(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030106
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】増殖性障害の治療のための投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/121 20060101AFI20230228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230228BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230228BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230228BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230228BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230228BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230228BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230228BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230228BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61K31/121
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/12
A61K9/127
A61K47/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205330
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2020555189の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】62/655,095
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514306065
【氏名又は名称】サインパス ファルマ,インク.
【氏名又は名称原語表記】SIGNPATH PHARMA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ソルディロ ピーター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増殖性障害を治療するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】少なくとも100mg/m2の治療有効量のリポソームクルクミン又はクルクミノイドを8時間にわたって週1回投与する少なくとも1つの治療サイクルを含む投薬レジメンに従って、治療有効量のリポソームクルクミン又はクルクミノイドを、それを必要とするヒト対象に投与するステップを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、増殖性疾患のための治療レジメンの分野、より具体的には、局所進行性又は転移性がんの患者においてリポソームクルクミンを用いる投薬レジメンに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を、本発明の範囲を制限することなく、クルクミン、クルクミノイド、及びその活性な代謝産物の使用及び剤形と関連して記載する。
【0003】
クルクミンは、腫瘍組織及び正常組織の両方において、抗酸化剤として作用し、細胞の酸化還元電位の維持に貢献することが報告されている。ウコン植物のエキスとしての経口投与は、2千年にわたって伝統医薬に使用されており、主に難水溶性であり、腸管及び肝臓では不活性状態であり、胃腸管以外の組織へのバイオアベイラビリティをほとんど引き起こさないことから、毒性を持っていないと同時に全身的治療活性が欠如していることが報告されている。これらの制限を克服するために、リポソーム、ポリマー(n-イソプロピルアクリルアミド、N-ビニルピロリジオン及びアクリル酸)及びポリ乳酸グリコール酸コポリマーを含む非経口静脈内クルクミン製剤が開発されている。
【0004】
Kurzrockらの米国特許出願第20060067998号明細書は、ヒト患者における膵臓がん、乳がん及びメラノーマを含むがんの治療のための組成物及び方法を提供している。本発明の方法及び組成物は、コロイド薬物送達系、好ましくはリポソーム薬物送達系に被包されたクルクミン又はクルクミンアナログを用いる。適切なコロイド薬物送達系は、ナノ粒子、ナノカプセル、マイクロ粒子又はブロックコポリマーミセルも含む。クルクミン又はクルクミンアナログを被包するコロイド薬物送達系は、薬学的に許容される担体で非経口投与される。
【0005】
しかし、クルクミン及び/又はクルクミノイドの抗増殖活性を最大限にすると同時に負の副作用を最小限に抑える製剤及び投薬レジメンが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第20060067998号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、増殖性障害を治療する方法であって、少なくとも100mg/m2の治療有効量の静脈内リポソームクルクミン又はクルクミノイドを8時間以下にわたって投与する少なくとも1つの治療サイクルを含む投薬レジメンに従って、治療有効量の該リポソームクルクミン又はクルクミノイドを、それを必要とするヒト対象に投与するステップを含む、方法を含む。一態様では、治療サイクルの後に4日間、5日間、6日間、又は7日間の休薬期間が設けられ、その間、リポソームも活性剤も投与されない。別の態様では、治療サイクルは、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、又は12週間連続する。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、125mg/m2、150mg/m2、200mg/m2、250mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400mg/m2、450mg/m2、500mg/m2、又は600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2~6時間にわたって100~60
0mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2~4時間にわたって300~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2時間以下にわたって300~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、又は7時間投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、又は8時間にわたって少なくとも300mg/m2の用量で投与される。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、合成クルクミン又はクルクミノイドである。別の態様では、該方法は、有効用量のイリノテカン、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、カペシタビン、アントラサイクリン(antracyclin)、ドキソルビシン、ダサ
チニブ、イマチニブメシル酸塩、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ベバシツマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ及びそれらの組合せの少なくとも1つを提供するステップをさらに含む。別の態様では、増殖性疾患は、転移性がんである。別の態様では、増殖性疾患は、乳がん、子宮がん、子宮頸部がん、脳がん、結腸がん、白血病、頸がん、前立腺がん、胃腸管がん、肝臓がん、メラノーマ、又は膵臓がんから選択される。別の態様では、リポソームは、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC,1-Myristoyl-2-Hydroxy-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、12-ミステロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-[ホスホ-ra
c-(グリセロール)](DMPG,12-Mysteroyl-2-Hydroxy-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(glycerol)])、又はDMPC/DMPGリポソームの少なくとも1つを含む。一態様では、リゾホスファチジルグリセロールは、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンの少なくとも1つを含む。別の態様では、リポソームは、活性剤によって引き起こされる、心膜線維症、心内膜心筋線維症、心不全、出血性心筋壊死、心筋症、心筋炎、左室駆出率(LVEF,left ventricular ejection fraction)の低下、うっ血性心不全(CHF,congestive heart failure)、急性冠疾患、高血圧、心筋梗塞、QT延長、又は心膜炎を予防する。別の態様では、リポソームは、活性剤を被包しない。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、天然又は合成クルクミンの少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミンと脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、9:1のDMPC:Chol、9:1のDMPC:DMPG、8:1:1のDMPC:Chol:DMPG、9:1のDPPC:DMPG、8:1:1のDPPC:Chol:DMPG、95:5のDMPC:DSPE-PEG-2000、90:10:05のDMPC:Chol:DSPE-PEG-2000、7:3のDMPC/DMPG、7:3のDPPC/DMPG、9:1のDPPC/DMPGから選択される。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、増殖性障害を治療する方法であって、少なくとも100mg/m2の治療有効量の静脈内リポソームクルクミンを8時間にわたって週1回投与する少なくとも1つの治療サイクルを含む投薬レジメンに従って、治療有効量の静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログを、それを必要とするヒト対象に投与するステップを含む、方法を含む。一態様では、治療サイクルの後に4日間、5日間、6日間、又は7日間の休薬期間が設けられ、その間、静脈内リポソームクルクミン及びそのアナログは投与されない。別の態様では、治療サイクルは、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、又は12週間連続する。別の態様では、
リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、125mg/m2、150mg/m2、200mg/m2、250mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400mg/m2、450mg/m2、500mg/m2、又は600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2~6時間にわたって100~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2~4時間にわたって300~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2時間以下にわたって300~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログは、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、又は7時間投与される。別の態様では、静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログは、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、又は8時間にわたって少なくとも300mg/m2の用量で投与される。別の態様では、該方法は、有効用量のイリノテカン、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、カペシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ベバシツマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ及びそれらの組合せの少なくとも1つを提供するステップをさらに含む。別の態様では、増殖性疾患は、転移性がんである。別の態様では、増殖性疾患は、乳がん、子宮がん、子宮頸部がん、脳がん、結腸がん、白血病、頸がん、前立腺がん、胃腸管がん、肝臓がん、メラノーマ、又は膵臓がんから選択される。別の態様では、リポソームは、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、12-ミステロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(グリセロール)](DMPG)、又はDMPC/DMPGリポソームの少なくとも1つを含む。一態様では、リゾホスファチジルグリセロールは、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンの少なくとも1つを含む。別の態様では、静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログは、心膜線維症、心内膜心筋線維症、心不全、出血性心筋壊死、心筋症、心筋炎、左室駆出率(LVEF)の低下、うっ血性心不全(CHF)、急性冠疾患、高血圧、心筋梗塞、又は心膜炎を引き起こさない。別の態様では、リポソームは、クルクミン又はそのアナログを被包しない。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、単離又は合成クルクミンの少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミンと脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、9:1のDMPC:Chol、9:1のDMPC:DMPG、8:1:1のDMPC:Chol:DMPG、9:1のDPPC:DMPG、8:1:1のDPPC:Chol:DMPG、95:5のDMPC:DSPE-PEG-2000、90:10:05のDMPC:Chol:DSPE-PEG-2000、7:3のDMPC/DMPG、7:3のDPPC/DMPG、9:1のDPPC/DMPGから選択される。
【0009】
さらに別の実施形態では、本発明は、増殖性疾患を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、増殖性疾患を低減又は排除するのに十分な有効量の抗増殖性リポソームクルクミン又はクルクミノイドを、増殖性疾患を予防、低減又は排除するための少なくとも100mg/m2の有効量で、8時間以下にわたって投与するステップを含む、方法を含む。一態様では、投与は、8時間にわたって少なくとも100mg/m2を含む。別の態様では、治療サイクルの後に4日間、5日間、6日間、又は7日間の休薬期間が設けられ、その間、リポソームも活性剤も投与されない。別の態様では、治療サイクルは、
2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、又は12週間連続する。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、125mg/m2、150mg/m2、200mg/m2、250mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400mg/m2、450mg/m2、500mg/m2、又は600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2~6時間にわたって100~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2~4時間にわたって300~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2時間以下にわたって300~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、活性剤は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、又は7時間投与される。別の態様では、活性剤は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、又は8時間にわたって少なくとも300mg/m2の用量で投与される。別の態様では、該方法は、有効用量のイリノテカン、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、カペシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ベバシツマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ及びそれらの組合せの少なくとも1つを提供するステップをさらに含む。別の態様では、増殖性疾患は、転移性がんである。別の態様では、増殖性疾患は、乳がん、子宮がん、子宮頸部がん、脳がん、結腸がん、白血病、頸がん、前立腺がん、胃腸管がん、肝臓がん、メラノーマ、又は膵臓がんから選択される。別の態様では、リポソームは、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、12-ミステロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(グリセロール)](DMPG)、又はDMPC/DMPGリポソームの少なくとも1つを含む空のリポソームである。一態様では、リゾホスファチジルグリセロールは、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンの少なくとも1つを含む。別の態様では、リポソームは、活性剤によって引き起こされる、心膜線維症、心内膜心筋線維症、心不全、出血性心筋壊死、心筋症、心筋炎、左室駆出率(LVEF)の低下、うっ血性心不全(CHF)、急性冠疾患、高血圧、心筋梗塞、QT延長、又は心膜炎を予防する。別の態様では、リポソームは、活性剤を被包しない。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、天然又は合成クルクミンの少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミンと脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、9:1のDMPC:Chol、9:1のDMPC:DMPG、8:1:1のDMPC:Chol:DMPG、9:1のDPPC:DMPG、8:1:1のDPPC:Chol:DMPG、95:5のDMPC:DSPE-PEG-2000、90:10:05のDMPC:Chol:DSPE-PEG-2000、7:3のDMPC/DMPG、7:3のDPPC/DMPG、9:1のDPPC/DMPGから選択される。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも100mg/m2の治療有効量の静脈内リポソームクルクミン又はクルクミノイドを8時間以下にわたって投与する少なくとも1つの治療サイクルを含む投薬レジメンに従う、それを必要とするヒト対象への治療有効量の該リポソームクルクミン又はクルクミノイドを含む用量を含む、キットを含む。一態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、125mg/m2、150mg/m2、200mg/m2、250mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400m
g/m2、450mg/m2、500mg/m2、又は600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2~6時間にわたって100~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2~4時間にわたって300~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、2時間以下にわたって300~600mg/m2の用量で投与される。別の態様では、第1及び第2の用量は、同じ容器にパッケージされ、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、又は7時間の用量を提供する。別の態様では、第1及び第2の用量は、同じ容器にパッケージされ、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、又は8時間にわたって少なくとも300mg/m2の用量を提供する。別の態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイドは、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、天然又は合成クルクミンの少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミンと脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、9:1のDMPC:Chol、9:1のDMPC:DMPG、8:1:1のDMPC:Chol:DMPG、9:1のDPPC:DMPG、8:1:1のDPPC:Chol:DMPG、95:5のDMPC:DSPE-PEG-2000、90:10:05のDMPC:Chol:DSPE-PEG-2000、7:3のDMPC/DMPG、7:3のDPPC/DMPG、9:1のDPPC/DMPGから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の特色及び利点のより完全な理解のために、ここで、本発明の詳細な説明を添付の図と共に参照する。
【
図1A-1B】クルクミン注入中のクルクミン血漿濃度曲線についての結果を示す。クルクミンの血漿レベルは、個々の対象について示されている。時間(時)は、実際のサンプリング時間を表す。時間「0」は、注入開始を表す。
図1Aは、8時間にわたってリポソームクルクミンを受けた患者番号17~27から得られた結果を示す。
図1Bは、6時間にわたってリポソームクルクミンを受けた患者番号28~33から得られた結果を示す。
【
図2A-2C】注入中の2時間目におけるクルクミンの血漿レベルを、注入速度と比較して示す。
図2Aは、注入が中断されたために患者番号21を除く、すべての患者についてのグラフである。
図2Bは、患者番号3、21及び24を除く患者についてのグラフである。
図2Cは、2Bに示されたデータに関する、各注入速度における平均±SDを示すグラフである。2時間目のクルクミンレベルに正規化された注入速度は、7.0mg/m
2/時、7.6mg/m
2/時、9.3mg/m
2/時、7.3mg/m
2/時、14.5mg/m
2/時、15.6mg/m
2/時及び24.0mg/m
2/時であり、注入速度はそれぞれ12.5mg/m
2/時、15.0mg/m
2/時、18.75mg/m
2/時、23.75mg/m
