(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030036
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】耐久性および耐擦傷性反射防止物品
(51)【国際特許分類】
G02B 1/115 20150101AFI20230228BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20230228BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
G02B1/115
G02B1/14
C03C17/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200216
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2020148919の分割
【原出願日】2015-05-11
(31)【優先権主張番号】61/991,656
(32)【優先日】2014-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/010,092
(32)【優先日】2014-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/028,014
(32)【優先日】2014-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/098,819
(32)【優先日】2014-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/098,836
(32)【優先日】2014-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/142,114
(32)【優先日】2015-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】シャンドン ディー ハート
(72)【発明者】
【氏名】カール ウィリアム コッホ ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ アンドリュー ポールソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ジョセフ プライス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐久性反射防止物品を提供する。
【解決手段】該物品100は、基体110と、主要表面上に配置された光学コーティング120とを含む。光学コーティングは、反射防止表面を形成する反射防止コーティング130および耐擦傷性コーティングを含む。物品は、約100nm以上の押し込み深さに沿って、Berkovich Indenter Hardness Testによって反射防止表面上で測定される場合、約12GPa以上の最大硬度を示す。いくつかの実施形態の物品は、約400nm~約800nmの範囲の光学波長領域において、約8%以下の、前記反射防止表面において測定された片面平均光反射率、ならびに約2未満の透過率または反射率における基準点色シフトを示す。いくつかの実施形態において、物品は、直角入射から、20度以上の入射照明角までの全ての角度において約5以下の角度色シフトを示す。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要表面を有する基体と、
前記主要表面上に配置され、かつ反射防止表面を形成する、反射防止コーティング及び耐擦傷性層を有してなる光学コーティングと
を有してなる反射防止物品であって、
前記基体が、非晶質基体または結晶質基体を含み、前記非晶質基体は、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラスおよびアルカリアルミノボロシリケートガラスからなる群から選択されるガラスを含み、
該反射防止物品が、100nm以上の範囲の押し込み深さに沿って、Berkovich Indenter Hardness Testによって前記反射防止表面の上で測定される場合、8GPa以上の最大硬度を示し、
前記反射防止コーティングが、物理的厚さを有し、低RI材料と高RI材料とを含む複数の層を含み、前記反射防止コーティングの前記高RI材料が、窒化物または酸窒化物であり、
前記反射防止コーティングが、前記低RI材料と前記高RI材料とが交互に並ぶように少なくとも1つの周期を含み、
前記高RI材料が、1.8より大きな屈折率を有し、
前記高RI材料と前記耐擦傷性層を含む複数の層の合計した物理的厚さが、前記光学コーティングの物理的厚さの30%以上であり、
前記耐擦傷性層が、窒化物材料または酸窒化物材料の高RI材料を含み、1nm~3μmの範囲の厚さを有し、
前記反射防止コーティングが、前記基体の上に配置された第1の部分と前記耐擦傷性層の上に配置された第2の部分とを含み、前記耐擦傷性層が、前記第1の部分と前記第2の部分の間に配置され、
前記耐擦傷性層の上に配置された前記反射防止コーティングの前記第2の部分の低RI材料の合計の物理的厚さが、150nm以下である、
ことを特徴とする、反射防止物品。
【請求項2】
前記反射防止物品が、400nm~800nmの範囲の光学波長領域において、8%以下の、前記反射防止表面において測定された片面平均光反射率、ならびに、
前記反射防止表面において測定した場合、色座標(a*=0、b*=0)および前記基体の透過率色座標の少なくとも1つを有してなる基準点から2未満の基準点色シフトを示す、国際照明委員会の光源下で直角入射での(L*、a*、b*)測色系における物品透過率色座標、および
前記反射防止表面において測定した場合、色座標(a*=0、b*=0)、色座標(a*=-2、b*=-2)および前記基体の反射率色座標の少なくとも1つを有してなる基準点から5未満の基準点色シフトを示す、国際照明委員会の光源下で直角入射での(L*、a*、b*)測色系における物品反射率色座標
のいずれか一方、または両方を示し、
前記基準点が色座標(a*=0、b*=0)である場合、前記色シフトは、√((a*
物品)2+(b*
物品)2)によって定義され、
前記基準点が色座標(a*=-2、b*=-2)である場合、前記色シフトは、√((a*
物品+2)2+(b*
物品+2)2)によって定義され、かつ
前記基準点が前記基体の色座標である場合、前記色シフトは、√((a*
物品-a*
基体)2+(b*
物品-b*
基体)2)によって定義される
ことを特徴とする、請求項1記載の反射防止物品。
【請求項3】
前記反射防止物品が、前記反射防止表面においてTaber Testを使用して500サイクルの摩擦後に、
(i)8mmの直径を有する開口部を有する曇り度計を使用して測定される1%以下の曇り度、
(ii)原子間力顕微鏡法によって測定される12nm以下の平均粗さRa、
(iii)600nmの波長で、2mmの開口部を用いて、散乱測定用イメージングスフィアを使用して、直角入射の透過で測定される、40度以下の極散乱角において、0.05(1/ステラジアンの単位)以下の散乱光度、および
(iv)600nmの波長で、2mmの開口部を用いて、散乱測定用イメージングスフィアを使用して、直角入射の透過で測定される、20度以下の極散乱角において、0.1(1/ステラジアンの単位)以下の散乱光度
のいずれか1つまたはそれ以上を満たす耐摩擦性を示すことを特徴とする、請求項1または2記載の反射防止物品。
【請求項4】
前記光学コーティング上に配置される、クリーニングが容易なコーティング、ダイヤモンド様コーティング、または、耐擦傷性コーティングをさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項記載の反射防止物品。
【請求項5】
前記高RI材料と前記耐擦傷性層を含む複数の層の合計した物理的厚さが、前記光学コーティングの物理的厚さの50%以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項記載の反射防止物品。
【請求項6】
前記高RI材料が、SiNX、SiOXNY、SiUAlVOXNY、AlNX、AlOXNY、
またはこれらの組合せを含み、
前記低RI材料が、SiO2、Al2O3、GeO2、SiO、AlOXNY、SiOXNY、SiUAlVOXNY、MgO、MgAl2O4、MgF2、BaF2、CaF2、DyF3、YbF3、YF3、CeF3、またはこれらの組合せを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項記載の反射防止物品。
【請求項7】
前記反射防止コーティングが、800nm以下の範囲の物理的厚さを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項記載の反射防止物品。
【請求項8】
前記低RI材料が、2nm~200nmの範囲の光学厚さを有し、前記高RI材料が、2~200nmの光学厚さを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項記載の反射防止物品。
【請求項9】
前記第2の部分は、前記耐擦傷性層の上に位置する1つ以上の層を含み、前記耐擦傷性層が、1nm~0.5μmの範囲の物理的厚さを有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項記載の反射防止物品。
【請求項10】
前記結晶質基体が、ガラスセラミック基体であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項記載の反射防止物品。
【請求項11】
前記反射防止物品が、スマートフォン、mp3プレーヤー及びコンピュータータブレットよりなる群から選択されるモバイルデバイスに使用されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項記載の反射防止物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2015年4月2日出願の米国仮特許出願第62/142114号、2014年12月31日出願の米国仮特許出願第62/098,836号、2014年12月31日出願の米国仮特許出願第62/098,819号、2014年7月23日出願の米国仮特許出願第62/028,014号、2014年6月10日出願の米国仮特許出願第62/010,092号および2014年5月12日出願の米国仮特許出願第61/991,656号に対する優先権を主張する。上記米国仮特許出願の内容は依拠され、そして全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、耐久性および耐擦傷性反射防止物品、ならびにその製造方法に関し、より具体的には、耐摩擦性、耐擦傷性、低反射性、ならびに無色透過率および/または反射率を示す多層反射防止コーティングを有する物品に関する。
【背景技術】
【0003】
カバー物品は、しばしば、電子製品内の重要なデバイスを保護するために、入力用ユーザインタフェースおよび/またはディスプレイおよび/または多くの他の機能を提供するために使用されている。そのような製品には、スマートフォン、mp3プレーヤーおよびコンピュータータブレットなどのモバイルデバイスが含まれる。カバー物品としては、建築物品、輸送物品(例えば、自動車用途、電車、航空機、船舶などで使用される物品)、器具物品、あるいはいくらかの透過性、耐擦傷性、耐摩擦性またはそれらの組合せを必要とするいずれの物品も含まれる。これらの用途は、しばしば、耐擦傷性、ならびに最大光透過率および最小反射率に関する強い光学的性能特性を要求する。さらに、いくつかのカバー用途では、視野角が変化する時に、反射および/または透過において示されるか、もしくは認知される色が明らかに変化しないことが要求される。ディスプレイ用途においては、これは、反射または透過における色が、視野角とともに感知可能な度合いまで変化する場合、製品の使用者がディスプレイの色または明るさの変化を認知することとなり、それによってディスプレイの知覚品質が低下するおそれがあるためである。他の用途においては、色の変化は、美的な必要条件または他の機能的な必要条件に悪影響を及ぼし得る。
【0004】
カバー物品の光学的性能は、種々の反射防止コーティングを使用することによって改善することができるが、既知の反射防止コーティングは摩耗または摩擦の影響を受けやすい。そのような摩擦は、反射防止コーティングによって達成されたいずれかの光学的性能の改善をも損なう可能性がある。例えば、光学フィルターは、しばしば、異なる屈折率を有する多層コーティングから製造され、そして光学的に透明な誘電材料(例えば、酸化物、窒化物およびフッ化物)から製造される。そのようなフィルターのために使用される典型的な酸化物のほとんどは、広バンドギャップ材料であるが、これは、モバイルデバイス、建築物品、輸送物品または器具物品での使用に関して、硬度などの必要な機械的特性を有さない。窒化物およびダイヤモンド様コーティングは、高い硬度値を示し得るが、そのような材料は、そのような用途に必要とされる透過率を示さない。
【0005】
摩擦損傷には、対向面物体(例えば、指)からの往復運動滑り接触が含まれる可能性がある。加えて、摩擦損傷は熱を発生する可能性があり、これはフィルム材料中の化学結合を分解するおそれがあり、そしてカバーガラスにフレークおよび他の種類の損傷を生じるおそれがある。摩擦損傷は、しばしば、擦傷を生じる単一事象よりも長期間にわたって経験されるため、摩擦損傷を経験する配置されたコーティング材料は酸化するおそれがあり、これはさらに、コーティングの耐久性を低下させる。
【0006】
また、既知の反射防止コーティングは、擦傷損傷の影響も受けやすく、そしてしばしば、そのようなコーティングが配置された下部の基体よりも擦傷損傷の影響を受けやすい。いくつかの場合、そのような擦傷損傷の大部分として、長さが長く、かつ深さが約100nm~約500nmの範囲にある単一の溝を材料中に典型的に含む、微小延性擦傷が含まれる。微小延性擦傷には、表面下の亀裂、摩擦による亀裂、欠損および/または摩耗などの他の種類の目に見える損傷が伴い得る。証拠によって、大多数のそのような擦傷および他の目に見える損傷が、単一接触事象によって生じる急激な接触によって引き起こされることが示唆される。有意な擦傷がカバー基体上に出現すると、擦傷が、ディスプレイ上の像の明度、鮮明度およびコントラストの有意な減少を生じ得る光散乱の増加を生じるため、物品の外観は悪化する。有意な擦傷は、接触感知ディスプレイを含む物品の精度および信頼度にも影響を与える可能性がある。単一事象擦傷損傷は、摩擦損傷とは対照的となる可能性がある。単一事象擦傷損傷は、硬質対向面物体(例えば、砂、砂利および紙やすり)からの往復運動滑り接触などの複数の接触事象によって生じることがないか、またはフィルム材料における化学結合を分解し、そしてフレークおよびほかの種類の損傷を引き起こすおそれのある熱を典型的に発生させない。加えて、単一事象擦傷は、典型的に、酸化を生じることがないか、または摩擦損傷を生じる同条件を伴うことがないため、摩擦損傷を防ぐためにしばしば利用される解決策は擦傷を防ぎ得ない。さらに、既知の擦傷および摩擦損傷解決策は、しばしば光学的特性を損なう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、耐摩擦性、耐擦傷性であり、かつ光学的特性が改善された新規カバー物品、およびそれらの製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
耐久性および耐擦傷性反射防止物品の実施形態が記載される。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、基体と、反射防止表面を形成する主要表面上に配置された光学コーティングとを含む。1つまたはそれ以上の実施形態において、光学コーティングは反射防止コーティングを含む。
【0009】
物品は、反射防止表面上で、約50nm以上(例えば、約100nm以上、約50nm~約300nm、約50nm~約400nm、約50nm~約500nm、約50nm~約600nm、約50nm~約1000nmまたは約50nm~約2000nm)の押し込み深さに沿って、本明細書に記載される通り、Berkovich Indenter Hardness Testによって測定される、約12GPa以上の最大硬度を示すことによって耐擦傷性を示す。
【0010】
物品は、本明細書に記載される通り、Taber Testを使用して、500サイクルの摩擦後に反射防止表面上で測定される耐摩擦性を示す。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、約8mmの直径を有する開口部を有する曇り度計を使用して測定される約1%以下の曇り度を含んでなる(反射防止表面上で測定される)耐摩擦性を示す。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、原子間力顕微鏡法によって測定される約12nm以下の平均粗さRaを含んでなる(反射防止表面上で測定される)耐摩擦性を示す。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、600nmの波長で、2mmの開口部を用いて、散乱測定用イメージングスフィアを使用して、直角入射の透過で測定される、約40度以下の極散乱角において、約0.05(1/ステラジアンの単位)以下の散乱光度を含んでなる(反射防止表面上で測定される)耐摩擦性を示す。いくつかの場合、物品は、600nmの波長で、2mmの開口部を用いて、散乱測定用イメージングスフィアを使用して、直角入射の透過で測定される、約20度以下の極散乱角において、約0.1(1/ステラジアンの単位)以下の散乱光度を含んでなる(反射防止表面上で測定される)耐摩擦性を示す。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態の物品は、光透過率および/または光反射率に関して、優れた光学的特性を示す。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、光学波長領域(例えば、約400nm~約800nm、または約450nm~約650nmの範囲)において、約92%以上(例えば、約98%以上)の(反射防止表面のみにおいて測定される)平均光透過率を示す。いくつかの実施形態において、物品は、光学波長領域において、約2%以下(例えば、約1%以下)の(反射防止表面のみにおいて測定される)平均光反射率を示す。物品は、光学波長領域において、約1パーセントポイント以下の平均振幅を有する平均光透過率または平均光反射率を示し得る。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、反射防止表面のみにおいて測定される、直角入射において約1%以下の平均明所視反射率を示す。いくつかの実施形態において、物品は、反射防止表面において直角または近直角入射(例えば、0~10度)において測定される、約10%未満のみの片面平均明所視反射率を示す。いくつかの実施形態において、片面平均明所視反射率は、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%または約2%以下である。
