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特開2023-30155検体の定量化のための方法およびデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030155
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】検体の定量化のための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
G01N33/543 501F
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209525
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2019547299の分割
【原出願日】2018-02-28
(31)【優先権主張番号】201611029354
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519309337
【氏名又は名称】ビドケア イノベーションズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アガワル,ロハン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コストも維持しつつ、改善された感度、より小さなアッセイ時間、およびより良好なSN比を有する、各種アッセイを開発すること。
【解決手段】試料中の検体の定量化のための、各種方法およびデバイスを提供する。一実施例は、以下の各ステップを有する。試料を、少なくとも1つのテスト分割チャネルに注入する。テスト分割チャネルは、テスト反応部を備えている。試料中の検体は、前記反応部において、供給される捕捉試薬と結合する。捕捉試薬と結合した検体を、反応液と接触させる。反応液は、検体と結合させるための、試薬でコーティングした複数の微小粒子を含む。非結合微小粒子を含んだ残留反応液を回収する。検体を定量するために、残留反応液を分析する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の検体(410)を定量するための方法であって、
前記試料を、テスト反応部(306a)を備えた少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)に注入するステップであって、前記試料中の前記検体(410)は、前記テスト反応部(306a)において供給される捕捉試薬(408)と結合することとなるステップと、
前記捕捉試薬(408)と結合した前記検体(410)を、反応液と接触させるステップであって、前記反応液は、前記検体と結合させるための、試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)を含んであるステップと、
非結合微小粒子を含んだ残留反応液を回収するステップと、
前記検体(410)を定量するために、前記残留反応液を分析するステップと、
を備えている、方法。
【請求項2】
前記分析するステップが、
試薬でコーティングした微小粒子の当初の数と、非結合微小粒子の数との差を決定するステップと、
前記差と、前記検体(410)の濃度との相関を求めるステップと、
前記相関を求めるステップに基づいて、前記検体を定量するステップと、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)に、前記試料を注入するステップと、
前記少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)とから、洗浄により前記試料を除去するステップと、
前記少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)とに、前記反応液を注入するステップと、
前記少なくとも1つのテスト分割チャネル306のテスト検出部(306b)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)のコントロール検出部(308b)とによって、残留反応液を回収するステップと、
前記テスト検出部(306b)と、前記コントロール検出部(308b)との体積の差を決定するステップと、
試薬でコーティングした微小粒子の当初の数と、試薬でコーティングした非結合微小粒子の数との差と、前記体積の差との相関を求めるステップと、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1のチャネル(302)の注入口に、前記試料を注入するステップと、
前記第1のチャネル(302)から、前記少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネルとに、前記試料を分配するステップと、
前記検体(410)を、前記反応部において、供給される前記捕捉試薬(408)と結合させるステップと、
を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応液を注入するステップが、
第1のチャネル(302)の注入口に、前記反応液を注入するステップと、
前記少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)とに、前記反応液を分配するステップと、
前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)を、前記検体(410)と結合させるステップと、
を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記検体(410)は、抗原および抗体のいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試薬は、抗原および抗体のいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検体および前記試薬は、タンパク質、タンパク質断片、各種細胞、各種核酸、各種殺菌作用物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させるステップが、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)を緩衝液で水和するステップを備え、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)は、前記注入口の上流に収容されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させるステップが、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)を前記試料で水和するステップを備え、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)は、テスト反応部(306b)、コントロール反応部(308b)、およびそれらの組み合わせに収容されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
