(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030304
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】警告装置、警告方法、及び、警告プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230301BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230301BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20230301BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/00 J
B66F9/24 J
G08B21/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135361
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 徹示
【テーマコード(参考)】
3F333
5C086
5H181
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333FA09
3F333FD06
3F333FD20
3F333FE05
5C086AA45
5C086AA49
5C086BA22
5C086CA19
5C086CA21
5C086CA25
5C086CA28
5C086CB36
5C086FA01
5C086FA18
5H181AA07
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC27
5H181LL09
5H181LL16
(57)【要約】
【課題】走行予定経路が設定されていない車両の転倒危険性の評価を行い、車両のユーザ又は管理者に適切に警告を発することができる、警告装置、警告方法、及び、警告プログラムを提供する。
【解決手段】警告装置、警告方法、及び、警告プログラムによれば、荷物積載部を有する車両の複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報を取得し、車両が走行する路面の段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報を取得する。路面情報に基づいて、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置を取得し、荷重情報に基づいて、車両の重心情報を算出する。存在位置及び重心情報に基づいて、車両が警告対象状態にあるか否かを判定し、車両が警告対象状態にあると判定された場合に、ユーザに報知を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物積載部を有する車両の複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報、及び、前記車両が走行する路面の段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報が入力される入力部と、
コントローラと、
ユーザに報知を行う報知部と、
を備える警告装置であって、
前記コントローラは、
前記路面情報に基づいて、前記段差箇所又は前記傾斜箇所の存在位置を取得し、
前記荷重情報に基づいて、前記車両の重心情報を算出し、
前記存在位置及び前記重心情報に基づいて、前記車両が警告対象状態にあるか否かを判定し、
前記報知部は、前記車両が前記警告対象状態にあると判定された場合に報知を行う、警告装置。
【請求項2】
前記車両は、前記車両の前輪よりも前方に前記荷物積載部を有し、
前記コントローラは、前記車両の全ての車輪に加わる荷重の合計のうち、前記車両の後輪に加わる荷重が占める割合が第1閾値未満となった場合に、前記車両が前記警告対象状態にあると判定する、請求項1に記載の警告装置。
【請求項3】
前記車両は、前記車両の前輪よりも前方に前記荷物積載部を有し、
前記コントローラは、前記車両の右側前輪に加わる右側荷重と前記車両の左側前輪に加わる左側荷重の合計のうち、前記右側荷重が占める割合、又は、前記左側荷重が占める割合、が第2閾値未満となった場合に、前記車両が前記警告対象状態にあると判定する、請求項1又は2に記載の警告装置。
【請求項4】
前記入力部には、前記車両の車両位置が入力され、
前記コントローラは、
前記車両位置と前記存在位置の間の距離が所定距離以下である場合に、前記車両が前記警告対象状態にあると判定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の警告装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記車両が前記警告対象状態にあると判定した場合に、前記荷物積載部の制御を停止する、請求項1~4のいずれか一項に記載の警告装置。
【請求項6】
