(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030063
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】キャパシタ用電極およびその製造方法ならびにキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/36 20130101AFI20230228BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20230228BHJP
H01G 11/40 20130101ALI20230228BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20230228BHJP
【FI】
H01G11/36
H01G11/70
H01G11/40
H01G11/42
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201702
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2019061313の分割
【原出願日】2019-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江崎 賢一
(72)【発明者】
【氏名】信森 千穂
(72)【発明者】
【氏名】吉野 嵩啓
(72)【発明者】
【氏名】石本 仁
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高容量のキャパシタ用電極を安定して提供する。
【解決手段】キャパシタ10用の電極2、3は、金属多孔体と、金属多孔体の空隙に充填された第1カーボンと、を含む。第1カーボンは、グラフェンを含む。グラフェンは、三次元構造を有し、グラフェンにおけるグラフェンシート積層体の平均積層数が10層以下であり、グラフェンシート同士の層間距離がランダムに変化し、グラフェンが縮れ構造もしくは折りたたみ構造を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属多孔体と、
前記金属多孔体の空隙に充填された第1カーボンと、を含み、
前記第1カーボンは、グラフェンを含み、
前記グラフェンは、三次元構造を有する、キャパシタ用電極。
【請求項2】
前記金属多孔体は、三次元網目構造を有する、請求項1に記載のキャパシタ用電極。
【請求項3】
前記グラフェンにおけるグラフェンシート積層体の平均積層数が、10層以下である、請求項1または2に記載のキャパシタ用電極。
【請求項4】
前記グラフェンにおけるグラフェンシート同士の層間距離がランダムに変化している、請求項1~3のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項5】
前記グラフェンが、縮れ構造もしくは折りたたみ構造を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項6】
前記第1カーボンのX線回折プロファイルは、002面に帰属される回折ピークP1を有し、かつ前記回折ピークP1よりも高角側にアモルファス相に帰属されるハローパターンを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項7】
前記X線回折プロファイルから算出される前記第1カーボンの002面の面間距離が、0.338nm以上である、請求項6に記載のキャパシタ用電極。
【請求項8】
更に、前記金属多孔体の空隙に充填された第2カーボンを含み、
前記第2カーボンは、平均長10μm以下の短炭素繊維および/または平均径0.1μm以下の炭素粒子である、請求項1~7のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項9】
前記グラフェン同士が、前記第2カーボンを介して積層されている、請求項8に記載のキャパシタ用電極。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極を備えるキャパシタ。
【請求項11】
第1カーボン原料である酸化グラフェンを含む水分散液を調製する工程と、
前記水分散液を前記金属多孔体に含浸させ、前記金属多孔体の空隙内で前記酸化グラフェンを還元する工程と、を含む、キャパシタ用電極の製造方法。
【請求項12】
前記酸化グラフェンを還元する工程が、前記水分散液を含浸させた前記金属多孔体を水熱処理することにより、前記金属多孔体の前記空隙内にゲル状生成物を生成させることを含む、請求項11に記載のキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項13】
