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特開2023-30164吸引成分生成装置、吸引成分生成装置を制御する方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030164
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】吸引成分生成装置、吸引成分生成装置を制御する方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/50 20200101AFI20230228BHJP
   A24F 40/60 20200101ALI20230228BHJP
   A24F 40/53 20200101ALI20230228BHJP
【FI】
A24F40/50
A24F40/60
A24F40/53
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211168
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2021088244の分割
【原出願日】2017-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 剛志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 創
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電源の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能に構成されている吸引成分生成装置を提供する。
【解決手段】吸引成分生成装置は、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、電源の電圧値を取得可能に構成された制御ユニットと、を含む。制御ユニットは、電源の充電中に電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、電源の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、
前記電源の電圧値を取得可能に構成され、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、前記電源の充電中に前記電源の故障を推定又は検知する故障診断機能を実行可能に構成される制御ユニットと、
前記電源の電圧に基づき、少なくとも前記電源の残量が不足していない場合と前記電源の残量が不足している場合とを使用者に通知する通知部と、を含み、
前記制御ユニットは、前記既定の電圧範囲において長時間放置後に吸引成分源の気化又は霧化に寄与した前記電源の電圧に基づいて、前記既定の電圧範囲の下限値と既定の閾値との少なくとも一方を修正することを特徴とする、吸引成分生成装置。
【請求項2】
電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、
前記電源の電圧値を取得可能に構成され、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、前記電源の充電中に前記電源の劣化を推定又は検知する劣化診断機能を実行可能に構成される制御ユニットと、
前記電源の電圧に基づき、少なくとも前記電源の残量が不足していない場合と前記電源の残量が不足している場合とを使用者に通知する通知部と、を含み、
前記制御ユニットは、前記既定の電圧範囲において長時間放置後に吸引成分源の気化又は霧化に寄与した前記電源の電圧に基づいて、前記既定の電圧範囲の下限値と既定の閾値との少なくとも一方を修正することを特徴とする、吸引成分生成装置。
【請求項3】
電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、
前記電源の電圧値を取得可能に構成された制御ユニットと、を含み、
前記制御ユニットは、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、前記電源が劣化したと推定又は検知する劣化診断機能と前記電源が故障したと推定又は検知する故障診断機能とを実行可能に構成され、
前記故障診断機能の実行の後に前記劣化診断機能が実行可能であり、
前記故障診断機能で用いられる前記既定の電圧範囲の下限は、前記電源の放電終止電圧よりも低く、
前記制御ユニットは、前記既定の電圧範囲において長時間放置後に吸引成分源の気化又は霧化に寄与した前記電源の電圧に基づいて、前記既定の電圧範囲の下限値と既定の閾値との少なくとも一方を修正することを特徴とする、吸引成分生成装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の吸引成分生成装置において、
前記修正することが、前記既定の閾値を修正することなく、前記既定の電圧範囲の下限値が小さくなるように修正することを含む、吸引成分生成装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一項に記載の吸引成分生成装置において、
前記修正することが、前記既定の電圧範囲の下限値を修正することなく、前記既定の閾値が小さくなるように修正することを含む、吸引成分生成装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の吸引成分生成装置において、
前記既定の電圧範囲の下限値と既定の閾値との双方が前記制御ユニットによって修正されることを特徴とする、吸引成分生成装置。
【請求項7】
電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、
前記電源の電圧値を取得可能に構成され、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、前記電源の充電中に前記電源が劣化したと推定又は検知する劣化診断機能と前記電源が故障したと推定又は検知する故障診断機能とを実行可能に構成される制御ユニットと、
前記電源の電圧に基づき、少なくとも前記電源の残量が不足していない場合と前記電源の残量が不足している場合とを使用者に通知する通知部と、を含み、
前記制御ユニットが、前記既定の電圧範囲において長時間放置後に前記吸引成分源の気化又は霧化に寄与した前記電源の電圧に少なくとも基づいて、新たな既定の電圧範囲と前記新たな既定の電圧範囲に対応する新たな既定の閾値とを、次の故障診断機能と次の劣化診断機能との少なくとも一方の実行のために設定することを特徴とする、吸引成分生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷を含む吸引成分生成装置、当該吸引成分生成装置を制御する方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシガレットに代わり、たばこ等の香味源やエアロゾル源をヒータのような負荷で気化又は霧化することによって生じた吸引成分を味わう吸引成分生成装置(電子シガレットや加熱式たばこ)が提案されている(特許文献1~3)。このような吸引成分生成装置は、香味源及び/又はエアロゾル源を気化又は霧化させる負荷、負荷に電力を供給する電源、負荷や電源を制御する制御ユニットを備える。負荷は例えばヒータである。
【0003】
このような吸引成分生成装置において、負荷へ供給する電力や電源の充放電に関する電気制御については改善の余地がある。
【0004】
特許文献4~6は、電源の劣化を推定する方法を開示する。特許文献7,8は、電源の異常を監視する方法を開示する。特許文献9は、電源の劣化を抑制する方法を開示する。特許文献10~12は、所定の条件下で電源が満充電に達した場合に、電池の充電状態(SOC)や充電容量を較正することを開示する。特許文献4~12は、それらの方法を吸引成分生成装置に適用することを明示しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/150942号
【特許文献2】特表2017-514463号
【特許文献3】特開平7-184627号
【特許文献4】特開2000-251948号
【特許文献5】特開2016-176709号
【特許文献6】特開平11-052033号
【特許文献7】特開2003-317811号
【特許文献8】特開2010-050045号
【特許文献9】特開2017-005985号
【特許文献10】国際公開第2014/046232号
【特許文献11】特開平7-128416号
【特許文献12】特開2017-022852号
【発明の概要】
【0006】
第1の特徴は、吸引成分生成装置であって、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、前記電源の電圧値を取得可能に構成された制御ユニットと、を含み、前記制御ユニットは、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、前記電源の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能に構成されていることを要旨とする。
【0007】
第2の特徴は、第1の特徴における吸引成分生成装置であって、前記既定の電圧範囲の下限は、前記電源の放電終止電圧よりも低いことを要旨とする。
【0008】
第3の特徴は、第2の特徴における吸引成分生成装置であって、前記制御ユニットは、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が前記制御ユニットの動作保障電圧値の下限値以上
の値から既定の時間内に所定の閾値へ達するかどうかを判断し、前記制御ユニットは、前記電源の電圧値が前記既定の時間内に前記所定の閾値へ達しない場合に前記電源が故障したと推定又は検知する故障診断機能を実行可能に構成されていることを要旨とする。
【0009】
第4の特徴は、第3の特徴における吸引成分生成装置であって、前記吸引成分生成装置が、前記電源の充電が可能な充電モード以外である場合に、前記制御ユニットは前記故障診断機能を実行不能に構成されていることを要旨とする。
【0010】
第5の特徴は、第2の特徴から第4の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記制御ユニットは、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が前記放電終止電圧以上の既定の電圧範囲の下限から上限に既定の時間内に達した場合に前記電源が劣化したと推定又は検知する劣化診断機能を実行可能に構成されていることを要旨とする。
【0011】
第6の特徴は、第5の特徴における吸引成分生成装置であって、前記制御ユニットは、前記故障診断機能と前記劣化診断機能を同時に実行しないように構成されていることを要旨とする。
【0012】
第7の特徴は、第5の特徴又は第6の特徴における吸引成分生成装置であって、前記故障診断機能で用いられる前記既定の電圧範囲の上限値は、前記劣化診断機能で用いられる前記既定の電圧範囲の下限値より小さいことを要旨とする。
【0013】
第8の特徴は、第5の特徴から第7の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記制御ユニットは、前記放電終止電圧以上の複数の既定の電圧範囲のそれぞれにおいて、前記劣化診断機能を実行可能に構成されていることを要旨とする。
【0014】
第9の特徴は、第8の特徴における吸引成分生成装置であって、前記劣化診断機能で用いられる複数の前記既定の電圧範囲は、互いに重複しないことを要旨とする。
【0015】
第10の特徴は、第5の特徴から第9の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記劣化診断機能で用いられる前記既定の電圧範囲は、前記放電終止電圧を含まないことを要旨とする。
【0016】
第11の特徴は、第5の特徴から第10の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記劣化診断機能で用いられる前記既定の電圧範囲は、前記電源の蓄電量の変化に対する前記電源の電圧値の変化が他の電圧範囲と比較して小さいプラトー範囲を除く範囲に設定されることを要旨とする。
【0017】
第12の特徴は、第5の特徴から第11の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記電源の電圧に基づき、少なくても前記電源の残量が不足していない場合と前記電源の残量が不足している場合を使用者に通知する通知部を含み、前記劣化診断機能で用いられる前記既定の電圧範囲は、前記通知部が前記電源の残量が不足していると通知する範囲を除く範囲に設定されることを要旨とする。
【0018】
第13の特徴は、第5の特徴から第12の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記劣化診断機能で用いられる前記既定の電圧範囲は、前記電源に対して定電圧充電が行われる範囲を除く範囲に設定されることを要旨とする。
【0019】
第14の特徴は、第13の特徴における吸引成分生成装置であって、前記電源は、前記吸引成分生成装置とは別体の外部充電器によって充電可能に構成され、且つ前記外部充電器が認識する前記電源の電圧が切替電圧に至ったら前記定電圧充電で充電され、前記劣化
診断機能を実行する前記電源の電圧範囲は、前記切替電圧から既定の値を減算した電圧値よりも低い範囲に設定されることを要旨とする。
【0020】
第15の特徴は、第1の特徴から第14の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記電源の温度を出力する温度センサを含み、前記制御ユニットは、前記電源の温度が閾値より低い場合に、前記電源の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するためのアルゴリズムを変更又は修正可能に構成されていることを要旨とする。
【0021】
第16の特徴は、第1の特徴から第15の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記制御ユニットは、前記電源の充電中における前記電源の電圧値が前記既定の電圧範囲の前記下限から前記上限に至るまでに要した所要時間と、所定の時間閾値との比較に基づき、前記電源の劣化と故障の少なくとも一方を推定又は検知し、前記電源の温度が閾値より低い場合に、前記制御ユニットは、前記所定の時間閾値を前記電源の温度に基づき修正し、修正した時間閾値に基づき前記比較を行うよう構成されていることを要旨とする。
【0022】
第17の特徴は、第1の特徴から第14の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記電源の温度を出力する温度センサを含み、前記制御ユニットは、前記電源の温度が閾値より低い場合に、前記電源の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知する機能を実行しないように構成されていることを要旨とする。
【0023】
第18の特徴は、第1の特徴から第14の特徴のいずれかにおける吸引成分生成装置であって、前記電源の温度を出力する温度センサと、前記電源を加温するヒータと、を含み、前記制御ユニットは、前記電源の温度が閾値より低い場合、前記ヒータの制御により前記電源を加温するよう構成されていることを要旨とする。
【0024】
第19の特徴は、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷を含む吸引成分生成装置を制御する方法であって、前記電源の電圧値を取得するステップと、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、前記電源の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するステップと、を含むことを要旨とする。