前記車両の周囲を撮像した画像に基づいて、前記路面情報を生成する検知部を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の警告装置。
【請求項7】
記憶部を更に備え、
前記入力部には、前記車両の車両位置、及び、前記車両の加速度が入力され、
前記記憶部は、
前記段差箇所又は前記傾斜箇所を前記車両が通過する際の前記加速度が所定値以上である場合に、前記検知部によって生成された前記路面情報を、前記車両位置に関連付けて記憶する、請求項6に記載の警告装置。
【請求項8】
コンピュータによって実行される警告方法であって、
荷物積載部を有する車両の複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報を取得し、
前記車両が走行する路面の段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報を取得し、
前記路面情報に基づいて、前記段差箇所又は前記傾斜箇所の存在位置を取得し、
前記荷重情報に基づいて、前記車両の重心情報を算出し、
前記存在位置及び前記重心情報に基づいて、前記車両が警告対象状態にあるか否かを判定し、
前記車両が前記警告対象状態にあると判定された場合に、ユーザに報知を行う、警告方法。
【請求項9】
荷物積載部を有する車両の複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報を取得し、
前記車両が走行する路面の段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報を取得し、
前記路面情報に基づいて、前記段差箇所又は前記傾斜箇所の存在位置を取得し、
前記荷重情報に基づいて、前記車両の重心情報を算出し、
前記存在位置及び前記重心情報に基づいて、前記車両が警告対象状態にあるか否かを判定し、
前記車両が前記警告対象状態にあると判定された場合に、ユーザに報知を行う処理を、コンピュータに実行させるための警告プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警告装置、警告方法、及び、警告プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される技術によれば、道路の曲路を走行するとき、車両の重心位置に作用する遠心力の大きさと重心位置の情報による車両の転倒危険性の評価を行う。そして、常に、走行予定経路に沿って現在走行している位置より先行きの道路事情に応じた危険度評価を予め前もって運転者に提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術は、予め設定された走行予定経路を走行する際に生じる遠心力の大きさに基づいて車両の転倒危険性の評価を行う。そのため、特許文献1に開示される技術を用いても、走行予定経路が設定されていない車両の転倒危険性の評価を行うことができない。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、走行予定経路が設定されていない車両の転倒危険性の評価を行い、車両のユーザ又は管理者に適切に警告を発することができる、警告装置、警告方法、及び、警告プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様に係る警告装置は、荷物積載部を有する車両の複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報、及び、車両が走行する路面の段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報が入力される入力部と、コントローラと、ユーザに報知を行う報知部と、を備える。コントローラは、路面情報に基づいて、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置を取得し、荷重情報に基づいて、車両の重心情報を算出する。さらに、コントローラは、存在位置及び重心情報に基づいて、車両が警告対象状態にあるか否かを判定する。報知部は、車両が警告対象状態にあると判定された場合に報知を行う。
【0007】
本発明の第二の態様に係る警告方法は、コンピュータによって実行され、荷物積載部を有する車両の複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報を取得し、車両が走行する路面の段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報を取得する。路面情報に基づいて、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置を取得し、荷重情報に基づいて、車両の重心情報を算出する。そして、存在位置及び重心情報に基づいて、車両が警告対象状態にあるか否かを判定し、車両が警告対象状態にあると判定された場合に、ユーザに報知を行う。
【0008】
