(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030300
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】シェルモールド用鋳型材料
(51)【国際特許分類】
B22C 1/22 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B22C1/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135356
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】小川 文幸
(72)【発明者】
【氏名】林田 修雄
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA21
4E092AA26
4E092AA45
4E092BA04
4E092BA12
(57)【要約】
【課題】その製造時のみならず、製造から比較的時間が経過したものを用いて造型する場合にあっても、作業者にとって良好な作業環境の確保が可能ならしめられると共に、最終的に得られる鋳型が十分な強度を発揮する、シェルモールド用鋳型材料を提供すること。
【解決手段】耐火性骨材と、フェノール樹脂と、香料系消臭剤と共に、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0である硬化促進剤を必須の構成成分として、シェルモールド用鋳型材料を構成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性骨材と、フェノール樹脂と、香料系消臭剤と共に、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0である硬化促進剤を、必須の構成成分として含有することを特徴とするシェルモールド用鋳型材料。
【請求項2】
有機成分中の遊離フェノール類の割合が1.0質量%以下である請求項1に記載のシェルモールド用鋳型材料。
【請求項3】
前記硬化促進剤が、アレニウス塩基、ルイス塩基、アルカリ金属無機塩、アルカリ金属有機塩、有機酸類及び窒素含有化合物からなる群より選ばれる一種以上のものである請求項1又は請求項2に記載のシェルモールド用鋳型材料。
【請求項4】
前記香料系消臭剤が、a)3環式炭化水素骨格を有するエステル、b)α、β-不飽和ケトン、及びc)α、β-不飽和アルデヒドからなる群より選ばれる一種以上のものを含む請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のシェルモールド用鋳型材料。
【請求項5】
前記3環式炭化水素骨格を有するエステルが、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン-2-カルボン酸エチルである請求項4に記載のシェルモールド用鋳型材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシェルモールド用鋳型材料に係り、特に、その製造時やそれを用いた鋳型の造型時において、作業環境の改善を有利に図ることが出来るシェルモールド用鋳型材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シェルモールド鋳造にて使用される鋳型(シェル鋳型)を製造するに際しては、耐火性骨材、及びバインダーとしてのフェノール樹脂と共に、硬化剤や硬化促進剤等を混練して得られる鋳型材料、所謂レジンコーテッドサンド(以下、「RCS」ともいう)が、広く用いられている。
【0003】
しかしながら、従来のシェルモールド用の鋳型材料(レジンコーテッドサンド)については、その製造時やそれを用いた鋳型の造型時に、不快な臭気(悪臭)を発生するという問題点が指摘されている。具体的には、耐火性骨材と、バインダーとしてのノボラック型フェノール樹脂と、硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミンとを用いて得られる、従来のシェルモールド用鋳型材料にあっては、1)120~170℃程度に予熱された耐火性骨材と共に、ノボラック型フェノール樹脂及びヘキサメチレンテトラミン等を混練して、鋳型材料を製造する際や、2)製造された鋳型材料を、250~350℃程度に加熱された金型内に充填し、熱硬化によって鋳型を造型する際には、刺激性を有し、不快な臭気を発する種々の化合物(例えば、アンモニア、トリメチルアミン、ホルムアルデヒド、フェノール類等)が、作業環境中に放出され、作業者に対して悪影響を及ぼす恐れがある。
【0004】
このため、作業者にとって良好な作業環境を確保すべく、従来より、例えば鋳型材料の製造現場に排気設備を設ける等の、設備面での対策が実施されているのであり、その一方で、フェノール樹脂と共に各種の脱臭剤や消臭剤を配合して鋳型材料を構成する技術についても、種々、提案されている。具体的には、特許文献1(特開平9-38748号公報)においては、オレンジオイル、テレビンオイル及びシダーウッドオイルを、各々、所定割合で含むレジンコーテッドサンド用脱臭剤、並びに、かかる脱臭剤が配合されてなる低臭気レジンコーテッドサンドが開示されており、また本願出願人も、特許文献2(特許第3679008号公報)において、少なくとも(A)トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン-2-カルボン酸エチルを含有する香料系消臭剤が配合されたことを特徴とするシェルモールド用鋳型材料を、提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-38748号公報
【特許文献2】特許第3679008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、バインダーとしてフェノール樹脂を用いる鋳型材料に関する、消臭剤や脱臭剤を配合することによって不快な臭気を抑制する技術について、本発明者等が鋭意、検討を進めたところ、フェノール樹脂と共に消臭剤等を配合してなる従来の鋳型材料にあっては、フェノール樹脂の硬化を促進させるための硬化促進剤を併用した場合、消臭等の効果が持続せず、例えば製造から時間が経過した鋳型材料を用いて鋳型を造型した際に、不快な臭気が発生して作業環境を悪化させる恐れがあることが判明したのであり、この点において、従来の消臭剤等を含む鋳型材料には、未だ改良の余地が残されていたのである。
