(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030171
(43)【公開日】2023-03-07
(54)【発明の名称】震盪力又は爆風力に起因する外傷性脳損傷及びその他の損傷を軽減する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/12 20060101AFI20230228BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61F13/12
A41D13/05 112
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211600
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2019154417の分割
【原出願日】2015-06-25
(31)【優先権主張番号】14/317,282
(32)【優先日】2014-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514312583
【氏名又は名称】ティービーアイ イノヴェーションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TBI INNOVATIONS, LLC
(71)【出願人】
【識別番号】516377751
【氏名又は名称】ソーンヒル リサーチ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】THORNHILL RESEARCH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ダブリュー スミス
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ジョン ヴィティトー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミソン ジョセフ フロート
(72)【発明者】
【氏名】チャド マイケル リーダー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エー フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スタイツ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放射エネルギー、爆風、又は震盪事変の有害な影響を抑制するためのシステムであって、当該事変の発生中又はその前に少なくとも1つの頸静脈に圧力を加えて、頭蓋腔からの血液の流出を抑制する。
【解決手段】頭蓋腔からの血液の流出を抑制することによって、頭蓋内ボリューム及び/又は脳脊髄液の圧力が増加し、外傷性脳損傷及び脊柱損傷のリスクが低下する。血液の流出の抑制は更に、頭蓋内圧及びボリュームを増加させ、それによって蝸牛液、硝子体液、および脳脊髄液の圧力及びボリュームが増加して内耳、眼の内部構造、及び脊柱への損傷リスクが低下する。加えて、頭蓋内圧及びボリュームの増加によって、脳損傷及びそれに伴う嗅覚機能喪失の可能性が低下する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
首開口部を有する衣類と、
該衣類に一体形成された内側に向いた突起と、を備え、
被験者が前記衣服を着用したときに、前記突起が、前記被験者の1つ以上の頸静脈に十分な圧力を加えて、前記1つ以上の頸静脈を通して、前記被験者の頭部から出る血流を制限するように配置及び適合されている、システム。
【請求項2】
前記衣服が、前記被験者の首の一部を覆う部分をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記突起が、半硬質である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記突起が、硬質である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上の頸静脈は、内頸静脈を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ以上の頸静脈は、外頸静脈を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記被験者の首の一部を覆う前記衣服の部分に組み込まれた弾性材料をさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記弾性材料が、前記1つ以上の頸静脈に十分な圧力を加えることを提供する請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年8月27日に出願した特願2019-154417号を原出願として分割出願したものである。
【0002】
本開示は、概して、震盪性事変に晒されたときの影響を抑制するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
西洋社会であっても、外傷性脳損傷(TBI)が、45歳未満の人々の死亡及び病的状態の最も一般的な原因の1つであり続けている。米国だけでも、毎年170万の人々がTBIに苦しんでいると報告されており、その年間推定総費用は600億ドルを超えると推定されている。歴史的に、頭蓋骨及び脳損傷防止は、外部からの頭蓋骨保護として、ヘルメットの使用が中心であった。ヘルメットは大きな穿通性脳損傷及び頭蓋骨骨折に役立つのみであり、この方法は基本的に欠陥がある。これらの損傷は、民間人の間で発生する頭部損傷のごく僅かな部分でしかない。軍事統計によると、戦場においても、TBIの0.5%未満が、穿通物によるものであることを示している。しかし、軍人及び運動選手は、いずれもヘルメットによって軽減されず、脳への震盪損傷をもたらす高速の加減速メカニズムに晒される。これは主として、人間の脳は頭蓋腔内において比較的自由に動けるため、線形力ベクトル及び回転力ベクトルの両方に影響を受け易く、結果的にエネルギー吸収が生じ、時により遅延細胞死を伴う、細胞破壊及び機能障害が生じる。
【0004】
頭蓋骨及び脊柱管には、神経組織、結合組織及び脂肪細胞、並びにそれらの間質、血液及び脳脊髄液(CSF)のみが含まれている。非流体内容物は、頭蓋骨及び骨質脊柱管によって区切られた硬質容器を完全に満たしておらず、流体成分によって占められる「予備ボリューム」を残している。所与の圧力変化に対する容器内のボリュームの変化を、「コンプライアンス」と呼んでいる。頭蓋骨及び骨質脊柱管の内容物のボリュームは、予備ボリュームの範囲内で、(系の高いコンプライアンスにより)低い容器圧力で生じる。脳と流体とが頭蓋内部で衝突したとき、頭蓋骨の加速又は減速によって、頭蓋骨とその内容物との間の加速又は減速の差が生じる可能性がある。TBIは、脳が頭蓋骨に衝突することによる、組織と血管の圧縮、伸長、及び断裂のために生じる可能性がある。哺乳動物の脳の半固体特性を考慮して、この効果を「SLOSH」と呼んでいる。
【0005】
ヘルメットは、頭蓋骨のまれな穿通や骨折の防止には有効であるが、SLOSH効果を軽減する能力は殆んどない。脳の流体内容物の圧力を上昇させることによってSLOSHを軽減すると、脳の圧縮性を低下させることによって、脳組織又はその血管が損傷を受ける傾向を大幅に抑制することができる。この圧縮性の低下により、脳が吸収する運動、音響、熱、及び振動エネルギーが抑制される。
【0006】
TBIを引き起こす震盪性事変は、内耳、脊髄、及び眼の構造にも有害な影響を及ぼし得る。感音性難聴は、TBIの85%の割合で生じることが報告されている。急性爆風外傷、及びそれに起因する外傷性脳損傷の結果としての聴覚系への同時傷害は、2004年までのイラクの自由作戦中における、海兵隊員の損傷全体の4分の1を占め、最も一般的な種類の単独損傷となっている。聴覚機能不全は、最も一般的な軍事サービスに関連した障害となっており、補償総額は年間10億ドルを上回っている。
【0007】
爆風によって、鼓膜破裂及び耳小骨離断(従って、伝音性難聴をもたらす)が引き起こされると思われるかも知れないが、入手可能な聴力検査報告書によれば、純粋な感音障害が患者の最も一般的な種類の難聴であることが示されている。1999~2006年に実施された観察研究では、難聴を訴えた現役兵士の58%が、純粋な感音障害と診断されたことを示している。この研究データは、爆風関連のTBI患者の38%が、感音性耳鳴り(耳の中で音が鳴り響くこと)を訴えたことも明らかにしている。
【0008】
感音性難聴が関わる部位は、蝸牛及び前庭器(三半規管)と呼ばれる内耳構造である。これ等の構造は何れも流体が満たされているため、SLOSHに誘発されたエネルギー吸収の影響を受け易い。蝸牛の鼓室神経小管と前庭階にも流体が満たされており、コルチ器官の繊細な有毛細胞に圧力及び流体波を伝達する。聴覚有毛細胞は、振動を蝸牛管中の振動ではなく、浸漬された液体中の振動に直接反応する。特に蝸牛及びそれに関連する有毛細胞は、SLOSHエネルギー吸収の影響を受け易い。
【0009】
CSF総量140mlのうち、約30ml(21%)が脊柱軸内に存在し、CSF系のコンプライアンスの約3分の1が脊柱コンパートメントによるものである。脳と同様に、脊柱コンパートメント内のCSFの圧力を上昇させることによって、脊柱管の内容物の弾性が増大し、脊柱コンパートメントの震盪性損傷に対する脆弱性が低下し、震盪力に晒されたとき、脊柱管の内容物が吸収するエネルギー量が抑制される。
【0010】
イラクの自由作戦、OIF、における、軍の死傷者レポートにおいて、207件の重篤な眼の損傷のうち、82%が爆風と爆裂破片に起因したものである。砂漠の盾と砂漠の嵐作戦において、戦闘支援病院で見られた、戦場におけるすべての損傷のうち、眼の損傷が13%(19/149)を占めた。非開放性損傷において、前房出血(前房内の血液)及び外傷性白内障が最も一般的な所見であり、眼の大部分(67%)が眼窩損傷を被った。不朽の自由作戦において、戦闘眼外傷(COT)を経験した兵士の66%がTBIも被った。簡単に言えば、戦闘関連の眼の損傷の約3分の2は、閉塞空間爆風エネルギー吸収による破裂である。
【0011】
外傷性脳損傷、又はTBIを引き起こす震盪又は爆発関連の事変は、嗅覚障害(嗅覚機能、即ち、臭いの感覚の喪失又は障害)の主要な原因でもあることが判明している。ある研究では、外傷後の嗅覚障害患者の大部分が、嗅球及び下前頭葉に異常を示すことが報告されており、後者の場合には、TBIを抑制することによって、嗅覚障害のリスクを低下させることができることを示唆している。嗅覚機能の喪失又は障害は人間にとって不快以上のものであるが、ブリーチャー犬(例えば、爆弾探知犬)にとって、この障害は破滅的であり得る。ブリーチャー犬は、本質的に震盪性事変の危険に晒され、かかる事変を兵士が避ける支援をすることがその主な目的である。TBI及びそれに伴う嗅覚障害を防止又は抑制することは、ブリーチャー犬の使命にとって極めて重要である。
【0012】
頭部外傷の場合、脳を損傷から保護することを目的とした標準的な予防手段には、これまで各種ヘルメットだけが含まれていた。ヘルメットは主として、頭蓋骨を穿通性損傷や骨折から保護することを目的としており、脳震盪に代表される、病理学的な動きにはそれほど効果はない。更に、ヘルメットには、耳、脊柱、眼に対する爆風関連の損傷に対する有意な効果はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
外的震盪力に晒されることによる頭蓋内損傷は、伝統的にヘルメットの形態で外的頭蓋保護が利用されている悲惨な状態のままである。ヘッドギアは、最も壊滅的な頭蓋内損傷、穿通損傷、及び頭蓋骨骨折の予防には有効であるが、頭蓋内構造物に対する震盪又は損傷を防止する能力には限界がある。開示した1つの方法によれば、内頸静脈(IJV)を軽く圧迫して脳の血液量を増加させ、頭蓋内のコンプライアンスを低下させる。その結果、頭蓋内ボリューム及び結果として生じる圧力が増加するため、震盪力を受けたときの頭蓋骨とその内容物との間の加速度の差が縮まる。頭蓋骨とその内容物との間の加速度の差が縮小するということは、頭蓋内の脳又は血管組織の圧迫、伸長、又は断裂傾向が低下することを意味し、それがエネルギー吸収の抑制、従って外傷性軸索損傷及びグリア損傷の抑制につながる。IJVの流れを軽く制限することによって、蝸牛圧が増加して内耳の損傷リスクが低下し、脳脊髄液の圧力が増加して脊柱の損傷リスクが低下し、眼圧が上昇して震盪性事変から眼の内部構造が保護される。
【0014】
頭蓋内のSLOSH効果を軽減する試みにおいて、ボリュームと圧力の急激な可逆的変化が最も生じやすい1つの頭蓋内コンパートメントは、血液腔であることが分かった。コンパートメントの血液量を増加させるための最も単純で最も迅速な手段は、頸部の流出静脈の1つ以上(例えば、2、3、4、又はそれ以上)を機械的に制限することによって、その流出を阻止することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本開示の1つの態様は、外部の震盪力に晒された対象に対する損傷の可能性を低下させる方法を含み、本方法は、1つ以上の突起を対象の首に接触させるステップであって、各突起が対象の1つ以上の頸静脈の上に配置される、ステップと、突起に十分な外的圧力を加えて、1つ以上の頸静脈を通して、対象の頭部から出る血流を制限するステップと、を含んでいる。一部の実施の形態において、損傷は、外傷性脳損傷、脊柱の震盪性損傷、内耳の震盪性損傷、眼の構造又は嗅覚の構造の震盪性損傷から成る群から選択される、1つ以上の損傷を含んでいる。
【0016】
一部の実施の形態において、対象の1つ以上の頸静脈は、1つ以上の内頸静脈又は外頸静脈を含んでいる。一部の関連する実施の形態において、対象の頭部から出る血流を制限することによって、対象の頭蓋内腔の流体量が増加し、圧力が上昇する。眼球と鼓膜が僅かに外側に突出可能である(頸静脈鼓膜反射の場合等)こと、更に、頭蓋洞の孔又は開口部はすべて、より大きなボリュームを収容することができるため、頭蓋のボリュームは一定ではない。一部に実施の形態において、1つ以上の頸静脈に加えられる外的圧力は5~25mmHgの流体圧力に等しい。
【0017】
本開示の他の態様は、少なくとも1つの頸動脈を圧迫して1つ以上の頸静脈の流れを制限することによって、動物又は人間の対象における震盪性事変による、外傷性脳損傷のリスクを低下させる装置を含んでいる。本態様の装置は、内側を向き、装置着用者の首に接触して頸静脈に局所的な圧力を加える、少なくとも1つの領域(即ち、突起)を含んでいる。
【0018】