【0012】
いくつかの場合、物品は、光源を使用して反射防止表面で見た場合に約2度~約60度の範囲の基準照射角から入射照射角までの約10未満(例えば、5以下、4以下、3以下、2以下または約1以下)の(本明細書に記載される)角度色シフトを示す。代表的な光源としては、CIE F2、CIE F10、CIE F11、CIE F12およびCIE D65のいずれか1つが含まれる。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、約0~約60度の範囲の全入射照明角におけるCIE L*、a*、b*測色系において約2未満のb*値を示し得る。代わりに、または加えて、いくつかの実施形態の物品は、本明細書に定義される基準点から約2未満の基準点色シフトを有する、直角入射で反射防止表面において測定される透過率色(もしくは透過率色座標)および/または反射率色(もしくは反射率色座標)を示す。1つまたはそれ以上の実施形態において、基準点は、L*a*b*色空間における原点(0、0)(または色座標a*=0、b*=0もしくはa*=-2、b*=-2)、あるいは基体の透過率または反射率色座標であり得る。本明細書に記載される角度色シフト、基準点色シフトおよび色座標(a*および/またはb*)は、D65および/またはF2光源下で観察される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される光学性能はF2光源下で観察されるが、これは、F2光源の鋭いスペクトル特徴のため、より困難であることが知られている。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、反射防止コーティングは、複数の層を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、反射防止コーティングは、第1の低RI層および第2の高RI層を含んでなる周期を含む。この周期は、第1の低RI層および第1の低RI層上に配置された第2の高RI層、あるいはその逆を含んでよい。いくつかの実施形態において、この周期は第3の層を含み得る。反射防止コーティングは、第1の低RI層および第2の高RI層が交互に並ぶように複数の周期を含み得る。反射防止コーティングは、約10または20周期まで含むことが可能である。
【0014】
いくつかの実施形態において、光学コーティングは耐擦傷性層を含む。耐擦傷性層が含まれる場合、そのような層は反射防止コーティング上に配置され得る。他の実施形態において、耐擦傷性コーティングは、反射防止コーティングと基体との間に配置される。代表的な耐擦傷性層は、本明細書に定義されるBerkovitch Indenter Hardness Testによって測定する場合、約8GPa~約50GPaの範囲で最大硬度を示し得る。
【0015】
耐擦傷性層は、基体と反射防止コーティングとの間に配置され得る。いくつかの実施形態において、反射防止コーティングは、耐擦傷性層が第1の部分と第2の部分との間に配置されるように、第1の部分および第2の部分を含み得る。耐擦傷性層の厚さは、約200ナノメートル~約3マイクロメートルの範囲であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、物品は、約1.8より高い屈折率を有する層を含み得る。そのような層で利用されてよい材料としては、SiNx、SiOxNy、SiuAlvOxNy、AlNx、AlOxNyまたはそれらの組合せが含まれる。
【0017】
いくつかの場合、物品は、クリーニングが容易なコーティング、ダイヤモンド様カーボン(「DLC」)コーティング、耐擦傷性コーティングまたはそれらの組合せなどの追加的な層を含み得る。そのようなコーティングは、反射防止コーティング上に、または反射防止コーティングの層の間に配置され得る。
【0018】
物品の1つまたはそれ以上の実施形態において利用される基体は、非晶質基体または結晶質基体を含むことができる。非晶質基体は、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラスおよびアルカリアルミノボロシリケートガラスからなる群から選択され得るガラスを含む。いくつかの実施形態において、ガラスは強化されてもよく、そして強化ガラス内の化学強化されたガラスの表面から少なくとも約10μmの層の深さ(DOL)まで延在する少なくとも250MPaの表面CSを有する圧縮応力(CS)層を含んでもよい。
【0019】
追加的な特徴および利点は、以下の詳細な説明において明らかにされ、そして一部は、そのような説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、請求の範囲ならびに添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0020】
上記の概要および以下の詳細な説明の両方は単なる例であり、そして請求の範囲の性質および特徴を理解するための概観または骨組みを提供するように意図されることは理解されるはずである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれて、そして本明細書の一部に含まれて、かつ構成する。図面では、1つまたはそれ以上の実施形態を例証し、そして説明と共に、種々の実施形態の原理および操作を説明するために有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、1つまたはそれ以上の実施形態による物品の側面図である。
【
図2】
図2は、1つまたはそれ以上の特定の実施形態による物品の側面図である。
【
図3】
図3は、1つまたはそれ以上の実施形態による物品の側面図である。
【
図4】
図4は、1つまたはそれ以上の実施形態による物品の側面図である。
【
図5】
図5は、1つまたはそれ以上の実施形態による物品の側面図である。
【
図6】
図6は、1つまたはそれ以上の実施形態による物品の側面図である。
【
図7】
図7は、1つまたはそれ以上の実施形態による物品の側面図である。
【
図8】
図8は、実施例1による物品の側面図である。
【
図9】
図9は、入射照明角が0°から約60°まで変化した時の反射率を示す、実施例2の物品の片面反射率スペクトルである。
【
図10】
図10は、10°観測器を使用して、種々の視野角における種々の光源下での反射色を示す、実施例2の物品の反射色スペクトルである。
【
図11】
図11は、入射照明角が0°から約60°まで変化した時の反射率を示す、実施例3の物品の片面反射率スペクトルである。
【
図12】
図12は、10°観測器を使用して、種々の視野角における種々の光源下での反射色を示す、実施例3の物品の反射色スペクトルである。
【
図13】
図13は、10°観測器を使用して、種々の視野角における反射防止表面のみから算出されたモデル実施例8の反射率スペクトルである。
【
図14】
図14は、10°観測器を使用して、種々の視野角における種々の光源下での反射色を示す、実施例8の物品の反射色スペクトルである。
【
図15】
図15は、10°観測器を使用して、種々の視野角における反射防止表面のみから算出されたモデル実施例9の反射率スペクトルである。
【
図16】
図16は、10°観測器を使用して、種々の視野角における種々の光源下での反射色を示す、実施例9の物品の反射色スペクトルである。
【
図17】
図17は、10°観測器を使用して、種々の視野角における反射防止表面のみから算出されたモデル実施例10の反射率スペクトルである。
【
図18】
図18は、10°観測器を使用して、種々の視野角における種々の光源下での反射色を示す、実施例10の物品の反射色スペクトルである。
【
図19】
図19は、10°観測器を使用して、種々の視野角における反射防止表面のみから算出されたモデル実施例11の反射率スペクトルである。
【
図20】
図20は、10°観測器を使用して、種々の視野角における種々の光源下での反射色を示す、実施例11の物品の反射色スペクトルである。
【
図21】
図21は、押し込み深さおよびコーティング厚さの関数としての硬度測定を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、様々な実施形態が詳細に参照されるが、それらの例は添付の図面に説明される。
【0023】
図1を参照すると、1つまたはそれ以上の実施形態による物品100は、基体110と、基体上に配置された光学コーティング120を含み得る。基体110は、対立する主要表面112、114および対向する副表面116、118を含む。光学コーティング120は、
図1中、第1の対立する主要表面112上に配置されて示されるが、光学コーティング120は、第1の対立する主要表面112上に配置されることに加えて、またはその代わりに、第2の対立する主要表面114および/または一方もしくは両方の対立する副表面上に配置されてもよい。光学コーティング120は、反射防止表面122を形成する。
【0024】
光学コーティング120は、少なくとも1種の材料の少なくとも1層を含む。「層」という用語は単層を含んでもよく、または1層またはそれ以上の副層を含んでもよい。そのような副層は、互いに直接接触していてもよい。副層は、同一材料から、または2種以上の異なる材料から形成されてもよい。1つまたはそれ以上の別の実施形態において、そのような副層は、それらの間に配置される異なる材料の介在層を有してもよい。1つまたはそれ以上の実施形態において、層は、1層またはそれ以上の連続的かつ中断されない層および/または1層またはそれ以上の不連続的かつ中断された層(すなわち、異なる材料が互いに隣接して形成された層)を含んでもよい。層または副層は、別々の析出または連続的析出プロセスを含む当該技術において既知のいずれかの方法によって形成されてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態において、層は、連続的析出プロセスのみ、あるいは代わりに、別々の析出プロセスのみを使用して形成されてもよい。
【0025】
光学コーティング120の厚さは、約1μm以上であってよいが、なお本明細書に記載される光学性能を示す物品が提供される厚さである。いくつかの例において、光学コーティング120の厚さは、約1μm~約20μm(例えば、約1μm~約10μm、または約1μm~約5μm)の範囲であってよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「配置」という用語は、当該技術において既知のいずれかの方法を使用して表面上に材料をコーティング、析出および/または形成することを含む。配置された材料は、本明細書に定義される層を構成し得る。「上に配置される」という句は、材料が表面と直接接触するように表面上に材料を形成する例を含み、そしてまた、配置された材料と表面との間に1種またはそれ以上の介在材料がある状態で材料が表面上で形成される例も含む。介在材料は、本明細書に定義される層を構成し得る。
【0027】
図2に示すように、光学コーティング120は、複数の層(130A、130B)を含み得る反射防止コーティング130を含み得る。1つまたはそれ以上の実施形態において、反射防止コーティング130は、2層以上の層を含んでなる周期132を含み得る。1つまたはそれ以上の実施形態において、2層以上の層は、互い異なる屈折率を有するものとして特徴づけられてよい。一実施形態において、周期132は、第1の低RI層130Aおよび第2の高RI層130Bを含む。第1の低RI層および第2の高RI層の屈折率の差異は、約0.01以上、0.05以上、0.1以上または0.2以上であり得る。
【0028】
図2に示すように、反射防止コーティング130は複数の周期(132)を含み得る。単一の周期は、第1の低RI層130Aおよび第2の高RI層130Bを含み、複数の周期が提供される場合、第1の低RI層130A(説明のため、「L」と示される)および第2の高RI層130B(説明のため、「H」と示される)は、以下の層の配列:L/H/L/HまたはH/L/H/Lで交互に並び、第1の低RI層および第2の高RI層は、反射防止コーティング120の物理的厚さに沿って交互に並ぶように見える。
図2の実施例において、反射防止コーティング130は3つの周期を含む。いくつかの実施形態において、反射防止コーティング130は、25周期まで含み得る。例えば、反射防止コーティング130は、約2~約20周期、約2~約15周期、約2~約10周期、約2~約12周期、約3~約8周期、約3~約6周期を含み得る。
【0029】
図3に示す実施形態において、反射防止コーティング130は、第2の高RI層130Bより低い屈折率材料を含み得る追加のキャピング層131を含み得る。いくつかの実施形態において、
図3に示すように、周期132は、1層またはそれ以上の第3の層130Cを含み得る。第3の層130Cは、低RI、高RIまたは中間RIを有し得る。いくつかの実施形態において、第3の層130Cは、第1の低RI層130Aまたは第2の高RI層130Bと同じRIを有し得る。他の実施形態において、第3の層130Cは、第1の低RI層130AのRIと第2の高RI層130BのRIとの間の中間RIを有し得る。あるいは、第3の層130Cは、第2の高RI層130Bより高い屈折率を有し得る。第3の層は、以下の例示的な配列で、反射防止コーティング120中に提供され得る:L
第3の層/H/L/H/L、H
第3の層/L/H/L/H、L/H/L/H/L
第3の層、H/L/H/L/H
第3の層、L
第3の層/H/L/H/L/H
第3の層、H
第3の層/L/H/L/H/L
第3の層、L
第3の層/L/H/L/H、H
第3の層/H/L/H/L、H/L/H/L/L
第3の層、L/H/L/H/H
第3の層、L
第3の層/L/H/L/H/H
第3の層、H
第3の層//H/L/H/L/L
第3の層、L/M
第3の層/H/L/M/H、H/M/L/H/M/L、M/L/H/L/Mおよび他の組合せ。これらの配列において、いずれかの下付き文字を伴わない「L」は第1の低RI層を指し、かついずれかの下付き文字を伴わない「H」は第2の高RI層を指す。全て第1の層と2番目の層に相対して、「L
第3の副層」という記載は、低RIを有する第3の層を指し、「H
第3の副層」は、高RIを有する第3の層を指し、そして「M」は、中間RIを有する第3の層を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「低RI」、「高RI」および「中間RI」という用語は、互いに対するRIの相対値を指す(例えば、低RI<中間RI<高RI)。1つまたはそれ以上の実施形態において、「低RI」という用語は、第1の低RI層または第3の層で使用される場合、約1.3~約1.7または1.75の範囲を含む。1つまたはそれ以上の実施形態において、「高RI」という用語は、第2の高RI層または第3の層で使用される場合、約1.7~約2.5(例えば、約1.85以上)の範囲を含む。いくつかの実施形態において、「中間RI」という用語は、第3の層で使用される場合、約1.55~約1.8の範囲を含む。いくつかの場合、低RI、高RIおよび中間RIの範囲は重複していてもよいが、ほとんどの場合、反射防止コーティング130の層は、低RI<中間RI<高RIのRIに関する一般的な関係を有する。
【0031】
第3の層130Cは、
図4に示すように、周期132とは別の層として提供されてもよく、そして周期または複数の周期とキャピング層131との間に配置されていてもよい。また第3の層は、
図5に示すように、周期132とは別の層として提供されてもよく、そして基体110と複数の周期132との間に配置されていてもよい。
図6に示すように、第3の層130Cは、キャッピング131の代わりに、またはキャッピング層に加えて、追加のコーティング140に加えて使用されてもよい。
【0032】
反射防止コーティング130での使用に適切な代表範的な材料としては、SiO2、Al2O3、GeO2、SiO、AlOxNy、AlN、SiNx、SiOxNy、SiuAlvOxNy、Ta2O5、Nb2O5、TiO2、ZrO2、TiN、MgO、MgF2、BaF2,CaF2、SnO2、HfO2、Y2O3、MoO3、DyF3、YbF3、YF3、CeF3、ポリマー、フルオロポリマー、プラズマ重合ポリマー、シロキサンポリマー、シルセスキオキサン、ポリイミド、フッ化ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル系ポリマー、ウレタンポリマー、ポリメチルメタクリレート、以下で耐擦傷性層での使用に適切である記載される他の材料および当該技術において既知の他の材料が含まれる。第1の低RI層での使用に適切な材料のいくつかの例としては、SiO2、Al2O3、GeO2、SiO、AlOxNy、SiOxNy、SiuAlvOxNy、MgO、MgAl2O4、MgF2、BaF2、CaF2、DyF3、YbF3、YF3およびCeF3が含まれる。第1の低RI層での使用のための材料の窒素含有量は(例えば、Al2O3およびMgAl2O4などの材料において)最小にされ得る。第2の高RI層での使用のために適切な材料のいくつかの例としては、SiuAlvOxNy、Ta2O5、Nb2O5、AlN、Si3N4、AlOxNy、SiOxNy、HfO2、TiO2、ZrO2、Y2O3、Al2O3、MoO3およびダイヤモンド様カーボンが含まれる。第2の高RI層および/または耐擦傷性層のための材料の酸素含有量は、特にSiNxまたはAlNx材料において最小にされ得る。AlOxNy材料は、酸素ドープされたAlNxであると考えられてもよく、すなわち、それらはAlNx結晶構造(例えば、ウルツ鉱)を有してもよく、そしてAlON結晶構造を有する必要はない。代表的な好ましいAlOxNy高RI材料は、約0原子%~約20原子%の酸素、または約5原子%~約15原子%の酸素を含んでなってよく、一方、30原子%~約50原子%の窒素を含む。代表的な好ましいSiuAlvOxNy高RI材料は、約10原子%~約30原子%または約15原子%~約25原子%のケイ素、約20原子%~約40原子%または約25原子%~約35原子%のアルミニウム、約0原子%~約20原子%または約1原子%~約20原子%の酸素、および約30原子%~約50原子%の窒素を含んでなってよい。上記材料は、約30重量%まで水素化されていてもよい。中間屈折率を有する材料が望ましい場合、いくつかの実施形態においてはAlNおよび/またはSiOxNyが利用されてもよい。第2の高RI層および/または耐擦傷性層の硬度は、特に特徴づけられてよい。いくつかの実施形態において、第2の高RI層および/または耐擦傷性層の最大硬度は、Berkovitch Indenter Hardness Testによって測定される場合、約8GPa以上、約10GPa以上、約12GPa以上、約15GPa以上、約18GPa以上、または約20GPa以上であり得る。いくつかの場合、第2の高RI層材料は、単層として析出されてよく、かつ耐擦傷性層として特徴づけられてもよく、そしてこのような単層は、繰り返し可能な硬度決定のため、約500~2000nmの厚さを有してもよい。
