(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030102
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】尿素造粒プラントの空気システム内のダスト蓄積を防止するためのコーティング材料を備えた流動層造粒機システム
(51)【国際特許分類】
B01J 2/16 20060101AFI20230228BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20230228BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20230228BHJP
C05C 9/00 20060101ALI20230228BHJP
C05G 5/12 20200101ALI20230228BHJP
【FI】
B01J2/16
B01J2/00 C
B01J8/24
C05C9/00 A
C05G5/12
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022205191
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2020550080の分割
【原出願日】2019-03-21
(31)【優先権主張番号】18163504.6
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18175723.8
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518211277
【氏名又は名称】ティッセンクルップ フェルティリツァー テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】ThyssenKrupp Allee 1 45143 Essen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フランツレイヒ,ハロルド
(72)【発明者】
【氏名】ポットホフ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】グルケ,アンドレアス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】完全な造粒機コーティングを必要としない、湿潤防止または固化防止傾向が減少した流動層造粒または流動層冷却システムを提供する。
【解決手段】流動層造粒機(14)と、スクラバーユニット(9)と、流動層造粒機(14)の通気口(8)とスクラバーユニット(9)との間の接続ダクト(10)と、を少なくとも備える流動層造粒機システムであって、接続ダクト(10)の内面は、付着防止層(11)で少なくとも部分的にコーティングされている、流動層造粒機システムとする。本発明はさらに、尿素造粒プラントおよび流動層造粒機システムの使用を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-流動層造粒機(14)と、
-スクラバーユニット(9)と、
-前記流動層造粒機(14)の通気口(8)と前記スクラバーユニット(9)との間の
接続ダクト(10)と、
を少なくとも備える流動層造粒機システムであって、
前記接続ダクト(10)の内面は、付着防止層(11)で少なくとも部分的にコーティ
ングされている、流動層造粒機システム。
【請求項2】
前記流動層造粒機が、前記流動層造粒機(14)の内側の造粒機空間(1)と、前記造
粒機空間(1)の内側に位置する多孔板(2)と、前記多孔板(2)の中、上またはそば
に位置するスプレーノズル(3)と、流動化空気入口(15)と、前記スプレーノズル(
3)に接続された霧化空気用の供給ライン(4)と、前記スプレーノズル(3)に接続さ
れた液体溶融物用の供給ライン(5)と、造粒核種入口(6)と、造粒機出口(7)と、
前記通気口(8)とを備える、請求項1に記載の流動層造粒機システム。
【請求項3】
前記付着防止層(11)が有機ケイ素化合物を含む、請求項1または2に記載の流動層
造粒機システム。
【請求項4】
前記接続ダクト(10)の内面(12)の少なくとも10%、好ましくは少なくとも3
0%、より好ましくは少なくとも50%が、前記付着防止層(11)でコーティングされ
ている、請求項1から3のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項5】
洗浄ノズル(13)が前記接続ダクト(10)の内側に位置し、好ましくは1~6個の
洗浄ノズル(13)が前記接続ダクト(10)の内側に位置する、請求項1から4のいず
れか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項6】
前記洗浄ノズル(13)が、前記接続ダクト(10)の内側の、前記通気口(8)と前
記スクラバーユニット(9)との間のダクト内距離の2%~90%、好ましくは5%~5
0%以内の場所/空間に位置する、請求項5に記載の流動層造粒機システム。
【請求項7】