本発明の第三の態様に係る警告プログラムは、荷物積載部を有する車両の複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報を取得し、車両が走行する路面の段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報を取得する処理を、コンピュータに実行させる。路面情報に基づいて、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置を取得し、荷重情報に基づいて、車両の重心情報を算出する処理を、コンピュータに実行させる。そして、存在位置及び重心情報に基づいて、車両が警告対象状態にあるか否かを判定し、車両が警告対象状態にあると判定された場合に、ユーザに報知を行う処理を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、走行予定経路が設定されていない車両の転倒危険性の評価を行い、車両のユーザ又は管理者に適切に警告を発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る警告装置が適用されるフォークリフトを示す側面図である。
【
図2】本実施形態に係る警告装置が適用されるフォークリフトを示す下面図である。
【
図3】本実施形態に係る警告装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る警告装置の処理の第1の例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る警告装置の処理の第2の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本実施形態に係る警告装置を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。
【0012】
[車両の構成例]
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る警告装置が適用されるフォークリフトFについて説明する。
図1は、本実施形態に係る警告装置が適用されるフォークリフトを示す側面図である。
図2は、本実施形態に係る警告装置が適用されるフォークリフトを示す下面図である。
【0013】
フォークリフトF(車両)は、昇降するフォーク部51、バックレスト部52、マスト部53、走行用車輪である前輪(左側前輪TY1、右側前輪TY2)、駆動輪である後輪(左側後輪TY3、右側後輪TY4)等を備えている。
【0014】
フォークリフトFは、ガソリンエンジン等の内燃機関を駆動源とするエンジン車であってもよいし、発電機等から充電可能な二次電池(バッテリ)などから供給される電力で駆動される電動モータを駆動源とするバッテリ車であってもよい。
【0015】
フォーク部51、バックレスト部52は、フォークリフトFの車体に固定されたマスト部53に対して上下動可能なように取り付けられている。フォーク部51及びマスト部53を合わせて、荷物積載部と称する。
【0016】
フォーク部51及びマスト部53を支持するマスト部53の上方には、車載カメラCM1が設けられている。車載カメラCM1は、フォークリフトFの前方の路面を撮像する。また、フォークリフトFの後部上方には、車載カメラCM2が設けられている。車載カメラCM2は、フォークリフトFの後方の路面を撮像する。
【0017】
車載カメラCM1、車載カメラCM2が設けられる位置は、フォークリフトFの周囲の路面を撮像可能であればよく、ここで挙げた例に限定されない。また、車載カメラCM1、及び、車載カメラCM2は、フォークリフトFの側方の路面を撮像するものであってもよい。
【0018】
フォークリフトFの車体には、フォークリフトFの前輪及び後輪に加わる荷重、及び、前輪及び後輪の回転数を測定する計測部11が取り付けられている。
図2には、計測部11として、センサWS1、センサWS2、センサWS3、センサWS4が示されている。センサWS1は、左側前輪TY1に加わる荷重及び回転数を測定する。センサWS2は、右側前輪TY2に加わる荷重及び回転数を測定する。センサWS3は、左側後輪TY3に加わる荷重及び回転数を測定する。センサWS4は、右側後輪TY4に加わる荷重及び回転数を測定する。
【0019】
センサWS1、センサWS2は、車軸61を介して、それぞれ左側前輪TY1、右側前輪TY2に加わる荷重及び回転数を測定するものであってもよい。センサWS3、センサWS4は、車軸62を介して、それぞれ左側後輪TY3、右側後輪TY4に加わる荷重及び回転数を測定するものであってもよい。
【0020】
その他、フォークリフトFの車体には、移動時の加速度(前後G、左右Gおよび上下G)を検出する加速度センサ(Gセンサ)が取り付けられていてもよい。計測部11は、加速度センサを含んでもよい。
【0021】
また、フォークリフトFの車体には、フォークリフトFの位置情報を取得する位置センサが取り付けられていてもよい。例えば、位置センサはGPSセンサであってもよい。GPSセンサは、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信し、所定の計算処理を行って受信信号からフォークリフトFの現在位置を表す緯度、経度の情報を取得する。これにより、フォークリフトFの位置情報(車両位置)を取得することができる。計測部11は、位置センサを含んでもよい。