試料中の検体を定量するための方法であって、
前記検体(410)と、検体でコーティングした微小粒子とを含む試料を、テスト反応部(306a)を備えた少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)に注入するステップであって、前記検体(410)と、前記検体でコーティングした微小粒子とは、前記テスト反応部(306a)において、供給される捕捉試薬と競合的に結合するステップと、
遊離検体と、検体でコーティングした非結合微小粒子とを含む、残留反応液を回収するステップと、
検体でコーティングした微小粒子の当初の数と、検体でコーティングした非結合微小粒子の数との差を決定するステップと、
前記差と、前記検体の濃度との相関を求めるステップと、
前記相関を求めるステップに基づいて、前記検体を定量するステップと、
を備えている前記試料を注入するステップにおいて、方法。
【請求項12】
検体の定量化のためのマイクロ流体デバイス(300)であって、
第1のチャネル(302)と、
マイクロチャネル分配器(304)であって、その第1の終端が前記第1のチャネル(302)に接続されているとともに、その第2の終端が複数の分割チャネルに接続されており、前記複数の分割チャネルのそれぞれに、試薬でコーティングした複数の微小粒子を含んだ反応液を分配するマイクロチャネル分配器(304)と、を備え、
前記複数の分割チャネルは、前記反応液の第1の量を回収するためのテスト分割チャネル(306)を備え、
前記テスト分割チャネル(306)は、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)と結合し、前記検体(410)の存在下で前記第1の量を減少させるテスト反応部(306a)を有し、
前記第1の量の前記減少が、前記検体(410)の濃度の定量に用いられる、
マイクロ流体デバイス(300)。
【請求項13】
前記テスト分割チャネル(306)が、前記反応液の減少量を回収するテスト検出部(306b)を備える、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項14】
前記複数の分割チャネルは前記試薬の第2の量を回収するコントロール分割チャネル(308)を備え、前記コントロール分割チャネル(308)は少なくともコントロール検出部(308b)を備え、前記コントロール検出部(308b)は前記試薬の前記第2の量を回収し、前記第1の量は前記第2の量と実質的に等しく、前記減少量と前記検体濃度との相関が求められ、前記相関に基づいて前記検体を定量する、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項15】
前記反応液が、前記検体と相補的な複数の捕捉試薬がコーティングされている、試薬でコーティングされた複数の微小粒子(412)を含み、前記微小粒子の大きさが、直径0.2μm~20μmの範囲にあり、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)は、ラテックス、各種ポリマー、各種金属、各種セラミック、各種有機化合物、各種生体分子、およびそれらの組み合わせから作製される、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項16】
前記テスト検出部(306b)および前記コントロール検出部(308b)の長さが1mm~300mmの範囲にあり、前記テスト検出部(306b)と、前記コントロール検出部(308b)とが、前記第2の量と前記減少量との差を決定するために付された目盛を備える、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項17】
前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)と、洗浄緩衝液と、反応緩衝液とを収容する収容部品(310)を備える、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項18】
前記試薬をコーティングした複数の微小粒子(412)は、前記テスト反応部(306a)に乾燥状態で収容される、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項19】
前記検体を含んだ試料を注入するための、前記第1のチャネルに接続された注入口と、
前記第1のチャネルに緩衝液を送液するポンプと、
前記ポンプを作動させるアクチュエーターと、
を備える、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の検体の定量化に関し、具体的には、試料中の検体の定量化のための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、疾病を診断するための各種テストは、病理研究所で実施される。喀痰、尿、唾液などのような患者試料は、熟練技術者によって標準的なプロトコルを用いて処理される。これは、多くの場合、時間がかかり、熟練した人員と、高価な実験装置とを必要とする。所要時間を短縮し、その結果、医師が種々の臨床意思決定を行うことを可能とする、各種のポイントオブケア(Point of Care; POC)診断方法およびデバイスが開発されている。これらの各種POCデバイスは、各種ラテラルフローアッセイ(Lateral Flow Assays; LFA)と、各種マイクロ流体デバイスとを含む。また、患者試料中の検体を検出し、診断し、定量する、各種のラボオンチップ(Lab-on-a-chip)デバイスも開発されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
病理研究所における各種診断テストは、通例、時間がかかり、熟練技術者を必要とし、研究所のインフラストラクチャーを必要とする。研究所の各種診断テストより短時間で結果を提供する、各種のポイントオブケア(Point-of-care; POC)デバイスおよび方法が開発されてきた。各種のPOCデバイスおよび方法は、各種ラテラルフローアッセイ(Lateral Flow Assay; LFA)デバイスと、マイクロ流体を基礎とする、ラボオンチップベースの各種システムとを含む。
【0004】
LFAは成功を収めているものの、概して、各種診断テストに基づいて研究所がもたらすような感度および特異度には及ばない。マイクロ流体を基礎とする、ラボオンチップベースの各種システムは、従来のLFAよりも高い感度および特異度を提供する。感度および特異度を改善する、各種方法が開発されてきた。しかし、これらの各種方法には、一般に電子リーダーが必要とされ、それによりLFAや、マイクロ流体を基礎とする、ラボオンチップベースのシステムの費用および複雑さが増大する。公共部門の医療提供者は、概して、かかる電子リーダーの費用を負担することができず、それゆえ、臨床試料はより大規模な研究所に送られて、所要時間(turnaround time; TAT)および診断を増加することになる。
