(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030079
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】ワークピース生産方法および測定システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203452
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2019566679の分割
【原出願日】2018-05-31
(31)【優先権主張番号】1708730.5
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケビン バリー ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ウィッシャーデイヴィーズ
(57)【要約】
【課題】生産機械および検査ステーションの使用をより効率的にする。
【解決手段】複数の同様のワークピースが、少なくとも1つの生産機械上で生産される。生産機械上でワークピースの生産の順序または時間が記録される。そのように記録されたワークピースのうちの少なくともいくつかが、2つ以上の検査ステーションで測定される。1つのワークピースの寸法または点が、検査ステーションのうちの1つで測定され、別のワークピースの対応する寸法または点が、別の検査ステーションで測定される。ワークピースの生産の順序または時間を考慮に入れて、2つ以上の検査ステーションで行われた対応する寸法または点の測定の結果が共に分析される。出力信号が、共にした結果の分析に基づいて生成される。出力信号は、生産機械のパフォーマンスまたは検査ステーションのうちの1つまたは複数のパフォーマンスを示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実施されるワークピース生産方法であって、
1つの生産機械上で生産工程において複数の名目上同様なワークピースを生産するステップと、
前記生産機械上で前記ワークピースのうちの少なくともいくつかの生産の順序または時間を記録するステップと、
2つ以上の検査ステーションで、そのように記録された前記ワークピースのうちの少なくともいくつかを測定するステップであって、1つのワークピースの特徴の寸法または点が、前記検査ステーションのうちの1つで測定され、前記ワークピースのうちの別のワークピースの対応する特徴の対応する寸法または点が、前記検査ステーションのうちの別の検査ステーションで測定される、該ステップと、
前記ワークピースの生産の前記順序または時間を考慮に入れて、前記2つ以上の検査ステーションで行われた対応する寸法または点の前記測定の結果を共に分析するステップと、
前記共にした結果の分析に基づいて、出力信号を生成するステップであって、前記出力信号は、前記生産機械のパフォーマンス、または前記検査ステーションのうちの1つまたは複数のパフォーマンスを示す、該ステップと
を含むことを特徴とするワークピース生産方法。
【請求項2】
前記ワークピースの生産の前記順序は、それらの生産の前記時間から導出されることを特徴とする請求項1に記載のワークピース生産方法。
【請求項3】
前記結果を分析するステップは、前記ワークピースの生産の前記時間の間の時間間隔を考慮に入れることを特徴とする請求項2に記載のワークピース生産方法。
【請求項4】
前記測定の前記結果を分析するステップは、経時的な前記生産機械または前記生産機械の工具もしくは工具タレットのパフォーマンスの順序付けられた履歴を生成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項5】
前記測定の前記結果を分析するステップは、経時的な前記測定の結果における傾向にあるかどうか、たとえば、連続するワークピースが生産されるにつれて特定の寸法のサイズが徐々に増大している傾向があるか、どうかを検出するステップを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項6】
前記測定の前記結果を分析するステップは、経時的な前記生産機械または前記生産機械の工具もしくは工具タレットのパフォーマンスにおける傾向があるかどうかを検出するステップを含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項7】
前記測定の前記結果を分析するステップは、ワークピースの特定の寸法または特定の点の座標が制御限界を超えているときを検出するステップを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項8】
前記測定の前記結果を分析するステップは、連続するワークピース上の特定の寸法または点の一連の測定をフィルタリングして、前記結果を平滑化する、または外れ値を除去するステップを含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項9】
前記フィルタリングされた一連の測定が制御限界を超えているときを検出するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載のワークピース生産方法。
【請求項10】
前記測定の前記結果は、統計的に分析されて、前記ワークピースを生産した前記生産機械、または前記生産機械の工具または工具タレットの工程能力を決定する請求項1ないし9のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項11】
各ワークピースは、機械可読形式で識別番号を割り当てられ、前記識別番号は、前記ワークピース上においてまたは前記ワークピースと共に、前記生産機械から関連する前記検査ステーションへ移動し、前記ワークピースの生産の前記順序または時間は、前記ワークピース識別番号を用いて一元的に記録されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項12】
各ワークピースの生産の前記時間、または前記ワークピースの生産の前記順序を示す番号が、機械可読形式で記録され、前記ワークピース上でまたは前記ワークピースと共に、前記生産機械から関連する前記検査ステーションへ移動することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項13】
前記生産機械および前記検査ステーションは、工場において配置され、前記測定の前記結果の前記分析、および前記出力信号の前記生成は、前記工場から離れた位置で行われることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項14】
前記出力信号を前記生産機械にフィードバックして、前記生産機械の前記生産工程を調整するステップを含むことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項15】
前記生産機械にフィードバックされる前記出力信号は、将来のワークピースの生産を修正するための工具オフセット値を含むことを特徴とする請求項14に記載のワークピース生産方法。
【請求項16】
前記出力信号は、前記生産機械または前記生産機械の工具もしくは工具タレットの工程能力の尺度を提供することを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項17】