前記酸化グラフェンを還元する工程が、更に、前記ゲル状生成物を還元剤と接触させることを含む、請求項12に記載のキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項14】
更に、前記金属多孔体の前記空隙内で、前記ゲル状生成物を凍結乾燥させる工程を含む、請求項12または13に記載のキャパシタ用電極の製造方法。
【請求項15】
前記水分散液が、更に第2カーボンを含み、
前記第2カーボンが、平均長10μm以下の短炭素繊維および/または平均径0.1μ
m以下の炭素粒子である、請求項11~14のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ用電極およびその製造方法ならびにキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、理論的な比表面積が約2600m2/gであり、かつ導電性を有するため、キャパシタ用電極材料として有望である。
【0003】
特許文献1は、ナノスケールのグラフェンプレートレットと導電性バインダとを複合化した電極をキャパシタに用いることを提案しており、82F/gの容量が得られると報告している。
【0004】
特許文献2は、カーボンナノチューブと、グラフェンと、イオン液体と、これらを孔部に保持する三次元網目状金属多孔体とを備え、イオン液体に対するカーボンナノチューブおよびグラフェンの合計量の割合が、10質量%以上90質量%以下であり、カーボンナノチューブとグラフェンとの割合が、質量比で3:7~7:3の範囲内である蓄電デバイス用電極を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7623340号明細書
【特許文献2】特開2014-225508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グラフェンの表面積を有効活用するには、グラフェンシート間の距離を適切に制御し、グラフェンシート同士の重なりを低減する必要がある。しかし、平坦形状を有するグラフェンは、電極の作製過程で相互に重なり合いやすく、グラフェンシート間の距離の制御が困難であり、十分な高容量を得ることができていない。
【0007】
また、グラフェンの充放電では、グラフェンシート層間にイオンが出入りするため、膨張と収縮による集電経路の劣化が大きくなりやすい。特許文献2のように、金属多孔体とカーボンナノチューブ(CNT)を用いることで集電経路を補強する試みもあるが、電極の内部構造が不均質になりやすく、安定した製造が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、金属多孔体と、前記金属多孔体の空隙に充填された第1カーボンと、を含み、前記第1カーボンは、グラフェンを含み、前記グラフェンは、三次元構造を有する、キャパシタ用電極に関する。
【0009】
本発明の別の側面は、上記キャパシタ用電極を備えるキャパシタに関する。
【0010】
本発明の更に別の側面は、第1カーボン原料である酸化グラフェンを含む水分散液を調製する工程と、前記水分散液を前記金属多孔体に含浸させ、前記金属多孔体の空隙内で前記酸化グラフェンを還元する工程と、を含む、キャパシタ用電極の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グラフェンを用いて、高容量のキャパシタ用電極を安定して得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る電気二重層キャパシタの一部切り欠き斜視図である。
【
図2】実施例1で得られた金属多孔体とキセロゲルとの複合物の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)(a)と、透過型電子顕微鏡写真(TEM像)(b)である。
【
図3】実施例1で得られた金属多孔体とキセロゲルとの複合物のX線回折プロファイルである。
【
図4】比較例3で用いた高結晶性グラフェンの電子顕微鏡写真である。
【
図5】比較例3で用いた高結晶性グラフェンのX線回折プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係るキャパシタ用電極は、金属多孔体と、金属多孔体の空隙に充填された第1カーボンとを含み、第1カーボンはグラフェンを含み、グラフェンは三次元構造を有する。換言すれば、キャパシタ用電極は、集電体として金属多孔体を有し、金属多孔体に三次元構造を有するグラフェンが活物質として担持されている。
【0014】
金属多孔体の空隙に三次元構造を有する第1カーボンが充填されることで、電極の集電性が劣化しにくくなり、容量劣化が抑制される。グラフェンが有する三次元構造は、金属多孔体が有するよりもミクロな三次元構造(すなわち、微細構造)である。ミクロな三次元構造によって、グラフェンシート同士の重なりが効果的に低減される。更に、三次元構造を有する第1カーボンが金属多孔体の骨格と結びつくことでも、第1カーボンの微細構造が維持されやすくなる。