【0025】
第20の特徴は、吸引成分生成装置であって、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、前記電源の電圧値を取得可能に構成された制御ユニットと、を含み、前記制御ユニットは、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が前記電源の放電終止電圧よりも低い場合に前記電源の故障を推定又は検知する故障診断機能を実行可能に構成され、前記制御ユニットは、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が前記電源の放電終止電圧よりも高い場合に前記電源の劣化を推定又は検知する劣化診断機能を実行可能に構成されていることを要旨とする。
【0026】
第21の特徴は、第20の特徴における吸引成分生成装置であって、前記故障診断機能及び前記劣化診断機能は、同じ変数値を用いて実施されるよう構成されており、前記電源が故障又は劣化したと推定又は検知するための前記変数値と閾値との大小関係は、前記故障診断機能と前記劣化診断機能とで逆転していることを要旨とする。
【0027】
第22の特徴は、第20の特徴又は第21の特徴における吸引成分生成装置であって、前記故障診断機能及び前記劣化診断機能は、同じ変数値を用いて実施されるよう構成されており、前記故障診断機能に用いられる前記変数値が第1閾値より大きいときに前記制御ユニットは前記電源が故障したと推定又は検知し、前記劣化診断機能に用いられる前記変数値が第2閾値より小さいときに前記制御ユニットは前記電源が故障したと推定又は検知
することを要旨とする。
【0028】
第23の特徴は、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷を含む吸引成分生成装置を制御する方法であって、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が前記電源の放電終止電圧よりも低い場合に前記電源の故障を推定又は検知する故障診断機能を実行するステップと、前記電源の充電中に前記電源の電圧値が前記電源の放電終止電圧よりも高い場合に前記電源の劣化を推定又は検知する劣化診断機能を実行するステップと、を含むことを要旨とする。
【0029】
第24の特徴は、第19の特徴又は第23の特徴における方法を吸引成分生成装置に実行させるプログラムであることを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、一実施形態に係る吸引成分生成装置の模式図である。
図2図2は、一実施形態に係る霧化ユニットの模式図である。
図3図3は、一実施形態に係る吸引センサの構成の一例を示す模式図である。
図4図4は、吸引成分生成装置のブロック図である。
図5図5は、霧化ユニット及び電装ユニットの電気回路を示す図である。
図6図6は、充電器が接続された状態の充電器及び電装ユニットの電気回路を示す図である。
図7図7は、吸引成分生成装置の給電モードにおける制御方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、電源から負荷へ供給される電力量の制御の例を示すグラフである。
図9図9は、第1診断処理のフローチャートの一例を示す図である。
図10図10は、第1診断機能における既定の電圧範囲を説明するための図である。
図11図11は、充電器のプロセッサによる制御方法の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、充電モードにおける制御ユニットの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、充電中において、正常な電源と劣化又は故障した電源の電圧の上昇を説明するための図である。
図14図14は、電圧センサのブロックを示す図である。
図15図15は、電圧センサの既定の相関の較正に関する処理を示すフローチャートである。
図16図16は、電圧センサの既定の相関の較正の一例を示す図である。
図17図17は、電圧センサの既定の相関の較正の別の一例を示す図である。
図18図18は、別の実施例に係る電圧センサのブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下において、実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。
【0032】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合があることは勿論である。
【0033】
[開示の概要]
装置の安全性やより高精度な制御のため、充放電可能な電源の劣化を推定又は検出する
ことは重要である。しかしながら、電源の劣化状態を正確に診断することは難しい。特に複雑な制御回路を有しない吸引成分生成装置においては、複雑な電気制御は困難であり、電源の劣化状態を推定又は検出する試みはされていない。
【0034】
充放電可能な電源は、一般に、電源の電圧値が放電終止電圧よりも低い範囲にならないよう制御される。しかしながら、自然放電や暗電流に起因して、電源の電圧が、過放電領域、又は過放電領域よりも低い電圧範囲の深放電領域まで降下することがある。電源の電圧値が放電終止電圧未満になった状態で電源を放置すると、電源の劣化が著しく進行する。したがって、電源の電圧が放電終止電圧未満となった場合に、電源がダメージを負ったかどうかを判別することが望ましい。
【0035】
一態様に係る吸引成分生成装置は、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、電源の電圧値を取得可能に構成された制御ユニットと、を含む。制御ユニットは、電源の充電中に電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、電源の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能に構成されている。
【0036】
一態様に係る吸引成分生成装置を制御する方法は、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷を含む吸引成分生成装置を制御する方法に関する。この方法は、電源の電圧値を取得するステップと、電源の充電中に電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、電源の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するステップと、を含む。
【0037】
電源の充電量に対する電源の電圧値の上昇分は、電源の劣化に応じて変化する。したがって、電源の充電中に電源の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、電源の劣化又は故障を推定又は検知することができる。
【0038】
上記態様によれば、電源の電圧値と充電時間とから電源の劣化又は故障を推定又は検知することができるため、他の追加のセンサが不要となるメリットが得られる。すなわち、最小限のセンサの種類で電源の劣化と故障のうち少なくとも一方が推定又は検知可能である。もっとも、吸引成分生成装置は、電源の電圧値及び充電時間とは異なる他のパラメータを取得する他の追加のセンサを含んでいてもよい。
【0039】
別の態様に係る吸引成分生成装置は、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷と、電源の電圧値を取得可能に構成された制御ユニットと、を含む。制御ユニットは、電源の充電中に電源の電圧値が電源の放電終止電圧よりも低い場合に電源の故障を推定又は検知する故障診断機能を実行可能に構成されている。さらに、制御ユニットは、電源の充電中に電源の電圧値が電源の放電終止電圧よりも高い場合に電源の劣化を推定又は検知する劣化診断機能を実行可能に構成されている。
【0040】
別の態様に係る吸引成分生成装置を制御する方法は、電源からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷を含む吸引成分生成装置を制御する方法に関する。この方法は、電源の充電中に電源の電圧値が電源の放電終止電圧よりも低い場合に電源の故障を推定又は検知する故障診断機能を実行するステップと、電源の充電中に電源の電圧値が電源の放電終止電圧よりも高い場合に電源の劣化を推定又は検知する劣化診断機能を実行するステップと、を含む。
【0041】
上記態様によれば、放電終止電圧よりも低い電圧値において故障診断機能が実行され、放電終止電圧よりも高い電圧値において劣化診断機能が実行されるため、深放電状態に起因する電源の故障と、電源の故障にまで至らない電源の劣化とを、区別して検出すること
ができる。これにより、例えば、電源の故障と劣化のそれぞれにおいて、異なる制御(保護制御)を動作させることが可能となる。
【0042】
[第1実施形態]
(吸引成分生成装置)
以下において、第1実施形態に係る吸引成分生成装置について説明する。図1は、一実施形態に係る吸引成分生成装置を示す分解図である。図2は、一実施形態に係る霧化ユニットを示す図である。図3は、一実施形態に係る吸引センサの構成の一例を示す模式図である。図4は、吸引成分生成装置の電気的構成を示すブロック図である。図5は、霧化ユニット及び電装ユニットの電気回路を示す図である。図6は、充電器が接続された状態の充電器及び電装ユニットの電気回路を示す図である。
【0043】
吸引成分生成装置100は、燃焼を伴わずに吸引成分(香喫味成分)を吸引するための非燃焼型の香味吸引器であってよい。吸引成分生成装置100は、非吸口端E2から吸口端E1に向かう方向である所定方向Aに沿って延びる形状を有していてよい。この場合、吸引成分生成装置100は、吸引成分を吸引する吸口141を有する一方の端部E1と、吸口141とは反対側の他方の端部E2と、を含んでいてよい。
【0044】
吸引成分生成装置100は、電装ユニット110及び霧化ユニット120を有していてよい。霧化ユニット120は、電装ユニット110に対して機械的な接続部分111,121を介して着脱可能に構成されていてよい。霧化ユニット120と電装ユニット110とが互いに機械的に接続されたときに、霧化ユニット120内の後述する負荷121Rは、電気的な接続端子110t,120tを介して、電装ユニット110に設けられた電源10に電気的に接続される。すなわち、電気的な接続端子110t,120tは、負荷121Rと電源10を電気的に断接可能な接続部を構成する。
【0045】
霧化ユニット120は、ユーザにより吸引される吸引成分源と、電源10からの電力により吸引成分源を気化又は霧化する負荷121Rと、を有する。吸引成分源は、エアロゾルを発生するエアロゾル源、及び/又は香味成分を発生する香味源を含んでいてよい。
【0046】
負荷121Rは、電力を受けることによってエアロゾル源及び/又は香味源からエアロゾル及び/又は香味成分を発生させることができる素子であればよい。例えば、負荷121Rは、ヒータのような発熱素子、又は超音波発生器のような素子であってよい。発熱素子としては、発熱抵抗体、セラミックヒータ、及び誘導加熱式のヒータ等が挙げられる。
【0047】
以下では、図1及び図2を参照しつつ、霧化ユニット120のより詳細な一例について説明する。霧化ユニット120は、リザーバ121Pと、ウィック121Qと、負荷121Rと、を有していてよい。リザーバ121Pは、液状のエアロゾル源又は香味源を貯留するよう構成されていてよい。リザーバ121Pは、例えば、樹脂ウェブ等材料によって構成される多孔質体であってよい。ウィック121Qは、リザーバ121Pから毛管現象を利用してエアロゾル源又は香味源を引き込む液保持部材であってよい。ウィック121Qは、例えば、ガラス繊維や多孔質セラミックなどによって構成することができる。
【0048】
負荷121Rは、ウィック121Qに保持されるエアロゾル源を霧化又は香味源を加熱する。負荷121Rは、例えば、ウィック121Qに巻き回される抵抗発熱体(例えば、電熱線)によって構成される。
【0049】
流入孔122Aから流入した空気は、霧化ユニット120の内の負荷121R付近を通過する。負荷121Rによって生成された吸引成分は、空気とともに吸口の方へ流れる。
【0050】
エアロゾル源は、常温で液体であってよい。例えば、エアロゾル源としては、グリセリンやプロピレングリコールといった多価アルコールや水などを用いることができる。エアロゾル源自身が香味成分を有していてもよい。或いは、エアロゾル源は、加熱することによって香喫味成分を放出するたばこ原料やたばこ原料由来の抽出物を含んでいてもよい。
【0051】
なお、上記実施形態では、常温で液体のエアロゾル源についての例を詳細に説明したが、この代わりに、エアロゾル源は、常温で固体のものを用いることもできる。
【0052】
霧化ユニット120は、交換可能に構成された香味ユニット(カートリッジ)130を備えていてもよい。香味ユニット130は、香味源を収容する筒体131を有する。筒体131は、膜部材133とフィルタ132とを含んでいてよい。膜部材133とフィルタ132とにより構成される空間内に香味源が設けられていてよい。
【0053】
霧化ユニット120は、破壊部90を含んでいてもよい。破壊部90は、香味ユニット130の膜部材133の一部を破壊するための部材である。破壊部90は、霧化ユニット120と香味ユニット130とを仕切るための隔壁部材126によって保持されていてよい。隔壁部材126は、例えば、ポリアセタール樹脂である。破壊部90は、例えば、円筒状の中空針である。中空針の先端を膜部材133に突き刺すことによって、霧化ユニット120と香味ユニット130とを空気的に連通する空気流路が形成される。ここで、中空針の内部には、香味源が通過しない程度の粗さを有する網目が設けられることが好ましい。
【0054】
好ましい実施形態の一例によれば、香味ユニット130内の香味源は、霧化ユニット120の負荷121Rによって生成されたエアロゾルに香喫味成分を付与する。香味源によってエアロゾルに付与される香味は、吸引成分生成装置100の吸口に運ばれる。このように、吸引成分生成装置100は、複数の吸引成分源を有していてよい。この代わりに、吸引成分生成装置100は、1つの吸引成分源のみを有していてもよい。
【0055】
香味ユニット130内の香味源は、常温で固体であってよい。一例として、香味源は、エアロゾルに香喫味成分を付与する植物材料の原料片によって構成される。香味源を構成する原料片としては、刻みたばこやたばこ原料のようなたばこ材料を粒状に成形した成形体を用いることができる。この代わりに、香味源は、たばこ材料をシート状に成形した成形体であってもよい。また、香味源を構成する原料片は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、ハーブ等)によって構成されてもよい。香味源には、メントールなどの香料が付与されていてもよい。
【0056】
吸引成分生成装置100は、使用者が吸引成分を吸引するための吸引口141を有するマウスピース142を含んでいてよい。マウスピース142は、霧化ユニット120又は香味ユニット130に着脱可能に構成されていてもよく、一体不可分に構成されていてもよい。
【0057】
電装ユニット110は、電源10、通知部40及び制御ユニット50を有していてよい。電源10は、香味吸引器100の動作に必要な電力を蓄える。電源10は、電装ユニット110に対して着脱可能であってよい。電源10は、例えばリチウムイオン二次電池のような再充電可能な電池であってよい。
【0058】
制御ユニット50は、例えばマイコンのような制御部51と、吸引センサ20と、押しボタン30と、を有していてよい。さらに、吸引成分生成装置100は、必要に応じて、電圧センサ150、電流センサ160及び温度センサ170を含んでいてよい。制御部51は、電圧センサ150、電流センサ160及び温度センサ170からの出力値に応じて
、吸引成分生成装置100の動作に必要な各種の制御を行う。例えば、制御部51は、電源10から負荷121Rへの電力の制御を行う電力制御部を構成していてもよい。
