(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030289
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】バッテリーユニットの制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
H02J7/34 E
H02J7/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135339
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アリプル ジャベル
(72)【発明者】
【氏名】福井 康浩
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA10
5G503CA11
5G503CC07
5G503DA06
5G503DA16
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によって、バッテリーユニットに、DCリンク電圧を安定させるための充放電動作と、所定の充放電電力の充放電動作とを、実行可能にする。
【解決手段】電流決定部121は、DCリンク電圧VDCを制御するための電流値を、その指令値と測定値によって決定する。電流制限部122は、電流決定部121が決定した電流値に対して、受けた上限値と下限値との間に制限をかける。電流の上限値および下限値に同一の値を用いることによって、バッテリーユニット10から所定の充放電電力に対応する電流を出力することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCリンクに接続されるバッテリーユニットの制御装置であって、
DCリンク電圧の指令値と、DCリンク電圧の測定値とを基にして、DCリンク電圧を制御するための電流値を決定する電流決定部と、
電流の上限値および下限値を受け、前記電流決定部によって決定された電流値に対して、受けた上限値と下限値との間に、制限をかける電流制限部とを備えた
ことを特徴とするバッテリーユニットの制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリーユニットの制御装置において、
当該制御装置の外部から受信した当該バッテリーユニットの充放電電力の上限値および下限値を、電流の上限値および下限値に変換し、前記電流制限部に送る制限値変換部を備える
ことを特徴とするバッテリーユニットの制御装置。
【請求項3】
請求項1記載のバッテリーユニットの制御装置において、
当該制御装置の外部から受信した電流の上限値および下限値を、前記電流制限部に与える
ことを特徴とするバッテリーユニットの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーユニットが有する、充放電を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム、風力発電システム等のような分散電源装置の普及拡大に伴い、系統の安定化や需給調整力として、また災害による長期停電に備えて、蓄電池を併設したパワーコンディショナシステムの普及拡大が進んでいる。そして、バッテリーユニットの価格低下とともに、複数のバッテリーユニットを含むパワーコンディショナシステムを利用する需要が高まっている。
【0003】
特許文献1では、直流電源装置が接続される直流バスの電圧を安定にする直流給電システムが開示されている。この直流給電システムでは、複数のコンバータを制御する制御器は、分散電源装置から直流バスに供給される電圧が所定電圧から低下するとき、1つの直流電源装置から直流バスへ電力供給し、直流バスから他の直流電源装置へ電力を供給するように、コンバータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパワーコンディショナシステムでは、パワーコンディショナのインバータは、分散型電源が接続されるDCリンクの電圧が安定するよう制御を行っている。ところが、例えば、商用電力系統側から電力制限の指示を受けた場合や、負荷の消費電力が急に変動した場合等では、インバータによるDCリンクの電圧の制御が困難になる場合がある。
【0006】