【0022】
フォークリフトFのオペレータ(運転者)は、ステアリング71、変速レバー72および図示されないアクセルペダル、ブレーキペダル等のペダル等を操作する。当該操作によって、フォーク部51の昇降、フォークリフトFの前進、後退、右折、左折等の動作を行わせて荷役作業等を行う。
【0023】
本実施形態に係る警告装置が適用される車両は、フォークリフトFに限定されない。車両は、工場、倉庫等の構内などにおいて荷物、製品等の積み降ろしや搬送等を行う車両であってもよい。
【0024】
[警告装置の構成例]
図3を参照して、本実施形態に係る警告装置1の構成等について説明する。
図3は、本実施形態に係る警告装置の構成の一例を示すブロック図である。警告装置1は、例えば、フォークリフトFに搭載されるものであってもよいし、フォークリフトFのユーザ又は管理者が携帯する端末に搭載されるものであってもよい。
【0025】
図3に示すように、警告装置1は、入力部21と、コントローラ100と、報知部400とを備える。その他、警告装置1は、計測部11と、路面状況検知部13と、データベース15とを備えるものであってもよい。計測部11はフォークリフトFに搭載されるが、路面状況検知部13及びデータベース15は、フォークリフトFに搭載されるものであってもよいし、フォークリフトFの外部に設置されるものであってもよい。
【0026】
計測部11、路面状況検知部13、データベース15は、入力部21と接続され、入力部21、報知部400は、コントローラ100と接続される。ここで、「接続」とは、有線又は無線のいずれの方式による接続であってもよい。
【0027】
計測部11は、フォークリフトFの前輪及び後輪に加わる荷重、及び、前輪及び後輪の回転数を測定する。計測部11によって取得された、前輪及び後輪に加わる荷重に関する情報は、フォークリフトFの複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報として、入力部21に送信される。また、計測部11によって取得された、前輪及び後輪の回転数に関する情報は、フォークリフトFの複数の車輪ごとの回転数を表す回転数情報として、入力部21に送信される。
【0028】
計測部11は、フォークリフトFの移動時の加速度を検出する加速度センサを含むものであってもよい。フォークリフトFの移動時の加速度の情報は、加速度情報として入力部21に送信される。また、フォークリフトFの位置情報を取得する位置センサを含むものであってもよい。フォークリフトFの位置情報は、入力部21に送信される。
【0029】
路面状況検知部13(検知部)は、車載カメラCM1又は車載カメラCM2によって撮像した画像に基づいて、フォークリフトFの周囲の路面における段差箇所又は傾斜箇所を検知する。例えば、路面状況検知部13は、画像解析に基づいて段差箇所又は傾斜箇所を検知するものであってもよい。路面状況検知部13は、検知した段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報を生成する。路面情報には、段差箇所又は傾斜箇所の位置情報、段差箇所での段差の大きさ、傾斜箇所での傾斜の大きさが含まれる。路面情報は、入力部21に送信される。
【0030】
路面情報に含まれる位置情報は、路面状況検知部13が段差箇所又は傾斜箇所を検知した際の、フォークリフトFの位置を表す位置情報であってもよい。その他、路面情報に含まれる位置情報は、路面状況検知部13と段差箇所又は傾斜箇所の間の位置関係と、フォークリフトFの位置を表す位置情報に基づいて算出されるものであってもよい。
【0031】
路面状況検知部13は、フォークリフトFに搭載した3次元レーザー計測装置によって取得されたフォークリフトFの周囲の路面の形状を表す点群データに基づいて、段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報を生成するものであってもよい。
【0032】
データベース15(記憶部)は、路面状況検知部13によって生成された路面情報を記憶する。データベース15は、特定の1台の路面状況検知部13によって生成された路面情報のみならず、複数台の路面状況検知部13から生成された路面情報を記憶するものであってもよい。データベース15に記憶された路面情報は、必要に応じて入力部21に送信される。
【0033】
入力部21は、計測部11、路面状況検知部13、データベース15から送信された情報を取得する。入力部21が取得した各種の情報は、コントローラ100に送信される。
【0034】
報知部400は、後述するコントローラ100によって、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定された場合に、ユーザに対して報知を行う。
【0035】
例えば、報知部400は、フォークリフトFが走行する路面に段差又は傾斜が存在することを報知する。その他、報知部400は、フォークリフトFの走行に注意する必要があることを報知する。報知部400は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどであってもよい。
