(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003001
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】洗浄前処理システム
(51)【国際特許分類】
A47L 15/24 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
A47L15/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103902
(22)【出願日】2021-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 企業への納品 納品日:令和2年10月1日 納品場所:株式会社第一食品本社工場
(71)【出願人】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雅也
(72)【発明者】
【氏名】小澤 茂功
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 允
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082AA01
3B082AA03
(57)【要約】
【課題】食器洗浄装置で食器を洗浄する前に、食器に付着した残飯を効率良く取り除くことができる洗浄前処理システムを提供する。
【解決手段】洗浄前処理システム1は、トレーTに載置された食器Dを、トレーTから分離し、食器洗浄装置9Cで洗浄する前の洗浄前処理システムである。洗浄前処理システム1は、食器Dが載置されたトレーTを搬送するトレー搬送装置10と、トレー搬送装置10で搬送される食器Dに液体Lを供給する液供給装置20と、トレー搬送装置10で、液供給装置20を通過したトレーTから、食器Dを分離する分離装置30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーに載置された食器を、前記トレーから分離し、食器洗浄装置で洗浄する前の洗浄前処理システムであって、
前記洗浄前処理システムは、
前記食器が載置された前記トレーを搬送するトレー搬送装置と、
前記トレー搬送装置で搬送される前記食器に液体を供給する液供給装置と、
前記トレー搬送装置で、前記液供給装置を通過したトレーから、前記食器を分離する分離装置と、
を備えることを特徴とする洗浄前処理システム。
【請求項2】
前記分離装置は、前記トレー搬送装置で搬送されたトレーを、前記トレーの自重による落下作用で、傾斜した姿勢で乗り移らせ、前記傾斜した姿勢の前記トレーを搬送するトレー傾斜搬送部と、
傾斜した姿勢の前記トレーから滑落する食器を案内する食器ガイドと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の洗浄前処理システム。
【請求項3】
前記液供給装置は、前記食器への液体供給を行う噴射ノズルを備えており、
前記噴射ノズルは、前記トレー搬送装置の前記トレーの搬送方向の下流に向かって、前記食器に、前記液体を噴射するように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄前処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーに載置された食器を、前記トレーから分離し、食器洗浄装置で洗浄する前の洗浄前処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、たとえば、特許文献1には、社員食堂、学内食堂などにおいて、食後の食器をトレーに載置したまま、トレーを回収搬送し、トレーから食器を落下分離させる分離装置が提案されている。この分離装置で分離された食器は、一旦、浸漬槽に浸漬され、その後、浸漬された食器は、かき上げコンベヤで浸漬槽から引き上げられ、食器洗浄装置まで、搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の洗浄前処理システムを介して、分離装置から分離された食器を、食器洗浄装置で洗浄する前に、食器内の残飯を予め取り除くことが望ましい。