(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030325
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 7/043 20200101AFI20230301BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20230301BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08J7/043 CES
C08J7/043 CFD
C08J7/043 CFG
B32B38/18 F
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135385
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 克也
(72)【発明者】
【氏名】畑中 真吾
(72)【発明者】
【氏名】植田 智也
(72)【発明者】
【氏名】富田 武蔵
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AA35
4F006AA36
4F006AA38
4F006AB24
4F006AB37
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4F006BA01
4F006CA05
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4F006EA05
4F100AK01A
4F100AK01B
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4F100GB48
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4F100JN00
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4F100YY002
(57)【要約】
【課題】樹脂フィルム上にフェノール系化合物を含む易接着組成物を塗布、乾燥し、フェノール系化合物を含む易接着層を形成するに際し、フェノール系化合物に起因する易接着層の変色を抑制する光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂フィルムの表面にバインダー樹脂とフェノール系化合物とを含む熱硬化性易接着組成物を塗布し、樹脂フィルム表面に塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を加熱し、乾燥させ、樹脂フィルム表面に易接着層を形成する硬化工程と、易接着層に活性エネルギー線を照射する照射工程と、をこの順に備えることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの表面にバインダー樹脂とフェノール系化合物とを含む熱硬化性易接着組成物を塗布し、前記樹脂フィルム表面に塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜を加熱し、乾燥させ、前記樹脂フィルム表面に易接着層を形成する硬化工程と、
前記易接着層に活性エネルギー線を照射する照射工程と、
をこの順に備えることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記フェノール系化合物は、フェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線は、紫外線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記照射工程は、積算光量が550mJ/cm2以上となるよう照射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記照射工程は、酸素存在下にて行われることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記硬化工程は、塗膜の乾燥温度が90℃以上となるよう加熱することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
樹脂フィルムの表面にバインダー樹脂とフェノール系化合物とを含む熱硬化性易接着組成物からなる易接着層を有する光学フィルムであって、前記光学フィルムは100℃以上140℃以下のいずれかの温度にて5分間加熱された前後におけるCIE1976色空間の透過光のa*値の変化が下記式(I)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.02・・式(I)
【請求項8】
前記光学フィルムが下記式(II)を満たすことを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
-0.15<(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.02・・式(II)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの表面に易接着層を形成する光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、タッチパネル等の用途が拡大している。このようなデバイスでは保護フィルム、位相差フィルム、前面板等の光学フィルムに、各種の樹脂フィルムが用いられている。光学フィルムには、高い透明性が求められることから、樹脂フィルムとして、ポリエステル系フィルム、シクロオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム等が使用されている。