2/時、30.0mg/m
2/時、37.5mg/m
2/時及び50mg/m
2/時である。
【
図3A-3B】腫瘍マーカーの時間経過を示すグラフである。
図3Aは、患者番号27におけるPSA[ng/ml]の時間経過であり、
図3Bは、患者番号30におけるCEA[ug/l]及びCa19-9[U/ml]の時間経過である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用が、以下に詳細に論じられるが、本発明は、多種多様な具体的な状況で具体化され得る多くの適用できる本発明の概念を提供することを理解されたい。本明細書で論じられる具体的な実施形態は、本発明を作成し、使用するための具体的なやり方を単に例示するものであり、本発明の範囲を定めるものではない。
【0013】
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語が以下に定義される。本明細書に定義
される用語は、本発明が関連する分野の当業者に一般に理解される意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」などの用語は、単数の実体だけを指すことを
企図されず、例示するために具体例が使用され得る全般的クラスを含む。この用語は、本明細書では、本発明の具体的な実施形態を記載するために使用されるが、それらの使用は、特許請求の範囲に概説されている場合を除いて、本発明を制限しない。
【0014】
本発明は、固形腫瘍、並びに白血病及びリンパ腫などの非固形腫瘍の両方を含む多種多様なタイプのいずれかのがんの治療又は予防に有用な組成物及び投薬レジメンを提供する。本発明の投薬レジメンは、悪性又は良性がんのいずれかを治療するために使用され得ることが判明した。ある特定の例では、本発明の投薬レジメンは、ある特定のパラメータ内で変わり得る。一般に、増殖性障害を治療するための投薬レジメンは、少なくとも100mg/m2の治療有効量の静脈内リポソームクルクミンを8時間にわたって週1回投与する少なくとも1つの治療サイクルを含む投薬レジメンに従って、ウコン植物から単離されるか、又は高レベルの純度で合成される、治療有効量の静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログ(クルクミノイド)を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む。治療サイクルの後、1週間の休薬期間を設けることができ、その間、リポソームクルクミン及びそのアナログは投与されない。しばしば治療サイクルは、製剤の効果のモニタリングに応じて、例えば、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、又は10週間、11週間、又は12週間連続して反復され得る。投与される静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログの投与量は、例えば、150mg/m2、200mg/m2、250mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400mg/m2、450mg/m2、又は460mg/m2の用量であってよい。投与される静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログの投与量は、例えば、2~6時間にわたって100~460mg/m2の用量であってよい。投与される静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログの投与量は、例えば、2~4時間にわたって200~500mg/m2の用量であってよい。投与される静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログの投与量は、例えば、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間若しくは7時間、又はその部分(例えば、+/-15分間、20分間、30分間、45分間、又は50分間)にわたって投与される静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログの用量であってよい。投与される静脈内リポソームクルクミン又はそのアナログの投与量は、例えば、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、又は8時間にわたって少なくとも300mg/m2の用量であってよい。ある特定の実施形態では、投与量は、300mg、400mg、460mg、500mg、又は600mgである。ある特定の実施形態では、注入時間は、6時間以下、4時間以下、又は2時間以下である。ある特定の実施形態では、注入頻度は、6日当たり1回、5日当たり1回、又は4日当たり1回である。
【0015】
本発明を使用して治療するための標的増殖性疾患の非限定的な例には、混合タイプを有するがんを含む、癌腫、肉腫、骨髄腫、神経膠腫、リンパ腫、及び白血病が含まれ、それらはすべて、本発明を使用して治療され得る。また治療され得るがんの具体的なタイプには、それに限定されるものではないが、乳房又は前立腺の腺癌;肺の気管支癌のすべての形態;ミエロイド;メラノーマ;肝細胞癌;神経芽細胞腫;乳頭腫;アプドーマ;分離腫;鰓腫;悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患;癌腫(例えば、ウォーカー、基底細胞、基底扁平細胞、ブラウン-ピアース、腺管、エールリッヒ腫瘍、インサイツ、クレブス2、メルケル細胞、粘液性、非小細胞肺、燕麦細胞、乳頭、スキルス、細気管支性、気管支原性、扁平細胞、及び移行細胞)、組織球性障害;白血病(例えば、B細胞、混合細胞、ヌル細胞、T細胞、T細胞慢性、HTLV-II-関連、急性リンパ球性(lyphocytic)、リンパ球性慢性、マスト細胞、及びミエロイド);悪性組織球増殖症;ホジキン病;免疫増殖性小腸;非ホジキンリンパ腫;形質細胞腫;細網内皮症;メラノーマ;軟骨芽細胞腫;軟骨腫;軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫瘍;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;ユーイング肉腫;滑膜腫;腺線維腫
;腺リンパ腫;癌肉腫;脊索腫;頭蓋咽頭腫;未分化胚細胞腫(dysgermiinoma);過誤
腫;間葉腫;中腎腫;筋肉腫;アメロブラストーマ;セメント質腫;歯牙腫;奇形腫;胸腺腫;絨毛性腫瘍;腺癌;腺腫;胆管腫;真珠腫;円柱腫;嚢胞腺癌;嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫瘍;ギナンドロブラストーマ;肝細胞癌;汗腺腫;島細胞腫瘍;ライディッヒ細胞腫瘍;乳頭腫;セルトリ細胞腫瘍;卵胞膜細胞腫瘍;平滑筋腫;平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫;筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣腫;神経節神経腫;神経膠腫;髄芽腫;髄膜腫;多発性骨髄腫、神経線維鞘腫;神経芽細胞腫;神経上皮腫;神経線維腫;神経腫;傍神経節腫;非クロム親和性傍神経節腫;被角血管腫;好酸球性血管リンパ球増殖症;硬化性血管腫;血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管周皮腫;血管肉腫;リンパ管腫;リンパ管筋腫;リンパ管肉腫;松果体腫;癌肉腫;軟骨肉腫;葉状嚢肉腫;線維肉腫;血管肉腫;平滑筋肉腫;白血肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;筋肉腫;粘液肉腫;卵巣癌;横紋筋肉腫;肉腫(例えば、ユーイング、実験的、カポジ、及びマスト細胞);新生物(例えば、骨、乳房、消化器系、結腸直腸、肝臓、膵臓、下垂体、精巣、眼窩、頭頸部、中枢神経系、聴神経、骨盤、呼吸器、及び泌尿生殖器);神経線維腫症、及び子宮頸部異形成)等が含まれる。
【0016】
本発明の投薬レジメンはまた、あらゆる哺乳動物対象、例えばヒト患者のがんの治療又は予防に有用である。本明細書で使用される場合、患者は、ヒト患者である。また本明細書で使用される場合、治療は、がんの任意の緩和を意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「投薬レジメン」は、がんの症状を少なくとも寛解させるか、又は疾患の進行を停止、阻害若しくは逆行させるために、がんを有する患者及び他の哺乳動物対象を治療するための組成物又は医薬品の、具体的な投与量、投薬のタイミング、投薬の反復回数、及び使用を指す。当業者は、同じ組成物及び投薬レジメンが、異なる患者に対して異なる効果を有することができ、さらには同じ患者に対して異なる時間で異なる効果を有することができると認識されよう。本明細書で使用される場合、「予防」は、疾患の発症に対して感受性を有する患者又は哺乳動物対象のがんの発症を予防又は阻害するために、患者を予防的に治療することを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「クルクミン」及び「クルクミンアナログ」は、クルクミンと構造が類似していることにより、クルクミンの抗増殖性又はアポトーシス促進性効果と類似の効果をがん細胞に対して示す化合物を指す。クルクミンは、化学名ジフェルロイルメタンを有する、ウコン植物に見出される天然産物である。分子式はC21H20O6であり、モル質量は368.38g/molである。クルクミンは、腫瘍細胞における死滅経路を増進し、生存経路を制限することによって、抗がん療法薬として作用する。クルクミンは、成熟がん細胞及びがん幹細胞に対して活性を有するにもかかわらず、長期間でも正常細胞に対しては毒性がほとんどないことが知られている。これは、正常細胞よりもがん細胞にクルクミンがかなり多く取り込まれるからであり得る。クルクミンはまた、がん幹細胞及び正常幹細胞に対して異なる効果を有する。クルクミンは、その抗炎症効果を介して、がん細胞の周りの微小環境を、がん幹細胞の増殖には有害であるが正常幹細胞の助けになる微小環境に変化させる。実際、クルクミンは、複数の研究において、正常幹細胞の機能に対して刺激効果及び保護効果を有することが示されている。クルクミンの治療のための使用に関する制限因子は、水溶度が低く、経口摂取後の対応するバイオアベイラビリティが低いことである。経口投与の薬物動態及びバイオアベイラビリティの制限を克服するために、クルクミンのリポソーム製剤が静脈内投与のために開発され、有望な薬物送達系となっている。
【0019】
クルクミンに類似の抗がん効果を有することができるクルクミンアナログには、Ar-ターメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ナトリウムクルクミネート、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタ
ン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)、1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10-ウンデカテトラエン-5,7-ジオン(シンナミルクルクミン)等(Araujo and Leon, 2001、Lin et al.,
2001、John et al., 2002、またIshidaet al., 2002も参照されたい)が含まれる。ク
ルクミンアナログには、クルクミンの異性体、例えばクルクミンの(Z,E)及び(Z,Z)異性体も含まれ得る。関連の実施形態では、クルクミンに類似の抗がん効果を有するクルクミン代謝産物も、本発明において使用することができる。公知のクルクミン代謝産物には、テトラヒドロクルクミン及びヘキサヒドロクルクミンのグルクロニド(glucoronide)、並びにジヒドロフェルラ酸が含まれる。ある特定の実施形態では、クルクミンア
ナログ又は代謝産物は、金属キレート、特に銅キレートとして製剤化され得る。本発明における使用に適したクルクミン、クルクミンアナログ及びクルクミン代謝産物の他の適切な誘導体は、当業者に明らかとなろう。
【0020】
