施態様において、バイオマーカーは、miRNA-124aである。一部の実施態様において、線維芽細胞増殖因子は、bFGFである。一部の実施態様において、bFGFは、miRNA-124aをアップレギュレートするかまたは活性化する。一部の実施態様において、bFGFは、miRNA-124aをダウンレギュレートする。
【0079】
[0098]一部の実施態様において、bFGFで処理した栄養膜幹細胞におけるmiRNA-124aの発現レベルは、未処理の栄養膜幹細胞におけるmiRNA-124aの発現レベルと比較される。一部の実施態様において、miRNA-124aの発現レベルは、bFGFで処理した栄養膜幹細胞において、未処理の栄養膜幹細胞におけるmiRNA-124aの発現レベルと比べて少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000倍であるか、またはそれより高い。一部の実施態様において、miRNA-124aの発現レベルは、bFGFで処理した栄養膜幹細胞において、未処理の栄養膜幹細胞におけるmiRNA-124aの発現レベルと比べて、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000分の1であるか、またはそれより低い。
【0080】
[0099]一部の実施態様において、miRNA-124aの活性化またはアップレギュレーションは、栄養膜幹細胞において胚体内胚葉(DE)の特定化を開始させる。一部の実施態様において、DEの特定化は、約0.1から約96時間の間、約0.5から約36時間の間、約1から約24時間の間、約2から約18時間の間、約4から約12時間の間、または約6から約10時間の間に起こる。
【0081】
[00100]一部の実施態様において、DEの特定化は、bFGFで誘導した後、少なくと
も0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、48、72時間、またはそれを超える時間で起こる。一部の実施態様において、DEの特定化は、bFGFで誘導した後、最大で0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、48、72時間、またはそれ未満の時間で起こる。一部の実施態様において、DEの特定化は、bFGFで誘導した後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18時間で起こる。一部の実施態様において、DEの特定化は、bFGFで誘導した後、約6、7、8、9、または10時間で起こる。
【0082】
[00101]一部の実施態様において、DEの特定化は、バイオマーカーのセットに関連す
る。一部の実施態様において、バイオマーカーとしては、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、グースコイド(GSC)、ホメオドメインタンパク質MIXL1、SRY-ボックス2(SOX2)、転写因子NANOG、およびOCT4が挙げられる。一部の実施態様において、DEの特定化は、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、グースコイド(GSC)、ホメオドメインタンパク質MIXL1、SRY-ボックス2(SOX2)、転写因子NANOG、およびOCT4から選択されるバイオマーカーの上昇した発現によって特徴付けられる。一部の実施態様において、DEの特定化は、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、グースコイド(GSC)、SRY-ボックス2(SOX2)、転写因子NANOG、およびOCT4から選択されるバイオマーカーの上昇した発現によって特徴付けられる。一部の実施態様において、DEの特定化は、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、グースコイド(GSC)、ホメ
オドメインタンパク質MIXL1、SRY-ボックス2(SOX2)、転写因子NANOG、およびOCT4から選択されるバイオマーカーの発現の減少によって特徴付けられる。一部の実施態様において、DEの特定化は、ホメオドメインタンパク質MIXL1の発現の減少によって特徴付けられる。
【0083】
[00102]一部の実施態様において、bFGFによって誘導された栄養膜幹細胞における
FOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4の発現レベルは、誘導されていない栄養膜幹細胞におけるFOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4の発現レベルと比較される。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加したタンパク質発現レベルである。一部の実施態様において、FOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4のタンパク質発現レベルは、未処理の栄養膜幹細胞におけるFOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4のタンパク質発現レベルの、約1から約20,000倍、約2から約1000倍、または約10から約100倍高い。一部の実施態様において、FOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4のタンパク質発現レベルは、bFGFで処理した栄養膜幹細胞において、未処理の栄養膜幹細胞におけるFOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4のタンパク質発現レベルと比べて少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、10,000倍であるか、またはそれより高い。一部の実施態様において、FOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4のタンパク質発現レベルは、bFGFで処理した栄養膜幹細胞において、未処理の栄養膜幹細胞におけるFOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4のタンパク質発現レベルと比べて最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、10,000分の1であるか、またはそれより低い。
【0084】
[00103]一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加した遺伝子発現レベル
である。一部の実施態様において、FOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4遺伝子発現レベルは、未処理の栄養膜幹細胞におけるFOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4遺伝子発現レベルより、約1から約20,000倍、約2から約1000倍、または約10から約100倍高い。一部の実施態様において、FOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4遺伝子発現レベルは、bFGFで処理した栄養膜幹細胞において、未処理の栄養膜幹細胞におけるFOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4遺伝子発現レベルと比べて少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、10,000倍であるか、またはそれより高い。一部の実施態様において、FOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4遺伝子発現レベルは、bFGFで処理した栄養膜幹細胞において、未処理の栄養膜幹細胞におけるFOXA2、SOX17、GSC、MIXL1、SOX2、NANOG、およびOCT4遺伝子発現レベルと比べて最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、10,000分の1であるか、またはそれより低い。
【0085】
[00104]一部の実施態様において、ステロイドおよびサイトカインのカクテルが、DE
分化を肝臓系統に方向付けるのに利用される。一部の実施態様において、カクテルは、デキサメタゾンおよびオンコスタチンMを含み、DE分化を肝臓系統に方向付けるのに利用される。一部の実施態様において、カクテルは、bFGFの添加の前に、その後に、またはそれと同時に、hTS細胞を含む培養された培地に導入される。一部の実施態様におい
て、カクテルは、約0.5から約96時間の間、約1から約48時間の間、約2から約36時間の間、約3から約24時間の間、約4から約12時間の間、または約6から約10時間の間に、hTS細胞を含む培養された培地に導入される。
【0086】
[00105]一部の実施態様において、カクテルは、bFGFの添加後の、少なくとも0.
5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、48、60、72時間、またはそれを超える時間に、hTS細胞を含む培養された培地に導入される。一部の実施態様において、カクテルは、bFGFの添加後の、最大で0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、48、60、72時間、またはそれ未満の時間に、hTS細胞を含む培養された培地に導入される。一部の実施態様において、カクテルは、bFGFの添加後の、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18時間に、hTS細胞を含む培養された培地に導入される。一部の実施態様において、カクテルは、bFGFの添加後の、約6、7、8、9、10、11、または12時間に、hTS細胞を含む培養された培地に導入される。
【0087】
[00106]一部の実施態様において、hTS細胞は、bFGF、デキサメタゾンおよびオ
ンコスタチンMを含む培養された培地中で、約0.5から約100日の間、約1から約50日の間、約2から約30日の間、約3から約15日の間、または約4から約12日の間インキュベートされる。
【0088】
[00107]一部の実施態様において、hTS細胞は、bFGF、デキサメタゾンおよびオ
ンコスタチンMを含む培養された培地中で、少なくとも0.51、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日またはそれより長くインキュベートされる。一部の実施態様において、hTS細胞は、bFGF、デキサメタゾンおよびオンコスタチンMを含む培養された培地中で、最大で0.51、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日またはそれ未満でインキュベートされる。
【0089】
[00108]一部の実施態様において、栄養膜幹細胞は、肝細胞様細胞発達の4つの段階に
分類される。一部の実施態様において、4つの段階は、原始線条からDEへの段階、肝臓特異的な内胚葉、肝芽細胞の段階、ならびに胎児および成体の肝細胞様細胞の段階を包含する。一部の実施態様において、4つの段階のそれぞれは、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4(CXCR4)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、SRY-ボックス17(SOX17)、ヘキソサミニダーゼA(アルファポリペプチド)(HHEX)、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)、トランスチレチン(TTR)、アルブミン(ALB)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、シトクロムP450 7A1(CYP7A1)、グルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)、セルピンペプチダーゼ阻害剤クレードA(アルファ-1抗プロテイナーゼ、アンチトリプシン)のメンバー1(SERPINA1)、ATP結合カセットのサブファミリーC(ABCC2)、CCAAT-エンハンサー結合タンパク質ベータ(C/EBPβ)、肝細胞核因子1-アルファ(HNF1α)、肝細胞核因子4-アルファ(HNF4α)、アルファ-1-フェトプロテイン(AFP)、ケラチン8(KRT8)、ミトコンドリアのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ2(PCK2)、シトクロムP450 2B6(CYP2B6)、グリコーゲンシンターゼ2(GYS2)、肝細胞核因子6(HNF6)、ミトコンドリアのカルバモイルリン酸シンターゼ1(CPS1)、アルコールデヒドロゲナーゼ1C(クラスI)ガンマポリペプチド(ADH1C)、コネクシン32(CX32)、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)、プロスペロホメオボックス1(PROX1)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、アポリポタンパク質F(APOF)、ケラチン18(KRT18)、ケラチン19(KRT19)、または第19染色体の
オープンリーディングフレーム80(アンジオポエチン様タンパク質8、肝細胞癌関連遺伝子TD26、リパシン)(ベータトロフィン)を含むバイオマーカーのセットに関連する。一部の実施態様において、4つの段階のそれぞれは、CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、BSEP、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、またはHNF4αを含むバイオマーカーのセットに関連する。
【0090】
[00109]一部の場合において、原始線条からDEへの段階は、hTS細胞が、肝臓分化
段階に入っていないかまたは肝臓分化段階に入ろうとしている段階である。一部の実施態様において、原始線条からDEへの段階におけるhTS細胞は、DEの特定化を受ける。FGF(例えばbFGF)で誘導した後の一部の場合において、hTS細胞は、約0.1から約24時間の間、約0.5から約18時間の間、または約1から約12時間の間、原始線条からDEへの段階のままである。FGF(例えばbFGF)で誘導した後の一部の場合において、hTS細胞は、最大で0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間またはそれ未満の時間、原始線条からDEへの段階のままである。FGF(例えばbFGF)で誘導した後の一部の場合において、hTS細胞は、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間またはそれより長い時間、原始線条からDEへの段階のままである。
【0091】
[00110]一部の場合において、原始線条からDEへの段階におけるhTS細胞は、CX
CR4、FOXA2、SOX17、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、G6PC、SERPINA1、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、AFP、KRT8、PCK2、CYP2B6、GYS2、HNF6、CPS1、ADH1C、CX32、CYP3A4、PROX1、TDO2、APOF、KRT18、KRT19、およびベータトロフィンから選択されるバイオマーカーのセットで特徴付けられる。一部の実施態様において、原始線条からDEへの段階は、CXCR4、FOXA2、SOX17およびHHEXから選択されるバイオマーカーのセットに関連する。
【0092】
[00111]一部の実施態様において、原始線条からDEへの段階は、CXCR4、FOX
A2、SOX17およびHHEXの上昇した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加したタンパク質発現レベルまたは増加した遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加した遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17およびHHEXの上昇した遺伝子発現レベルは、原始線条からDEへの段階に入っていない同等の栄養膜幹細胞におけるCXCR4、FOXA2、SOX17およびHHEXの遺伝子発現レベルと比べたものである。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17およびHHEXの上昇した遺伝子発現レベルは、約0.1から約10,000、約1から約5000、または約2から約1000倍である。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17およびHHEXの上昇した遺伝子発現レベルは、原始線条からDEへの段階に入っていない同等のhTS細胞におけるCXCR4、FOXA2、SOX17およびHHEXの遺伝子発現レベルと比べて、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、5000倍であるか、またはそれより高い。一部の実施態様において、CXCR4、FOXA2、SOX17およびHHEXの遺伝子発現レベルは、原始線条からDEへの段階に入っていない同等のhTS細胞におけるCXCR4、FOXA2、SOX17およびHHEXの遺伝子発現レベルと比べて、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、5000分の1であるか、またはそれより低い。
【0093】
[00112]一部の場合において、肝臓特異的な内胚葉は、肝臓の特定化後における上皮細
胞の第1の出現を特徴付ける。一部の実施態様において、肝臓特異的な内胚葉の段階は、
ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルの添加により開始される。一部の場合において、ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルは、約1から約48時間の間、約2から約24時間の間、約3から約18時間の間、または約4から約12時間の間に、培養された培地に添加される。一部の場合において、ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルは、FGF(例えばbFGF)で誘導した後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16時間、またはそれを超える時間で培養された培地に添加される。一部の場合において、ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルは、FGF(例えばbFGF)で誘導した後、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16時間、またはそれ未満の時間で、培養された培地に添加される。
【0094】
[00113]ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタ
チンM)のカクテルで誘導した後の一部のケースにおいて、hTS細胞は、約1から約72時間の間、約2から約36時間の間、約3から約24時間の間、または約4から約12時間の間、肝臓特異的な内胚葉の段階のままである。ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルで誘導した後の一部のケースにおいて、hTS細胞は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36時間、またはそれを超える時間、肝臓特異的な内胚葉の段階のままである。ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルで誘導した後の一部のケースにおいて、hTS細胞は、最大で6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36時間、またはそれ未満の時間、肝臓特異的な内胚葉の段階のままである。
【0095】
[00114]一部の場合において、肝臓特異的な内胚葉の段階におけるhTS細胞は、CX
CR4、FOXA2、SOX17、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、G6PC、SERPINA1、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、AFP、KRT8、PCK2、CYP2B6、GYS2、HNF6、CPS1、ADH1C、CX32、CYP3A4、PROX1、TDO2、APOF、KRT18、KRT19、およびベータトロフィンから選択されるバイオマーカーのセットで特徴付けられる。一部の実施態様において、肝臓特異的な内胚葉は、SOX17、TTR、ALB、TAT、およびCYP7A1から選択されるバイオマーカーのセットに関連する。
【0096】
[00115]一部の実施態様において、肝臓特異的な内胚葉は、SOX17、TTR、AL
B、TAT、およびCYP7A1の上昇した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加したタンパク質発現レベルまたは増加した遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加した遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、およびCYP7A1の上昇した遺伝子発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階に入っていない同等の栄養膜幹細胞におけるSOX17、TTR、ALB、TAT、およびCYP7A1の遺伝子発現レベルと比べたものである。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、およびCYP7A1の遺伝子発現レベルは、約1から約10,000倍の間、約2から約1000倍の間、または約2から約100倍の間である。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、およびCYP7A1の遺伝子発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階に入っていない同等の栄養膜幹細胞におけるSOX17、TTR、ALB、TAT、およびCYP7A1の遺伝子発現レベルと比べて、少なく
とも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、5000倍であるか、またはそれより高い。一部の実施態様において、SOX17、TTR、ALB、TAT、およびCYP7A1の遺伝子発現レベルは、肝臓特異的な内胚葉の段階に入っていない同等の栄養膜幹細胞におけるSOX17、TTR、ALB、TAT、およびCYP7A1における遺伝子発現レベルと比べて、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、5000分の1であるか、またはそれより低い。
【0097】
[00116]一部の実施態様において、hTS細胞は、ステロイド(例えばデキサメタゾン
)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルを添加した後、約1から約36時間、約3から約24時間、または約6から約12時間に、肝芽細胞の段階に入る。一部の実施態様において、hTS細胞は、ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルを添加した後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24時間に、肝芽細胞の段階に入る。
【0098】
[00117]一部の実施態様において、hTS細胞は、約1から約30日の間、約2から約
12日の間、または約3から約7日の間、肝芽細胞の段階のままである。一部の実施態様において、hTS細胞は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8日またはそれ未満、肝芽細胞の段階のままである。一部の実施態様において、hTS細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8日またはそれより長く、肝芽細胞の段階のままである。
【0099】
[00118]一部の場合において、肝芽細胞の段階におけるhTS細胞は、CXCR4、F
OXA2、SOX17、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、G6PC、SERPINA1、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、AFP、KRT8、PCK2、CYP2B6、GYS2、HNF6、CPS1、ADH1C、CX32、CYP3A4、PROX1、TDO2、APOF、KRT18、KRT19、およびベータトロフィンから選択されるバイオマーカーのセットで特徴付けられる。一部の実施態様において、肝芽細胞の段階は、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、およびBSEPから選択されるバイオマーカーのセットに関連する。
【0100】
[00119]一部の実施態様において、肝芽細胞の段階は、TTR、ALB、TAT、CY
P7A1、およびBSEPの上昇した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加したタンパク質発現レベルまたは増加した遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加した遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、およびBSEPの上昇した遺伝子発現レベルは、肝芽細胞の段階に入っていない同等のhTS細胞におけるTTR、ALB、TAT、CYP7A1、およびBSEPの遺伝子発現レベルと比べたものである。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、およびBSEPの遺伝子発現レベルは、約1から約10,000倍の間、約2から約1000倍の間、または約2から約100倍の間である。
【0101】
