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特開2023-30039磁気共鳴イメージング用のクライオプローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030039
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング用のクライオプローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20230228BHJP
   A61B 18/08 20060101ALI20230228BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61B18/02
A61B18/08
A61B5/055 390
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200305
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2020526225の分割
【原出願日】2018-11-07
(31)【優先権主張番号】62/585,279
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518312426
【氏名又は名称】バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】コールマン、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ザックマン、アンドリュー ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ラマディアニ、サティシュ
(72)【発明者】
【氏名】チェルニホフスキー、オレグ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルマー、ドロール
(57)【要約】
【課題】磁気共鳴イメージングとクライオプローブを併用する利点を高める。
【解決手段】磁気共鳴イメージングを併用してクライオプローブを電気的に加熱する方法が開示される。本方法は、クライオプローブを提供する工程を含む。クライオプローブは、SI単位で0.001未満の磁化率を有する第1の材料で構成されたプローブシャフトと、逆巻き螺旋コイルを有する抵抗要素からなり、SI単位で0.005未満の磁化率を有する第2の材料で構成された電気抵抗ヒータとを備える。本方法は、電気抵抗ヒータに電流を流すことにより、プローブシャフトを加熱する工程と、加熱時のクライオプローブを同時に撮像する工程とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオプローブであって、
近位部と、前記近位部と反対側の遠位部と、を有するプローブシャフトを備え、前記遠位部は、患者の体内に挿入可能であり、前記プローブシャフトは、SI単位で0.001未満の磁化率を有する第1の材料で構成されており、
前記プローブシャフト内に配置された極低温流体供給管を備え、前記極低温流体供給管は、極低温流体源から極低温流体を受けるように構成され、前記極低温流体供給管は、前記患者の組織を冷却若しくは凍結するために、又は、前記患者の組織を冷却するとともに凍結するために、前記遠位部に向けて前記極低温流体を供給するように構成されており、
前記プローブシャフト内に配置された逆巻き螺旋コイルを有する抵抗要素からなる電気抵抗ヒータを備え、前記逆巻き螺旋コイルは、第2のセットのコイルとは逆方向に巻回された第1のセットのコイルを備え、前記電気抵抗ヒータに電流が供給されたときに、前記第1のセットのコイルによって発生する第1の磁界が、前記第2のセットのコイルによって発生する第2の磁界で打ち消され若しくは前記第2の磁界と逆向きであるように、又は、前記第2のセットのコイルによって発生する第2の磁界で打ち消されるとともに前記第2の磁界と逆向きであるように、前記第1のセットのコイルの巻数と前記第2のセットのコイルの巻数とをバランスさせており、前記電気抵抗ヒータは、SI単位で0.0005未満の磁化率を有する第2の材料で構成されており、前記電気抵抗ヒータは、電流が供給されると、組織を加熱することで解凍し若しくは組織を焼灼し、又は、組織を加熱することで解凍するとともに組織を焼灼するように構成されており、
もって、前記電気抵抗ヒータは、磁気共鳴イメージング(MRI)システムのマグネットルームに配置されたときに、組織の電気抵抗加熱を提供するように構成されている、クライオプローブ。
【請求項2】
前記第1のセットのコイル及び前記第2のセットのコイルは、電流が前記電気抵抗ヒータに供給されると、熱を発生するように、それぞれ構成されている、請求項1に記載のクライオプローブ。
【請求項3】
前記電気抵抗ヒータは、前記第2の材料で構成された単一のワイヤからなり、前記単一のワイヤは、前記第1のセットのコイルを形成するために第1の方向に巻回されており、前記単一のワイヤは、前記第2のセットのコイルを形成するために第2の方向に巻回されており、前記第1の方向は、前記第2の方向とは逆向きである、請求項1に記載のクライオプローブ。
【請求項4】
前記単一のワイヤは、前記第1のセットのコイル及び前記第2のセットのコイルを形成するように、ループ状部分を有する連続ループとして巻回されている、請求項3に記載のクライオプローブ。
【請求項5】
前記ループ状部分は、前記プローブシャフトの前記遠位部内に又は前記遠位部の付近に配置されている、請求項4に記載のクライオプローブ。
【請求項6】
前記プローブシャフトは、合金で構成されている、請求項1に記載のクライオプローブ。
【請求項7】
前記第2の材料は、チタンである、請求項6に記載のクライオプローブ。
【請求項8】
前記クライオプローブがMRIスキャナに接続されているときに、前記電気抵抗ヒータは電流を受けるように構成されている、請求項1に記載のクライオプローブ。
【請求項9】
前記クライオプローブが前記MRIスキャナに近接している場合に前記電気抵抗ヒータに電流が流れるときには、前記MRIスキャナによって生成されるMRI画像におけるアーチファクトを低減するように、前記第1のセットのコイルに関連した前記第1の磁界は、前記第2のセットのコイルに関連した前記第2の磁界を打ち消す、請求項8に記載のクライオプローブ。
【請求項10】
前記逆巻き螺旋コイルは、前記クライオプローブが前記MRIスキャナに近接している場合に前記電気抵抗ヒータに電流が流れるときには、当該クライオプローブに作用するトルクを低減するように、前記第1のセットのコイルのローレンツ力と前記第2のセットのコイルのローレンツ力を相殺させることを可能とする、請求項8に記載のクライオプローブ。
【請求項11】
前記極低温流体供給管及び前記電気抵抗ヒータのそれぞれは、前記プローブシャフトと同軸状であり、前記電気抵抗ヒータは、前記極低温流体を前記遠位部から前記近位部に向けて戻すことを可能とするように、前記プローブシャフトの内壁から径方向に偏倚している、請求項1に記載のクライオプローブ。
