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特開2023-30038防腐剤非含有インクで印刷されたグラフィックを有する吸収性物品及びその製造方法
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  • 特開-防腐剤非含有インクで印刷されたグラフィックを有する吸収性物品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030038
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】防腐剤非含有インクで印刷されたグラフィックを有する吸収性物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20230228BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20230228BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61F13/511 500
A61F13/514 400
A61F13/15 140
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200289
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2021521524の分割
【原出願日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】16/171,433
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/216,083
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】クラリッサ、マルドナド
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス、イー.バーグナー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン、クック
(72)【発明者】
【氏名】アラン、ソーウィンスキー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】化粧品及びパーソナル製品における従来の防腐剤の存在をますます認識するようになっているため、防腐剤を含まない製品を提供する。
【解決手段】特定のインクジェットインク組成物及び流体セットを使用して印刷されたグラフィックを担持する構成要素を有する吸収性物品が開示される。水性インクジェットインク組成物は、以下の構造I:HO-CH2-CH2-R(I)[式中、Rは、置換若しくは非置換フェニル基、又は置換若しくは非置換フェノキシ基であってもよい]で表される1つ以上の化合物からなる組成物を含んでもよい。物品の構成要素の印刷領域は、1つ以上の構造Iの化合物を含む、開示された組成物の構成要素を含む乾燥インクの堆積物を担持し得る。印刷領域における構造Iの化合物の存在は、印刷領域上の細菌の増殖を阻害する効果を有し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者に面する液体透過性トップシートと、外向きに面する液体不透過性バックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配設された吸収性コア構造体と、を含む、吸収性物品であって、前記物品の構成材料の表面は、以下の構造I:
HO-CH2-CH2-R
(I)
[式中、Rは、置換若しくは非置換フェニル基、又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物を含むインク組成物の堆積物を担持する印刷領域を含む、吸収性物品。
【請求項2】
前記構造Iの化合物は、前記印刷領域に、約1mgsm~約1,000mgsmの量で存在する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記印刷領域の14日目における細菌数の差は、前記構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも大きい、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記印刷領域の28日目における細菌数の差は、前記構成材料の非印刷領域の28日目における細菌数の差よりも大きい、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記構造(I)の(複数の)化合物は、2-フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、1-ヒドロキシ-2-フェノキシエタン、フェニルエタノール、2-フェニルエタン-1-オール、フェネチルアルコール、β-ヒドロキシエチルベンゼン、β-フェニルエタノール、ベンジルカルビノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品製品。
【請求項6】
前記堆積物は、前記構造(I)の組成物とは異なる補足の第2の抗菌剤を含み、好ましくは、前記補足の第2の抗菌剤は、ヨードプロピニルブチルカルバメート、ピロクトンオラミン、ホウ酸、2,4-ジクロロベンジルアルコール、若しくはホウ酸由来の金属イオン塩、又はこれらの化合物の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品製品。
【請求項7】
前記堆積物は、アニオン性ポリウレタン、アニオン性非芳香族アクリルポリマー、アニオン性スチレン-アクリルポリマー、又はかかる材料のうちの2つ以上の組み合わせを更に含み、これらの材料のそれぞれは、少なくとも50の酸価を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品製品。
【請求項8】
前記堆積物は、前記1つ以上の構造(I)の化合物ための1種以上の促進剤を更に含み、前記促進剤のそれぞれは、最小7個かつ12個以下の炭素原子を有するアルカンジオールであり、好ましくは、前記促進剤は、1,2-オクタンジオールである、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品製品。
【請求項9】
Rは、非置換フェニル基又は非置換フェノキシ基のいずれか一方である、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品製品。
【請求項10】
前記堆積物は、イソチアゾリノン化合物及びホルムアルデヒド放出化合物を実質的に含まず、好ましくは、前記堆積物は、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール及び/又はヘキサメチレンテトラミンクロロアリルクロリドを実質的に含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸収性物品製品。
【請求項11】
着用者に面する液体透過性トップシートと、外向きに面する液体不透過性バックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配設された吸収性コア構造体と、を含む、吸収性物品であって、前記物品の構成材料の表面は、以下の構造I:
HO-CH2-CH2-R
(I)
[式中、Rは、置換若しくは非置換フェニル基、又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物を含むインク組成物の堆積物を担持する印刷領域を含み、
前記印刷領域の14日目における細菌数の差は、前記構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも大きい、吸収性物品。
【請求項12】
前記印刷領域の14日目における細菌数の差は、前記構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも、少なくとも約0.3、好ましくは最小約1.0だけ大きい、請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記印刷領域の28日目における細菌数の差は、前記構成材料の非印刷領域の28日目における細菌数の差よりも、好ましくは少なくとも約0.3、より好ましくは少なくとも約1.0だけ大きい、請求項11又は12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記印刷領域は、前記トップシートによって構成されている、請求項11~13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記印刷領域は、前記トップシートと前記バックシートとの間に配設された二次的トップシートによって構成されている、請求項11~14のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その実体が参照により本明細書に援用されている、2018年10月26日に出願された出願第16/171,433号の一部継続出願である。
【0002】
すべての開示が参照により本明細書に援用されている以下の同時係属特許出願を参照する。
Sowinski,Bugner及びCookによって本明細書と同日に出願された、発明の名称が「Inkjet Ink and Ink Sets」である米国特許出願公開第16/171,432号(Eastman Kodak Company代理人整理番号K002245/JLT)、
Cook及びSowinskiによって本明細書と同日に出願された、発明の名称が「Fluid Sets for Inkjet Printing Methods」である米国特許出願公開第16/171,446号(Eastman Kodak Company代理人整理番号K002252/JLT)、及び
Sowinski及びCookによって本明細書と同日に出願された、発明の名称が「Methods of Inkjet Printing」である米国特許出願公開第16/171,455号(Eastman Kodak Company代理人整理番号K002253/JLT)。
【0003】
(発明の分野)
本出願は、身体に隣接して着用されるように設計された、印刷されたグラフィックを担持する吸収性物品、例えば、女性用衛生パッド、使い捨ておむつ、使い捨てトレーニングパンツ並びに成人用失禁パンツ及びパッドに関する。より具体的には、本発明は、そのようなグラフィックを印刷するために使用される(複数種の)水系インクが、個人衛生製品に関連する使用のために所望されないと見なされ得る従来の防腐剤を含まないように配合されているかかる製品に関する。
【背景技術】
【0004】
女性用衛生パッド、使い捨ておむつ、使い捨てトレーニングパンツ、並びに成人用失禁パッド及びパンツなどの使い捨て吸収性物品は、多くの場合、装飾又は機能的な目的のために1つ以上の表面に印刷された要素などの視覚的特徴を含む。装飾的な印刷画像及び/又は機能的な印刷画像、デザイン、記号、英数字、又は情報(「グラフィック」)は、消費者へのアピール及び/又は使用体験を高めるために、そのような製品を形成する1つ以上の材料層の表面に印刷される場合がある。比較的高速の処理量を必要とする製造プロセスに関して、好ましい印刷方法は、インクジェット又は連続インクジェット(continuous inkjet、CIJ)印刷プロセスを含む場合が多い。
【0005】
インクジェット又はCIJプロセスによってこのようなグラフィックを印刷するために使用されるインクは、水系又は有機溶媒系である場合がある。有機溶媒系インクは、印刷中及び/又は印刷後に揮発性有機化合物(volatile organic compound、VOC)を含有及び放出する場合が多い。VOC排出を低減し、ますます厳格になる規制を満たすために、このようなインクを使用する場合には、VOCの取り扱いシステム及び緩和システムが必要となる場合がある。これらのシステムは、かなりの資本投資を必要とする場合があり、問題を完全に取り除かない場合がある。
【0006】
あるいは、水系インクを使用してもよい。しかしながら、典型的な水系インク配合物は、対策が講じられない場合、微生物(水が有し得る細菌、酵母及び/又はカビ)による汚染を受けやすい場合がある。したがって、市販の配合物は、典型的には、インクが保管され、印刷のための使用を待っている間に微生物の増殖を効果的に阻害する防腐剤を含んでいる。
【0007】
しかしながら、このような防腐剤の多くは、消費者のパーソナル製品に関連する使用のためのいくつかの規制機関及び/又は社会派団体によってますます冷遇されている。加えて、消費者市場は、化粧品及びパーソナル製品における従来の防腐剤の存在をますます認識するようになっており、防腐剤を含まない製品の嗜好が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】出願第16/171,433号
【特許文献2】米国特許出願公開第16/171,432号
【特許文献3】米国特許出願公開第16/171,446号
【特許文献4】米国特許出願公開第16/171,455号
【0009】
したがって、微生物の成長を阻害することによって、保存可能期間を保持するか、かつ/又は長期化させ、好適な安定性及びインクジェット印刷装置との使用に必要とされる他のバランスを提供又は維持する特徴を有する一方、従来の防腐剤を実質的に含まない、インクジェット又はCIJ印刷プロセスに好適な水系インク配合物に対する満たされていないニーズが現在存在している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】着用者に面する表面を読者に向けた、女性用衛生パッドの形態の吸収性物品の一例の平面図である。
図2】外向きに面する表面を読者に向けた、女性用衛生パッドの形態の吸収性物品の一例の平面図である。
図3図1に示される線3-3に沿う図1に示される吸収性物品の構成要素の概略分解横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の考察は、本開示の想到される範囲内の様々な例示的な実施形態を目的とし、いくつかの実施形態が特定の用途に関して所望され得る一方、開示される実施形態は、本明細書の特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、あるいは別の方法で本明細書の特許請求の範囲を限定するものと見なされるべきではない。当業者は、以下の開示が、任意の実施形態の検討において明示的に記載されているよりも広義の用途を有することを理解するだろう。
【0012】
本開示は、女性用衛生パッド、使い捨ておむつ及びトレーニングパンツ、使い捨て成人用失禁パンツ及びパッドなどの吸収性物品の構成要素材料の層のうちの1つ以上にグラフィックを印刷するために、従来の防腐剤を実質的に含まないインクの使用を想到する。
【0013】
定義
水性有機顔料分散体、水性インクジェットインク組成物、及び本明細書で言及される他の材料の様々な成分を定義するために本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、成分のうちの1つ以上を含む(すなわち、複数の言及対象を含む)ことを意図する。
【0014】
本明細書で明示的に定義されていない各用語は、当業者に一般的に受け入れられる意味を有するものと理解されるべきである。用語の構成がその文脈において意味が分からない又は本質的に意味が分からない場合、用語は、標準的な辞書的意味を有すると解釈されるべきである。
【0015】
本出願において指定される様々な範囲における数値の使用は、別途明示的に示されない限り、記載された範囲内の最小値及び最大値が両方とも「約」という語の後に続くかのように近似値として見なされる。このようにして、規定の範囲を上回り、かつ下回るわずかなばらつきは、有用であり得、範囲内の値と実質的に同じ結果を得る。加えて、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のあらゆる値、並びに範囲の端点を含む連続範囲として意図される。
【0016】
「不織布」、「不織布ウェブ」又は「不織布ウェブ材料」は、天然繊維、紡糸合成ポリマー繊維若しくはフィラメント、又はこれらの組み合わせから形成される布地ウェブであり、繊維又はフィラメントは共に織られても編まれてもなく、接合のパターンによって、接着剤若しくは結合剤によって、機械的な絡み合い、又はこれらの組み合わせによって、密着したウェブに共に集約及び保持されている。
【0017】
本明細書で使用するとき、パラメータ(酸性度指数としても知られる)「酸価」は、1gの酸性ポリマーを中和するために必要とされる水酸化カリウムのミリグラム(mg)として定義される。
【0018】
本開示による、水性有機顔料分散体及び水性インクジェットインク組成物における「水性」という用語は、含水量が溶媒の総量に対して60重量%を超えることを意味する。したがって、水は、水性媒体中の主要な溶媒である。
【0019】
インク及び流体の動的粘度は、周知の手法のいずれかによって測定することができる。好ましい方法としては、毛細管粘度計のような毛細管を通る質量流のタイミングの測定、又は、例えば、落球式粘度計を使用する、流体を通る落球速度の測定が挙げられる。毛細管流動粘度計及び落球式手法を使用する市販のAnton Paar Automated MicroViscometer(AMVn)の両方を使用して、本明細書に報告される動的粘度を測定することができる。本明細書に開示されるすべてのインクの動的粘度値は、およそ24℃~26℃で重力誘起剪断下で測定された。引用された値は、センチポアズ(cP)又はミリパスカル秒(mPa-sec)として報告され、1cP=10-3パスカル秒(Pa-s)=10-2dyne-s/cmであることが理解されるであろう。粘度は高精度で測定され得るが、ここでの粘度値は、単に小数第1位又は第2位で報告されており、これらは、通常は四捨五入値であり、切り捨て値ではない。インク粘度を列挙したすべての特許請求の範囲は、通常、小数第1位に四捨五入されたmPa-sec単位の値換算で解釈されることが意図される。したがって、様々な水性インクジェットインク組成物は、10センチポアズ(10mPa-sec)以下の粘度を有し得る。