一部の実施の形態において、本装置は、対象の首を取り囲むように寸法決めされた周回カラー、及びカラーと一体化された1つ以上の内向きの突起を備え、カラーが対象の首を囲んだとき、突起が対象の1つ以上の頸静脈上に配置されるように、カラー上に位置し、カラーは、十分な圧力を突起に加えて、1つ以上の頸静脈を通して、対象の頭部から出る血流を制限するように寸法決めされている。
【0019】
一部の関連する実施の形態において、周回カラーは、対象の鎖骨と輪状軟骨との間に配置されるように寸法決めされている。
【0020】
一部の関連する実施の形態において、カラーは、対象の首を囲んだとき、喉頭隆起のための間隔が設けられるように寸法決め及び配置された切欠きを画成する。
【0021】
一部の実施の形態において、周回カラーの少なくとも一部が、カラーの周囲長が増大するように伸長することができる弾性材料を含んでいる。一部の更に別の実施の形態において、カラーは、対象の首を囲んだとき、当該部分の伸長を視覚的に示すように構成された、弾性材料に関連した圧迫表示器を更に備えている。
一部の関連する実施の形態において、周回カラーは、喉頭隆起を跨ぐブリッジを画成する硬質又は半硬質部分を含んでいる。
【0022】
一部の関連する実施の形態において、周回カラーは、柔軟性材料のストラップ、及び解放可能に係合して対象の首を囲むように構成された、係合要素をストラップの対向する端部に備えている。一部の更に別の関連する実施の形態において、カラーは喉頭隆起を横断する橋を画成する硬質又は半硬質部分を更に含み、ストラップの対向端部の係合要素は、硬質又は半硬質の喉頭ブリッジの対応する端部に解放可能に係合するように構成されている。一部の更に別の関連する実施の形態において、柔軟性材料のストラップは、伸長してカラーの周囲を増大させることができる弾性材料を含んでいる。
【0023】
一部の関連する実施の形態において、周回カラーは、カラー内に配置された1つ以上の袋を更に備えている。一部の更に別の関連する実施の形態において、袋の少なくとも1つが、カラー内の突起の上方以外の位置に配置されている。一部の更に別の関連する実施の形態において、袋の少なくとも1つは、1つ以上の突起の上方の位置に配置される。一部の更に別の関連する実施の形態において、突起は1つ以上の袋によって画成される。一部の更に別の関連する実施の形態において、袋の少なくとも1つは、可逆的に圧縮可能な発泡材料を含み、気泡を含む袋の内部が、圧力逃し弁を介して、袋の外部と流体連通している。一部の更に別の関連する実施の形態において、周回カラーが、袋と流体連するポンプ要素を更に備え、それによって袋の充填レベルを調整することができる。
【0024】
一部の関連する実施の形態において、周回カラーは、1つ以上の結束バンド式ラチェットタブ、及び1つ以上のタブ用受け部を含み、結束バンド式ラチェットタブの各々が、受け部を通過するように配置された、結束バンドラチェット式取り付け調整システムを更に備えている。受け部は、ラチェットタブが、受け部を通過して一方向に移動して、周回カラーの周囲長を短くすることができるが、ラチェットタブの反対方向の移動を阻止するように構成されている。加えて、ラチェットタブは、所定のレベル以上の力で周回カラーから引き離されると、対応する受け部の下部の点において、周回カラーから離れるように構成されている。
【0025】
一部の関連する実施の形態において、周回カラーは、カラーの外周の少なくとも一部にわたる1つ以上のケーブル、及び各々がケーブルの少なくとも1つに取り付けられた、1つ以上のラチェット要素を含む、ケーブルラチェット式取り付け調整システムを更に備えている。これ等の実施の形態において、ラチェット要素の各々が、カラーの外周の少なくとも一部にわたるケーブルの長さを調整することによって、カラーの周囲長を調整するように構成されている。一部の更に別の関連する実施の形態において、ラチェット式取り付け調整システムは、ラチェットシステムに可逆的に係合可能に構成された、周回カラーとは異なる調整具を更に備えている。これに代わる一部の実施の形態において、ラチェット式取り付け調整システムは、周回カラーと一体の調整具を更に備えている。
【0026】
一部の関連する実施の形態において、本装置は、装置外面上に、1つ以上の識別可能な図形又は触覚的な基準点を備えている。
【0027】
一部の関連する実施の形態において、カラーは、脈拍、血圧、又は頸静脈上への突起の適正配置及び圧力を示す、その他のインディシアを検出することができる、1つ以上のセンサーを更に備えている。一部の更に別の関連する実施の形態において、本装置は、センサーに動作可能に接続され、センサーの検出値を示す信号を送信することができる送信機を更に備えている。一部の更に別の関連する実施の形態において、本装置は、センサーに動作可能に接続され、適正な取り付け及び/又は位置合わせのインディシアを、視覚的又は聴覚的に示すように構成された電子回路を更に備えている。一部の実施の形態において、視覚インディシアは、発光ダイオード(LED)からの光であってよい。一部の実施の形態において、聴覚インディシアは、スピーカーからの音であってよい。
【0028】
一部の実施の形態において、本装置は、概してC、V、又はU字形を成し、対象の首の大部分を囲むように寸法決めされた、弾性弓形バンドを含む半周回カラー、及び半周回カラーと一体の1つ以上の内向きの突起を備えている。これ等の実施の形態において、カラーが対象の首の一部を囲んだとき、突起が対象の1つ以上の頸静脈上に配置されるように、半周回カラー上に配置され、カラーは、十分な圧力を突起に加えて、1つ以上の頸静脈を通して、対象の頭部から出る血流を制限するように寸法決めされている。
【0029】
一部の関連する実施の形態において、カラーは対象の鎖骨と輪状軟骨との間に位置するように寸法決めされている。
【0030】
一部の関連する実施の形態において、半周回カラーは、首の前面又は首の背面において開放している。
【0031】
一部の実施の形態において、周回カラーは(i)対象の1つ以上の頸静脈に十分な圧力を加えて、1つ以上の頸静脈を通して対象の頭部から出る血流を制限するように構成された、内側に向いた突起を有する、実質的に互いに対向する1対の硬質又は半硬質側面部材、(ii)1対の硬質側面部材の腹側端部を接続するように構成され、更に対象の喉頭隆起を橋絡するように構成された、2つの横方向に配置された端部を有する硬質前面部材、及び(iii)1対の硬質側面部材の背側端部を接続するように構成された2つの横方向に配置された端部を有する背面部材を備えている。必要に応じて、背面部材は弾性材料、一方の側面部材とのヒンジ接続部、他方の側面部材との固定具接続部、及び/又はフックアンドパイル固定システムを備えている。必要に応じて、背面部材及び前面部材の少なくとも一方が取り外し可能である。
【0032】
一部の実施の形態において、半周回カラーは、対象の1つ以上の頸静脈に十分な圧力を加えて、1つ以上の頸静脈を通して、対象の頭部から出る血流を制限するように構成された、内側に向いた突起を有する、実質的に互いに対向する1対の硬質側面部材、及び1対の硬質側面部材の腹側端部を接続するように構成され、更に対象の喉頭隆起を橋絡するように構成された、2つの横方向に配置された端部を有する硬質前面部材を備えている。
【0033】
一部の実施の形態において、本装置は、対象の首周囲の小部分を囲むように寸法決めされた柔軟材料、及び柔軟材料の内表面に接触した1つ以上の内側に向いた突起を備えている。これ等の実施の形態において、柔軟材料は、柔軟材料の内表面が突起を越えて延びるように寸法決めされ、突起は、対象の首の頸静脈上に配置されたとき、本装置が対象の頭部から出る血流を制限するのに適した大きさ及び形状である。
【0034】
一部の関連する実施の形態において、柔軟材料がプラスチック又は織物を含んでいる。
【0035】
一部の関連する実施の形態において、柔軟材料の突起を越えて延びる部分に接着剤が塗布されている。
【0036】
一部の関連する実施の形態において、柔軟材料は弾性材料である。代わりに、一部の関連する実施の形態において、柔軟材料は非弾性材料である。
【0037】
一部の関連する実施の形態において、突起は、概してC、V、又はU字形の弾力弓形バンドの外方屈曲点によって画成される。
【0038】
一部の関連する実施の形態において、本装置は、2つ1組で対象の首に装着されることを意味している。一部の関連する実施の形態において、かかる装置の2つは、取り外し可能なテザーによって互いに取り付けられ、取り外し可能なテザーは、対象の首に装着中、適切な間隔及び位置合わせを容易するように寸法決めされている。
【0039】
一部の実施の形態において、本装置は、概してC、V、又はU字形を成し、対象の首の小部分を囲むように寸法決めされた弾性弓形バンド、及び1つ以上の内側に向いた突起を備えている。これ等の実施の形態において、対象の首に装着したとき、弾性弓形バンドが、1つ以上の突起に圧力を加えて、対象の頭部から出る血流を制限するように構成されている。
【0040】
別の態様において、本発明は、周回又は半周回カラーを備え、カラーに恒久的又は取り外し可能に取り付けることができる、少なくとも1対のパッドによって、突起が画成されたシステムであって、パッドは内側に向いた突起を形成又は含み、着用したとき、パッドが、対象の1つ以上の頸静脈上に配置され、これ等の頸静脈に一定の圧力を加えるように、カラーが寸法決めされているシステムを提供する。必要に応じて、本システムは、複数対のパッド(例えば、2、3、4、又はそれ以上の対のパッド)を備え、各々のパッド対は、パッドの大きさ及び/又は形状、並びに突起の大きさ及び/又は形状が、他の各々のパッド対と異なっている。
【0041】
更に別の態様は、対象の首を少なくとも部分的に囲むように寸法決めされたカラー、及びカラーと一体の1つ以上の内側に向いた突起を備えた、衣服を開示している。かかる衣服において、衣服が着用されたとき、突起が対象の1つ以上の頸静脈上に配置されるように、カラー上に位置し、衣服は、十分な圧力を突起に加えて、1つ以上の頸静脈を通して、対象の頭部から出る血流を制限する。1つの実施の形態において、突起は衣服と一体である。衣服は弾性を有するか、又は突起によって頸部静脈に加えられる圧力を制御する取り付け機構を有するタートルネックを備えることが好ましい。別の実施の形態において、衣服は、対象による衣服の脱着、及び/又は突起の位置調整、及び又/は突起によって加えられる圧力の調整を支援するために、首の周囲(例えば、ジャケット)に配置された、ジッパー又は他の固定装置を備えている。
【0042】
1つの実施の形態において、本システムは、(i)喉頭隆起において開放した周回カラー、又は半周回カラーであって、人間の対象が首に着用するように構成され、対象の1つ以上の頸静脈に十分な圧力を加えて、1つ以上の頸静脈を通して、対象の頭部から出る血流を制限するように配置及び構成された、内側に向いた突起を有するカラーと、(ii)喉頭隆起において開放した、周回フラップ又は半周回フラップを有する衣服であって、フラップが、衣服の首に位置し、カラーに折り重なるように構成されて成る衣服と、を備えている。必要に応じて、フラップは、上部取り付け装置及び下部取り付け装置(例えば、フックアンドパイルシステム)を有し、上部取り付け装置と下部取り付け装置とが互いに係合したとき、フラップがカラーを囲むスリーブを形成する。フラップが取り付け装置を有していない場合、フラップは、単にカラーに折り重なって、カラーと対象の首との間に布層を提供しつつ、カラーを隠すように構成されている。別の実施の形態において、首開口部のフラップは不連続であって、衣服本体に固定され、カラーを所定の位置に保持することができる、複数のストラップ(例えば、2、3、4、5、又はそれ以上のストラップ)を備えていることが好ましい。本実施の形態において、カラーは、衣服のストラップの位置に位置合わせされた穴を含み、ストラップが穴を通過してカラーを衣服に固定するように構成されていてもよい。代わりに、カラーを衣服に固定するために、ストラップがカラーを囲むように構成されていてもよい。
【0043】
別の実施の形態において、本システムは(i)喉頭隆起において開放した、半周回カラーであって、人間の対象が首に着用するように構成され、対象の1つ以上の頸静脈に十分な圧力を加えて、1つ以上の頸静脈を通して、対象の頭部から出る血流を制限するように配置及び構成された、内側に向いた突起を有するカラーと、(ii)首に半周回スリーブを有し、喉頭隆起において開放した衣服であって、スリーブがカラーを取り外し可能に受け入れるように構成されて成る衣服と、を備えている。スリーブはチューブであって、喉頭隆起の開放部に近接した衣服の領域において、何れか一方の端部が開放していることが好ましい。
【0044】
前述の態様の何れかに記載の衣服も本発明に含まれる。
【0045】
本明細書において「周回カラー」という用語は、動物又は人間の対象が着用したとき、首の全周囲を囲む装置を意味する。
【0046】
本明細書において「半周回カラー」という用語は、動物又は人間の対象が着用したとき、首周囲の大部分を囲む装置を意味する。半周回カラーに囲まれていない首周囲の部分は、囲まれた部分が着用者の頸静脈に圧力を加えることができる限り、首周囲の任意の位置に配置することができる。一般に、開放部分は、喉の前(例えば、一部の実施の形態において、半周回カラーは、喉頭隆起によって実質的に画成される領域を除く首を囲むことができる)又は開放部分は首の背面である。更なる詳細については後述する。
【0047】
本発明の装置の特定の態様及び実施の形態の説明は、ユーザーが着用したとき、装置を参照しながら読まれることを前提とした、解剖学的平面及び記述子に準拠している。例えば、背側態様は、装置を着用したとき、対象の背側に向かう装置の態様を意味する。同様に、「内側に」や「外側に」等の用語は、装置が着用されたとき、対象に対する装置の態様を意味する。例えば、突起は、対象の首に接触するように、内側に向いていてよく、広告、ロゴ、及び張力表示器は、第三者が見ることができるように外向きである。
【0048】
一部の実施の形態において、カラーは布を含むことができる。関連する実施の形態において、カラーは弾性材料を含むことができる。
【0049】
一部の実施の形態において、周回又は半周回カラーは、適切なポリマー(例えば、エラストマー)又は形状記憶合金等の半硬質の形状記憶材料を含むことができる。
【0050】
本開示の本態様の一部の実施の形態において、カラーの大きさ及び張力が調整可能である。本開示の本態様の一部の実施の形態において、本装置は1つ以上の分離解放機構を更に備えることができる。
【0051】
本開示の本態様の一部の実施の形態において、対象の首に接触するように内側に向いた本装置の少なくとも1つの領域は、カラーの領域を膨張させることによって形成することができ、本装置は、必要に応じて、膨張可能な突起、又は本装置の任意の領域を膨張させるためのポンプ、及び必要に応じて、膨張のための加圧気体又は流体源を更に備えている。本開示の本態様の一部の実施の形態において、本装置は、カラーの圧力を調整するための逃し弁を更に備えることができる。