【0005】
光反射や電流測定などのような各種従来技術を利用した、各種臨床試料中の検体濃度を検出し、測定する、各種ラボオンチップシステムが開発されてきた。各種従来技術を使用すると実験装置の使用量は低減するが、定量化のためには、手のひらサイズまたは台上に設置可能な各種器械を使用することはできるものの、それによって費用が増加する。
【0006】
最近の研究は、コストも維持しつつ、改善された感度、より小さなアッセイ時間、およびより良好なSN比を有する、各種アッセイを開発することを目的としてきた。かかるアッセイ技術の1つは、タンパク質の分離および検出のために、抗体でコーティングした微小粒子を用いることを含む。抗体でコーティングした微小粒子は各種標的タンパク質と結合するため、結合微小粒子の濃度は、標的タンパク質の濃度と正比例し、標的タンパク質の定量に用いることができる。通例、結合ビーズを視覚的に検出するために、各種蛍光色素もマイクロビーズ上にコーティングされている。顕微鏡や、デジタル式または手動式のセルカウンターなどの使用を含む、別の各種方法も、結合マイクロビーズをカウントするために用いられてきた。これらの技術は、アッセイの複雑さを増大させる、研究所の環境や高価な各種器械を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本主題に従って、本主題は、試料中の検体を定量するための方法を提供する。試料は、少なくとも1つのテスト分割チャネルに注入される。テスト分割チャネルは、テスト反応部を備える。試料中の検体は、反応部において、供給される捕捉試薬と結合する。捕捉試薬と結合した検体を、反応液と接触させる。反応液は、検体を結合させるための、試薬でコーティングした複数の微小粒子を含む。非結合微小粒子を含んだ残留反応液を回収する。検体を定量するために、残留反応液を分析する。
【0008】
一実施例では、試薬でコーティングした微小粒子の当初の数と、非結合微小粒子の数との差を決定するために、残留反応液を分析する。この差と、検体濃度との相関を求め、この相関に基づいて、検体を定量する。
【0009】
別の実施例では、少なくとも1つのコントロール分割チャネルに試料を注入する。少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとに、反応液を注入する。少なくとも1つのテスト分割チャネルのテスト検出部と、少なくとも1つのコントロール分割チャネルのコントロール検出部とによって、残留反応液を回収する。テスト検出部と、コントロール検出部とによって回収された残留反応液の体積の差を決定する。この体積の差と、試薬でコーティングした微小粒子の当初の数と非結合微小粒子の数との差との相関を求める。この差と、検体濃度との相関を求め、この相関に基づいて、検体を定量する。
【0010】
本主題は、また、試料中の検体の定量化のためのマイクロ流体デバイスを提供する。マイクロ流体デバイスは、第1のチャネルと、マイクロチャネル分配器とを備える。マイクロチャネル分配器の第1の端部は、第1のチャネルに接続されており、マイクロチャネル分配器の第2の端部は、複数の分割チャネルに接続されている。マイクロチャネル分配器は、複数の分割チャネルのそれぞれに、反応液を分配する。複数の分割チャネルは、反応液の第1の量を回収するテスト分割チャネルを備える。テスト分割チャネルは、テスト反応部を有する。テスト反応部は、複数の微小粒子と結合し、検体の存在下で反応液の第1の量を減少させる。テスト検出部は、反応液の減少量を回収する。第1の量の減少を、検体濃度を定量するために用いる。
【発明の効果】
【0011】
本主題は、電子リーダーのような周辺機器を、その機能を補助するために使用しない、軽便な各種アッセイを実施するための方法およびデバイスを提供する。また、本主題は、計量可能な各種結果を提供する。この方法およびデバイスはマイクロ流体デバイスに基づいているため、当該デバイスをポケットサイズにすることができる。本主題の方法およびデバイスを使用することにより、検体は、従来の研究所の各種診断技術と比較して、短時間で定量される。さらに、この方法およびデバイスは、いかなる研究所のインフラストラクチャーも必要とせず、農村部や家庭のような、リソースが限られた各種環境で使用することができる。そして、この方法は簡単で、またデバイスも使いやすいため、非熟練者でも同様に実行し、使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】試料中の検体を定量するための方法を、本主題の実施に従って示すフローチャートである。
図1b】残留反応液を分析するための方法を、本主題の実施に従って示すフローチャートである。
図1c】残留反応液を分析するための別の方法を、本主題の実施に従って示すフローチャートである。
図2】試料中の検体を定量するためのさらに別の方法を、本主題の実施に従って示すフローチャートである。
図3】検体を定量するためのデバイスの概略を、本主題の実施に従って示す図である。
図4】検体の定量化を、本主題の実施に従って模式的に示す図である。
図5】試料流量の最適化の結果を、本主題の実施に従って示すグラフである。
図6】反応液流量の最適化の結果を、本主題の実施に従って示すグラフである。
図7】試料体積の最適化の結果を、本主題の実施に従って示すグラフである。
図8a】非結合微小粒子の数について作成された標準曲線を、本主題の実施に従って示すグラフである。
図8b】検出チャネル中のシグナルについて作成された標準曲線を、本主題の実施に従って示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明は、添付した各図を参照しつつ提供される。各図において、参照番号の左端の数字は、当該参照番号が初出となる図を示している。類似の特徴や構成要素に言及するのに、図面を通して同じ数字が使用される。
【0014】
上記の各実施は、添付した各図を参照しつつ、本明細書でさらに詳しく説明する。当該説明および各図は、例示的な各実施に関連して言及されるものであり、本主題に対する限定として解釈されるものではない。また、本明細書に明確に説明または図示されていないが、本主題の各原理を具体化する種々の変形が考案され得ることも理解されたい。さらに、本主題の各原理、各態様、および各実施例や、特定の実施例を詳述する本明細書のすべての記述は、それらの各等価物を包含するものである。
【0015】
本主題は、試料中の検体の定量化のための方法およびデバイスに関する。
【0016】
図1は、試料中の検体を定量するための方法100を、本主題の実施形態に従って示している。検体は、抗原および抗体の、いずれか1つであってよい。検体は、タンパク質、タンパク質断片、各種細胞、各種核酸、各種殺菌作用物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ブロック102では、試料を、少なくとも1つのテスト分割チャネルに注入する。このテスト分割チャネルについては、図3を参照しつつ、後で説明する。実施例では、当該試料は、第1のチャネルの注入口に注入された後、テスト分割チャネルに注入される。テスト分割チャネルは、テスト反応部を備えている。捕捉試薬は、テスト反応部に供給される。例えば、捕捉試薬は、テスト反応部において、コーティングされてもよい。試料中の検体は、テスト反応部において、捕捉試薬と結合する。