本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、ステロール、特にコレステロールが付加されていてもよい脂質、例えばリン脂質を指す。脂質は、単独で又は他の脂質と組み合わせて提供することができ、飽和及び不飽和、分岐状又は非分岐状であってよく、脂質トリグリセロール分子の形態であってよい。本発明と共に使用するためのリン脂質の非限定的な例として、それに限定されるものではないが、例えば、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG,1-myristoyl-2-hydroxy-sn-glycero-3-phospho-(1'-rac-glycerol))、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoPC,1-myristoyl-2-hydroxy-sn-glycero-3-phosphocholine)、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリス
トイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンが挙げられる。本発明と共に使用するための他の非限定的な例示的脂質として、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール(phosphatidylglycrol)、カルジオリピン、ホスファチジルイノシトール
、又は脂質、リポソーム若しくはリゾ形態のそれらの前駆体が挙げられる。本発明と共に使用するためのリゾホスファチジルグリセロールを含む脂質の非限定的な例として、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンが挙げられる。非対称性ホスファチジルコリンは、1-アシル、2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンと呼ばれ、それらのアシル基は互いに異なっている。対称性ホスファチジルコリンは、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンと呼ばれる。本明細書で使用される場合、略語「PC」は、ホスファチジルコリンを指す。ホスファチジルコリンである1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは、本明細書では「DMPC」と略される。ホスファチジルコリンである1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは、本明細書では「DOPC」と略される。ホスファチジルコリンである1,
2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは、本明細書では「DPPC」と略される。これらの短鎖又は長鎖脂肪酸の単一脂肪酸鎖型は、単一脂肪酸鎖だけがグリセリル骨格に結合している場合には「リゾ」形態と呼ばれる。本発明の指針に従って、過度の実験方法を用いることなく、本明細書で教示される通り特許請求される機能を有する他の脂質を特定することができる。一態様では、リポソームクルクミン又はクルクミノイド(リポソームクルクミン)は、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、天然又は合成クルクミン少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミンと脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、9:1のDMPC:Chol、9:1のDMPC:DMPG、8:1:1のDMPC:Chol:DMPG、9:1のDPPC:DMPG、8:1:1のDPPC:Chol:DMPG、95:5のDMPC:DSPE-PEG-2000、90:10:05のDMPC:Chol:DSPE-PEG-2000、7:3のDMPC/DMPG、7:3のDPPC/DMPG、9:1のDPPC/DMPGから選択される。
【0021】
「リポソーム」という用語は、その壁又は膜が、ステロール、特にコレステロールが付加されていてもよい脂質、特にリン脂質の形態である、カプセルを指す。具体的な非限定的な一例では、リポソームは、空のリポソームであり、単一のタイプのリン脂質又はリン脂質の組合せから製剤化され得る。空のリポソームには、1又は2以上の表面修飾、例えばタンパク質、炭水化物、糖脂質又は糖タンパク質、さらには核酸、例えばアプタマー、チオ修飾核酸、タンパク質核酸模倣物、タンパク質模倣物、ステルス剤等がさらに含まれ得る。本発明と共に使用するための空のリポソームの非限定的な例として、それに限定されるものではないが、例えば、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)、及び1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)が挙げられる。一実施形態では、リポソームは、例えばLysoPG、ミリストイルモノグリセリド及びリスチン酸を含む、リポソーム又はリポソーム前駆体である。具体的な非限定的な一例では、組成物はまた、リポソーム内又はその周りに活性剤を含み、組成物は、3:1、1:1、0.3:1、及び0.1:1の比のリン脂質と活性剤を有する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、特に疾患又は障害の症状を示している患者における、本明細書に言及される状態の治療を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療する」という用語は、本発明の化合物の任意の投与を指し、(i)疾患の病理若しくは症候を経験若しくは示している動物における疾患の阻害(すなわち、病理及び/又は症候のさらなる発症の停止)、又は(ii)疾患の病理若しくは症候を経験若しくは示している動物における疾患の寛解(すなわち、病理及び/又は症候の逆行)を含む。「制御」という用語は、制御される状態の予防、治療、根絶、寛解又はそれ以外では重症度の低減を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載される「有効量」又は「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師、又は他の臨床医によって求められる、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する、対象となる化合物の量を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、化合物「の投与」又は「を投与する」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明の化合物を、それに限定されるものではないが、経口剤形
、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液剤等;注射可能な剤形、例えばIV、IM、又はIP等;クリーム剤、ゼリー剤、散剤、又はパッチ剤を含む経皮剤形;口腔内頬側剤形;吸入散剤、スプレー剤、懸濁液剤等;及び直腸坐剤を含む治療上有用な形態及び治療上有用な量の、個体の体内に導入され得る形態で、治療を必要とする個体に提供することを意味すると理解されたい。本発明において用いることができる投与方法には、動脈内、筋肉内、皮下、組織内、鼻腔内、皮内、滴下注入、脳内、直腸内、腟内、腹腔内、腫瘍内、腫瘍近位及び病変への直接投与も含まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「静脈内投与」という用語には、注射及び他の静脈内投与方法が含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤又は賦形剤を説明するために本明細書で使用される場合、製剤のその他の成分と適合性がなくてはならず、そのレシピエントにとって有害であってはならない。
【0028】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」又は「薬理学的に許容される」という用語は、必要に応じて動物又はヒトに投与される場合、典型的に副反応、アレルギー反応、又は他の有害反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的に許容される物質のための媒体として使用され得る、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、分散媒、コーティング、防腐剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、賦形剤、結合剤、滑沢剤、ゲル、洗浄剤、界面活性剤等を指す。
【0029】
本発明の医薬組成物は、クルクミン又はクルクミンアナログ、及びコロイド薬物送達担体、例えばリポソーム若しくは空のリポソーム、又は標準技術に従って調製されるその組合せを含む。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。一般に、生理食塩水などの医薬担体が用いられる。他の適切な担体には、安定性を増強するための糖タンパク質、例えばアルブミン、リポタンパク質及びグロブリンを含む、水、緩衝用水、等張水溶液、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン水溶液等が含まれる。これらの組成物は、当業者に周知の従来の滅菌技術によって滅菌され得る。例えば、十分に小さいリポソームは、滅菌濾過技術を使用して滅菌され得る。修正され得る製剤の特徴には、例えば、pH及び浸透圧が含まれる。例えば静脈内投与される場合の製剤の有効性を促進するために、例えば、ヒト血液又は組織のpH及び浸透圧に類似のpH及び浸透圧を有する製剤を達成することが望ましい場合がある。或いは、他の投与経路を介して投与される場合、開示される組成物の有効性を増進するために、代替の特徴が修正され得る。
【0030】
リポソームの形成及び使用は、例えばLiposome Technology, Vols. 1, 2 and3, Gregory Gregoriadis, ed., CRC Press, Inc、Liposomes:Rational Design, Andrew S. Janoff, ed., Marcel Dekker, Inc.、Medical Applications of Liposomes, D. D. Lasic and D.Papahadjopoulos, eds., Elsevier Press、BioconjugateTechniques, by Greg T. Hermanson, Academic Press、及びPharmaceuticalManufacturing of Liposomes, by Francis J. Martin, in Specialized Drug DeliverySystems (Praveen Tyle, Ed.), Marcel Dekker, Inc.に記載される通り、当業者に一般に公知である。リポソームの形成は、典型
的に、最初にリン脂質を有機溶媒に懸濁させ、次に、乾燥脂質ケーキ又はフィルムが形成されるまで、蒸発乾固させることを伴う。適切な量の水性媒体を添加すると、脂質は、自然に多層同心円の二層小胞(多層小胞(MLV,multilamellar vesicle)としても公知
である)を形成する。次に、これらのMLVは、機械的に分散させることができる。MLVは、一般に、25ナノメートル~4マイクロメートルの直径を有する。MLVの超音波処理により、コアに水溶液を含有する、直径200~500オングストロームの範囲の小型単層小胞(SUV,small unilamellar vesicle)が形成される。SUVは、MLV及
び単層よりも小さい。
【0031】
本発明は最初に、研究登録(enrolment)時に、利益が証明されている抗腫瘍療法が利
