(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030356
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】車輪ユニット
(51)【国際特許分類】
B60K 7/00 20060101AFI20230301BHJP
B60K 17/14 20060101ALI20230301BHJP
B60B 33/00 20060101ALI20230301BHJP
B60B 19/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B60K7/00
B60K17/14
B60B33/00 X
B60B19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135441
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】角戸 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 祐貴
【テーマコード(参考)】
3D042
3D235
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AA08
3D042BE01
3D042BE02
3D235AA28
3D235BB17
3D235BB18
3D235BB19
3D235CC42
3D235FF34
3D235GA02
3D235GA12
3D235GA59
3D235GB22
3D235GB32
3D235GB42
3D235HH37
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で車輪と車体の相対位置をアクティブに制御する車輪ユニットを提供する。
【解決手段】車輪ユニットは、車体に固定された車軸に、車軸と同軸に取り付けられた円環状のステータと、ステータの周囲に配置され、車軸の中心軸線を中心にして、ステータに対して回転する環状の第1のロータと、車軸に対して偏心した車輪に、車輪と同軸に固定されており、第1のロータの周囲に配置され、車輪の中心軸線を中心にして、第1のロータに対して回転する円環状の第2のロータとを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定された車軸に、前記車軸と同軸に取り付けられた円環状のステータと、
前記ステータの周囲に配置され、前記車軸の中心軸線を中心にして、前記ステータに対して回転する環状の第1のロータと、
前記車軸に対して偏心した車輪に、前記車輪と同軸に固定されており、前記第1のロータの周囲に配置され、前記車輪の中心軸線を中心にして、前記第1のロータに対して回転する円環状の第2のロータとを有する
ことを特徴とする車輪ユニット。
【請求項2】
前記第1のロータは、前記ステータと同心の内周面と、前記第2のロータと同心の外周面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車輪ユニット。
【請求項3】
前記ステータの端部と前記第1のロータの端部との間に配置され、前記ステータの端部と前記第1のロータの端部との間の隙間を閉塞して、前記ステータと前記第1のロータを保護する第1のカバー板と、
前記第1のロータの端部と前記第2のロータの端部の間に配置され、前記ステータの端部と前記第2のロータの端部との間の隙間を閉塞して、前記第1のロータと前記第2のロータを保護する第2のカバー板とをさらに有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車輪ユニット。
【請求項4】
前記第1のロータを回転させることにより、前記車輪に対して偏心した前記車軸を上下方向に変位させる第1のロータ駆動部と、
前記第2のロータを回転させることにより、前記車輪を回転させて前記車体を走行させる第2のロータ駆動部と、
前記車輪が走行する路面の状態を監視または予測するために使用される計測装置と、
前記計測装置の計測結果から得られた監視結果または予測結果に応じて、前記第1のロータ駆動部を制御する制御部とをさらに有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車輪ユニット。
【請求項5】
前記計測装置の計測結果から得られた監視結果または予測結果に応じて、前記第1のロータの回転を規制するブレーキをさらに有する
ことを特徴とする請求項4に記載の車輪ユニット。
【請求項6】
前記ステータは、前記第1のロータに励磁されて、車軸の周囲を回転可能であり、
前記ステータとともに車軸の周囲を回転する太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛み合う複数の遊星歯車と、
