(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030404
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】荷役機器およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/12 20060101AFI20230301BHJP
B66C 19/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B66C13/12 Z
B66C19/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135514
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】柴田 尚人
(57)【要約】
【課題】燃料タンクの交換を比較的短時間で行うことができる荷役機器およびその制御方法を提供する。
【解決手段】上部水平桁2と、この上部水平桁2からワイヤロープ4により懸吊される吊具5とを備える荷役機器1の制御方法において、燃料を貯留する燃料タンク11と、この燃料タンク11が載置される載置台12と、燃料タンク11に連結されていて燃料を利用して発電を行う発電機構13とが予め荷役機器1に設置されていて、載置台12に載置されている燃料タンク11が吊具5により取り除かれて、その後、別の燃料タンク11が吊具5により載置台12に載置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部水平桁と、この上部水平桁からワイヤロープにより懸吊される吊具とを備える荷役機器において、
燃料を貯留する燃料タンクと、この燃料タンクが載置される載置台と、前記燃料タンクに連結されていて前記燃料を利用して発電を行う発電機構とを備えていて、
前記載置台に載置されている前記燃料タンクを別の前記燃料タンクに前記吊具により交換できることを特徴とする荷役機器。
【請求項2】
前記吊具が到達できる到達可能範囲と、前記吊具が到達できない到達不可能範囲との間で前記載置台を移動させる移動機構を備える請求項1に記載の荷役機器。
【請求項3】
前記移動機構が、前記載置台を水平方向に移動させる構成を有する請求項2に記載の荷役機器。
【請求項4】
前記載置台が底板とこの底板から立設されるガイド部材とを有していて、
前記移動機構が、前記ガイド部材を傾動させて前記ガイド部材の少なくとも一部を前記到達不可能範囲から前記到達可能範囲に移動させる請求項2または3に記載の荷役機器。
【請求項5】
前記吊具を使用して前記燃料タンクを吊り上げる際に、前記吊具と前記燃料タンクとの間に配置される補助吊具を備えていて、
前記吊具が到達できない到達不可能範囲に前記補助吊具の少なくとも一部が侵入可能であり、前記補助吊具が前記到達不可能範囲で前記燃料タンクを吊り上げ可能に構成される請求項1~4のいずれかに記載の荷役機器。
【請求項6】
前記載置台に載置されるとともに内側に前記燃料タンクおよび前記発電機構が設置される外殻構造体を備えていて、
前記載置台に載置されている前記外殻構造体を別の前記外殻構造体に前記吊具を使用して交換することで前記燃料タンクの交換を実現する請求項1~5のいずれかに記載の荷役機器。
【請求項7】
上部水平桁と、この上部水平桁からワイヤロープにより懸吊される吊具とを備える荷役機器の制御方法において、
燃料を貯留する燃料タンクと、この燃料タンクが載置される載置台と、前記燃料タンクに連結されていて前記燃料を利用して発電を行う発電機構とが予め前記荷役機器に設置されていて、
前記載置台に載置されている前記燃料タンクが前記吊具により取り除かれて、その後、別の前記燃料タンクが前記吊具により前記載置台に載置されることを特徴とする荷役機器の制御方法。
【請求項8】
前記吊具が到達できる到達可能範囲と前記吊具が到達できない到達不可能範囲との間で前記載置台を移動させる移動機構が予め前記荷役機器に設置されていて、
前記載置台に対する前記燃料タンクの除去または載置が前記吊具により行われる際に、前記移動機構が前記載置台を前記到達可能範囲に移動させて、