【請求項12】
前記電気抵抗ヒータは、当該電気抵抗ヒータに流れる電流が供給されたときに前記電気抵抗ヒータの温度を判定するために、温度測定装置に接続可能である、請求項1に記載のクライオプローブ。
【請求項13】
前記第1の材料は、SI単位で0.0006以下の磁化率を有する、請求項1に記載のクライオプローブ。
【請求項14】
前記第2の材料は、SI単位で0.0002以下の磁化率を有する、請求項1に記載のクライオプローブ。
【請求項15】
前記第2の材料は、SI単位で0.0001~0.0005の間の磁化率を有する、請求項1に記載のクライオプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング用のクライオプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
凍結手術システムは、1つ以上の極低温流体源に接続された1つ以上のクライオプローブを備える。そのようなシステムは、本出願と譲受人が同一である特許文献1及び特許文献2に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのような凍結手術システムでは、極低温流体源から1つ以上のクライオプローブに極低温流体を供給することが可能である。極低温流体の膨張の結果として、クライオプローブを冷却することができることにより、クライオプローブのチップ付近の組織を凍結する。
【0003】
いくつかのそのような凍結手術システムは、例えば、挿入時のクライオプローブを誘導するため、及び/又は解剖学的特徴部(例えば、組織、腫瘍など)の画像を取得するために、患者の撮像に磁気共鳴イメージングを用いることがある。そのようなシステムの一例は、特許文献3に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。そのようなシステムは、(コンピュータ断層撮影のような)他のイメージングシステムが適切ではないかもしれない状況(例えば、放射線照射が望ましくない場合)において、望ましいことがある。
【0004】
いくつかの凍結手術システムは、クライオプローブの抜去を容易とするために、凍結後の組織の解凍用として、各クライオプローブのプローブシャフト内に配置された(高抵抗ワイヤの形態の)電気ヒータを含む。そのようなシステムでは、高磁化率の金属部品(例えば、プローブシャフト又はヒータ線)を有する凍結手術システムを、MRIシステムに隣接して配置する結果として、患者及び/又はクライオプローブの画像を歪ませるイメージングアーチファクトが生じることがある。さらに、ヒータ巻線によって、ソレノイド効果及び/又はプローブに作用するトルクが発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8066697号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0256620号明細書
【特許文献3】米国特許第7850682号明細書
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、クライオプローブを提供し、このクライオプローブは、第1の材料で構成されたプローブシャフトと、プローブシャフト内に配置された逆巻き螺旋コイルを備える電気抵抗ヒータと、を備える。逆巻き螺旋コイルは、第2のセットのコイルとは逆方向に巻回された第1のセットのコイルを形成するように、極低温流体供給管の周りに逆巻きされた単一のワイヤによって形成されており、これにより、電流が電気抵抗ヒータに供給されたときに、第1のセットのコイルによって発生する第1の磁界は、第2のセットのコイルによって発生する第2の磁界と逆向きである。電気抵抗ヒータは、これに電流が供給されたときに、組織を、加熱により解凍、及び/又は焼灼するために、第2の材料で構成される。電気抵抗ヒータは、患者の磁気共鳴イメージング(MRI)をしている間に、組織の電気抵抗加熱を提供するように機能することが可能である。
【0007】
他の態様では、磁気共鳴イメージングと一緒にクライオプローブを電気的に加熱する方法は、開示の実施形態のいずれかによるクライオプローブを準備するステップを備える。この方法は、患者の標的組織を含む患者をMRIシステムのボア内に配置するステップを伴い得る。この方法は、クライオプローブの遠位部を患者の体内に挿入することを含み得る。この方法は、クライオプローブが患者の体内に挿入された状態で、MRIシステムによって患者の標的組織を画像化することをさらに含み得る。この方法は、MRIイメージングと同時に、電気抵抗ヒータによってクライオプローブを加熱することを伴い得る。
【0008】
さらなる態様では、磁気共鳴イメージング(MRI)を用いてクライオプローブを画像化する方法は、開示の実施形態のいずれかによるクライオプローブを準備するステップを備える。この方法は、磁気共鳴(MR)スキャナを準備するステップを伴い得る。この方法は、電流が供給される電気抵抗ヒータによって、クライオプローブを加熱するステップを伴い得る。この方法は、クライオプローブが加熱されているときに同時に、クライオプローブを画像化するために磁気共鳴(MR)信号を生成するステップをさらに伴い得る。
【0009】
1つ以上の例の詳細について、添付の図面及び以下の説明において記載している。他の特徴、目的、及び効果は、説明及び図面並びに請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】非限定的かつ例示的な実施形態による、磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」)誘導凍結手術システムの概略図。
図2】非限定的かつ例示的な実施形態による、図1の制御システムに接続可能なクライオプローブの全体図。
図3図2のクライオプローブの正面断面図。
図4A図3のクライオプローブの螺旋コイル状ヒータを形成するために使用されるワイヤの斜視図。
図4B図3のクライオプローブの螺旋コイル状ヒータを形成するために使用されるワイヤの別の斜視図。
図4C図3に示すクライオプローブの遠位部を示す部分4Cの拡大斜視図。
図4D図3に示すクライオプローブの中央部を示す部分4Dの拡大斜視図。
図5】クライオプローブを使用して患者の組織を加熱する方法を示すフローチャート。
図6】プローブシャフトが加熱されているときに、磁気共鳴イメージングを用いて、電気ヒータを有するクライオプローブを画像化する方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
