(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003014
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】洋式便器装置と洋式便器装置における溜水制御方法
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20221228BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20221228BHJP
E03D 9/08 20060101ALI20221228BHJP
A47K 13/24 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D5/10
E03D9/08 A
A47K13/24
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103922
(22)【出願日】2021-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】519442793
【氏名又は名称】稲葉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 貞幸
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
2D039
【Fターム(参考)】
2D037AD16
2D037EB00
2D038KA03
2D039AA02
2D039AD04
2D039DB05
2D039FA01
(57)【要約】
【課題】立位で小便をした場合に周囲に小便が飛び散ることを抑制する洋式便器装置および洋式便器装置の溜水制御方法の提供。
【解決手段】トラップを設けた洋式便器装置において、前記トラップは便器本体内に設けられた第1のトラップ部と該第1のトラップ部に連結された第2のトラップ部から構成され、前記第1のトラップ部は、汚物臭気遮断用水を溜める第1の溜水部と、該第1の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部に排出する第1の排出管と、第1の排出管に設けられた第1のバルブとから構成され、前記第2のトラップ部は、 汚物臭気遮断用の水を溜める第2の溜水部と、該第2の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部下流へ排出する第2の排出管と、第2の排出管に設けられた第2のバルブとから構成され、汚物臭気遮断用水を第1のトラップ部に溜水するか、第2のトラップ部に溜水するかを切り換える切換部を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物の臭気を遮断するためのトラップを設けた水洗式の洋式便器装置において、
前記トラップは便器本体内に設けられた第1のトラップ部と該第1のトラップ部に連結された第2のトラップ部から構成され、
前記第1のトラップ部は、
汚物臭気遮断用の水を溜める第1の溜水部と、
該第1の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部に排出する第1の排出管と、
第1の排出管に設けられた第1のバルブと
から構成され、
前記第2のトラップ部は、
汚物臭気遮断用の水を溜める第2の溜水部と、
該第2の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部下流へ排出する第2の排出管と、
第2の排出管に設けられた第2のバルブと
から構成され、
汚物臭気遮断用水を第1のトラップ部に溜水するか、第2のトラップ部に溜水するかを切り換える切換部を設けたことを特徴とする洋式便器装置。
【請求項2】
前記切換部はトイレへの入室を検知する人感センサと授受した該人感センサの検知信号に応じて前記第1のバルブおよび前記第2のバルブの開閉状態を変更する制御部であることを特徴とする、請求項1に記載の洋式便器装置。
【請求項3】
前記人感センサは赤外線センサ、重量センサまたは圧力センサであることを特徴とする、請求項2に記載の洋式便器装置。
【請求項4】
前記切換部は前記洋式便器装置の便座に着座したことを検知する着座検知部をさらに有し、
前記人感センサの検知信号と前記着座検知部の検知信号に応じて前記第1のバルブおよび第2のバルブの開閉状態を変更する制御部であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の洋式便器装置。
【請求項5】
前記着座検知部は重量センサまたは圧力センサであることを特徴とする請求項4に記載の洋式便器装置。
【請求項6】
前記切換部は前記便座に着座したことの検知から所定時間後に実行する遅延時間が設定されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の洋式便器装置。
【請求項7】
前記便器本体が備える小便や大便を受けるボールに排出された汚物を前記ボールから流出させるための便器洗浄水を前記第1のトラップ部の前記第1の溜水部に吐出するかあるいは前記第2のトラップ部の前記第2の溜水部に吐出させるかを切り換える第3のバルブを有することを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の洋式便器装置。
