(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030230
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】マスクデータ生成方法、およびマスクデータ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G03F 1/70 20120101AFI20230301BHJP
G06F 30/39 20200101ALI20230301BHJP
G03F 1/26 20120101ALI20230301BHJP
【FI】
G03F1/70
G06F17/50 658M
G03F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020026419
(22)【出願日】2020-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】奥平 陽介
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 賢
【テーマコード(参考)】
2H195
5B046
5B146
【Fターム(参考)】
2H195BA01
2H195BB02
2H195BB03
5B046AA08
5B046BA04
5B146AA22
5B146GC23
(57)【要約】
【課題】ピクセルベースのマスクパターンを短時間で作成する方法を提供する。
【解決手段】マスクデータ生成方法は、2次元グリッドを構成する複数の単位要素のそれぞれに、第1の値、または第1の値とは異なる第2の値が設定されている第1マスクデータに基づく投影像の第1評価値を算出し、第1マスクデータに含まれる複数の単位要素のうち、第1の値が設定されている第1単位要素の値を第2の値に変更し、2次元グリッド上で第1単位要素と近接して配置され、第2の値が設定されている第2単位要素の値を第1の値に変更して第2マスクデータを生成し、第2マスクデータに基づく投影像の第2評価値を算出し、第1評価値と第2評価値とを比較し、比較した結果に基づいて、第1マスクデータまたは第2マスクデータのいずれか一方を出力マスクデータとして選定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元グリッドを構成する複数の単位要素のそれぞれに、第1の値、または前記第1の値とは異なる第2の値が設定されている第1マスクデータに基づく投影像の第1評価値を算出し、
前記第1マスクデータに含まれる複数の前記単位要素のうち、前記第1の値が設定されている第1単位要素の値を前記第2の値に変更し、前記2次元グリッド上で前記第1単位要素と近接して配置され、前記第2の値が設定されている第2単位要素の値を前記第1の値に変更して第2マスクデータを生成し、
前記第2マスクデータに基づく投影像の第2評価値を算出し、
前記第1評価値と前記第2評価値とを比較し、比較した結果に基づいて、前記第1マスクデータまたは前記第2マスクデータのいずれか一方を出力マスクデータとして選定する、
マスクデータ生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクデータ生成方法において、
前記第1単位要素の値の前記第2の値への変更、および前記第2単位要素の値の前記第1の値への変更を、複数の前記第1単位要素および複数の前記第2単位要素に対して行なう、マスクデータ生成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のマスクデータ生成方法において、
前記出力マスクデータを前記第1マスクデータとし、かつ、
選択された前記出力マスクデータが前記第2マスクデータであれば、前記第2評価値を前記第1評価値として、
前記第2マスクデータの生成と、前記第2評価値の算出と、前記出力マスクデータの選定とを、複数回に渡って繰り返す、マスクデータ生成方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のマスクデータ生成方法において、
前記第2単位要素は、前記第1単位要素に対して前記2次元グリッド上で隣接して配置されている、マスクデータ生成方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のマスクデータ生成方法において、