前記洗浄ノズル(13)が、前記接続ダクト(10)の垂直断面または水平断面に位置
する、請求項5または6に記載の流動層造粒機システム。
【請求項8】
前記有機ケイ素化合物が、ポリアルキルシリコーン化合物、ポリアリールシリコーン化
合物、ポリアリルシリコーン化合物ならびに/あるいはアルキル-、アリール-およびア
リルシリコーン化合物の混合物または誘導体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記
載の流動層造粒機システム。
【請求項9】
前記有機ケイ素化合物が、ポリアルキルシロキサン、ポリメチルシロキサン、ポリジメ
チルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ペルフルオロアルキルシランまたはペ
ルフルオロアルキルシロキサンならびに/あるいはこれらの混合物または誘導体を含む、
請求項8に記載の流動層造粒機システム。
【請求項10】
前記有機ケイ素化合物がポリメチルシロキサンを含む、請求項9に記載の流動層造粒機
システム。
【請求項11】
前記付着防止層(11)が、0.5μm~1000μm、好ましくは10μm~40μ
mの厚さを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項12】
前記多孔板(2)が、前記付着防止層(11)で少なくとも部分的にコーティングされ
ている、請求項1から11のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の流動層造粒機システムを備える尿素造粒プラ
ント。
【請求項14】
アンモニア化合物、硝酸塩、リン酸塩、尿素、元素硫黄、硫酸アンモニア、UAS(尿
素-硫酸アンモニア)および/またはこれらの混合物を含有する肥料粒を製造するための
、請求項1から12のいずれか一項に記載の流動層造粒機システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされたベントダクトを備えた流動層造粒機、コーティングされ
たベントダクトを備えた流動層造粒機を備えるプラント、および肥料粒を製造するための
流動層造粒機の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
世界人口が継続的に増加しているため、信頼性が高く、容易に製造可能で、安価な肥料
を提供することが常に求められている。これらの従来の肥料は、窒素、リン酸塩、硫黄、
カリウムまたは微量栄養素を含有し得る。
【0003】
一般的で広く使用されている肥料は、主成分として尿素を含有している。水溶性尿素は
土壌中で急速に分解し、アンモニアと硝酸塩化合物を提供する。用途に基づいて、肥料は
尿素のみ、または尿素と前述の成分、例えばリン酸塩、硫黄、カリウムまたは微量栄養素
のうちの1つまたは複数との組み合わせを含有し得る。
【0004】
尿素は、(簡略化された)2段階反応を介してアンモニアと二酸化炭素を反応させるこ
とにより、大規模な工業規模で製造することができる:
2NH3+CO2⇔H2N-COONH4(1)
H2N-COONH4⇔(NH2)2CO+H2O(2)
肥料用途に必要な固体尿素粒子は、例えば、造粒、プリル化(prilling)、ま
たは結晶化によって仕上げセクションで製造される。尿素の吸湿性に起因する水の吸収は
、制御されない凝集、品質低下、および微細な、未処理尿素粒子の固化を容易にもたらす
。このプロセスは、尿素肥料の溶解度、バルク貯蔵、耐久性または化学的安定性に悪影響
を及ぼすおそれがある。さらに、水を吸収することによる制御されない重量増加は、輸送
重量およびコストを増加させる。したがって、輸送可能でかつ貯蔵可能な尿素肥料を提供
するためには、さらなる合成後プロセスステップが必要である。一般的な技術的プロセス
には、プリル化、ドラム造粒または流動層造粒などの多様な固化プロセスが含まれる。特
にプリル化プロセスは、比較的柔らかい粒子および時々変形した不均一な粒子などのいく
つかの重大な欠点に悩まされる。
【0005】
これらの課題は、流動層造粒プロセスを使用することによって回避することができ、そ
の結果、より硬く、より安定で均一な粒が得られる。得られた粒状尿素は、バルク輸送お
よびブレンド操作に特に適している。さらに、尿素系肥料の混合および輸送中の分離また
は機械的損傷が低減される。
【0006】
尿素の流動層造粒プロセスの例は、国際公開第2010/060535号、例えば、段
落~、
図1、または米国特許第4,701,353号明細書、ドイツ特許第311677
8号明細書および米国特許第4,219,589号明細書に見出すことができる。
【0007】
尿素肥料は硫酸アンモニウムまたは元素硫黄と組み合わせることができるため、1つの
肥料で植物栄養素の窒素と硫黄の両方を提供することができる。アンモニア硫黄は植物が
直接使用できるが、元素硫黄は土壌微生物によって分解される必要があるため、長期的な
植物栄養素を提供する。尿素/硫黄粒の例は、例えば、米国特許第4,330,319号
明細書に見出すことができる。
【0008】
流動層造粒プロセスは、成長液の非常に小さな液滴を吸収することによって成長する造