【0017】
ブロック104では、各種捕捉試薬と結合した検体を、反応液と接触させる。この反応液は、検体を結合させるための、試薬でコーティングした複数の微小粒子を含む。実施例では、この接触は、試薬でコーティングした複数の微小粒子を緩衝液で水和することを含む。別の実施例では、この接触は、試薬でコーティングした複数の微小粒子が反応部に収容されている場合に、試薬でコーティングした複数の微小粒子を試料で水和することを含む。試薬は、検体と相補的な、抗原または抗体であってよい。反応液を検体と接触させると、試薬が検体と相補的である場合、試薬でコーティングした複数の微小粒子が検体と結合する。試薬は、タンパク質、タンパク質断片、各種細胞、各種核酸、各種殺菌作用物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、テスト対象の検体と相補的である。
【0018】
ブロック106では、非結合微小粒子を含んだ残留反応液を回収する。実施例では、残留反応液は、テスト検出部で回収される。別の実施例では、残留反応液を、例えば、手動カウンター、スライド、ノイバウエルチャンバーなどの、別個の器具に回収する。
【0019】
ブロック108では、検体を定量するために、残留反応液を分析する。図1bは、残留反応液を分析するための方法108aを、本主題の実施形態に従って示している。ステップ110では、試薬でコーティングした微小粒子の当初の数と、非結合微小粒子の数との差を決定する。ステップ112では、この差と、検体濃度との相関を求める。ステップ114では、上記相関に基づいて、検体を定量する。
【0020】
図1cは、残留反応液を分析するための別の方法108bを示している。ブロック116では、少なくとも1つのコントロール分割チャネルに試料を注入する。試料は、第1のチャネルの注入口に注入することができる。この実施例では、試料は、その後、第1のチャネルから、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つの分割チャネルとに分配される。一実施例では、試料の注入口への注入に、マイクロポンプを使用する。別の実施例では、マイクロインジェクターなどを用いて試料を注入することができる。実施例では、試料は、理解のため、喀痰や尿などの、処理され得る各種臨床試料であってよい。実施例では、試料は、注入口に注入される前に希釈され、処理される。この実施例では、注入口に注入される、処理される試料の体積は、1μL~200μLで変動してもよい。別の実施例では、処理または希釈を行わずに、試料を注入口に注入する。この実施例では、使用される試料の種類に応じて、試料体積が変化してもよい。一実施例では、試料の流量は、1μL/分~200μL/分である。一実施例では、反応液の流量は、1μL/分~200μL/分である。しかし、理解されるように、別の試料体積や流量を使用してもよい。
【0021】
一実施例では、コントロール分割チャネルはコントロール反応部も備える。この実施例では、コントロール反応部における検体の結合を抑制するために、コントロール反応部に捕捉試薬を供給しなくてもよい。別の実施例では、コントロール反応部中の捕捉試薬は、検体の類似体でブロックすることができる。別の実施例では、検体は、コントロール反応部において複数の捕捉試薬と結合することが可能であり、結合した検体は、後で説明するように、その後、複数の微小粒子の結合を阻害するためにブロックされる。
【0022】
ステップ118では、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとから、試料を洗浄する。一実施例では、この洗浄を、洗浄緩衝液を用いて実施する。実施例では、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとに対して、異種の緩衝液を用いて洗浄を実施する。例えば、コントロール反応部において、結合した検体をブロックするために、コントロール分割チャネルの洗浄にブロッキング緩衝液を使用してもよい。
【0023】
洗浄後、ステップ120では、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとに、反応液を注入する。試薬でコーティングした複数の微小粒子は、テスト反応部において、検体と結合する。一実施例では、反応液は、第1のチャネルの注入口に注入され、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとに分配される。一実施例では、複数の微小粒子は、乾燥状態で注入口の上流に収容されていてもよい。この実施例では、複数の微小粒子は、反応液を調製するために、緩衝液で水和されてもよい。別の実施例では、複数の微小粒子は、乾燥状態で注入口の下流に収容されていてもよく、試料の通過によって水和されてもよい。
【0024】
ステップ122では、少なくとも1つのテスト分割チャネルのテスト検出部と、少なくとも1つのコントロール分割チャネルのコントロール検出部が、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとから、残留反応液を回収する。残留反応液は、非結合微小粒子を含む。一実施例では、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとを、緩衝液で洗浄することができる。この実施例では、残留反応液は、非結合微小粒子と、緩衝液とを含む。
【0025】
コントロール反応部においては、試薬でコーティングした複数の微小粒子が結合しないため、コントロール検出部が回収する残留反応液は、注入した反応液と実質的に同じ体積である。しかし、テスト反応部においては、複数の微小粒子が検体と結合するため、テスト検出部が回収する残留反応液の体積は減少する。例えば、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとにそれぞれ注入する反応液の当初の体積がV0である場合、コントロール検出部が回収する残留反応液はV0と実質的に等しくなり、テスト検出部V1が回収する残留反応液の体積は、テスト反応部において複数の微小粒子が結合することにより、V0未満となる。ステップ124では、テスト検出部とコントロール検出部との体積の差を決定する。
【0026】
上記の体積の差は、微小粒子の数の差に正比例する。例えば、少なくとも1つのテスト分割チャネルと、少なくとも1つのコントロール分割チャネルとにそれぞれ注入する反応液の当初の体積にN0個の微小粒子が含まれている場合、コントロール検出部が回収する残留反応液は、N0と実質的に等しい微小粒子を有することとなり、テスト検出部が回収する残留反応液N1中の微小粒子の数は、テスト反応部において複数の微小粒子が結合することにより、N0未満となる。この体積の減少V0-V1は、テスト検出チャネルおよびコントロール検出チャネルにおける、マイクロビーズの数の変化N0-N1と対応している。N0-N1は、さらに、テスト反応部における検体濃度と対応している。
