(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030006
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20230228BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230228BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230228BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61P25/18
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P25/24
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198595
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2021053242の分割
【原出願日】2017-03-24
(31)【優先権主張番号】62/313,629
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ペン・リ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】双極性障害、大うつ病性障害(MDD)等の、5-HT
2A受容体、セロトニン輸送体(SERT)および/またはドパミンD
1/D
2受容体シグナル伝達系が関わる疾患を治療するための化合物を提供する。
【解決手段】例えば、遊離形態または塩形態の式IIで示される化合物を含む、患者における双極性障害を処置するための医薬組成物である。所定の重水素位置での重水素の取り込みが97%を超えることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形態または塩形態の式II
【化1】
の化合物または遊離形態または塩形態の式III
【化2】
の化合物を含む、患者における双極性障害を処置するための医薬組成物。
【請求項2】
遊離形態または塩形態の式II
【化3】
の化合物または遊離形態または塩形態の式III
【化4】
の化合物を含む、患者における大うつ病性障害(MDD)を処置するための医薬組成物。
【請求項3】
化合物が塩形態である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
塩がトルエンスルホン酸付加塩である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
化合物が遊離形態または塩形態の式IIの化合物である、請求項1~4の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
1以上の他の治療剤と併用することを特徴とする、請求項1~5の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
1以上の他の治療剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のGABA活性を調節する化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT調節物質、メラトニンアゴニスト、イオンチャネル調節物質、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)、5-HT6アンタゴニスト、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニスト、ノルアドレナリンアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬;および抗精神病薬;および抗うつ薬から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
1以上の他の治療剤がアミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン硫酸塩、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラフェキシンの1以上から選択される抗うつ薬である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗うつ薬がSSRIである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
治療有効量が1日あたり2.5~50mgの用量である、請求項1~9の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
構造式の所定の重水素位置での重水素の取り込みが90%を超える、請求項1~10の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
構造式の所定の重水素位置での重水素の取り込みが97%を超える、請求項1~10の何れかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年3月25日に出願された米国仮特許出願番号第62/313,629号の優先権および利益を主張する(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0002】
発明の分野
本発明は、本明細書に記載の遊離形態、薬学的に許容される塩形態および/または実質的に純粋な形態の、特定の重水素化複素環縮合γカルボリン、ならびに5-HT2A受容体、セロトニン輸送体(SERT)および/またはドパミンD1/D2受容体シグナル伝達系が関わる経路が関わる疾患、例えば、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭部痛と関連する状態、社会恐怖症、胃腸管運動の機能障害のような胃腸障害、および肥満症;精神病またはパーキンソン病と関連するうつ病および気分障害;うつ病と関連する統合失調症のような精神病;双極性障害;および他の精神医学的状態および神経学的状態などの疾患または障害の治療における使用方法、ならびに他の薬剤との組合せに関する。
【背景技術】
【0003】
精神病、特に統合失調症および統合失調感情障害は、世界中の人口の推定1~2%が罹患している。統合失調症は、前駆期、活動期および残遺期という3つの期から成る。前駆期は、不顕性(subclinical)徴候および症状が観察される初期段階である。これらの症状としては、通常の趣味への興味の喪失(loss of interest in usual pursuits)、友達および家族からの離脱、錯乱、集中力の問題、倦怠感(feeling of listlessness)および感情鈍麻を挙げることができる。活動期は、妄想、幻覚および疑い深さなどの陽性症状の増悪によって特徴付けられる。残遺期は、感情離脱、受動的な社会離脱、および常同思考などの陰性症状;ならびに能動的社会回避、不安、緊張、および身体的関心を包含する一般的な精神病理学的症状によって特徴付けられる。残遺期症状は、また、しばしば、うつ病、認知障害および不眠症を伴う。これらの残遺期症状は、一括して、現在市場にて入手可能な多くの統合失調症治療薬によっては十分に処置されず、したがって、通常、処置後に活動期症状が鎮静した後に観られる。この疾病のこの期は、患者がより生産的で充実した生活に戻りたい時であるが、残遺陰性症状および認知機能障害は適切に処置されないので、このような機能への復帰を妨げる。精神病(例えば、統合失調症)の活動期または急性期症状だけではなく残遺期症状も処置し得る統合失調症治療薬が依然として緊急に必要とされている。加えて、これらの症状を処置し、ヒスタミンH1およびムスカリン性アセチルコリン受容体系とのオフターゲット相互作用によって引き起こされる望ましくない副作用がない医薬が必要とされている。
【0004】
置換複素環縮合γカルボリンは、中枢神経系障害の治療における5-HT2受容体、特に5-HT2A受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6および特許文献7に、肥満症、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭部痛と関連する状態、社会恐怖症、胃腸管運動の機能障害のような胃腸障害、および肥満症などの5-HT2A受容体調節と関連する障害の治療に有用な新規化合物として記載されている。
【0005】
特許文献8および特許文献9には、置換複素環縮合γカルボリンの製造方法、ならびにこれらγカルボリンの、嗜癖行動および睡眠障害のような中枢神経系障害の制御および予防に有用なセロトニンアゴニストおよびアンタゴニストとしての使用が開示されている。
【0006】
特許文献10には、精神病とうつ病性障害の合併、ならびに精神病またはパーキンソン病患者における睡眠障害、うつ病性障害および/または気分障害の治療のための特定の置換複素環縮合γカルボリンの使用が開示されている。精神病および/またはうつ病と関連する障害に加えて、この特許出願は、ドパミンD2受容体に影響を及ぼさないかまたは最小限にしか影響を及ぼさず、それによりドパミンD2経路の副作用または慣用の鎮静催眠剤(例えば、ベンゾジアゼピン系薬剤)と関連する他の経路(例えば、GABAA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力感、頭痛、霞目、回転性めまい、悪心、嘔吐、心窩部苦悶、下痢、関節痛および胸痛の発症を包含するがこれらに限定されない)を伴わずに、睡眠障害の治療に有用な、5-HT2A受容体を選択的に拮抗するためのこれら化合物の低用量での使用を記載し、クレームする。
【0007】
さらにまた、これらの特定の置換複素環縮合γカルボリン化合物(本明細書において以下に記載される化合物)は、精神病の急性症状だけではなく残遺症状の処置にも有効であることが見出された。したがって、該発明は、該特定の置換複素環縮合γカルボリン化合物(本明細書において以下に記載される化合物)を、単独で、または精神病(特に、統合失調症)の残遺症状の処置のための補助療法として使用する方法を提供する。
【0008】
特許文献11には、特定の置換複素環縮合γカルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶、例えば4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンのトルエンスルホン酸付加塩の製造方法が記載されている。
【0009】
特許文献12には、改良された製剤、例えば、持続放出型/制御放出型製剤のための置換複素環縮合γカルボリンのプロドラッグ/代謝物が記載されている。この出願は、4-フルオロフェニル(4-ヒドロキシ)ブチル基でN置換された複素環縮合γカルボリンが、4-フルオロフェニルブタノンを含有する複素環縮合γカルボリンと比べて高いセロトニン輸送体(SERT)選択性を有することが示されることを記載する。しかしながら、これらの化合物のヒドロキシ基は、血漿および脳内でケトンからまたケトンへと相互変換され、4-フルオロフェニルブタノン薬物のリザーバーとして供し得る。置換複素環縮合γカルボリンおよびそれらの使用は公知であるが、本発明者らは、驚くべきことに、インビトロ試験では活性が低い特定の置換複素環縮合γカルボリンが、血漿および脳内でこれら活性が低い化合物と非常に活性なケトン薬物との間で相互変換されることを見出した。本発明者らは、さらに、薬物動態プロファイルが改変され、例えば吸収および分布のメカニズムおよび/または速度が改変され、したがって、製剤の改良および/または体内での薬物の効果の期間の制御(例えば、持続放出または制御放出)に有用であり得る、特定の置換複素環縮合γカルボリンのプロドラッグを提供している。
【0010】
特許文献13には、ヒドロキシル基を担持している炭素上にアルキル置換基を取り込み、その結果として、5-HT2A受容体と拮抗し、かつ、セロトニン再取り込み輸送体を阻害する化合物を得ることによる、ヒドロキシとケトンとの間でのインビボでの相互変換を遮断する化合物が記載されている。
【0011】
従前に記載された化合物の主な代謝経路は、CYP 3A4によって触媒されるN-脱メチル化、およびケトン還元酵素によって触媒されるケトン還元である。チトクロム酸化酵素によるN-脱アルキル化は、窒素原子に対してα位にある1個以上の炭素原子の初期酸化によって生じることが知られている。ケトン還元を触媒するこのファミリーの酵素は大きく、かつ、多様であり、そのメカニズムは、完全に解明されているというわけではない。メカニズム的に、ケトン還元がケトンのエノール互変異性体またはケト互変異性体によって作動し得ることは興味深いことである。
特許文献14には、ケトンおよび/またはN-メチル置換基の代謝を部分的に制限することによって代謝分解を減少させる目的のための一般的な重水素化複素環縮合γカルボリンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,548,493号明細書
【特許文献2】米国特許第7,238,690号明細書
【特許文献3】米国特許第6,552,017号明細書
【特許文献4】米国特許第6,713,471号明細書
【特許文献5】米国特許第7,183,282号明細書
【特許文献6】米国再発行特許発明第39680号明細書
【特許文献7】米国再発行特許発明第39679号明細書
【特許文献8】PCT/US08/03340(国際公開第2008/112280号)
【特許文献9】米国特許出願第10/786,935号明細書
【特許文献10】国際公開第2009/145900号
【特許文献11】国際公開第2009/114181号
【特許文献12】国際公開第2011/133224号
【特許文献13】国際公開第2013/155505号
【特許文献14】国際公開第2015/154025号
【発明の概要】
【0013】
出願人は、予想外に、以下に示すように、式Qで示される複素環縮合γカルボリンの主要代謝経路が、ピペラジン環でのN-脱アルキル化およびα-酸化によって、ならびにカルボニルの還元によって、式Q-1、Q-2およびQ-3で示される化合物を得るものであることを見出した:
【化1】
また、出願人は、式Q-2のアルコール代謝物が有意な薬理活性を保持することを見出した。
【0014】
理論によって束縛されるものではないが、本発明は、これらの経路によって生じる代謝を特異的に制限および/または防止する化合物を提供する。通常の水素原子(1H)と比較した重水素(2H)原子の非常に類似の特性に起因して、水素を重水素に置き換えた薬剤化合物は、一般に、重水素化されていない類似体と同様の生物活性を有するが改良された薬物動態特性を潜在的に有すると考えられる。このような置換が薬理学的活性のあまりにも重度の損失を伴わずに薬物動態特性の改良をもたらす程度は可変である。かくして、状況によっては、得られた重水素化化合物は、薬物動態学的安定性の適度な上昇だけであり、他の状況では、得られた重水素化化合物は、有意に改善された安定性を有し得る。さらにまた、同時重水素置換の効果を確実に予測することは困難であり得る。これらは、代謝安定性の相加的(相乗的)改善をもたらすかどうか分からない。
【0015】
本発明は、トリ重水素化N-メチル、および/またはN-メチレンと隣接するジ重水素化メチレンを含有する化合物を提供する。これらの新規化合物は、それらの天然水素類似体と同様の様式で、5-HT2A受容体をアンタゴナイズし、セロトニン再取り込み輸送体を阻害し、ドパミン作動性タンパク質リン酸化を調節する。しかしながら、これらの化合物は、予想外に改善された代謝安定性を示す。
【0016】