この問題を解決するために、例えば、バッテリーユニットに、DCリンクの電圧を安定させるための充放電動作を実行させればよい。ところが、バッテリーユニットに、所定の充放電電力の充放電動作に加えて、DCリンクの電圧を安定させるための充放電動作を実行させるためには、その制御が複雑になってしまう。
【0007】
本発明では、簡易な構成の制御装置によって、バッテリーユニットが、DCリンク電圧を安定させるための充放電動作と、所定の充放電電力の充放電動作とを、実行可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様では、DCリンクに接続されるバッテリーユニットの制御装置は、DCリンク電圧の指令値と、DCリンク電圧の測定値とを基にして、DCリンク電圧を制御するための電流値を決定する電流決定部と、電流の上限値および下限値を受け、前記電流決定部によって決定された電流値に対して、受けた上限値と下限値との間に、制限をかける電流制限部とを備える。
【0009】
この構成によると、電流決定部によって、DCリンク電圧を制御するための電流値が、DCリンク電圧の指令値と測定値によって決定される。したがって、当該バッテリーユニットによって、DCリンク電圧を安定させるための充放電動作を実現することができる。また、電流制限部によって、電流決定部が決定した電流値に対して、受けた上限値と下限値との間に制限がかけられる。このため例えば、当該バッテリーユニットの充放電電力に対応する電流値を、電流の上限値および下限値の両方に用いることによって、当該バッテリーユニットから、所定の充放電電力に対応する電流を出力することができる。したがって、簡易な構成によって、当該バッテリーユニットに、DCリンク電圧を安定させるための充放電動作と、所定の充放電電力の充放電動作とを、実行させることができる。
【0010】
そして、前記制御装置は、当該制御装置の外部から受信した当該バッテリーユニットの充放電電力の上限値および下限値を、電流の上限値および下限値に変換し、前記電流制限部に送る制限値変換部を備える、としてもよい。
【0011】
これにより、制御装置の外部から、当該バッテリーユニットの充放電電力の上限値および下限値として同一の値が送信されたとき、その同一の値の充放電電力に対応する電流値が、電流制限部における上限値および下限値の両方に用いられる。すなわち、当該バッテリーユニットから、所定の充放電電力に対応する電流を出力することができる。
【0012】
あるいは、前記制御装置は、当該制御装置の外部から受信した電流の上限値および下限値を、前記電流制限部に与える、としてもよい。
【0013】
これにより、制御装置の外部から、電流の上限値および下限値として、当該バッテリーユニットの充放電電力に対応する電流値が送信されたとき、当該バッテリーユニットから、所定の充放電電力に対応する電流を出力することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、簡易な構成によって、バッテリーユニットに、DCリンク電圧を安定させるための充放電動作と、所定の充放電電力の充放電動作とを、実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】蓄電システムを含むパワーコンディショナシステムの全体構成例
【
図2】実施形態におけるバッテリーユニットの役割を表すイメージ図
【
図3】バッテリーユニットがDCリンク電圧を制御するスキームの一例を表す制御ブロック図
【
図4】
図3の制御スキームにおいて、所定電力を充放電させる制御を説明する図
【
図5】コントローラの処理の一例を示すフローチャート
【
図6】実施形態の手法を用いた実験の結果を示すグラフ
【
図7】ユニットコントローラの動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
(実施形態)
図1は蓄電システムを含むパワーコンディショナシステムの全体構成例である。
図1において、蓄電システム1は、充放電可能なn個(nは正の整数)のバッテリーユニット10-1,10-2,…,10-nを備える。なお、以降、バッテリーユニット10-1,10-2,…,10-nを総称してバッテリーユニット10とする場合がある。バッテリーユニット10はそれぞれ、蓄電池11と、ユニットコントローラ12とを備える。パワーコンディショナ2は、蓄電システム1の各バッテリーユニット10と接続されるDCリンク21と、DCリンク21の直流電力を交流電力に変換するインバータ22と、蓄電システム1のバッテリーユニット10の充放電動作を制御するコントローラ23とを備える。コントローラ23は、例えば、プロセッサとメモリを備えたマイクロコンピュータによって実現される。各バッテリーユニット10のユニットコントローラ12は、双方向DC/DCコンバータ(図示せず)を含み、パワーコンディショナ2のコントローラ23から送信された信号に従って、蓄電池11の充放電を実行する。また、各バッテリーユニット10のユニットコントローラ12は、それぞれ、DCリンクの電圧VDCを測定する電圧センサを備えている。