【0020】
Wilhelmyプレート法は、固体界面における液体インク又はサービス流体の静的表面張力を測定するための周知の手法である。この手法は、典型的には、粗面化された白金合金から選択され、秤から吊り下げられた、既知の寸法のプレートを伴う。プレートを対象の溶液と接触させ、鉛直力をプレートに加えて、溶液とプレートとの間に液体メニスカスを形成する。得られた表面張力は、式(1):
(1)σ=F/Lcos(θ)
に従って与えられ、式中、σは液体の表面張力であり、Fは秤に作用する力(ミリニュートン/メートル)であり、Lはプレートの濡れ長さ(ミリメートル単位)であり、θはプレートと溶液との間の接触角である。
【0021】
典型的には、粗面化された白金は、ゼロに非常に近い接触角をもたらし、θの余弦は1になる。本方法の完全な理論的な取り扱いは、例えば、「A Method for Determining Surface and Interfacial Tension Using a Wilhelmy Plate」,Colloid and Polymer Science,255(7),pages675-681に見出すことができる。表面張力を測定するために多くの市販の器具が知られているが、本開示に記載される表面張力値を報告するために使用される器具は、Kruss Model K10ST張力計である。
【0022】
本開示による様々な実施形態で使用される顔料着色剤は、概ね、自己分散性ではないと考えられ、これは、顔料着色剤が、水性媒体において懸濁し続けるために、顔料粒子の表面の一部の画分に結合した1種以上の有機ポリマー顔料分散剤の存在を必要とすることを意味する。
【0023】
用語「水溶性」及び「水可溶性」は、1質量部の溶質物質が、25℃で、わずか1質量部未満の蒸留水に溶解し得(すなわち、可溶性のより大きい溶質)、かつ1,000質量部もの蒸留水に溶解し得(すなわち、可溶性のより小さい溶質)、均質かつ視覚的に透明な溶液を提供することを意味する。
【0024】
用語「ソルボ界面活性剤」は、乾燥させた「インク」のために有効な溶媒であり、200℃未満の海面における沸点を有し、流体表面張力及び自己凝集を低減することができる揮発性溶媒である化合物又は化合物の組み合わせを指す。このような化合物の更なる詳細を以下に提供する。
【0025】
ポリマーに関する任意の用語に関する定義の明確化のために、International Union of Pure and Applied Chemistry(「IUPAC」)によって刊行されているような「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」,Pure Appl.Chem.68,2287-2311(1996)を参照されたい。但し、本明細書に明示的に記載される任意の定義は、管理するものとしてみなされるべきである。ポリマーは、フリーラジカル重合プロセス又は酸触媒重合プロセスを使用してエチレン性不飽和重合性モノマーから調製することができ、あるいは既知の縮合重合プロセスを使用して適切な縮合モノマー(例えば、ジオール及びジイソシアネート)の反応によって調製することができる。
【0026】
別途記載のない限り、用語「ポリマー」及び「ポリマーの」は、それぞれがゲル浸透クロマトグラフィ(ポリスチレン標準)を使用して測定したとき、それぞれが規定の重量分布平均分子量(M)又は数分布平均分子量(M)を有するホモポリマー及びコポリマーの両方を指す。
【0027】
用語「コポリマー」は、ポリマー主鎖に沿うランダムな順序の又は所定の順序(例えば、ブロック)の2つ以上の異なるモノマー由来のポリマーを指す。すなわち、それぞれのコポリマーは、様々な化学構造を有する少なくとも2つの繰り返し単位を含む。
【0028】
用語「主鎖」は、複数のペンダント基が結合され得るポリマーにおける原子の鎖を指す。このような主鎖の例は、1つ以上のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「すべての炭素」の主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、縮合反応又は何らかの他の手段によってポリマーが形成されるヘテロ原子を含んでもよい。
【0029】
吸収性物品
図1図3は、トップシート14と、トップシート14に接合された液体不透過性バックシート16と、これらの間に包まれた吸収性コア構造体18と、を含み得る、女性用衛生パッドの形態の吸収性物品10の一例を示す。吸収性物品、及び吸収性物品の構成要素の層のそれぞれは、着用中に着用者に面する着用者に面する表面と、着用中に着用者から離れる方向に面する外向きに面する表面と、を有する。典型的には、トップシート14は、着用中に着用者に最も近い構成要素の層であり、バックシート16は、着用中に着用者から最も遠い構成要素の層である。
【0030】
吸収性物品10は、1つ以上の印刷されたグラフィック要素26を含んでもよい。グラフィック要素26は、容易に可視であるように、トップシート14の身体に面する表面又は衣類に面する表面に印刷されてもよい。追加のグラフィック要素26は、吸収性物品10の任意の層及び任意の層の着用者に面する表面又は外向きに面する表面のいずれか一方又は両方に印刷されてもよい。追加のグラフィック要素26は、バックシート16の身体に面する側、(図示されていない)二次的トップシートの身体に面する側、吸収性コア構造体18の身体に面する側、又は吸収性コア構造体18の身体に面する側の一部に印刷されてもよい。いくつかの例では、グラフィック要素26は、トップシート14に、すなわち、トップシート14の着用者に面する表面又は外向きに面する表面のいずれか一方に印刷されてもよい。相対的に半透明又は透明であるトップシートの構成要素の材料に関して、インクが摩擦接触及び摩耗から保護されることとなるように、トップシートの外向きに面する(すなわち、内部の)表面にグラフィック要素を印刷することが所望され得、潜在的にグラフィック要素の視覚的品質が劣化する可能性がある。同様に、相対的に半透明又は透明であるバックシートの材料に関して、インクが摩擦接触及び摩耗から保護されることとなるように、着用者に面する(すなわち、内部の)(複数の)表面にグラフィック要素を印刷することが所望され得、潜在的にグラフィック要素の視覚的品質が劣化する可能性がある。
【0031】
グラフィック要素は、画像、デザイン、装飾、記号、英数字、又は可視情報コンテンツの任意の所望の組み合わせを具現化することができ、物品又は物品の層の構成要素上のパターン、配列、(複数の)サイズ、位置合わせ及び場所/配置の任意の所望の組み合わせを有してもよい。グラフィック要素は、任意の単色若しくは様々な色の任意の組み合わせ、又は様々な色の個々の要素で印刷されてもよい。
【0032】
グラフィック要素は、印刷表面の総表面積の任意の割合、すなわち、0%~100%を覆ってもよい。グラフィック要素は、画定されたグラフィック要素が印刷されて、前景の視覚的印象を付与しながら、全表面積の任意の割合の背景色で印刷することを含んでもよい。
【0033】
吸収性物品はまた、多くの場合、「ウィング」として特定される場合がある特徴部、二次的トップシート、流体獲得層、並びに/若しくは吸収性コア構造体18全体にわたる流体輸送及び分配の構成要素であるか、又はこれらを促進するように設計された他の層を含む、現在市販されている女性用衛生パッドに現れる場合が多い追加の特徴部を備えてもよい。同様に、生理用ナプキンのトップシート14は、当該技術分野において既知である様々な任意の特徴を有し得る。例えば、トップシート14は、流体の流れを導くように内部に形成された1つ以上のチャネルと、トップシート14を通る流体の移動を促進するためのトップシート14を通過する開口部と、トップシートに又はトップシートを通って印刷された視覚的なシグナルの形態のグラフィック要素26と、を有してもよい。視覚的なシグナルは、機能的効果及び審美的効果のためにトップシート又は下層に印刷されている。
【0034】
トップシート14は、織布材料及び不織布材料;孔あき成形熱可塑性フィルム、有孔プラスチックフィルム、及びハイドロフォーミングされた熱可塑性フィルムなどのポリマー材料;多孔質発泡体;網状発泡体;網状熱可塑性フィルム;及び熱可塑性スクリムなどの広範な材料から製造されてもよい。好適な織布及び不織布材料は、天然繊維(例えば、木材パルプ繊維、綿繊維若しくは他の植物繊維(セルロース))、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、若しくはポリエチレン繊維などのポリマー繊維)、又は天然繊維と合成繊維との組み合わせから構成され得る。いくつかの例では、トップシートは、疎水性繊維性材料で製造されて、又は親水性を付与するよう処理されて、トップシートを通る流体の移動を促進してもよい。トップシートが疎水性材料で製造される場合、トップシートの少なくとも1つ、例えば、着用者に面する表面又は外向きに面する表面は、流体がトップシートを通ってより迅速に移動するように親水性を付与するように処理されてもよい。これにより、身体排出物がトップシートを通って引き込まれ、吸収性コア構造体によって吸収されるのではなく、トップシートから流れ出る可能性が減少する。いくつかの例では、トップシートは、界面活性剤をトップシートに付与することによって親水性にされてもよい。トップシートを界面活性剤で処理する好適な方法は、界面活性剤を含有する溶液をトップシート材料に噴霧すること、又は材料を界面活性剤水溶液に浸漬することを含む。
【0035】
トップシートは、有孔成形フィルムで形成されてもよく、又は有孔成形フィルムを含んでもよい。有孔成形フィルムは、身体排出物を通過させるが、非吸収性であり、トップシートを通って戻り、着用者の皮膚を再度濡らす傾向を低減させるので、トップシートを成形するために所望され得る。したがって、身体と接触する成形フィルムの表面は乾いた状態に保たれ、これによって、身体の汚れが低減されて、着用者に更に快適な感触を与える。好適な成形フィルムは、米国特許第3,929,135号、同第4,324,246号、同第4,342,314号、同第4,463,045号、及び同第5,006,394号に記載されている。
【0036】
吸収性コア構造体18は、概ね、圧縮性、適合性、着用者の皮膚に対して非刺激性であり、体液を吸収及び保持することが可能な任意の吸収性部材を含んでもよい。吸収性コア構造体は、多種多様のサイズ及び形状(例えば、方形、砂時計形、「T」字形、非対称形など)で、しかも一般にエアフェルトと呼ばれる粉砕木材パルプのように、身に着けるタイプの使い捨て衣類及びその他の吸収性物品類に通常使用されている多種多様の液体吸収性材料類から製造することができる。その他の適当な吸収性材料の例としては、捲縮セルロース塊、コフォーム(coform)を含むメルトブローポリマー、化学的に堅固化、改質、若しくは架橋されたセルロース繊維、薄紙の包装紙及び薄紙積層体を含む薄紙、吸収性フォーム(例えば、高内相エマルション(HIPE)フォーム)、吸収性スポンジ、超吸収性ポリマー、吸収性ゲル化材料、又は任意の同等の材料又は材料の組み合わせが挙げられる。
【0037】
吸収性コア構造体18の構成及び構造は多様であってもよい(例えば、吸収性コア構造体は、変化するキャリパゾーン、親水性勾配、超吸収性勾配又はより低い平均密度及びより低い平均坪量の捕捉ゾーンを有してもよく、あるいは1つ以上の層又は構造を含んでもよい)。更に、吸収性コア構造体のサイズ及び吸収能も、乳児から成人までの範囲に及ぶ着用者に適応するように多様であってもよい。しかしながら、吸収性コア構造体の全吸収能は、吸収性物品の設計負荷及び意図される用途に適合したものでなければならない。
【0038】
吸収性コア構造体は、他の任意の構成要素を含んでもよい。1つのかかる任意の構成要素は、コアラップ、すなわち、典型的には不織布材料であるが必ずしもそうとは限らない、コアを部分的に又は全体的に取り囲む材料である。好適なコアラップ材料としては、セルロース、親水性に改質された不織布材料、穿孔フィルム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
バックシート16は、液体不透過性フィルムであってもよい。バックシートは、液体(例えば、体液)に対して通常の圧力及び/又は平衡圧力下で不透過性であってもよく、薄いポリマーフィルムから製造されてもよい。いくつかの例では、バックシートは、水蒸気が着用中に物品内から漏れ出ることを可能にするように蒸気透過性であるように形成されてもよく、着用者の快適性及び皮膚の健康を促進する。いくつかの例では、ポリエチレン微孔膜をバックシートを形成するために用いてもよい。好適なポリエチレン微孔膜は、三井東圧化学株式会社(名古屋、日本)(Mitsui Toatsu Chemicals,Inc.,Nagoya,Japan)によって製造され、PG-Pの商標名で市販されている。
【0040】
バックシートに好適な別の材料は、約0.012mm(0.50ミル)~約0.051mm(2.0ミル)の厚さを有し、例えばポリエチレン又はポリプロピレンを含む、液体不透過性熱可塑性フィルムであり得る。バックシートは、約5g/m2~約35g/m2の坪量を有するように製造され得る。更に、バックシートを形成するために、他の可撓性液体不透過性材料が使用されてもよい。本明細書における「可撓性」とは、適合性があり、着用者の身体全体の形状及び輪郭に容易に適応する材料を指す。
【0041】
いくつかの例では、バックシート16は、液体不透過性ポリマーフィルムのフィルム層16aとバックシート不織布層16bとの積層体から形成されてもよい。上述のように、ポリマーフィルムは蒸気透過性であるように製造されてもよい。フィルム層は、液体不透過性を付与することが所望され得る一方、不織布層は、バックシートに柔らかい布様の外観及び/又は触感を付与するように所望され得る。
【0042】
バックシートは、吸収性コア構造体の外向きに面する表面に隣接して位置付けられてもよく、吸収性コア構造体の外向きに面する表面に接合されてもよく、あるいは当該技術分野で既知の任意の好適な取り付けデバイスによってトップシートに接合されてもよい。例えば、バックシートは、接着剤の均一な連続層、接着剤のパターン層、又は接着剤の別個の線、螺旋、若しくは点の配列によって、吸収性コア構造体又は吸収性コア構造体の周縁周りのトップシートに固着されてもよい。例示的な接着剤としては、H.B.Fuller Company(St.Paul,Minn.,U.S.A.)によって製造され、HL-1358Jとして市販される接着剤が挙げられるが、これに限定されない。接着剤のフィラメントのオープンパターンネットワークを含む好適な取り付けデバイスの例は、米国特許第4,573,986号に開示されている。螺旋状パターンに渦を巻く接着剤のフィラメントのいくつかの線を含む別の好適な取り付けデバイスは、米国特許第3,911,173号、同第4,785,996号、及び同第4,842,666号に示される装置及び方法によって例示されている。あるいは、取り付けデバイスとしては、熱接合(熱圧着)、圧着、超音波接合、動的機械接合、若しくはその他の任意の好適な取り付けデバイス、又はこれらの取り付けデバイスの組み合わせを挙げることができる。
【0043】
グラフィック要素26は、以下に記載される水性有機顔料分散体を含む1つ以上のインク組成物を使用して、任意の構成要素の層の一方又は両方の表面に印刷されてもよい。
【0044】
ユーザーが、例えば、ハンドバッグ内で一つずつの製品又は小型の日用品を便利に携行することができる目的のために、包装材内に個別に包装された女性用衛生パッド及びタンポンなどの女性用衛生製品を提供することが一般的なやり方である。包装材は、そのような携行中の汚れ又は水分による汚染及び使用前のあらゆる取り扱いから製品を保護するのに役立つ。このような包装材は、いくつかの例では、ポリマーフィルム、ポリマー樹脂から紡糸された紡糸繊維の不織布ウェブ、又はかかるフィルムと不織布ウェブとの積層体から形成されてもよい。本明細書では、グラフィック要素は、以下に記載される水性有機顔料分散体を含む1つ以上のインク組成物を使用して、かかる包装材(又はその層)の任意の表面に印刷されてもよいことが更に想到される。したがって、本明細書で使用される用語「吸収性物品製品」は、任意のこのような包装材を含むと見なされる。
【0045】
水性有機顔料分散体
1つ以上のインク組成物はそれぞれ、ポリマー分散剤又はポリマーバインダーと関連する顔料着色剤粒子からなる顔料分散体を含んでもよい。
【0046】
(a)本開示の想到内のポリマー分散型顔料着色剤を単独で又は2つ以上の異なるポリマー分散型顔料着色剤の組み合わせで使用して、任意の所望の色又は色相を提供することができる。例えば、ポリマー分散型カーボンブラック顔料は、同じ水性顔料分散体又は水性インクジェットインク組成物中の異なるポリマー分散型着色有機顔料と組み合わせることができる。ポリマー分散型顔料着色剤の正確な選択は、所望される特定の用途、性能、色再現性、及び画像安定性に依拠することとなる。有用なポリマー分散型顔料着色剤の例は、開示内容が参照により本明細書に援用されている、米国特許第5,026,427号、同第5,141,556号、同第5,160,370号、及び同第5,169,436号に記載されている。
【0047】