【0007】
すなわち、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、その製造時は勿論のこと、製造から比較的時間が経過したものを用いて造型する場合にあっても、香料系消臭剤の消臭・防臭効果が有利に発揮され、良好な作業環境の確保が可能ならしめられると共に、最終的に得られる鋳型が十分な強度を発揮する、シェルモールド用鋳型材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されるものではなく、明細書全体の記載から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
(1) 耐火性骨材と、フェノール樹脂と、香料系消臭剤と共に、0.01mol/l水 溶液のpHが2.0~12.0である硬化促進剤を、必須の構成成分として含有す ることを特徴とするシェルモールド用鋳型材料。
(2) 有機成分中の遊離フェノール類の割合が1.0質量%以下である前記態様(1) に記載のシェルモールド用鋳型材料。
(3) 前記硬化促進剤が、アレニウス塩基、ルイス塩基、アルカリ金属無機塩、アルカ リ金属有機塩、有機酸類及び窒素含有化合物からなる群より選ばれる一種以上のも のである前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のシェルモールド用鋳型材料。
(4) 前記香料系消臭剤が、a)3環式炭化水素骨格を有するエステル、b)α、β- 不飽和ケトン、及びc)α、β-不飽和アルデヒドからなる群より選ばれる一種以 上のものを含む前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載のシェルモ ールド用鋳型材料。
(5) 前記3環式炭化水素骨格を有するエステルが、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン-2-カルボン酸エチルである前記態様(4)に記載のシェルモールド 用鋳型材料。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明に従うシェルモールド用鋳型材料にあっては、香料系消臭剤と共に、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0である硬化促進剤が必須の構成成分として含有せしめられ、構成されているのであり、かかる構成の採用によって、材料内における香料系消臭剤の分解や変性等は効果的に抑制され、香料系消臭剤による消臭・防臭効果を長期間に亘って享受することが可能となる。従って、本発明においては、その鋳型材料の製造時のみならず、材料の製造から比較的時間が経過した鋳型材料を用いて造型する場合にあっても、作業者にとって良好な作業環境が確保され得ると共に、最終的に得られる鋳型も優れた強度を発揮することとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ところで、本発明に従うシェルモールド用鋳型材料(以下、単に鋳型材料ともいう)における必須の構成成分の一つである耐火性骨材は、最終的に鋳型の基材となるものであるところから、鋳造に耐え得る耐火性と、鋳型形成(造型)に適した粒径とを有する耐火性粒子(無機粒子)等であって、従来よりシェルモールド鋳造に用いられてきたものであれば、特に限定されることなく、使用することが可能である。そのような耐火性骨材(耐火性粒子)としては、例えば、一般的に広く用いられているケイ砂の他にも、オリビンサンドやジルコンサンド、クロマイトサンド、アルミナサンド等の特殊砂、フェロクロム系スラグやフェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子、ナイガイセラビーズ(商品名、伊藤忠セラテック株式会社)のようなムライト系多孔質粒子、更には、これらを鋳造後に回収・再生した再生粒子等を挙げることが出来、これらを単独で、或いは2種以上のものを組み合わせて、用いることが可能である。
【0012】
また、本発明におけるフェノール樹脂は、耐火性骨材を結合保持する結合材として機能するものであって、フェノール類とアルデヒド類との反応生成物を主体とし、且つ硬化剤の存在下、又は非存在下で、加熱硬化する性質を有する樹脂である。本発明において使用することが出来るフェノール樹脂としては、フェノール類を原料とした、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、含窒素レゾール型フェノール樹脂、ベンジルエーテル型フェノール樹脂等を、例示することが出来る。
【0013】
ここで、フェノール樹脂には、アルデヒド類と未反応のフェノール類(遊離フェノール類)を含有するものがあるところ、かかる遊離フェノール類は、鋳型の造型時等に不快な臭気を発生させる原因となるものである。このため、本発明の効果をより有利に享受するためには、本発明に係るシェルモールド用鋳型材料において、有機成分中の遊離フェノール類の割合は、1.0質量%以下であることが好ましいのであり、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。なお、本発明における有機成分とは、シェルモールド鋳型材料を構成する全ての有機成分を意味するものであって、フェノール樹脂を主体とするものである。また、遊離フェノール類には、未反応のフェノールは勿論のこと、後述する変性用原料であるナフトール類及びアルキルフェノール類の未反応物も含まれる。
【0014】