凍結手術システムは、標的組織(例えば、腫瘍)を凍結アブレーションするために使用することが可能である。典型的には、そのようなシステムは、1つ以上のクライオプローブと、1つ以上の極低温流体源と、コントローラと、を含む。極低温流体源は、アルゴン、窒素、空気、クリプトン、CO2、CF4、キセノン、及び、約1000psi(6895kPa)よりも高い圧力に加圧されたときに極低温度(例えば、170ケルビン未満の温度)に達することが可能な他の様々なガスのような、ガスを供給することが可能である。本明細書で使用される場合の「極低温流体」は、約1000psi(6895kPa)よりも高い圧力(例えば、典型的には約3500psi(24132.5kPa))に加圧されたときに(例えば、170ケルビン未満の)低温に達する任意の流体を指すことができる。凍結手術システムは、1つ以上のセンサ、流量計、タイマ、アナログ/デジタル変換器、有線又は無線通信モジュールなど、を有するコントローラを含むこともできる。さらに、コントローラは、クライオプローブに供給される極低温流体の流量、温度、及び圧力を調整することもできる。
【0012】
凍結手術中に、例えば、外科医は、患者の解剖学的構造の標的部位又はその付近にクライオプローブを留置することにより、患者の解剖学的構造の標的部位を凍結アブレーションするために、1つ以上のクライオプローブを展開させることがある。一例では、クライオプローブは、冷却又は加熱を発生させるために、ジュールトムソン効果を利用する。そのような場合、極低温流体は、クライオプローブ内で、より高い圧力からより低い圧力に膨張する。極低温流体が膨張した結果として、クライオプローブのチップ付近で組織を凍結アブレーションするために必要な温度又はそれ未満の温度が得られる。アイスボールを形成することによって、組織を凍結アブレーションするために、膨張した極低温流体とクライオプローブの外壁との間の熱伝達を利用することが可能である。
【0013】
図1は、非限定的かつ例示的な実施形態による、磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」)誘導凍結手術システム10の概略図である。図1のシステムは、マグネットルーム12の内部に配置された、MRIシステムの構成要素を含むことができる。MRIシステムは、患者20を収容するためのボアの形態のMRIマグネット16を有するMRIスキャナ14を備える。MRIマグネット16(ボア)は、開放型又は閉鎖型とすることができ、外科医が患者20にアクセスすることを可能にするアクセスポートを含むことができる。MRIマグネット16は、以下でさらに説明するように、様々な電気システム、制御システム、及び/又は凍結アブレーションシステムに接続するために、図1において、(実線で示す)電気接続ライン並びに/又は(破線で示す)機械的接続ライン及び/若しくは流体接続ラインをさらに有することができる。システムは、さらに、マグネットルーム12から電気的に隔離されたコントロールルーム22、及び機器室24を含むことができる。MRIシステムは、手術用器具32の挿入前に、腫瘍又は患者の体腔のような患者の関心部位を視覚化するために、患者を撮像することができる。さらに、挿入中に、患者の体内の目的の部位に手術用器具を誘導するために、撮像が行われることがある。さらに、挿入後及び手術中、並びに手術後にも、撮像が行われることがある。
【0014】
引き続き図1を参照して、非限定的かつ例示的な実施形態では、接続ラインは、患者20の体内に挿入可能なクライオプローブのような1つ以上の手術用器具32内で終端し得る。従って、いくつかのそのような例では、システムは、マグネットルーム12の外部に(例えば、コントロールルーム22又は機器室24に)配置され得る凍結アブレーションシステムの他の構成要素に1つ以上の手術用器具32、34、36を接続することを可能とするために、マグネットルーム12の内部に配置されたコネクタインタフェース30を含み得る。例えば、システムは、制御システム40を手術用器具32に操作用に接続するように、コントロールルーム22からマグネットルーム12まで及ぶ電気接続ライン54及び流体接続ライン62を含み得る。コネクタインタフェース30は、いくつかの有利な実施形態では、マグネットルーム12の外部に(例えば、コントロールルーム22に)配置された制御システム40に複数の手術用器具32を直接的又は間接的に(例えば、電気的及び/又は流体的に)接続することを可能とするために、マグネットの近くに配置されたモバイルコンソール50上に設けることができる。
【0015】
制御システム40と手術用器具32との間の電気接続及び流体接続について、例示的な実施形態によって説明する。制御システム40は、第1のセットの電気接続ライン54によって、マグネットルーム12の外部に配置されたジャンクションボックス52に電気的に接続することが可能である。さらに、ジャンクションボックス52は、マグネットルーム12の外部に(例えば、機器室24内に)配置された(イメージングルータ及び電気フィルタのような)電気機器及び/又はイメージング機器57に接続するために、第2のセットの電気接続ライン56を含むことができる。第3のセットの電気接続ライン58は、マグネットルーム12の内部に配置されたコネクタインタフェース30及び/又はモバイルコンソール50に電気機器及び/又はイメージング機器57を接続し得る。ジャンクションボックス52は、マグネットルーム12内の構成要素と電気室及び/又はコントロールルーム内の構成要素との間の取り外し可能な電気接続を可能とすることが可能である。
【0016】
再び図1を参照して、いくつかの例では、システムは、凍結手術(例えば、凍結アブレーション)を実施するために使用され得る。従って、いくつかの例では、システムは、1つ以上の極低温流体源60を含み得る。極低温流体源は、流体を極低温で供給するとともに、手術用器具32(例えば、クライオプローブ)に圧力を付与することができる液体容器又はガス容器とすることが可能である。極低温流体源は、アルゴン、窒素、空気、クリプトン、CF4、キセノン、又はN2Oのような、冷却ガスとすることが可能である。
【0017】
図1に示すように、極低温流体源は、マグネットルーム12の外部に配置されており、第1のセットの流体接続ライン62によって制御システム40に流体接続可能である。制御システム40は、次に、第2のセットの流体接続ライン64及び第3のセットの流体接続ライン66によって、コネクタインタフェース30及び/又はモバイルコンソール50に流体接続されることができる。第4のセットの流体接続ライン68は、手術用器具32(例えば、クライオプローブ)をコネクタインタフェース30及び/又はモバイルコンソール50に流体接続することが可能である。流体ラインは、可撓性があり、かつ/又は着脱可能とすることができ、これに流れる流体の圧力を調整するために他の流体部品を含み得る。このように、極低温流体源からの流体は、流体接続ライン62、64、66、68のセットによって手術用器具32に運ばれ得る。オプションとして、システムは、マグネットルーム12内にある構成要素とコントロールルーム22内の構成要素との間の流体接続を可能とするように、マグネットルーム12から電気的に隔離された流体接続パネル70を含むことができる。同様に、電気接続パネル72によって、マグネットルーム12内にある構成要素とコントロールルーム22及び/又は電気室内の構成要素との間の電気接続を容易なものにすることが可能である。