前記出力信号は、前記結果が予め定められた限界値または許容値に近づいているまたは超える場合に生成される人間オペレータに対する警報信号またはメッセージを含むことを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項18】
前記結果を分析するステップは、前記2つ以上の検査ステーションで行われた対応する寸法または点の前記測定の前記結果を比較するステップを含み、
前記検査ステーションのうちの1つからの前記結果が、他の前記検査ステーションのうちの1つまたは複数の前記結果から、予め定められた量以上に異なる場合に、前記出力信号は提供されることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項19】
結果が異なる前記検査ステーションのうちの前記1つから得られた結果を調整するステップを含み、前記結果は、前記出力信号に依存する量によって調整されることを特徴とする請求項18に記載のワークピース生産方法。
【請求項20】
複数の生産機械が存在し、各生産機械は、2つ以上の検査ステーションに関連付けられ、各検査ステーションは、1つの特定の生産機械によってのみ生産されたワークピースに関する寸法または点を測定することを特徴とする請求項1ないし19のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項21】
複数の生産機械が存在し、各生産機械は、2つ以上の検査ステーションに関連付けられ、前記検査ステーションのうちの1つまたは複数は、前記生産機械のうちの2つ以上によって生産されたワークピースに関する寸法または点を測定する請求項1ないし20のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項22】
前記ワークピースの複数の寸法または点が、前記測定するステップにおいて測定されることを特徴とする請求項1ないし21のいずれか1つに記載のワークピース生産方法。
【請求項23】
製造システムであって、
1つまたは複数の生産機械と、
2つ以上の検査ステーションと、
前記1つまたは複数の生産機械上でワークピースの生産、および前記検査ステーションでそのように生産されたワークピースの検査をスケジューリングするための制御システムと
を備え、
前記制御システムは、請求項1ないし22のいずれか1つに記載の方法を動作させるように構成されたことを特徴とする製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースまたは部品の生産および測定に関し、また、そのような生産および測定のための方法および製造システムにも関する。本明細書では、用語「ワークピース」と用語「部品」は交換可能に使用される。
【背景技術】
【0002】
自動化された工場製造システムは、ワークピースを生産するための1つまたは複数の生産機械(たとえば工作機械など)を含んでよい。
【0003】
典型的には、これらは、一連の名目上同一のワークピースとして生産される。製造システムはまた、生産されたワークピースを検査するための1つまたは複数の検査ステーションを含んでよい。検査ステーションは、固定具ゲージなどの従来のゲージング、またはハイトゲージもしくはキャリパなどの手動ゲージも含んでよい。または、ワークピースを測定するための座標測定機(CMM)、もしくはそれらを主基準と比較するための比較ゲージング機械を含んでよい。これらの生産機械および検査機械は、各々が、ネットワークによって1つまたは複数のサーバコンピュータに連結された数値制御またはコンピュータ制御を有してよい。特許文献1(Barlowら)に例が見られる。
【0004】
生産機械上において生産されたワークピースの一部(または、生産されたすべてのワークピースも)が検査ステーションで検査されてよい。サーバは、検査ステーションに移送されるべきワークピースをスケジューリングしてよく、この目的で搬送ロボットまたはコンベヤを制御してよい。
【0005】
いくつかの従来技術の例において、検査結果は単に合格または不合格決定であってよい。不合格決定(却下)の場合、これは、フィードバックされて、後続の生産工程を制御し改善するように生産機械の調整を可能にすることができる。生産工程のそのような制御は、特許文献1の例において手動で行われる。あるいは、合格決定の場合であっても、単一のワークピースの寸法が制御限界を超えている場合、自動フィードバックが提供されて生産機械を調整し、たとえば、寸法の誤差の適切な割合によって切削工具オフセットを更新してよい。この場合、制御限界は、ワークピースが却下されるであろう許容限度よりも低いレベルに設定されてよい。あるいは、制御限界は、ワークピースが却下されるレベルに設定されてよい。
【0006】
一連の名目上同一のワークピースにおける複数のワークピースの検査結果のより洗練された分析を実行することが知られている。たとえば、連続するワークピース上で特定の寸法の一連の測定が、外れ値を除去するようにフィルタリングされてよい。あるいは、傾向を検出するために一連の測定が分析されてよい。たとえば、生産機械が、使用中に摩耗するまたは熱ドリフトにさらされる切削工具を有する工作機械である場合、生産されたワークピースの特徴の寸法が経時的に増大または減少する漸進的傾向が存在することがある。そのような分析は、生産機械とは別に品質制御室または実験室においてワークピースを検査した後に行われてよい。生産工程の手動修正が、その後に熟練機械オペレータによって行われてよいが、その間に生産されたワークピースへは有益な効果を有しないことになる。
【0007】
特許文献2は、工作機械上において生産されたワークピースが測定機械上において検査されるシステムを示す。測定結果は、様々な手法で分析され、工作機械にフィードバックされてよい。
【0008】
傾向を分析することは、ワークピースが、それらが生産機械によって生産されたのと同じ順序で検査ステーションで検査されるべきであることを求める。さもなければ、傾向は容易に観察されない。従来、これは、検査されるべきすべてのワークピースを、それらが生産されると、所与の生産機械から同じ検査ステーションに送ることによって達成されている。
【0009】
しかしながら、サーバによって行われる生産スケジューリングに制約があり、それは、工場内の生産機械および検査ステーションの非効率的な使用という結果になることがある。また、それは、生産が検査によって遅くならないように検査の速度が充分に速いことを必要とする。
【0010】
特許文献3は、複数の組立機械または設備によって組み立てられている製品の欠陥を分析するための品質情報制御分析システムを開示している。組立て後に製品が検査機械によって検査されるとき、検査結果は、欠陥のあるコンポーネントの存在と検出された欠陥の種類を特定してよい。製品は測定機械上において検査されず、したがって、検査結果は測定結果を含まないため、たとえば、製品の特徴の寸法が経時的に増大または減少する漸進的傾向を決定することができない。さらに、特許文献3は、一連の名目上同一のワークピースを生産するための1つまたは複数の生産機械(たとえば工作機械など)を含む製造システムではなく、既に製造されたコンポーネントの組立てに関する。また、特定の組立機械からの出力が任意の利用可能な検査機械に送られることが可能であることが教示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,189,624号明細書
