(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030246
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】空間除染装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20230301BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61L2/20 106
A61L9/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135280
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】391015926
【氏名又は名称】チヨダエレクトリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 功男
(72)【発明者】
【氏名】太田 隆治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】山岸 俊幸
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058DD01
4C058DD05
4C058DD07
4C058DD16
4C058EE03
4C058EE26
4C058JJ16
4C058JJ22
4C180AA07
4C180CA02
4C180EA53X
4C180GG07
4C180HH05
4C180KK01
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】過酸化水素ガス濃度計測センサに代表されるガス濃度計測センサの構成を省略しても、除染処理を行う対象の空間内の除染用薬液ガス濃度を必要な濃度に維持することが可能な空間除染装置を提供すること。
【解決手段】除染用薬液を収容する薬液タンク20と、薬液タンク20に収容された除染用薬液から除染ガスを生成する除染ガス生成部50と、除染空間の容積を入力する容積入力部40と、容積入力部40により入力された容積に基づいて除染空間における除染ガスの濃度が予め設定された濃度を所定時間継続するように除染ガス生成部50による除染ガスの生成量および供給時間をそれぞれ制御する制御部60と、を具備することを特徴とする空間除染装置100である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除染用薬液を収容する薬液タンクと、
前記薬液タンクに収容された前記除染用薬液から除染ガスを生成する除染ガス生成部と、
除染空間の容積を入力する容積入力部と、
前記容積入力部により入力された前記容積に基づいて前記除染空間における前記除染ガスの濃度が予め設定された濃度を所定時間継続するように前記除染ガス生成部による前記除染ガスの生成量および供給時間をそれぞれ制御する制御部と、
を具備することを特徴とする空間除染装置。
【請求項2】
前記薬液タンクに収容された前記除染用薬液の重量を計測する計測器をさらに備え、
前記制御部は、前記容積入力部により入力された前記容積と、前記計測器により計測された前記重量と、に基づいて、前記除染ガス生成部による前記除染ガスの生成量を制御することを特徴とする請求項1記載の空間除染装置。
【請求項3】
前記薬液タンクから前記除染ガス生成部への前記除染用薬液の供給量を計測する計測器をさらに備え、
前記制御部は、前記容積入力部により入力された前記容積と、前記計測器により計測された前記供給量と、に基づいて、前記除染ガス生成部による前記除染ガスの生成量を制御することを特徴とする請求項1記載の空間除染装置。
【請求項4】
前記除染空間の除染処理後において、前記除染空間に残留している前記除染ガスを前記除染空間の外部に排出する送風ファンをさらに具備していることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項記載の空間除染装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記容積入力部により入力された前記容積に基づいて、前記送風ファンの作動時間を算出する処理と、
前記除染空間の除染処理後に、少なくとも前記作動時間にわたって前記送風ファンを作動させる処理と、をそれぞれ実行することを特徴とする請求項4記載の空間除染装置。
【請求項6】