【0003】
光学フィルムは、通常、他の機能性フィルムと積層された状態で使用されることが多く、他の機能性フィルムとの密着性が良好であることが必要である為、光学フィルムの表面にポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系樹脂等の助接着性の樹脂(バインダー樹脂)を主成分とする易接着層を設け、光学フィルムに易接着性を付与することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO15/098539
【特許文献2】WO16/088633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、易接着層には耐久性向上等を目的としてフェノール系酸化防止剤を配合することがある。このような易接着層は、フェノール系酸化防止剤を含む易接着組成物を樹脂フィルムの表面に塗工して塗膜を形成し、次いで、該塗膜を乾燥・硬化して樹脂フィルム上に易接着層が形成される。しかしながら、フェノール系酸化防止剤を含む易接着組成物は、塗膜の乾燥や硬化時の加熱により易接着層が変色し、赤味を呈することがある。また、フェノール系酸化防止剤を含む易接着層を備える光学フィルムは、他の塗工層を設ける際の乾燥時や、他の機能性フィルムとの貼合後の乾燥時など、易接着層が加熱された際、易接着層が変色し、赤味を呈することがある。易接着層が赤味を呈すると、光学フィルムの透明性が損なわれ、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、タッチパネル等のデバイスに利用できないといった種々の問題が発生する。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、樹脂フィルム上にフェノール系化合物を含む易接着組成物を塗布、乾燥し、フェノール系化合物を含む易接着層を形成するに際し、フェノール系化合物に起因する易接着層の変色(赤味)を抑制する光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、フェノール系化合物を含む易接着組成物を用いて樹脂フィルム上に易接着層を形成するに際し、フェノール系化合物に起因する易接着層の変色を抑制する光学フィルムの製造方法について鋭意検討した結果、易接着層の形成後、易接着層に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、易接着層の変色が抑制され、透明性に優れる光学フィルムを得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明によれば、
(1)樹脂フィルムの表面にバインダー樹脂とフェノール系化合物とを含む熱硬化性易接着組成物を塗布し、前記樹脂フィルム表面に塗膜を形成する塗布工程と、前記塗膜を加熱し、乾燥させ、前記樹脂フィルム表面に易接着層を形成する硬化工程と、前記易接着層に活性エネルギー線を照射する照射工程と、をこの順に備えることを特徴とする光学フィルムの製造方法が提供され、
(2)前記フェノール系化合物は、フェノール系酸化防止剤であることを特徴とする(1)に記載の光学フィルムの製造方法が提供され、
(3)前記活性エネルギー線は、紫外線であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光学フィルムの製造方法が提供され、
(4)前記照射工程は、積算光量が550mJ/cm2以上となるよう照射することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法が提供され、
(5)前記照射工程は、酸素存在下にて行われることを特徴とする(1)乃至(4)の何れかに記載の光学フィルムの製造方法が提供され、
(6)前記硬化工程は、塗膜の乾燥温度が90℃以上となるよう加熱することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法が提供され、
(7)樹脂フィルムの表面にバインダー樹脂とフェノール系化合物とを含む熱硬化性易接着組成物からなる易接着層を有する光学フィルムであって、前記光学フィルムは100℃以上140℃以下のいずれかの温度にて5分間加熱された前後におけるCIE1976色空間の透過光のa*値の変化が下記式(I)を満たすことを特徴とする光学フィルムが提供され、
(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.02・・式(I)
(8)前記光学フィルムが下記式(II)を満たすことを特徴とする(7)に記載の光学フィルムが提供される。
-0.15<(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.02・・式(II)
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によって得られる光学フィルムは、フェノール系化合物を含む易接着層であっても、塗膜の乾燥や硬化時の加熱による易接着層の変色(赤味)が抑制され、光学フィルムとして利用可能な優れた透明性を有する。また、紫外線等の活性エネルギー線が照射された易接着層は、他の塗工層を設ける際の乾燥時や、他の機能性フィルムとの貼合後の乾燥時など、易接着層が再度加熱された際においても変色することなく、透明性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学フィルムの断面模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造ラインの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る光学フィルム及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、光学フィルムの断面模式図である。