【特許文献2】米国特許第6,400,998号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0228510号明細書
【特許文献4】国際公開第2013/021157号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ワークピース生産方法であって、
少なくとも1つの生産機械上において生産工程において複数の名目上同様のワークピースを生産するステップと、
生産機械上においてワークピースのうちの少なくともいくつかの生産の順序または時間を記録するステップと、
2つ以上の検査ステーションで、そのように記録されたワークピースのうちの少なくともいくつかを測定するステップであって、1つのワークピースの寸法または点が、検査ステーションのうちの1つで測定され、ワークピースのうちの別のワークピースの対応する寸法または点が、検査ステーションのうちの別の検査ステーションで測定される、ステップと、
ワークピースの生産の順序または時間を考慮に入れて、2つ以上の検査ステーションで行われた対応する寸法または点の測定の結果を共に分析するステップと
を含むワークピース生産方法を提供する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、ワークピースの生産の順序を記録し、結果を分析する間にそれを考慮に入れることによって、所与の生産機械によって生産されたワークピースについての2つ以上の検査ステーションの使用を可能にし、生産スケジューリングに対する上記された制約を低減する。これは、生産スケジューリングによって、製造システムまたは工場における生産機械および検査ステーションの使用をより効率的にすることを可能にできる。
【0014】
次いで、出力信号が、共にした結果の分析に基づいて生成されてよく、出力信号は、生産機械のパフォーマンスまたは検査ステーションのうちの1つもしくは複数のパフォーマンスを示す。生産工程を評価すること、または生産機械の工程能力もしくは検査ステーションでの検査機械の能力を決定することが可能である。たとえば、分析は、予め定められた許容度までワークピースを製造する生産機械の能力を定量化してよい。
【0015】
出力信号は、結果が予め定められた限界値または許容値に近づいているまたは超える場合に、人間オペレータに対する警報信号またはメッセージであってよい。しかしながら、いくつかの好ましい実施形態において、出力信号は、生産機械にフィードバックされて、生産機械の生産工程を調整する。たとえば、それは、将来のワークピースの生産を修正するための工具オフセット値であってよい。
【0016】
ワークピースの生産の順序は、それらの生産の時間から導出されてよい。測定の結果を分析するとき、ワークピースの生産の時間の間の時間間隔が考慮に入れられてよい。
【0017】
測定の結果を分析するステップは、経時的な生産機械のパフォーマンスの順序付けられた履歴を生成してよい。上記方法は、経時的な測定の結果における傾向があるかどうかを検出するステップを含んでよい。たとえば、連続するワークピースが生産されるにつれて、特定の寸法のサイズが徐々に増大(もしくは減少)していること、および/または特定の点の座標が変化していることが検出されてよく、これは、工具が摩耗していること、または機械のセットアップが他の何らかの形式でドリフトしていることのインジケーションであってよい。上記方法は、経時的な生産機械のパフォーマンスにおける傾向があるかどうかを検出するステップを含んでよい。それは、ワークピースの特定の寸法または特定の点の座標が制御限界を超えているときを検出してよい。または、それは、連続するワークピース上の特定の寸法または点の一連の測定をフィルタリングして、結果を平滑化し、または外れ値を除去し、任意選択で、フィルタリングされた一連の測定が制御限界を超えているときを検出してよい。測定の結果は、統計的に分析されて、ワークピースを生産した生産機械の工程能力を決定してよい。生産機械の上記の評価のいずれも、機械の個々の工具もしくは工具タレットまたは機械全体を対象とするようにされてよい。
【0018】
複数の生産機械があってよく、各生産機械は、2つ以上の検査ステーション関連付けられてよい。各検査ステーションは、たとえば2つ以上の検査機械が1つの特定の生産機械と共に配置された生産セルにおいて、1つの特定の生産機械によってのみ生産されたワークピースに関する寸法または点を測定してよい。または、検査ステーションのうちの1つまたは複数が、生産機械のうちの2つ以上によって生産されたワークピースに関する寸法または点を測定して、より柔軟な製造システムを形成してよい。
【0019】
本発明の別の実施形態において、結果の分析は、2つ以上の検査ステーションで行われた対応する寸法または点の測定の結果を比較するステップを含み、検査ステーションのうちの1つからの結果が、他の検査ステーションのうちの1つまたは複数の結果から、予め定められた量以上に異なる場合に、出力信号は提供される。これは、検査ステーションでの検査機械の能力の評価を可能にしてよい。
【0020】
本発明はまた、いずれかの上記方法を動作させるように構成された製造システムを含む。そのような製造システムは、1つまたは複数の生産機械と、2つ以上の検査ステーションと、1つまたは複数の生産機械上でワークピースの生産、および検査ステーションでそのように生産されたワークピースの検査をスケジューリングするための制御システムとを備え、制御システムは、上記されたような方法を動作させるように構成される。
【0021】
上記生産機械または各生産機械は、工作機械であってよい。上記工作機械または各工作機械は、機械加工動作を行ってワークピースを生産してよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態が例として説明される。
【
図1】生産機械および検査機械を含む、工場における製造システム配置の概略図である。
【
図2】
図1の製造配置における情報フローのスキームの第1の実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図2に対応し、そのような情報フローの第2の実施形態を示す図である。
【
図4】
図2に対応し、そのような情報フローの第3の実施形態を示す図である。
【
図5】これらの実施形態において使用される部品記録を示す図である。
【
図6】
図1ないし4におけるデータサーバにおいて実行する工程制御モジュールの動作を示すフローチャートである。
【
図7】工程制御モジュールによって受け取られる測定結果を示すグラフである。
【
図8】工程制御モジュールによって実行される、可能な分析を示すグラフである。
【