【請求項8】
前記人感センサの動作を有効とすることができる操作スイッチを有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の洋式便器装置。
【請求項9】
前記切換部は洋式便器使用者が操作することで前記第1のバルブおよび前記第2のバルブの開閉状態を変更する操作スイッチあるいは操作レバーであることを特徴とする、請求項1に記載の洋式便器装置。
【請求項10】
汚物の臭気を遮断するためのトラップを設けた水洗式の洋式便器装置において、
前記洋式便器装置の使用を検知する検知工程と、
前記トラップは第1のトラップ部と該第1のトラップ部に連結された第2のトラップ部から構成され、前記検知工程の検知信号に応じて汚物臭気遮断用水を第1のトラップ部に溜水するか、第2のトラップ部に溜水するかを切り換える切換工程を有することを特徴とする洋式便器装置における溜水制御方法。
【請求項11】
前記第1のトラップ部は、
汚物臭気遮断用の水を溜める第1の溜水部と、
該第1の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部に排出する第1の排出管と、
第1の排出管に設けられた第1のバルブと
から構成され、
前記第2のトラップ部は、
汚物臭気遮断用の水を溜める第2の溜水部と、
該第2の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部外へ排出する第2の排出管と、
第2の排出管に設けられた第2のバルブと
から構成され、
前記検知工程は人感センサでトイレへの入室を検知して該人感センサ検知信号を出力する入室検知工程であり、
前記切換工程は前記人感センサの検知信号に応じて前記第1のバルブおよび前記第2のバルブの開閉状態を制御部で変更することを特徴とする、請求項10に記載の洋式便器装置における溜水制御方法。
【請求項12】
前記人感センサは赤外線センサ、重量センサまたは圧力センサであることを特徴とする、請求項11に記載の洋式便器装置における溜水制御方法。
【請求項13】
前記洋式便器装置の便座に着座したことを検知する着座検知工程をさらに有し、
前記第1のトラップ部と前記第2のトラップ部の溜水状態を前記切換工程で切り換えた後、前記洋式便器装置の便座に着座したことを前記着座検知工程で検知した場合、前記人感センサで入室を検知したことにより前記切換工程で変更した前記第1のトラップ部と前記第2のトラップ部の溜水状態をさらに変更する再切換工程を有することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の洋式便器装置における溜水制御方法。
【請求項14】
前記着座検知工程は、重量センサまたは圧力センサを用いることを特徴とする請求項13に記載の洋式便器装置における溜水制御方法。
【請求項15】
前記切換工程は前記着座検知工程での着座の検知から所定時間後に実行する遅延時間を設定することを特徴とする請求項13または請求項14に記載の洋式便器装置における溜水制御方法。
【請求項16】
汚物臭気遮断用の水が前記第1のトラップ部あるいは前記第2のトラップ部のいずれかに溜水しているかを判断する判断工程と、
前記判断工程の判断に基づいて、前記洋式便器装置が備える小便や大便を受けるボールに排出された汚物を前記ボールから流出させるための便器洗浄水を前記第1のトラップ部の前記第1の溜水部に吐出するかあるいは前記第2のトラップ部の前記第2の溜水部に吐出させるかを第3のバルブで切り換えることを特徴とする、請求項11乃至請求項15のいずれか1項に記載の洋式便器装置における溜水制御方法。
【請求項17】
前記人感センサの動作を有効とする操作スイッチを有し、使用者が該操作スイッチを操作した場合のみ前記人感センサが有効となって前記切換工程が開始されることを特徴とする請求項11乃至14、および請求項16のいずれか1項に記載の洋式便器装置における溜水制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式の洋式便器装置に関するものであって、特に洋式便器で立位にて小便をした場合の周囲への小便の飛び散りを低減して衛生的に使用できる洋式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、一般家庭の便器は旧来の和式から腰掛けながら用を足せる快適さから洋式便器が広く普及してきている。一般家庭では多くの場合、同じ便器で大便と小便を兼用して用いており、便座に腰掛けながら用を足しているが、男子の小便の場合のみ腰掛けずに立ってなされることもある。男子が立ってする小便では、便器までの距離が長くなることにより、便器に到達する前にしぶきが便器外に飛び散ったり、狙いが外れてしまって周囲にまき散らしたりして不衛生となっていた。
【0003】
このような問題を解決するために、洋式便器の横奥のスペースに車輪付きの支持構造部材によって壁や床から離れた状態で保持されている男子専用の小便器を格納しておき、男子小便時にはこの小便器を引き出して使用することによって小便の飛び散りを防止するもの(特許文献1)や、既存の洋式便器の便蓋の裏側に小便器を位置調整可能に後付けすることで飛び散り防止を図ったもの(特許文献2)がある。
【0004】
あるいは、便器に放尿標識を設けて狙いが外れないように工夫したものもある(特許文献3)。