[00120]一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、およびB
SEPの遺伝子発現レベルは、肝芽細胞の段階に入っていない同等のhTS細胞におけるTTR、ALB、TAT、CYP7A1、およびBSEPの遺伝子発現レベルと比べて、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、1000、5000倍であるか、またはそれより高い。一部の実施態様において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、およびBSEPの遺伝子発現レベルは、肝芽細胞の段階に入っていない同等のhTS細胞におけるTTR、ALB、TAT、CYP7A1、およびBSEPの遺伝子発現レベルと比べて、最大
で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、1000、5000分の1であるか、またはそれより低い。
【0102】
[00121]一部の場合において、hTS細胞は、ステロイド(例えばデキサメタゾン)お
よびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルを添加した後、約1から約20日の間、約2から約10日の間、または約3から約6日の間に、胎児および成体の肝細胞様の段階に入る。一部の場合において、hTS細胞は、ステロイド(例えばデキサメタゾン)およびサイトカイン(例えばオンコスタチンM)のカクテルを添加した後、約1、2、3、4、5、または6日に、胎児および成体の肝細胞様の段階に入る。
【0103】
[00122]一部の実施態様において、hTS細胞は、約1から約100日の間、約2から
約50日の間、約3から約30日の間、約4から約12日の間、または約6から約10日の間、胎児および成体の肝細胞様の段階のままである。一部の実施態様において、hTS細胞は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、60日またはそれ未満、胎児および成体の肝細胞様の段階のままである。一部の実施態様において、hTS細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、60日またはそれより長く、胎児および成体の肝細胞様の段階のままである。
【0104】
[00123]一部の場合において、胎児および成体の肝細胞様の段階におけるhTS細胞は
、CXCR4、FOXA2、SOX17、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、G6PC、SERPINA1、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、HNF4α、AFP、KRT8、PCK2、CYP2B6、GYS2、HNF6、CPS1、ADH1C、CX32、CYP3A4、PROX1、TDO2、APOF、KRT18、KRT19、およびベータトロフィンから選択されるバイオマーカーのセットで特徴付けられる。一部の実施態様において、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階は、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αから選択されるバイオマーカーのセットに関連する。
【0105】
[00124]一部の実施態様において、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階は、HHEX
、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αの上昇した発現レベルに関連する。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加したタンパク質発現レベルまたは増加した遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、上昇した発現レベルは、増加した遺伝子発現レベルである。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αの上昇した遺伝子発現レベルは、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階に入っていない同等のhTS細胞におけるHHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αの遺伝子発現レベルと比べたものである。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αの遺伝子発現レベルは、約1から約10,000倍の間、約2から約5000倍の間、または約2から約1000倍の間である。
【0106】
[00125]一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、S
ERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αの遺伝子発現レベルは、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階に入っていない同等のhTS細胞におけるHHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6
PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αの遺伝子発現レベルと比べて、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、5000倍であるか、またはそれより高い。一部の実施態様において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αの遺伝子発現レベルは、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階に入っていない同等のhTS細胞におけるHHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、G6PC、ABCC2、C/EBPβ、HNF1α、およびHNF4αの遺伝子発現レベルと比べて、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、5000分の1であるか、またはそれより低い。
【0107】
[00126]一部の実施態様において、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階における細胞
は、誘導肝細胞に成熟する。一部の実施態様において、胎児および成体の肝細胞様細胞の段階における細胞は、誘導肝細胞である。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、それ以上分化しない。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、最終分化した段階に到達する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100世代またはそれより長く、安定な細胞として維持される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、最大で7日、10日、14日、21日、30日、60日、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年間、2年間、またはそれより長く、安定な細胞として維持される。
【0108】
使用方法
[00127]ある特定の実施態様において、1つまたはそれより多くの使用のために誘導肝細
胞を利用する方法が本明細書で説明される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、疾患または障害の処置または予防で使用するための化合物をスクリーニングするのに利用される。一部の実施態様において、スクリーニングプロセスは、化合物、酵素誘導、および毒性研究の1つまたはそれより多くを含む。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、肝臓傷害、例えば肝臓関連の疾患または障害による肝臓組織の損傷または損失の処置のために投与される。他の実施態様において、誘導肝細胞は、治療用タンパク質(例えばホルモン)、サイトカイン、コレステロール、炭水化物、胆汁、またはそれらの組合せを生産するために利用される。他の実施態様において、誘導肝細胞は、肝再生のために利用される。追加の実施態様において、誘導肝細胞は、遺伝子治療のための源として利用される。
【0109】
化合物をスクリーニングするための誘導肝細胞
[00128]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、疾患または障害の処置または予防で使
用するための化合物をスクリーニングするのに利用される。一部の実施態様において、本方法は、単離された誘導肝細胞を化合物と接触させることを含む。一部の実施態様において、本方法は、単離された初代肝細胞を化合物と接触させることを含む。他の実施態様において、本方法は、誘導肝細胞における少なくとも1つのバイオマーカー(例えば遺伝子、転写またはタンパク質)の活性における変化を検出することをさらに含む。他の実施態様において、本方法は、初代肝細胞における少なくとも1つのバイオマーカー(例えば遺伝子、転写またはタンパク質)のレベルにおける変化を検出することをさらに含む。一部の実施態様において、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルにおける変化は、少なくとも1つのバイオマーカーの遺伝子発現レベルにおける変化である。一部の実施態様において、バイオマーカーは、シトクロムP450スーパーファミリーのメンバーを含む。一部の実施態様において、バイオマーカーは、シトクロムP450ファミリー:CYP1、CYP2、CYP3、CYP4、CYP5、CYP7、CYP8、CYP11、CYP17、CYP19、CYP20、CYP21、CYP24、CYP26、CYP27、CYP39、CYP46、CYP51、およびそれら各々のサブファミリーのメンバーを含む
。一部の実施態様において、バイオマーカーは、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、またはCYP7A1を含む。
【0110】
[00129]一部の実施態様において、化合物(例えば薬物)は、肝臓を介して代謝される
。一部の場合において、化合物(例えば薬物)を代謝するための肝臓の一次メカニズムは、酵素のP450シトクロム系である。一部の場合において、化合物を代謝する速度が急速すぎると、化合物の効能を減少させる可能性がある。代替として、化合物を代謝する速度が遅すぎると、宿主細胞中に毒性を蓄積させる可能性がある。それゆえに一部の場合において、化合物の代謝が評価され、例えばその毒性が評価される。
【0111】
[00130]一部の場合において、化合物は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメン
バーに対する誘導物質または阻害剤として作用する。一部のケースにおいて、化合物は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーに対する誘導物質である。一部の場合において、誘導物質は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーなどの酵素の発現を開始させるかまたはそのレベルを強化する。一部の場合において、誘導物質は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーの遺伝子発現を開始させるかまたはそのレベルを強化する。一部の場合において、誘導物質は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーのタンパク質発現を開始させるかまたはそのレベルを強化する。一部のケースにおいて、化合物は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーに対する阻害剤である。一部の場合において、阻害剤は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーなどの酵素の発現を阻害するか、そのレベルを低減させるか、またはそれに干渉する。一部の場合において、阻害剤は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーの遺伝子発現を阻害するか、そのレベルを低減させるか、またはそれに干渉する。一部の場合において、阻害剤は、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーのタンパク質発現を阻害するか、そのレベルを低減させるか、またはそれに干渉する。一部の場合において、酵素のシトクロムP450ファミリーのメンバーなどの酵素の発現レベルは、酵素の対照発現レベルと比較される。一部の実施態様において、酵素の対照発現レベルは、化合物により誘導されていない酵素の発現レベルである。
【0112】
[00131]単離された誘導肝細胞を化合物と接触させた後の一部の場合において、シトク
ロムP450スーパーファミリーのメンバーの遺伝子発現における変化が、検出される。一部のケースにおいて、化合物と接触させた単離された誘導肝細胞からのシトクロムP450スーパーファミリーのメンバーからのバイオマーカーの遺伝子発現レベルは、化合物と接触させていない同等の単離された誘導肝細胞のシトクロムP450スーパーファミリーからのバイオマーカーの遺伝子発現レベルと比較されるか、または初代肝細胞と比較される。
【0113】
[00132]単離された誘導肝細胞を化合物と接触させた後の一部の場合において、シトク
ロムP450ファミリー:CYP1、CYP2、CYP3、CYP4、CYP5、CYP7、CYP8、CYP11、CYP17、CYP19、CYP20、CYP21、CYP24、CYP26、CYP27、CYP39、CYP46、CYP51、およびそれら各々のサブファミリーのメンバーから選択されるバイオマーカーの遺伝子発現レベルにおける変化が、検出される。一部のケースにおいて、化合物と接触させた単離された誘導肝細胞からの、シトクロムP450ファミリー:CYP1、CYP2、CYP3、CYP4、CYP5、CYP7、CYP8、CYP11、CYP17、CYP19、CYP20、CYP21、CYP24、CYP26、CYP27、CYP39、CYP46、CYP51、およびそれら各々のサブファミリーのメンバーからのバイオマーカーの遺伝子発現レベルは、化合物と接触させていない同等の単離された誘導肝細胞のシトクロムP450ファミリー:CYP1、CYP2、CYP3、CYP4、CYP5、CYP7、CYP8、C
YP11、CYP17、CYP19、CYP20、CYP21、CYP24、CYP26、CYP27、CYP39、CYP46、CYP51、およびそれら各々のサブファミリーのメンバーからのバイオマーカーの遺伝子発現レベルと比較されるか、または初代肝細胞と比較される。
【0114】
[00133]単離された誘導肝細胞を化合物と接触させた後の一部の場合において、CYP
1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、およびCYP7A1から選択されるバイオマーカーの遺伝子発現レベルにおける変化が、検出される。一部のケースにおいて、化合物と接触させた単離された誘導肝細胞からのCYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、およびCYP7A1から選択されるバイオマーカーの遺伝子発現レベルは、化合物と接触させていない同等の単離された誘導肝細胞のCYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、およびCYP7A1から選択されるバイオマーカーの遺伝子発現レベルと比較されるか、または初代肝細胞と比較される。
【0115】
[00134]一実施態様において、細胞において変化を誘導する能力に関して化合物をスク
リーニングする方法が本明細書において提供される。一実施態様において、本方法は、単離された誘導肝細胞を化合物と接触させることを含む。別の実施態様において、本方法は、単離された初代肝細胞を化合物と接触させることを含む。別の実施態様において、本方法は、例えば再生中における誘導肝細胞の変化(例えば増殖)の誘導を検出することをさらに含む。別の実施態様において、本方法は、例えば再生中における初代肝細胞の変化(例えば増殖)の誘導を検出することをさらに含む。
【0116】
[00135]細胞の細胞毒性または調節に関して化合物をスクリーニングする方法であって
、誘導肝細胞を化合物と接触させることを含む、上記方法も、本明細書において提供される。別の実施態様において、本方法は、化合物との接触に起因する細胞におけるあらゆる表現型または代謝の変化を決定すること、およびその変化を、細胞毒性または細胞の機能または生化学における他のあらゆる変化と関係付けることをさらに含む。別の実施態様において、医薬品、毒素、または可能性のある分化の調節因子のスクリーニングが促進される。これらの物質(例えば、医薬品、毒素、または可能性のある調節因子)は、培養培地に添加することができる。
【0117】
[00136]本明細書において提供される一実施態様は、増殖因子、分化因子、および医薬
品をスクリーニングする方法を説明する。一実施態様において、誘導肝細胞または初代肝細胞は、培養中の誘導肝細胞または初代肝細胞の特徴に影響を与える因子(例えば小分子薬物、ペプチド、ポリヌクレオチドなど)または条件(例えば培養条件または操作)に関してスクリーニングするために使用される。一実施態様において、このシステムは、試験化合物によるフィーダー細胞の変動によって引き起こされる副次的な作用によって複雑化しないという利点を有する。別の実施態様において、増殖に影響を及ぼす物質が試験される。別の実施態様において、培養物から馴化培地を引き出し、より単純な培地で交換する。別の実施態様において、馴化培地の要素を置き換えるための候補である可溶性因子の異なるカクテルで、異なるウェルを処理する。処理された細胞が維持され、馴化培地の場合と同様に最適に、十分な方式で増殖した場合、各混合物の効能が決定される。可能性のある分化因子または条件は、試験プロトコールに従って細胞を処理すること、次いで処置された細胞が、特定の系統の分化細胞の機能的なまたは表現型の特徴を発生させるかどうかを決定することによって試験することができる。
【0118】
[00137]一実施態様において、誘導肝細胞または初代肝細胞は、細胞分化の可能性のあ
る調節因子をスクリーニングするのに使用される。例えば、細胞分化の調節因子をスクリ
ーニングするための1つのアッセイにおいて、誘導肝細胞または初代肝細胞は、状況が必要とする場合、血清非含有で、または調節因子の存在下で培養することができ、分化に対する作用を検出することができる。別の実施態様において、本明細書で説明されるスクリーニング方法は、細胞の発達に関連する状態を研究し、可能性のある治療的または矯正的な薬物または状態の調節因子に関してスクリーニングするのに使用することができる。例えば、一実施態様において、誘導肝細胞または初代肝細胞の発達は、疾患または状態を有する細胞の発達と比較される。
【0119】
[00138]一実施態様において、遺伝子およびタンパク質発現などのバイオマーカーは、
誘導肝細胞または初代肝細胞から得られた異なる細胞集団間で比較され、増殖の過程でアップレギュレートまたはダウンレギュレートされた因子を同定して特徴付けるのに使用され、影響を受けた遺伝子のヌクレオチドコピーを生産することができる。
【0120】
[00139]一実施態様において、フィーダー非含有の誘導肝細胞または初代肝細胞培養物
も、薬物調査で医薬化合物を試験することために使用することができる。候補医薬化合物の活性の評価は、一般的に、誘導肝細胞または初代肝細胞を候補化合物と組み合わせること、結果得られたあらゆる変化を決定すること、次いで化合物の作用を観察された変化と関係付けることを含む。別の実施態様において、スクリーニングは、例えば、化合物が特定の細胞型に対して薬理作用を有するように設計されるためになされるか、または化合物が他の場合では予期せぬ副作用を有するように設計されるためになされるかのいずれかである。別の実施態様において、2つまたはそれより多くの薬物は、可能性のある薬物-薬物相互作用を検出するために、組み合わせて(同時または逐次的にのいずれかで細胞と組み合わせることによって)試験される。別の実施態様において、化合物は、最初に起こり得る毒性に関してスクリーニングされる。別の実施態様において、細胞傷害性は、細胞生存率、生存、形態学、特定のマーカー、受容体または酵素の発現または放出、DNAの合成または修復に対する作用によって決定される。
【0121】
[00140]用語「処置すること」、「処置」、および同種のものは、本明細書では、望ま
しい薬理学的および/または生理学的な作用を得ることを意味するものとして使用される。一部の実施態様において、個体(例えば、肝臓関連の疾患または障害に罹っている疑いのある、および/または遺伝学的に罹りやすい個体)は、本明細書で説明される誘導肝細胞の調製物で予防的に処置され、このような予防的処置は、肝臓関連の疾患もしくは障害またはそれらの徴候もしくは症状を完全または部分的に予防する。一部の実施態様において、個体は、治療的に処置され(例えば、個体が肝臓関連の疾患または障害に罹っている場合)、このような治療的処置は、疾患または障害に関して部分的または完全な治癒をもたらすか、および/または疾患または障害に起因する有害作用を逆転させるか、および/または疾患または障害を安定化させるか、および/または疾患または障害の進行を遅延させるか、および/または疾患または障害の寛解をもたらす。
【0122】
[00141]処置が必要な領域への誘導肝細胞の投与(例えば、移植)は、例えば、これら
に限定されないが、注射による外科手術中の局所注入、カテーテル、またはインプラントによって達成され、前記インプラントは、多孔質、非多孔質、またはゲル状の材料で作製され、膜、例えばシラスティック(sialastic)膜、または繊維などが挙げられる。
【0123】
[00142]哺乳動物に組成物を「移植すること」は、当業界で確立されたあらゆる方法に
よって哺乳動物の体に組成物を導入することを指す。導入される組成物は、「移植物」であり、哺乳動物は、「レシピエント」である。移植物およびレシピエントは、同系、同種または異種であってもよい。さらに、移植物は、自家移植であってもよい。
【0124】
[00143]「有効量」は、意図する目的を達成するのに十分な治療剤の量である。例えば
、誘導肝細胞の有効量は、場合によって、初代肝細胞数の増加をもたらすのに十分な量である。肝臓関連の疾患または障害を処置または緩和するための組成物の有効量は、肝臓関連の疾患または障害の症状を低減または除去するのに十分な組成物の量である。所与の治療剤の有効量は、薬剤の性質、投与経路、治療剤を受ける動物のサイズおよび種、ならびに投与目的などの要因に応じて様々であると予想される。
【0125】
[00144]一実施態様において、遺伝子改変された誘導肝細胞が本明細書においてさらに
提供される。操作は、細胞の様々な特性を改変し、例えば、特定の環境条件に細胞をより適合させるかまたは耐性にし、および/またはそれからの1つまたはそれより多くの特定の物質の生産を誘導するものであり、この物質は、例えば細胞の生存率を改善することができる。このような遺伝子変化は、移植での使用に細胞をより好適にするために、例えば、レシピエントからのそれらの拒絶反応を回避するために実行することができる(遺伝子治療手順の総論については、Anderson、Science、256:808;Mulligan、Science、926;Miller、Nature、357:455;Van Brunt、Biotechnology、6(10):1149;およびYuら、Gene Therapy、1:13を参照)。
【0126】
[00145]「ベクター」は、適切な宿主細胞に導入されると本明細書で説明される前駆細
胞の改変を引き起こす、組換えDNAまたはRNAコンストラクト、例えばプラスミド、ファージ、組換えウイルス、または他のベクターを指す。適切な発現ベクターは、当業界において通常の技術を有するものに周知であり、真核および/または原核細胞で複製可能なもの、およびエピソームのままであるもの、または宿主細胞ゲノムに統合されるものが挙げられる。
【0127】
[00146]ベクターの構築は、例えば、Sambrookら、1989で説明されるような技術を使用
して達成される。一実施態様において、単離されたプラスミドまたはDNAフラグメントは、プラスミドを生成するのに望ましい形態に、切断され、適合させ、再びライゲートされる。必要に応じて、構築されたプラスミドにおいて正しい配列を確認するための分析は、あらゆる好適な方法を使用して実行される。発現ベクターを構築する、インビトロでの転写物を調製する、宿主細胞にDNAを導入する、および遺伝子の発現および機能を評価するための分析を実行するための好適な方法は、公知である。遺伝子の存在、増幅、および/または発現は、例えば、本明細書で提供される配列をベースとし得る適切に標識されたプローブを使用した、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するためのノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、またはインサイチュハイブリダイゼーションによってサンプル中で直接的に測定される。
【0128】
[00147]本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」、「形質転換」、およ
び同種のものなどの用語は、核酸が細胞または生物に機能的な形態で移行することを示すことが意図される。このような用語は、核酸を細胞に移行させる様々な手段を包含し、CaP04を用いたトランスフェクション、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入、リポフェクション、リポソームを使用する送達、および/または他の運搬手段を包含する。
【0129】
疾患または障害を処置するための誘導肝細胞
[00148]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、肝臓傷害の処置のために投与される。