また、後述するように、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する場合、かかるヘキサメチレンテトラミンも不快な臭気を発生させる原因の一つであり、本発明の鋳型材料において、その使用量は少ない方が好ましいものの、硬化剤たるヘキサメチレンテトラミンの使用量が少な過ぎる鋳型材料を用いて鋳型を造型し、得られた鋳型を用いて鋳造を行うと、ベーニング等の鋳物欠陥を生ずる恐れがある。このため、本発明に係るシェルモールド用鋳型材料においては、フェノール樹脂として、アルデヒド類と、フェノールの一部又は全部を変性用原料に置き換えたものとを反応せしめて得られる変性フェノール樹脂(例えば、変性ノボラック型フェノール樹脂)が、有利に用いられるのである。なお、変性フェノール樹脂としては、上述した変性用原料とフェノールとの共縮合型の変性フェノール樹脂(以下、樹脂Iという)の他、変性フェノール樹脂とフェノール樹脂との混合型の変性フェノール樹脂(以下、樹脂IIという)、樹脂I又は樹脂IIを変性剤(改質剤)で改質することによって得られる改質型の変性フェノール樹脂(以下、樹脂III という)、並びに、それら樹脂I、樹脂II及び樹脂III のうちの二種以上を組み合わせた混合物からなる樹脂等を、例示することが出来る。また、そのような変性用原料としては、ナフトール類、アルキルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールA製造時の残渣、かかる残渣中の分離成分及びその誘導体等を、挙げることが出来る。
【0015】
上述した変性用原料について、先ず、ナフトール類としては、入手の容易さやコスト等の観点から、1-ナフトールや2-ナフトールを有利に例示することが出来、それらは単独で、若しくは混合物として、使用可能である。また、アルキルフェノール類としては、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-キシレノール、3,5-キシレノール、2,5-キシレノール、3,4-キシレノール、2-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-プロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、4-プロピルフェノール、2-sec-ブチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-sec-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-sec-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-シクロヘキシルフェノール、3-シクロヘキシルフェノール、4-シクロヘキシルフェノール、2-ノニルフェノール、3-ノニルフェノール、4-ノニルフェノール、2-ドデシルフェノール、3-ドデシルフェノール、4-ドデシルフェノール、2-オクタデシルフェノール、3-オクタデシルフェノール、4-オクタデシルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、3-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,5-トリエチルフェノール等を、例示することが出来る。
【0016】
また、ビスフェノールAとは、ケトン又はアルデヒドの1分子とフェノールの2分子との反応にて生成する、対称型の2価フェノールであるところ、変性フェノール樹脂を製造する際の変性用原料としては、ビスフェノールAに若干の水分が混入したものであっても、使用することが出来る。さらに、「ビスフェノールA製造時の残渣」とは、フェノールとアセトンとの縮合反応によって合成されるビスフェノールAを蒸留精製する際に生じる残渣であって、ビスフェノールA、O,O’-ビスフェノール、O,P’-ビスフェノール、トリスフェノール、クロマンI、クロマンII等の化合物を含有するものである。
【0017】
また、上記「残渣中の分離成分」(ビスフェノールA製造時の残渣中の分離成分)とは、ビスフェノールAの分解反応によって得られるp-イソプロペニルフェノールの2量化反応によって製造される、下記の構造を有する化合物(1)を主成分とするものであり、重合度が3~10のオリゴマーを若干、含むものである。
【化1】
【0018】
さらに、上記「その誘導体」(ビスフェノールA製造時の残渣中の分離成分の誘導体)とは、上記の化合物(1)を、さらに2,2,4-トリメチル-4-(ヒドロキシフェニル)クロマンと反応させて得られる化合物(2)を主成分とする樹脂である。
【化2】
【0019】
なお、それら「残渣中の分離成分」及び「その誘導体」は、何れも、ビスフェノールA製造時の残渣より取り出され、或いは反応させたものであり、そのもの自体が固体状を呈するものであるため、取扱い上の観点より、フェノールの如き相溶性の良いものと混合溶解して、使用することが可能である。
【0020】
本発明において、上述した変性用原料を用いてなる変性フェノール樹脂を使用する場合、かかる変性フェノール樹脂における変性率、換言すれば、フェノール類の成分全体に対する変性用原料が占める割合(質量%)は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上である。このような変性率の変性フェノール樹脂を用いることにより、最終的に得られる鋳型を用いた造型の際に、ベーニング等の鋳物欠陥の発生を有利に抑制することが可能となる。
【0021】
そして、このようなフェノール樹脂は、本発明に従うシェルモールド用鋳型材料の調製に際して、本発明の目的が良好に達成され得るように、適宜の割合において添加され得るところであって、その添加量を一義的に規定することは困難ではあるが、耐火性骨材の100質量部に対して、一般には0.5~5.0質量部の割合において、好ましくは1.0~3.0質量部の割合にて、添加、配合されて、使用されることとなる。
【0022】
一方、本発明に従う鋳型材料において、その必須の構成成分の一つである香料系消臭剤としては、従来より消臭、防臭等を目的として鋳型材料に配合され、使用されているものであれば、特に限定されることなく、使用することが可能である。そのような香料系消臭剤としては、古くから使用されているオレンジオイルやシダーウッドオイル等の植物性油及びその配合品の他、3環式炭化水素骨格を有するエステル、α、β-不飽和ケトンやα、β-不飽和アルデヒド等を、挙げることが出来る。
【0023】