【0033】
1つまたはそれ以上の実施形態において、反射防止コーティング130の少なくとも1層は、特定の光学厚さ範囲を含み得る。本明細書で使用される場合、「光学厚さ」という用語は、(n*d)によって決定され、式中、「n」は副層のRIを指し、そして「d」は層の物理的厚さを指す。1つまたはそれ以上の実施形態において、反射防止コーティング130の少なくとも1層は、約2nm~約200nm、約10nm~約100nm、約15nm~約100nm、約15~約500nmまたは約15~約5000nmの範囲の光学厚さを含み得る。いくつかの実施形態において、反射防止コーティング130の全ての層は、それぞれ、約2nm~約200nm、約10nm~約100nm、約15nm~約100nm、約15~約500nmまたは約15~約5000nmの範囲の光学厚さを含み得る。いくつかの場合、反射防止コーティング130の少なくとも1層は約50nm以上の光学厚さを有する。いくつかの場合、第1の低RI層のそれぞれは、約2nm~約200nm、約10nm~約100nm、約15nm~約100nm、約15~約500nmまたは約15~約5000nmの範囲の光学厚さを有する。他の場合、第2の高RI層のそれぞれは、約2nm~約200nm、約10nm~約100nm、約15nm~約100nm、約15~約500nmまたは約15~約5000nmの範囲の光学厚さを有する。なお他の場合、第3の層のそれぞれは、約2nm~約200nm、約10nm~約100nm、約15nm~約100nm、約15~約500nmまたは約15~約5000nmの範囲の光学厚さを有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、光学コーティング130の層の1層またはそれ以上の厚さが最小になってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態において、高RI層の厚さおよび/または中間RI層の厚さは、約500nm未満となるように最小化される。1つまたはそれ以上の実施形態において、高RI層、中間RI(層)および/または高RIと中間RI層との組合せの組み合わせた厚さは約500nm未満である。
【0035】
いくつかの実施形態において、光学コーティング中の低RI材料の量は最小にされてよい。理論によって拘束されないが、低RI材料は、典型的に、同時に屈折率および硬度に影響を及ぼす原子結合性および電子密度のため、硬度がより低い材料であり、したがって、そのような材料を最小化することにより、本明細書に記載される反射率および色性能を維持しながら、硬度を最大化することができる。光学コーティングの物理的厚さの一部として表す場合、低RI材料は、光学コーティングの物理的厚さの約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満または約5%未満を含んでなってよい。代わりに、あるいは加えて、低RI材料の量は、光学コーティング中の最も厚い高RI層上に(すなわち、基体の反対側、ユーザーサイドまたはエアサイドに)配置される低RI材料の全ての層の物理的厚さの合計として定量されてもよい。理論によって拘束されないが、高い硬度を有する厚い高RI層は、下の層(または厚いRI層と基体との間の層)を多く、またはほとんどの擦傷から効果的に保護する。したがって、最も厚い高RI層上に配置された層は、全体的な物品の耐引掻性に非常に大きい影響を有し得る。これは、最も厚い高RI層が、約400nmより大きい物理的厚さを有し、かつBerkovich Indenter Hardness Testによって測定された場合、約12GPaより高い硬度を有する場合、特に該当する。最も厚い高RI層上に(すなわち、基体の反対側、ユーザーサイドまたはエアサイドに)配置される低RI材料の量は、約150nm以下、約120nm以下、約110nm以下、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、25nm、20nm、15nmまたは約12nm以下の厚さを有してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、最上のエアサイド層は、モデル実施例8~9に示されるように、高い硬度も示す高RI層を含んでなってよい。いくつかの実施形態において、追加コーティング140は、このような最上のエアサイド高RI層上に配置されてもよい(例えば、追加コーティングは、低摩擦コーティング、疎油性コーティングまたはリーニングが容易なコーティングを含んでもよい)。さらに、モデル実施例10で説明されるように、非常に低い厚さ(例えば、約10nm以下、約5nm以下または約2nm以下)を有する低RI層を追加することは、高RI層を含んでなる最上のエアサイド層に追加される場合、光学性能に最小の影響を与える。非常に低い厚さを有する低RI層は、SiO2、疎油性または低摩擦層、あるいはSiO2と疎油性材料との組合せを含み得る。代表的な低摩擦層としてはダイヤモンド様カーボンが含まれてよく、そのような材料(あるいは光学コーティングの1層またはそれ以上の層)は、0.4未満、0.3未満、0.2未満またはさらには0.1未満の摩擦係数を示し得る。
【0037】
1つまたはそれ以上の実施形態において、反射防止コーティング130は、約800nm以下の物理的厚さを有する。反射防止コーティング130は、約10nm~約800nm、約50nm~約800nm、約100nm~約800nm、約150nm~約800nm、約200nm~約800nm、約10nm~約750nm、約10nm~約700nm、約10nm~約650nm、約10nm~約600nm、約10nm~約550nm、約10nm~約500nm、約10nm~約450nm、約10nm~約400nm、約10nm~約350nm、約10nm~約300nm、約50~約300nmの範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲の物理的厚さを有し得る。
【0038】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第2の高RI層の組み合わせた物理的厚さは特徴づけられてよい。例えば、いくつかの実施形態において、第2の高RI層の組み合わせた厚さは、約100nm以上、約150nm以上、約200nm以上または約500nm以上であってよい。組み合わせた厚さは、介在低RI層または他の層がある場合でさえ、反射防止コーティング130中の個別の高RI層の厚さの計算された組合せである。いくつかの実施形態において、硬度の高い材料(例えば、窒化物または酸窒化物材料)を含んでなってもよい第2の高RI層の組み合わせた物理的厚さは、反射防止コーティングの全物理的厚さの30%より大きくてもよい。例えば、第2の高RI層の組み合わせた物理的厚さは、反射防止コーティングの全物理的厚さの約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約75%以上または約80%以上であってもよい。加えて、あるいは代わりに、光学コーティングに含まれる硬度の高い材料であってもよい高屈折率材料の量は、物品または光学コーティング120の最上(すなわち、ユーザーサイドまたは基体の反対側の光学コーティング側面)の500nmの物理的厚さのパーセンテージとして特徴づけられてよい。物品または光学コーティングの最上の500nmのパーセンテージとして表す場合、第2の高RI層の組み合わせた物理的厚さ(または高屈折率材料の厚さ)は、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上または約90%以上であってよい。いくつかの実施形態において、反射防止コーティング内の硬質および高屈折率材料のより大きい部分は、同時に、本明細書の他の部分にさらに記載されるように、低反射率、低い色および高い耐摩擦性も示すように製造することができる。1つまたはそれ以上の実施形態において、第2の高RI層は、約1.85より高い屈折率を有する材料を含んでもよく、かつ第1の低RI層は、約1.75未満の屈折率を有する材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の高RI層は、窒化物または酸窒化物材料を含んでもよい。いくつかの場合、光学コーティング中の(または光学コーティングの最も厚い第2の高RI層上に配置される層中の)全ての第1の低RI層の組み合わせた厚さは、約200nm以下(例えば、約150nm以下、約100nm以下、約75nm以下または約50nm以下)であってよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、反射防止コーティング130は、(例えば、吸収剤に結合された背面上で指数の適合した油を使用すること、または他の既知の方法などによって、物品の未コーティング背面(例えば、
図1中の114)からの反射を除去した場合に)反射防止表面122のみで測定される場合、光学波長領域において、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下または約2%以下の平均光反射率を示す。(明所視平均であってよい)平均反射率は、約0.4%~約9%、約0.4%~約8%、約0.4%~約7%、約0.4%~約6%または約0.4%~約5%の範囲および全てのそれらの間の範囲であってよい。いくつかの場合、反射防止コーティング120は、約450nm~約650nm、約420nm~約680nm、約420nm~約700nm、約420nm~約740nm、約420nm~約850nmまたは約420nm~約950nmなどの他の波長領域においてそのような平均光反射率を示し得る。いくつかの実施形態において、反射防止表面122は、光学波長領域において、約90%以上、92%以上、94%以上、96%以上または98%以上の平均光透過率を示す。他に特記されない限り、平均反射率または透過率は、約0度~約10度の入射照明角において測定される(しかしながら、そのような測定が、45度または60度の入射照明角で提供されてもよい)。
【0040】
物品100は、
図6に示すように、反射防止コーティング上に配置された1つまたはそれ以上の追加コーティング140を含んでもよい。1つまたはそれ以上の実施形態において、追加コーティングは、クリーニングが容易なコーティングを含んでもよい。適切なクリーニングが容易なコーティングの例は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる、2012年11月30日出願の「PROCESS FOR MAKING OF GLASS ARTICLES WITH OPTICAL AND EASY-TO-CLEAN COATINGS」と題された米国特許出願公開第13/690,904号明細書に記載されている。クリーニングが容易なコーティングは、約5nm~約50nmの範囲の厚さを有してよく、かつフッ化シランなどの既知の材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、クリーニングが容易なコーティングは、約1nm~約40nm、約1nm~約30nm、約1nm~約25nm、約1nm~約20nm、約1nm~約15nm、約1nm~約10nm、約5nm~約50nm、約10nm~約50nm、約15nm~約50nm、約7nm~約20nm、約7nm~約15nm、約7nm~約12nmまたは約7nm~約10nmの範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲の厚さを有し得る。
【0041】
追加コーティング140は、耐擦傷性層を含んでもよい。いくつかの実施形態において、追加コーティング140は、クリーニングが容易な材料および耐擦傷性材料の組合せを含む。一例において、この組合せは、クリーニングが容易な材料およびダイヤモンド様カーボンを含む。そのような追加コーティング140は、約5nm~約20nmの範囲の厚さを有してもよい。追加コーティング140の構成要素は、個別の層で提供されてもよい。例えば、ダイヤモンド様カーボンは第1の層として配置されてもよく、クリーニングが容易な材料は、ダイヤモンド様カーボンの第1の層上の第2の層として配置することができる。第1の層および第2の層の厚さは、追加コーティングに関して上記で提供された範囲であってよい。例えば、ダイヤモンド様カーボンの第1の層は、約1nm~約20nm、または約4nm~約15nm(またはより特には約10nm)の厚さを有してもよく、そしてクリーニングが容易な第2の層は、約1nm~約10nm(またはより特には約6nm)の厚さを有してもよい。ダイヤモンド様コーティングは、四面体無定形炭素(Ta-C)、Ta-C:H、および/またはa-C-Hを含んでもよい。
【0042】
本明細書に記載されるように、光学コーティング120は、反射防止コーティング130と基体110との間に配置されてもよい耐擦傷性層150またはコーティング(複数の耐擦傷性層が利用される場合)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、耐擦傷性層150またはコーティングは、反射防止コーティング130の層の間に配置される(
図7に示される150または
図8に示される345など)。反射防止コーティングの2つの部分(すなわち、耐擦傷性層150と基体110との間に配置された第1の部分および耐擦傷性層上に配置された第2の部分)は、互いに異なる厚さを有してもよく、または本質的に互いに同じ厚さを有してもよい。反射防止コーティングの2つの部分の層は、組成、順序、厚さおよび/または配置が互いに同じであってもよく、あるいは互いに異なってもよい。
【0043】
耐擦傷性層150またはコーティング(あるいは追加コーティング140として使用される耐擦傷性層/コーティング)において使用される代表的な材料には、無機炭化物、窒化物、酸化物、ダイヤモンド様材料またはこれらの組合せが含まれてよい。耐擦傷性層またはコーティングのために適切な材料の例には、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属酸炭化物および/またはこれらの組合せが含まれてよい。代表的な金属としては、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、TaおよびWが含まれる。耐擦傷性層またはコーティングにおいて利用されてもよい材料の具体的な例としては、Al2O3、AlN、AlOxNy、Si3N4、SiOxNy、SiuAlvOxNy、ダイヤモンド、ダイヤモンド様カーボン、SixCy、SixOyCz、ZrO2、TiOxNyおよびそれらの組合せが含まれてよい。耐擦傷性層またはコーティングは、硬度、強靭度または耐摩擦性/耐摩耗性を改善するためのナノコンポジット材料、または制御された微細構造を有する材料も含んでなってよい。例えば、耐擦傷性層またはコーティングは、約5nm~約30nmの径範囲のナノ微結晶を含んでなってもよい。実施形態において、耐擦傷性層またはコーティングは、相転移強化ジルコニア、部分安定化ジルコニアまたはジルコニア強化アルミナを含んでなってもよい。実施形態において、耐擦傷性層またはコーティングは、約1MPa√mより高い破砕強靭度値を示し、同時に約8GPaより高い硬度値を示す。
【0044】
耐擦傷性層は、単層150(
図7に示す)、屈折率傾斜を示す複数の副層または副層もしくは単層345を含んでもよい(
図8に示す)。複数の層が使用される場合、そのような層は、耐擦傷性コーティング845を形成する。例えば、耐擦傷性コーティング845は、Si、Al、OおよびNのいずれか1種またはそれ以上の濃度が、屈折率を増加させるか、または減少させるように変動するSi
uAl
vO
xN
yの組成勾配を含んでもよい。屈折率勾配は、多孔率を使用しても形成され得る。そのような勾配については、全体として参照によって本明細書に組み込まれる2014年4月28日出願の「Scratch-Resistant Articles with a Gradient Layer」と題された米国特許出願公開第14/262224号明細書において、より完全に記載されている。
【0045】