【0052】
本明細書において、「衣服」という用語は、対象の胴体の周囲に着用されることを前提に設計され、一体化された突起を保持して頸静脈に圧力を加えるか、又は本発明の周回又は半周回カラーを受け取り、及び/又は所定の位置に保持するように構成された、カスタマイズされた機能を有する衣料品を意味する。衣服は、例えば、完全ジッパー付き、部分ジッパー付き、又はプルオーバー式であってよく、必要に応じて、対象の活動に適した保護具の上に着用するように設計されていてもよい、シャツ、ジャージ、ジャケット等を含んでいる。
【0053】
本開示の別の態様は、動物又は人間の対象の頭蓋内ボリューム及び圧力を増加させる方法であって、(i)動物又は人間の対象の首をカラーで囲むステップであって、カラーは、動物又は人間の対象の首に接触するように、内側に向いた少なくとも1つの領域を有する、ステップと、(ii)首に接触するように、内側に向いた少なくとも1つの領域を、対象の頭蓋内腔から血液を運ぶ頸静脈を覆っている首の領域に配置するステップと、(iii)首に接触するように、内側に向いた少なくとも1つの領域を、首の表面に押圧して頸静脈に圧力を加えるステップであって、対象の頭蓋内腔から出る血流を制限することによって、対象の頭蓋内圧及び/又はボリュームを増加させるステップと、を備えた方法を含んでいる。
【0054】
本開示の更なる態様は、内耳、眼の構造、及び脊柱の傷害を軽減し、嗅覚機能の喪失を防止するための方法を提供する。内耳の損傷を軽減する方法において、震盪性事変の間、頸静脈に圧力を加えることによって、蝸牛液量及び圧力を増加させる。眼の構造の損傷を軽減する方法において、震盪性事変の間、頸静脈に圧力を加えることによって、眼内圧を増加させる。内耳の損傷を軽減する方法において、震盪性事変の間、頸静脈に圧力を加えることによって、脳脊髄液量及び圧力を増加させる。頸静脈に圧力を加えることによって、頭蓋内のボリューム及び圧力が増加するため、嗅覚機能の喪失を抑制又は防止することもできる。
【0055】
本発明の前述の態様の何れかの一部の実施の形態において、頸静脈に加えられる圧力は約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80mmHg以下、あるいは約10~70mmHg、約10~60mmHg、約10~50mmHg、約10~40mmHg、約15~80mmHg、約15~70mmHg、約15~60mmHg、約15~50mmHg、約15~40mmHg、約20~80mmHg、約20~70mmHg、約20~60mmHg、約20~50mmHg、約20~40mmHg等、約10~80mmHgを含む約5、10、15、20、25、30、35、又は40mmHg以上であってよい。
【0056】
本開示の更なる態様は、添付の図面と併せて以下に説明する様々な実施形態の詳細な説明を検討することによって、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1A】1つの開示された実施の形態による圧縮カラーの上面図。
【
図1B】1つの開示された実施の形態による圧縮カラーの上面図。
【
図1C】1つの開示された実施の形態による圧縮カラーの側面図。
【
図2】開示された別の実施の形態による圧縮カラーの上面図。
【
図3】開示された別の実施の形態による圧縮カラーの上面図。
【
図4】圧迫表示器を組み込んだ別の実施の形態の圧迫カラーの上面図。
【
図5】
図4のカラーに取り付けられる上張りの上面図。
【
図6】
図4~5の圧迫カラー及び上張りの部分上面図。
【
図7】カラーの異なる伸縮度で示される、圧迫カラーの上張り及び表示計細片の連続図。
【
図8】p-値<0.01の、IJVを圧迫した結果得られた頭蓋内圧(ICP)の変化を示すグラフ。
【
図9】p-値0.01の、IJVを圧迫した結果得られた眼内圧(IOP)の変化を示すグラフ。
【
図10】IJV圧迫の適用(左側の矢印)及び除去(右側の矢印)に起因する、15分間にわたる頭蓋内圧(ICP)及び眼内圧(IOP)に見られる、生理学的変化の代表的な軌跡を示すグラフ。注目すべき点は、これらの変化が持続する時間だけでなく、IJV圧迫後のICPとIOPの両方、及びそれに対応するボリュームの迅速な応答である。
【
図11A】本開示によるIJV圧迫装置の適用なしに、損傷後にAPP染色された皮質脊髄路のデジタル画像。
【
図11B】本開示によるIJV圧迫装置の適用した、損傷後にAPP染色された皮質脊髄路のデジタル画像。
【
図12】APP染色、p-値<0.01、によって示される軸索損傷に対するIJV圧迫の効果を示すグラフ。
【
図13】本発明の様々な実施の形態に使用できる、弾性材料から成る周回カラーを示す図。
【
図14】周回カラー、開閉用締め具、及び着用者の頸静脈に圧力を加えるように構成された2つの突起を備えた、本発明の1つの実施形態を示す図。
【
図15】周回カラー、開閉用締め具、喉頭ブリッジ、及び着用者の頸静脈に圧力を加えるように構成された2つの突起を備えた、本発明の1つの実施形態を示す図。
【
図16】各々が着用者の頸静脈に圧力を加えるように構成された、2つの突起を有する第1の要素(即ち、前部)、及び第1の要素の何れか一方の端部に、取り外し可能に取り付けられるように構成された、布製のカラーを有する第2の要素(即ち、後部)の2つの要素を含む周回カラーを備えた、本発明の1つの実施形態を示す図。
【
図17】周回カラー、開閉用締め具、及び各々(袋と圧力逃し弁を含む)が着用者の頸静脈に圧力を加えるように構成された2つの突起を備えた、本発明の1つの実施形態を示す図。
【
図18】本発明の様々な実施の形態に使用できる、前面が開放した半周回カラーを示す図。
【
図19】本発明の様々な実施の形態に使用できる、背面が開放した半周回カラーを示す図。
【
図20A】周回カラーを使用せずに、首の適切な位置に圧力を加える本発明の例示的な実施の形態を示す図。これ等の実施の形態は、一般に、対で着用され、1つの装置が首の片側に着用される。
【
図20B】周回カラーを使用せずに、首の適切な位置に圧力を加える本発明の例示的な実施の形態を示す図。これ等の実施の形態は、一般に、対で着用され、1つの装置が首の片側に着用される。
【
図20C】突起が部分的又は完全に閉塞しようとする頸静脈上を覆うように、対象の首に正確に配置されるように寸法決めされた取り外し可能なテザーによって接続された、
図20A、20Bに示すような1対の装置を示す図。
【
図21】周回カラーを使用せずに、首の適切な位置に圧力を加える、本発明の例示的な実施の形態を示す図。
図21に示す装置は、
図21A、21Bに示すものと似ているが、1対の装置間に、首に取り付ける際の位置合わせ及び間隔設定の案内として機能する、適切な長さの取り外し可能なテザーを更に備えている。
【
図22】周回カラーを使用せずに、首の適切な位置に圧力を加える、本発明の別の実施の形態を示す図。本実施の形態において、本装置は一端又は両端に配置された突起を有する、U字形の弾性バンドを備えている。
【
図23】特定の圧力以上で引っ張ると、カラーから外れるように構成された、引き外し結束バンドラチェット式取り付け調整システムを備えた本発明の周回カラー型の装置。
【
図24】回転ラチェット式取り付け調整システム及び外部調整ツールを備えた、本発明の周回カラー型の装置。
【
図25】一体型調整ダイヤルを有する回転ラチェット式取り付け調整システムを備えた、本発明の周回カラー型の装置。
【
図26】外表面に、装着者に対する取り付け及び/又は位置合わせを支援するための、1つ以上の識別可能な図形又は触覚基準点を備えた、本発明の周回カラー型の装置。
【
図27】装置が、脈拍、血圧、又は頸静脈上への突起の適正な配置及び圧力を示すその他のインディシアを検出するように構成されたセンサー、並びにセンサーからの信号を外部の装置に送信する手段を更に備えた、本発明の別の実施の形態を示す図。
【
図28】1つ以上の突起が衣服と一体となった、本発明の別の実施の形態を示す図。
【
図29】本システムの構成要素の実施の形態を示す図。
【
図30】着用可能な衣服に組み込まれた、本システムの実施の形態を示す図。
【
図31】着用可能な衣服に組み込まれた、本システムの別の実施の形態を示す図。
【
図32】着用可能な衣服に組み込まれた、本システムの別の実施の形態を示す図。
【
図33】本システムの実施の形態に使用されるカラーの別の実施の形態を示す図。
【
図34】特に着用者の喉頭隆起及び/又は喉の領域を保護する、硬質又は半硬質の前面部材を有するカラーの別の実施の形態を示す図。
【
図35】衣服(例えば、シャツ又はジャージ)に取り付けられ、カラーの固定に使用される固定ストラップを受け入れるように構成された、複数の穴を有するカラーの別の実施の形態を示す図。
【
図36】
図35に示すカラーの穴を通過させて、カラーを衣服に固定するように構成された、首開口部の周囲に配置された複数のストラップを有するシャツを示す図。ストラップの端部は衣服本体に固定することができる。
【
図37】
図35に示すカラーが
図36に示すシャツに固定され、カラーが対象の首の周囲に適切に配置されたとき、ストラップが穴に位置合わせされたシステムを示す図。カラーをシャツに固定するために、シャツのストラップがカラーの穴に通されて、シャツの本体に固定される。
【
図38】ストラップがカラーの上を通過して、シャツの本体に固定されるように構成されたシステムの別の実施の形態を示す図。本システムにおけるカラーは、ストラップを受け入れるように構成された穴がないものとして示してあるが、本システムは、穴を有する(しかし、穴は使用されないか、又はカラーが対象の首の周囲に適切に配置されたとき、ストラップが穴に位置合わせされない)カラーを含む、任意の適切に設計されたカラーを使用して、目的を達成することができる。
【0058】
図面については、以下の説明及び実施例において、更に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本開示の方法及びシステムの一部の例示的な実施の形態を、以下に詳細に説明する。当業者にとって、本開示のその他の特徴、目的、及び効果は、以下の説明、図面、実施例、及び特許請求の範囲を検討することによって明らかになるであろう。かかるその他のシステム、方法、特徴、及び効果は、すべて本説明に含まれ、本開示の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されるべきものである。
【0060】
本開示を詳細に説明する前に、本開示はここに説明する特定の実施の形態に限定されるものではなく、従って、勿論、変わり得るものであると理解されたい。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであって、本明細書の用語は特定の実施の形態の説明を目的としたものに過ぎず、限定を意図したものではない。
【0061】
タンク又は容器内の液体が動的運動を経験すると、様々な波動相互作用及び液体現象が生じ得る。外力に起因する「スロッシング」と呼ばれる流体の振動は、液体塊を含む移動中の容器において生じる。このスロッシング効果は、エネルギー吸収、ひいては媒体の安定性及び制御にとって重大な問題となり得る。本開示は、生物、特に動物及び人間の対象の頭蓋及び脊椎領域における、SLOSH効果を抑制する方法及び装置を含んでいる。
【0062】
爆風及び衝突による損傷の軽減は、主に、流体を満たした容器のエネルギー吸収の原理に基づいている。容器内の流体の移動のための余地が増えるにつれ、容器を透過するよりも多くのエネルギーが吸収される(SLOSH)。このエネルギー吸収を抑制するためには、弾性衝突をより厳密に近似する努力を払う必要がある。弾性衝突は、主に音響、運動、振動、又は熱エネルギーの正味の伝達が生じない衝突である(反発係数(r)が1.0に近いとも表現される)。以下に説明する様々な実施の形態は、生命体の生理機能を局所的に変更、増加、又は変更後の生理機能を一時的に維持して、SLOSHを通したエネルギー吸収の可能性を減らすことによって、反発係数(r)を高めることができる。反発係数(r)は、衝突物体の、完全弾性衝突((r)が1.0=エネルギー移動なし)からの差異を示す。生命体における爆風又はエネルギー吸収は、本体の衝突と見なすことができ、従って、弾性又は非弾性衝突を通したエネルギー伝達によって定義することができる。従って、生体液及び分子のエネルギー吸収のメカニズムを特定することができ、その結果、幾つかのSLOSH抑制技術を通して、吸収を軽減する手段を得ることができる。これ等の技術を通して、爆風後のエネルギー消散も促進される。
【0063】
SLOSH吸収は、生命体の器官又は細胞内の圧力又はボリュームを、可逆的に増加させることによって抑制することができる。この概念を頭蓋の内容物に適用して、1つ以上の頭蓋流出血管の流れを抑制する装置によって、頭蓋内のボリューム及び圧力を可逆的に増加させることができる。かかる装置の1つの実施の形態は、静脈抵抗を増加させるのには十分であるが、頭蓋内に入る動脈の圧力を約80mmHgより高く増加させるには不十分であるように流出血管を圧迫する。
【0064】
脳の流体内容物の圧力を上昇させることによってSLOSHを軽減すると、脳の圧縮性が低下し、脳組織又はその血管の損傷の可能性を大幅に低下させることができる。脳の圧縮性が低下すると、脳が吸収する運動、音響、熱、及び振動エネルギーが抑制される。
【0065】
頭蓋内ボリュームは、動脈血中pCO2を増加させることによって、又は、例えば、ミノサイクリン、インスリン様成長因子1、プロベラ、及びビタミンA等を含みこれに限定されない、頭蓋内ボリューム又は圧力の増加を促進する1つ以上の薬剤を供給することによっても、可逆的に増加させることができる。このような手法を本明細書に開示の装置と併用してもよい。
【0066】
内耳に関し、蝸牛水管が脳脊髄液(CSF)と直接連通し、水管の静脈が内頸静脈(IJV)に直接流入することが知られている。静脈血は、下垂体静脈洞若しくは内頸静脈中に直接排出されるか、又は前庭若しくは蝸牛水管の静脈を介して、その他の静脈洞へと流れる。内頸静脈の流出を抑制すると、必然的に蝸牛静脈が充血し、内耳のコンプライアンスが消尽し、それによって、巨視的、細胞的、及び分子レベルでの弾性衝突が改善され、これらの構造へのエネルギー伝達が低減する。
【0067】
CSF総量140mlのうち、約30ml(21%)が脊柱軸内に存在し、CSF系のコンプライアンスの約3分の1がこの脊柱コンパートメントによるものである。脳と同様に、脊柱コンパートメント内のCSFの圧力及びボリュームを増加させることによって、脊柱管の内容物の弾性が増大し、脊柱コンパートメントの震盪性損傷に対する脆弱性が低下し、震盪力に晒されたとき、脊柱管の内容物が吸収するエネルギー量が抑制される。
【0068】
