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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030379
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】部分放電検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20230301BHJP
   G01R 31/34 20200101ALI20230301BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135471
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭太
【テーマコード(参考)】
2G015
2G116
【Fターム(参考)】
2G015AA13
2G015BA02
2G015BA04
2G015BA06
2G015CA01
2G116BA01
2G116BB09
2G116BC02
2G116BD05
2G116BD06
2G116BD09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高圧ケーブルにコンデンサを直接取り付けることなく、部分放電の検出を図る。
【解決手段】部分放電検出装置15は、部分放電検出センサ60・波形分離器80・波形観測演算装置90を備える。このセンサ60は、高圧ケーブルと非接触に設置される銅製の平板型電極70と、平板型電極70に直列接続されたコンデンサCと、コンデンサCに直列接続されて接地された検出インピーダンスZとを備える。波形分離器80は、検出インピーダンスZで検出された信号を低周波成分の電圧波形と高周波成分の部分放電波形とに波形分離するHPF100・LPF200を備える。波形観測演算装置90は、波形分離器80で分離された電圧波形と部分放電波形とに基づいて部分放電パターンを取得する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の機器から発生する部分放電を検出する装置であって、
前記機器と電源とを結ぶ給電線と非接触の電極と、
前記電極に直列接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに直列接続されて接地された検出インピーダンスと、
前記検出インピーダンスで検出された信号を低周波成分の電圧波形と高周波成分の部分放電波形とに波形分離する波形分離器と、
前記波形分離器で分離された前記電圧波形と前記部分放電波形とに基づいて部分放電パターンを得る波形観察演算装置と、
を備えることを特徴とする部分放電検出装置。
【請求項2】
前記電極は、銅製の平板型に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の部分放電検出装置。
【請求項3】
前記電極は、前記機器から離れた位置に設置される
ことを特徴とする請求項1または2記載の部分放電検出装置。
【請求項4】
前記電極は、前記機器のフレームに吸着する磁石を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の部分放電検出装置。
【請求項5】
前記波形分離器は、ハイパスフィルタにより高周波成分の前記部分放電波形を抽出する一方、
ローパスフィルタにより低周波成分の前記電圧波形を抽出することを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の部分放電検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の回転機(高圧・低圧)/静止機器(高圧・低圧)などの機器から発生する部分放電を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機などでは、運転ストレスによって固定子巻線の絶縁層に亀裂や剥離などの劣化が生じるため、運転中の電圧により劣化箇所に部分放電が発生し、かかる部分放電を検出することにより絶縁の劣化状態を把握している。
【0003】
図1に基づき従来の部分放電検出装置を説明する。図1(a)は、結合コンデンサC(以下、コンデンサC)を部分放電検出手段に用いる一方、高電圧プローブ41,42,43を電圧検出手段に用いた部分放電検出装置を示している。
【0004】
ここでは電源ライン10と測定対象の機器(発電機など)20との間に3相(U,V,W)の給電線(例えば高圧ケーブル:以下、高圧ケーブルとする。)31,32,33が敷設されている。
【0005】
この各高圧ケーブル31,32,33は、高電圧プローブ41,42,43を介して接地される。また、各高電圧プローブ41,42,43で検出された電源電圧V-U,V-V,V-Wが計測器50へ出力される。
【0006】
各高圧ケーブル31,32,33は、コンデンサC(結合コンデンサ)と検出インピーダンスZを順に接地される。この各検出インピーダンスZで検出された信号U-pulse,V-pulse,W-pulseが計測器50へ出力される。
【0007】
計測器50は、高電圧プローブ41,42,43で検出された電源電圧V-U,V-V,V-Wおよび検出インピーダンスZで検出された信号U-pulse,V-pulse,W-pulseに基づいて高周波成分の部分放電波形と低周波成分の電圧波形とを分離する。図1(a)中では、電圧波形を正弦波として示し、部分放電波形を縦線として示している。
【0008】
このような部分放電検出装置は、電源電圧を計測する手段として高電圧プローブ41,42,43が必要となるため、配線が複雑化するおそれがある。そこで、特許文献1の部分放電検出装置は、コンデンサCを静電容量と抵抗成分との並列回路で構成し、図1(b)に示すように、高電圧プローブ41,42,43の省略を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-144078