図9】工程制御モジュールによって実行される、可能な分析を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1の製造配置は、いくつかの生産ステーションを含み、各生産ステーションは、部品(ワークピース)を生産するためのコンピュータ数値制御(CNC)生産機械10、12、14、16を含む。生産機械は、任意の製造技術を使用してよい。それらは、フライス盤、旋盤、ミルターニングセンタ、研削、穴あけ、レーザ切断、ラッピング、ホーニング、研磨のための機械などの工作機械であってよい。または、それらは、コーティング機、鍛造、プレス、もしくは積層造形機(3Dプリンティング)であってよい。これらの機械の正確な数は重要ではなく、1つまたは複数があってよい。異なる種類の生産機械の任意の組合せが存在してよく、またはそれらはすべて同一であってよい。
【0024】
各生産機械は、従来のCNC制御を含んでよいそれぞれのコントローラ11、13、15、17によって制御される。任意選択で、コントローラのいずれかまたはすべては、CNC制御と通信する別個のコンピュータを含んでよい。
【0025】
製造配置はまた、2つ以上の検査ステーションを含み、各々は、検査機械、好ましくは、生産機械によって生産された部品(ワークピース)を検査するためのCNCゲージング機械20、22、24を含む。適切な柔軟な比較ゲージング機械が、本出願人Renishaw picによってEQUATOR(商標)として販売されている。参照によって本明細書に組み込まれる本出願人の先行の国際特許出願(特許文献4)において説明されているように、このゲージング機械は、非デカルト幾何学を用いる電動構造を有する。これは、生産ワークピースを主基準ワークピースと比較するために、生産ワークピースに関して3次元においてプローブを動かす。各ゲージング機械は、それぞれのコンピュータコントローラ21、23、25によって制御される。
【0026】
これらのゲージング機械の代わりに、検査ステーションは、コンピュータ制御された座標測定機(CMM)または検査ロボットのような他の寸法測定機器を含んでよい。あるいは、それらは、ゲージング固定具または治具を含んでよく、ここで、LVDTまたは他のトランスデューサを有するゲージが、ワークピースの特定の寸法を測定するようにカスタム設計される。これらのゲージの測定結果は、それぞれのコントローラ21、23、25内へ自動または手動で供給されてよい。また、高さゲージまたはキャリパなどの従来のハンドヘルドゲージを使用してワークピースが手動で測定される検査ステーションを有することも可能であり、結果は、コントローラ21、23、25、または共通サーバコンピュータの端末内へ供給される。
【0027】
製造配置は、部品(ワークピース)を工作機械10、12、14、16のいずれかからゲージング機械20、22、24のいずれかに移送するための(矢印26によって模式的に示される)輸送システムをさらに含む。ここで、それらは、指定された寸法許容範囲との適合性に関して検査されることが可能である。輸送システムは、コンピュータ制御されたロボット、ビークル、もしくはコンベヤを含んでよく、または単にワークピースもしくはワークピースのパレットの手動移送を含んでよい。それは、さらに、機械加工のための生ビレットまたは鋳物を工作機械に供給し、および/または製造後もしくは検査後にワークピースを除去する、より大きな輸送システムの一部であってよい。必要な場合、それは、検査後に再加工のためにワークピースを工作機械に返してよい。
【0028】
ジョブスケジューリングサーバ28も提供される。このサーバ28におけるプログラムまたはソフトウェアモジュールは、ワークピースの生産のスケジューリングを担当し、1つまたは複数のデータバス30によって工作機械およびゲージング機械のCNCコントローラに接続される。スケジューリングサーバ28はまた、たとえば、必要とされるときに工作機械とゲージング機械との間でワークピースを移送するために、輸送システム26を制御する。たとえば、スケジューリングサーバ28は、プログラマブルロジックコントローラの形態を取ってよく、プログラマブルロジックコントローラは、従来は複数の工作機械を有する生産セルを制御するために使用されるが、以下に説明されるように異なるプログラムを有してよい。
【0029】
スケジューリングサーバ28は、生産されるべき各特定の設計の部品(ワークピース)を機械加工および検査するための必要なCNC部品プログラムを工作機械およびゲージング機械にそれらの必要に応じて提供してよい。
【0030】
あるいは、これらの部品プログラムは、工作機械およびゲージング機械のコントローラに記憶され、スケジューリングサーバ28から受け取られた命令に基づいて使用のために選択されてよい。
【0031】
典型的には、スケジューリングサーバ28は、特定の設計の一連の名目上同一の部品(ワークピース)が(たとえば)工作機械10上において生産されるようにスケジューリングしてよい。従来、それは、次いで、これらのワークピースの各々がゲージング機械20に移送されるように命令し、その機械上においてその検査をスケジューリングしてよい。または、それは、ワークピースの定期的サンプルが検査される(たとえば、10個毎にワークピースが検査される、もしくは所与の時間期間が経過した後にワークピースが検査される、たとえば1時間毎に1つのワークピースが検査される)ようにスケジューリングしてよい。
【0032】
ゲージング機械20上における各ワークピースの検査は、複数の寸法測定を生成し、それらは、バス30上のデータサーバ29に返され記憶される。データサーバ29によって、またはゲージング機械のコントローラ21、23、25によって、ワークピースが許容範囲外であると決定された場合、メッセージがスケジューリングサーバ28に渡されてよい。このメッセージは、許容範囲外のワークピースが却下されるべきまたは再加工のためにスケジューリングされるべきことを指定してよい。
【0033】
却下または再加工に加えて、データサーバ29はまた、工程制御を行うようにプログラムされたソフトウェアモジュールを有する。それは、それらが検査されるとき連続するワークピースからの検査測定結果における傾向を調べる。それは、たとえば、連続するワークピースが生産されるにつれて特定の寸法のサイズが徐々に増大している傾向を決定してよい。それは、工作機械10における関連付けられた切削工具の摩耗によって、または、工作機械またはワークピースが機械加工される原料ストックもしくはビレットもしくは鋳物の漸進的熱成長によって引き起こされてよい。次いで、データサーバ29は、対応する切削工具に関する更新されたオフセット値をバス30上で工作機械20のCNC制御へフィードバックすることができる。これは、機械加工工程を修正して、一連の将来のワークピースが許容範囲内に留まることを確実にする。
【0034】
もちろん、スケジューリングならびに検査結果の記憶および処理は、説明されているように別個のスケジューリングおよびデータサーバ28、29上においてではなく、対応するソフトウェアモジュールを実行している単一のサーバ上においてすべて行われてよい。
【0035】
あるいは、より大きな工場において、複数の生産セルがあってよく、各々が、複数の工作機械およびゲージング機械を制御するそれ自体のスケジューリングサーバ28を有する。複数の生産セルにおけるゲージング機械からの測定結果が、処理のために、すべての生産セルにサービスする共通のデータサーバ29に送られてよい。
【0036】