第1の実施態様において、本発明は、遊離形態または塩形態、例えば薬学的に許容される塩形態(例えば、トシレート)の、式I:
【化2】
で示される化合物を提供する。
【0017】
第2の実施態様において、本発明は、遊離形態または塩形態、例えば薬学的に許容される塩形態(例えば、トシレート)の、式II:
【化3】
で示される化合物を提供する。
【0018】
第3の実施態様において、本発明は、遊離形態または塩形態、例えば薬学的に許容される塩形態(例えば、トシレート)の、式III:
【化4】
で示される化合物を提供する。
【0019】
第4の実施態様において、本発明は、遊離形態または塩形態、例えば薬学的に許容される塩形態(例えば、トシレート)の、式IV:
【化5】
[式中、
R
1は、CH
3またはCD
3であり;
R
2およびR
3は、ともにHであるか、またはともにDであり;
ただし、R
1がCH
3である場合、R
2およびR
3はともにDである]
で示される化合物を提供する。
【0020】
さらなる実施態様において、本発明は、以下の化合物を提供する:
1.1 化合物が遊離形態または薬学的に許容される塩形態である、式I~IVのいずれかの化合物;
1.2 塩形態が薬学的に許容される酸の酸付加塩である、式1.1の化合物;
1.3 酸がトルエンスルホン酸である、式1.2の化合物;
1.4 化合物が実質的に純粋なジアステレオマー形態である(すなわち、他のジアステレオマーを実質的に含まない)、式I~IVまたは1.1~1.3のいずれかの化合物;
1.5 化合物が、70%を超えるジアステレオマー過剰率、好ましくは80%を超えるジアステレオマー過剰率、より好ましくは90%を超えるジアステレオマー過剰率、最も好ましくは95%を超えるジアステレオマー過剰率を有する、式I~IVまたは1.1~1.4のいずれかの化合物;
1.6 化合物が、構造式の所定の重水素位置での重水素の取り込みが天然のものよりも多い(すなわち、0.0156%を超える)、式I~IVまたは1.1~1.5のいずれかの化合物;
1.7 化合物が、構造式の所定の重水素位置での重水素の取り込みが天然のものよりも実質的に多い(例えば、0.1%を超えるか、または0.5%を超えるか、または1%を超えるか、または5%を超える)、式I~IVまたは1.1~1.6のいずれかの化合物;
1.8 化合物が、構造式の所定の重水素位置での重水素の取り込みが50%を超える(すなわち、50原子%Dを超える)、例えば、60%を超えるか、または70%を超えるか、または80%を超えるか、または90%を超えるか、または95%を超えるか、または96%を超えるか、または97%を超えるか、または98%を超えるか、または99%を超える、式I~IVまたは1.1~1.7のいずれかの化合物。
【0021】
第2の態様において、本発明は、例えば即時放出をもたらすことができるかまたは持続もしくは遅延放出をもたらすことができる、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I~IVまたは1.1~1.8のいずれかの化合物(本発明の化合物)を薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して含む、医薬組成物を提供する。
【0022】
第2の態様のさらなる実施態様において、本発明の医薬組成物は、持続または遅延放出のためのものであり、例えば、デポ製剤である。一の実施態様において、デポ製剤は、ポリマーマトリックス中の本発明の化合物を含む。別の実施態様において、本発明の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散されているかまたは溶解されている。さらなる実施態様において、ポリマーマトリックスは、デポ製剤に用いられる標準的なポリマー、例えば、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、またはα-シアノアクリル酸アルキルのポリマー、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリ(アミノ酸)、ヒアルロン酸エステル、およびそれらの混合物から選択されるポリマーを含む。さらなる実施態様において、該ポリマーは、ポリラクチド、ポリd,l-ラクチド、ポリグリコリド、PLGA 50:50、PLGA 75:25、PLGA 85:15およびPLGA 90:10ポリマーからなる群から選択される。別の実施態様において、該ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、上記のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート(copolyoxalates)、ポリカプロラクトン、ポリジオキソノン(polydioxonone)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、アルブミン、カゼインを包含する天然ポリマー、およびワックス、例えばグリセロールモノステアレートおよびグリセロールジステアレート、ならびに同類のものから選択される。特定の実施態様において、該ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)を含む。上記の組成物のいずれかは、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合した医薬組成物であり得る。
【0023】
ポリマーマトリックスの分解により本発明の化合物が放出される上記の(医薬)デポ製剤は、特に、持続または遅延放出に有用である。これらの組成物は、最大180日間、例えば約14日間~約30日間~約180日間にわたる本発明の化合物の制御および/または持続放出のために(例えば、デポ組成物として)製剤化され得る。例えば、該ポリマーマトリックスは、約30日間、約60日間または約90日間にわたって分解して本発明の化合物を放出する。別の例では、該ポリマーマトリックスは、約120日間、または約180日間にわたって分解して本発明の化合物を放出し得る。
【0024】
さらに別のさらなる実施態様において、本発明の医薬組成物、特に本発明のデポ組成物は、注射による投与用に製剤化される。
【0025】
第3の態様において、本発明は、持続または遅延放出経口製剤における上記の本発明の化合物を提供する。例えば、本発明は、本発明の化合物の送達のための、例えば国際公開第2000/35419号および欧州特許出願公開第1539115号(米国出願公開第2009/0202631号)に記載されている系(各記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)と類似する、浸透圧制御放出経口送達系(OROS)を提供する。したがって、この態様の一の実施態様において、本発明は、(a)上記の、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を含有するゼラチンカプセル;(b)カプセルから外側へ向かう順で、(i)バリア層、(ii)膨張層、および(iii)半透過性層を含む、ゼラチンカプセル上に重ねられた多層壁;ならびに(c)該壁を通って形成されたかまたは形成可能なオリフィスを含む、医薬組成物またはデバイス(組成物P.1)を提供する。
【0026】
この態様の別の実施態様において、本発明は、液体、上記の遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、該ゼラチンカプセルの外表面と接触しているバリア層、該バリア層と接触している膨張層、該膨張層を覆っている半透過性層、および壁内に形成されたかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれている、組成物(組成物P.2)を提供する。
【0027】
第3の態様のさらに別の実施態様において、本発明は、液体、上記の遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、該ゼラチンカプセルの外表面と接触しているバリア層、該バリア層と接触している膨張層、該膨張層を覆っている半透過性層、および壁内に形成されたかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれており、該バリア層が該膨張層と該出口オリフィスでの環境との間でシールを形成する、組成物(組成物P.3)を提供する。
【0028】
第3の態様のさらに別の実施態様において、本発明は、液体、上記の遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、該ゼラチンカプセルの外表面と接触しているバリア層、該バリア層の一部と接触している膨張層、少なくとも該膨張層を覆っている半透過性層、および該ゼラチンカプセルの外表面から使用環境まで延びている、該投与剤形において形成されたかまたは形成可能な出口オリフィスによって囲まれている、組成物(組成物P.4)を提供する。該膨張層は、1つ以上の個別セクション、例えば、ゼラチンカプセルの対向する側部または端部に位置する2つのセクションで形成され得る。
【0029】
第3の態様の特定の実施態様において、浸透圧制御放出経口送達系(すなわち、組成物P.1~P.4)における本発明の化合物は、液体製剤であり、該製剤は、純粋な液体活性剤、溶液、懸濁液、乳濁液もしくは自己乳化組成物の液体活性剤、または同類のものであり得る。
【0030】
ゼラチンカプセル、バリア層、膨張層、半透過性層およびオリフィスの特徴を含む浸透圧制御放出経口送達系組成物のさらなる情報は、国際公開第2000/35419号に見ることができる(出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。本発明の化合物または医薬組成物についての他の浸透圧制御放出経口送達系は、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)に見ることができる(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0031】
したがって、第3の態様の別の実施態様において、本発明は、(a)2つ以上の層(この2つ以上の層は第1の層および第2の層を含み、該第1の層は、上記の遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物または医薬組成物を含み、第2の層は、ポリマーを含む);(b)この2つ以上の層を囲む外壁;および(c)該外壁中のオリフィスを含む組成物またはデバイス(組成物P.5)を提供する。
【0032】
組成物P.5は、好ましくは、三層コアを囲む半透過膜を利用する:これらの実施態様において、第1の層は、第1薬物層と称され、少量の薬物(例えば、本発明の化合物)および浸透圧調整剤(osmotic agent)(例えば、塩)を含有し、第2薬物層と称される中間層は、より多量の薬物、賦形剤を含有し、塩を含有せず;プッシュ層と称される第3の層は、浸透圧調整剤を含有し、薬物を含有しない。少なくとも1つのオリフィスは、カプセル型錠剤の第1薬物層末端で膜に穴を開ける。(組成物P.6)
【0033】
組成物P.5またはP.6は、コンパートメントを画定する膜であって、該膜が内部保護サブコートを囲んでおり、少なくとも1つの出口オリフィスがそこで形成されたかまたは形成可能であり、該膜の少なくとも一部が半透過性である、膜;出口オリフィスから遠く離れて該コンパートメント内に位置する膨張層であって、該膜の半透過性部分と流体連結している膨張層;出口オリフィスと隣接して位置する第1薬物層;ならびに第1薬物層と膨張層との間で該コンパートメント内に位置する第2薬物層を含み得、これら薬物層は遊離形態の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。第1薬物層および第2薬物層の相対粘度によって異なる放出プロファイルが得られる。各層の最適な粘度を同定するのは不可欠である。本発明において、粘度は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。該コアからの送達プロファイルは、各薬物層の重量、処方および厚さに依存する。
【0034】
特定の実施態様において、本発明は、第1薬物層が塩を含み、第2薬物層が塩を含まない、組成物P.7を提供する。組成物P.5~P.7は、膜と薬物層との間に流動促進層を含んでもよい。組成物P.1~P.7は、概して、浸透圧制御放出経口送達系組成物と称される。
【0035】
第4の態様において、本発明は、中枢神経系障害の処置または予防方法であって、該処置または予防を必要とする患者に上記の遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式I~IVもしくは1.1~1.8の化合物または医薬組成物を投与することを含み、式I~IVまたは1.1~1.8の化合物が式Qの化合物を用いる同障害の治療に有効な量よりも少ない有効量で投与されてもよい、方法(方法I)を提供する。
【0036】
第4の態様のさらなる実施態様において、本発明は、さらに下記の式で示されるとおりである、方法Iを提供する:
7.1 中枢神経系障害が、認知症と関連する1つ以上の障害、例えば、老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭型認知症、核上性麻痺(parasupranuclear palsy)、レビー小体型認知症、血管性認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群、高齢うつ病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、大脳皮質基底核変性症およびプリオン病、自閉症および注意欠陥多動症障害を包含する軽度認知障害および認知症性疾患と関連する障害である、方法I;
7.2 認知症と関連する障害が、(1)行動または気分障害、例えば激越/過敏、攻撃的行動(aggressive/assaultive behavior)、怒り、身体的または感情的爆発;(2)精神病;(3)うつ病;および(4)睡眠障害からなる群から選択される、方法Iまたは7.1;
7.3 中枢神経系障害が、激越/過敏、攻撃的行動(aggressive/assaultive behavior)、怒り、身体的または感情的爆発である、方法Iまたは7.1;
7.4 中枢神経系障害が、肥満症、不安、うつ病(例えば、難治性うつ病および大うつ病性障害(MDD))、精神病、統合失調症、睡眠障害(特に、統合失調症ならびに他の精神および神経疾患と関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、頭部痛と関連する状態、社会恐怖症、認知症における激越(例えば、アルツハイマー病における激越)、自閉症および関連自閉症性障害における激越、ならびに胃腸管運動の機能障害のような胃腸障害からなる群から選択される障害である、方法I;
7.5 中枢神経系障害が、国際公開第2009/145900号に同様に記載されるような(その記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)、セロトニン5-HT2A、ドパミンD1/D2受容体系および/またはセロトニン再取り込み輸送体(SERT)経路が関与する障害である、方法I、または7.2~7.4のいずれか;
7.6 中枢神経系障害が、セロトニン再取り込み輸送体(SERT)経路が関与する障害である、方法I、または式7.2~7.5のいずれか;