前記除染空間の除染処理後において、前記除染空間に残留している前記除染ガスを触媒により無害化する除害器をさらに具備していることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項記載の空間除染装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記容積入力部により入力された前記容積に基づいて、前記除害器の作動時間を算出する処理と、
前記除染空間の除染処理後に、少なくとも前記作動時間にわたって前記除害器を作動させる処理と、をそれぞれ実行することを特徴とする請求項6記載の空間除染装置。
【請求項8】
通信機能を有する電子機器と通信可能な通信手段をさらに有し、
前記制御部は、前記作動時間の経過後に、前記通信手段を介して前記電子機器に通知案内を送信することを特徴とする請求項5または7記載の空間除染装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間除染装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場、介護現場の他、不特定多数の人が入退室する部屋に対し、過酸化水素ガスを用いて除染処理を行うための空間除染装置が提供されている。このような空間除染装置としては特許文献1(特開2018-114202号公報)に開示されているような構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている空間除染装置には、過酸化水素ガス濃度計測センサが配設されている。過酸化水素ガス濃度計測センサは、毎年の較正と2年毎の交換が必要とされており、メンテナンスが煩雑になると共にランニングコストも高騰してしまう。また、このメンテナンスを怠ると除染処理が不完全になってしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは次の通りである。すなわち本発明は、メンテナンスが煩雑でランニングコスト高騰の原因である過酸化水素ガス濃度計測センサに代表されるガス濃度計測センサの構成を省略しても、除染処理を行う対象の空間内の除染用薬液ガス濃度を必要な濃度に維持することが可能な空間除染装置を提供することにある。
【0006】
上記課題を解決するために発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、除染用薬液を収容する薬液タンクと、前記薬液タンクに収容された前記除染用薬液から除染ガスを生成する除染ガス生成部と、除染空間の容積を入力する容積入力部と、前記容積入力部により入力された前記容積に基づいて前記除染空間における前記除染ガスの濃度が予め設定された濃度を所定時間継続するように除染ガス生成部による前記除染ガスの生成量および供給時間をそれぞれ制御する制御部と、を具備することを特徴とする空間除染装置である。
【0007】
これにより、過酸化水素ガス濃度計測センサに代表されるガス濃度センサの構成を省略することができ、メンテナンスが容易でランニングコストの低減に寄与すると共に、除染に必要な除染用薬液ガス濃度を適切に維持することが可能な空間除染装置を提供することができる。
【0008】
また、前記薬液タンクに収容された前記除染用薬液の重量を計測する計測器をさらに備え、前記制御部は、前記入力部により入力された前記容積と、前記計測器により計測された前記重量と、に基づいて、前記除染ガス生成部による前記除染ガスの生成量を制御することが好ましい。
【0009】
これにより、薬液タンクに収容された除染用薬液の重量に基づいて除染空間に供給する除染ガスの生成量の制御を容易に行うことができる。
【0010】
また、前記薬液タンクから前記除染ガス生成部への前記除染用薬液の供給量を計測する計測器をさらに備え、前記制御部は、前記入力部により入力された前記容積と、前記計測器により計測された前記供給量と、に基づいて、前記除染ガス生成部による前記除染ガスの生成量を制御することが好ましい。
【0011】
これにより、除染ガス生成部への除染用薬液の供給量に基づいて除染空間に供給する除染ガスの生成量の制御を容易に行うことができる。
【0012】
また、前記除染空間の除染処理後において、前記除染空間に残留している前記除染ガスを前記除染空間の外部に排出する送風ファンをさらに具備していることが好ましい。
【0013】
また、前記除染空間の除染処理後において、前記除染空間に残留している前記除染ガスを触媒により無害化する除害器をさらに具備していることが好ましい。
【0014】