前記第2単位要素は、前記第1単位要素に対して、前記2次元グリッド上で前記第1マスクデータのデザインルールの2倍以内の距離にある、マスクデータ生成方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のマスクデータ生成方法において、
前記第1評価値を算出する手法と、前記第2評価値を算出する手法とは同じ手法である、マスクデータ生成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のマスクデータ生成方法において、
前記同じ手法では、基準像の強度分布と、前記第1マスクデータまたは前記第2マスクデータの投影像の強度分布との差分に基づいて、前記第1評価値または前記第2評価値をそれぞれ算出する、マスクデータ生成方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のマスクデータ生成方法において、
前記第1の値および前記第2の値は、マスクにおける光の振幅透過率または振幅反射率に関する値であり、
前記第2の値は、前記第1の値の-1倍である、マスクデータ生成方法。
【請求項9】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のマスクデータ生成方法において、
前記第1の値および前記第2の値は、マスクにおける光の振幅透過率または振幅反射率に関する値であり、
前記第1の値および前記第2の値の一方は0である、マスクデータ生成方法。
【請求項10】
コンピュータを含むデータ処理装置に対し、
2次元グリッドを構成する複数の単位要素のそれぞれに、第1の値、または前記第1の値とは異なる第2の値が設定されている第1マスクデータを記憶領域に記憶させ、
前記第1マスクデータに基づく投影像の第1評価値を算出させ、
前記第1マスクデータに含まれる複数の前記単位要素のうち、前記第1の値が設定されている第1単位要素の値を前記第2の値に変更し、前記2次元グリッド上で前記第1単位要素と近接して配置され、前記第2の値が設定されている第2単位要素の値を前記第1の値に変更して第2マスクデータを生成させ、
前記第2マスクデータに基づく投影像の第2評価値を算出させ、
前記第1評価値と前記第2評価値とを比較し、比較した結果に基づいて、前記第1マスクデータまたは前記第2マスクデータのいずれか一方を出力マスクデータとして選定させる、マスクデータ生成プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のマスクデータ生成プログラムにおいて、
前記第1単位要素の値の前記第2の値への変更、および前記第2単位要素の値の前記第1の値への変更を、複数の前記第1単位要素および複数の前記第2単位要素に対して行なう、マスクデータ生成プログラム。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のマスクデータ生成プログラムにおいて、
前記出力マスクデータを前記第1マスクデータとし、かつ、
選択された前記出力マスクデータが前記第2マスクデータであれば、前記第2評価値を前記第1評価値として、
前記第2マスクデータの生成と、前記第2評価値の算出と、前記出力マスクデータの選定とを、複数回に渡って繰り返す、マスクデータ生成プログラム。
【請求項13】
請求項10から請求項12までのいずれか一項に記載のマスクデータ生成プログラムにおいて、
前記第2単位要素は、前記第1単位要素に対して前記2次元グリッド上で隣接して配置されている、マスクデータ生成プログラム。
【請求項14】
請求項10から請求項13までのいずれか一項に記載のマスクデータ生成プログラムにおいて、
前記第2単位要素は、前記第1単位要素に対して、前記2次元グリッド上で前記第1マスクデータのデザインルールの2倍以内の距離にある、マスクデータ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクデータ生成方法、およびマスクデータ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リソグラフィ等に用いるマスクにおいて、1つのマスクパターンを連続した多角形ではなく、離散的な複数のピクセルで形成した、いわゆるピクセルベースマスクが提案されている。このようなピクセルベースマスクにおけるピクセルパターンの作成方法として、例えば、非特許文献1に開示される方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Liu Y, Zakhor、“A. Binary and phase-shifting image design for optical lithography.”、 Proceedings of SPIE、(米国)、SPIE、1991年7月1日、Volume 1463, Optical/Laser Microlithography IV、p. 382-399