しかしながら、たとえば、病院や介護施設など各施設から回収される食事済みのトレーの食器には、残飯が多い傾向にあり、食器が載置されたトレーを、各施設からセントラルキッチン等にトラック等で回収搬送している間に、残飯が食器に強くこびりつくことがある。このような状態で、洗浄前処理システムを用いると、残飯の種類や乾燥具合によって、本来、残飯を回収する箇所以外の箇所においても、大量の残飯が発生するおそれがある。この結果、たとえば、洗浄作業中にもかかわらず残飯が大量に溜まることがあり、作業中にも洗浄前処理システムの一部の水を一旦抜くなど、装置のメンテナンスに手間と時間が掛かり、食器の洗浄を効率的に継続することができないことが想定される。
【0005】
前記課題を鑑みて、その目的とするところは、食器洗浄装置で食器を洗浄する前に、食器に付着した残飯を効率良く取り除くことができる洗浄前処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係るかき上げコンベヤは、トレーに載置された食器を、前記トレーから分離し、食器洗浄装置で洗浄する前の洗浄前処理システムであって、前記トレー搬送装置は、前記食器が載置された前記トレーを搬送するトレー搬送装置と、前記トレー搬送装置で搬送される前記食器に液体を供給する液供給装置と、前記トレー搬送装置で、前記液供給装置を通過したトレーから、前記食器を分離する分離装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、トレー搬送装置により、食器が載置されたトレーを搬送している状態で、液供給装置から食器に液体が供給される。食器に残飯が収容されているときには、この液体が食器内の残飯にも送られるため、残飯を食器から取り除き易くなる。このような結果、トレーから食器を分離する前に食器の残飯が多く残っていたとしても、分離後の食器内の残飯を、より簡単に取り除き易くなる。
【0008】
ここで、食器が載置されたトレーから、食器を分離することができるのであれば、分離装置の構造は、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記分離装置は、前記トレー搬送装置で搬送されたトレーを、前記トレーの自重による落下作用で、傾斜した姿勢で乗り移らせ、前記傾斜した姿勢の前記トレーを搬送するトレー傾斜搬送部と、傾斜した姿勢の前記トレーから滑落する食器を案内する食器ガイドと、を備える。
【0009】
この態様によれば、トレー搬送装置で、食器を載置した状態で搬送されるトレーを、トレー傾斜搬送部により、傾斜した姿勢で乗り移らせて、トレーを搬送する。このとき、トレーの自重による落下作用で、トレーが傾斜した姿勢をとるときに、トレーから食器が滑落する。トレーから滑落した食器は、不安的な姿勢で、食器ガイドに案内される。このような食器の滑落および不安的な姿勢の食器の案内により、食器には衝撃が作用するため、液体が供給された食器内の残飯が、食器内から取り除かれ易くなる。
【0010】
さらに、食器には、液体が供給されているため食器の重さが増すだけでなく、液体供給前の食器よりも、食器の重心位置も上に移動するため、トレーの落下作用により、食器は転動しながら滑落し易い。このような結果、トレーから分離する前に食器の残飯が多く残っていたとしても、分離後の食器の滑落および転動による衝撃で、食器から残飯が、より簡単に取り除かれ易くなる。
【0011】
ここで、食器に液体を供給することができるのであれば、液供給装置の構造は特に限定されるものではないが、より好ましい態様としては、前記液供給装置は、前記食器への液体供給を行う噴射ノズルを備えており、前記噴射ノズルは、前記トレー搬送装置の前記トレーの搬送方向の下流に向かって、前記食器に、前記液体を噴射するように配置されている。
【0012】