【0005】
また、小便の飛び散りは上記したものだけではなく、小便が便器表面に衝突した際の跳ね返りが飛び散る場合もあり、この場合は便器の衝突面の形状を工夫することで飛び散りを低減していた(特許文献4)。
【0006】
一方、水洗式の便器では、汚物の臭気を遮断するために便器に水を溜めるトラップを設けているが、小便がこのトラップの水面に衝突することで水滴が跳ねやすくなり、便器外へ飛び散ることもあった。これを解決するために小便が直接トラップ水面に当たらないように小便当て部をトラップ水面より上部に設けるもの(特許文献5)や、トラップ水面を下げておくことで小便の跳ね返り高さを低くして飛び散りを防止するものがある(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-218063号公報
【特許文献2】特開2006-249803号公報
【特許文献3】特開2007-224550号公報
【特許文献4】特開2014-152525号公報
【特許文献5】特開2019-120111号公報
【特許文献6】特開2009-084779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、男子小便の小便飛び散りの原因には、(1)立位小便時の便器との距離が長いこと、(2)小便の狙いを外してしまうことがあること、(3)便器表面に当たった小便が跳ね返ってしまうこと、(4)トラップ水面に衝突した小便がトラップの水とともに跳ね返ること、があるが、ここでは(4)のトラップ水面に衝突した小便に跳ね返りによる飛び散りに着目した。
【0009】
特許文献5のようにトラップ水面より上部に小便当て部を設ける場合、この小便当て部にすべての小便を当てられるとは限らず、依然として水面からの跳ね返りがあること、および小便当て部が水面より高く配置されているためにこの小便当て部からの跳ね返りが発生してしまうことがあった。
【0010】
また、特許文献6のようにトラップ水位を下げる場合、トラップ水面と便器の縁までの距離が大きくなるため便器外への飛び散りに対して大きな効果がある。しかしながら、トラップの水は便器表面への汚物の付着を低減する効果を担っているものであり、トラップ水位を下げてしまうと、水位が下がった分だけ汚物が付着しやすくなり、不衛生であったり、掃除に手間がかかってしまうという欠点があった。
また、トラップ水位を下げているとはいえ、結局は小便がこのトラップ水面に衝突すれば多かれ少なかれ飛び散りが発生してしまうことは避けがたい。
加えて特許文献6ではトラップ水位を調整するために、そのための洗浄水を必要とし、節水の観点からは望ましいものではなかった。
【0011】
本発明の目的は、上記したような小便がトラップ水面に衝突した際の跳ね返りによる飛び散りを低減するとともに便器への汚物付着を抑制し、飛び散り防止のために洗浄水を余分に消費してしまうことを抑制するような洋式便器装置および洋式便器装置のトラップへの溜水制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の洋式便器装置は、汚物の臭気を遮断するためのトラップを設けた水洗式の洋式便器装置であって、前記トラップは便器本体内に設けられた第1のトラップ部と該第1のトラップ部に連結された第2のトラップ部から構成され、前記第1のトラップ部は、汚物臭気遮断用の水を溜める第1の溜水部と、該第1の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部に排出する第1の排出管と、第1の排出管に設けられた第1のバルブとから構成され、前記第2のトラップ部は、汚物臭気遮断用の水を溜める第2の溜水部と、該第2の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部下流へ排出する第2の排出管と、第2の排出管に設けられた第2のバルブとから構成され、汚物臭気遮断用水を第1のトラップ部に溜水するか、第2のトラップ部に溜水するかを切り換える切換部を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明の洋式便器装置によれば、第1のトラップ部と第2のトラップ部を有することでトラップ部の溜水を切り換えることができるためトラップ水面が便器のボール内には存在しないようにすることで、立位での小便時において水面に小便が衝突することでの飛び散りを防止することができる。
【0014】
本発明の洋式便器装置の切換部は、洋式便器使用者が操作することで前記第1のバルブおよび前記第2のバルブの開閉状態を変更する操作スイッチあるいは操作レバーであることを特徴とする。
【0015】
切換部をこのような構成とすることで、複雑な制御装置を用いることなくトラップの溜水を切り換えることができ、コスト的に有利である。
【0016】
本発明の洋式便器装置の前記切換部は、トイレへの入室を検知する赤外線センサ、重量センサまたは圧力センサのいずれか構成される人感センサと授受した該人感センサの検知信号に応じて前記第1のバルブおよび前記第2のバルブの開閉状態を変更する制御部であることを特徴とする。
【0017】
切換部をこのような制御部で構成することで、トイレ使用者は操作を気にすることなくトラップの溜水が切り換えられるので快適に使用することができる。
【0018】
