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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003039
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】ファイル
(51)【国際特許分類】
   B42F 7/00 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
B42F7/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103959
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】神 教雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕二
【テーマコード(参考)】
2C017
【Fターム(参考)】
2C017QA06
2C017QB03
(57)【要約】
【課題】収納部を構成する前側シート及び後側シートの相対移動を適切に案内することにより、前側シート及び後側シートの双方が好適な二つ折り姿勢を採り得るように構成されたファイルを提供する。
【解決手段】前側シートであるベースシート4及び後側シートである表紙1を含んで構成された二つ折り可能な収納部spを有したファイルであって、二つ折りしたときの少なくとも第一の片半部であるベースシート右片半部42及び裏表紙12の相対移動を許容するガイド機構(第一のガイド機構G1・第二のガイド機構G2)が設けられている。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側シート及び後側シートを含んで構成された二つ折り可能な収納部を有したファイルであって、
二つ折りしたときの少なくとも第一の片半部において前記前側シート及び前記後側シートの相対移動を許容するガイド機構が設けられたファイル。
【請求項2】
前記ガイド機構が、前記前側シート及び前記後側シートにおける何れか一方に直接又は間接的に設けられたスリットと、他方に直接又は間接的に設けられ前記スリットに挿入される舌片である請求項1記載のファイル。
【請求項3】
前記ガイド機構が、前記後側シートに固定され前記前側シートにおける上縁部に係合し得る折り曲げ部分を有した第三のシートである請求項1記載のファイル。
【請求項4】
前記前側シート及び後側シートにおける第二の片半部同士が相互に固定されている請求項1、2又は3記載のファイル。
【請求項5】
前記前側シートが、前記第二の片半部である左前側シート部分と前記第一の片半部である右前側シート部分とを備えたものであり、
前記後側シートが、前記第一の片半部である裏表紙と前記第二の片半部である表表紙とを備えた表紙である請求項4記載のファイル。
【請求項6】
前記ガイド機構が、前記右前側シート部分に設けられたスリットと、前記裏表紙に固定された第三のシートに設けられ前記スリットに挿入される舌片とを備えたものである請求項5記載のファイル。
【請求項7】
前記前側シートが、前記後側シートを構成する表紙よりも上下寸法が短く設定されたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載のファイル。
【請求項8】
前記収納部が二つ折りされない展開姿勢と、前記収納部が二つ折りされた閉じ姿勢との間で開閉可能に構成されたものであって、
前記相対移動が、前記展開姿勢と前記閉じ姿勢との間の姿勢変更に伴ってなされる左右方向の移動である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類を収容し得るファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から前側シート及び後側シートを含んで構成された二つ折り可能な収納部を有したファイルが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この種のファイルは、前側シートにおける左の片半部の下端部及び右の片半部の下端部が、それぞれ後側シートにおける左の片半部及び右の片半部に対して固定された構成をなしている。
【0004】
開発者らは、ファイルを二つ折りしたときの少なくとも何れか一方の片半部において、前側シート及び後側シートの相対移動を所定の方向に適切に案内することができれば、前側シート及び後側シートの双方が好適な二つ折り姿勢を採り得るものとなることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3210499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、収納部を構成する前側シート及び後側シートの相対移動を適切に案内することにより、前側シート及び後側シートの双方が好適な二つ折り姿勢を採り得るように構成されたファイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0008】