【0059】
霧化ユニット120が電装ユニット110に接続されたとき、霧化ユニット120に設けられた負荷121Rは、電装ユニット110の電源10と電気的に接続される(図5参照)。
【0060】
吸引成分生成装置100は、負荷121Rと電源10とを電気的に接続及び切断可能なスイッチ140を含んでいてよい。スイッチ140は、制御ユニット50によって開閉される。スイッチ140は、例えばMOSFETにより構成されていてよい。
【0061】
スイッチ140がONになると、電源10から負荷121Rへ電力が供給される。一方、スイッチ140がOFFになると、電源10から負荷121Rへ電力の供給が停止される。スイッチ140のON/OFFは、制御ユニット50によって制御される。
【0062】
制御ユニット50は、負荷121Rの動作を要求する信号を出力可能な要求センサを含んでいてよい。要求センサは、例えばユーザにより押される押しボタン30、又はユーザの吸引動作を検出する吸引センサ20であってよい。制御ユニット50は、負荷121Rへの動作要求信号を取得して負荷121Rを動作させるための指令を生成する。具体的一例では、制御ユニット50は、負荷121Rを動作させるための指令をスイッチ140へ出力し、この指令に応じてスイッチ140がONになる。このように、制御ユニット50は、電源10から負荷121Rへの給電を制御するよう構成されている。電源10から負荷121Rへ電力が供給されると、負荷121Rにより吸引成分源が気化又は霧化される。
【0063】
また、吸引成分生成装置100は、必要に応じて、電源10への充電電流を遮断又は低下させる停止部180を含んでいてよい。停止部180は、例えばMOSFETスイッチにより構成されていてよい。制御ユニット50は、停止部180をOFFにすることによって、電装ユニット110が充電器200に接続されていたとしても、電源10への充電電流を強制的に遮断又は低下させることができる。なお、専用の停止部180を設けなくても、制御ユニット50がスイッチ140をOFFにすることで、電源10への充電電流を強制的に遮断又は低下させてもよい。
【0064】
電圧センサ150は、電源10の電圧を出力するように構成されていてよい。制御ユニット50は電圧センサ150の出力値を得ることができる。すなわち、制御ユニット50は、電源10の電圧値を取得可能に構成されている。
【0065】
電流センサ160は、電源10から流出した電流量及び電源10に流入した電流量を検出可能に構成されていてよい。温度センサ170は、例えば電源10の温度を出力可能に構成されていてよい。制御ユニット50は、電圧センサ150、電流センサ160及び温度センサ170の出力を取得可能に構成されている。制御ユニット50は、これらの出力を用いて各種の制御を行う。
【0066】
吸引成分生成装置100は、必要に応じて、電源10を加温するヒータ70を有していてもよい。ヒータ70は、電源10の付近に設けられていてよく、制御ユニット50からの指令により動作可能に構成されている。
【0067】
吸引センサ20は、吸口からの吸引に応じて変動する出力値を出力するよう構成されていてよい。具体的には、吸引センサ20は、非吸口側から吸口側に向けて吸引される空気の流量(すなわち、ユーザのパフ動作)に応じて変化する値(例えば、電圧値又は電流値
)を出力するセンサであってよい。そのようなセンサとして、例えば、コンデンサマイクロフォンセンサや公知の流量センサなどが挙げられる。
【0068】
図3は、吸引センサ20の具体的一例を示している。図3に例示された吸引センサ20は、センサ本体21と、カバー22と、基板23と、を有する。センサ本体21は、例えば、コンデンサによって構成されている。センサ本体21の電気容量は、空気導入孔125から吸引される空気(すなわち、非吸口側から吸口側に向けて吸引される空気)によって生じる振動(圧力)によって変化する。カバー22は、センサ本体21に対して吸口側に設けられており、開口22Aを有する。開口22Aを有するカバー22を設けることによって、センサ本体21の電気容量が変化しやすく、センサ本体21の応答特性が向上する。基板23は、センサ本体21(コンデンサ)の電気容量を示す値(ここでは、電圧値)を出力する。
【0069】
吸引成分生成装置100、より具体的には電装ユニット110は、電装ユニット110内の電源10を充電する充電器200と接続可能に構成されていてよい(図6参照)。充電器200が電装ユニット110に接続されたとき、充電器200は電装ユニット110の電源10と電気的に接続される。
【0070】
電装ユニット110は、充電器200が接続されたか否かを判定する判定部を有していてよい。判定部は、例えば、充電器200が接続される一対の電気端子どうしの間の電位差の変化に基づき、充電器200の接続の有無を判定する手段であってよい。判定部は、この手段に限定されず、充電器200の接続の有無を判定することができれば、どのような手段であってもよい。
【0071】
充電器200は、電装ユニット110内の電源10を充電するための外部電源210を有する。充電器200を電気的に接続するための電装ユニット110の一対の電気端子110tは、負荷121Rを電気的に接続するための電装ユニット110の一対の電気端子を兼ねることができる。
【0072】
外部電源210が交流電源の場合、充電器200は、交流を直流に変換するインバータを有していてよい。充電器200は、電源10への充電を制御するプロセッサ250を含んでいてよい。さらに、充電器200は、必要に応じて、電流計230や電圧計240を有していてよい。電流計230は、充電器200から電源10へ供給する充電電流を取得する。電圧計240は、充電器200が接続される一対の電気端子間の電圧を取得する。充電器200のプロセッサ250は、電流計230及び/又は電圧計240からの出力値を用いて、電源10の充電を制御する。なお、充電器200は、インバータが出力する直流の電圧を取得する電圧センサや、インバータが出力する直流の電圧を昇圧及び/又は降圧可能なコンバータを、さらに有していてもよい。
【0073】
吸引成分生成装置100の構造を簡易化する目的では、充電器200のプロセッサ250は、電装ユニット110の制御ユニット50と通信不能に構成されていてもよい。すなわち、充電器200のプロセッサ250と制御ユニット50との間で通信を行うための通信用端子は不要である。換言すれば、充電器200との接続インターフェースにおいて、電装ユニット110が有する電気端子は、主正母線用と主負母線用の2つのみである。
【0074】
通知部40は、各種の情報をユーザに知らせるための通知を発する。通知部40は、例えばLEDのような発光素子であってよい。この代わりに、通知部40は、音を発生する素子、又はバイブレータであってもよい。
【0075】
通知部40は、電源10の電圧に基づき、少なくても電源10の残量が不足していない
場合と電源10の残量が不足している場合を使用者に通知するよう構成されていてよい。例えば、通知部40は、電源10の残量が不足している場合、電源10の残量が不足していない場合とは異なる通知を発する。電源10の残量の不足は、例えば電源10の電圧が放電終止電圧付近にあることによって判断することができる。
【0076】
(給電モード)
図7は、一実施形態に係る給電モードにおける制御方法を示すフローチャートである。給電モードは、電源10から負荷121Rへ給電可能なモードである。給電モードは、少なくとも電装ユニット110に霧化ユニット120が接続されている場合に実施可能である。
【0077】
制御ユニット50は、負荷の動作量に関連する値を計測するカウンタ(Co)を「0」に設定し(ステップS100)、負荷121Rへの動作要求信号を取得したかどうかを判断する(ステップS102)。動作要求信号は、吸引センサ20がユーザの吸引動作を検知したときに吸引センサ20から取得される信号であってよい。すなわち、制御ユニット50は、吸引センサ20によってユーザの吸引動作を検出したときに、スイッチ140に対するPWM(Pulse Width Modulation)制御を行えばよい(ステップS104)。この代わりに、動作要求信号は、押しボタン30が押されたことを検知したときに押しボタン30から取得される信号であってよい。すなわち、制御ユニット50は、ユーザによる押しボタンの押下を検出したときに、スイッチ140に対してPWM制御を行ってもよい(ステップS104)。なお、ステップS104においては、PWM制御に代えてPFM(Pulse Frequency Modulation)制御を行ってもよい。PWM制御におけるDUTY比や、PFM制御におけるスイッチング周波数は、電圧センサ150が取得する電源10の電圧などのさまざまなパラメータによって調整されてもよい。
【0078】
制御ユニット50によりスイッチ140に対してPWM制御が行われると、エアロゾルが発生する。
【0079】
制御ユニット50は、負荷121Rへの電力供給の終了タイミングを検知したかどうか判定する(ステップS106)。制御ユニット50は、終了タイミングを検知すると、負荷への電力供給を終了する(ステップS108)。制御ユニット50は、負荷への電力供給を終了すると(ステップS108)、負荷121Rの動作量に関連する値(ΔCo)を取得する(ステップS110)。ここで取得した負荷121Rの動作量に関連する値(ΔC
o)は、ステップS104~S108の間における値である。負荷121Rの動作量に関
連する値(ΔCo)は、例えば、所定の時間、すなわちステップS104~S108の間で負荷121Rに供給された電力量、負荷121Rの動作時間、又は当該所定の時間で消費された吸引成分源の消費量であってよい。
【0080】
次に、負荷121Rの動作量に関連する値の累積値「Co=Co+ΔCo」を取得する(ステップS112)。その後、制御ユニット50は、必要に応じて、第1診断機能(ステップS114)を実行する。
【0081】
負荷121Rへの電力供給の終了タイミングは、吸引センサ20が負荷121Rの使用のための操作の終了を検知したタイミングであってもよい。例えば、負荷121Rへの電力供給の終了タイミングは、ユーザによる吸引動作の終了を検知したタイミングであってよい。この代わりに、負荷121Rへの電力供給の終了タイミングは、押しボタン30の押下の解除を検知したタイミングであってもよい。さらに、負荷121Rへの電力供給の終了タイミングは、負荷121Rへの電力供給の開始から所定のカットオフ時間が経過したことを検知したタイミングであってよい。所定のカットオフ時間は、一般的なユーザが
1回の吸引動作に要する期間に基づき予め設定されていてよい。例えば、所定のカットオフ時間は、1~5秒、好ましくは1.5~3秒、より好ましくは1.5~2.5秒の範囲であってよい。
【0082】
制御ユニット50が負荷121Rへの電力供給の終了タイミングを検知しなかった場合、制御ユニット50は再びスイッチ140に対してPWM制御を実行し、負荷121Rへの電力供給を続ける(ステップS104)。その後に制御ユニット50が負荷121Rへの電力供給の終了タイミングを検知したら、負荷121Rの動作量に関連する値を取得し(ステップS110)、負荷121Rの動作量に関する値の累積値を導出する(ステップS112)。
【0083】
これにより、負荷への電力供給が終了したときに(ステップS108)、制御ユニット50は、負荷への動作要求信号の取得から負荷121Rへの電力供給の終了タイミングまで、すなわち1回のパフ動作における負荷121Rの動作量に関する値を取得できる。1回のパフ動作における負荷121Rの動作量は、例えば、1回のパフ動作で負荷121Rへ供給した電力量であってもよい。この代わりに、1回のパフ動作における負荷121Rの動作量は、例えば、1回のパフ動作における負荷121Rの動作時間であってよい。負荷121Rの動作時間は、1回のパフ動作において負荷121Rへ供給した電力パルス(図8も参照)の総和であってもよく、1回のパフ動作に要する時間、すなわち負荷121Rへの動作要求信号を取得してから、負荷121Rへの電力供給の終了タイミングを検知するまでの時間であってもよい。さらに、1回のパフ動作における負荷121Rの動作量は、1回のパフ動作で消費された吸引成分源の消費量であってもよい。吸引成分源の消費量は、例えば負荷121Rへ供給された電力量から推定することができる。また、吸引成分源が液体である場合、吸引成分源の消費量は、リザーバ内に残っている吸引成分源の重量又は、吸引成分源の液面の高さを計測するセンサによって取得することができる。さらに、1回のパフ動作における負荷121Rの動作量は、負荷121Rの温度、例えば1回のパフ動作における負荷121Rの最高温度、又は負荷121Rで発生した熱量であってもよい。負荷121Rの温度や熱量は、例えば温度センサを用いることによって取得又は推定することができる。
【0084】
図8は、電源10から負荷121Rへ供給される電力量の制御の例を示すグラフである。図8は、吸引センサ20の出力値と、負荷121Rへの供給電圧の関係を示している。
【0085】
吸引センサ20は、吸口141からの吸引に応じて変動する出力値を出力するよう構成されている。吸引センサ20の出力値は、図8に示すように香味吸引器内の気体の流速や流量に応じた値(例えば、吸引成分生成装置100内の圧力変化を示す値)であってよいが、これに限定されるわけではない。
【0086】
吸引センサ20が吸引に応じて変動する出力値を出力する場合、制御ユニット50は、吸引センサ20の出力値に応じて吸引を検知するよう構成されていてよい。例えば、制御ユニット50は、吸引センサ20の出力値が第1所定値O1以上になったときに、ユーザによる吸引動作を検知するように構成されていてよい。したがって、制御ユニット50は、吸引センサ20の出力値が第1所定値O1以上になったときに、負荷121Rへの動作要求信号を取得したと判断すればよい(ステップS102)。一方、制御ユニット50は、吸引センサ20の出力値が第2所定値O2以下になったときに、負荷121Rへの電力供給の終了タイミングを検知したと判断すればよい(ステップS106)。このように、制御ユニット50は、吸引センサ20の出力に基づき、負荷121Rの動作量に関連する値、例えば1回のパフ動作で負荷121Rへ電力の供給する総時間を導出可能に構成されていてよい。より具体的には、制御ユニット50は、検知した吸引の期間又は吸引量の少なくとも一方に基づき、負荷121Rの動作量に関連する値を導出可能に構成されている
【0087】
ここで、制御ユニット50は、吸引センサ20の出力値の絶対値が第1所定値(所定の閾値)O1以上の場合のみ吸引を検知するよう構成されている。これにより、吸引センサ20のノイズにより負荷121Rを動作してしまうことを抑制することができる。また、負荷121Rへの電力供給の終了タイミングを検知するための第2所定値O2は、既に負荷121Rが動作している状態から動作していない状態への遷移を実行するための値であることから、第1所定値O1よりも小さくてもよい。これは、第1所定値O1のように吸引センサ20のノイズを拾うことによる誤動作、すなわち負荷121Rが動作していない状態から動作している状態への遷移が生じ得ないからである。
【0088】
さらに、制御ユニット50は、電源10から負荷121Rへ供給される電力量を制御する電力制御部を有していてもよい。電力制御部は、例えば、電源10から負荷121Rへ供給する電力量を、パルス幅変調(PWM)制御によって調整する。パルス幅に関するデューティ比は、100%よりも小さい値であってよい。なお、電力制御部は、パルス幅制御に代えてパルス周波数変調(PFM)制御によって、電源10から負荷121Rへ供給する電力量を制御してもよい。
【0089】
例えば電源10の電圧値が比較的高い場合、制御ユニット50は、負荷121Rへ供給する電圧のパルス幅を狭くする(図8の中段のグラフ参照)。例えば電源10の電圧値が比較的低い場合、制御ユニット50は、負荷121Rへ供給する電圧のパルス幅を広くする(図8の下段のグラフ参照)。パルス幅の制御は、例えば、スイッチ140のONから、スイッチ140のOFFまでの時間を調節することによって実施できる。電源10の電圧値は、電源の充電量の減少とともに減少するため、電圧値に応じて電力量を調整すればよい。このように制御ユニット50がパルス幅変調(PWM)制御を実行すれば、電源10の電圧が比較的高い場合と比較的低い場合の双方において、負荷121Rに供給される電圧の実効値は同程度となる。