7.7 中枢神経系障害が、以下のものから選択される障害である、方法I、または式7.2~7.6のいずれか:(1)うつ病に罹患している患者における精神病(例えば、統合失調症);(2)精神病(例えば、統合失調症)に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する気分障害;および(4)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する睡眠障害;(5)うつ病;(6)不安;(7)心的外傷後ストレス障害;または(8)衝動制御障害、例えば、間欠性爆発性障害;
7.8 中枢神経系障害が精神病(例えば、統合失調症)であり、該患者がうつ病に罹患している患者である、方法I、または式7.2~7.7のいずれか;
7.9 該患者が、慣用の統合失調症治療薬(例えば、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセチン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドン)の副作用に耐えられない、方法I、または式7.2~7.8のいずれか;
7.10 該患者が、慣用の統合失調症治療薬(例えば、ハロペリドール、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドン)の副作用に耐えられない、方法I、または式7.2~7.9のいずれか;
7.11 該障害がうつ病であり、該患者が精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病に罹患している患者である、方法I、または式7.2~7.10のいずれか;
7.12 該障害が睡眠障害であり、該患者がうつ病に罹患している、方法I、または式7.2~7.6のいずれか;
7.13 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者が精神病(例えば、統合失調症)に罹患している、方法I、または7.2~7.6のいずれか;
7.14 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者がパーキンソン病に罹患している、方法I、または7.2~7.6のいずれか;
7.15 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者がうつ病と精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病に罹患している、方法I、または7.2~7.6のいずれか;
7.16 該中枢神経系障害が、精神病(例えば、統合失調症(例えば、残遺亜型)、妄想性障害(例えば、身体型)、精神病を伴う大うつ病、精神病症状を伴う双極性障害、短期精神病性障害、統合失調症様障害、統合失調感情障害、または内科的疾患もしくは物質使用によって引き起こされる精神病)の残遺症状である、方法I、または7.1~7.6のいずれか。好ましくは、患者が統合失調症の残遺症状に罹患している;
7.17 該残遺期症状が下記のものを包含する、方法I、または7.1~7.6のいずれか:陰性症状、例えば、感情鈍麻、感情離脱、対人関係不良、受動的なまたは無欲性の社会離脱、抽象思考困難、会話の自発性および流暢さの欠如、ならびに常同思考;一般的な精神病理学的症状、例えば、身体的関心、不安、罪悪感、緊張、癖(mannerisms)および不自然な姿勢、うつ病、運動発達遅滞、非協力的、異常な思考内容、見当識障害、注意力不良、判断および洞察の欠如、意志の障害、衝動制御不良、先入観および能動的社会回避;認知機能障害および睡眠障害(例えば、不眠症);
7.18 有効量が、1mg~1000mg、好ましくは2.5mg~50mg、さらに好ましくは1~40mg、例えば、1~10mg、例えば、10mg、20mg、または20mg超、例えば、30mg、40mgである、上記の方法のいずれか;
7.19 有効量が、1mg~100mg/日、好ましくは2.5mg~50mg/日、さらに好ましくは1~40mg/日、例えば、1~10mg/日、例えば、10mg/日、20mg/日、または20mg超/日、例えば、30mg/日、40mg/日である、上記の方法のいずれか;
7.20 処置しようとする状態が、ジスキネジア、例えば、ドパミン作用薬、例えば、レボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニストから選択される薬物、例えば、レボドパ、および抗コリン薬を受けている患者におけるジスキネジアである、上記の方法のいずれか;
7.21 該患者がパーキンソン病に罹患している、上記の方法のいずれか;
7.22 該患者が、例えばシタロプラム(Celexa、Cipramil、Cipram、Dalsan、Recital、Emocal、Sepram、Seropram、Citox、Cital);ダポキセチン(Priligy);エスシタロプラム(Lexapro、Cipralex、Seroplex、Esertia);フルオキセチン(Depex、Prozac、Fontex、Seromex、Seronil、Sarafem、Ladose、Motivest、Flutop、Fluctin(EUR)、Fluox(NZ)、Depress(UZB)、Lovan(AUS)、Prodep(IND));フルボキサミン(Luvox、Fevarin、Faverin、Dumyrox、Favoxil、Movox);インダルピン(Upstene);パロキセチン(Paxil、Seroxat、Sereupin、Aropax、Deroxat、Divarius、Rexetin、Xetanor、Paroxat、Loxamine、Deparoc);セルトラリン(Zoloft、Lustral、Serlain、Asentra);ビラゾドン(Viibryd);またはジメリジン(Zelmid、Normud)の1つ以上から選択される選択的セロトニン再取り込み阻害剤に反応しない、上記の方法のいずれか;
7.23 該患者が、例えばシタロプラム(Celexa、Cipramil、Cipram、Dalsan、Recital、Emocal、Sepram、Seropram、Citox、Cital);ダポキセチン(Priligy);エスシタロプラム(Lexapro、Cipralex、Seroplex、Esertia);フルオキセチン(Depex、Prozac、Fontex、Seromex、Seronil、Sarafem、Ladose、Motivest、Flutop、Fluctin(EUR)、Fluox(NZ)、Depress(UZB)、Lovan(AUS)、Prodep(IND));フルボキサミン(Luvox、Fevarin、Faverin、Dumyrox、Favoxil、Movox);インダルピン(Upstene);パロキセチン(Paxil、Seroxat、Sereupin、Aropax、Deroxat、Divarius、Rexetin、Xetanor、Paroxat、Loxamine、Deparoc);セルトラリン(Zoloft、Lustral、Serlain、Asentra);ビラゾドン(Viibryd);またはジメリジン(Zelmid、Normud)の1つ以上から選択される選択的セロトニン再取り込み阻害剤も受けている、上記の方法のいずれか;
7.24 該患者が、自閉症スペクトラム症、例えば、自閉症またはアスペルガー症候群に罹患している、上記の方法のいずれか;
7.25 該患者が、認知症、例えば、老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭型認知症、核上性麻痺(parasupranuclear palsy)、レビー小体型認知症、血管性認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群、高齢うつ病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、大脳皮質基底核変性症およびプリオン病、自閉症および注意欠陥多動症障害を包含する、軽度認知障害および認知症性疾患と関連する障害に罹患している、上記の方法のいずれか;
7.26 該患者が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)またはNメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストも受けている、上記の方法のいずれか;
7.27 該コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、タクリン、リバスチグミン(Exelon)、ドネペジル(Aricept)、およびガランタミン(Razadyne、以前はReminylと称されていた)からなる群から選択される、方法7.26;
7.28 該コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)が遊離形態または薬学的に許容される塩形態のドネペジルである、方法7.26;
7.29 該NMDA受容体アンタゴニストが遊離形態または薬学的に許容される塩形態のメマンチンである、方法7.26;
7.30 さらなる統合失調症治療薬および/または抗うつ薬および/または睡眠薬のような1つ以上の他の治療薬を投与することを含む、上記の方法のいずれか;
7.31 該1つ以上の他の治療薬が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、抗うつ薬、例えば、GABA活性を調節する(例えば、該活性を増強し、GABA伝達を促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT調節物質(例えば、5-HT1Aアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2Aインバースアゴニスト等)、メラトニンアゴニスト、イオンチャネル調節物質(例えば、ブロッカー)、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニスト、ノルアドレナリン作動性アンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬;および統合失調症治療薬、例えば、非定型統合失調症治療薬から選択される、方法7.30;
7.32 該1つ以上の他の治療薬が、統合失調症治療薬、例えば、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセチン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、パリペリドン、アセナピン、ルラシドン、イロペリドン、カリプラジン、アミスルプリド、ゾテピン、セルチンドールであり、該1つ以上の他の治療薬が式I~IVもしくは1.1~1.8の化合物の補助剤として投与されるか、または式I~IVもしくは1.1~1.8の化合物が該1つ以上の他の治療薬の補助剤として投与される、方法7.30または7.31。
【0037】
第4の態様の特定の実施態様において、本発明は、上記の中枢神経系障害の処置または予防のための方法であって、該処置または予防を必要とする患者に以下のものを投与することを含む、方法((方法IP)を提供する:
7.4P 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式I~IVまたは1.1~1.8の化合物;
7.8P 上記の医薬組成物またはデポ組成物;または
7.11P 上記の浸透圧制御放出経口送達系組成物。
【0038】
第4の態様のさらなる実施態様において、本発明は、方法がさらに式7.1~7.32のいずれか1つに記載されている、方法IPを提供する。
【0039】
第4の態様の特定の実施態様において、本発明は、障害が統合失調症または睡眠障害である、方法I、IP、または7.1~7.32のいずれかを提供する。
【0040】
第4の態様の特定の実施態様において、本発明は、障害がうつ病または不安である、方法I、IP、または7.1~7.32のいずれかを提供する。
【0041】
第4の態様の特定の実施態様において、本発明は、障害が心的外傷後ストレス障害または衝動制御障害、例えば、間欠性爆発性障害である、方法I、IP、または7.1~7.32のいずれかを提供する。
【0042】
第4の態様の特定の実施態様において、本発明は、障害が、認知症、例えば、老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、前頭側頭型認知症、核上性麻痺(parasupranuclear palsy)、レビー小体型認知症、血管性認知症、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群、高齢うつ病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、大脳皮質基底核変性症、プリオン病、自閉症および/または注意欠陥多動症障害に罹患している患者における心的外傷後ストレス障害または衝動制御障害、例えば、間欠性爆発性障害である、方法I、IP、または7.1~7.32のいずれかを提供する。
【0043】
第4の態様のさらに別の実施態様において、本発明は、本発明のデポ組成物が、約14日間~約30日間~約180日間にわたって、好ましくは約30日間、約60日間または約90日間にわたって、本発明の化合物の制御および/または持続放出のために投与される、方法I、IP、または7.1~7.32のいずれかを提供する。制御および/または持続放出は、治療の早期中断の回避に、特に薬物療法計画に対するノンコンプライアンスまたはノンアドヒアランスが頻発している出来事である統合失調症治療薬療法に、特に有用である。
【0044】
第5の態様において、本発明は、1つ以上の睡眠障害、激越、攻撃的行動(aggressive behavior)、心的外傷後ストレス障害および/または衝動制御障害、例えば、間欠性爆発性障害の予防または処置のための方法であって、該処置または予防を必要とする患者に下記の式に記載される化合物を投与することを含む、方法(方法II)を提供する:
8.1 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の式I~IVまたは1.1~1.8の化合物;
8.2 上記の医薬組成物またはデポ組成物;
8.3 上記の浸透圧制御放出経口送達系組成物。
【0045】
第5の態様の一の実施態様において、本発明は、該障害が睡眠障害である、方法IIまたは8.1~8.3のいずれかを提供する。第5の態様の別の実施態様において、本発明は、該障害が、激越、攻撃的行動(aggressive behavior)、心的外傷後ストレス障害および/または衝動制御障害、例えば、間欠性爆発性障害である、方法IIを提供する。
【0046】
第5の態様のさらなる実施態様において、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻発覚醒(frequent awakenings)、および目覚め時にすっきりしないこと(waking up feeling unrefreshed)を包含する、方法II、8.1~8.3を提供する;
8.11 睡眠障害が睡眠維持障害である、上記の方法のいずれか;
8.12 有効量が、1mg~10mg/日、例えば1~5mg/日、好ましくは2.5~5mg/日、さらに好ましくは10mg/日である、上記の方法のいずれか;
8.13 有効量が、2.5mg/日または5mg/日、または10mg/日である、上記の方法のいずれか;
8.14 睡眠障害が、ジスキネジアに罹患しているかまたはそのリスクがある患者、例えば、例えばレボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニストから選択されるドパミン作用薬を受けている患者、例えばレボドパを受けている患者、および抗コリン薬を受けている患者におけるものである、上記の方法のいずれか;