本発明の洋式便器装置は、前記洋式便器装置の便座に着座したことを検知する重量センサあるいは圧力センサで構成される着座検知部をさらに有し、前記人感センサの検知信号と前記着座検知部の検知信号に応じて前記第1のバルブおよび第2のバルブの開閉状態を変更する制御部であることを特徴とする。
【0019】
着座センサをさらに設けたことにより、使用者が立位なのか座位なのかを検知することができ、使用者の状態に応じてトラップ溜水を切り換えることが可能となる。これにより、便器内に溜水が無い状態で大便をしてしまうことがなくなり、便器への汚物付着を抑制することができる。
【0020】
本発明の洋式便器装置は、前記便器本体が備える小便や大便を受けるボールに排出された汚物を前記ボールから流出させるための便器洗浄水を前記第1のトラップ部の前記第1の溜水部に吐出するかあるいは前記第2のトラップの前記第2の溜水部に吐出させるかを切り換える第3のバルブを有することを特徴とする。
【0021】
第3のバルブを設けることにより、汚物を洗浄排出する際の圧送ポンプからの圧力を高められた洗浄水を第1のトラップ部または第2のトラップ部の必要な側へ供給することができるので、効果的な汚物の洗浄、排出を行うことが可能となる。
【0022】
本発明の洋式便器装置は、前記人感センサの動作を有効とすることができる操作スイッチを有することを特徴とする。
【0023】
操作したときのみ人感センサの動作を有効とするスイッチを設けることで、自動でトラップの溜水切り換えてしまうことがなく、使用者が必要とした場合のみトラップの溜水を切り換えることが選択できるので、洗浄水を無駄に消費することがなく、環境に負荷をかけない。
【0024】
本発明の洋式便器装置における溜水制御方法は、汚物の臭気を遮断するためのトラップを設けた水洗式の洋式便器装置において、前記洋式便器装置の使用を検知する検知工程と、前記トラップは第1のトラップ部と該第1のトラップ部に連結された第2のトラップ部から構成され、前記検知工程の検知信号に応じて汚物臭気遮断用水を第1のトラップ部に溜水するか、第2のトラップ部に溜水するかを切り換える切換工程を有することを特徴とする。
【0025】
本発明の洋式便器装置における溜水制御方法によれば、第1のトラップ部と第2のトラップ部を有することでトラップ部の溜水を切り換えることができるためトラップ水面が便器のボール内には存在しないようにすることで、立位での小便時において水面に小便が衝突することでの飛び散りを防止することができる。
【0026】
本発明の洋式便器装置における溜水制御方法は、前記第1のトラップ部は、汚物臭気遮断用の水を溜める第1の溜水部と、該第1の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部に排出する第1の排出管と、第1の排出管に設けられた第1のバルブとから構成され、前記第2のトラップ部は、汚物臭気遮断用の水を溜める第2の溜水部と、該第2の溜水部に溜められた水を第2のトラップ部外へ排出する第2の排出管と、第2の排出管に設けられた第2のバルブとから構成され、前記検知工程は人感センサでトイレへの入室を検知して該人感センサ検知信号を出力する入室検知工程であり、前記切換工程は前記人感センサの検知信号に応じて前記第1のバルブおよび前記第2のバルブの開閉状態を制御部で変更することを特徴とする。
【0027】
本発明の洋式便器装置における溜水制御方法によれば、前記切換工程は、トイレへの入室を検知する赤外線センサ、重量センサまたは圧力センサのいずれか構成される人感センサと授受した該人感センサの検知信号に応じて前記第1のバルブおよび前記第2のバルブの開閉状態を変更する制御部であることを特徴とする。
【0028】
切換工程をこのような制御部で構成することで、トイレ使用者は操作を気にすることなくトラップの溜水が切り換えられるので快適に使用することができる。
【0029】
本発明の洋式便器における溜水制御方法は、前記洋式便器装置の便座に着座したことを検知する着座検知工程をさらに有し、前記第1のトラップ部と前記第2のトラップ部の溜水状態を前記切換工程で切り換えた後、前記洋式便器装置の便座に着座したことを前記着座検知工程で検知した場合、前記人感センサで入室を検知したことにより前記切換工程で変更した前記第1のトラップ部と前記第2のトラップ部の溜水状態をさらに変更する再切換工程を有することを特徴とする。
【0030】
検知工程において、重量センサまたは圧力センサで構成される着座センサ用いた着座検知工程をさらに設けたことにより、使用者が立位なのか座位なのかを検知することができ、使用者の状態に応じてトラップ溜水を切り換えることが可能となる。使用者の入室で便器内の溜水が空になった後に使用者が便座に着座した場合、再切換工程これによりトラップの溜水を再度切り換えて便器内に洗浄水を供給するので、便器内に溜水が無い状態で大便をしてしまうことがなくなり、便器への汚物付着を抑制することができる。
【0031】
本発明の洋式便器における溜水制御方法における前記切換工程は、前記着座検知工程での着座の検知から所定時間後に実行する遅延時間を設定することを特徴とする。
【0032】
切換工程において、切換実行判定に遅延時間を設けたことにより、使用者が入室した場合に必ずトラップの溜水が切り替わり、その後に便座に着座したことで再度トラップの溜水を切り換えることで便器のトラップの溜水分の洗浄水が無駄になってしまうことを抑制することができる。