【0027】
ステップ126では、テスト検出部とコントロール検出部との体積の差と、検体濃度との相関を求める。この体積の差と、テスト検出部およびコントロール検出部における非結合微小粒子の数の差との相関を求める。この非結合微小粒子の数の差と、検体濃度との相関を求める。この相関に基づいて、検体を定量する。したがって、本主題が提供する方法は、試料中の検体を定量するために、体積測定法を用いる。
【0028】
図2は、試料中の検体を定量するためのさらに別の方法200を、本主題の実施形態に従って示している。ブロック202では、検体と、検体でコーティングした微小粒子とを含む試料を、少なくとも1つのテスト分割チャネルに注入する。検体と、検体でコーティングした微小粒子とは、反応部において、供給される捕捉試薬と競合的に結合する。
【0029】
ブロック204では、残留反応液を回収する。残留反応液は、遊離検体と、検体でコーティングした非結合微小粒子とを含む。特定の検体濃度について、残留反応液中の、検体でコーティングした非結合微小粒子の数は実質的に同一となる。それゆえ、検体でコーティングした微小粒子の当初の数と、検体でコーティングした非結合微小粒子の数との差は、特定の検体濃度について同一となる。
【0030】
ブロック206では、検体でコーティングした微小粒子の当初の数と、検体でコーティングした非結合微小粒子の数との差を決定する。ブロック208では、この差と、検体濃度との相関を求める。ブロック210では、この相関に基づいて、検体を定量する。
【0031】
本主題は、さらに、検体の定量化のためのマイクロ流体デバイスを提供する。図3は、マイクロ流体デバイス300を、本主題の実施形態に従って示している。マイクロ流体デバイス300は、第1のチャネル302と、マイクロチャネル分配器304とを備える。マイクロチャネル分配器304の第1の端部は、第1のチャネル302に接続されており、マイクロチャネル分配器304の第2の端部は、複数の分割チャネルに接続されている。
【0032】
図3は、2つの分割チャネル、すなわちテスト分割チャネル306とコントロール分割チャネル308とを示している。しかし、任意の数の分割チャネル(テストまたはコントロール)を提供してもよいことが理解されよう。マイクロチャネル分配器304は、複数の分割チャネルのそれぞれに、反応液を分配する。実施例では、マイクロチャネル分配器304は、複数の分割チャネルのそれぞれへ確実に反応液の均等な分配を行う、流量検出器のような各種コンポーネントを備えていてもよい。
【0033】
複数の分割チャネルは、テスト分割チャネル306と、コントロール分割チャネル308とを備える。定量する検体の数などの要因に基づいて、多数のテスト分割チャネルおよびコントロール分割チャネルを供給し得ることを理解されたい。テスト分割チャネル306は、マイクロチャネル分配器304から第1の量の反応液を回収する。テスト分割チャネル306は、テスト反応部306aを備える。実施例では、テスト分割チャネル306は、また、テスト検出部306bを備える。テスト反応部306aは、試薬でコーティングした複数の微小粒子と結合し、検体の存在下で反応液の第1の量を減少させる。
【0034】
前述したように、テスト反応部306aは、検体を捕捉すべくその内部にコーティングされた捕捉試薬を含み、試薬でコーティングした複数の微小粒子とさらに結合する。試薬でコーティングした複数の微小粒子の結合は、第1の量を減少させる。この第1の量は、反応液の第1の体積、または試薬でコーティングした微小粒子の当初の数であってよい。テスト分割チャネル306は、また、反応液の減少量を回収する、テスト検出部306bを備える。
【0035】
テスト分割チャネル306と同様に、コントロール分割チャネル308もまた、コントロール反応部308aと、コントロール検出部308bとを備える。コントロール検出部308bは、マイクロチャネル分配器304、またはコントロール反応部308aから、第2の量の反応液を回収することができる。第1の量と、第2の量とは、実質的に等しい。減少量と、検体濃度との相関があきらかにされ、この相関に基づいて、検体を定量する。
【0036】
テスト分割チャネル306およびコントロール分割チャネル308は、異なる形状および断面を有していてもよい。例えば、テスト分割チャネル306およびコントロール分割チャネル308は、蛇行したチャネル、まっすぐなチャネル、環状のチャネル、湾曲したチャネルなどであってよい。一実施例では、テスト反応部306aは、検体と、捕捉試薬との最大限の接触を確保する、テスト検出部306bより直径の小さい横断面を有する。別の実施例では、テスト分割チャネル306およびコントロール分割チャネル308の異なる部分が、異なる横断面を有していてもよい。例えば、テスト分割チャネル306およびコントロール分割チャネル308は、漸増する、または段階的に増加する横断面を有していてもよい。
【0037】
一実施例では、テスト分割チャネル306およびコントロール分割チャネル208の固有の横断面の大きさは、20μm~2000μmの範囲とすることができる。特異性を高め、交差反応を抑制するために、テスト分割チャネル306およびコントロール分割チャネル308の内表面を、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin; BSA)のような不活性タンパク質でコーティングしてもよい。阻害剤の選択は、定量する検体によって異なる。
【0038】
一実施例では、反応液は、緩衝液中に浮遊している複数の微小粒子を含む。複数の微小粒子は、定量する検体と相補的な試薬でコーティングされている。一実施例では、複数の微小粒子の大きさは、0.2μm~20μmの範囲である。実施例では、複数の微小粒子は、ラテックス、各種ポリマー、各種金属、各種セラミック、各種有機化合物、各種生体分子、およびそれらの組み合わせから作製されている。
【0039】
一実施例では、複数の微小粒子を含んだ反応液を、マイクロチャネル分配器304に注入する。別の実施例では、複数の微小粒子は、乾燥状態で、収容部品310に収容されてもよい。一実施例では、収容部品310は、図3に示したように、第1のチャネル302の上流にある。しかし、収容部品310が下流に設けられてもよいことがわかるだろう。一実施例では、試薬でコーティングした複数の微小粒子は、試料注入口の上流に収容される。別の実施例では、試薬でコーティングした複数の微小粒子は、テスト反応部306aに収容される。緩衝液または試料が、試薬でコーティングした複数の微小粒子を再び水和するまで、それらは、乾燥されて、収容される。
【0040】
一実施例では、試薬でコーティングした複数の微小粒子は、マイクロチャネル分配器304の下流に収容される。この実施例では、複数の微小粒子を、試料で水和してもよい。複数の微小粒子を再び水和するための緩衝液は、収容部品310の上流に収容される。緩衝液は、2種類、すなわち、反応緩衝液および洗浄緩衝液であってよい。反応緩衝液は、洗浄緩衝液に対して下流に配置され、その結果、洗浄緩衝液は、テスト検出部306bと、コントロール検出部308bとの中に、非結合微小粒子を洗い流すことができる。緩衝液を流動させるために、スイッチング素子312を使用してもよい。スイッチング素子312は、電気式でなくてもよく、マイクロ流体デバイス300全体にわたり圧力勾配を生成するのを補助する。圧力勾配は、正の圧力勾配であっても負の圧力勾配であってもよい。