粒核種を提供することに基づく。これらの小さな液滴は、「霧化」液体尿素溶融物を介し
て提供され得る。本明細書で使用される「霧化」という用語は、液体尿素溶融物(または
他の適切な肥料溶融物)と空気などの加圧媒体との混合プロセスを指す。この混合プロセ
スにより、液体/ガスのエマルジョンまたは小さな液滴のエアロゾルが作成される。した
がって、「霧化」という用語は、原子/共有結合の分子分離プロセスと混同すべきでない
。製造された液滴は、約1μm~200μmの中程度のサイズ分布を有し得る。これらの
小さな溶融物液滴は、造粒核種の表面に吸収され、それによって「成長する」造粒粒子が
作成される。これらの新鮮な「その場で」製造された粒は、一般に100℃を超える温度
を示し得、比較的柔らかい。粒子は、造粒機の流動層および/または別個の冷却区画でさ
らに冷却される。
【0009】
しかしながら、その場で製造された温かい粒子は、有意な付着/湿潤親和性を示す。こ
の付着は、前述の固化、または造粒機の壁への尿素粒の(部分的な)吸着さえもたらし得
る。粒のこの吸着プロセスは、流動層造粒機の壁、通気口およびダクトの部分的または完
全な閉塞につながる可能性さえある。この閉塞は、広範な洗浄手段、または流動層造粒機
の完全なシャットダウンさえ必要とする。
【0010】
英国特許第1,395,906号明細書は、非湿潤コーティングを備えたプリル化ユニ
ットを開示している。コーティングは、ノズルおよび分配板に位置し得る。
【0011】
旧東ドイツ特許第118287号明細書は、ビニルポリマーの重合に適した反応器壁コ
ーティングを開示している。
【0012】
欧州特許第2832439号明細書は、窒素含有肥料粒を製造するための反応器であっ
て、その内壁が、少なくとも1つの有機ケイ素化合物の層で広範囲にコーティングされて
いる反応器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2010/060535号
【特許文献2】米国特許第4,701,353号明細書
【特許文献3】ドイツ特許第3116778号明細書
【特許文献4】米国特許第4,219,589号明細書
【特許文献5】米国特許第4,330,319号明細書
【特許文献6】英国特許第1,395,906号明細書
【特許文献7】旧東ドイツ特許第118287号明細書
【特許文献8】欧州特許第2832439号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、完全な造粒機コーティングを必要としない、湿潤防止または固化防止傾向
が減少した流動層造粒または流動層冷却システムを提供することが本発明の目的である。
【0015】
本発明の目的は、請求項1に記載の流動層造粒システムによって解決される。本発明の
好ましい実施形態は、対応する従属請求項の対象である。
【0016】
尿素造粒プラントを提供することが本発明の別の目的である。本発明の好ましい実施形
態は、対応する従属請求項の対象である。
【0017】
さらなる態様では、肥料粒を製造するための流動層造粒機システムまたは流動層冷却器
システムの使用を提供することが本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
流動層造粒機システムは、通気口を備えた流動層造粒機を備える。造粒プロセス中に生
成または放出されるダスト、例えば尿素ダスト、およびアンモニアなどの化学蒸気は、ス
クラバーユニットで除去される。好ましくは、スクラバーユニットは、少なくともダスト
除去スクラバーおよびアンモニア除去スクラバーを備える。適切なスクラバーの例は、国
際公開第2005/032696号(
図1)または国際公開第2010/60535号に
見出すことができる。接続ダクトは、流動層造粒機の通気口とスクラバーユニットとの間
に位置する。この接続ダクトは、前述のダスト(例えば、尿素ダスト)、蒸気およびガス
をスクラバーユニットに転送する。接続ダクトの内面は、好ましくは1つ(または複数)
の有機ケイ素化合物またはフッ素化有機化合物、例えばポリテトラフルオロエチレンを含
む付着防止層で少なくとも部分的にコーティングされている。好ましくは、「部分的にコ
ーティングする」という用語は、内接続面の少なくとも5%、それぞれ10%、より好ま
しくは少なくとも30%をカバーするコーティングに関する。付着防止層は、接続ダクト
内の造粒ダストの付着親和性を低下させる。好ましくは、接続ダクトが、通気口から始ま
って最初の接続ダクトの曲がり(好ましくはおよそ90度の角度の形状)までコーティン
グされている。最初の接続ダクトの曲がりにより、曲げ角度に基づいて流向が変化する。
好ましくは、曲げ角度が、+/-10度~170度の範囲、より好ましくは+/-30度
~120度の範囲である。
【0019】
好ましくは、流動層造粒機が、流動層造粒機の内側に少なくとも造粒機空間を備える。
流動層造粒機は、造粒機空間の内側に位置する多孔板と、多孔板の中、上またはそばに位
置するスプレーノズルとをさらに備える。好ましくは、スプレーノズルが、多孔板に取り
付けられる。好ましくは多孔板の下に位置する流動化空気入口が、肥料粒の流動層に必要
な流動化空気を提供する。「流動化空気」という用語は、空気または不活性ガス、例えば