【0033】
本発明の洋式便器装置における溜水制御方法は、まず判断工程において溜水が第1のトラップ部にあるのか第2のトラップ部にあるのかを判断した後に、第3のバルブを用いて前記便器に排出された汚物を便器から流出させるための便器洗浄水を前記第1のトラップ部の前記第1の溜水部に吐出するかあるいは前記第2のトラップの前記第2の溜水部に吐出させるかを切り換えることを特徴とする。
【0034】
第3のバルブを設けることにより、汚物を洗浄排出する際の圧送ポンプからの圧力を高められた洗浄水を第1のトラップ部または第2のトラップ部の必要な側へ供給することができるので、効果的な汚物の洗浄、排出を行うことが可能となる。
【0035】
本発明の洋式便器装置における溜水制御方法は、前記人感センサの動作を有効とする操作スイッチを有し、使用者が該操作スイッチを操作した場合のみ前記人感センサが有効となって前記切換工程が開始されることを特徴とする。
【0036】
操作したときのみ人感センサの動作を有効とするスイッチを設けることで、自動でトラップの溜水切り換えてしまうことがなく、使用者が必要とした場合のみトラップの溜水を切り換えることが選択できるので、洗浄水を無駄に消費することがなく、環境に負荷をかけない。
【発明の効果】
【0037】
本発明の洋式便器装置と洋式便器装置の制御方法によれば、第1のトラップ部と第2のトラップ部を有し、これらのトラップ部への溜水を切り換えることにより、立位の小便時に便器内でのトラップの溜水を空にすることができるので、小便が水面に衝突したことでの飛び散りを防止することができトイレを衛生的に使用することができる。
また、トラップ部の溜水を切り換えるタイミングを制御することで、トラップの溜水切換で発生する洗浄水の無駄を極力抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は本発明の洋式便器のトラップ部の溜水を示すブロック図である。
【
図2】
図2は本発明の洋式便器のトラップ部の溜水を制御する制御部のブロック図である。
【
図3】
図3はトイレ入室後、立位で小便をする場合のトラップ部への溜水を制御するタイミングチャートである。
【
図4】
図4はトイレ入室後、便座に着座して小便または大便をする場合のトラップ部への溜水を制御するタイミングチャートである。
【
図5】
図5はマニュアルでトラップ部への溜水を切り換える場合のタイミングチャートである。
【
図6】
図6は便器洗浄水を節約するエコモードに設定したときのトラップ部への溜水を制御するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0039】
図1は本発明の洋式便器装置100における洋式便器(単に便器とも称する)1内のトラップ部への溜水を示すブロック図、
図2は溜水方法を制御する制御部300の機能ブロック図である。
図1における洋式便器1では便器本体2内のトラップ部などの便器配管系200を透視図として表しており、またトラップ部の溜水を制御するためのバルブ類の駆動制御部を示している。
【0040】
図1に示すように、洋式便器装置100は、便器本体2と便座3、便器本体2を覆う蓋4からなる洋式便器1と、汚物を洗浄して排出するための洗浄水を流す便器配管系200と、洗浄水を制御する制御部300から構成されている。
便器本体2は小便や大便を受けるボール5を有しており、その直下に汚物を排出するための便器配管系200が配置されている。便器本体2は陶器であり、ボール5上部からボール5を洗浄するための洗浄水を流すようになっている。
また、便座3は図示しない着座センサ78が設けられており、便座3に使用者が座ったことを検知できるようになっている。着座センサ78には重量センサや圧力センサを用いている。
さらに洋式便器1が配置されたトイレ個室には使用者が入室したことを検知するための人感センサ77が設けられている。人感センサ77には赤外線センサやトイレ個室床の重量を検知する重量センサ、あるいは圧力センサが用いられる。
【0041】
便器配管系200は洋式便器1のボール5直下に設けられており、ボール5内の溜水と洗浄水を排出する。ボール5には第1のトラップ部11が連結され、この第1のトラップ部11の下流には第2のトラップ部21が連結されている。ボール5内の溜水と洗浄水は第1のトラップ部11、第2のトラップ部21を介してさらに下流側に排出されて汚水排出管46から図示しない下水や浄化槽に排出される。
第1のトラップ部11は、略S字状に形成され、汚物の臭気を遮断するための第1の溜水部15と、この第1の溜水部15に溜められた溜水を排出するためのバイパス路としての第1の排出管12が設けられている。第1の排出管12は第1の溜水部15のS字状の底の部位と第2のトラップ部21の入口部を繋いでおり、途中に設けられた第1のバルブSV1を開とすることで第1の溜水部15の溜水を第2の溜水部25に排出するようになっている。
ボール5の第1の排出管12入口上部には、第1のバルブSV1に汚物が直接に触れないように邪魔板7が設けられている。第1の排出管12には大便は通過せず、通過するのは溜水、洗浄水、小便の液体のみであるので管径は細くてよい。
第2のトラップ部21には第1のトラップ部11と同様に略S字状に形成され、第2の溜水部25に溜められた溜水を途中に設けられた第2のバルブSV2を開とすることで下流に排出して第2の溜水部25を空にするためのバイパス路としての第2の排出管22が設けられている。