この態様によれば、トレーに載置された食器に対して、食器の搬送方向の下流に向かって、つまりトレーの搬送方向と同じ方向に向かって噴射ノズルから液体を吹き付けるので、上流に向かって液体を吹き付ける場合にくらべて、液体の吹き付け圧を低減し飛散を抑えて液体をより多く食器に供給することができる。これにより、吹き付けた液体の、食器からの跳ね返りを抑えて、食器に液体が溜まり易くなる。さらに、トレーにも、その一部の液体が吹き付けられて、トレー上で食器が滑動し易くなるため、その後の工程で、トレーから食器を分離し易くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食器洗浄装置で洗浄される前に、食器に多く付着している残飯を効率良く取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る洗浄前処理システムの全体平面図である。
【
図2】
図1に示すA-A線に沿った矢視方向における、トレー搬送装置、液供給装置、および分離装置の模式的側面図である。
【
図3】
図2に示す液供給装置の模式的側面図である。
【
図5】
図1のB-B線に沿った矢視方向における荒洗浄装置の模式的断面図である。
【
図6】
図1のC-C線に沿った矢視方向における荒洗浄装置の模式的断面図である。
【
図7】
図1のE-E線に沿った矢視方向における浸漬槽とかき上げコンベヤの模式的断面図である。
【
図8】(a)は、残飯回収カゴの模式的斜視図であり、(b)は、その側面図である。
【
図9】(a)は、2つのストレーナを取り付けた状態の上面図および正面図であり、(b)は、1つのストレーナの模式的斜視図および2つのストレーナを重ねた模式的斜視図であり、(c)は、2つのストレーナのメンテナンス方法を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態に係る洗浄前処理システムを、
図1~
図9を参照しながら、説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る洗浄前処理システム1は、トレーTに載置された食器Dを、トレーTから分離し、食器洗浄装置9Cで洗浄する前の洗浄前処理システムである。洗浄前処理システム1は、最終的には、後述するかき上げコンベヤ60で搬送された食器Dを、接続コンベヤ9Bを介して、食器洗浄装置9Cに搬送する。
【0017】
図1に示すように、洗浄前処理システム1は、トレー搬送装置(トレー下膳コンベヤ)10と、液供給装置20と、分離装置(トレー分離搬送装置)30と、食器荒洗浄装置40と、浸漬槽50と、かき上げコンベヤ60と、を備えている。
【0018】
1.トレー搬送装置10について
トレー搬送装置10は、たとえば、病院、介護施設、または老人福祉施設などから回収したトレーTを搬送するものであり、トレーTには、食器Dが載置されている。
図2に示すように、トレー搬送装置10は、第1搬送部10Aと、これに連続する第2搬送部10Bとを備えている。第1搬送部10Aには、後述する液供給装置20が配置されており、第2搬送部10Bの下流端には、後述する分離装置30に接続されている。
【0019】
第1および第2搬送部10A、10Bのそれぞれには、従動スプロケット12と駆動スプロケット13とが設けられており、これらには、搬送ベルト(チェーンベルト)11が掛け渡されている。さらに、第1および第2搬送部10A、10Bには、各搬送ベルト11を洗浄するコンベヤ洗浄パイプ17が設けられている。
【0020】
駆動スプロケット13には、伝達ベルトを介してモータ14に接続されており、制御盤18の操作により、モータ14を駆動させ、第1および第2搬送部10A、10Bの搬送ベルト11の速度を同期させながら、各搬送ベルト11を移動させることができる。
【0021】
本実施形態では、制御盤18は、操作スイッチまたは操作ボタン等により、モータ14の回転速度を調整することができ、この結果、搬送ベルト11の移動速度、すなわち、トレーTの搬送速度が調整可能となる。これにより、トレーTの搬送数に応じて、トレーTの搬送速度を調整することができる。
【0022】