前記吊具による荷役作業が行われる際に、前記移動機構が前記載置台を前記到達不可能範囲に移動させる請求項7に記載の荷役機器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ等の荷役に使用される吊具を有する荷役機器に関するものであり、詳しくは荷役機器に設置されている燃料タンクを吊具により交換できる荷役機器およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷役機器である門型クレーンの構成が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1にはディーゼル発電機を備える門型クレーンの構成が開示されている。
【0003】
近年、門型クレーンが使用されるコンテナターミナルにおいて、二酸化炭素の排出量を抑制することが求められている。二酸化炭素の排出を抑制するために、発電機構を燃料電池で構成することが考えられる。
【0004】
燃料電池に燃料を供給する燃料タンクは、門型クレーンの例えばシルビームの上面など比較的高所に配置されることになる。燃料タンクの交換の際には燃料タンクを吊り上げるための自走式クレーンなど他の機器が必要となる。コンテナターミナルにおける通常の荷役作業では使用されない自走式クレーンを準備するとともに、燃料タンクの交換を必要としている門型クレーンの近傍まで走行させる必要がある。燃料タンクの交換には多くの時間や多くの人手が必要となる不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2014-189354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は燃料タンクの交換を比較的短時間で行うことができる荷役機器およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための荷役機器は、上部水平桁と、この上部水平桁からワイヤロープにより懸吊される吊具とを備える荷役機器において、燃料を貯留する燃料タンクと、この燃料タンクが載置される載置台と、前記燃料タンクに連結されていて前記燃料を利用して発電を行う発電機構とを備えていて、前記載置台に載置されている前記燃料タンクを別の前記燃料タンクに前記吊具により交換できることを特徴とする。
【0008】
上記の目的を達成するための荷役機器の制御方法は、上部水平桁と、この上部水平桁からワイヤロープにより懸吊される吊具とを備える荷役機器の制御方法において、燃料を貯留する燃料タンクと、この燃料タンクが載置される載置台と、前記燃料タンクに連結されていて前記燃料を利用して発電を行う発電機構とが予め前記荷役機器に設置されていて、前記載置台に載置されている前記燃料タンクが前記吊具により取り除かれて、その後、別の前記燃料タンクが前記吊具により前記載置台に載置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば荷役機器が予め備えている吊具を利用して燃料タンクを交換することができる。燃料タンクを吊り上げるための自走式クレーン等を別途用意する必要がないため、燃料タンクの交換を比較的短時間で行うには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】荷役機器である門型クレーンの概略を示す説明図である。
【
図2】
図1の門型クレーンを模式的に例示する説明図である。
【
図3】
図2の実施例において燃料タンクが交換される状態を例示する説明図である。
【
図4】移動機構を備える荷役機器を例示する説明図である。
【
図5】
図4の実施例において燃料タンクが交換される状態を例示する説明図である。
【
図6】ガイド部材を備える荷役機器を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、荷役機器およびその制御方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。図中では荷役機器の走行方向を矢印y、この走行方向を直角に横断する横行方向を矢印x、上下方向を矢印zで示している。
【0012】
図1および
図2に例示するように荷役機器1は例えば門型クレーンで構成される。門型クレーンは、上部水平桁2と、上部水平桁2に沿って横行可能に構成されるトロリ3と、トロリ3からワイヤロープ4により懸吊される吊具5とを備えている。門型クレーンは、コンテナターミナルに配置されていて、吊具5によりコンテナの荷役を行う。