【0042】
第1のトラップ部11と第2のトラップ部21にはそれぞれ、第1の便器洗浄水吐出口13、第2の便器洗浄水吐出口23が設けられており汚物を洗浄、排出する際の便器洗浄水がトラップ部に吐出し、サイホン現象でボール5内の汚物と溜水を下流側の下水に排出するようになっている。これらの噴出口にはそれぞれ第1の便器洗浄水給水管14、第2の便器洗浄水給水管が連結され、その上流側に設けられた圧送ポンプ42から供給される便器洗浄水を流している。圧送ポンプ42下流には第1の流路切換バルブSV3が設けられており、制御部300からの指令により、圧送ポンプ42からの洗浄水を第1のトラップ部11へ供給するか第2のトラップ部21に供給するかを制御している。
【0043】
圧送ポンプ42にはタンク41から便器洗浄水が供給されるようになっており、圧送ポンプ42からタンク41の溜水が吐出される。タンク内の水位が下がるとこれを補給するために水道に直結された水道水供給路45を通して給水されるようになっている。水道水は給水バルブSV4により供給または停止され、この給水バルブSV4下流に配置された第2の流路切換バルブにより給水がタンク給水路43とボール給水路44に切り換えられる。
本実施例ではタンク41に洗浄水を貯水してから圧送ポンプ42に供給しているが、タンクレスとすることも可能である。
【0044】
図1に示すように、本発明の洋式便器装置100は第2のトラップ部21を設けたことが特徴であるが、これを収納するため便器本体2が床下まで延びている。このように便器本体2を床下に伸ばしたことにより、床上に見えている部分は通常の便器と何ら変わりはなく、設置にも支障はない。
【0045】
図2はバルブ類の開閉を駆動制御する制御部300の機能ブロック図である。制御部300は便器本体2内の便器配管系200後部に収納され、カバーで覆われている。
制御部300は洋式便器装置100の給水、洗浄、溜水を制御するもので、全体を統括制御するCPUを有する制御回路60、制御回路60からの指令を授受してバルブ類の駆動を制御するための第1のバルブ駆動回路61、第2のバルブ駆動回路62、第1の流路切換バルブ駆動回路63、給水バルブ駆動回路64、第2の流路切換バルブ駆動回路65、使用者のトイレ入室を感知する人感センサ77の検知信号を検出してその検出信号を出力するとともに駆動電源を供給する人感センサ駆動・検出回路67、便座3への着座を検知する着座センサ78の検知信号を検出して検出信号を出力する着座センサ駆動・検出回路68を有している。
また、制御回路60には汚物を排出するための大便洗浄操作スイッチ71、小便洗浄操作スイッチ72、第1のトラップ部11からと第2のトラップ部21の溜水排出を自動でなく手動で行うように設定するマニュアルモード設定スイッチ73、第1のトラップ部11から第2のトラップ部21への頻繁な切換による洗浄水の無駄を少なくするような動作とするエコモード設定スイッチ74、マニュアルモードでの溜水切換を行うためのマニュアルスイッチ75、便座3に着座してからどの程度の時間で第2のトラップ部21から第1のトラップ部11へ溜水を切り換えるかの遅延時間を設定するための着座遅延時間設定部66が接続されている。
さらに、制御回路60にはポンプ駆動回路69が接続され、制御回路60からの指令により圧送ポンプ42を動作させている。
【0046】
ボール5に排出された小便または大便は、サイホン効果を用いて洗浄水とともに下水に排出される。
本実施例ではすばやくサイホン効果を出すために、第1の便器洗浄水吐出口13、第2の便器洗浄水吐出口23から第1の溜水部15、第2の溜水部25に、タンク41の溜水を圧送ポンプ42で強制的に吐出させている。これによりすばやく溜水部が満水になってサイホン効果が起こり、汚物と汚水が排出されるようになる。
【0047】
小便、大便が排出されているボール5は、ボール5上部に設けられたボール洗浄水噴出口から吐出される洗浄水により洗浄される。この洗浄水は水道水であり、給水バルブSV4、第2の流路切換バルブSV5、ボール給水路44、ボール洗浄水噴出口47を介してボール5に供給され、サイホン効果によりボール5内の汚物が排出された後もしばらく噴出し続けてボール5に付着した汚物を洗い流すようにしている。この洗浄水の供給時間はあらかじめ制御回路60内で記憶されているタイマで設定されている。
【0048】
次に、本発明の洋式便器装置100の動作について説明する。
[第1の実施例]
【0049】
図3は立位で小便をした場合のトラップ部の溜水状態を制御するタイミングチャートで、合わせて第1の溜水部15、第2の溜水部25の水位を示している。初期状態では第1の溜水部15で下水からの臭気を遮断するように喫水水位L1となっており、第2の溜水部25では封水されておらず水位0となっている。
まず、トイレ使用者がトイレ個室に入室すると、この個室内に配置された人感センサである例えば赤外線センサ77により検知信号が赤外線センサ駆動・検出回路(人感センサ駆動・検出回路)67から制御回路60に伝達される。この検知信号を授受した制御回路60は第2のバルブSV2を開状態から閉状態に変更するとともに、第1のバルブSV1を閉状態から開状態に変更するように第1のバルブ駆動回路61、第2のバルブ駆動回路62に指令する。同時に、第1の流路切換バルブ駆動回路63に、圧送ポンプ42から吐出された洗浄水を第2の便器洗浄水給水管24に供給するように第1の流路切換バルブSV3を切り換えるように指令する。これにより第1の溜水部15を封水していた溜水は第1の排出管12を通して第2の溜水部25に排出されて空となる。このとき第2のバルブSV2は閉状態であるから第2の溜水部25に溜められ下水からの臭気の遮断は第2のトラップ部21で行われることになる。