【0015】
ここで、グラフェンとは、炭素原子1個分の厚さを有するグラフェンシートを最小単位とするカーボン材料であり、通常は複数のグラフェンシートが積層された積層体を構成している。また、グラフェンシートとは、炭素原子1個分の厚さを有するsp2結合炭素で構成された集合体もしくは分子であり、シート状に広がるハニカム状の格子構造を有している。一般的なグラフェンは、通常、平坦なシート状の形態を有しているが、ここでは層構造の乱れ(もしくは層間距離の乱れ)を有する様々な形態のグラフェンシート積層体もグラフェンの範疇に含める。グラフェンは、酸化グラフェンのようなグラフェン類縁体を部分的に含み得る。以下、グラフェンをグラフェンシート積層体とも称する。
【0016】
(a)金属多孔体
金属多孔体としては、例えば、スポンジメタル、エッチング箔、金属粒子焼結体などを用い得るが、三次元網目構造を有する金属多孔体が望ましい。三次元網目構造とは、例えば、金属で形成された繊維状もしくは棒状の部位が三次元的に連結して網目状の骨格を形成している構造であればよい。骨格は、内部に空洞を有する中空構造であってもよい。三次元網目構造を有する金属多孔体は、例えば、連続空隙を有する樹脂多孔体に金属メッキを施した後、樹脂多孔体を除去することにより製造できる。この場合、三次元網目構造は、連通した空隙(すなわち連通孔)を有する。
【0017】
金属多孔体の単位面積あたりの質量は、例えば500g/m2以下でもよく、150g/m2以下でもよい。金属多孔体の空隙率は、例えば80体積%~98体積%であればよく、90体積%~98体積%でもよい。金属多孔体の空隙の平均孔径は、例えば50μm以上、1000μm以下であればよく、400μm以上、900μm以下でもよく、450μm以上、850μm以下でもよい。
【0018】
金属多孔体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、白金等を用い得る。これらの金属を主成分とする合金を用いてもよい。
【0019】
(b)第1カーボン
グラフェンはミクロな三次元構造を有する。グラフェンシート積層体が三次元構造を有することでグラフェンシート同士の重なりが顕著に抑制され、かつグラフェンシート積層体と金属多孔体とが結びつくことでグラフェンシート積層体の微細構造が維持され、グラフェンの表面積を有効に活用し得るようになる。ここで、三次元構造を有するグラフェンシート積層体の主面には、複数の隆起部もしくは複数の窪み部が形成されている。このような三次元構造により、グラフェンシート間の距離が適切に制御され、グラフェンシート同士の重なりが効果的に低減される。
【0020】
グラフェンにおけるグラフェンシート積層体の平均積層数は、例えば10層以下であり、5層以下であってもよい。グラフェンは、炭素原子1個分の厚さを有する最小単位のグラフェンシート(すなわち単層シート)に近づくほど望ましい。平均積層数は、X線回折プロファイルの002面に帰属される回折ピークから算出される面間距離(d002)から推算される層数とすればよい(例えば、日本物理学会2015年秋季大会 概要集p1014)。或いは、グラフェンの電子顕微鏡(SEM等)写真から得られる推定値であればよい。例えば、グラフェンのSEM写真のスケールと、グラフェンシートの002面(以下、ベーサル面とも称する。)の面間距離からグラフェンシートの積層数を推定できる。例えば、任意の20枚のグラフェンシート積層体を選択し、それぞれの積層数を推定し、最大側から5番目までの数値と、最小側から5番目までの数値とを省き、中間の10個の数値の平均値を平均積層数とすればよい。
【0021】
グラフェンにおけるグラフェンシート同士の層間距離(すなわち、ベーサル面間距離)は、ランダムに変化していてもよい。層間距離のランダムな変化は、グラフェンの結晶性が低いことを意味する。グラフェンの積層構造の乱れが大きいほど、層間距離の変化も顕著になる。
【0022】
グラフェンシート積層体は、三次元構造として、例えば、縮れ構造もしくは折りたたみ構造を有してもよい。このとき、個々のグラフェンシート積層体は、自身が微細な多孔質構造(microporous structure)を有している。よって、グラフェンシート積層体の表面
近傍におけるイオンの拡散がより良好になる。縮れ構造や折りたたみ構造の存在は、グラフェンシート積層体の電子顕微鏡(SEM、TEM等)写真により確認することができる。
【0023】
縮れ構造とは、例えば、ランダムに形成された複数の襞(ひだ)状の隆起部と窪み部とを有する構造であればよい。また、折りたたみ構造とは、一枚のグラフェンシート積層体が部分的に複数回折り畳まれた折り畳み部を有する構造であり、縮れ構造の範疇に含まれる。折り畳み部に形成される隆起部の高さもしくは窪み部の深さは、その構造を有するグラフェンシート積層体のカーボン部分の厚みよりも大きくてよく、カーボン部分の厚みの2倍以上であってもよい。