耐擦傷性層またはコーティングの組成は、特定の特性(例えば、硬度)を提供するように修正されてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態において、耐擦傷性層またはコーティングは、Berkovitch Indenter Hardness Testによって耐擦傷性層またはコーティングの主要表面において測定される場合、約5GPa~約30GPaの範囲の最大硬度を示す。1つまたはそれ以上の実施形態において、耐擦傷性層またはコーティングは、約6GPa~約30GPa、約7GPa~約30GPa、約8GPa~約30GPa、約9GPa~約30GPa、約10GPa~約30GPa、約12GPa~約30GPa、約5GPa~約28GPa、約5GPa~約26GPa、約5GPa~約24GPa、約5GPa~約22GPa、約5GPa~約20GPa、約12GPa~約25GPa、約15GPa~約25GPa、約16GPa~約24GPa、約18GPa~約22GPaの範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲の最大硬度を示す。1つまたはそれ以上の実施形態において、耐擦傷性層は、15GPaより高い、20GPaより高い、または25GPaより高い最大硬度を示し得る。1つまたはそれ以上の実施形態において、耐擦傷性層は、約15GPa~約150GPa、約15GPa~約100GPaまたは約18GPa~約100GPaの範囲の最大硬度を示す。最大硬度は、押し込み深さの範囲において測定された最高硬度値である。そのような最大硬度値は、約50nm以上または100nm以上(例えば、約100nm~約300nm、約100nm~約400nm、約100nm~約500nm、約100nm~約600nm、約200nm~約300nm、約200nm~約400nm、約200nm~約500nmまたは約200nm~約600nm)の押し込み深さに沿って示される。
【0046】
耐擦傷性コーティングまたは層の物理的厚さは、約1nm~約5μmの範囲であってよい。いくつかの実施形態において、耐擦傷性コーティングの物理的厚さは、約1nm~約3μm、約1nm~約2.5μm、約1nm~約2μm、約1nm~約1.5μm、約1nm~約1μm、約1nm~約0.5μm、約1nm~約0.2μm、約1nm~約0.1μm、約1nm~約0.05μm、約5nm~約0.05μm、約10nm~約0.05μm、約15nm~約0.05μm、約20nm~約0.05μm、約5nm~約0.05μm、約200nm~約3μm、約400nm~約3μm、約800nm~約3μmの範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲であってよい。いくつかの実施形態において、耐擦傷性コーティングの物理的厚さは、約1nm~約25nmの範囲であってもよい。いくつかの場合、耐擦傷性層は、窒化物または酸窒化物材料を含んでもよく、かつ約200nm以上、500nm以上または約1000nm以上の厚さを有してもよい。
【0047】
1つまたはそれ以上の実施形態の物品は、Taber Testに従って、少なくとも約500サイクル後、反射防止表面122において研磨された後、種々の方法によって測定される耐摩擦性として記載されてよい。Taber Industriesによって供給される研磨媒体を使用するASTM D1044-99に明示される試験方法などの様々な形態の摩擦試験が、当該技術において既知である。ASTM D1044-99と関連する修正された研磨方法は、異なる種類の耐摩擦性を意味深く区別するために繰り返し可能かつ測定可能な摩擦または摩耗痕跡を提供するために、異なる種類の研磨媒体、研摩材形状および動作、圧力などを使用して作成することができる。例えば、軟質のプラスチック対硬質の無機試験試料では、通常、異なる試験条件が適切であるであろう。本明細書に記載の実施形態は、以下に定義されるTaber Testを受けたが、これは、酸化物ガラスおよび酸化物または窒化物コーティングなどの硬質無機材料を主に含んでなる種々の試料間の耐久性の明白かつ繰り返し可能な区別を提供するASTM D1044-99の特定の修正版である。本明細書で使用される場合、「Taber Test」という句は、約22℃±3℃の温度および約70%までの相対湿度を含む環境で、Taber Industriesによって供給されるTaber Linear Abraser 5750(TLA 5750)およびアクセサリーを使用する試験方法を指す。TLA 5750は、直径6.7ミリの研磨装置ヘッドを有するCS-17研磨装置材料を含む。それぞれの試料をTaber Testに従って研磨し、そして他の方法の中でもHazeおよびBidirectional Transmittance Distribution Function(CCBTDF)測定の両方を使用して、研磨損傷を評価した。Taber Testにおいて、それぞれの試料を研磨する手順には、剛性の平坦な表面上にTLA 5750および平坦な試料支持体を配置するステップと、表面にTLA 5750および試料支持体を固定するステップが含まれる。それぞれの試料をTaber Testで研磨する前に、ガラスに接着した新たなS-14再表面仕上げストリップを使用して、研磨装置を再表面仕上げした。研磨装置に、追加重量を用いず、25サイクル/分のサイクル速度および1インチ(2.54cm)のストローク長さを使用する10回の再表面仕上げサイクルを受けさせた(すなわち、再表面仕上げの間に約350gの全重量が使用され、これは、研磨装置を保持するスピンドルおよびコレットの組み合わせ重量である)。次いで、この手順には、研磨装置ヘッドと接触し、研磨装置ヘッドに適用される重量を支持する試料支持体に配置された試料を研磨するためにTLA 5750を作動するステップと、25サイクル/分のサイクル速度および1インチ(2.54cm)のストローク長さおよび試料に適用される全重量が850gであるような重量(すなわち、スピンドルおよびコレットの350gの組み合わせた重量に加えて、500gの予備的な重量が適用される)を使用するステップとが含まれる。この手順は、繰り返し性のために、それぞれの試料上に2つの摩耗痕跡を形成するステップと、それぞれの試料上の2つの摩耗痕跡のそれぞれにおいて、500サイクル数でそれぞれの試料を研磨するステップとを含む。
【0048】
1つまたはそれ以上の実施形態において、物品100の反射防止表面122を上記Taber Testに従って研磨し、そして供給口上の直径8mmの開口部を使用して、Haze-Gard plus(登録商標)の商標名でBYK Gardnerによって供給される曇り度計を使用して、研磨側面で測定される場合、物品は約10%以下の曇り度を示す。
【0049】
1つまたはそれ以上の実施形態の物品100は、(本明細書に記載される追加コーティング140を含む)いずれの追加コーティングの有無にかかわらず、そのような耐摩擦性を示す。いくつかの実施形態において、曇り度は、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.5%以下または約0.3%以下であってよい。いくつかの具体的な実施形態において、物品100は、約0.1%~約10%、約0.1%~約9%、約0.1%~約8%、約0.1%~約7%、約0.1%~約6%、約0.1%~約5%、約0.1%~約4%、約0.1%~約3%、約0.1%~約2%、約0.1%~約1%、0.3%~約10%、約0.5%~約10%、約1%~約10%、約2%~約10%、約3%~約10%、約4%~約10%、約5%~約10%、約6%~約10%、約7%~約10%、約1%~約8%、約2%~約6%、約3%~約5%の範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲の曇り度を示す。
【0050】
耐摩擦性を定量するための別の方法も本明細書で考慮される。1つまたはそれ以上の実施形態において、反射防止表面122上でTaber Testによって研磨された物品100は、例えば、反射防止表面122の80×80マイクロメートル面積、または複数の80×80マイクロメートル面積(研磨された領域のより大きい部分を試験するため)上で実行されてよい原子間力顕微鏡法(AFM)表面プロファイリングによって測定される耐摩擦性を示し得る。これらのAFM表面スキャンから、RMS粗さ、Ra粗さなどの粗さの統計、およびピークから谷までの表面高さが評価され得る。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品100(または特に反射防止表面122)は、上記のTaber Testで研磨された後、約50nm以下、約25nm以下、約12nm以下、約10nm以下または約5nm以下の平均表面粗さ(Ra)値を示し得る。
【0051】
1つまたはそれ以上の実施形態において、物品100は、反射防止表面122がTaber Testで研磨された後、光散乱測定によって測定される耐摩擦性を示してもよい。1つまたはそれ以上の実施形態において、光散乱測定は、Radiant Zemax IS-SA(商標)測定器によって実行される双方向反射率分布関数(BRDF)または双方向透過率分布関数(BTDF)測定を含む。この測定器は、反射において直角から約85度の入射および透過において直角から約85度の入射のいずれかの入力角度を使用して光散乱を測定するために適応性を有するが、反射または透過のいずれにおいても全ての散乱光出力を2*パイステラジアン(反射または透過における全半球体)に取り込む。一実施形態において、物品100は、直角入射でBTDFを使用し、そして選択された角度範囲、例えば、極角の約10°~約80°およびその中のいずれかの角度範囲の透過散乱光を分析して測定される耐摩擦性を示す。角度の全方位角範囲を分析および統合することができるか、あるいは特定の方位角角度の断片を、例えば、約0°および90°の方位角から選択することができる。線形の摩擦に関しては、光散乱測定の「信号対雑音」を増加するように、本質的に摩擦方向に対して直角の方位角方向を選択することが望まれ得る。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品100は、2mmの開口部および600nmの波長に設定されたモノクロメーターを用いて、直角入射の透過で、CCBTDFモードでRadiant Zemax IS-SAツールを使用し、かつ約15°~約60°の範囲(例えば、特に約20°または約40°)の極散乱角において評価した場合、約0.1未満、約0.05以下、約0.03以下、約0.02以下、約0.01以下、約0.005以下または約0.003以下(1/ステラジアンの単位)の、反射防止コーティング120で測定される散乱光強度を示し得る。直角入射の透過は、測定器ソフトウェアによって180°入射として示され得る、0°の透過として知られ得る。1つまたはそれ以上の実施形態において、散乱光強度は、Taber Testによって研磨された試料の研磨方向に対して本質的に直角の方位角方向に沿って測定されてもよい。一例において、Taber Testは、約10サイクルから約1000サイクルまで、およびそれらの間のいずれの値も使用してよい。これらの光学強度値は、約5度より大きい、約10度より大きい、約30度より大きい、または約45度より大きい極散乱角へと散乱する入力光強度の約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満または約0.1%未満にも相当し得る。
【0052】
一般的に、両方とも試料(またはこの場合、反射防止コーティング120の研磨後の物品100)を透過する散乱光の量を測定するという点で、本明細書に記載される直角入射のBTDF試験は、透過曇り度測定と密接に関係する。BTDF測定は、曇り度測定と比較して、より多くの感度、ならびにより詳細な角度情報を提供する。BTDFによって、種々の極角および方位角角度への散乱の測定が可能となり、例えば、線形Taber試験での研磨方向に対して実質的に直角の方位角角度(これらは、線形摩擦からの光散乱が最も高い角度である)への散乱の選択的な評価が可能となる。透過曇り度は、本質的に、約+/-2.5度より高い極角の半球体全体への直角入射BTDFによって測定された全ての散乱光の統合である。
【0053】
光学コーティング120および物品100は、Berkovich Indenter Hardness Testによって測定された硬度に関して記載されてよい。本明細書で使用される場合、「Berkovich Indenter Hardness Test」は、ダイヤモンドBerkovich圧子で表面を押し込むことによって、その表面上での材料の硬度を測定するステップを含む。Berkovich Indenter Hardness Testは、一般的に、Oliver,W.C.;Pharr,G.M.An improved technique for determining hardness and elastic modulus using load and displacement sensing indentation experiments.J.Mater.Res.,Vol.7,No.6,1992,1564-1583;およびOliver,W.C.;Pharr,G.M.Measurement of Hardness and Elastic Modulus by Instrument Indentation:Advances in Understanding and Refinements to Methodology.J.Mater.Res.,Vol.19,No.1,2004,3-20に明示される方法を使用して、物品の反射防止表面122または光学コーティング120の表面(または反射防止コーティングのいずれか1層またはそれ以上の層の表面)をダイヤモンドBerkovich圧子で押し込み、約50nm~約1000nmの範囲の押し込み深さ(またはいずれが小さいとしても、反射防止コーティングまたは層の全厚さ)まで押し込みを形成するステップと、全押し込み深さ範囲またはこの押し込み深さの一部分(例えば、約100nmから約600nmまでの範囲内)に沿って、この押し込みからの最大硬度を測定するステップとを含む。本明細書で使用される場合、硬度は最大硬度を指し、平均硬度ではない。
【0054】
典型的に、下部の基体よりも硬いコーティングの(Berkovich圧子を使用するなどの)ナノインデンテーション測定法において、測定された硬度は、最初、浅い押し込み深さのプラスチック帯の発達によって増加するように見え、次いで、より深い押し込み深さにおいて増加し、そして最大値または平坦域に達する。その後、硬度は、下部の基体の影響のため、より深い押し込み深さにおいて減少し始める。コーティングに匹敵する増加した硬度を有する基体が利用される場合、同様の効果は見られるが、硬度は、下部の基体の影響のため、より深い押し込み深さにおいて増加する。
【0055】
押し込み深さの範囲および特定の押し込み深さ範囲における硬度値は、下部の基体の影響のない本明細書に記載の光学フィルム構造およびそれらの層の特定の硬度応答を識別するように選択することができる。Berkovich圧子で光学フィルム構造(基体上に配置される場合)の硬度を測定する場合、材料の永久歪の領域(プラスチック帯)は、材料の硬度と関連している。押し込みの間、弾性応力場が永久歪のこの領域を十分超えて延在する。押し込み深さが増加すると、見掛けの硬度およびモジュラスは、下部の基体との応力場相互作用によって影響を与えられる。硬度への基体の影響は、より深い押し込み深さにおいて(すなわち、典型的に光学フィルム構造または層の厚さの約10%より大きい深さにおいて)生じる。さらに複雑な問題は、硬度応答が、押し込みプロセス間に完全な可塑度を発達させるために、特定の最小負荷を必要とするということである。そのような特定の最小負荷の前に、硬度は一般に増大する傾向を示す。
【0056】
(小さい負荷として特徴づけられてもよい)小さい押し込み深さ(例えば、約50nmまで)において、材料の見掛けの硬度は、押し込み深さに対して劇的に増加するように見える。この小さい押し込み深さの領域は、硬度の真の測定基準を表さないが、その代わり、圧子の限られた曲率半径と関連する前述のプラスチック帯の発達を反映する。中間の押し込み深さにおいては、見掛けの硬度は最高レベルに接近する。より深い押し込み深さにおいて、押し込み深さが増加すると、基体の影響がより大きくなる。押し込み深さが光学フィルム構造の厚さまたは層の厚さの約30%を超えると、硬度が劇的に減少し始め得る。
【0057】
図21は、コーティングの押し込み深さおよび厚さの関数としての測定された硬度値の変化を示す。
図21に示すように、(硬度が接近して、そして最高レベルで維持される)中間押し込み深さにおいて、およびより深い押し込み深さにおいて測定された硬度は、材料または層の厚さ次第である。
図21は、種々の厚さを有する4種の異なるAlO
xN
y層の硬度応答を示す。それぞれの層の硬度は、Berkovich Indenter Hardness Testを使用して測定した。厚さ500nmの層は、約100nm~180nmの押し込み深さにおいて、その最大硬度を示し、続いて、約180nm~約200nmの押し込み深さにおいて硬度の劇的な減少が生じ、このことは、基体の硬度が硬度測定に影響を与えていることを示す。厚さ1000nmの層は、約100nm~約300nmの押し込み深さにおいて最大硬度を示し、続いて、約300nmより大きい押し込み深さにおいて硬度の劇的な減少が生じた。厚さ1500nmの層は、約100nm~約550nmの押し込み深さにおいて最大硬度を示し、そして厚さ2000nmの層は、約100nm~約600nmの押し込み深さにおいて最大硬度を示した。
図21は、厚い単層を例示する、同様の挙動は、本明細書に記載される実施形態の反射防止コーティング120などのより薄いコーティングおよび複数の層を含むものでも観察される。
【0058】
いくつかの実施形態において、光学コーティング120は、約8GPa以上、約10GPa以上または約12GPa以上(例えば、14GPa以上、16GPa以上、18GPa以上または20GPa以上)の硬度を示し得る。光学コーティング120の硬度は、約20GPaまたは30GPaまでであり得る。本明細書に記載の反射防止コーティング120およびいずれの追加の層を含む物品100は、Berkovitch Indenter Hardness Testによって反射防止表面122上で測定した場合、約5GPa以上、約8GPa以上、約10GPa以上または約12GPa以上(例えば、14GPa以上、16GPa以上、18GPa以上または20GPa以上)の硬度を示す。光学コーティング120の硬度は、約20GPaまたは30GPaまでであり得る。そのような測定された硬度値は、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nm~約300nm、約100nm~約400nm、約100nm~約500nm、約100nm~約600nm、約200nm~約300nm、約200nm~約400nm、約200nm~約500nmまたは約200nm~約600nm)の押し込み深さに沿って、光学コーティング120および/または物品100によって示されてよい。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、(反射防止表面とは反対の表面において測定することができる)基体の硬度より高い硬度を示す。