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、マスクデータ生成方法は、2次元グリッドを構成する複数の単位要素のそれぞれに、第1の値、または前記第1の値とは異なる第2の値が設定されている第1マスクデータに基づく投影像の第1評価値を算出し、前記第1マスクデータに含まれる複数の前記単位要素のうち、前記第1の値が設定されている第1単位要素の値を前記第2の値に変更し、前記2次元グリッド上で前記第1単位要素と近接して配置され、前記第2の値が設定されている第2単位要素の値を前記第1の値に変更して第2マスクデータを生成し、前記第2マスクデータに基づく投影像の第2評価値を算出し、前記第1評価値と前記第2評価値とを比較し、比較した結果に基づいて、前記第1マスクデータまたは前記第2マスクデータのいずれか一方を出力マスクデータとして選定する。
第2の態様によると、マスクデータ生成プログラムは、コンピュータを含むデータ処理装置に対し、2次元グリッドを構成する複数の単位要素のそれぞれに、第1の値、または前記第1の値とは異なる第2の値が設定されている第1マスクデータを記憶領域に記憶させ、前記入力マスクデータに基づく投影像の第1評価値を算出させ、前記入力マスクデータに含まれる複数の前記単位要素のうち、前記第1の値が設定されている第1単位要素の値を前記第2の値に変更し、前記2次元グリッド上で前記第1単位要素と近接して配置され、前記第2の値が設定されている第2単位要素の値を前記第1の値に変更して第2マスクデータを生成させ、前記第2マスクデータに基づく投影像の第2評価値を算出させ、前記第1評価値と前記第2評価値とを比較し、比較した結果に基づいて、前記第1マスクデータまたは前記第2マスクデータのいずれか一方を出力マスクデータとして選定させる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1実施形態のマスクデータ生成方法の処理工程を表すフローチャートを示す図。
【
図2】マスクデータ生成プログラムを実行させる、データ処理装置の概要を示す図。
【
図3】
図3(a)は、ピクセルベースのマスクデータである第1マスクデータの一例を示す図。
図3(b)は、パターンが多角形で構成される多角形マスクデータの一例を示す図。
【
図4】
図4(a)は、
図3(a)に示した第1マスクデータの一部分を拡大して示す図。
図4(b)は、
図4(a)に示した第1マスクデータを用いて計算した投影像における
図4(a)中の線分Aに相当する部分の強度分布を示す図。
【
図5】
図5(a)は、
図4(a)に示した第1マスクデータの一部を変更した第2マスクデータを示す図。
図5(b)は、
図5(a)に示した第2マスクデータを用いて計算した投影像における
図5(a)中の線分Aに相当する部分の強度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のマスクデータ生成方法の処理工程を表すフローチャートを示す図である。第1実施形態のマスクデータ生成方法は、
図2に示すデータ処理装置70に格納されたマスクデータ生成プログラムを、データ処理装置70のコンピュータ71に搭載されるCPU72に実行させることにより、マスクデータを生成する。
【0007】
従って、以下では、マスクデータ生成プログラムがCPU72を制御して行う処理について説明することで、マスクデータ生成方法の実施形態について説明する。
マスクデータ生成プログラム(以下、単に「プログラム」とも呼ぶ)は、コンピュータ71のメモリ73またはハードディスク(HD)77に格納されている。
【0008】
ステップS101において、CPU72が、プログラムに従って、インターフェース(I/F)等を制御して、ピクセルベースのマスクデータである、後述する第1マスクデータを、メモリ73またはHD77にロードする。第1マスクデータは、例えばコンピュータ71に含まれる光学ドライブ(OD)76から読み込んでも良く、ネットワーク回線NWを介して、サーバ79または不図示の通信回線上のサーバからダウンロードしても良い。