【0024】
第1カーボンのX線回折プロファイルは、通常、002面に帰属される回折ピークP1を有する。グラフェンシート同士の重なりが大きく、グラフェンの結晶性が高くなるほど、回折ピークP1はシャープになる。
【0025】
一方、グラフェンが三次元構造を有する場合、回折ピークP1はブロードになり、複数のピークに波形分離できるようになる。また、X線回折プロファイルの回折ピークP1よりも高角側には、アモルファス相に帰属されるハローパターンが観測されてもよい。
【0026】
X線回折プロファイルから算出される第1カーボンの002面の距離(d002)は、
例えば0.338nm(3.38Å)以上であればよい。d002は、2θ=26.38°付近の領域に観測される回折ピークを波形分離し、各成分についてd002を算出し、その平均として算出される。第1カーボンの002面の距離(d002)は、好ましくは0.340nm(3.40Å)以上であり、グラフェンの高い表面積を維持する観点からは0.360nm(3.60Å)以上がより好ましく、0.370nm(3.70Å)以上が更に好ましい。
【0027】
(c)第2カーボン
キャパシタ用電極は、更に、金属多孔体の空隙に充填された第2カーボンを含んでもよい。第2カーボンとしては、平均長10μm以下の短炭素繊維および/または平均径0.1μm以下の炭素粒子を用いることが望ましい。
【0028】
第2カーボンは、短炭素繊維および/または炭素粒子であるため、金属多孔体の空隙に充填されやすく、電極の安定した製造が可能である。よって、電極の内部構造も不均質になりにくい。また、一般的なCNTがグラフェンシート積層体間に介在すると、イオン拡散が阻害されやすく、低温での抵抗が上昇しやすいが、短炭素繊維および/または炭素粒子を用いる場合には、そのような抵抗上昇も抑制される。
【0029】
キャパシタ用電極が、第1カーボンに加えて第2カーボンを含むとき、グラフェン同士は、第2カーボンを介して積層されていることが望ましい。これにより、グラフェンシート同士の重なりが更に抑制され、グラフェンの表面積をより有効に活用することができるようになる。
【0030】
(i)短炭素繊維
短炭素繊維は、例えば、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等であればよい。短炭素繊維は、内部に中空の空間(中空部)を有していてもよい。
【0031】
短炭素繊維の平均長は、10μm以下であればよいが、グラフェン間のイオン拡散性をより高くする観点から、2μm以下が望ましく、0.1μm以下がより望ましい。短炭素繊維の平均長は、電子顕微鏡(SEM、TEM等)写真から分析し得る。例えば、任意の20本の短炭素繊維を選択し、それぞれの長さを測定し、最大側から5番目までの数値と、最小側から5番目までの数値とを省き、中間の10個の数値の平均値を平均長とすればよい。なお、短炭素繊維は、10μm以下と短いため、概ね直線状に近似することができる。よって、短炭素繊維の長さは、その両端を直線で結んだときの当該直線の長さを意味する。
【0032】
短炭素繊維の平均直径は、例えば200nm以下であり、5nm以上、200nm以下であってもよく、10nm以上、170nm以下であってもよい。短炭素繊維の直径とは、短炭素繊維の長さ方向に垂直な方向の最大長さであり、平均直径は、電子顕微鏡(SEM、TEM等)写真から分析し得る。例えば、任意の20本の短炭素繊維を選択し、それぞれの直径を測定し、最大側から5番目までの数値と、最小側から5番目までの数値とを省き、中間の10個の数値の平均値を平均直径とすればよい。
【0033】
(ii)炭素粒子
炭素粒子の平均径は、0.1μm以下であればよいが、グラフェン間のイオン拡散性をより高くする観点から、0.05μm以下が望ましく、0.03μm以下がより望ましい。炭素粒子の平均径は、電子顕微鏡(SEM、TEM等)写真から分析し得る。例えば、任意の20個の炭素粒子を選択し、それぞれの最大径を測定し、最大側から5番目までの数値と、最小側から5番目までの数値とを省き、中間の10個の数値の平均値を平均径とすればよい。また、炭素粒子を分離し得る場合、レーザー回折式の粒度分布測定装置によ
り測定可能である。この場合、体積基準の粒度分布における累積体積50%のメディアン径を平均径とすればよい。
【0034】
炭素粒子の具体例として、黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、カーボンブラック等が挙げられる。中でも、カーボンブラックが好ましく、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどを用い得る。なお、複数の炭素粒子(ここでは一次粒子)が連結して鎖状ストラクチャー(二次粒子)を構成してもよい。この場合、平均径は、一次粒子の平均径である。鎖状ストラクチャーの長さは、特に限定されないが、2μm以下が望ましく、0.5μm以下が更に望ましい。