より具体的に、3環式炭化水素骨格を有するエステルとしては、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン-2-カルボン酸エチル、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン-2-カルボン酸プロピル、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン-2-カルボン酸ブチル、酢酸セドリル、酢酸カリオフィレン、酢酸トリシクロデセニル、酢酸トリシクロデシル等を、例示することが出来る。これらの中でも、消臭・防臭効果の安定性の観点より、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン-2-カルボン酸エチル及び酢酸トリシクロデセニルが好ましく、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン-2-カルボン酸エチルが特に好ましく、用いられることとなる。
【0024】
また、α、β-不飽和ケトンとしては、α-ダマスコン、β-ダマスコン、γ-ダマスコン、α-ダマスコン、α-ダマセノン、β-ダマセノン、α-ヨノン、β-ヨノン、γ-ヨノン、α-メチルヨノン、β-メチルヨノン、γ-メチルヨノン、アセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、メチル-β-ナフチルケトン、テンタローム、α-イソメチルヨノン、β-イソメチルヨノン、α-イロン、β-イロン、γ-イロン、マルトール、エチルマルトール、cis-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、1-カルボン、ヌートカトン等を、例示することが出来る。これらの中でも、消臭・防臭効果の観点より、α-ダマスコン、β-ダマスコン、γ-ダマスコン、α-ダマセノン、β-ダマセノン、マルトール、エチルマルトールが有利に用いられる。
【0025】
さらに、α、β-不飽和アルデヒドとしてはt-2-ヘキセナール、2,6-ノナジエナール、シトラール、ベンズアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、クミンアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ペリラアルデヒド等を、例示することが出来る。これらの中でも、消臭・防臭効果の観点より、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、バニリン、エチルバニリンが有利に用いられる。
【0026】
このような香料系消臭剤は、バインダーとしてのフェノール樹脂の100質量部に対して、好ましくは0.01~5.0質量部となる割合において、より好ましくは0.02~2.0質量部となる割合において、本発明に従うシェルモールド用鋳型材料中に配合される。香料系消臭剤の配合割合が0.01質量部未満の場合には、目的とする消臭・防臭効果を享受することが出来ない恐れがあり、その一方、5.0質量部を超える量の香料系消臭剤を使用しても、使用量に応じた消臭・防臭効果の向上は認められない恐れがあるため、5.0質量部を超える量の香料系消臭剤の使用は、経済性の観点より、妥当ではない。
【0027】
なお、本発明においては、香料系消臭剤の分散性、具体的には、バインダー(フェノール樹脂)や水等の溶媒への香料系消臭剤の分散性を向上させるべく、界面活性剤や溶剤等を使用することも可能である。そのような界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を例示することが出来、また、溶剤としては、ポリアルキレングリコール等の多価アルコール類や、フタル酸エステル等を例示することが出来る。
【0028】
そして、本発明に従うシェルモールド用鋳型材料にあっては、上述した耐火性骨材、フェノール樹脂及び香料系消臭剤と共に、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0である硬化促進剤が、より好ましくは0.01mol/l水溶液のpHが3.0~11.0である硬化促進剤が、必須の構成成分として配合され、構成されているところに、大きな技術的特徴が存しているのである。すなわち、このような特定の硬化促進剤を香料系消臭剤と併用することによって、鋳型材料内における香料系消臭剤の分解や変性等が効果的に抑制され、香料系消臭剤による消臭・防臭効果を長期間に亘って享受することが可能ならしめられ、以て、その鋳型材料の製造時のみならず、材料の製造から比較的時間が経過した鋳型材料を用いて造型する場合にあっても、香料系消臭剤の作用により、作業者にとって良好な作業環境が確保され得ると共に、最終的に得られる鋳型も優れた強度を発揮することとなるのである。
【0029】
本発明において用いられる硬化促進剤としては、材料中に共に配合されるフェノール樹脂の硬化反応を促進する(硬化速度を向上させる)機能を発揮し得るものであって、その0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0の範囲内にあるものであれば、特に限定されることなく、使用することが可能である。そのような硬化促進剤としては、アレニウス塩基、ルイス塩基、アルカリ金属無機塩、アルカリ金属有機塩、有機酸類や窒素含有化合物等を、挙げることが出来る。
【0030】
具体的に、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0であるアレニウス塩基としては、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等を、例示することが出来る。
【0031】
また、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0であるルイス塩基としては、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、アンモニア、スクシンイミド等を、例示することが出来る。
【0032】
さらに、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0であるアルカリ金属無機塩としては、炭酸ナトリウム(pH=10.6)、炭酸水素ナトリウム(pH=7.6)、炭酸カリウム(pH=10.7)、炭酸リチウム(pH=10.5)、亜硫酸ナトリウム(pH=8.3)、アルミン酸ナトリウム(pH=10.4)、すず酸ナトリウム三水和物(pH=10.8)等を、例示することが出来る。なお、上記した各化合物の後の括弧内のpH値は、各化合物の0.01mol/l水溶液のものである。