眼の損傷に関し、キツツキは、つつく際の1200Gの衝撃から眼球の球体を保護する「ペクチン装置」を有することが知られている。ペクチン装置の唯一の目的は、眼球内の硝子体液の量及び圧力を増加させることのようである。ペクチン装置は眼球内に存在し、血液を満たして眼圧を一時的に上昇させることによって、レンズと網膜に対し強い圧力を保持し、そうでなければ、平均的なキツツキの寿命を通した8000万回のつつき殴打中に生じると思われる損傷を防止する。人間にはペクチン装置はないが、外頸静脈(EJV)に外部から圧力を加えることによって、眼圧を上昇させることが可能である。
【0069】
従って、本発明の1つの態様は、動物又は人間の対象が着用したとき、頭蓋内ボリュームと圧力、及び/又は眼圧を増加させる装置を含んでいる。本装置は、首の流出血管系(例えば、1つ以上の内頸静脈及び/又は外頸静脈)に圧力を加え、着用者の頭蓋内及び/又は眼内の圧力及びボリュームを増加させるように構成される。このようにして、本装置は着用者の震盪性の影響によるエネルギー吸収を抑制し、震盪性事変から、脳、脊髄、眼球のうちの1つ以上の損傷が生じる可能性を低下させる。本発明の装置は、SLOSH及び外傷性脳損傷のリスクを伴う事変が予測される前、及び事変の最中に着用されことが好ましい。
【0070】
安全かつ可逆的に、脳血液量を10cm3までの任意の量だけ増加させ、圧力を70mmHgまでの任意の量だけ増加させることが、脳血管系のコンプライアンスの余地をなくす働きをして、SLOSHエネルギー吸収を通した外的エネルギーの吸収能力が抑制される。調整された圧力を首に加えることによって、頭蓋血液量が急速に増加し、より高い新たなレベルで安定する。Moyer等の報告によれば、脳からの血液の静脈流出を妨げても、脳動脈血流には影響を及ぼさないとしている。血液量と静脈圧との関係は、首に対し圧力を水銀柱40~70mmの範囲で増加させる度に、量の増加が縮小することを示している。興味深いことに、(この首の圧力で)頭蓋血液量が10~30パーセント増加する。同様に、個々の頸静脈を圧迫すると、CSF圧力も増加する。同じ頸部圧力下において、CSF圧力の平均増加率は約48%である。これ等の変化は、加圧開始後極めて急速に生じ、頸部圧迫により脳血流量は僅か0.5秒で新しい安定値まで上昇する。頭蓋内圧及びボリュームの増加はこれより小さくても有益な効果があるが、本発明の装置は、少なくとも5mmHgの圧力を頸部に加えて、頭蓋血液量を少なくとも3cm3増加させることを意図している。
【0071】
従って、本発明の装置は、様々な形態をとることができるが、首の1つ以上の静脈(特に、内外頸静脈、脊椎静脈、及び脳脊髄循環を含みこれに限定されない静脈で、最も好ましくは内頸静脈)に継続的又は間欠的に圧力を加えることによって、脳から出る血流を制限するという機能的特徴は共通である。従って、本装置は、内側を向いて本装置の着用者の首と接触する、少なくとも1つの内向き突起、及び突起が首の1つ以上の静脈に圧力を加えることによって、脳から出る血流を制限するように、1つ以上の突起に圧力を加える少なくとも1つの手段を有している。
【0072】
着用者の首に接触する内向き突起
一部の実施の形態において、1つ以上の内向き突起は、首に圧力を加える役割を担う装置の構成部品と一体である。これに代わる実施の形態において、1つ以上の内向き突起は、首に圧力を加える役割を担う装置の構成部品とは別である。概して、突起は任意の適切な形状であってよく、例えば、先端が尖っていても丸くてよく、硬質又は半硬質のプラスチック本体、カラーの肉厚領域等によって画成される、任意の適切な材料を含んでいてもよいと理解されたい。
【0073】
一部の実施の形態において、突起は実質的に袋によって画成されていてよく、袋が膨張又は充填されたときに、着用者の首に圧力が加わる。一部の関連する実施の形態において、袋は、外気と流体連通する可逆的に圧縮可能な発泡体を含んでいてもよい。更に別の関連する実施の形態において、袋の内部は、圧力逃し弁を介して、外気と流体連通している。袋、発泡体、及び弁を備えた実施の形態において、これらの構成部品は、発泡体が袋の内部で膨らみ、圧力弁を通して空気が袋に引き込まれて、袋が所望の圧力まで膨張するように構成されていてよい。しかし、圧力逃し弁は、装置に圧力が加えられたとき、もしそうなっていなければ、首に加えられる圧力の量が不快又は望ましくないレベルまで大きくしてしまう可能性がある空気を、袋から放出できるように構成することができる。別の実施の形態において、袋は気体又は液体を含むことができ、ポンプ機構にインタフェースして、袋の圧力をユーザーが調整できるように装備又は構成することができる。ポンプ機構は、例えば、液体、空気、又は気体を袋に供給することができる、動力付きポンプ又は手で圧縮可能なポンプ等、当技術分野で理解されている任意の適切なポンプ機構であってよい。特定の実施の形態において、本装置は、下部の頸静脈に加えられる圧力の程度と持続時間を調整することができるように、ポンプ機構又は袋に動作可能に連結された圧力センサーを更に備えることができる。
【0074】
一部の実施の形態において、突起はバネ又は弾性可縮材料を備えている。これ等の実施の形態において、バネ又は弾性可縮材料は突起の内部に配置され、突起を首に当てると、バネ又は弾性可縮材料が、少なくとも部分的に圧縮される。少なくとも部分的に圧縮されたバネ又は弾性可縮材料によって加えられる力によって、突起が首に対して確実に所望の圧力を維持する。
【0075】
一部の実施の形態において、本装置は、概してC、V、又はU字形の弾性弓状バンドを備えていてよい。バンドは、弾性バネ状材料から成ることができ、それによって、装置を着用する際に、C、V、又はU字形のバンドが押し開かれる。本装置が着用されると、バネの張力によってバンドが圧縮され、バンドの中央部分又は屈曲点が首に向かって延び首に圧力が加えられる。従って、これ等の実施の形態においては、バンドの中心点又は屈曲点が着用者の首に接触する突起である。
【0076】
一部の実施の形態において、1つ以上の突起の内向き表面の少なくとも一部に、突起を首に配置して、所定の位置に置かれた後の突起の移動防止を容易にする適当な接着剤が塗布されてよい。加えて又は代わりに、首に圧力を加える装置構成部品と突起が別である実施の形態において、1つ以上の突起の外向きの表面の少なくとも一部に適切な接着剤が塗布されていてよい。かかる実施の形態において、首に圧力を加える構成部品と首そのものとの間に突起が配置できるように、装置を設計することができる。その結果、突起の外向きの表面は、装置の圧力供給構成部品の内向き表面と接触して、突起の外向き表面上の接着剤によって、所定の位置に配置された後の突起の移動が防止される。
【0077】
この種の1つの例示的な実施形態(以下に、より詳細に説明する)は、2つの円形又は楕円形のプラスチック突起(首の各側に1つずつ着用)、及び1つの弾性カラーの3つの部品を備えている。本装置は、最初に首の周囲にカラーを配置し、次に、首の両側の内頸静脈に圧力が加わるように、プラスチックの突起を、カラーと首の間の適切な位置に配置することによって着用することができる。本例で分かるように、突起の内向き及び/又は外向きの表面上の弱い接着剤の塗膜が、カラーと首との間に取り付けられた後の突起の移動の防止に役立つ。代わりに、突起が少なくとも内向きの表面上に十分な強度の接着剤の塗膜を有している場合、首の適切な位置に突起を配置してから、カラーを取り付けてもよい。何れの場合も、カラーが突起に圧力を加え、次に突起が頸静脈に圧力を加える。
【0078】
この種の別の実施の形態において、首の両側に取り付けるための位置合わせ及び間隔ガイドとして機能する適切な長さのテザーで、2つの突起を互いに固定することができる。一部の実施の形態において、テザーは取り外し可能であってよく、突起が首に取り付けられた後、テザーを引っ張るか、別の方法で取り外して、突起を着用者の首の所定の位置に残すことができる。
【0079】
一部の実施の形態において、突起は、圧力が実質的に内頸静脈にのみに加わるように寸法決めされた可縮型又は固体型のパッドである。
【0080】
周回又は半周回カラー型装置
一部の実施の形態において、本装置は周回又は半周回カラーであってよい。周回カラーは、動物又は人間の対象が着用したとき、首周囲を囲むカラーである。半周回カラーは、動物又は人間の対象が着用したとき、首周囲の大部分を囲むカラーである。半周回カラーに囲まれない首周囲の部分は、囲まれた部分が、脳から出る血流を制限するために、特別に配置された内向き突起に圧力を加えることができる限り、首周囲の任意の位置に配置することができる。一般に、開放部分は、喉の前(例えば、一部の実施の形態において、半周回カラーは、喉頭隆起、別名「喉仏」によって実質的に画成される領域を除いた首を囲むことができる)又は首の背面に位置している。
【0081】
装置が周回カラーを備える実施形態において、首に加わる圧力は、カラーの内寸が首の直径より小さいことによるものであってよいことが考えられる。このカラーの内寸の差は、カラーの作製に使用される材料によって決定される、幾つかの構成によって達成することができる。例えば、非弾性材料を含むカラーにおいて、個人が着用したとき、適切な圧力が加わるようにカラーを寸法決めすることができる。これ等の実施の形態において、カラーが個人に合わせて作られて、カラーをぴったり合わせるための調整を必要としない大きさとすることができる。代わりに、カラーの大きさは、一部について以下に詳細に説明する、幾つかの手段の何れかによって調整可能とすることができる。一部の実施の形態において、カラーが弾性材料を含み、カラーを着用したとき、弾性カラーの内寸が拡大し、カラーが拡大した弾性材料によって得られる圧迫力によって、着用者の首に圧力を加えることができる。弾性材料は、着用者に対し、優れた快適性という恩恵をもたらすこともできる。
【0082】
装置が半周回カラーを備える実施の形態において、カラーは、概してC、V、又はU字形を有する弾性弓形バンドを備えることが考えられる。これ等の実施の形態において、バンドはカラーの長さ全体ではないが、大部分にわたることを意味している。従って、これ等の実施の形態において、カラーは、着用者の首に取り付けられたときに広がるC、V、又はU字形を半硬質的に画成する。広がった弾性弓形バンドのバネ張力によって、カラーを首の所定の位置に保持して、意図した圧力を頸静脈に加える圧拍力が生じる。
【0083】
これ等の実施の形態において、首と接触して、内頸静脈上の点に圧力を加えるように構成された、少なくとも1つの内向きパッド又は成形体を、カラーの対向する側の適切な位置に配置することができる。半周回カラーが、喉の前で開放した実施の形態において、半周回カラーに覆われていない首領域は、「喉仏」としても知られている、喉頭隆起に近似した領域を画成することができる。これ等の実施の形態において、カラーの対向する側に配置された内向きのパッド又は成形体は、弾性弓形バンドの終端部又はその近傍に位置することができる。半周回カラーが、首の背面で開放した実施の形態において、内向きパッド又は発泡体は、終端部の近傍には配置せず、寧ろバンドの中心点にずっと近い位置に配置することができる。
【0084】
周回カラー、又は首の背後で開放した半周回カラーを備えた一部の実施の形態において、装置は、首の前面に切欠きを画成する喉頭ブリッジを備えることができる。カラーが喉頭隆起に接触するのを最小限に抑制して、着用者にとってカラーがより快適になるように、喉頭ブリッジの大きさ及び形状を設定することができる。これ等の実施の形態において、喉頭ブリッジは、首の前面周囲にカラーの延長を提供する硬質又は半硬質の適切な任意の材料から成ることができる。一部の実施の形態において、喉頭ブリッジは、厚い又は強化繊維材料、プラスチック、金属、又はそれ等の任意の組み合わせを含むことができる。
【0085】
装置が周回カラーを備えた一部の実施の形態において、装置は、1つ以上の内向き突起及び喉頭ブリッジを備えた前部と、各々の端部が前部の対応する端部に取り外し可能に取り付けられるように構成された、一定の長さの布を備えた後部の2つの構成部品を含んでいる。一部の実施の形態において、一定の長さの布は弾性材料又は非弾性材料を含んでいてもよい。フックアンドラダー留め具、フックアンドループ留め具、スナップ、ボタン、化学接着剤、又は当業者周知と思われる多くの留め具機構の任意の機構等、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって、後部の対応する端部に対して、前部の各々の端部を取り外し可能に取り付けることができる。取り外し可能な取り付け手段を有する装置は、所定の力で装置を開き、又は分離して、装置が意図せずに食い込んだり圧迫し過ぎたりするのを防止することができる、分離解放機構を有することもできる。
【0086】
本明細書に記載の多くの装置は、弾性材料を潜在的に含んでいるように記載されている。具体的には、これ等の装置は、対象の首周囲に沿って弾性的に伸長可能な材料を含んでいてよいことを意味している。弾性材料は、引き伸ばされたとき、自然の状態に戻ろうとする任意の材料とすることができる。例示的な材料は、布、フィルム(織布、不織布、及びネット)、発泡体とゴム(合成及び天然)、ポリクロロプレン(例えば、NEOPRENE(登録商標))、エラスタンとその他のポリウレタン-ポリ尿素共重合体(例えば、SPANDEX(登録商標)、LYCRA(登録商標))、フリース、ワープニット又は細い伸縮性生地、ラッシェル、トリコット、ミラノニット、サテン、ツイル、ナイロン、コットンツイード、ヤーン、レーヨン、ポリエステル、皮革、キャンバス、ポリウレタン、ゴム加工された材料、エラストマー、及びビニルのうちの1つ以上を含むことができる。長時間の着用又は運動中の着用に好ましいと思われる、通気性又は吸湿性を有する幾つかの弾性材料もある。前述のように、弾性材料は、十分な圧迫圧力を提供しつつ、柔軟性を維持して、着用者のあらゆる動き及び/又は筋肉の収縮に対応することによって、着用者に対し、優れた快適性という恩恵をもたらすことができる。
【0087】
加えて、弾性材料から成る装置は、部分的に補強、被覆、あるいは、Kevlar(登録商標)(パラ-アラミド合成繊維)、Dyneema(登録商標)(超高分子量ポリエチレン)、セラミックス、又はずり粘稠化流体等の1つ以上の保護材料を含むことができる。かかる補強された材料は、装置の裂傷に対する耐性を向上させるという恩恵をもたらすことができる。従って、補強された装置は、ユーザーに対し、裂傷から首を保護するという更なる恩恵をもたらすことができる。
【0088】
一部の実施の形態において、周回又は半周回カラーは、弾性又は非弾性は別にして、耐火性材料で組み立てることができる。
【0089】