ここで、後述する液供給装置20で、食器Dに液体Lが供給されてから、分離装置30(のトレー傾斜搬送部31)に到達するまでの時間(湿潤時間)が、2秒以上、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは20秒以上確保されるように、トレーTの搬送速度が調整される。このような湿潤時間を確保することにより、食器Dにこびり付いた残飯を効率良く取り除くことができる。
【0023】
2.液供給装置20について
液供給装置20は、トレー搬送装置10で搬送される食器Dに液体Lを供給する装置であり、第1搬送部10Aの搬送方向Pの中央より下流側に配置されている。ここで、トレーTを第1搬送部10Aに載置する前に、トレー状の食札やゴミ、食器の蓋、はし、スプーン、フォーク類が、トレーTから取り除かれ、食器Dが載置されたトレーTは、液供給装置20よりも搬送方向Pの上流側において、作業者により第1搬送部10Aに載置される。第1搬送部10Aに載置されたトレーTは、液供給装置20に向かって搬送され、液供給装置20を通過する。
【0024】
液供給装置20は、食器Dへの液体供給を行う噴射ノズル21と、噴射ノズル21を収容する筐体22と、第1搬送部10Aの幅方向の両側に配置された一対の飛散防止板23と、を備えている。噴射ノズル21は、トレー搬送装置10の幅方向(トレーTの搬送方向Pと直交する方向)に延在したパイプに、パイプの長手方向に沿ってスリットまたは円形の複数の貫通孔が形成されたノズルである。これにより、第1搬送部10Aの幅方向にわたって、液体Lをシャワー状に噴射することができ、液体Lを、食器DおよびトレーTに供給することが可能である。
【0025】
図2および
図3に示すように、噴射ノズル21は、第1搬送部10Aの上方に配置されており、トレー搬送装置10(のトレーT)の搬送方向Pの下流に向かって、トレーTおよび食器Dに液体Lを噴射するように配置されている。具体的には、噴射ノズル21の噴射角度θは、搬送ベルト11の搬送面11aに対して、30°~60°の範囲であり、本実施形態では、噴射ノズル21の噴射角度θは45°である。
【0026】
噴射ノズル21から噴射される液体Lは、上水(水道水)であるが、後述する浸漬槽50に設けられた循環ポンプ53から供給される洗浄水(浸漬水)であってもよく、洗剤等が添加されたもの、加熱されたもの(たとえば湯)であってもよい。液体Lをポンプ等で加圧せず、水道圧のみで、噴射ノズルの噴射圧をさらに調整することで、残飯とともに水はねを抑え、無駄な排水が増えず、液供給装置20の周囲を汚すことを回避することができる。
【0027】
噴射ノズル21の下流、より具体的には、筐体22の下流には、一対の飛散防止板23が設けられている。飛散防止板23を設けることにより、噴射ノズル21で、搬送方向Pの下流に、液体Lを噴射したとしても、第1搬送部10Aの両側から、周囲に液体Lが飛散することを防止することができる。このため、第1搬送部10Aの周囲を濡らしたり、汚したりすることを防止することができる。
【0028】
このようにして、トレーTに載置された食器Dに対して、トレーTの搬送方向Pの下流に向かって、噴射ノズル21で吹き付けるので、トレーTの搬送方向Pと液体Lの噴射方向が同じ方向となり、液体Lの噴射圧の勢いが相殺され、上流に向かって液体Lを吹き付ける場合にくらべて、液体Lの吹きつけ圧を抑えられることから、液体Lの飛散を抑え、液体Lをより多く食器Dに供給することができる。
【0029】
これにより、搬送方向Pの上流に向かって液体Lを食器Dに吹き付けた場合、食器Dの側面に噴射した液体Lの飛散する量が増えるばかりでなく、食器Dがずれたり、落ちたりすることもあるが、本実施形態では、搬送方向の下流に向かって液体Lを噴射するので、食器Dへの吹き付け圧による衝撃が和らげられ、はねを抑えてトレーTや食器Dに液体Lを溜めることができる。食器D内に残飯が残っている場合には、液体Lによりあらかじめ残飯を湿潤させることができる。これにより、こびりついた残飯が湿り、残飯が食器Dから落ちやすくなる。
【0030】