別の代替形態として、大きな工場において、1つまたは複数のスケジューリングサーバ28と共に2つ以上のデータサーバ29があってよい。これらは、好ましくは、データを交換するために適切なネットワークリンクおよびソフトウェアを有する。データは、ワークピースの測定がデータサーバのいずれによっても処理されてよいように、共有データベース(または、ソフトウェアアーキテクチャにおける基礎のデータ層)に記憶されてよい。あるいは、所与の生産機械からのワークピースのすべての測定が、それらがいずれの測定機械上において測定されても、データサーバのうちの特定の1つによって受け取られ処理されてよい。
【0037】
必要に応じて、スケジューリングサーバ28および/またはデータサーバ29は、工場から遠隔に位置付けられ、広域データネットワークまたはインターネット上で生産をスケジューリングしおよび/または測定結果を受け取ってよい。そのようなリモートサーバは、さらに、異なる位置における2つ以上の工場において生産をスケジューリングしおよび/または生産セルからの測定結果を受け取って処理してよい。データサーバ29が工場内に位置付けられている場合、それが記憶するデータが、生産工程の品質管理を支援および評価するためにリモートサーバにミラーリングされることが可能である。
【0038】
生産をスケジューリングし生産機械およびゲージング機械を制御するサーバ28は、必須ではない。生産スケジューリング、様々な機械の使用、および機械間のワークピースの移送はすべて、代わりに人間オペレータによって決定され行われてよい。
【0039】
測定における傾向を決定するために、所与の工作機械10からのワークピースは、それらが工作機械10によって生産されるのと同じ順序において、すべてが同じゲージング機械20に提供されてよい。しかしながら、それは、工場において生産全体の柔軟性に対する制約になるであろう。工作機械10によって生産されたワークピースが検査される必要があるとき、ゲージング機械20がビジーである状態が発生することがある。たとえば、ワークピースを検査するのに必要とされる時間は、典型的には、その生産に必要とされる時間とは異なる。さらに、ゲージング機械20は、他の工作機械12、14、16のうちの1つにおいて生産された他のワークピースの検査のために必要とされる可能性がある。これらの他のワークピースは、工作機械10によって生産されている一連のものと同じまたは異なる設計であることがある。
【0040】
したがって、本発明のこの実施形態において、工作機械10からのワークピースが検査されるべきとき、サーバ28におけるスケジューリングプログラムは、それを、最もビジーでないまたは最も適切であるいずれかのゲージング機械20、22、24に送り、その機械による適切な検査プログラムの使用を提供または命令するように構成される。または、手動輸送システムがある場合、人間オペレータは、適切なゲージング機械に手動でワークピースを移送するように命令を送られてよい。あまり洗練されていないシステムにおいて、どのゲージング機械を使用するかを人間オペレータが決定してよい。
【0041】
異なるゲージング機械にワークピースが送られるとき、それらの生産の順序の記録は維持される。たとえば、これは、工作機械10上の各ワークピースの生産の時間のタイムスタンプであってよい。これの例は、
図2ないし4に関係して以下に論じられる。
【0042】
図2は、スケジューリングおよびデータサーバ28、29、工作機械10のうちの1つのコントローラ11、ならびにいくつかのゲージング機械20、22、24のコントローラ21、23、25の間の情報フローのスキームの第1の実施形態を示す概略図である。
【0043】
サーバ28におけるスケジューリングプログラムまたはモジュールは、(部品番号を含む)命令をバス30(
図1)上で工作機械コントローラ11へ送ることによって、部品(ワークピース)を生産するように工作機械10のコントローラ11に命令する。部品番号は、生産されるべき部品の設計を、たとえば、部品の設計図の番号またはコンピュータ支援設計(CAD)ファイルに対応して指定する。次いで、工作機械10のコントローラ11が、指定された設計に対応する、部品を生産するためのCNC部品プログラムを、ロードおよび実行する。それは、それ自体の内部ストレージから部品プログラムをロードしてよく、またはバス30上で他のデータと共にそれを受け取ってよい。
【0044】
工作機械10が新しい部品(ワークピース)を生産しようとするとき、そのコントローラ11は、新しい部品要求34をバス30上でスケジューリングサーバ28に送る。この要求は、工作機械10のコントローラ11によって生成された、部品についてのタイムスタンプを含む。
【0045】
それが要求34を受け取ったとき、スケジューリングサーバ28は、
図5に示されるように、様々な項目の情報に関するフィールドを有する、部品についての新しい中央記録を設定する。これらのフィールドは以下を含む。
● スケジューリングサーバ28によって生成された新しい一意のワークピース/部品識別番号(部品ID)。これは、生産されようとしている個別部品(ワークピース)を識別する。
● 要求34に含まれるタイムスタンプ。
● 部品の設計を指し示す部品番号。これは、たとえば、要求34においてコントローラ11によって確認されていてよい。
● 工作機械10についての識別番号MT-ID。これも、たとえば、要求34においてコントローラ11によって確認されていてよい。
【0046】
次いで、スケジューリングサーバ28は、応答36をバス30上で工作機械10のコントローラ11に返信する。この応答36は、生成された部品IDを含む。
【0047】
次いで、工作機械は、従来の方式においてCNC制御下で部品(ワークピース)を機械加工する。それが終了したとき、スケジューリングプログラムは、検査のためにゲージング機械20、22、または24のうちの1つに部品を移送するように輸送システム26に命令してよい。または、手動輸送システムがある場合、それは、命令を人間オペレータに送ってよい。上述されたように、スケジュールは、すべての部品が検査されること、またはそれらの定期的なサンプルを要求してよく、適宜に、スケジューリングサーバは、最もビジーでないまたは最も適切であるいずれかのゲージング機械を選ぶように柔軟性を備えてプログラムされる。
【0048】
38で示されるように、部品の部品IDは、部品と共に工作機械10からゲージング機械に移送される。これは、工作機械コントローラ11に接続されたラベル付けステーション50で部品(または、それが移送されるパレットもしくは固定具)にラベル付けすることによって行われてよい。たとえば、ラベル付けステーションは、部品IDを含む機械可読バーコードラベルを生成してよい。このラベルは、ロボットによって自動でまたは人間オペレータによって手動で、部品またはそのパレットもしくは固定具に取り付けられてよい。
【0049】
機械加工された部品がゲージング機械20、22、または24に到達したとき、ゲージング機械コントローラ21、23、または25に接続されたバーコードリーダ52が、そのラベルからその部品IDを読み取る。39で示されるように、次いで、ゲージング機械コントローラは、部品IDをバス30(
図1)上でスケジューリングサーバ28に送る。サーバ28は、対応する部品記録(
図5)を探し、40で示されるように、それは、部品の設計を指定する部品番号を返す(加えて任意選択で、それは部品記録全体を返してよい)。
【0050】
次いで、ゲージング機械コントローラは、指定された設計の部品を検査するための対応する部品プログラムをロードする。それは、それ自体の内部ストレージから部品プログラムをロードしてよく、またはバス30上でサーバ28からそれを受け取ってよい。それは、プログラムを実行して部品を検査し、指定された寸法または指定された点の座標を測定し、検査結果のセットを生成する。それは、バス30上でこれらをデータサーバ29における工程制御モジュールに送信する。これは、