二酸化炭素(CO2)、窒素、アルゴンまたはこれらの混合物を含む。スプレーノズルは
、霧化空気用の供給ラインおよび液体溶融物、好ましくは尿素を含有する液体溶融物用の
供給ラインに接続されている。これらの空気および溶融物用の供給ラインを1つのライン
にまとめてもよい。さらに、流動層造粒機は、造粒核種入口を備える。「造粒核種入口」
という用語は、粒状核種を導入するための内部および外部の装置、ラインおよび開口部を
含む。「内部」という用語は、造粒機内での粒状核種の製造を指す。「外部」という用語
は、造粒機の外側から、例えば流動層造粒機の外側のふるいまたは破砕機を介して、粒状
核種を提供または製造することを指す。さらに、流動層造粒機は、造粒機出口および通気
口を備える。通気口の位置は流動層造粒機内で固定されない。好ましくは、通気口は、造
粒核種入口の隣および/または上に配置される。造粒機空間が、統合された開口部を備え
ていてもよい分離壁を備えてもよい。これらの分離壁は、造粒機出口に向かう流動層の速
度をさらに変更および修正することができる。
【0020】
好ましくは、付着防止層が、有機ケイ素化合物を含む。これらのケイ素化合物は、接続
ダクト内のダスト付着を有効に低減し、接続ダクト内の閉塞固形物の蓄積を防止/低減す
る。例えばメチルポリシロキサンに基づく有機ケイ素化合物を使用した適切なコーティン
グ手順の例は、欧州特許第2832439号明細書の段落~およびに見出すことができる
。
【0021】
好ましい実施形態によると、接続ダクトの内面の少なくとも10%、好ましくは少なく
とも30%、より好ましくは少なくとも50%が、付着防止層でコーティングされている
。
【0022】
流動層造粒機のさらなる実施形態では、洗浄ノズル、好ましくは1~6個の洗浄ノズル
が、接続ダクトの内側に位置する。洗浄ノズルは、水を噴霧するのに適したノズル型を備
え、接続ダクトに追加の洗浄手段を提供する。2つ以上の洗浄ノズルが接続ダクトの内側
に位置していてもよい。好ましくは、洗浄ノズルが、空気流方向に沿っておよび/または
空気流に直交して配置される。さらに、洗浄ノズルにより、接続ダクトの内側のダストお
よびガス流を適切に冷却できるため、接続ダクトおよびスクラバーユニット内のガス/ダ
ストの温度を下げることができる。
【0023】
好ましくは、洗浄ノズルが、接続ダクトの内側の、通気口とスクラバーユニットとの間
のダクト内距離の2%~90%、好ましくは5%~50%以内の場所/空間に位置する。
「ダクト内距離」という用語は、通気口からスクラバーユニットまでで測定される接続ダ
クト内の距離を指す。これにより、相対値「0%」は通気口を直接指す。相対値「100
%」は、完全な(前述の)ダクト内距離を指し、スクラバーユニット入口で終わる。これ
により、d0は通気口の開始点を定義し、d100はスクラバー開口部の終点を定義する
。したがって、接続ダクトの内部空間内の、例えば洗浄ノズルの相対的ダクト内位置は、
好ましくは、diとして示される。
【0024】
驚くべきことに、本発明のコーティングは、diとして示され、接続ダクト内の洗浄ノ
ズルの通気口に関して、はるかに離れた配置を可能にする。2%(d2)~90%(d9
0)ダクト内距離の空間内にあるこの離れた配置は、より好ましくは接続ダクトの垂直断
面での、洗浄ノズルから流動造粒機への洗浄液の逆流を禁止し、これにより、造粒機空間
への逆流を有効に防止する。さもなければ、洗浄ノズルが接続ダクトの通気口の近くに配
置される場合、この前述の流動層造粒機への洗浄液の逆流が発生だろう。他方、コーティ
ングされていない接続ダクトは、尿素ダスト付着を除去し、完全な接続ダクト閉塞を回避
するため、洗浄手段、例えば通気口の近く、ダクト内距離の2%(d10)~90%(d
90)の前述の空間の外側に位置する洗浄ノズルを要する。
【0025】
好ましい実施形態によると、洗浄ノズルが、接続ダクトの垂直断面または水平断面に位
置し、それによって造粒機空間への洗浄液の逆流が禁止される。好ましくは、「垂直」と
いう用語は、粒状流向にほぼ(好ましくは+/-15度の偏差内で)直行に配置された接
続ダクトの断面を記載する粒状流向を指す。好ましくは、粒状流向に「水平」という用語
は、粒状流向とほぼ(好ましくは+/-15度の偏差内で)共に配置された接続ダクトの
断面を記載する。
【0026】
好ましい実施形態では、有機ケイ素化合物が、ポリアルキルシリコーン化合物、ポリア
リールシリコーン化合物、ポリアリルシリコーン化合物ならびに/あるいはアルキル-、
アリール-およびアリルシリコーン化合物の混合物または誘導体を含む。
【0027】
好ましくは、有機ケイ素化合物が、ポリアルキルシロキサン、ポリメチルシロキサン、
ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、(ポリ)ペルフルオロアルキ
ルシランまたは(ポリ)ペルフルオロアルキルシロキサンならびに/あるいはこれらの混
合物または誘導体を含み、より好ましくは有機ケイ素化合物がポリメチルシロキサンを含
む。
【0028】
さらに好ましい実施形態では、好ましくは有機ケイ素化合物を含む付着防止層が、0.