【0018】
再び図1を参照して、システムは、さらに、MRIスキャナ14に操作用に接続されたMRIディスプレイ86を含み、これは、手術中に外科医にガイダンスを提供するように、患者20の解剖学的特徴部を表す画像を表示するために、マグネットルーム12内に配置されている。MRIディスプレイ86は、機器室24内の電気的構成要素及び/又はイメージング構成要素並びにコントロールルーム22内に配置された制御システム40に操作用に接続されることができる。このような構成によって、システム全体の動作状態に関する情報を表示し得る。このような場合、有利には、MRIディスプレイ86は、例えば、手術の進行、MRIガイダンスに関する画像、及び/又は1つ以上の手術用器具32に関する現在の情報を監視するために、外科医が所望の画像を選択することを可能とし得る。オプションとして、手術の様々な側面の同時視覚化を可能とするために、複数のディスプレイをマグネットルーム12内に設け得る。
【0019】
前述のように、非限定的かつ例示的な実施形態では、手術用器具は、クライオプローブ100とすることが可能である。図2は、そのような1つのクライオプローブ100の全体図であり、図3は、図2のクライオプローブ100の正面断面図である。図2及び図3を参照して、クライオプローブ100は、細長い本体を含むことができる。クライオプローブ100の構成要素は、プローブシャフト102内に配置することが可能である。クライオプローブは、場合によっては、クライオニードルとすることができ、この場合、クライオニードルの構成要素は、トロカールの内部に配置され得る。プローブシャフト102は、展開時に患者20の組織に穿刺するために、クライオプローブ100の遠位部106に配置された処置用遠位チップ104で終端することが可能である。クライオプローブがクライオニードルとして構成される実施形態では、処置用遠位チップ104を、患者の皮膚に穿刺することが可能である。別の実施形態では、クライオプローブは、可撓性プローブとすることができ、カテーテルを通して挿入され得る。近位カプラ108は、クライオプローブ100を、コネクタインタフェース30、制御システム40、及び/又は極低温流体源に接続することを容易とすることが可能である。
【0020】
プローブシャフト102は、患者20の組織での展開を可能とするために、概ね薄い断面のものとすることが可能である。一例では、クライオプローブは、約2.1ミリメートルの外径のプローブシャフト102を有するクライオニードルとすることが可能である。他の寸法のプローブシャフト102も想定される。例えば、プローブシャフト102は、約1.5ミリメートル~約2.4ミリメートルの間の外径を有することが可能である。さらに、クライオプローブがクライオニードルである実施形態では、処置用遠位チップ104は、軟組織に穿刺するために、(例えば、クライオプローブ100の近位部に対して相対的に)軟性であるように、軟質材料で構成することが可能である。あるいは、クライオプローブの大部分を概ね可撓性とすることができ、患者の皮膚に穿刺せず、さらに、その中心軸の周りに所望の角度で可撓性(屈曲可能)であり得る。
【0021】
図3で示すように、クライオプローブ100は、高圧の極低温流体を処置用遠位チップ104に供給するために、その長さに概ね沿って延びる極低温流体供給管112を含む。極低温流体供給管112は、プローブシャフト102内に同軸状/同心状に配置することが可能である。極低温流体供給管112は、プローブシャフト102の遠位部106にわたる外面上にアイスボールを形成するために、極低温流体を供給するように構成することが可能である。場合によっては、極低温流体供給管112は、毛細管とすることが可能である。
【0022】
引き続き図3を参照して、いくつかの例では、クライオプローブ100は、クライオクーラを含む。例えば、図示の例では、極低温流体供給管112は、ジュールトムソンオリフィス114で終端することが可能である。ジュールトムソンオリフィス114は、極低温流体がジュールトムソンオリフィス114から出て膨張室内に膨張することを可能とするように、処置用遠位チップ104付近に配置することが可能である。従って、極低温流体供給管112を介して供給される高圧の極低温流体は、ジュールトムソンオリフィス114を通って出て、膨張室内で膨張する。極低温流体は、膨張室内で膨張すると、急速に冷却して、様々に異なる形状及び/又はサイズのアイスボールを処置用遠位チップ104の外面上に形成する。極低温流体の膨張は、極低温流体が膨張すると、流入する極低温流体よりも低温になるようにすることが可能である。ジュールトムソンオリフィス114のような例示的なクライオクーラを図示しているが、極低温デュワ、スターリング型クーラ、パルスチューブ冷凍機(PTR:Pulse-Tube Refrigerator)、ギフォードマクマホン(GM:Gifford-McMahon)クーラのような、他のタイプのクライオクーラが、本発明の範囲内で想定されることは理解されるべきである。さらに、上記で簡単に述べたように、冷却に使用し得る極低温流体には、アルゴン、液体窒素、空気、クリプトン、CF4、キセノン、又はN2Oが含まれる。
【0023】
再び図3を参照して、いくつかの例では、組織の解凍及び/又は焼灼を容易とするために、プローブシャフト102内にヒータ116をオプションとして設けることができる。いくつかのそのような例では、冷却及びアイスボール形成の後に、クライオプローブ100を凍結組織から外し易くするように、凍結組織を解凍するために、ヒータ116を作動させ得る。電気ヒータ116は、クライオプローブ100の遠位部106の加熱を容易とするために、極低温流体供給管112及びプローブシャフト102と同軸状に設けることができる。あるいは、電気ヒータ116は、クライオプローブ100の遠位部106を加熱するために、クライオプローブ100内の他の場所に配置することが可能である。電気ヒータ116は、抵抗ヒータ116とすることができ、その場合、電気ヒータ116は、これに流れる電流及び電気ヒータ116の電気抵抗に比例した熱を発生する。そのような場合、前述のように、(図1に示す)制御システム40は、クライオプローブ100内の電気ヒータ116への電流を供給及び/又は調整することが可能である。
【0024】
図1を参照して前述したように、凍結アブレーションシステムのいくつかの構成要素は、手術前、手術中、又は手術後のイメージング及びガイダンスを可能とするMRIシステムに近接して配置することが可能である。例えば、クライオプローブは、モバイルコンソール50からの第4のセットの電気接続ライン59に接続することができ、これが次にコネクタインタフェース30に接続される。図1では、1つのクライオプローブのみが接続ライン59によって電気的に接続されているが、別々の接続ライン59をそれぞれ用いて任意の数のクライオプローブをモバイルコンソール50に接続することが可能である。
【0025】