【0041】
一実施例では、テスト検出部306bおよびコントロール検出部308bの全長は、1mm~300mmの範囲にある。テスト検出部306bと、コントロール検出部308bとは、まっすぐなチャネル、蛇行したチャネル、湾曲したチャネルなどの、いずれか1つである。テスト検出部306bと、コントロール検出部308bとは、第2の体積と減少した体積との差を決定するために付された目盛を備える。
【0042】
一実施例では、マイクロ流体デバイス300は、また、検体を含んだ試料の注入のための、第1のチャネルに接続された注入口を備える。別の実施例では、注入口は、第1のチャネル302に設けられている。マイクロ流体デバイス300は、また、第1のチャネル302に緩衝液を送液するポンプを備えていてもよい。マイクロ流体デバイス300は、また、ポンプを作動させるアクチュエーターを備えていてもよい。デバイスの動作は、図1図3を参照しつつ、さらに説明する。
【0043】
図4は、マイクロ流体デバイス300の動作例を、本主題の実施形態に従って図示している。ステップ400は、テスト反応部306aの内表面をコーティングしている捕捉試薬408を示している。ステップ400は、捕捉試薬408を、抗体として示している。しかし、捕捉試薬408は、抗原であってもよいことを理解されたい。
【0044】
前述のように、注入口は、マイクロ流体デバイス300に試料を注入するために使用されてもよい。一実施例では、試料の注入に、吸収パッドを使用してもよい。テスト反応部306aにおいて、試料中の検体410は、ステップ402に示したように、捕捉試薬408と結合する。
【0045】
作動すると、緩衝液は、収容部品310を通って流動を開始する。反応緩衝液は、検体を結合させるために、乾燥した、試薬でコーティングした複数の微小粒子412を再水和する。試薬でコーティングした複数の微小粒子412と、緩衝液とを含む反応液は、マイクロチャネル分配器304を通過し、テスト分割チャネル306と、コントロール分割チャネル308とに分配される。
【0046】
テスト分割チャネル306では、ステップ404に示したように、複数の微小粒子が検体と結合する。しかし、コントロール分割チャネル308が検体の結合を抑制するため、試薬でコーティングした複数の微小粒子は、コントロール検出部308bに吸着することなく、コントロール反応部308aを通過する。テスト検出部306aと、コントロール検出部308bとのいずれも洗浄される。残留反応液および未反応液は、テスト反応部306aと、コントロール反応部308bとから、テスト検出部306bと、コントロール検出部308bとに回収される。ステップ406は、テスト検出部306bと、コントロール検出部308bとを示している。コントロール検出部308bとテスト検出部306bとの体積の差は、視覚により決定されてもよく、この差と、試料中の検体濃度との相関を求めてもよい。
【0047】
<実施例>
ここで、本主題は、実施例を用いて説明されているが、これは本開示の作用を例示しつつ説明することを意図しており、本開示の範囲に対するなんらかの限定を示唆するために限定的に用いられることを意図するものではない。別の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野における通常の知識を有する者に一般に理解されているのと同一の意味を有する。かかる方法および条件は、当業者に容易に理解されるように、使用するプロセスおよび入力により変更し得るため、本開示は、記載した特定の方法および実験条件に限定されるものではないことを理解されたい。
【0048】
(実施例1:最適化研究)
この実施例では、試料は、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffer Saline; PBS)(pH=7.4)を添加した、ヒト甲状腺刺激ホルモン(Thyroid Stimulating Hormone; TSH)(1mg=7IU)を示す。別に明記されない限り、すべての実験で、濃度を約1mIU/Lで一定に維持した。反応液は、抗TSH抗体でコーティングした、PBS中に浮遊しているカルボキシル官能化ポリスチレン微小粒子を含む。洗浄緩衝液は、PBSで希釈した、0.1%Tween20溶液を使用した。また、以下で使用する「シグナル」という用語は、コントロール検出部208bとテスト検出部208aとの非結合微小粒子の数の差を示す。
【0049】
アッセイに先立ち、テスト反応部206aを捕捉抗体でコーティングし、微小粒子を抗TSH抗体と共有結合させることにより、複数の微小粒子を調製した。PBSにヒトTSH(Sigma-Aldrich USA)ストックを適量添加することにより、試料を調製した。この試料の規定量を、注入口に加えた。シリンジポンプ(New Era Pump Systems USA, NE-1000)を介して付加した、陰圧を利用した流れを持続させた。試料は、コントロール分割チャネルおよびテスト分割チャネルを、完全に通過することができた。反応液をマイクロ流体デバイス300に加え、管理された流量で通過させることができた。次のステップでは、洗浄緩衝液(200~300μL)が、マイクロ流体デバイス300を通過した。非結合ビーズの数と、検体濃度との相関を求めるために、複数の微小粒子を、コントロール検出部およびテスト検出部から、1.5mLのマイクロ遠心チューブに回収した。
【0050】
(実施例1.1:試料流量の最適化)
本実施例では、試料流量の最適化を実施した。以下のパラメーターを一定に維持した。
試料体積:50μL
試料濃度:1mIU/L
反応液流量:75μL/分
マイクロ流体デバイス300に注入された微小粒子の当初の数:13.87×107
流量範囲をテストした。25μL/分を下限として設定した。これにより、アッセイのステップが8~10分の実用限界内に保たれるためである。75μL/分、および150μL/分の流量の値も評価した。重複した結果を評価した。
【0051】
機械加工のプロセスとシステムの欠陥とによるチャネルの形状寸法に基づいて、流量は、21~28μL/分の間で変化することがわかった。アッセイのための基準と見なした、コントロール分割チャネルのマイクロチャネルの結果は、非結合微小粒子の数の平均が12.17×107であることを示した。予想通り、全般的な傾向として、図5に示したように、試料流量が増加するごとに非結合微小粒子の増加が観察された。本研究の間、より速い流量から遅い流量へと移行すると、40%程度の変化が見られた。
【0052】
微小粒子の最大結合は25μL/分で観察され、4.11×107であった。15~20分の実用的な、または目標とする制限時間内にアッセイを保つ限り、25μL/分が最適な流量であると結論付けた。
【0053】
(実施例1.2:反応液の流量の最適化)
本実施例では、反応液の流量の最適化を実施した。以下のパラメーターを一定に維持した。
試料体積:50μL
試料濃度:1mIU/L