5μm~1000μm、好ましくは15μm~40μmの厚さを有する。
【0029】
好ましくは、スクラバーユニットが、ダスト除去スクラバーおよびアンモニア除去スク
ラバーを備える。適切なスクラバーの例は、国際公開第2005/032696号(
図1
)、国際公開第2010/60535号(
図1、段落~)、国際公開第2015/072
854号または欧州特許第0177998号明細書に見出すことができる。好ましい実施
形態では、ダストスクラバーが、希尿素溶液を利用して、ダスト、小さな尿素または他の
生成物粒子を除去する。エアロゾルなどの非常に小さな粒子を、国際公開第2014/0
94987号、例えば段落、および
図2に従って除去してもよい。
【0030】
好ましい実施形態では、多孔板が、好ましくは有機ケイ素化合物を含む付着防止層で少
なくとも部分的にコーティングされている。コーティングされた本発明のベントダクトと
コーティングされた多孔板を組み合わせることによって、流動層造粒機における全体的な
固化傾向がさらに減少する。
【0031】
本発明はさらに、アンモニア化合物、硝酸塩、リン酸塩、尿素、元素硫黄、硫酸アンモ
ニア、UAS(尿素-硫酸アンモニア)および/またはこれらの混合物を含有する肥料粒
を製造するための、以前に開示されたような本発明の流動層造粒機システムを含む。
【0032】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。これらの実施例は、単に例示を目的としてお
り、保護の範囲を制限するものではない。
【0033】
第1の実施例
金属造粒機壁プレート(サイズDIN A4)を、二酸化ケイ素(SiO
2)、ペルフ
ルオロアルキルシランおよびポリメチルシロキサンに基づく3つの異なるコーティングの
うちの1つでコーティングした(プレートの半分)。コーティングされた金属造粒機壁プ
レートを、運転中の流動層造粒機の内側に配置し、それぞれ19、20および17日間尿
素粒を製造した。その後、金属プレートのコーティングされた部分とコーティングされて
いない部分を比較することによって、金属プレートを光学的に検査した。平均化した結果
を、以下の表1に要約する。尿素の付着が弱いまたはないことを(++)で示し、中程度
の尿素の付着を(O)で示し、強い付着を(-)で示す。
【表1】
【0034】
表1に示されるように、ポリメチルシロキサンコーティングは、検査された表面上への
尿素粒の付着を有効に防止する。前述のように、この効果により、接続ダクト内の洗浄ノ
ズルを通気口から、通気口とスクラバーユニットとの間のダクト内距離の2%~90%の
空間に再配置することが可能になる。
【0035】
第2の実施例
流動層造粒機の接続ダクト(
図1および
図2に基本的に記載される)を、本発明による
付着防止層でコーティングした。接続ダクトを、通気口から始まって最初の接続ダクトの
曲がり(およそ90°(度)の流向の変化、好ましくは70度~120度の範囲内)まで
コーティングした。全体的試験期間は1年とした。この期間中、落下するダストの塊は検
出されなかった。本発明によるコーティングなしでは、特に長期間の運転時間後、落下す
るダストの塊が一年の間に検出された。これらの落下するダストの塊は、流動層造粒機に
損傷をもたらすおそれがあり、特に落下するダストの塊は、多孔板を損傷するおそれがあ
る。
【表2】
【0036】
本発明による付着防止コーティングは、流動層造粒機のシャットダウンの回数を有意に
減少させる。これらのシャットダウンは、製造停止および接続ダクトの複雑な掃除を要す
る。以前の経験とは逆に、例えば欧州特許第2832439号明細書に記載されているよ
うに流動層造粒機の内部空間全体をコーティングする必要はない。他方、本発明による付
着防止コーティングのみで、落下するダストの塊の外観および流動層造粒機のシャットダ
ウンの回数を有意に減少させるのに十分である。したがって、本発明は、先行技術と比較
して、付着防止コーティングのコーティングコスト(全体的な空間対選択された単一空間
)および(前駆体)コーティング化学物質の総量を有意に減少させる。
【0037】
本発明を以下の図でさらに説明する。これらの図は、単に例示を目的としており、保護
の範囲を制限するものではない。図は正確な縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】先行技術による流動層造粒機システムを示す図である。
【