一部の実施態様において、肝臓傷害は、宿主への傷害などの外的要因、例えば個体への傷害による、または外科手術による、肝臓組織の損傷または損失を包含する。一部の実施態様において、肝臓傷害は、肝臓関連の疾患または障害による肝臓組織の損傷または損失を包含する。一部の実施態様において、肝臓関連の疾患または障害は、急性肝不全などの急性肝疾患もしくは障害であるか、または硬変症などの慢性肝疾患もしくは障害である。一部の実施態様において、肝臓関連の疾患または障害は、遺伝因子、化学物質または病原体
の感染に起因する。
【0130】
[00149]例示的な肝臓関連の疾患または障害としては、これらに限定されないが、アラ
ジール症候群、アルファ1抗トリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(例えば妊娠性急性脂肪肝、妊娠中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎A、B、C、およびウィルソン病が挙げられる。
【0131】
[00150]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、急性肝疾患または障害の処置のため
に投与される。他の実施態様において、誘導肝細胞は、慢性肝疾患または障害の処置のために投与される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、アラジール症候群、アルファ1抗トリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(例えば妊娠性急性脂肪肝、妊娠中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎A型、B型、C型、ウィルソン病、またはそれらの組合せの処置のために投与される。
【0132】
[00151]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、肝臓関連の疾患または障害の処置の
ための追加の治療剤と組み合わせて投与される。一部の実施態様において、追加の治療剤としては、これらに限定されないが、クルクミン、レスベラトロール、サリドマイド、コレスチラミン(クエストラン)、タクロリムス(PROGRAF)、ウルソジオール(アクティゴール)、インターフェロン、ループ利尿薬などの利尿薬、および肝臓移植が挙げられる。
【0133】
[00152]一部の実施態様において、肝臓に対して毒性の化学物質は、化学物質によって
誘導された肝疾患を引き起こす。一部の実施態様において、肝臓に対して毒性の化学物質としては、薬物;消費可能なもの、例えばアルコール、食品添加剤、または保存剤;ならびに化学的および環境的な毒素が挙げられる。一部の場合において、肝臓傷害を引き起こす薬物としては、これらに限定されないが、アセトアミノフェン、アロプリノール、アナボリックステロイド、ダナゾール、ダントロレン、イミプラミン、イソニアジド、メトトレキセート、メチルドパ、ニコチン酸、ニトロフラントイン、フェノチアジン、フェニトイン、サリチル酸塩、スタチン、テルビナフィンHCl、チアベンダゾール、トロトラスト、トルブタミド、クロルプロマジン/バルプロ酸、およびクロルプロパミド/エリスロマイシンが挙げられる。
【0134】
[00153]一部の実施態様において、病原体の感染は、肝臓関連の疾患または障害を誘導
する。一部の実施態様において、病原体は、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫である。一部の実施態様において、病原体は、ウイルスである。一部の実施態様において、ウイルス感染は、肝臓関連の疾患または障害を誘導する。
【0135】
[00154]一部の実施態様において、ウイルスは、DNAウイルスまたはRNAウイルス
である。一部の場合において、DNAウイルスは、一本鎖(ss)DNAウイルス、二本鎖(ds)DNAウイルス、またはssおよびdsDNA領域の両方を含有するDNAウ
イルスである。一部のケースにおいて、RNAウイルスは、一本鎖(ss)RNAウイルスまたは二本鎖(ds)RNAウイルスである。時には、ssRNAウイルスは、プラス鎖RNAウイルスまたはマイナス鎖RNAウイルスにさらに分類される。
【0136】
[00155]一部の場合において、dsDNAウイルスは、以下の科:ミオウイルス科(Myoviridae)、ポドウイルス科(Podoviridae)、シホウイルス科(Siphoviridae)、アロヘルペスウイルス科(Alloherpesviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、マラコヘルペスウイルス科(Malacoherpesviridae)、リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)、ルディウイルス科(Rudiviridae)、アデノウイルス科(Adenoviridae)、アムプラウイルス科(Ampullaviridae)、アスコウイルス科(Ascoviridae)、アスファウイ
ルス科(Asfaviridae)、バキュロウイルス科(Baculoviridae)、ビカウダウイルス科(Bicaudaviridae)、クラバウイルス科(Clavaviridae)、コルチコウイルス科(Corticoviridae)、フセロウイルス科(Fuselloviridae)、グロブロウイルス科(Globuloviridae)、グッタウイルス科(Guttaviridae)、ヒトロサウイルス科(Hytrosaviridae)、イリドウイルス科(Iridoviridae)、マルセイユウイルス科(Marseilleviridae)、ミミウイルス科(Mimiviridae)、ニマウイルス科(Nimaviridae)、パンドラウイルス科(Pandoraviridae)、パピローマウイルス科(Papillomaviridae)、フィコドナウイルス科(Phycodnaviridae)、プラズマウイルス科(Plasmaviridae)、ポリドナウイルス科(Polydnaviruses)、ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、スファエロリポウイルス科(Sphaerolipoviridae)、およびテクティウイルス科(Tectiviridae)に由来する。
【0137】
[00156]一部の場合において、ssDNAウイルスは、以下の科:アネロウイルス科(Anelloviridae)、バシラリオドナウイルス科(Bacillariodnaviridae)、ビドナウイルス科(Bidnaviridae)、サーコウイルス科(Circoviridae)、ジェミニウイルス科(Geminiviridae)、イノウイルス科(Inoviridae)、ミクロウイルス科(Microviridae)、ナノウイルス科(Nanoviridae)、パルボウイルス科(Parvoviridae)、およびスピラウイルス科(Spiraviridae)に由来する。
【0138】
[00157]一部の場合において、ssおよびdsDNA領域の両方を含有するDNAウイ
ルスは、プレオリポウイルス(pleolipoviruses)属に由来する。一部のケースにおいて
、プレオリポウイルスとしては、ハロアーキュラ・ヒスパニカ(Haloarcula hispanica)多形性ウイルス1、ハロゲオメトリクム属(Halogeometricum)多形性ウイルス1、ハロ
ラブラム属(Halorubrum)多形性ウイルス1、ハロラブラム属多形性ウイルス2、ハロラブラム属多形性ウイルス3、およびハロラブラム属多形性ウイルス6が挙げられる。
【0139】
[00158]一部の場合において、dsRNAウイルスは、以下の科:ビルナウイルス科(Birnaviridae)、クリソウイルス科(Chrysoviridae)、シストウイルス科(Cystoviridae)、エンドルナウイルス科(Endornaviridae)、ハイポウイルス科(Hypoviridae)、メ
ガビルナウイルス科(Megavirnaviridae)、パルティティウイルス科(Partitiviridae)、ピコビルナウイルス科(Picobirnaviridae)、レオウイルス科(Reoviridae)、ロタウイルス科(Rotavirus)およびトティウイルス科(Totiviridae)に由来する。
【0140】
[00159]一部のケースにおいて、プラス鎖ssRNAウイルスは、以下の科:アルファ
フレキシウイルス科(Alphaflexiviridae)、アルファテトラウイルス科(Alphatetraviridae)、アルベルナウイルス科(Alvernaviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、アストロウイルス科(Astroviridae)、バルナウイルス科(Barnaviridae)、ベー
タフレキシウイルス科(Betaflexiviridae)、プロモウイルス科(Bromoviridae)、カリチウイルス科(Caliciviridae)、カルモテトラウイルス科(Carmotetraviridae)、クロステロウイルス科(Closteroviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、ジシスト
ロウイルス科(Dicistroviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ガンマフレキ
シウイルス科(Gammaflexiviridae)、イフラウイルス科(Iflaviridae)、レヴィウイルス科(Leviviridae)、ルテオウイルス科(Luteoviridae)、マルナウイルス科(Marnaviridae)、メソニウイルス科(Mesoniviridae)、ナルナウイルス科(Narnaviridae)、ノダウイルス科(Nodaviridae)、ペルムトテトラウイルス科(Permutotetraviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、ポチウイルス科(Potyviridae)、ロニウイルス
科(Roniviridae)、セコウイルス科(Secoviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)
、トンブスウイルス科(Tombusviridae)、ティモウイルス科(Tymoviridae)、および
ビルガウイルス科(Virgaviridae)に由来する。
【0141】
[00160]時には、マイナス鎖ssRNAウイルスは、以下の科:ボルナウイルス科(Bornaviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、ニアミウイルス科(Nyamiviridae)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、オフィオウイルス科(Ophioviridae)、およびオルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)に由来する。
【0142】
[00161]例示的なウイルスとしては、これらに限定されないが、エーベルソン白血病ウ
イルス、エーベルソンマウス白血病ウイルス、エーベルソンウイルス、急性喉頭気管支炎ウイルス、アデレードリバーウイルス、アデノ関連ウイルス群、アデノウイルス、アフリカ馬疫ウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、AIDSウイルス、アリューシャンミンク症パルボウイルス、アルファレトロウイルス、アルファウイルス、ALV関連ウイルス、アマパリウイルス、アフタウイルス、アクアレオウイルス、アルボウイルス、アルボウイルスC、アルボウイルスA群、アルボウイルスB群、アレナウイルス属、アルゼンチン出血熱ウイルス、アルゼンチン出血熱ウイルス、アルテリウイルス、アストロウイルス、アテリン(Ateline)ヘルペスウイルス属、オーエスキー病ウイルス、アウラウイルス、ア
ウスダック(Ausduk)疾患ウイルス、オーストラリアコウモリリッサウイルス、アビアデノウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリリンパ腫症ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリパラミクソウイルス、トリ肺脳炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリ肉腫ウイルス、トリC型レトロウイルス属、トリヘパドナウイルス、アビポックスウイルス、Bウイルス、B19ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、ヒヒヘルペスウイルス、バキュロウイル
ス、バーマフォレストウイルス、ベバルウイルス、ベリマー(Berrimah)ウイルス、ベータレトロウイルス、ビルナウイルス、ビットナーウイルス、BKウイルス、ブラッククリークカナルウイルス、ブルータングウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、ボルナ病(Boma
disease)ウイルス、ヒツジボーダー病ウイルス、ボルナウイルス、ウシアルファヘルペスウイルス1、ウシアルファヘルペスウイルス2、ウシコロナウイルス、ウシ流行熱ウイルス、ウシ免疫不全ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ウシ乳頭炎ウイルス、ウシパピローマウイルス、ウシ丘疹状梅毒疹(papular stomatitis)ウイルス、ウシパルボウイルス、ウシ合胞体ウイルス、ウシC型オンコウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、バギークリーク(Buggy Creek)ウイルス、弾丸型ウイルス群、ブンヤムウ
ェラウイルス超層群、ブニヤウイルス、バーキットリンパ腫ウイルス、ブワンバ熱、CAウイルス、カリチウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、ラクダ痘ウイルス、カナリア痘瘡ウイルス、イヌヘルペスウイルス、イヌコロナウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌヘルペスウイルス、イヌ微小ウイルス、イヌパルボウイルス、Cano Delgaditoウイルス、ヤギ関節炎ウイルス、ヤギ脳炎ウイルス、ヤギヘルペスウイルス、ヤギポックスウイルス、カルジオウイルス、テンジクネズミ科ヘルペスウイルス1、オナガザル科ヘルペスウイルス1、オナガザル亜科ヘルペスウイルス1、オナガザル亜科ヘルペスウイルス2、チャンディプラウイルス、チャングイノラウイルス、ブチナマズのウイルス、チャールビルウイルス、水痘ウイルス、チクングンヤウイルス、チンパンジーヘルペスウイルス、コイ科レオウイルス、シロザケのウイルス、球菌ウイルス、ギンザケのレ
オウイルス、媾疹ウイルス、コロラドダニ熱ウイルス、コルティウイルス、コロンビアSKウイルス、感冒ウイルス、伝染性膿瘡(contagious eethyma)ウイルス、伝染性膿疱性皮膚炎ウイルス、コロナウイルス、コリパルタウイルス、コリーザウイルス、牛痘ウイルス、コクサッキーウイルス、CPV(細胞質多角体ウイルス)、クリケット麻痺(cricket paralysis)ウイルス、クリミア-コンゴ出血性熱ウイルス、クループ関連ウイルス、
クリプトウイルス、サイポウイルス、サイトメガロウイルス、サイトメガロウイルス群、細胞質多角体ウイルス、シカパピローマウイルス、デルタレトロウイルス、デング熱ウイルス、デンソウイルス、ディペンドウイルス、ドーリウイルス、ディプロマ(diploma)
ウイルス、ショウジョウバエCウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、アヒル肝炎ウイルス1、アヒル肝炎ウイルス2、デュオウイルス(duovirus)、デュベンヘイジウイルス、縮れ翅ウイルスDWV、東部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、EBウイルス、エボラウイルス、エボラ様ウイルス、エコーウイルス、エコーウイルス、エコーウイルス10、エコーウイルス28、エコーウイルス9、エクトロメリアウイルス、EEEウイルス、EIAウイルス、EIAウイルス、脳炎ウイルス、脳心筋炎群ウイルス、脳心筋炎ウイルス、エンテロウイルス、酵素を上昇させるウイルス、酵素を上昇させるウイルス(LDH)、流行性出血性熱ウイルス、家畜流行性出血性疾患ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ウマアルファヘルペスウイルス1、ウマアルファヘルペスウイルス4、ウマヘルペスウイルス2、ウマ流産ウイルス、ウマ動脈炎ウイルス、ウマ脳症ウイルス、ウマ感染性貧血ウイルス、ウマ麻疹ウイルス、ウマ鼻肺炎ウイルス、ウマライノウイルス、ユーベナンジー(Eubenangu)ウイルス、ヨーロッパヘラジカのパピローマウイルス、ヨー
ロッパ豚のコレラウイルス、エバーグレーズウイルス、アイアッハ(Eyach)ウイルス、
ネコヘルペスウイルス1、ネコカリチウイルス、ネコ繊維肉腫ウイルス、ネコヘルペスウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、ネコ白血病/肉腫ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ネコ肉腫ウイルス、ネコ合胞体ウイルス、フィロウイルス、フランダーズウイルス、フラビウイルス、口蹄疫ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、フォーコーナーズ(Four Corners)ハンタウイルス、トリアデノウイルス1、鶏痘ウイルス、フレンドウイルス
、ガンマレトロウイルス、GB肝炎ウイルス、GBウイルス、麻疹ウイルス、ゲタウイルス、テナガザル白血病ウイルス、腺熱ウイルス、ヤギ痘ウイルス、ゴールデンシマー(golden shinner)ウイルス、ゴノメタ(Gonometa)ウイルス、ガチョウパルボウイルス、顆粒病ウイルス、グロスウイルス、ジリスB型肝炎ウイルス、A群アルボウイルス、グアナリトウイルス、モルモットサイトメガロウイルス、モルモットC型ウイルス、ハンターンウイルス、ハンタウイルス、ハマグリのレオウイルス、野兎線維腫ウイルス、HCMV(ヒトサイトメガロウイルス)、赤血球吸着ウイルス2、センダイウイルス(hemagglutinating virus of Japan)、出血熱ウイルス、ヘンドラウイルス、ヘニパウイルス、ヘパド
ナウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス群、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、デルタ型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、F型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、非A非B型肝炎ウイルス、肝炎ウイルス、肝炎ウイルス(非ヒト)、肝脳脊髄炎(hepatoencephalomyelitis)レオウイルス3、ヘパトウイルス、サギB型肝炎ウイルス、ヘル
ペスBウイルス、単純疱疹ウイルス、単純疱疹ウイルス1、単純疱疹ウイルス2、ヘルペスウイルス、ヘルペスウイルス7、ヘルペスウイルス-アテレス、ヘルペスウイルス-ホミニス、ヘルペスウイルス感染症、ヘルペスウイルス-サイミリ、ヘルペスウイルス-スイス、ヘルペスウイルス-バリセラエ(varicellae)、ハイランドJウイルス、ヒラメラブドウイルス、豚コレラウイルス、ヒトアデノウイルス2、ヒトアルファヘルペスウイルス1、ヒトアルファヘルペスウイルス2、ヒトアルファヘルペスウイルス3、ヒトBリンパ球向性ウイルス、ヒトベータヘルペスウイルス5、ヒトコロナウイルス、ヒトサイトメガロウイルス群、ヒトフォーミーウイルス、ヒトガンマヘルペスウイルス4、ヒトガンマヘルペスウイルス6、ヒトA型肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス1群、ヒトヘルペスウイルス2群、ヒトヘルペスウイルス3群、ヒトヘルペスウイルス4群、ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス8、ヒト免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、
ヒト免疫不全ウイルス2、ヒトパピローマウイルス、ヒトT細胞性白血病ウイルス、ヒトT細胞性白血病ウイルスI、ヒトT細胞性白血病ウイルスII、ヒトT細胞性白血病ウイルスIII、ヒトT細胞リンパ腫ウイルスI、ヒトT細胞リンパ腫ウイルスII、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス2型、ヒトTリンパ球向性ウイルスI、ヒトTリンパ球向性ウイルスII、ヒトTリンパ球向性ウイルスIII、イクノウイルス(Ichnovirus)、乳児胃腸炎ウイルス、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス、感染性造血壊死ウイルス、伝染性膵臓壊死ウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、インフルエンザウイルスD、インフルエンザウイルスpr8、昆虫イリドウイルス、昆虫ウイルス、イリドウイルス、日本Bウイルス、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、フニンウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、ケメロボウイルス、キルハム(Kilham)ラットウイルス、クラマス(Klamath)
ウイルス、コロンゴ(Kolongo)ウイルス、朝鮮出血熱ウイルス、クンバ(kumba)ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、キジラガ(Kyzylagach)ウイルス、ラクロスウイルス、乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス、乳酸デヒドロゲナーゼウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ラングールのウイルス、ラピーヌのパルボウイルス、ラッサ熱ウイルス、ラッサウイルス、潜伏性ラットウイルス、LCMウイルス、漏出性の(Leaky)ウイルス、レ
ンチウイルス、レポリポックスウイルス、白血病ウイルス、ロイコウイルス、ランピースキン病ウイルス、リンパ節症関連ウイルス、リンホクリプトウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、リンパ増殖性ウイルス群、マチュポウイルス、偽狂犬病ウイルス、哺乳類B型オンコウイルス群、哺乳類B型レトロウイルス、哺乳類C型レトロウイルス群、哺乳類D型レトロウイルス、乳がんウイルス、マプエラウイルス、マールブルグウイルス、マールブルグ様ウイルス、マソンファイザーサルウイルス、マストアデノウイルス、マヤロウイルス、MEウイルス、麻疹ウイルス、メナングルウイルス、メンゴウイルス、メンゴウイルス、ミデルブルグ(Middelburg)ウイルス、ミルカー結節ウイルス、ミンク腸炎ウイルス、マウス微小ウイルス、MLV関連ウイルス、MMウイルス、モコラウイルス、モラシポックスウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、サルBウイルス、サル痘ウイルス、モノネガウイルス目、麻疹ウイルス、マウントエルゴンコウモリウイルス、マウスサイトメガロウイルス、マウス脳脊髄炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、マウスKウイルス、マウス白血病ウイルス、マウス乳がんウイルス、マウス微小ウイルス、マウス肺炎ウイルス、マウス灰白髄炎ウイルス、マウスポリオーマウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス痘ウイルス、モザンビークウイルス、ムカンボ(Mucambo)ウイルス、粘膜病ウイルス、流行性
耳下腺炎ウイルス、ネズミベータヘルペスウイルス1、ネズミサイトメガロウイルス2、マウスサイトメガロウイルス群、マウス脳脊髄炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、マウス白血病ウイルス、マウス小結節誘発ウイルス、マウスポリオーマウイルス、マウス肉腫ウイルス、ムロメガロウイスル、マリーバレー脳炎ウイルス、粘液腫ウイルス、ミクソウイルス、ミクソウイルス・マルチフォルム(Myxovirus multiforme)、ミクソウイルス・パロティティディス(Myxovirus parotitidis)、ナイロビヒツジ病ウイルス、ナイロウイ
ルス、ナニルナウイルス(Nanirnavirus)、ナリバ(Nariva)ウイルス、Ndumoウイルス、ニースリング(Neethling)ウイルス、ネルソンベイ(Nelson Bay)ウイルス、向
神経性ウイルス、新世界アレナウイルス、新生児肺臓炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニパウイルス、非細胞病原性ウイルス、ノーウォーク ウイルス、核多角体病ウイルス(NPV)、ニップルネック(nipple neck)ウイルス、オニョンニョンウイルス、
オケルボ(Ockelbo)ウイルス、腫瘍ウイルス、腫瘍ウイルス様粒子、オンコルナウイル
ス、オルビウイルス、オルフウイルス、オロポーシェウイルス、オルソヘパドナウイルス、オルトミクソウイル
ス、オルソポックスウイルス、オルトレオウイルス、オルンゴ、ヒツジパピローマウイルス、ヒツジカタル熱ウイルス、フクロウサルヘルペスウイルス、パリアムウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス・シルビラジ(Papillomavirus sylvilagi)、パポバウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス3型、パラインフルエンザウイル
ス4型、パラミクソウイルス、パラポックスウイルス、パラワクシニアウイルス、パルボウイルス、パルボウイルスB19、パルボウイルス群、ペスチウイルス、フレボウイルス、アザラシジステンパーウイルス、ピコドナウイルス、ピコルナウイルス、ブタサイトメガロウイルス-鳩痘ウイルス、ピリウイルス、ピクスナウイルス、マウス肺炎ウイルス、肺炎ウイルス、灰白髄炎ウイルス、ポリオウイルス、ポリドナウイルス、多角体病(polyhedral)ウイルス、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルス・ボビス(Polyomavirus bovis)、ポリオーマウイルス・セルコピテシ(Polyomavirus cercopitheci)、ポリオーマウイルス・ホミニス2、ポリオーマウイルス・マカサエ(Polyomavirus maccacae)1、ポリオーマウイルス・ムリス(Polyomavirus muris)1、ポリオーマウイルス・ムリス2、ポリオーマウイルス・パピオニス(Polyomavirus papionis)1