【0035】
(iii)第1カーボン/第2カーボン割合
第1カーボンと第2カーボンとの合計に占める第1カーボンの割合は、40~98質量%であればよく、80~98質量%でもよい。高容量のキャパシタ用電極を得るためには、大きい表面積を有するグラフェンの割合が大きいことが望ましい。一方、第1カーボンの割合が大き過ぎると、グラフェン間に介在する第2カーボンが少なくなり、グラフェンシート同士の重なりを抑制する効果が小さくなる。第1カーボンの割合が上記範囲であれば、グラフェンシート同士の重なりが顕著に抑制されるとともに、キャパシタ用電極の容量を効率的に高めることができる。
【0036】
(d)第3成分
電極層は、第1カーボンおよび第2カーボン以外に、例えば活性炭のような他の活物質を含んでもよい。また、本発明は、電極層が平均長2μmを超えるCNTを含む場合を排除するものではなく、電極層に少量のCNTが含まれてもよい。
【0037】
次に、キャパシタ用電極の製造方法の一例について説明する。
(i)分散液調製工程
まず、第1カーボン原料である酸化グラフェンを含む水分散液を調製する。酸化グラフェンは、第1カーボンの前駆体である。第1カーボンに加え、第2カーボンを含む電極を作製する場合には、酸化グラフェンを含む水分散液に、更に、第2カーボンを混合すればよい。
【0038】
水分散液には、第1カーボン原料、第2カーボンおよび水以外に、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の分散剤等を含ませてもよい。
【0039】
酸化グラフェンとは、酸素含有官能基を有するグラフェン類縁体であり、例えば、グラファイトの酸化を経由してグラファイトから単層または多層の状態で剥離生成する材料である。酸素含有官能基は、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の親水性基であり、水分散性を有する。
【0040】
グラファイトの酸化は、例えば、水中で酸化剤を用いて行い得る。酸化剤には、硫酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸、重クロム酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、過酸化物、過硫酸塩、有機過酸などを用い得る。水には水溶性溶媒を添加してもよい。水溶性溶媒としては、アルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが例示できる。水中での酸化反応により、酸化グラフェンの水分散液が生成する。酸化グラフェンの水分散液に第2カーボンを添加することで、第1カーボン原料と第2カーボンとを含む水分散液が得られる。
【0041】
酸化グラフェンの酸化度(酸素含有量)は、例えば10~60質量%であればよく、20~50質量%でもよく、30~50質量%でもよい。酸化グラフェンの酸化度は、例え
ば、X線光電子分光法(XPS)により測定し得る。酸化グラフェンに含まれる炭素(C)と酸素(O)の質量をXPSで測定し、炭素と酸素との合計質量に占める酸素の質量割合を算出すればよい。
【0042】
(ii)還元工程
次に、酸化グラフェンを含む水分散液を、金属多孔体に含浸させ、その後、金属多孔体の空隙内で酸化グラフェンを還元すればよい。水分散液を金属多孔体に含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、水分散液に金属多孔体を浸漬する方法、金属多孔体に水分散液を塗布する方法などが挙げられる。
【0043】
また、酸化グラフェンの還元方法は、特に限定されないが、例えば水熱処理が挙げられる。例えば、水分散液を含浸させた金属多孔体をオートクレーブに封入して水熱処理することにより、金属多孔体の空隙内にゲル状生成物を生成させればよい。水熱処理の温度は、例えば150℃以上であればよく、170℃以上、200℃以下でもよい。
【0044】
水熱処理では、金属多孔体と第1カーボンとの架橋構造が生成され得る。例えば、エーテル結合基(-O-)等の官能基を介して金属多孔体と第1カーボンとが架橋される。すなわち、水熱処理によれば、金属多孔体と複合化され、かつ、三次元構造を有するグラフェンを含むゲル状生成物が得られる。
【0045】
水分散液に、酸化グラフェンとともに第2カーボンを含ませた場合は、第2カーボンの存在下で酸化グラフェンを還元する。この場合、水熱処理によって、第1カーボンと第2カーボンとの架橋構造も生成され得る。例えば、エーテル結合基等の官能基を介して第1カーボンと第2カーボンとが架橋される。すなわち、金属多孔体および第2カーボンと複合化され、かつ、三次元構造を有するグラフェンを含むゲル状生成物が得られる。
【0046】