【0018】
分散電源4は、例えば、太陽光発電システム、水力発電システム、風力発電システム等である。分散電源4は、DCリンク21に接続され、電力PDERを出力する。パワーコンディショナ2の出力電力PACは、商用電力系統や負荷に供給される。
【0019】
パワーコンディショナ2のコントローラ3は、所定のサイクル毎に、蓄電システム1の充放電電力Pstorageを演算する。例えば、分散電源4の出力電力PDERが、パワーコンディショナ2の出力電力PACよりも大きいときは、その余剰電力を蓄電システム1の充電電力Pstorageとする。また、分散電源4の出力電力PDERが気象条件等の影響により低下し、パワーコンディショナ2の出力電力PACに対して不足するときは、その不足電力を蓄電システム1の放電電力Pstorageとする。
【0020】
また、パワーコンディショナ2のインバータ22は、DCリンク21の電圧VDCが安定するよう制御を行っている。ところが、例えば、商用電力系統側から電力制限の指示を受けた場合や、負荷の消費電力が急に変動した場合等では、DCリンク21の電圧VDCの制御が困難になる場合がある。
【0021】
そこで、本実施形態では、複数のバッテリーユニット10を備える蓄電システム1に、DCリンク21の電圧VDCを制御させるものとする。これにより、パワーコンディショナ2のインバータ22ではDCリンク21の電圧VDCを適切に制御することが困難な場合でも、DCリンク21の電圧VDCをより安定させることができる。
【0022】
ところが、蓄電システム1が備える全てのバッテリーユニット10にDCリンク21の電圧VDCを制御させると、次のような問題が生じる。すなわち、各バッテリーユニット10で測定した電圧VDCの値はわずかに異なる場合があり、また、各バッテリーユニット10電圧センサには測定誤差があり得る。このため、DCリンク21の電圧VDCを上げようとするバッテリーユニット10と、下げようとするバッテリーユニット10とが混在してしまい、バッテリーユニット10同士の間で充放電が発生してしまうおそれがある。
【0023】
また、複数のバッテリーユニット10を有する蓄電システム1に関して、その充放電能力をより長い期間安定して発揮させるためには、各バッテリーユニット10にそれぞれ割り当てる充放電電力を適切に管理する必要がある。例えば、各バッテリーユニット10のSOC(State Of Charge)が異なっている場合には、SOCが同じタイミングで収束するように、各バッテリーユニット10に充放電電力を割り当てるのが好ましい。
【0024】
したがって、本実施形態では、
図2に示すように、複数のバッテリーユニット10の中から、DCリンク21の電圧VDCを制御するバッテリーユニット10を、少なくとも1つ選択するものとする。
図2では、バッテリーユニット10-1が、DCリンク21の電圧VDCを制御するバッテリーユニットとして選択されている。選択されたバッテリーユニット10-1は、DCリンク21の電圧VDCを安定させるための充放電動作を実行する。例えば、バッテリーユニット10-1は、DCリンク21の電圧VDCが所定の基準値よりも高い場合は充電動作を行い、DCリンク21の電圧VDCが所定の基準値よりも低い場合は放電動作を行う。一方、他のバッテリーユニット10-2~10-nは、所定の充放電電力が割り当てられる。
【0025】
これにより、DCリンク21の電圧VDCをより安定させることができ、かつ、複数のバッテリーユニット10を有する蓄電システム1について、充放電能力をより長い期間安定して発揮させることができる。このようなバッテリーユニット10の充放電制御は、コントローラ23が、蓄電システム1の充放電電力Pstorageを演算するサイクル毎に実行する。
【0026】
図3はユニットコントローラ12における、DCリンク21の電圧VDCを制御するスキームの一例を表す制御ブロック図である。
図3の制御スキームは、各バッテリーユニット10がそれぞれ有している。