請求項1に記載の発明は、前側シート及び後側シートを含んで構成された二つ折り可能な収納部を有したファイルであって、二つ折りしたときの少なくとも第一の片半部において前記前側シート及び前記後側シートの相対移動を許容するガイド機構が設けられたファイルである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記ガイド機構が、前記前側シート及び前記後側シートにおける何れか一方に直接又は間接的に設けられたスリットと、他方に直接又は間接的に設けられ前記スリットに挿入される舌片である請求項1記載のファイルである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記ガイド機構が、前記後側シートに固定され前記前側シートにおける上縁部に係合し得る折り曲げ部分を有した第三のシートである請求項1記載のファイルである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記前側シート及び後側シートにおける第二の片半部同士が相互に固定されている請求項1、2又は3記載のファイルである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記前側シートが、前記第二の片半部である左前側シート部分と前記第一の片半部である右前側シート部分とを備えたものであり、前記後側シートが、前記第一の片半部である裏表紙と前記第二の片半部である表表紙とを備えた表紙である請求項4記載のファイルである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記ガイド機構が、前記右前側シート部分に設けられたスリットと、前記裏表紙に固定された第三のシートに設けられ前記スリットに挿入される舌片とを備えたものである請求項5記載のファイルである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記前側シートが、前記後側シートを構成する表紙よりも上下寸法が短く設定されたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載のファイルである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記収納部が二つ折りされない展開姿勢と、前記収納部が二つ折りされた閉じ姿勢との間で開閉可能に構成されたものであって、
前記相対移動が、前記展開姿勢と前記閉じ姿勢との間の姿勢変更に伴ってなされる左右方向の移動である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のファイルである。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、収納部を構成する前側シート及び後側シートの相対移動を適切に案内することにより、前側シート及び後側シートの双方が好適な二つ折り姿勢を採り得るように構成されたファイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示す展開姿勢の正面図。
図2】同実施形態における閉じ姿勢の左側面図。
図3図1におけるX-X線概略端面図。
図4図1におけるY-Y線概略端面図。
図5図2におけるU-U線概略端面図。
図6図3におけるZ部分拡大図。
図7図4におけるV部分拡大図。
図8図5におけるW部分拡大図。
図9】同実施形態の構成部材(表紙)を説明するための展開状態の正面図。
図10】同実施形態の構成部材(一枚のシート・後仕切りシート・前仕切りシート)を説明するための展開状態の正面図。
図11】同実施形態の構成部材(ベースシート)を説明するための展開状態の正面図。
図12】同実施形態の構成部材(ポケットシート)を説明するための展開状態の正面図。
図13】同実施形態の構成部材(保持シート)を説明するための展開状態の正面図。
図14】同実施形態における一使用例を説明するための展開姿勢の正面図。
図15】同実施形態におけるガイド機構の状態を説明するための部分拡大正面図。
図16】他の実施形態である前側シートと後側シートを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図1~15を参照して説明する。なお、図中において、溶着部分(溶着部)には符号yを付している。また、明細書中の左右・上下は、説明の都合上便宜的に示しているものである。