前記遊星歯車に噛み合う内歯歯車と、
前記内歯歯車を前記第1のロータに連結し、前記内歯歯車の回転を前記第1のロータに伝達して、前記第1のロータを回転させる連結部とをさらに有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車輪ユニット。
【請求項7】
前記ステータを回転させることにより、前記車輪に対して偏心した前記車軸を上下方向に変位させるステータ駆動部と、
前記第2のロータを回転させることにより、前記車輪を回転させて前記車体を走行させる第2のロータ駆動部と、
前記車輪が走行する路面の状態を監視または予測するために使用される計測装置と、
前記計測装置の計測結果から得られた監視結果または予測結果に応じて、前記ステータ駆動部を制御する制御部とをさらに有する
ことを特徴とする請求項6に記載の車輪ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自律走行ロボット等の車両が普及している。この種の車両において、車輪の接地を確保しながら荷重を各車輪へと分配するとともに、車体の安定的に水平に維持するなどの姿勢制御を可能にするため、車体姿勢制御装置としてばねを用いたサスペンション機構やアクチュエータを用いたアクティブサスペンション装置が搭載される場合がある。このアクティブサスペンション装置は、例えば、ピストン・シリンダ型の液圧式アクチュエータや、モータ等の電磁式アクチュエータを有し、車両の駆動輪付近にユニットとして搭載される場合が一般的である(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-030508号公報
【特許文献2】特開2014-189242号公報
【特許文献3】特開2009-255691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のアクティブサスペンション式の姿勢制御装置は、車体駆動用の構成部品(モータなどの動力源から車輪に回転を伝達する部品)とは別体であるため、この装置を車両に実装する場合、部品点数の増加や機構全体の複雑化を招く。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成で車輪と車体の相対位置をアクティブに制御する車輪ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、車輪ユニットを提供する。車輪ユニットは、車体に固定された車軸に、前記車軸と同軸に取り付けられた円環状のステータと、前記ステータの周囲に配置され、前記車軸の中心軸線を中心にして、前記ステータに対して回転する環状の第1のロータと、前記車軸に対して偏心した車輪に、前記車輪と同軸に固定されており、前記第1のロータの周囲に配置され、前記車輪の中心軸線を中心にして、前記第1のロータに対して回転する円環状の第2のロータとを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様においては、車軸に同軸に取り付けられたステータの周囲に配置された第1のロータを回転させることにより、車輪に対して偏心した車軸を上下方向に変位させ、サスペンションのように、車輪の接地を確保しながら、車輪と車体の相対位置をアクティブに制御することができる。複数の車輪と複数の車軸が設けられている場合、車体を所望の姿勢、例えば水平な姿勢に維持することができる。また、第1のロータの周囲に配置された第2のロータを回転させることにより、車輪を回転させて車体を走行させる。つまり、第1のロータをステータとして、第2のロータ、ひいては車輪を回転させる。したがって、従来の姿勢制御装置を備えた車輪ユニットと比較して部品点数が少なく、機構全体を単純化し、省スペース化を図ることができる。また、第1のロータは第2のロータをダイレクトドライブ方式で回転させることができ、騒音源となる減速機構を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の各実施形態に係る車輪ユニットを有する車両を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る車輪駆動ユニットの正面断面図である。
【
図3】車軸を上方に変位させた
図2の車輪駆動ユニットの正面断面図である。
【
図4】
図2の車輪駆動ユニットの側面断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る車輪ユニットを示すブロック図である。
【
図6】第2の実施形態に係る車輪駆動ユニットの側面断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る車輪駆動ユニットの正面図である。