8.15 該患者がパーキンソン病に罹患している、上記の方法のいずれか。
【0047】
本発明の化合物(例えば、式I~IVまたは1.1~1.8の化合物)は、国際公開第2009/145900号に同様に記載され、クレームに記載されている(その記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)、最小限の錐体外路性副作用の有無にかかわらず、5-HT2A、SERTおよび/またはD2受容体関連障害の有効な処置を提供する。したがって、本発明の化合物、本発明の医薬組成物または本発明のデポ組成物は、第2の治療薬と組み合わせて、慣用の単剤治療で一般的に生じる望ましくない副作用を生じることなく併用薬剤の治療活性を増強するように、特に個々の薬剤を単剤治療として使用した場合よりも少ない用量で、使用され得る。したがって、本発明の化合物は、他の抗うつ薬、抗精神病薬、他の睡眠薬、および/またはパーキンソン病または気分障害または認知症の処置に使用する薬剤と同時に(simultaneously)、連続して、または同時期に(contemporaneously)、投与され得る。別の例では、副作用は、遊離形態または塩形態の1つ以上の第2の治療薬と組み合わせて本発明の化合物を投与することによって(ここで、(i)第2の治療薬の用量または(ii)本発明の化合物と第2の治療薬の両方の用量が、該薬剤/化合物が単剤治療として投与された場合よりも少ない)、減少し得るかまたは最小化され得る。特定の実施態様において、本発明の化合物は、例えば、パーキンソン病の処置に使用されるような、レボドパおよびレボドパ補助剤(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドパミンアゴニストから選択されるドパミン作用薬、およびパーキンソン病治療薬の副作用を処置するために使用される抗コリン薬を受けている患者におけるジスキネジアの処置に有用である。
【0048】
したがって、第6の態様において、本発明は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、GABA活性を調節する(例えば、該活性を増強し、GABA伝達を促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT調節物質(例えば、5-HT1Aアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2Aインバースアゴニスト等)、メラトニンアゴニスト、イオンチャネル調節物質(例えば、ブロッカー)、セロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリン作動性アゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬、抗うつ薬、および統合失調症治療薬、例えば、非定型統合失調症治療薬から選択される1つ以上の治療薬をさらに含む、方法IまたはIP、例えば、または式7.1~7.32のいずれか、または方法IIもしくは8.1~8.15のいずれか(それぞれ、方法I-AおよびII-A)を提供する。
【0049】
第6の態様の別の実施態様において、方法I-AおよびII-A、方法I、方法IP、例えば、または式7.1~7.32のいずれか、または方法IIまたは8.1~8.15のいずれかは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)またはNメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストから選択される1つ以上の治療薬をさらに含む。特定の実施態様において、該コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、タクリン、リバスチグミン(Exelon)、ドネペジル(Aricept)およびガランタミン(Razadyne、以前はReminylと称されていた))からなる群から選択される。さらなる実施態様において、該コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のドネペジルである。別の実施態様において、該NMDA受容体アンタゴニストは遊離形態または薬学的に許容される塩形態のメマンチンである。
【0050】
第6の態様のさらなる実施態様において、本発明は、1つ以上の治療薬をさらに含む、下記の方法I-AまたはII-Aを提供する。
9.1 該治療薬が、GABA活性を調節する(例えば、該活性を増強し、GABA伝達を促進する)化合物である、方法I-AまたはII-A;
9.2 該GABA化合物が、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマザパム、トリアゾラム、インジプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガバキサドール(gabaxadol)、ビガバトリン、チアガビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)およびエスタゾラムの1つ以上からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは9.1;
9.3 該治療薬がさらなる5HT2Aアンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.4 該さらなる5HT2Aアンタゴニストが、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL 100907(Sanofi-Aventis、France)、HY 10275(Eli Lilly)、APD 125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)およびAVE8488(Sanofi-Aventis、France)の1つ以上から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは9.3;ピマバンセリン(ACP-103)およびピゾチフェンから選択される、方法I-AまたはII-A、9.3または9.4;
9.5 治療薬がメラトニンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.6 該メラトニンアゴニストが、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、武田薬品工業株式会社、日本)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)およびアゴメラチンの1つ以上からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは9.5;
9.7 該治療薬がイオンチャネルブロッカーである、方法I-AまたはII-A;
9.8 該イオンチャネルブロッカーが、ラモトリギン、ガバペンチンおよびプレガバリンの1つ以上である、方法I-AまたはII-Aまたは9.7;
9.9 該治療薬がオレキシン受容体アンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.10 該オレキシン受容体アンタゴニストが、オレキシン、1,3-ビアリール尿素、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)およびベンズアミド誘導体からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは9.9;
9.11 該治療薬がセロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)である、方法I-AまたはII-A;
9.12 該セロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)が、つ以上のOrg 50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、セルゾンおよびトラゾドンからなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは9.11;
9.13 該治療薬が5HT1aアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.14 該5HT1aアゴニストが、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロンおよびMN-305(MediciNova、San Diego、CA)の1つ以上からなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは9.13;
9.15 該治療薬がニューロキニン-1薬である、方法I-AまたはII-A;
9.16 該ニューロキニン-1薬がカソピタント(GlaxoSmithKline)である、方法I-AまたはII-Aまたは9.15;
9.17 該治療薬が統合失調症治療薬である、方法I-AまたはII-A;
9.18 該統合失調症治療薬が、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセチン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群から選択される、方法I-AまたはII-Aまたは9.17;
9.19 該治療薬が抗うつ薬である、方法I-AまたはII-A;
9.20 該抗うつ薬が、アミトリプチリン、アモキセピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン硫酸塩、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラファキシンから選択される、方法I-AまたはII-Aまたは9.19;
9.21 該統合失調症治療薬が非定型統合失調症治療薬である、方法I-AまたはII-A、9.17または9.18;
9.22 該非定型統合失調症治療薬が、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群から選択される、方法I-AまたはII-A、または9.17~9.21のいずれか;
9.23 該治療薬が、方法9.1~9.22のいずれかから選択され、例えば、モダフィニル、アルモダフィニル、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマザパム、トリアゾラム、インジプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガバキサドール(gabaxadol)、ビガバトリン、チアガビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラム、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL 100907(Sanofi-Aventis、France)、HY 10275(Eli Lilly)、APD 125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)、AVE8488(Sanofi-Aventis、France)、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロン、MN-305(MediciNova、San Diego、CA)、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、武田薬品工業株式会社、日本)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)、アゴメラチン、ラモトリギン、ガバペンチン、プレガバリン、オレキシン、1,3-ビアリール尿素、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)、ベンズアミド誘導体、Org 50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、セルゾン、トラゾドン、カソピタント(GlaxoSmithKline)、アミトリプチリン、アモキセピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン硫酸塩、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プロマジン、チオリダジン、チオチキセチン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群から選択される、方法I-AまたはII-A;ここに挙げられた治療薬に加えて、方法I-AまたはII-Aは、さらに、ピマバンセリン(ACP-103)およびピゾチフェンから選択される;
9.24 該治療薬がH3アゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.25 該治療薬がH3アンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.26 該治療薬がノルアドレナリン作動性アゴニストまたはアンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.27 該治療薬がガラニンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.28 該治療薬がCRHアンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.29 該治療薬がヒト成長ホルモンである、方法I-AまたはII-A;
9.30 該治療薬が成長ホルモンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.31 該治療薬がエストロゲンまたはエストロゲンアゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.32 該治療薬が5-HT6受容体アンタゴニストである、方法I-AまたはII-A;
9.33 該治療薬がニューロキニン-1薬である、方法I-AまたはII-A;
9.34 治療薬が式(I)の化合物と組み合わされ、該治療薬が、抗パーキンソン薬、例えば、L-ドパ、コ-カレルドパ、デュオドパ、スタロバ(stalova)、シンメトレル、ベンゾトロピン、ビペリデン、ブロモクリプチン、エンタカポン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロシクリジン、ロピニロール、セレギリンおよびトルカポンである、方法I-AまたはII-A;
9.35 式(I)の化合物が、挙げられた疾患および/またはパーキンソン病に罹患している患者における睡眠障害、うつ病、精神病またはその組合せの処置に使用され得る、方法I-AまたはII-A;
9.36 該障害が、精神病(例えば、統合失調症)、うつ病、気分障害、睡眠障害(例えば、睡眠維持および/または睡眠開始)またはその障害の組合せの少なくとも1つ以上から選択される、方法I-AまたはII-A;
9.37 該障害が睡眠障害である、上記の方法のいずれか;
9.38 該障害が、精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する睡眠障害である、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、上記の方法のいずれか。
【0051】