図1に示すように、光学フィルム10は、樹脂フィルム11と樹脂フィルム11上に位置する易接着層12とを備える。易接着層12は、必要に応じて溶媒で希釈されたバインダー樹脂とフェノール化合物とを含む熱硬化性易接着組成物が樹脂フィルム上に塗布され、次いで、乾燥により硬化して形成されたものである。各構成要素について、順に説明する。
【0012】
[樹脂フィルム]
樹脂フィルムは、可視光に対して透光性を有する材料で構成されたものであり、例えば、プラスチック材料から構成される。プラスチック材料としては、特に制限するものではないが、例えば、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等のシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂などが挙げられる。これらは、単独或いは2種以上を組合わせて用いることができる。なお、ここでいう(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂またはメタクリル系樹脂を意味する。
【0013】
樹脂フィルムは、生産性の観点から長尺のフィルム状のものが好ましい。樹脂フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、強度や柔軟性を考慮すると、5~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、10~100μmであることがさらに好ましい。厚さが5μm未満であると、十分な強度が得られなくなるおそれがある。厚さが300μmを超えると、フレキシブル性が低下し、光学フィルムとしての使用に適さない恐れがある。
【0014】
樹脂フィルムは、延伸処理が施されていても、施されていなくてもいずれでもよい。延伸処理は、一軸延伸又は二軸延伸のいずれでもよく、例えば、延伸倍率は面積比で1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2.5倍以上、さらに好ましくは4.5倍以上である。
【0015】
樹脂フィルムは、単層であっても複層であっても良い。また、本発明の効果を奏する範囲内であれば、これらの各層には、必要に応じて、各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;微粒子;界面活性剤等を挙げることができる。これらは、単独或いは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0016】
樹脂フィルムの1mm厚換算での全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。全光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V-570」)を用いて測定することができる。
【0017】
[熱硬化性易接着組成物]
熱硬化性易接着組成物は、熱硬化により光学フィルム上に易接着層を形成するものであり、バインダー樹脂とフェノール化合物とを含む。熱硬化性易接着組成物は、後述する塗布工程における塗膜形成の観点から、必要に応じて溶媒で希釈されていてもよく、溶媒としては、例えば、水、アルコール(エタノール等)、ケトン、エーテル、炭化水素、芳香族溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)が挙げられ、これらは、単独或いは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0018】
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂は、樹脂フィルムに易接着性を付与する助接着性の樹脂であり、特に制限することなく従来公知の樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シロキサン系樹脂等が挙げられる。これらは、単独或いは2種以上を組合わせて用いることができる。なお、バインダー樹脂は、熱硬化性の触媒を含む樹脂や熱硬化性の架橋剤を含む樹脂であってもよい。
【0019】
[フェノール系化合物]
フェノール系化合物は、易接着層に耐久性を付与するものであり、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも、耐久性の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0020】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチル-6-ブチルフェノール)、2,-2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-s-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4-8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-ビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコ-ルビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、1,1'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(6-(1-メチルシクロヘキシル)-4-メチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス(2-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルプロピオニロキシ)1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルシクロヘキシル、スチレネイティッドフェノール、2,4-ビス((オクチルチオ)メチル)-5-メチルフェノールなどが挙げられる。これらは、単独或いは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0021】