【0013】
荷役機器1は門型クレーンに限定されず、荷役作業を行う機器が含まれる。具体的には岸壁クレーンやストラドルキャリアや天井クレーンなど、少なくとも上部水平桁2と吊具5を備えていればよい。荷役機器1がトロリ3を有さない機器で構成されてもよい。例えばストラドルキャリアはトロリ3を有さず、上部水平桁2に設置されるドラムからワイヤロープ4が繰り出されて、このワイヤロープ4で吊具5が懸吊される構成を有している。荷役機器1は、コンテナターミナルでコンテナの荷役を行う門型クレーン等の他、製鉄所で鉄鉱石などのバラ荷や鋼板やコイルなどを搬送する製品搬送用のクレーンで構成されてもよい。
【0014】
門型クレーンで構成される荷役機器1は、横行方向xに延設される上部水平桁2と、上部水平桁2の横行方向xにおける両端をそれぞれ支持する第一脚6および第二脚7とを備えている。第一脚6および第二脚7は上下方向zに延設される。荷役機器1は走行方向yに間隔をあけて配置される一対の上部水平桁2と、一対の第一脚6と、一対の第二脚7とを備えている。一対の第一脚6の下部には走行方向yに延設されて一対の第一脚6を連結する第一下部水平桁8が固定されている。一対の第二脚7の下部には走行方向yに延設されて一対の第二脚7を連結する第二下部水平桁9が固定されている。
【0015】
第一下部水平桁8および第二下部水平桁9の下方にはそれぞれ走行装置10が設置されている。荷役機器1は走行装置10により走行方向yに走行することができる。
【0016】
荷役機器1は、燃料を貯留する燃料タンク11と、燃料タンク11が載置される載置台12と、燃料タンク11にパイプで連結されていて燃料を利用して発電を行う発電機構13とを備えている。
【0017】
燃料タンク11は、例えば90MPaに加圧される水素ガスを貯留するタンクで構成される。燃料タンク11に貯留される燃料は、例えば水素燃料で構成される。水素燃料は水素ガスに限らず液体水素で構成されてもよい。本明細書において液体水素は、水素とトルエンとを化学反応させたメチルシクロヘキサンも含まれる。燃料タンク11に充填される燃料は、アンモニウムや水素化合物であってもよい。また燃料はメタンやエタンなど炭素数の比較的少ないアルカン(炭素数4以下)で構成されてもよい。燃料は、従来使用されているディーゼル燃料よりも二酸化炭素の排出量が少ない低炭素燃料で構成されていればよい。燃料タンク11は一つのタンクで構成されてもよく、例えばカードルのように複数のタンクを連結して形成される構造を有していてもよい。
【0018】
載置台12は、例えば横行方向xおよび走行方向yに延設される平板状の底板で構成される。載置台12は第一下部水平桁8の上面に配置されている。また載置台12は燃料タンク11の固定および固定解除を行う連結部を有していてもよい。
【0019】
発電機構13は、例えば水素ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池で構成される。発電機構13は燃料電池に限らず、水素を燃料とする水素エンジンと発電機との組み合わせで構成されてもよい。発電機構13は燃料タンク11に貯留されている燃料に合わせて調整される内燃機関と発電機との組み合わせで構成されてもよい。
【0020】
荷役機器1が、荷役作業や走行の制御を行う制御機構14を備えていてもよい。この実施形態では制御機構14はトロリ3に設置されている。制御機構14はトロリ3に限らず他の場所に設置されてもよい。コンテナターミナルに設置される管理棟など荷役機器1の外部に制御機構14が配置されて、荷役機器1は遠隔で制御される構成を有していてもよい。
【0021】
制御機構14は、荷役機器1に載置されていて水素燃料の残量が少なくなった燃料タンク11を、水素燃料が十分に充填されている別の燃料タンク11に交換する交換制御を行う構成を有していてもよい。
【0022】
次に燃料タンク11の交換方法について説明する。
図2に例示するように荷役機器1がコンテナ等の荷役作業を行う際には、燃料タンク11は載置台12に載置されている。荷役機器1は発電機構13で発生する電気を利用して、荷役作業を行う。燃料タンク11の中の水素燃料が少なくなったとき、荷役作業を中断して燃料タンク11の交換作業が行われる。