用可能でない局所進行性又は転移性がんを有する患者において、8時間又は6時間にわたって静脈内注入として投与されたリポソームクルクミンの安全性及び耐用性を実証する。初回注入中及び注入後のクルクミン及びTHCのPkを評価すること、並びにRECIST V1.1に従ってリポソームクルクミンの抗腫瘍活性(8週後に完全寛解(CR,complete response)/部分寛解(PR,partial response)/安定疾患(SD,stable disease)に達した患者の割合)を評価することも可能であった。
【0032】
患者。転移性がんを有する患者32人を、用量100~300mg/m2のリポソームクルクミン注入で、24時間、8時間又は6時間のいずれかにわたって治療した。研究エントリー時の患者の年齢中央値は、62.7歳(42.6~84.5歳の範囲)であり、大部分が男性(71.9%)であった。患者の一次診断は、ブドウ膜黒色腫-1人、原発不明の扁平上皮癌-1人、頭頸部の扁平上皮癌-2人、耳下腺癌-1人、乳房癌-1人、肺癌-1人、食道の扁平上皮癌-2人、食道又は胃の腺癌-5人、肝細胞癌-2人、胆管細胞癌-3人、膵臓の腺癌(adencarcinoma)-3人、小腸の腺癌-1人、結腸癌-1人
、肛門部類表皮癌-2人、尿路上皮癌-3人、子宮癌-1人、前立腺癌-2人であった。患者は、過去に中央値で5回(2~10回の範囲)のがん治療で事前治療を重度に受けていた(表1)。患者は、リポソームクルクミン注入を1~11回受け、治療期間の中央値は、38.5日(1~82日の範囲)であった(表1)。17人の患者(53.1%)は、被験薬の注入を少なくとも5回受け、8人の患者(25.0%)は、計画された8回すべての注入を受けた。治療は、疾患進行(23人の患者)、一般的病状の悪化(6人の患者)、初期離脱(2人の患者)又は研究中断(1人の患者)後に停止された。大部分の患者にとって、研究の終了理由は死亡であるが、最終研究治療後の4週間以内に患者10人だけが死亡した。
【0033】
【0034】
有害事象(AE,Adverse Event)。合計143のAEが、30人の患者(93.8%
)によって経験された。これらのAEの中で34のAE(14人の患者における)だけが、研究治療に確実に、ほぼ確実に、又はおそらく関係していると判断され、ほとんどの他のAEは、基礎疾患に関係すると判断された。驚くべきことに、8時間にわたるDL1~6(100~300mg/m2)のリポソームクルクミン注入は、一般に認容性が高く、DL6a(6時間にわたって300mg/m2)では、観察された血液学的AEの数は、被験薬物の増大に著しく関係すると判断された(表2)。
【0035】
【0036】
23人の患者(71.9%)において報告された40のSAEの中で、2つが研究治療に関係していた(患者番号31の顔面浮腫、患者番号32の貧血)。両方の患者は、DL6aで治療された。DL1(100mg/m2)で1人の患者(番号2)に棘状赤血球が観察された。被験薬と関係する心臓、肺、肝臓又は腎臓毒性は観察されず、おそらく被験薬に関係しているグレード1の胃腸管AEが、3人だけに観察された。
【0037】
合計4つのAEが、研究者によってグレード3に等級付けられた(患者番号29、番号32の貧血、患者番号28の溶血、患者番号3の低ナトリウム血症)。溶血及び貧血は、DL6aにおいて観察され、用量漸増を停止した(DLTを参照されたい)。肝硬変、腹水症、全身浮腫及び既存の低ナトリウム血症の病歴を有していた患者番号3は、グレード3の低ナトリウム血症を発症し、初回注入の前に133mmol/Lであった血清ナトリウムが、6回目の注入前に126mmol/Lの低さまで低下した。
【0038】
DLT及び推奨第2相用量。DL6aには6人の患者が含まれていた。1人の患者(番号28)が、溶血の確実な徴候を示した。サイクル2の間に患者のヘモグロビン(Hb,hemoglobin)は、11.5g/dl(注入開始)から9.5g/dl(注入終了-EOI,end of infusion)に、さらに9.1g/dl(EOIの3時間後)に低下し、ハプト
グロビンがわずかに低下した。サイクル4の間に、Hbは、8g/dl(開始)から6.4g/dl(EOI)に、さらに5.5g/dl(EOIの2.5時間後)に低下し、ハプトグロビンは、130mg/dl(開始)から89mg/dl(EOI)に、さらに15mg/dl(EOIの2.5時間後)に、さらに10mg/dl未満(EOIの15時間後)に著しく低下した(正常範囲30~200mg/dl)。両方の治療サイクルにおいて、患者は、ビリルビン、網状赤血球(%)及びLDHの上昇も示した。研究治療に関係する溶血は、サイクル4の有害事象として記述された。サイクル1及び2の間に、患者は、留置ポート(port-a-cath)感染(SAE)に罹患し、赤血球輸血を受けた。サイク
ル3及び4の間に、患者はグレード2の貧血を有しており、これは同時発生的な感染にほぼ確実に関係しており、さらに赤血球輸血を受けた。血液塗抹は、分裂赤血球(fragmentocyte)も棘状赤血球も示していなかった。
【0039】
リポソームクルクミン注入に関係するHbの臨床的に著しい低下(2g/dlを超える)が、他の3人の患者(番号29、番号32、番号33)だけに観察されたが、ハプトグロビン及びMCVが変化しなかったので、これらの患者において溶血が存在していたかは不確実であった。血液塗抹は、分裂赤血球も棘状赤血球も示していなかった。さらに患者は、出血の徴候を示していなかった。患者番号32では、サイクル2の後にHbが5.5に低下し、経験された貧血は、研究治療と確実に関係するSAE(SUSAR)と記述された。患者番号30及び番号31は、臨床的に著しいHb低下は経験しなかった。
【0040】
1人の患者(番号31)が、初回注入後の夜間に顔面浮腫(G2)を発症し、デキサメタゾン及びジボンドリン(dibondrin)で治療を受け、さらなる観察のために入院の延長
が必要とされた。患者は、1日以内に回復し、顔面浮腫がさらに発症することなく、研究治療が継続された。
【0041】
クルクミン及びTHCの薬物動態。クルクミン及びTHCのPK評価のために血液試料を収集し、8時間又は6時間にわたってリポソームクルクミンの初回注入を受けたすべての患者から血漿を単離した。患者番号21は、注入が1.5時間中断されたため、PK分析から除外された。注入中(修正3の前)に1回だけ採血された、用量レベルDL1~DL3(100~150mg/m
2)で治療された患者については、血漿試料のほとんどがクルクミン及びTHCの定量下限未満(BLOQ,below the limit of quantification
)であったので、PKパラメータは評価されなかった。患者番号17~番号33のPKパラメータは、表3に提示されている。それらの患者の個々のクルクミン血漿濃度-時間曲線は、
図1A及び1Bに図示されている。クルクミンの平均T
maxは、注入中に達成され、190~300mg/m
2の用量範囲で3.6~4.0時間の範囲であり、6時間の注入で4.2時間であった。患者のほとんどについて、クルクミンの定常状態レベルが達成されたが、患者番号19は、2~6時間の注入で血漿レベルが413.81ng/mLから3885.14ng/mLに増大し(
図1)、その結果、190mg/m
2用量群の他の患者と比較してAUC
0-Tlast値が著しく高くなり、クルクミンの定常状態レベルは達成されなかった(表3)。しかし、一般にAUC
0-Tlast値は、クルクミン注入用量の増大と共に上昇した。EOIでは、血漿レベルは10分以内にBLOQに急速に低下した。異なる注入用量及び注入時間後に達成されたクルクミンの血漿レベルを比較し、可能な限り多くのデータ点を含むために、2時間の注入後の患者のクルクミン血漿レベルを、注入速度と比較した。
図2Aは、8時間にわたって100mg/m
2、120mg/m
2、150mg/m
2、190mg/m
2、240mg/m
2及び300mg/m
2、並びに6時間にわたって300mg/m
2の用量レベルでの注入中(それぞれ12.5mg/m
2/時、15mg/m
2/時、18.75mg/m
2/時、23.75mg/m
2/時、37.5mg/m
2/時及び50mg/m
2/時の注入速度に対応する)、2時間目の患者の注入速度とクルクミン血漿レベルとの関係を図示している。患者番号3及び番号24は、すべての他の患者と比較して、2時間目の血漿濃度が非常に高かったことが明らかである。残りの患者についての注入速度と血漿濃度との関係を理解するために、患者番号3及び番号24についてのデータは除去した(
図2B)。残りの29人の患者についてのクルクミンの平均血漿濃度は、注入速度と明らかな線形依存を示した(R
2=0.9303)。しかし、注入速度によって正規化されたクルクミン平均血漿濃度は、注入速度23.75mg/m
2/時で7.0~9.3までの範囲であり、注入速度30~50mg/m
2/時で14.5~24.0の範囲であり、このことは、より高い注入速度では血漿クルクミン濃度の用量比例的増加を上回ることを示唆している(
図2C)。
【0042】
【0043】
THCの血漿濃度のパターンは、クルクミンのパターンに類似していたが、クルクミンに対するTHCのAUC0-TLastの百分率として表されるTHC血漿レベルは、著
しく低く、注入中の個々の患者間で2~4時間におけるクルクミン血漿レベルの2.1%~21.8%の範囲(平均8.5%)であった。THCのPKパラメータは、表4に示されている。
【0044】
【0045】
有効性。主要有効性エンドポイントは、RECIST v1.1に従う8週後の奏効率
(完全寛解/部分寛解/安定疾患/進行性疾患)であった。23人の患者が腫瘍応答アセスメントを受けたが、8人の患者だけが8週の治療後の腫瘍アセスメントに到達した。その患者全員がPDを示していた。4週目~8週目に腫瘍アセスメントを受けた15人の患者の中で、14人がPDを示し、1人(患者番号27)がSDを示した。1~4回の薬物注入及び治療後に全身状態の悪化を経験した5人の患者は、腫瘍アセスメントを受けずに停止した。2人の患者が、ICから離脱した。
【0046】
腫瘍マーカーCEA、CA19-9、PSA及びCA15-3を、関連する場合にアセスメントした。2人の患者において、腫瘍マーカーの一時的に著しい低下が観察された。前立腺がん、並びに骨及びリンパ節転移、並びに肺の癌性リンパ管症を有していた患者番号27では、PSAレベルは、649ng/mLから、4回目の注入後に355ng/mLに低下した。4回目の注入後、肺感染の疑いにより治療は3週間中断され、PSAレベルが547ng/mlまで再び上昇した(
図3A)。治療中断中の腫瘍応答アセスメントは、SDを示した。患者が2回のさらなるクルクミン注入を受けた後、疾患が進行したことにより研究を終了した。治療の最初の4週間、研究者は、全身状態の改善(WHO2からWHO1)を報告し、LDHの435U/Lから202U/Lへの一時的低下が観察された(正常範囲135~225U/L)。結腸がん、並びに肝臓及び肺転移を有していた患者番号30では、CEAレベルは、スクリーニング時の18542μg/lから6441μg/lに低下し、CA19-9は、スクリーニング時の18105U/mlから8週後には13238U/mlに低下したが(
図3B)、腫瘍病期分類により、進行性疾患が明らかになった。患者は、臨床的な利益及び腫瘍マーカー応答により、3回のさらなる注入を受けた。この最中、腫瘍マーカーは再び上昇し、全身状態の低下により11回目の注入後に治療を停止した。患者は、被験薬物の最終投与の13日後に死亡した。腫瘍マーカー応答があった両方の患者は、300mg/m
2のクルクミン用量で治療された(患者番号27は8時間にわたって、患者番号30は6時間にわたって)。
【0047】
この研究に参加した患者は、一般に進行がんを有しており、確立された抗がん治療ラインで消耗しており、後期臨床研究には不適格と判断されていた。リポソームクルクミンの用量漸増は、DL6a(6時間にわたって300mg/m2)まで継続した。8時間にわたる用量100~300mg/m2(DL1~6)のリポソームクルクミン注入は、一般に認容性が高く、報告されたAE及びSAEの数は、事前治療を重度に受けた患者集団について予想されるものであった。
【0048】