フェノール系化合物の含有量は、固形分換算で、バインダー樹脂の合計100重量部に対して、0.01~5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~3重量部、さらに好ましくは0.05~1重量部である。なお、バインダー樹脂以外の樹脂成分を含む場合、他の樹脂成分を含めた固形分100重量部に対して、フェノール系化合物を配合すれば良い。
【0022】
熱硬化性易接着組成物は、高温高湿下における耐湿熱性等を向上させるため、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用することができ、例えば、尿素化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、シラノール化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。これらは単独、或いは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0023】
架橋剤の含有量は、固形分換算で、バインダー樹脂の合計100重量部に対して、0.1~15重量部であることが好ましい。より好ましくは0.3~5重量部、さらに好ましくは0.5~3重量部である。なお、バインダー樹脂以外の樹脂成分を含む場合、他の樹脂成分を含めた固形分100重量部に対して、架橋剤を配合すれば良い。
【0024】
熱硬化性易接着組成物は、機能に合わせて任意の適切な微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機系微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。
【0025】
微粒子の平均粒子径は、特に限定するものではないが、易接着層の透明性を維持する観点から、好ましくは1~500nm、より好ましくは50~350nm、さらに好ましくは100~300nmである。このような粒子径の微粒子を用いることにより、易接着層表面に適切に凹凸を形成して、樹脂フィルムと易接着層および/または易接着層どうしの接触面における摩擦力を効果的に低減することができ、ブロッキングを抑制することができる。
【0026】
微粒子の含有量は、固形分換算で、バインダー樹脂の合計100重量部に対して、0.1~15重量部であることが好ましい。より好ましくは0.3~5重量部、さらに好ましくは0.5~3重量部である。なお、バインダー樹脂以外の樹脂成分を含む場合、他の樹脂成分を含めた固形分100重量部に対して、微粒子を配合すれば良い。
【0027】
熱硬化性易接着組成物は、任意の適切な添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、例えば、分散安定剤、揺変剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0028】
次に、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法について説明する。
図2は、ロールトゥロール方式の光学フィルムの製造ライン20の概略を示す図である。
図2に示すように、光学フィルムの製造方法は、繰出装置21により長尺の樹脂フィルム11を長手方向に繰り出す繰出工程と、塗布装置22により樹脂フィルムの一方面上に熱硬化性易接着組成物を塗布し、樹脂フィルム11上に塗膜を形成する塗布工程と、乾燥炉23により塗膜を加熱して乾燥させ、塗膜を硬化させて樹脂フィルム11上に易接着層を形成する硬化工程と、樹脂フィルムの他方面側からバックロール25で樹脂フィルムを支持した状態で、樹脂フィルム11の一方面側から紫外線等の活性エネルギー線照射装置24により、易接着層に活性エネルギー線を照射する照射工程と、巻取装置26により光学フィルムを巻き取る巻取工程と、を備える。樹脂フィルムは、繰出工程から巻取工程まで、複数の搬送ロール27により案内し、搬送される。
【0029】
[繰出工程]
繰出工程は、繰出装置によってロール巻きされた長尺の樹脂フィルムを回転させて、樹脂フィルムを長手方向に繰り出す工程である。繰出装置としては、公知のものを使用することができる。
【0030】
[塗布工程]
塗布工程は、塗布装置によって、樹脂フィルムの一方面上に熱硬化性易接着組成物を連続して塗布し、塗膜を形成する工程である。塗布装置としては、例えば、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート、ブレードコート、グラビアコート、リバースコート、スロットダイコート、スクリーン印刷、インクジェット等が挙げられる。これらの中でも、塗料を均一に塗布できることからスロットダイコートが好ましい。
【0031】