【0019】
この実施形態は、本発明を、用紙等の書類Pを収容し得る二つ折り可能な収納部spが設けられたファイルに適用したものである。
【0020】
ファイルは、前側シートであるベースシート4と、ベースシート4よりも後側に位置する後側シートである表紙1を含んで構成された二つ折り可能な収納部spを有したものである。
【0021】
ファイルは、収納部spが二つ折りされない展開姿勢(T)と、収納部spが二つ折りされた閉じ姿勢(F)との間で開閉動作可能に構成されている。すなわち、ファイルは、表表紙11及び裏表紙12を有する表紙1を備え、表表紙11及び裏表紙12が略面一をなすように展開し得る見開き姿勢である展開姿勢(T)と、表表紙11及び裏表紙12の各内面同士が対面し得るように略平行をなす閉じ姿勢(F)との間で左右方向中央部を回転中心として回転可能に構成されている。
【0022】
ファイルは、左片半部である表表紙11及び右片半部である裏表紙12を有した表紙1と、表紙1の前側に配された複数すなわち前後二枚の仕切りである前仕切りシート3及び後仕切りシート2と、前仕切りシート3の前側に配されたベースシート4と、ベースシート4における左片半部であるベースシート左片半部41の前側に配設され当該ベースシート左片半部41と協働して物品を収容可能なポケットを形成し得るポケットシート5と、ベースシート4における右片半部であるベースシート右片半部42の前後を覆うように配設され当該ベースシート右片半部42を上下方向の移動を抑制しつつ左右方向に相対移動可能に保持する保持シート6を備えている。
【0023】
ファイルには、前側シートの片半部であるベースシート右片半部42を、後側シートの片半部すなわち裏表紙12に対して所定方向に相対移動可能にガイドするガイド機構たる第一、第二のガイド機構G1、G2が設けられている。
【0024】
<表紙1>
表紙1は、全体として略横長矩形状をなしたものである。表紙1は、他のシート、すなわち、前仕切りシート3、後仕切りシート2、ベースシート4、ポケットシート5、及び、保持シート6よりも厚みのあるシート材により作られている。
【0025】
表紙1は、展開姿勢(T)において左側に位置した略縦長矩形状をなす表表紙11と、展開姿勢(T)において右側に位置した略縦長矩形状をなす裏表紙12と、表表紙11と裏表紙12との間に介設されたヒンジ部である背表紙13を備えたものである。
【0026】
表表紙11の上縁部には、閉じ姿勢(F)において背表紙13に設けられたゴムバンドBが係合し得る凹み部11aが形成されている。また、表表紙11の上縁部には、後仕切りシート2の上端部に突設された後指掛け凸片21a、及び、前仕切りシート3の上端部に突設された前指掛け凸片31aに対応する位置を切り欠いた切欠部11bが形成されている。
【0027】
裏表紙12には、外面側に閉じ姿勢(F)を保持するためのゴムバンドBの両端部が既知の取付手段を介して取り付けられている。裏表紙12の上端部には、表表紙11と同様にゴムバンドBが係合し得る凹み部12aが形成されている。
【0028】
背表紙13は、その全体でヒンジ部を構成するものである。背表紙13は、上下方向に延びた左右一対の内折り線m1と、左右一対の内折り線m1の各外側に配された上下方向に延びた左右一対の外折り線m2とを備えている。背表紙13は、左右一対の内折り線m1の間に設けられた背表紙本体13aと、背表紙本体13aの両側部に設けられ内折り線m1と外折り線m2の間に位置する側端補助部13bとを備えている。
【0029】
<後仕切りシート2(仕切り)>
仕切りである後仕切りシート2は、表紙1の前に配設されている。後仕切りシート2は、全体として横長矩形シート状をなしている。後仕切りシート2は、展開姿勢(T)において左側に位置した略縦長矩形状をなす後仕切りシート左片半部21と、展開姿勢(T)において右側に位置した略縦長矩形状をなす後仕切りシート右片半部22と、後仕切りシート左片半部21と後仕切りシート右片半部22との間に介設されたヒンジ部である後仕切りシートヒンジ部23とを備えたものである。
【0030】
後仕切りシート左片半部21には、上端部に使用者が手指で摘みやすい形状をなした後指掛け凸片21aが突設されている。後仕切りシート左片半部21の下部には、表表紙11の内面側に溶着される固定片Cが突設されている。なお、固定片Cの構成については、後で詳述する。
【0031】
後仕切りシート右片半部22には、右端縁の下半部を後仕切りシートヒンジ部23側に凹ませた後の端凹部22aを備えている。後の端凹部22aは、背表紙13の右側端縁の下半部に溶着される保持シート6における右の被溶着片66や当該右の被溶着片66に隣設された右のマチ65との干渉を避けるために設けられている。
【0032】