【0033】
また、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0であるアルカリ金属有機塩としては、アルギン酸ナトリウム(pH=7.2)、サリチル酸ナトリウム(pH=6.5)、安息香酸ナトリウム(pH=7.2)、1-ナフトール-5-スルホン酸ナトリウム(pH=4.3)、p-フェノールスルホン酸ナトリウム(pH=6.2)、p-トルエンスルホン酸ナトリウム(pH=6.6)等を、例示することが出来る。なお、上記した各化合物の後の括弧内のpH値は、各化合物の0.01mol/l水溶液のものである。
【0034】
さらにまた、有機酸類としては、安息香酸、サリチル酸、パラアミノ安息香酸、アントラニル酸、フタル酸、テレフタル酸等を例示することが出来、加えて、窒素含有化合物としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、アリル尿素、ビウレア、ビウレット、アゾジカルボンアミド等の尿素系化合物や、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、5-アミノ-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等のトリアゾール系化合物を、例示することが出来る。このような有機酸類及び窒素含有化合物の中から、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0である化合物を適宜に選択して、本発明における硬化促進剤として使用することが可能である。
【0035】
上述した、所定の特性を有する硬化促進剤の中から、共に用いられるフェノール樹脂の種類等に応じたものが一種又は二種以上選択されて、本発明において使用されるのであるが、硬化促進剤の使用量が少な過ぎると、充分な硬化促進効果を享受することが出来ない恐れがあり、その一方、その使用量が多過ぎると、最終的に得られる鋳型の強度が低下する恐れがある。このため、本発明に係るシェルモールド用鋳型材料において、上述の如き所定の硬化促進剤は、フェノール樹脂の100質量部に対して、0.2~15.0質量部の割合において、有利には0.5~8.0質量部の割合において、材料に配合され、使用されることが好ましい。なお、本発明においては、0.01mol/l水溶液のpHが2.0未満の硬化促進剤や、0.01mol/l水溶液のpHが12.0を超える硬化促進剤にあっても、0.01mol/l水溶液のpHが2.0~12.0である硬化促進剤と併用することで、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、使用することが可能である。
【0036】
本発明に従うシェルモールド用鋳型材料には、上述した必須成分の他にも、従来より鋳型材料に配合され、使用されている各種成分を、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、配合することが可能である。例えば、バインダーたるフェノール樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用いる場合には、従来より、ヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤が使用されているが、本発明においても、硬化剤を使用(配合)することは可能である。ただ、硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミンは、不快な臭気の発生原因となるものであるところから、本発明において、その使用量は可能な限り少量であることが好ましいのであり、例えば、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する場合、その使用量は、フェノール樹脂の100質量部に対して10質量部以下の割合となる量が好ましい。
【0037】
また、硬化剤の他にも、シェルモールド用鋳型材料たるRCSの流動性の向上等に寄与する滑剤の使用も可能である。そのような滑剤のうち、例えば、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス等のワックス類;ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイド類等は、フェノール樹脂の製造時、RCSの製造時の何れにおいても使用(配合)することが可能である。また、滑剤として機能するステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等は、RCS製造時に使用(配合)することが可能である。一方、耐火性骨材とフェノール樹脂との結合を強化するカップリング剤を使用することも有効であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤を、フェノール樹脂の製造時、RCSの製造時の何れにおいても使用(配合)することが可能である。更に、離型剤として、パラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等も、使用(配合)することが可能である。
【0038】
そして、本発明に従うシェルモールド用鋳型材料にあっては、例えば「ホットマーリング法」と称されている以下の如き手法によって、耐火性骨材の粒子表面に、香料系消臭剤を含むフェノール樹脂からなる被覆層が形成されてなるレジンコーテッドサンド(RCS)の形態において、製造することが可能である。ここで、「ホットマーリング法」とは、
ワールドミキサーやスピードミキサー等の混練機内で、予熱された耐火性骨材とフェノール樹脂とを混練した後、香料系消臭剤、所定の硬化促進剤、及び必要に応じて硬化剤を溶解せしめた水溶液を、混練機内に加え、形成された塊状物が粒状に崩壊するまで送風冷却した後、ステアリン酸カルシウム(滑剤)を添加することにより、レジンコーテッドサンド(RCS)を製造する手法である。尤も、本発明に従う鋳型材料の製造は、上記したホットマーリング法に限定されるものではなく、セミホットマーリング法やコールドマーリング法等、従来より公知の各種手法によっても、製造することが可能である。