装置は、首全体又は首の上下間の一部を水平に覆うことができる。本明細書に記載の装置の幅は、単なる糸(1インチ(約2.54cm)の数分の1)から、露出した首の長さ(人間では、最大12インチ(約30.48cm)、その他の生物ではそれより長い)までの範囲であってよく、長さは6~36インチ(約15.24~約91.44cm)から首を周回する長さまでの範囲であってよい。圧迫装置の幅は、1/4インチ(約0.64cm)と小さくすることができるが、最大の幅は一般的に6インチ(約15.24cm)未満であると思われる、首の高さによってのみ限定される。本装置の厚さは、僅か1mmの数分の1のフィルムから、煩わしいかも知れないが、首を暖かく保つことができる最大の値、例えば、2~3インチ(約5.08~約7.62)の厚さまでの範囲とすることができる。
【0090】
本装置の1つの実施の形態は、ユーザー用に予め円形に形成することができる。このようなフリーサイズ形式のものは、装置をどのような首のサイズにも適合させることのできる鞍帯のような帯を有することができる。代わりに、本装置は締め具によって接続されている、第1の端部及び第2の端部を有することができる。締め具は、磁気、タックストリップ、フックアンドラダー留め具、フックアンドループ留め具、プライストリップ、1つ以上のスライド締め具、1つ以上のジッパー、1つ以上のスナップ、1つ以上のボタン、1つ以上の安全ピン型留め機構、重複静電接触材料、又は当業者周知と思われる多くの取り付け機構の何れであってもよい。締め具を有する装置は、所定の力で装置を開き、又は分離して、装置が意図せずに食い込んだり圧迫し過ぎたりするのを防止できる、分離解放機構を有することもできる。1つのクイック開放又は自動開放の実施の形態は、装置に過剰な力が加わると剪断分離する少量のフックアンドラダー留め具を周回リング内に取り付けることである。
【0091】
本装置の別の実施の形態は、ユーザーが(犬用のチョーカーカラーのように)カラーの一端を引くと、ユーザーが加えた力によって、装置の長さ又は周長を有効に短縮できるように留めることができる。所望の首の圧迫が不要になった場合には(例えば、フットボールの試合と試合との間等)、ユーザーは再度弱く引くことによって、又は装置に同様に配置された別の解放機構によって圧迫を解除することができる。
【0092】
本明細書に記載のカラー型装置に、別の取り付け調整システムを使用することができる。例えば、1つの実施の形態において、引き外し結束バンド(例えば、Zip-tie(登録商標))式ラチェット取り付け調整システムを含むことができる。この種のシステムは、特定の圧力以上で引くとカラーから外れるように構成され、カラーが締り過ぎないことを保証する、1つ以上の引き外し結束バンドを含むことができる。これに代わる実施の形態において、回転式ラチェットフィット調整システムを含むことができる。かかる実施の形態において、システムは、取り付け調整に外部ツールが使用されるように設計されてもよい。かかるシステムは、弾性材料及び/又はVelcro(登録商標)開閉システム等の(前述のような)調整可能な締め具システムを使用して、装置を全体的にフィットさせることが好ましい。次に、ラチェット調整システムを使用して、個々の着用者に合わせて装置が微調整される。外部ツールシステムに代わるものとして、一体化された調整ダイヤルを有する回転式ラチェット取り付け調整システム、例えば、米国特許第8,381,362号明細書、及び米国特許出願公開第2012/0246974号明細書に記載されているようなBOA(登録商標)回転式ラチェット取り付け調整システム。
【0093】
一部の実施の形態において、周回又は半周回カラーは形状記憶ポリマーを含むことができる。かかる実施の形態において、カラーはユーザーの首に取り付けられ、次いで形状記憶ポリマーに適切な刺激が与えられることによってカラーが収縮してぴたりと合うことになる。
【0094】
一部の実施の形態において、周回又は半周回カラーは、カラーによって着用者の首に加わる圧力を、膨張又は収縮させることによって調整することができる袋を備えることができる。一部の関連する実施の形態において、袋は外気と流体連通する可逆的に圧縮可能な発泡体を含むことができる。更に別の関連する実施の形態において、袋の内部は、圧力逃し弁を介し、外気と流体連通している。袋、発泡体、及び弁を備えた実施の形態において、発泡体が袋の内部において膨張し、圧力逃し弁を介し、空気を吸い込んで袋を所望に圧力に膨張させるように、これ等の構成部品を構成することができる。しかし、圧力逃し弁は、突起に圧力が加えられたとき、もしそうなっていなければ、首に加えられる圧力の量が不快又は望ましくないレベルまで大きくしてしまう可能性がある空気を、袋から放出できるように構成することができる。別の実施の形態において、袋は気体又は液体を含むことができ、ポンプ機構にインタフェースして、袋の圧力をユーザーが調整できるように装備又は構成することができる。ポンプ機構は、例えば、液体、空気、又は気体を袋に供給できる、動力付きポンプ又は手で圧縮可能なポンプ等、当技術分野で理解されている任意の適切なポンプ機構であってよい。特定の実施の形態において、本装置は、下部の頸静脈に加えられる圧力の程度と持続時間を調整できるように、ポンプ機構又は袋に動作可能に連結された、圧力センサーを更に備えることができる。一部の実施の形態において、袋は、突起の上部を除く、カラーの少なくとも一部を含んで配置される。一部の実施の形態において、袋はカラー周囲の大部分を通して配置される。
【0095】
一部の実施の形態において、周回又は半周回カラーは、ポーチ又はポケットを更に備えることができる。このポーチ又はポケットは、外部からアクセス可能である、即ち、カラーを着用中にアクセス可能であっても、カラーを取り外したときにのみアクセス可能であってもよい。かかるポーチ又はポケットは、CO2供給が可能な材料、炭酸脱水酵素錠剤、メチレンブルー、DHA、気付け薬等、TBI関連の災害の治療に有用な1つ以上の品物を運ぶのに適した寸法とすることができる。
【0096】
一部の実施の形態において、周回又は半周回カラーは、カラーの内向き表面の温度を変えるように構成された、圧電ヒートポンプを含む電気回路を更に備えることができる。かかるヒートポンプを使用して、例えば、周囲温度から最大70℃だけ、装置を加熱又は冷却することができる。
【0097】
一部の実施の形態において、周回又は半周回カラーは治療的電気刺激を与えるように構成された電気回路を更に備えることができる。例えば、電気回路は経皮的末梢神経電気刺激を与えるように構成されてもよい。
【0098】
非カラー型装置
一部の実施の形態において、本装置は非カラー型装置とすることができる。非カラー型装置は、動物又は人間の対象が着用したとき、首周囲の小部分を覆う又は囲む装置である。しかし、非カラー型装置によって覆われる、又は囲まれる首周囲の部分は、前述のように、少なくとも頸静脈上の1つ以上の首領域を含んでいる必要がある。カラー型装置と同様に、非カラー型装置も、内向き突起を利用して、首の特定の位置に圧力を加えて脳から出る血流を制限する。前述の突起の何れも非カラー型装置に使用することができる。
【0099】
一部の実施の形態において、突起の外に向いた側は、突起によって画成される領域を超えて延びる柔軟材料で覆うことができる。これ等の実施の形態において、装置が所定の位置に配置されると、この延伸された内向き表面の少なくとも一部が首に接触する。一部の実施の形態において、首に接触する柔軟材料の内向き表面の少なくとも一部に、適切な接着剤が塗布され、首に取り付けられたとき、柔軟材料が突起を適切な位置に保持して頸静脈に圧力を加える。柔軟材料は弾性でも非弾性でもよい。柔軟材料は、任意の合成又は天然の織物若しくは布材料、又は任意の適切なプラスチックであってよい。
【0100】
かかる実施の形態は、首の両側に取り付けるための1対の材料/突起の組み合わせを備えることができる。一部の関連する実施の形態は、前述のように、テザーによって連結された1対の材料/突起の組み合わせを備えることができる。テザーは、突起を首の正しい位置に位置合わせし、適切に配置するのを支援する役割を果たすのに適した長さとすることができる。一部の実施の形態において、突起を首の各側に配置した後に、テザーを取り外すことができるように、1対の材料/突起の組み合わせに取り外し可能にテザーを取り付けることができる。
【0101】
一部の非カラー型装置において、装置は概してC、V、又はU字形の弾性弓形バンドを備えることができる。これ等の実施の形態において、突起はバンドの各アームの末端又はその近傍に配置され、装置が所定の位置に配置されたとき、バンドが首の前面の周囲に延びることを意味している。従って、これ等の実施の形態において、バンドは、装置が着用者の首に取り付けられたとき広がるC、V、又はU字形を半硬質的に画成する。広がった弾性弓形バンドのバネ張力によって、装置を首の所定の位置に保持して、突起を介して、意図した圧力を頸静脈に加える圧拍力が生じる。一部の実施の形態において、弾性弓形バンドは、首の前面の概して喉頭隆起の領域を横断しないように寸法決め及び成形されている。代わりに、バンドは首の前面の喉頭隆起より下の位置を横断することができる。
【0102】
一体型突起を備えた衣服又はその他の保護具
更に別の実施の形態において、(前述のような)突起を様々な衣類及び/又は保護具に組み込むことができることが想定される。かかる衣服及び/又は他の保護具は、一般に、軍用の制服、スポーツ用衣服、第1応答者のネックガード、自動車若しくはオートバイの運転者、又は消防士用の難燃性ヘッドギア等、特定の目的の一部として設計することができる。いずれにしても、突起は、着用者の首に接触する衣服又は保護具の一部、即ち、突起に圧縮力を供給するカラーの適切な位置に含めることができる。従って、周回又は半周回カラー型装置に関して提供される、閉鎖、位置合わせ、若しくは取り付け手段、又はその他任意のオプション機能の何れも、衣服及び/又は保護具の実施の形態に組み込むことができる。
【0103】
1つの態様において、本発明は、各々が互いの使用に適するように構成された、衣服及び周回又は半周回カラーを備えたシステムを提供する。1つの実施の形態において、衣服はカラーを受け入れるように構成された上部を有している。例えば、衣服の上部は、対象の首とカラーとの間に布層が設けられるように設計された、延長フラップを有することができ、フラップの延長部分が折り重ねられ、必要に応じて固定されて、カラーを隠すと共にカラーを所定の位置に保持するのを支援する。別の実施の形態において、衣服の上部は、カラーを受け入れるように構成されたスリーブを有している。別の実施の形態において、カラーは対象の皮膚の上に直接配置され、衣服の上部がカラーの全部又は一部を隠すように構成されている。必要に応じて、カラーに対して衣服の上部を所定の位置に保持するために、衣服の内部及びカラーの外部が相互に係合する締結手段を有している。かかる適切な締結手段の1つはフックアンドパイルシステムである(例えば、VELCRO(登録商標))。
【0104】
別の態様において、衣服の上部には一体的な突起が恒久的に固定されている。必要に応じて、衣服の上部は、突起を介して頸静脈の圧力を加えるように構成された、独立型のカラーに似た、硬質又は半硬質の部材を備えている。硬質部材に代えて又は加えて、衣服の上部は、突起を介し、頸部静脈に加圧及び制御するように構成された閉鎖及び/又は取り付け機構を備えた、完全に周回するものであってよい。
【0105】
視覚的又は触覚的位置合わせ補助具
前述の何れの実施の形態も、ユーザー又は第三者の観察者に、突起の適切な位置合わせ及び位置決めを決定する際に、視覚的又は触覚的補助を提供するように設計された1つ以上の材料を更に含み、及び/又は1つ以上の構成方法を更に適用することができる。例えば、カラー型装置は、首の中間点に、コントラスト材料、反射材料の小片、若しくはパッチ、又は質感が異なる材料を含むことができる。代わりに又は加えて、同様の視覚的又は触覚的なしるしを、前述の装置の何れかに組み込んで、外から突起の位置が分かるようにすることができる。
【0106】
更に、弾性材料を使用する前述の何れの実施の形態も、十分に引き伸ばされて下部の突起に適切な力が加えられたとき、図形又は色が変化する二重層材料を備えることができる。かかる実施の形態において、図形又は色の変化によって、着用者又は第三者の観察者に対し、装置が少なくとも十分な圧迫力を加えていることを視覚的に示すことができる。
【0107】
内蔵センサー又はその他の電子システム
前述の何れの装置も、取り付け又は埋め込まれた、1つ以上のモニター、記録、及び/又は通信装置も有することができる。例えば、装置は着用者の周囲の1つ以上の環境パラメータ、着用者の1つ以上の生理学的パラメータ、又はそれ等のいくつかの組み合わせを検出できるセンサーを含むことができる。例示的な検出可能な環境パラメータには、カラーがこれまでに着用された時間、気圧、気温、湿度、加速/減速(即ち、Gの力)、姿勢(直立/仰向け)等が含まれる。例示的な検出可能な生理学的パラメータには、装置を着用している人間又は動物の脈拍、血圧、プレチスモグラフィー、皮膚温度、酸素飽和度、一酸化炭素ヘモグロビン濃度、メトヘモグロビン濃度、血糖値、電気流量等が含まれる。かかるセンサーの何れによっても、着用者の環境的若しくは生理学的特徴、又は能力の面をモニターすることができる。脈拍、血圧、及び/又はプレチスモグラフィーを検出することができるセンサーは、突起が頸静脈上に適切に配置され、血流を制限するのに適した圧力が加えられたとき、ユーザーに知らせる、位置合わせ及び/又は取り付け支援として使用される付加的又は代替的な機能を果たすことができる。
【0108】
一部の関連する実施の形態において、装置は、誤動作又は望ましくないセンサーの読取値を視覚的、聴覚的、又は触覚的に表わすインディシアを提供することができる電子回路を更に備えることができる。例えば、電子回路は、脈拍又は血圧センサーが所定の値より高い又は低い読取値を検出した場合、カラーを振動させるように構成されていてもよい。
【0109】
加えて又は代わりに、前述の何れの装置も、着用者の位置を送信するように構成された電子回路を備えることができる。例えば、前述の何れの装置も、着用者の位置の追跡又は捜索救助のために、着用者のGPSの座標を送信するように構成された電子回路を備えることができる。
【0110】
加えて又は代わりに、前述の何れの装置も、着用者と第三者との間で音声通信を送受信するように構成された電子回路を備えることができる。
【0111】
一部の実施の形態において、かかるセンサーの出力は、装置の別の構成部品、例えば、視覚的又は聴覚的な表示を提供するように構成された(LED、圧電スピーカー等を使用した)電子回路によって、ユーザー又は第三者に視覚的又は聴覚的に伝達することができる。一部の実施の形態において、装置はセンサーからの信号を、スマートフォン、ラップトップ、又は専用受信機等の、外部の電子装置に伝達することができる通信手段を更に備えている。
【0112】
例を含め、これ等の用語及び仕様は、本発明を例示的に説明するのに役立つものであり、本発明を限定するものではない。前述とは異なるが、本明細書に記載され、特許請求された本発明の範囲から逸脱しない相違が、他者によって知覚されることが予想される。特に、本明細書に記載の何れの機能要素も、同等の機能を有する他の既知の何れかの要素に置き換えることができる。