なお、以下の各ステップにおいても、CPU72がプログラムに従って、コンピュータ71の各部を制御するが、以下の各ステップの説明では実行主体であるCPU72への言及は省略する。
【0009】
図3(a)は、第1マスクデータ20の一例を示す図である。第1マスクデータ20は、2次元の配列データ(2次元グリッド)であって、一例として、その配列変数のアドレスをXアドレス(X1~XN)およびYアドレス(Y1~YM)で表している。従って、第1マスクデータ20の単位要素であるピクセルPは、2次元グリッド上でP(Xj,Yk)として特定される。ここで、添字のjの変域は、0以上かつ自然数N以下の自然数であり、添字のkの変域は0以上かつ自然数M以下の自然数である。
【0010】
ここで、Xアドレスは、第1マスクデータ20が不図示のマスク上に形成された際のマスク上のX方向の位置に対応し、Yアドレスはマスク上のX方向と直交するY方向の位置に対応する。
第1マスクデータ20の各ピクセルPの値は、一例として、+1または-1のいずれかである。これらの値は、第1マスクデータ20を用いて形成されるマスクにおける光の振幅透過率または振幅反射率の値に対応している。
【0011】
以下では、値が+1のピクセル(
図3(a)中でドットを付していないピクセルP)を正ピクセルPPと呼び、値が-1のピクセル(
図3(a)中でドットを付したピクセルP)を負ピクセルMPと呼ぶ。負ピクセルMPに値は、正ピクセルPPの値の-1倍である。
【0012】
上述の+1の値を第1の値ということもでき、値が+1に設定されている正ピクセルPPを第1単位要素ということもできる。上述の-1の値を第2の値ということもでき、値が-1に設定されている負ピクセルMPを第2単位要素ということもできる。
【0013】
図3(b)は、パターンが多角形で構成される多角形マスクデータ10の一例を比較のために示した図である。多角形マスクデータ10は、一例としてマスクの透過率分布に相当するデータであり、透過率が1(100%)程度に高い透過領域12の中に、透過率が低い遮光領域11a~11dを含むデータである。遮光領域11a~11dを、合わせて、または単独で、単に遮光領域11とも呼ぶ。
【0014】
第1マスクデータ20を示す
図3(a)においては、
図3(b)の多角形マスクデータ10の遮光領域11a~11dのそれぞれに対応する部分を、減光領域21a~21dとして破線で囲って示している。減光領域21a~21dを、合わせて、または単独で、単に減光領域21とも呼ぶ。
【0015】
第1マスクデータ20に基づいて製造されたマスクを投影露光装置に装填して得られる投影像は、減光領域21内およびその周辺に配置されている複数のピクセルPをそれぞれ透過した光の間の干渉により、減光領域21に相当する部分の光強度が低下する。
従って、
図3(a)に示した第1マスクデータ20に基づくマスクを使用すると、
図3(b)に示した多角形マスクデータ10に基づくマスクを使用する場合と、概ね同様の投影像を得ることができる。
【0016】
ただし、より好ましい投影像を得るためには、第1マスクデータ20の正ピクセルPPと負ピクセルMPとの配置を改善し、投影像の減光領域21内に相当する領域をより好ましく減光する必要がある。そこで以下のステップを実行することにより、正ピクセルPPと負ピクセルMPとの配置を修正する。
【0017】
ステップS102では、始めに、CPU72が第1マスクデータ20に基づいて製造されたマスクを投影露光装置に装填した場合に得られる投影像(以下では、単に「第1マスクデータ20の投影像」とも呼ぶ)の強度分布を算出する。投影像の強度分布の算出方法は、周知の方法であるので、ここでは説明を省略する。なお、強度分布の算出は、第1マスクデータ20に基づいて製造されたマスクが使用される投影露光装置の露光波長、開口数、照明条件、残存収差等の光学条件を用いて行う。また、正ピクセルPPまたは負ピクセルMPが複数に渡って連続して分布する部分に対応する投影像の光強度が所定の値(例えば1)になるように、光強度(強度分布)のスケールを設定する。
【0018】
図4(a)は、
図3(a)に示した第1マスクデータ20の一部分である領域22を拡大して示す図であり、
図4(b)は、算出された第1マスクデータ20の投影像のうち
図4(a)中の線分Aに相当する部分での強度分布IC1を示す図である。
図4(b)に示すグラフの縦軸Iは、投影像の光強度を示している。
【0019】
図4(b)には、