還元を更に進行させるために、ゲル状生成物を還元剤と接触させてもよい。還元剤としては、例えば、金属ヒドリド類、ボロヒドリド類、ボラン類、ヒドラジンもしくはヒドラジド類、アスコルビン酸類、チオグリコール酸類、システイン類、亜硫酸類、チオ硫酸類、亜ジチオン酸類などが例示できる。例えば、アスコルビン酸ナトリウムのような水溶性の還元剤を含む水溶液に、金属多孔体とともにゲル状生成物を浸漬すればよい。水溶液の温度は、例えば20~110℃であればよく、40~100℃でもよく、50~100℃でもよい。還元剤の使用量は、還元剤の種類、酸化グラフェンの酸化度、ゲル状生成物量などに応じて適宜調整すればよい。還元後のグラフェンの酸化度は、例えば40質量%以下とすればよく、20質量%以下としてもよい。
【0047】
(iii)凍結乾燥工程
その後、ゲル状生成物は、凍結乾燥(フリーズドライ)させることが好ましい。凍結乾燥によれば、グラフェンの三次元構造が高度に維持された状態の乾燥ゲル(キセロゲル)を得ることができる。凍結乾燥は、例えば-50℃~0℃、好ましくは-50℃~-20℃で、100Pa以下、更には1Pa以下の減圧下で行えばよい。また、金属多孔体の空隙内で、ゲル状生成物を凍結乾燥させることで、金属多孔体と、第1カーボン(および第2カーボン)との接続状態が維持されやすい。これにより、充放電によってグラフェンの膨張と収縮が繰り返されても、集電経路の劣化が抑制されるようになる。凍結乾燥により得られた金属多孔体とキセロゲルとの複合物は、そのまま高容量を発現するキャパシタ用電極として使用し得る。
【0048】
次に、上記キャパシタ用電極を備えるキャパシタの一例について説明する。上記キャパシタ用電極は、例えば、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の電極として適用し得る。
【0049】
図1は、電気二重層キャパシタ10の一部切り欠き斜視図である。
図示例の電気二重層キャパシタ10は、捲回型のキャパシタ素子1を具備する。キャパシタ素子1は、それぞれシート状の第1電極2と第2電極3とをセパレータ4を介して捲回して構成されている。第1電極2および第2電極3は、それぞれ、少なくとも第1カーボン(キセロゲル)と金属多孔体とを含む複合体であり、第1カーボンはイオンを吸着および脱着することで容量を発現する。セパレータ4には、例えば、セルロースを主成分とする不織布が用いられる。第1電極2および第2電極3には、それぞれ引出部材としてリード線5a、5bが接続されている。キャパシタ素子1は、電解液(図示なし)とともに円筒型の外装ケース6に収容されている。外装ケース6の材質は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属であればよい。外装ケース6の開口は、封口部材7によって封止されている。リード線5a、5bは、封口部材7を貫通するように外部に導出されている。封口部材7には、例えば、ブチルゴムなどのゴム材が用いられる。
【0050】
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解させたイオン性物質(例えば有機塩)との混合物であればよい。溶媒は、非水溶媒でもよく、イオン性液体でもよい。電解液におけるイオン性物質の濃度は、例えば、0.5~2.0mol/Lであればよい。
【0051】
非水溶媒としては、高沸点溶媒が好ましい。例えば、γ-ブチロラクトンなどのラクトン類、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、スルホランなどの環状スルホン類、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類、酢酸メチルなどのエステル類、1,4-ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類、ホルムアルデヒドなどを用いることができる。
【0052】
有機塩とは、アニオンおよびカチオンの少なくとも一方が有機物を含む塩である。カチオンが有機物を含む有機塩としては、例えば、4級アンモニウム塩が挙げられる。アニオン(もしくは両イオン)が有機物を含む有機塩としては、例えば、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリニウムなどが挙げられる。
【0053】
アニオンは、耐電圧特性を向上させる観点から、フッ素原子を含むことが好ましく、例えばBF4
-および/またはPF6
-が用いられる。好ましい有機塩として、具体的には、エチルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレートのようなテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0054】