図2における41で示される。部品IDおよび任意選択で部品番号も、それらの結果と一緒にバス30上で送信される。
【0051】
図6は、データサーバ29において実行する工程制御モジュールの例を示すフローチャートである。ステップ54において、それが検査結果のセットを受け取ると、それは、付随する部品IDによって識別されるような部品に関する記録情報を送るようにスケジューリングサーバ28に要求する。
図5に示されるように、この部品記録情報は、部品を生産した工作機械の識別番号MT-ID、および生産の時間に生成されたタイムスタンプを含む。それは、部品番号を、ゲージング機械からの検査結果と共にそれを送信する代替として含んでもよい。部品番号は、部品の設計、およびそれを機械加工するために使用されるCNC部品プログラムを指定することが想起される。
【0052】
あるいは、ステップ54の代わりに、スケジューリングサーバ28は、部品記録全体をゲージング機械コントローラに前もって返していてよい。この場合、ゲージング機械コントローラは、(
図2における41で)検査結果と共に部品記録全体をデータサーバ28上へ送信する。そうすると、ステップ54において部品記録情報を要求する必要がない。
【0053】
ステップ56において、検査結果のセットが、対応する部品記録情報と共に、データサーバ29において保持されるデータベースに挿入される。このデータベースは、検査結果の履歴記録、および必要とされる時間の期間にわたってすべての工作機械10、12、14、16によって作られたすべての部品についての部品記録情報を含む。これらの結果は、ゲージング機械20、22、24のいずれかによって生成されていてよく、関連するゲージング機械の識別番号が記録に含まれてもよい。
【0054】
図7は、工作機械のうちの1つ(たとえば工作機械10)によって生産された名目上同一の部品の特定の特徴の特定の寸法または座標点の測定結果を示す。それらは、
図6において工程制御モジュールによってそれらが受け取られた順序において示される。バー70、72、74は、異なるゲージング機械20、22、24上においてそれぞれ得られた、特定の寸法または連続する名目上同一の部品からの点の測定を表す。
【0055】
次いで、ステップ58において、工程制御モジュールは、ちょうど受け取られた部品番号および結果セットのMT-IDを使用して、それのデータベースに問い合わせる。それは、その部品番号およびMT-IDを有する部品に関する検査結果の予め定められた数の最も新しいセットを取得する。これらは、問題とされる工作機械によって、たとえば、本例における工作機械10によって生産されたその設計の最も新しい名目上同一の部品を表す。処理のためにこのように取得された結果のセットの数は、問題とされる部品の製造工程および許容範囲要件に従ってユーザによって予め定められる。たとえば、最も新しい10または20セットの結果が選択されてよい。もちろん、生産実行の開始近くでは、より少ないセットの結果が利用可能となる。
【0056】
好ましくは、データベースにおける結果のセットは、タイムスタンプでインデックス付けされ、そうすることで、ステップ58において、工作機械が部品を生産した順序においてそれらが取得される。そうでない場合、それらは、必要ならば、ソートステップ60においてタイムスタンプでソートされる。
図8は、工作機械10上のそれらの生産の順序において配置された
図7と同じ測定を示す。生産の順序は、特定の工作機械10によって生成された記憶されたタイムスタンプから得られるので、部品が、おそらくそれらが異なる時間で異なるゲージング機械20、22、24上で測定されたために、生産の順序において測定されなかったとしても問題とならない。これは、たとえば、ゲージング機械のうちの1つで検査ジョブのキューがある場合に発生することがあり、そうすると、スケジューリングサーバ28は、異なる機械に、後続検査ジョブを再スケジューリングしている。
【0057】
部品の生産の順序で結果のセットを得ると、工程制御は、ここでステップ62に進む。ここで、結果のセットがその順序で分析されて、問題とされる特徴を機械加工した生産機械または生産機械の関連する工具もしくは工具タレットのパフォーマンスの順序付けられた履歴を生成する。これは、やはり問題とされる部品の製造工程および許容範囲要件に応じて、予め設定されたルールに従って行われる。適切なルールは、この分野の当業者に知られている。いくつかのあり得るルールが
図8にグラフで示されている。
【0058】
図8において、破線Tは、問題とされる寸法または座標点の最大許容限界を示す。連続する測定が、許容限界Tに向かって増大する傾向を示す。これは、たとえば熱ドリフトによって引き起こされる、工作機械10もしくは他の生産機械のパフォーマンス全体における、または工作機械の工具保持タレットのパフォーマンスにおける傾向であることがある。または、部品を機械加工するのに使用される個別の切削工具のパフォーマンスに影響する漸進的な摩耗によって引き起こされる傾向が存在することがある。破線Lは、予め定められた下部制御限界を示し、この下部制御限界は、許容範囲内の部品の生産が中断されずに継続できるように、許容限界が超過される前に生産工程の修正を可能にするように選ばれる。
【0059】
1つのあり得る予め設定されたルールは、測定された寸法または点座標が制御限界Lを超えているかどうかを単に評価してよい。
図8において、これは5番目の測定バーに当てはまる。より洗練されたルールは、たとえば最小二乗分析を使用して、連続する測定結果を統計的に分析する。これは、線78によって示されるような傾向に関する結果を検査してよい。ルールは、線78の勾配が予め定められた値を超えたときを検出するなどの適切に選ばれた基準に従って、そのような傾向が検出されたときにトリガされてよい。または別の可能性として、ルールは、傾向が制御限界Lを超えるかどうかおよびいつ超えるかを評価してよい。
図8において、これは6番目の測定バーに当てはまるが、先行の測定から予測されてよい。他のあり得るルールは、測定における減少する傾向を検出する、または、最小許容レベルに到達される前に減少傾向(もしくは個別測定)が負の方向において予め定められた制御限界を超えるかどうかおよびいつ超えるかを検出してよい。他のあり得るルールは、一連の測定をフィルタリングして、結果を平滑化し、または一般的傾向に寄与しない結果における外れ値を除去する。これは、フィルタリングされた一連の測定が制御限界を超えるまたは傾向を示すかどうかを決定する前に行われてよい。
【0060】
図6におけるステップ64は、ステップ62における分析の結果に応じて決定を行う。ルールがトリガされていない場合、プログラミングは何も行わず(ステップ66)、単に最初にループバックしてさらなる検査結果を待つ。
【0061】
ルールがトリガされた場合、修正アクションが必要とされる。たとえば、ステップ64は、新しい工具オフセットなどの制御信号または値を生成してよい。新しい工具オフセットは、たとえば、検出された傾向に対抗する意味で構成された、測定された寸法の誤差の割合であってよい。これは、