試料流量:75μL/分
注入された当初の微小粒子の数:12.37×107
【0054】
アッセイのステップを8~10分の実用限界内に保つため、25μL/分を下限として設定した。75μL/分および150μL/分の流量値も評価した。アッセイのための基準と見なした、コントロールマイクロチャネルの結果は、図6に示したように、異なる流量での非結合微小粒子の数の平均が10.4×107であることを示した。
【0055】
全般的な傾向として、非結合微小粒子の増加は、予想されるように、試薬流量が増加するごとに観察された。150μL/分から75μL/分に移行すると、30%程度の変化が見られ、25μL/分に移行すると、20%の変化に減少した。25μL/分で観察された微小粒子の最大結合は、2.2×107であった。15~20分の実用的な、または目標とする制限時間内にアッセイを保つ限り、25μL/分が最適な流量であると考えることができる。
【0056】
(実施例1.3:試料体積の最適化)
本実施例では、試料体積の最適化を実施した。以下のパラメーターを一定に維持した。
試料濃度:1mIU/L
試料流量:25μL/分
反応液流量:25μL/分
注入された当初の微小粒子の数:18.69×107
【0057】
10μLを、使用する最小量とした。使用したチャンバの目盛ではこの小さな体積を管理することが困難であるとわかり、そのために、PBSを用いて30μLに希釈した。1滴の血液が25μLにおよそ等しいため、25μLを研究のための体積と考えた。50μLを最大量とした。この範囲外の体積では、指穿刺採血による測定または抽出が困難であるためである。
【0058】
アッセイのための基準と見なした、コントロールマイクロチャネルの結果は、図7に示したように、非結合微小粒子の数の平均が16.87×107であることを示した。全般的な傾向として、非結合微小粒子の減少は、予想通り、試料体積が増加するごとに観察された。この変化は、使用した試料の体積に比例した。例えば、体積を25μLから50μLに増加させると、微小球の数の変化は倍増した。
【0059】
50μLの体積において観察された微小粒子の最大結合は、3.47×107であった。シグナルが単位濃度当たり最大であることから、50μLを、最適な体積であると考えた。
【0060】
(実施例1.4:標準曲線)
標準曲線を作成するために、以下のパラメーターを一定に維持した。
試料体積:50μL
試料流量:25μL/分
反応液流量:25μL/分
最初に注入した微小粒子の数:6.5×108
反応液の濃度と体積:6~6.5%,160μL
図8は、濃度1mIU/Lの試料につき、約7mmの変化があることを示している。
【0061】
全般的な傾向として、非結合微小粒子の減少は、予想通り、試料濃度が増加するごとに観察された。尤も、変化の程度は、濃度が1単位変化した直後に、有意に減少した。
【0062】
このような観察結果となったのは、微小粒子が、設計された反応室にあるすべての結合部位を飽和させるためである。利用できる部位の数が減少するにつれて非結合微小粒子の結合確率も低下し、それゆえに、シグナル強度が低下する。変化度は、それぞれのステップ後に利用できる部位の数に依存する。この限界を克服するためには、マイクロ流体デバイス300における、利用可能な表面積を増加させなければならない。
【0063】
本研究を通じて、種々のパラメーターが最適化された。すなわち、以下の通りである。
反応液流量:25μL/分
試料流量:25μL/分
試料体積:50μL
反応液濃度:5~7%
ただし、結果が同等であったことから、別の濃度も使用可能である。1mIU/Lの試料のためのシグナルが7mmであるとして、標準曲線をプロットした。この際、試料濃度の増加に伴ってシグナル強度が低下した。
【0064】
対象とされるアッセイデバイスに対する実用的な制限の下、この範囲を維持した。両ステップのための制限時間はそれぞれ8~10分であり、総アッセイ時間は20分未満である。さらに、同様の条件および試料濃度が、異なる結合変化をもたらす場合があるのが見られた。これは、使用する抗原のそれぞれの凍結融解周期によるものであり、それが抗原の活性に影響を及ぼす。
【0065】
(実施例1.5:残留反応液の体積と、複数の微小粒子の数の差との相関)
この実施例では、試薬でコーティングした微小粒子の当初の数と、非結合微小粒子の数との差と、テスト検出部およびコントロール検出部の体積の差との相関を調べた。
【0066】
表1からわかるように、この実験においては、微小粒子の数の差は、体積の変化に比例する。結果は、最も近似する整数値に切り上げた。差は、主として、オペレーターのミスや、異なるチャネルにおける各種製造公差および各種欠陥により発生する。チャネルの横断面積は、約3.2×10-2mm2であった。
【表1】
(表1:残留反応液の体積と、複数の微小粒子の数の差との相関)
【0067】
本主題を、その実施例および実施形態に関して、相当詳細に説明してきたが、他の実施形態もありうる。したがって、本主題の範囲は、そこに掲載されている好ましい実施例および実施形態の説明に限定されるものではない。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の検体(410)を定量するための方法であって、
前記試料を、テスト反応部(306a)を備えた少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)に注入するステップであって、前記試料中の前記検体(410)は、前記テスト反応部(306a)において供給される捕捉試薬(408)と結合することとなるステップと、
前記捕捉試薬(408)と結合した前記検体(410)を、反応液と接触させるステップであって、前記反応液は、前記検体と結合させるための、試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)を含んであるステップと、
非結合微小粒子を含んだ残留反応液を回収するステップと、
前記検体(410)を定量するために、前記残留反応液を分析するステップと、
少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)に、前記試料を注入するステップと、
前記少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)とから、洗浄により前記試料を除去するステップと、
前記少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)とに、前記反応液を注入するステップと、
前記少なくとも1つのテスト分割チャネル306のテスト検出部(306b)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)のコントロール検出部(308b)とによって、残留反応液を回収するステップと、
前記テスト検出部(306b)と、前記コントロール検出部(308b)との体積の差を決定するステップと、
試薬でコーティングした微小粒子の当初の数と、試薬でコーティングした非結合微小粒子の数との差と、前記体積の差との相関を求めるステップと、
を備えている、方法。