【
図8】第3の実施形態に係る車輪駆動ユニットの側面断面図である。
【
図9】第4の実施形態に係る車輪駆動ユニットの側面断面図である。
【
図10】第5の実施形態に係る車輪駆動ユニットの側面断面図である。
【
図11】第5の実施形態に係る車輪ユニットを示すブロック図である。
【
図12】第6の実施形態に係る車輪駆動ユニットの側面断面図である。
【
図13】第6の実施形態に係る車輪ユニットを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0010】
車両
図1に示すように、本発明の各実施形態に係る車輪ユニットを有する車両1は、車体2、複数の車軸4、および複数の車輪6を有する。車軸4は車体2に固定されており、車輪6はそれぞれ車輪駆動ユニットを介して車軸4に回転可能に支持されている。各車輪6は、車輪駆動ユニットによって、車軸4に対して偏心した状態で、車軸4に取り付けられている。
【0011】
以下、各車輪6を支持し、回転させるユニットを「車輪駆動ユニット」と呼び、車両全体に設けられて、複数の車輪6のための複数の車輪駆動ユニットと、複数の車輪駆動ユニットを制御する制御システムを含むユニットを「車輪ユニット」と呼ぶ。
【0012】
図1において、車軸4の数は4であり、車輪6の数も4であるが、車軸4と車輪6の数は図示に限定されず、3または5以上であってよい。
【0013】
車両1は、例えば、自律走行ロボットでもよいし、同伴者が押すか操作する荷車、医療用ストレッチャーを支持する車両など、他の車両であってもよい。
【0014】
車両1は、矢印FRで示す方向に移動可能である。また、後述する車輪ユニットによって、車輪6に対する車軸4の高さが矢印UDで示すように変位可能である。
【0015】
第1実施形態
図2~
図4は、車輪駆動ユニットの基本構成を示す。
図2および
図3は、
図4のA-A線矢視断面図である。本願の
図4および他の側面断面図において、右側が車体2側であり、左側が車体2から離れた側である。
【0016】
図2~
図4に示すように、車輪駆動ユニット7は、円環状のステータ8と、環状の第1のロータ10と、円環状の第2のロータ12とを有する。
【0017】
円環状のステータ8は、車体2に固定された車軸4に、車軸4と同軸に取り付けられている。すなわち車軸4の中心軸線C1は、ステータ8の中心軸線でもある。この実施形態では、ステータ8は、車軸4に固定されており、回転しない。固定の方式としては、例えば締まり嵌めでもよいし、キーまたはスプラインによる連結でもよい。
【0018】
複数の永久磁石8aがステータ8の外周面に固定されている。永久磁石8aの数は図示に限定されない。
【0019】
環状の第1のロータ10は、ステータ8の周囲に配置され、車軸4の中心軸線C1を中心にして、ステータ8に対して回転する。
【0020】
円環状の第2のロータ12は、車軸4に対して偏心した車輪6に、車輪6と同軸に固定されている。第2のロータ12は、第1のロータ10の周囲に配置され、第2のロータ12と車輪6の中心軸線C2を中心にして、第1のロータ10に対して回転する。
【0021】
複数の永久磁石12aが第2のロータ12の内周面に固定されている。永久磁石12aの数は図示に限定されない。
【0022】
第1のロータ10は、ステータ8と同心の内周面10aと、第2のロータ12と同心の外周面10bを有する。複数の内側ティース10cが内周面10aから突出し、各内側ティース10cには内側コイル10dが巻かれている。複数の外側ティース10eが外周面10bから突出し、各外側ティース10eには外側コイル10fが巻かれている。
【0023】
内側コイル10dが通電によって励磁されると、矢印R1に示すように、車軸4の中心軸線C1を中心にして、ステータ8の周囲を第1のロータ10が回転する。外側コイル10fが通電によって励磁されると、第1のロータ10が第2のロータ12に対するステータとして機能し、矢印R2に示すように、第2のロータ12と車輪6の中心軸線C2を中心にして、第1のロータ10の周囲を第2のロータ12が回転する。
【0024】
図4に示すように、ステータ8には、その外周面と同心の外側突出環部8bが形成されている。軸受50が外側突出環部8bと第1のロータ10の内周面10aの間に配置されて、ステータ8に対する第1のロータ10の回転を可能とする。
【0025】
ステータ8には、第1の角度センサ34の固定部品34aが固定されており、第1のロータ10の内周面10aには第1の角度センサ34の回転部品34bが固定されている。第1の角度センサ34は、ステータ8に対する第1のロータ10の回転角度を計測する。第1の角度センサ34は、例えば光学式ロータリーエンコーダでもよく、レゾルバでもよい。
【0026】