【実施例0039】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。
【0040】
なお、以下の記載において、「部」及び「%」の何れも、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味するものである。また、硬化促進剤のpH測定、及び、製造されたシェルモールド用鋳型材料(シェルモールド用レジンコーテッドサンド:シェルモールド用RCS)の各特性は、各々、下記の測定法乃至は試験法に従って測定したものである。
【0041】
-硬化促進剤のpH測定-
予め洗浄したフラスコに、秤量した0.01molの硬化促進剤と、1lの純水とを投入し、フラスコを5分以上、振盪し、硬化促進剤を溶解させる。得られた水溶液の50mlを、予め洗浄したビーカーに移し、pHメーターにてpHを読み取る。
【0042】
-有機成分中の遊離フェノール類の割合-
1)先ず、空焼きした坩堝(るつぼ)に、秤量した10gのシェルモールド用RCSを 投入し、900℃で1時間、RCSを焼成することにより、重量減少率(イグロス: Ignition Loss )を求める。
2)予めイグロスから求めた、耐火性骨材粒子の表面を被覆しているフェノール樹脂を 主体とする有機成分(以下、被覆樹脂ともいう)の総量が0.20gとなる量のRC Sを秤量し、この秤量したRCSを容器内に投入し、さらにテトラヒドロフラン(T HF)の50mlを容器に加え、容器内を十分に撹拌することにより、被覆樹脂をT HFに溶解せしめる。得られたTHF溶液を、定量濾紙(No.6)及び硬質濾紙(
No.4A)を用いて濾過し、溶液中の骨材粒子等の不純物を取り除く。かかる濾過 後のTHF溶液に対して遠心分離を実施し、得られた上澄みをメンブレンフィルター (孔径:0.2μm)で濾過し、得られた濾液をゲル濾過クロマトグラフ測定用の試 料とする。
3)得られた試料について、東ソー株式会社製のゲル濾過クロマトグラフ8020シリ ーズ・ビルドアップシステム(カラム:G1000HL+G2000HL、検出器: UV254nm、キャリアー:テトラヒドロフラン1ml/min、カラム温度:4 0℃)を用いて、検量線法により試料中の遊離フェノール類の含有量を測定し、フェ ノール樹脂を主体とする有機成分に含まれる遊離フェノール類の割合を、質量基準(
%)で算出する。
【0043】
-曲げ強度の測定-
得られたシェルモールド用RCSを用いて、250℃で60秒間、焼成することによりテストピース(10×10×60mm)を作製し、常温まで冷却したテストピースについて曲げ強度(N/cm2 )を測定する。
【0044】
-臭気官能試験-
a)RCSを製造する際の臭気と、b)製造から1週間、室温下で保管したRCSを用いて鋳型を造型する際の臭気と、c)製造から1ヶ月間、室温下で保管したRCSを用いて鋳型を造型する際の臭気について、以下に示す官能試験にて評価する。なお、本官能試験において、鋳型の造型とは、250℃に温調された金型内にRCSをブロー充填し、金型を60秒間、保持して、RCSを焼成することにより、円筒形鋳型(直径:47mm×高さ:49mm)を作製することを意味する。
【0045】
1)評価方法
室温:20℃、相対湿度:60%の環境下、15名(内、女性は5名)の臭気パネ ラーが下記評価基準に基づいて臭気を官能評価し、得られた官能評価レベルの平均値 を算出して、この平均値を評価結果とする。かかる評価結果(平均値)の数値が高い 程、不快な臭気は感じられず、作業環境が良好であることを意味する。なお、下記表 2乃至表4において、上記「a)RCSを製造する際の臭気」の評価結果を「臭気官 能試験・RCS製造時」欄に、上記「b)製造から1週間、室温下で保管したRCS を用いて鋳型を造型する際の臭気」の評価結果を「臭気官能試験・1週間後」欄に、 上記「製造から1ヶ月間、室温下で保管したRCSを用いて鋳型を造型する際の臭気 」の評価結果を「臭気官能試験・1ヶ月後」欄に、それぞれ示す。
2)評価基準
レベル4:刺激臭をほとんど感じない。
レベル3:多少の刺激臭を感じるが、実用上の支障はない。
レベル2:やや強い刺激臭を感じる。
レベル1:非常に強い刺激臭を感じる。
【0046】
-熱膨張率の測定-
「JACT試験法 M-2」に準じて測定する。
【0047】
-実鋳造試験-
シリンダーヘッド中子を造型し、かかる中子をセットした鋳型内に、低圧鋳造法に従ってアルミニウム合金を注湯することにより、30個のシリンダーヘッドを作製する。この30個のシリンダーヘッドを全て切断し、シリンダーヘッドの内面(中子と接する面)におけるベーニング欠陥の有無を目視で観察する。ベーニング欠陥が認められるシリンダーヘッドについては「中子割れ」が発生したと評価する。
【0048】
また、RCS製造の際に使用したフェノール樹脂A~フェノール樹脂Dは、各々、以下の手法に従って製造したものである。
【0049】
-フェノール樹脂Aの製造-
ガラス製フラスコ内に、フェノールの1000部を収容し、更に47%ホルムアルデヒド水溶液の414部と、触媒としてのシュウ酸の3部とを添加した後、フラスコを加熱すると共にその内部を撹拌して、縮合反応及び濃縮を進行せしめることにより、ノボラック型フェノール樹脂であるフェノール樹脂Aを得た。なお、得られたフェノール樹脂Aの数平均分子量は685であった。
【0050】
-フェノール樹脂Bの製造-
ガラス製フラスコ内に、フェノールの200部とビスフェノールAの800部とを収容し、更に47%ホルムアルデヒド水溶液の218部と、触媒としてのシュウ酸の3部とを添加した後、フラスコを加熱すると共にその内部を撹拌して、縮合反応及び濃縮を進行せしめることにより、ノボラック型フェノール樹脂であるフェノール樹脂Bを得た。なお、得られたフェノール樹脂Bの数平均分子量は710であった。
【0051】
-フェノール樹脂Cの製造-
ガラス製フラスコ内に、フェノールの680部を収容し、更に37%ホルムアルデヒド水溶液の680部と、ヘキサメチレンテトラミンの115部とを添加した後、フラスコを加熱すると共にその内部を撹拌して、縮合反応及び濃縮を進行せしめることにより、固形状のレゾール型フェノール樹脂であるフェノール樹脂Cを得た。なお、得られたフェノール樹脂Cの数平均分子量は430であった。