図2において80で示されるように、ステップ68において工作機械10にフィードバックされ、プログラムは再び最初にループバックして、さらなる検査結果を待つ。この場合、新しい工具オフセットは、寸法が解析された部品特徴部の切削を担当する工作機械10の切削工具を調整する。このようにして、データサーバ29は、工作機械の生産工程を調整するために使用される制御信号または値を生成して、それが許容限界T内で優良な部品の生産を続けることを保証する。
【0062】
他のフィードバック動作が可能である。たとえば、分析が、許容限界Tが突然に予想外に超過されたことを示して、切削工具が壊れたことを示す場合、工作機械10は、将来の生産のために交換切削工具に置き換えるように命令されてよい。次いで、データサーバ29はまた、許容範囲外ワークピースが却下または再加工されるべきであるとスケジューリングサーバ28に命令する。また、ステップ64は、警報を生成しまたはメッセージを送って、工作機械の問題を調査するように人間オペレータによる動作を要求することも可能である。
【0063】
また、分析ステップ62における統計分析を行って、品質管理室または実験室における後の分析の結果としてではなく、現場においてリアルタイムで自動的に統計的工程管理を提供することが可能である。そのような統計的工程管理は、生産機械または機械の工具もしくは工具タレットの工程能力、すなわち予め定められた所望の許容範囲までで部品を生産するその能力を、たとえばCpk、Cp、またはPpkなどの知られている工程能力指数の観点で、決定してよい。これは単に管理レポートとして出力されてよく、またはそれは、上述されたようにフィードバックして生産工程を調整するために使用されてよい。または、生産機械が、必要とされる許容範囲までの部品を生産することが完全にできるが、名目上の必要とされる寸法値からオフセットがあることが可能である。この場合、生産機械を調整してオフセットを除去するために修正がフィードバックされる。
【0064】
図8は、測定バー70、72、74を示し、測定バー70、72、74は、それらが等間隔に離間されるように単に工作機械10上の生産の順序で配置されている。これは、たとえば、工具摩耗が予期されて監視されるべき場合に適切であってよい。分析ステップ62において、代わりに、生産の実際の記録された時間、および工作機械10上の各部品の生産の時間の間の時間間隔を考慮に入れながら、傾向などを監視することが可能である。この場合、測定バーの間の間隔は不均一となる。これは、たとえば、漸進的な温度ドリフトによって引き起こされる変化が監視されるべき場合に適切であってよい。
【0065】
図9は、測定間のギャップ75を伴う測定バーの不均一な間隔のさらなる例を示す。不均一な間隔の1つの理由は、分析ステップ62が、考慮に入れられない外れ値76を検出しフィルタリングして除去したことである。ギャップ75のその他の理由は、工作機械がいくらかのダウン時間を経験する可能性があることである。および/または、いくつかの検査結果は、検査ステーションのうちの1つがビジーであり、それらが足止めされているため、利用不可能なことがある。それにもかかわらず、分析は継続的に進行して、傾向を検出し、利用可能である測定結果に基づいて他の分析ルールを実行する。もちろん、間隔は、それらがワークピースの生産の実際の記録された時間の間の時間間隔を考慮に入れるために単に不均一である可能性もある。
【0066】
図6ないし9は、名目上同一のワークピースの寸法または点の1つのみに関する測定結果のセットに関することは認識されてよう。実際には、ワークピースの複数の特徴の寸法または座標点が測定されて、そのような測定結果の複数のセットを与えてよい。測定結果の各セットは、同じ方式で評価されてよく、必要に応じて工作機械コントローラに対するフィードバック80を有する。しかしながら、測定結果のすべてのセットからフィードバックを提供することが必要ではないことがある。たとえば、工作機械の生産工程の変動が工具摩耗から生じる場合、これは評価されてよく、対応する摩耗された工具によって影響される測定結果のセットのうちの1つだけから、修正フィードバックが提供されてよい。変動が熱成長から生じる場合、これを評価し、(測定された名目上同一の特徴のうちの1つのみまたは少数のみに対応する)測定結果のセットの1つまたは少数のみから修正フィードバックを提供することが可能であってよい。
【0067】
上述されたように、スケジューリングサーバ28および/またはデータサーバ29は、工場から遠隔に位置付けられてよい。この場合でも、上記のフィードバック動作のいずれも、リモートサーバにおける分析に基づいてよく、工場における生産機械を調整するために、出力信号がリモートサーバからフィードバックされてよい。
【0068】
図3は、情報フローのスキームの第2の実施形態を示す。それは、ほとんどの点で
図2と同様であるので、変更部分のみ説明される。
【0069】
図1の破線に示されるように、この実施形態において、製造情報システム(MIS)42が、工作機械10、12、14、16とゲージング機械20、22、24とを備える生産セルに関連付けられる。MIS42は、プログラマブルロジックコントローラを備えてよい。
【0070】
この配置は、スケジューリングサーバ28がより大きな工場での複数のそのような生産セルにサービスし、各生産セルはそれ自体の製造情報サーバを有する場合に適している。それはまた、スケジューリングサーバ28が遠隔からいくつかの工場にサービスする場合に適し、その場合、MIS42がいくつかの生産セルにサービスしてよい
MIS42は、スケジューリングサーバ28ではなく、
図5に見られる部品記録用のマスタデータストアとして機能する。工作機械10のコントローラ11から新しい部品要求34が、対応するタイムスタンプと共にMIS42に送られる。次いで、MIS42は、部品IDを含む部品記録(
図5)を生成し、応答36において部品IDを返す。検査されるべき部品を受け取り、そのバーコードを読み取ると、ゲージング機械コントローラ21、23、25は、スケジューリングサーバからではなく、39、40で示されるように、部品番号(および場合によっては検査部品プログラム)をMIS42に要求しMIS42から受け取る。しかしながら、所望であれば、スケジューリングサーバは、部品記録情報の一部またはすべてのコピーを保持してよい。たとえば、スケジューリングサーバは、それが部品を特定のゲージング機械に送達するように輸送システム26に命令したとき、部品番号および/または検査部品プログラムをゲージング機械コントローラに送ってよく、したがって、ゲージング機械コントローラはそれを要求する必要がない。
【0071】
その後、データサーバ29が、ゲージング機械のうちの1つから部品についての測定結果を受け取り、
図6のステップ54において、それは、スケジューリングサーバ28についてではなく、MIS42に部品IDを送って、(タイムスタンプを有する)部品記録を要求する。この要求は44で示され、タイムスタンプを含むMISからの部品記録の返送が46で示される。同様に、ゲージング機械コントローラは、部品IDをMIS42に送って、部品番号および場合によっては部品に関する検査プログラムを要求する。
【0072】
図4は、情報フローのスキームの第3の実施形態を示す。それは、やはり
図2および