有機ポリマーで分散され得る有用な顔料着色剤としては、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジスアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノン及びイソインドリン顔料、キナクリドン顔料、多環顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンタントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、二酸化チタン、酸化鉄、及びカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な有用な黄色、黒色、緑色、茶色、赤色、マゼンタ、シアン、青色、橙色、及び紫色顔料着色剤は、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第8,173,215号の第7段(48行)~第8段(5行)に記載されている。
【0048】
有用な顔料着色剤は、(上記で引用されたような)当該技術分野において周知である好適なポリマー分散剤を用いて、添加又は分散させることができる。その開示が参照により本明細書に援用されている、例えば、米国特許出願公開第2007/0043144号に記載されているように、代表的な有用な有機ポリマー分散剤は、アクリル酸若しくはメタクリル酸モノマーなどの少なくとも1種のアニオン性親水性モノマー、又はこれらの組み合わせ、及び、例えば、12個以上の炭素原子を有する脂肪族鎖を有する疎水性メタクリレート又はアクリレートモノマーから構成される少なくとも1つのモノマーから調製することができる。有用なモノマー繰り返し単位、モノマー量、及びMを含む有用な有機ポリマー分散剤の更なる詳細は、(上記の)米国特許第8,173,215号の第5段(45行)~第6段(31行)において提供されている。
【0049】
多くの有用な有機ポリマー分散剤は、500ダルトン以上100,000ダルトン未満であり、よりふさわしくは15,000ダルトン以下、又は10,000ダルトン以下の重量平均(M)分子量を有する上記の少なくとも1つのアニオン性親水性モノマーから形成されるアニオン性アクリルポリマーである。
【0050】
顔料着色剤用の1種以上の有機ポリマー分散剤は、水性媒体、選択された有機顔料、及び水性インクジェットインク組成物の他の成分に応じて当業者には容易に明らかとなると考えられる量で存在してもよい。
【0051】
ポリマー分散剤に加えて、非イオン性又はアニオン性界面活性剤が、当該技術分野において既知であるような顔料着色剤と共に存在してもよい。このタイプの代表的な材料としては、例えば、(上記の)米国特許第8,173,215号の第7段(15~23行)に記載されているようなドデシル硫酸ナトリウム又はオレイルメチルタウリン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
有用なポリマー分散型顔料着色剤のそれぞれの粒度は以下の通りである。
【0053】
様々なポリマー分散型顔料着色剤の粒度は、略球状顔料粒子のおおよその直径、又は非球状粒子のおおよその最大特性寸法を指す。より具体的には、実際には、粒子と同じ体積を有する球体の直径が求められる(すなわち、等価球径)。本開示による顔料着色剤のそれぞれの所望の中央粒子直径(又は50パーセンタイルの粒子直径)は、300nm未満、150nm未満、70nm未満、又は更には60nm未満であり得、その結果、粒子の体積の50%は、示された直径より小さい直径を有する粒子から構成される。加えて、本開示によるそれぞれのポリマー分散型顔料着色剤の全一次粒子の少なくとも95%は、500nm未満、300nm未満、150nm未満、又は更には110nm未満の粒子直径を有する。これは、分類された粒度分布である95パーセンタイルの粒子直径を指し、有機顔料粒子の体積の95%が、示された直径よりも小さい直径を有する粒子によって提供されている。粒度(又は粒子体積)は、従来の動的レーザー光散乱粒度分析計を使用して容易に測定することができる。ナノ粒子サイズを分析及び報告するための計測手法は、アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology、「NIST」)によって刊行された「Particle Size Characterization」(Special Publication 960-1,93-139(2001))において有用に記載されている。
【0054】
本開示の想到の範囲内の(b)組成物は、以下の構造(I):
HO-CH-CH-R
(I)
[式中、Rは、置換若しくは非置換フェニル基又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物からなるか又は1つ以上の化合物を含んでもよい。例えば、Rは、非置換フェニル基又は非置換フェノキシ基のいずれか一方であってもよい。構造(I)によって表される化合物の混合物もまた使用してもよい。
【0055】
したがって、2-フェノキシエタノール及び2-フェニルエタノールのいずれか一方又は両方を使用して、上記の利点のために本開示に従って利益を得ることができる。2-フェノキシエタノールは、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、及び1-ヒドロキシ-2-フェノキシエタンとしても既知であり、DOWANOL PhE,DOWANOL EPh、又はDOWANOL EPとして様々な商業的供給源から入手することができる。2-フェニルエタノールは、フェニルエタノール、2-フェニルエタン-1-オール、フェネチルアルコール、β-ヒドロキシエチルベンゼン、フェニルエチルアルコール、β-フェニルエタノール、及びベンジルカルビノールとしても既知であり、様々な商業的供給源から入手することができる。
【0056】
水及び任意の水混和性有機溶媒などの水性媒体は、水性インクジェットインク組成物を製造するための水性顔料分散体の貯蔵又は使用のための所望の粘度及び他の物理的特性を提供すると考えられる任意の望ましい量で存在してもよい。
【0057】
本開示による水性顔料分散体は、当該技術分野において一般的に使用される任意の方法によって調製することができ、典型的には、2つの工程、すなわち、(a)1つ以上の顔料着色剤の凝集体を一次粒子に破砕するための分散又は粉砕工程であって、一次粒子は、粒子系において、最小の特定可能な下位区分として定義される、工程と、(b)工程(a)由来の顔料着色剤分散体が水性媒体及び任意の他の添加剤の添加によって希釈される希釈工程と、を伴う。粉砕の詳細は、例えば、(上記の)米国特許第8,173,215号の第6段(58行)~第7段(23)に記載されている。
【0058】
水性インクジェットインク組成物
本開示による水性インクジェットインク組成物は、概ね、5センチポアズ(5mPa-sec)以下、又は1センチポアズ(1mPa-sec)以上3センチポアズ(3mPa-sec)以下の動的粘度を有してもよく、すべて、落球式粘度計、又は毛細管粘度計、及び既知の手順を使用して25℃で測定されている。
【0059】
水性インクジェットインク組成物はまた、典型的には、7.5以上11以下、よりふさわしくは8以上9以下のpHを有し得る。水性インクジェットインク組成物がニッケル有するハードウェア又はニッケルめっき装置の構成要素に使用される場合、2-又は5-メチル-1-H-ベンゾトリアゾールのナトリウム塩などの腐食防止剤を添加してもよく、pHを10以上11以下に調整してもよい。インクジェット印刷のために、シリコンから作られた印刷ヘッドが使用される場合、水性インクジェットインク組成物のpHは、7.5以上10以下又は8以上9.5以下に調整されてもよい。
【0060】
本開示による水性インクジェットインク組成物は、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、0.9重量%以上6重量%以下、又は1.5重量%以上5重量%以下の総量で、1種以上の(a)ポリマー分散型顔料着色剤を含んでもよい。有用なポリマー分散型顔料着色剤及び有用な粒度パラメータは上記で説明されている。所望の場合、2つ以上のポリマー分散型顔料着色剤を使用して、得られるインクジェット印刷画像に所望の色相又は色を提供することができる。
【0061】
構造(I)で表される1つ以上の化合物からなる上記の(b)組成物は、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、0.5重量%以上2重量%以下、又は更には1重量%以上1.8重量%以下の総量で、水性インクジェットインク組成物に存在する。
【0062】
本開示によって想到される水性インクジェットインク組成物は、水溶性保湿剤、共溶媒、並びに水溶性保湿剤及び共溶媒の両方から選択される(c)1つ以上の化合物を含んでもよい。共溶媒は、標準的な落球式粘度計、又は毛細管粘度計、又は回転プレート粘度計を使用して25℃で測定した場合、概ね、1センチポアズ(1mPa-sec)超の粘度を有する水溶性又は水混和性有機溶媒であってもよく、40センチポアズ(40mPa-sec)を超えてもよい。本明細書で特定される他の要件と適合可能であるインクジェットの技術分野において既知の任意の水溶性保湿剤又は共溶媒を使用してもよい。個別の保湿剤を用いてもよいが、それぞれが有用な特性を付与する2種以上の保湿剤の混合物が使用されてもよい。代表的な保湿剤は、その開示が参照により本明細書に援用されている、例えば、米国特許第9,828,513号に記載されており、(1)モノアルコール、(2)多価アルコール、(3)多価アルコール由来の低級モノ-アルキルエーテル及びジ-アルキルエーテル、(4)尿素、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどの窒素含有化合物、並びに(5)2,2’-チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、及びテトラメチレンスルホンなどの化合物の部類を含む。有用な共溶媒もまた、このような化合物の部類に含まれる。
【0063】
1つ以上の(c)保湿剤、共溶媒、又は保湿剤及び共溶媒の両方は、すべて水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、20重量%未満、又は少なくとも0.5重量%、又は1重量%以上15重量%以下、又は3重量%以上10重量%以下の量で存在してもよい。1種以上の(c)保湿剤、共溶媒、又は保湿剤及び共溶媒の両方の非常に好ましい濃度は、4重量%以上8重量%以下である。
【0064】
1つ以上の(d)補足の抗菌剤もまた、水性インクジェットインク組成物中に存在してもよく、そのような材料は、上記の(b)組成物とは異なり、構造(I)によって表される。代表的な材料としては、ヨードプロピニルブチルカルバメート(CAS55406-53-6)、ピロクトンオラミン(CAS68890-66-4)、2,4-ジクロロベンジルアルコール(CAS1777-82-8)、ホウ酸(CAS10043-35-3)、ホウ酸由来の一価及び二価金属イオン塩、並びにこれらの材料の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の補足の抗菌剤の有用な量は、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、0.01重量%以上3重量%以下である。
【0065】
本開示によって想到される水性インクジェットインク組成物は、1つ以上のアニオン性ポリウレタンを更に含んでもよく、それぞれは、少なくとも50、又は60以上150以下、又は更には55以上90以下の酸価を有し、酸性ポリマーは、以下により詳細に記載される。
【0066】
あるいは又はアニオン性ポリウレタンに加えて、水性インクジェットインク組成物は、1つ以上のアニオン性非芳香族アクリルポリマー又はアニオン性スチレン-アクリルポリマーを含んでもよく、それぞれは、少なくとも50、又は120以上240以下、又は更には160以上220以下の酸価を有し、酸性ポリマーは、以下により詳細に記載される。所望であれば、かかる材料のうちの2つ以上の混合物が使用されてもよい。
【0067】
両方の種類のアニオン性ポリマーの代表的な例は、その開示が参照により本明細書に援用されている、例えば、米国特許第8,430,492号及び(上述の)同第9,783,553号に記載されている。特に有用なアニオン性ポリウレタンは、ポリエーテルジオール単位を含有し、ポリエーテルポリウレタンとして同定され得る。このようなアニオン性ポリエーテルポリウレタンは、概ね、10,000ダルトン以上30,000ダルトン以下、又は15,000ダルトン以上25,000ダルトン以下の分子量(M)を有し得る。例えば、特に有用なポリエーテルポリウレタンは、(上記の)米国特許第9,783,553号における構造(I)によって独立して表される。
【0068】
有用な水溶性又は水分散性アニオン性ポリエーテルポリウレタンは、その開示が参照により本明細書に援用されている、例えば、米国特許出願公開第2008/0207811号[0045]~[0049]に記載されているように調製することができる。アニオン性ポリエーテルポリウレタン中の酸性基は、アルカリ金属水酸化物又はジメチルエタノールアミンなどの有機アミンなどの一価の無機塩基を使用して、少なくとも部分的にかつ最大100%まで中和(塩に変換)され得る。
【0069】
本開示の目的のために想到されるように有用であり得るアニオン性非芳香族アクリルポリマー及びアニオン性スチレン-アクリルポリマーの例もまた、(上記の)米国特許出願公開第2008/207811号[0061]に記載されている。有用なアニオン性スチレン-アクリルポリマーの例としては、商標JONCRYL(BASF Corp.)、(以前はMead Westvaco Co.から入手可能であった)TRUDOT、及びVANCRYL(Allnex USA,Inc.)で市販されているものを挙げることができる。
【0070】
このようなアニオン性ポリマーの有用な量は、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、15重量%以下又は10重量%以下であってもよい。アニオン性ポリマーの特に有用な量の範囲は、顔料分散剤として使用されるアニオン性非芳香族アクリルポリマー及びアニオン性スチレン-アクリルポリマーを含んで、1重量%以上5重量%以下である。
【0071】
加えて、変性ポリシロキサンが水性インクジェットインク組成物中に存在してもよい。このような材料の例としては、商標SILWET(CL Witco)及びBYK348及び381などのBYK(Byk Chemie)、並びにDow Corning DC67、DC57、DC28、DC500W、及びDC51で市販され得るエトキシ化又はプロポキシ化シリコーン系「界面活性剤」が挙げられる。SURFYNOL440及び465アルキンジオール界面活性剤を含むSURFYNOL界面活性剤(Evonik Corp.)として市販されている界面活性剤などのアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない、非シリコーン界面活性剤もまた使用されてもよい。このような材料の有用な量は、当業者には容易に明らかである。選択された界面活性剤の特に有用な量は、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第8,455,570号に記載されている。
【0072】
水性インクジェットインク組成物中に1種以上の「促進剤」を含んで、(b)組成物中の構造(I)によって表される化合物の有効性を潜在的に強化することが有用であり得る。このような材料は、概ね、それぞれが、7個以上12個以下の炭素原子を有し、特に7個以上10個以下の炭素原子を有するアルカンジオールである。単独で又は組み合わせて促進剤として使用され得る代表的な有用な化合物としては、1,7-ヘプタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、及び当業者には容易に明らかであろうその他が挙げられるが、これらに限定されない。1,2-オクタンジオールは、この点に関して特に有用である。
【0073】
1種以上の促進剤が、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、1.5重量%以下、又は1.25重量%以下の総量で水性インクジェットインク組成物中に存在してもよい。最小量は、少なくとも0.3重量%であってよい。
【0074】
無色蛍光着色剤(染料又は顔料)もまた、当業者に容易に明らかな量で水性インクジェットインク組成物中に存在してもよく、かかる化合物の例は、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許出願公開第2014/231674号に記載されている。
【0075】
当業者には容易に明らかであろう量で水性インクジェットインク組成物中に存在し得る他の添加剤としては、限定するものではないが、TERGITOL15-S及びTMNシリーズの非イオン性界面活性剤、BRIJシリーズの非イオン性界面活性剤;TRITONシリーズの非イオン性界面活性剤、ZONYLフルオロ界面活性剤;PLURONIC非イオン性界面活性剤;TETRONIC非イオン性界面活性剤、SILWET非イオン性界面活性剤、及びSURFYNOL非イオン性界面活性剤、並びに(上記の)米国特許第8,173,215号の第10段64行~第11段14行において言及された様々なアニオン性及びカチオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない、組成物の表面張力を調節するための上述の界面活性剤以外の界面活性剤;増粘剤、導電性増強剤;乾燥剤;耐水堅牢剤;粘度変性剤;pH緩衝剤;防泡剤;湿潤剤;腐食防止剤;防泡剤及び消泡剤(SURFYNOL DF-110L、PC、MD-20及びDF-70など);紫外線吸収剤;酸化防止剤;並びに商標TINUVIN(BASF Corp.)及びIRGANOX(BASF Corp.)で入手可能な光安定剤、並びに(上記の)米国特許第8,455,570号の第17段(11~36行)に記載されている他の添加剤が挙げられる。このような材料の有用な量は、通常の実験を使用している当業者には容易に明らかであろう。
【0076】