、ポリオーマウイルス・パピオニス2、ポリオーマウイルス・シルビラジ、ポンジン(Pongine)ヘルペスウイルス1、ブタ伝染性下痢ウイルス、ブタ赤血球凝集性脳脊髄炎ウイ
ルス、ブタパルボウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ブタC型ウイルス、ポックスウイルス、ポックスウイルス、ポックスウイルス・バリオラエ(poxvirus variolae)、プ
ロスペクトヒル(Prospect Hill)ウイルス、プロウイルス、偽牛痘ウイルス、仮性狂犬
病ウイルス、オウム痘ウイルス、ウズラ痘ウイルス、ウサギ線維腫ウイルス、ウサギ腎臓空胞化(kidney vaculolating)ウイルス、ウサギパピローマウイルス、狂犬病ウイルス
、アライグマパルボウイルス、アライグマ痘ウイルス、ラニケットウイルス、ラットサイトメガロウイルス、ラットパルボウイルス、ラットウイルス、ローシャーウイルス、組換えワクシニアウイルス、組換えウイルス、レオウイルス、レオウイルス1、レオウイルス2、レオウイルス3、爬虫類C型ウイルス、呼吸器感染症ウイルス、呼吸系発疹ウイルス、呼吸器ウイルス、細網内皮症ウイルス、ラブドウイルス、ラブドウイルス・カルピア(Rhabdovirus carpia)、ラジノウイルス、ライノウイルス、リジディオウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ライリー(Riley)ウイルス、牛疫ウイルス、RNA腫瘍ウイルス、
ロスリバーウイルス、ロタウイルス、麻疹(rougeole)ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、ルビウイルス、ロシア秋脳炎ウイルス、SA11シミアンウイルス、SA2ウイルス、サビアウイルス、サギヤマ(Sagiyama)ウイルス、サイミリ(Saimirine)ヘルペスウイルス1、唾液腺ウイルス、サシチョウバエ熱ウイルス群、サ
ンジンバ(Sandjimba)ウイルス、SARSウイルス、SDAV(唾液腺涙腺炎ウイルス
)、アザラシ痘ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ソウルウイルス、ヒツジ痘ウイルス、ショープ線維腫ウイルス、ショープ乳頭腫ウイルス、サルフォーミーウイルス、サルA型肝炎ウイルス、サルヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、サルパラインフルエンザウイルス、サルT細胞リンパ腫ウイルス、シミアンウイルス、シミアンウイルス40、シンプレックスウイルス、シンノンブルウイルス、シンドビスウイルス、痘瘡ウイルス、南米出血熱ウイルス、スズメ痘ウイルス、スプーマウイルス、リス線維腫ウイルス、リスザルレトロウイルス、SSV1ウイルス群、STLV(サルTリンパ球向性ウイルス)I型、STLV(サルTリンパ球向性ウイルス)II型、STLV(サルTリンパ球向性ウイルス)III型、口内炎丘疹ウイルス、下顎部(submaxillary)ウイルス、イノシシアルファヘルペスウイルス1、イノシシヘルペスウイルス2、スイポックスウイルス、沼地熱ウイルス、豚痘ウイルス、スイスマウス白血病ウイルス、TACウイルス、タカリベ複合(Tacaribe complex)ウイルス、タカリベウイルス、キツネザル痘スウイルス、テトラポックスウイルス、テンチレオウイルス、タイラー脳脊髄炎ウイルス、タイラーウイルス、トゴトウイルス、トッタパラヤン(Thottapalayam)ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイ
ルス、ティオマン(Tioman)ウイルス、トガウイルス、トロウイルス、腫瘍ウイルス、ツパイウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス、シチメンチョウ痘ウイルス、C型レトロウイルス、D型オンコウイルス、D型レトロウイルス群、潰瘍性疾患ラブドウイルス、ウナウイルス、ウークニエミウイルス群、ワクシニアウイルス、空胞ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ワリセロウイルス、天然痘(Varicola)ウイルス、天然痘メジャー(variola major)ウイルス、天然痘ウイルス、ヴァシアンギッシュ病(Vasin Gishu disease)ウイルス、VEEウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイ
ルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ベシクロウイルス、ビリュイスク(Vilyuisk)ウイルス、クサリヘビレトロウイルス、ウイルス性出血性敗血症ウイルス、ビスナマエディウイルス、ビスナウイルス、ハタネズミ痘ウイルス、VSV(水疱性口内炎ウイルス)、ウォーラルウイルス、ウォリゴウイルス、疣贅ウイルス、WEEウイルス、西ナイルウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、ワタロアウイルス、冬季嘔吐ウイルス、ウッドチャックB型肝炎ウイルス、ウーリーサル肉腫ウイルス、創傷腫瘍(wound tumor)ウイルス、WRSVウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、
ヤバウイルス、ヤタポックスウイルス、黄熱病ウイルス、およびヤグボグダノバク(Yug Bogdanovac)ウイルスが挙げられる。
【0143】
[00162]一部の実施態様において、ウイルス感染は、肝臓関連の疾患または障害を誘導
する。一部の実施態様において、ウイルス感染は、肝炎感染である。一部の実施態様において、ウイルスは、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、F型肝炎ウイルス、またはG型肝炎ウイルスである。一部の実施態様において、肝臓関連の疾患または障害を誘導するウイルス感染は、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、F型肝炎ウイルス、またはG型肝炎ウイルスによって引き起こされる。
【0144】
[00163]一部の実施態様において、肝臓傷害は、肝臓内のウイルスに対する免疫応答の
結果として起こる。一部の場合において、肝臓傷害は、ウイルスが肝臓以外の組織を標的化する全身の宿主感染の一部として起こる。一次標的化が肝臓ではない例示的なウイルスとしては、ヘルペスウイルス、例えばエプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)または単純疱疹ウイルス;パルボウイルス;アデノウイルス;インフルエンザウイルス;レンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV);および重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルスが挙げられる。一部の場合において、本明細書で説明されるウイルス感染は肝炎を引き起こす。
【0145】
[00164]一部の実施態様において、病原体は、細菌である。一部の実施態様において、
細菌感染は、肝臓関連の疾患または障害を誘導する。細菌の例としては、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリウム属種(例えば、M.ツベルクローシス(M. tuberculosis)、M.アビウム(M. avium)、
M.イントラセルラレ(M. intracellulare)、M.カンサシイ(M. kansasii)、M.ゴルドネ(M. gordonae))、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ストレプトコ
ッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、連鎖球菌属(ビリダンス群)、ストレプトコッカス・フェカーリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌属(嫌気性菌種)、肺炎連鎖球菌
(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター属種、腸球菌属種、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、コリネバクテリウム・ジフセリエ(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム属
種、エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシェラ
肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida
)、バクテロイド属種、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)
、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、トレポネーマ・ペルテニュ(Treponema perten
ue)、レプトスピラ属、およびアクチノマイセス・イスラエリー(Actinomyces israelli)が挙げられる。
【0146】
[00165]一部の実施態様において、病原体は、真菌である。一部の実施態様において、
真菌感染は、肝臓関連の疾患または障害を誘導する。真菌の例としては、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム
(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストマイセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が挙
げられる。他の感染性の生物(すなわち、原生生物)としては、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)が挙げられる。
【0147】
[00166]一部の実施態様において、病原体は、寄生虫である。一部の実施態様において
、寄生虫感染は、肝臓関連の疾患または障害を誘導する。寄生虫の例としては、肉質虫類(例えばエントアメーバ属)、鞭毛虫類(例えばジアルジア属、リーシュマニア属)、繊毛虫類(例えばバランチジウム属)、および胞子虫類(例えばプラスモジウム属、クリプトスポリジウム属)が挙げられる。
【0148】
[00167]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、欠損のある肝臓を再生するために利
用される。一部の場合において、誘導肝細胞は、肝臓傷害部位に導入される。一部のケースにおいて、誘導肝細胞は、細胞懸濁液として肝臓傷害部位に導入または移植される。他のケースにおいて、誘導肝細胞は、組織塊として肝臓傷害部位に導入または移植される。他の例において、誘導肝細胞は、欠損のある肝臓を再生するためにエクスビボで利用される。他の例において、誘導肝細胞は、肝臓傷害部位への移植の前に、エクスビボの肝臓生成のために利用される。
【0149】
[00168]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、宿主への傷害などの外的要因、例え
ば個体への傷害による、または外科手術による肝臓傷害を処置するために、医薬組成物などの組成物として調合される。
【0150】
[00169]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、肝臓関連の疾患または障害による肝
臓傷害を処置するために、医薬組成物などの組成物として調合される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、アラジール症候群、アルファ1抗トリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(例えば妊娠性急性脂肪肝、妊娠中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎A、B、C、ウィルソン病、またはそれらの組合せを処置するために、医薬組成物などの組成物として調合される。
【0151】
[00170]一部の実施態様において、誘導肝細胞を含む組成物は、追加の治療剤をさらに
含む。一部の実施態様において、追加の治療剤は、肝臓関連の疾患または障害の処置のための治療剤である。一部の実施態様において、追加の治療剤としては、これらに限定されないが、クルクミン、レスベラトロール、サリドマイド、コレスチラミン(クエストラン)、タクロリムス(PROGRAF)、ウルソジオール(アクティゴール)、インターフェロン、ループ利尿薬などの利尿薬、および肝臓移植が挙げられる。
【0152】
[00171]一部の実施態様において、誘導肝細胞を含む組成物は、肝臓を再生するために
、肝臓傷害部位で利用される。一部の実施態様において、誘導肝細胞を含む組成物は、細胞懸濁液として肝臓傷害部位に導入または移植される。一部の実施態様において、誘導肝細胞を含む組成物は、組織塊として肝臓傷害部位に導入または移植される。他の実施態様において、誘導肝細胞を含む組成物は、欠損のある肝臓を再生するためにエクスビボで利用される。他の実施態様において、誘導肝細胞を含む組成物は、肝臓傷害部位への移植の前に、エクスビボの肝臓生成のために利用される。
【0153】
[00172]単離された誘導肝細胞の投与様式としては、これらに限定されないが、全身静
脈注射および意図した活性部位への直接の注射(例えば、内視鏡的逆行性注射)が挙げられる。調製物は、あらゆる便利な経路、例えば、点滴またはボーラス注射によって投与してもよいし、他の生物活性薬剤と共に投与してもよい。一部の実施態様において、投与は、全身性の局所投与である。
【0154】
[00173]一部の実施態様において、誘導肝細胞を含む組成物は、ヒトなどの哺乳動物へ
の静脈内投与のための医薬組成物として調合される。一部の実施態様において、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、注射部位におけるあらゆる痛みを緩和するために局所麻酔剤も包含する。組成物を点滴で投与しようとする場合、組成物は、滅菌された医薬品グレードの水または塩類溶液を含有する点滴ボトルを用いて分配することができる。組成物が注射で投与される場合、滅菌注射用水または塩類溶液のアンプルを、投与前に成分が混合されるように提供することができる。
【0155】
[00174]一部の実施態様において、好適な医薬組成物は、治療有効量の誘導肝細胞およ
び医薬的に許容される担体または賦形剤を含む。このような担体としては、これらに限定されないが、塩類溶液、緩衝塩類溶液、デキストロース、水、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0156】
[00175]一部の実施態様において、本明細書で説明される誘導肝細胞は、細胞を特定の
組織に標的化するのに好適な送達系によって、標的化された部位(例えば、肝臓の欠損した部分)に送達される。例えば、細胞は、標的化された部位での細胞の遅延放出を可能にする運搬手段中に封入される。運搬手段は、特定の組織に特異的に標的化されるように改変される。標的化された送達系の表面は、様々な方法で改変される。リポソームの標的化送達系のケースにおいて、標的化するリガンドをリポソームの二分子層との安定な会合状態で維持するために、脂質基がリポソームの脂質二重層に取り込まれる。
【0157】
[00176]他の例において、コロイド分散系が使用される。コロイド分散系としては、高
分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および脂質ベースの系、例えば水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームなどが挙げられる。
【0158】
[00177]本明細書で説明される誘導肝細胞の投与は、任意選択で、(1)注射される細
胞の量を増加または減少させること;(2)注射の回数を変化させること;または(3)細胞の送達方法を変化させることによって個体に適合させてもよい。
【0159】
[00178]誘導肝細胞調製物は、レシピエントにおける細胞の生着を促進するのに有効な
量で使用される。医師の裁量で、投与は、最適な効能および薬理学的な投与が達成されるように調整される。
【0160】
治療用タンパク質を生産するための誘導肝細胞
[00179]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、治療用タンパク質(例えばホルモン)
、サイトカイン、コレステロール、炭水化物、胆汁、またはそれらの組合せを生産するた
めに利用される。一部の場合において、誘導肝細胞は、治療用タンパク質を生産するために利用される。一部の場合において、治療用タンパク質としては、全長タンパク質、それらのドメインもしくはフラグメント、またはペプチドが挙げられる。一部の場合において、タンパク質、それらのドメインもしくはフラグメント、またはペプチドは、天然および/または非天然アミノ酸残基を含有する。一部のケースにおいて、治療用タンパク質、それらのフラグメント、またはペプチドとしては、これらに限定されないが、主要な血漿タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、可溶性血漿フィブロネクチン、α-フェトプロテイン、C反応性タンパク質、および数々のグロブリン;血流遮断および線維素溶解に関与するタンパク質、例えば凝血カスケードに関与する凝血因子、α2-マクログロブリン、α1-アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、プロテインS、プロテインC、プラスミノゲン、α2-抗プラスミン、および補体成分3;担体タンパク質、例えばアルブミン、セルロプラスミン、トランスコルチン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、IGF結合タンパク質、主要な尿タンパク質、レチノール結合タンパク質、性ホルモン結合グロブリン、トランスチレチン、トランスフェリン、およびビタミンD結合タンパク質;ホルモン、例えばインスリン様増殖因子1、トロンボポエチン、ヘプシジン、およびベータトロフィン;プロホルモン、例えばアンギオテンシノゲン;ならびにアポリポタンパク質が挙げられる。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、ホルモンまたはそれらのフラグメントを生産するために利用される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、インスリン様増殖因子1、トロンボポエチン、ヘプシジン、ベータトロフィン、アンギオテンシノゲン、またはそれらのフラグメントを生産するために利用される。
【0161】
[00180]一部の場合において、誘導肝細胞は、サイトカインを生産するために利用され
る。本明細書の他所で説明されるように、サイトカインとしては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子が挙げられる。一部の実施態様において、サイトカインは、炎症促進性サイトカインである。一部の実施態様において、サイトカインとしては、ケモカインのC-X-CおよびC-Cサブファミリー:CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL4、CCL5(RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9(または CCL10)、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、および CXCL17が挙げられる。一部の実施態様において、サイトカインとしては、増殖関連(GRO)-アルファ、GRO-ベータ、GRO-ガンマ、上皮好中球活性化ペプチド-78(ENA-78)、RANTES、TNF-アルファ、IL-1β、IL-6、IL-8、MCP-1、M-CSF、IFN-α、IFN-β、およびサイトカイン誘導好中球化学誘引物質(CINC)が挙げられる。一部の場合において、誘導肝細胞は、本明細書で説明される1つまたはそれより多くのサイトカインを生産するために利用される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、これらに限定されないが、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL4、CCL5(RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9(またはCCL10)、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、増殖関連(GRO)-アルファ、GRO-ベータ、GRO-ガンマ、上皮好中球活性化ペプチド-78(ENA-78)、RANTES、TNF-アルファ、IL-1β、IL-6、IL-8、MCP-1、M-CSF、IFN-α、IFN-β、およびサイトカイン誘導好
中球化学誘引物質(CINC)などのサイトカインを生産するために利用される。
【0162】
[00181]一部の場合において、誘導肝細胞は、コレステロールの生産またはプロセシン
グのために利用される。本明細書で使用される場合、用語「コレステロール」は、コレステロール、その立体異性体(例えばnat-コレステロール、またはent-コレステロール)、天然に存在するコレステロール、遺伝子改変されたコレステロール、またはそれらのフラグメントを包含する。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、nat-コレステロールまたはそれらのフラグメントの生産またはプロセシングのために利用される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、ent-コレステロールまたはそれらのフラグメントの生産またはプロセシングのために利用される。
【0163】
[00182]一部の場合において、誘導肝細胞は、炭水化物の生産またはプロセシングのた
めに利用される。一部の場合において、誘導肝細胞は、炭水化物の形成、分解または相互変換、糖新生、グリコーゲン分解、糖生成、上記で開示されたようなコレステロール合成を包含する脂質代謝、および脂質生成のために利用される。
【0164】
[00183]一部の場合において、誘導肝細胞は、胆汁を生産するために利用される。
[00184]本明細書で使用される場合、アミノ酸残基は、アミノ基とカルボキシル基の両
方を含有する分子を指す場合がある。好適なアミノ酸としては、これらに限定されないが、天然に存在するアミノ酸のD-およびL-異性体の両方、加えて他の代謝経路により調製された天然に存在しないアミノ酸が挙げられる。アミノ酸という用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、α-アミノ酸、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、およびアミノ酸類似体を包含する。
【0165】
[00185]用語「α-アミノ酸」は、α-炭素と指定された炭素に結合した、アミノ基と
カルボキシル基の両方を含有する分子を指す場合がある。
[00186]用語「β-アミノ酸」は、アミノ基とカルボキシル基の両方をβ配置で含有す
る分子を指す場合がある。
【0166】
[00187]「天然に存在するアミノ酸」は、天然に合成されたペプチドに一般的に見出さ
れ、1文字の略語A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVで識別される20種のアミノ酸のいずれか1つを指す場合がある。
【0167】
[00188]用語「アミノ酸類似体」は、アミノ酸に構造的に類似しており、ペプチドミメ
ティクスの大員環の形成中にアミノ酸を置換することができる分子を指す。アミノ酸類似体としては、これらに限定されないが、β-アミノ酸、およびアミノまたはカルボキシ基が、類似した反応性を有する基で置換されている(例えば、第一アミンが第二または第三アミンで置換されている、またはカルボキシ基がエステルで置換されている)アミノ酸が挙げられる。
【0168】
[00189]用語「非天然アミノ酸」は、天然に合成されたペプチドに一般的に見出され、
1文字の略語A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、YおよびVで識別される20種のアミノ酸の1つではないアミノ酸を指す。非天然アミノ酸としては、これらに限定されないが、p-アセチルフェニルアラニン、m-アセチルフェニルアラニン、p-(3-オキソブタノイル)-l-フェニルアラニン、p-(2-アミノ-3-ヒドロキシエチル)フェニルアラニン、p-イソプロピルチオカルボニル-フェニルアラニン、p-エチルチオカルボニル-フェニルアラニン、o-プロパルギルオキシフェニルアラニン、p-アジドフェニルアラニン、フェニルセレニジルアラニン、p-ベンゾイル-l-フェニルアラニン、またはp-ボロノフェニルアラニンが挙げられる。
【0169】
肝再生のための誘導肝細胞
[00190]他の実施態様において、誘導肝細胞は、肝再生のために利用される。他の実施態
様において、誘導肝細胞は、エクスビボにおける肝再生のために利用される。一部のケースにおいて、エクスビボにおける肝再生は、エクスビボの潅流システムを利用する。一部の場合において、エクスビボの潅流システムとしては、エクスビボの潅流バイオリアクターシステム(例えば3D潅流バイオリアクターシステム)が挙げられる。一部のケースにおいて、エクスビボにおける肝再生は、バイオプリンティングシステムを利用する。一部の場合において、バイオプリンティングシステムは、3次元(3D)バイオプリンティングシステムである。一部のケースにおいて、エクスビボにおける肝再生は、3Dバイオプリンティングシステムを利用する。一部の実施態様において、3Dバイオプリンティングシステムとしては、OrganovoのNovoGEn MMXバイオプリンター、EnvisionTECのBioPlotter(登録商標)、GeSimsのBioScaffolder 2.1、またはregenHuのBioFactory(登録商標)が挙げられる。一部の実施態様において、3Dバイオプリンティングシステムとしては、OxSyBioによる3Dプリンティング技術が挙げられる。