後仕切りシートヒンジ部23は、上下方向に延び左右方向に略等間隔に設けられた中央の折り線n1、及び、左右の折り線n2を備えている。
【0033】
後仕切りシート2を構成する後仕切りシート右片半部22及び後仕切りシートヒンジ部23は、他のシートに直接及び間接的に固定されていない態様をなしている。換言すれば、後仕切りシート右片半部22及び後仕切りシートヒンジ部23は、後仕切りシート左片半部21を介して表紙1に溶着により固定されたものとなっている。
【0034】
<前仕切りシート3(仕切り)>
前仕切りシート3は、後仕切りシート2の前に配設されている。前仕切りシート3は、全体として横長矩形シート状をなしている。前仕切りシート3は、展開姿勢(T)において左側に位置した略縦長矩形状をなす前仕切りシート左片半部31と、展開姿勢(T)において右側に位置した略縦長矩形状をなす前仕切りシート右片半部32と、前仕切りシート左片半部31と前仕切りシート右片半部32との間に介設されたヒンジ部である前仕切りシートヒンジ部33とを備えたものである。
【0035】
前仕切りシート左片半部31には、上端部に使用者が手指で摘みやすい形状をなした前指掛け凸片31aが突設されている。なお、前指掛け凸片31aは、展開姿勢(T)における正面視において、後指掛け凸片21aに対して右側にずれた位置に設けられている。前仕切りシート左片半部31の下部には、固定片Cの形成に伴って打ち抜き孔Dが形成されている。
【0036】
前仕切りシート右片半部32には、右端縁の下半部を前仕切りシートヒンジ部33側に凹ませた前の端凹部32aを備えている。前の端凹部32aは、背表紙13の右側端縁の下半部に溶着される保持シート6の右の被溶着片66や当該右の被溶着片66に隣設された右のマチ65との干渉を避けるために設けられている。
【0037】
前仕切りシートヒンジ部33は、上下方向に延び左右方向に略等間隔に設けられた中央及び左右の折り線r1、r2を備えている。
【0038】
前仕切りシート3を構成する前仕切りシート右片半部32及び前仕切りシートヒンジ部33は、他のシートに直接及び間接的に固定されていない態様をなしている。換言すれば、前仕切りシート右片半部32及び前仕切りシートヒンジ部33は、前仕切りシート左片半部31に折曲部a1を介して連設された後仕切りシート左片半部21を介して表紙1に固定されたものとなっている。
【0039】
<前仕切りシート3及び後仕切りシート2を形成する一枚のシートA>
この実施形態のファイルは、仕切りである前仕切りシート3及び後仕切りシート2により空間を仕切られた収納部spを備えたものとなっている。
【0040】
仕切りである前仕切りシート3及び後仕切りシート2は、図10に示される一枚のシートAを、連設境界部である折曲部a1において折り曲げることにより前後に重なり合うように構成されている。そして、一枚のシートAにおける折曲部a1の近傍から切り起こされた固定片Cが、他のシートである表表紙11の内面に対して溶着されている。
【0041】
換言すれば、二つの仕切りである前仕切りシート3及び後仕切りシート2は、一枚のシートAを折曲部a1において折り曲げることにより、収納部sp内に設けられている。そして、一枚のシートAにおける折曲部a1の近傍から切り起こされた固定片Cが、他のシートである表表紙11における下部の内面に対して溶着により固定されている。
【0042】
固定片Cは、一枚のシートAを構成する前仕切りシート左片半部31及び後仕切りシート左片半部21の下端部間の双方に亘るように略コ字状をなす固定片形成用のスリットa2を形成することにより、後仕切りシート左片半部21側から切り起こし可能に設けられたものである。
【0043】
スリットa2は左右方向に直線状に延びた横スリット部a21と、横スリット部a21の両端から当該横スリット部a21に対して略直交する方向(後仕切りシート2の方向)に延びた縦スリット部a22とを備えている。横スリット部a21は前仕切りシート左片半部31に設けられており、縦スリット部a22は、前仕切りシート左片半部31及び後仕切りシート左片半部21に亘って設けられている。
【0044】
固定片Cの基端は、後仕切りシート左片半部21に配設されている。固定片Cには、基端よりも先端側に折曲部a1と略合致する高さに位置する固定片折曲部c1が設けられている。固定片Cは、固定片折曲部c1により折り曲げられて、それよりも先端側に位置する先端部分c2が上方に向かって延びた姿勢をなしている。固定片Cの先端部分c2は、ポケットシート5における下の被溶着片53を介して表表紙1の内面側に溶着されるようになっている。
【0045】
複数の仕切りである前仕切りシート3及び後仕切りシート2は、二つ折りされた収納部spの一方側たる左側に位置する前仕切りシート左片半部31及び後仕切りシート左片半部21と、他方側たる右側に位置する前仕切りシート右片半部32及び後仕切りシート右片半部22とを備えている。