水は、概ね、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、少なくとも75重量%又は少なくとも80重量%、かつ概ね90重量%未満などの好適な量で、主な水性媒体としてそれぞれの水性インクジェットインク中に存在する。
【0077】
本明細書に記載のそれぞれの水性インクジェットインク組成物は、好適なポリマー分散型顔料着色剤を水中に分散させ、好適な量の、構造(I)によって表される(b)化合物、(c)保湿剤又は共溶媒、及び任意の補助剤、促進剤、補足の抗菌剤、及び追加の材料などの他の記載された材料において混合することによって調製され得る。
【0078】
インクセット
インクセットは、本開示によって想到され、それぞれ、所望の色又は色相を提供するように、少なくとも1つの(上述の)可視ポリマー分散型顔料着色剤を含む、2つ以上の水性インクジェットインク組成物を含んでもよい。例えば、インクセットは、橙色、赤色、紫色、緑色、シアン、黄色、黒色、マゼンタ、茶色、ピンク色、及び青色の多様な色合いなどの様々な色相又は「色」を有し得る有用な水性インクジェットインク組成物を含んでもよく、それ故に、所望の色相を提供するのに好適な1つ以上の好適なポリマー分散型顔料着色剤を含有してもよい。例えば、既知のa及びbCIELAB値を使用して定義されるような任意の所望の色相は、好適なポリマー分散型顔料着色剤の適切な使用及び配合によって提供され得る。水性の「白色」インクジェットインク組成物はまた、特定の状況において有用であり得、インクセットに含まれてもよい。多種多様な有機及び無機顔料を、上述のように、かかる水性インクジェットインク組成物において個別に又は組み合わせて使用することができ、有機及び無機顔料は、上述のような所望の顔料粒度を有してもよい。ポリマー分散型顔料着色剤は、本開示による水性インクジェットインク組成物に関して上述したような好適な量で存在してもよい。
【0079】
ポリマー分散型顔料着色剤に加えて、インクセット中の水性カラーインクジェットインク組成物のうちの1つ以上は、例えば、(上記の)米国特許第8,455,570号の第12段(4~55行)に記載されているような、当該技術分野において周知である1つ以上の水可溶性染料を含んでもよい。
【0080】
インクセット中の水性インクジェットインク組成物は、上述したものと同じであるか又は異なって配合されてもよい。
【0081】
インクセット中のそれぞれの水性カラーインクジェットインク組成物は、好適な塩基及び緩衝系を使用して、上述のように、7.5以上11以下、又は8以上10以下の所望のpHを有し得る。
【0082】
加えて、それぞれの水性カラーインクジェットインク組成物は、25℃で測定したとき、1センチポアズ(1mPa-sec)以上5センチポアズ(5mPa-sec)未満の好適な動的粘度を有し得る。
【0083】
インクセット中の水性インクジェットインク組成物のそれぞれは、独立して、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、0.9重量%以上6重量%以下の量の、(a)(上述のような)ポリマー分散型顔料着色剤と、(b)上記のように、構造(I)によって表される化合物からなる組成物と、(c)少なくとも1種の水溶性保湿剤、共溶媒、又は水溶性保湿剤と共溶媒との組み合わせと、を含み((同一の又は異なるこれらを有し)、すべては、上述した通りであり、上述した量で含まれる。
【0084】
例えば、本開示によるインクセットは、以下の特定の種類の水性インクジェットインク組成物のうちの2つ以上を有してもよい。
(i)ポリマー分散型シアン顔料着色剤を含む水性インクジェットインク組成物、
(ii)ポリマー分散型マゼンタ顔料着色剤を含む水性インクジェットインク組成物、 (iii)ポリマー分散型黄色顔料着色剤を含む水性インクジェットインク組成物、
(iv)ポリマー分散型黒色顔料着色剤を含む水性インクジェットインク組成物。
【0085】
多くのインクセットにおいて、4つのすべての(i)~(iv)の水性インクジェットインク組成物が存在し得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示によるインクセットは、その開示が参照により本明細書に援用されている、例えば、(上述の)米国特許第8,764,161号に記載されるような、粒子非含有無色インクジェット組成物(又は水性の粒子非含有流体)を更に含んでもよい。このような組成物は、当該技術分野において「流体」として既知であり得、印刷ヘッドのメンテナンス、保管、洗い流し若しくは洗浄、又は補充用流体としての使用などの様々な目的又は機能を有してもよい。このような流体の詳細は、その開示が参照により本明細書に援用されている引用された特許に提供されている。「粒子非含有」とは、かかる組成物が、任意の種類の粒子若しくは顔料、無色の粒子若しくは顔料、又は着色粒子若しくは顔料を意図的に含有しないことを意味する。有用なこのような流体の更なる詳細は、個々の水性の粒子非含有「流体セット」の考察において以下に提供される。
【0087】
このような粒子非含有無色インクジェット組成物はまた、上記の構造(I)によって表される化合物からなる(b)組成物を含んでもよく、化合物は、ポリマー分散型顔料着色剤を含有するインクセット中の2つ以上の水性インクジェットインク組成物において使用される化合物と同じであっても異なっていてもよい。例えば、このような粒子非含有無色インクジェット組成物は、粒子非含有無色インクジェット組成物の総重量に対して、0.5重量%以上2重量%以下の量で、[Rが構造(I)において2-フェニル又は2-フェノキシである場合]2-フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、又は2-フェノキシエタノール及び2-フェニルエタノールの両方を含有し得る。
【0088】
インクジェット印刷画像の耐久性、光沢、及び他の特性は、本開示による水性の粒子非含有インクジェット組成物と見なされ得る無色ポリマーオーバーコート組成物の適用によって改善され得る。かかる組成物の例は、米国特許第7,219,989号に提供されている。他に、CIJ印刷に関連するインクジェット印刷の速度及び処理量を高速化するために、かかるオーバーコート組成物は、「着色」水性インクジェットインク組成物を分配する液滴形成ノズルの1つ以上の印刷ヘッドと並んで追随するCIJ印刷ヘッドを使用して適用され得る。このような適用についての更なる詳細は、(上記の)米国特許第8,173,215号の第17段(16~48行)に提供されている。
【0089】
インクセットの一部であり得る追加の水性の粒子非含有インクジェット組成物(又はインク)としては、その開示が参照により本明細書に援用されている、無色又は着色コーティングを提供するようにインクジェット印刷され得る米国特許出願公開第2018/0051184号に記載されているものが挙げられる。このような組成物は、上述のような少なくとも1つ以上のアニオン性ポリエーテルポリウレタン又はアニオン性アクリル又はスチレン-アクリルポリマー、並びに発泡傾向を低減するための好適な防泡剤又は消泡剤を含んでもよい。このような水性の粒子非含有インクジェット組成物は、上述のように構造(I)によって定義される化合物を有する(b)組成物を更に含んでもよい。
【0090】
着色であるか又は無色であるか否かに関わらず、インクセット中に存在するそれぞれの成分又は組成物は、当業者には容易に明らかとなるであろう様々な他の添加剤(消泡剤、界面活性剤、導電性増強剤、乾燥剤、耐水堅牢剤、キレート剤、増粘剤、コゲーション防止剤、安定剤、及び緩衝剤など)を含有してもよい。
【0091】
水性の粒子非含有流体
水性の粒子非含有流体は、本開示によって想到される様々な目的のために設計及び使用されてもよい。これらの水性の粒子非含有流体のそれぞれは、概ね独立して、例えば、落球式粘度計、又は毛細管粘度計、及び標準的な手順を使用して測定されたとき、25℃で5センチポアズ(5mPa-sec)以下の動的粘度を有する。これらの水性の粒子非含有流体のそれぞれは、無色であるか否かにかかわらず、意図的に粒子を含まず、以下に記載されるように、インクジェット印刷方法において様々な目的又は機能のために使用され得る。
【0092】
同じ又は異なる目的を有するこのような水性の粒子非含有流体のうちの2種以上は、所望であれば、商用化のために「流体セット」に組み込まれてもよい。あるいは、水性の粒子非含有流体のうちの1種以上が、上記のインクセット内に含まれてもよい。
【0093】
それぞれの水性の粒子非含有流体は、独立して、上記の水性インクジェットインク組成物と大まかに類似したpH、すなわち、5以上11以下のpHを有する。pHは、(上記の)米国特許第8,764,161号の第11段(58行)~第12段(26行)の教示を用いて、それぞれの水性の粒子非含有流体について管理されてもよい。いくつかの実施形態では、pHは、10以上11以下であり、以下に記載されるように、1種以上の塩基の存在によって管理されてもよい。
【0094】
本開示による水性の粒子非含有流体は、独立して、上記に定義した構造(I)によって表される1つ以上の化合物からなる(b)組成物から本質的になってもよい。流体セット中の個々の水性の粒子非含有流体は、同じ又は異なる(b)組成物を有してもよい。(b)組成物中の1つ以上の化合物、例えば、Rが2-フェニル又は2-フェノキシである化合物は、水性の粒子非含有流体の総重量に対して、0.5重量%以上2重量%以下の量で水性の粒子非含有流体中に存在してもよい。
【0095】
特定の実施形態では、水性の粒子非含有流体は、これらの(b)組成物以外の異なる一般組成を有してもよく、2つ以上の異なる印刷サービス機能に好適である。例えば、「補充用」の水性の粒子非含有流体を使用して、インクタンク内の水性インクジェットインク組成物から蒸発した溶媒を回復させ、その組成物を以前の着色剤濃度に戻すことができる。このような水性の粒子非含有流体は、概ね、上記の(b)組成物のみから本質的になる。しかしながら、このような水性の粒子非含有流体は、以下により詳細に記載されるように、保湿剤、共溶媒、補足の抗菌剤、界面活性剤、促進剤、又はこれらの任意の組み合わせを更に含むことが可能である。例えば、このような水性の粒子非含有流体はまた、望ましくは、インクリサイクル中に蒸発して失われる任意の揮発性有機溶媒を含有してもよく、あるいは二酸化炭素取り込みから生じる炭酸形成によるpH変動を軽減するための有機弱塩基(例えば、アルカノールアミン)を含有してもよい。インクタンク内のインクの相対濃度を判定する連続インクジェットプリンタ流体システムの方法は、インクのイオン導電率(又は代替的にその抵抗率)を測定するためであるため、反復的な補充の添加による蓄積によって、回復されたインク流体の特性及びイオンインベントリを物質的に変更することは望ましくない。したがって、例えば、有機溶媒、保湿剤、pH及びイオン導電率の調整添加剤、高分子化合物、界面活性剤、並びに防泡剤の、補充用の水性の粒子非含有流体含有量を最小限に抑えることが望ましい。
【0096】
「メンテナンス用」の水性の粒子非含有流体、印刷ヘッドクリーナー及び貯蔵流体を使用して、ノズルプレートのノズル上及びその周囲に形成され、インクジェット真直度及びインクジェット安定性を妨げる乾燥インク堆積物を再溶解、再分散、又は可溶化することができる。次いで、「メンテナンス用」の水性の粒子非含有流体を印刷ヘッドのインクチャネル及び外面をパージするために使用して、インクを洗い流してもよい。水性の粒子非含有流体はまた、長期間の保管後の効率的な始動のために湿潤部品を維持するのに好適であるが、洗い流し、洗浄、及び保管の様々な印刷ヘッド及び流体システムのメンテナンス機能は、所望に応じて、特殊化された個々の水性の粒子非含有流体によって達成されてもよい。
【0097】
本開示による(b)組成物、印刷ヘッドクリーナー、及び水性の粒子非含有流体を貯蔵することに加えて、望ましくは、乾燥した水性インクジェットインク組成物の堆積物中の乾燥した顔料粒子を浸透及び溶媒和させる際の流体ビヒクル(水)の有効性を改善する有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、任意選択の添加剤を含有してもよく、添加剤には可溶化剤、共溶媒、粘度調整剤、塩基、酸、pH緩衝剤、キレート剤、分散剤、水溶性又は水分散性ポリマー、腐食防止剤、粘度変性剤、浸透剤、湿潤剤、防泡剤、及び消泡剤が挙げられるが、これらに限定されない。乾燥した水性インクジェットインク組成物に対して効果的な溶媒は、当該技術分野において浸透剤としても知られている動的表面張力低減共溶媒の部類から選択されてもよく、動的表面張力低減極性共溶媒剤はまた、機能性表面張力改質剤(すなわち、低分子量の揮発性溶媒であり、流体表面張力を低減し、自己凝集が可能な両親媒性組成物を有する揮発性溶媒である、「ソルボ界面活性剤」と適切に称される)と考えれる。モル分率及び質量分率に基づいて、このようなソルボ溶媒は、平衡表面張力を低減するための従来の界面活性剤よりも効果の少ない表面改質剤である。乾燥した水性インクジェットインク組成物の除去に使用されるソルボ界面活性剤は、望ましくは、非対称多価アルコール又は多価アルコールから誘導されるモノアルキルエーテルを含む。多価アルコールに由来する低級(C~C)モノアルキルエーテル及び誘導体の具体例としては、すべてDOWANOL、CELLUSOLVE及びCARBITOLシリーズの化合物としてDow Chemical Co.から供給されている中でも、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。このようなソルボ界面活性剤は、単独で又は組み合わせて、水性の粒子非含有流体の総重量に対して、0.1重量%以上20重量%以下の量で、又は更には3重量%以上6重量%以下の量で使用されてもよい。
【0098】
流体pHの上昇は、乾燥した水性インクジェットインク組成物の除去に有益であり得、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、N-メチルエタノールアミン、N-ベンジル-N-メチルエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N,N-ジメチル-2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、及びトリエタノールアミンを含む、ヒドロキシル基で置換された脂肪族アミン(例えば、アルカノールアミン)などの有機塩基を用いて印刷ヘッドクリーナーの水性の粒子非含有pHを任意選択で上昇させる。高pHの水性の粒子非含有流体は、10以上11以下のpHを有してもよい。
【0099】
汚染された印刷ヘッド部分の湿潤は、良好な洗浄のために重要である。十分なソルボ界面活性剤が使用される場合、追加の動的又は静的表面張力調整剤は必要ない場合がある。これ以外の場合には、界面活性剤が含まれてもよい。これらのタイプの代表的な化合物は、その開示が参照により本明細書に援用されている(上記の)米国特許第8,764,161号の第12段(27~62行)に記載されている。アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性であってもよい1種以上の界面活性剤は、水性の粒子非含有流体の総重量に対して、0.01重量%以上10重量%以下の量で、水性の粒子非含有流体中に存在してもよい。大きい表面年齢での表面張力を制御するのに役立つ任意の薬剤を有益に使用してもよいが、界面活性剤は、望ましくは、約1,000ダルトン未満の重量正規化分子量を有する。荷電界面活性剤は、結合した質量を効果的に増加させる水和水の凝集に起因して水性流体中でより遅い拡散を有してもよいが、有用な非イオン性界面活性剤は、望ましくは、350ダルトン超、400ダルトン超、又は更には500ダルトン超の分子量を有し、静的表面張力又は平衡表面張力の明確な制御を可能にするようにバルクインク中での緩慢な拡散を確実にする。好適な非イオン性界面活性剤の例には、直鎖又は第二級アルコールエトキシレート(Dow Chemical Companyから入手可能なTERGITOL 15-S及びTERGITOL TMNシリーズの化合物及びCroda International Plc.製のBRIJシリーズの化合物など)、エトキシ化アルキルフェノール(Dow Chemical Company製のTRITONシリーズの化合物など)、フルオロ界面活性剤(DuPont製のZONYL化合物、3M製のFLUORAD化合物など)、脂肪酸エトキシレート、脂肪アミドエトキシレート、エトキシ化及びプロポキシ化ブロックコポリマー(BASF Corp.製のPLURONICシリーズ及びTETRONICシリーズの化合物など、エトキシ化及びプロポキシ化シリコーン系界面活性剤(Momentive製のSILWETシリーズの化合物など)、アルキルポリグリコシド(BASF Corp.製のGLUCOPON化合物など)及びアセチレンジオールポリエチレンオキシド界面活性剤(Evonik Corp.製のSURFYNOLファミリーの化合物など)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー界面活性剤は、ポリマー界面活性剤の凝集傾向にある程度依存して、水溶性又は水分散性であってもよい。顔料を分散させ、乾燥した水性インクジェットインク化合物を再分散させるのに好適な有用な界面活性剤ブレンドは、ZETASPERSE1600(Evonik Corp.)である。
【0100】