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1(a)(b)の部分放電検出装置は、コンデンサCを高圧ケーブル31,32,33に直接接続されて使用されている。これは機器20の内部で発生する部分放電は、主に高圧ケーブル31,32,33側で発生し、かつ部分放電の発生個所から近く大きな部分放電信号が得られ易いといった理由による。
【0011】
しかしながら、機器20の運用開始後に取り付ける場合には運用を停止し、高圧ケーブル31,32,33の絶縁被膜を除去し、その後にコンデンサCを取り付け直さなければならず、機器20の運用を妨げるおそれがある。また、コンデンサCの取付後に高電圧に長時間耐えうる絶縁処理を再度施す必要があるため、作業工程が多く、さらにコスト高騰を生じるおそれもあった。
【0012】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、高圧ケーブルにコンデンサを直接取り付けることなく、部分放電を検出することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、測定対象の機器から発生する部分放電を検出する装置であって、
前記機器と電源とを結ぶ給電線と非接触の電極と、
前記電極に直列接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに直列接続されて接地された検出インピーダンスと、
前記検出インピーダンスで検出された信号を低周波成分の電圧波形と高周波成分の部分放電波形とに波形分離する波形分離器と、
前記波形分離器で分離された前記電圧波形と前記部分放電波形とに基づいて部分放電パターンを得る波形観察演算装置と、を備える。
【0014】
(2)本発明の一態様は、前記電極が銅製の平板型に形成されていることを特徴としている。
【0015】
(3)本発明の他の態様は、前記電極が前記機器から離れた位置に設置されることを特徴としている。
【0016】
(4)本発明のさらに他の態様は、前記電極が前記機器のフレームに吸着する磁石を備えることを特徴としている。
【0017】
(5)本発明のさらに他の態様は、前記波形分離器がハイパスフィルタにより高周波成分の前記部分放電波形を抽出する一方、
ローパスフィルタにより低周波成分の前記電圧波形を抽出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高圧ケーブルにコンデンサを直接取り付けることなく、部分放電を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は従来の部分放電検出装置(高電圧プローブあり)の接続構成図、(b)は同他例(高電圧プローブなし)の接続構成図。
図2】本発明の実施形態に係る部分放電検出装置の構成図。
図3】(a)は同部分放電検出センサの側面図、(b)は同底面図。
図4】実施例1の測定状態図。
図5】同 放電計測結果を示すグラフ。
図6】貫通型電極を用いた部分放電検出装置の構成図。
図7】同 測定状態図。
図8】実施例1の部分放電検出センサの設置バリエーションを示す平面図。
図9】実施例2の測定状態図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る部分放電検出装置を説明する。この部分放電検出装置は、測定対象となる機器の停止中(オフライン)だけでなく、同機器の運転稼働中(オンライン)にも部分放電を検出可能なオンライン部分放電検出装置として構成されている。なお、測定対象となる機器としては、例えば回転機(高圧・低圧)や静止機器(高圧・低圧)などが該当する。
【0021】
≪構成例≫
図2および図3に基づき前記部分放電検出装置の構成を説明する。ここでは図1(a)(b)と同じ構成は、同一の符号を用いて説明する。図2中の15は前記部分放電検出装置を示し、部分放電検出センサ60・波形分離器80・波形観測演算装置90を備えている。
【0022】
部分放電検出センサ60は、図3(a)(b)に示すように、機器20・電源間を結ぶ高圧ケーブル31,32,33と非接触に設置される平板型電極70と、コンデンサ(真空コンデンサ)Cとを備え、コンデンサCには検出インピーダンスZが直列接続されて接地されている。
【0023】
平板型電極70は、図3(b)に示すように、長方形状の平板に形成された電極本体72と、電極本体72の四隅に固定された磁石73とを備えている。この電極本体72は、「L(長辺:長手方向の長さ)=300mm×W(短辺:幅方向の長さ)=100mm×t(高さ:厚さ)=1.6mm」のサイズに形成されている。なお、電極本体72の寸法は、設置場所のスペースに鑑みて任意に設計してよいが、少なくともコンデンサCの取付寸法よりも大きくする。
【0024】
電極本体72の材質は、電気伝導性の良い金属であればよく、特に銅製が好ましい。また、電極本体72の表面には、例えば絶縁ワニスコートなどの塗装や絶縁材巻き付けなどで絶縁性・耐腐食性が付与されている。なお、前記各磁石73は、それぞれコンデンサCと反対側の表面に配置・固定されている。
【0025】
コンデンサCは、平板型電極71に直列接続され、高電圧に対する耐電圧を確保可能な仕様となっている。また、静電容量は、10~1000pFのいずれでもよいが、平板型電極71と高圧ケーブル31~33との間の静電容量を考慮して設定されるものとする。
【0026】
検出インピーダンスZは、抵抗と並列にアレスタ(サージアブソーバー)を組み合わせたアレスタ付きの構成とする。抵抗値は、後述のローパスフィルタ(LPF)200を介して入力した信号が波形観測演算装置90で判別できる値にする(例えば10kΩ~500kΩ)。