図3(b)に示した多角形マスクデータ10に基づいて製造されたマスクを投影露光装置に装填した場合に得られる投影像(以下では、単に「多角形マスクデータ10の投影像」とも呼ぶ)での、
図4(a)中の線分Aに対応する部分での強度分布IRも合わせて示している。以下では、多角形マスクデータ10の投影像の強度分布IRを「基準像の強度分布IR」とも呼ぶ。基準像の強度分布IRは、ステップS102を実行する前に、予め算出しておく。基準像の強度分布IRの算出方法も周知であるため、ここでは説明は省略する。
【0020】
なお、基準像の強度分布IRの算出に際しても、多角形マスクデータ10に基づくマスクが使用される投影露光装置の露光波長、開口数、照明条件、残存収差等の光学条件を用いて行う。また、大面積の透過領域12部分に対応する投影像の光強度が上述の所定の値になるように、光強度(強度分布)のスケールを設定する。
【0021】
第1マスクデータ20は、正ピクセルPPと負ピクセルMPとの配置の最適化が未完のため、第1マスクデータ20の投影像の強度分布IC1は、基準像の強度分布IRとは、やや乖離したものとなる。この乖離量を定量化して第1評価値を算出し、第1マスクデータ20における正ピクセルPPと負ピクセルMPとの配置の最適化の程度を推定するパラメーターとする。
【0022】
第1評価値としては、一例として、第1マスクデータ20の投影像の強度分布IC1と基準像の強度分布IRとの差分D1の二乗和を用いる。すなわち、第1マスクデータ20の投影像が算出されるX座標およびY座標の各点(X,Y)で、第1マスクデータ20の投影像の強度分布IC1と基準像の強度分布IRとの差分D1の二乗を求め、これをX座標およびY座標の所定の範囲に渡って積分した値を用いる。
なお、
図4(a)および
図4(b)では領域22を例示して説明しているが、第1評価値は、差分D1の二乗和を、
図3(a)に示した第1マスクデータ20のXアドレスおよびYアドレスの全域に対応するX座標およびY座標の範囲で積算して算出する。
【0023】
第1評価値は、上述の第1マスクデータ20の投影像の強度分布IC1と基準像の強度分布IRとの差分D1の二乗和に限られるわけではない。例えば、
図3(b)に示した多角形マスクデータ10の値そのものとの差分の二乗和を用いても良い。
【0024】
ステップS103以降で、正ピクセルPPと負ピクセルMPとの配置の改善を行う。
実施形態のマスクデータ生成方法においては、後述するように、
図4(a)に示した第1マスクデータ20内の注目範囲23内に配置されている複数のピクセルPの正ピクセルPPと負ピクセルMPとを入れ換えることにより、改善を行う。
【0025】
ステップS103においては、注目範囲23のYアドレスであるYkのループを開始する。このループにおいて、YアドレスであるYkは1からMまで順に変化する。
次のステップS104においては、注目範囲23のXアドレスであるXjの値のループを開始する。このループにおいて、XアドレスであるXjは1からNまで順に変化する。
【0026】
ステップS105においては、CPU72は、第1マスクデータ20の2次元グリッド上のアドレスXj,Ykで指定されるピクセルP(Xj,Yk)および近傍のピクセルPに、正ピクセルPPと負ピクセルMPが混在するか否かを判断する。この判断における近傍の範囲とは、
図4(a)に注目範囲23として太線枠で示した範囲であり、例えば、P(Xj,Yk)、P(Xj,Yk+1)、P(Xj+1,Yk)およびP(Xj+1,Yk+1)の、2行2列の計4つのピクセルPを含む範囲である。
【0027】
注目範囲23に、正ピクセルPPと負ピクセルMPが混在する場合には、ステップS106に進む。一方、混在しない場合、すなわち、注目範囲23内のピクセルPが、全て正ピクセルPPであるか、または全て負ピクセルMPである場合には、ステップS111に進む。
【0028】
なお、ステップS105において、さらに、P(Xj,Yk)とP(Xj+1,Yk+1)との値が等しく、かつP(Xj,Yk+1)とP(Xj+1,Yk)との値が等しい場合に限って、正ピクセルPPと負ピクセルMPが混在すると判断しても良い。
【0029】
ステップS106においては、第1マスクデータ20の注目範囲23に含まれる正ピクセルPPの値を-1に変更して負ピクセルMPとし、負ピクセルMPの値を+1に変更して正ピクセルPPとすることにより、第2マスクデータを生成する。すなわち、注目範囲23における正ピクセルPPと負ピクセルMPの配置を入れ換えて、第2マスクデータを生成する。