加えて、スチレン-アクリルポリマーは、印刷ヘッドクリーナー及び貯蔵流体に使用されてもよい。水溶性又は水分散性高分子成分は、顔料着色剤のためのポリマー分散剤として使用するための上記のポリマー、又は水性インクジェットインク組成物に組み込まれたアニオン性ポリマーと同じであるか又は類似してもよい。このような材料は、インクジェット印刷画像の物理的耐久性を改善するために、又は、ギアポンプを介して行われる再循環濾過に対するコロイド安定性などの組成物の他の特性を改善するために、水性インクジェットインク組成物中に存在する。例えば、このような水溶性又は水分散性高分子成分は、対応するエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導される親水性及び疎水性の繰り返し単位の両方を有するランダムコポリマーであってもよい。これらは、主にスチレンモノマー、及び(メタ)アクリル酸、又は(メタ)アクリレートエステルモノマーから誘導される、「アクリル」及び「スチレン-アクリル」であってもよい。いくつかの有用な水溶性又は水分散性高分子成分は、様々なモノマー及び(上記の)米国特許第8,764,161号の第7段(24行)~第8段(55行)に提供される教示から誘導されてもよい。他の有用な(3)水溶性又は水分散性高分子化合物は、例えば、(上記の)米国特許第8,764,161号の第10段(24~46行)に記載されているような、ポリ(エチレンオキシド)セグメント及び水分散性ポリウレタンを有する水溶性ポリマーであってもよい。所望であれば、これらの材料の同じ又は異なる部類のうちの2種以上の混合物を使用してもよい。
【0101】
1種以上の水溶性又は水分散性高分子成分は、それぞれの水性の粒子非含有流体中に、独立して、すべて水性の粒子非含有流体の総重量に対して、20重量%以下、若しくは0.2重量%以上10重量%以下、若しくは更には0.5重量%以上8重量%以下の量で、又はよりふさわしくは2重量%以上5重量%以下の量で存在してもよい。
【0102】
印刷ヘッド洗浄及び保管サービスに使用される水性の粒子非含有流体は、印刷が行われていない長時間の後にインクジェット印刷の開始を容易にするために、保湿剤、共溶媒、又はその両方を含有することが望ましい。インクジェット技術において既知であり、本明細書に記載される他の要件と適合可能な任意の水溶性保湿剤又は共溶媒を用いてもよい。水溶性とは、使用される保湿剤(複数種可)又は共溶媒(複数種可)と水との混合物が、十分に均質であり、自発相分離を受けないことを意味する。単一の保湿剤又は共溶媒を使用してもよいが、有用な水性の粒子非含有流体組成物は、2種、3種、又はそれ以上の保湿剤と共溶媒との混合物を使用してもよく、これらのそれぞれは有用な特性を付与する。水性インク組成物に使用される保湿剤及び共溶媒の代表的な例としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール、(2)エチレングリコール、ジ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)、テトラ(エチレングリコール)、プロピレングリコール、ジ(プロピレングリコール)、平均分子量が200~約5000ダルトンの範囲のポリ(エチレングリコール)(特にポリ(エチレングリコール)-400(約400の平均M)本明細書では、便宜上PEG-400と称される)、200~約5000ダルトンの範囲の平均分子量を有するポリプロピレングリコール(特に、ポリ(プロピレングリコール)-425(約425の平均M))、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2,4-ブタントリオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、グリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-プロパンジオール、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-プロパンジオール、糖類及び糖アルコール及びチオグリコールなどの多価アルコール、(3)ジグリセロール、ポリグリセロール、グリセロールエトキシド、グリセロールプロポキシド、グリセリス、アルキル化及びアセチル化グリセリス、ソルビトール又はフルクトースなどの糖類、ペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールエトキシド、及びペンタエリトリトールプロポキシド並びにこれらのアルキル化及びアセチル化誘導体などのポリ酸素化ポリオール及びこれらの誘導体が挙げられる。水性の粒子非含有流体の乾燥を遅延させ、水性インクジェットインク組成物の再分散を助けるための保湿剤として主に働く特に望ましい含有成分としては、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、関連するポリオール、及びこれらの多価アルコール誘導体が挙げられ、これらが所望される。トリエチレングリコールは、特に有用である。流体又はインクの保湿剤及び共溶媒の総濃度は、保湿剤又は混和性極性有機共溶媒、DST改質共溶媒(ソルボ界面活性剤)、及び任意の他の共溶媒含有成分の個々の寄与の合計であり、任意の他の共溶媒含有成分は、水性の粒子非含有流体又はインク配合物の合計の間に直接又は偶然添加された保湿剤又は有機共溶媒を含んでもよい(例えば、補足含有成分としての市販の殺生物剤調製物に関連する、又は、米国特許出願公開第2005/0075415号(Harz et al.)に記載されているような、ボトルキャップの周囲に形成される乾燥顔料ケーキのいわゆる「塗料フレーク」を防止するために存在し得る市販の顔料分散体に関連する、保湿剤又は共溶媒を含んでもよい。1種以上の(c)保湿剤、共溶媒、又は保湿剤及び共溶媒の両方は、水性の粒子非含有流体の総重量に対して、20重量%未満、又は少なくとも0.5重量%、又は1重量%以上15重量%以下、又は3重量%以上10重量%以下の量で水性の粒子非含有流体中に存在してもよい。より望ましくは、保湿剤及び共溶媒の総濃度は、10重量%以下である。
【0103】
それぞれの水性の粒子非含有流体は、(b)組成物中の1つ以上の化合物のための1種以上の促進剤を更に含有して、構造(I)で表される化合物の有効性を潜在的に高めてもよい。上述したように、このような促進剤は、概ね、それぞれが7個以上12個以下の炭素原子を有する、特に7個以上10個以下の炭素原子をそれぞれ有するアルカンジオールである。単独で又は組み合わせて促進剤として使用してもよい代表的な有用な化合物は上述されている。1,2-オクタンジオールは、この点に関して促進剤として特に有用である。
【0104】
1種以上の促進剤は、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、1.5重量%以下又は1.25重量%以下の総量で、それぞれの水性の粒子非含有流体中に存在してもよい。最小量は、少なくとも0.3重量%であってよい。
【0105】
1種以上の(d)補足の抗菌化合物はまた、流体セット中のそれぞれの水性の粒子非含有流体中に独立して存在してもよく、このような材料は、上記の(b)組成物とは異なる。代表的な材料としては、ヨードプロピニルブチルカルバメート(CAS55406-53-6)、ピロクトンオラミン(CAS68890-66-4)、2,4-ジクロロベンジルアルコール(CAS1777-82-8)、ホウ酸(CAS10043-35-3)、ホウ酸由来の一価及び二価金属イオン塩、並びにこれらの材料の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。有用な量の1種以上の補足の抗菌剤は、水性の粒子非含有流体の総重量に対して、0.01重量%以上3重量%以下である。
【0106】
インクジェット印刷の方法
インクジェット印刷に有用な様々な方法及び装置に関する詳細は、多数の刊行物に提供されているが、最もよく理解されるように、当該技術分野のいずれも、上記に定義された構造(I)によって表される化合物を有する(b)組成物、又は本発明により達成される利点を使用して実施されるこのような方法を記載していない。
【0107】
本開示による方法は、まず、好適な印刷用基材を提供することによって実行され得る。任意の個々の基材は、好適な機器及びプロセスを使用して水性インクジェットインク組成物がインク噴射されてもよい「印刷可能」領域を有する少なくとも1つの表面を有するものとして理解されるであろう。
【0108】
好適な基材は、典型的には、2つの対向する表面又は支持側面を有して本質的に平面であり、面の一方又は両方は、同じ又は異なる画像を提供するようにインクジェット印刷されてもよい。基材は、単一の「層」若しくは積層を有してもよく、又は同じ若しくは異なる材料から構成される複数の層若しくは積層から構成されてもよい。いくつかの例では、基材は、ポリマーコーティングなどの1種以上の他の種類の材料でコーティング又は積層されたセルロース系材料などの主な材料を有する。
【0109】
インクジェット印刷可能基材は、本明細書に記載されるような吸収性物品の構成要素を形成するために使用される様々なポリマーフィルム、不織布、及び吸収性フォームを含むことができる。基材は、透明、半透明、又は不透明であってもよく、硬質若しくは半硬質シート、切断若しくは連続フィルム若しくはウェブ、又は巻回ロールの形態でインクジェット印刷するために提供されてもよい。
【0110】
インクジェット印刷カラー画像の耐久性及び他の特性は、得られる画像の品質を向上させるために組成物で前処理された基材を使用することによって改善され得る。この前処理は、典型的には、インクジェット印刷装置(連続インクジェット印刷装置など)に基材を組み込む前に行われるが、場合によっては、基材は、1種以上の水性インクジェットインク組成物でインクジェット印刷する前に装置内で前処理されてもよい。基材の対向する表面(平面側)の一方又は両方は、前処理されてもよく、あるいは一方の支持面が前処理されて、対向する支持面は未処理のままであってもよい。
【0111】
例えば、基材は、限定するものではないが、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、バリウムカチオン、亜鉛カチオン、及びアルミニウムカチオンを含む1種以上の多価カチオンなどの水溶性多価金属イオン塩を含む前処理組成物で前処理されてもよく、カルシウムカチオン及びマグネシウムカチオンが特に有用である。有用な塩を当業者によって決定することができるので、このようなカチオンを提供するための有用な多価金属カチオン塩の例は、当該技術分野において既知である。このような前処理手順及び組成物の詳細は、例えば、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第9,067,448号に提供されている。
【0112】
[上記のように、必要な粘度を有し、(a)ポリマー分散型顔料着色剤、構造(I)の化合物からなる(b)組成物、及び(c)化合物をすべて有する]本開示による水性インクジェットインク組成物は、基材の少なくとも1つの表面に制御された様式で好適な印刷ヘッドからインクジェット印刷されて、基材の当該表面にインクジェット印刷画像を提供することができる。
【0113】
本開示による水性インクジェットインク組成物は、1つ以上のDOD印刷システムにおいて有用であり得るが、この利点は、CIJ印刷プロセス及び機器が使用される場合に特に明白であり得る。当該技術分野において既知のいくつかのCIJ印刷プロセスが存在し、本開示は、任意の特定のCIJプロセスに対する制限を想到しない。しかしながら、本開示の目的のために他よりも有用であり得る特定のCIJプロセスが存在してもよい。一般に、このようなCIJプロセスは、1つ以上の印刷ヘッド(ノズルを含む)を通って排出される1種以上の水性インクジェットインク組成物を使用してもよく、印刷されなかった水性インクジェットインク組成物は、使い切るまで複数回、印刷システムを通って収集及び再利用される。加えて、CIJ印刷システムは、組み込まれた補充システムを有してもよい。このようなCIJプロセス及び機器の詳細は、例えば、(上記の)米国特許第8,173,215号に提供されている。
【0114】
したがって、ほとんどのCIJインクジェット印刷プロセスでは、本開示によるそれぞれの水性インクジェットインク組成物は、印刷液滴及び非印刷液滴の両方に分けられる水性インクジェットインク組成物の連続流として、専用の主流体供給源から排出又は印刷されてもよい。それぞれの水性インクジェットインク組成物の非印刷液滴は、「キャッチャー」などの好適な収集手段を使用して収集され、そのそれぞれの主流体供給源に戻されてもよい。この全シナリオは、単一の(第1の)水性インクジェットインク組成物のみを使用して、又は第1の水性インクジェットインク組成物と同じ若しくは異なる「色」又は色相を有する1種以上の「追加の」水性インクジェットインク組成物と組み合わせて実行されてもよい。次いで、複数の水性インクジェットインク組成物は、制御された様式で、特定のソフトウェア及びデジタル入力によって制御され得る選択された順序でインクジェット印刷されて、基材の表面上に多色インクジェット印刷画像を提供する。
【0115】
加えて、(上記のような)水性の「無色」、すなわち、水性の粒子非含有組成物又は流体のインクジェット印刷は、「着色」水性インクジェットインク組成物(複数可)のインクジェット印刷と同時に又は「着色」水性インクジェットインク組成物(複数可)のインクジェット印刷に連続して行われてもよい。例えば、米国特許出願公開第2018/0051184号によれば、無色ラッカー又は保護コーティングは、単色又は多色インクジェット印刷画像の上に塗布されてもよい。
【0116】
本明細書に示唆されるように、このようなプロセスで使用される流体のそれぞれの水性インクジェットインク組成物、水性無色組成物、又は水性の粒子非含有組成物は、本開示に従って、記載の(a)1種以上のポリマー分散型顔料着色剤(水性インクジェットインク組成物のみ)、構造(I)によって定義される化合物からなる記載の(b)組成物、及び記載の(c)化合物を含むように設計されてもよい。しかしながら、本開示による方法で使用される任意のこのような水性組成物は、(b)組成物とはすべて異なる1種以上の(d)補足の抗菌化合物を更に含んでもよい。
【0117】
有用なCIJ印刷プロセス及び機器は、インクの電気抵抗率を測定する補充システムを含んでもよく、例えば、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第5,526,026号及び欧州特許第0597628(B1)号に記載されている。インク濃度感知のための他の手段を用いる有用なCIJ印刷プロセス及び機器は、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第7,221,440号に開示されており、また、欧州特許第0571784(B1)号及び同第1,013,450(B1)号に開示されている。
【0118】
一実施形態では、基本的な補充は、以下のように実行される。流体システムは、水性インクジェットインク組成物が、印刷ヘッドを含むシステムのインク処理部分を通って再循環されるときに通過するインク抵抗率測定セルを含有する。計算手段は、インク抵抗率セルの抵抗を求める。論理及び制御ユニットは、計算手段に応じて、水性インクジェットインク組成物における所望の抵抗率を維持するために、補足用「インク」供給源からの水性インクジェットインク組成物の移送、及び補充用キャリア流体供給源からシステムの主流体供給源への水性の粒子非含有流体(「キャリア流体」)の移送を制御する。水性インクジェットインク組成物の体積は、フロート弁の位置によって監視され、所定の体積が消費されたとき、所定の体積は、補足用「インク」供給源からの水性インクジェットインク組成物、又は補充用キャリア流体供給源からのキャリア流体のいずれかによって置き換えられる。
【0119】
したがって、第1及び任意の追加の水性インクジェットインク組成物は、それぞれ、第1及び任意の追加の水性インクジェットインク組成物で補充されてもよく、これらのそれぞれは、上記の同じ又は異なる(a)、(b)、及び(c)成分、特に上述の構造(I)によって定義される化合物からなる同じ又は異なる(b)組成物から本質的になる。
【0120】
他の例では、本開示による方法は、25℃で5センチポアズ(5mPa-sec)以下の動的粘度を有する水性の粒子非含有流体で主流体供給源を補充することを更に含んでもよく、水性の粒子非含有流体は、上記のように、第1の水性インクジェットインク組成物中に存在する同じ又は異なる(b)組成物から本質的になってもよい。
【0121】
このような水性の粒子非含有流体は、(b)組成物とは異なる、上記のような(d)補足の抗菌化合物を更に含んでもよい。例えば、(d)補足の抗菌化合物は、ヨードプロピニルブチルカルバメート、ピロクトンオラミン、2,4-ジクロロベンジルアルコール、ホウ酸、又はこれらの化合物の組み合わせであってもよい。
【0122】
補充に使用される水性の粒子非含有流体はまた、1つ以上の(b)化合物のための1種以上の促進剤を含有してもよく、促進剤のそれぞれは、最小7個かつ12個以下の炭素原子を有するアルカンジオールであり、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、1.5重量%以下の量である。例えば、促進剤は1,2-オクタンジオールであってもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、連続流体流から形成された複数の印刷液滴を使用して実行されてもよく、印刷液滴とは異なる体積の非印刷液滴は、液滴偏向手段によって、収集及び再循環のために「排出溝」に分岐される。このようなCIJ印刷システム及び機器に関する詳細は、例えば、米国特許第6,588,888号、同第6,554,410号、同第6,682,182号、同第6,793,328号、同第6,866,370号、同第6,575,566号、同第6,517,197号、及び米国特許出願公開第2002/0202054号に提供されており、すべての開示は、参照により本明細書に援用されている。
【0124】
他の実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、形成された印刷液滴及び非印刷液滴の方向を、流体流に熱を非対称に付与することによって制御することが可能な装置を使用して印刷されてもよく、この装置は、例えば、その両方の開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第6,079,821号及び同第6,505,921号に記載されているように、液滴分離を開始させ、得られた液滴を誘導する役割を果たす。CIJ印刷のための有用な撹拌、加熱供給、印刷ヘッド、及び流体濾過の手段は、例えば、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第6,817,705号に記載されている。