【0090】
前述したように、電力制御部は、電源10の電圧値が低くなるほど大きいデューティ比を有するパルス幅変調(PWM)制御で、負荷121Rに印加する電圧を制御するように構成されていることが好ましい。これにより、電源10の残量にかかわらず、パフ動作中に生成されるエアロゾル量を略均一化することができる。より好ましくは、電力制御部は、負荷121Rへ供給した1パルスあたりの電力量が一定になるように、パルス幅変調(PWM)制御のデューティ比を制御することが好ましい。
【0091】
(第1診断機能)
図9は、第1診断機能のフローチャートの一例を示している。第1診断機能は、電源10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するための処理である。図10は、第1診断機能における既定の電圧範囲を説明するための図である。
【0092】
具体的には、制御ユニット50は、まず、電源10の電圧(Vbatt)を取得する(ステップS200)。電源10の電圧(Vbatt)は、電圧センサ150を利用することによって取得することができる。電源10の電圧は、電源10に負荷121Rを電気的に接続することなく取得される開回路電圧(OCV,Open Circuit Voltage)であってもよく、電源10に負荷121Rを電気的に接続して取得される閉回路電圧(CCV,Closed Circuit Voltage)であってもよい。ただし、負荷121Rの電気的接続に伴う電圧降下や放電に伴う内部抵抗や温度の変化の影響を排除するため、電源10の電圧は、閉回路電圧(CCV)よりも開回路電圧(OCV)によって規定されることが好ましい。開回路電圧(OCV)は、スイッチ140をOFF
にした状態で電源10の電圧を取得することによって得られる。なお、開回路電圧(OCV)を電圧センサ150を利用して取得せずとも、公知の様々な手法によって、閉回路電圧(CCV)から開回路電圧(OCV)を推定してもよい。
【0093】
次に、制御ユニット50は、取得した電源10の電圧が既定の電圧範囲の上限値以下であるかどうか判断する(ステップS202)。電源10の電圧が既定の電圧範囲の上限値より高い場合、電源の劣化と故障を推定又は検知することなく処理を終了する。
【0094】
電源10の電圧が既定の電圧範囲の上限値以下の場合、一回前、すなわち一回前のパフ動作時に取得された電源の電圧値が前述の既定の電圧範囲の上限値以下であったかどうか判断する(ステップS204)。一回前、すなわち一回前のパフ動作時に取得された電源10の電圧値が前述の既定の電圧範囲の上限値より高い場合、最新のパフ動作により初めて電源10の電圧値が前述の既定の電圧範囲の上限値以下になったと判断できる。この場合、負荷121の動作量に関連する値の累積値をカウントする累積カウンタ(ICо)を「0」に設定する(ステップS206)。累積カウンタ(ICо)を「0」に設定すると、以下のステップS208にすすむ。
【0095】
一回前、すなわち一回前のパフ動作時に取得された電源の電圧値が前述の既定の電圧範囲の上限値以下であった場合(ステップS204)、又は累積カウンタ(ICо)を「0」に設定した場合(ステップS206)、電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限値未満であるかどうか判断する(ステップS208)。
【0096】
電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限値以上であった場合、負荷121Rの動作量に関連する値の積算値「ICо=ICо+Cо」を導出する(ステップS210)。ここで、「Cо」は、図7に示すステップS112で累積的に取得した値である。それから、電源10の劣化又は故障を推定又は検知することなく処理を終了する。
【0097】
この処理を終了すると、制御ユニット50は、再び負荷121Rへの動作要求信号を取得するまで待機する(図7のステップS102)。制御ユニット50は、再び負荷121Rへの動作要求信号を取得すると、1回のパフ動作における負荷121Rの動作量に関連する値(Cо)を導出し、再び第1診断機能S114をスタートする。
【0098】
第1診断機能において電源10の電圧が既定の電圧範囲にある場合、制御ユニット50は、負荷121Rの動作量に関連する値を積算する(ステップS210)。これにより、制御ユニット50は、取得した電源10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値を取得することができる。
【0099】
ステップS208において、電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限値未満であった場合、取得した電源10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値、すなわち前述したICоの積算値が、既定の閾値より大きいかどうか判断する(ステップS220)。前述したICоの積算値が既定の閾値より大きい場合、電源10が正常であると判断し、第1診断機能の処理を終了する。
【0100】
前述したICоの積算値が既定の閾値以下である場合、電源10の劣化又は故障と判断し(ステップS220)、制御ユニット50は通知部40を通じてユーザに異常を通知する(ステップS224)。通知部40は、所定の光、音又は振動によってユーザに電源10の劣化又は故障を通知することができる。また、制御ユニット50は、電源10の劣化又は故障と判断すると、必要に応じて負荷121Rへの電力供給を不能にするよう制御してもよい。なお、本実施形態においては、電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限値未満と判断された場合(ステップS208)、負荷121Rの動作量に関連する値の積算値I
Cоに、負荷121Rの動作量に関連する値Cоを加算しない。換言すれば、ステップS208が肯定的と判断された場合には、ステップS210は実行されない。これに代えて、電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限値未満と判断された場合(ステップS208)、負荷121Rの動作量に関連する値の積算値ICоに、負荷121Rの動作量に関連する値Cоを加算してもよい。換言すれば、ステップS208が肯定的と判断された場合にも、ステップS210と同様のステップが実行されてもよい。この場合には、ステップS210と同様の当該ステップは、ステップS220の前に実行することができる。
【0101】
図10に示すように、電源10が劣化すると、負荷の動作量に関連する値、例えば負荷121への電力量又は負荷121の動作時間等の増加とともに、電源10の電圧は急速に低下する。したがって、電源10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値は、電源の劣化とともに低下する。このことは、図10において「Q1<Q2」という関係によって示されている。なお、図10におけるQ1は電源10が劣化品である場合に、電圧10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値である。一方、図10におけるQ2は電源10が新品である場合に、電圧10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値である。よって、前述したように、制御ユニット50は、電源10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき、電源10の劣化を推定又は検知可能である。なお、電源10が故障すると電源10が劣化した場合と同様に、負荷の動作量に関連する値、例えば負荷121Rへの電力量又は負荷121の動作時間等の増加とともに、電源10の電圧は急速に低下する。よって、制御ユニット50は、電源10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき、電源10の故障を推定又は検知可能である。つまり、制御ユニット50は、電源10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能である。
【0102】
ステップS220で用いられる既定の閾値は、電源10の種類に応じて、予め実験により定めればよい。この既定の閾値は、新品の電源10が既定の電圧範囲において動作可能な負荷121Rの動作量に関連する値よりも低く設定される。
【0103】
負荷121Rの動作量に関連する値は、前述したように、負荷121Rに供給された電力量、負荷121Rの動作時間、又は吸引成分源の消費量等であってよい。
【0104】
ここで、前述したように負荷121Rへ供給する電力のパルス幅変調(PWM)制御が、電圧計150が取得した電源10の電圧に基づいて行われる場合、負荷121Rの動作量に関連する値は、負荷121Rの動作時間であることがより好ましい。この場合、負荷121Rの動作時間は、1回のパフ動作に要する時間、すなわち負荷121Rへの動作要求信号を取得してから、負荷121Rへの電力供給の終了タイミングを検知するまでの時間である。パルス幅変調(PWM)制御によって、単位時間あたりの負荷121Rへの電力供給量は均一化されているため、負荷121Rの動作時間は、既定の電圧範囲において負荷121Rへ供給した総電力量に比例する。したがって、負荷121Rへ供給する電力のパルス幅変調(PWM)制御が行われる場合、負荷121Rの動作量に関連する値を負荷121Rの動作時間で規定することにより、比較的簡単な制御で高精度な電源10の診断が可能になる。
【0105】
前述した例の代わりに、負荷121Rの動作量に関連する値は、既定の電圧範囲に動作した負荷121Rの動作回数であってもよい。この場合、図7のフローチャートにおいてステップS110及びS112は不要である。そして、図9のフローチャートにおいて、電源10の電圧が既定の電圧範囲に入った回数をカウントすればよい。具体的には、ステ
ップS210において、「ICо=ICо+Cо」を「ICо=ICо+1」に置き換えればよい。
【0106】
さらに、前述した例の代わりに、負荷121Rの動作量に関連する値は、吸引成分源を含む交換可能なカートリッジ、例えば香味ユニット130の交換回数であってもよい。電源10の充電が消費されるまでの間に、カートリッジを複数回交換する必要がある吸引成分生成装置100では、負荷121Rの動作量に関連する値としてカートリッジの交換回数を利用することもできる。
【0107】
制御ユニット50は、電源10の温度が第1温度閾値より低い場合に、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するためのアルゴリズム、すなわち図9に示す第1診断機能を実行するアルゴリズムを変更又は修正可能に構成されていてよい。具体的には、制御ユニット50は、ステップS220における既定の閾値を小さくなるように修正し、修正した閾値に基づきステップS220における比較を行うことが好ましい。第1温度閾値は、例えば1~5℃の範囲に設定されていてよい。
【0108】
電源10の温度が低い場合、電源10の内部抵抗(インピーダンス)が増大することが知られている。これにより、劣化していない電源10であっても、既定の電圧範囲にある間に動作する負荷121Rの動作量は低下する。したがって、電源10の温度が低い場合、ステップS220における既定の閾値を小さくなるように修正することで、温度の影響を緩和し、電源10の劣化又は故障の検知の精度が低下することを抑制することができる。
【0109】
また、制御ユニット50は、電源10の温度が第2温度閾値より低い場合、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方の推定又は検知を実行しないように構成されていてよい。すなわち、電源10の温度が第2温度閾値より低い場合、制御ユニット50は、図9に示す第1診断機能を実行しなくてもよい。ここで、第2温度閾値は、第1温度閾値よりも小さくてもよい。第2温度閾値は、例えば-1~1℃の範囲に設定されていてよい。
【0110】
さらに、制御ユニット50は、電源10の温度が第3温度閾値より低い場合、ヒータ70の制御により電源10を加温してもよい。電源10の温度が低い場合、電源10の温度を上昇させることにより、電源10の劣化又は故障の検知の精度が低下することを抑制することができる。第3温度閾値は、例えば-1~1℃の範囲に設定されていてよい。
【0111】
(第1診断機能における既定の電圧範囲)
第1診断機能において用いられる既定の電圧範囲について図10を用いてさらに説明する。既定の電圧範囲は、放電終止電圧から満充電電圧の間の所定の区間(電圧範囲)であってよい。したがって、第1診断機能は、電源10の電圧値が放電終止電圧未満では実行されない。
【0112】
既定の電圧範囲は、電源10の蓄電量又は充電状態の変化に対する電源10の電圧値の変化が他の電圧範囲と比較して小さいプラトー範囲を除く範囲に設定されることが好ましい。プラトー範囲は、例えば充電状態(SOC)の変化に対する電源10の電圧の変化量が0.01~0.005(V/%)以下の電圧範囲によって既定される。
【0113】
プラトー範囲は、比較的小さい電圧範囲内で多くの蓄電容量を有するため、比較的小さい電圧範囲内で負荷121Rの動作に関する値が大きく変動し得る。そのため、前述した第1診断機能において誤検知を生じる可能性が高まる。したがって、既定の電圧範囲はプラトー範囲を除く範囲に設定されることが好ましい。
【0114】
既定の電圧範囲が設定されないプラトー範囲は、新品状態の電源10の蓄電量又は充電状態の変化に対する電源10の電圧値の変化が他の電圧範囲と比較して小さいプラトー範囲と、劣化状態の電源10の蓄電量又は充電状態の変化に対する電源10の電圧値の変化が他の電圧範囲と比較して小さいプラトー範囲と、の両方を含む範囲によって規定されていてよい。これにより、新品状態の電源10と劣化状態の電源10の両方に対して、誤検知を生じる可能性を低くすることができる。
【0115】
また、第1診断機能は、複数の既定の電圧範囲で実施されてもよい。複数の既定の電圧範囲は互いに重複しないことが好ましい。制御ユニット50は、それぞれの既定の電圧範囲において、図9に示すフローチャートと全く同じフローで第1診断機能を実施できる。
【0116】
図10に示す例では、3つの既定の電圧範囲(第1区間、第2区間及び第3区間)が設定されている。一例では、第1区間の上限値は4.1Vであり、第1区間の下限値は3.9Vであってよい。第2区間の上限値は3.9Vであり、第2区間の下限値は3.75Vであってよい。第3区間の上限値は3.75Vであり、第3区間の下限値は3.7Vであってよい。
【0117】
制御ユニット50は、複数の既定の電圧範囲のそれぞれにおいてステップS220の比較を行い、前記複数の既定の電圧範囲のうち少なくとも1つの電圧範囲において負荷121Rの動作量に関連する値が前述した既定の閾値(ステップS220参照)以下の場合に、電源10が劣化又は故障したと判断すればよい。
【0118】
複数の既定の電圧範囲は、電源10の蓄電量又は充電状態の変化に対する電源10の電圧値の変化が小さい電圧範囲ほど狭く設定されていることが好ましい。これにより、それぞれの既定の電圧範囲において動作する負荷121Rの動作量に関連する値が均一化するため、各既定の電圧範囲で実施される第1診断機能の精度が均一化させることになる。
【0119】
さらに、制御ユニット50は、複数の既定の電圧範囲のうち1以上の既定の電圧範囲を包含する特定の電圧範囲においても、電源10の電圧値が当該特定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能に構成されていてよい。具体的には、制御ユニット50は、例えば、図10に示す第1区間、第2区間及び第3区間のうちの少なくとも2つ、好ましくは3つの区間を含む電圧範囲を特定の電圧範囲と設定し、図9に示す診断機能を実行してもよい。