塗布工程における熱硬化性易接着組成物の塗布量は、乾燥後の易接着層の厚さを考慮し、適宜設計すればよく、特に制限するものではないが、例えば、1g/m2~40g/m2である。乾燥後の易接着層の厚さは、例えば、0.01μm以上5μm以下であり、好ましくは0.03μm以上3μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上1μm以下であり、特に好ましくは0.05μm以上0.5μm以下である。
【0032】
[硬化工程]
硬化工程は、乾燥炉などによって、乾燥炉の内部に樹脂フィルムが搬送され、樹脂フィルム上の塗膜を加熱して乾燥させ、塗膜を熱硬化させて樹脂フィルム上に易接着層を形成する工程である。乾燥炉としては、公知のものを使用することができる。
【0033】
硬化工程における塗膜の乾燥温度は90℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。乾燥温度の上限は、樹脂フィルムや熱硬化性易接着組成物の種類に応じて適宜調整すればよく、特に制限するものではないが、例えば、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。乾燥温度が90℃以上であれば、塗膜を乾燥し、熱硬化性易接着組成物を硬化させることができる。一方、フェノール系化合物を含む熱硬化性易接着組成物は、熱硬化のために塗膜を90℃以上に加熱すると、硬化後の易接着層が変色し、赤味を呈することがある。この理由は定かではないが、フェノール系化合物が酸化により有色を示すキノン系化合物となることによるものと推測する。
【0034】
[照射工程]
照射工程は、樹脂フィルムの他方面側からバックロールで樹脂フィルムを支持した状態で、樹脂フィルムの一方面側から紫外線等の活性エネルギー線照射装置により、易接着層の表面に活性エネルギー線を照射する工程である。本発明においては、この照射工程により、硬化工程で発生した易接着層の変色(赤味)を抑制することができる。具体的には、硬化工程により変色した易接着層に紫外線等の活性エネルギー線を照射することで、易接着層の赤味が解消され透明となる。この理由は定かではないが、キノン系化合物のカルボニル基等が紫外線等の活性エネルギー線により活性化されてラジカルとなり、付加反応によってヒドロキノン系化合物等となることによるものと推測する。なお、照射工程は、易接着層の紫外線等の活性エネルギー線照射面が窒素パージ状態であってもよいが、易接着層の変色を抑制する観点から、窒素パージされていない状態(大気雰囲気下)、或いは酸素存在下であることが好ましい。易接着層の紫外線等の活性エネルギー線照射面における酸素濃度は100ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましい。
【0035】
活性エネルギー線としては、紫外線や電子線等が挙げられ、活性エネルギー線照射装置としては、公知のものを使用することができる。本発明においては、活性エネルギー線として、紫外線を用いることが好ましく、紫外線照射装置としては、例えば、紫外線LED、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極紫外線ランプ等が挙げられる。
【0036】
紫外線としては、発光スペクトルにおいて365nm付近の波長にメインピークをもつものが好ましい(ここで、365nm付近の波長とは360nm~370nmの波長のことをいい、メインピークとは100~400nmの波長で最も強い発光強度のことをいう)。
【0037】
照射工程における、易接着層の表面における紫外線の積算光量としては、300mJ/cm2以上であることが好ましく、550mJ/cm2以上であることがより好ましく、700mJ/cm2以上であることがさらに好ましく、900mJ/cm2以上であることが特に好ましい。易接着層の表面における紫外線の積算光量が上記範囲であれば、易接着層の変色(赤味)を十分に改善することができる。
【0038】
バックロールとしては、公知のものを使用することができる。バックロールの設定温度は、例えば、25℃以上75℃以下であることが好ましく、30℃以上60℃以下であることがより好ましい。バックロールの設定温度が上記範囲であれば、紫外線照射による温度上昇を効果的に抑制可能となるとともに、易接着層の変色を効果的に抑制することができる。
【0039】
[巻取工程]
巻取工程は、巻取装置によって作製された光学フィルムをロール状に巻き取る工程である。巻取装置としては、公知のものを使用することができる。
【0040】
搬送ロールは、長尺の樹脂フィルムを所定のテンションで繰出装置から、塗布装置、乾燥炉、活性エネルギー線照射装置、(バックロール)、巻取装置へ順に案内して搬送させるものであり、例えば、駆動ロール、ガイドロール、ダンサーロール等により構成される。樹脂フィルムの搬送速度は、特に制限するものではないが、例えば、1~50m/minである。
【0041】
本発明の製造方法により得られた光学フィルムは、他の塗工層を設ける際の乾燥時や、他の機能性フィルムとの貼合後の乾燥時など、易接着層が加熱された際においても変色することなく、透明性を維持することが可能となる。具体的には、本発明の製造方法により得られた光学フィルムは、紫外線照射後、再び加熱されても易接着層が変色(赤味)しないという特徴を有し、光学フィルムを90℃以上140℃以下のいずれかの温度で5分間加熱、好ましくは100℃で5分間加熱した前後におけるCIE1976色空間のa*値の変化が下記式(I)或いは下記式(II)を満たすことが好ましい。CIE1976色空間のa*値とは、分光色差計(測定条件:透過光、測定径φ15mm、観察視野2°、光源C)を用いてL*a*b*表色系を3点測定した際の平均値をいう。