【0052】
-フェノール樹脂Dの製造-
ガラス製フラスコ内に、フェノールの500部を収容し、更に47%ホルムアルデヒド水溶液の1000部と、触媒としての50%苛性ソーダ水溶液の5部とを添加した後、フラスコを加熱すると共にその内部を撹拌して、縮合反応及び濃縮を進行せしめることにより、液状のレゾール型フェノール樹脂であるフェノール樹脂Dを得た。なお、得られたフェノール樹脂Dの数平均分子量は350であった。
【0053】
さらに、RCSの製造に先立ち、各成分を下記表1に示す割合にて配合してなる香料系消臭剤A~Dを調製した。なお、香料系消臭剤の調製に用いたフルテート及びエアーケム662Mの詳細は、以下の通りである。
・フルテート:製品名、花王株式会社製、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカン -2-カルボン酸エチル
・エアーケム662M:製品名、第一工業製薬株式会社製、植物性精油配合品
【0054】
【0055】
-実施例1-
スピードミキサー内に、約140~150℃に予熱したフラタリーサンドの6250部と、フェノール樹脂Aの100部とを投入して50秒間、混練することにより、フラタリーサンドの粒子表面にフェノール樹脂Aを被覆せしめた。次いで、ミキサー内に、予め調製した水溶液(所定量の水に、硬化剤たるヘキサメチレンテトラミンの4.0部と、硬化促進剤たる安息香酸の1.5部と、香料系消臭剤Aの0.2部とを添加し、混合、撹拌して得られた水溶液)を添加し、形成された塊状物が粒状に崩壊するまで送風冷却した後、所定量のステアリン酸カルシウムを添加して15秒間、混合することにより、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表2に示す。
【0056】
-実施例2-
スピードミキサー内に、約140~150℃に予熱したフラタリーサンドの6250部と、フェノール樹脂Aの100部とを投入して50秒間、混練することにより、フラタリーサンドの粒子表面にフェノール樹脂Aを被覆せしめた。次いで、ミキサー内に、予め調製した水溶液(所定量の水に、硬化剤たるヘキサメチレンテトラミンの4.0部と、硬化促進剤たる炭酸カリウムの0.8部と、香料系消臭剤Aの0.2部とを添加し、混合、撹拌して得られた水溶液)を添加し、形成された塊状物が粒状に崩壊するまで送風冷却した後、所定量のステアリン酸カルシウムを添加して15秒間、混合することにより、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表2に示す。
【0057】
-実施例3-
スピードミキサー内に、約140~150℃に予熱したフラタリーサンドの6250部と、フェノール樹脂Aの80部と、フェノール樹脂Dの20部とを投入して、50秒間、混練することにより、フラタリーサンドの粒子表面に、フェノール樹脂Aとフェノール樹脂Dの混合物を被覆せしめた。次いで、ミキサー内に、予め調製した水溶液(所定量の水に、硬化剤たるヘキサメチレンテトラミンの4.0部と、硬化促進剤たる水酸化カルシウムの0.7部と、香料系消臭剤Bの0.4部とを添加し、混合、撹拌して得られた水溶液)を添加し、形成された塊状物が粒状に崩壊するまで送風冷却した後、所定量のステアリン酸カルシウムを添加して15秒間、混合することにより、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表2に示す。
【0058】
-実施例4-
スピードミキサー内に、約140~150℃に予熱したフラタリーサンドの6250部と、フェノール樹脂Aの10部と、フェノール樹脂Bの75部と、フェノール樹脂Dの15部とを投入して50秒間、混練することにより、フラタリーサンドの粒子表面に、フェノール樹脂A、フェノール樹脂B及びフェノール樹脂Dの混合物を被覆せしめた。次いで、ミキサー内に、予め調製した水溶液(所定量の水に、硬化剤たるヘキサメチレンテトラミンの6.0部と、硬化促進剤たるトリエチレンジアミンの3.0部と、香料系消臭剤Cの0.2部とを添加し、混合、撹拌して得られた水溶液)を添加し、形成された塊状物が粒状に崩壊するまで送風冷却した後、所定量のステアリン酸カルシウムを添加して15秒間、混合することにより、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表2に示す。
【0059】
-実施例5-
a)ヘキサメチレンテトラミン(硬化剤)の使用量を7.0部に変更し、b)硬化促進剤として、トリエチレンジアミンの3.0部に代えて、炭酸カリウムの0.8部を使用し、c)香料系消臭剤として、香料系消臭剤Cの0.2部に代えて、香料系消臭剤Bの0.2部を使用したこと以外は、実施例4と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表2に示す。
【0060】
-実施例6-
a)ヘキサメチレンテトラミン(硬化剤)の使用量を5.0部に変更し、b)硬化促進剤として、トリエチレンジアミンの3.0部に代えて、アルギン酸ナトリウムの1.0部を使用し、c)香料系消臭剤として、香料系消臭剤Cの0.2部に代えて、香料系消臭剤Bの0.2部を使用したこと以外は、実施例4と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表2に示す。また、本実施例に係るRCSについては実鋳造試験も実施し、下記表5にその結果を示す。
【0061】
-実施例7-
a)ヘキサメチレンテトラミン(硬化剤)の使用量を3.0部に変更し、b)硬化促進剤として、トリエチレンジアミンの3.0部に代えて、尿素の2.0部を使用し、c)香料系消臭剤として、香料系消臭剤Cの0.2部に代えて、香料系消臭剤Bの0.3部を使用したこと以外は、実施例4と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表3に示す。
【0062】
-実施例8-
a)硬化促進剤として、尿素の2.0部に代えて、炭酸カリウムの0.8部を使用し、b)香料系消臭剤として、香料系消臭剤Bの0.3部に代えて、香料系消臭剤Dの0.2部を使用したこと以外は、実施例7と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表3に示す。