また、第2のロータ12には、その内周面と同心の内側突出環部12bが形成されている。軸受52が内側突出環部12bと第1のロータ10の外周面10bの間に配置されて、第1のロータ10に対する第2のロータ12の回転を可能とする。
【0027】
第1のロータ10の外周面には、第2の角度センサ44の固定部品44aが固定されており、第2のロータ12の内周面には第2の角度センサ44の回転部品44bが固定されている。第2の角度センサ44は、第1のロータ10に対する第2のロータ12の回転角度を計測する。第2の角度センサ44は、例えば光学式ロータリーエンコーダでもよく、レゾルバでもよい。
【0028】
上記の車輪駆動ユニット7において、第1のロータ10の周囲に配置された第2のロータ12を矢印R2に示すように回転させることにより、車輪6を回転させて車体2を走行させる。つまり、第1のロータ10をステータとして、第2のロータ12、ひいては車輪6を回転させる。
【0029】
図2に示すように、車両1が水平で平坦な路面18を走行する場合には、ステータ8に対して第1のロータ10を静止させて、第1のロータ10に対して第2のロータ12を回転させてよい。
【0030】
他方、車軸4に同軸に取り付けられたステータ8の周囲に配置された第1のロータ10を回転させることにより、車輪6に対して偏心した車軸4を上下方向に変位させ、サスペンションのように、車輪6の接地を確保しながら、車輪6と車体2の相対位置をアクティブに制御することができる。複数の車輪6と複数の車軸4が設けられている車両1は、車体2を所望の姿勢、例えば水平な姿勢に維持することができる。
図3に示すように、車両1が上り坂を有する路面18を走行する場合には、ステータ8に対して第1のロータ10を回転させ、車輪6に対して車軸4を上方に変位させ、車輪6と路面18の接触を確保しながら、第1のロータ10に対して第2のロータ12を回転させてよい。図示しないが、車両1が下り坂を有する路面18を走行する場合には、ステータ8に対して第1のロータ10を回転させ、車輪6に対して車軸4を下方に変位させ、車輪6と路面18の接触を確保しながら、第1のロータ10に対して第2のロータ12を回転させてよい。
【0031】
以上の通り、車輪駆動ユニット7は、偏心2軸一体モータと呼ぶことができる。車輪駆動ユニット7は、従来の姿勢制御装置を備えた車輪ユニットと比較して部品点数が少なく、機構全体を単純化し、省スペース化を図ることができる。また、ステータ8は第1のロータ10をダイレクトドライブ方式で回転させることができ、第1のロータ10は第2のロータ12をダイレクトドライブ方式で回転させることができるので、騒音源となる減速機構が必要ない。
【0032】
第1のロータ10は、ステータ8と同心の内周面10aと、第2のロータ12と同心の外周面10bを有する。したがって、ステータ8に対して第1のロータ10が円滑に回転し、第1のロータ10に対して第2のロータ12が円滑に回転する。
【0033】
図5は、複数の車輪駆動ユニット7と、複数の車輪駆動ユニット7を制御する制御システムを含む車輪ユニット20を示す。車輪ユニット20は、メイン制御部21、メモリ22、RAM(Random Access Memory)24、計測装置26および複数の車輪駆動ユニット7を有する。メイン制御部21、メモリ22、RAM24、および計測装置26は、車体2に搭載されている。
【0034】
各車輪駆動ユニット7は、第1のロータ制御部30、第1の駆動回路32、第1のロータ10、第1の角度センサ34、第2のロータ制御部40、第2の駆動回路42、第2のロータ12および第2の角度センサ44を有する。
【0035】
メイン制御部21は、例えばCPUであり、メモリ22に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作し、車両1の走行に関する制御、具体的には、各車輪駆動ユニット7の第1のロータ制御部30および第2のロータ制御部40への指令を実行する。
【0036】
メモリ22は、メイン制御部21が準拠するコンピュータプログラムを記憶する。メモリ22は、例えばROM、ハードディスク、SSDである。
【0037】
RAM24は、メイン制御部21のワークエリアである。
【0038】
計測装置26は、車輪6が走行する路面の状態を監視または予測するために使用される。計測装置26は、例えば加速度センサの組み合わせ、またはIMU(慣性計測装置)であってよい。この場合、メイン制御部21は、計測装置26の計測結果に基づいて、現在の車輪6が走行する路面の状態の監視結果を計算する。あるいは、計測装置26は、レーザ光を利用するライダー装置、またはRGB-D(Red Green Blue - Depth)カメラであってもよい。この場合、メイン制御部21は、計測装置26の計測結果に基づいて、将来の車輪6が走行する路面の状態の予測結果を計算する。