いくつかの有利な実施形態では、処置用遠位チップ104の外面は、MRI画像における画像アーチファクトを低減するために(例えば、従来のプローブ及び/又はプローブシャフトと比較して)低磁化率を有しつつ、患者の組織を効果的に凍結又は解凍するために、金属のような熱伝導材料で構成することが可能である。いくつかのそのような例では、処置用遠位チップ104の外面は、インコネル合金(例えば、インコネル625)のような材料で構成することが可能である。MRIシステムからの誘導磁界を最小限に抑えつつ、処置用遠位チップ104と患者の組織との間の熱交換を可能にする他の金属及び合金が、本発明の範囲内で想定される。さらに、プローブシャフト102の大部分は、MRI画像における画像アーチファクトを低減するのに適した磁化率を有する金属材料を含み得る。いくつかのそのような例示的な実施形態では、プローブシャフト102は、インコネル625のような材料を含むことができる。さらに、プローブシャフト102及び処置用遠位チップ104は、それぞれ、(SI単位で)約0.001を超えない磁化率、好ましくは(SI単位で)約6×10-4を超えない磁化率、さらに好ましくは(SI単位で)約1×10-4を超えない磁化率、を有する材料で構成することが可能である。
【0026】
図3に示すいくつかの態様では、電気ヒータ116は、MRIシステムからの磁界を受けたときに発生し得る画像アーチファクト及び力又はトルクを最小限とするように構成することが可能である。例えば、一態様では、電気ヒータ116は、MRIシステムからの磁界を受けたときに反応効果が生じないように、十分に低い磁化率を有する金属ワイヤ126で構成することが可能である。いくつかのそのような有利な例では、ヒータ116の金属ワイヤ126の磁化率は、(SI単位で)約5×10-4を超えない、好ましくは(SI単位で)約1.5×10-4を超えない、さらに好ましくは(SI単位で)約1×10-4を超えない、磁化率であり得る。さらに、金属ワイヤ126(又はヒータ116の抵抗要素を形成するその部分)は、チタンのような材料で構成することが可能である。電気ヒータ116を形成するために使用されるワイヤの材料は、低磁化率を有しつつ、電流が流れたときに熱が発生するように高い電気抵抗を有し得る。ヒータ116を制御システム40に電気的に接続するため、及びこれに電流を供給するために、ヒータ線の終端128、129に一対のリード線142、144を接続し得る。いくつかのそのような例では、(導電性であり得る)プローブシャフト102を通電ヒータ116から電気的に隔離するように、リード線142、144及びヒータ線の終端128、129を、プローブシャフト102の内面120から離間させて、極低温流体供給管112に接合又はその他の方法で装着し得る。
【0027】
図4A及び図4Bは、ヒータ線の斜視図を示しており、図4C及び図4Dは、クライオプローブ100の遠位部106と中央部122の正面斜視図と正面図をそれぞれ示している。中央部122は、遠位部106と近位部110との間であり得る。図4C図4Dでは、クライオプローブ100の内部の詳細を示すために、プローブシャフト102を取り除いている。図4A図4Dで示すように、電気ヒータ116は、逆巻き螺旋コイル124を含む抵抗要素を有する部分を備える。逆巻き螺旋コイル124は、金属ワイヤ126(例えば、チタン又は他の低磁化率材料)から形成することが可能である。逆巻き螺旋コイル124は、第2のセットのコイル124Bとは逆方向に巻回された第1のセットのコイル124Aを含むことができる。一例では、逆巻き螺旋コイル124は、図4Aに示す単一の金属ワイヤ126を取得して、図4Bに示すようにU字形ループ状部分130を形成するように、反対の終端128、129を互いに合わせて折り畳むことにより、巻回することが可能である。図4Cに示すように、U字形ループ状部分130を、遠位部106に配置することができ、折り畳んだワイヤの脚132、134を細長い極低温流体供給管112の周りに巻回することにより、折り畳んだワイヤを極低温流体供給管112の周りに連続的に巻回することが可能である。このようにして、第1の脚132から第1のセットのコイル124Aを第1の方向138に(例えば、第1の方向138に沿って電流が流れることを可能とするように)形成することができ、第2の脚134から第2のセットのコイル124Bを第2の方向140に(例えば、第2の方向140に沿って電流が流れることを可能とするように)形成することが可能である。例えば、第1のセットのコイル124Aが、正面から見て反時計回り方向である場合、第2のセットのコイル124Bは、正面から見て時計回り方向とすることができるが、第1のセットのコイル124A及び第2のセットのコイル124Bの具体的な巻回方向は、限定するものと解釈されなくてよい。
【0028】
このように、電気ヒータ116は、その大部分が逆巻きにされてコイル124A、124Bを形成している抵抗要素を含む。それらの抵抗要素は、ワイヤの端128、129付近で終端している。図4Dに示すように、ワイヤの終端128、129は、一対のリード線142、144に接続することができ、これを次に制御システム40に(例えば、直接的又は間接的に)接続することが可能である。制御システム40は、(例えば、リード線142、144を介して)電気ヒータ116への電流を供給及び/又は調整することが可能である。いくつかの実施形態では、第1のセットのコイル124A及び第2のセットのコイル124Bは、それぞれ電流が流れ得るので、それぞれが熱を発生し得る。
【0029】
いくつかの有利な態様では、図4A図4Dに示す電気ヒータ116は、ヒータ116に通電されたとき(例えば、これに電流が供給されたとき)のソレノイド効果を低減又は排除することが可能である。電流は、ヒータの動作に関連したものであり得るとともに、制御システムから供給され得る。逆巻きコイル124A、124Bを形成するようにワイヤを逆巻きにした結果として、有利に、電気ヒータ116に電流が供給されたときの電気ヒータ116に関連した磁界が、互いに(例えば、逆方向に作用して)打ち消し又は相殺し得る。一例では、電気ヒータ116に電流が供給されると、第1のセットのコイル124Aに関連した(例えば、第1のセットのコイルによって生成される、又は第1のセットのコイルに誘導される)第1の磁界146は、第2のセットのコイル124Bに関連した(例えば、第2のセットのコイルによって生成される、又は第2のセットのコイルに誘導される)第2の磁界148とは、逆方向であり得る。図4Cでは、第1の磁界146及び第2の磁界148を、(例えば、右手の法則に従って)例示的な磁力線によって示している。しかしながら、第1の磁界146及び第2の磁界148に関連したいくつかの他の磁力線の方向は、明確にするために省いている。さらに、第1の磁界146が第2の磁界148を打ち消すように、第1の磁界146は第2の磁界148と大きさが等しくてもよい。従って、電気ヒータ116に電流が流れて、かつクライオプローブ100が(例えば、MRIスキャナに近接して)マグネットルーム12内にあるときに、MRIシステムによって生成されるMRI画像におけるアーチファクトを低減又は排除するように、本発明のいくつかの実施形態によって、何らかのソレノイド効果を低減又は排除することが可能である。さらに、(ヒータに通電されているときに関連した磁界と比較して)より低い大きさの磁界も、MRIスキャナが動作しているときに電線に誘導される電流を含み得る。この場合、電気ヒータがMRIスキャナと同時に動作すると、MRI動作と両方から誘導される磁界も、逆巻き螺旋コイルと、プローブシャフト及びヒータの電気抵抗要素に低磁化率材料を使用した結果として、低減又は排除され得る。