図3に示すように、この制御スキームでは、電流決定部121が、DCリンク21の電圧VDCの測定値を指令値と比較し、この比較結果から、当該バッテリーユニット10の充放電電流値を表す電流コマンドXを生成する。電流コマンドXが表す電流値は、正の値は放電動作を示し、負の値は充電動作を示す。測定値は、ユニットコントローラ12が備える電圧センサによって得られる。指令値は、コントローラ23から送信される。
【0027】
電流制限部122は、この電流コマンドXに対して、放電側(上限)および充電側(下限)のそれぞれにおいて制限をかける。電流制限部122による制限後の電流コマンドKによって、当該バッテリーユニット10の充放電電流が制御される。制限値変換部123は、外部から受信した当該バッテリーユニット10の充放電電力の上限値および下限値を、電流の上限値および下限値に変換し、電流制限部122に与える。ここでは、コントローラ23から、当該バッテリーユニット10の充放電電力の上限値および下限値が送信される。
【0028】
図3の制御スキームは、DCリンク21の電圧VDCの制御だけでなく、バッテリーユニット10に所定の電力を充放電させる制御も容易に実現することができる。すなわち、
図4に示すように、電流制限部122における上限値および下限値を同じ電流値に設定することによって、制限後の電流コマンドKをその電流値に設定することができる。具体的には、(a)バッテリーユニット10に放電させる場合は、電流制限部122における上限値および下限値を同じ正の値に設定し、(b)バッテリーユニット10を充電する場合は、電流制限部122における上限値および下限値を同じ負の値に設定すればよい。
【0029】
すなわち、コントローラ23は、DCリンク21の電圧VDCを制御するバッテリーユニット10に対しては、そのユニットコントローラ12に、電力値の上限として正の電力値を送信し、電力値の下限として負の電力値を送信する。制限変換部123は、受信した電力値の上限および下限を電流値の上限および下限に変換し、電流制限部122に与える。一方、コントローラ23は、その他のバッテリーユニット10に対しては、放電させる場合は、電力値の上限および下限として同じ正の電力値を送信し、充電させる場合は、電力値の上限および下限として同じ負の電力値を送信する。制限変換部123は、受信した電力値を電流値に変換し、電流制限部122に与える。これにより、その同一の電力値に対応する電流を示す電流コマンドKが電流制限部122から出力される。すなわち、その他のバッテリーユニット10に対して、所定の電力を充放電させることができる。
【0030】
したがって、
図3の制御スキームによって、簡易な構成によって、バッテリーユニット10に、DCリンク21の電圧VDCを安定させるための充放電動作と、所定の充放電電力の充放電動作とを、実行させることができる。
【0031】
図5はコントローラ23の処理の一例を示すフローチャートである。コントローラ23は、所定のサイクル毎に、
図5の処理を実行する。まず、蓄電システム1の総充放電電力PSTORAGEを演算する(S11)。この演算は例えば、蓄電システム1が有する各バッテリーユニット10の現在の充放電電力の総和をとることによって行えばよい。
【0032】
そして、コントローラ23は、蓄電システム1の総充放電電力PSTORAGEを、各バッテリーユニット10に分割して割り当てる(S12)。ここで、割り当てた電力をPassign-iとする(iは1~nの整数であり、バッテリーユニット10-1~10-nに対応している)。
【0033】
この電力割り当ての方法としては、様々ものが考えられる。例えば、各バッテリーユニット10のSOC(State Of Charge)が、次第に均等に近づくように、電力を割り当てる。すなわち、PSTORAGEが正の値すなわち放電電力であるときは、SOCが大きいバッテリーユニット10に大きな放電電力を割り当て、SOCが小さいバッテリーユニット10に小さな放電電力を割り当てる。また、PSTORAGEが負の値すなわち充電電力であるときは、SOCが大きいバッテリーユニット10に小さな充電電力を割り当て、SOCが小さいバッテリーユニット10に大きな充電電力を割り当てる。また、他の電力割り当ての方法としては、各バッテリーユニット10のSOH(State Of Health)を用いる方法、各バッテリーユニット10の現在の充放電電力を用いる方法、あるいは、SOC,SOH,現在の充放電電力を組み合わせて用いる方法などが考えられる。
【0034】