【0039】
車輪駆動ユニット7において、第1のロータ制御部30は、メイン制御部21からの指令および第1の角度センサ34の計測結果に基づいて、第1のロータ10を回転させる第1の駆動回路32を制御する。第1の駆動回路32は、第1のロータ10を回転させるための内側コイル10dに給電する。第1のロータ制御部30と第1の駆動回路32は、第1のロータ10を回転させることにより、車輪6に対して偏心した車軸4を上下方向に変位させる第1のロータ駆動部を構成する。
【0040】
メイン制御部21は、計測装置26の計測結果から得られた監視結果または予測結果に応じて、各車輪駆動ユニット7の第1のロータ駆動部である第1のロータ制御部30を制御する。具体的には、監視結果または予測結果に基づいて、車両1が水平で平坦な路面を走行する場合には、メイン制御部21は、各車輪駆動ユニット7においてステータ8に対する第1のロータ10の回転を停止するように、各車輪駆動ユニット7の第1のロータ制御部30に指令を送る。この場合、各車輪駆動ユニット7の第1のロータ制御部30は、第1の角度センサ34の計測する第1のロータ10の回転角度がゼロになるように、第1の駆動回路32をフィードバック制御する。
【0041】
監視結果または予測結果に基づいて、車両1が上昇または下降する場合には、メイン制御部21は、車輪6を上昇または下降させるべき車輪駆動ユニット7のステータ8に対する第1のロータ10を回転させるように、その車輪駆動ユニット7の第1のロータ制御部30に指令を送る。この場合、その車輪駆動ユニット7の第1のロータ制御部30は、第1の角度センサ34の計測する第1のロータ10の回転角度を監視しながら、第1の駆動回路32をフィードバック制御する。このように、計測装置26の計測結果から得られた監視結果または予測結果に応じて、第1のロータ10を回転させ、車輪6に対して車軸4をアクティブに上昇または下降させることが可能である。したがって、車輪6が傾斜路や段差路を走行する場合であっても、車輪6と車体2の相対位置をアクティブに制御することができ、複数の車輪6と複数の車軸4が設けられている車両は、車体2を所望の姿勢、例えば水平な姿勢に維持することができる。
【0042】
また、路面に凹凸がある場合には、監視結果または予測結果から、メイン制御部21は、凹凸を適切に吸収するように各車輪6を頻繁に上昇および下降させるように、各車輪駆動ユニット7の第1のロータ制御部30に指令を送る。したがって、ショックアブソーバのように、車輪駆動ユニット7は路面から車体2に与えられる衝撃を吸収することができる。
【0043】
車輪駆動ユニット7において、第2のロータ制御部40は、メイン制御部21からの指令および第2の角度センサ44の計測結果に基づいて、第2のロータ12を回転させる第2の駆動回路42を制御する。第2の駆動回路42は、第2のロータ12を回転させるための外側コイル10fに給電する。第2のロータ制御部40と第2の駆動回路42は、第2のロータ12を回転させることにより、車輪6を回転させて車体2を走行させる第2のロータ駆動部を構成する。
【0044】
メイン制御部21は、コンピュータプログラムに従って、各車輪駆動ユニット7の第2のロータ駆動部である第2のロータ制御部40を制御する。具体的には、車両1が直線路を走行する場合には、メイン制御部21は、各車輪駆動ユニット7の第2のロータ12が等速回転するように、各車輪駆動ユニット7の第2のロータ制御部40に指令を送る。車両1が曲線路を走行する場合には、メイン制御部21は、各車輪駆動ユニット7の第2のロータ12が所望の速度で回転するように、各車輪駆動ユニット7の第2のロータ制御部40に指令を送る。各車輪駆動ユニット7の第2のロータ制御部40は、第2の角度センサ44の計測する第2のロータ12の回転角度から計算される回転速度がメイン制御部21に指令された回転速度に一致するように、第2の駆動回路42をフィードバック制御する。
【0045】
後述する他の実施形態に係る車輪ユニット20は、第1実施形態に係る車輪ユニット20の修正であり、特に断り書きがない限り、第1実施形態に係る車輪ユニット20と同じ構成要素を有する。
【0046】
第2実施形態
図6および
図7に示すように、本発明の第2実施形態に係る車輪駆動ユニット7においては、車輪駆動ユニット7の内部を保護する金属製のカバー板54,55,56,57が設けられている。
【0047】
車体2から離れた
図6の左側において、第1のカバー板54が、ステータ8の端部と第1のロータ10の端部との間に配置され、ステータ8の端部と第1のロータ10の端部との間の隙間を閉塞して、ステータ8と第1のロータ10と第1の角度センサ34と軸受50を保護する。
【0048】
車体2側である