このようにして、食器に吹き付けた液体Lが食器Dから跳ね返り、飛散することを抑えて、食器Dに液体Lが溜まり易くなる。さらに、トレーTにも、その一部の液体Lが吹き付けられるため、トレーTから食器Dが滑動し易くなる。この結果、その後の工程で、トレーTから食器Dを分離し易くなる。なお、搬送方向Pの下流に向かって液体Lを噴射することで、液供給装置20よりも上流側で、トレーTの回収作業をしている作業者へ水が飛散するのを抑えることもできる。
【0031】
なお、本実施形態では、上述したトレー搬送装置10のトレーTの搬送速度を最大速度に設定した際に、液供給装置20の位置が、分離装置30までの搬送時間が2秒以上となる位置となるようにしている。発明者らの経験では、トレーTへ液体Lを噴射してから2秒未満に、トレーTから食器Dを分離すると、食器D内の湿潤が不十分で、食器Dに残飯が残りやすい。すなわち、液体Lを噴射してから2秒以上搬送すると、搬送している間にトレーTの上面の汚れ、食器D内の汚れが十分に湿潤する他、食器Dの表面と残飯の間に水分が回り、食器Dから残飯が分離しやすくなる。
【0032】
このような点から、液供給装置20から分離装置30までの搬送時間(すなわち上述した湿潤時間)は10秒以上が好ましいが、20秒以上がさらに好ましく、このような湿潤時間を確保すべく、制御盤18で、トレーTの搬送速度を調整してもよい。
【0033】
3.分離装置30について
図4に示すように、分離装置30は、トレー搬送装置10で、液供給装置20を通過したトレーTから、食器Dを分離する。分離装置30は、トレー搬送装置10で搬送されたトレーTを、トレーTの自重による落下作用で、傾斜した姿勢で乗り移らせ、傾斜した姿勢のトレーTを搬送するトレー傾斜搬送部31と、傾斜した姿勢のトレーTから滑落する食器Dを案内する食器ガイド39と、を備えている。
【0034】
トレー傾斜搬送部31は、支持台32と、傾斜搬送ベルト33と、ベルト駆動装置34と、傾斜トレーガイド35と、トレー受け部材36と、食器落としブラシ37と、トレー押え部材38と、を備えている。支持台32と、傾斜搬送ベルト33と、傾斜トレーガイド35とは、トレーTの搬送方向Pと直交する方向に並設されており、これらの順に高い位置に配置されている。支持台32と、傾斜搬送ベルト33と、傾斜トレーガイド35とは、トレー搬送装置10の第2搬送部10Bの下流端に配置されている。
【0035】
支持台32には、第2搬送部10Bから送り出されたトレーTの水平姿勢を一時的に保持するように、トレーTを滑動させながら支持する支持面32aが形成されている。支持面32aは、第2搬送部10Bから送り出されたトレーTの底面のうち、搬送方向Pに沿った一部(トレーTの底面の片側)を支持するように形成されている。
【0036】
傾斜搬送ベルト33は、この幅方向において、水平面に対して傾斜した搬送面33aを有している。傾斜搬送ベルト33は、ベルト駆動装置34に接続されており、ベルト駆動装置34の駆動により、トレーTを傾斜した姿勢で、搬送面33aに載置した状態で、搬送方向Pに搬送することができる。
【0037】
傾斜トレーガイド35は、傾斜搬送ベルト33の搬送面33aと面一になるように傾斜した受け面35aを有している。トレー受け部材36は、支持台32から自重により転動したトレーTの下縁部を受ける部材であり、搬送方向Pに沿って延在している。これにより、自重により落下したトレーTを、トレー受け部材36で受けながら、トレーTを傾斜した姿勢で、搬送することができる。
【0038】
食器落としブラシ37は、トレーTの搬送方向Pに向かって、ブラシ部分37aが配置されている。傾斜搬送ベルト33で搬送されたトレーTの縁部に、食器Dが引っ掛かっている場合には、このブラシ部分37aに、搬送中の食器Dが接触し、トレーTから食器Dをかき落とすことができる。
【0039】
トレー押え部材38は、搬送面33aに向かって、トレーTの上端縁を押える押えバーであり、トレーTの上縁部を、傾斜搬送ベルト33とトレー押え部材38とで挟み込みながら、トレーTは搬送される。トレー押え部材38は、その搬送方向の中央において支持台32に支持されており、搬送方向Pの上流側に配置された弾性体(図示せず)による付勢力で、トレーTの上端縁を押え込んでいる。
【0040】