【0170】
[00191]一部の実施態様において、3Dバイオプリンティングシステムとしては、US
8691974、US8691274、US20140052285、US20140012407、US20140099709、US20140093932、US20130304233、US20130004469、US20130017564、US20130164339、US20120089238、US20110250688、US20090208466、EP2679669、WO2014039427、WO2013181375、WO2013040087、およびWO2012122105に記載されたシステムが挙げられる。
【0171】
[00192]一部の実施態様において、誘導肝細胞は、流システム(例えばエクスビボの潅
流システム)を使用する肝再生のために利用される。一部の実施態様において、誘導肝細胞は、エクスビボの潅流バイオリアクターシステム(例えば3D潅流バイオリアクターシステム)を使用する肝再生のために利用される。一部の場合において、誘導肝細胞は、バイオプリンティングシステム(例えば3Dバイオプリンティングシステム)を使用する肝再生のために利用される。一部の場合において、誘導肝細胞は、OrganovoのNovoGEn MMXバイオプリンター、EnvisionTECのBioPlotter(登録商標)、GeSimsのBioScaffolder 2.1、または regenHuのBioFactory(登録商標)を使用する肝再生のために利用される。一部の場合において、誘導肝細胞は、OxSyBioによる3Dプリンティング技術を使用する肝再生のために利用される。
【0172】
[00193]一部のケースにおいて、誘導肝細胞は、US8691974、US86912
74、US20140052285、US20140012407、US20140099709、US20140093932、US20130304233、US20130004469、US20130017564、US20130164339、US20120089238、US20110250688、US20090208466、EP2679669、WO2014039427、WO2013181375、WO2013040087、またはWO2012122105に記載された3Dバイオプリンティングシステムを使用する肝再生のために利用される。
【0173】
[00194]一部の場合において、誘導肝細胞は、上述した方法の1つまたはそれより多く
により組織足場を生成するために利用される。一部の場合において、組織足場は、2次元(2D)の組織足場または3次元(3D)の組織足場である。一部の場合において、組織
足場は、3D組織足場である。一部の場合において、誘導肝細胞は、3D組織足場の生成のために利用される。一部の実施態様において、3D足場は、1つまたはそれより多くの細胞外マトリックス要素、例えば、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ポリリシン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、ヒアルロナンヒドロゲル、絹フィブロイン、キトサンまたは上記のもののいずれかの複合材料で予めコーティングされる。一部の実施態様において、細胞は、3D足場に、2D培養の場合より高い密度で植え付けられ、例えば3倍高い、または5倍高い、または10倍高い密度で植え付けられる。一部の実施態様において、細胞は、細胞生存因子、例えばROCK Rhoキナーゼの阻害剤の存在下で植え付けられる。
【0174】
[00195]一部の形態において、本明細書に記載の組織を生成するのに、生体適合性の基
板が使用され、例えば、細胞は、3次元の生体適合性の基板上で培養培地のもとで培養される。一部の実施態様において、生体適合性の基板は、ポリマー製の基板を含む。一部の実施態様において、生体適合性の基板は、生分解性である。一部の実施態様において、ポリマー製の基板は、ポリ(カプロラクトン)(PCL)を含む。一部の実施態様において、ポリマー製の基板は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D-乳酸(PDLA)、ポリグリコリド、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリジオキサノン、ポリグルコネート、ポリ乳酸-ポリエチレンオキシドコポリマー、変性セルロース、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシプロピオン酸(polyhydroxpriopionic acid)、ポリホスホエステル、ポリ(アル
ファ-ヒドロキシ酸)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、分解性ウレタン、脂肪族ポリエステルポリアクリレート、ポリメタクリレート、アシル置換酢酸セルロース、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリビニルイミダゾール、クロロスルホン化ポリオレフィン(polyolifin)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、テフロンRTM、ナイロンシリコン、ポリ(スチレン-ブロック-ブタジエン)、ポリノルボルネン、ヒドロゲル、金属合金およびオリゴ(ε-カプロラクトン)ジオールからなる群より選択される。一部の実施態様において、生体適合性の基板は、合成ポリマーを含む。本発明の一部の実施態様によれば、生体適合性の基板は、天然のポリマーを含む。一部の実施態様において、生分解性の基板は、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリグリコール酸、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸)、腸線縫合糸、綿、セルロース、ゼラチン、デキストラン、アルギネート、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、ヒアルロン酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ4ヒドロキシ酪酸(P4HB)およびポリグルコン酸(PGA)からなる群より選択される。
【0175】
遺伝子治療のための源としての誘導肝細胞
[00196]追加の実施態様において、誘導肝細胞は、遺伝子治療のための源として利用され
る。一部の場合において、遺伝子治療は、エクスビボにおける遺伝子治療である。一部の場合において、誘導肝細胞は、肝臓関連の疾患または障害の遺伝子治療処置のための治療剤として利用される。一部の場合において、遺伝子治療処置は、誘導肝細胞ベースの遺伝子治療である。一部の場合において、誘導肝細胞ベースの遺伝子治療は、例えば欠損したまたは失われた遺伝子産物を置き換えること、同種移植片拒絶反応を予防すること、宿主の肝臓を生着させることなどに利用され、異種の肝細胞を生成すること、または患者特異的な肝臓の処置または再生に適合させることに役立つ。
【0176】
[00197]本明細書の他所で説明されるように、肝臓関連の疾患または障害としては、ア
ラジール症候群、アルファ1抗トリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(例えば妊娠性急性脂肪肝、妊娠
中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎A、B、C、およびウィルソン病が挙げられる。
【0177】
[00198]一部の場合において、誘導肝細胞は、アラジール症候群、アルファ1抗トリプ
シン欠乏症、自己免疫肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖、硬変症、嚢胞性肝疾患、アルコール関連の肝疾患および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を包含する脂肪性肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝臓がん、妊娠中の肝疾患(例えば妊娠性急性脂肪肝、妊娠中の肝内胆汁うっ滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝臓検査値の上昇、低い血小板数))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、糖原病1型、チロシン血症、ウイルス性肝炎A、B、C、ウィルソン病、またはそれらの組合せの遺伝子治療処置のための治療剤として利用される。
【0178】
[00199]一部の場合において、遺伝子は、ウイルス的または非ウイルス的な手段を介し
て誘導肝細胞に移行される。一部の場合において、ウイルス的手段としては、ベクター、例えばマウス白血病レトロウイルスおよびレンチウイルス、アデノ関連ウイルス、T抗原欠失SV40ウイルス、神経向性ウイルス、例えば単純疱疹ウイルス、エピソームウイルスおよびハイブリッドウイルス、例えばアデノ関連ウイルスからのベクターが挙げられる。一部の場合において、非ウイルス的な手段としては、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、無機ナノ粒子、またはハイブリッドベクター、例えばリポソームとHIVまたはインフルエンザウイルスなどの不活性化ウイルスとの組合せであるビロソームが挙げられる。一部の場合において、追加の非ウイルス的な手段としては、裸のDNAの注射、エレクトロポレーション、ジーンガン、ソノポレーション、またはマグネトフェクションが挙げられる。ウイルス的または非ウイルス的な手段による遺伝子移行方法は当業界において周知であり、例えば、Guhaら、「Hepatocyte-based gene therapy」、J Hepatobillary Pancreat Surg. 8(1):51~57(2001)で説明されている。
【0179】
[00200]遺伝子は、本明細書で使用される場合、一緒に関連された少なくとも2つのヌ
クレオチドを含有していてもよい。一部の場合において、本明細書で説明される核酸は、ホスホジエステル結合、天然の核酸、または非天然の核酸を含有していてもよい。天然の核酸としては、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)の両方が挙げられ、1文字の略語A、T、G、C、およびUで識別される。例示的な非天然の核酸としては、これらに限定されないが、ジアミノプリン、イソグアニン、イソシトシン、2-アミノ-6-(2-チエニル)プリン、ピロール-2-カルバルデヒド、2,6-ビス(エチルチオメチル)ピリジン、ピリジン-2,6-ジカルボキシアミド、4-メチルベンズイミダゾール、2,3-ジフルオロトルエン、d5SICS、およびdNaMが挙げられる。
【0180】
診断方法
[00201]上記で説明されたバイオマーカーの発現または存在を決定するための方法は当業
界において周知であり、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学、ウェスタンブロット、免疫沈降、磁気ビーズ選択、およびこれらの細胞表面マーカーのいずれかを発現する細胞の定量化によって測定することができる。バイオマーカーであるRNAの発現レベルは、RT-PCR、Qt-PCR、マイクロアレイ、ノーザンブロット、または他の類似の技術によって測定することができる。
【0181】
[00202]「発現を検出すること」または「発現レベル」を検出することは、生体サンプ
ル中のバイオマーカータンパク質または遺伝子の発現レベルまたは存在を決定することと意図される。したがって、「発現を検出すること」は、バイオマーカーが、発現されない
、検出可能に発現されない、低いレベルで発現される、正常なレベルで発現される、または過剰発現されることが決定されるような例を包含する。
【0182】
[00203]一部の実施態様において、本明細書で説明されるバイオマーカーの発現または
存在は、例えば、免疫組織化学技術または核酸ベースの技術、例えばインサイチュハイブリダイゼーションおよびRT-PCRを使用して、核酸レベルで決定される。一実施態様において、1つまたはそれより多くのバイオマーカーの発現または存在は、核酸増幅のための手段、核酸配列決定のための手段、核酸マイクロアレイ(DNAおよびRNA)を利用する手段、または特異的に標識されたプローブを使用する」インサイチュハイブリダイゼーションのための手段によって行われる。
【0183】
[00204]他の実施態様において、バイオマーカーの発現または存在の決定は、ゲル電気
泳動を介して行われる。一実施態様において、決定は、膜への移行および特異的なプローブでのハイブリダイゼーションを介して行われる。
【0184】
[00205]他の実施態様において、バイオマーカーの発現または存在の決定は、画像診断
技術によって行われる。
[00206]さらに他の実施態様において、バイオマーカーの発現または存在の決定は、検
出可能な固体基板によって行われる。一実施態様において、検出可能な固体基板は、抗体で官能化した常磁性のナノ粒子である。
【0185】
[00207]一部の実施態様において、バイオマーカーの発現または存在は、RNA(例え
ばmRNA)レベルにおいてである。一部の実施態様において、RNA(例えばmRNA)レベルを検出する技術としては、これらに限定されないが、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析およびプローブアレイが挙げられる。
【0186】
[00208]mRNAレベルを検出するための方法の1つは、単離されたmRNAを、検出
される遺伝子によってコードされたmRNAにハイブリダイズする核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、全長cDNA、またはそれらの部分、例えば長さが少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであり、本明細書で説明されるバイオマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAにストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分な部分を含む。mRNAとプローブとのハイブリダイゼーションは、バイオマーカーまたは他の目的の標的タンパク質が発現されていることを表す。
【0187】
[00209]一実施態様において、mRNAは、固体表面に固定され、例えばアガロースゲ
ル上に単離されたmRNAを泳動させることによってプローブと接触させ、ゲルからニトロセルロースなどの膜にmRNAを移行させる。代替の実施態様において、プローブは、固体表面上に固定され、mRNAは、例えば遺伝子チップアレイでプローブと接触させる。当業者は、目的のバイオマーカーまたは他のタンパク質をコードするmRNAレベルの検出で使用するために、公知のmRNA検出方法を容易に適応させる。
【0188】
[00210]サンプル中の目的のmRNAのレベルを決定するための代替方法は、例えば、
RT-PCR(例えば、米国特許第4,683,202号を参照)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189 193)、自家持続配列複製法(Guatelliら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874~1878)、転写増幅系(Kwohら
(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173~1177)、Q-ベータレプリカーゼ(Lizardiら(1988)Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(米国特許第5,854,033号)または他のあらゆる核酸増幅方法による核酸増幅のプロセス、それに続
いて当業者周知の技術を使用する増幅された分子の検出を含む。これらの検出スキームは
、このような分子が極めて少ない数で存在する場合、核酸分子の検出に特に有用である。一部の実施態様において、バイオマーカーの発現は、定量的な蛍光原性RT-PCR(すなわち、TaqMan0システム)によって評価される。
【0189】
[00211]目的のRNAの発現レベルは、膜ブロッティング(例えば例えばノーザン、ド
ットなどのハイブリダイゼーション分析で使用されるもの)、またはマイクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズもしくは繊維(または結合した核酸を含むあらゆる固体支持体)を使用してモニターされる。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,770,722号、5,874,219号、5,744,305号、5,677,195号および5,445,934を参照されたい。また発現の検出は、溶液中での核酸プローブの使用も含む。
【0190】
[00212]一部の実施態様において、1つまたはそれより多くのバイオマーカーの発現ま
たは存在を決定するために、マイクロアレイが使用される。核酸マイクロアレイは、膨大な数の遺伝子の発現レベルを同時に測定する1つの方法を提供する。各アレイは、固体支持体に付着させた捕獲プローブの再現可能なパターンからなる。標識されたRNAまたはDNAは、アレイ上の相補的プローブにハイブリダイズし、次いでアレイ上の各プローブごとのレーザースキャニングによって検出される。ハイブリダイゼーション強度が決定され、相対的な遺伝子発現レベルを表す定量的な値に変換される。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,040,138号、5,800,992号および6,020,135号、6,033,860号、ならびに6,344,316号を参照されたい。サンプル中の多数のRNAに関する遺伝子発現プロファイルを決定するためには、高密度のオリゴヌクレオチドアレイが特に有用である。
【0191】
[00213]機械的な合成方法を使用してこれらのアレイを合成するための技術は、例えば
、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,384,261号で説明されている。一部の実施態様において、アレイは、実質的にあらゆる形状の表面上に製作され、または多数の表面上にも製作される。一部の実施態様において、アレイは、平面のアレイ表面である。一部の実施態様において、アレイは、ビーズ、ゲル、ポリマー製の表面、繊維、例えば光ファイバー、ガラスまたは他のあらゆる適切な基板上にペプチドまたは核酸を包含する。それぞれがあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,770,358号、5,789,162号、5,708,153号、6,040,193号および5,800,992号を参照されたい。一部の実施態様において、アレイは、診断または全てを包括するデバイスの他の操作を可能にするような方式でパッケージ化されている。
【0192】
[00214]一部の実施態様において、本明細書で説明されるバイオマーカーの発現または
存在は、例えば特異的なバイオマーカータンパク質に向けられた抗体を使用して、タンパク質レベルで決定される。これらの抗体は、ウェスタンブロット、ELISA、マルチプレクシング技術、免疫沈降、または免疫組織化学技術などの様々な方法で使用される。一部の実施態様において、バイオマーカーの検出は、ELISAによって達成される。一部の実施態様において、バイオマーカーの検出は、電気化学発光(ECL)電気化学発光(ECL)によって達成される。
【0193】
[00215]生体サンプル中のバイオマーカーを特異的に同定し定量するためのあらゆる手
段が予期される。したがって、一部の実施態様において、生体サンプル中の目的のバイオマーカータンパク質の発現レベルは、そのバイオマーカータンパク質と特異的に相互作用することが可能な結合タンパク質またはそれらの生物学的に活性なバリアントによって検出される。一部の実施態様において、標識された抗体、それらの結合部分、または他の結合パートナーが使用される。「標識」という言葉は、本明細書において使用される場合、
「標識された」抗体が生成されるように抗体に直接的または間接的にコンジュゲートしている検出可能な化合物または組成物を指す。一部の実施態様において、標識は、それ自身検出可能であるか(例えば、放射線同位体標識または蛍光標識)、または酵素標識のケースにおいて、基質化合物または組成物の検出可能な化学的変更を触媒する。
【0194】
[00216]バイオマーカータンパク質を検出するための抗体は、元来、モノクローナルま
たはポリクローナルのいずれかであるか、または合成的に、または組換え生産される。複合体化したタンパク質の量、例えば、結合タンパク質と会合するバイオマーカータンパク質、例えばバイオマーカータンパク質に特異的に結合する抗体の量が、当業者公知の標準的なタンパク質検出手法を使用して決定される。免疫学的アッセイの設計、理論およびプロトコールの詳細な総論は、当業界における多数の教本で見出される(例えば、Ausubel
ら編(1995)Current Protocols in Molecular Biology)(Greene Publishing およびWiley-Interscience、NY));Coliganら編(1994)Current Protocols in Immunology(John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨーク)を参照されたい)。
【0195】
[00217]抗体を標識するのに使用されるマーカーの選択は、適用に応じて様々であると
予想される。しかしながら、マーカーの選択は、当業者であれば容易に決定することができる。これらの標識された抗体は、いずれかの目的のバイオマーカーまたはタンパク質の存在を検出するためのイムノアッセイ、加えて組織学的な適用で使用される。標識された抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルのいずれかである。さらに、目的のタンパク質の検出で使用するための抗体は、本明細書の他所で説明されるような放射性原子、酵素、色素生産または蛍光性成分、または比色タグで標識される。タグ付け標識の選択はまた、望ましい検出限界にも依存すると予想される。酵素アッセイ(ELISA)は、典型的には、酵素タグを有する複合体と酵素基質との相互作用によって形成された色付きの生成物の検出を可能にする。検出可能な標識として役立つ放射性核種としては、例えば、1-131、1-123、1-125、Y-90、Re-188、Re-186、At-211、Cu-67、Bi-212、およびPd-109が挙げられる。検出可能な標識として役立つ酵素の例としては、これらに限定されないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼが挙げられる。色素生産成分としては、これらに限定されないが、フルオレセインおよびローダミンが挙げられる。抗体は、当業界において公知の方法によってこれらの標識にコンジュゲートされる。例えば、酵素および色素生産分子は、カップリング剤、例えばジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミドなどによって、抗体にコンジュゲートされる。代替として、コンジュゲーションは、リガンド-受容体対を介して起こる。好適なリガンド-受容体対の例は、ビオチン-アビジンまたはビオチン-ストレプトアビジン、および抗体-抗原である。
【0196】
[00218]ある特定の実施態様において、生体サンプル中の目的の1つまたはそれより多
くのバイオマーカーまたは他のタンパク質の発現または存在は、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合免疫検査法(ELISA)、競合結合酵素結合免疫検査法、ドットブロット(例えば、Promega Protocols and Applications Guide、プロメガ社(Promega Corporation)(1991)を参照)、ウェスタンブロット(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning, A Laboratory Manual、3巻、18章(Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニ
ューヨーク州プレインビューを参照)、クロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、または当業界において公知の他のアッセイによって決定される。したがって、検出アッセイは、これらに限定されないが、免疫ブロッティング、免疫拡散、免疫電気泳動法、または免疫沈降などの工程を含む。
【0197】
キット/製品
[00219]ある特定の実施態様において、本明細書で説明される1つまたはそれより多くの
方法および組成物と共に使用するためのキットおよび製品が本明細書で開示される。このようなキットは、例えばバイアル、チューブなどの1つまたはそれより多くの容器を受け入れるように区分けされている、キャリアー、包装、または容器を包含し、容器のそれぞれは、本明細書で説明される方法で使用される別々の要素の1つを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。一実施態様において、容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成される。
【0198】
[00220]本明細書において提供される製品は、包装材料を含有する。医薬品の包装材料
の例としては、これらに限定されないが、ブリスターパック、ボトル、チューブ、バッグ、容器、ボトル、ならびに選択された調合物および意図した使用様式に好適なあらゆる包装材料が挙げられる。
【0199】
[00221]例えば、容器は、hTS細胞を、任意選択で本明細書で開示されるような組成
物形態で包含する。このようなキットは、任意選択で、識別のための記載もしくはラベル、または本明細書で説明される方法におけるその使用に関する説明書を包含する。
【0200】
[00222]キットは、典型的には、内容物を列挙したラベルおよび/または使用説明書、
ならびに使用説明書を含む添付文書を包含する。典型的には、説明書のセットも包含されると予想される。
【0201】
[00223]一部の実施態様において、ラベルは、容器上にあるか、または容器と関連付け