DL6a(6時間にわたって300mg/m2)において、被験薬物に関係して観察されたAEの数は、著しく増大した。このDLでは、注入中のHbの著しい低下が、6人の患者のうち4人で観察された。DLTの定義を満たす確実な溶血が、1人の患者(番号28)で観察され、他の患者3人は貧血を経験した(番号29、番号31、番号32)。これらの患者において観察されたHbの低下は、用量漸増を停止する理由になった一方で、異なる患者におけるHbの変化の比較は、注意して行わなければならない。これらの患者は、異なる治療歴を有しており、異なる過去の化学療法及びある患者では過去のRTに続発した過去の骨髄破壊度が異なっていた。すべての患者が複数の併用医薬品を受けており、患者の一部は、クルクミンによる赤血球溶血に罹患しやすい素因があった可能性がある。溶血を引き起こすことが知られている最も一般的な薬剤の4つが、レボフロキサシン、セファロスポリン、ペニシリン及びイブプロフェンである(Manrique-Moreno M, Villena
F, Sotomayor CP, Edwards AM, Munoz MA, Garidel P et al. Human cells and cellmembrane molecular models are affected in vitro by the nonsteroidalanti-inflammatory drug ibuprofen. Biochim Biophys Acta -Biomembranes 2011;1808: 2656-2664、Pierce A, Nester T. Pathologyconsultation on drug-induced hemolytic anemia. Am J Clin Pathol 2011; 136: 7-12、Perkins J. Fatal drug-induced immune hemolytic anemia due tocefotetan; A case study. Asian J Transfu Sci 2008; 2: 20-23、Barbaryan
A, Iyinagoro C, Nwankwo N, Ali AM, Saba R, Kwatra SG, et al. Ibuprofen-inducedhemolytic anemia. Case Rep Hematol 2013; 142865: 1-3)。患者番号28は、レボフロキサシン(タバニック(tavanic))、アモキシシリン及びイブプロフェン(ブルフェン
(brufen))を受けていた。患者番号32は、セファロスポリン(ジンナット(zinnat))を受けており、リポソームクルクミン開始の少し前にペニシリン及びイブプロフェンの両方を受けていた。
【0049】
注入開始時に、それを下回るとHbの低下がより著しくなるHbの閾値が存在していた可能性があると判断された。事前治療を重度に受けていた患者集団では、観察された有害事象は、より高い用量レベルで増大すると予測される。それらの有害事象は、院内では容易に制御され得るが、任意の外部状況では不可能なはずである。したがって、6時間にわたる用量300mg/m2のリポソームクルクミン単剤療法は、用量の認容性が高いので、抗がん治療に推奨される出発用量として保証される。さらに、より高用量、例えば325mg/m2、350mg/m2、375mg/m2、400mg/m2、425mg/m2、450mg/m2、又は475mg/m2のリポソームクルクミンを使用することができる。AUC及びCmaxが第1a相に匹敵する、特により高いDLでは、棘状赤血球形成が予測された。しかし、棘状赤血球は、DL1(100mg/m2)では1人の患者(番号2)で観察されただけであった。
【0050】
PK分析により、注入中のクルクミン及びTHCの安定な血漿濃度、及び注入終了後の急速な低下が示された。DL300mg/m2では、クルクミンの平均Cmax血漿レベルは類似しており、6時間及び8時間注入について1428~1641ng/mLであった。ほとんどの患者のクルクミン及びTHC血漿レベルは、EOI後10分以内に定量不可能なレベルに低下したが、著しい例外として患者番号19だけは、EOIの45分後に251ng/mlのクルクミン血漿濃度を有していた。この患者のクルクミンのCmax及びAUCも著しく高く、患者番号24で観察された値に匹敵していた。興味深いことに、患者番号3、番号19及び番号24の高いクルクミン血漿濃度は、DL6aの患者について報告されたものに匹敵する注入中の有害事象又はHb低下とはつながりがなかった。
【0051】
残りの29人の患者では、注入速度に伴う血漿濃度の明らかな線形増加が観察された。しかし、注入速度の4倍変化では(12.5mg/m2/時から50mg/m2/時)、注入中の2時間目の平均クルクミン血漿レベルに24.0倍の変化があり、このことは、用量の増大に伴って用量比例からの逸脱があったことを示唆している。このことは、190~300mg/m2の範囲のクルクミン用量についてのCmax及びAUC0-Tlast値を比較すると、さらにより明らかである。したがって、より高いクルクミン注入速度では、ロバストな血漿排除機序が整っていても、注入中のクルクミン排除が飽和状態に達する場合がある。患者番号3、番号19及び番号24において高レベルのクルクミンが見出されたにもかかわらず、残りの患者のクルクミン及びTHCの血漿レベル及び薬物動態は、明らかに用量依存性であり、中程度から高い値を示したが、このような多様な患者集団にしてはその変動性の量は過剰ではない。
【0052】
抗腫瘍活性の評価は、ごく二次的な研究目的であり、事前治療を重度に受けていたこの患者集団では、RECIST v1.1による8週後の腫瘍応答は、特に低用量では期待されなかった。前立腺癌、並びに骨及びリンパ節転移、並びに肺の癌性リンパ管症を有していた患者番号27では、腫瘍マーカー応答が観察され、結腸癌、並びに肝臓及び肺転移を有していた患者番号30では、客観的な有効性の徴候があった。さらに研究者によって、両方の患者における一過性の臨床的利益が報告された。患者番号27の過去の治療は、放射線療法及び6回の過去の化学療法の組合せであった。患者番号30は、7回の過去の化学療法の組合せを既に受けていた。興味深いことに、これらの2人の患者のHbは、この用量レベルでの注入中にHbのさらなる低下を示した他の患者と比較して、むしろ一定
であった。
【0053】
一般に、この研究に動員された患者は、過去の抗がん治療に失敗しており、しばしば侵襲的疾患過程を示していた。理論に拘泥するものではないが、クルクミンががん幹細胞を死滅させる能力は、治療時間の制限及び免疫機能の機能障害に起因して、腫瘍収縮にはつながらなかった可能性がある。ことによると、抗がん剤としてのリポソームクルクミンの理想的な役割は、初期治療ラインにおける他の化学療法との併用にあるはずである。また、スフィンゴシンキナーゼ阻害剤としてのクルクミンの活性は、他の抗悪性腫瘍剤に応答していた患者の再発機会を低減する一助になり得ることを示唆している(Sordillo LA, Sordillo PP, Helson L. Sphingosine kinase inhibitors asmaintenance therapy of glioblastoma after ceramide-induced response. AnticancerRes 2016; 36: 2085-2095)。
【0054】
被験薬物。クルクミン、すなわち(1E6E)-1,7-ビス(4ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5ジオン、分子量368.38g/molは、Sami Labs Limited社(インド、バンガロール)において、優良製造規範(GMP
,Good Manufacturing Practice)下で、純度99.2%で合成された。リポソームクル
クミンは、オーストリア、Polymun Scientific社によって、過去の第I相研究について説明されている通りGMPに従って製造され、試験され、パッケージされ、ラベル付けされた(Storka A, Vcelar B, Klickovic U, Gouya G, Weisshaar S, Aschauer S etal. Safety, tolerability and pharmacokinetics of liposomal curcumin (LipocurcTM)in healthy humans. Int J Clin Pharmacol Therapeut 2015; 53: 54-65)。最終的なバッチリ
リースは、Polymun社のQPによって行われた。リポソームクルクミンは、クルクミン濃
度6.0±1.5mg/mlのリポソーム懸濁液20mlを含有する20mlのガラスバイアルで提供された。
【0055】
患者。この研究に適確とされたのは、組織学的/細胞学的に確認された局所進行性又は転移性がんの診断を有していたが、研究登録時には、利益が証明されている抗腫瘍療法が利用可能でなかった、18歳以上の男性及び女性患者であった。他の非常に重要な組み入れ基準は、ECOG0~2、少なくとも3カ月の平均余命、RECIST v1.1による少なくとも1つの測定可能な病変、細胞1500個/μL以上の絶対好中球数、9.5g/dLを超えるHb及び100,000μLを超える血小板数、Cockcroft-Gault式を
使用する推定クレアチニンクリアランス(eCcr,estimated creatinine clearance)を用いて50mL/分を超える腎臓機能又は1.5mg/dL未満の血清クレアチニン、3.0mg/dL未満の血清総ビリルビン、並びに正常値上限(ULN,upper limit of
normal)の5倍未満のAST及びALT、並びにインフォームドコンセントへの署名で
あった。リンパ腫、血液がん又は多形神経膠芽腫を有する患者は、この研究から除外された。他の非常に重要な除外基準は、活動的感染、又は被験薬物投与の初日前3日以内の38.5℃を超える発熱、リポソームクルクミンの投与によって増悪したおそれがある疾患の証拠(溶血性素因、ヘモクロマトーシス)、チトクロムp450阻害剤若しくは誘発剤として分類された任意の医薬品を現在摂取していること、初回研究治療当日前3週間未満に全身療法を受けていること、グレード2以下の症候性の運動性若しくは感覚性神経毒性NCI-CTCを除く、過去の全身抗がん療法による未解明の毒性、研究者の裁量による臨床的に著しいECG異常、50%未満の左室駆出率(LVEF)、NYHAクラス2若しくはうっ血性心不全、制御の効かない高血圧若しくは心不整脈、公知の血清学的検査で陽性のHIV、又は活動性肝炎の証拠であった。妊娠中、授乳中、及び避妊対策を取っていない女性も、研究への参加から除外された。
【0056】
その研究は、Paracelsus Medical University Salzburg and theSalzburg Cancer Research InstituteのIIIrd MedicalDepartmentで実施された。研究プロトコールは、ザル
ツブルク州の倫理委員会によって承認された(Clinicaltrials.gov identifierNCT02138955, European Clinical Trials Database [EudraCT] number 2013-001594-24)。研究は、ヘルシンキ宣言、優良臨床試験基準、並びにあらゆる地方規制及び連邦規制に従って実施された。すべての患者が、筆記によるインフォームドコンセントを提供した。
【0057】
研究設計及び用量漸増。これは、非盲検による単一施設での用量漸増研究であった。被験薬は週1回与えられた(+/-1日)。治療の各当日、患者はジフェンヒドラミン50mgを事前に投薬され、リポソームクルクミンの静脈内注入を受けた。個々の患者は、8サイクル(8週)が完了するまで、どちらが最初であろうと腫瘍進行又は耐えられない毒性が生じるまで、研究治療を受けた。8週目に患者が客観的な臨床的利益を示した場合、その患者には、既に受けたものと同じ用量及びスケジュールで追加のリポソームクルクミン選択肢を提供することができる。
【0058】
24時間にわたる出発用量120mg/m2は、健康な対象における第1a相安全性研究の結果に基づいていた。最初の患者における2回の注入の後、注入ラインに沈殿物が形成されたことに起因して、研究が一時的に中断された。患者は、このインシデントに関係するいかなる有害事象も経験しなかった。広範な使用中の安定性試験の後、実質的な修正を規制当局及び関連ECに提出し、研究を、100mg/m2のリポソームクルクミンのDLにおいて8時間の注入期間で、患者3人の最初のコホートで再開した。次のDLへの用量漸増は、評価可能な患者3人において最初の3週間でDLTが生じなかった場合に許容され、DSMBにより用量漸増が推奨された。