【0059】
光学コーティング120は、Berkovich Indenter Hardness Testによって測定される、約12GPa以上、約13GPa以上、約14GPa以上、約15GPa以上、約16GPa以上、約17GPa以上、約18GPa以上、約19GPa以上、約20GPa以上、約22GPa以上、約23GPa以上、約24GPa以上、約25GPa以上、約26GPa以上または約27GP以上(約50GPaまで)の(そのような層の表面、例えば、
図2の第2の高RI層130Bの表面または耐擦傷性層の表面において測定される)硬度を有する少なくとも1層を有し得る。そのような層の硬度は、Berkovich Indenter Hardness Testで測定した場合、約18GPa~約21GPaの範囲であり得る。そのような測定された硬度値は、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nm~約300nm、約100nm~約400nm、約100nm~約500nm、約100nm~約600nm、約200nm~約300nm、約200nm~約400nm、約200nm~約500nmまたは約200nm~約600nm)の押し込み深さに沿って、少なくとも1層によって示されてよい。
【0060】
1つまたはそれ以上の実施形態において、光学コーティング120または光学コーティング中の個々の層は、Berkovitch圧子でその表面を押し込むことによって反射防止表面122において測定する場合、約75GPa以上、約80GPa以上または約85GPa以上の弾性率を示し得る。これらはモジュラス値は、反射防止表面の非常に近くで、例えば、0nm~約50nmの押し込み深さにおいて測定されたモジュラスを表し得るか、またはより深い押し込み深さ、例えば、約50nm~約1000nmにおいて測定されたモジュラスを表し得る。
【0061】
耐擦傷性層(反射防止コーティングの一部として使用される場合、例えば、
図7の150または
図8の345)または耐擦傷性コーティング(追加コーティング140として使用される場合)を含む物品の実施形態において、物品は、それぞれ、反射防止表面122または耐擦傷性コーティングの表面においてBerkovich Indenter Hardness Testによって測定される場合、約12GPa~約25GPaの範囲の最大硬度を示し得る。そのような測定された硬度値は、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nm~約300nm、約100nm~約400nm、約100nm~約500nm、約100nm~約600nm、約200nm~約300nm、約200nm~約400nm、約200nm~約500nmまたは約200nm~約600nm)の押し込み深さに沿って示されてよい。この硬度は、(例えば、
図7および8に示すように)耐擦傷性層が反射防止表面122上またはその付近に配置されない場合でさえ、示され得る。
【0062】
光学コーティング120/空気界面および光学コーティング120/基体110界面からの反射波間の光学干渉は、物品100における明らかな色を生じるスペクトル反射率および/または透過率振動を導くことができる。本明細書で使用される場合、「透過率」という用語は、材料(例えば、物品、基体または光学フィルムまたはそれらの一部分)を透過した所定の波長範囲内の入射光学的パワーのパーセントとして定義される。「反射率」という用語は、同様に、材料(例えば、物品、基体または光学フィルムまたはそれらの一部分)から反射した所定の波長範囲内の入射光学的パワーのパーセントとして定義される。透過率および反射率は、特定の線幅を使用して測定される。1つまたはそれ以上の実施形態において、透過率および反射率の特徴決定のスペクトル分解は、5nm未満または0.02eVである。色は、反射においてより顕著となり得る。角度色は、入射照明角によるスペクトル反射率振動におけるシフトによって、視野角を有する反射においてシフトする。角度色は、入射照明角によるスペクトル透過率振動における同シフトによって、視野角を有する反射においてシフトする。観察された色および入射照明角による色または角度色シフトは、特に、蛍光照明およびいくつかのLED照明などの鋭いスペクトル特徴を有する照明下で、しばしば、デバイスユーザーにとって気を散らせるものであるか、または不快である。透過における角度色シフトは反射における色シフトの要因でもあり得、そして逆も同様であり得る。透過および/または反射における角度色シフトの要因は、特定の照明または試験系によって定義される材料吸収(角度から幾分独立している)によって引き起こされ得る視野角による角度色シフトまたは白化点から離れる角度色シフトも含み得る。
【0063】
振動は、振幅に関して記載されてもよい。本明細書で使用される場合、「振幅」という用語は、反射率または透過率のピークから谷までの変化を含む。「平均振幅」という用語は、光学波長領域内のいくつかの振動サイクルまたは波長部分範囲で平均された反射率または透過率のピークから谷への変化を含む。本明細書で使用される場合、「光学波長領域」には、約400nm~約800nm(より具体的には、約450nm~約650nm)の波長範囲が含まれる。
【0064】
本開示の実施形態は、種々の照明下で直角入射から様々な入射照明角で見た場合に無色性および/またはより小さい角度色シフトに関して、改善された光学性能を提供する反射防止コーティングを含む。
【0065】
本開示の一態様は、照明下で種々の入射照明角で見た場合でさえ、反射率および/または透過率において無色性を示す物品に関する。1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、基準照明角と本明細書に提供された範囲内のいずれかの入射照明角との間で約5以下または約2以下の反射率および/または透過率における角度色シフトを示す。本明細書で使用される場合、「色シフト」という用語は(角度または基準)、反射率および/または透過率においてCIE L*、a*、b*測色系のa*およびb*の両方における変化を指す。本明細書に記載される物品のL*座標は、いずれの角度または基準点においても同一であり、色シフトに影響しないことは他に特記されない限り理解されるべきである。例えば、角度色シフトは、次式(1)を使用して決定されてよい:
【0066】
【0067】
式中、a*
1およびb*
1は、(直角入射を含み得る)入射基準照明角で見た場合の物品のa*およびb*座標を表し、そしてa*
2およびb*
2は、入射照明角で見た場合の物品のa*およびb*座標を表す。ただし、入射照明角は基準照明角とは異なり、いくつかの場合、基準照明角とは少なくとも約1度、2度または約5度異なる。いくつかの場合、約10以下(例えば、5以下、4以下、3以下または2以下)の反射率および/または透過率における角度色シフトが、照明下で基準照明角から様々な入射照明角で見た場合に物品によって示される。いくつかの場合、反射率および/または透過率における角度色シフトは、約1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下または0.1以下である。いくつかの実施形態において、角度色シフトは約0であってもよい。光源は、A光源(タングステン-フィラメント照明を表す)、B光源(日光をシミュレートする発光体)、C光源(日光をシミュレートする発光体)、Dシリーズ光源(自然日光を表す)およびFシリーズ光源(種々の蛍光灯を表す)を含むCIEによって決定される標準光源を含むことができる。具体的な例において、物品は、CIE F2、F10、F11、F12またはD65光源、より具体的にはCIE F2光源下で基準照明角から入射照明角で見た場合に約2以下の反射率および/または透過率における角度色シフトを示す。
【0068】
基準照明角は、直角入射(すなわち、約0度~約10度)、または直角入射から5度、直角入射から10度、直角入射から15度、直角入射から20度、直角入射から25度、直角入射から30度、直角入射から35度、直角入射から40度、直角入射から50度、直角入射から55度もしくは直角入射から60度を含み得るが、ただし、基準照明角間の差異および入射照明角および基準照明角の差異は少なくとも約1度、2度または約5度であることを条件とする。入射照明角は、基準照明角に対して、基準照明角から離れて約5度~約80度、約5度~約70度、約5度~約65度、約5度~約60度、約5度~約55度、約5度~約50度、約5度~約45度、約5度~約40度、約5度~約35度、約5度~約30度、約5度~約25度、約5度~約20度、約5度~約15度の範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲であってよい。この物品は、基準照明角が直角入射である場合、約2度~約80度(または約10度~約80度、または約20度~約80度)の範囲の全ての入射照明角において、および全ての入射照明角に沿って、本明細書に記載される反射率および/または透過率における角度色シフトを示し得る。いくつかの実施形態において、この物品は、入射照明角および基準照明角の間の差異が少なくとも約1度、2度または約5度である場合、約2度~約80度(または約10度~約80度、または約20度~約80度)の範囲の全ての入射照明角において、および全ての入射照明角に沿って、本明細書に記載される反射率および/または透過率における角度色シフトを示し得る。一例において、この物品は、直角入射に等しい基準照明角から離れて、約2度~約60度、約5度~約60度、または約10度~約60度の範囲のいずれかの入射照明角において、5以下(例えば、4以下、3以下または約2以下)の反射率および/または透過率における角度色シフトを示し得る。他の例において、この物品は、基準照明角が10度であり、かつ入射照明角が、基準照明角から離れて約12度~約60度、約15度~約60度または約20度~約60度の範囲のいずれかの角度である場合、5以下(例えば、4以下、3以下または約2以下)の反射率および/または透過率における角度色シフトを示し得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、角度色シフトは、約20度~約80度の範囲の基準照明角(例えば、直角入射)と入射照明角との間の全ての角度で測定されてよい。言い換えると、角度色シフトは、約0度~約20度、約0度~約30度、約0度~約40度、約0度~約50度、約0度~約60度または約0度~約80度の範囲の全ての角度で測定されてよく、かつ約5未満または約2未満であり得る。
【0070】
1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、基準点からの透過率色または反射率色座標間の距離または基準点色シフトが光源下で約5未満または約2未満であるような、反射率および/または透過率においてCIE L
*、a
*、b
*測色系の色を示す(光源としては、A光源(タングステン-フィラメント照明を表す)、B光源(日光をシミュレートする発光体)、C光源(日光をシミュレートする発光体)、Dシリーズ光源(自然日光を表す)およびFシリーズ光源(種々の蛍光灯を表す)を含むCIEによって決定される標準光源を含むことができる)。具体的な例において、物品は、CIE F2、F10、F11、F12またはD65光源、より具体的にはCIE F2光源下で基準照明角から入射照明角で見た場合に約2以下の反射率および/または透過率における色シフトを示す。別の言い方では、物品は、本明細書に定義されるように、基準点から約2未満の基準点色シフトを有する、反射防止表面122において測定された透過率色(もしくは透過率色座標)および/または反射率色(もしくは反射率色座標)を示し得る。他に特記されない限り、透過率色または透過率色座標は、物品の反射防止表面122および反対側の未処理の表面(すなわち、114)を含む物品の2つの表面上で測定される。他に特記されない限り、反射率色または反射率色座標は、物品の反射防止表面122上でのみ測定される。しかしながら、本明細書に記載の反射率色または反射率色座標は、2表面測定(物品の2つの側面からの反射が両方とも含まれる)または1表面測定(物品の反射防止表面122からのみの反射が測定される)のいずれかを使用して、物品の反射防止表面122および物品の反対側面(すなわち、
図1の主要表面114)の両方で測定することができる。これらの中で、1表面反射率測定は、典型的に、反射防止コーティングの低色または低色シフト値を達成するには、より困難な測定法であり、そしてこれは、物品の背面がブラックインクまたはLCDもしくはOLEDデバイスなどの光吸収媒体に結合している用途(例えば、スマートフォンなど)に関連性を有する。
【0071】
1つまたはそれ以上の実施形態において、基準点は、CIE L*、a*、b*測色系における原点(0、0)(または色座標a*=0、b*=0)、色座標(a*=-2、b*=-2)、あるいは基体の透過率または反射率色座標であり得る。他に特記されない限り、本明細書に記載の物品のL*座標は基準点と同じであり、色シフトに影響を与えないことは理解されるべきである。物品の基準点色シフトが基体に関して定義される場合、物品の透過率色座標は、基体の透過率色座標と比較され、物品の反射率色座標は、基体の反射率色座標と比較される。
【0072】
1つまたはそれ以上の特定の実施形態において、透過率色および/または反射率色の基準点色シフトは、1未満または0.5未満であり得る。1つまたはそれ以上の特定の実施形態において、透過率色および/または反射率色の基準点色シフトは、1.8、1.6、1.4、1.2、0.8、0.6、0.4、0.2、0ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲であってよい。基準点が色座標a*=0、b*=0である場合、基準点色シフトは等式(2)によって計算される。
【0073】
【0074】
基準点が色座標a*=-2、b*=-2である場合、基準点色シフトは等式(3)によって計算される。
【0075】
【0076】
基準点が基体の色座標である場合、基準点色シフトは等式(4)によって計算される。
【0077】
【0078】
いくつかの実施形態において、物品は、基準点が基体の色座標a*=0、b*=0および座標a*=-2、b*=-2である場合、基準点色シフトが2未満であるように、透過率色(または透過率色座標)および反射率色(または反射率色座標)を示し得る。
【0079】
1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、約0~約60度(または約0度~約40度、または約0度~約30度)の範囲の全ての入射照明角におけるCIE L*、a*、b*測色系において、約-5~約1、約-5~約0、約-4~約1または約-4~約0の範囲の(反射防止表面のみで測定された)反射率におけるb*値を示し得る。
【0080】
1つまたはそれ以上の実施形態において、物品は、約0~約60度(または約0度~約40度、または約0度~約30度)の範囲の全ての入射照明角におけるCIE L*、a*、b*測色系において、約2未満(または約1.8以下、約1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.2以下または約1以下)の(物品の反射防止表面および反対側の未処理の表面で測定された)透過率におけるb*値を示し得る。透過率のb*値の下限は約-5であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、物品は、光源D65、AおよびF2下で、約0~約60度の範囲の全ての入射照明角において、約-1.5~約1.5(例えば、-1.5~-1.2、-1.5~-1、-1.2~1.2、-1~1、-1~0.5または-1~0)の範囲の(反射防止表面および反対側の未処理の表面における)透過率におけるa*値を示す。いくつかの実施形態において、物品は、光源D65、AおよびF2下で、約0~約60度の範囲の全ての入射照明角において、約-1.5~約1.5(例えば、-1.5~-1.2、-1.5~-1、-1.2~1.2、-1~1、-1~0.5または-1~0)の範囲の(反射防止表面および反対側の未処理の表面における)透過率におけるb*値を示す。
【0082】
いくつかの実施形態において、物品は、光源D65、AおよびF2下で、約0~約60度の範囲の全ての入射照明角において、約-5~約2(例えば、-4.5~1.5、-3~0、-2.5~0.25)の範囲の(反射防止表面のみにおける)反射率におけるa*値を示す。いくつかの実施形態において、物品は、光源D65、AおよびF2下で、約0度~約60度の範囲の全ての入射照明角において、約-7~約0の範囲の(反射防止表面のみにおける)反射率におけるb*値を示す。
【0083】
1つまたはそれ以上の実施形態の物品、あるいは1つまたはそれ以上の物品の反射防止表面122は、約400nm~約800nmの範囲の光学波長領域において、約95%以上(例えば、約9.5%以上、約96%以上、約96.5%以上、約97%以上、約97.5%以上、約98%以上、約98.5%以上または約99%以上)の平均光透過率を示し得る。いくつかの実施形態において、物品、あるいは1つまたはそれ以上の物品の反射防止表面122は、約400nm~約800nmの範囲の光学波長領域において、約2%以下(例えば、約1.5%以下、約1%以下、約0.75%以下、約0.5%以下または約0.25%以下)の平均光反射率を示し得る。これらの光透過率および光反射率値は、全光学波長領域において、または光学波長領域の選択された範囲において(例えば、光学波長領域内の100nm波長範囲、150nm波長範囲、200nm波長範囲、250nm波長範囲、280nm波長範囲または300nm波長範囲)観察され得る。いくつかの実施形態において、これらの光反射率および光透過率値は、(反射防止表面122および反対側の主要表面114の両方の反射率または透過率を考慮に入れた)全反射率または全透過率であってよく、あるいは(反対側表面を考慮に入れずに)反射防止表面122のみで測定されて物品の片面上で観察されてもよい。他に特記されない限り、平均反射率または透過率は、約0度~約10度の範囲の入射照明角で測定される(しかしながら、そのような測定は、45度または60度の入射照明角で提供されてもよい)。