(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.02・・式(I)
-0.15<(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.02・・式(II)
光学フィルムを90℃以上140℃以下のいずれかの温度で5分間加熱、好ましくは100℃で5分間加熱した前後におけるCIE1976色空間のa*値の変化の下限値は-0.10を超えることが好ましく、-0.05を超えることがより好ましい。
【0042】
なお、光学フィルムにおける易接着層の色相の変化は、易接着層が薄膜であるため、光学フィルムの単膜では定量的な評価がしづらいことがあるため、光学フィルムを複数枚重ねて評価してもよい。例えば、光学フィルムを5枚重ねて色相の加熱前後の変化を評価する場合、5枚重ねて積層された光学フィルムを90℃以上140℃以下のいずれかの温度で5分間加熱、好ましくは100℃で5分間加熱した前後におけるCIE1976色空間のa*値の変化が下記式(III)或いは下記式(IV)を満たすことが好ましい。
(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.10・・式(III)
-0.25<(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.10・・式(IV)
5枚重ねて積層された光学フィルムを90℃以上140℃以下のいずれかの温度で5分間加熱、好ましくは100℃で5分間加熱した前後におけるCIE1976色空間のa*値の変化の上限値は0.07未満であることが好ましく、0.05未満であることがより好ましく、下限値は-0.15を超えることが好ましく、-0.10を超えることがより好ましい。
【0043】
また、光学フィルムを10枚重ねて色相の加熱前後の変化を評価する場合、10枚重ねて積層された光学フィルムを90℃以上140℃以下のいずれかの温度で5分間加熱、好ましくは100℃で5分間加熱した前後におけるCIE1976色空間のa*値の変化が下記式(V)或いは下記式(VI)を満たすことが好ましい。
(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.40・・式(V)
-0.35<(加熱後の光学フィルムのa*値)-(加熱前の光学フィルムのa*値)<0.40・・式(VI)
10枚重ねて積層された光学フィルムを90℃以上140℃以下のいずれかの温度で5分間加熱、好ましくは100℃で5分間加熱した前後におけるCIE1976色空間のa*値の変化の上限値は0.20未満であることが好ましく、0.10未満であることがより好ましく、下限値は-0.25を超えることが好ましく、-0.15を超えることがより好ましい。
【0044】
本発明の製造方法により得られた光学フィルムは、光学部材としての機能を安定して発揮させる観点から、全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH 7000II)などを用いて測定することができる。
【0045】
本発明の製造方法により得られた光学フィルムのヘイズは、特に制限するものではないが、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH 7000II)などを用いて測定することができる
【0046】
本発明の製造方法によって得られた光学フィルムの総厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。光学フィルムの総厚みを上記範囲の下限値以上にすることにより、光学フィルムの機械的強度を高くできる。また、上限値以下にすることにより、光学フィルム全体の厚みを薄くできる。
【0047】
本発明の製造方法によって得られた光学フィルムにおける易接着層が形成されている表面と反対側の表面には、必要に応じて、各種の機能層が形成されていてもよい。機能層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着剤層、粘着剤層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層等が挙げられる。
【0048】
本発明の製造方法によって得られた光学フィルムは、例えば、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用前面板等である。本発明の製造方法によって得られた光学フィルムは、光学的に等方なフィルムであっても良く、光学的に異方性を有する(例えば、位相差のような複屈折を発現する)フィルムであっても良い。
【実施例0049】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
上述の一実施形態に係る製造方法により、光学フィルムを作製した。樹脂フィルムとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、製品名:U48)を準備した。熱硬化性易接着組成物として、アルコキシシラン加水分解重縮合物を100重量部とフェノール系酸化防止剤を1重量部含むものを準備し、固形分濃度が1.0%となるよう溶媒(IPA:BtOH=3:1の混合)で希釈した。樹脂フィルムの搬送速度は2.5m/minに設定し、塗布装置としてスロットダイコートを使用し、塗布量を9.1g/m2に設定し、乾燥後の易接着層の厚さを0.08μmとなるようにした。乾燥炉においては、乾燥温度を100℃に設定し、乾燥時間を2minとした。紫外線照射装置として無電極紫外線ランプ(へレウス株式会社製、Hバルブ)を使用し、発光スペクトルにおいて365nmの波長にメインピークを有する紫外線を易接着層の表面における積算光量が500mJ/cm2となるよう照射した。積算光量は紫外線測定機(へレウス株式会社製、マイクロキュア)で見積もった。