そして、コントローラ23は、各バッテリーユニット10の中から、DCリンク21の電圧VDCを制御するバッテリーユニット(バッテリーユニットk)を選択する(S13)。この選択方法としては、様々なものが考えられる。例えば、各バッテリーユニット10の電力容量を用いてもよいし、各バッテリーユニット10のSOCを用いてもよいし、電力容量とSOCの両方を用いてもよい。具体的には例えば、電力容量が最も大きいバッテリーユニット10を、バッテリーユニットkとして選択してもよい。あるいは、SOCが50%に近い、すなわち、残容量が大き過ぎずかつ小さ過ぎないバッテリーユニット10を、バッテリーユニットkとして選択してもよい。あるいは、ステップS12で割り当てられた電力Passign-iを用いてもよい。具体的には例えば、ステップS12で割り当てられた電力Passign-iの絶対値が最も小さいバッテリーユニット10を、バッテリーユニットkとして選択してもよい。
【0035】
あるいは、バッテリーユニットkが頻繁に変更されることを回避するように、してもよい。具体的には例えば、バッテリーユニットkの選択は複数サイクル毎に行うようにしてもよい。
【0036】
そして、コントローラ23は、選択したバッテリーユニットkに、定格電力の上限および下限を送信する(S14)。バッテリーユニットkのユニットコントローラ12は、制限変換部123によって、コントローラ23から送信された定格電力の上限および下限を、電流の上限値および下限値に変換する。この電流の上限値および下限値を用いて、電流制限部122において電流コマンドに制限をかける。これにより、バッテリーユニットkは、DCリンク21の電圧VDCを制御するための充放電動作を行うことができる。
【0037】
また、コントローラ23は、バッテリーユニットk以外のバッテリーユニット10に、ステップS12で割り当てた電力Passign-iを、電力の上限値および下限値として送信する(S15)。電力Passign-iが正の値すなわち放電時には、電力Passign-iを変換して得た正の電流値が、電流制限部122における電流の上限値および下限値として設定される。これにより、バッテリーユニット10は割り当てられた電力Passign-iを放電することができる。また、電力Passign-iが負の値すなわち充電時には、電力Passign-iを変換して得た負の電流値が、電流制限部122における電流の上限値および下限値として設定される。これにより、バッテリーユニット10は割り当てられた電力Passign-iを充電することができる。
【0038】
図6は本実施形態の手法を用いた実験の結果を示すグラフである。この実験では、2台のバッテリーユニット(ユニット1,ユニット2)を備える蓄電システムを用いた。ユニット1をDCリンク21の電圧VDCを制御するバッテリーユニットとして選択し、負荷の消費電力Ploadを変動させて、ユニット1,2の電力Punit-1,Punit-2の変化をプロットした。
図6から、負荷の消費電力Ploadが変化したとき、ユニット1の電力Punit-1が急峻な変化をしていることが分かる。この急峻な変化は、DCリンク21の電圧VDCの急激な変化に対応したものである。
【0039】
以上のように本実施形態によると、パワーコンディショナシステムは、複数のバッテリーユニット10を有する蓄電システム1を含む。各バッテリーユニット10はそれぞれ、DCリンク21を介してインバータ22と接続されている。そして、複数のバッテリーユニット10の中の、例えばバッテリーユニット10-1に、DCリンク21の電圧VDCを安定させるための充放電動作を実行させる。これにより、インバータ22によるDCリンク21の電圧VDCの制御が困難になる場合が発生しても、バッテリーユニット10-1の充放電動作によって、DCリンク21の電圧VDCを安定させることができる。また、他のバッテリーユニット10-2~10-nには、所定の充放電電力が割り当てられる。これにより、蓄電システム1全体の充放電電力を適切に管理することができる。したがって、複数のバッテリーユニット10を含む蓄電システム1について、DCリンク22の電圧VDCを安定させるための充放電制御を実現させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、蓄電システム1に割り当てる総充放電電力PSTORAGEが演算され、この総充放電電力PSTORAGEが各バッテリーユニット10に分割して割り当てられる。そして、複数のバッテリーユニット10の中から、DCリンク21の電圧VDCを安定させるための充放電動作を実行するバッテリーユニット10を選択する。このような処理により、蓄電システム1全体の充放電電力を適切に管理しつつ、DCリンク21の電圧VDCを安定させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、DCリンク21の電圧VDCを安定させるための充放電動作を実行するバッテリーユニット10を、各バッテリーユニットの電力容量またはSOCのうちの少なくとも1つを用いて行う。これにより、DCリンク21の電圧VDCを安定させるための充放電動作を実行するバッテリーユニット10を、適切に選択することができる。