上記実施形態では、捲回型キャパシタについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他構造のキャパシタ、例えば、積層型あるいはコイン型のキャパシタにも適用し得る。
【0055】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0056】
《実施例1》
本実施例では、定格電圧2.8Vの捲回型の電気二重層キャパシタ(Φ18mm×L(長さ)70mm)を作製した。以下に、電気二重層キャパシタの具体的な製造方法について説明する。
【0057】
第1カーボン原料である酸化グラフェンを0.35質量%含む水分散液を調製した。一
方、三次元網目構造を有する金属多孔体として、空隙の平均孔径が510μm、厚み1mmのアルミニウム(Al)多孔体を準備し、水分散液に金属多孔体を浸漬して空隙に水分散液を充填した。
【0058】
次に、水分散液を含浸させたAl多孔体を180℃で1時間、水熱処理して、Al多孔体とゲル状生成物との複合体を得た。引き続き、複合体を還元剤であるアスコルビン酸ナトリウム水溶液(アスコルビン酸ナトリウム濃度1.0mol/L)に浸漬し、100℃に加熱して2時間保持し、酸化グラフェンを十分に還元し、三次元構造を有するグラフェンを生成させた。その後、ゲル状生成物を-20℃で100Paの減圧下で凍結乾燥(フリーズドライ)させて、Al多孔体とキセロゲルとの複合体であるキャパシタ用電極を得た。
【0059】
[評価]
(第1カーボンの構造)
得られたAl多孔体とキセロゲルとの複合体の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を
図2(a)に示し、透過型電子顕微鏡写真(TEM像)を
図2(b)に示す。各像には、ランダムに形成された複数の襞状の隆起部と窪み部とを有する縮れ構造もしくは折りたたみ構造が見られる。折り畳み部に形成されている隆起部の高さもしくは窪み部の深さは、カーボン部分の厚みよりも十分に大きく、少なくともカーボン部分の厚みの2倍以上を有している。
【0060】
(静電容量)
一対の同じ電極を準備し、それぞれにリード線を接続し、セルロース製不織布のセパレータを介して捲回してキャパシタ素子を構成し、電解液とともに所定の外装ケースに収容し、封口部材で封口して、電気二重層キャパシタA1を完成させた。電解液には、エチルジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを非水溶媒であるプロピレンカーボネートに1.0mol/L濃度で溶解させた溶液を用いた。その後、定格電圧を印加しながら、60で16時間エージング処理を行った。得られた電気二重層キャパシタA1について、25℃で静電容量を測定した。
【0061】
(002面の間隔(d002))
次に、電気二重層キャパシタを分解し、電極に含まれるグラフェンのX線回折測定を行った。得られたX線回折プロファイルを分析して、第1カーボンのd002を求めたところ、3.422Åであった。金属多孔体とキセロゲルとの複合体のX線回折プロファイルを
図3に示す。
【0062】
図3において、002面に帰属される回折ピークP1は比較的ブロードであり、複数のピークに波形分離可能であり、グラフェンシート同士の層間距離がランダムに変化しているものと考えられる。また、回折ピークP1よりも高角側にアモルファス相に帰属されるブロードなハローパターンが見られる。
【0063】
《比較例1》
実施例1と同様に、第1カーボン原料である酸化グラフェンを0.35質量%含む水分散液を調製し、その水分散液を180℃で1時間、水熱処理して、ゲル状生成物を得た。引き続き、ゲル状生成物を還元剤であるアスコルビン酸ナトリウム水溶液で実施例1と同様に還元し、その後、ゲル状生成物を-20℃で100Paの減圧下で凍結乾燥(フリーズドライ)させて、キセロゲルを得た。
【0064】
次に、キセロゲルを、結着剤であるCMCとともに水に分散させてスラリーを調製した。CMCの使用量は、キセロゲル100質量部あたり、10質量部とした。得られたスラ
リーを実施例1と同じ金属多孔体に充填し、真空中で、110℃で加熱して乾燥し、実施例1と実質同量のグラフェンを含むキャパシタ用電極を得た。この電極を用いたこと以外、実施例1と同様に電気二重層キャパシタB1を作製し、同様に評価した。
【0065】
《比較例2》
キセロゲルの代わりに活性炭(比表面積2200m2/g)を用いたこと以外、比較例
1と同様にスラリーを調製し、比較例1と同様に電気二重層キャパシタB2を作製し、同様に評価した。
【0066】
《比較例3》
キセロゲルの代わりに、高結晶性グラフェンを用いたこと以外、比較例1と同様にスラリーを調製し、比較例1と同様に電気二重層キャパシタB3を作製し、同様に評価した。
【0067】
高結晶性グラフェンの電子顕微鏡写真を
図4に示す。高結晶性グラフェンのX線回折プロファイルを
図5に示す。
【0068】
図4において、高結晶性グラフェンは平坦なシートであり、隆起、窪みなどの三次元構造は見られない。