【0036】
報知部400は、各種の情報を視覚情報によって情報を提示するものに限定されない。報知部400は、聴覚情報によってユーザに情報を提示するものであってもよいし、振動を発生させて、振動による刺激によってユーザに情報を提示するものであってもよい。例えば、報知部400は、音を生成し発するための音源、アンプ、スピーカなどであってもよい。
【0037】
コントローラ100は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ100には、警告装置1の一部として機能するためのコンピュータプログラム(警告プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ100は、複数の情報処理回路(110、120、130)として機能する。
【0038】
なお、ここでは、ソフトウェアによってコントローラ100が備える複数の情報処理回路(110、120、130)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(110、120、130)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(110、120、130)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0039】
コントローラ100は、複数の情報処理回路(110、120、130)として、重心算出部110、位置取得部120、判定部130を備える。
【0040】
重心算出部110は、荷重情報に基づいて、フォークリフトFの重心情報を算出する。より具体的には、重心算出部110は、フォークリフトFの全ての車輪に加わる荷重の合計(センサWS1~WS4で測定した荷重の合計)を算出し、重心情報として、荷重の合計に占める各車輪に加わる荷重の割合を算出する。
【0041】
重心算出部110は、重心情報として、フォークリフトFの全ての車輪に加わる荷重の合計に占める、前輪に加わる荷重(前輪荷重:センサWS1,WS2で測定した荷重の合計)の割合を算出する。また、重心算出部110は、重心情報として、フォークリフトFの全ての車輪に加わる荷重の合計に占める、後輪に加わる荷重(後輪荷重:センサWS3,WS4で測定した荷重の合計)の割合を算出する。
【0042】
また、重心算出部110は、フォークリフトFの前輪に加わる荷重の合計(センサWS1、センサWS2で測定した荷重の合計)を算出するものであってもよい。そして、重心算出部110は、重心情報として、荷重の合計に占める各前輪(左側前輪TY1、右側前輪TY2)に加わる荷重(左側荷重、右側荷重)の割合を算出するものであってもよい。
【0043】
重心算出部110が前輪について合計および割合を算出した理由は、荷物積載部としてのフォーク部51がフォークリフトFの前輪側(特に、フォークリフトFの車体から見て前輪よりも前方)に位置していることに由来する。フォークリフトFの前輪に加わる荷重が、フォークリフトFの転倒危険性の評価に役立つことに由来する。
【0044】
なお、荷物積載部が車両の後輪側(特に、後輪よりも後方)に位置している場合には、重心算出部110は、フォークリフトFの後輪に加わる荷重の合計(センサWS3、センサWS4で測定した荷重の合計)を算出するものであってもよい。そして、重心算出部110は、重心情報として、荷重の合計に占める各後輪(左側後輪TY3、右側後輪TY4)に加わる荷重の割合を算出するものであってもよい。
【0045】
位置取得部120は、路面情報に基づいて、フォークリフトFの周囲に存在する段差箇所又は傾斜箇所の存在位置を取得する。なお、位置取得部120は、段差箇所での段差の大きさが所定値以上である段差箇所のみを抽出し、抽出した段差箇所の存在位置を取得するものであってもよい。また、位置取得部120は、傾斜箇所での傾斜の大きさが所定値以上である傾斜箇所のみを抽出し、抽出した傾斜箇所の存在位置を取得するものであってもよい。抽出を行うことで、後述する判定部130での計算負荷を軽減できる。
【0046】
ここで、段差箇所及び傾斜箇所の抽出のために用いる所定値は、フォーク部51及びマスト部53の高さ位置、又は、フォーク部51に積載された荷物の重さに応じて変更されるものであってもよい。例えば、フォーク部51及びマスト部53の高さ位置が大きいほど、所定値は小さく設定されてもよい。また、フォーク部51に積載された荷物が重いほど、所定値は小さく設定されてもよい。所定値を変更することで、判定部130での計算負荷を軽減しつつ、フォークリフトFの転倒危険性を精度よく判定することができる。
【0047】
その他、位置取得部120は、入力部21を介して、フォークリフトFの車両位置を取得するものであってもよい。
【0048】