【0046】
そして、この実施形態では、前仕切りシート3及び後仕切りシート2における各一方側の片半部間にのみ、すなわち、前仕切りシート左片半部31と後仕切りシート左片半部21との間にのみ折曲部a1が設けられており、各他方側の片半部である前仕切りシート右片半部32及び後仕切りシート右片半部22は互いに相対移動可能に配設されている。
【0047】
換言すれば、一枚のシートAは、前仕切りシート左片半部31と後仕切りシート左片半部21との間のみが折曲部a1を介して繋がっており、前仕切りシート右片半部32と後仕切りシート右片半部22との間は離間したものとなっている。
【0048】
なお、相対移動は、展開姿勢(T)と閉じ姿勢(F)との間の姿勢変更に伴ってなされる左右方向の移動である。
【0049】
<ベースシート4>
ベースシート4は、表表紙11に固定されたポケットシート5に対して溶着により固定されている。つまり、ベースシート左片半部41は、ポケットシート5を介して表表紙11に対して間接的に固定されている。
【0050】
ベースシート4の高さ寸法は、その上端部が表紙1、後仕切りシート2、及び、前仕切りシート3における上下方向中間部に位置する値に設定されている。より具体的には、ベースシート4は、表紙1、後仕切りシート2、及び、前仕切りシート3の略半分の高さに設定されている。
【0051】
ファイルは、前側シートであるベースシート4の高さを、後側シートである表紙1、後仕切りシート2、及び、前仕切りシート3の高さよりも低く構成したものとなっている。そのため、図14に一例を示すように、展開姿勢(T)において、ベースシート4の後に配された前仕切りシート3及び後仕切りシート2の各上半部を、収納部spに収納された収納物の確認等をするために、使用者の操作によって手前側に移動させることができるようになっている。
【0052】
ベースシート4は、前仕切りシート3の前に配設されている。ベースシート4は、展開姿勢(T)において左側に位置した略横長矩形状をなすベースシート左片半部41と、展開姿勢(T)において右側に位置した略横長矩形状をなすベースシート右片半部42と、ベースシート左片半部41とベースシート右片半部42との間に介設されたヒンジ部であるベースシートヒンジ部43と、ベースシート左片半部41の上端縁から一体に延設されたポケット蓋形成片44とを備えたものである。
【0053】
ベースシート左片半部41の左側端部には左の被溶着片45が延設されている。そして、左の被溶着片45は、表表紙11に溶着により固定されたポケットシート5の左側端部の内面(より具体的には、左のマチ54の内面)に溶着されている。ベースシート左片半部41の下端部は、表表紙11に溶着により固定されたポケットシート5の内面に添接又は近接するように配設されている。
【0054】
ベースシート右片半部42には、ベースシートヒンジ部43に近接した位置に上下方向に延びてなるスリットEが設けられている。スリットEには、保持シート6に突設された舌片67が挿入されるようになっている。スリットE及び舌片67は、ガイド機構たる第一のガイド機構G1を構成している。なお、スリットE及び舌片67は、保持シート6の前保持シート部61に前側から覆われた位置に設けられている。
【0055】
ベースシートヒンジ部43は、上下方向に延び左右方向に略等間隔に設けられた中央の折り線s1、及び、左右の折り線s2を備えている。
【0056】
ポケット蓋形成片44には、先端部に折り返し突片44aが突設されている。折り返し突片44aは、ポケットシート5に形成されたスリット51bに挿入されるようになっている。折り返し突片44aがスリット51bに挿入されると、ポケット蓋形成片44が、ポケットを閉じた姿勢に保持されるようになっている。折り返し突片44aは、ポケット蓋形成片44の内面側に沿うように折り返された状態でその基端部近傍がポケット蓋形成片44の内面に溶着されている。
【0057】
ベースシート4を構成するベースシート右片半部42及びベースシートヒンジ部43は、他のシートに対して直接及び間接的に固定されていない態様をなしている。換言すれば、ベースシート右片半部42及びベースシートヒンジ部43は、ポケットシート5に溶着したベースシート左片半部41を介して表紙1に固定されたものとなっている。
【0058】
<ポケットシート5>
ポケットシート5は、ベースシート左片半部41、及び、ベースシート左片半部41の上に突設されたポケット蓋形成片44と協働して、物品を収容し得るポケットを形成し得るものである。
【0059】