【0113】
例示的な実施の形態
カラー型装置の特定の実施の形態を
図1~3に示す。
図1(a)~(c)において、圧迫カラー10は、動物又は人間の対象の首を囲むための、各種の大きさで提供可能な細長のストラップ12を含んでいる。特定の例における幅は、喉頭隆起下方の首の解剖学的構造内に収まるように、約1.5インチ(約3.81cm)とすることができる。カラーの突出を最小にするために、ストラップの厚さは約0.12インチ(約0.30cm)とすることができる。ストラップ12は、綿又は特定のポリエステル等の、織られて、通気性があり、皮膚科学的に不活性、且つ非刺激性の材料から形成することができる。ストラップは、対象の頸静脈に一定の圧力を加えることを目的としているため、ストラップの材料は概して弾性であるが、時間と経過と共に、恒久的に目立つ程伸張したままにならない弾性材料から形成されることが好ましい。ストラップの中立状態の長さが当初の状態より長くなるように材料が伸びると、ストラップ12が無用となる可能性があることが理解されるであろう。その反面、ストラップの材料は、長時間にわたって着用されたとき快適なままであり、且つ、首の筋肉に合わせて適切に屈曲するように十分に弾性であるか、又は弾性的に伸長可能である必要がある。ストラップ12の有効長は、ストラップの対向端部に調整可能な係合要素16及び18を付加することによって調整可能とされる。例えば、
図1(a)に示す実施の形態において、ラッチ要素16は、他方の要素の弾性突起18aを受ける鋸歯状チャネル16aを画成する。突起18aは、ラッチのチャネル16aに対して外側の力が加わるように付勢され、突起が特定の鋸歯部16bの位置に保持される。図示の実施形態においては、カラーの長さを微調整するために突起18aを係合させる、7つの位置を提供する7つの鋸歯が示してある。2つの構成要素16、18は、ストラップ12に縫い付けるか、係合要素が使用中にストラップから外れないようにするのに十分な従来の方法で恒久的に取り付けてもよい。
【0114】
2つの型のカラーを
図1(a)及び1(b)に示す。
図1(a)のバージョンは人間の男性用であって、喉頭隆起の位置に切欠き14を有している。
図1(b)のストラップ12’は切欠きを有さず、一般に人間の女性が対象である。切欠きは、代表的な喉頭隆起に対応することができるように、約1.5インチ(約3.81cm)の幅及び約0.5インチ(約1.27cm)の深さを有することができる。カラー10は、切欠き14が隆起の下方、且つ十分に離れて位置し、対象の不快感を回避するように、対象の首の周囲に係合することが分かるであろう。
【0115】
カラー10、10’の別の特徴において、1対の圧縮可能なパッド20が、ストラップ12、12’の中心線を挟んで離間配置されている。パッドは頸静脈の位置で首に当接するように寸法決め及び配置される。1つの実施形態において、パッドは、約2.5インチ(約6.35cm)離間され、幅/長さの寸法が1.0~1.5インチ(約2.54~約3.81cm)、厚さが約0.04インチ(約0.10cm)である。
図1(c)に示すように、パッドは、部分的にストラップ12に埋め込まれていてもよい。パッド20は圧縮から良好な回復を示す、通気性のよい発泡体で形成することができる。パッドは、カラーが着用されたとき、5~30mmHgの圧迫を加えることができる、柔軟なポリウレタン発泡体等の材料から成ることができる。
【0116】
異なる係合要素を組み込んだ、圧迫カラーの別の実施の形態を
図2及び3に示す。例えば、
図2のカラー30は、一方の端部に、反対側の端部のスナップ対38と係合する、スナップ対36のアレイを含んでいる。スナップ対36は、1/4インチ(約0.64cm)等、所定の間隔で離間配置することによって、着用時にカラーの直径を調整することができる。
図3のカラー50は、一方の端部に、反対側の端部の対応するループ列58と係合する、フック列56を含んでいる。
図3の実施形態では、係合要素が調整可能である必要はないことを示しているが、調整可能であることが好ましい。
図3の実施の形態において、この調整は、ストラップ52とループ列58との間をVELCRO(登録商標)型接続を行うことによって達成することができる。特に、VELCRO(登録商標)型パッドの接合面59を使用して、ループ58をストラップの長さに沿った異なる位置において、ストラップに取り付けることができる。更に別の方法において、VELCRO(登録商標)接合面を両端部間に配置し、それに係合するVELCRO(登録商標)型パッドを各端部に配置することができる。
【0117】
本明細書に開示の圧迫カラーの1つの態様において、係合要素は、特定の負荷を受けて緩み、又は外れるように構成され、カラーが食い込み、又は絡み付いた場合、窒息や対象の首と喉への損傷のリスクを避けることが好ましい。従って、
図1の係合要素16、18、
図2のスナップ36、38、及び
図3のフック留め具59は、カラーが十分な力で引っ張られると、外れるように調整することができる。別の実施の形態において、スナップ36、38等の係合要素を磁石又は磁石のアレイに置換することができる。磁石は、カラーの使用中、頸静脈に対して所望の圧力を維持するのに十分な強度のものである。磁石の強度は、特定の負荷で緩むように調整することができる。分離機能は、係合要素とは別に、ストラップに組み込むこともできる。例えば、ストラップは、パッド20と係合要素との間に、特定の負荷を受けてストラップが裂ける強度の低い領域を含んでいてもよい。代わりに、所定の負荷において外れるように調整された、調整不能の係合体がこの領域に設けられてもよい。
【0118】
図1及び3の実施の形態において、頸静脈はパッド20によって圧迫される。パッドは所定の厚さ及び圧縮性を有している。これに代わる実施の形態において、パッドは、
図2に示すように、膨張可能な袋40に置換される。この実施の形態において、流体ライン46によって、袋がポンプ42及び逃し弁44に接続される。ポンプ42は、手動で圧搾することによって、大気を袋の中に引き込む型とすることができる。一方向弁43が、ポンプ42の流体ライン46の中に配置され、袋内の上昇した空気圧が維持される。ポンプ42は、小さなエンジンプライマバルブと同様に構成されていてよい。ポンプは、カラーが着用されている間、手動で押圧されるように構成されていてもよい。逃し弁44は手動操作して袋の圧力を軽減することができる。逃し弁は、特定の圧力に達したとき、自動排気して、袋40の過剰膨張を防止するように構成することもできる。
【0119】
これに代わる実施形態において、ポンプ42はストラップ32に埋め込まれたマイクロ流体ポンプであってよい。ポンプは、カラー内に取り付けられたバッテリ給電、又はカラーの近傍に配置されたRF送信機等による遠隔給電であってよい。ポンプは、送信機/受信機をカラーに組み込むことによって、遠隔制御することができる。受信機は袋40内部の流体圧力を示す圧力データを送信することができ、受信機はポンプ42を駆動して、圧力を適切な値まで上昇させる遠隔地で生成されたコマンドを受信することができる。ポンプ42が、手動か電動であるかを問わず、カラーの外側において読み取り可能な圧力ゲージを備え、所望の圧力まで袋を膨張させるのを支援することができることが更に考えられる。
【0120】
図示の実施の形態は、対象の首を完全に囲むカラーを想定している。代わりに、圧迫装置は首の一部のみを囲んでもよい。この実施形態において、装置は概してC字形の弾性弓形バンドであってよい。バンドはC字形の両端部に取り付けられた圧迫パッドを備えた、弾性バネ状材料から成っていてよい。従って、装置はバネクリップのように作用して、頸静脈に圧力を加えるものである。C字形のバネ効果は、装置を対象の首、好ましくは解剖学的によりよい手がかりがある、首の背面に保持するのにも役立つ。
【0121】
図4に示す圧迫カラー60は、カラーがユーザーに取り付けられたとき、目で見ることができる可視圧迫表示器を組み込むことができる。カラー60は、前述のストラップ12、32、52と同様に構成することができるストラップ62を備え、ストラップが対象の首を囲んだとき、頸静脈に圧力が加わるように配置された圧迫パッド20、40を組み込むことができる。ストラップ62は弾性であって、着用されてIJVに所望の圧力を加えるとき、ストラップが伸長又は伸張する必要がある。ストラップ62は、交互に色が異なるストライプ66、67のアレイ65を含んでいる。例えば、ストライプ66は赤色(正常に機能していない状態を示す)であり、ストライプ67は緑色(正常に機能している状態を示す)であってよい。圧迫カラー60は、多くの窓72を備えた
図5に示す上張り70を更に有している。ストライプ66、67と窓72とは同数(図示実施の形態では4つ)であり、同じ幅を有し、同じ寸法離間されている。1つの特定の実施の形態において、ストライプ66、67は2mmの幅を有し、窓72は2mmの幅を有し、2mm離間されている。
【0122】
図6に示すように、上張り70は、一端75がストラップ62に固定されている。反対端76はストラップに固定されず、それによってストラップは上張りの下で延びることができる。前述の実施の形態において、ストラップ全体が弾性的に伸長可能である。圧迫表示器にとって、ストラップの少なくとも上張り70の領域内の部分が弾性であって、上張りに対して伸長又は伸張できる必要がある。上張り70は、ストラップがニュートラルで伸長していない状態(即ち、カラーが対象に取り付けられる前)にあるとき、
図7(a)に示すように、「非正常」のストライプの全部又はかなりの部分が窓72から見えるように、ストラップ62に取り付けられる。カラーが対象者の首の周囲に固定されると、カラーが伸張し、伸張するにつれて、ストライプ66、67が、上張り70の窓72に対して前進する。従って、
図7(b)に示すように、両方のストライプ66、67の一部が窓を通して見えるようになる。ストラップが所定量伸張してIJVに所望の圧力が加わると、
図7(c)に示すように、「正常」ストライプ67が、各々の窓において完全又は実質的に見えるようになる。ストラップが過剰に伸張されると、再度「非正常」のストライプが窓に現れる。従って、ストライプアレイ65と上張り70とによって実現された圧迫表示器は、IJVに対し、カラーが所望の圧力量を加えているか否かに関する直接的な視覚表示器をもたらす。係合要素の調整又は当初長さが異なるカラーの使用によって、「正常」ストライプ67が見えるように、カラーを調整することができる。例えば、
図2のカラー30の場合、別の列のスナップ36をスナップ38に係合させて、所望の圧迫力を得ることができる。
【0123】
図4~7の実施の形態において、アレイ65は、4組の平行ストライプ対66、67を含んでいる。しかし、上張りの窓72に適切な変更を加えることによって、任意の対の別の目に見えるインディシアを使用することができる。例えば、アレイ65は、可視インディシア「正常」及び「非正常」、又はIJVに対し、カラー60が適切な量の圧力を加えていることを示す別の語を含むことができる。代わりに、アレイは、カラーが対象の首の周囲に適切に調整されたとき、上張りの1つの窓を通して見える1つのインディシアを含むことができる。圧迫表示器は対象が反射面を見たときに見えるカラー上の位置に向いていることが好ましい。代わりに、ストラップ62上のインディシアは、上張りの窓を通して、対象が指で感じ取ることのできる触覚表示器であってよい。
【0124】
本開示の別の態様は、動物又は人間の対象の頭蓋内圧を上昇させる方法の実施の形態を含み、本方法は、(i)動物又は人間の対象の首をカラーで囲むステップであって、カラーは動物又は人間の対象の首と接触するように内側を向いた少なくとも1つの領域を有する、ステップと、(ii)首と接触するように内側を向いた少なくとも1つの領域を、対象の頭蓋内腔から血液を運ぶ頸静脈を覆っている首の領域に配置するステップと、(iii)少なくとも1つの領域を首に押圧することによって、頸静脈に圧力を加えるステップと、を含んでいる。特定の実施の形態において、この圧迫は、副作用を一切伴わず、且つ頸動脈に影響を与えずに、25mmHg程度とすることができる。頸静脈又は頸動脈を危険に晒すことなく、80mmHg程度の圧力を加えることができると考えられている。本方法の多くの用途に関して、頸静脈又は頸動脈に加えられる圧力は3~15mmHgとすることができる。頸静脈に圧力を加えることによって、ICPを基準圧力の30%まで上昇させて、副作用を一切伴わずに、頭蓋内腔を爆風関連のSLOSH効果から守ることができる。
【0125】
本方法の1つの実施の形態によれば、カラー10、10’、30、及び50等の圧迫カラーは、対象の首の低い位置、具体的には、鎖骨と輪状軟骨又は喉頭隆起との間に設置される。この位置は、首の高い位置にある頸動脈洞から離れているため、首に圧力を加えても頸動脈を圧迫しない。男性の対象の場合、ストラップ12の切欠き14は、喉頭隆起の真下に配置される。
【0126】
カラーの両端が接続されたとき、適正量の圧迫が自動的に提供されるように、対象に合わせてカラーが事前に寸法決めされていてよい。更に、前述のように、係合要素(即ち、ラッチ要素16、18、スナップ36、38、フック56、58、又はVELCRO(登録商標)接続具)は、圧力が所望の値を超えたとき、分離又は外れるように構成されてもよい。この分離機能は
図2のポンプの実施の形態に適用することもでき、この場合、要素が外れるまで袋40を膨張させることができ、この時点で弁44を作動させて、袋から一部の圧力を抜き、次いでカラーを対象の首に再度取り付けることができる。ポンプに圧力ゲージが設けられている前述のポンプの代替的な実施形態においては、袋がゲージに示される所望の圧力になるまで膨張される。ポンプに圧力ゲージが設けられている前述のポンプの別の実施形態においては、袋はゲージに示される所望の圧力になるまで膨張される。殆どの場合、カラーによって得られる所望の圧迫は、15~20mmHgの範囲とすることができるが、それより高い圧力にも十分に耐えられ、特定の対象に適用することができる。
【0127】
カラーは、対象が戦闘中の爆風やスポーツ活動中の激しい接触等、震盪性事変に接する可能性があるときにのみ着用されることが理解されるであろう。かかる事変を被ることが停止したとき、カラーを外してもよいが、震盪性関連の外傷について対象の診断が下されるまで、そのまま着用していることが有益であり得る。
【0128】
ここで
図13を参照すると、1つの周回カラー100が示されている。周回カラー100は、着用者が着用するために開く手段を有していないため、かかるカラーは、カラーの内寸が十分に伸長して、着用者の頭を通すことができる弾性材料から成ることを意味している。
【0129】
次に、