これにより、トレー押え部材38の搬送方向Pの下流側において、トレーTをトレー送り出しローラ91に落とすまで安定した姿勢で搬送することができる。トレー送り出しローラ91に落ちたトレーTは、水平な姿勢で搬送され、
図1に示すトレー整理部9Aに搬出され、トレーTは順次積み重ねられる。
【0041】
食器ガイド39は、傾斜した姿勢のトレーTから滑落する食器Dを案内する。ここで、食器ガイド39は、食器Dを食器荒洗浄装置40に案内する案内面39aを有している。案内面39aは、搬送面33aおよび受け面35aよりも緩やかな角度で傾斜している。
【0042】
このような分離装置30により、食器Dを載置したトレーTがトレー傾斜搬送部31を通過するとき、トレーTは、傾斜トレーガイド35上に落下し、トレー受け部材36に衝突する。その衝突による衝撃で、食器DがトレーTから滑落する。食器Dへの衝撃および滑落後の転動により、食器D内の残飯を落とすことができる。食器Dと食器Dから落とされた残飯は、食器ガイド39に沿って案内され、食器荒洗浄装置40(具体的には、搬送コンベヤ41の水平搬送部41A)に向かう(
図5参照)。
【0043】
また、液供給装置20により、食器D内の残飯は、あらかじめ供給された液体Lで湿潤されているので、残飯が液体Lを吸って重くなるとともに、食器Dとの間に水が含まれ、食器Dの表面からはがれ易くなる。その状態で、トレーTが、ベルト駆動装置34上に落下すると、その衝撃で残飯が食器Dからはがれ落ち、事前に残飯を回収することができる。特に、トレーTの表面も、供給した液体Lにより濡れているので、食器Dは、傾斜した姿勢のトレーTを滑動し、転がり易いので、食器Dからの残飯がよりはがれ落ちやすくなる。
【0044】
4.食器荒洗浄装置40について
図5および
図6に示すように、食器荒洗浄装置40は、搬送コンベヤ41と、洗浄水タンク44、洗浄ノズル45A,45Bと、掻き出し装置47と、残飯コンテナ48と、を少なくとも備えている。
図6に示すように、搬送コンベヤ41には、一対のスプロケット42A、42B間に、チェーンベルト43が掛け渡されており、スプロケット42Bには、伝達ベルトを介して駆動モータ42Cが接続されている。搬送コンベヤ41は、食器Dを水平方向に沿って搬送する水平搬送部41Aと、水平搬送部41Aで搬送された食器Dを斜め上方に搬送する傾斜搬送部41Bと、を備えている。
【0045】
傾斜搬送部41Bには、上下方向から食器Dに洗浄水を吹き付ける洗浄ノズル45A、45Bが配置されている。洗浄ノズル45A、45Bは、搬送コンベヤ41の幅方向に延在しており、洗浄水を幅方向に噴射する噴射孔が形成されている。洗浄ノズル45A、45Bで噴射した洗浄水は、洗浄水タンク44に回収される。洗浄水タンク44には、電気式または蒸気式で、洗浄水を加熱するヒータ44aが配置されている。洗浄水タンク44には、循環ポンプ46が接続されており、循環ポンプ46の吐出口は、洗浄ノズル45A,45Bに接続されている。
【0046】
さらに、
図5および
図6に示すように、本実施形態では、水平搬送部41Aの下方には、チェーンベルト43から落下する残飯を受ける残飯受け部47aを有した掻き出し装置47が配置されている。掻き出し装置47には、残飯受け部47aで受けた残飯を掻き出す複数の掻き出し羽根47bを備えたベルト47cが、モータ等(図示せず)の動力で、可動自在に配置されている。これにより、残飯受け部47aで受けた残飯を、掻き出し羽根47bで掻き出し、掻き出し羽根47bで掻き出された残飯を、残飯コンテナ48で回収することができる。
【0047】
図5および
図6に示すように、分離装置30の食器ガイド39から落下した食器Dは、食器荒洗浄装置40の食器投入開口部から、チェーンベルト43に落下する。この落下の際、食器D内の残飯は、あらかじめ液体Lで湿潤されているので、残飯が液体Lを吸い重くなるとともに、食器Dとの間に液体Lが含まれ、食器Dの表面からはがれ易くなっている。その状態で搬送コンベヤ41上に落下するので、その衝撃で残飯は食器Dからはがれ落ち、事前に残飯を回収することができる。
【0048】