【0030】
図5(a)は、生成した第2マスクデータ25の一部を示す図であり、第2マスクデータ25のうち、
図4(a)に示した第1マスクデータ20の一部分である領域22に相当する部分を示している。
第2マスクデータ25においては、注目範囲23内の正ピクセルPPと負ピクセルMPの配置は、第1マスクデータ20における配置とは入れ換わっている。
【0031】
ステップS107において、CPU72は、第2マスクデータ25に基づいて製造されたマスクを投影露光装置に装填した場合に得られる投影像(以下では、単に「第2マスクデータ25の投影像」とも呼ぶ)の強度分布を算出する。投影像の強度分布の算出方法は、上述の第1マスクデータ20の投影像の算出方法と同様である。
図5(b)は、
図4(b)と同様に、算出された第2マスクデータ25の投影像のうち
図5(a)中の線分Aに相当する部分での強度分布IC2、および上述の多角形マスクデータ10の投影像の強度分布(基準像の強度分布)IRを示す図である。
【0032】
そして、CPU72は、上述の第1評価値の算出と同様にして、第2マスクデータ25の投影像の強度分布IC2と基準像の強度分布IRとの乖離量を定量化する第2評価値を算出する。第2評価値として、上述の第1評価値と同様に、例えば、第2マスクデータ25の投影像の強度分布IC2と基準像の強度分布IRとの差分D2の二乗和を用いる。
【0033】
ステップS108において、CPU72は、第1評価値と第2評価値とを比較する。上述のように、第1評価値および第2評価値が基準像からの乖離を表す量であるので、第1マスクデータ20または第2マスクデータ25のうち、より小さな第1評価値または第2評価値を有するマスクデータが、より好ましいマスクデータであるといえる。
【0034】
従って、第2評価値が第1評価値より小さい(比較の判断がYes)場合には、第2マスクデータ25がより好ましいマスクデータである。従って、CPU72は、ステップS109に進み、第2マスクデータ25を第1マスクデータ20に代入する。これにより、第1マスクデータ20は、より好ましいデータに書き換えられる。そして、ステップS110において、CPU72は、第2評価値を第1評価値に代入する。そして、ステップS111に進む。
【0035】
一方、ステップS108において第2評価値が第1評価値以上である(比較の判断がNo)場合には、第1マスクデータ20がより好ましいマスクデータであるため、CPU72は、ステップS109、ステップS110に進むことなく、ステップS111に進む。
【0036】
ステップS111は、注目範囲23のXアドレスであるXjの値のループの終点であり、Xjの値を1増加して、Xjの値がN以下であればステップS104に戻り、Xjの値がNを超えていればステップS112に進む。
ステップS112は、注目範囲23のYアドレスであるYkの値のループの終点であり、Ykの値を1増加して、Ykの値がM以下であればステップS103に戻り、Ykの値がMを超えていればステップS113に進む。
【0037】
ステップS113において、CPU72は、ステップS102において算出し、ステップS109において書き換えた第1評価値が、所定の基準値よりも小さいか否かを判断する。判断結果がYes、すなわち、第1評価値が所定の基準値よりも小さい場合には、第1マスクデータ20の改善が終了したとして、ステップS114に進む。一方、判断結果がNo、すなわち、第1評価値が所定の基準値よりも小さくない場合には、第1マスクデータ20の改善は未終了であるとして、ステップS103に戻る。
所定の基準値は、例えば、オペレータがコンピュータ71の入力部75から入力しても良く、ネットワーク回線NWを介して外部から入力されるものであっても良い。
【0038】
ステップS114において、CPU72は、第1マスクデータを出力データとして出力する。出力データの出力先は、コンピュータ71に含まれる光学ドライブ(OD)76であっても良く、ネットワーク回線NWを介して、サーバ79または不図示の通信回線上のサーバに出力しても良い。
以上の各ステップにより、出力データとしてのマスクデータが生成される。
【0039】
なお、上述のステップS114において出力される出力データは、ステップS108における第1評価値と第2評価値との比較の結果に基づいて選定された第1マスクデータ20または第2マスクデータ25のいずれか一方である。
【0040】