【0084】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の実施形態の物品、あるいは1つまたはそれ以上の物品の反射防止表面122は、光学波長領域において、約1%以下、約0.7%以下、約0.5%以下または約0.45%以下の平均可視明所視反射率を示し得る。これらの明所視反射率値は、約0°~約20°、約0°~約40°または約0°~約60°の範囲の入射照明角において示され得る。本明細書で使用される場合、明所視反射率は、ヒトの目の感光度に従って波長スペクトルに対する反射率を測量することによってヒトの目の応答に似せたものである。明所視反射率は、CIE色空間の慣習などの既知の慣習に従って、反射光の輝度または三刺激値Y値として定義されてもよい。平均明所視反射率は、等式(4)において、スペクトル反射率R(λ)に照明スペクトルI(λ)および目のスペクトル感度に関連するCIEの等色関数
【0085】
をかけたものとして定義される:
【0086】
【0087】
いくつかの実施形態において、物品は、約10%未満のみの反射防止表面において、直角または近直角入射(例えば、0~10度)において測定される、片面平均明所視反射率を示す。いくつかの実施形態において、片面平均明所視反射率は、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%または約2%以下である。特定の実施形態において、1つまたはそれ以上の物品の反射防止表面122は(すなわち、片面測定によって反射防止表面のみを測定する場合)、上記平均明所視反射率値を示し得るが、同時に、D65光源および/またはF2光源を使用して、約5度~約60度の全入射照明角範囲において(基準照明角は直角入射である)、約5.0未満、約4.0未満、約3.0未満、約2.0未満、約1.5未満または約1.25未満の最大反射率色シフトを示す。これらの最大反射率色シフト値は、直角入射から約5度~約60度のいずれかの角度で測定された最高色点値から差し引かれた、同範囲のいずれかの角度で測定された最低色点値を表す。この値は、a*値における最大変化(a*
最高-a*
最低)、b*値における最大変化(b*
最高-b*
最低)、a*およびb*値の両方における最大変化、または量における最大変化√((a*
最高-a*
最低)2+(b*
最高-b*
最低)2)を表し得る。
【0088】
基体
基体110としては無機材料が含まれてもよく、そして非晶質基体、結晶質基体またはそれらの組合せが含まれ得る。基体110は、人工材料および/または天然由来材料(例えば、石英およびポリマー)から形成されてもよい。例えば、いくつかの場合、基体110は有機体として特徴づけられてもよく、そして特にポリマーであってよい。適切なポリマーとしては、限定されないが、ポリスチレン(PS)(スチレンコポリマーおよびブレンドを含む)、ポリカーボネート(PC)(コポリマーおよびブレンドを含む)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートコポリマーを含む、コポリマーおよびブレンドを含む)、ポリオレフィン(PO)および環式ポリオレフィン(環式-PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリルポリマー(コポリマーおよびブレンドを含む)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリエーテルイミド(PEI)および互いとのこれらのポリマーのブレンドを含む熱可塑性プラスチックが含まれる。他の代表的なポリマーとしては、エポキシ、スチレン系、フェノール系、メラミンおよびシリコーン樹指が含まれる。
【0089】
いくつかの特定の実施形態において、基体110は、ポリマー、プラスチックおよび/または金属基体を特に除外してもよい。基体は、アルカリを含む基体として特徴づけられてもよい(すなわち、基体は1種またはそれ以上のアルカリを含む)。1つまたはそれ以上の実施形態において、基体は、約1.45~約1.55の範囲の屈折率を示す。特定の実施形態において、基体110は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20の試料を使用して、ボール-オン-リング試験を使用して測定した場合、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上または2%以上の、1つまたはそれ以上の対立する主要表面における表面上の平均破壊ひずみを示し得る。特定の実施形態において、基体110は、約1.2%、約1.4%、約1.6%、約1.8%、約2.2%、約2.4%、約2.6%、約2.8%または約3%以上の、1つまたはそれ以上の対立する主要表面における、その表面上の平均破壊ひずみを示し得る。
【0090】
適切な基体110は、約30GPa~約120GPaの範囲の弾性係数(またはヤング率)を示し得る。いくつかの場合、基体の弾性係数は、約30GPa~約110GPa、約30GPa~約100GPa、約30GPa~約90GPa、約30GPa~約80GPa、約30GPa~約70GPa、約40GPa~約120GPa、約50GPa~約120GPa、約60GPa~約120GPa、約70GPa~約120GPa、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲であってよい。
【0091】
1つまたはそれ以上の実施形態において、非晶質基体は、強化されていても、または強化されていなくてもよいガラスを含み得る。適切なガラスの例としては、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラスおよびアルカリアルミノボロシリケートガラスが含まれる。いくつかの変形において、ガラスはリチアを含まなくてもよい。1つまたはそれ以上の別の実施形態において、基体110は、(強化されていても、または強化されていなくてもよい)ガラスセラミック基体などの結晶質基体を含んでもよく、あるいはサファイアなどの単結晶構造を含んでもよい。1つまたはそれ以上の特定の実施形態において、基体110は、非晶質ベース(例えば、ガラス)および結晶質クラッディング(例えば、サファイア層、多結晶質アルミナ層および/またはスピネル(MgAl2O4)層)を含む。
【0092】
1つまたは以上の実施形態の基体110は、(本明細書に記載のBerkovich Indenter Hardness Testによって測定される)物品の硬度より低い硬度を有し得る。基体の硬度は、限定されないが、Berkovich Indenter Hardness TestまたはVickers硬度試験を含む当該技術において既知の方法を使用して測定されてよい。
【0093】
基体110は実質的に平面であるか、またはシート状であってよいが、他の実施形態では、湾曲しているか、または別の方法で形成もしくは制作された基体を利用してもよい。基体110は、実質的に光学的にクリアであり、透明であり、かつ光散乱がないものであり得る。そのような実施形態において、基体は、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上または約92%以上の光学波長領域における平均光透過を示し得る。1つまたはそれ以上の別の実施形態において、基体110は不透明であり得るか、あるいは約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満または約0%未満の光学波長領域における平均光透過を示し得る。いくつかの実施形態において、これらの光反射率および透過率値は、(基体の両主要表面上の反射率または透過率を考慮に入れた)全反射率または全透過率であってよく、あるいは基体の片面で(すなわち、反対側表面を考慮に入れず、反射防止表面122のみで)観察されてもよい。特記されない限り、平均反射率または透過率は、0度の入射照明角で測定される(しかしながら、そのような測定が45度または60度の入射照明角で提供されてもよい)。基体110は、任意選択的に、白色、黒色、赤色、青色、緑色、黄色、オレンジ色などの色を示してもよい。
【0094】
さらに、あるいは代わりに、基体110の物理的厚さは、美的および/または機能的な理由で、その寸法の1つまたはそれ以上に沿って変化してもよい。例えば、基体110の端部は、基体110のより中央の領域と比較して、より厚くてもよい。基体110の長さ、幅および物理的厚さ寸法も、物品100の用途または使用によって異なってもよい。
【0095】
基体110は、様々な異なるプロセスを使用して提供されてもよい。例えば、基体110がガラスなどの非晶質基体を含む場合、種々の形成方法として、フロートガラスプロセス、ならびにフュージョンドローおよびスロットドローなどのダウンドロープロセスを含むことができる。
【0096】
いったん形成されたら、基体110を強化して、強化基体を形成してもよい。本明細書で使用される場合、「強化基体」という用語は、例えば、基体の表面において、より大きいイオンとより小さいイオンとのイオン交換によって化学的に強化された基体を指し得る。しかしながら、熱焼戻し、または圧縮応力および中央表面張力領域を生じる基体の部分間の熱膨脹率の不適合性を利用することなどの当該分野で既知の他の強化方法を利用して、強化基体を形成してもよい。
【0097】
基体がイオン交換プロセスによって化学的に強化される場合、基体の表面層のイオンは、同一原子価または酸化状態を有するより大きいイオンによって置き換えられるか、または交換される。イオン交換プロセスは、典型的に、基体中でより小さいイオンと交換されるより大きいイオンを含有する溶融塩浴に基体を浸漬することによって実行される。限定されないが、浴組成および温度、浸漬時間、塩浴(または浴)中の基体の浸漬数、複数の塩浴の使用、焼きなまし、洗浄などの追加ステップなどを含むイオン交換プロセスのパラメーターは、一般に、強化操作から得られる基体の組成および所望の圧縮応力(CS)、基体の圧縮応力層の深さ(または層の深さ)によって決定される。例として、アルカリ金属含有ガラス基体のイオン交換は、限定されないが、硝酸塩、硫酸塩、およびアルカリ金属イオンよりも大きい塩化物などの塩を含有する少なくとも1つの溶融浴によって達成され得る。溶融塩浴の温度は、典型的に約380℃~約450℃の範囲であるが、浸漬時間は約15分~約40時間の範囲である。しかしながら、上記とは異なる温度および浸漬時間も使用されてよい。
【0098】
加えて、ガラス基体が複数のイオン交換浴に浸漬され、浸漬間に洗浄および/または焼きなましステップが行われるイオン交換プロセスの非限定的な例は、異なる濃度の塩浴中での複数回の連続的なイオン交換処理における浸漬によってガラス基体が強化される、2008年7月11日出願の米国仮特許出願第61/079,995号明細書からの優先権を主張する、Douglas C.Allanらによる「Glass with Compressive Surface for Consumer Applications」と題された2009年7月10日出願の米国特許出願公開第12/500,650号明細書、およびガラス基体が、流出イオンによって希釈された第1の浴中でのイオン交換、それに続いて、第1の浴よりも低い流出イオン濃度を有する第2の浴中での浸漬によって強化される、2008年7月29日出願の米国仮特許出願第61/084,398号明細書からの優先権を主張する、Christopher M.Leeらによる「Dual Stage Ion Exchange for Chemical Strengthening of Glass」と題された2012年11月20日発行の米国特許第8,312,739号明細書に記載されている。米国特許出願公開第12/500,650号明細書および米国特許第8,312,739号明細書の内容は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【0099】
イオン交換によって達成される化学的強化の度合いは、中央表面張力(CT)、表面CSおよび層の深さ(DOL)のパラメーターに基づいて定量化されてよい。表面CSは、表面付近、または強化ガラス内の様々な深さで測定されてよい。最高CS値は、強化された基体の表面において測定されたCS(CSs)を含み得る。ガラス基体内の圧縮応力層に隣接する内部領域に関して算出されるCTは、CS、物理的厚さtおよびDOLから計算することができる。CSおよびDOLは、当該技術において既知の手段を使用して測定される。そのような手段には、限定されないが、株式会社ルケオ(日本、東京)によって製造されるFSM-6000などの市販品として入手可能な器具を使用する表面応力(FSM)の測定などが含まれ、そしてCSおよびDOLの測定方法は、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass」と題されたASTM 1422C-99、ならびに「Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed,Heat-Strengthened,and Fully-Tempered Flat Glass」と題されたASTM 1279.19779に記載されている。上記文献の内容は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。表面応力測定は、ガラス基板の複屈折と関係する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依拠する。SOCは、次に、繊維および4点曲げ法(これらの方法は両方とも「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題されたASTM規格C770-98(2008)に記載され、その内容は全体として参照によって本明細書に組み込まれる)、ならびにバルクシリンダー法などの当該技術において既知の方法によって測定される。CSおよびCTの間の関係は、次式(1):
CT=(CS・DOL)/(t-2DOL) (1)
によって与えられる。式中、tはガラス物品の物理的厚さ(μm)である。本開示の様々な項目において、CTおよびCSは、本明細書中、メガパスカル(MPa)で表され、物理的厚さtはマイクロメートル(μm)またはミリメートル(mm)で表され、そしてDOLはマイクロメートル(μm)で表される。
【0100】
一実施形態において、強化された基体110は、250MPa以上、300MPa以上、例えば、400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上または800MPa以上の表面CSを有することができる。強化された基体は、10μm以上、15μm以上、20μm以上(例えば、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm以上)のDOLおよび/または10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上(例えば、42MPa、45MPaまたは50MPa以上)であるが、100MPa未満(例えば、95、90、85、80、75、70、65、60、55MPa以下)のCTを有してもよい。1つまたはそれ以上の特定の実施形態において、強化された基体は、500MPaより高い表面CS、15μmより大きいDOLおよび18MPaより高いCTの1つまたはそれ以上を有する。
【0101】
基体中で使用されてもよい代表的なガラスとしては、アルカリアルミノシリケケートガラス組成物またはアルカリアルミノボロシリケートガラス組成物が含まれてよいが、他のガラス組成物が考察される。そのようなガラス組成物は、イオン交換プロセスによって化学的に強化されることが可能である。ガラス組成物の一例は、SiO2、B2O3およびNa2Oを含んでなり、(SiO2+B2O3)≧66モル%およびNa2O≧9モル%である。一実施形態において、ガラス組成物は、少なくとも6重量%の酸化アルミニウムを含む。さらなる実施形態において、基体は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5重量%であるように、1種またはそれ以上のアルカリ土類酸化物を有するガラス組成物を含む。適切なガラス組成物は、いくつかの実施形態において、K2O、MgOおよびCaOの少なくとも1種をさらに含んでなる。特定の実施形態において、基体で使用されるガラス組成物は、61~75モル%のSiO2、7~15モル%のAl2O3、0~12モル%のB2O3、9~21モル%のNa2O、0~4モル%のK2O、0~7モル%のMgOおよび0~3モル%のCaOを含んでなることができる。
【0102】
基体に適切なガラス組成物のさらなる例は、60~70モル%のSiO2、6~14モル%のAl2O3、0~15モル%のB2O3、0~15モル%のLi2O、0~20モル%のNa2O、0~10モル%のK2O、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO2、0~1モル%のSnO2、0~1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3および50ppm未満のSb2O3を含んでなり、12モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦20モル%および0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0103】
基体に適切なガラス組成物のなおさらなる例は、63.5~66.5モル%のSiO2、8~12モル%のAl2O3、0~3モル%のB2O3、0~5モル%のLi2O、8~18モル%のNa2O、0~5モル%のK2O、1~7モル%のMgO、0~2.5モル%のCaO、0~3モル%のZrO2、0.05~0.25モル%のSnO2、0.05~0.5モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3および50ppm未満のSb2O3を含んでなり、14モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦18モル%および2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0104】