【0050】
この状態で使用者は立位のまま小便をすると、ボール5には臭気遮断用の溜水がまったく無い状態であるので、ボール5の溜水水位表面に小便が衝突して飛び散ることがない。従って小便の狙いさえ外さなければトイレを衛生的に保つことができる。
放出された小便は第1の排出管12を介して第2の溜水部25に溜められる。
【0051】
小便を終了してこれを排出するために、使用者が小便洗浄操作スイッチ72を操作すると、制御部300は第1のバルブSV1と第2のバルブSV2の開閉状態から、汚物臭気遮断用の水が第1のトラップ部11あるいは第2のトラップ部21のいずれかに溜水しているかを判断して、第2のトラップ部21に溜水していると判断した場合には、制御回路60は第1の流路切換バルブSV3を第2の便器洗浄水給水管24側となるように指令するとともに、給水バルブ駆動回路64に対し給水バルブSV4を開状態とするように指令し、ボール5の洗浄を開始する。同時にポンプ駆動回路69に対してポンプ駆動指令を出して圧送ポンプ42を駆動させる。これにより第2の便器洗浄水給水管24を介して第2の便器洗浄水吐出口23から第2の溜水部25に洗浄水が吐出する。これにより第2の溜水部25の水位が上昇して満水になったときにサイホン効果が起こり、第2の溜水部25に溜められた汚水を汚水排出管46を介して下水または浄化槽に排出する。
制御部300が第1のトラップ部11に溜水していると判断した場合は、第1のトラップ部11に便器洗浄水を吐出するように第1の流路切換バルブSV3を第1の便器洗浄水給水管14側とされる。
【0052】
圧送ポンプ42は駆動信号が入力されてから所定時間後に停止し、同時に第1のバルブSV1を開状態から閉状態、第2のバルブSV2を閉状態から開状態へと変更するように指令される。
その後しばらくボール洗浄水噴出口47からボール洗浄水が供給され続けることでボール5を洗浄し、そしてこの洗浄水により第1のトラップ部11における第1の溜水部15に給水され続ける。第1の溜水部15が臭気の遮断を行えるまで洗浄水が供給されて封水した後に給水バルブSV4が閉じられて給水が停止される。給水が停止されるまでの時間はあらかじめ決められている。
このようにすることで、小便洗浄操作スイッチ72の操作後はボール5に洗浄水が溜められた状態となりボール5が常に洗浄水に接触していることで汚物の付着を防止することができるので衛生的である。
【0053】
また図示はしないが、使用者が洗浄水を流すことを忘れてトイレ個室を出てしまったような場合は、赤外線センサ77の検知信号がオフになったことをトリガとして汚物の臭気遮断のための溜水を初期状態に戻すような第1のバルブSV1、第2のバルブSV2、給水バルブSV4、第1の流路切換バルブSV3を動作させるようにしている。
[第2の実施例]
【0054】
図4は便座3に座り、座位で小便または大便をした場合のトラップ部の溜水状態を制御するタイミングチャートである。
トイレ個室に使用者が入室して第1のバルブSV1、第2のバルブSV2の開閉状態を切り換えるところまでは
図3に示した実施例1と同様である。
この後、使用者が便座3に座ると、便座3に設けられた着座センサである例えば圧力センサ78がこれを検知して圧力センサ駆動・検出回路68から制御回路60に伝達される。この検知信号を授受した制御回路60は、着座遅延時間設定部66で設定された着座遅延時間T1後に、第1のバルブSV1を開状態から閉状態へ、第2のバルブSV2を閉状態から開状態への変更を第1のバルブ駆動回路61、第2のバルブ駆動回路62に指令し、同時に第1の流路切換バルブ駆動回路63に、圧送ポンプ42から吐出された洗浄水を第1の便器洗浄水給水管14に供給するように第1の流路切換バルブSV3を切り換えるように指令する。これにより汚物の臭気を遮断するための封水は第1のトラップ部11に溜水される。
【0055】
着座遅延時間T1は、便座3に着座した後のトラップ部の溜水を切り換えるまでの時間であり、着座してすぐに切り換えないようにするものである。これは、使用者が大便をするまでの猶予時間である。
便座3への着座は小便の場合も大便の場合もあるが、一般に大便よりは小便の方が早く行われるのでこの着座遅延時間T1の間はボール5に溜水させないことで、座位で小便をした場合の飛び散りを防止することを狙っている。
この小便をするか大便をするかの猶予時間ともいえる着座遅延時間T1は個人差が大きいと思われ、各家庭で使用するような場合、それぞれの家庭で最適な時間を設定できるように着座遅延時間設定部66を設けている。
【0056】
着座後、T1が経過したら第2のバルブSV2を閉状態から開状態へ、第1のバルブSV1を開状態から閉状態へ変更した後に給水バルブSV4を開としてボール5にボール洗浄水を所定時間吐出する。同時に第1の流路切換バルブSV3を第1のトラップ部11側へと切り換える。そうして所定時間経過して第1のトラップ部11で汚物の臭気を遮断するための洗浄水が第1の溜水部15に満たされて封水するまで供給されたら給水バルブを閉として給水を停止する。
【0057】