られている。一実施態様において、ラベルを形成する文字、数値または他の記号が、容器それ自身に付着、成形またはエッチングされている場合、ラベルは容器上にある。同様に容器を保持する貯蔵器またはキャリアー内にラベルが、例えば添付文書として存在する場合、ラベルは容器と関連付けられている。一実施態様において、ラベルは、内容物が具体的な治療的用途に使用されるべきものであることを示すために使用される。ラベルはまた、内容物を、例えば本明細書で説明される方法で使用するための指示も表す。
【実施例0202】
[00224]これらの実施例は、単に例示的な目的のために提供され、本明細書で提供され
る特許請求の範囲を限定しないものとする。
実施例1
細胞培養および分化
[00225]未分化のhTS細胞を、10%(v/v)ウシ胎児血清(SAFCバイオサイエ
ンス(SAFC Biosciences))が補充されたα-MEM(ギブコ(Gibco))中で維持した
。2~3日ごとに、培養物を1:3~1:6の分割比で手動で継代した。10%FBS、1mMの2-メルカプトエタノール、10mMのニコチンアミド、および10ng/mlのbFGFを含有する馴化α-MEM培地によって、37℃、5%CO2のインキュベーター中で8時間、DEを分化させた。肝細胞の分化のために、培養された培地に、デキサメタゾン(0.1μM、シグマ(Sigma))および組換えヒトオンコスタチンM(10n
g/ml、エクセル-バイオメディカル社(Excel-Biomedical Inc.))を添加し、追加
の4日または6日間インキュベートした。
【0203】
[00226]研究は、ヒト対象研究に関する施設内倫理審査委員会および倫理委員会、高雄
医学大学病院によって承認された。インフォームドコンセントと共にhTS細胞を得た。
プラスミド
[00227]MiR-124a前駆体および抗miR-124aを、システムバイオサイエン
ス(System Biosciences)から購入した。簡単に言えば、miR-124a前駆体(60pmol)または抗miR-124a(60pmol)を、12ウェルの培養皿中で、TransIT-LT1トランスフェクション試薬(ミルス(Mirus)、ウィスコンシン州
マディソン)を使用してhTS細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの36時間後にmiR-124aを定量するために、全RNAを使用した。PI3K(SASI_Hs01_00233971およびSASI_Hs01_00127787)、AKT1(SASI_Hs01_00205545)、およびAKT2(SASI_Hs01_00035055)を標的化する短鎖干渉RNA(siRNA)を、シグマから購入した。CREB1(TRCN0000007310、TRCN0000226467およびTRCN0000226468)、SMAD4(TRCN0000010321、TRCN0000010323およびTRCN0000040032)、AKT3(TRCN0000001615およびTRCN0000001616)、OCT4(TRCN0000004879およびTRCN0000004882)、CDX2(TRCN0000013683およびTRCN0000013686)、および対照shRNA(shGFP;TRCN0000072178、TRCN0000072179およびTRCN0000072183)を標的化する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を、ナショナルRNAiコアプラットフォーム(National RNAi Core platform)、中央研究院、台湾から購入
した。2μgのsiRNAまたはshRNAに加えて4μlのトランスフェクション試薬を用いてトランスフェクションを実行した。
【0204】
ウェスタンブロットおよび免疫沈降(IP)
[00228]免疫ブロッティングアッセイのために、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害
剤(ロシュ(Roche))が補充されたRIPA溶解溶液(ミリポア(Millipore)、マサチューセッツ州ビレリカ)に細胞を回収した。ポリアクリルアミドゲル上で30μgの溶解産物を電気泳動した後、PDVF膜上へのエレクトロブロッティング(ミリポア)を実行した。PBS中の5%無脂肪乳によって室温で(1時間)ブロックした後、一次抗体を使用することによって標的タンパク質を検出した。全ての膜を化学発光物質(ミリポア)と共にインキュベートし、撮像をChemiDoc XRSシステム(バイオ-ラッド(Bio-RAD))によって捕獲した。表1に使用された抗体を列挙した。AlphaEaseF
C(バージョン4.0.0)システムによってデータを分析した。IPアッセイのために、bFGFで処理したhTS細胞の細胞溶解産物を収集した。プロテインG-アガロース(ミリポア)と30分インキュベートすることによって、総タンパク質(100μg)を、表1に列挙された特異的な一次抗体で一晩処理した。プロテインG-アガロースビーズで(2時間)処理した後、サンプルをRIPA溶解緩衝液(ミリポア)で3回洗浄し、その後、タンパク質ローディング色素を添加し、5分沸騰させた。8%SDS-PAGEによってサンプルを分離し、免疫ブロッティング分析に供した。
【0205】
mRNA、miRNA、およびクロマチン免疫沈降(CHiP)-qPCRアッセイ
[00229]mRNA発現のために、3連または5連のサンプルで、DNAアーゼIによる
オンカラムでの消化(キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア)と共にTRIZOL試薬(インビトロジェン(Invitrogen))を使用してhTS細胞からRNAを単離した。iScript cDNA合成キット(バイオ-ラッド)を用いた逆転写のために、全RNA(500ng)を使用した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を、反応1回当たりcDNAの40分の1と400nMのフォワードおよびリバースプライマーを使用して2連で行った。比較リアルタイムPCRを、Power SYBR(登録商標)マスターミックス(アプライドバイオシステムズ(Applied BioSystems))を7500リアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズ)と共に使用して少なくとも3連で行った。全ての遺伝子をGAPDH発現に正規化し、ΔΔCt方法を使用して未分化のhTS細胞の発現に正規化した。表2に、この研究で使用されたプライマー配列を例示する。
【0206】
[00230]miRNA分析のために、25ngの全RNAを、TaqManマイクロRN
A逆転写キット(アプライドバイオシステムズ)を使用して逆転写した。qPCRを、T
aqManユニバーサルPCRマスターミックス(アプライドバイオシステムズ)を非テンプレート対照を包含する7500リアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズ)と共に使用して、miR-124aの特異的なプライマーまたはRNU6B(アプライドバイオシステムズ)を使用して少なくとも3連で行った。U6 snRNA(RNU6B;アプライドバイオシステムズ)を、内因性対照として利用した。
【0207】
[00231]ChIPアッセイのために、誘導中における指定された時間のhTS細胞サン
プルを最終濃度1%のホルムアルデヒドで固定した。室温で(10分)インキュベートした後、グリシン(125mM)を添加することによって反応を止めた。ChIPアッセイキット(アップステートバイオテクノロジー(Upstate Biotechnology))に付随するプ
ロトコールを使用してChIPアッセイを実行した。十分に洗浄した後、ChIP処理したDNAをビーズから溶出させ、qPCRによって分析した。
【0208】
ルシフェラーゼレポーターアッセイ
[00232]ルシフェラーゼ-3’UTRレポータープラスミドを調製するために、hTS細
胞のゲノムDNA抽出物からの3’UTRのフラグメントを増幅した。3’UTRのPCRフラグメントを、PsiIおよびMfeI(サーモサイエンティフィック、イリノイ州ロックフォード)を使用することによって、pGL4.51ベクター(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)のルシフェラーゼ遺伝子の下流にクローニングした。3’UTRレポーターコンストラクトのためのプライマーを、以下に列挙した:CDX2の3’UTR領域用:フォワード、5’-aaattataagctgtttgggttgttggtct-3’およびリバース、5’-aaacaattgcccccataatttctgactgc-3;SMAD4の3’UTR領域1用:フォワード、5’-aaattataactcccaaagtgctgggatta-3’およびリバース、5’-aaacaattgctgcactgttcacaggagga-3;SMAD4の3’UTR領域2用:フォワード、5’-aaattataacagttgtcccagtgctgcta-3’およびリバース、5’-aaacaattgatgacttgcccaaaggtcac-3;GSK3βの3’UTR領域用:フォワード、5’-aaattataacccacaactggggtaaaaga-3’およびリバース、5’-aaacaattgctgtggaaggggcaaagata-3。
【0209】
[00233]デュアルルシフェラーゼアッセイのために、ホタルルシフェラーゼレポーター
(500ng)またはpGL4.74で共にトランスフェクトされた3’UTRを全く含まない空のベクターおよびウミシイタケルシフェラーゼプラスミド(500ng、プロメガ)、ならびに非特異的対照であるmiRNA(30pmol)またはmiR-124a前駆体(30pmol;システムバイオサイエンス、カリフォルニア州マウンテンビュー)を、TransIT(登録商標)-LT1トランスフェクション試薬(ミルスバイオ社(Mirus Bio LLC)、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、hTS細胞に共にトラ
ンスフェクトした(各ウェル中1.5×104個の細胞)。トランスフェクション(36時間)後、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(プロメガ)およびCentro LB960マイクロプレートルミノメーター(ベルトールドテクノロジー((Berthold Technologies)、バートヴィルトバート、ドイツ)によってルシフェラーゼ活
性を分析した。評価のために、まずウミシイタケルシフェラーゼ値をホタルルシフェラーゼ活性に正規化し、各3’UTRレポーターの計算された活性をさらに対照ベクターに正規化した。データを平均±SD、n=8として表し、p<0.05を統計的に有意とした。細胞溶解緩衝液中で調製された全細胞抽出物を、CDX2、SMAD4、GSK3β、およびβ-アクチン抗体を用いた免疫ブロッティングに供した。
【0210】
免疫蛍光染色
[00234]細胞培養を含むスライドを95%(v/v)エタノール中で室温で30分固定し
、PBS中で3回洗浄し、0.1%(wt/v)トリトンX-100(シグマ)および5%(v/v)正常ロバ血清(ミリポア)を含有するブロッキング緩衝液PBSと共に60分インキュベートした。一次および二次抗体をブロッキング緩衝液で希釈した。一次抗体をインキュベートした。PBS中で特異的な一次抗体と4℃(24時間)または 室温(2時間)インキュベートした後、適切なフルオレセインイソチオシアネート(FITC、インビトロジェン)またはアレクサフルオロ(Alexa Fluor)488、594、および6
47(インビトロジェン)またはディライト(Dylight)488および594(バイオレ
ジェンド(BioLegend))がコンジュゲートした二次抗体を室温で(1時間)添加した。
細胞核をDAPI染色した後(5分)、二次抗体と室温で(1時間)インキュベートし、洗浄し、サンプルを50%グリセロールと共にマウントした。共焦点レーザー顕微鏡検査法(LSM700;ツァイス(Zeiss)のZ1またはオリンパスのフルオビュー(FluoView)1000共焦点レーザー顕微鏡)またはTissueFAXSシステム(TissueQnostics GmbH、ウィーン、オーストリア)によって画像を捕獲した。TissueQuestソフトウェアによってデータを分析した。
【0211】
フローサイトメトリー
[00235]CDX2、OCT4、SOX2、およびNANOGに対する非特異的なshRN
AまたはshRNA、でトランスフェクトした後、細胞(1ml当たり5×106個の細胞)を、表1に列挙したように特異的な一次抗体と共に30分インキュベートした。その後、適切な蛍光色素がコンジュゲートした一次抗体と調整される希釈率で4℃で1時間インキュベートし、サンプルを洗浄し、PBSに再懸濁した。サンプルを、細胞ストレーナーキャップを備えたポリスチレン製の丸底チューブ(BDファルコン(BD Falcon))を
通過させた後、フローサイトメトリー(FACScan、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、カリフォルニア州サンノゼ)に供した。データをCell-Questソフトウェア(BDバイオサイエンス)で分析した。
【0212】
電子顕微鏡法
[00236]透過型電子顕微鏡法のために、hTS細胞によって誘導された肝細胞様細胞(誘
導後の4日目における)を、3%wt/volホルムアルデヒド、1.5%(wt/vol)グルタルアルデヒドおよび2.5%(wt/vol)スクロースを含有する0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中、室温で(RT)1時間または4℃で一晩固定した。1%(vol/vol)OsO4を含有するパラディの固定剤中での4℃でのオスミウム酸染色処理(2時間)の前および後に、サンプルを、0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で洗浄した。タンニン酸で処理し、1%酢酸ウラニルで染色し、段階的な一連のエタノール溶液で脱水した後、サンプルをTABBエポキシ樹脂(アガーサイエンティフィック社(Agar Scientific Ltd.))に埋め込んだ。超薄切片を酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、JEM-2000EXII透過型電子顕微鏡(JEOL、東京)を使用することによって分析した。
【0213】
LDLの取り込みアッセイ
[00237]LDLの取り込みの細胞ベースのアッセイキットを製造元の説明書(ケイマンケ
ミカル社(Cayman Chem Co.)、ミシガン州アナーバー)の通りに使用することによって
、LDLの取り込みを実行した。簡単に言えば、5×104個の細胞を、24ウェルプレートの各ウェル中のカバースリップに植え付けた。hTS細胞(対照として)および分化した肝細胞様細胞(hHLC)を、5μg/mlのLDL-DyLight(商標)549プローブ処理(4時間、37℃)の後に固定し、次いでウサギ抗LDLおよびDyLight(商標)488コンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体によってLDL受容体に関して染色した。核をDAPIで可視化した。蛍光顕微鏡検査法によって最終的な染色を観察した。
【0214】
オイル-O-レッド試験
[00238]脂質の累積を検出するために、室温で(RT)4%パラホルムアルデヒドにより
分化細胞を固定し(20分)、60%イソプロパノールで5分洗浄した。新たに調製された60%オイルレッドO溶液(使用前に0.22μmフィルターを通過させた、100mlイソプロパノール中の0.5gのオイルレッドO、シグマ)と共に室温(20分)でインキュベートした後、細胞を60%イソプロパノールで濯ぎ、顕微鏡観察のためにヘマトキシリンI(サーモサイエンティフィック)で対比染色した。
【0215】
グリコーゲン貯蔵試験
[00239]グリコーゲン検出のために、4%パラホルムアルデヒドによって分化細胞を固定
した。固定したサンプルを0.4%トリトンX-100により膜を透過化した。未分化の対照細胞をジアスターゼ(PBS中の1mg/ml;シグマ)と共に37℃で1時間インキュベートした。細胞を過ヨウ素酸(0.5gを100ml蒸留水中に溶解させた)と共に室温で5分インキュベートし、蒸留水で洗浄し、新鮮な調製済みのシッフ試薬と共にインキュベートし(15分)、顕微鏡観察に供した。
【0216】
アルブミンおよび尿素アッセイ
[00240]誘導前および誘導後の、hTS細胞の培養培地中の総タンパク質、アルブミン、
および尿素の濃度を、自動分析器(日立7080;東京、日本)によって測定した。
【0217】
統計的分析
[00241]全ての実験を3連で行い、指定通りに2回繰り返した。ウェスタンブロット、q
PCR、ルシフェラーゼレポーターアッセイ、およびフローサイトメトリーから得られたデータをスチューデントのt検定によって計算した。p値<0.05を統計学的に有意とみなした。
【0218】
hTS細胞からDE系統への細胞プロセス
[00242]ヒト多能性幹細胞の肝細胞様細胞への分化において、DE形成は、細胞プロセス
中に同定されることが必要な第1の工程である。免疫蛍光顕微鏡によって、hTS細胞において、bFGF(10ng/ml)は、8時間の誘導で効率的にDEを得ることが可能であり、特異的なバイオマーカー;フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)およびSRY-ボックス17(SOX17)、グースコイド(GSC)、およびホメオドメインタンパク質MIXL1を発現することが見出された(
図1A~1C)。その後、免疫ブロッティングアッセイにより、bFGF誘導時における転写因子:GSC、ブラキュリ(T)、MIXL1、SOX17、およびFOXA2などのDE関連マーカーの発現のタイムラインを確立した(
図1D)。最初の15分間でMIXL1、ブラキュリ、およびGSCのレベルが有意に上昇したことが見出され、これは、原始線条の遷移を示唆している。しかしながら、これらのレベルは30分後に低下したことから、原始線条から新生の内中胚葉への移行が示される。具体的には、MIXL1レベルがピークから(15分)4時間で最低点(天然のレベルより約50%低い)まで減少し、これ以降、レベルが元のレベルに戻った。この事実は、イメージング研究(
図1C)およびTissueFAX分析(
図7)によって裏付けられた。これらの結果から、i)内胚葉からのMIXL1のmRNA発現は存在せず、中胚葉に限定されていること、およびii)MIXL1は原始線条で特異的に発現されるため、MIXL1の損失は、内中胚葉前駆細胞の内胚葉への潜在性への影響を有することから、内中胚葉からDE段階に移行する細胞プロセスが示唆された。SOX17レベルは2時間でピークまでアップレギュレートされたが(1.5倍)、8時間でダウンレギュレートされ、一方でFOXA2は8時間で最大レベルに(3倍)継続的にアップレギュレートされた(
図1D)。しかしながら、30分から1時間のGSCのダウンレギュレーションが見られたが、それでもなお元のレベルよりわずかに高いレベルを持続した(
図1D)。そのために、これらのデータから、bFGF(10ng/ml
)は、8時間の誘導で、SOX17、FOXA2、およびGSCをアップレギュレートし、ただしMIXL1をダウンレギュレートすることによって、hTS細胞のDE系統への分化転換を高効率の方式で誘導することを可能にすることが示唆される。そこから、DEは、肺、食道、胃、および腸における上皮の内層、加えて肝臓、膵臓、および甲状腺などの内分泌腺を発生させる。
【0219】
HNF4α発現によってデキサメタゾンおよびSOX17により促進される最終的な肝臓への分化
[00243]肝細胞核因子4(HNF4)は、ヒト肝臓前駆細胞の特定化に必須の転写因子で
ある。デキサメタゾン(Dexa)はHNF4α発現を誘導することから、サイトカインであるオンコスタチンM(OSM)は、胎児の肝臓発達に関与する。誘導から8時間に馴化培養培地にデキサメタゾン(0.1μM)およびオンコスタチンM(10ng/ml)を添加することによって、4日後に、免疫染色によって、例えば、アルブミン、α-フェトプロテイン(AFP)、胆汁輸送タンパク質MRP2(ABCC2)、および胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)である肝臓マーカーを発現する肝細胞様細胞の分化がもたらされたことが見出された(
図1E)。
【0220】
[00244]その後、経時的な免疫ブロッティングアッセイから、FOXA2およびSOX
17の両方は、24時間までより高いレベルで持続され、続いて2日目に突然低下したことが解明された(
図1F)。興味深いことに、SOX17は、内胚葉分化中にHNF4αを抑制するジンクフィンガータンパク質202(ZFP202)を直接活性化することができる。DE段階において、ピーク(2時間)後のSOX17レベルの有意な低減(
図1D)は、恐らく間接的にHNF4αへの抑制作用を低減させ、それによって、デキサメタゾンによって誘導されたHNF4α活性化を促進した。そのようなものとして、bFGF、デキサメタゾン、およびSOX17離脱の組合せ的な作用は、HNF4α発現による肝臓特異的な内胚葉の開始に寄与する。さらに、アルブミンが12時間後に発現されたことから、肝臓内胚葉系統への分化が裏付けられる(
図1F)。その結果として、活性なHNF4αは、肝細胞の形態学的および機能的な分化を制御することができ、そのため誘導の2日目に肝芽細胞の段階に入ることができる。3日目におけるAFPの出現は、胎児の未成熟肝細胞の細胞プロセスを示していた。興味深いことに、ベータトロフィンのピークレベルは、3日目に出現したが、これは、それが栄養および脂質代謝のレギュレーションに関与していることを示唆している。総合すると、hTS細胞は、1週間以内に、胚形成における初代肝細胞の細胞プロセスを模擬した肝細胞様細胞に効率的に分化することができる。実際に、これらの発見から、これまでhES細胞およびiPS細胞において報告されている時間がかかるプロトコールとは異なり、この2段階レジメンは、hTS細胞から肝細胞様細胞を生成することを可能にすることが示唆される。
【0221】
DEの特定化におけるmiRNA-124aの調節メカニズム
[00245]どのようにbFGFがDE形成を誘導するのかの分子メカニズムの理解が、さら
なる肝臓分化に重要であり、必要である。bFGFは、PI3K/AKT/CREB1シグナル伝達経路をその受容体FGFR1を介して誘導することを可能にする(
図8A~8D)。それゆえに、i)miR-124aは、DE誘導における肝細胞の対応物である膵β細胞でFOXA2をレギュレートすることが可能であり、ii)CREB1遺伝子の部位へのmiR-124結合は、哺乳類CREB1の3’UTRで保存されているという2つの理由のために、CREB1の活性化は、本発明者らが小さい非コードRNAであるマイクロRNA(miR)の関与に注目することを可能にした。一般的に、miRは、翻訳の阻害および/またはRNA分解を引き起こすことによって、幹細胞分化などの様々な生物学的プロセスに関与する主要なレギュレーターとして機能する。それまで、miR-124a発現を促進するために、ChIP-qPCRアッセイによって、活性なCREB1は、miR-124aのmRNAのプロモーターの3つの部位を標的化できることが見出
されていた(
図2A)。この作用は、miR-124a発現を低減させたCREB1のノックダウンによって裏付けられ(
図2B)、さらにqPCRアッセイによる平行な発現における相関によっても裏付けられた(
図2B)。まとめると、これらの結果から、bFGFは、PI3K/AKT/CREB1シグナル伝達経路を誘導することを可能にし、順に、CREB1が、DE段階中に4時間の誘導でピークに達するmiR-124a発現を促進することが示唆される。
【0222】
[00246]特に、4時間の誘導における最大のmiR-14aと最小のMIXL1との相
関的な発現は、本発明者らにそれらの間に関係があるのかどうかを検査する興味を引き起こした。配列分析およびルシフェラーゼレポーターアッセイによれば、miR-124aは、2つの部位でSmad4のメッセンジャーRNA(mSmad4)を標的化することができ、結果として、ルシフェラーゼレポーターアッセイ(
図2D)および免疫ブロッティングアッセイ(
図2E)によって証明されたようにシグナル伝達タンパク質のSmad4生産が防止された。一貫して、miR-124の阻害性Smad4はMIXL1の抑制を引き起こし、これは、Smad4のノックダウンによって裏付けられた(
図2F)。これらのデータから、DE段階におけるMIXL1のダウンレギュレーションは、bFGFによって誘導されたmiR-124aの活性化が原因であったことが説明された。さらに、miR-124aは、他の役割を果たす可能性もあり、例えば、miR-124aは、ルシフェラーゼレポーターアッセイによればグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)のmRNAを抑制し(
図2G)、GSK3βの生産を阻害した(
図2E)。この阻害性GSK3βは、その下流の基質であるβ-カテニンの核移行を引き起こした。細胞核において、ChIP-qPCRアッセイによれば、β-カテニンは、FOXA2を生産するために、FOXA2遺伝子のプロモーターを標的化することができる(
図2H)。そのために、FOXA2の発現は、DE段階における細胞分化を強調する。
【0223】
OCT4による自己再生特徴の維持
[00247]一方で、miR-124aはまた、CDX2のmRNAを標的化することもでき
(
図2I)、その翻訳を阻害して、多能性転写因子であるCDX2のCDX2生産を低減させた(
図2E)。これは、共にトランスフェクトされたmiR-124a-およびCDX2プラスミドの存在によって裏付けられる(
図2I)。しかしながら、阻害性CDX2は、OCT4とCDX2との相互の阻害関係を介した多能性転写因子OCT4の活性化をもたらした(
図2E)。この機能は、イメージング研究(
図2J)および免疫ブロッティングアッセイ(
図2K)によって反映された。OCT4活性化は、免疫ブロッティングアッセイによれば、miR-124aとOCT4とを連結する抗miR-124a抗体によって阻害することができる(
図2E)。8時間までの多能性転写因子NANOGおよびSOX2の両方の段階的な上昇(
図2K)は、hES細胞における多分化能に適合するDE系統の多分化能の維持における支持的役割を示唆していた。それゆえに、これらのデータは、OCT4は主としてDEの自己再生特徴を維持することを示唆しており、これは、他の中核となる多分化能転写因子NANOGおよびSOX2によって裏付けられる。さらに、活性なOCT4は、ChIP-qPCRアッセイによれば、SOX17のmRNAのプロモーターの2つの部位を標的化することが可能であり(