さらに、洗浄ノズル45A、45Bにより食器Dから洗い落とされた残飯も、一部の洗浄水とともに、残飯受け部47aまで誘導される。残飯受け部47aに到達した洗浄水は、残飯受け部47aの通水孔を介して、洗浄水タンク44に流れ落ちて回収される。一方、通水孔を通過せず残飯受け部47aで捕獲された残飯は、かき出し羽根47bにより外部へ排出される。残飯コンテナ48に堆積した残飯は、処理場へ運搬される。
【0049】
5.浸漬槽50とかき上げコンベヤ60について
食器荒洗浄装置40を通過した食器Dは、
図1および
図7に示す浸漬槽50に投入される。浸漬槽50は、食器を浸漬する浸漬水を収容する槽本体51と、槽本体51に洗浄水を噴射する複数のノズル52と、循環ポンプ53と、を備えている。
【0050】
槽本体51には、かき上げコンベヤ60の一部が浸漬されており、かき上げコンベヤ60の下部には、循環ポンプ53が配置されている。複数のノズル52、52、…は、配管を介して循環ポンプ53に接続されており、各ノズル52には、循環ポンプ53で吸込んだ槽本体51内の浸漬水が供給され、浸漬槽50の浸漬水中に、かき上げコンベヤ60に向かう水流が形成されるように、浸漬水を噴射している。浸漬した食器Dは、ノズル52、52、…による水流に押し流され、かき上げコンベヤ60に向けて流される。
【0051】
図1に示すように、浸漬槽50には、かき上げコンベヤ60が浸漬された区域を区画し、かき上げコンベヤ60に向かう食器Dをせき止めるせき止め板54が、着脱自在に配置されている。本実施形態では、せき止め板54には、食器の大きさよりも小さい大きさの複数の貫通孔が形成されている。これにより、たとえば、後述する残飯回収カゴ70の残飯を回収する際に、せき止め板54を設置し、かき上げコンベヤ60に向かう食器を、せき止め板54で一時的にせき止めるとともに、かき上げコンベヤ60側に浸漬水を通すことができる。
【0052】
かき上げコンベヤ60は、食器Dが浸漬された浸漬槽50から、接続コンベヤ9Bを介して、食器洗浄装置9Cに、食器Dをかき上げて搬送する装置である。かき上げコンベヤ60は、浸漬槽50に配置された従動スプロケット61Aと、食器洗浄装置9C側に配置された駆動スプロケット61Bと、を備えている。駆動スプロケット61Bは、伝達ベルトを介して、モータ65に連結されている。
【0053】
かき上げコンベヤ60は、一対のスプロケット61A、61Bを渡すように巻き付いて、スプロケット61A、61Bに係合するチェーンベルト63をさらに備えている。チェーンベルト63は、始端部6aの位置で従動スプロケット61Aに巻き付いて、これに係合しており、終端部6bの位置で駆動スプロケット61Bに巻き付いて、これに係合している。
【0054】
これにより、かき上げコンベヤ60の終端部6bでは、チェーンベルト63は、始端部6aから終端部6bまでの往路63Aを移動し、その下側では、チェーンベルト63は、終端部6bで折り返し、終端部6bから始端部6aまで復路63Bを移動する。
【0055】
チェーンベルト63は、食器Dの搬送方向Pと直交する側面視において、食器Dを水平方向に搬送する水平搬送部67と、水平搬送部67に連続し、食器洗浄装置9C側に向かって上側に傾斜した傾斜搬送部68を有している。
【0056】
図1および
図7に示すように、かき上げコンベヤ60の一部が浸漬している槽本体51の区域は、かき上げコンベヤ60の従動スプロケット61Aと、復路63Bのチェーンベルト63を収容する収容凹部64が形成されている。したがって、収容凹部64の底面64aは、浸漬槽50の槽本体51の底面よりも一段下がって低くなっている。収容凹部64の底面64aは、食器Dの搬送方向Pに向かって緩やかに傾斜しており、後述するチェーンベルト63により流れ難い残飯等は、残飯回収とい58まで移動し、浸漬水の入れ替え時に排水口59から排水される。
【0057】
後述するかき上げコンベヤ60の搬送方向Pの側方および後方側には、チェーンベルト63の往路63Aが露出するように、収容凹部64を覆う通水カバー56、57が取り付けられている。通水カバー56、57には、通水孔が形成されており、通水孔は、残飯は落下するが、食器は落下させない大きさに形成されている。
【0058】