図6の右側において、第1のカバー板56が、ステータ8の端部と第1のロータ10の端部との間に配置され、ステータ8の端部と第1のロータ10の端部との間の隙間を閉塞して、ステータ8と第1のロータ10を保護する。
【0049】
第1のカバー板54,56の外周縁は、第1のロータ10の内周面10aに固定されている。
図7に示すように、第1のカバー板54,56は、ステータ8と内周面10aの中心軸線C1を中心とする円板である。図示しないが、第1のカバー板54,56の内周縁に、ステータ8の外周面に対して摺動するゴム製のシール部材を固定してもよい。
【0050】
但し、第1のカバー板54,56の内周縁をステータ8の外周面に固定し、第1のカバー板54,56の外周縁に、第1のロータ10の内周面10aに対して摺動するゴム製のシール部材を固定してもよい。
【0051】
車体2から離れた
図6の左側において、第2のカバー板55が、第1のロータ10の端部と第2のロータ12との間に配置され、第1のロータ10の端部と第2のロータ12の端部との間の隙間を閉塞して、第1のロータ10と第2のロータ12と第2の角度センサ44と軸受52を保護する。
【0052】
車体2側である
図6の右側において、第2のカバー板57が、第1のロータ10の端部と第2のロータ12の端部との間に配置され、第1のロータ10の端部と第2のロータ12の端部との間の隙間を閉塞して、第1のロータ10と第2のロータ12を保護する。
【0053】
第2のカバー板55,57の内周縁は、第1のロータ10の外周面10bに固定されている。
図7に示すように、第2のカバー板55,57は、第2のロータ12と外周面10bの中心軸線C2を中心とする円板である。図示しないが、第2のカバー板55,57の外周縁に、第2のロータ12の内周面に対して摺動するゴム製のシール部材を固定してもよい。
【0054】
但し、第2のカバー板55,57の外周縁を第2のロータ12の内周面に固定し、第2のカバー板55,57の内周縁に、第1のロータ10の外周面10bに対して摺動するゴム製のシール部材を固定してもよい。
【0055】
この実施形態では、車輪駆動ユニット7の内部、例えば、第1のロータ10に設けられたティース10c,10eおよびコイル10d,10f、第1のロータ10を支持する軸受50、第2のロータ12を支持する軸受52などを外部の異物から保護することができる。
【0056】
第3実施形態
図8に示すように、第3実施形態に係る車輪駆動ユニット7は、第1のロータ10が2つの軸受50,58で支持され、第2のロータ12が2つの軸受52,60で支持されている。この実施形態では、第1のロータ10および第2のロータ12を強固に支持することができる。
【0057】
車体2側である
図8の右側において、ステータ8には、その外周面と同心の外側突出環8cが固定または一体形成されており、軸受58が外側突出環8cと第1のロータ10の内周面10aの間に配置されて、ステータ8に対する第1のロータ10の回転を容易にする。
【0058】
また、車体2側である
図8の右側において、第2のロータ12には、その内周面と同心の内側突出環12cが固定または一体形成されている。軸受60が内側突出環12cと第1のロータ10の外周面10bの間に配置されて、第1のロータ10に対する第2のロータ12の回転を容易にする。
【0059】
第4実施形態
図9に示すように、第4実施形態に係る車輪駆動ユニット7は、第2実施形態に関する特徴と第3実施形態に関する特徴をすべて有する。
【0060】
車体2側である
図9の右側において、第1のカバー板56が、ステータ8の端部と第1のロータ10の端部との間に配置され、ステータ8の端部と第1のロータ10の端部との間の隙間を閉塞して、ステータ8と第1のロータ10と軸受58を保護する。第2のカバー板57が、第1のロータ10の端部と第2のロータ12の端部との間に配置され、第1のロータ10の端部と第2のロータ12の端部との間の隙間を閉塞して、第1のロータ10と第2のロータ12と軸受60を保護する。
【0061】
第2実施形態に関する修正は、この実施形態にも適用可能である。
【0062】
第5実施形態
図10に示す第5実施形態に係る車輪駆動ユニット7は、第4実施形態の修正である。この実施形態では、第1のカバー板56の代わりに、永久磁石式電磁ブレーキ62が設けられている。永久磁石式電磁ブレーキ62は、車体2側である
図10の右側に配置されている。永久磁石式電磁ブレーキ62は、ヨーク64、ボス65、アーマチュア66およびスプリング67を有する。
【0063】
ヨーク64は、第1のカバー板56の代わりに、第1のロータ10に固定されている。ヨーク64は、第1のカバー板56と同様に、ステータ8の端部と第1のロータ10の端部との間に配置され、ステータ8の端部と第1のロータ10の端部との間の隙間を閉塞して、ステータ8と第1のロータ10と軸受58を保護する。また、ヨーク64の内部には、永久磁石64aとコイル64bが設けられている。