第6の態様の別の実施態様において、本発明は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、GABA活性を調節する(例えば、該活性を増強し、GABA伝達を促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT調節物質(例えば、5-HT1Aアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2Aインバースアゴニスト等)、メラトニンアゴニスト、イオンチャネル調節物質(例えば、ブロッカー)、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリン作動性アゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬、抗うつ薬、および統合失調症治療薬、例えば非定型統合失調症治療薬から選択される1つ以上の治療薬をさらに含む、上記の方法IPまたは方法II(それぞれ、方法IP-AおよびII-A)を提供する。この態様のさらなる実施態様において、本発明は、式9.1~9.38のいずれかに同様に記載されているような方法IP-AまたはII-Aを提供する。
【0052】
第6の態様のさらに別の実施態様において、上記の方法IPまたは方法IIは、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)またはNメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストから選択される1つ以上の治療薬をさらに含む。特定の実施態様において、該コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、タクリン、リバスチグミン(Exelon)、ドネペジル(Aricept)、およびガランタミン(Razadyne、以前はReminylと称されていた)からなる群から選択される。さらなる実施態様において、該コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)は遊離形態または薬学的に許容される塩形態のドネペジルである。別の実施態様において、該NMDA受容体アンタゴニストは遊離形態または薬学的に許容される塩形態のメマンチンである。
【0053】
本発明の第7の態様において、方法I-A、II-A、または9.1~9.38のいずれかに記載の本発明の化合物と1つ以上の第2の治療薬との組合せは、上記の医薬組成物またはデポ組成物として投与され得る。同様に、方法Ip-A、II-Aまたは9.1~9.38のいずれかに記載の本発明の化合物および1つ以上の第2の治療薬との組合せは、上記の医薬組成物またはデポ組成物として投与され得る。該組合せ組成物は併用薬物の混合物、および薬物の2つ以上の個別の組成物を包含することができ、この個々の組成物は、例えば患者に一緒に共投与され得る。
【0054】
特定の実施態様において、方法I-A、II-A、Ip-A、II-A、または9.1~9.38のいずれかは、必要とする患者に本発明の化合物を、非定型統合失調症治療薬、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、またはパリペリドンから選択される化合物と組み合わせて投与することを含み、例えば、非定型統合失調症治療薬の用量が減少し、および/または副作用が減少する。
【0055】
別の実施態様において、方法I-A、II-A、方法Ip-A、II-A、または9.1~9.38のいずれかは、必要とする患者に本発明の化合物を、抗うつ薬、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、アミトリプチリン、アモキセピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン硫酸塩、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、またはベンラファキシンと組み合わせて投与することを含む。。別法として、該抗うつ薬は、本発明の化合物に加えて補助薬として使用され得る。
【0056】
さらに別の実施態様において、方法I-A、II-A、Ip-A、II-A、または9.1~9.38のいずれかは、必要とする患者に本発明の化合物を、GABA活性を調節する化合物、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマザパム、トリアゾラム、インジプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ガバキサドール(gabaxadol)、ビガバトリン、チアガビン、EVT 201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラムまたはそれらの組合せから選択される化合物と組み合わせて投与することを含む。
【0057】
別のとくていの実施態様において、方法I-A、II-A、Ip-A、II-A、または9.1~9.38のいずれかは、必要とする患者に本発明の化合物を遊離形態または薬学的に許容される塩形態のドキセピンと組み合わせて投与することを含む。ドキセピンの投与量は、当業者に公知の範囲内で変化し得る。一の例において、ドキセピンの用量10mgをいずれかの用量の本発明の化合物と組み合わせることができる。
【0058】
別の実施態様において、方法I-A、II-A、Ip-A、II-A、または9.1~9.38のいずれかは、必要とする患者に本発明の化合物を、非定型刺激薬、例えば、モダフィニル、アドラフィニルまたはアルモダフィニルと組み合わせて(連日投与計画の一部として含む)投与することを含む。本発明の化合物を該薬物と一緒に組み込む投与計画は、より規則的な睡眠を促進し、例えば双極性うつ病、統合失調症と関連する認知、ならびにパーキンソン病および癌のような病態における過剰な眠気および疲労の処置において、高用量の該薬物と関連する精神病または躁病のような副作用を回避する。
【0059】
第8の態様において、本発明は、例えば、方法Iのいずれか、7.1~7.32のいずれか、方法II、8.1~8.15のいずれか、方法I-A、II-A、9.1~9.38のいずれか、方法IP、方法IP-A、または本発明の第6または第7の態様に記載のいずれかの方法における、上記の1つ以上の障害の処置または予防のための(医薬の製造における)、以下の式に記載される化合物の使用を提供する:
11.1 遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、式Iまたは式1~1.9のいずれかの化合物;
11.2 上記の医薬組成物;
11.3 上記のデポ組成物;または
11.4 上記の浸透圧制御放出経口送達系組成物。
【0060】
第9の態様において、本発明は、例えば、方法Iのいずれか、7.1~7.32のいずれか、方法II、8.1~8.15のいずれか、方法I-A、II-A、9.1~9.38のいずれか、方法IP、方法IP-A、または本発明の第6または第7の態様に記載のいずれかの方法における上記の1つ以上の障害の処置または予防用の、例えば下記の式における、上記の医薬組成物:
12.1 上記の医薬組成物;
12.2 上記のデポ組成物;または
12.3 上記の浸透圧制御放出経口送達系組成物。
【0061】
上記の、第4の態様の実施態様(方法Iおよび方法7.1~7.32のいずれかを包含する)、第5の態様の実施態様(方法IIおよび方法8.1~8.15のいずれか)、方法IP、方法IP-A、第6の態様の実施態様(方法I-A、II-Aおよび方法9.1~9.38のいずれか)および第7の態様の実施態様を包含する上記の方法のいずれかの特定の実施態様において、当該障害および状態は、米国精神医学会の精神疾患の分類と診断の手引(American Psychiatric Association's Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、第5版(DSM-V)(2013)において定義されたようなそれらの意味を有すると言及された。
【0062】
上記の、第4の態様の実施態様(方法Iおよび方法7.1~7.32のいずれかを包含する)、第5態様の実施態様(方法IIおよび方法8.1~8.15のいずれかを包含する)、方法IP、方法IP-A、第6の態様の実施態様(方法I-A、II-A、および方法9.1~9.38のいずれかを包含する)、および第7の態様の実施態様を包含する上記の方法のいずれかの特定の実施態様において、当該障害および状態は、世界保健機関の国際疾病分類(Workd Health Organization's International Classification of Diseases)、第10改訂版(ICD-10)、第V章(Mental and Behavioral Disorders)(1992)において定義されたようなそれらの意味を有すると言及される。
【0063】
発明の詳細な説明
他に特記されない場合または文脈から明らかでない場合、本明細書で用いる下記の用語は、下記の意味を有する:
a.本明細書で用いる「残遺症状」としては、Kay et al., Schizophr. Bull. (1987) 13(2):261-276(出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載されているPositive and Negative Symptom Scale(PANSS)に記載されているような陰性症状および一般的な精神病理学的症状を包含する。陰性症状としては以下のものが挙げられる:感情鈍麻、感情離脱、対人関係不良、受動的/無欲性社会離脱、抽象思考困難、会話の自発性および流暢さの欠如および常同思考。一般的な精神病理学的症状としては、以下のものが挙げられる:身体的関心、不安、罪悪感、緊張、癖(mannerisms)および不自然な姿勢、うつ病、運動発達遅滞、非協力的、異常な思考内容、見当識障害、注意力不良、判断および洞察の欠如、意志の障害、衝動制御不良、先入観および能動的社会回避。残遺症状はまた、うつ病、認知障害および睡眠障害(例えば、不眠症)も包含し得る。本発明の化合物は、これらの残遺症状のうち、受動的な社会離脱、常同思考、身体的関心、不安、緊張、能動的社会回避およびうつ病処置に特に有用である。したがって、本発明の化合物は、統合失調症に罹患している患者における社会的統合および社会的機能の改善に特に有用である。これらの残遺症状の処置は、また、うつ病にも罹患している統合失調症患者に特に有用である。
b.式において、例えば式I~IVまたは1.1~1.8のいずれかの構造式において、および「CD3」のような用語において用いられる場合、「D」とは、同位体重水素(2H)を天然存在量よりも多く含有する水素の原子をいう。天然の化学物質はすべて、すべての水素原子に対して約0.0156原子%の重水素を含有する水素原子を包含する。本開示における「D」および「重水素」の使用は、この天然の存在量を上回り、例えば、0.1%を上回り、または1%を上回り、100%に満たない任意の値まで(例えば、99%、または99.9%、または99.99%、または99.999%)の重水素の量の任意の濃縮をいう。水素原子としての「H」の使用は、天然の存在量以下の重水素、例えば、0.0156原子%以下の重水素を含有する化学構造における水素原子をいう。
【0064】
他に特記しない限り、本発明の化合物、例えば、式I~IVまたは1.1~1.8の化合物は、遊離形態または塩形態(例えば、酸付加塩として)存在し得る。十分に塩基性である本発明の化合物の酸付加塩は、例えば、例えば無機酸または有機酸との酸付加塩である。特定の実施態様において、本発明の化合物の該塩は、トルエンスルホン酸付加塩である。
【0065】
本発明の化合物は、薬剤としての使用を意図され、したがって、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に不適切な塩は、例えば、本発明の遊離化合物の単離または精製に有用であり得、したがって、これもまた包含される。
【0066】
本発明の化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。かくして、該化合物は、個々の異性体で、例えばエナンチオマーもしくはジアステレオマー形態で、または個々の形態の混合物、例えばラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。不斉中心が(R)配置、(S)配置または(R,S)配置であるいずれの異性体も存在し得る。本発明は、個々の光学活性異性体およびそれらの混合物(例えば、ラセミ/ジアステレオマー混合物)の両方を包含すると解されるべきである。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物であってもよいか、または、主に、例えば純粋なまたは実質的に純粋な異性体、例えば70%エナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(「ee」)を超える、好ましくは80%eeを超える、より好ましくは90%eeを超える、最も好ましくは95%eeを超える異性体であってもよい。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該技術分野で知られている標準的な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、疑似移動床および同類のもの)によって行われ得る。
【0067】
二重結合または環についての置換基の性質による幾何異性体は、シス(Z)形態またはトランス(E)形態で存在し得、両方の異性体は、本発明の範囲に包含される。
【0068】
別法として、および/または、加えて、本発明の化合物は、ポリマーが経時的に分解するので当該化合物が連続的に放出されるように、例えば第2の態様および第3の態様に記載のポリマーマトリックス中に本発明の化合物を分散、溶解または被包することによって、デポ製剤として包含され得る。本発明の化合物のポリマーマトリックスからの放出は、例えば医薬デポ組成物から、該医薬デポを投与される対象体、例えばヒトのような温血動物への、当該化合物の制御放出および/または遅延放出および/または持続放出を提供する。かくして、該医薬デポは、長期にわたって、例えば、14~180日間、好ましくは約30日間、約60日間または約90日間にわたって、本発明の化合物を特定の疾患または病状の処置に有効な濃度で該対象体へ送達する。
【0069】
本発明の組成物(例えば、本発明のデポ組成物)におけるポリマーマトリックスに有用なポリマーとしては、ヒドロキシ-脂肪酸およびその誘導体のポリエステルまたは他の剤、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロ-ラクトン環開環ポリマー、乳酸-グリコール酸コポリマー、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸コポリマー、ポリ乳酸-ポリエチレングリコールコポリマーまたはポリグリコール酸-ポリエチレングリコールコポリマー)、α-シアノアクリル酸アルキルのポリマー(例えば、ポリ(2-シアノアクリル酸ブチル))、ポリアルキレンオキサレート(例えば、ポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカーボネート(例えば、ポリエチレンカーボネートまたはポリエチレンプロピレンカーボネート)、ポリオルトカーボネート、ポリアミノ酸(例えば、ポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステル、および同類のものを挙げることができ、これらのポリマーの1種類以上を使用することができる。