これらにより、除染処理後における除染空間内を安全な状態にすることができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記容積入力部により入力された前記容積に基づいて、前記送風ファンまたは前記除害器の作動時間を算出する処理と、前記除染空間の除染処理後に、少なくとも前記作動時間にわたって前記送風ファンまたは前記除害器を作動させる処理と、をそれぞれ実行することが好ましい。
【0016】
これにより、除染処理後の除染空間を自動で安全な状態にすることができる。
【0017】
また、通信機能を有する電子機器と通信可能な通信手段をさらに有し、前記制御部は、前記作動時間の経過後に、前記通信手段を介して前記電子機器に通知案内を送信することが好ましい。
【0018】
これにより、除染処理後の除染空間に安全に進入することが可能な状態をいち早く知ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明における空間除染装置の構成を採用することにより、過酸化水素ガス濃度計測センサに代表されるガス濃度センサの構成を省略することができる。これによりメンテナンスが容易でランニングコストの低減に寄与すると共に、除染に必要な除染用薬液ガス濃度を適切に維持することが可能な空間除染装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態における空間除染装置の斜視図である。
【
図3】本実施形態における空間除染装置の側面パネルを取り外した状態における
図1中のIII方向から臨んだ矢視図である。
【
図4】
図3中のIV部分における筐体の内側部分の状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる空間除染装置100の実施形態について、図面に基づいて具体的な説明がなされる。
図1および
図2に示すように、本実施形態における空間除染装置100は、直方体状の筐体10、筐体10に配設された薬液タンク20、噴霧口30、容積入力部40、除染ガス生成部50、制御部60および電源部70を具備している。本実施形態においては、除染用薬液として過酸化水素水を用いる構成について説明を行うが、除染用薬液は過酸化水素水に限定されるものではなく、他の公知の除染用薬液を用いることもできる。以降、除染用薬液のことを単に薬液または過酸化水素水ということがある。
【0022】
本実施形態における筐体10には上面において対向する一対の外周縁にハンドル12が配設されており、筐体10の底面角部にはそれぞれキャスタ14が配設されているので、作業者は筐体10を適宜移動させることができる。また、本実施形態における筐体10の背面には電源用コンセント16が配設されている。電源用コンセント16は電源部70に電気的に接続されており、電源部70は図示しない商用電源に接続されている。これにより電源用コンセント16を介して電動付属品80への電源供給が可能になっている。電動付属品80としては、除染処理後における過酸化水素ガスを室外に排出する送風ファンや、過酸化水素ガスを触媒により無害化する除害器等を例示することができる。
【0023】
薬液タンク20は、筐体10の内部空間に収容されており、筐体10の上面に配設された開閉蓋22を跳ね上げることで薬液タンク20に過酸化水素水を簡単に供給することができる。薬液タンク20の内壁面には収容容量を示す目盛24が設けられている。また、本実施形態における薬液タンク20の下には、薬液タンク20に収容された過酸化水素水の重量を計測する計測器26が配設されており、計測器26は薬液タンク20に固定されている。計測器26により計測された過酸化水素水の重量データは、空間除染装置100による除染処理動作開始後に、制御部60の記憶手段64にリアルタイムに送信される。計測器26から送信される重量データは予め風袋引きしておくこともできる。
【0024】
また、薬液タンク20の底部には筐体10の側面に引き出されたドレイン管28が配設されている。ドレイン管28にはドレイン弁29が配設されている。使用者は、空間除染装置100の使用時にドレイン弁29を閉じ、空間除染装置100の未使用時や運搬時等においてはドレイン弁29を開き、ドレイン管28から薬液タンク20内の薬液を所定の容器に排出する処理を行う。このようなドレイン管28およびドレイン弁29を配設することで、空間除染装置100の運搬時等における薬液の漏れ出し事故等を防止し、空間除染装置100を安全に取り扱うことができる。また、薬液タンク20の底部には薬液タンク20に収容された薬液を除染ガス生成部50へ送液する送液管(図示はせず)が接続されている。薬液はチューブポンプ90によって送液される。ここでは、除染ガス生成部50の一部である2流体ノズル51と薬液タンク20との間が送液管により接続されている。