判定部130は、存在位置及び重心情報に基づいて、フォークリフトFが警告対象状態にあるか否かを判定する。例えば、判定部130は、フォークリフトFの全ての車輪に加わる荷重の合計のうち、フォークリフトFの後輪に加わる荷重(後輪荷重)が占める割合が第1閾値未満となった場合に、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定するものであってもよい。
【0049】
また、判定部130は、フォークリフトFの左側前輪TY1に加わる左側荷重と右側前輪TY2に加わる右側荷重の合計のうち、左側荷重が占める割合が第2閾値未満となった場合に、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定するものであってもよい。判定部130は、左側荷重と右側荷重の合計のうち、右側荷重が占める割合が第2閾値未満となった場合に、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定するものであってもよい。
【0050】
ここで、第2閾値と比較して、第1閾値は小さい値に設定されてもよい。これにより、フォークリフトFの側方方向への転倒危険性に比べて、フォークリフトFの前後方向への転倒危険性をより厳しく判定することができる。
【0051】
また、第1閾値及び第2閾値は、フォーク部51及びマスト部53の高さ位置、又は、フォーク部51に積載された荷物の重さに応じて変更されるものであってもよい。例えば、フォーク部51及びマスト部53の高さ位置が大きいほど、第1閾値及び第2閾値は小さく設定されてもよい。また、フォーク部51に積載された荷物が重いほど、第1閾値及び第2閾値は小さく設定されてもよい。第1閾値及び第2閾値を変更することで、フォークリフトFの転倒危険性を精度よく判定することができる。
【0052】
その他、判定部130は、フォークリフトFの車両位置と、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置の間の距離が所定距離以下である場合に、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定するものであってもよい。ここで、所定距離は、フォークリフトFの車体の大きさに基づいて事前に設定されるものであってもよいし、段差箇所での段差の大きさ、又は、傾斜箇所での傾斜の大きさに基づいて設定されるものであってもよい。
【0053】
上述した処理のうち1又は複数の処理を組み合わせて、判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態にあるか否かを判定する処理を行ってもよい。判定部130は、複数の処理を組み合わせる際に、警告フラグを保持し、処理の結果に基づいて警告フラグを設定又は解除してもよい。詳細は、
図4及び
図5のフローチャートを用いて後述する。
【0054】
判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定した場合に、荷物積載部であるフォーク部51及びバックレスト部52の制御を停止するものであってもよい。例えば、判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定した場合に、フォーク部51の昇降動作を停止させるものであってもよい。
【0055】
判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定した場合に、フォークリフトFの走行の制御を停止するものであってもよい。例えば、判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態にあると判定した場合に、フォークリフトFの前進、後退、右折、左折等、車両位置及び車両姿勢の変化を伴う動作を停止するものであってもよい。
【0056】
その他、判定部130は、フォークリフトFの車両位置、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置、及び、加速度情報に基づいて、段差箇所又は傾斜箇所をフォークリフトFが通過する際の加速度が所定値以上であるか否かを判定するものであってもよい。ここで「通過」の概念には、段差箇所又は傾斜箇所をフォークリフトFが通過する場合の他、段差箇所又は傾斜箇所までの距離が所定距離未満となる領域をフォークリフトFが通過する場合(近傍を通過する場合)が含まれていてもよい。
【0057】
判定部130によって、加速度が所定値以上であると判定された場合、コントローラ100は、路面状況検知部13によって生成された路面情報を、車両位置に関連付けてデータベース15に出力するものであってもよい。データベース15は、コントローラ100から出力された路面情報を、車両位置に関連付けて記憶するものであってもよい。
【0058】
[警告装置の処理手順]
次に、本実施形態に係る車両操作状態検知装置の処理手順を、
図4及び
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
なお、
図4及び
図5のフローチャートに示す処理は、フォークリフトFのイグニッションがオンされると開始し、イグニッションがオンとなっている間、繰り返し実行されるものであってもよい。また、