【0064】
ボス65は、円環であって、車軸4の車体2側の端部に、車軸4に対して摺動可能かつ回転不能に取り付けられている。取付の方式としては、例えばスプライン連結であってよい。ボス65にはアーマチュア66が固定されている。スプリング67は、ヨーク64とアーマチュア66の間に配置され、ヨーク64からアーマチュア66を離すバネ力をアーマチュア66とボス65に与える。
【0065】
コイル64bに通電すると、電磁力によって、アーマチュア66とボス65が、スプリング67のバネ力に抗してヨーク64に接近する。ボス65はステータ8に対して回転せず、ヨーク64は第1のロータ10に固定されている。したがって、ステータ8に対する第1のロータ10の回転が規制される。
【0066】
コイル64bの通電を停止すると、スプリング67のバネ力によって、アーマチュア66とボス65がヨーク64から離れる。したがって、ステータ8に対する第1のロータ10の回転が可能になる。
【0067】
好ましくは、ヨーク64の内周面と車軸4の外周面の間の隙間には、外部の異物から軸受58を保護するために、ゴム製の円筒状のシール部材68が配置される。シール部材68は、ヨーク64に固定されて、車軸4に対して摺動してもよいし、車軸4に固定されて、ヨーク64に対して摺動してもよい。
【0068】
図11は、この実施形態に係る車輪ユニット20を示すブロック図である。各車輪駆動ユニット7は、永久磁石式電磁ブレーキ62のコイル64bを有する。
【0069】
メイン制御部21は、計測装置26の計測結果から得られた監視結果または予測結果に応じて、第1のロータ10の回転を規制する永久磁石式電磁ブレーキ62のコイル64bへの通電を制御する。具体的には、監視結果または予測結果に基づいて、車両1が水平で平坦な路面を走行する場合には、メイン制御部21は、各車輪駆動ユニット7においてステータ8に対する第1のロータ10の回転を停止するように、各車輪駆動ユニット7の第1のロータ制御部30に指令を送る。また、この場合には、メイン制御部21は、各車輪駆動ユニット7においてステータ8に対する第1のロータ10の回転を停止するように、コイル64bに通電する。したがって、永久磁石式電磁ブレーキ62によって、ステータ8に対する第1のロータ10の回転が完全に停止され、車輪6に対する車軸4の高さを固定することができる。
【0070】
監視結果または予測結果に基づいて、車両1が上昇または下降する場合には、メイン制御部21は、車輪6を上昇または下降させるべき車輪駆動ユニット7のステータ8に対する第1のロータ10を回転させるように、その車輪駆動ユニット7の永久磁石式電磁ブレーキ62のコイル64bへの通電を停止し、第1のロータ制御部30に指令を送る。この場合、その車輪駆動ユニット7の第1のロータ制御部30は、第1の角度センサ34の計測する第1のロータ10の回転角度を監視しながら、第1の駆動回路32をフィードバック制御する。
【0071】
永久磁石式電磁ブレーキ62の代わりに、摩擦式ブレーキ、噛み合いブレーキなど、他のブレーキを使用してもよい。
【0072】
第6実施形態
図12は、第6の実施形態に係る車輪駆動ユニット7を示す。第1~第5実施形態に係る車輪駆動ユニット7では、ステータ8は車軸4に固定されているが、第6実施形態に係る車輪駆動ユニット7においては、ステータ8は、第1のロータ10に励磁されて、車軸4の周囲を回転可能である。
【0073】
また、第6実施形態に係る車輪駆動ユニット7は、遊星歯車機構70を有し、ステータ8の回転を第1のロータ10に伝達する。遊星歯車機構70は、車体2側である
図12の右側に配置されている。遊星歯車機構70は、太陽歯車72、複数の遊星歯車74、遊星キャリア76、および内歯歯車78を有する。
【0074】
太陽歯車72は、ステータ8とともに車軸4の周囲を回転する。太陽歯車72は、ステータ8に固定または一体形成された外側突出環8cに固定されている。
【0075】
複数の遊星歯車74は、車体2に固定された遊星キャリア76に支持された軸74aの周囲をそれぞれ回転可能であり、太陽歯車72に噛み合う。遊星キャリア76は固定されているので、車輪駆動ユニット7における遊星歯車74の位置は変化しない。
【0076】
内歯歯車78は、これらの遊星歯車74に噛み合う。内歯歯車78の一端には、円環状の連結部78aが設けられている。連結部78aは、内歯歯車78を第1のロータ10に連結し、内歯歯車78の回転を第1のロータ10に伝達して、第1のロータ10を回転させる。
【0077】