図2】本発明による流動層造粒機システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、流動層造粒機(14)の内側の造粒機空間(1)と、造粒機空間(1)の内側
に位置する多孔板(2)とを備えた流動層造粒機(14)を備える先行技術による流動層
造粒機システムを示す。スプレーノズル(3)は多孔板(2)の上に位置し、流動化空気
入口(15)は多孔板(2)の下に位置する。複数の霧化空気用の供給ライン(4)およ
び液体溶融物用の供給ライン(5)がスプレーノズル(3)に接続されている。造粒機は
、好ましくは図示されていない製品ふるいまたは破砕機と接続した造粒核種入口(6)と
、造粒機出口(7)と、通気口(8)とをさらに備える。流動層(17)は、多孔板(2
)の下からの流動化空気を利用する対応する粒状粒子(16)によって形成される。流動
化空気流は(II)と表示される矢印で示され、流動層粒状粒子(16)の流向は(I)
と表示される矢印で示される。流動層(17)は、好ましくは、1つまたは複数の分離壁
(22)によって分割される。流動層造粒機システムは、スクラバーユニット(9)と、
通気口(8)とスクラバーユニット(9)との間の接続ダクト(10)とをさらに備える
。好ましくは、スクラバーユニット(9)が、少なくとも1つの(図示せず)ダストスク
ラバーおよび1つのアンモニアスクラバー(図示せず)を備える。接続ダクト(10)は
、通気口(8)およびスクラバー開口部(23)を介して流動層造粒機(14)をスクラ
バーユニット(9)に接続する。洗浄ノズル(13)は(d
i)で通気口(8)の近くに
位置し、通気口(8)の方向に水を噴霧することによって、この領域での尿素ダストによ
る付着、固化および内側の接続ダクト(10)の閉塞を禁止する。しかしながら、水およ
び尿素ダストクラスターの一部が流動層(17)に落ちることがある。これにより、均一
な粒子成長および空気流が妨げられる場合がある。水流が、流動層造粒機の内側で大規模
な凝集を引き起こし、それにより流動層造粒機の適切な操作を妨害する。
【0040】
図2は、本発明による流動層造粒機システムを示す。主な仕組みは、
図1で記載される
流動層造粒機システムの仕組みと同一である。しかしながら、接続ダクト(10)の内面
が、有機ケイ素化合物を含む付着防止層(11)で少なくとも部分的にコーティングされ
ている。付着防止層(11)は、接続ダクト内の尿素ダストの付着、固化および閉塞を禁
止または低減する。したがって、洗浄ノズル(13)を、省略する、または好ましくは接
続ダクト(10)の垂直断面で、(d
i)で通気口(8)から離れて配置することができ
る。この前述の1または複数の洗浄ノズル(13)の配置により、通気口(8)の近くに
水を噴霧する必要がなくなる。同時に、流動層(17)に落下する水および尿素ダストク
ラスターの量が有意に減少し、より長い/延長した運転サイクルおよびより優れた製品品
質がもたらされる。さらに、洗浄ノズル(13)を使用して、流動層造粒機(14)の造
粒機空間(1)から生じる熱気流を急冷することができる。したがって、前述の熱気流の
温度を、スクラビングユニット(9)に入る前に下げることができ、追加の急冷ステップ
を省略または減らすことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 造粒機空間
2 多孔板
3 スプレーノズル
4 霧化空気用の供給ライン
5 液体溶融物用の供給ライン
6 造粒核種入口
7 造粒機出口
8 通気口
9 スクラバーユニット
10 接続ダクト
11 付着防止層
12 接続ダクトの内面
13 洗浄ノズル
14 流動層造粒機
15 流動化空気入口
16 粒状粒子
17 流動層
22 分離壁
23 スクラバー開口部
d0 通気口での相対的ダクト内距離
di 所与の点、例えば洗浄ノズルの位置での相対的ダクト内距離
d100 スクラバー開口部での相対的ダクト内距離
I 粒の流向
II 流動化空気の流向
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-流動層造粒機(14)と、
-スクラバーユニット(9)と、
-前記流動層造粒機(14)の通気口(8)と前記スクラバーユニット(9)との間の接続ダクト(10)と、
を少なくとも備える流動層造粒機システムであって、
前記接続ダクト(10)の内面は、付着防止層(11)で少なくとも部分的にコーティングされており、洗浄ノズル(13)が前記接続ダクト(10)の内側に位置する、流動層造粒機システム。