図3のフローチャートに示す処理と
図5のフローチャートに示す処理は、並列して実行されるものであってもよいし、交互に実行されるものであってもよい。
【0060】
図4は、本実施形態に係る警告装置の処理の第1の例を示すフローチャートである。ステップS101において、入力部21は荷重情報を取得する。
【0061】
ステップS103において、重心算出部110は、荷重情報に基づいて、フォークリフトFの重心情報を算出する。
【0062】
ステップS105において、判定部130は、フォークリフトFの全ての車輪に加わる荷重の合計のうち、フォークリフトFの後輪に加わる荷重(後輪荷重)が占める割合が第1閾値未満であるか否かを判定する。
【0063】
後輪荷重の割合が第1閾値未満である場合(ステップS105でYESの場合)、ステップS107において、判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態(「前偏荷重」)にあると判定する。また、報知部400は、ユーザに対して「前偏荷重」であることを報知する。その後、ステップS123に進む。
【0064】
後輪荷重の割合が第1閾値未満でない場合(ステップS105でNOの場合)、ステップS109において、判定部130は、フォークリフトFの左側荷重と右側荷重の合計のうち、左側荷重が占める割合が第2閾値未満であるか否かを判定する。
【0065】
左側荷重の割合が第2閾値未満である場合(ステップS109でYESの場合)、ステップS111において、判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態(「右偏荷重」)にあると判定する。また、報知部400は、ユーザに対して「右偏荷重」であることを報知する。その後、ステップS123に進む。
【0066】
左側荷重の割合が第2閾値未満でない場合(ステップS109でNOの場合)、ステップS113において、判定部130は、フォークリフトFの左側荷重と右側荷重の合計のうち、右側荷重が占める割合が第2閾値未満であるか否かを判定する。
【0067】
右側荷重の割合が第2閾値未満である場合(ステップS113でYESの場合)、ステップS115において、判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態(「左偏荷重」)にあると判定する。また、報知部400は、ユーザに対して「左偏荷重」であることを報知する。その後、ステップS123に進む。
【0068】
右側荷重の割合が第2閾値未満でない場合(ステップS113でNOの場合)、ステップS121において、判定部130は、警告フラグを解除する。
【0069】
一方、判定部130によってフォークリフトFが警告対象状態であると判定された場合には、ステップS123において、判定部130は、警告フラグを設定する。
【0070】
次に、
図5は、本実施形態に係る警告装置の処理の第2の例を示すフローチャートである。ステップS201において、入力部21は路面情報を取得する。
【0071】
なお、路面情報は、路面状況検知部13から入力される場合もあれば、データベース15から入力される場合もある。
【0072】
ステップS203において、位置取得部120は、路面情報に基づいて、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置を取得する。
【0073】
ステップS205において、位置取得部120は、フォークリフトFの車両位置を取得する。
【0074】
ステップS207において、判定部130は、フォークリフトFの車両位置と、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置の間の距離が所定距離以下であるか否かを判定する。
【0075】
段差箇所又は傾斜箇所の存在位置の間の距離が所定距離以下でない場合(ステップS207でNOの場合)、
図5のフローチャートの処理を終了する。
【0076】
一方、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置の間の距離が所定距離以下である場合(ステップS207でYESの場合)、ステップS209において、判定部130は、警告フラグが設定されているか否かを判定する。
【0077】
警告フラグが設定されている場合(ステップS209でYESの場合)、ステップS211において、判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態(「傾斜・段差の危険あり」)にあると判定する。また、報知部400は、ユーザに対して「傾斜・段差の危険あり」を報知する。
【0078】
一方、警告フラグが設定されていない場合(ステップS209でNOの場合)、ステップS213において、判定部130は、フォークリフトFが警告対象状態(「傾斜・段差に注意」)にあると判定する。また、報知部400は、ユーザに対して「傾斜・段差に注意」を報知する。
【0079】
ステップS215において、入力部21は加速度情報を取得する。
【0080】