後方側の通水カバー56の下方、具体的には、かき上げコンベヤ60の始端部6aには、複数の残飯回収カゴ70が配置されている。残飯回収カゴ70は、
図8に示すように、残飯等を捕獲する通水孔が多数形成されたカゴ本体71に、取っ手72が取り付けられたカゴである。カゴ本体71の端部と上部には、それぞれ開口部73、74が形成されている。残飯回収カゴ70は、端部の開口部73が、食器Dの搬送方向Pの上流側に向くように配置されている。
【0059】
本実施形態では、浸漬槽50内で食器Dからはがれ落ちた残飯は、ノズル52、52、…による水流に押し流され、通水カバー56、57の通水孔を介して収容凹部64の底面64aに向かって落下する。ここで、収容凹部64の底面64aは、チェーンベルト63の復路63Bに対向しているので、チェーンベルト63の移動により、収容凹部64の底面64aでは、搬送方向Pの上流側に向かって水流が形成される。この水流により、収容凹部64の底面64aに沈殿した残飯のうち、残飯回収とい58に移動しなかった残飯を、残飯回収カゴ70へ寄せ集め、残飯回収カゴ70の開口部73から残飯回収カゴ70に進入させ、これを捕獲することができる。
【0060】
なお、かき上げコンベヤ60の手前側(せき止め板54側)に落下する残飯が多い場合には、通水カバー57の下部にも上面に開口した残飯回収カゴ70を設置してもよく、さらに効果的に残飯を回収することができる。
【0061】
浸漬槽50には、ストレーナ80(80A、80B)が配置されており、ストレーナ80は、循環ポンプ53の吸引口に接続された配管53aの開口53bを覆うように設置されている。
図9(a)に示すように、ストレーナ80は、循環ポンプ53に吸い込まれる浸漬水から、残飯等を捕獲するものである。
【0062】
本実施形態では、ストレーナ80は、残飯等を捕獲する通水孔が形成された箱状のストレーナ本体81を有しており、その上部(上面)には、取っ手82が形成されている。ストレーナ本体81の側面上部には、開口83が形成されている。ストレーナ80をガイド85に沿って配置する際には、開口83が配管53aの開口53bと反対側になるように配置される。ストレーナ80には、残飯を捕獲する残飯ポケット(残飯収容部)84が形成されており、残飯ポケット84を形成する底面は、チェーンベルト63の傾斜搬送部68に沿って一方向に傾斜している。
【0063】
本実施形態では、2つのストレーナ80A、80Bは、循環ポンプ53の吸い込み方向Sに沿って配置される。2つのストレーナ80A、80Bが、吸引方向に複数段設置可能に構成されているため、
図9(c)に示すように、1つのストレーナ80A(80B)を引き上げる前に他のストレーナ80B(80A)を新たに設置し、その後1つのストレーナ80A(80B)を引き上げる。このように、ストレーナ80A、80Bを順に(2つの場合は交互に)交換することで、常に配管53aの開口53bを覆うことができるため、浸漬水の循環運転中でも残飯を回収することができる。そのため、ストレーナを大きくすることなく、かつ循環運転を止めずに大量の残飯を回収することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、トレー搬送装置10、浸漬槽50、かき上げコンベヤ60が順にコの字状に配置されている。食器荒洗浄装置40の残飯コンテナ48と、浸漬槽50のストレーナ80とがコ字状の内側に配置されている。このため、接続コンベヤ9Bにてかき上げ後の食器Dをうつ伏せ状に配列する配列作業員がコ字状の内側に立っているとき、食器荒洗浄装置40の残飯コンテナ48と、浸漬槽50のストレーナ80の位置まで近い位置となるため、配列作業員により食器荒洗浄装置40の残飯コンテナ48とストレーナ80を短時間で交換することができる。
【0065】
以上、本発明のいくつか実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0066】
1:洗浄前処理システム、10:トレー搬送装置、20:液供給装置、21:噴射ノズル、30:分離装置、31:トレー傾斜搬送部、39:食器ガイド、D:食器、T:トレー