図3と同様であるので、変更部分のみ説明される。この例において、スケジューリングサーバ28が、新しい部品を生産するように工作機械10のコントローラ11にバス30上で命令したとき、コントローラ11は、48で示されるように、部品IDおよびタイムスタンプを内部で生成する。次いで、ラベル付けステーション50が、部品ID、タイムスタンプ、工作機械10の識別番号MT-ID、および場合によっては部品番号をすべてバーコードラベルに符号化する。これは、部品またはそのパレットまたは固定具に取り付けられ、部品と一緒に、スケジューリングサーバによって命令されたゲージング機械20、22、または24のいずれかに移送される。すべてのこの情報は、バーコードリーダ52によって読み取られ、ゲージング機械コントローラ21、23、または25が、それを測定結果と共にデータサーバ29上へ渡す。すると、データサーバは、この情報を求める別個の要求54をスケジューリングサーバ28に行う必要がない。情報が部品番号を含み、ゲージング機械コントローラが、対応する検査部品プログラムのローカルコピーを有する場合、ゲージング機械コントローラも、スケジューリングサーバ28に情報を要求する必要がない。
【0073】
同様に、
図2および
図3において、タイムスタンプおよび/またはMT-IDおよび/または部品番号が、バーコードラベルに符号化され、部品と共に移動し、ゲージング機械バーコードリーダによって読み取られ、ゲージング機械コントローラによってデータサーバに渡されることが可能である。
【0074】
図2および
図3の上記の説明において、測定結果は、工作機械10のコントローラ11によって生成されたタイムスタンプを使用して順序付けられている。しかしながら、必要に応じて、このタイムスタンプは、スケジューリングサーバ28によって(または、
図3における製造情報システム42によって)生成され、新しい部品要求34の受信があると部品IDと共に工作機械に渡されてよい。それがどこで生成されても、同様に、ラベル付けステーション50が、それを部品と共に移動するバーコードに符号化し、それは読み取られゲージング機械コントローラによってデータサーバ上へ渡されることが可能である。
【0075】
上記の実施形態において、ラベル付けステーション50は、部品IDおよび/またはタイムスタンプおよび場合によっては他の情報を担持する機械可読バーコードラベルを生成しており、機械可読バーコードラベルは、部品またはそのパレットもしくは固定具に取り付けられ、それと共に生産機械から検査ステーションに移動する。しかしながら、他の任意の適切な機械可読技術が使用されることが可能である。たとえば、USBもしくはフラッシュメモリもしくはRFIDメモリデバイスが、部品を搬送するパレットもしくは固定具に組み込まれてよく、または部品それ自体に取り付けられてよい。そして、工作機械およびゲージング機械のコントローラに接続されたラベル付けステーション50およびバーコードリーダ52は、USBまたはRFID書込みおよび読取りデバイスでそれぞれ置き換えられてよい。これは、バーコードに収まるよりも多くの、たとえばタイムスタンプ、MT-ID、および部品番号を含む情報が書き込まれる場合に、特に適切なことがある。
【0076】
上記の実施形態は、部品の生産の順序を追跡するためにタイムスタンプを使用している。しかしながら、この代わりに、部品IDは、スケジューリングサーバ28、MIS42、または工作機械コントローラ自体によって生成された、一意の順次に割り振られたシリアル番号を単に含んでよい。これは、順次に割り振られて、工作機械10上の部品の生産の順序を同様に示す。工程制御モジュール(
図6)において、それは、機械10によって生成された部品の記録をそれらの生産の順序にインデックス付けまたはソートするために、タイムスタンプと同様に使用されることが可能である。工作機械識別番号MT-ID(および場合によっては部品番号)は、部品ID内にこのシリアル番号と共に組み込まれてもよい。これは、部品IDが工作機械コントローラによって生成される場合に特に適している。やはり、この場合に、データサーバが
図6におけるステップ54で部品記録を要求する必要がなくてよく、なぜならば、それは部品IDにおける必要とされる情報を既に有しているからである。
【0077】
これまで、工程制御は、2つ以上のゲージング機械20、22、24からの検査結果を使用して、1つの工作機械10上において生成された一連の名目上同一の部品(ワークピース)に関して説明されている。これは、ゲージング機械のうちのいずれかがビジーである場合に別のゲージング機械上において部品が検査されてよいので、柔軟なスケジューリングという利点を有する。また、冗長性の利点もある。1つのゲージング機械が動作しなくなった場合、スケジューリングサーバ28は、将来の部品の検査を他のゲージング機械に切り替えることができる。
【0078】
検査結果は、それらが生成されるゲージング機械についての識別番号を含んでもよい。そして、データサーバ29における工程制御モジュールが、異なるゲージング機械からの検査結果を比較するルールを含むことも可能である。同じ工作機械によって生産された名目上同一の部品を測定するときに、ゲージング機械のうちの1つからの結果が他のゲージング機械の結果と大きく異なることが見出された場合、工程制御モジュールは、問題が工作機械にあるのではなくゲージング機械にあると診断してよい。この目的のために、分析の結果は、別々の検査機械上において行われた対応する寸法または点の測定の結果を比較することを含み、検査機械のうちの1つからの結果が、他の検査機械のうちの1つまたは複数の結果について、予め定められた量よりも大きく異なる場合に、出力信号が提供される。さらに、データサーバは次いで、将来の部品の検査を他のゲージング機械に切り替えるようにスケジューリングサーバに命令してよい。それは、警報をトリガし、または人間オペレータにメッセージを送って、問題を、たとえば、関連するゲージング機械が仕様から外れているかどうかを調査してもよい。または、それは、結果が異なるゲージング機械から得られた結果を調整してよく、これらの結果は、出力信号に依存する量によって調整される。
【0079】
もちろん、他の工作機械12、14、16も部品を生産しており、ことによると工作機械10上において生産された部品と同じ設計に、またはことによると異なる設計(異なる部品番号)に生産する。記録が保持され、タイムスタンプ、部品ID、および工作機械識別番号を含む情報が上記と同様に生成され移送される。サーバ28におけるスケジューリングプログラムは、ゲージング機械20、22、24のうちの最も便利または効率的なものにおいて、同じ方法でそれらの検査をスケジューリングするようにプログラムされる。したがって、任意の部品が任意のゲージング機械上において検査されてよいので、さらに柔軟性の利点がある。そして、データサーバ29の工程制御モジュールは、どの工作機械が各部品を生産したか、およびその工作機械上の生産のそれらの順序に注目して、同じ方法でそれらの工作機械12、14,16の各々についての工程制御を行う。
【0080】
この後者の場合で、(ことによると、工程制御モジュールにおけるルールによって検出される問題で)工作機械のうちの1つが動作しなくなった場合に、さらなる冗長性の利点が存在する。非生産的にもなるその工作機械に専用にされたゲージング機械は存在しない。スケジューリングサーバは、部品の生産を他の工作機械に切り替えることができ、それは、すべてのゲージング機械の間で検査作業を割り振ることを継続することができる。