図2L)、2時間でピークに達するSOX17発現を誘導した(
図1C)。SOX17発現は、DE識別における別の重大時点に相当する。総合すると、これらの結果から、hTS細胞において、bFGF依存性のmiR-124aは、DE形成を高効率の方式で誘導し(8時間)、hES細胞における3日の経過とは異なっていることが実証される。概略的な調節分子メカニズムは、FOXA2、SOX17、およびOCT4をアップレギュレートするが、MIXL1をダウンレギュレートするmiR-124aシグナル伝達を介したDEの特定化を例示し、ここでOCT4は、DE系統の自己再生の維持において主要な役割を果たす(
図2L)。
【0224】
遺伝学的プロファイルは肝臓の発達における段階依存的な表現型と一致する
[00248]それに続いて肝臓系統へのDE分化を方向付けるために、8時間でのDE段階の
完了後にデキサメタゾンおよびオンコスタチンMを添加した。qRT-PCRアッセイの利点を考慮して、経時的なプロファイルにおける肝臓の発達に関連する31種の遺伝子の動的な発現を調査して、分化プロセスを追跡するのに使用できるmRNAフィンガープリントを特徴付けた。全体として、各遺伝子の遺伝学的プロファイルは、6日の誘導中に4~5個のピークを有する類似のパターンを有することが解明された。マウスモデルにおける肝臓発達の細胞プロセスに基づいて、bFGFならびにデキサメタゾンおよびオンコスタチンMのカクテルで処理されたhTS細胞を、それらの遺伝学的発現プロファイルに基づいて、細胞プロセスの4つの段階:原始線条からDE(<8時間)、肝臓特異的な内胚葉系統(8時間から1日目)、肝芽細胞(2~4日目)、および胎児および成体の肝細胞様細胞(4日目以降)(
図9A~9F)に分類した。
【0225】
[00249]それゆえに、これらの結果から、i)原始線条からDEの段階において、優勢
に発現された4つの遺伝子(>10倍から1,000倍)は、CXCR4、FOXA2、SOX17、およびHHEXを包含すること;ii)肝臓特異的な内胚葉において、優勢に発現された6つの遺伝子(10倍から100倍の間)は、肝芽形成および脂質代謝のためのSOX17、サイロキシンおよびレチノール結合タンパク質TTR、タンパク質キャリアーアルブミン(ALB)、チロシン異化酵素TAT、SERPINA1、および胆汁酸生合成酵素CYP7A1を包含すること;iii)肝芽細胞の段階において、TTR、ALB、TAT、CYP7A1、SERPINA1、および胆汁酸塩排出ポンプBSEPを包含する優勢に発現される(10倍から100倍の間)6種の遺伝子が存在したこと;およびiv)胎児および成体の肝細胞様細胞の段階において、HHEX、BSEP、TTR、ALB、TAT、SERPINA1、グルコースホメオスタシス酵素G6PC、肝胆汁排出輸送体MRP2(ABCC2)、免疫および正常マクロファージレギュレーターC/EBPβ、ならびに数々の肝臓遺伝子レギュレーター、例えばHNF4αおよびHNF1αを包含する顕著に発現される(100倍を超える)11種の遺伝子が存在したことが解明された。さらに、α-フェトプロテイン(AFP)の発現は、胎児段階(4日目および5日目)で出現したが、成体肝細胞様細胞の段階から5日目に低減した(
図6)。
【0226】
肝臓の板状の構成は肝細胞の署名の提示である
[00250]肝臓において、肝細胞板系は、グリソン鞘で繋がった鞘で取り囲まれた胆管およ
び血管で構成される独特な組織構造を構成する。分化中のhTS細胞によって誘導された肝細胞様細胞の形態学的な変化を特徴付けるために、細胞形態が、小葉状の形状を形成する傾向に伴い最初の線維芽細胞様の形状からより長い紡錐状の形状に変化したことが見出され、これは、2日目および3日目における中央領域に位置する多数の多角形の細胞で示される(
図3A)。しかしながら、4日目後、細胞が集合化して、板状の細胞塊を形成する可能性があり、この現象は、培養される最初の細胞数に依存する。次いで細胞塊をさらなる検査に供した。
【0227】
[00251]組織学的には、細胞の配置のほとんどが、1つの細胞または2つの細胞の厚さ
の好酸性細胞質のようであり、板状の組織を形成する。しかしながら、細胞が一緒に集合化して、細胞塊を形成する可能性がある(
図3A)。免疫組織化学的には、これらの細胞は、細胞質内区画においてアルブミン、AFP、ベータトロフィン、HNF4α、APOF、CPS1、ADH1、およびCYP2B6に関して免疫蛍光染色を提示し、一方でCXCR4、CX32、MRP2、およびBSEPを包含する細胞膜マーカーのサブセットは、細胞を初代肝細胞に類似した多角形の形状にした(
図3B)。電子顕微鏡法により、初代肝細胞に類似した超微細構造、例えば、大きい細胞質対細胞核の比率、多量のミトコンドリア、よく組織化された小胞体、デスモソーム結合、無傷のゴルジ装置、具体的には胆管の拡張した内腔および接着複合体が示された(
図3C)。さらに、免疫細胞蛍光イメージングから、AFPおよびアルブミンに加えてABCC2(MRP2)およびBSEP
の共局在が解明された(
図1E)。これにより、これらの肝細胞様細胞は、初代肝細胞に似た細胞要素または基礎構造のいずれかの肝臓の特徴を有することが実証された。
【0228】
肝細胞様細胞はインビトロおよびインビボで初代肝細胞として機能する
[00252]肝臓は、アルブミン合成、尿素生成、糖生成、および解毒などの代謝における多
くの特異的な機能に関与する最も重要な臓器である。これらの肝細胞様細胞が初代肝細胞と同様に機能することができるかどうかを検査するために、細胞におけるアルブミンおよび尿素の分泌能力を調査した。4日目の誘導における培養培地を回収して、ELISA分析に供した。その結果から、アルブミンおよび尿素のレベルの両方が有意に増加したことが解明され、これは、培養培地中で分泌されるアルブミンおよび尿素を生産するそれらの性能を示唆している(
図4A)。次に、グリコーゲン貯蔵試験から、細胞相または肝臓の板状の組織のいずれかにおいて、ジアスターゼ消化処理後、過ヨウ素酸シッフ染色(PAS)染色が陽性であることが解明された(
図4B)。この作用は、免疫細胞化学および免疫組織化学の両方に関するPAS蛍光発光によってさらに確認された(
図4B)。加えて、LDLの取り込みアッセイから、細胞のLDLの取り込みの能力が、4日目の誘導の未成熟の肝細胞において開始されたことが解明された(
図4C)。オイル-O-レッド染色から脂質滴の存在が解明され、これは、何らかの形でのある程度の脂肪生成が起こったことを示唆している(
図4D)。さらに、qPCR分析により、標的としてシトクロムP450(CYP)酵素を使用することによって、肝細胞様細胞がインビトロで薬物の代謝および解毒の能力を有するかどうかを検査した。その結果から、肝細胞様細胞は、特定の薬物の代謝に対応して、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、およびCYP7A1の活性を有意に示すことが解明され(
図5A~5I)、これは、これらの肝細胞様細胞は、初代肝細胞と同様に薬物のスクリーニングおよび発見に使用することができることを示唆している。例えば、肝臓の酵素誘導物質であるリファンピンは、CYP3A4活性を促進して、薬物の代謝率を増加させることができ、CYP3A4の阻害は、臨床条件で広く使用されてきた薬物-薬物相互作用(DDI)の主な原因である。さらに、フロルアセロフェノン(phloracetophenone)(2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン、THA)は、高コレステロール血
症のハムスターにおいて、CYP7A1活性およびmRNA発現の両方を促進して、血漿コレステロールおよびトリグリセリドの両方を低減するものであり、THAは、CYP7A1のmRNA発現におけるケノデオキシコール酸(CDCA)の阻害性レギュレーションに拮抗するものであることが示されている。それにより、肝細胞様細胞において、リファンピン(refampin)によって誘導されたCYP3A4は、その阻害剤であるイトラコナゾールによって低減させることができ(
図5H)、一方でTHAによって誘導されたCYP7A1のmRNAの上昇は、CDCAによって低減されたことが示された(
図5I)。薬理学的な視点から、例えば、胆汁酸結合樹脂は、上昇した血漿中の低密度リポタンパク質コレステロール濃度の処理のために指定されるが、樹脂療法は有害である。それゆえに、血漿コレステロールを低下させるためのCYP7A1のレギュレーションにアプローチし、革新的な薬理学的介入のための焦点としてCYP7A1の位置の確認をベースとすることによって、新しい薬物が設計されてきた。
【0229】
hTS細胞において塩基性FGFはPI3K/AKT/CREB1シグナル伝達経路の活性化を誘導した
[00253]hTS細胞を、馴化培地中、bFGF(10ng/ml)で処理したところ、免
疫ブロッティングアッセイによれば、FGF受容体(FGFR)阻害剤PD166866は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)のbFGFによって誘導された活性化をブロックできることが示され(
図8A)、これは、阻害作用が細胞膜におけるFGFRを介していたことを示唆している。結果として、下流エフェクターであるAKTがリン酸化されたことが、PI3KのsiRNAを使用することによって証明された(
図8B)。どのプロテインキナーゼB(AKT)サブユニットが活性化されたかを明確にす
るために、3つのAKTサブユニット:AKT1、AKT2、およびAKT3に対して特異的なsiRNAを免疫ブロッティングアッセイによって検査した。その結果から、AKT1のみがリン酸化され、その下流エフェクターであるcAMP反応エレメント結合タンパク質1(CREB1)が活性化されたことが示された(
図8C)。この機能は、免疫沈降(IP)アッセイによってさらに確認された(
図8D)。総合すると、これは、bFGFは、4時間の誘導でPI3K/AKT1/CREB1シグナル伝達経路の活性化を誘導することを表す。
【0230】
実施例2
実験手順
細胞培養および分化
[00254]この研究は、ヒト対象研究に関する施設内倫理審査委員会および倫理委員会によ
って承認された(KMUHIRB-20140071)。上述したようにインフォームドコンセントと共にhTS細胞を得て(Leeら、2012、PLoS ONE 7、e52491)、5%CO2
を含有する加湿した空気中、37℃で、10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS;SAFCバイオサイエンス)が補充されたα-MEM(ギブコ)培地中で維持した。DE分化のために、実験的研究に従って、10%FBS、2-メルカプトエタノール(1mM)、ニコチンアミド(10mM)、およびbFGF(10ng/ml)を含有する馴化α-MEM培地によって8時間、細胞を培養した(データ示さず)。8時間でのDE形成後の肝細胞分化のために、細胞培養を、bFGF(10ng/ml)、デキサメタゾン(0.1μM、シグマ)、組換えヒトオンコスタチンM(10ng/ml、エクセル-バイオメディカル社(Excel-Biomedical Inc.))、BMP4(20ng/ml)、およびHGF(5
ng/ml)を含有する培地に変更した。指定されたアッセイのために4~7日に細胞を回収した。系統の段階依存的な分化の決定は、肝臓発達における肝細胞関連マーカーに依存する。
【0231】
動物実験
[00255]成体雄スプラーグ-ドーリーラット(300~350g)を、12時間の明/1
2時間の暗サイクルで、食物および水の無制限給餌で飼育した。実証研究は、高雄医学大学(Kaohsiung Medical University)の施設内動物倫理委員会(Institutional Animal Ethical Committee、IAEC)によって承認された(IACUC-96009)。実験のために、ラットを、抱水クロラール25%(500mg/kg)の腹膜内注射で麻酔した。ラットを、2つのグループ:対照としての偽操作のグループ(n=8)と残りの研究グループ(n=8)に分割した。実験前に静脈内の血液(0.5ml)をベースラインとして得て、12時間後、両方のグループにCCl4(1ml/kg:トウモロコシ油中1:1v/v)を腹腔内注射した。即座に、研究グループに、hTS細胞から誘導された肝細胞(培養培地200μl当たり1×106個の細胞)を尾静脈から注射し、偽操作のグループにPBS溶液のみを与えた。ベースライン時、細胞注射時、24時間、48時間、および72時間に血清サンプルを採取し、肝機能試験、すなわち、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASTまたは以前はSGOTと呼ばれる)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALTまたは以前はSGPTと呼ばれる)、およびアルカリホスファターゼ(ALP)、血清ビリルビンで処理した。4日目に全てのラットを殺し、組織病理学的研究のために肝臓および肺を得た。
【0232】
mRNA、miRNA、クロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR、およびmRNAマイクロアレイ
[00256]上述したように方法を実行した(Leeら、2012、PLoS ONE7、e52491)。mRNA
発現のために、3連または5連のサンプルで、DNAアーゼIによるオンカラムでの消化(キアゲン、カリフォルニア州バレンシア)と共にTRIZOL試薬(インビトロジェン)を製造元の説明書に従って使用してhTS細胞からRNAを単離した。iScript
cDNA合成キット(バイオ-ラッド)を用いた逆転写のために、全RNA(500ng)を使用した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を、反応1回当たりcDNAの40分の1と400nMのフォワードおよびリバースプライマーを使用して2連で行った。比較リアルタイムPCRを、Power SYBR(登録商標)マスターミックス(アプライドバイオシステムズ)を7500リアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズ)と共に使用して少なくとも3連で行った。全ての遺伝子をGAPDH発現に正規化し、別段の指定がない限りΔΔCt方法を使用して未分化のhTS細胞の発現に正規化した。この研究で使用されたプライマー配列は、表5に見出すことができる。
【0233】
[00257]miRNA分析のために、25ngの全RNAを、TaqManマイクロRN
A逆転写キット(アプライドバイオシステムズ)を使用して逆転写した。qPCRを、TaqManユニバーサルPCRマスターミックス(アプライドバイオシステムズ)を非テンプレート対照を包含する7500リアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズ)と共に使用して、miR-124aの特異的なプライマーまたはRNU6B(アプライドバイオシステムズ)を使用して少なくとも3連で行った。U6 snRNA(RNU6B;アプライドバイオシステムズ)を、内因性対照として利用した。
【0234】
[00258]ChIPアッセイのために、誘導中における指定された時間のhTS細胞サン
プルを最終濃度1%のホルムアルデヒドで固定した。室温で(10分)インキュベートした後、グリシン(125mM)を添加することによって反応を止めた。ChIPアッセイキット(アップステートバイオテクノロジー)に付随するプロトコールを使用してChIPアッセイを実行した。十分に洗浄した後、ChIP処理したDNAをビーズから溶出させ、qPCRによって分析した。
【0235】
ルシフェラーゼレポーターアッセイ
[00259]ルシフェラーゼ-3’UTRレポータープラスミドを調製するために、hTS細
胞のゲノムDNA抽出物からの3’UTRのフラグメントを増幅した。3’UTRのPCRフラグメントを、PsiIおよびMfeI(サーモサイエンティフィック、イリノイ州ロックフォード)を使用することによって、pGL4.51ベクター(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)のルシフェラーゼ遺伝子の下流にクローニングした。3’UTRレポーターコンストラクトのためのプライマーを、以下に列挙した。
【0236】
[00260]Cdx2の3’UTR領域用:
フォワード、5’-aaattataagctgtttgggttgttggtct-3’および
リバース、5’-aaacaattgcccccataatttctgactgc-3。
【0237】
[00261]Smad4の3’UTR領域1用:
フォワード、5’-aaattataactcccaaagtgctgggatta-3’および
リバース、5’-aaacaattgctgcactgttcacaggagga-3。
【0238】
[00262]Smad4の3’UTR領域2用:
フォワード、5’-aaattataacagttgtcccagtgctgcta-3’および
リバース、5’-aaacaattgatgacttgcccaaaggtcac-3。
【0239】
[00263]GSK3βの3’UTR領域用:
フォワード、5’-aaattataacccacaactggggtaaaaga-3
’および
リバース、5’-aaacaattgctgtggaaggggcaaagata-3。
【0240】
[00264]デュアルルシフェラーゼアッセイのために、ホタルルシフェラーゼレポーター
(500ng)またはpGL4.74で共にトランスフェクトされた3’UTRを全く含まない空のベクターおよびウミシイタケルシフェラーゼプラスミド(500ng、プロメガ)、ならびに非特異的対照であるmiRNA(30pmol)またはmiR-124a前駆体(30pmol;システムバイオサイエンス、カリフォルニア州マウンテンビュー)を、TransIT(登録商標)-LT1トランスフェクション試薬(ミルスバイオ社、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、hTS細胞に共にトランスフェクトした(各ウェル中1.5×104個の細胞)。トランスフェクション(36時間)後、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(プロメガ)およびCentro LB960マイクロプレートルミノメーター(ベルトールドテクノロジー、バートヴィルトバート、ドイツ)によってルシフェラーゼ活性を分析した。評価のために、まずウミシイタケルシフェラーゼ値をホタルルシフェラーゼ活性に正規化し、各3’UTRレポーターの計算された活性をさらに対照ベクターに正規化した。データを平均±SD、n=8として表し、p<0.05を統計的に有意とした。細胞溶解緩衝液中で調製された全細胞抽出物を、Cdx2、Smad4、GSK3β、およびβ-アクチン抗体を用いた免疫ブロッティングに供した。
【0241】
プラスミド
[00265]miR-124a前駆体および抗miR-124aを、システムバイオサイエン
スから購入した。簡単に言えば、miR-124a前駆体(60pmol)または抗miR-124a(60pmol)を、12ウェルの培養皿中で、TransIT-LT1トランスフェクション試薬(ミルス、ウィスコンシン州マディソン)を使用してhTS細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの36時間後にmiR-124aを定量するために、全RNAを使用した。PI3K(SASI_Hs01_00233971およびSASI_Hs01_00127787)、Akt1(SASI_Hs01_00205545)、およびAkt2(SASI_Hs01_00035055)を標的化する短鎖干渉RNA(siRNA)を、シグマから購入した。CREB1(TRCN0000007310、TRCN0000226467およびTRCN0000226468)、Smad4(TRCN0000010321、TRCN0000010323およびTRCN0000040032)、Akt3(TRCN0000001615およびTRCN0000001616)、Oct4(TRCN0000004879およびTRCN0000004882)、Cdx2(TRCN0000013683およびTRCN0000013686)、および対照shRNA(shGFP;TRCN0000072178、TRCN0000072179およびTRCN0000072183)を標的化する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を、ナショナルRNAiコアプラットフォーム、中央研究院、台湾から購入した。2μgのsiRNAまたはshRNAに加えて4μlのトランスフェクション試薬を用いてトランスフェクションを実行した。
【0242】
LDLの取り込みアッセイ
[00266]LDLの取り込みの細胞ベースのアッセイキットを製造元の説明書(ケイマンケ
ミカル社、ミシガン州アナーバー)の通りに使用することによって、LDLの取り込みを実行した。簡単に言えば、5×104個の細胞を、24ウェルプレートの各ウェル中のカバースリップに植え付けた。hTS細胞(対照として)および分化した肝細胞様細胞(hHLC)を、5μg/mlのLDL-DyLight(商標)549プローブ処理(4時間、37℃)の後に固定し、次いでウサギ抗LDLおよびDyLight(商標)488コンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体によってLDL受容体に関して染色した。核をDAPIで可視化した。蛍光顕微鏡検査法によって最終的な染色を観察した。
【0243】
オイル-O-レッド試験
[00267]脂質の累積を検出するために、室温で4%パラホルムアルデヒドにより分化細胞
を固定し(20分)、60%イソプロパノールで5分洗浄した。新たに調製された60%オイルレッドO溶液(使用前に0.22μmフィルターを通過させた、100mlイソプロパノール中の0.5gのオイルレッドO、シグマ)と共に室温(20分)でインキュベートした後、細胞を60%イソプロパノールで濯ぎ、顕微鏡観察のためにヘマトキシリンI(サーモサイエンティフィック)で対比染色した。
【0244】
グリコーゲン貯蔵試験
[00268]グリコーゲン検出のために、4%パラホルムアルデヒドによって分化細胞を固定
した。固定したサンプルを0.4%トリトンX-100により膜を透過化した。未分化の対照細胞をジアスターゼ(PBS中の1mg/ml;シグマ)と共に37℃で1時間インキュベートした。細胞を過ヨウ素酸(0.5gを100ml蒸留水中に溶解させた)と共に室温で5分インキュベートし、蒸留水で洗浄し、新鮮な調製済みのシッフ試薬と共にインキュベートし(15分)、顕微鏡観察に供した。
【0245】
生化学パラメーター試験
[00269]アルブミン、尿素、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およ
びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を包含する全ての肝機能の生化学パラメーターを、自動分析器(日立7080、日本)を使用することによって測定した。
【0246】
機能的なシトクロムp450のアッセイ
[00270]hTS細胞によって誘導された肝細胞様細胞におけるCYP酵素による誘導活性
を試験するために、細胞を試薬で24時間処理し、例えば、CYP1A2試験の場合、リファンピシン(25μM)/リファンピシン+シプロフロキサシン(1μM)を使用し、CYP2B6試験の場合、フェノバルビタール(100μM)/フェノバルビタール+クロピドグレル(25μM)によって、CYP3A4の場合、リファンピシン(25μM)/リファンピシン+イトラコナゾール(25μM)によって、CYP7A1の場合、2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(THA、1μM)/THA+CDCA(25μM)によって、CYP2C8およびCYP2C9の場合、リファンピシン(25μM)/リファンピシン+ゲムフィプロジル(25μM)によって、CYP2C19の場合、リファンピシン(25μM)/リファンピシン+チクロピジン(25μM)によって処理された。陽性対照としてHuh-7細胞を使用した。
【0247】
免疫細胞化学および免疫組織化学
[00271]上述したようにして方法を実行した(Leeら、2012、PLoS ONE 7、e52491)。簡単に言えば、細胞培養を含むスライドを95%(v/v)エタノール中で室温で30分固定し、PBS中で3回洗浄し、0.1%(wt/v)トリトンX-100(シグマ)および5%(v/v)正常ロバ血清(ミリポア)を含有するブロッキング緩衝液PBSと共に60分インキュベートした。一次および二次抗体をブロッキング緩衝液で希釈した。一次抗体をインキュベートした。PBS中で特異的な一次抗体と4℃(24時間)または室温(2時間)インキュベートした後、適切なフルオレセインイソチオシアネート(FITC、インビトロジェン)またはアレクサフルオロ488、594、および647(インビトロジェン)またはディライト488および594(バイオレジェンド)がコンジュゲートした二次抗体を室温で(1時間)添加した。細胞核をDAPI染色した後(5分)、二次抗体と室温で(1時間)インキュベートし、洗浄し、サンプルを50%グリセロールと共にマウントした。共焦点レーザー顕微鏡検査法(LSM700;ツァイスのZ1またはオリンパスのフルオビュー1000共焦点レーザー顕微鏡)またはTissueFAXSシステム(TissueQnostics GmbH、ウィーン、オーストリア)によって画像を捕獲した。Ti
ssueQuestソフトウェアによってデータを分析した。
【0248】
電子顕微鏡法
[00272]透過型電子顕微鏡法のために、上述したようにして方法を実行した(Leeら、2012、PLoS ONE 7、e52491)。簡単に言えば、hTS細胞によって誘導された肝細胞様細胞(誘導から4日目における)を、3%wt/volホルムアルデヒド、1.5%(wt/vol)グルタルアルデヒドおよび2.5%(wt/vol)スクロースを含有する0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中、室温で1時間または4℃で一晩固定した。1%(vol/vol)OsO4を含有するパラディの固定剤中での4℃でのオスミウム酸染色処理(2時間)の前および後に、サンプルを、0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で洗浄した。タンニン酸で処理し、1%酢酸ウラニルで染色し、段階的な一連のエタノール溶液で脱水した後、サンプルをTABBエポキシ樹脂(アガーサイエンティフィック社)に埋め込んだ。超薄切片を酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、JEM-2000EXII透過型電子顕微鏡(JEOL、東京)を使用することによって分析した。