【0070】
ポリマーがコポリマーである場合、それらは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフトコポリマーのいずれかであってよい。上記α-ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸がそれらの分子中に光学活性を有する場合、D-異性体、L-異性体および/またはDL-異性体のいずれか1つを用いることができる。とりわけ、α-ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸-グリコール酸ポリマー)、そのエステル、ポリ-α-シアノアクリル酸エステル等を用いることができ、乳酸-グリコール酸コポリマー(ポリ(ラクチド-α-グリコリド)またはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)とも称され、以下、PLGAと称される)が好ましい。かくして、一の態様において、ポリマーマトリックスに有用なポリマーはPLGAである。本明細書で用いる場合、用語PLGAとは、乳酸のポリマー(ポリラクチド、ポリ(乳酸)、またはPLAとも称される)を包含する。最も好ましくは、該ポリマーは、生分解性ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーである。
【0071】
好ましい実施態様において、本発明のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性ポリマー物質である。用語「生体適合性」とは、毒性ではなく、発癌性ではなく、体組織中で炎症を有意には誘発しないポリマー物質であると定義される。該マトリックス物質は、生分解性であり、ポリマー物質は、身体過程によって、身体によって容易に廃棄され得る生成物へ分解し、体内に蓄積しない。生分解の生成物は、ポリマーマトリックスが該身体と生体適合性であるという点で生体適合性でもある。ポリマーマトリックス物質の特定の有用な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、上記のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキソノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、ならびにアルブミン、カゼインおよびワックスを含む天然ポリマー、例えば、グリセロールモノステアレートおよびグリセロールジステアレート、ならびに同類のものが挙げられる。本発明の実施に使用するのに好ましいポリマーは、dl-(ポリラクチド-コ-グリコリド)である。このようなコポリマー中のラクチド対グリコリドのモル比は、約75:25~50:50の範囲内であることが好ましい。
【0072】
有用なPLGAポリマーは、重量-平均分子量が約5,000~500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンであってよい。達成されるべき分解速度に依存して、種々の分子量のポリマーを使用することができる。薬物放出の拡散メカニズムについて、該ポリマーは、薬物の全てがポリマーマトリックスから放出されてしまうまで無傷を維持し、次に分解する。薬物は、また、ポリマー賦形剤がバイオエロード(bioerode)する場合にポリマーマトリックスから放出されることもある。
【0073】
PLGAは、慣用の方法によって製造され得るか、または、商業的に入手してもよい。例えば、PLGAは、好適な触媒を用いて環状ラクチド、グリコリド等から開環重合によって製造され得る(欧州特許第0058481号を参照;PLGA特性に対する重合変数の効果:分子量、組成物および鎖構造)。
【0074】
PLGAは、生物学的条件下にて(例えば、ヒトのような温血動物の組織内に見られる水および生体酵素の存在下にて)加水分解性で酵素的に切断可能なエステル結合の分解に起因して、固体ポリマー組成物全体の分解によって生分解して、乳酸とグリコール酸を形成することができると考えられる。乳酸およびグリコール酸の両方とも、正常な代謝の水溶性で無毒性の生成物であり、さらに、生分解して、二酸化炭素と水を形成することができる。言い換えると、PLGAは、例えばヒトのような温血動物の体内で、水の存在下でそのエステル基の加水分解によって分解して乳酸とグリコール酸を生成し、酸性の微小気候を作り出すことができると考えられる。乳酸とグリコール酸は、正常な生理学的条件下でヒトのような温血動物の体内における種々の代謝経路の副産物であり、したがって、十分に耐容性を示し、最小の全身毒性をもたらす。
【0075】
別の実施態様において、本発明に有用なポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星形である星形ポリマーを含むことができる。これらのポリエステルは、酸残基鎖によって囲まれた中心部分としての1つのポリオール残基を有する。該ポリオール部分は、例えばグルコース、または例えばマンニトールであり得る。これらのエステルは公知であり、英国特許第2,145,422号および米国特許第5,538,739号に記載されている(これらの記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0076】
星形ポリマーは、開始剤としてポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを使用して製造され得る。該ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシ基を含有し、最大で約20,000ダルトンの分子量を有しており、ポリラクチドまたはコ-ポリラクチド鎖を含有する該ポリオールのヒドロキシ基のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば平均3つがエステル基の形態である。分枝ポリエステル、例えばポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)は、複数のポリラクチド直鎖を有する中心グルコース部分を有する。
【0077】
上記の本発明のデポ組成物は、本発明の化合物が分散または被包されている微小粒子(microparticle)もしくはナノ粒子の形態、または液体形態のポリマーを含み得る。「微小粒子」とは、該粒子のマトリックスとして作用するポリマー内に本発明の化合物が分散または溶解されている溶液または固体形態の本発明の化合物を含有する固体粒子を意味する。ポリマー物質の適当な選択によって、得られた微小粒子が拡散放出特性と生分解性放出特性の両方を示す微小粒子製剤が調製され得る。
【0078】
特定の実施態様において、本発明の化合物は、適当なサイズの微小粒子に製剤化されて、筋肉注射後のゆっくりとした放出速度を可能にする。
【0079】
ポリマーが微小粒子の形態である場合、該微小粒子は、適当な方法で、例えば溶媒蒸発法または溶媒抽出法によって、調製され得る。例えば、溶媒蒸発法においては、本発明の化合物およびポリマーは、揮発性有機溶媒(例えば、アセトンのようなケトン、クロロホルムまたは塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、ジオキサンのような環状エーテル、酢酸エチルのようなエステル、アセトニトリルのようなニトリル、またはエタノールのようなアルコール)に溶解され得、適切なエマルション安定剤(例えば、ポリビニルアルコール、PVA)を含有する水相に分散され得る。次に、該有機溶媒を蒸発させて、本発明の化合物が被包されている微小粒子を生成する。溶媒抽出法においては、本発明の化合物およびポリマーは、極性溶媒(例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチル)に溶解され得、次に、水相(例えば、水/PVA溶液)に分散され得る。エマルションを生成して、本発明の化合物が被包されている微小粒子を得る。スプレードライは微小粒子を製造する代替製造技術である。
【0080】
本発明の微小粒子の別の製造方法が米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号に記載されている(これらの記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0081】
本発明の微小粒子は、注射用組成物における使用に許容されるサイズ範囲の微小粒子の製造が可能な方法によって製造され得る。一の好ましい製造方法は、米国特許第4,389,330号に記載されているものである。この方法では、活性剤を適当な溶媒に溶解または分散させる。該活性剤含有媒体に、所望の活性剤負荷を有する生成物を提供する活性成分と相対的な量のポリマーマトリックス物質を添加する。所望により、微小粒子生成物の成分の全てを一緒に溶媒媒体中にてブレンドすることができる。
【0082】
本発明の化合物および本発明の実施において用いることができるポリマーマトリックス物質の溶媒としては、有機溶媒、例えばアセトン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレンおよび同類のもの;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族炭化水素化合物;環状エーテル;アルコール、例えばベンジルアルコール;酢酸エチル;ならびに同類のものが挙げられる。一の実施態様において、本発明の実施において用いるための溶媒は、ベンジルアルコールと酢酸エチルの混合物であり得る。本発明に有用な微小粒子の製造のためのさらなる情報は、米国特許出願公開第2008/0069885号に見ることができる(この記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0083】
微小粒子に取り込まれた本発明の化合物の量は、通常、約1wt%~約90wt%、好ましくは30~50wt%、より好ましくは35~40wt%の範囲である。重量%とは、微小粒子の総重量当たりの本発明の化合物の部を意味する。
【0084】
医薬デポは、薬学的に許容される希釈剤または担体、例えば水混和性希釈剤または担体を含み得る。
【0085】
浸透圧制御放出経口送達系組成物の詳細は、欧州特許第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)および国際公開第2000/35419号に見ることができる(これらの記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0086】
「治療有効量」は、疾患または障害に罹患している患者に投与した場合に処置に予定している期間にわたって該疾患または障害の軽減、寛解、または退行を生じるのに有効な、(例えば、医薬デポに含有されるような)本発明の化合物の量である。
【0087】
本発明の実施に使用される用量は、もちろん、例えば、処置しようとする特定の疾患または病態、使用される本発明の特定の化合物、投与様式、および所望の治療に応じて変化する。
【0088】
本発明の化合物は、経口、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む満足な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。ある種の実施態様において、本発明の化合物は、例えば、デポ製剤中にて、好ましくは非経口投与され、例えば注射によって投与される。
【0089】
一般に、方法I、または式7.1~7.32のいずれか、または方法IPまたは上記の本発明の化合物の使用、例えば、少なくともうつ病、精神病の組合せ、例えば、上記の、(1)うつ病に罹患している患者における精神病(例えば、統合失調症);(2)精神病(例えば、統合失調症)に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する気分障害;および(4)精神病(例えば、統合失調症)またはパーキンソン病と関連する睡眠障害のような、疾患の組合せの処置の満足な結果は、好ましくは経口投与による、1日1回約1mg~100mg程度、好ましくは1日1回約2.5mg~50mg、例えば2.5mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgの用量での経口投与について得られることが示されている。
【0090】
方法IIまたは8.1~8.15のいずれか、方法IIまたは上記の本発明の化合物の使用、例えば、睡眠障害単独、または激越、攻撃的行動(aggressive behavior)、心的外傷後ストレス障害または衝動制御障害単独、例えば間欠性爆発性障害単独の処置の満足な結果は、好ましくは経口投与による、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物の1日1回約1mg~10mg程度、例えば1日1回約2.5mg~5mg、例えば2.5mg、3mg、4mg、5mgまたは10mgの用量の経口投与について得られることが示されている。
【0091】
方法I-Aまたは9.1~9.38のいずれかまたは方法IP-Aの満足な結果は、1日1回100mg未満、好ましくは50mg未満、例えば40mg未満、30mg未満、20mg未満、10mg未満、5mg未満、2.5mg未満で得られることが示されている。方法II-Aまたは9.1~9.38のいずれかの満足な結果は、10mg未満、例えば5mg未満、または好ましくは2.5mg未満で得られることが示されている。
【0092】
長期作用を達成するためにデポ組成物が使用される本明細書に記載の障害の処置のために、該用量は、短期作用組成物と比べて多く、例えば、1~100mgよりも多く、例えば、25mg、50mg、100mg、500mg、1,000mg、または1000mgよりも多い。特定の実施態様において、デポ組成物の投与計画は、薬物の定常状態血中濃度を提供するようなデポ放出と同時の初期経口即時用量を含む。本発明の化合物の作用期間は、ポリマー組成物の操作、すなわち、ポリマー:薬物比および微小粒子サイズによって制御され得る。本発明の組成物がデポ組成物である場合、注射による投与が好ましい。
【0093】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、慣用の化学方法によって塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、水もしくは有機溶媒、または水と有機溶媒の混合物中にてこれらの化合物の遊離塩基を化学量の適切な酸と反応させることによって製造され得る;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。これらの塩、例えば、アモルファス形態または結晶形態のトルエンスルホン酸塩の製造のためのさらなる詳細は、PCT/US08/03340および/または米国仮出願番号第61/036,069号に見ることができる。
【0094】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤(例として、ゴマ油が挙げられるが、これに限定されない)およびガレン分野(galenic art)で公知の技術を用いて調製され得る。かくして、経口投与剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤および同類のものを挙げることができる。
【0095】
本明細書における本発明の化合物または組成物の用量、投与速度または治療有効量についての全ての言及は、いかなる塩も除いて、用量中の等価な遊離塩基をいう。
【実施例0096】