したがって、第1のロータ10に励磁されてステータ8が回転すると、太陽歯車72が回転し、その回転が遊星歯車74から内歯歯車78に伝達され、第1のロータ10が回転させられる。つまり、第1のロータ10は、ステータ8の回転のためのステータとして用いられ、ステータ8の回転が減速機構である太陽歯車72を通じて第1のロータ10に伝達され、最終的に第1のロータ10が回転させられる。減速機構である遊星歯車機構70が利用されるので、ステータ8を高速で回転させる必要があるが、ステータ8を駆動するトルクが小さくても、大きなトルクを第1のロータ10に与えて、車輪6に対して偏心した車軸4を上下方向に変位させることができる。
【0078】
図13は、この実施形態に係る車輪ユニット20を示す。この車輪ユニット20においては、各車輪駆動ユニット7は、第1のロータ制御部30と第1の駆動回路32の代わりに、ステータ制御部80とステータ駆動回路82を有する。但し、実質的には、ステータ制御部80とステータ駆動回路82は、第1のロータ制御部30と第1の駆動回路32と同じであり、直接的に回転させる対象が第1のロータ10ではなくステータ8であることが異なる。
【0079】
ステータ制御部80は、メイン制御部21からの指令および第1の角度センサ34の計測結果に基づいて、ステータ8ひいては第1のロータ10を回転させるステータ駆動回路82を制御する。ステータ駆動回路82は、ステータ8を回転させるため第1のロータ10の内側コイル10dに給電する。ステータ制御部80とステータ駆動回路82は、ステータ8ひいては第1のロータ10を回転させることにより、車輪6に対して偏心した車軸4を上下方向に変位させるステータ駆動部を構成する。
【0080】
メイン制御部21は、計測装置26の計測結果から得られた監視結果または予測結果に応じて、各車輪駆動ユニット7のステータ駆動部であるステータ制御部80を制御する。具体的には、監視結果または予測結果に基づいて、車両1が水平で平坦な路面を走行する場合には、メイン制御部21は、各車輪駆動ユニット7において第1のロータ10に対するステータ8の回転(ひいてはステータ8に対する第1のロータ10の回転)を停止するように、各車輪駆動ユニット7のステータ制御部80に指令を送る。この場合、各車輪駆動ユニット7のステータ制御部80は、第1の角度センサ34の計測する第1のロータ10の回転角度がゼロになるように、ステータ駆動回路82をフィードバック制御する。
【0081】
監視結果または予測結果に基づいて、車両1が上昇または下降する場合には、メイン制御部21は、車輪6を上昇または下降させるべき車輪駆動ユニット7の第1のロータ10に対するステータ8の回転(ひいてはステータ8に対する第1のロータ10の回転)を引き起こすように、その車輪駆動ユニット7のステータ制御部80に指令を送る。この場合、その車輪駆動ユニット7のステータ制御部80は、第1の角度センサ34の計測する第1のロータ10の回転角度を監視しながら、ステータ駆動回路82をフィードバック制御する。このように、計測装置26の計測結果から得られた監視結果または予測結果に応じて、ステータ8ひいては第1のロータ10を回転させ、車輪6に対して車軸4をアクティブに上昇または下降させることが可能である。したがって、車輪6が傾斜路や段差路を走行する場合であっても、車輪6と車体2の相対位置をアクティブに制御することができ、複数の車輪6と複数の車軸4が設けられている車両は、車体2を所望の姿勢、例えば水平な姿勢に維持することができる。
【0082】
また、路面に凹凸がある場合には、監視結果または予測結果から、メイン制御部21は、凹凸を適切に吸収するように各車輪6を頻繁に上昇および下降させるように、各車輪駆動ユニット7のステータ制御部80に指令を送る。したがって、ショックアブソーバのように、車輪駆動ユニット7は路面から車体2に与えられる衝撃を吸収することができる。
【0083】
修正例
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0084】
例えば、上記の実施形態では、ステータ8の周囲に磁石8aが配置され、第1のロータ10に内側コイル10dが配置されているが、ステータ8の周囲にコイルを配置し、第1のロータ10の内周面に磁石を配置してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 車両
2 車体
4 車軸
6 車輪
7 車輪駆動ユニット
8 ステータ
10 第1のロータ
10a 内周面
10b 外周面
12 第2のロータ
20 車輪ユニット
21 メイン制御部
26 計測装置
30 第1のロータ制御部(第1のロータ駆動部)
32 第1の駆動回路(第1のロータ駆動部)
40 第2のロータ制御部(第2のロータ駆動部)
42 第2の駆動回路(第2のロータ駆動部)
54,56 第1のカバー板
55,57 第2のカバー板
62 永久磁石式電磁ブレーキ
70 遊星歯車機構
72 太陽歯車
74 遊星歯車
78 内歯歯車
80 ステータ制御部(ステータ駆動部)
82 ステータ駆動回路(ステータ駆動部)