【0249】
免疫ブロッティングおよび免疫沈降(IP)
[00273] 上述したようにして方法を実行した(Leeら、2012、PLoS ONE 7、e52491)。免
疫ブロッティングアッセイのために、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(ロシュ)が補充されたRIPA溶解溶液(ミリポア、マサチューセッツ州ビレリカ)に細胞を回収した。ポリアクリルアミドゲル上で30μgの溶解産物を電気泳動した後、PDVF膜上へのエレクトロブロッティング(ミリポア)を実行した。PBS中の5%無脂肪乳によって室温で(1時間)ブロックした後、一次抗体を使用することによって標的タンパク質を検出した。全ての膜を化学発光物質(ミリポア)と共にインキュベートし、撮像をChemiDoc XRSシステム(バイオ-ラッド)によって捕獲した。表4に使用された抗体を列挙した。AlphaEaseFC(バージョン4.0.0)システムによってデータを分析した。IPアッセイのために、bFGFで処理したhTS細胞の細胞溶解産物を収集した。プロテインG-アガロース(ミリポア)と30分インキュベートすることによって、総タンパク質(100μg)を、表4に列挙された特異的な一次抗体で一晩処理した。プロテインG-アガロースビーズで(2時間)処理した後、サンプルをRIPA溶解緩衝液(ミリポア)で3回洗浄し、その後、タンパク質ローディング色素を添加し、5分沸騰させた。8%SDS-PAGEによってサンプルを分離し、免疫ブロッティング分析に供した。
【0250】
2次元ゲル電気泳動(2DE)のためのサンプル調製
[00274]2つのサンプル:細胞培養培地(5日、研究グループとして)および純粋な培養
培地(対照グループとして)を得た。サンプルを上述したように調製した(Chouら、2015)。簡単に言えば、サンプル(0.1ml)を、11%トリクロロ酢酸(TCA、w/v)および20mMのDTTを含有する氷冷したアセトン1mlと共に-20℃で30分インキュベートした。遠心分離後(12,000rpm、10分、4℃)、タンパク質のペレットを20mMのDTTを含有する冷たいアセトン1mlで2回洗浄し、続いて空気乾燥してアセトンを除去した。次いで、適切な水分補給のための緩衝液(7M尿素、2Mチオ尿素、2%CHAPS、0.5%IPG緩衝液、20mMのDTT)を添加し、濃縮したサンプルをブラッドフォード方法によって測定した。2DE分析のために、合計150μgのタンパク質を、5M尿素、2Mチオ尿素、3%w/vCHAPS、3~10の非線形のpHを有する1%の固定されたpH勾配物質(IPG)、100mMのDeStreak試薬、および微量のブロモフェノールブルーを含有する緩衝液と共にインキュベートした。一連の処理プロセス後、サンプルを、Ettan IPGphorカップローディング(アマシャムバイオサイエンス(Amersham Biosciences))を使用して、IPGストリップの陽極付近にカップローディングし、製造元のプロトコールに従ってIEFパラメ
ーターを使用してタンパク質の分画を達成した。第1次元の電気泳動の後、等電点分画用IPGストリップを1%w/vDTTを含有する調整した平衡緩衝液中で振盪し(15分)、続いて2.5%w/vヨードアセトアミドを含有する同じ溶液中で振盪した(15分)。ストリップを12%SDS-ポリアクリルアミドゲル(PAGE)の上部に移した。第2次元の分離を一定の75V(30分)および100V(16時間)によって実行した。2DEゲルを銀染色し、タイフーン(Typhoon)9410スキャナー(アマシャムバイ
オサイエンス)で検出し、スポットを比較し、イメージマスター(Image Master)2D白金システム(アマシャムバイオサイエンス)を使用することによって定量した。
【0251】
タンパク質の同定および定量のためのエレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間型タンデム質量分析(ESI-Q-TOF-MS/MS)
[00275]観察された2Dゲルタンパク質を同定するために、サンプルをトリプシンによっ
て消化し、続いて上述したように(Chouら、2015)、ナノフロー液体クロマトグラフィーおよびウォーターズ-マイクロマス(Waters-Micromass)のタンパク質同定用ESI-Q-TOF(ウォーターズ(Waters)、英国マンチェスター)で処理した。対応するピークのリストを得るために、前駆体のそれぞれ個々のフラグメントのMS/MSスペクトルをマスリンクス(MassLynx)4.0ソフトウェア(マンチェスター、英国)によって加工し、ピークのリストのファイルを社内のタンパク質同定のためのマスコットサーバーにアップロードした。
【0252】
統計的分析
[00276]全ての実験を3連で行い、指定通りに2回繰り返した。ウェスタンブロット、q
PCR、ルシフェラーゼレポーターアッセイ、およびフローサイトメトリーから得られたデータをスチューデントのt検定によって計算した。p値<0.05を統計学的に有意とみなした。動物実験において、対応のあるANOVA検定を統計学的に使用した。p値<0.05を統計学的に有意とみなした。
【0253】
結果
1)hTS細胞においてbFGF単独はDE分化を誘導する
[00277]幹細胞から肝臓系統への経路は、特にDE形成において必要かつ必須の工程を包
含する進行性の一連の細胞プロセスで構成される。hTS細胞を最初にbFGF(10ng/ml)で処理し、免疫ブロッティングアッセイによってDE関連マーカーのレベルを経時的に測定した。その結果から、誘導の最初の15分で、グースコイド(Gsc)、ブラキュリ(T)、ホメオドメインタンパク質Mixl1(Mixl1)、SRY-ボックス17(Sox17)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(Foxa2、またHnf3βとしても公知)、および原始内胚葉マーカーSox7などの転写因子が有意にアップレギュレートされ、30分から1時間の間でピークに達したことが示された(
図10A)。これらのデータから、hTS細胞から新生の内中胚葉への迅速な遷移が、初期胚発生における肝臓発達に適合する原始線条段階を媒介することが示される。これ以降、Sox17レベルは4時間まで継続的に上昇し、低下した。その一方でFoxa2およびブラキュリは8時間まで上昇したが、Sox7発現は誘導の15分後に始まったばかりであった。特に、Mixl1の強度はピーク(15分)から4時間で最低点までダウンレギュレートされ(天然のものより約50%低い)、8時間で元のレベルに戻ったことがTissueFAX分析によって測定された(
図10AS)。それらの発現における変化は、免疫蛍光イメージングによっても実証された(
図10B)。これらの結果から、bFGFは単独で、胚性肝臓発達を模擬した、原始線条および内中胚葉を介したhTS細胞のDE段階への急速な分化を可能にすることが示される。
【0254】
2)PI3K/Akt/CREB1シグナル伝達経路はMiR-124a発現を促進する
[00278]bFGFは、hTS細胞において、PI3K/Akt/CREB1シグナル伝達
経路を、その受容体FGFR1を介して誘導することが可能であった。hTS細胞を、馴化培地中のbFGF(10ng/ml)で処理した。FGF受容体(FGFR)阻害剤PD166866は、免疫ブロッティングアッセイによれば、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)のbFGFによって誘導された活性化をブロックすることができ(
図10BS)、これは、阻害作用が細胞膜におけるFGFRを介していたことを示唆している。結果として、下流エフェクターであるAKTがリン酸化されたことが、PI3KのsiRNAを使用することによって証明された(
図10CS)。どのプロテインキナーゼB(AKT)サブユニットが活性化されたかを明確にするために、3つのAKTサブユニット:AKT1、AKT2、およびAKT3に対して特異的なsiRNAを免疫ブロッティングアッセイによって検査した。その結果から、AKT1のみがリン酸化され、その下流エフェクターであるcAMP反応エレメント結合タンパク質1(CREB1)が活性化されたことが示された(
図10DS)。この機能は、免疫沈降(IP)アッセイによってさらに確認された(
図10ES)。総合すると、これは、bFGFは、4時間の誘導でPI3K/AKT1/CREB1シグナル伝達経路の活性化を誘導することを表す。
【0255】
[00279]小さい非コードRNAであるマイクロRNA(miR)-124は、腹部の前
腸内胚葉の誘導体である膵β細胞において、Foxa2発現に関与する。その後、ChIP-qPCRアッセイによれば、細胞核において、活性化されたCREB1は、miR-124aのプロモーターの3つの部位に直接標的化されて、4時間の誘導でmiR-124a発現を誘導し(
図10C)、CREB1のノックダウンはその発現を低減した(
図10FS)。qPCR分析によれば、経時的なCREB1およびmiR-124の発現は、平行な相関を示した(
図10D)。これらの結果から、bFGFによって誘導されたPI3K/Akt/CREB1シグナル伝達経路は、hTS細胞の初期分化においてmiR-124aを時空的にアップレギュレートすることを可能にすることが示される。
【0256】
3)MiR-124aはDEの特定化を方向付ける
[00280]肝形成に関連する数々の遺伝子をスクリーニングし、ルシフェラーゼレポーター
アッセイを構築し、それによってデカペンタプレジック相同体4(Smad4)(
図11A)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)(
図11B)、およびホメオボックス転写因子Cdx2(
図11C)に対するマザーを包含する数々のシグナル伝達タンパク質を測定した。miR-124aの阻害機能は、i)Smad4メッセンジャーRNA(Smad4mRNA)のプロモーターを標的化して、Smad4生産を防ぐこと(
図11A、下)を包含する。その結果として、阻害性Smad4は、Mixl1の抑制を引き起こし、これは、Smad4のノックダウンによって検証された(
図11AS)。このメカニズムは、DE段階におけるMixl1のダウンレギュレーション(
図10A)および原腸胚形成中における移動性の細胞運命の遷移を説明した。ii)GSK3βのmRNAのプロモーターを標的化して、その翻訳を阻害し(
図11B、下)、それによって、下流の基質であるカドヘリン関連タンパク質β-1(β-カテニン)の核移行を引き起こす。細胞核において、β-カテニンは、Foxa2遺伝子のプロモーターを標的化して、DE段階における分化を強調するFoxa2を生産した(
図11D)。興味深いことに、この増加したFoxa2は順に、ベータトロフィンタンパク質発現をコードするc19orf80遺伝子の転写を誘導した(
図11E)。ベータトロフィンは、肝臓で生産されるホルモンであり、膵臓のβ細胞の増殖を制御する。iii)caudal関連ホメオボックス転写物Cdx2のmRNAを標的化して、その多能性転写因子Cdx2への翻訳を阻害する(
図11C、下)。全てのこれらの分子的事象は、4時間の誘導で起こり、これは、免疫ブロッティングアッセイでmiR-124aおよび抗miR-124a抗体を使用することによって確認された(
図11F)。
【0257】
[00281]その後、減少したCdx2は、免疫蛍光イメージング研究によれば、多能性転
写因子Oct4のアップレギュレーションを促進した(
図11G)。Oct4の過剰発現はさらに、免疫ブロッティングアッセイによれば、抗miR-124a抗体を使用したmiR-124aのノックダウンによって検証された(
図11F)。このCdx2とOct4との相互の阻害関係は、免疫ブロッティングアッセイによって証明される(
図11BS、上)。さらに、8時間の誘導における多分化能転写因子Nanogの有意な段階的上昇が観察された(
図2BS、下)。これらの結果から、Oct4は、DE系統の多能性特徴を維持することにおいて主要な役割を果たし、一方でNanogは、hES細胞の場合と一致して支持的な役割を果たすことが示唆された。重要なことに、ChIP-qPCRアッセイによれば、活性化されたOct4は順に、Sox17遺伝子のプロモーターを標的化し、Sox17発現を促進した(
図11H)(
図10A)。Sox17の発現は、DE分化における別の重大時点に相当していた。まとめると、
図11Iは、bFGF誘導がhTS細胞においてmiR-124aを媒介するDE形成を開始させた調節分子メカニズムを説明する概略図である。
【0258】
4)3Dの組織構造における肝細胞様細胞の生成
[00282]その後、DE形成(8時間)後に、bFGF(10ng/ml)、デキサメタゾ
ン(Dexa;0.1μM)、オンコスタチンM(OSM;10ng/ml)、骨形成タンパク質4(BMP4;20ng/ml)、および肝細胞増殖因子(HGF;5ng/ml)の組合せを用いて細胞を培養した。意外なことに、細胞形態は、培養中の植え付け密度に応じて、分散した線維芽細胞様の細胞のように見えるか、または次第に集合化して、三日月形の細胞塊を形成する可能性がある(
図12A、挿入図および
図12AS)。細胞塊の組織学的な検査から、3次元(3D)の組織構造を構築する2つの別個の末梢および中央の区画が解明された。末梢部分において、多数のクラスター化した小細胞が、基底膜を超えて細胞外マトリックス(ECM)中に不規則に分布していた。細胞は、偏心的に配置されていることが多い縮合核、ならびに未発達の幹/前駆細胞に類似した好酸性細胞質中に豊富な顆粒および小胞を有していた(
図12AS)。中央の部分において、多くの独立した柱状のECMは、両側における細胞の内層により、基底領域から中央領域に向かって分布していた(
図12A)。これらの細胞は、豊富な好酸性細胞質を含有しており、単一の円形の細胞核中に、肝細胞の表現型を模擬する1または2つの中心的な核小体と共にクロマチンを分散させていた。数個の二核細胞を観察することができた。この特徴は、ヒト肝臓における肝細胞板として公知の特徴に類似している。
【0259】
[00283]免疫細胞化学的に、これらの肝細胞様細胞は、特異的なマーカー:i)ヒト細
胞の場合、ヒト細胞質マーカーのstem 121(商標)、肝臓固有の幹細胞の場合、マスト/幹細胞増殖因子受容体C-kit、胆管細胞の場合、CK19、および肝細胞の場合、CK18(
図12B);ならびにii)免疫組織化学的に肝細胞の細胞質において、アルブミン(ALB)、α-フェトプロテイン(AFP)、ベータトロフィン、ADH1、APOF、CPS1、GATA4、CYP1A1、およびCYP2B6(
図12C、および
図12CS)を提示した。その一方で、ASGR1、CXCR4、BSEP、MRP2、およびCx32を包含する表面マーカーのサブセットは、初代ヒト肝細胞に類似した多角形の細胞形状を構築した(
図12C)。さらに、電子顕微鏡法は、大きい細胞質対細胞核の比率、多量のミトコンドリア、よく組織化された小胞体、密着結合、多数の脂質小胞、グリコーゲン貯蔵、接着複合体を含む毛細胆管の拡張した内腔、および多重ECMなどの初代肝細胞に類似した微細構造を解明した(
図12D)。
【0260】
5)TGFβ1は、肝臓ECMにおけるフィブロネクチンおよびコラーゲンIV足場の形成に寄与する
細胞培養された培地中の9つの新たにアップレギュレートされた分泌タンパク質のなかでも、重要なことに、タンパク質(番号413)は、マスコットMS/MSイオンサーチシステム(ESI-QUAD-TOF、ブルカーインパクトHD、マトリックスサイエンス
、米国)によって、ペプチド配列の46%がマッチしたことにより、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)によって誘導されたタンパク質ig-h3前駆体(TGFβ1)であることを予測したことから(
図13A、赤色の矢印;
図13AS)、タンパク質(番号413)は魅力的な標的になってきた。TGFβ1は、主要な線維形成誘導性の多機能なサイトカインである自己分泌およびパラ分泌方式の両方として作用し、肝臓星細胞(HSC)におけるフィブロネクチンおよびコラーゲン形成を強化する。したがって、TGFβ1の存在を同定するために、免疫組織化学を使用して、ECMにおける免疫反応性TGFβ1、フィブロネクチン、およびコラーゲンIVの共発現を免疫組織化学によって実証した(
図13B)。これらの結果から、TGFβ1、フィブロネクチン、およびコラーゲンIVは、肝細胞板における肝細胞の増殖および分化を支えることができる肝細胞様細胞の3Dの組織構造中で、ECMの足場を少なくとも部分的に構成することが示唆される。
【0261】
6)転写発現は段階依存的な肝臓分化を特徴付ける
[00284]42種の肝臓の発達に関連する遺伝子を分析したところ、分化している細胞は、
細胞プロセス中に遺伝子発現においてオーバーラップするパターンを共有する可能性があることが示唆される。上述したように、多能性hTS細胞からの原始線条への遷移(15から30分)および内中胚葉への遷移(<1時間)において、GSC、ブラキュリ(T)、およびSox7の発現の上昇がMixl1、Foxa2およびSox17の段階的な増加と共に観察された(
図10A)。Sox7は、主として原始線条、臓側内胚葉(visceral endoderm)、および体壁内胚葉(parietal endoderm)で発現されるがDEでは発現されない(Kanai-Azumaら、2002)。DE段階において(1から8時間)、CXCR4、F
oxa2、Sox17、HHEX、およびSox7などの高い転写発現の持続性が保たれ、その後低下した(表3)。細胞プロセスが肝臓内胚葉の段階に入ったとき(8時間から1日)、Sox17およびFoxa2を包含する内胚葉転写因子の中核グループが順に、細胞を内胚葉系統に決定付ける遺伝子のカスケードをレギュレートした。肝臓の特定化の直後、上皮は、アルブミン、AFP、およびHnf4αなどの肝芽遺伝子に関連する遺伝子を発現し始める。多数の肝芽細胞関連の遺伝子発現が起こり、細胞分化を二分化能の肝芽細胞に決定付けた(2日目から4日目)。そこから肝芽細胞は、胎児肝細胞(例えばAFP)、成体肝細胞(例えばALBおよびHnf4α)、および胆管上皮細胞(例えばサイトケラチン-19)に関連する特異的な遺伝子を発現し、分化を起こして胎児/成体の肝細胞段階に到達した(>4日目)。まとめると、これらの進行性の転写発現は、表3に列挙されたような肝臓発達における細胞プロセスと一致する。
【0262】
7)肝細胞様細胞は肝機能を提示する
[00285]肝機能の保存は、多能性幹細胞から誘導された肝細胞における必須の要件である
。そのため、細胞培養培地を収集し、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)に供した。その結果から、誘導後の培地中で、アルブミン、NHCl
4によって誘導された尿素、およびCCl
4によって誘導されたGOT、GPT、およびALPのレベルが上昇したことが実証された(
図14A)。LDLの取り込みアッセイから、これらの細胞はLDLの取り込み能力を有することが解明された(
図14B)。オイル-O-レッド染色から脂質滴の存在が解明され、これは、脂肪生成における能力を示唆している(
図14C)。さらに、グリコーゲン貯蔵試験から、陽性過ヨウ素酸シッフ染色(PAS)染色が明らかになり、これは、細胞学または組織学のいずれかにおいてジアスターゼによる消化およびPAS蛍光発光試験によって裏付けられた(
図14D)。次に、qPCR分析から、CYP3A4、CYP7A1、CYP2B6、CYP1A2、CyP2C8、CYP2C9、CYP2D6、およびCYP2E1などの様々な代謝特異的な薬物に応答するシトクロムP450(CYP)酵素の能力が解明された(
図14E)。機能的には、例えば、リファンピン(refampin)によって誘導されたCYP3A4のmRNAはその阻害剤であるイトラコナゾールによって低減され、一方で2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(THA)
によって誘導されたコレステロール7α-ヒドロキシラーゼ(CYP7A1)のmRNAはケノデオキシコール酸(CDCA)によって低減された。これらの結果から、それぞれ生体異物の酸化に加えて胆汁酸およびコレステロール代謝における能力が示唆される。
【0263】
8)機能的な肝細胞様細胞は幹細胞ホーミングの特徴を有する
[00286]動物実験を、急性肝不全における臨床的なシナリオを模擬するように設計し、そ
れにより四塩化炭素(CCl
4)の腹膜内点滴をスプラギーダーレーラットに与え、続いてhTS細胞によって誘導された肝細胞様細胞を静脈注射(尾静脈)した。目標は、ラット肝臓においてこれらの異種移植片がホーミングにより生存できるかどうか、およびこれらの細胞が果たす役割は何なのかを検査することであった。0、1、2、4、および7日に血清サンプルを収集して、ASTおよびALTレベルを測定した。2、4、および7日にラットを殺して、組織病理学的研究のために肝臓サンプルを得た。生化学的研究から、血清中ASTおよびALTレベルが、時間経過にわたり細胞療法グループ(CCl
4+細胞)において対照グループ(CCl
4のみ)より有意に高いようであったことが解明された(
図15A)。この曖昧な観察を明瞭にするために、肝臓組織を病理組織学的に検査した。
【0264】
[00287]インジケーターとしてヒト細胞質マーカーのstem-121(商標)(ステ
ムセルテクノロジーズ社(Stem Cell Technologies. Inc.)、ワシントン州)を使用して、hTS細胞における陽性免疫反応性stem-121発現を同定し(
図15B)、続いて埋め込みの4日後の肝臓組織におけるstem-121陽性肝細胞様細胞の存在を確認した(
図15C)。この観察から、肝細胞様細胞の静脈内投与は、肝臓組織へのホーミングを可能にすることが示された。興味深いことに、これらのstem-121
陽性肝細胞は同様に、免疫組織化学的に変性を受けていた(
図15C)。この事実は、埋め込まれた肝細胞様細胞の変性を引き起こしたCCl
4の追加の作用(24時間の血中半減期)に起因する、細胞療法グループにおける、CCl4のみで処理されたグループよりかなり高いASTおよびALTレベルの上昇を説明する。hTS細胞によって誘導された肝細胞様細胞の静脈内注入は、CCl
4傷害肝臓組織に到達してそこに定着することができる。
【0265】
9)肝細胞様細胞は、HLA-GおよびTGFβ1を発現して、CD4
+Foxp3
+Treg細胞の能力を補充することによって免疫特権を有する
[00288]埋め込まれた肝細胞様細胞は、免疫組織化学的に着床から4日後に肝臓組織でs
tem-121およびHLA-Gが共発現されたことから、ヒト白血球抗原G(HLA-G)を発現したが(
図15D)、これは、免疫特権の特徴を示唆している。HLA-Gは、膜結合でも可溶性でも、様々な免疫細胞のタイプ(NK、T、B、単球/樹状細胞)に強く作用して、免疫細胞表面で発現される阻害性受容体との相互作用を介して先天性および適応免疫の両方を阻害する。
【0266】
[00289]さらに、肝細胞様細胞は、ECMにTGFβ1を分泌することができた(
図1
3B)。TGFβ1は、胸腺T細胞発達の重要なレギュレーターであり、末梢T細胞のホメオスタシス、自己抗原への寛容性、および免疫応答中のT細胞分化における重要なプレーヤーである。それに対し、CD4
+Foxp3
+T調節性(Treg)細胞は免疫細胞化学的には肝臓の洞様血管中に存在しており(
図15E)、これは、埋め込まれた細胞に応答してTreg細胞を肝臓に動員することを示唆している。サイトカインTGFβ1またはCD4
+Foxp3
+Treg細胞による活性な免疫抑制は、末梢T細胞の寛容における重要なメカニズムを果たす役割がある。埋め込まれた肝細胞様細胞は、HLA-GおよびTGFβ1を発現すること、およびCD4
+Foxp3
+Treg細胞を肝臓に動員して末梢T細胞寛容を制御することによって免疫特権を有する。
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
[00290]本明細書に記載された実施例および実施態様は単に例示の目的のためであり、
当業者に示唆された様々な改変または変更が、本出願の本質および範囲ならびに添付の特許請求の範囲中に包含されるものとする。
前記単離されたヒト肝細胞が、マスト/幹細胞増殖因子受容体-kit(C-kit)、サイトケラチン19(CK19)、サイトケラチン18(CK18)、アルブミン(ALB)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、ベータトロフィン、アルコールデヒドロゲナーゼ-1(ADH1)、カルバモイルリン酸シンターゼ1(CPS1)、GATA転写因子4(GATA4)、シトクロムP450ファミリー1のサブファミリーAのポリペプチド1(CYP1A1)、シトクロムP450 2B6(CYP2B6)、アシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)、多剤耐性タンパク質-2(MRP2)、コネクシン32(CX32)、グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット(G6PC)、肝細胞核因子4-アルファ(HNF4α)、SRY-ボックス17(SOX17)、トランスチレチン(TTR)、およびチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)からなる群から選択される1つ以上のバイオマーカーをさらに発現する、請求項1の単離されたヒト肝細胞。
請求項1~7のいずれか1項に記載の単離されたヒト肝細胞の使用であって、肝臓組織または肝機能の障害の治療が必要な対象において、肝臓組織または肝機能の障害を治療するための医薬の製造における、前記使用。
治療用タンパク質を生産する方法であって、請求項1の単離されたヒト肝細胞を培地中で培養し、そして該培地から該治療用タンパク質を抽出することを含む、前記方法。
前記ステロイドが、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、およびトリアムシノロンからなる群から選択される、請求項1の単離されたヒト肝細胞。
前記サイトカインが、インターロイキン-6、オンコスタチンM、インターロイキン-11、白血病抑制因子(LIF)、毛様体神経向性因子(CNTF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、およびカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)からなる群から選択される、請求項1の単離されたヒト肝細胞。