ポケットシート5は、透明のフィルムシートfsが配設され内部を視認可能な窓部51aと当該窓部51aの上に左右方向に延びるように設けられポケット蓋形成片44に設けられた折り返し突片44aが挿入し得るスリット51bとを有するポケットシート本体51と、ポケットシート本体51の下端縁から連設された下のマチ52と、下のマチ52の延出端から延設され表表紙11の下端部に溶着により固定される下の被溶着片53と、ポケットシート本体51の左側端縁から連設された左のマチ54と、左のマチ54の延出端から延設され表表紙11の左側端部に溶着により固定される左の被溶着片55と、ポケットシート本体51の右側端縁から連設された右のマチ56と、右のマチ56の延出端から延設されベースシート左片半部41の右側端部に溶着により固定される右の被溶着片57とを備えている。
【0060】
<保持シート6>
第三のシートである保持シート6は、ベースシート右片半部42を左右方向に相対移動可能に保持し得るものである。
【0061】
保持シート6は、ベースシート右片半部42の前に配設される前保持シート部61と、前保持シート部61の上縁部に折り返し部たる折り曲げ部分6aを介して連設されベースシート右片半部42の後及び前仕切りシート右片半部32の前に配設される後保持シート部62と、前保持シート部61の下端縁から連設された下のマチ63と、下のマチ63の延出端から延設され裏表紙12の下端部に溶着により固定される下の被溶着片64と、前保持シート部61の右側端縁から連設された右のマチ65と、右のマチ65の延出端から延設され裏表紙12の右側端部に溶着により固定される右の被溶着片66と、前保持シート部61の左側端縁から折り返し部67bを介して連設され前保持シート部61の後側に配設された舌片67を備えている。
【0062】
前保持シート部61には、左右方向に傾斜して延びてなるカード保持用のスリット61aが設けられている。
【0063】
舌片67は、前保持シート部61の内面側に沿うように折り返された状態でその基端部近傍が前保持シート部61の内面すなわち裏面に溶着されている。舌片67は、ベースシート右片半部42に設けられたスリットEに挿入され、ベースシート右片半部42の保持シート6に対する左右方向の相対移動を許容しつつ上下方向の移動を規制してベースシート右片半部42の姿勢を保持し得るものとなっている。
【0064】
舌片67における突出端の上部にはスリットEの開口縁に係わり合うことによりスリットEからの舌片67の抜け出しを抑制する突起67aが設けられている。舌片67の突起67aは、ベースシート右片半部42が閉じ姿勢(F)を採る際における舌片67に対する右方向への相対移動の限界位置を規定し得るものとなっている。
【0065】
<第一のガイド機構G1・第二のガイド機構G2(ガイド機構)>
第一、第二のガイド機構G1、G2は、収納部spが二つ折りされない展開姿勢(T)と収納部spが二つ折りされた閉じ姿勢(F)との間の姿勢変更に伴ってなされる後側シートにおける第一の片半部である裏表紙12に対する前側シートにおける第一の片半部であるベースシート右片半部42の左右方向の相対移動を当該ベースシート右片半部42の上下方向のずれ動きを抑制しつつ案内し得るものである。
【0066】
なお、前側シート及び後側シートにおける第二の片半部同士、すなわち、表表紙11とベースシート左片半部41とはポケットシート5を介して相互に固定されている。換言すれば、表表紙11とベースシート左片半部41とは、左右方向に相対移動が殆どできない構成をなしている。
【0067】
第一のガイド機構G1は、前側シートであるベースシート4におけるベースシート右片半部42に設けられたスリットEと、後側シートの右片半部である裏表紙12に保持シート6を介して間接的に設けられベースシート右片半部42に形成された上下方向に延びたスリットEに挿入されて左右方向に進退動作可能な舌片67により構成されている。
【0068】
第二のガイド機構G2は、後側シートである表紙1の右片半部である裏表紙12に溶着により固定された第三のシートである保持シート6を有し、当該保持シート6の前保持シート部61と後保持シート部62との間に形成された折り曲げ部分6aに対して前側シートの右片半部であるベースシート右片半部42の上縁部jeが係合し得る構成をなしている。
【0069】
<ヒンジ部の相対位置>
表紙1には、二つ折りされた収納部spの一方側に位置する一方の片半部である表表紙11と他方側に位置する他方の片半部である裏表紙12との間に、複数の折曲線である内折り線m1及び外折り線m2を有したヒンジ部たる背表紙13が設けられている。
【0070】
後仕切りシート2には、二つ折りされた収納部spの一方側に位置する一方の片半部である後仕切りシート左片半部21と他方側に位置する他方の片半部である後仕切りシート右片半部22との間に複数の折曲線である中央の折り線n1及び左右の折り線n2を有したヒンジ部たる後仕切りシートヒンジ部23が設けられている。
【0071】