その後用を足し終わったら、使用者は大便洗浄操作スイッチ71、または小便洗浄操作スイッチ72を操作して汚物の排出、洗浄を開始する。まず制御部300は第1のバルブSV1と第2のバルブSV2の開閉状態から、汚物臭気遮断用の水が第1のトラップ部11あるいは第2のトラップ部21のいずれかに溜水しているかを判断し、第1のトラップ部11に溜水している場合は第1の流路切換バルブSV3を第1の便器洗浄水給水管14側とし、第2のトラップ部に溜水している場合は第2の便器洗浄水給水管24側とする。
この操作スイッチを操作することで、まず給水バルブSV4を開としてボール5にボール洗浄水を供給してボール5の洗浄を開始するとともに、第1のトラップ部11に溜水していると判断した場合は、所定時間後に圧送ポンプ42の駆動を開始して第1の溜水部15に第1の便器洗浄水吐出口から洗浄水を吐出する。これにより第1の溜水部15の水位が上昇して満水になったときにサイホン効果で第1の溜水部15に溜められた汚水を汚物とともに第2の排出管22を通して汚水排出管46から下水または浄化槽に排出する。
【0058】
圧送ポンプ42は駆動信号が入力されてから所定時間後に停止し、その後しばらくボール洗浄水噴出口47からボール洗浄水が供給され続けることでボール5を洗浄し、そしてこの洗浄水により第1のトラップ部11における第1の溜水部15に給水され続ける。第1の溜水部15が臭気の遮断を行えるまで洗浄水が供給されて封水した後に給水バルブSV4が閉じられて給水が停止される。給水が停止されるまでの時間はあらかじめ決められている。
このようにすることで、大便洗浄操作スイッチ71または小便洗浄操作スイッチ72の操作後はボール5に洗浄水が溜められた状態となりボール5が常に洗浄水に接触していることで汚物の付着を防止することができるので衛生的である。
汚物臭気遮断用の水が第2のトラップ部に溜水していると判断した場合は、洗浄水が第2のトラップ部21に吐出するように第1の流路切換バルブSV3を切り換えるように指令される。
[第3の実施例]
【0059】
図5はマニュアルで第1のトラップ部11に溜められた溜水を第2のトラップ部21に排出する場合のタイミングチャートである。この場合、制御部300においてマニュアルモード設定スイッチ73はマニュアルモードに設定されているものとする。
マニュアルモード設定スイッチ73がマニュアルモードに設定されると、人感(赤外線)センサ駆動・検出回路67において、センサ検知信号はマニュアルスイッチ75が操作された場合のみ出力するようになる。従ってトイレ使用者がトイレ個室に入室してもその時点では検知信号は出力されない。
使用者がトイレに入室後、小便の飛び散りを嫌ってボール5の溜水を排出した場合に、マニュアルスイッチ75を操作すると、その時点で赤外線センサ77が検知していた検知信号が赤外線センサ駆動・検出回路67を介して制御回路60に伝達される。その結果、バルブ類は実施例1で記載したと同様な動作を行うこととなる。
【0060】
このようにマニュアルモードを設定することで、トイレ入室の度にボール5に溜められた溜水を排出するかしないかを選択することができるので、洗浄水を節約することが可能となる。
【0061】
このようなマニュアルモードは人感センサ77、人感センサ駆動・検出回路67を使用せず、単にバルブ類の動作を行う操作スイッチまたは操作レバーとすることも可能である。そうすることで制御部300は簡素化される。
[第4の実施例]
【0062】
図6はエコモードを設定した場合のボール5に溜められた溜水の排出動作のタイミングチャートである。この場合、制御部300においてエコモード設定スイッチ74はエコモードに設定されているものとする。
図6においてTは人感センサ77が使用者の入室を検知してから便座3への着座を着座センサ78が検知するまでの時間を表している。
図6の右側は便座3への着座がエコモード設定時間T2以内に着座使用者が便座3への着座を検知した場合を示し、
図6の左側はエコモード設定時間T2以内には着座が検知されなかった場合を示している。
エコモード設定スイッチ74がエコモードに設定されると、エコモード設定時間T2が有効になる。このエコモード設定時間T2は、使用者がトイレ入室を人感(赤外線)センサ77で検知してからT2時間後に着座しているかどうかを検知し、その検知結果に応じて第1のトラップ部11の溜水を第2のトラップ部21に排出するかどうかを決めるものである。すなわち、T2後でも便座3に着座していないことが検知された場合にのみ第1のトラップ部11の溜水を第2トラップ部21に排出するための遅延時間として作用している。
T2以内に着座(圧力)センサ78が便座3への着座を検知していたら、立位での小便ではないと判断して第1のトラップ部11から第2のトラップ部21への溜水の排出を行なわないようにするものである。
このようにすることで、むやみにボール5に溜められた溜水を排出することがないので洗浄水を節約することができる。
なお、図示はしていないが、エコモード設定時間T2も制御部300において設定が可能である。
【0063】
以上、説明してきたように本発明の洋式便器および洋式便器の溜水方法によれば、洋式便器において小便をした場合にボールに溜められた臭気遮断用の溜水に小便が衝突して周囲へ飛び散ることがなく、衛生的にトイレを使用でき、かつ従来と変わらずに便器への汚物の付着も防止できる上、洗浄水も必要以上に消費することがない。