【0059】
安全性アセスメント。安全性アセスメントは、あらゆるAE、重篤な有害事象(SAE,seriousadverse events)、血液の定期的なモニタリング、血液化学、定期的な身体検査及び生命徴候の測定のモニタリング及び記録を含んでいた。
【0060】
DLTは、溶血(NCI-CTCグレード2:溶血の証拠及び注入終了後120分以内の2回の連続測定で2グラム以上のHb低下、研究者による被験薬との因果関係の確認)、制吐治療薬に応答する悪心及び嘔吐、並びに脱毛症を除く、NCI-CTCグレード3又は4の毒性、長期間の(2週間を超える)NCI-CTCグレード2の毒性(神経-小脳性:企図振戦、不明瞭発語、眼振、測定異常)、NCI-CTCグレード4の血小板毒性、7日間以上のNCI-CTCグレード4の顆粒球毒性、並びに500/mm3未満の絶対好中球数及び1時間間隔で38℃を超える2回の口腔温上昇又は単回で38.5℃を超える口腔温(この単回エピソードが、他の事象と明らかに関係していないという条件で)のいずれかの発熱と定義される熱性好中球減少症と定義された。
【0061】
薬物動態アセスメント。液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法によって、Nucro Technics社(カナダ)で妥当性を検証された方法を使用してクルクミン及びTHC血漿濃度を決定するために、リポソームクルクミン23を用いる研究について既に報告されている通り(Storka A, Vcelar B, Klickovic U, Gouya G, Weisshaar S, Aschauer S etal. Safety, tolerability and pharmacokinetics of liposomal curcumin (LipocurcTM)in healthy humans. Int J Clin Pharmacol Therapeut 2015; 53: 54-65)、K3-ED
TAを含有する管に血液試料を収集した。注入番号1の試料を、ベースライン(BL,baseline)、注入開始2時間後、注入終了後0分目=EOI、10分目、20分目、30分目、45分目、60分目及び120分目に収集し、EOIにおいて注入番号2、番号3、番号5及び番号8について収集した。安全性データモニタリング委員会によって依頼された用量レベル2で治療された患者から得られた試料の予備的なPK分析では、クルクミン血漿レベルは、注入中(2時間目)だけ検出可能であったが、注入終了後は検出不可能であったことが明らかになった。血漿中のクルクミンの薬物動態をより良好に特徴付けるために、試料収集時点を、BL、注入中2時間目、4時間目及び6時間目、並びにEOI、
EOI後10分目、20分目、30分目及び45分目に適合させた(修正3、患者番号17から開始)。採血の回数は、変更しないままであった。
【0062】
PK分析は、修正3の後の研究に含まれ、定量下限(LoQ,limit of quantitation
=10ng/ml)を超える十分なクルクミン血漿濃度値を有していた患者に集中して行った。これらの患者は、8時間の注入にわたって150mg/m2、190mg/m2、240mg/m2、又は300mg/m2用量のクルクミンを受けたか、又は6時間の注入にわたって300mg/m2を受けた。患者の大部分について注入後の濃度データが欠如していたことにより、決定された薬物動態パラメータは、妥当性を検証されたPhoenix WinNonlin Professionalソフトウェア(v6.3)を使用するCmax、Tmax、AUC0-Tlast及びClastであった。
【0063】
用量の比例性及び線形性を、注入速度と比較した注入中2時間目に決定されたクルクミン血漿濃度、及び2時間目のクルクミン血漿濃度に対する注入速度のプロットの線形回帰を使用してアセスメントした。注入速度は、異なる注入時間にわたってデータを比較するために、クルクミン用量の代わりに使用された。
【0064】
有効性アセスメント。有効性エンドポイントは、血清がんマーカー、並びにがんの臨床徴候及び症状のモニタリングの8週間後のRECIST v1.1による奏効率(完全寛解/部分寛解/安定疾患/進行性疾患)であった。
【0065】
本明細書に論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬、又は組成物に関して実行することができ、その逆もまた同様であることが企図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0066】
本明細書に記載される特定の実施形態は、例として示され、本発明を制限しないことを理解されよう。本発明の主な特色は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において用いることができる。当業者は、ごく日常的な実験方法を使用して、本明細書に記載される具体的な手順の数々の等価物を認識し、又は確認することができよう。このような等価物は、本発明の範囲内にあるとみなされ、特許請求の範囲によってカバーされる。
【0067】
本明細書で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する分野の当業者の技術水準を示す。すべての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が、あたかも参照により組み込まれることが具体的に、及び個々に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
「1つ(a)」又は「1つ(an)」という用語の使用は、特許請求の範囲及び/又は本
明細書において「含む」という用語と併用される場合、「1つ(one)」を意味すること
ができるが、「1又は2以上」、「少なくとも1つ」及び「1又は1を超える」の意味とも一致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替だけ又は代替が互いに排他的であることを指すことが明確に示されない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替だけ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本願を通して、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために用いられる機器、方法に固有の誤差変動、又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0069】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」(及び含む(comprising)の任意の形態、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)
、「有する(having)」(及び有する(having)の任意の形態、例えば「有する(have)
」及び「有する(has)」)、「含む(including)」(及び含む(including)の任意の
形態、例えば「含む(includes)」及び「含む(include)」)、又は「含有する(containing)」(及び含有する(containing)の任意の形態、例えば「含有する(contains)
」及び「含有する(contain)」)という用語は、包括的であり、又は制限がなく、記載
されていない追加の要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で提供される組成物及び方法のいずれかの実施形態において、「含む(comprising)」は、「から本質的になる」又は「からなる」で置き換えることができる。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という句は、特定された整数又はステップ、並びに特許請求される本発明の特徴又は機能に実質的に影響を及ぼさないものを必要とする。本明細書で使用される場合、「からなる」という用語は、列挙される整数(例えば、特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップ又は制限)又は整数の群(例えば、特色(複数)、要素(複数)、特徴(複数)、特性(複数)、方法/プロセスステップ(複数)又は制限(複数))だけが存在することを示すために使用される。
【0070】
「又はそれらの組合せ」という用語は、本明細書で使用される場合、その用語に先行して列挙されている項目のあらゆる並べ替え及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCの少なくとも1つを含むことを企図され、特定の状況において順序が重要である場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABの少なくとも1つを含むことも企図される。この例を用いて続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1又は2以上の項目又は用語の反復を含有する組合せを明確に含む。当業者は、状況から別段明らかでない限り、任意の組合せの項目又は用語の数は典型的に制限されないことを理解されよう。
【0071】
本明細書で使用される場合、それに限定されるものではないが、「約」、「実質的な」又は「実質的に」などの近似用語は、そのように修正された場合、必ずしも絶対又は完璧であるわけではないが、当業者がその条件の存在を明示することを保証するも同然と判断されるはずの条件を指す。記述が変わり得る程度は、どれほど大きな変化がもたらされ得るかに応じて決まり、それでも当業者は、修正された特色が、修正されていない特色の必要な特徴及び能力をまだ有していることを認識されよう。一般に、ただし前述の議論の対象において、「約」などの近似用語によって修正されている本明細書の数値は、記載される値から少なくとも±1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、10%、12%又は15%変わることができる。
【0072】
本明細書に開示され、特許請求される組成物及び/又は方法のすべては、過度の実験方法を用いることなく本開示に照らして作成され、実行され得る。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、当業者には、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく本明細書に記載される組成物及び/又は方法、並びに方法のステップ又はステップの順序に変更が加えられ得ることが明らかとなろう。当業者に明らかなこのようなすべての類似の置換及び修飾は、添付の特許請求の範囲によって定義される通り、本発明の精神、範囲及び概念に含まれるとみなされる。
【0073】
特許庁及び本願に基づいて発行される任意の特許文書の任意の読者にとって、本願に添付の特許請求の範囲を解釈する助けとなるように、出願人らは、「のための手段」又は「のためのステップ」という用語が特定の特許請求の範囲において明確に使用されない限り、添付の特許請求の範囲のいずれも、米国特許法第112条第6項、米国特許法第112条(f)項又は本発明の出願日に存在するその等価物を行使するものではないことを記載したい。
【0074】
請求項のそれぞれについて、先行の請求項が、請求項の用語又は要素のための適切な先
行詞を提供している限り、各従属請求項は、ありとあらゆる請求項について、その独立請求項及び先行の従属請求項のそれぞれの両方に従属し得る。
【0075】
(参考文献)
Khor TO, Keum YS, Lin W, Kim JH, Hu R, Shen G et al. Combined inhibitoryeffects
of curcumin and phenethyl isothiocyanate on the growth of human PC-3 prostatexenografts in immunodeficient mice. Cancer Res 2006; 66: 613-621.