【0120】
複数の既定の電圧範囲のうち互いに隣接する2以上の既定の電圧範囲を包含する特定の電圧範囲において図9に示す診断機能を実行する場合、ステップS220で用いられる既定の閾値は、それぞれの既定の電圧範囲で実行される図9に示すフローチャートのステップS220で用いられる既定の閾値の総和よりも小さいことが好ましい。例えば、第1区間、第2区間及び第3区間を含む全体区間で図9に示すフローチャートを実行する場合におけるステップS220で用いられる既定の閾値は、第1区間、第2区間及び第3区間のそれぞれで図9に示すフローチャートを別々に実行する場合におけるステップS220で用いられる既定の閾値の総和よりも小さくてよい。これにより、電源10の状態や吸引成分生成装置100の使い方によって第1区間、第2区間及び第3区間のそれぞれでは電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知できない場合であっても、全体区間で電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知できることがある。したがって、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方の推定又は検知の精度を向上できる。
【0121】
(第1診断機能のイレギュラー処理)
電源10の充電によって電源10が既定の電圧範囲の下限より大きく、既定の電圧範囲の上限よりも小さい値まで充電されたとき、典型的には満充電電圧まで充電されないとき、既定の電圧範囲全体において動作した負荷121Rの動作量に関連する値を取得することができないため、前述した図9に示す第1診断機能が正常に機能しないことがある。
【0122】
また、負荷121Rによって吸引成分源の気化又は霧化が行われてから長期間が経過すると、電源10が暗電流などによって自然放電し、電源10の電圧が自然に低下することがある。このような場合、前述した既定の電圧範囲に対して、吸引成分源の気化又は霧化に寄与した電圧範囲は、100%とはならず、既定の割合又は広さ以下となることがある。例えば、吸引成分源の気化又は霧化が行われることによって電源10の電圧が3.9Vから3.8Vに低下し、それから長時間放置することによって電源10の電圧が3.65Vになったと仮定する。この場合、既定の電圧範囲(図10の第2区間)に対して、吸引成分源の気化又は霧化に寄与した電圧範囲は、約40%となる。このように電源10の電圧が吸引成分源の気化又は霧化とは関係なく大幅に低下した場合、前述した図9に示す第1診断機能が正常に機能しないことがある。
【0123】
このような長時間放置は、負荷121Rによって吸引成分源の気化又は霧化が行われてからの経過時間を計時し、この経過時間に基づき検知することができる。すなわち、制御ユニット50は、図7のステップS108のところで、経過時間をカウントするタイマをスタートすればよい。この代わりに、長時間放置は、負荷121Rによって吸引成分源の気化又は霧化が行われてからの電源10の電圧変化に基づき検知することもできる。この場合、制御ユニット50は、図9のステップS200のところで、現在の電源10の電圧と、その前に取得された電源10の電圧との差分を取得すればよい。電圧の差分が所定の値を超えると、制御ユニット50は、長時間放置があったと判断することができる。
【0124】
したがって、前述したように、第1診断機能が正常に機能しないような状況が起きた場合、第1診断機能のアルゴリズムを修正するか、第1診断機能を実施しないことが好ましい。
【0125】
例えば、制御ユニット50は、既定の電圧範囲における吸引成分源の気化又は霧化に寄与した範囲が既定の割合又は広さ以下の場合に、既定の電圧範囲における電源10の劣化又は故障の判断を行わないことが好ましい。これにより、中途半端な充電や自然放電等により、既定の電圧範囲全体において動作した負荷121Rの動作量に関連する値を取得することができない場合に、制御ユニット50が第1診断機能で誤検知することを防止することができる。
【0126】
この代わりに、制御ユニット50は、既定の電圧範囲における吸引成分源の気化又は霧化に寄与した範囲が既定の割合又は広さ以下の場合に、図9に示すステップS220における既定の閾値を小さく修正してもよい。例えば、既定の電圧範囲における吸引成分源の気化又は霧化に寄与した範囲に応じて、既定の閾値を小さく修正することで、第1診断機能の誤検知を抑制しつつ第1診断機能を実行することができる。
【0127】
また、前述したように、複数の既定の電圧範囲で第1診断機能を実行する場合には、制御ユニット50は、複数の既定の電圧範囲のうち、吸引成分源の気化又は霧化に寄与した範囲が既定の割合又は広さ以下であるイレギュラー範囲においては電源の劣化又は故障の判断を行わなくてもよい。すなわち、それぞれの既定の電圧範囲(例えば、第1区間、第2区間又は第3区間)において、中途半端な充電や自然放電等により、負荷121Rの動作量に関連する値を十分に取得することができない区間(イレギュラー範囲)では、制御ユニット50は電源の劣化又は故障の判断を行わない。
【0128】
この場合であっても、制御ユニット50は、複数の既定の電圧範囲のうち1以上の既定の電圧範囲を包含する特定の電圧範囲において、電源10の電圧値が当該特定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知してよい。この場合、1以上の既定の電圧範囲を包含する特定の電圧範囲は、イレギュラー範囲を除外して設定されることが好ましい。
【0129】
例えば、図10に示す例において、電源10の電圧が4.05Vになるまで電源10が充電された場合、第1区間では第1診断機能を実行しなくてもよい。この場合、第2区間及び第3区間を合わせた区間(3.7V~3.9V)の電圧範囲で動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知してよい。
【0130】
この場合、第1区間及び第2区間を合わせた区間の電圧範囲で動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき第1診断機能をする場合におけるステップS220で用いられる既定の閾値は、第1区間、第2区間及び第3区間を合わせた全体区間の電圧範囲で動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき第1診断機能をする場合におけるステップS220で用いられる既定の閾値(特定の閾値)から、第3区間の電圧範囲で動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき第1診断機能をする場合におけるステップS220で用いられる既定の閾値以下の値を減算することによって構成されていてもよい。
【0131】
さらに、前述したように、複数の既定の電圧範囲にイレギュラー範囲が存在する場合、イレギュラー範囲を含むより広い範囲、例えば全体区間(第1区間、第2区間及び第3区間)で第1診断機能を実行する場合に、ステップS220で用いられる既定の閾値を小さく修正してもよい。
【0132】
制御ユニット50は、既定の電圧範囲において長時間放置後に吸引成分源の気化又は霧化に寄与した電源10の電圧に基づいて、当該既定の電圧範囲の下限値と既定の閾値の少なくとも一方を修正してもよい。一例として、制御ユニット50は、当該既定の電圧範囲の下限値を小さくなるように(0Vに近づけるように)修正して、既定の閾値を修正することなく、当該既定の電圧範囲で第1診断機能を実行してもよい。また別の一例として、制御ユニット50は、当該既定の電圧範囲の下限値を修正することなく、既定の閾値を小さくなるように修正して、当該既定の電圧範囲で第1診断機能を実行してもよい。また別の一例として、制御ユニット50は当該既定の電圧範囲の下限値と既定の閾値の双方を修正して、当該既定の電圧範囲で第1診断機能を実行してもよい。
【0133】
なお、制御ユニット50は、既定の電圧範囲において長時間放置後に吸引成分源の気化又は霧化に寄与した電源10の電圧と、当該電圧からこの既定の電圧範囲の下限値まで電源10の電圧が降下するまでに動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づいて、新たな既定の電圧範囲とこれに対応する図9に示すステップS220における既定の閾値を設定してもよい。この新たに設定された既定の電圧範囲は、次回の充電以降における第1診断機能で用いられることになる。
【0134】
制御ユニット50は、既定の電圧範囲において長時間放置後に吸引成分源の気化又は霧化に寄与した電源10の電圧に基づいて、当該既定の電圧範囲の下限値と既定の閾値の少なくとも一方を修正してもよい。一例として、制御ユニット50は、当該既定の電圧範囲の下限値を小さくなるように(0Vに近づけるように)修正して、既定の閾値を修正することなく、当該既定の電圧範囲で第1診断機能を実行してもよい。また別の一例として、制御ユニット50は、当該既定の電圧範囲の下限値を修正することなく、既定の閾値を小さくなるように修正して、当該既定の電圧範囲で第1診断機能を実行してもよい。また別
の一例として、制御ユニット50は当該既定の電圧範囲の下限値と既定の閾値の双方を修正して、当該既定の電圧範囲で第1診断機能を実行してもよい。
【0135】
また、吸引成分生成装置100の未使用時、例えば負荷121Rが動作していない間においても、制御ユニット50は、電源10の電圧を監視し続けていてよい。この場合、制御ユニット50は、自然放電などの吸引成分源の気化又は霧化に寄与しないで、電源10の電圧が既定の電圧範囲の上限値を下回った場合でも、前述したような図9に示すステップS220における既定の閾値の補正などを行いつつ、第1診断機能を実行してもよい。
【0136】
この代わりに、制御ユニット50は、吸引成分源の気化又は霧化に寄与しないで電源10の電圧が降下した時間を積算した積算値を取得してもよい。この積算値を、所定の関係に基づいて負荷121Rの動作量に関連する値に変換すれば、前述したような図9に示すステップS220における既定の閾値の補正などを行わなくても第1診断機能を実行することができる。すなわち、制御ユニット50は、既定の範囲において吸引成分源の気化又は霧化に寄与しないで電源の電圧が降下した時間を積算値として積算し、当該積算値を既定の関係に基づき補正した値を、負荷の動作量に関連する値に加算すればよい。一例として、吸引成分源の気化又は霧化に寄与しないで電源10の電圧が降下する場合の電流値又は単位時間あたりの消費電力と、吸引成分源の気化又は霧化に寄与しつつ電源10の電圧が降下する場合の電流値又は単位時間あたりの消費電力の比に基づいて、当該積算値を小さく補正するようにして負荷121Rの動作量に関連する値に変換してもよい。なお、吸引成分源の気化又は霧化に寄与しないで電源10の電圧が降下する場合の電流値又は単位時間あたりの消費電力と、吸引成分源の気化又は霧化に寄与しつつ電源10の電圧が降下する場合の電流値又は単位時間あたりの消費電力は、電圧センサ150や電流センサ160などで実測してもよい。またはこれに代えて、制御ユニット50内のメモリなどにこれらの値を予め記憶しておき、必要に応じて制御部51がこれらの値を読み込んでもよい。なお、これらの値に代えて、吸引成分源の気化又は霧化に寄与しないで電源10の電圧が降下する場合の電流値又は単位時間あたりの消費電力と、吸引成分源の気化又は霧化に寄与しつつ電源10の電圧が降下する場合の電流値又は単位時間あたりの消費電力の比をメモリに直接記憶してもよい。
【0137】
(充電器のプロセッサによる充電制御)
図11は、充電器200のプロセッサによる制御方法の一例を示すフローチャートである。プロセッサ250は、電装ユニット110に接続されたかどうかを判断する(ステップS300)。プロセッサ250は、充電器200が電装ユニット110に接続されるまで待機する。
【0138】
プロセッサ250と電装ユニット110との接続は、公知の方法で検知することができる。例えば、プロセッサ250は、充電器200の一対の電気端子間の電圧の変化を電圧計240により検知することによって、電装ユニット110に接続されたかどうかを判断することができる。
【0139】
充電器200が電装ユニット110に接続されると、プロセッサ250は、電源10が深放電していないかどうか判断する(ステップS302)。ここで、電源10の深放電は、電源10の電圧が放電終止電圧よりも低い深放電判定電圧未満となっている状態を意味する。深放電判定電圧は、例えば、3.1V~3.2Vの範囲内であってよい。
【0140】
充電器200のプロセッサ250は、電圧計240によって電源10の電圧を推定することができる。プロセッサ250は、電源10の電圧の推定値と深放電判定電圧とを比較することによって、電源10が深放電していないかどうかを判断することができる。
【0141】
プロセッサ250は、電源10が深放電していると判断した場合、低レートの電力にて電源10を充電する(ステップS304)。これにより、電源10が深放電した状態から、放電終止電圧よりも高い電圧の状態に回復し得る。
【0142】
電源10の電圧が放電終止電圧以上の場合、プロセッサ250は、電源10の電圧が切替電圧以上であるかどうか判断する(ステップS306)。切替電圧は、定電流充電(CC充電)の区間と定電圧充電(CV充電)の区間を仕切るための閾値である。切替電圧は、例えば、4.0V~4.1Vの範囲内であってよい。
【0143】
電源10の電圧が切替電圧未満である場合、プロセッサ250は、定電流充電方式により電源10を充電する(ステップS308)。電源10の電圧が切替電圧以上である場合、プロセッサ250は、定電圧充電方式により電源10を充電する(ステップS310)。定電圧充電方式では、充電が進行するとともに電源10の電圧が増加するため、充電電流が減少する。
【0144】
定電圧充電方式により電源10を充電し始めると、プロセッサ250は、充電電流が所定の充電完了電流以下であるかどうかを判断する(ステップS312)。ここで、充電電流は、充電器200内の電流計230により取得することができる。充電電流が所定の充電完了電流より大きい場合、定電圧充電方式により電源10の充電を続ける。
【0145】
充電電流が所定の充電完了電流以下である場合、プロセッサ250は、電源10が満充電状態になったと判断し、充電を停止する(ステップS314)。
【0146】
(充電モードにおける制御ユニットによる制御)
図12は、充電モードにおける制御ユニットの制御方法の一例を示すフローチャートである。図13は、充電中において、正常な電源と劣化又は故障した電源の電圧の上昇を説明するための図である。充電モードは、電源10の充電が可能なモードである。
【0147】
制御ユニット50は、充電器200による電源10の充電中に、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知する第2診断機能を実施してもよい。本実施形態では、第2診断機能は、電源10の故障を診断する故障診断機能と、電源10の劣化を診断する劣化診断機能と、を含んでいてよい。以下で詳細に説明するように、制御ユニット50は、電源10の充電中に電源10の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能に構成されていてよい。電源10の電圧値は電圧センサ150の利用によって取得することができるため、制御ユニット50は、充電器200のプロセッサ250と通信することなく、後述する故障診断機能及び劣化診断機能を実施することができる。
【0148】
具体的には、まず、充電中に制御ユニット50が起動していない場合、制御ユニット50は自動的に起動する(ステップS400)。より具体的には、電源10の電圧が制御ユニット50の動作保障電圧の下限値を超えたら、制御ユニット50は自動的に起動する。ここで、動作保障電圧の下限値は、深放電電圧の範囲内であってよい。動作保障電圧の下限値は、例えば、2.0V~2.5Vの範囲であってよい。
【0149】