特定の実施形態において、基体に適切なアルカリアルミノシリケートガラス組成物は、アルミナ、少なくとも1種のアルカリ金属、そしていくつかの実施形態において、50モル%より多いSiO2、他の実施形態において、少なくとも58モル%のSiO2、さらに他の実施形態において、少なくとも60モル%のSiO2を含んでなり、比率(Al2O3+B2O3)/Σ変性剤(すなわち、変性剤の合計)は1より高く、比率の成分はモル%で表され、そして変性剤はアルカリ金属酸化物である。このガラス組成物は、特定の実施形態において、58~72モル%のSiO2、9~17モル%のAl2O3、2~12モル%のB2O3、8~16モル%のNa2Oおよび0~4モル%のK2Oを含んでなり、比率(Al2O3+B2O3)/Σ変性剤(すなわち、変性剤の合計)は1より高い。
【0105】
なお他の実施形態において、基体は、64~68モル%のSiO2、12~16モル%のNa2O、8~12モル%のAl2O3、0~3モル%のB2O3、2~5モル%のK2O、4~6モル%のMgOおよび0~5モル%のCaOを含んでなり、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B2O3)-Al2O3≦2モル%、2モル%≦Na2O-Al2O3≦6モル%および4モル%≦(Na2O+K2O)-Al2O3≦10モル%であるアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含んでもよい。
【0106】
別の実施形態において、基体は、2モル%以上のAl2O3および/またはZrO2、あるいは4モル%以上のAl2O3および/またはZrO2を含んでなるアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含んでなる。
【0107】
基体110が結晶質基体を含む場合、基体は単結晶を含んでもよく、Al2O3を含み得る。そのような単結晶基体はサファイアと呼ばれる。結晶質基体のための他の適切な材料としては、多結晶質アルミナ層および/またはスピネル(MgAl2O4)が含まれる。
【0108】
任意選択的に、結晶質基体110は、強化されていても、または強化されていなくてもよいガラスセラミック基体を含んでもよい。適切なガラスセラミックの例としては、Li2O-Al2O3-SiO2系(すなわち、LAS-系)ガラスセラミック、MgO-Al2O3-SiO2系(すなわち、MAS-系)ガラスセラミック、および/またはβ-石英固溶体、β-黝輝石ss、菫青石および二ケイ酸リチウムを含む主結晶相を含むガラスセラミックを含み得る。ガラスセラミック基体は、本明細書に開示された化学的強化プロセスを使用して強化されてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態において、MAS-系ガラスセラミック基体は、Li2SO4溶融塩中で強化されてよく、それによって、Mg2+に対する2Li+の交換が発生可能である。
【0109】
1つまたはそれ以上の実施形態による基体110は、約100μm~約5mmの範囲の物理的厚さを有することができる。基体110の物理的厚さの例は、約100μm~約500μmの範囲である(例えば、100、200、300、400または500μm)。基体110の物理的厚さのさらなる例は、約500μm~約1000μmの範囲である(例えば、500、600、700、800、900または1000μm)。基体110は、約1mmより大きい物理的厚さを有してもよい(例えば、約2、3、4または5mm)。1つまたはそれ以上の特定の実施形態において、基体110は、2mm以下または1mm以下の物理的厚さを有してもよい。基体110は、表面傷の影響を取り除くか、あるいは減少させるために、酸研磨されるか、または他の方法で処理されてよい。
【0110】
反射防止コーティング
図1に示すように、反射防止コーティング130は、1層またはそれ以上の層が、(
図1に示す)反射防止コーティング130から基体110の反対側で(すなわち、主要表面114上で)配置され得るように、複数の層を含んでもよい。
【0111】
主要表面114に配置された反射防止コーティング130の物理的厚さは、約0.1μm~約5μmの範囲であってよい。いくつかの場合、主要表面114に配置された反射防止コーティング140の物理的厚さは、約0.01μm~約0.9μm、約0.01μm~約0.8μm、約0.01μm~約0.7μm、約0.01μm~約0.6μm、約0.01μm~約0.5μm、約0.01μm~約0.4μm、約0.01μm~約0.3μm、約0.01μm~約0.2μm、約0.01μm~約0.1μm、約0.02μm~約1μm、約0.03μm~約1μm、約0.04μm~約1μm、約0.05μm~約1μm、約0.06μm~約1μm、約0.07μm~約1μm、約0.08μm~約1μm、約0.09μm~約1μm、約0.2μm~約1μm、約0.3μm~約5μm、約0.4μm~約3μm、約0.5μm~約3μm、約0.6μm~約2μm、約0.7μm~約1μm、約0.8μm~約1μmまたは約0.9μm~約1μm、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲であってよい。
【0112】
本明細書に記載される物品の代表的な実施形態は、以下の表1~2に提供される。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
表1および2に示すように、光学フィルムの層の物理的厚さは、最大の厚さを有する耐擦傷性層(層6)によって変化し得る。層の物理的厚さ範囲は表3~4に示され得る。上記の16層および12層設計の両方において、層7は最大の物理的厚さを有し、かつ光学コーティングおよび物品に有意な硬度および耐擦傷性を付与する。様々な層が最大の物理的厚さを有するように製造可能であることは理解されるべきである。しかしながら、これらの特定の設計において、最も厚い層(この場合、層7)の上および下のインピーダンス整合層は、以下の表3~4に示すように、最も厚い層の厚さを調整するために、大きい光学設計自由度があることを意味する。
【0118】
【0119】
【0120】
本特許の第2の態様は、本明細書に記載される物品の製造方法に関する。一実施形態において、この方法は、主要表面を有する基体をコーティングチャンバーに提供するステップと、コーティングチャンバー中で真空を形成するステップと、本明細書に記載される耐久性光学コーティングを主要表面上で形成するステップと、任意選択的に、クリーニングが容易なコーティングおよび耐擦傷性コーティングの少なくとも1つを含んでなる追加的なコーティングを光学コーティング上に形成するステップと、コーティングチャンバーから基体を取り出すステップとを含む。1つまたはそれ以上の実施形態において、光学コーティングおよび追加的なコーティングは、同一コーティングチェンバーで、または別個のコーティングチェンバーで真空を破壊することなく形成される。
【0121】
1つまたはそれ以上の実施形態において、この方法は、基体を担体上に積み、次いでこれを使用して、基体が移動される時に真空が保存されるようにロードロック条件下で、基体を異なるコーティングチャンバー中および外に移動するステップを含んでもよい。
【0122】
光学コーティング120および/または追加的なコーティング140は、真空蒸着技術、例えば、化学蒸着法(例えば、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)、低圧化学蒸着法、大気圧化学蒸着法およびプラズマ強化大気圧化学蒸着法)、物理蒸着法(例えば、反応性または非反応性スパッターまたはレーザーアブレーション)、熱またはe-ビーム蒸着法および/または原子層蒸着法などの種々の蒸着法を使用して形成されてもよい。噴霧、浸漬、スピンコーティングまたはスロットコーティングなどの液体ベースの方法も使用されてよい(例えば、ゾル-ゲル材料を使用して)。真空蒸着法が利用される場合、1つの蒸着工程で光学コーティング120および/または追加的なコーティング140が形成されるように、インラインプロセスが使用されてもよい。いくつかの場合、真空蒸着は線形PECVD源によって実行することができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、この方法は、光学コーティング120および/または追加的なコーティング140の厚さが、反射防止表面122の部分の少なくとも約80%に沿って、または基体部分に沿っていずれかの点における各層の標的厚さから約4%より多く変化しないように、光学コーティング120および/または追加的なコーティング140の厚さを制御するステップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、光学コーティング120および/または追加的なコーティング140の厚さは、反射防止表面122の部分の少なくとも約95%に沿って、約4%より多く変化しない。
【実施例0124】
以下の実施例によって、種々の実施形態をさらに明確に示す。実施例において、AlOxNyおよびSiuAlvOxNyは、目標の屈折率分散値および提供された層厚さ設計を再現するために、当業者に明白なわずかなプロセス調整のみを必要とするが、モデル実施例において高指数材料として実質的に交換可能であることが見出された。
【0125】
実施例1
実施例1は、互いの上部に連続的に配置され、かつ約58モル%のSiO
2、16.5モル%のAl
2O
3、17モル%のNa
2O、3モル%のMgOおよび約6.5モル%のP
2O
5の名目上の組成を有する強化アルミノシリケートガラス基体201上に配置された、層305、310、320、330、340、350、360、370、380、390および400を含む12層光学コーティング300を含んだ。光学コーティング300は、反射防止コーティングの層内に配置された耐擦傷性層345(副層345A~345Iを含む)も含む。物品の構造は
図8に示され(
図8に示された厚さは正確ではなく、そして例証となるように意図される)、そして層の相対的な厚さは表5に示される。
【0126】
SiO2およびSiuAlvOxNy両層は、AJA-Industries Sputter Deposition Toolにおいて反応スパッタリングによって製造された。SiO2は、イオンアシストを用いてケイ素標的からDC反応スパッタリングによって堆積され、SiuAlvOxNy材料は、イオンアシストを用いて、RFスーパーインポーズドDCスパッタリングと組み合わせたDC反応スパッタリングによって堆積された。標的は直径3インチ(7.62cm)のケイ素および直径3インチ(7.62cm)のAlであった。反応性ガスは窒素および酸素であり、そして「作動」(または不活性)ガスはアルゴンであった。ケイ素に供給された力は13.56Mhzの無線周波(RF)であった。アルミニウムに供給された力はDCであった。
【0127】
反射防止コーティングの構造が製造されたスパッタリングプロセス条件を表6を示す。
【0128】
層340および周期3の層345A~Iは、実質的に均質な組成(層340)を有する層と、表5に示すように、互いと比較した場合に屈折率勾配を有し、屈折率が2.015から2.079、2.015に段階的に、または単調に増加するように複数の層の組成を1つの層から次の隣接する層へと変更することから形成された複数の層(層345A~345I)を含んだ。層345B~Dおよび345F~Hの屈折率は測定しなかったが、当該技術において既知の方法に基づいて推測した。実施例1に従って製造された物品は、光学波長領域の一部において1%未満の反射率と共に、比較の未コーティング裸ガラス基体の摩擦および擦傷耐性と比較して、有意に改善された耐摩擦性を示した。
【0129】
【0130】
【0131】
モデル実施例2~3および比較モデル例4
モデル実施例2~3は、本明細書に記載される光学コーティングの実施形態を含む物品の反射率スペクトルを説明するためのモデリングを使用した。モデル実施例2~5において、光学コーティングはSiuAlvOxNyおよびSiO2層を含み、かつ強化アルミノシリケートガラス基体は、約58モル%のSiO2、17モル%のAl2O3、17モル%のNa2O、3モル%のMgO、0.1モル%のSnOおよび6.5モル%のP2O5の名目上の組成を有した。
【0132】
コーティング材料の屈折率分散曲線を決定するため、各コーティング材料の層を、イオンアシストを使用して、約50℃の温度において、ケイ素、アルミニウム、組み合わせたか、もしくは同時スパッタリングされたケイ素およびアルミニウム、またはマグネシウムフッ化物標的(それぞれ)から、DC、RFまたはRFスーパーインポーズドDC反応スパッタリングによってケイ素ウエハ上に形成した。いくつかの層の堆積の間ウエハを200℃まで加熱し、そして直径3インチ(7.62cm)の標的を使用した。使用された反応性ガスとしては、窒素、フッ素および酸素が含まれ、アルゴンを不活性ガスとして使用した。RF力を13.56Mhzでケイ素標的に供給し、そしてDC力をケイ素標的、Al標的および他の標的に供給した。
【0133】
形成された層およびガラス基体のそれぞれの(波長の関数としての)屈折率は、分光エリプソメトリーを使用して測定した。そのようにして測定された屈折率は、次いで、モデル実施例2~5の反射率スペクトルを計算するために使用した。モデル実施例は、便宜上、それらの記述的な表中で、約550nm波長における分散曲線から選択された点に相当する単一の屈折率値を使用する。
【0134】
モデル実施例2は、表7に示すように、強化アルミノシリケートガラス基体200上に配置された、互いの上部に連続的に配置された層を有する12層光学コーティングを含んだ。
【0135】
【0136】
モデル実施例2の物品の片面の反射率を、異なる視野入射照明角または照明角度(「AOI」)で計算した。結果の反射率スペクトルを
図9に示す。D65光源およびF2光源で、10°の観測器に基づく反射色も測定し、a
*およびb
*値を、角度増加において直角入射から0度から約60度まで変化した入射照明角またはAOIとしてプロットする。反射色を示すプロットを
図10に示す。
【0137】
モデル実施例3は、強化アルミノシリケートガラス基体200上に配置された、互いの上部に連続的に配置された層を有する10層光学コーティングを含んだ。層の相対的な厚さを表8に示す。
【0138】
【0139】
モデル実施例3の物品の片面の反射率を、異なる視野入射照明角または照明角度(「AOI」)で計算した。結果の反射率スペクトルを
図11に示す。D65光源およびF2光源で、10°の観測器に基づく反射色も測定し、a
*およびb
*値を、角度増加において直角入射から0度から約60度まで変化した入射照明角またはAOIとしてプロットする。反射色を示すプロットを
図12に示す。
【0140】
モデル実施例3の光学性能を、交互のNb2O5およびSiO2層の6層反射防止コーティングおよび反射防止コーティング上に配置された疎水性コーティングを含む比較モデル例4と比較した。比較モデル例4を製造するために、イオンアシストe-ビーム蒸着法を使用し、ケイ素ウエハ上に単層のNb2O5およびケイ素ウエハ上に単層のSiO2層を堆積した。これらの層の波長の関数としての屈折率を、分光エリプソメトリーを使用して測定した。測定した屈折率を、次いで、比較モデル例4で使用した。評価された光学性能としては、F02およびD65光源で直角入射から0度から約60度までの範囲の入射照明角で見た場合の約450nm~約650nmの波長範囲の平均反射率および色シフト(等式√((a*
実施例-(-1))2+(b*
実施例-(-1))2)を使用するa*およびb*座標(-1,-1)に関する)を含む。表9は、モデル実施例3および比較モデル例4の平均反射率および最大色シフトを示す。
【0141】
【0142】
表12に示すように、比較モデル例4はより低い平均反射率を示したが、最大色シフトも示した。モデル実施例3は、有意に少ない色シフトを有したが、反射率がわずかに増加した。同様の材料による同様のコーティングの製造および試験に基づき、モデル実施例3は、比較モデル例4よりも優れた擦傷および摩擦耐性を示すと考えられる。
【0143】
実施例5
実施例5は、表10に示すように、約58モル%のSiO2、17モル%のAl2O3、17モル%のNa2O、3モル%のMgO、0.1モル%のSnOおよび6.5モル%のP2O5の名目上の組成を有する強化アルミノシリケートガラス基体と、2マイクロメートルの耐擦傷性層を含む16層光学コーティングとを含んだ。
【0144】
【0145】
実施例5は、0°、30°、45°および60°の入射照明角で、D65光源で光学波長領域において、それぞれ、0.71%、0.76%、1.43%および4.83%の片面平均明所視反射率(すなわち、反射防止表面122から測定された)を示した。実施例5は、0°、30°、45°および60°の入射照明角で、D65光源で光学波長領域において、それぞれ、99.26%、99.21%、98.54%および95.14%の片面平均明所視透過率(すなわち、反射防止表面122を通して測定された)を示した。
【0146】
実施例5は、0°、30°、45°および60°の入射照明角で、D65光源で光学波長領域において、それぞれ、4.80%、4.99%、6.36%および12.64%の全平均明所視反射率(すなわち、反射防止表面122および反対側の主要表面114から測定された)を示した。実施例5は、0°、30°、45°および60°の入射照明角で、D65光源で光学波長領域において、それぞれ、95.18%、94.99%、93.61%および87.33%の全平均明所視透過率(すなわち、反射防止表面122および反対側の主要表面114を通して測定された)を示した。
【0147】
0度~60度の入射照明角またはAOIならびに光源D65およびF2下での実施例5の片面(すなわち、反射防止表面122)および両面(すなわち、
図1の反射防止表面122および主要表面114)の反射率および透過色座標を表11A~11Dに示す。片面色座標は、当該技術において既知のように、主要表面114から透過および反射率を排除することによって測定した。色シフトは、次の等式:√((a
*
2-a
*
1)
2+(b
*
2-b
*
1)
2)を使用して計算した。式中、a
*
1およびb
*
1は、直角入射(すなわち、AOI=0)で見た場合の物品のa
*およびb
*座標を表し、そしてa
*
2およびb
*
2は、直角入射とは異なるか、または直角入射から離れた入射照明角(すなわち、AOI=1-60)で見た場合の物品のa
*およびb
*座標を表す。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
実施例6
実施例6は、表12に示すように、実施例5と同様の強化アルミノシリケートガラス基体と、2マイクロメートルの耐擦傷性層を含む12層光学コーティングとを含んだ。