Meskin MS, Bidlack WR, Davies AJ, Lewis DS, Randolph RK. Phytochemicals:Mechanisms of Action. CRC Press: Boca Raton, FL, 2003.
Chainani-Wu N. Safety and anti-inflammatory activity of curcumin: a componentof
turmeric (Curcuma longa). J Altern Complement Med 2003; 9: 161-168.
Di Pierro F, Settembre R. Safety and efficacy of an add-on therapy withcurcumin
phytosome and piperine and/or lipoic acid in subjects with a diagnosis ofperipheral neuropathy treated with dexibuprofen. J Pain Res 2013; 6:497-503.
Kanai M, Otsuka Y, Otsuka K, Sato M, Nishimura T, Mori Y et al. A phase I study investigating thesafety and pharmacokinetics of highly bioavailable curcumin (Theracurmin(R)) incancer patients. Cancer Chemother Pharmacol 2013; 71: 1521-1530.
Kunwar A, Barik A, Mishra B, Rathinasamy K, Pandey R, Priyadarsini KI.Quantitative cellular uptake, localization and cytotoxicity of curcumin innormal and tumor cells. Biochim Biophys Acta-General Subjects 2008; 1780:673-679.
Bolger GT, Licollari A, Tan A, Greil R, Vcelar B, Majeed M et al. Distributionand metabolism of LipocurcTM(liposomal curcumin) in dog and humanblood cells: species selectivity and pharmacokinetic relevance. Anticancer Res2017; 37: 3483-3492.
Sordillo PP, Helson L. Curcumin and cancer stem cells: curcumin hasasymmetrical
effects on cancer and normal stem cells. Anticancer Res 2015; 35: 599-614.
Chen F, Wang H, Xiang X, Yuan J, Chu W, Xue X et al. Curcumin increased the differentiation rateof neurons in neural stem cells via wnt signaling in vitro study. J Surg Res2014; 192: 298-304.
Tiwari SK, Agarwal S, Seth B, Yadav A, Nair S, Bhatnagar P et al. Curcumin-loadednanoparticles potently induce adult neurogenesis and reverse cognitive deficitsin Alzheimer’sdisease model via canonical Wnt/β-catenin pathway. ACSNano 2013; 8: 76-103.
Chang YC, Chang WC, Hung KH, Yang DM, Cheng YH, Liao YW et al. The generationof
induced pluripotent stem cells for macular degeneration as a drug screeningplatform: identification of curcumin as a protective agent for retinal pigmentepithelial cells against oxidative stress. Front Aging Neurosci2014; 6: 191.
Aziza SA, Abdel-Aal SA, Mady HA. Chemopreventive effect of curcumin on oxidative
stress, antioxidant status, DNA fragmentation and caspase-9 gene expression in1, 2-dimethylhydrazine-induced colon cancer in rats. American J Biochem MolBiol
2014; 4: 22-34.
Hua WM, Liang ZQ, Fang Y, Gu ZL, Guo CY. Mechanisms of curcumin protectingendothelial cells against ischemia and reperfusion injury. ChinesePharmacol Bull 2009; 8: 13.
Han J, Pan XY, Xu Y, Xiao Y, An Y, Tie L et al. Curcumin induces autophagy to protectvascular endothelial cell survival from oxidative stress damage. Autophagy
2012, 8: 812-825.
Xu Y, Ku B, Cui L, Li X, Barish PA, Foster TC et al. Curcumin reverses impaired hippocampalneurogenesis and increases serotonin receptor 1A mRNA and brain-deri
ved neurotrophic factor expression in chronically stressed rats. Brain Res2007;
1162: 9-18.
Wang YJ, Pan MH, Cheng AL, Lin LI, Ho YS, Hsieh CY et al. Stability of curcuminin buffer solutions and characterization of its degradation products. J PharmBiomed Anal 1997; 15: 1867-1876.
Sharma RA, Steward WP, Gescher AJ. Pharmacokinetics and pharmacodynamics ofcurcumin. In: Aggarwal BB, Surh Y, Shishodia S (eds). The molecular targets andtherapeutic uses of curcumin in health and disease. Springer: Boston, MA, USA,2007,
pp. 453-470.
Li L, Braiteh FS, Kurzrock R. Liposome-encapsulated curcumin: in vitro and invivo effects on proliferation, apoptosis, signaling, and angiogenesis. Cancer2005; 104: 1322-1331.
Li L, Ahmed B, Mehta K, Kurzrock R. Liposomal curcumin with and withoutoxaliplatin: effects on cell growth, apoptosis, and angiogenesis in colorectalcancer. Mol Cancer Ther 2007; 6: 1276-1282.
Mach CM, Mathew L, Mosley SA, Kurzrock R, Smith JA. Determination of minimumeffective dose and optimal dosing schedule for liposomal curcumin in axenograft human pancreatic cancer model. Anticancer Res 2009; 29: 1895-1899.
Helson L, Bolger G, Majeed M, Vcelar B, Pucaj K, Matabudul D. Infusionpharmacokinetics of LipocurcTM(liposomal curcumin) and itsmetabolite tetrahydrocurcumin in Beagle dogs. Anticancer Res 2012; 32:4365-4370.
Ranjan AP, Mukerjee A, Helson L, Gupta R, Vishwanatha JK. Efficacy of liposomalcurcumin in a human pancreatic tumor xenograft model: inhibition of tumorgrowth
and angiogenesis. Anticancer Res 2013; 33: 3603-3609.
Storka A, Vcelar B, Klickovic U, Gouya G, Weisshaar S, Aschauer S et al.Safety,
tolerability and pharmacokinetics of liposomal curcumin (LipocurcTM)in healthy
humans. Int J Clin Pharmacol Therapeut 2015; 53: 54-65.
Matabudul D, Pucaj K, Bolger G, Vcelar B, Majeed M, Helson L. Tissuedistribution of (LipocurcTM) liposomal curcumin andtetrahydrocurcumin following two-and eight-hour infusions in beagle dogs.Anticancer Res 2012; 32: 4359-4364.
Manrique-Moreno M, Villena F, Sotomayor CP, Edwards AM, Munoz MA, Garidel P etal. Human cells and cell membrane molecular models are affected in vitro by thenonsteroidal anti-inflammatory drug ibuprofen. Biochim Biophys Acta-Biomembranes
2011; 1808: 2656-2664.
Pierce A, Nester T. Pathology consultation on drug-induced hemolytic anemia. AmJ Clin Pathol 2011; 136: 7-12.
Perkins J. Fatal drug-induced immune hemolytic anemia due to cefotetan; A casestudy. Asian J Transfu Sci 2008; 2: 20-23.
Barbaryan A, Iyinagoro C, Nwankwo N, Ali AM, Saba R, Kwatra SG, et al.Ibuprofen-induced hemolytic anemia. Case Rep Hematol 2013; 142865: 1-3.
Storka A, Vcelar B, Klickovic U, Gouya G, Weisshaar S, Aschauer S, et al.Effect
of liposomal curcumin on red blood cells in vitro. Anticancer Res 2013; 33:3629-3634.
Sordillo LA, Sordillo PP, Helson L. Sphingosine kinase inhibitors asmaintenance
therapy of glioblastoma after ceramide-induced response. Anticancer Res 2016;36: 2085-2095.