制御ユニット50は、充電モードであるかどうかを判定をする(ステップS402)。充電モードは、電装ユニット110への充電器200の接続を検知することによってされて判断できる。電装ユニット110への充電器200の接続は、一対の電気端子110t間の電圧の変化を取得することによって検知することができる。
【0150】
制御ユニット50が電装ユニット110への充電器200の接続を検知すると、タイマ
を起動し、充電開始、又は制御ユニットの起動からの時間を計測する(ステップS404)。
【0151】
次に、制御ユニット50は、電源10の故障診断機能を実行する。具体的には、制御ユニット50は、電源10の電圧(Vbatt)を取得し、電源10の電圧(Vbatt)が深放電判定電圧よりも大きいかどうか判断する(ステップS406)。電源10の電圧(Vbatt)は、電圧センサ150を利用することによって取得することができる。深放電判定電圧は、前述したとおりであり、例えば3.1Vから3.2V(放電終止電圧)の範囲であってよい。なお、電源10の充電中において、制御ユニット50は、定期的に電源10の電圧を取得する。
【0152】
深放電によって電源10の電極構造や電解質が不可逆的に変化した場合、充電しても電源10の内部で正常な充電時の電気化学反応が進行しなくなる。従って、電源10の電圧(Vbatt)が深放電判定電圧以下となっている時間が、タイマの起動から既定の時間、例えば300msecを超えた場合、制御ユニット50は、電源10が深放電により故障したと推定又は検知する(ステップS408及びS410)。また、電源10の電圧値がタイマの起動から深放電判定電圧に至るまでに要する時間が既定の時間、例えば300msecを超えた場合にも、制御ユニット50は、電源10が深放電により故障したと判断する(ステップS412及びS410)。
【0153】
電源10が深放電により故障したと推定又は検知すると、制御ユニット50は、所定の保護動作を実行すればよい(ステップS414)。保護動作は、例えば、制御ユニット50が電源10の充電を強制的に停止又は制限する動作であってよい。充電の強制的な停止又は制限は、電装ユニット110内で電源10と充電器200との間の電気的接続を切断することによって実現できる。例えば、制御ユニット50はスイッチ140と停止部180のうち少なくとも一方をOFFにすればよい。制御ユニット50は、電源10が深放電により故障したと推定又は検知すると、通知部40を通じてユーザに異常を通知してもよい。
【0154】
前述したように、制御ユニット50は、電源10の充電中に電源10の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、故障診断機能を実行すればよい。
【0155】
既定の電圧範囲の下限は、例えば、制御ユニット50の動作保障電圧の下限値であってよい。この場合、前述したように、制御ユニット50は、制御ユニット50の起動後にタイマを起動してから深放電判定電圧(所定の閾値)に至るまでに要する時間に基づき、故障診断機能を実行すればよい。この代わりに、既定の電圧範囲の下限は、電源10の放電終止電圧よりも低く、制御ユニット50の動作保障電圧の下限値よりも大きい値に設定されていてもよい。この場合、タイマは、電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限に達したときに起動すればよい。
【0156】
前述した故障診断機能は、吸引成分生成装置100が充電モード以外である場合には実行不能に構成されていることが好ましい。これにより、給電モードにおいて極低温状態に陥るなどの要因で電源10の電圧が、深放電まで一時的に低下した場合に、誤って故障診断機能が実行されてしまう虞を防止することができる。
【0157】
また、前述した故障診断機能は、電源10の充電中に電源10の電圧値が電源10の放電終止電圧よりも低い場合に電源の故障を推定又は検知するよう構成されていてよい。
【0158】
電源10の電圧値がタイマの起動から深放電判定電圧に至るまでに要する時間が既定の
時間、例えば300msec以下である場合には、深放電による影響は小さいと判断し、電源10の充電を継続してもよい(ステップS416)。この場合、制御ユニット50は、以下で説明する劣化診断機能をさらに実行してもよい。制御ユニット50は、故障診断機能と劣化診断機能のハンチングを防止するため、故障診断機能と劣化診断機能を同時に実行しないように構成されていることが好ましい。
【0159】
劣化診断機能では、まず、制御ユニット50は充電中に電源10の電圧値を取得し、電源の電圧が既定の電圧範囲の下限値以上であるかどうかを判断する(ステップS420)。ここで、前述した故障診断機能で用いられる既定の電圧範囲の上限値は、劣化診断機能で用いられる既定の電圧範囲の下限値より小さいことが好ましい。一方、劣化診断機能で用いられる既定の電圧範囲は、放電終止電圧を含まないことが好ましい。このように故障診断機能と劣化診断機能のそれぞれで用いられる既定の電圧範囲を設定することで、前述した故障診断機能と劣化診断機能のハンチングをより効果的に防止できる。
【0160】
制御ユニット50は、電源10の充電中に電源10の電圧値が電源10の放電終止電圧よりも高い場合に電源10の劣化を推定又は検知する劣化診断機能を実行可能に構成されていることがより好ましい。これにより、故障診断機能と劣化診断機能のハンチングを防止することができる。なお、故障診断機能と劣化診断機能のハンチングを防止するため、制御ユニット50は、電源10の電圧が放電終止電圧である場合には、故障診断機能と劣化診断機能の両方を実行しないよう構成されていてよい。
【0161】
電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限値以上である場合、制御ユニット50は、タイマをリセットし、タイマを再起動する(ステップS422)。制御ユニット50は、電源10の電圧が既定の電圧範囲の上限値以上になるまで、タイマにより経過時間を計測する(ステップS424)。
【0162】
電源10が劣化した場合、満充電電圧や放電終止電圧といった電源10が取り得る電圧値は変化しないものの、電源10の満充電容量は減少する傾向にある。従って、制御ユニット50は、電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限値から上限値に達するまでに要した経過時間が既定の時間より大きいかどうか判断する(ステップS426)。制御ユニット50は、電源10の充電中に電源10の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に既定の時間内に達した場合に、電源10が劣化したと推定又は検知する(ステップS428)。
【0163】
電源10が劣化したと推定又は検知されると、制御ユニット50は、所定の保護動作を実行すればよい(ステップS430)。保護動作は、例えば、制御ユニット50が電源10の充電を強制的に停止又は制限する動作であってよい。充電の強制的な停止又は制限は、電装ユニット110内で電源10と充電器200との間の電気的接続を切断することによって実現できる。例えば、制御ユニット50はスイッチ140と停止部180のうち少なくとも一方をOFFにすればよい。また、制御ユニット50は、電源10が劣化したと推定又は検知されると、通知部40を通じてユーザに異常を通知してもよい。
【0164】
電源10の充電中に電源10の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に既定の時間内に達しない場合には、制御ユニット50は、電源10の劣化は軽微と判断し、そのまま電源10の充電が継続される(ステップS432)。
【0165】
故障診断機能及び劣化診断機能は、同じ変数値、前述した例では既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでの経過時間を用いて実施されるよう構成されていてよい。この場合、電源が故障又は劣化したと推定又は検知するための当該変数値と閾値との大小関係は、故障診断機能と劣化診断機能とで逆転していることが好ましい。より具体的には、故障診断機能に用いられる変数値、前述した例では前述の経過時間が、第1閾値、例えば300m
secより大きいときに、制御ユニット50は電源10が故障したと判断する。一方、劣化診断機能に用いられる変数値、前述した例では前述の経過時間が、第2閾値(既定の時間)より小さいときに、制御ユニット50は電源10が劣化したと判断する。図13に示すように、放電終止電圧以下の電圧範囲では、劣化又は故障した電源10よりも正常な電源10の方が充電中に早期に電圧が上昇する。一方、放電終止電圧以上の電圧範囲では、正常な電源10よりも劣化又は故障した電源10の方が充電中に早期に電圧が上昇する。故障診断機能と劣化診断機能とにおいて変数値と閾値との大小関係を逆転させることで、故障診断機能と劣化診断機能の両方において、電源10の劣化又は故障を推定又は検知することができる。
【0166】
制御ユニット50は、電源10の温度が第4温度閾値より低い場合に、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するためのアルゴリズム、すなわち図12に示す第2診断機能を実行するアルゴリズムを変更又は修正可能に構成されていてよい。具体的には、制御ユニット50は、ステップS412及び/又はステップS426における既定の時間を修正し、修正した時間閾値に基づきステップS412及び/又はステップS426における比較を行うことが好ましい。第4温度閾値は、例えば1~5℃の範囲に設定されていてよい。
【0167】
電源10の温度が低い場合、電源10の内部抵抗が増大することが知られている。これにより、劣化していない電源10であっても、電源10の電圧が既定の電圧範囲の下限から上限に達するまでの時間が変わる。したがって、電源10の温度が低い場合、ステップS412及び/又はステップS426における既定の時間を修正することで、温度の影響を緩和し、電源10の劣化又は故障の検知の精度が低下することを抑制することができる。
【0168】
また、制御ユニット50は、電源10の温度が第5温度閾値より低い場合、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方の推定又は検知を実行しないように構成されていてよい。すなわち、電源10の温度が第5温度閾値より低い場合、制御ユニット50は、図12に示す故障診断機能及び/又は劣化診断機能を実行しなくてもよい。ここで、第5温度閾値は、第4温度閾値よりも小さくてもよい。第5温度閾値は、例えば-1~1℃の範囲に設定されていてよい。
【0169】
さらに、制御ユニット50は、電源10の温度が第6温度閾値より低い場合、ヒータ70の制御により電源10を加温してもよい。電源10の温度が低い場合、電源10の温度を上昇させることにより、電源10の劣化又は故障の検知の精度が低下することを抑制することができる。第6温度閾値は、例えば-1~1℃の範囲に設定されていてよい。
【0170】
(劣化診断機能における既定の電圧範囲)
劣化診断機能において用いられる既定の電圧範囲について図13を用いてさらに説明する。既定の電圧範囲は、放電終止電圧から満充電電圧の間の所定の区間(電圧範囲)であってよい。
【0171】
既定の電圧範囲は、電源10の蓄電量又は充電状態の変化に対する電源10の電圧値の変化が他の電圧範囲と比較して小さいプラトー範囲を除く範囲に設定されることが好ましい。プラトー範囲は、例えば充電状態の変化に対する電源10の電圧の変化量が0.01~0.005(V/%)以下の電圧範囲によって既定される。
【0172】
プラトー範囲は、充電の経過時間に対する電源の電圧の変動が小さいため、正常な電源と劣化した電源との間で有意な差が生まれにくい。そのため、前述した劣化診断機能において誤検知を生じる可能性が高まる。したがって、既定の電圧範囲はプラトー範囲を除く
範囲に設定されることが好ましい。
【0173】
また、劣化診断機能で用いられる既定の電圧範囲は、電源10に対して定電圧充電が行われる範囲を除く範囲に設定されることが好ましい。定電圧充電が行われる範囲は、充電シーケンスの終期に相当するため充電の経過時間に対する電源の電圧の変動が小さい範囲に相当する。したがって、劣化診断機能で用いられる既定の電圧範囲が定電圧充電が行われる範囲を除く範囲に設定されることで、劣化診断機能の精度を高めることができる。
【0174】
ここで、充電器200のプロセッサ250は、充電器200内の電圧計240を用いて電源10の電圧を推定する。その一方で、制御ユニット50は電装ユニット110内の電圧センサ150を用いて電源10の電圧を取得する。ところで、充電器200によって認識される電源10の電圧は、電源10の電圧の真値に対して接続端子110tの接触抵抗や充電器200と電源10を電気的に接続する導線の抵抗における電圧降下を加えた値となる。一方、制御ユニット50によって認識される電源10の電圧は、少なくとも接続端子110tの接触抵抗における電圧降下の影響を受けない。したがって、充電器200によって認識される電源10の電圧と制御ユニット50によって認識される電源10の電圧との間でずれが生じることがある。このずれを考慮すると、劣化診断機能を実行する電源10の電圧範囲は、前述した切替電圧から既定の値を減算した電圧値よりも低い範囲に設定されることが好ましい。
【0175】
さらに、劣化診断機能で用いられる既定の電圧範囲は、通知部40が電源10の残量が不足していると通知する範囲を除く範囲に設定されることが好ましい。既定の電圧範囲が放電終止電圧付近に設定されている場合、電源10の電圧が放電終止電圧まで低下する前に充電されると、既定の電圧範囲の全体に亘って電源10を充電できないため、上記の劣化診断機能が正常に機能しないことがある。劣化診断機能で用いられる既定の電圧範囲が電源10の残量が不足している範囲を除いて設定されることで、電源10の電圧が放電終止電圧まで低下する前に充電されたとしても、劣化診断機能を正常に機能させることができる。
【0176】
また、劣化診断機能は、複数の既定の電圧範囲で実施されてもよい。複数の既定の電圧範囲は互いに重複しないことが好ましい。制御ユニット50は、それぞれの既定の電圧範囲において、図12に示すフローチャートの劣化診断機能の部分と全く同じフローで劣化診断機能を実施できる。図13に示す例では、2つの既定の電圧範囲(第1区間及び第2区間)が設定されている。
【0177】
(第1診断機能と第2診断機能との関係)
前述したように、制御ユニット50は、負荷121Rの動作中に電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知する第1診断機能と、電源10の充電中に電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知する第2診断機能と、を実行可能に構成されている。
【0178】
ここで、第1診断機能と第2診断機能は、互いに異なるアルゴリズムを含むことが好ましい。これにより、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するために、電源10の充電及び放電に応じて最適なアルゴリズムを適用できる。
【0179】
第1診断機能、すなわち負荷121Rの動作中に実行される診断機能は、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するための少なくとも1つのアルゴリズムを含んでいてよい。上記実施形態では、第1診断機能は、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するための1つのアルゴリズムのみを含んでいる。
【0180】
例えば電子シガレットや加熱式たばこのような小型かつ携帯型の吸引成分生成装置100では、簡易な制御機能を有する制御ユニット50を搭載することが望まれる。このような簡易な制御機能を有する制御ユニット50を用いて給電モードにおいて負荷121Rへの電力の供給を制御すると、給電モードにおいて制御ユニット50の演算能力に限界が生じる。第1診断機能が1つのアルゴリズムのみを含む場合、制御ユニット50は、他の制御、例えば負荷121Rへの電力制御に影響を与えない範囲で、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知することができる。