図5では、002面に帰属されるピークP1は極めてシャープであり、高角側のハローパターンも見られない。高結晶性グラフェンのd002を求めたところ、3.369Åであった。
【0069】
上記実施例および比較例の評価結果をまとめて表1に示す。
【0070】
【0071】
以上のように、実施例1のキャパシタA1は、高結晶グラフェンを用いたキャパシタB3に比べて顕著に高い静電容量を発現し、高表面積を有する活性炭を用いたキャパシタB2よりも更に高い容量が得られた。一方、キセロゲルをスラリー化したキャパシタB1では、キャパシタB3よりも容量が低下した。これはキセロゲルのスラリー化の過程でグラフェンの三次元構造が崩壊したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、高容量のキャパシタ用電極を安定して得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1:キャパシタ素子、2:第1電極、3:第2電極、4:セパレータ、5a:第1リード線、5b:第2リード線、6:外装ケース、7:封口部材、10:キャパシタ
【手続補正書】
【提出日】2023-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属多孔体と、
前記金属多孔体の空隙に充填された第1カーボンであるグラフェンと、
前記金属多孔体の空隙に充填された第2カーボンである短炭素繊維または炭素粒子と、を含み、
前記第1カーボンのX線回折プロファイルは、002面に帰属される回折ピークP1を有し、かつ前記回折ピークP1よりも高角側にアモルファス相に帰属されるハローパターンを有する、
キャパシタ用電極。
【請求項2】
前記X線回折プロファイルから算出される前記第1カーボンの002面の面間距離が、0.338nm以上である、請求項1に記載のキャパシタ用電極。
【請求項3】
前記短炭素繊維は、気相成長炭素繊維またはカーボンナノファイバである、請求項1または2に記載のキャパシタ用電極。
【請求項4】
前記炭素粒子は、黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素およびカーボンブラックからなる群より選択される、請求項1または2に記載のキャパシタ用電極。
【請求項5】
前記炭素粒子は、連結して鎖状ストラクチャーを構成している、請求項4に記載のキャパシタ用電極。
【請求項6】
前記金属多孔体と前記第1カーボンとの架橋構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項7】
前記第1カーボンと前記第2カーボンとの架橋構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項8】
前記第1カーボンと前記第2カーボンとの合計に占める前記第1カーボンの割合は、40~98質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項9】
前記グラフェンは、三次元構造を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項10】
前記グラフェンの酸化度は、40質量%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項11】
前記金属多孔体は、三次元網目構造を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項12】
前記グラフェンにおけるグラフェンシート積層体の平均積層数が、10層以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項13】
前記グラフェンにおけるグラフェンシート同士の層間距離がランダムに変化している、請求項1~12のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項14】
前記グラフェンが、縮れ構造もしくは折りたたみ構造を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項15】
前記グラフェン同士が、前記第2カーボンを介して積層されている、請求項1~14のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極を備えるキャパシタ。
【請求項17】
金属多孔体と、
前記金属多孔体の空隙に充填された第1カーボンであるグラフェンと、を含み、
前記金属多孔体と前記第1カーボンとの架橋構造を有する、キャパシタ用電極を備えるキャパシタ。
【請求項18】
金属多孔体と、
前記金属多孔体の空隙に充填されたカーボンと、を含み、
前記カーボンは、グラフェンのみからなり、
前記グラフェンは、三次元構造を有する、キャパシタ用電極を備えるキャパシタ。