【0125】
CIJ印刷システムの単純な概略は、(上記の)米国特許第8,764,161号の図1に提供されている。
【0126】
更に、いくつかの実施形態では、本開示による方法は、
第1の水性インクジェットインク組成物のインクジェット印刷を停止することと、
(上記のような)水性の粒子非含有流体を、メンテナンス用流体供給源から印刷ヘッドに送達することと、
印刷ヘッドから水性の粒子非含有流体を排出して、印刷ヘッドから第1の水性インクジェットインク組成物をパージすることと、を更に含み、
水性の粒子非含有流体は、落球式粘度計を使用して測定したとき、25℃で5センチポアズ(5mPa-sec)以下の動的粘度を有し、
上記のように、第1の水性インクジェットインク組成物中に存在する、同じ又は異なる(b)組成物から本質的になる。
【0127】
このような水性の粒子非含有流体は、水性の粒子非含有流体の総重量に対して、15重量%以下の、水溶性保湿剤、共溶媒、並びに水溶性保湿剤及び共溶媒の両方から選択される1つ以上の化合物を更に含有してもよい。
【0128】
更に、水性の粒子非含有流体は、(b)組成物のための1種以上の促進剤を更に含有してもよく、促進剤のそれぞれは、最小7個かつ12個以下の炭素原子を有するアルカンジオールであり、水性の粒子非含有流体の総重量に対して、1.5重量%以下の量である。
【0129】
この一連の工程で使用される水性の粒子非含有流体は、選択された間隔で印刷ヘッドを洗浄するため、又は何らかの理由で印刷ジョブが完了若しくは中断されたときに使用される「メンテナンス用流体」と見なされてもよい。メンテナンス用流体は、ある期間、印刷ヘッド内に貯蔵されてもよく、主流体供給源及び任意の他のそれぞれの流体供給源からそれぞれの印刷ヘッドへの第1又は追加の水性インクジェットインク組成物の送達が、その後、新しい印刷手順のために再開されてもよい。
【0130】
このようなメンテナンス用流体として水性の粒子非含有組成物の使用についての更なる詳細は、(上記の)米国特許第8,764,161号に提供されている。
【0131】
本開示によるいくつかの実施形態では、連続インクジェットプリンタシステムを使用して画像を印刷する方法は、
(上記のような)基材を提供することと、
第1の水性インクジェットインク組成物を収容する主流体供給源と流体連通しているノズルを含む複数のノズルを有する噴射モジュールを提供することと(このような機器は、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許第9,010,909号の教示を考慮することで当業者には容易に知られるであろう)、
経時的に変化する電気信号に応答して、液滴刺激によって主流体供給源と流体連通するノズルを通って噴射される間に、第1の水性インクジェットインク組成物の液滴が形成されることと(この機能を実行するために使用される機器は、米国特許第9,010,909号の教示を考慮することで当業者には容易に明らかとなるであろう)、
液滴接触面を含むキャッチャーを提供することと(当業者には、(上記の)米国特許第9,010,909号の教示を考慮することで当業者に既知である)、
偏向機構を使用して、第1の水性インクジェットインク組成物の液滴の少なくとも一部を、キャッチャーの液滴接触面に偏向させる一方で、第1の水性インクジェットインク組成物の他の液滴を、キャッチャーによって通過させ、基材の表面に堆積させることと((上記の)米国特許第9,010,909号の教示を考慮することで当業者に既知である)、
液滴接触面に接触する水性インクジェットインク組成物の液滴を液滴接触面に沿って流動させることと((上記の)米国特許第9,010,909号の教示を考慮して当業者に既知である)、を含んでもよく、
第1の水性インクジェットインク組成物は、25℃で5センチポアズ(5mPa-sec)以下の動的粘度を有し、
(a)水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、0.9重量%以上6重量%以下の総量の1種以上のポリマー分散型顔料着色剤と、
(b)以下の構造I:
HO-CH-CH-R
(I)
[式中、Rは、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、0.5重量%以上2重量%以下の総量の、置換若しくは非置換フェニル基又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物からなる組成物と、
(c)水性インクジェット組成物の総重量に対して、15重量%以下の、水溶性保湿剤、共溶媒、及び水溶性保湿剤と共溶媒の両方から選択される(上記のような)1つ以上の化合物と、から本質的になり、
1種以上のポリマー分散型顔料着色剤のそれぞれは、70nm未満の、50パーセンタイルの粒子直径と、150nm未満の、95パーセンタイルの粒子直径と、を有し、すべての粒子直径は、動的光散乱粒度分析計を使用して測定される。
【0132】
いくつかの実施形態では、上記の方法で使用される第1の水性インクジェットインク組成物の液滴の少なくとも一部(偏向液滴)は、第1の水性インクジェットインク組成物の他の液滴(非偏向液滴及び堆積液滴)よりも小さい。
【0133】
更に他の実施形態では、第1の水性インクジェットインク組成物の液滴の少なくとも一部(偏向液滴)は、第1の水性インクジェットインク組成物の他の液滴(非偏向液滴及び堆積液滴)よりも大きい。
【0134】
更に、連続インクジェット(CIJ)印刷のための本開示による方法は、
(当該技術分野において既知の)連続インクジェットプリンタの主流体供給源に、(上記のような)第1の水性インクジェットインク組成物を供給することであって、第1の水性インクジェットインク組成物は、25℃で5センチポアズ(5mPa-sec)以下の動的粘度を有し、
(a)水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、0.9重量%以上6重量%以下の総量の1種以上のポリマー分散型顔料着色剤と、
(b)以下の構造I:
HO-CH-CH-R
(I)
[式中、Rは、水性インクジェットインク組成物の総重量に対して、0.5重量%以上2重量%以下の総量の、置換若しくは非置換フェニル基又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物からなる組成物と、
(c)水性インクジェット組成物の総重量に対して、15重量%以下の、水溶性保湿剤、共溶媒、及び水溶性保湿剤と共溶媒の両方から選択される(上記のような)1つ以上の化合物と、から本質的になり、
1種以上のポリマー分散型顔料着色剤のそれぞれは、70nm未満の、50パーセンタイルの粒子直径と、150nm未満の、95パーセンタイルの粒子直径と、を有し、すべての粒子直径は、動的光散乱粒度分析計を使用して測定される、ことと、
第1の水性インクジェットインク組成物の液滴の連続流を、(当該技術分野において既知のような)液滴生成器機構から排出することと、
制御機構から受信した電気信号に応答して、基材に画像形成するための印刷液滴と、回収されて主流体供給源に戻される非印刷液滴と、から選択することであって、両方の種類の液滴は、第1の水性インクジェットインク組成物に由来する、ことと、
主流体供給源における第1の水性インクジェットインク組成物の抵抗率に応じて主流体供給源を補充することと、を含んでもよい。補充は、上記のように、第1の水性インクジェットインク組成物、又は補充用の水性の粒子非含有流体を補充することを使用して達成されてもよい。
【0135】
追加のCIJ印刷プロセス及び有用なCIJ装置の詳細は、例えば、米国特許第8,585,189号、同第8,651,632号、同第8,696,094号、同第8,888,256号、及び同第9,969,178号に記載されており、これらの開示はすべて、参照により本明細書に援用されている。
【0136】
印刷された物品
得られたインクジェット印刷物品(又は印刷基材)は、吸収性物品の少なくとも1つの支持面に単色画像又は多色画像を有し得る。
【0137】
以下の調製及び例では、報告された顔料分散体の顔料含有量は、最終分散体中の、未処理の着色剤の重量パーセントに基づく。
【0138】
水性インクジェットインク及びサービス流体組成物のポリマー分散剤の調製及び添加剤の調製:
ポリマー分散剤P-1
代表的な手順では、メカニカルスターラー、還流冷却器、及びガス入口を備えた5リットルの三つ口丸底フラスコに、225gの1-メトキシ-2-プロパノールを入れ、窒素を吹き込んだ。Akzo-Nobel Chemicals,Inc.製の開始剤PERKADOX AMBN-GR(1.9g)を撹拌しながら添加した。反応物質リザーバに、225gの1-メトキシ-2-プロパノール、23.4gの1-ドデカンチオール、203.5gのベンジルメタクリレート、165.0gのステアリルメタクリレート、181.5gのメタクリル酸を入れ、窒素吹き込みにより溶液を脱気した。PERKADOX AMBN-GR(7.7g)を加え、混ぜ入れた。反応器の温度を77℃まで上昇させ、反応物を、360分間にわたって約2.3mL/分でリザーバからポンプ圧送した。次いで、反応混合物を約77℃で少なくとも12時間撹拌した。得られたポリマーをN,N-ジメチルエタノールアミンで完全に中和し、45分間撹拌した。反応混合物を2,580gの水で希釈し、Pall Corp.ULTIPLEATポリプロピレンカートリッジフィルタを通して濾過した。ポリマー分散剤P-1の最終ポリマー溶液は、約20重量%固形分の濃度を有し、そのpHは、8.6であった。ポリマー重量平均分子量は、9,070ダルトンであった。
【0139】
ポリマー分散剤P-2
ポリマー分散剤P-2は、P-1と同様の方法で調製したが、1当量のN,N-ジメチルエタノールアミンと反応させる代わりに、中和工程中に酸の90%を水酸化カリウムと反応させた。ポリマー分散剤P-2の最終ポリマー溶液は、約17重量%固形分の濃度を有した。
【0140】
ポリマー添加剤P-3
モノマー重量比77:23及び約137の酸価を有するベンジルメタクリレート-メタクリル酸コポリマーを水酸化カリウムで90%中和して水溶液を得た。ポリマー添加剤P-3の最終ポリマー溶液は、約25重量%固形分の濃度を有した。
【0141】
ポリマー添加剤P-4
16,000ダルトンの重量平均分子量Mを有するスチレンアクリルコポリマーであるBASF Dispersions&Pigments North America製のJONCRYL HPD 696を水酸化カリウムで90%中和して水溶液を得た。ポリマー添加剤P-4の最終ポリマー溶液は、約20重量%の固形分の濃度を有した。
【0142】
ポリマー添加剤P-5
温度計、スターラー、水冷却器、窒素入口、及び真空出口を備えた50リットルの丸底フラスコに、1,454.4gのTERATHANE2000ポリエーテルグリコール、670.5gの2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、313.2gの1,4-ブタンジオール、及び3,771gの酢酸エチルを入れた。温度を65℃に調整し、均質な溶液が得られてから、1,840.9gのイソホロンジイソシアネートを添加し、続いて184gの酢酸エチルを添加した。温度を78℃まで上昇させ、22時間維持して反応を完了させた。次いで、反応混合物を86gの2-プロパノールで希釈した後、467.9gのN,N-ジメチルエタノールアミンで中和した。高剪断下で、18kgの蒸留水を添加し、その後、真空下での蒸留により有機溶媒を除去した。得られた水性分散体を濾過し、約25重量%の不揮発性固体濃度及び約8.0のpH値を有すると判定された。ポリウレタン分散体の重量平均分子量(M)は、サイズ排除クロマトグラフィによって約19,800であることが判明した。
【0143】
顔料分散体の調製:
顔料分散体KD-1
バッフルを4個含む2.5ガロン(9.46リットル)、直径9インチ(22.9cm)、及び深さ12インチ(30.5cm)の二重壁ステンレス鋼混合容器に、水(1,000g)及びポリマー分散剤P-1(1,000gの19.9重量%溶液)を添加した。Charles Ross&Son Co.製のモデルHSM-100LH-2高剪断ミキサによって駆動される公称4インチ(10.2cm)のリング型分散機インペラ(Hockmeyer Equipment Corp.製のD-Blade)を、混合容器の底部の2インチ(5.1cm)上に中心を置き、撹拌を開始した。Cabot Corp.製のBLACK PEARLS900カーボンブラック顔料(500g)を、流体中にゆっくりと溶け込ませた。平均粒子直径が50μmのポリスチレン樹脂(スチレン及びジビニルベンゼン/エチルビニルベンゼン混合物から誘導されたコポリマー)のビーズを含む粉砕媒体(3,000g)を、インペラ速度を増加させながらゆっくりと添加した。混合物を、約19m/秒のインペラブレード先端速度で、内部温度25~35℃にて約20時間粉砕した。Microtrac,Inc.製のNANOTRAC NPA150動的光散乱粒度分析計による粒度測定のために試料を定期的に取り出し、希釈し、濾過した。粉砕が完了してから、分散/媒体ミリング混合物を水の溶液(1,667g)で、約12重量%の最終顔料濃度、対イオンを含んで約4.8重量%のポリマー分散剤濃度、及び約4,167gの理論分散バッチサイズまで更に希釈した。インペラを除去し、濾過によって粉砕媒体を分散体から分離した。0.3μmの除去効率のPall Corp.製のPROFILE IIデプスフィルタを通した最終濾過により、およそ4kgの分散体を、約80%の収率で得た。NANOTRAC NPA150動的光散乱粒度測定器によって特徴付けられるように、体積加重50パーセンタイル粒度分布直径は、約55nmであり、95パーセンタイル粒度分布直径は、約99nmであった。
【0144】
顔料分散体MD-1
マゼンタ顔料分散体MD-1は、顔料分散体KD-1と同様にして調製したが、カーボンブラック顔料の代わりに、BASF Dispersions&Pigments North America製のCINQUASIA Magenta D 4500 Jを使用した。得られた分散体は、対イオンを含む約12重量%の顔料及び6.1重量%のポリマー分散剤を有した。NANOTRAC NPA150動的光散乱粒度測定器によって特徴付けられるように、体積加重中央粒度は、約16nmであり、95パーセンタイル粒度分布直径は、約59nmであった。
【0145】
顔料分散体CD-1
シアン顔料分散体CD-1は、顔料分散体KD-1と同様の方法で調製したが、カーボンブラック顔料の代わりに、ピグメントブルー15:4及びピグメントグリーン7を3.75:1の比で使用し、P-1の代わりに、Lubrizol Corp.製のSOLSPERSE12000及びポリマー添加剤P-3の存在下でポリマー分散剤P-2を使用した。得られた分散体は、対イオンを含む約12重量%の顔料及び8.5重量%のポリマー分散剤を有した。NANOTRAC NPA150動的光散乱粒度測定器によって特徴付けられるように、体積加重50パーセンタイル粒度分布直径は、約28nmであり、95パーセンタイル粒度分布直径は、約86nmである。
【0146】
顔料分散体YD-1
バッフルを4個含む10ガロン(37.85リットル)、直径13インチ(33cm)、深さ17インチ(43.2cm)の二重壁ステンレス鋼混合容器に、2,560gの水及び2,400gのポリマー分散剤P-2の15%溶液を添加した。HockmeyerモデルHBI-7.5-11-99高剪断ミキサによって駆動される公称6インチ(15.2cm)のリング型分散機インペラ(Hockmeyer Equipment Corp.製のD-Blade)を、混合容器の底部の3インチ(7.6cm)上に中心を置き、撹拌を開始した。Sun Chemical Co.製のピグメントイエロー74(1,200g)を流体にゆっくりと添加した。スチレン及びジビニルベンゼン/エチルビニルベンゼン混合物から誘導された平均粒子直径が50μmのポリマービーズ(7,200g)を含む粉砕媒体を、インペラ速度を増加させながらゆっくりと添加した。混合物を、約20メートル/秒のインペラブレード先端速度で、内部温度25~30℃にて約20時間粉砕した。分散体/媒体混合物を更に水(6,000g)で、約12重量%の最終顔料濃度及び約4.1重量%のポリマー添加剤P-2濃度まで希釈した。インペラを除去し、濾過によって分散体を粉砕媒体から分離した。0.3μmの粒子除去等級のPall Corp.製のPROFILE IIデプスフィルタによる最終濾過により、およそ10.6kgの分散体が得られた。NANOTRAC NPA150動的光散乱粒度測定器によって判定されたように、分散体の体積加重50パーセンタイル粒度分布直径は、約11nmであり、95パーセンタイル粒度分布直径は、約16nmであった。
【0147】
連続インクジェットインク組成物及びサービス流体組成物の調製:
水性ブラックインクジェットインク組成物
黒色着色CIJ水性インクジェットインク組成物K-A(E)は、顔料分散体KD-1を用いて、成分を以下の表Iで報告される相対比率で組み合わせることによって調製した。代表的な手順では良好な混合をもたらすために、15.0kgの水性インクジェットインク組成物を、約1,000rpmで回転する2インチ(5.1cm)インペラを使用して、30リットルの架橋高密度ポリエチレン平底タンクに成分を個々に添加することによって混合した。含有成分(そのように示されている場合)は、以下の機能成分の順序で追加された。水、酸又は酸性溶液、アミン-酸塩溶液、保湿剤及び有機共溶媒、アミン塩基、金属腐食防止剤、防腐剤又は殺生物剤、ソルボ界面活性剤、可溶性アゾ染料、顔料分散体、界面活性剤、及び防泡剤。水性インクジェットインク組成物を、含有成分添加の間に約2分間混合し、次いで、界面活性剤又は防泡剤の最終添加後1時間撹拌した。水性インクジェットインク組成物を、約0.5リットル/分/インチ(0.2リットル/分/cm)の媒体速度で、Pall Corp.製の0.2μm有効孔径ULTIPOR N66カートリッジ濾材を通して濾過した。得られた水性インクジェットインク組成物中の顔料粒子は、53nmの体積加重50パーセンタイル粒度及び79nmの95パーセンタイル粒度、約8.6のpH、1.14mS/cmの導電率、25℃で1.60mPa-secの動的粘度、25℃で1.035g/cmの密度、並びに25℃で37.2mN/mの静的表面張力を有した。