【0181】
第2診断機能、すなわち電源10の充電中に実行される診断機能は、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するための少なくとも1つのアルゴリズムを含んでいてよい。上記実施形態では、第2診断機能は、前述した故障診断機能と劣化診断機能の2つを含んでいる。上記実施形態に加え、第2診断機能は、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するための別の1又は複数のアルゴリズムをさらに含んでいてもよい。
【0182】
好ましくは、第2診断機能に含まれるアルゴリズムの数は、第1診断機能に含まれるアルゴリズムの数よりも多い。電源10の充電は、吸引成分生成装置100とは別体の外部充電器200によって制御される。したがって、制御ユニット50は、給電モードと比較すると、充電モードにおいて演算能力に余裕がある。この演算能力の余裕を利用して、充電モードにおける第2診断機能に含まれるアルゴリズムの数を多くすることで、充電モードにおいて、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方をより高精度に推定又は検知することができる。
【0183】
吸引成分生成装置100の構造を簡易化する目的では、充電器200のプロセッサ250は、電装ユニット110の制御ユニット50と通信不能に構成されていてもよい。このように吸引成分生成装置100を構成すれば、その構造を簡易化できるだけでなく、制御ユニット50が充電器200のプロセッサ250との通信のために演算能力を割く必要が無くなる。従って、より多くの演算能力を充電モードにおける第2診断機能に割り当てることができるため、充電モードにおいて、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方をさらに高精度に推定又は検知することができる。
【0184】
より好ましくは、第2診断機能に含まれる同時に実行可能なアルゴリズムの数は、第1診断機能に含まれる同時に実行可能なアルゴリズムの数よりも多い。上記実施形態に示す例では、前述した故障診断機能と劣化診断機能は、同時に実行可能であってよい。または、充電モードにおいて、電源10の電圧が降下した場合に、電源10の内部短絡を故障として検知するような診断機能を、前述した劣化診断機能と同時に実行してもよい。
【0185】
第2診断機能を実行するために必要なセンサの数は、第1診断機能を実行するために必要なセンサの数よりも少ないことが好ましい。上記実施形態では、第2診断機能は、電源10の電圧を取得する電圧センサ150と、必要に応じて温度センサ170を用いることによって実施可能である。一方、第1診断機能は、電源10の電圧を取得する電圧センサ150と、要求センサ(吸引センサ20又は押しボタン30)と、必要に応じて温度センサ170を用いることによって実施可能である。なお、時間を計測するタイマはセンサに含まれない。
【0186】
第2診断機能を実行するために必要なセンサは、要求センサ(吸引センサ20又は押しボタン30)を含まないことが好ましい。充電中に要求センサが操作されることは、吸引成分生成装置100の通常の使い勝手からは考えにくい。換言すれば、第2診断機能を実行するために必要なセンサに、本来操作されることがない要求センサを含めると、第2診断機能に何らかの不都合が生じる可能性がある。このように、充電中に行われる第2診断
機能は、負荷121Rへの電力の供給を要求する要求センサを用いることなく実施可能であることが好ましい。
【0187】
第2診断機能で前述した故障診断機能と劣化診断機能に用いられる既定の電圧範囲、例えば図13に示す動作保証電圧の下限から深放電判定閾値までの区間と第1区間と第2区間の合算値は、第1診断機能で用いられる既定の電圧範囲、例えば図10に示す第1区間と第2区間と第3区間の合算値よりも広いことが好ましい。充電モードでは給電モードよりも電源10の電圧が取り得る値の幅が広いため、第2診断機能で用いられる既定の電圧範囲を大きくすることで、充電モードにおける電源の劣化又は故障の診断の精度を上げることができる。
【0188】
(充電器による第2診断機能の実施)
前述した例では、電装ユニット110の制御ユニット50が第2診断機能(故障診断機能及び劣化診断機能)を実施した。この代わりに、充電器200のプロセッサ250が、電源10の充電中に電源10の電圧値が既定の電圧範囲の下限から上限に至るまでに要する時間に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知する第2診断機能を実施してもよい。この場合、充電器200のプロセッサ250が、図12に示すフローチャートと同様の処理をアルゴリズムを実行すればよい。
【0189】
ただし、充電器200のプロセッサ250が第2診断機能を実行するため、図12に示すフローチャートにおけるステップS400は不要となる。また、プロセッサ250が取得する電源10の電圧は、充電器200に設けられた電圧計240によって推定される。保護動作(ステップS414、S430)では、充電器200のプロセッサ250が充電電流を停止するという動作であってよい。その他の処理は、電装ユニット110の制御ユニット50が第2診断機能を実行する場合と同様であるので、その説明を省略する。このように、制御ユニット50が本来行うべき第2診断機能の少なくとも一部を、電源10と電気的に接続した充電器200のプロセッサが代わりに実行すれば、制御ユニット50はさらに別のアルゴリズムを第2診断機能として実行できるため、充電モードにおける電源の劣化又は故障の診断の精度を上げることができる。
【0190】
(電圧センサ)
まず、電圧センサ150の詳細について図5及び図14を用いて説明する。電圧センサ150は、電源10のアナログ電圧値を既定の相関を用いてデジタル電圧値に変換し、デジタル電圧値を出力するよう構成されている。具体的には、図5及び図14に示すように、電圧センサ150は、アナログ入力値をデジタル出力値に変換するA/Dコンバータ154を有していてよい。A/Dコンバータ154は、アナログ入力値をデジタル出力値に変換する変換テーブル158を有する。
【0191】
デジタル電圧値への変換に伴う分解能は、特に限定されないが、例えば、0.05V/bitであってよい。この場合、電圧センサ150からの出力値は、0.05V毎に変換される。
【0192】
なお、図14に示す変換テーブル158は、後述する参照電圧(Vref)156が電源10の電圧、例えば電源10の満充電電圧よりも大きい場合における相関を示している。この場合、既定の相関158は、大きなアナログ電圧値ほど大きなデジタル電圧値に対応付けられている。
【0193】
オペアンプ150-1の反転入力端子150-2には電源10の電圧(アナログ電圧(Vanalоg))が、一方の非反転入力端子150-3には電源10の電圧(アナログ電圧(Vanalоg))よりも高い定電圧である参照電圧(Vref)156(例えば
、5.0V)が入力される。オペアンプ150-1はこれらの電圧の差分、又は差分を増幅させた値(Vinput)を、A/Dコンバータ154に入力する。A/Dコンバータ154は、既定の相関(変換テーブル)158に基づき、アナログ電圧値(Vinput)を、デジタル電圧値(Vоutput)に変換して出力する。制御ユニット50(制御部51)は、前述したすべての処理において電源10の電圧を取得する場合、電圧センサ150から出力されるデジタル電圧値(Vоutput)を取得することになる。
【0194】
ここで、既定の相関(変換テーブル)158は、電源10の電圧(アナログ電圧(Vanalоg)が満充電電圧である場合に満充電電圧に相当するデジタル電圧値(Vоutput)を出力し、電源10の電圧(アナログ電圧(Vanalоg)が放電終止電圧である場合に放電終止電圧に相当するデジタル電圧値(Vоutput)を出力するよう設定されていることが好ましい。
【0195】
しかしながら、参照電圧などの製品誤差や電源10の劣化等により、出力されるデジタル電圧値(Vоutput)に誤差が生じることがある。したがって、電圧センサ150の既定の相関(変換テーブル)158を適宜較正(キャリブレーション)することが好ましい。
【0196】
次に、電圧センサ150の既定の相関(変換テーブル)158の較正について説明する。図15は、電圧センサ150の既定の相関158の較正に関する処理を示すフローチャートである。制御ユニット50は、電源10の充電中に取得されたアナログ電圧値又は前記デジタル電圧値の変化に基づき、相関158を較正可能に構成されていてよい。
【0197】
まず、閾値電圧を初期値に設定しておく(ステップS500)。ここで、閾値電圧の初期値は、デジタル電圧値の満充電電圧よりも小さい値に設定しておくことが好ましい。例えば、閾値電圧の初期値は、4.05Vである。
【0198】
制御ユニット50は、充電の開始を検知する(ステップS502)。充電の開始は、電装ユニット110への充電器200の接続により検知してもよい。充電が開始されると、制御ユニット50は、所定の時間ごとに電源10の電圧を取得する(ステップS504)。取得される電源10の電圧は、電圧センサ150から出力されたデジタル電圧値であってよい。
【0199】
次に、制御ユニット50は、取得した電源10の電圧が閾値電圧より高いかどうか判定する(ステップS506)。取得した電源10の電圧が閾値電圧以下である場合には、所定の時間経過後、再び電源10の電圧を取得し(ステップS504)、ステップS506に戻る。
【0200】
取得した電源10の電圧が閾値電圧より大きい場合には、閾値電圧の値を、取得した電源10の電圧値に更新する(ステップS508)。それから、制御ユニット50は、必要に応じて、電圧センサ150の既定の相関158を較正する(ステップS510)。
【0201】
次に、制御ユニット50は、充電が終了したかどうか判断する(ステップS512)。充電が終了していない場合、再び電源10の電圧を取得し(ステップS504)、ステップS506に戻る。制御ユニット50は、充電が終了するまでの期間において、電源10の電圧が閾値電圧より大きくなる度に電圧センサ150の既定の相関158を較正すればよい。この場合、制御ユニット50は、充電が終了した後に、電圧センサ150の既定の相関158を較正する処理(ステップS520)を実施する必要はない。
【0202】
この代わりに、制御ユニット50は、充電開始から充電が終了するまでの期間において
、既定の相関158を較正しなくてもよい。すなわち、制御ユニット50は、ステップS510を実施する必要はない。この場合には、制御ユニット50は、充電が終了した後に、電圧センサ150の既定の相関158を較正する処理を実施する(ステップS520)。
【0203】
以上のように、制御ユニット50は、ステップS510とステップS520のうち、いずれか一方のタイミングで電圧センサ150の既定の相関158を較正する処理を実施すればよい。
【0204】
電源10の充電の終了後、所定のリセット条件が満たされると、閾値電圧は、再び初期値、例えば4.05Vにリセットされる(ステップS522)。リセット条件は、例えば、吸引成分生成装置100がOFFになることであってもよい。これは製品誤差や電源10の劣化等といった電圧センサ150が出力するデジタル電圧値(Voutput)に誤差を生じさせる要因が、吸引成分生成装置100がOFFになるなどのリセット条件が成立する度に変動する可能性があるためである。
【0205】
図15に示すフローチャートにおいて、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における閾値電圧は、電源10の満充電電圧よりも小さな値に設定されていることが好ましい。電圧センサ150のデジタル出力値に誤差が生じ得ることを考慮すると、初回の電源10の充電中に、電源10の電圧(アナログ電圧値)が満充電電圧に達したとしても、電圧センサ150のデジタル出力値が満充電電圧未満に留まることがある。したがって、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における閾値電圧を満充電電圧よりも小さな値に設定することで、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時からの初回の充電時に、電圧センサ150の既定の相関158が較正されなくなることを防止することができる。
【0206】
より具体的には、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における閾値電圧は、電圧センサ150が出力し得る複数のデジタル電圧値のうち、電源10の満充電電圧(例えば4.2V)から製品誤差の絶対値を減算した値以下に設定されることが好ましい。例えば、電圧センサ150に±0.11V程度の誤差が生じ得る場合、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における閾値電圧は、4.09V以下に設定されていてよい。
【0207】
さらに、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における閾値電圧は、電圧センサ150が出力し得る複数のデジタル電圧値のうち、電源10の満充電電圧(例えば4.2V)から製品誤差の絶対値を減算した値以下の範囲内で最大の値に設定されることがより好ましい。このように吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における閾値電圧を設定すれば、前述した吸引成分生成装置100の製造時又は起動時からの初回の充電時に電圧センサ150の既定の相関158が較正されなくなることを防止できる。さらに、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における閾値電圧を、電圧センサ150が出力し得る複数のデジタル電圧値のうち、電源10の満充電電圧(例えば4.2V)から製品誤差の絶対値を減算した値以下の範囲内で最大の値以外の値に設定した場合と比べて、電圧センサ150が頻繁に較正されることを抑制できる。
【0208】
例えば、デジタル電圧値の分解能が0.05V/bitであり、かつ電圧センサ150に±0.11V程度の誤差が生じ得る場合、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における閾値電圧は、4.05Vであってよい。これは、電源10の満充電電圧から製品誤差の絶対値を減算した値である4.09V以下の電圧値であって、電圧センサ150の出力し得るデジタル電圧値(例えば3.95V,4.00V,4.05V)のうち、最大のデジタル電圧値が4.05Vであることから明らかであろう。
【0209】
前述したフローチャートでは、制御ユニット50は、電源10の充電中に取得されたデ
ジタル電圧値が閾値電圧よりも大きくなった場合に、既定の相関158の較正を行う。この代わりに、制御ユニット50は、電源10の充電中に取得されたデジタル電圧値が最大値又は極大値となった場合に、既定の相関158の較正を行ってもよい。
【0210】
電圧センサ150から出力されたデジタル電圧値の履歴を記録しておくことによって、制御ユニット50は、充電の開始から終了までに取得したデジタル電圧値の最大値を抽出することができる。
【0211】
また、充電中に電圧センサ150から出力されたデジタル電圧値の低下を検知することによって、制御ユニット50は、充電の開始から終了までに取得したデジタル電圧値の極大値を抽出することができる。
【0212】
なお、電圧センサ150の既定の相関158の較正は、前述したフローチャートで示されたタイミングで行われる必要はなく、例えば、充電中、充電後、又は吸引成分生成装置100の次の起動時のように、いずれもタイミングで行われても構わない。
【0213】
(既定の相関の較正)