【0030】
既述の説明に続けて、(MRI動作からの)誘導磁界と、(ヒータに供給される電流からの)発生磁界は、必ずしも互いに整合されていないことがあり、その結果、プローブシャフトに作用する正味の力すなわちトルクが生じる可能性がある。従って、さらなる有利な態様では、図4A図4Dに示す電気ヒータ116は、MRIスキャナの動作中(例えば、磁界及び/又は無線周波数電磁場が発生しているとき)にMRIシステムに近接してプローブシャフトが配置されていることと時を同じくして、電気ヒータ116に電流が供給される場合に、プローブシャフトに作用する正味の力又はトルクを低減又は排除することが可能である。明らかなように、電流が電気ヒータ116に流れるときに、ヒータ116が(例えば、MRIスキャナによって発生する)磁界を受けると、通電ヒータ線によって発生する磁界とは異なる方向に誘導磁界が作用する結果として、電気ヒータ116に力(例えば、ローレンツ力)が作用し得る。その力の方向は、右手の法則によって与えられることがある。しかしながら、電気ヒータ116を形成するのに低磁化率材料を用いている結果として、磁力の大きさは、電気ヒータを有する従来のクライオプローブに関連した磁力の大きさよりも低くなり得る。
【0031】
加えて、逆巻きコイル124A、124Bの結果として、磁力の方向は互いに逆であり得る。例えば、コイル124A、124Bに電流が流れて、かつコイル124A、124Bが(例えば、MRIマグネットからの)磁界を受けるときに、第1のセットのコイル124Aは第1の力150を発生し得るとともに、第2のセットのコイル124Bは第2の力152を発生し得る。(例えば、図4Cに、右手の法則による矢印として示す)第1の力150と第2の力152は、互いに逆方向に作用し得ることで、第1の力150は第2の力152を相殺し、これにより、電気ヒータ116に関連してプローブシャフト102に作用し得る正味の力(ひいては正味のトルク)は低減する。有利には、第1のセットのコイル124Aと第2のセットのコイル124Bは、同じ(低磁化率)材料から形成されるので、第1の力150と第2の力152は、同じ大きさであり得る。そのような場合、第1の力150が第2の力152を打ち消すことで、プローブシャフト102に作用する正味の力はゼロまで低減する。その結果、プローブシャフト102は、トルクを受けないことがある。そのような有利な実施形態によって、クライオプローブ100がMRIスキャナに近接して(例えば、マグネットルーム12内でMRIマグネット付近に)配置されるとき、かつ/又はMRIスキャナの動作中に、組織を解凍又は焼灼するために電気ヒータ116を使用することが可能となり得る。
【0032】
一態様では、クライオプローブ100は、温度を監視すること及び/又は制御システム40を含み得る。例えば、処置用遠位チップ104は、電気ヒータ116の動作中に温度を検知するための少なくとも1つの熱センサを含むことができる。いくつかの有利な態様では、電気ヒータ116の材料は、熱センサとして機能して、温度の測定を可能とするように、正の抵抗温度係数を有することが可能である。従って、そのような実施形態では、電気ヒータ116は、これに流れる電流が供給されるときに電気抵抗ヒータ116の温度を判定するために、温度測定装置に接続可能である。温度測定装置は、(図1に示す)制御システム40内に配置されることができ、又はマグネットルーム内でクライオプローブに近接して配置され得る。温度測定装置は、電流が流れるときの電気ヒータ116の抵抗を監視し得るとともに、ヒータ116の材料の抵抗温度係数に基づいて抵抗を推定する。制御システム40は、さらに、所望の外科的処置を実施する(例えば、凍結処置後にクライオプローブ100を抜去するために解凍する、又は組織を焼灼する)ための十分な温度を遠位チップにおいて提供するように、測定された温度に基づいてヒータ116への電流を調整し得る。
【0033】
図5は、MRIシステムと共にクライオプローブ100を使用して、組織を電気的に加熱する方法500を示している。図5に示す方法は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによるクライオプローブ100を用いて実施することが可能である。さらに、図5の方法で使用できるMRIシステムも、本明細書に記載の実施形態のいずれかによるものであり得る。ステップ502において、本方法は、患者をマグネットルーム内に配置することを伴う。患者は、患者の体内にクライオプローブを(例えば、標的組織又はその付近に)挿入する前又は後のいずれかに、ボアの内部に配置され得る。ステップ504において、クライオプローブ100をマグネットルーム内に配置し得る。ステップ506において、クライオプローブ100の遠位部106を患者の体内に挿入し得る。クライオプローブ100が患者の体内に入ると、加熱処置を実施し得る。有利には、加熱処置は、MRIシステムの動作中に同時に実施され得る。このとき、ステップ508において、MRIシステムは、磁界及び/又は無線周波数(RF)信号を生成し得るとともに、クライオプローブ100が患者の体内に挿入された状態で患者の標的組織を画像化する。ステップ510において、クライオプローブ100は、組織を加熱し得る。このとき、制御システム40は、MRイメージング中に同時に電気ヒータ116に電流を供給し得る。そのような有利な実施形態では、プローブシャフト102及びヒータ線の低磁化率(例えば、非強磁性)材料、並びに逆巻き螺旋コイル124によって、ソレノイド効果(例えば、画像アーチファクト、トルク付与、誘導磁界など)のような反応効果が軽減し得る。例えば、電気ヒータ116の螺旋コイル124A、124Bに関連した磁界及び磁力は、ステップ512及び514で互いに相殺し得る。
【0034】