図14を参照すると、パッド状の突起103、及び調整可能な締め具104(VELCRO(登録商標)型の接続具等)を備えた、周回カラー型装置102が示されている。調整可能な締め具によって、一定範囲の大きさの首に適正に取り付けることができる。
【0130】
次に、
図15を参照すると、パッド状の突起103、及び調整可能な締め具104(VELCRO(登録商標)型接続子等)を備えた、同様の周回カラー型装置102が示されている。調整可能な締め具によって、一定範囲の大きさの首に適正に取り付けることができる。カラー型装置102は弾性材料又は非弾性材料から成ることができ、半硬質又は硬質の喉頭ブリッジ105を更に備えている。
【0131】
次に、
図16を参照すると、第1の部品(即ち、前部107)及び第2の部品(即ち、後部108)を備えた、周回カラー型装置106が示されている。前部107は、各々が着用者の頸静脈に圧力を加えるように構成された、2つの突起103を備えている。後部108は、前部107の対応する端部110及び111に(例えば、VELCRO(登録商標)型の接続具によって)それぞれの端部が取り外し可能に取り付けられるように構成された布カラー部分109を備えている。後部108は弾性材料又は非弾性材料から成ることができることを意味している。前部107は半硬質又は硬質の喉頭ブリッジ(図示せず)を更に備えることができることも意味している。
【0132】
次に、
図17を参照すると、パッド状の突起103、及び調整可能な締め具104(VELCRO(登録商標)型の接続具等)を備えた、周回カラー型装置102が示されている。調整可能な締め具によって、一定範囲の大きさの首に適正に取り付けることができる。カラー型装置102は弾性材料又は非弾性材料から成ることができる。本実施の形態において、2つの突起103の各々は、着用者の頸静脈に圧力を加えるように構成された袋(図示せず)及び圧力逃し弁112を備えている。
【0133】
次に、
図18を参照すると、前部開放部を有する半周回カラー113が示されている。半周回カラー113は、前部114が開放しているため、カラー113は硬質又は半硬質材料を含み、カラー113は、着用者の首に向けて、後方から前方にカラーをスライドさせることによって着用されることを意味している。
【0134】
次に、
図19を参照すると、後部開放部116を有する半周回カラー115が示されている。半周回カラー115は、後部が開放しているため、カラー115は硬質又は半硬質材料を含み、カラー115は、着用者の首に向けて、前方から後方にカラーをスライドさせることによって着用されることを意味している。
【0135】
次に、
図20A~Bを参照すると、周回カラーを使用せずに首の適切な位置に圧力を加える例示的な実施形態が示されている。これらの実施形態は、一般に対で着用され、各装置が首のそれぞれの側に着用される。
図20Aは、各装置がパッド型の突起103を含み、突起によって画成される領域より広い範囲にわたる柔軟材料117によって、突起が覆われていることを示している。カラーなしでこれらの装置を使用する場合には、突起によって画成される領域を超えて延びる、材料の内向き表面118の少なくとも一部に、適切な接着剤が塗布されることを意味している。突起103の内向き表面にも適切な接着剤が塗布されてよい。これらの実施形態において、柔軟材料118は弾性又は非弾性であってよい。
図20Bは、概してC、V、又はU字形を有する弾性弓形バンド119を使用して、突起120を形成する点が異なる同様の実施形態を示す。前述のように、バンドは弾性バネ状材料から成ることができ、それによって装置を取り付けるとき、C、V、又はU字形バンドが真っ直ぐになる。装置が取り付けられると、バネ張力によってバンドが圧縮されることによって、バンドの中心点又は屈曲部が首に向かって延びて首に圧力が加わる。
図20Cに示すように、装置対は、必要に応じて、取り外し可能なテザー121を介して取り付けられている。テザーは、装置対を対象の首に容易に取り付けるために使用されるもので、適切に寸法決めされ、突起103又は120が、閉塞又は部分閉塞しようとする頸静脈の上に正確に配置されるように、適切な装置間隔が保証されている。テザー121は、装置が適切に配置され対象の首に接着した後に取り外される。テザー121は、スナップ、フック、又は取り外しを容易にするテザー材料の薄化又は折り目付けを含む、任意の適切な可逆的固定システムを使用して、装置に取り付けることができる。1つの実施の形態において、装置及びテザー121は再利用可能であり、最初の使用後において、装置をその後の使用に適したテザー121に再取り付けすることができる。
【0136】
図21は、周回カラーを使用せずに首の適切な位置に圧力を加える、本発明の別の実施形態を示す図である。
図21に示す装置は、
図20A~Bに示すものと同様であり、1対の装置122間の適切な長さの取り外し可能なテザー121の別の構成を示している。各装置は突起103を含み、1つの装置が首の1つの側に取り付けられることを意味している。取り外し可能なテザー121は、装置122を首に取り付けている間の位置合わせ及び間隔調整を支援する。
【0137】
図22は、周回カラーを使用せずに首の適切な位置に圧力を加える、本発明の別の実施形態を示す図である。本実施形態において、装置は、各端部又はその近傍に配置された突起103を有する、U字形弾性バンド123を備えている。一部の実施の形態において、突起103は、弾性バンド123と一体化することができる。
図22に示す実施形態は、突起103が装置122に一体化された別の設計であって、突起が弾性バンド123の各端部に取り付けられている。U字形弾性バンド123は、適切な大きさ及び形状であって、適切な曲げ耐性を有し、バンドを曲げ開くと、突起103を首の適切な位置に配置することができると共に、バンドによって脳からの静脈血流を抑制するのに十分な圧迫力が加えられる。
【0138】
図23は、引き外し結束バンド式ラチェット取り付け調整システムを備えた本発明の周回カラー型装置を示す図である。図示の装置において、引き外し結束バンド124は、特定の圧力以上で引かれると、カラー125から外れるように構成されていて、カラー125が過度に締め付けられないことを保証している。
【0139】
図24は、回転式ラチェット取り付け調整システム及び外部調整ツールを備えた、本発明の周回カラー型装置を示す図である。本実施の形態において、カラー125の取り付けが一体型ケーブルシステム126によって調整される。外部ツール127を使用して、一体型ケーブル126の長さを調整することによって、取り付け調整の微調整が可能になる。
【0140】
図25は、一体化された調整ダイヤルを有する回転式ラチットフィット調整システムを備えた、本発明の周回カラー型装置を示す図である。前述の実施形態と同様に、カラー125の取り付けは、一体型ケーブルシステム126によって調整される。しかし、本実施形態においては、内部ラチェットダイヤル128を使用して、一体型ケーブル126の長さを調整することによって、取り付け調整の微調整が可能になる。
【0141】
図26は、着用者に対する配置及び/又は位置合わせを支援するために、装置の外面上に1つ以上の識別可能な図式又は触覚基準点を備えた、本発明の周回カラー型装置を示す図である。前述のように、図式又は触覚基準点は、任意の適切な設計及び/又は材料であってよい。
図26に示す例示的な実施の形態において、図式又は触覚基準点は、首の前部の中心に位置合わせするための(例えば、布パッチ130で示す)装置の中心点、(例えば、布パッチ132で示す)突起の位置、又は(布線131で示す)その両方を示すように配置することができる。
【0142】
図27は、装置135が、脈拍、血圧、又は頸静脈上への突起の適正な配置及び圧力を示す、その他のインディシアを検出するように構成されたセンサー(番号付さず)、及びセンサーからの信号を外部装置136に送信する手段を備えた、本発明の別の実施の形態を示す図である。
【0143】
図28は、1つ以上の突起103が衣服137に一体化された、本発明の別の実施の形態を示す図である。突起103は、着用者の首の一部を覆う衣服の一部138に組み込むことができる。この場合、突起は膨張可能又は膨張不可であってよく、突起を所定の位置に保持するための周回又は半周回カラーを必要とせず、衣服自体の首開口部に直接組み込まれる。代わりに、衣服の首開口部が、突起の解剖学的位置付けを頸静脈上に維持し、突起103を頸部静脈に圧迫して、静脈血流を部分的又は完全に閉塞する。着用者の首の一部を覆う衣服の一部138が弾性材料を含み、衣服の襟が突起103に十分な圧力を加えて頭部からの静脈血流を抑制することが好ましい。限定を意図するものではないが、これ等の実施形態に従って、軍服又はスポーツ服の構成要素等、様々な特殊目的に設計された衣服が作製され得ることが想定される。必要に応じて、衣服137は喉頭隆起において開放し、衣服の上部が硬質又は半硬質であって、突起103を介して頸静脈に圧力を加える。代わりに、衣服137は(例えば、タートルネックとして)喉頭隆起を覆い、衣服の上部が硬質又は半硬質であって、突起103を介して頸静脈に圧力を加えるか、閉鎖されたとき、突起103を介して頸静脈に圧力を加えることができる、閉鎖装置を含んでいる。例えば、衣服は、衣服の前部にジッパーを備えることができ、完全閉塞(「ジップアップ」)すると、突起によって頸静脈に圧力が加えられる。かかるジッパー付き衣服は、4分の1ジップ、半ジップ、4分の3ジップ、又は完全ジッパー付き衣服を含むことができる。代わりに、首開口部は、例えば、衣服の背面のジッパー、又は首開口部のみに配置されたストラップ若しくは別の閉鎖機構を含む、前面ジッパー以外の閉鎖機構によって可逆的に寸法決めされてもよい。別の実施の形態において、衣服は首開口部の寸法決めするための閉鎖機構を一切有していない。この場合、首開口部は、衣服が着用されるとき、対象の首が首開口部を通過するように十分に広がるが、衣服を着用し、首開口部が首周囲の通常の位置に配置されたとき、首開口部が(突起を介して)頸静脈に十分な圧力を加えることができる弾性材料を含むことができる。1つの実施の形態において、(閉鎖機構付き又は無しの)この種の衣服は、タートルネック又はモックタートルネックと名付けられている。
【0144】
図29は周回又は半周回カラー140を備えた、本システムの別の態様を示す図である。1つの実施の形態において、カラー140は硬質バンドである。本システムの1つの実施の形態において、カラーは内側ハウジング141及び内側バンドである外側ハウジン142を備えている。何れの実施の形態においても、カラー140の端部にパッド143を取り外し可能に取り付けることができ、それによって、対象が首にカラー140を着用したとき、パッド143が間隔を開けて、対象の1つ以上の頸静脈上に配置されるように寸法決めされる。1つの実施の形態において、カラー140は、1つ以上の頸静脈に5mmHg~80mmHgの範囲の圧力を加えるように構成されている。1つの実施の形態において、カラー140は、1つ以上の頸静脈に5mmHg~25mmHgの範囲の圧力を加えるように構成されている。1つの実施の形態において、1つ以上の頸静脈は、内頸静脈及び外頸静脈を含んでいる。1つの実施の形態において、本システムは、複数対のパッド143を備えている。例えば、システムは、カラー140、及びよりユーザーに応じた取り付けができるように、各々の対が異なる大きさ及び形状を有する3対のパッドを備えることができる。パッド対間の差異には、突起の形状及び寸法を含めることができる。例えば、各々のパッド対は、頸部静脈への圧力の増加及び/又は頸静脈上の皮下脂肪組織の量が異なる個体を考慮して、高さが異なる突起を備えることができる。代わりに又は加えて、各々のパッド対は、同様の周長を有する個体の頸部静脈位置の解剖学的差異を考慮して、特に長手方向(即ち、首周り方向)に異なる形状又は異なる形状の突起を有することができる。取り外し可能なパッドは、パッドが所定の位置に留まることを保証する任意の適切な機構によって、カラーに取り付けられるように設計することができる。例えば、カラーの端部をタブとして構成することができ、パッドがカラーのタブを受け入れるスロットを含むことができる。代わりに、カラーが、前方に向いた表面に、パッドを受け入れて所定の位置に保持する溝を備えることができる。
【0145】
パッド143の別の実施の形態において、各々のパッドは膨張可能な袋144を備えている。1つの実施の形態において、パッド対143の各々のパッドは、他方のパッドと流体連通している。1つの実施の形態において、管145によって、パッド対143の各々のパッド間の流体連通が可能とされている。1つの実施の形態において、本システムは、袋144と流体連通しているポンプ要素を更に備え、それによって、対象が袋144の充填レベルを調整することができる。1つの実施の形態において、カラー140は、基本的な圧迫機構を提供するバンドを備え、内側ハウジング141及び外側ハウジング142は、対象を快適にするために用意されている。本システムは、対象に対する圧力又は袋144の内圧等、システムの様々な状態を測定することができる、任意の電子装置146も備えることができる。
【0146】
本システムの全態様の1つの実施の形態において、カラー140はカバーに収容されている。1つの実施の形態において、カバーは両端が開放していてよい。1つの実施の形態において、カバーは一端が閉鎖し、他端が開放していてよい。1つの実施の形態において、カバーは、一端又は両端に、カバーの一端又は両端を閉鎖するためのフックアンドパイル、又は類似のシステム等の閉鎖機構を有することができる。カバーを完全に閉じてもよい。カバーは突起の周囲に開口部を有することもできる。カバーは、布、フィルム(織布、不織布、及びネット)、発泡体とゴム(合成及び天然)、ポリクロロプレン(例えば、NEOPRENE(登録商標))、エラスタンとその他のポリウレタン-ポリ尿素共重合体(例えば、SPANDEX(登録商標)、LYCRA(登録商標))、フリース、ワープニット又は細い伸縮性生地、ラッシェル、トリコット、ミラノニット、サテン、ツイル、ナイロン、コットンツイード、ヤーン、レーヨン、ポリエステル、皮革、キャンバス、ポリウレタン、ゴム加工された材料、エラストマー、及びビニルのうちの1つ以上から製造することができる。カバーはポリエステル混紡から成る吸湿性に優れた布から製造することもできる。カバーに非擦傷布を使用することも考慮される。カバーは様々な色から成ることができ、カバーの上に多数の模様又はロゴを刻印することができる。
【0147】