なお、上述のステップS105およびステップS106において、上述の近傍の範囲である注目範囲23の範囲は、上述の4つのピクセルPに限られるわけではない。例えば、近傍の範囲である注目範囲23の範囲は、P(Xj,Yk)および、P(Xj,Yk+1)またはP(Xj,Yk-1)の2つのピクセルPを含む範囲であっても良く、P(Xj,Yk)、およびP(Xj+1,Yk)またはP(Xj-1,Yk)の2つのピクセルPを含む範囲であっても良い。あるいは、P(Xj,Yk)を中心として、アドレスX方向およびアドレスY方向に、それぞれ±1から±3程度の範囲のアドレスに含まれるピクセルPを含む範囲であっても良い。
【0041】
注目範囲23の範囲内に4つ以上のピクセルPが含まれる場合には、ステップS106において、複数の正ピクセルPPおよび負ピクセルMPの値を入れ換えて第2マスクデータを生成することになる。
【0042】
なお、上述の近傍の範囲である注目範囲23の範囲の上限は、一例として、第1マスクデータ20の2次元グリッド上で、第1マスクデータ20のいわゆるデザインルールの長さに相当する長さの2倍程度の距離である。すなわち、第1マスクデータ20が、一例としてデザインルール45nmのマスク用のデータであって、グリッドサイズが被露光基板(ウエハ)上換算で15nmでなら、注目範囲23の範囲は2×45nm/15nm=6アドレスの範囲となる。これは、P(Xj,Yk)を中心として、アドレスX方向およびアドレスY方向に、それぞれ±3アドレス程度の範囲となる。
【0043】
なお、上述の第1実施形態は、ステップS103、ステップS104、ステップS111、およびステップS112からなるXj、Ykについてのループを有するものとしたが、このループは必ずしも設けなくても良い。すなわち、ステップS101およびステップS102において、第1マスクデータ20に関する第1評価値を算出し、第1マスクデータ20の中の1つの注目範囲23に対してステップS106からステップS109を実行し、その後ステップS114を実行しても良い。
【0044】
なお、上述の第1実施形態において、ステップS101においてロードする第1マスクデータ20は、上述の非特許文献1に記載される方法を用いて、ある程度まで最適化されたピクセルベースのマスクデータであっても良い。非特許文献1に記載される方法は、シミュレーテッドアニーリングを使用してマスクデータを最適化するため、最適化に長時間を要する。しかし、上述の非特許文献1に記載される方法による最適化を、ある程度で打ち切り、その後、上述の第1実施形態によるマスクデータ生成を適用することにより、より短時間でマスクデータを生成することができる。
【0045】
あるいは、上述の第1実施形態において、ステップS101においてロードする第1マスクデータ20として、それに含まれる複数の減光部分21a~21dのそれぞれに概ね最適化された部分マスクデータを繋ぎ合わせて合体したマスクデータを用いても良い。
この場合、上述の第1実施形態においては、基本的には、複数の減光部分21a~21dの周辺近傍に相当する部分のピクセルPのデータを修正すれば良いので、より短時間で、マスクデータを生成することができる。
【0046】
上述の第1実施形態においては、第1マスクデータ20および第2マスクデータ25は、いずれも+1と-1の2値を取るデータであるとしたが、これに限らず、0と1の2値を取るデータであっても良い。また、比較対象となる多角形マスクデータ10についても、上述の明暗マスクパターンに限らず、他の領域に対して振幅透過率が負となる、いわゆる位相シフトマスクのマスクパターンであっても良い。
【0047】
(マスクデータ生成方法の実施形態の効果)
(1)上述のマスクデータ生成方法の実施形態は、2次元グリッドを構成する複数の単位要素(ピクセルP)のそれぞれに、第1の値(+1)、または第1の値とは異なる第2の値(-1または0)が設定されている第1マスクデータ20に基づく投影像IC1の第1評価値を算出し、第1マスクデータ20に含まれる複数の単位要素のうち、第1の値が設定されている第1単位要素(正ピクセルPP)の値を第2の値に変更し、2次元グリッド上で第1単位要素と近接して配置され、第2の値が設定されている第2単位要素(負ピクセルMP)の値を第1の値に変更して第2マスクデータ25を生成し、第2マスクデータに基づく投影像IC2の第2評価値を算出し、第1評価値と第2評価値とを比較し、比較した結果に基づいて、第1マスクデータ20または第2マスクデータ25のいずれか一方を出力マスクデータとして選定する。