【0025】
本実施形態における噴霧口30は、筐体10の上面に開口した状態で2つ並べて配設されている。噴霧口30に配設された噴霧筒32の向きは、鉛直方向の軸線周りに個別に回動可能に設けられている。噴霧口30は後述する流通路56の最下流部の位置に配設されている。
【0026】
容積入力部40は筐体10の上面に配設されている。本実施形態における容積入力部40は、除染空間である除染対象室の容積の入力や、薬液タンク20に収容された過酸化水素水の重量を計測器26に計測させると共に、記憶手段64への計測データ送信させるための計測データ送信コマンドの入力が可能である。このような容積入力部40としては、任意の数字を入力する数字用入力部(図示はせず)と予め設定されているコマンドの選択および送信が可能なコマンド用入力部(図示はせず)とを有しているが、キーボード状の構成を採用することもできる。なお、本実施形態における除染対象室の容積計測は、レーザ測距器等を用いて使用者が除染対象室の3次元寸法を計測することにより算出している。
【0027】
本実施形態における除染ガス生成部50は除染対象室に供給する過酸化水素ガスを生成するためのものであり、2流体ノズル51、エアコンプレッサ52、レギュレータ53、外気取込ファン54、ヒータ55および流通路56を有している。2流体ノズル51にはチューブポンプ90から薬液が供給され、エアコンプレッサ52により圧縮された後にレギュレータ53で所定圧力に調圧された圧縮空気が供給される。2流体ノズル51は、流通路56の縦方向の経路中において過酸化水素水のミストを
図2中の下向き矢印方向に噴射するように噴射口を下向きにした(外気取込ファン54に向けた)状態で配設されている。エアコンプレッサ52は、筐体10外表面に配設された外部空気取込口(図示はせず)から取り込んだ外部空気を圧縮する。エアコンプレッサ52により生成された圧縮空気はレギュレータ53に供給され、所定の圧力に調圧される。レギュレータ53に調圧された圧縮空気は2流体ノズル51に供給される。
【0028】
外気取込ファン54は、筐体10の底部に配設されており、筐体10の外表面に配設された外部空気取込口から取り込んだ外部空気を外気取込ファン54から噴霧口30の位置まで連通させた流通路56によって供給している。外気取込ファン54により取り込まれた外気は、
図2中の一点鎖線の矢印方向に示すように流通路56に沿って流れる。流通路56の水平方向の経路中には、外気取込ファン54に隣接させてヒータ55が配設されており、流通路56に取り込まれた外部空気が所定の温度に加熱される。所定の温度に加熱された外部空気は外気取込ファン54によって取り込まれた外部空気に押し出されるようにして2流体ノズル51(噴霧口30)に向けて供給されることになる。2流体ノズル51から噴射された過酸化水素水のミストをヒータ55で加熱された空気に正面衝突させることで、過酸化水素水のミストを確実に気化させて、過酸化水素ガスとして噴霧口30から筐体10の外部に向けて放出することができる。
【0029】
制御部60は、通信手段62、記憶手段64、記憶手段64に記憶されている動作制御プログラムPGM、タイマ66および演算手段68を有している。通信手段62は無線通信が可能なWebサーバ機能を有し、使用者のスマートフォンに代表される通信機能を有する電子機器(図示はせず)との通信が可能であるが、具体的な通信形態は特に限定されるものではない。また、
図3は模式図であるため、通信手段62が制御部60の他の構成と近接する位置にまとめて配設されているように示されているが、実際の通信手段62は、容積入力部40に配設されている。なお、使用者は、使用者のスマートフォンにインストールされているWebブラウザを用いて通信手段62を介して制御部60にアクセスすることで、空間除染装置100の除染処理の経過状態等を遠隔で確認および動作制御することが可能になっている。
【0030】