【0157】
【0158】
実施例6は、0°、30°、45°および60°の入射照明角で、D65光源で光学波長領域において、それぞれ、0.73%、0.80%、1.47%および4.85%の片面平均明所視反射率(すなわち、反射防止表面122から測定された)を示した。実施例6は、0°、30°、45°および60°の入射照明角で、D65光源で光学波長領域において、それぞれ、99.26%、99.18%、98.52%および95.13%の片面平均明所視透過率(すなわち、反射防止表面122を通して測定された)を示した。
【0159】
実施例6は、0°、30°、45°および60°の入射照明角で、D65光源で光学波長領域において、それぞれ、4.74%、4.94%、6.32%および12.56%の全平均明所視反射率(すなわち、反射防止表面122および反対側の主要表面114から測定された)を示した。実施例6は、0°、30°、45°および60°の入射照明角で、光学波長領域において、それぞれ、95.24%、95.04%、93.67%および87.42%の全平均明所視透過率(すなわち、反射防止表面122および反対側の主要表面114を通して測定された)を示した。
【0160】
実施例5と同様の様式で、0度~60度の入射照明角またはAOIならびに光源D65およびF2下での実施例6の片面(すなわち、反射防止表面122)および両面(すなわち、
図1の反射防止表面122および主要表面114)の反射率および透過色座標を表13A~13Dに示す。色シフトも実施例5と同様の様式で計算する。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
実施例7
実施例7は、表14に示すように、実施例5と同様の強化アルミノシリケートガラス基体と、2マイクロメートルの耐擦傷性層を含む12層光学コーティングとを含んだ。
【0172】
【0173】
モデル実施例8~11
モデル実施例8~11は、本明細書に記載される耐久性および耐擦傷性光学コーティングの実施形態を含む物品の反射率スペクトルを説明するためのモデリングを使用した。モデル実施例8~11において、表15~19に示すように、光学コーティングはAlOxNyおよびSiO2層を含み、かつ強化アルミノシリケートガラス基体は、約58モル%のSiO2、17モル%のAl2O3、17モル%のNa2O、3モル%のMgO、0.1モル%のSnOおよび6.5モル%のP2O5の名目上の組成を有した。モデル実施例8~11のコーティング材料および基体の屈折率分散曲線は、モデル実施例2~5と同様の様式で得られた。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
図13~14は、モデル実施例8の反射防止表面のみの計算された反射率スペクトルおよび計算された反射色をそれぞれ示す。
図15~16は、モデル実施例9の反射防止表面のみの計算された反射率スペクトルおよび計算された反射色をそれぞれ示す。
図17~18は、モデル実施例10の反射防止表面のみの計算された反射率スペクトルおよび計算された反射色をそれぞれ示す。
【0179】
モデル実施例8~11の光学性能を表22にまとめる。
【0180】
【0181】
図13、15、17および19に示すように、モデル実施例8~11は、光学波長領域において、8°、20°および40°の視野角に関して低い反射率(すなわち、約10%未満および約8%未満の値)を示し、60°の視野角での反射率はわずかに高い。モデル実施例11は、8°、20°、40°および60°の視野角に関して非常に低い反射率(すなわち、約10%未満および約8%未満の値)を示した。8°、20°および40°の視野角において、平均反射率はさらに低かった(すなわち、約2%未満)。
【0182】
図14および20に示すように、モデル実施例8および11は、D65およびF2光源の両方で、直角入射から60°の視野角において、約2未満の反射色を示した。
図16および18に示すように、モデル実施例9および10は、D65およびF2光源の両方で、直角入射から60°の視野角において、約3未満の反射色の範囲を示した。
【0183】
実施例8~11は、Berkovich Indenter Hardness Testによって測定する場合、本明細書に記載の硬度値(特に、約14GPa~約21GPaの範囲の硬度)も示す。
【0184】
モデル実施例8~11の光学性能をモデル比較例4と比較した。評価された光学性能としては、F02およびD65光源で直角入射から0度から約60度までの範囲の入射照明角で見た場合の約450nm~約650nmの波長範囲の平均反射率および色シフト(等式√((a*
実施例-(-1))2+(b*
実施例-(-1))2)を使用するa*およびb*座標(-1,-1)に関する)を含む。モデル比較例4は、より低い平均反射率を示したが、0度~60度の視野角に沿って有意に高い色シフトも示した。
【0185】
実施例12
実施例12は、互いの上部に連続的に配置され、かつ約65モル%のSiO2、5モル%のB2O3、14モル%のAl2O3、14モル%のNa2Oおよび2.5モル%のMgOの名目上の組成を有する強化アルミノシリケートガラス基体上に配置された層を含む、表23に示す16層光学コーティングを含んだ。
【0186】
【0187】
SiO2およびSiuAlvOxNy両層は、AJA-Industries Sputter Deposition Toolにおいて反応スパッタリングによって製造された。SiO2は、イオンアシストを用いてケイ素標的からDC反応スパッタリングによって堆積され、SiuAlvOxNy材料は、イオンアシストを用いて、RFスーパーインポーズドDCスパッタリングと組み合わせたDC反応スパッタリングによって堆積された。標的は直径3インチ(7.62cm)のケイ素および直径3インチ(7.62cm)のAlであった。反応性ガスは窒素および酸素であり、そして「作動」(または不活性)ガスはアルゴンであった。ケイ素に供給された力は13.56Mhzの無線周波(RF)であった。アルミニウムに供給された力はDCであった。
【0188】
実施例12の光学コーティングを形成するために使用されたスパッタリングプロセス条件を表24を示す。
【0189】
【0190】
実施例12は、表25および表26に示す光学性能を示した。表25は、(全反射率および2側面測定を使用して)反射防止表面および反対側の基体の裸表面の両方から測定された反射色および透過色を示す。表26は、(片面測定を使用して)反射防止表面のみから測定された反射色を示す。
【0191】
【0192】
【0193】
実施例12は、表27に示されるように、反射防止表面のみで測定された硬度およびヤング率を示した。両方の値は、本明細書に記載の通り、Berkovich圧子を使用して測定された。
【0194】
【0195】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができることは、当業者に明らかである。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0196】
実施形態1
主要表面を有する基体と、
前記主要表面上に配置され、かつ反射防止表面を形成する、反射防止コーティングを含んでなる光学コーティングと
を含んでなる物品において、
約100nm以上の押し込み深さに沿って、Berkovich Indenter Hardness Testによって反射防止表面上で測定される場合、約12GPa以上の最大硬度を示し、
約400nm~約800nmの範囲の光学波長領域において、約8%以下の、前記反射防止表面において測定された片面平均光反射率、ならびに
前記反射防止表面において測定した場合、色座標(a*=0、b*=0)および前記基体の透過率色座標の少なくとも1つを含んでなる基準点から約2未満の基準点色シフトを示す、国際照明委員会の光源下で直角入射での(L*、a*、b*)測色系における物品透過率色座標、および
前記反射防止表面において測定した場合、色座標(a*=0、b*=0)、色座標(a*=-2、b*=-2)および前記基体の反射率色座標の少なくとも1つを含んでなる基準点から約5未満の基準点色シフトを示す、国際照明委員会の光源下で直角入射での(L*、a*、b*)測色系における物品反射率色座標
のいずれか、または両方を示し、
前記基準点が色座標(a*=0、b*=0)である場合、前記色シフトは、√((a*
物品)2+(b*
物品)2)によって定義され、
前記基準点が色座標(a*=-2、b*=-2)である場合、前記色シフトは、√((a*
物品+2)2+(b*
物品+2)2)によって定義され、かつ
前記基準点が前記基体の色座標である場合、前記色シフトは、√((a*
物品-a*
基体)2+(b*
物品-b*
基体)2)によって定義されることを特徴とする物品。
【0197】
実施形態2
Aシリーズ光源、Bシリーズ光源、Cシリーズ光源、Dシリーズ光源およびFシリーズ光源からなる群から選択される国際照明委員会の光源下、直角入射を基準として、20度以上の入射照明角で約5以下の角度色シフトを示し、角度色シフトが、等式√((a*
2-a*
1)2+(b*
2-b*
1)2)(式中、a*
1およびb*
1は、直角入射で見た場合の前記物品の座標を表し、そしてa*
2およびb*
2は、入射照明角で見た場合の前記物品の座標を表す)を使用して計算されることを特徴とする、実施形態1に記載の物品。
【0198】
実施形態3
約20度~約60度の範囲の入射照明角で約5以下の角度色シフトを示すことを特徴とする、実施形態2に記載の物品。
【0199】
実施形態4
前記基体が、前記物品の最大硬度未満の硬度を有することを特徴とする、実施形態2または3に記載の物品。
【0200】
実施形態5
前記反射防止表面においてTaber Testを使用して500サイクルの摩擦後に、
約8mmの直径を有する開口部を有する曇り度計を使用して測定される約1%以下の曇り度、
原子間力顕微鏡法によって測定される約12nm以下の平均粗さRa、
600nmの波長で、2mmの開口部を用いて、散乱測定用イメージングスフィアを使用して、直角入射の透過で測定される、約40度以下の極散乱角において、約0.05(1/ステラジアンの単位)以下の散乱光度、および
600nmの波長で、2mmの開口部を用いて、散乱測定用イメージングスフィアを使用して、直角入射の透過で測定される、約20度以下の極散乱角において、約0.1(1/ステラジアンの単位)以下の散乱光度
のいずれか1つまたはそれ以上を含んでなる耐摩擦性を示すことを特徴とする、実施形態1~4のいずれか一項に記載の物品。
【0201】
実施形態6
前記反射防止コーティングが、第1の低RI層、第2の高RI層および任意選択の第3の層を含んでなる複数の層を含んでなることを特徴とする、実施形態1~5のいずれか一項に記載の物品。
【0202】
実施形態7
前記第1の低RI層および前記第2の高RI層が交互に並ぶように、前記反射防止コーティングが複数の周期を含んでなることを特徴とする、実施形態6に記載の物品。
【0203】
実施形態8
前記反射防止コーティングが、約10までの周期を含んでなることを特徴とする、実施形態7に記載の物品。
【0204】
実施形態9
前記片面平均光反射率が、約6度~約40度の範囲の視野角で、光学波長領域において約2%以下であることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか一項に記載の物品。
【0205】
実施形態10
前記基体が、非晶質基体または結晶質基体を含んでなることを特徴とする、実施形態1~9のいずれか一項に記載の物品。
【0206】
実施形態11
前記非晶質基体が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラスおよびアルカリアルミノボロシリケートガラスからなる群から選択されるガラスを含んでなることを特徴とする、実施形態10に記載の物品。
【0207】
実施形態12
前記ガラスが化学強化され、かつ前記化学強化ガラスの表面から少なくとも約10μmの層の深さ(DOL)まで前記化学強化ガラス内に延在する少なくとも250MPaの表面CSを有する圧縮応力(CS)層を含んでなることを特徴とする、実施形態11に記載の物品。
【0208】
実施形態13
前記光学コーティング上に配置された、クリーニングが容易なコーティング、ダイヤモンド様コーティングまたは耐擦傷性コーティングをさらに含んでなることを特徴とする、実施形態1~12のいずれか一項に記載の物品。
【0209】
実施形態14
前記光学コーティングが、約1マイクロメートル~約3マイクロメートルの範囲の厚さを有する耐擦傷性層を含んでなることを特徴とする、実施形態1~13のいずれか一項に記載の物品。
【0210】
実施形態15
前記反射防止コーティングが、耐擦傷性層と前記基体との間に配置されることを特徴とする、実施形態14に記載の物品。
【0211】
実施形態16
前記耐擦傷性層が、前記基体と前記反射防止コーティングとの間に配置されることを特徴とする、実施形態14に記載の物品。
【0212】
実施形態17
前記反射防止コーティングが、第1の部分および第2の部分を含んでなり、かつ前記耐擦傷性層が、前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置されることを特徴とする、実施形態14に記載の物品。
【0213】
実施形態18
主要表面を有する基体と、
反射防止表面を形成する前記主要表面上に配置された光学コーティングであって、少なくとも1つの反射防止コーティング、および前記反射防止コーティングと前記基体との間に配置される耐擦傷性層を含んでなる光学コーティングと
を含んでなる物品において、
約50nm以上の押し込み深さに沿って、Berkovich Indenter Hardness Testによって反射防止表面上で測定される場合、約12GPa以上の最大硬度を示し、
D65またはF2光源下で、直角入射において、
前記反射防止表面において測定した場合、光学波長領域において、約10%以下の平均明所視反射率、
前記反射防止表面において測定した場合、色座標(a*=0、b*=0)および前記基体の透過率色座標の少なくとも1つを含んでなる基準点から約2未満の基準点色シフトを示す(L*、a*、b*)測色系における物品透過率色座標、および
前記反射防止表面において測定した場合、色座標(a*=0、b*=0)、色座標(a*=-2、b*=-2)および前記基体の反射率色座標の少なくとも1つを含んでなる基準点から約5未満の基準点色シフトを示す(L*、a*、b*)測色系における物品反射率色座標
を示し、
前記基準点が色座標(a*=0、b*=0)である場合、前記色シフトは、√((a*
物品)2+(b*
物品)2)によって定義され、
前記基準点が色座標(a*=-2、b*=-2)である場合、前記色シフトは、√((a*
物品+2)2+(b*
物品+2)2)によって定義され、かつ
前記基準点が前記基体の色座標である場合、前記色シフトは、√((a*
物品-a*
基体)2+(b*
物品-b*
基体)2)によって定義されることを特徴とする物品。
【0214】
実施形態19
Aシリーズ光源、Bシリーズ光源、Cシリーズ光源、Dシリーズ光源およびFシリーズ光源からなる群から選択される国際照明委員会の光源下、直角入射から20度以上の入射照明角で約5以下の角度色シフトを示し、角度色シフトが、等式√((a*
2-a*
1)2+(b*
2-b*
1)2)(式中、a*
1およびb*
1は、直角入射で見た場合の前記物品の座標を表し、そしてa*
2およびb*
2は、入射照明角で見た場合の前記物品の座標を表す)を使用して計算されることを特徴とする、実施形態18に記載の物品。
【0215】
実施形態20
前記基体が、前記物品の最大硬度未満の硬度を有することを特徴とする、実施形態18または19に記載の物品。
【0216】
実施形態21
前記反射防止コーティングが、少なくとも1層の第1の低RI層および第2の高RI層を含んでなる複数の層を含んでなり、前記第1の低RI層の組み合わせた厚さまたは前記第2の高RI層の組み合わせた厚さが約500nm未満であることを特徴とする、実施形態18~20のいずれか一項に記載の物品。
【0217】
実施形態22
前記平均明所視反射率が、光学波長領域において約2%以下であることを特徴とする、実施形態18~21のいずれか一項に記載の物品。
【0218】
実施形態23
前記基体が、非晶質基体または結晶質基体を含んでなることを特徴とする、実施形態18~22のいずれか一項に記載の物品。
【0219】
実施形態24
前記光学コーティングが、厚さを有し、窒化物または酸窒化物材料を含んでなる複数の層を含んでなり、かつ窒化物または酸窒化物を含んでなる前記層の組み合わせた厚さが、前記光学コーティングの厚さの50%以上であることを特徴とする、実施形態18~23のいずれか一項に記載の物品。
【0220】
実施形態25
前記耐擦傷性層が、窒化物または酸窒化物材料を含んでなり、かつ200nm以上の厚さを有し、かつ前記反射防止コーティングが、約1.85より高い屈折率を有する複数の高屈折率層および約1.75未満の屈折率を有する複数の低屈折率層を含んでなることを特徴とする、実施形態18~24のいずれか一項に記載の物品。
【0221】
実施形態26
前記複数の高屈折率層が、窒化物または酸窒化物材料を含んでなり、かつ前記複数の低屈折率層が、約200nm未満の組み合わせた厚さを有することを特徴とする、実施形態18~25のいずれか一項に記載の物品。
【0222】
実施形態27
前記角度色シフトが約2未満であることを特徴とする、実施形態18~26のいずれか一項に記載の物品。
【0223】
実施形態28
前記光学コーティングが、厚さを有し、約1.8より高い屈折率を有する高屈折率材料を含んでなる複数の層を含んでなり、かつ前記高屈折率材料を含んでなる前記複数の層の組み合わせた厚さが、前記光学コーティングの厚さの50%以上であることを特徴とする、実施形態18~27のいずれか一項に記載の物品。
【0224】
実施形態29
前記光学コーティングが、厚さを有し、約1.8より高い屈折率を有する高屈折率材料を含んでなる複数の層を含んでなり、かつ前記高屈折率材料を含んでなる前記複数の層の組み合わせた厚さが、前記光学コーティングの最上部500nmの70%以上であることを特徴とする、実施形態18~28のいずれか一項に記載の物品。
【0225】
実施形態30
前記基体が、前記物品の最大硬度未満の硬度を有することを特徴とする、実施形態18~29のいずれか一項に記載の物品。