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物の中間体は、一般的に、国際特許出願PCT/US08/03340(国際公開第2008/112280号);米国出願第10/786,935号;米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再発行特許発明第39680号および米国再発行特許発明第39679号、ならびに国際公開第2015/154025号(各記載内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の記載に従って製造し得る。本発明の化合物の塩もまた、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再発行特許発明第39680号;米国再発行特許発明第39679号;および国際公開第2009/114181号(各記載内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の記載と同様に製造され得る。
【0097】
本発明の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当該技術分野で公知の慣用方法、例えば、カラム精製、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、トリチュレーション、疑似移動床および類似のものによって達成することができる。
【0098】
実施例1
1-(4-フルオロフェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-d
3-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オン・p-トルエンスルホン酸塩
【化6】
(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステル(4.27g、14.2mmol)のDMF(70mL)中懸濁液にNaH(560mg、95%、21.3mmol)を数回に分けて室温で添加する。次いで、透明な明るい赤色の溶液が得られるまで、該懸濁液を室温で30分間撹拌する。該溶液を0~5℃に冷却した後、DMF(1mL)中のCD
3I(982μL、17.0mmol)を添加する。出発物質が全て消費されるまで、該反応混合物を0~5℃で撹拌する。氷によってクエンチした後、該混合物をHCl(12N、0.2mL)でpH3~5に酸性化し、次いで、減圧濃縮する。得られた残留物をジクロロメタン(100mL)およびH
2O(50mL)の混合物に懸濁させ、次いで、50%NaOHでpH≧14に調整する。有機相を分取し、次いで、濃縮乾固させて、粗(6bR,10aS)-3-メチル-d
3-2-オキソ-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-カルボン酸エチル5gを茶色の固体として得、さらなる精製を行わずにそのまま次工程で使用する。MS (ESI) m/z 319.2 [M+H]
+。
【0099】
(6bR,10aS)-3-メチル-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステル(3.09g、9.71mmol)のTHF(20mL)中撹拌溶液にTHF(50mL、1.0M、50.0mmol)中のBH3を室温で添加する。該混合物を室温で36時間撹拌し、次いで、0~5℃に冷却し、次いで、MeOH(5mL)でクエンチする。溶媒を減圧除去して、ライトイエロー色の残留物を得る。該残留物にHCl(12N、35mL)を室温で添加する。得られた混合物を95℃で30時間撹拌し、0~5℃に冷却し、次いで、NaOH(10N)でpH≧14に調整する。該混合物をジクロロメタン(100mL)で抽出する。合わせた有機相をK2CO3で乾燥させ、次いで、濃縮乾固させて、(6bR,10aS)-3-メチル-d3-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリンを茶色の油状物として得、さらなる精製を行わずにそのまま次工程で使用する。MS (ESI) m/z 233.2 [M+H]+。
【0100】
(6bR,10aS)-3-メチル-d3-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(1.6g、6.89mmol)、K2CO3(2.0g)、KI(1.7g)および4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(2.3mL)の3-ペンタノン(80mL)中懸濁液を、10分間のアルゴン通気により脱気する。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.2mL、6.89mmol)を添加した後、該反応混合物を75℃で36時間撹拌する。該混合物を室温まで冷却した後、溶媒を除去する。残留物をジクロロメタン(500mL)に懸濁し、次いで、H2O(160mL)で2回洗浄する。有機相をK2CO3で乾燥させ、次いで、蒸発乾固させる。溶離液として1%TEAを含む酢酸エチルおよびメタノールの(10:1)混合物中0~100%酢酸エチルの勾配液を用いて、残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより残留物を精製して、1-(4-フルオロフェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-d3-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オンを茶色の油状物として得る(1.66g、収率61%)。MS (ESI) m/z 397.2 [M+H]+。
【0101】
1-(4-フルオロフェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-d3-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オン(1.52g、3.83mmol)のイソプロピルアルコール(5.4mL)中溶液にp-トルエンスルホン酸・一水和物(656mg、3.45mmol)のイソプロピルアルコール2.1mL中溶液を室温で徐々に添加する。ゲル様懸濁液が形成されるまで、該反応混合物を室温で撹拌する。イソプロピルアルコール(5.0mL)を添加し、該混合物を室温でさらに2時間撹拌する。濾過後、濾過ケーキをイソプロピルアルコール(2.5mL)で洗浄する。該ケーキを真空乾燥させて、標記化合物を白色粉末として得る(1.75g、収率80%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 9.1 (s, 1H), 8.1 (ddd, J = 2.73, 5.44, 8.68 Hz, 2H), 7.6 - 7.4 (m, 2H), 7.4 - 7.3 (m, 2H), 7.1 (d, J = 7.81 Hz, 2H), 6.6 (t, J = 7.62 Hz, 1H), 6.4 (d, J = 7.89 Hz, 1H), 3.6 (dd, J = 6.34, 12.15 Hz, 1H), 3.5 - 3.4 (m, 3H), 3.4 - 3.3 (m, 2H), 3.3 - 3.2 (m, 1H), 3.2 - 3.0 (m, 5H), 2.7 (td, J = 3.04, 10.27 Hz, 1H), 2.7 - 2.5 (m, 1H), 2.3 (s, 3H), 2.3 - 2.2 (m, 1H), 2.0 (m, 3H)。
【0102】
実施例2
2,2-d
2-1-(4-フルオロフェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オン
【化7】
(6bR,10aS)-3-メチル-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステル(945mg、3mmol)のTHF(5mL)中懸濁液にBD
3-THF(THF中1.0M、10mL、10mmol)を室温で徐々に添加する。添加完了後、該反応混合物を室温で一夜撹拌し、次いで、D
2O(2.0mL)で注意しながらクエンチする。溶媒を真空除去し、残留物をHCl(12N、9mL)に懸濁する。95℃で20時間撹拌した後、該反応混合物を室温まで冷却し、次いで、50%NaOHでpHを12に調整する。該混合物を濃縮乾固させて、2,2-d
2-(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリンを茶色の固体として得、さらなる精製を行わずにそのまま次工程で使用する。MS (ESI) m/z 232.2 [M+H]
+。
【0103】
2,2-d2-(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(200mg、0.87mmol)の3-ペンタノン(6mL)中溶液にKI(290mg、1.75mmol)および4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(0.29mL、1.75mmol)を添加し、次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.16mL、1.75mmol)を添加する。得られた混合物を75℃で20時間撹拌する。溶媒を減圧除去した後、溶離液として2%TEAを含む酢酸エチルおよびメタノールの(10:1)混合物中0~100%酢酸エチルの勾配液を用いて、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を茶色の油状物として得る(47mg、収率14%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.00 (dd, J = 8.9, 5.4 Hz, 2H), 7.13 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 6.65 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.51 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.29 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 3.25 - 3.14 (m, 2H), 3.02 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 2.98 - 2.90 (m, 1H), 2.86 (s, 3H), 2.84 - 2.69 (m, 2H), 2.61 - 2.23 (m, 3H), 2.17 - 1.86 (m, 5H). )。MS (ESI) m/z 396.2 [M+H] +。
【0104】
実施例3
2,2-d
2-1-(4-フルオロフェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-d
3-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オン・p-トルエンスルホン酸塩
【化8】
(6bR,10aS)-3-メチル-d
3-2-オキソ-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-カルボン酸エチル溶液(1.2g、3.77mmol)のTHF(7.0mL)中溶液にBD
3・THF(10mL、THF中1M)を徐々に添加する。得られた混合物を室温で一夜撹拌する。CD
3OD(1.0mL)を滴下して反応をクエンチし、次いで、D
2O(2.0mL)を滴下する。これら溶媒を減圧除去し、残留物をHCl(12N、12mL)に懸濁する。茶色の懸濁液を95℃で24時間撹拌し、次いで、0~5℃に冷却する。得られた混合物をNaOH(10N)でpH≧14に調整し、次いで、ジクロロメタン(90mL)で3回抽出する。合わせた有機相をK
2CO
3で乾燥させ、減圧蒸発させ、次いで、真空乾燥させて、2,2-d
2-(6bR,10aS)-3-メチル-d
3-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリンを茶色の油状物として得る(770mg、収率87%)。MS (ESI) m/z 235.2 [M+H]
+。
【0105】
2,2-d2-(6bR,10aS)-3-メチル-d3-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(500mg、2.13mmol)、KI(720mg、4.34mmol)、4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(0.7mL、4.26mmol)のDMF(14mL)中混合物にアルゴンを10分間通気する。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.7mL、4.02mmol)を添加し、出発物質がすべて消費されるまで、該混合物を95℃で撹拌する。該反応混合物を室温まで冷却し、次いで、減圧濃縮する。残留物をジクロロメタン(50mL)に懸濁し、次いで、H2O(30mL)で洗浄する。得られたジクロロメタン溶液をK2CO3で乾燥させ、濃縮乾固させる。溶離液として1.5%TEAを含む酢酸エチルとメタノールの(10:1)混合物中0~100%酢酸エチルの勾配液を用いて、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、2,2-d2-1-(4-フルオロフェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-d3-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オンを茶色の油状物として得る(446mg、収率53%)。MS (ESI) m/z 399.2 [M+H]+。
【0106】
2,2-d2-1-(4-フルオロフェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-d3-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オン(201mg、0.51mmol)をイソプロパノール(2mL)に溶解する。該溶液にイソプロパノール(1mL)中のp-トルエンスルホン酸(86.2mg、0.45mmol)を添加する。乳状混合物が得られるまで、得られた透明溶液を室温で撹拌する。該混合物を0~5℃に冷却し、次いで、濾過する。濾過ケーキを冷イソプロパノール(2mL)で洗浄し、次いで、高真空下で乾燥させて、標記生成物を白色固体として得る(180mg、収率63%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 9.1 (s, 1H), 8.0 (ddd, J = 2.70, 5.52, 8.77 Hz, 2H), 7.5 - 7.4 (m, 2H), 7.4 - 7.3 (m, 2H), 7.1 (d, J = 7.83 Hz, 2H), 6.4 (d, J = 7.32 Hz, 1H), 3.6 (s, 1H), 3.5 - 3.2 (m, 5H), 3.1 (dt, J = 7.74, 14.91 Hz, 4H), 2.8 - 2.5 (m, 1H), 2.3 (s, 4H), 2.2 - 1.9 (m, 4H)。
【0107】
比較実施例4
1-(4-フルオロ(2,3,5,6-d
4)フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オン・p-トルエンスルホン酸塩