【0051】
(実施例2)
易接着層の表面における積算光量が670mJ/cm2となるよう紫外線の照射条件を変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で光学フィルムを作製した。
【0052】
(実施例3)
易接着層の表面における積算光量が1070mJ/cm2となるよう紫外線の照射条件を変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で光学フィルムを作製した。
【0053】
(実施例4)
乾燥炉の乾燥温度を140℃に変更したこと以外は、実施例2と同様の条件で光学フィルムを作製した。
【0054】
(実施例5)
乾燥炉の乾燥温度を140℃に変更したこと以外は、実施例3と同様の条件で光学フィルムを作製した。
【0055】
(実施例6)
易接着層における紫外線の照射面を窒素パージした状態(窒素雰囲気下、酸素濃度90ppm)に変更したこと以外は、実施例2と同様の条件で光学フィルムを作製した。
【0056】
(比較例1)
易接着層の表面に紫外線を照射しないように変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で光学フィルムを作製した。
【0057】
(比較例2)
乾燥炉の乾燥温度を140℃に変更したこと以外は、比較例1と同様の条件で光学フィルムを作製した。
【0058】
実施例、比較例で作成された光学フィルムについて、以下に示す評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0059】
<ヘイズ>
JIS K7136を参照し、ヘーズメーター(製品名:NDH 7000II、日本電色工業株式会社製)を用いてヘイズを測定した。
【0060】
<光線透過率>
JIS K7361-1を参照し、ヘーズメーター(製品名:NDH 7000II、日本電色工業株式会社製)を用いて光線透過率を測定した。
【0061】
<CIE1976色空間のa*値>
日本電色工業株式会社製分光色差計(型番:SE7700、測定条件:透過光、測定径φ15mm、観察視野2°、光源C)を用いL*a*b*表色系を3点測定し、その平均をa*値とした。
【0062】
<色味>
作製した光学フィルムのサンプル(320mm(TD方向)×50mm(MD方向))をTD方向に巻き回して光学フィルムロール(直径10mm)とし、光学フィルムロールが解けないよう光学フィルムの端部を粘着テープで固定した。次いで、光学フィルムロールの色味を目視にて評価した。評価基準は以下の通りである。
○:無色
△:うっすら赤味
×:赤味
××:赤味が濃い
【0063】
【0064】
表1に示すように、フェノール系化合物を含む熱硬化性易接着組成物を用いて樹脂フィルム上に易接着層を形成するに際し、易接着層の形成後、易接着層に紫外線等の活性エネルギー線を照射した実施例1乃至6の光学フィルムは、易接着層の変色が抑制され、透明性に優れる結果を示した。一方、フェノール系化合物を含む熱硬化性易接着組成物を用いて樹脂フィルム上に易接着層を形成するに際し、易接着層の形成後、易接着層に紫外線等の活性エネルギー線を照射しなかった比較例1及び2の光学フィルムは、易接着層が変色し、赤味を呈する結果を示した。
【0065】
次いで、実施例2及び比較例1の光学フィルムについて、以下に示す評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0066】
<CIE1976色空間のa*値の変化(加熱前後比較)>
実施例2及び比較例1の光学フィルムを恒温恒湿環境下(23℃、50%RH)にて1カ月間養生し、養生後の光学フィルムについてそれぞれ上記の測定方法によりCIE1976色空間のa*値を測定した。次いで、養生後の光学フィルムを熱風乾燥機にて100℃×5分間加熱し、加熱後の光学フィルムについてそれぞれ上記の測定方法によりCIE1976色空間のa*値を測定した。そして、加熱後の光学フィルムのa*値と養生後の光学フィルムのa*値との差を算出した。なお、実施例2及び比較例1の光学フィルムのa*値は、光学フィルムの単膜に加え、5枚重ね、10枚重ねの積層光学フィルムについてもそれぞれ以下の方法で測定した。
(積層光学フィルムの測定方法)
50mm×50mmにカットした光学フィルムを所定枚数積層したサンプルを中心部が繰りぬかれた(外形:60mm×60mm、繰りぬき箇所:35mm×35mm)2つの固定治具で挟み込み(固定治具/積層フィルム/固定治具)、繰りぬき箇所に分光色差計の測定光があたるよう測定機器にセットしてa*値を測定した。
【0067】
【0068】
表2に示す通り、恒温恒湿環境下(23℃、50%RH)に1ヵ月間養生した比較例1の光学フィルムは、易接着層の変色(赤味)が薄くなる結果を示し、実施例2の光学フィルムは易接着層の変色がほとんど変化しない結果を示した。しかしながら、これらの光学フィルムを熱風乾燥機にて100℃にて5分間加熱したところ、比較例1の光学フィルムは、易接着層が変色し、赤味を呈する結果を示した。この結果からも分かるように、フェノール系化合物を含む熱硬化性易接着組成物からなる易接着層は加熱により可逆的に変色するものであるが、硬化後の易接着層に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、易接着層の変色を不可逆的に抑制することができる。よって、本発明の光学フィルムは、他の塗工層を設ける際の乾燥時や、他の機能性フィルムとの貼合後の乾燥時など、易接着層が加熱された際においても変色することなく、透明性を維持することが可能となる。