【0042】
また、
図3の制御スキームによって、バッテリーユニット10に、DCリンク21の電圧VDCを安定させるための充放電動作と、所定の充放電電力の充放電動作を、簡易な構成によって、実行させることができる。
【0043】
また、DCリンク21の電圧VDCが大きく変化している場合、選択したバッテリーユニット10だけでは電圧VDCを適切に制御しきれない場合があり得る。このような場合を考慮して、DCリンク21の電圧VDCの変化が激しい場合には、選択しなかったバッテリーユニット10が、電圧VDCの制御を行うようにしてもよい。
【0044】
図7はユニットコントローラ12の動作例を示すフローチャートである。
図7に示すように、ユニットコントローラ12は、コントローラ23から、割り当てられた電力Passign-iを電力の上限値および下限値として受信する(S21)。そして、電力Passign-iを、電流値の上限および下限に変換する(S22)。これらの動作は、すでに説明したとおりである。
【0045】
そして、ユニットコントローラ12は、DCリンク21の電圧VDCが、所定の上限値を超えているか、または、所定の下限値を下回っているか、を判定する(S23)。そして、電圧VDCが上限値と下限値との間にある場合は(S23でNO)、電流値の上限および下限の設定を変更しない。一方、電圧VDCが上限値を超えているか、または、下限値を下回っている場合は(S23でYES)、定格電流の上限および下限を、電流値の上限および下限として設定する(S24)。この設定変更により、当該バッテリーユニット10は、電力Passign-iを割り当てられたにもかかわらず、DCリンク21の電圧VDCを制御するための充放電動作を行うことができる。したがって、DCリンク21の電圧VDCをより安定させることができる。
【0046】
なお、上述の説明では、DCリンク21の電圧VDCの制御を行うために充放電動作を行うバッテリーユニット10は、1個であるものとしたが、これは1個に限られるものではない。2個またはそれ以上のバッテリーユニット10を、DCリンク21の電圧VDCの制御を行うために充放電動作を行うものとして選択してもかまわない。
【0047】
(変形例)
図3に示す制御スキームにおいて、制限値変換部123を省いてもかまわない。この場合は、パワーコンディショナ2が備えるコントローラ23が、制限値変換部123に相当する機能を備えればよい。すなわち、コントローラ23は、当該バッテリーユニット10の充放電電力の上限値および下限値を電流の上限値および下限値に変換し、ユニットコントローラ12に送信する。ユニットコントローラ12は、電流の上限値および下限値を受信し、電流制限部122は、受信した電流の上限値および下限値を用いて、電流コマンドXに対して制限をかける。
【0048】
この変形例によっても、バッテリーユニット10の充放電電力に対応する電流値を、電流値の上限値および下限値の両方に用いることによって、バッテリーユニット10から、所定の充放電電力に対応する電流を出力することができる。したがって、簡易な構成によって、バッテリーユニット10に、DCリンク21の電圧VDCを安定させるための充放電動作と、所定の充放電電力の充放電動作とを、実行させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、バッテリーユニットを含むパワーコンディショナシステムにおいて、DCリンク電圧をより安定させるのに有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 蓄電システム
10,10-1,10-2,…,10-n バッテリーユニット
11 蓄電池
12 ユニットコントローラ(制御装置)
21 DCリンク
22 インバータ
23 コントローラ
121 電流決定部
122 電流制限部
123 制限変換部