ステップS217において、判定部130は、段差箇所又は傾斜箇所をフォークリフトFが通過する際の加速度が所定値以上であるか否かを判定する。
【0081】
加速度が所定値以上である場合(ステップS217でYESの場合)、ステップS219において、コントローラ100は、路面状況検知部13によって生成された路面情報をデータベース15に出力する。データベース15は、コントローラ100から出力された路面情報を記憶する。
【0082】
加速度が所定値以上でない場合(ステップS217でNOの場合)、
図5のフローチャートの処理を終了する。
【0083】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る警告装置、警告方法、及び、警告プログラムによれば、荷物積載部を有する車両の複数の車輪ごとの荷重を表す荷重情報を取得し、車両が走行する路面の段差箇所又は傾斜箇所を表す路面情報を取得する。路面情報に基づいて、段差箇所又は傾斜箇所の存在位置を取得し、荷重情報に基づいて、車両の重心情報を算出する。存在位置及び重心情報に基づいて、車両が警告対象状態にあるか否かを判定し、車両が警告対象状態にあると判定された場合に、ユーザに報知を行う。
【0084】
これにより、走行予定経路が設定されていない車両の転倒危険性の評価を行い、車両のユーザ又は管理者に適切に警告を発することができる。特に、段差箇所又は傾斜箇所の周辺を通過する際に、車両の重心位置に偏りが生じた場合に、車両の転倒危険性があるとして警告を発することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る警告装置、警告方法、及び、警告プログラムによれば、車両の前輪よりも前方に荷物積載部を有する車両において、車両の全ての車輪に加わる荷重の合計を算出するものであってもよい。そして、当該合計のうち、車両の後輪に加わる荷重が占める割合が第1閾値未満となった場合に、車両が警告対象状態にあると判定するものであってもよい。これにより、車両の前後方向への転倒危険性を判定することができる。
【0086】
さらに、本実施形態に係る警告装置、警告方法、及び、警告プログラムによれば、車両の前輪よりも前方に荷物積載部を有する車両において、車両の右側前輪に加わる右側荷重と車両の左側前輪に加わる左側荷重の合計を算出するものであってもよい。そして、当該合計のうち、右側荷重が占める割合、又は、左側荷重が占める割合、が第2閾値未満となった場合に、車両が警告対象状態にあると判定するものであってもよい。これにより、車両の側方方向への転倒危険性を判定することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る警告装置、警告方法、及び、警告プログラムによれば、車両の車両位置を取得し、車両位置と存在位置の間の距離が所定距離以下である場合に、車両が警告対象状態にあると判定するものであってもよい。これにより、段差箇所又は傾斜箇所に車両が接近した場合に、車両の転倒危険性を判定することができる。
【0088】
さらに、本実施形態に係る警告装置、警告方法、及び、警告プログラムによれば、車両が警告対象状態にあると判定した場合に、荷物積載部の制御を停止するものであってもよい。これにより、車両の転倒危険性がある場合に、荷物積載部の上下動等に起因して車両の転倒危険性が増してしまうことを抑制できる。
【0089】
また、本実施形態に係る警告装置、警告方法、及び、警告プログラムによれば、車両の周囲を撮像した画像に基づいて、路面情報を生成するものであってもよい。これにより、路面情報がデータベース等に登録されていない路面を車両が走行する場合であっても、車両の転倒危険性を判定することができる。
【0090】
さらに、本実施形態に係る警告装置、警告方法、及び、警告プログラムによれば、車両の車両位置、及び、車両の加速度を取得するものであってもよい。そして、段差箇所又は傾斜箇所を車両が通過する際の加速度が所定値以上である場合に、生成された路面情報を、車両位置に関連付けて記憶するものであってもよい。これにより、データベース等に登録されていない路面情報を、新たにデータベース等に登録することができる。また、事後に段差箇所又は傾斜箇所を管理者が確認し、路面の修繕作業に役立てることができる。
【0091】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサや、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置や、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0092】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 警告装置
11 計測部
13 路面状況検知部(検知部)
15 データベース(記憶部)
21 入力部
51 フォーク部(荷物積載部)
52 バックレスト部
53 マスト部
100 コントローラ
110 重心算出部
120 位置取得部
130 判定部
400 報知部
F フォークリフト(車両)
TY1 左側前輪
TY2 右側前輪
TY3 左側後輪
TY4 右側後輪