図30は、咽頭隆起149において開放した半周回フラップ148を有する衣服147を備え、フラップが、1つの実施の形態において、衣服147の布に縫い付けられ、喉頭隆起149の両端で開放したスリーブ150を有する、本システムの別の態様を示す図である。1つの実施の形態において、フラップ148は、衣服147の上部の首開口部に別個に取り付けることができる。本システムは、衣服147のスリーブ150に少なくとも部分的に取り付けられるように設計された、対象の首に着用される周回又は半周回のカラーも含んでいる。このようにして、様々な大きさの衣服147は、可変サイズのカラーを使用して様々な首の大きさに適応することができる。衣服147は様々な弾性布から成ることができる。弾性材料は、延伸されたとき、自然状態に戻ろうとする任意の材料であってよい。例示的な材料には、布、フィルム(織布、不織布、及びネット)、発泡体とゴム(合成及び天然)、ポリクロロプレン(例えば、NEOPRENE(登録商標))、エラスタンとその他のポリウレタン-ポリ尿素共重合体(例えば、SPANDEX(登録商標)、LYCRA(登録商標))、フリース、ワープニット又は細い伸縮性生地、ラッシェル、トリコット、ミラノニット、サテン、ツイル、ナイロン、コットンツイード、ヤーン、レーヨン、ポリエステル、皮革、キャンバス、ポリウレタン、ゴム加工された材料、エラストマー、及びビニルのうちの1つ以上を含むことができる。長時間の着用又は運動中の着用に好ましいと思われる、通気性又は吸湿性を有する幾つかの弾性材料もある。前述のように、弾性材料は、十分な圧迫圧力を提供しつつ、柔軟性を維持して、着用者のあらゆる動き及び/又は筋肉の収縮に対応することによって、着用者に対し、優れた快適性という恩恵をもたらすことができる。
【0148】
図31は、半周回フラップ152を含む衣服151を備えた、本システムの別の実施の形態を示す図である。1つの実施の形態において、半周回フラップ152は上部取り付け手段153及び下部取り付け手段154を更に有している。取り付け手段は、フラップ152の上部及び下部の接続保持に使用されるフックアンドパイルシステム、磁気バンド、又はその他の手段であってよい。フラップ152は、上部取り付け手段153及び下部取り付け手段154を使用して、略位置合わせして折り畳むことができる。
【0149】
図32は、衣服155及び半周回カラー156を備え、カラー156が複数の突起157を有し、衣服155及びカラー156の両方が喉頭隆起158において開放した、本システムの別の実施の形態を示す図である。1つの実施の形態において、カラー156は、フックアンドパイルシステム(VELCRO(登録商標))、接着剤等を含む、適切な固定システムによって、衣服155の上部に固定され、カラー156が衣服155に取り外し可能に固定される。必要に応じて、カラー156は完全に周回(即ち、喉頭隆起158において開放していない)するものであって、衣服155は喉頭隆起158において開放していても閉鎖していてもよい。
【0150】
図33は、前述の何れかのシステム又は独立した装置として使用することができる、本システムの別の態様を示す図である。本システムにおいて、カラー160の機能的側面は、半周回であって、複数の突起162を備え、喉頭隆起161において開放し、カラー160の一方の側に固定された柔らかい又は硬いストラップ163を更に備えている。ストラップ163は喉頭隆起161を横断して接続することができ、フックアンドパイル型又はその他の着脱容易な接続手段164によって、カラーの反対側に取り外し可能に取り付けることができる。独立した装置として又は本明細書に記載の衣服システムと併せて、ストラップ163を使用して、カラー160を対象の首の周囲に固定することができる。1つの実施の形態において、ストラップ163は、カラー160に1つ以上の頸静脈に圧力を発生させる力を提供する。本システムの本態様に係る1つの実施の形態において、システムは、前述のように、カラー140を収容するカバーを更に備えている。
【0151】
図34は、例えば、アイスホッケーを含む、喉の保護が好ましいスポーツ及びその他の活動に使用することができる、前述のように、喉頭隆起及び喉を横断する硬質ブリッジを有するカラーを備えた本発明の別の態様を示す図である。図示の実施の形態において、カラー170は、完全に周回するものであって、頸静脈の上部に対応する領域におけるパッド又は肉厚として図示されている突起171、硬質又は半硬質の側面部材174、必要に応じて弾性材料から成り、首の後部に接触するように構成された背面部材172、並びに対象の喉頭突起及び/又は喉を保護するように構成された硬質前面部材173を備えている。本明細書に記載の他の態様及び原理によれば、突起171は膨張可能でも固定でもよく、硬質、半硬質、又は記憶発泡材料から成ることができ、スタッド、パッド、又は別の種類の突起として構成されていてもよい。背面部材172は、対象の頭上で伸長することによって、カラー170の取り付けを容易にし、及び/又は側面部材174に力を加えることによって、突起171を介して、頸静脈に圧力を加える弾性材料として示してある。代わりに、背面部材172は、フックアンドパイルシステム、バックル、スナップ、ラッチ、ヒンジ、及び/又はその他の閉鎖具等の取り外し可能な閉鎖機構、及び/又は取り付け装置を備え、開放されているとき、対象の首の周囲を前方からスライドさせることによって、カラー170の取り付けを容易にし、続いて閉鎖機構を用いて閉鎖及び取り付けることができる。別の実施の形態において、背面部材172は、首の所定の位置にあるとき、カラー170の周囲長を調整するラチェット張力装置を備えている。別の実施の形態において、背面部材172は硬質又は半硬質であり、前面の硬質部材173がヒンジ及び固定機構(例えば、スナップ)を備え、カラー170が首の後方から前方に向けて取り付けるように構成されている。別の実施の形態において、硬質の前面部材173が完全に取り外し可能であって、対象の喉頭隆起及び/又は喉に対する追加の保護が望ましくない場合、カラー170は半周回構成として着用することができる。別の実施の形態において、背面部材172のフィット調整システムに代えて又は加えて、硬質の前面部材173にフィット調整システム(例えば、ラチェット張力装置)が配置されている。本構成において、取り付け調整システムは、必要に応じて、端部が喉頭隆起に近づくように側面部材174を移動させることによって、カラー170の周囲長を短くすることができる。1つの実施の形態において、装置を着用したとき、側面部材174及び背面部材172が対象の首に接触するが、前面部材173は接触しない。別の実施の形態において、背面部材172が存在せず、首の背面に不連続な領域を有して、カラー170が首の大部分を囲んでいる。
【0152】
図35~37は本発明の衣服システムを示す図である。本システムは、少なくとも衣服(例えば、シャツ、ジャージ、ジャケット等)、及び本発明の原理に従って構成された周回又は半周回カラーを備えている。
図35は、パッドとして成形された突起181を有し、本システム用に構成された半周回カラー180を示す図である。カラー180は、衣服に固定されたストラップを受け入れるように構成された、複数の穴182を有している。カラー180は、3つの穴182を有しているように図示してあるが、例えば、1、2、3、4、5、又はそれ以上の穴182を含む、任意の都合の良い数の穴182が存在していてもよい。シャツ183は首開口部185の周囲に取り付けられた複数のストラップ184を有している。ストラップ184は穴182(
図35参照)と一致するように配置され、穴182を通して、都合よく取り付けられるように構成されている。1つの実施の形態において、ストラップ184及びシャツ183は、ストラップ184の端部がシャツ183の本体に固定できるように、締め具186を有している。スナップ、接着剤、又はフックアンドパイルシステム(例えば、VELCRO(登録商標))等を含む、任意の便利な締め具186を使用することができる。必要に応じて、シャツは、首開口部185の周囲に縁部187を有し、カラー180が首に適切に配置され、シャツ183に固定されたとき、縁部187によって、カラー180と対象の首との間に布層が設けられる。
図37は、固定されていない端部が、締め具を使用してシャツ183の本体に取り付けられる、穴182を通したストラップ184を使用して、カラー180がシャツ183に固定された、アセンブルされたシステムを示す図である。
【0153】
図38は本発明の別の衣服システムを示す図である。本実施の形態において、カラー180は、必要に応じて、穴182を備えていても、いなくてもよい。カラー180は、ストラップ184を使用してシャツ183に固定されるが、穴182には通されない。代わりに、ストラップはカラー180の上端を通過し、固定されていない端部が、締め具186によってシャツ183の本体に固定される。
図35~38に示す何れの実施の形態においても、ストラップは、一般に、第1の端部が衣服の首開口部の周囲(即ち、首開口部又は首開口部の直ぐ下)に取り付けられ、第2の端部が衣服本体(即ち、首開口部の下部)に可逆的に取り付けられる。ストラップの第1の端部の首開口部周囲の取り付けは、衣服と一体化(即ち、縫い付け又は別の恒久的な取り付け)でも、ストラップを衣服から外すことができる任意の便利な締め具システムを使用した、可逆的な取り付けであってもよい。
【実施例0154】
材料及び方法:各々が体重350~400グラムの10匹(合計20匹)の雄のSprague-Dawleyから成る2群を使用した。ラットは12時間毎の明暗サイクルで飼育し、エサと水は自由に与えた。
【0155】
ラットのMarmarou衝撃加速損傷モデル:改造医療用麻酔機を使用して、イソフルランで麻酔を誘導維持した。約10分間の処置の間、直腸プローブ付き恒温加熱ブランケットを使用して体温を制御し、踵骨腱をつまんでその反応を評価して十分な鎮静効果を確認した。ラットを剃毛し、滅菌下で手術の準備をし、その後、切開予定部位に1%リドカイン局所麻酔を皮下注射した。頭皮に3cmの正中線切開を施して骨膜を分離し、ブレグマとラムダを露出した。径10mm、厚さ3mmの金属ディスクを頭蓋骨にシアノアクリレートで取り付け、ブレグマとラムダとの間の中央に配置した。
【0156】
金属ディスクがプレキシガラス管の真下に来るようにして、ラットを発泡体のベッドにうつ伏せに載置した。管を通して、450gの分銅を2メートルの高さから1回落下させてディスクに当てた。次に、ラットを100%酸素で換気しながら頭蓋骨を検査し、ディスクを取り除き、切開部を修復した。ラットが自発呼吸を回復したところで、麻酔を停止し、ラットをケージに戻し、術後観察を行った。ブプレノルフィンを術後鎮痛に使用した。
実験プロトコル:この実験には、それぞれ10匹の2つの群、合計20匹の動物が関わった。対照損傷群と実験損傷群の2つの群を使用した。実験損傷群において、IJVを覆うように設計された、2つの圧迫ビードを有する幅15mmのカラーをラットに装着し、気道に影響を与えずに静脈を穏やかに圧迫できる程度に締めた。次に、カラーをVelcro締め具で円周状に固定した。カラーをそのまま3分間放置してから、実験的な脳損傷を与えた。
頭蓋内予備ボリューム頭蓋内圧(ICP)測定値の評価:5匹について、Chavko等の説明に従い、FOP-MIV圧力センサー(FISO Technologies,Quebec,Canada)を使用してICPを測定した。ラットの頭部を剃毛し、滅菌下で手術の準備をした。ラットを脳定位固定装置(モデル962:Dual Ultra Precise Small Animal Stereotaxic Instrument,Kopf Instruments,Germany)に固定し、頭皮に3cmの中間線切開を施した。骨膜を分離し、ブレグマとラムダの両方を露出した。ブレグマから尾側に0.9mm、正中線から1.5mmに2mmの穿頭孔を形成した。次いで、光ファイバプローブを脳実質内に深さ3mmまで刺入した。
眼内圧(IOP)測定:文献の記載に従い、TonoLabリバウンドトノメータ(Colonial Medical Supply,Franconia,NH)を使用して全匹のIOPを測定し、IOP測定は、全匹において麻酔導入後に行い、実験群についてはIJV圧迫装置装着後に2回目の測定を行った。実験損傷群にIJV圧迫装置を装着した後、圧迫装置を設置したまま、IOPの指示値を30秒おきに読み取った。
組織準備と免疫組織化学的染色:受傷7日後、全匹(n=20)に麻酔を施し、その直後に200mlの低温0.9%生理食塩水で経心腔潅流により全血を排出した。これに続き、Milling緩衝液中の4%パラホルムアルデヒドを40分間注入した。脳全体、脳幹、及び吻側脊髄を摘出し、直ちに4%パラホルムアルデヒド中に入れ、24時間放置した。24時間の固定後、脳幹を橋の上で切断し、小脳脚を切断し、その後、延髄錐体に対して横方向に矢状面で切断することにより、脳をブロックした。その結果得られた、これまでに外傷的損傷を受けた軸索を生じることが証明されている領域である、皮質脊髄路と内側毛帯を含む組織を、ビブラトームで厚さ50マイクロメートルの切片に矢状に切断した。
前述の手法により、組織に対して温度制御マイクロ波抗原回復を行った。10%の正常血清及び0.2%のトリトンXを含むPBS溶液中で、40分間組織をプレインキュベートした。アミロイド前駆体タンパク質(APP)のラベル付けのために、1% NGS含有PBSで1:200に希釈した、ベータAPPに対するウサギポリクローナル抗体(#51-2700,Zymed,Inc.,San Francisco,CA)中で、組織を1晩インキュベートした。一次抗体でのインキュベーション後、1% NGS含有PBSで組織を3回洗浄し、その後、1:200に希釈した、Alexa 488蛍光色素(Molecular Probes,Eugene,OR)結合二次抗ウサギIgG抗体で2時間インキュベートした。0.1Mリン酸緩衝液中で組織を最終洗浄し、その後、退色防止剤を使用して取り付け、カバーガラスを載せた。スライドをアクリルで封止し、ラボ用冷蔵庫の暗所に保存した。
蛍光顕微鏡検査と画像解析:オリンパスAX70蛍光顕微鏡システム(オリンパス、日本国、東京都)を使用して、組織を観察し画像を取得した。各ラットの組織について10枚のデジタル画像を取得し、その後、画像をランダム化した。個々の損傷軸索を個別にカウントし、データをスプレッドシート(Microsoft Corp.,Redmond,WA)に保存した。ペアt-検定を用いて、群平均間の差を測定し、確率値が0.05未満であれば有意と判断した。
軸索損傷の立体的定量化:立体学法を用いて皮質脊髄路と内側毛帯中の1立方ミリメートル当りのAPP陽性軸索の数を不偏推定した。Stereoinvestigator 9.0(MBF Bioscience,Inc.,Williston,VT)と4倍及び40倍の対物レンズを用いたオリンパスAX70顕微鏡を使用して、光学分画法を実行した。矢状APP染色標本を低倍率で観察し、皮質脊髄路と内側毛帯を含む関心領域を摘出した。次に、ソフトウェアにより、無作為に50マイクロメートルの計数フレームを深さ15マイクロメートルで選択し、APP陽性軸索にマーキングした。関心領域(ROI)のボリュームをカバリエリの原理により測定し、計数フレームの合計のボリュームを計算し、計数フレーム内の損傷軸索の総計を計算し、1立方ミリメートル当たりのAPP陽性軸索の推定数を計算した。