【0148】
【表1】
【0149】
水性シアンインクジェットインク組成物
水性シアンCIJインクジェットインク組成物C-A~C-Cは、水性インクジェットインク組成物K-Aについて記載したものと類似の方法で、表IIにおいて以下に示す相対比率で成分を組み合わせることにより、顔料分散体CD-1から調製した。これらのインクジェットインク組成物は、表IIIにおいて以下に報告される物理的特性を呈した。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
水性マゼンタインクジェットインク組成物
水性マゼンタCIJインクジェットインク組成物M-A~M-Cは、水性ブラックインクジェットインクK-Aについて記載したものと類似の方法で、表IVにおいて以下に報告される相対比率で成分を組み合わせることによって、顔料分散体MD-1から調製した。これらの水性マゼンタインクジェットインク組成物は、表Vにおいて以下に報告される物理的特性を呈した。
【0153】
【表4】
【0154】
【表5】
【0155】
水性イエローインクジェットインク組成物
水性イエローCIJインクジェットインク組成物Y-A(E)は、水性インクジェットインク組成物K-Aについて記載したものと類似の方法で、表VIにおいて以下に報告される相対比率で成分を組み合わせることによって、顔料分散体YD-1から調製した。
【0156】
【表6】
【0157】
この水性インクジェットインク組成物中の顔料粒子は、NANOTRAC NPA150動的光散乱粒度測定器によって特徴付けられるように、12nmの体積加重50パーセンタイル粒度及び31nmの95パーセンタイル粒度を有する。また、約8.4のpH、2.26mS/cmの導電率、25℃で1.62mPa-secの動的粘度、25℃で1.020g/cmの密度、及び25℃で36.3mN/mの静的表面張力を有した。
【0158】
連続インクジェット印刷(CIJ)補充用流体
CIJ補充用流体R-A(E)及びR-B(E)は、水性ブラックインクジェットインク組成物K-Aについて記載したものと類似の方法で、表VIIにおいて以下に示す成分を相対比率で組み合わせることによって調製した。これらの水性の粒子非含有流体は、表VIIIにおいて以下に示される物理的特性を呈した。
【0159】
【表7】
【0160】
【表8】
【0161】
連続インクジェット印刷(CIJ)用印刷ヘッドクリーナー及び貯蔵流体
CIJ印刷ヘッドクリーナー及び貯蔵流体S-A(C)及びS-B(E)は、水性ブラックインクジェットインク組成物K-Aについて記載したものと類似の方法で、下記の表IXにおける以下の成分を相対比率で組み合わせることによって調製した。これらの水性の粒子非含有流体は、表Xにおいて以下に示される物理的特性を呈した。
【0162】
【表9】
【0163】
【表10】
【0164】
微生物増殖感受性試験
上記の水性インクジェットインク組成物を、特定の微生物の培養株を使用した10回チャレンジ保存効力試験に供した。試験微生物を、既知の濃度のコロニー形成単位(colony forming unit,CFU)に個々に培養し、次いで、これらを一緒に混合し、50グラムの水性インクジェットインク組成物試験試料に接種した。特定の時間間隔で、接種済み試料を試験した。10μLの十分に混合された試料でトリプチカーゼ大豆寒天プレートを画線し、インキュベートすることによって接種材料の生存集団を評価した。微生物の存在は、以下の表XIに示した増殖評価を使用して記録された。それぞれの試料を再接種し、試験の過程で最大10回評価する一方で、試料の物理的外観のあらゆる変化が観察された。
【0165】
【表11】
TNTCは、「多すぎて計数できない」ことを意味する。
【0166】
以下の表XIIは、先に記載した水性インクジェットインク組成物(「インク」)に関する10回チャレンジ増殖評価試験結果を報告し、未処理の組成物中の微生物の初期ベースライン増殖評価は、「1」であると判定された。「R-OH」で示されたカラムは、試料中のソルボ界面活性剤2-フェノキシエタノール(PhE)又は2-フェニルエタノール(PEA)の有無を示す。
【0167】
【表12】
【0168】
表XIIに示す結果は、最初の数回の接種後の比較例の組成物(「インク」)C-A(C)及びM-A(C)において、相当な微生物増殖(高いコロニー数)が観察されたことを示す。表XIIのデータはまた、本発明の組成物(「インク」)C-B(E)及びM-B(E)中の2-フェノキシエタノール(PhE)、又は本発明の組成物(「インク」)C-C(E)、M-C(E)、Y-A(E)、及びK-A(E)中の2-フェニルエタノール(PEA)の存在が、10回チャレンジすべてを通して最小又は検出不可能な微生物増殖をもたらしたことも明らかにしている。
【0169】
水性インクジェットインク組成物と同じ方法で、水性の粒子非含有流体を、特定の微生物の同じ培養株を使用して、10回チャレンジ保存効力試験に供した。以下の表XIIIは、これらの流体の10回チャレンジ増殖評価試験結果を示し、未処理の流体中の微生物の初期ベースライン増殖評価は、「1」であると判定された。「R-OH」で示されたカラムは、流体中のソルボ界面活性剤2-フェノキシエタノール(PhE)又は2-フェニルエタノール(PEA)の有無を示す。
【0170】
【表13】
【0171】
表XIIIで報告された結果は、最初の数回の接種後の本発明の補充用流体R-A(E)及びR-B(E)において、有意な微生物増殖(コロニー数の増加)が観察されたことを示しているが、その結果は、いなかるソルボ界面活性剤も含まない純水を含んだ補充液よりも良好であると予想される。表XIIIの結果はまた、乾燥インク洗浄剤として、ソルボ界面活性剤ジエチレングリコールモノブチルエーテルを含有する比較例の印刷ヘッドクリーナー及び貯蔵流体S-A(C)に微生物増殖がほとんど観察されなかったことも示し、チャレンジNo.7のみが、3の有意な増殖評価をもたらした。しかしながら、本発明の印刷ヘッドクリーナー及び貯蔵流体S-B(E)中に2-フェノキシエタノール(PhE)が存在することで、10回チャレンジすべてを通して微生物増殖は検出不可能であった。
【0172】
上記のインク及び流体配合物の実施形態は、イソチアゾリノン化合物及びホルムアルデヒド放出化合物(2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、ヘキサメチレンテトラミンクロロアリルクロリドなど)などの一般的に使用される防腐剤並びに欧州化学品庁(ECHA)(欧州連合機関)によって公開されている認可活性物質のリスト(第95条リスト)に現在登録されている殺生物剤を実質的な量で一切含有することなく、すなわち、実質的に含有することなく、汚染微生物の増殖に対して好適に耐性であり得ることが理解されるであろう。
【0173】
水性インクジェットインク組成物の連続インクジェット印刷
代表的な手順では、連続インクジェット印刷試験スタンド固定具のインクリザーバに、本発明の水性シアンインクジェットインク組成物C-C(E)を充填した。C-C(E)によるインクリザーバ及び流体ラインの排出、洗い流し、及び充填の繰り返しサイクルを実施して、新たな組成物が装置内の従来のインクによって汚染されていないことを確実にした。固定具は、以下の構成要素、(1)流体システムであって、(a)組成物(「インク」)を60psid(0.41MPa)を超えて加圧することにより、最大約2リットル/分のインク体積流量を生成することと、(b)連続インクジェット印刷ヘッド液滴生成器に加圧インクを送達することと、(c)真空下で非印刷インクを流体システムのインクリザーバに戻すことと、(d)電気抵抗率測定によりインクリザーバインク濃度を検出し、水蒸発により濃縮された場合には、本発明の補充用流体R-B(E)でインクを補充し、印刷に使用することによって減少したが正確な濃度であった場合には、より多くの水性インクジェットインク組成物C-C(E)をインクリザーバに添加することと、(e)乾燥インクの蓄積による汚染後の正確な印刷を回復するために、かつ長期間にわたって安全な保管のためにシステムをシャットダウンするために、本発明の印刷ヘッドに本発明の印刷ヘッドクリーナー及び貯蔵流体S-B(E)を提供して、ノズル及びダクトシステムを洗い流すことと、が可能な、流体システムと、(2)多孔質媒体のシート(例えば、コーティングされていないフリーシート紙)又は非多孔質媒体(例えば、コーティングされた又はコーティングされていないポリマーフィルム)を支持し、それを制御ユニットと同期された正確な速度で連続的に回転させて、ロール形態の印刷基材のウェブ輸送をシミュレートすることができる真空ドラムと、(3)連続インクジェット印刷ヘッドPICボックスアセンブリであって、(a)インクの液滴を形成するためのMEMSケイ素系液滴生成器と、プリンタが画像ファイルを印刷していないとき、又は画像ファイルを印刷している場合であっても所与の画素を印刷していないときに、非印刷液滴を捕集するためのコアンダ排出溝と、を備えたKODAK PROSPERプレス噴射モジュールと、(b)正及び負の空気ダクトアセンブリによって提供される液滴カーテンと交差するゾーンを作成して、これらの液滴をコアンダ排出溝に方向付ける非印刷液滴偏向装置と、(c)インクリザーバへのインク戻りラインと、を含む、連続インクジェット印刷ヘッドPICボックスアセンブリと、(4)印刷コントローラであって、(a)印刷ドラム速度を制御し、データ供給に応じてドラム位置を噴射モジュールに同期させ、また(b)必要に応じて、最適化された波形によるノズルプレートヒータパルスパターンを使用して、ラスタ処理画像を、画素のインク流シミュレーション命令によって画素にレンダリングする噴射モジュールCMOS回路に電気信号を送信して、印刷基材表面画素位置において送達されるインクの非印刷捕集液滴及び印刷液滴を生成する、印刷コントローラと、からなるものであった。
【0174】
流体システムは、Micropump Inc.製のMICROPUMPシリーズGJ-N23DB380Aギアポンプを使用し、0.45μmの公称有効孔径ULTIPOR GF-HVガラス繊維媒体を含むPall Corp.製のDisposable Filter Assemblyカプセルフィルタ、DFA4201ZU0045を通して、約20m/sの均一な液滴速度を生成する、ノズルプレートにおける約65psid(0.45MPa)の圧力低下で、インクを送達した。流体システムのギアポンプ速度設定は、システム仕様に従って所望の液滴速度を均一に生成するために、噴射モジュールにおいて一定の流体圧力を提供及び維持するように継続的に調整された。適切な噴射及び正確なインク補充のための必要なシステムパラメータ設定を決定し、「inkdex」と呼ばれるコンピュータファイルに記録して、製品KODAK PROSPER S10 Imprinting Systemが2アップで装着されたウェブ印刷機などの他のシステムへの印刷を可能にした。偏向された非印刷インク液滴は、コアンダ排出溝上に捕集され、真空下で流体システムのインクタンクに戻された。非印刷液滴の捕集モードでのプリンタの持続的な動作は、水性インク溶媒ビヒクルの蒸発を徐々にもたらした。インク濃度は、インクの電気抵抗率測定に基づいて約5%を超えて濃縮された場合、インク濃度は、水性の顔料非含有補充用流体をインクに添加することによって、元のインク濃度の約5%以内に維持された。試験ターゲットをラスタ画像処理して、最大約1,000FPMの速度に対する600×600画素/インチ(ppi)(236×236画素/センチメートル(ppcm))アドレス指定能力で、試験基板の適切な移送速度で、画素位置ごとのデジタル印刷信号命令を生成した。NewPage STERLING超光沢紙及び/又はコーティングされていない未処理のフリーシート紙(例えば、International Paper 20-lb(75g/m)DATASPEED Laser MOCR)を、印刷データコントローラと同期させた一定速度の回転ドラムに載せた。4.25インチ(10.8cm)のジェットカーテン印刷範囲を生成したほぼ生成が完了した印刷ヘッドアセンブリ構成で、600ノズル/インチのPROSPERプレス噴射モジュールを使用してシステム機能印刷速度能力をプロファイルした様々な基材輸送速度で様々な試験画像を印刷した。捕集パン内に印刷し、時間依存性の噴射真直度及び長期間にわたる印刷の不完全性を評価することによって、また、複数回のシャットダウン及び起動シーケンスを行って、第1の許容可能な印刷及び任意の必要な介入[サービスクリーニング(インクによるクロスフラッシュ洗浄)、ダクトクリーニング(貯蔵流体による洗い流し)、及びノズルプレート拭き取り]を達成するための時間を評価することによって、操作安定性及び始動堅牢性(「操業性」)もまた精査された。水性インクジェットインク組成物C-C(E)は、動作可能であることが見出され、長期試験用の製品KODAK PROSPER S10インプリンティングシステムが装着された2アップのウェブ印刷機に充填された。
【0175】
本開示による実施形態は、ガス流液滴偏向機構、熱的液滴刺激装置、及びケイ素から作製されたノズルプレートを使用する連続インクジェットプリンタシステムにおける使用のために上記で実証されてきた。しかしながら、本開示による他の実施形態はまた、静電液滴偏向機構、圧力変調装置又は振動体刺激装置、及び他の種類の材料から作製されたノズルプレートを使用する連続インクジェットプリンタシステムにおいて使用されてもよい。静電偏向は、別個の液滴帯電電極及び液滴偏向電極を含む種類のものであってもよく、又は単一の電極内に両方の機能を組み込む種類のものであってもよい。
【0176】
吸収性物品のウェブ構成要素(例えば、不織布ウェブ材料及びフィルム材)は、上記の説明に従って配合されたインクで印刷することができ、印刷は、上記の説明に従う方法によって実施することができる。上記の説明に従って配合されたインクによる印刷は、所望の印刷されたグラフィック要素を構成する乾燥インクの堆積物を有する最終製品をもたらすことが想到され、乾燥インクの堆積物は、検出可能な量の抗菌剤の存在を有することとなる。検出可能な量は、印刷領域を担持するウェブ基材に対して、約1~約1,000ミリグラム毎平方メートル(mgsm)の濃度、又は約10~約900mgsmの濃度、又は約20~約800mgsmの濃度、又は約30~約600mgsmの濃度、又は約40~約500mgsmの濃度でインク堆積物中に存在し得ることが想到される。(本明細書における目的のために、「印刷領域」は、印刷を担持する任意の領域を含むが、印刷は断続的又は連続的である必要はなく、印刷領域を画定するために領域全体に広がる必要もない。例えば、基材が、基材の表面の周囲に配置された視覚的に分離され、別個の印刷されたグラフィック要素を有する場合、印刷されたグラフィック要素のうちの1つ以上のすべて又は一部分を担持する基材の任意の部分が「印刷領域」であり、印刷された要素を担持しない基材の任意の部分は非印刷領域である。したがって、領域が「印刷領域」であるか否かは、検討されている領域のサイズ及び/又は場所に依拠し得る。)
【0177】
上記の説明に従って配合された(複数種の)インクを使用する印刷は、最終製品に対して持続的な抗菌効果を有することができることもまた見出されている。このような配合の(複数種の)インクで印刷された領域は、微生物の増殖が少なく、若しくは微生物の増殖を伴わない、又は更には、おむつ、トレーニングパンツ、女性用衛生製品、及び成人用失禁製品などのパーソナルケア/個人衛生製品にとって望ましいと見なされ得る有効抗菌/抗生物質効果を有する傾向があることが見出されている。この効果は、以下に記載される微生物感受性測定方法の適用の結果に少なくとも部分的に反映されている。したがって、このような効果を達成するために、上記の説明に従って配合された(複数種の)インクの使用が想到される。
【0178】
本開示は、少なくとも以下の実施形態及びこれらの組み合わせを想到し(ただし、必ずしもこれらに限定されるものではないが)、他の特徴の組み合わせは、当業者が本開示の教示から理解され得る程度で想到される。
1.着用者に面する液体透過性トップシートと、外向きに面する液不透過性バックシートと、トップシートとバックシートとの間に配設された吸収性コア構造体と、を含む、吸収性物品であって、物品の構成材料の表面は、以下の構造I:
HO-CH2-CH2-R
(I)
[式中、Rは、置換若しくは非置換フェニル基、又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物を含むインク組成物の堆積物を担持する印刷領域を含む、吸収性物品。
2.構造Iの化合物は、印刷領域において、約1mgsm~約1,000mgsm、より好ましくは約10mgsm~約900mgsm、更により好ましくは約20mgsm~約800mgsm、更により好ましくは約30mgsm~約600mgsm、なおより好ましくは約40mgsm~約500mgsmの量で存在する、実施形態1に記載の吸収性物品。
3.印刷領域の14日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも大きい、実施形態1又は2に記載の吸収性物品。
4.印刷領域の14日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも少なくとも約0.3だけ大きい、実施形態1又は2に記載の吸収性物品。
5.印刷領域の14日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも少なくとも約1.0だけ大きい、実施形態1又は2に記載の吸収性物品。