次に、電圧センサ150の既定の相関158の較正について説明する。制御ユニット50は、電源10の充電中に取得されたデジタル電圧値の最大値若しくは極大値、又は閾値電圧よりも大きいデジタル電圧値が、電源10の満充電電圧値に対応するように相関158を較正する。ここで、閾値電圧よりも大きいデジタル電圧値が、電源10の満充電電圧値に対応するように相関158を較正する場合であっても、電源10を満充電電圧まで充電すれば、最終的には、電源10の充電中の少なくても一部の区間において取得されたデジタル電圧値の最大値若しくは極大値が、電源10の満充電電圧値に対応するように相関158が較正される。
【0214】
電源10が満充電まで充電された場合、電源10の電圧は、満充電電圧に達している。また、電源10の満充電電圧は、参照電圧などの製品誤差や電源10の劣化等の電圧センサ150出力するデジタル電圧値(Voutput)に誤差を生じさせる要因から影響を受けにくいため、較正する際の基準として特に有用である。したがって、前述のように相関158を較正すると、満充電電圧に相当するアナログ電圧値が電圧センサ150に入力されたときに、電圧センサ150は、満充電電圧値に対応するデジタル電圧値を出力するようになる。これにより、電圧センサ150を適切に較正することができる。
【0215】
図16は、電圧センサ150の既定の相関158の較正の一例を示す図である。図16に示すように、既定の相関158は、アナログ電圧値とデジタル電圧値の対応づけをゲイン調整するよう較正されてもよい。ゲイン調整は、例えば、既定の相関158の縦軸の値(アナログ電圧値)又は横軸の値(デジタル電圧値)を一定の割合で増大又は減少させることによって実施できる。すなわち、ゲイン調整では、既定の相関158の傾き、より具体的には、既定の相関158の近似直線の傾きを調整する。
【0216】
図17は、電圧センサ150の既定の相関158の較正の別の一例を示す図である。図17に示すように、既定の相関158は、アナログ電圧値とデジタル電圧値の対応づけをオフセット調整するよう較正されてもよい。オフセット調整は、例えば、既定の相関158の縦軸の値(アナログ電圧値)を一定の値だけ増大又は減少させることによって実施できる。オフセット調整は、既定の相関158の切片、具体的には既定の相関158の近似直線の切片を一定の値だけ増大又は減少させるだけであるため、調整が容易というメリットがある。
【0217】
オフセット調整の前と後の両方で、放電終止電圧から満充電電圧の範囲において、アナ
ログ電圧値とデジタル電圧値との関係性が規定されている必要がある。したがって、既定の相関158は、電源10の放電終止電圧よりも小さいデジタル電圧値とアナログ電圧値との対応付けと、電源10の満充電電圧よりも大きいデジタル電圧値とアナログ電圧値との対応付けの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。
【0218】
既定の相関158は、一度較正されると、次に較正されるまで相関を変えることなく維持していてよい。この代わりに、既定の相関158は、吸引成分生成装置100のシャットダウン又はその後の起動時に、初期の相関に戻ってもよい。ここで、初期の相関は、吸引成分生成装置100の製造時における既定の相関であってよい。
【0219】
吸引成分生成装置100の製造時又は起動時において、既定の相関158は、電圧センサ150に誤差が無い場合の満充電電圧値に対応するアナログ電圧値よりも小さなアナログ電圧値が、満充電のデジタル電圧値に対応するよう較正又は設定されていることが好ましい。すなわち、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時においては、満充電電圧よりも小さい所定のアナログ電圧値が電圧センサ150に入力されたときに、電圧センサ150は、満充電電圧に相当するデジタル電圧値を出力するよう設計される。例えば、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時において、満充電電圧(4.2V)よりも小さい4.1Vのアナログ電圧値が電圧センサ150に入力されたときに、電圧センサ150は、満充電電圧に相当するデジタル電圧値(4.2V)を出力するよう設計されていてよい。これにより、電圧センサ150は、仮に製造誤差があったとしても、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時において、実際のアナログ電圧値以上のデジタル電圧値を出力するよう構成される。
【0220】
この場合、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時からの最初の充電において、制御ユニット50が満充電電圧に達したと認識する前に、実際の電源10のアナログ電圧値が満充電電圧を超えることを防止することができる。換言すれば、電源10の電圧の実値に対し、製造誤差などによって電圧センサ150が小さなデジタル電圧値を出力する場合に、電圧センサ150が電源10の満充電電圧に対応するデジタル電圧値を出力した時点で、電源10の電圧値が満充電電圧を超えて過充電に陥ることを抑制できる。したがって、制御ユニット50が電圧センサ150からの出力電圧値が満充電電圧を超えたときに充電を強制的に停止する処理を有していれば、電源10の過充電を防止することができる。
【0221】
吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における既定の相関158は、電圧センサ150が出力し得る複数のデジタル電圧値のうち、電圧センサ150に製品誤差が無い場合の電源10の満充電電圧から製品誤差の絶対値を減算した値に最も近い値に対応するアナログ電圧値が満充電電圧値に対応するよう較正又は設定されていることがより好ましい。これにより、電源10の電圧を製品誤差などによって過少評価することで電源10が過充電状態になることを抑制できる。さらに、既定の相関158の初期状態において、アナログ電圧値とデジタル電圧値との間の数値の差が大きくなり、電源10の実値とこれに対応するデジタル電圧が乖離することを抑制することができる。
【0222】
(既定の相関の別の態様)
図18は、別の実施例に係る電圧センサ150のブロックを示す図である。電圧センサ150の構成は、反転入力端子150-2と非反転入力端子150-3に入力される電圧と既定の相関(変換テーブル)158を除き、図14に示すものと同様である。
【0223】
本実施例では、変換テーブル158は、後述する参照電圧(Vref)156が電源10の電圧、例えば電源10の放電終止電圧よりもよりも小さい場合における相関を示している。この場合、既定の相関158は、小さなアナログ電圧値ほど大きなデジタル電圧値に対応付けられている。
【0224】
オペアンプを用いた一般的なA/Dコンバータでは、非反転入力端子に入力される値のデジタル値が、出力可能な最大のデジタル値に相当する。図14で示した実施例では、非反転入力端子150-3に一定な参照電圧(Vref)156が入力されるため、出力可能な最大のデジタル値は一定である。一方、図18に示す実施例では、非反転入力端子150-3に電源10の蓄電量によって変動する電源10の電圧(アナログ電圧(Vanalоg))が入力されるため、出力可能な最大のデジタル値は可変である。また、最大のデジタル値に対応するアナログ値は、最大のデジタル値とは関係なく、制御ユニット50や電圧センサ150の演算能力などから定まる。
【0225】
つまり、図14で示した実施例では、アナログ電圧値(Vinput)を反転入力端子150-2に入力される電源10の電圧のデジタル値に変換し、これをデジタル出力値(Vоutput)として出力する。また、図18に示す実施例では、アナログ電圧値(Vinput)を非反転入力端子150-3に入力された電源10の電源のデジタル値に変換し、これをデジタル出力値(Vоutput)として出力する。
【0226】
従って、図14で示した実施例では、まずは、一定な最大のデジタル値とこれに対応する一定のアナログ値から、変換テーブル158を導出する。次に、変換テーブル158に入力されるアナログ電圧値(Vinput)を、これに対応するデジタル電圧値(Vоutput)に変換して出力する。このデジタル電圧値(Vоutput)が反転入力端子150-2に入力された電源10の電圧のデジタル値に相当する。
【0227】
一方、図18に示す実施例では、まずは、一定なデジタル値とこれに対応するアナログ電圧値(Vinput)から、変換テーブル158を導出する。次に、変換テーブル158を用いて、最大のデジタル値に対応する一定なアナログ値をデジタル電圧値(Vоutput)に変換して出力する。このデジタル電圧値(Vоutput)が、非反転入力端子150-3に入力された電源10の電圧のデジタル値に相当する。
【0228】
具体的には、測定された又は既知であるデジタル値とこれに対応するアナログ値からなる座標と、予め定めたデジタル電圧値(Vоutput)とアナログ電圧値(Vinput)の関係を結び付けたものを、変換テーブル158として設定してもよい。一例として、デジタル電圧値(Vоutput)とアナログ電圧値(Vinput)の関係が、既定の切片を通る直線に近似する場合、この座標と切片が近似直線上に位置するように、変換テーブル158を設定してもよい。なお、デジタル電圧値(Vоutput)とアナログ電圧値(Vinput)の関係が、直線に限られず曲線によっても近似できることは、当業者にとって明らかであろう。
【0229】
図14及び図18で示した双方の実施例において、測定された又は既知であるデジタル値とこれに対応するアナログ値は、参照電圧(Vref)156のデジタル値とこれに対応するアナログ値である。図14で示した実施例では、非反転入端子150-3に参照電圧(Vref)156が入力されるため、参照電圧(Vref)156に対応するアナログ値を測定する必要はない。一方、図18に示す実施例では、反転入力端子150-2に参照電圧(Vref)156が入力されるため、参照電圧(Vref)156に対応するアナログ値を測定する必要がある点に留意されたい。
【0230】
なお、図14で示した実施例のように、アナログ電圧値(Vinput)を、オペアンプ150-1の反転入力端子150-2に入力された値のデジタル値に変換し、デジタル電圧値(Vоutput)として出力する形式では、大きなアナログ電圧値ほど大きなデジタル電圧値に対応付けられることが知られている。一方、図18に示す実施例のように、アナログ電圧値(Vinput)を、オペアンプ150-1の非反転入力端子150-
3に入力された値のデジタル値に変換し、デジタル電圧値(Vоutput)として出力する形式では、小さなアナログ電圧値ほど大きなデジタル電圧値に対応付けられる点に留意されたい。
【0231】
ここで、既定の相関(変換テーブル)158は、電源の10の電圧(アナログ電圧(Vanalоg))が満充電電圧である場合に満充電電圧に相当するデジタル電圧値(Vоutput)を出力し、電源の10の電圧(アナログ電圧(Vanalоg)が放電終止電圧である場合に放電終止電圧に相当するデジタル電圧値(Vоutput)を出力するよう設定されていることが好ましい。
【0232】
しかしながら、製品誤差や電源10の劣化等により、出力されるデジタル電圧値(Vоutput)に誤差が生じることがある。したがって、電圧センサ150の既定の相関(変換テーブル)158を適宜較正(キャリブレーション)することが好ましい。
【0233】
既定の相関(変換テーブル)158の較正に関する制御は、前述したフローチャート(図15参照)と同様に実施することができる。前述した通り、既定の相関(変換テーブル)158の較正は、図16で示したゲイン補正や図17で示したオフセット補正によってなされてよいが、そのどちらにおいても、最大のデジタル値に対応するアナログ値を較正している点に留意されたい。
【0234】
ただし、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時における既定の相関158は、電圧センサ150に誤差が無い場合の満充電電圧値に対応するアナログ電圧値よりも大きなアナログ電圧値(Vinput)が、満充電電圧値に対応するよう較正又は設定されていることが好ましい。すなわち、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時においては、満充電電圧よりも小さい所定の電源10の電圧に対応付られたアナログ電圧値が電圧センサ150に入力されたときに、電圧センサ150は、満充電電圧に相当するデジタル電圧値を出力するよう設計される。例えば、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時において、満充電電圧(4.2V)よりも小さい4.1Vに対応付られたアナログ電圧値が電圧センサ150に入力されたときに、電圧センサ150は、満充電電圧に相当するデジタル電圧値(4.2V)を出力するよう設計されていてよい。これにより、電圧センサ150は、仮に製造誤差があったとしても、吸引成分生成装置100の製造時又は起動時において、実際のアナログ電圧値以上のデジタル電圧値を出力するよう構成される。
【0235】
(制御ユニットにより取得される電源の電圧)
制御ユニット50(制御部51)は、前述したすべての処理において電源10の電圧を取得する場合、電圧センサ150から出力されるデジタル電圧値(Vоutput)を取得してよい。すなわち、制御ユニット50(制御部51)は、較正された既定の相関158を用いて電圧センサ150が出力するデジタル電圧値に基づいて、前述した各種の制御を行うことが好ましい。これにより、制御ユニット50(制御部51)は、前述した各種の制御を精度よく実行することができる。
【0236】
例えば、前述した電力制御部は、電圧センサ150から出力されるデジタル電圧値に基づき、電源10から負荷121Rへの電力供給を制御してよい。より具体的には、電力制御部は、デジタル電圧値に基づき、電源10から負荷121Rへ供給する電力のPWM制御を実施すればよい。
【0237】
また、別の例では、制御ユニット50は、較正された相関158を用いて電圧センサ150が出力するデジタル電圧値に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知してもよい(第1診断機能及び/又は第2診断機能)。
【0238】
(プログラム及び記憶媒体)
図7図9図12及び図15に示された前述のフローは、制御ユニット50が実行することができる。すなわち、制御ユニット50は、吸引成分生成装置100に前述の方法を実行させるプログラム、及び当該プログラムが格納された記憶媒体を有していてよい。さらに、図11、及び必要に応じて図12に示された前述のフローは、外部充電器200のプロセッサ250が実行することができる。すなわち、プロセッサ250は、吸引成分生成装置100と充電器200とを含むシステムに前述の方法を実行させるプログラム、及び当該プログラムが格納された記憶媒体を有していてよい。
【0239】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0240】
例えば、図9に示す第1診断機能において、制御ユニット50は、取得した電源10の電圧値が既定の電圧範囲にある間に動作した負荷121Rの動作量に関連する値に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能に構成されている。この代わりに、制御ユニット50は、取得した負荷121Rの動作量に関連する値が既定の範囲にある間に変化した電源10の電圧に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知可能に構成されていてもよい。この場合であっても、上記実施形態で説明した場合と同様に、電源10の劣化又は故障を推定又は検知できることに留意されたい。また、同様に、負荷121Rの動作量に関連する値を取得するステップと、取得した負荷121Rの動作量に関連する値が既定の範囲にある間に変化した電源10の電圧に基づき、電源10の劣化と故障のうち少なくとも一方を推定又は検知するステップと、を有する方法も、本発明の範囲に含まれる。さらに、このような方法を吸引成分生成装置100に実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18