【0063】
-実施例9-
a)フェノール樹脂として、「フェノール樹脂Aの10部、フェノール樹脂Bの75部及びフェノール樹脂Dの15部」に代えて、「フェノール樹脂Aの20部、フェノール樹脂Bの50部及びフェノール樹脂Cの30部」を使用し、b)香料系消臭剤として、香料系消臭剤Dの0.2部に代えて、香料系消臭剤Bの0.2部を使用したこと以外は、実施例8と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表3に示す。
【0064】
-実施例10-
a)フェノール樹脂として、「フェノール樹脂Aの20部、フェノール樹脂Bの50部及びフェノール樹脂Cの30部」に代えて、「フェノール樹脂Aの30部、フェノール樹脂Bの30部、フェノール樹脂Cの20部及びフェノール樹脂Dの20部」を使用し、b)ヘキサメチレンテトラミン(硬化剤)を使用しなかったこと以外は、実施例9と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表3に示す。
【0065】
-実施例11-
a)硬化促進剤として、炭酸カリウムの0.8部に代えて、トリエチレンジアミンの3.0部を使用し、b)香料系消臭剤として、香料系消臭剤Bの0.2部に代えて、香料系消臭剤Dの0.3部を使用したこと以外は、実施例10と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表3に示す。
【0066】
-比較例1-
スピードミキサー内に、約140~150℃に予熱したフラタリーサンドの6250部と、フェノール樹脂Aの100部とを投入して50秒間、混練することにより、フラタリーサンドの粒子表面にフェノール樹脂Aを被覆せしめた。次いで、ミキサー内に、予め調製した水溶液(所定量の水に、硬化剤たるヘキサメチレンテトラミンの4.0部と、硬化促進剤たる安息香酸の1.5部とを添加し、混合、撹拌して得られた水溶液)を添加し、形成された塊状物が粒状に崩壊するまで送風冷却した後、所定量のステアリン酸カルシウムを添加して15秒間、混合することにより、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表4に示す。また、本比較例に係るRCSについては実鋳造試験も実施し、下記表5にその結果を示す。
【0067】
-比較例2-
a)硬化剤として、ヘキサメチレンテトラミンの15.0部を使用し、b)硬化促進剤を使用しなかったこと以外は、比較例1と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表4に示す。
【0068】
-比較例3-
香料系消臭剤Aの0.2部を使用したこと以外は、比較例2と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表4に示す。
【0069】
-比較例4-
スピードミキサー内に、約140~150℃に予熱したフラタリーサンドの5556部と、フェノール樹脂Cの100部とを投入して50秒間、混練することにより、フラタリーサンドの粒子表面にフェノール樹脂Cを被覆せしめた。その後、所定量のステアリン酸カルシウムを添加して15秒間、混合することにより、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表4に示す。
【0070】
-比較例5-
スピードミキサー内に、約140~150℃に予熱したフラタリーサンドの5882部と、フェノール樹脂Bの50部と、フェノール樹脂Cの50部とを投入して50秒間、混練することにより、フラタリーサンドの粒子表面に、フェノール樹脂Bとフェノール樹脂Cの混合物を被覆せしめた。次いで、ミキサー内に、予め調製した水溶液(所定量の水に、硬化剤たるヘキサメチレンテトラミンの8.0部を添加し、混合、撹拌して得られた水溶液)を添加し、形成された塊状物が粒状に崩壊するまで送風冷却した後、所定量のステアリン酸カルシウムを添加して15秒間、混合することにより、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表4に示す。
【0071】
-比較例6-
硬化剤たるヘキサメチレンテトラミンの4.0部を含有する水溶液に、硬化促進剤たる安息香酸の1.5部に代えて、水酸化カリウムの0.7部を添加し、更に、香料系消臭剤Aの0.2部を添加し、使用したこと以外は、比較例1と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表4に示す。
【0072】
-比較例7-
硬化促進剤たる水酸化カリウムの0.7部に代えて、シュウ酸の1.5部を添加し、使用したこと以外は、比較例6と同様の手法に従い、シェルモールド用RCSを得た。得られたRCSについては、有機成分中の遊離フェノール類の割合を算出し、曲げ強度及び熱膨張率を測定すると共に、臭気官能試験を実施した。その結果を、下記表4に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
上記表2~表5より明らかなように、本発明に従うシェルモールド用鋳型材料たるRCS(実施例1~実施例11)にあっては、何れも、RCSの製造時は勿論のこと、その製造から1ヶ月が経過したRCSを用いて造型した場合にあっても、香料系消臭剤の消臭・防臭効果により、作業者にとって良好な作業環境が確保され得ると共に、最終的に得られる鋳型も優れた強度を発揮するものであることが認められる。また、実鋳造試験の結果より、本発明に係る鋳型材料を用いて中子を作製した場合、中子割れの発生を有効に防止し得ることも認められる。
【0078】
これに対して、本発明の範囲外であるシェルモールド用鋳型材料、具体的には、a)香料系消臭剤を使用しないRCS(比較例1、比較例2、比較例4、比較例5)や、b)香料系消臭剤を使用していても、本発明の如く所定の硬化促進剤を使用していないRCS(比較例3)、更には、c)本発明の範囲外となる硬化促進剤を使用しているRCS(比較例6、比較例7)にあっては、RCS製造時の臭気の発生を抑制できるRCSも認められるものの、その製造から時間が経過したRCSを用いて造型した場合には、作業者が不快に感じる臭気が何れにも認められ、作業者にとって良好な作業環境が確保され得るとは言い難いものであることが、確認されるのである。