6.印刷領域の28日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の28日目の細菌数の差よりも大きい、実施形態1又は2に記載の吸収性物品。
7.印刷領域の28日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の28日目における細菌数の差よりも少なくとも約0.3だけ大きい、実施形態1又は2に記載の吸収性物品。
8.印刷領域の28日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の28日目の細菌数の差よりも少なくとも約1.0だけ大きい、実施形態3~5のいずれか1つに記載の吸収性物品。
9.着用者に面する液体透過性トップシートと、外向きに面する液不透過性バックシートと、トップシートとバックシートとの間に配設された吸収性コア構造体と、を含む、吸収性物品製品であって、物品の構成材料の表面は、以下の構造I:
HO-CH2-CH2-R
(I)
[式中、Rは、置換若しくは非置換フェニル基、又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物を含むインク組成物の堆積物を担持する印刷領域を含み、
印刷領域の14日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも大きい、吸収性物品製品。
10.印刷領域の14日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の14日目の細菌数の差よりも少なくとも約0.3だけ大きい、実施形態9に記載の吸収性物品。
11.印刷領域の14日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の14日目の細菌数の差よりも少なくとも約1.0だけ大きい、実施形態9に記載の吸収性物品。
12.印刷領域の28日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の28日目における細菌数の差よりも大きい、実施形態9に記載の吸収性物品。
13.印刷領域の28日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の28日目の細菌数の差よりも少なくとも約0.3だけ大きい、実施形態9に記載の吸収性物品。
14.印刷領域の28日目における細菌数の差は、構成材料の非印刷領域の28日目の細菌数の差よりも少なくとも約1.0だけ大きい、実施形態9に記載の吸収性物品。
15.構造(I)の(複数の)化合物は、2-フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、1-ヒドロキシ-2-フェノキシエタン、フェニルエタノール、2-フェニルエタン-1-オール、フェネチルアルコール、β-ヒドロキシエチルベンゼン、β-フェニルエタノール、ベンジルカルビノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態9~14のいずれか1つに記載の吸収性物品。
16.堆積物は、構造(I)の組成物と異なる補足の第2の抗菌剤を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の吸収性物品。
17.補足の第2の抗菌剤は、ヨードプロピニルブチルカルバメート、ピロクトンオラミン、ホウ酸、2,4-ジクロロベンジルアルコール、若しくはホウ酸由来の金属イオン塩、又はこれらの化合物の組み合わせからなる群から選択される、実施形態16に記載の吸収性物品。
18.堆積物は、アニオン性ポリウレタン、アニオン性非芳香族アクリルポリマー、アニオン性スチレン-アクリルポリマー、又はかかる材料のうちの2つ以上の組み合わせを更に含み、これらの材料のそれぞれは、少なくとも50の酸価を有する、実施形態9~17のいずれか1つに記載の吸収性物品。
19.堆積物は、1つ以上の構造(I)の化合物ための1種以上の促進剤を更に含み、促進剤のそれぞれは、最小7個かつ12個以下の炭素原子を有するアルカンジオールである、実施形態9~18のいずれか1つに記載の吸収性物品。
20.促進剤は、1,2-オクタンジオールである、請求項19に記載の吸収性物品。 21.Rは、非置換フェニル基又は非置換フェノキシ基のいずれか一方である、実施形態9~20のいずれか1つに記載の吸収性物品。
22.堆積物は、イソチアゾリノン化合物及びホルムアルデヒド放出化合物を実質的に含まない、実施形態9~21のいずれか1つに記載の吸収性物品。
23.堆積物は、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール及び/又はヘキサメチレンテトラミンクロロアリルクロリドを実質的に含まない、実施形態22に記載の吸収性物品。
24.印刷領域は、トップシートの身体に面する側、トップシートの外向きに面する側、トップシートとバックシートとの間に配設された二次的トップシートの身体に面する側、バックシートの身体に面する側、及びバックシートの外向きに面する表面のうちの任意の1つ以上によって構成される、実施形態9~23のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0179】
測定方法
ウェブ材料に印刷されたグラフィック要素内の印刷用インクの有機化合物
印刷されたグラフィックを担持する吸収性物品のウェブ材料の構成要素の領域内に存在するインク中の対象の有機化合物は、当業者に既知の微量分析手法を使用して検出及び定量化され得る。したがって、以下の方法は、使用され得る1つの非排他的な任意の方法と見なされるべきである。
【0180】
印刷領域を含む対象のウェブ材料の試料を、以下に指定される面積量で吸収性物品から切除する。(1つの吸収性物品から切除された対象の試料区画が、分析に不十分な量の材料をもたらす場合、追加の同等の吸収性物品からの対応する試料区画を切除し、一緒に分析してもよい。)
【0181】
対象の有機化合物が溶けやすい溶媒を使用して、試料区画から分析物を化学的に抽出する。次いで、溶媒を、GC-MS(/MS)又はLC-MS(/MS)などの化学選択的でもある手法を使用して、対象の有機化合物について定量分析する。(MS系手法が使用される場合、典型的には、安定した同位体標識分析物が内部標準として使用される。)切除された(複数の)試料区画の測定面積及び対象の化合物を化学的に抽出するために使用される溶媒の体積に基づいて、定量分析によって溶媒中に存在すると判定された対象の化合物の濃度を使用して、切除された(複数の)試料区画の表面積当たりに存在する対象の化合物の量を算出する。対象の化合物が検出される場合、結果は、対象の化合物の陽性検出であり、対象の化合物の濃度は、(複数の)試料区画のミリグラム毎平方メートル(mgsm)単位で少なくとも有効数字2桁で報告される。
【0182】
例えば、印刷領域を有するウェブ材料の試料中に存在する2-フェノキシエタノール(対象の化合物)の分析のために、印刷領域からの又は印刷領域を含む合計4cm(0.0004m)のウェブ材料を(複数の)対象とする吸収性物品から切除し、10mLのメタノールにおいて、およそ60分間、ボルテックス混合しながら、すすぎかつかき混ぜることによって、対象の化合物の抽出に供され得る。抽出溶液のアリコートを75:25のメタノール:水で希釈し、2-フェノキシエタノール-1,1-d内部標準でスパイクし、正イオンモードで多重反応モニタリング(MRM)条件下で操作された逆相HPLC-MS/MSにより分析する。超純水に対するMeOHの比が75:25で調製された純検量標準(抵抗率>18.2MΩ・cm)を使用して、対象の抽出化合物を定量する。試料の濃度は、純標準から生成されたピーク面積比の加重(1/x)二次検量曲線を使用して、逆算によって求められる。対象の化合物が検出される場合、対象の化合物が存在すると報告され、対象の化合物の濃度は、mgsm単位で少なくとも有効数字2桁で報告される。
【0183】
微生物感受性
微生物感受性試験(MST)方法を使用して、1つ以上の物品から切除された対象の基材領域に曝露された増殖培地に関連する微生物応答を測定する。方法は、米国薬局方(United States Pharmacopoeia)<51>保存効力試験を使用し、より具体的には、カテゴリー2の製品の手順及び細菌チャレンジに従う。
【0184】
対象の領域を有する構成要素のウェブ材料の1cm×1cmの正方形の試料を、吸収性物品から無菌的に切除し、滅菌容器に移す。(対象の領域が1cm×1cmより小さい場合、1cmの表面積を構成する追加の同等の物品の対応する領域からのより小さいサンプルを採取し、一緒に分析してもよい。)例えば、対象の領域は、印刷されたグラフィック要素を担持するウェブ材料の領域であってもよく、かつ/又は比較分析が所望される場合、対象の領域は、印刷されていない(非印刷領域を有する)構成要素のウェブ材料の領域であってもよい。
【0185】
大腸菌(ATTC_8739)をチャレンジ細菌として使用する。接種材料懸濁液は、USP<51>に従って調製され、滅菌された0.85%NaCl(w/vol)の生理食塩水中で推奨濃度に希釈される。上記の(複数の)試料は、100mLの希釈された接種材料と共に、密封滅菌容器内に載置される。(複数の)試料及び希釈された接種材料の両方を含有する密封滅菌容器を30秒間ボルテックスする。接種された試料を、プレーティングのための試料抽出まで22.5±2.5°Cで保管する。
【0186】
プレーティング及び測定のための試料抽出時に、密封滅菌容器の内容物を、260rpmで2分間ストマッカー(例えば、Stomacher 400 Circulator,Seward Ltd.(West Sussex,UK)又は同等品)内でストマッキング処理する。有意な生菌計数を可能にするように、必要に応じて(1:100、1:1000の希釈などを得るように)液体増殖培地を使用して連続的に1:10の希釈が実施される。生菌計数は、直径100mmのペトリプレート上で実施され、生菌の理想的なCFU読み取り値は25~250である。理想的には、許容範囲内に入る未加工のCFU読み取り値をもたらす最小希釈係数を使用して、CFU/mL単位の生存生菌を算出する。
【0187】
開始細菌数は、インキュベーション期間を伴わずに接種直後に測定され、大腸菌の測定濃度(CFU/mL単位)として定義される。14日目の細菌数は、14日間のインキュベーションにおける生存大腸菌の測定濃度(CFU/mL単位)として定義される。28日目の細菌数は、28日間のインキュベーションにおける生存大腸菌の測定濃度(CFU/mL単位)として定義される。
【0188】
開始細菌数及び14日目の細菌数を使用して、14日目の細菌数差は、
【0189】
【数1】
として定義され、小数第2位を四捨五入して報告される。開始細菌数及び28日目の細菌数を使用して、28日目の細菌数差は、
【0190】
【数2】
として定義され、小数第2位を四捨五入して報告される。
【0191】
本明細書で開示する寸法及び/又は値は、列挙された正確な数値に厳密に限られるとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、それぞれのこのような寸法又は値は、列挙された値とその値付近の機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0192】
本明細書において範囲の両端として開示される値は、列挙される正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。むしろ、特に指示がない限り、それぞれの数値範囲は、列挙される値及び任意の整数値の両方並びにその範囲内の混合数値の両方を意味するものとする。例えば、「1~10」として開示された範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10、並びに、例えば、限定するものではないが、1.012、2.3、5.45、8.391、9.9999などを含むことが意図される。
【0193】
「発明を実施するための形態」の中で引用される文献は全て、関連部分において参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。本文献における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれる文献における同じ用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本文献においてその用語に割り当てられた意味又は定義が優先するものとする。
【0194】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者に面する液体透過性トップシートと、外向きに面する液体不透過性バックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配設された吸収性コア構造体と、を含む、吸収性物品であって、前記物品の構成材料の表面は、以下の構造I:
HO-CH2-CH2-R
(I)
[式中、Rは、置換若しくは非置換フェニル基、又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物を含むインク組成物の堆積物を担持する印刷領域を含み、
前記構造Iの化合物は、前記印刷領域に、1mgsm~1,000mgsmの量で存在する、吸収性物品。
【請求項2】
前記印刷領域の14日目細菌数差は、前記構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも大きい、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記印刷領域の28日目細菌数差は、前記構成材料の非印刷領域の28日目における細菌数の差よりも大きい、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記構造(I)の(複数の)化合物は、2-フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、1-ヒドロキシ-2-フェノキシエタン、フェニルエタノール、2-フェニルエタン-1-オール、フェネチルアルコール、β-ヒドロキシエチルベンゼン、β-フェニルエタノール、ベンジルカルビノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記堆積物は、前記構造(I)の組成物とは異なる補足の第2の抗菌剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記補足の第2の抗菌剤は、ヨードプロピニルブチルカルバメート、ピロクトンオラミン、ホウ酸、2,4-ジクロロベンジルアルコール、若しくはホウ酸由来の金属イオン塩、又はこれらの化合物の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記堆積物は、アニオン性ポリウレタン、アニオン性非芳香族アクリルポリマー、アニオン性スチレン-アクリルポリマー、又はかかる材料のうちの2つ以上の組み合わせを更に含み、これらの材料のそれぞれは、少なくとも50の酸価を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
Rは、非置換フェニル基又は非置換フェノキシ基のいずれか一方である、請求項1~のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記堆積物は、イソチアゾリノン化合物及びホルムアルデヒド放出化合物を実質的に含まない、請求項1~のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記堆積物は、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール及び/又はヘキサメチレンテトラミンクロロアリルクロリドを実質的に含まない、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
着用者に面する液体透過性トップシートと、外向きに面する液体不透過性バックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配設された吸収性コア構造体と、を含む、吸収性物品であって、前記物品の構成材料の表面は、以下の構造I:
HO-CH2-CH2-R
(I)
[式中、Rは、置換若しくは非置換フェニル基、又は置換若しくは非置換フェノキシ基である]で表される1つ以上の化合物を含むインク組成物の堆積物を担持する印刷領域を含み、
前記印刷領域の14日目細菌数差は、前記構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも大きく、
前記構造Iの化合物は、前記印刷領域に、1mgsm~1,000mgsmの量で存在する、吸収性物品。
【請求項12】
前記印刷領域の14日目細菌数差は、前記構成材料の非印刷領域の14日目における細菌数の差よりも、少なくとも03だけ大きい、請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記印刷領域の28日目における細菌数の差は、前記構成材料の非印刷領域の28日目における細菌数の差よりも、好ましくは少なくとも03だけ大きい、請求項11又は12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記印刷領域は、前記トップシートによって構成されている、請求項~13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記印刷領域は、前記トップシートと前記バックシートとの間に配設された二次的トップシートによって構成されている、請求項13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【外国語明細書】