【化9】
3-ペンタノン(4mL)を(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(460mg、2.0mmol)、2',3',5',6'-d
4-4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(428mg、2.0mmol)、KI(335mg、2.0mmol)およびK
2CO
3(300mg、2.2mmol)の混合物に添加する。得られた混合物をアルゴンで10分間通気し、次いで、75℃で20時間撹拌する。該反応混合物を室温まで冷却した後、ジクロロメタン(30mL)およびH
2O(15mL)を添加する。有機相を分取し、次いで、1N HCl溶液(30mL)で抽出する。得られた水相をジクロロメタン(5mL)で洗浄し、次いで、ジクロロメタン(20mL)およびNaOH(50%、10mL)の混合物に0~5℃で徐々に添加する。添加完了後、有機相を分取し、濃縮乾固させる。溶離液としてヘキサン中0~40%酢酸エチルの勾配液を用いて、残留物を塩基性Al
2O
3カラムクロマトグラフィーによりさらに精製して、1-(4-フルオロ(2,3,5,6-d
4)フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,7,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(9H)-イル)ブタン-1-オン遊離塩基を得る(200mg、収率25%)。MS (ESI) m/z 398.2 [M+H]
+。
【0108】
イソプロパノール(2mL)中のこの精製した遊離塩基(125mg、0.31mmol)にイソプロパノール(1mL)中のp-トルエンスルホン酸(52mg、0.28mmol)を室温で添加する。乳状懸濁液が形成されるまで、得られた透明溶液を室温で撹拌する。該溶液を0~5℃に冷却し、次いで、濾過する。濾過ケーキを冷イソプロパノール(2mL)で洗浄し、次いで、真空乾燥させて、標記化合物を白色固体として得る(120mg、収率68%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 9.1 (s, 1H), 7.6 - 7.4 (m, 2H), 7.1 (d, J = 7.82 Hz, 2H), 6.6 (t, J = 7.64 Hz, 1H), 6.5 (d, J = 7.30 Hz, 1H), 6.4 (d, J = 7.87 Hz, 1H), 3.6 (dd, J = 6.36, 12.51 Hz, 1H), 3.5 - 3.4 (m, 3H), 3.4 - 3.3 (m, 2H), 3.3 - 3.2 (m, 1H), 3.2 - 3.0 (m, 5H), 2.8 (s, 3H), 2.7 (td, J = 2.95, 10.27 Hz, 1H), 2.7 - 2.5 (m, 1H), 2.3 (s, 3H), 2.3 (d, J = 15.10 Hz, 1H), 2.1 - 1.9 (m, 3H)。
【0109】
実施例5:マウスにおける親および代謝物のレベルの測定
実施例1~3の化合物および式Qの化合物をマウスに投与し、親化合物および主要アミド代謝物の両方のレベルを研究する。式Qの化合物の合成手順は、国際公開第2008/112280号に見ることができる。各研究の動物群における固有の代謝速度の差を制御するために、各研究において、内部標準として比較実施例4の化合物を使用する。試験化合物および内部標準の単回経口投与から0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後および6時間後に親化合物および代謝物の血漿中レベルを測定する。親および主要アミド代謝物の両方の最大濃度、最大濃度までの時間、および曲線下面積(AUC)を測定する。各試験化合物についてのAUC値を、内部標準(実施例4)のAUCに対するその比をとることによって正規化する。かくして、各実施例X(すなわち、実施例1、実施例2、実施例3および実施例Q)について、以下のようにして相対的なアミド形成を算出する:
【数1】
結果を下記の表1にまとめて記載する。
【表1】
【0110】
親化合物からアミド代謝物への変換の程度は、式Qの非重水素化化合物と比べて実施例1、2および3の化合物のほうがかなり低いことが分かる。内部標準の代謝の程度についての正規化後、実施例1、2および3の化合物のアミド形成の程度は、非重水素化化合物Qについてよりも有意に低いことが分かる。
【0111】
受容体結合研究により、実施例1、実施例2および実施例3の化合物が式Qの非重水素化化合物と実質的に同一の受容体結合プロファイル(例えば、セロトニン受容体(例えば、5-HT2A)結合、ドパミン受容体(例えば、D2)結合およびセロトニン輸送体結合を包含する)を示すことが示される。例えば、実施例2の化合物は、0.1μMの濃度でヒトセロトニン5-HT2A受容体の98%阻害を示す。
【0112】
実施例6:ラットにおける重水素化化合物と非重水素化化合物との間の薬物動態の比較
実施例2の重水素化化合物(式Iの化合物、トシレート塩)のインビボ代謝(脱メチル化/酸化)を、その非重水素化コンジナーである式Qの化合物(トシレート塩)のものと比べる。ラットにおける交差研究において経口(PO)投与後および静脈内(IV)投与後の両方における各化合物の薬物動態を測定する。
【0113】
PO投与:研究の1日目に化合物のPO投与のために雄性スプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラット6匹を3匹ずつ2つの群に分ける。群1のラットには式Qの化合物10mg/kg(遊離塩基等価量(free base equivalent))を投与し、群2のラットには実施例2の化合物10mg/kg(遊離塩基等価量)を投与する。投与から0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、12時間後および24時間後に血液試料を回収し、投与した化合物およびその代謝物の血漿中濃度について分析する。3日間の休薬期間後、群1および群2のラットをクロスオーバーさせ、それぞれ、実施例2の化合物10mg/kg(遊離塩基等価量)および式Qの化合物10mg/kg(遊離塩基等価量)を投与する。さらなる試料を投与前に採取する以外は上記に従って血液試料を回収して分析する。
【0114】
IV投与:研究の1日目に化合物のIV投与のために雄性スプラーグドーリーラットラット6匹を3匹ずつ2つの群に分ける。群1のラットには式Qの化合物1mg/kg(遊離塩基等価量)を投与し、群2のラットには実施例2の化合物1mg/kg(遊離塩基等価量)を投与する。投与から2分後、5分後、0.25時間後、0.5時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後および12時間後に血液試料を回収し、投与した化合物およびその代謝物の血漿中濃度について分析する。72時間の休薬期間後、群1および群2のラットをクロスオーバーさせ、それぞれ、実施例2の化合物1mg/kg(遊離塩基等価量)および式Qの化合物1mg/kg(遊離塩基等価量)を投与する。さらなる試料を投与前に採取する以外は上記に従って血液試料を回収して分析する。
【0115】
すべての血液試料を処理して血漿にし、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いて親および代謝物の濃度を分析する。分析した代謝物は、N-脱メチル化アミド化合物Q-1(上記で検討した)を含む。Prism 5.04ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.)を用い、血漿対時間データに基づいて親および代謝物の曲線下面積(AUC)を算出する。
【0116】
結果を下記の表2にまとめて記載する(AUCは、ng-hr/mLで0~24時間測定したものが示される):
【表2】
【0117】
式Qの化合物のPO投与後、親化合物は大いに代謝され、N-脱メチル化/α酸化アミド(式Q-1)を大いに形成することが分かる。代謝物Q-1のAUCは親のAUCより2.2倍高い。対照的に、IV投与ではあまり代謝されなかった。IV投与後、Q-1代謝物AUCは、親の代謝物AUCの約2%だけである。これは、主としてN-脱メチル化およびαN酸化によって進行する初回通過代謝(肝代謝)の程度が高いことを示している。
【0118】
対照的に、実施例2の化合物のPO投与は、その非重水素化コンジナーと比べて、代謝物Q-1への代謝が有意に低くなる。代謝物Q-1のAUCは、式Qの化合物の投与の場合には親のAUCよりも2.2倍高いことと比べて、親のAUCよりも1.2倍高い。かくして、脱メチル化アミド誘導体への相対的な代謝が55%低下する。IV投与について同様の結果が得られ、Q-1代謝物AUCは、親のAUCの約1%であることが分かる。式Qの化合物の等価PO投与からの血漿AUCを実施例2の化合物と比べると、後者は代謝物Q-1の血漿AUCが約半分になることも示される(67.8ng-hr/mL対128.2ng-hr/mL)。
【0119】
実施例7:イヌにおける重水素化化合物および非重水素化化合物の間の薬物動態の比較
実施例2の重水素化化合物(式Iの化合物、トシレート塩)のインビボ代謝(脱メチル化およびα酸化)を、その非重水素化コンジナーである式Qの化合物(トシレート塩)のものと比較する。イヌにおける非クロスオーバー連続研究において、舌下(SL)投与および皮下(SC)投与後に各化合物の薬物動態を測定する。
【0120】
SC投与:2~5歳齢の雄性ビーグル犬6匹をランダムに3匹ずつの2つの群に分ける。群1のイヌには式Qの化合物を0.5%メチルセルロース/蒸留水ビヒクル中1mg/kg(遊離塩基等価量)の用量で投与する。群2のイヌには実施例2の化合物を0.5%メチルセルロース/蒸留水ビヒクル中の1mg/kg(遊離塩基等価量)の用量で投与する。投与は、22または23ゲージ針を介して肩甲下部(intrascapular region)において皮下に行われる。投与前、ならびに、投与から5分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後および24時間後の時点でイヌの橈側皮静脈を介して全血試料を回収する。7日間の最小休薬期間後、該イヌを舌下部の研究に移す。
【0121】
SL投与:群1のイヌには式Qの化合物を0.5%メチルセルロース/蒸留水ビヒクル中1mg/kg(遊離塩基等価量)の用量で投与する。群2のイヌには実施例2の化合物を0.5%メチルセルロース/蒸留水ビヒクル中1mg/kg(遊離塩基等価量)の用量で投与する。該用量の投与前にプロポフォール(6mg/kg)を用いて動物に麻酔をかけ、3~4.5%イソフルランを用いて麻酔を30分間維持する。投与は舌下であり、該投与を30分間行い、次いで、不織ガーゼを用いて拭き取る。投与前、ならびに、投与から5分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、24時間後、36時間後および48時間後の時点でイヌの橈側皮静脈を介して全血試料を回収する。
【0122】
すべての血試料を処理して血漿にし、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いて親および代謝物の濃度を分析する。分析した代謝物は、N-脱メチル化化合物Q-1A(以下に示す)、およびN-脱メチル化/α酸化アミド化合物Q-1(上記で検討した)を含む。Prism 5.04ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.)を用い、血漿対時間データに基づいて親および代謝物の曲線下面積(AUC)を算出する。
【0123】
結果を下記の表2にまとめて記載する(AUC、ng-hr/mLで0~24時間測定したものが示される):
【表3】
【0124】
実施例2の化合物のSL投与は、式Qの化合物の投与と比べて、親AUCが約72%高いことが分かる。脱メチル代謝物Q-1AのAUCは、式Qの化合物については親の約3%であり、実施例2の化合物については親の約8%である。アミド代謝物Q-1の濃度は、式Qの化合物のSL投与については各時点で1ng/mL未満で検出できるが(AUCは定量化していない)、実施例2の化合物のSL投与については検出できない(<0.1ng/mL)。
【0125】
対照的に、SC投与は、この2つの化合物の間でより同等な結果が得られた。式Qの化合物については、Q-1A代謝物のAUCは親の約3%であり、一方、実施例2の化合物については、Q-1A代謝物のAUCは親の約6%である。SC投与について、代謝物Q-1はどちらの化合物についても検出できなかった(<0.1ng/mL)。親のAUCは、重水素化化合物と非重水素化化合物の間で同等であることが分かる。
【0126】
SCの結果をSLの結果と比べると、式Qの化合物については、SL投与は、SC投与と比べて、親化合物の正味AUCが10%少なかった。対照的に、実施例2の重水素化化合物の投与は、SCと比べて、SLについての親AUCが61%高い。理論によって束縛されるものではないが、この差は、重水素化種と非重水素化種との間の、皮下スペースからの吸収速度の差に関連していると考えられる。
【0127】
総合すれば、これらの結果は、ピペラジン窒素に隣接するメチレン基の重水素化が本発明の化合物の代謝をその非重水素化類似体と比べて低下させ、その結果、親薬物の血漿濃度がより高くかつより長期にわたることを示している。脱メチル化Q-1A代謝物の濃度は、非重水素化化合物と比べて重水素化化合物のほうが高いことが分かるので、この結果は、ラットにおいて見られるように、重水素化が脱メチル化アミンからそのアミド誘導体(Q-1)への次なる酸化を阻害していることを示唆している。
【0128】
代謝物Q-1の形成は、以下に示される中間代謝物Q-1Aによって生じると考えられる:
【化10】
かくして、親化合物Qは、アミンへの脱メチル化を受けた後、該アミンと隣接するメチレンの酸化を受けてアミド代謝物Q-1Aを形成する。実施例6および7で得られた結果は、イヌおよびラットのどちらについても、実施例1の化合物を生じる式Qの化合物の所定の位置での重水素化がN-メチルピペラジン部分の酸化を有意に低下させることを示しており、かくして、この代謝経路の遮断を示している。
【0129】
親化合物Q、Q-1代謝物およびQ-1A代謝物はすべて薬理学的に活性な種であることが知られているが異なる受容体選択性プロファイルを有しているので、親化合物QのQ-1代謝物への代謝の低下は、重要な臨床結果をもたらすことができる。例えば、表2は、これらの種の間の受容体活性差異のいくつかをまとめたものである(測定値はKi(nM)である):
【表4】
表2は、3つの化合物のすべてがセロトニン、ドパミンD1、ドパミンD2およびセロトニン輸送体受容体で活性を有するが、これらの受容体でのそれらの相対的な活性は異なることを示している。代謝物Q-1Aは親Qと非常に類似している薬理学的プロファイルを有するが、表2は、代謝物Q-1がドパミンD
2受容体およびセロトニン輸送体での相対活性が非常に低いという点で有意に異なることを示している。加えて、式Q-1の化合物は、QおよびQ-1Aとは異なって、強力なμオピエート受容体アンタゴニスト(約22nMのKi)であることが分かっている。それらの異なる受容体活性プロファイルのために、関連する代謝物の各々は、親薬物Qと比べて異なる機能的薬理学的効果を有する。かくして、化合物QおよびQ-1Aを代謝物Q-1に転換する代謝経路を遮断することによって、薬理学的機能に対する有意に効果を得ることができる。したがって、本発明は、親薬物によってもたらされる全薬理学的プロファイルを調節するためにこの代謝経路を阻害するのに有用である。