制御システム40は、ステップ516において、プローブシャフト102の温度を判定し得る。一態様では、電気ヒータ116の材料は、既知の抵抗温度係数(例えば、正の抵抗温度係数)を有し得る。従って、制御システム40は、電流を受けているときの電気ヒータ116の抵抗を測定又は特定し得るとともに、プローブシャフト102の温度を判定し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法は、(ステップ518において)組織を解凍するステップを備えることができる。ステップ518において、制御システム40は、約60℃~約90℃の間の組織温度を実現するように、電気ヒータ116に電流を供給し得る。さらに、本方法は、(ステップ520において)組織を焼灼するステップを備えることができる。ステップ520において、制御システム40は、約100℃の組織温度を実現するように、電気ヒータ116に電流を供給し得る。解凍中又は焼灼中に、遠位チップにおいて実現できる温度は、前述のように温度測定装置によって測定し得る。そのような場合、制御システム40は、外科的処置(解凍又は焼灼)のための所望の温度であるかどうかを(ステップ522において)判断し得る。(例えば、プローブシャフト102において)所望の温度が得られたら、制御システム40は、ステップ524において、ヒータ116への電流の供給を停止し得る。オプションとして、本明細書に記載のシステムは、解凍処置又は焼灼処置の前若しくは後に、冷却及び/又は凍結処置を実施し得る。前述のように、冷却又は凍結処置は、クライオプローブ100の遠位部106においてアイスボールを形成するために、極低温流体をクライオプローブ100に供給することを伴い得る。所望の外科的処置が完了したら、ステップ526においてMRI動作を停止させ得る。
【0036】
図6は、磁気共鳴イメージング(MRI)を用いてクライオプローブ100を画像化する方法600を示している。図6に示す方法は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによるクライオプローブ100を用いて実施することが可能である。さらに、図6の方法で使用できるMRIシステムも、本明細書に記載の実施形態のいずれかによるものであり得る。本方法は、ステップ602において、MRスキャナを準備するステップを伴い得る。本方法は、ステップ604において、(例えば、制御システム40を用いて)電気ヒータ116に電流を供給することにより、クライオプローブ100を加熱することを伴う。MRスキャナは、ステップ606において、(図1に示す磁界及び/又はRF信号202のような)MR信号を生成し得る。ステップ608において、ヒータコイル124A、124Bに関連した磁界を、(例えば、上述のように、第1のセットのコイル124Aと第2のセットのコイル124Bによって)相殺し得る。クライオプローブ100が加熱されているときに同時に、ステップ610において、クライオプローブ100を画像化することが可能である。所望の程度の加熱が得られたら、ステップ612において、ヒータ116への電流を停止することができ、ステップ614において、MRI動作を停止させることができる。
【0037】
特に、図5に示す方法500及び図6に示す方法600のステップの具体的な順序は、限定するものと解釈されるべきではなく、それらのステップは、任意の所望の順序で実行され得る。例えば、MR動作は、クライオプローブを患者の体内に挿入する前に、開始され得る。しかしながら、方法500及び方法600を規定するステップの順序に関わりなく、本発明の有利な態様では、MRI動作は、クライオプローブ加熱処置と並行的かつ/又は同時的であり得る。MRマグネットは、クライオプローブの部分の画像化を、患者の体内への挿入前、挿入中、又は挿入後に開始させることができ、電気ヒータが電流を受けるときに、患者の体内に挿入されたクライオプローブの部分の画像化を継続し得る。このような効果は、本発明のいくつかの実施形態において、プローブシャフト及び電気ヒータのために低磁化率材料を選択するとともに、逆巻き螺旋コイルで電気ヒータを形成した結果として、実現される。
【0038】
本明細書の他の箇所で説明したように、従来のクライオプローブをMRI動作と同時に使用したときに発生し得る画像アーチファクトは、本発明の態様によって、最小限に抑えられる。さらに、電気ヒータを用いてクライオプローブを加熱するときに発生し得るソレノイド効果も、本発明の態様によって、最小限とする(又は排除する)ことができる。さらに、電気ヒータを有するクライオプローブをMRIシステムと同時に用いたときにプローブシャフトに作用し得る正味の力及び/又はトルクも、本発明の態様によって、最小限とする(又は排除する)ことができる。
【0039】
様々な例について説明した。これら及び他の例は、以下の請求項の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージングと連携してクライオプローブを電気的に加熱する方法であって、
本方法は、クライオプローブを提供する工程を備え、
該クライオプローブは、近位部と、前記近位部と反対側の遠位部と、を有するプローブシャフトを備え、前記プローブシャフトは、SI単位で0.001未満の磁化率を有する第1の材料で構成されており、かつ、
該クライオプローブは、逆巻き螺旋コイルを有する抵抗要素からなる電気抵抗ヒータを備え、前記逆巻き螺旋コイルは、第2のセットのコイルとは逆方向に巻回された第1のセットのコイルを備え、前記電気抵抗ヒータは、SI単位で0.0005未満の磁化率を有する第2の材料で構成されており、前記クライオプローブはMRIシステムのボア内において患者の標的組織内に挿入可能であり、
本方法は、前記クライオプローブを前記MRIシステムの前記ボア内に配置する工程を備え、
本方法は、前記クライオプローブが前記MRIシステムの前記ボア内に配置されているときに前記電気抵抗ヒータによって前記クライオプローブを加熱し、もって、前記第1のセットのコイルによって発生する第1の磁界が、前記第2のセットのコイルによって発生する第2の磁界によって打ち消され若しくは前記第2の磁界と逆向きになり、又は、前記第2のセットのコイルによって発生する前記第2の磁界で打ち消されるとともに前記第2の磁界と逆向きにする工程を備える、方法。
【請求項2】
60℃から90℃までの間の温度に達するように前記電気抵抗ヒータに電流を供給する工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
100℃の温度に達するように前記電気抵抗ヒータに電流を供給する工程をさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
温度測定システムに前記電気抵抗ヒータを接続する工程と、前記電気抵抗ヒータに電流が供給されているときに当該電気抵抗ヒータの温度を測定する工程とをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記MRIシステムを備えたMRIルームに前記クライオプローブを配置する工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