前仕切りシート3には、二つ折りされた収納部spの一方側に位置する一方の片半部である前仕切りシート左片半部31と他方側に位置する他方の片半部である前仕切りシート右片半部32との間に複数の折曲線である中央の折り線r1及び左右の折り線r2を有したヒンジ部たる前仕切りシートヒンジ部33が設けられている。
【0072】
ベースシート4には、二つ折りされた収納部spの一方側に位置する一方の片半部であるベースシート左片半部41と他方側に位置する他方の片半部であるベースシート右片半部42との間に複数の折曲線である中央の折り線s1及び左右の折り線s2を有したヒンジ部たるベースシートヒンジ部43が設けられている。
【0073】
本実施形態のファイルは、展開姿勢(T)において、背表紙13、後仕切りシートヒンジ部23、前仕切りシートヒンジ部33、及び、ベースシートヒンジ部43が、後から前にこの順序で配されている。そして、背表紙13、後仕切りシートヒンジ部23、前仕切りシートヒンジ部33、及び、ベースシートヒンジ部43が、展開姿勢(T)において相対的に偏移した位置に配設されている。
【0074】
より具体的に言えば、展開姿勢(T)の正面視において、ヒンジ部たる背表紙13よりも左側に偏移した位置にヒンジ部たる後仕切りシートヒンジ部23が配設されており、後仕切りシートヒンジ部23よりも左側に偏移した位置にヒンジ部たる前仕切りシートヒンジ部33が配設されており、前仕切りシートヒンジ部33よりも左側に偏移した位置にヒンジ部たるベースシートヒンジ部43が配設されている。
【0075】
換言すれば、ファイルは、前側シートにおける一方の片半部と他方の片半部との間に、複数の折曲線たる折り線を有した第一ヒンジ部(後仕切りシートヒンジ部23、前仕切りシートヒンジ部33、又は、ベースシートヒンジ部43)が設けられたものであり、後側シートにおける一方の片半部と他方の片半部との間に、複数の折曲線たる折り線を有した第二ヒンジ部(背表紙13、後仕切りシートヒンジ部23、又は、前仕切りシートヒンジ部33)が設けられたものである。そして、展開姿勢(T)の正面視にいて第二ヒンジ部よりも前に位置する第一ヒンジ部は、展開姿勢(T)の正面視において第一ヒンジ部よりも後に位置する第二ヒンジ部に対して左に偏移した位置に配設されている。
【0076】
また、背表紙13における左右の内折り線m1間の離間寸法、内折り線m1と外折り線m2との間の離間寸法、後仕切りシートヒンジ部23における中央の折り線n1と左右の折り線n2との離間寸法、前仕切りシートヒンジ部33における中央の折り線r1と左右の折り線r2との離間寸法、及び、ベースシートヒンジ部43における中央の折り線s1及び左右の折り線s2との離間寸法は、互いに異なるように設定されている。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係るファイルは、前側シートであるベースシート4及び後側シートである表紙1を含んで構成された二つ折り可能な収納部spを有したものである。そして、ファイルは、二つ折りしたときの少なくとも第一の片半部である右の片半部を構成するベースシート右片半部42及び裏表紙12の相対移動を許容するガイド機構たる第一、第二のガイド機構G1、G2が設けられたものである。
【0078】
このため、本実施形態であれば、第一、第二のガイド機構Gによる所定の方向への案内作用により、ベースシート右片半部42及び裏表紙12の相対移動が適切に案内され、ベースシート4及び表紙1の双方が好適な二つ折り姿勢を採り得るように構成されたファイルを提供することができるものとなる。
【0079】
第一のガイド機構G1が、ベースシート右片半部42に設けられたスリットEと、裏表紙12に対して保持シート6を介して間接的に設けられスリットEに挿入される舌片67である。
【0080】
このため、第一のガイド機構G1は、スリットEと舌片67との係わり合いによって、ベースシート右片半部42と裏表紙12との所定方向への相対移動を好適に案内し得るものとなっている。
【0081】
第二のガイド機構G2が、裏表紙12に固定されベースシート右片半部42における上縁部jeに係合し得る折り曲げ部分6aを有した第三のシートたる保持シート6である。
【0082】
このため、第二のガイド機構G2は、ベースシート右片半部42の上縁部jeと保持シート6の折り曲げ部分6aとの係わり合いによって、ベースシート右片半部42と裏表紙12との所定方向への相対移動を好適に案内し得るものとなっている。
【0083】
前側シートであるベースシート4及び後側シートである表紙1における第二の片半部同士たるベースシート左片半部41及び表表紙1が相互に固定されている。
【0084】
このため、収納部spが二つ折りされた場合であっても、ベースシート左片半部41及び表表紙1は一定の相対位置に安定的に保持されるものとなっている。
【0085】
前側シートであるベースシート4が、後側シートである表紙1よりも上下寸法が短く設定されたものである。