この構成により、ピクセルベースのマスクデータの中に近接して配置されている2つ以上のピクセルの値を同時に変更し、これに伴う投影像の評価値の変化に基づいて、マスクデータの改善を行うことができる。これにより、ピクセルベースのマスクデータの中の1つピクセルの値を書き換え、これに伴う投影像の評価値の変化に基づいて、マスクデータの改善を行う方法に比べ、より短時間でマスクデータを生成することができる。
【0048】
(マスクデータ生成プログラムの実施形態)
上述のとおり、データ処理装置70を使用した上述のマスクデータの生成方法は、上記の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムであるコンピュータ71に読み込ませ、実行させる。
【0049】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0050】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワーク回線NWや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。
【0051】
また上記のプログラムは、マスクデータを生成させるプログラムの機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0052】
また、上述したプログラムは、CD-ROM等の記録媒体やインターネット等のデータ信号を通じて提供することができる。例えば、
図2中のCPU72、メモリ73およびハードディスク77を備えるコンピュータ71は、光学ドライブODに装填されたCD-ROMを介してプログラムの提供を受ける。
【0053】
また、コンピュータ71に接続されたネットワーク回線NWに接続されているサーバ79は上記プログラムを提供するサーバコンピュータとしても機能し、コンピュータ71の、メモリ73またはハードディスク77等の記録媒体にプログラムを転送する。すなわち、プログラムをデータ信号として搬送波により搬送して、ネットワーク回線NWを介して送信する。
【0054】
このように、プログラムは、記録媒体や搬送波などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給できる。
なお、
図1に示したフローチャートの各ステップは、必ずしもその全ての実行が必要とされるものではない。
【0055】
(マスクデータ生成プログラムの実施形態の効果)
(2)上述のマスクデータプログラムの実施形態は、コンピュータ71を含むデータ処理装置70に対し、2次元グリッドを構成する複数の単位要素(ピクセルP)のそれぞれに、第1の値(+1)、または第1の値とは異なる第2の値(-1または0)が設定されている第1マスクデータ20を記憶領域に記憶させ、
第1マスクデータ20に基づく投影像IC1の第1評価値を算出させ、
第1マスクデータ20に含まれる複数の単位要素(ピクセルP)のうち、第1の値が設定されている第1単位要素(正ピクセルPP)の値を第2の値に変更し、2次元グリッド上で第1単位要素と近接して配置され、第2の値が設定されている第2単位要素(負ピクセルMP)の値を第1の値に変更して第2マスクデータ25を生成させ、
第2マスクデータに基づく投影像IC2の第2評価値を算出させ、第1評価値と第2評価値とを比較し、比較した結果に基づいて、第1マスクデータ20または第2マスクデータ25のいずれか一方を出力マスクデータとして選定させる。
この構成により、ピクセルベースのマスクデータの中に近接して配置されている2つ以上のピクセルの値を同時に変更し、これに伴う投影像の評価値の変化に基づいて、マスクデータの改善を行うことができる。これにより、ピクセルベースのマスクデータの中の1つピクセルの値を書き換え、これに伴う投影像の評価値の変化に基づいて、マスクデータの改善を行うプログラムに比べ、より短時間でマスクデータを生成することができる。
【0056】
上記では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10:多角形マスクデータ、11:遮光領域、20:ピクセルベースのマスクデータ(第1マスクデータ)、21:減光領域、23:注目範囲、P:ピクセル、PP:正ピクセル、MP:負ピクセル、IC1,IC2:投影像の強度分布、IR:基準像の強度分布、70:データ処理装置、71:コンピュータ、72:CPU、73:メモリ、77:ハードディスク(HD)