極低温流体をクライオプローブに供給する工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記クライオプローブがMRIスキャナに近接している場合に前記電気抵抗ヒータに電流が流れているときは、前記第1のセットのコイルにより発生した前記第1の磁界を前記第2のセットのコイルにより発生した前記第2の磁界によって相殺し、それによって前記MRIスキャナによって生成されるMRI画像におけるアーチファクトを抑える工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クライオプローブがMRIスキャナに近接している場合に前記電気抵抗ヒータに電流が流れているときは、前記第1のセットのコイルの第1の力を前記第2のセットのコイルの第2の力によって相殺し、それによって前記クライオプローブに作用するトルクを低減する工程をさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
磁気共鳴イメージング(MRI)を用いてクライオプローブを画像化する方法であって、
本方法は、クライオプローブを提供するステップを備え、
該クライオプローブは、近位部と、前記近位部と反対側の遠位部と、を有するプローブシャフトを備え、前記プローブシャフトは、SI単位で0.001未満の磁化率を有する第1の材料で構成されており、かつ、
該クライオプローブは、逆巻き螺旋コイルを有する抵抗要素からなる電気抵抗ヒータを備え、前記逆巻き螺旋コイルは、第2のセットのコイルとは逆方向に巻回された第1のセットのコイルを備え、前記電気抵抗ヒータは、SI単位で0.005未満の磁化率を有する第2の材料で構成されており、
本方法は、磁気共鳴(MR)スキャナを提供する工程を備え、
本方法は、前記電気抵抗ヒータに電流を供給することにより当該電気抵抗ヒータによって前記クライオプローブを加熱する工程を備え、
本方法は、磁気共鳴(MR)信号を生成する工程を備え、
本方法は、前記クライオプローブが加熱されときに当該クライオプローブを同時に画像化する工程を備え、もって、前記第1のセットのコイルによって発生した第1の磁界を前記第2のセットのコイルによって発生した第2の磁界によって打ち消され若しくは前記第2の磁界と逆向きになり、又は、前記第2のセットのコイルによって発生する前記第2の磁界で打ち消されるとともに前記第2の磁界と逆向きになる、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下記載する。
[項目1]
クライオプローブであって、
近位部と、前記近位部と反対側の遠位部と、を有するプローブシャフトを備え、前記遠位部は、患者の体内に挿入可能であり、前記プローブシャフトは、SI単位で0.001未満の磁化率を有する第1の材料で構成されており、
前記プローブシャフト内に配置された極低温流体供給管を備え、前記極低温流体供給管は、極低温流体源から極低温流体を受けるように構成され、前記極低温流体供給管は、前記患者の組織を冷却若しくは凍結するために、又は、前記患者の組織を冷却するとともに凍結するために、前記遠位部に向けて前記極低温流体を供給するように構成されており、
前記プローブシャフト内に配置された逆巻き螺旋コイルを有する抵抗要素からなる電気抵抗ヒータを備え、前記逆巻き螺旋コイルは、第2のセットのコイルとは逆方向に巻回された第1のセットのコイルを備え、前記電気抵抗ヒータに電流が供給されたときに、前記第1のセットのコイルによって発生する第1の磁界が、前記第2のセットのコイルによって発生する第2の磁界で打ち消され若しくは前記第2の磁界と逆向きであるように、又は、前記第2のセットのコイルによって発生する第2の磁界で打ち消されるとともに前記第2の磁界と逆向きであるように、前記第1のセットのコイルの巻数と前記第2のセットのコイルの巻数とをバランスさせており、前記電気抵抗ヒータは、SI単位で0.0005未満の磁化率を有する第2の材料で構成されており、前記電気抵抗ヒータは、電流が供給されると、組織を加熱することで解凍し若しくは組織を焼灼し、又は、組織を加熱することで解凍するとともに組織を焼灼するように構成されており、
もって、前記電気抵抗ヒータは、磁気共鳴イメージング(MRI)システムのマグネットルームに配置されたときに、組織の電気抵抗加熱を提供するように構成されている、クライオプローブ。
[項目2]
前記第1のセットのコイル及び前記第2のセットのコイルは、電流が前記電気抵抗ヒータに供給されると、熱を発生するように、それぞれ構成されている、項目1に記載のクライオプローブ。
[項目3]
前記電気抵抗ヒータは、前記第2の材料で構成された単一のワイヤからなり、前記単一のワイヤは、前記第1のセットのコイルを形成するために第1の方向に巻回されており、前記単一のワイヤは、前記第2のセットのコイルを形成するために第2の方向に巻回されており、前記第1の方向は、前記第2の方向とは逆向きである、項目1に記載のクライオプローブ。
[項目4]
前記単一のワイヤは、前記第1のセットのコイル及び前記第2のセットのコイルを形成するように、ループ状部分を有する連続ループとして巻回されている、項目3に記載のクライオプローブ。
[項目5]
前記ループ状部分は、前記プローブシャフトの前記遠位部内に又は前記遠位部の付近に配置されている、項目4に記載のクライオプローブ。
[項目6]
前記プローブシャフトは、合金で構成されている、項目1に記載のクライオプローブ。
[項目7]
前記第2の材料は、チタンである、項目6に記載のクライオプローブ。
[項目8]
前記クライオプローブがMRIスキャナに接続されているときに、前記電気抵抗ヒータは電流を受けるように構成されている、項目1に記載のクライオプローブ。
[項目9]
前記クライオプローブが前記MRIスキャナに近接している場合に前記電気抵抗ヒータに電流が流れるときには、前記MRIスキャナによって生成されるMRI画像におけるアーチファクトを低減するように、前記第1のセットのコイルに関連した前記第1の磁界は、前記第2のセットのコイルに関連した前記第2の磁界を打ち消す、項目8に記載のクライオプローブ。
[項目10]
前記逆巻き螺旋コイルは、前記クライオプローブが前記MRIスキャナに近接している場合に前記電気抵抗ヒータに電流が流れるときには、当該クライオプローブに作用するトルクを低減するように、前記第1のセットのコイルのローレンツ力と前記第2のセットのコイルのローレンツ力を相殺させることを可能とする、項目8に記載のクライオプローブ。
[項目11]
前記極低温流体供給管及び前記電気抵抗ヒータのそれぞれは、前記プローブシャフトと同軸状であり、前記電気抵抗ヒータは、前記極低温流体を前記遠位部から前記近位部に向けて戻すことを可能とするように、前記プローブシャフトの内壁から径方向に偏倚している、項目1に記載のクライオプローブ。
[項目12]
前記電気抵抗ヒータは、当該電気抵抗ヒータに流れる電流が供給されたときに前記電気抵抗ヒータの温度を判定するために、温度測定装置に接続可能である、項目1に記載のクライオプローブ。
[項目13]
前記第1の材料は、SI単位で0.0006以下の磁化率を有する、項目1に記載のクライオプローブ。
[項目14]
前記第2の材料は、SI単位で0.0002以下の磁化率を有する、項目1に記載のクライオプローブ。
[項目15]
前記第2の材料は、SI単位で0.0001~0.0005の間の磁化率を有する、項目1に記載のクライオプローブ。
様々な例について説明した。これら及び他の例は、以下の請求項の範囲内にある。