【0086】
このため、収納部spに収納される書類Pの閲覧性に優れたものとなっている。なお、この実施形態では、表紙1の前に当該表紙1と近似した高さ寸法をなしている後仕切りシート2及び前仕切りシート3が配設されている。そのため、収納部sp内を見るために展開姿勢(T)において後仕切りシート2及び前仕切りシート3の上下方向中間部を折り曲げて各仕切りシート2、3の上半部をベースシートの前側に位置させるような変形を柔軟に行うことができるものとなっている。
【0087】
収納部spが二つ折りされない展開姿勢(T)と、収納部spが二つ折りされた閉じ姿勢(F)との間で開閉可能に構成されたものであって、相対移動が、展開姿勢(T)と閉じ姿勢(F)との間の姿勢変更に伴ってなされる左右方向の移動である。
【0088】
そのため、使用者の自然な左右方向の開閉操作の方向に沿って、後側シートの片半部を構成する裏表紙12、表側シートの片半部を構成するベースシート右片半部42、及び、後側シート及び前側シートの何れかを構成するものとなる後仕切りシート右片半部22及び前仕切りシート右片半部32が左右方向に相対移動し得るものとなり、その左右方向の相対移動を第一、第二のガイド機構G1、G2が好適に案内し得るものとなっている。
【0089】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0090】
ガイド機構は、種々の構成を採り得ることは言うまでもない。
【0091】
例えば、ガイド機構は、図16に示すような構成のものであってもよい。
【0092】
図16に示すものは、ファイルに綴じられるホルダーである。ホルダーは収納部spに書類Pを挟んで保持し得るものである。ホルダーは、前側シートである前ホルダーシート7及び後側シートである後ホルダーシート8を含んで構成された上下方向中央部において二つ折り可能な収納部spを備えている。ホルダーは後ホルダーシート8の側端部に綴じ足挿通孔8aを有しており、図示しない綴じ足を配したファイル本体に支持されるものとなっている。
【0093】
前ホルダーシート7は、二つ折りされた収納部spの一方側である下に位置する前ホルダーシート下片半部71と他方側である上に位置する前ホルダーシート上片半部72とを備えたものである。後ホルダーシート8が、二つ折りされた収納部spの一方側である下に位置する後ホルダーシート下片半部81と他方側である上に位置する後ホルダーシート上片半部82とを備えたものである。
【0094】
前ホルダーシート下片半部71と後ホルダーシート下片半部81とが右側部に配設された溶着部y1において相互に固定されており、前ホルダーシート上片半部72と後ホルダーシート上片半部82とがガイド機構G3により所定の方向に相対移動可能に配設されている。
【0095】
前ホルダーシート上片半部72と後ホルダーシート上片半部82との間には、前ホルダーシート上片半部72及び後ホルダーシート上片半部82を相対移動可能にガイドするガイド機構G3が設けられている。ガイド機構G3は、前ホルダーシート上片半部72の側部に設けられた上下方向に延びたレール部72aと、後ホルダーシート上片半部82に設けられレール部72aを上下方向に相対移動可能に包持するレール包持部82aとを備えたものである。かかる構成ものであっても、所期の目的を達成することができるものとなる。
【0096】
ガイド機構が許容する相対移動の所定方向は、左右方向に限られるものではなく、上下方向であってもよい。
【0097】
ガイド機構は、二つ折りしたときの第一の片半部だけでなく第二の片半部にも設けられてよい。
【0098】
前側シート及び後側シートは、ベースシートや表紙に限られるものではないのはもちろんことである。
【0099】
ガイド機構が、前側シートに直的又は間接的に舌片が設けられ、後側シートに直接又は間接的に舌片が挿入されるスリットが設けられたものであってもよい。
【0100】
第三のシートは、保持シートに限られるものではなく、前側シートにおける上縁部に係合し得る折り曲げ部分を有したものであれば、どのようなものであってもよい。
【0101】
前側シート及び後側シートにおける第二の片半部同士が相互に固定されていないものであってもよい。
【0102】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…表紙(後側シート)
4…ベースシート(前側シート)
42…ベースシート右片半部(第一の片半部)
E…スリット
je…上縁部
6…保持シート
6a…折り曲げ部分
67…舌片
G1…第一のガイド機構(ガイド機構)
G2…第二のガイド機構(ガイド機構)
図1
図2
図3
図4
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