演算手段68は、動作制御プログラムPGMに基づいて噴霧口30から放出される過酸化水素ガスの単位時間当たりの噴霧量の制御を行う。具体的には、記憶手段64に送信された除染対象室の容積、薬液タンク20に収容されている過酸化水素水の重量、およびタイマ66による除染処理の経過時間と、に基づいて除染対象室内が所定の過酸化水素ガス濃度になるように除染ガス生成部50の動作を制御している。より詳細には、除染対象室の容積と噴霧口30から噴霧された過酸化水素ガスの累積重量(薬液タンク20に収容されている過酸化水素水の所定時間経過前後における計測重量の差分)とに基づいて演算手段68が除染対象室における過酸化水素ガスの濃度を算出している。また、演算手段68は、記憶手段64に予め記憶させた所定ガス濃度に到達するまでの間、除染ガス生成部50による過酸化水素ガスの生成を最大出力で実行させる処理を実行する。
【0031】
除染対象室における過酸化水素ガス濃度が所定ガス濃度に到達すると、演算手段68は、動作制御プログラムPGMに基づいて除染ガス生成部50の過酸化水素ガスの生成量を低下させ、除染対象室における過酸化水素ガス濃度を所定ガス濃度となるように所定時間にわたって維持させている。このような除染ガス生成部50による過酸化水素ガスの生成量およびその供給時間の動作制御は、予め複数の異なる除染容積を有する除染対象室における噴霧実験により算出しておくことができる。演算手段68は、除染対象室を所定の過酸化水素ガス濃度を所定時間にわたって維持した後、除染ガス生成部50による過酸化水素ガスの生成を停止し、動作制御プログラムPGMに基づいて電動付属品80である送風ファンまたは除害器を作動させる。このように除染処理の後に電動付属品80を作動させることにより、除染対象室の過酸化水素ガス濃度を安全なレベルになるまで低下させることができる。なお、除染対象室と外部との連通部がある場合には除染用送風ファンを用い、除染対象室と外部との連通部がない場合には除害器を好適に用いることができる。
【0032】
演算手段68は、電動付属品80を作動させるに先立って、容積入力部40から入力された容積に基づいて電動付属品80を作動させる作動時間の算出を行う。そして、演算手段68は、除染ガス生成部50の動作停止後(除染対象室の除染処理後)に、算出した(予め算出されていてもよい)少なくとも作動時間にわたって電動付属品80を作動させる処理を行う。また、演算手段68は、作動時間の経過後に、通信手段62を介して使用者のスマートフォンに除染対象室への入室が可能になった旨の通知案内を送信する処理を実行する。演算手段68(制御部60)がこのような電動付属品80の動作制御処理を除染対象室の除染処理後に行うことで、除染対象室への除染処理と、その後処理までを全自動で行うことができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、使用者が除染対象室に入った後に、使用者が電動付属品80の動作を停止させているので、除染対象室をより安全な状態にすることができる。また、演算手段68が除染対象室の容積に基づいて算出した作動時間に安全率を乗じて得た自動停止用時間にわたって電動付属品80の動作が行われた場合には、演算手段68が電動付属品80の動作を停止させる処理を実行する形態を採用することもできる。
【0034】
続いて、本実施形態における空間除染装置100を用いた除染対象室の除染処理方法について説明する。使用者は、除染対象室に空間除染装置100を搬入し、除染対象室内の商用電源の電源容量を確認した上で空間除染装置100を接続して空間除染装置100の電源をオンにする。空間除染装置100は除染対象室の中央位置に配設することが好ましい。また、使用者は、除染対象室の清掃を行い、過酸化水素ガスによる除染が可能になるように有機物の除去処理を行う。この清掃に合わせて、除染対象室内の備品の養生も併せて行う。具体的には、化学センサを用いる機器のセンサ部の養生、室内の扉類の開放、載置物の露出等を行い、除染用薬液ガスとの接触が確実に行われるようにベッドやマットレス等の載置物の処理を行う。
【0035】
また、使用者は、除染対象室の温度および湿度の計測を行う。温度および湿度が空間除染装置100の動作範囲外の数値である場合には、エアコン等を作動させて除染対象室の温度および湿度が空間除染装置100の動作範囲内になるように調整を行う。また、使用者は、電動付属品80としての除害器を筐体10の電源用コンセント16に接続する。また、使用者は、除染対象室内の通気口や火災報知器を図示しない被覆用付属品により被覆して通気口からのガス漏れや火災報知機の誤作動を防止する。また、使用者は、除染対象室の出入口を除いた部分の目張りをする。また、使用者は、レーザ測距器などの距離計測器を用いて除染対象室の三次元寸法を計測すると共に室内容積を算出し、容積入力部40を用いて空間除染装置100に室内容積を入力する。
【0036】