【0027】
波形分離器80は、ハイパスフィルタ(HPF)100と、ローパスフィルタ(LPF)200とを備える。HPF100によって部分放電波形のみを取り出す。カットオフ周波数は、周囲のノイズ環境によって調整する(例えばカットオフ周波数5MHz以上)。
【0028】
また、LPF200によって電圧信号(電圧波形)のみを取り出す。カットオフ周波数は、同様に周囲のノイズ環境によって調整する(例えばカットオフ周波数5MHz以下)。
【0029】
波形観測演算装置90は、分離した2波形を観測して合成し、部分放電パターンを得る。前述のカットオフ周波数5MHzは、周辺機器から伝搬してくる立ち上がり時間50ns/立下り時間50nsのインバータサージ電圧が繰り返し印加されると仮定した場合、その波形の周波数は5MHzであることから、この周波数帯域をノイズとして取り除くために決めた値である。
【実施例0030】
図4および図5に基づき前記部分放電検出装置15の実施例1を説明する。本実施例は、部分放電検出センサ60を用いた発電機20aの部分放電の検出実験を示している。
【0031】
具体的には、図4に示すように、発電機20aのロータR側(直結側D)と反対の反直結側D´に支持台300を設置し、支持台300上に平板型電極70およびコンデンサCを載置した。
【0032】
ここでは平板型電極70を反直結側D´のフレームFから「約200mm」の距離をおいて配置した。発電機20aは、あらかじめW相・V相の第一コイル(固定子コイル)でスロット放電が発生するように欠陥を作りこんでいる。この発電機20aを常規対地電圧にて運転し、オンラインにて部分放電を観測した(この時の放電電荷量はV相500pC・W相2000pCである。)。
【0033】
その結果、発電機20aの固定子で発生した部分放電信号と電圧波形は、平板型電極70を介して伝搬され、HPF100とLPF200とを介して部分放電信号と電圧波形に分離されて波形観測演算装置90に入力され、図5の部分放電パターンが得られた。
【0034】
図5の部分放電パターンでは、電圧は確認できないが、V相・W相の放電パターンを確認することができる。したがって、出力側の高圧部H(高圧ケーブル31,32,33)と非接触の平板型電極70を用いて発電機20aの部分放電を検出でき、これにより以下の効果が得られる。
【0035】
(1)すなわち、前記部分放電検出装置15によれば、従来のようにコンデンサCを高圧ケーブル31,32,33に直接接続することなく、部分放電を測定することができる。
【0036】
したがって、発電機20aの運用開始後に取り付ける場合に高圧ケーブル31,32,33の絶縁被膜を除去する必要がなく、またコンデンサCの取付後の絶縁処理も不要となる。これにより従来の取付作業を簡素化でき、コストの抑制を図ることができる。
【0037】
(2)図6および図7は、特願2020-124889号の部分放電検出装置を示している。この装置16は、部分検出センサ61の貫通型電極71内に高圧ケーブル31,32,33の導体を挿通することで前記絶縁被膜の除去およびコンデンサCの取付後の絶縁処理を不要としている。
【0038】
しかしながら、貫通型電極71内に前記導体を挿通する必要があるため、従来と同様に発電機20aの運用開始後に取り付ける際には、その運用を停止なければならない。
【0039】
これに対して前記部分放電検出装置15は、高圧ケーブル31,32,33と非接触の平板型電極70を用いるため、フレームFと離して設置できる。そのため、発電機20aの運用停止を伴わずに部分放電を検出でき、この点で発電機20aの運用を妨げることなく、簡便に検出可能な利点がある。
【0040】
(3)平板型電極70は、フレームFと「約200mm」以内に設置すればよいので、図8中の矢印P1~P5に示すように、フレームFの周囲の任意位置に配置することができる(P1は図4の位置)。
【0041】
したがって、前記部分放電検出装置15によれば、平板型電極70の配置位置が限られた環境下でも発電機20aの部分放電を検出することが可能となる。
【実施例0042】
図9に基づき前記部分放電検出装置15の実施例2を説明する。ここでは部分放電検出センサ60の平板型電極70は、磁石73の吸着により発電機20aの側面フレームF1の表面に着脱自在に取り付けられている。
【0043】
したがって、平板型電極70を実施例1よりも発電機20aの近傍に設置でき、検出感度を向上させることが可能となる。また、平板型電極70は、フレームFに直接取り付けられるため、支持台300などの支えが不要となる。この点で必要資材を簡素化でき、また設置作業の労力を軽減する効果も得られる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えば、実施例1の支持台300を用いる場合には平板型電極70の構成に磁石を設けなくともよい。
【0045】
また、実施例2の磁石73だけでなく、両面テープなどの他の手段を用いて側面フレームF1に平板型電極70を直接取り付けてもよい。さらに部分放電検出センサ60の電極は、高圧ケーブル31,32,33と非接触であればよく、平板型電極70に限定されないものとする。
【符号の説明】
【0046】
15…部分放電検出装置
20a…発電機
31,32,33…高圧ケーブル(給電線)
60…部分放電検出センサ
70…平板型電極
72…電極本体
73…磁石
80…波形分離器
80…波形観測演算装置
100…ハイパスフィルタ(HPF)
200…ローパスフィルタ(LPF)
300…支持台
C…コンデンサ
D…直結側
D´…反直結側
F…フレーム
F1…側面フレーム
R…ロータ(回転子)
S…ステータ(固定子)
Z…検出インピーダンス(アレスタ付き)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9