【請求項2】
前記流動層造粒機が、前記流動層造粒機(14)の内側の造粒機空間(1)と、前記造粒機空間(1)の内側に位置する多孔板(2)と、前記多孔板(2)の中、上またはそばに位置するスプレーノズル(3)と、流動化空気入口(15)と、前記スプレーノズル(3)に接続された霧化空気用の供給ライン(4)と、前記スプレーノズル(3)に接続された液体溶融物用の供給ライン(5)と、造粒核種入口(6)と、造粒機出口(7)と、前記通気口(8)とを備える、請求項1に記載の流動層造粒機システム。
【請求項3】
前記付着防止層(11)が有機ケイ素化合物を含む、請求項1または2に記載の流動層造粒機システム。
【請求項4】
前記接続ダクト(10)の内面(12)の少なくとも10%が、前記付着防止層(11)でコーティングされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項5】
前記接続ダクト(10)の内面(12)の少なくとも30%が、前記付着防止層(11)でコーティングされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項6】
前記接続ダクト(10)の内面(12)の少なくとも50%が、前記付着防止層(11)でコーティングされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項7】
1~6個の洗浄ノズル(13)が前記接続ダクト(10)の内側に位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項8】
前記洗浄ノズル(13)が、前記接続ダクト(10)の内側の、前記通気口(8)と前記スクラバーユニット(9)との間のダクト内距離の2%~90%以内の場所/空間に位置する、請求項1から7のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項9】
前記洗浄ノズル(13)が、前記接続ダクト(10)の内側の、前記通気口(8)と前記スクラバーユニット(9)との間のダクト内距離の5%~50%以内の場所/空間に位置する、請求項1から7のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項10】
前記洗浄ノズル(13)が、前記接続ダクト(10)の垂直断面または水平断面に位置する、請求項1から9のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項11】
前記有機ケイ素化合物が、ポリアルキルシリコーン化合物、ポリアリールシリコーン化合物、ポリアリルシリコーン化合物ならびに/あるいはアルキル-、アリール-およびアリルシリコーン化合物の混合物または誘導体を含む、請求項3に記載の流動層造粒機システム。
【請求項12】
前記有機ケイ素化合物が、ポリアルキルシロキサン、ポリメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ペルフルオロアルキルシランまたはペルフルオロアルキルシロキサンならびに/あるいはこれらの混合物または誘導体を含む、請求項11に記載の流動層造粒機システム。
【請求項13】
前記有機ケイ素化合物がポリメチルシロキサンを含む、請求項12に記載の流動層造粒機システム。
【請求項14】
前記付着防止層(11)が、0.5μm~1000μmの厚さを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項15】
前記付着防止層(11)が、10μm~40μmの厚さを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の流動層造粒機システム。
【請求項16】
前記多孔板(2)が、前記付着防止層(11)で少なくとも部分的にコーティングされている、請求項2に記載の流動層造粒機システム。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の流動層造粒機システムを備える尿素造粒プラント。
【請求項18】
アンモニア化合物、硝酸塩、リン酸塩、尿素、元素硫黄、硫酸アンモニア、UAS(尿素-硫酸アンモニア)および/またはこれらの混合物を含有する肥料粒を製造するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の流動層造粒機システムの使用。
【外国語明細書】