また、使用者は、除染対象室の壁面等に過酸化水素ガスと反応する図示しないケミカルインジゲータを複数箇所に配設する。そして使用者は、サーキュレータを商用電源に接続してサーキュレータの電源をオンにする。使用者は、薬液タンク20の開閉蓋22を開き、薬液タンク20に過酸化水素水を供給する。薬液タンク20への過酸化水素水の供給量は予め入力された室内容積に応じた容量が供給される。室内容積に応じた過酸化水素水の供給量は開閉蓋22の裏面や薬液タンク20の目盛24に表示させておくこともできる。また、使用者はスマートフォンのWebブラウザを起動して通信手段62(空間除染装置100の操作用Webサイト)にアクセスし、スマートフォンと空間除染装置100との接続確認を行う。
【0037】
そして使用者は、除染対象室の出入り口から室外に出て、出入口の目張りを行うと共に、出入り口に対地入り禁止の表示を設置する。ここまでの工程の順序は特に限定されるものではないので、物理的な可能である範囲において実施順序は適宜変更することができる。次に使用者は、Webブラウザにより空間除染装置100の操作用Webサイトを操作し、空間除染装置100の除染処理の開示指示を出す。空間除染装置100は、除染処理開始指示を受信すると、動作制御プログラムPGMに基づいて、所定の除染処理を実行した後、触媒型処理機により除染対象室の過酸化水素ガス濃度を所定濃度まで低下させる処理を実行する。以上に説明した一連の処理が完了すると、演算手段68は通信手段62を経由して使用者のスマートフォンに除染対象室への立ち入り許可の通知を送信する。
【0038】
使用者はスマートフォンに除染対象室への入室許可通知を受信してから、除染処理対象室に立ち入り、ケミカルインジゲータの反応状態を確認し、適切に除染処理が行われたことを確認した後、換気等を行い再度室外で待機する。この後、使用者は過酸化水素ガス濃度計測器により残留ガス濃度を計測し、所定濃度以下であることを確認し、除染処理を完了し、養生処理等の撤去を行い原状復旧する。
【0039】
以上に、本実施形態における空間除染装置100の形態について説明したが、本実施形態は本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、演算手段68が薬液タンク20に収容されている過酸化水素水の所定時間経過前後における計測重量の差分に基づいて除染ガス生成部50の動作制御を行っているがこの形態に限定されるものではない。演算手段68は、薬液タンク20から除染ガス生成部50に供給された薬液の容積と、除染対象室の容積とに基づいて除染ガス生成部50の動作制御を行う形態を採用することもできる。
【0040】
この他、2流体ノズル51(除染ガス生成部50)に薬液を供給すると共に供給した薬液量が計測可能な給液ポンプ(供給された薬液量の計測機能を有するポンプ)を用いた形態を採用することもできる。この場合、計測器26の配設は省略可能であり、演算手段68は、給液ポンプにより計測および送信された累積薬液供給量と除染対象室の容積とに基づいて除染対象室の薬液ガス濃度を算出し、除染ガス生成部50の出力制御(除染ガスの生成量および供給時間の制御)を行うことができる。
【0041】
また、以上の実施形態においては、使用者のスマートフォンと空間除染装置100との通信は、スマートフォンのWebブラウザとWebサーバ機能を有する通信手段62との通信により行う形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。スマートフォンに空間除染装置100の通信手段62と通信可能な専用アプリケーションをインストールし、専用アプリケーションと通信手段62とを用いて、スマートフォンで空間除染装置100の動作制御を行う形態を採用することもできる。
【0042】
また、以上に説明した実施形態における各種変形例どうしを適宜組み合わせた構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10:筐体
12:ハンドル,14:キャスタ,16:電源用コンセント
20:薬液タンク
22:開閉蓋,24:目盛,26:計測器,
28:ドレイン管,29:ドレイン弁
30:噴霧口
32:噴霧筒
40:容積入力部
50:除染ガス生成部
51:2流体ノズル,52:エアコンプレッサ,53:レギュレータ,
54:外気取込ファン,55:ヒータ,56:流通路
60:制御部
62:通信手段,64:記憶手段,66:タイマ,68:演算手段
70:電源部
80:電動付属品
90:チューブポンプ
100:空間除染装置
PGM:動作制御プログラム