【請求項2】
前記分析するステップが、
試薬でコーティングした微小粒子の当初の数と、非結合微小粒子の数との差を決定するステップと、
前記差と、前記検体(410)の濃度との相関を求めるステップと、
前記相関を求めるステップに基づいて、前記検体を定量するステップと、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のチャネル(302)の注入口に、前記試料を注入するステップと、
前記第1のチャネル(302)から、前記少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネルとに、前記試料を分配するステップと、
前記検体(410)を、前記テスト反応部(306a)において、供給される前記捕捉試薬(408)と結合させるステップと、
を備える、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記反応液を注入するステップが、
第1のチャネル(302)の注入口に、前記反応液を注入するステップと、
前記少なくとも1つのテスト分割チャネル(306)と、前記少なくとも1つのコントロール分割チャネル(308)とに、前記反応液を分配するステップと、
前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)を、前記検体(410)と結合させるステップと、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検体(410)は、抗原および抗体のいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試薬は、抗原および抗体のいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記検体および前記試薬は、タンパク質、タンパク質断片、各種細胞、各種核酸、各種殺菌作用物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させるステップが、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)を緩衝液で水和するステップを備え、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)は、注入口の上流に収容されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させるステップが、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)を前記試料で水和するステップを備え、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)は、テスト反応部(306a)に収容されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
検体の定量化のためのマイクロ流体デバイス(300)であって、
第1のチャネル(302)と、
マイクロチャネル分配器(304)であって、その第1の終端が前記第1のチャネル(302)に接続されているとともに、その第2の終端が複数の分割チャネルに接続されており、前記複数の分割チャネルのそれぞれに、試薬でコーティングした複数の微小粒子を含んだ反応液を分配するマイクロチャネル分配器(304)と、を備え、
前記複数の分割チャネルは、前記マイクロチャネル分配器(304)が分配した第1の量の反応液を回収するためのテスト分割チャネル(306)を備え、
前記テスト分割チャネル(306)は、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)と結合し、前記検体(410)の存在下で前記第1の量の反応液を減少させるテスト反応部(306a)を有し、
前記第1の量から減少した反応液の量が、前記検体(410)の濃度の定量に用いられる、
マイクロ流体デバイス(300)。
【請求項11】
前記テスト分割チャネル(306)が、前記第1の量から減少した反応液を回収するテスト検出部(306b)を備える、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項12】
前記複数の分割チャネルは前記マイクロチャネル分配器(304)が分配した第2の量の反応液を回収するコントロール分割チャネル(308)を備え、
前記コントロール分割チャネル(308)は少なくともコントロール検出部(308b)を備え、
前記コントロール検出部(308b)は、少なくとも1つの前記テスト分割チャネルから前記第1の量から減少した反応液を回収するとともに、少なくとも1つの前記コントロール分割チャネルから第2の量に等しい量の反応液を回収し、
前記第1の量から減少した前記反応液の量と前記第2の量との差と、前記検体濃度との相関が求められ、前記相関に基づいて前記検体を定量する、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項13】
前記反応液が、前記検体と相補的な複数の捕捉試薬がコーティングされている、試薬でコーティングされた複数の微小粒子(412)を含み、前記微小粒子の大きさが、直径0.2μm~20μmの範囲にあり、前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)は、ラテックス、各種ポリマー、各種金属、各種セラミック、各種有機化合物、各種生体分子、およびそれらの組み合わせから作製される、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項14】
前記テスト分割チャネル(306)が、前記第1の量から減少した反応液を回収するテスト検出部(306b)を備え、前記テスト検出部(306b)および前記コントロール検出部(308b)の長さが1mm~300mmの範囲にあり、前記テスト検出部(306b)と、前記コントロール検出部(308b)とが、前記第2の量と前記第1の量から減少した前記反応液の量との差を決定するために付された目盛を備える、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項15】
前記試薬でコーティングした複数の微小粒子(412)と、洗浄緩衝液と、反応緩衝液とを収容する収容部品(310)を備える、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項16】
前記試薬をコーティングした複数の微小粒子(412)は、前記テスト反応部(306a)に乾燥状態で収容される、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス(300)。
【請求項17】
前記検体を含んだ試料を注入するための、前記第1のチャネルに接続された注入口と、
前記第1のチャネルに緩衝液を送液するポンプと、
前記ポンプを作動させるアクチュエーターと、
を備える、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス(300)。