図2では説明のため燃料タンク11の背面側に配置されている発電機構13を破線で示している。
【0023】
まず燃料タンク11と発電機構13とを連結するパイプを閉止して、燃料タンク11と発電機構13との連結を分離する。また載置台12による燃料タンク11の固定が解除される。
【0024】
図3に例示するように荷役機器1がトロリ3を有する場合は、トロリ3が燃料タンク11の真上まで移動する。この実施形態では、従来の門型クレーンに比べて上部水平桁2が横行方向xに予め長く形成されていて、第一下部水平桁8の真上までトロリ3が移動可能に構成されている。
【0025】
吊具5を降下させて燃料タンク11を把持させるとともに、燃料タンク11を上方に吊り上げる。燃料タンク11の上面および吊具5は予め互いに連結可能な構成を有している。例えば吊具5がコンテナを荷役するスプレッダで構成される場合は、スプレッダと連結するための連結孔が燃料タンク11の上面に予め形成されている。吊具5がフックで構成される場合は、フックをかけるためのワイヤー等が燃料タンク11の上面に予め設置されている。
【0026】
荷役機器1の近傍で待機しているシャシ15に、トロリ3は燃料タンク11を載置させる。シャシ15は燃料タンク11を搬送する。このシャシ15は通常時に荷役作業で使用されているシャシを使用することができる。
図3では説明のため載置台12に載置される燃料タンク11と、シャシ15に載置される燃料タンク11とを破線で示している。また燃料タンク11が載置台12からシャシ15に搬送される経路を矢印で示している。
【0027】
次に別のシャシ15が水素燃料を充填された別の燃料タンク11を荷役機器1の近傍まで搬送してくる。吊具5はシャシ15に載置されている燃料タンク11を載置台12まで搬送する。燃料タンク11が搬送される経路は矢印で示されている。燃料タンク11が載置台12に固定されるとともに、発電機構13に連結される。新しく連結された燃料タンク11から水素燃料が発電機構13に供給される。
【0028】
以上で燃料タンク11の交換作業が完了する。交換作業が完了した荷役機器1は、荷役作業を再開することができる。
【0029】
荷役機器1に蓄電池が設置されている場合は、この蓄電池の電気を利用して交換作業の際のトロリ3や吊具5の移動が行われる。また発電機構13の内部の残っている燃料を使用して発電を行い、この電気を利用して交換作業を行ってもよい。
【0030】
荷役機器1が予め備えている吊具5を利用して燃料タンク11を交換することができる。燃料タンク11の交換を比較的短時間で行うことができる。
【0031】
燃料タンク11を交換するために自走式クレーンなど他の機器を用意する必要がない。荷役作業では使用されない自走式クレーン等の別種の機器がコンテナターミナルの中を走行すると、荷役作業を行っている荷役機器1の移動や作業に悪影響を及ぼす可能性がある。また自走式クレーン等の別種の機器を導入すると、その機器を取り扱う免許等を有する運転手や作業員を別途準備する必要がある。従来、門型クレーンに対してディーゼル燃料の供給を行っていた給油車も不要となる。
【0032】
本発明の荷役機器1は、コンテナを荷役する際の荷役作業とほぼ同等の作業で、燃料タンク11の交換作業を行うことができる。燃料タンク11の交換作業が、荷役作業に及ぼす影響がほとんどない。
【0033】
図4に例示するように荷役機器1を構成する従来の門型クレーンと同様に、トロリ3が燃料タンク11の真上まで移動できない構成であってもよい。荷役機器1は、吊具5が到達できる到達可能範囲S1と吊具5が到達できない到達不可能範囲S2との間で、載置台12を移動させる移動機構16を備えている。移動機構16は、例えば第一下部水平桁8と載置台12との間に設置される。
図4では到達可能範囲S1と到達不可能範囲S2とをそれぞれ一点鎖線で囲って示している。
【0034】
到達可能範囲S1は、荷役作業の際に吊具5が移動できる範囲を示している。この実施形態ではトロリ3は上部水平桁2の端部(
図4右側端部)まで移動できない構成である。そのため第一下部水平桁8の上方となる範囲には、吊具5は移動できない。燃料タンク11は吊具5が移動できない範囲である到達不可能範囲S2に配置されている。そのため荷役作業の際に吊具5が燃料タンク11と接触する不具合を回避できる。
【0035】
図5に例示するように燃料タンク11の交換作業の際には、移動機構16が例えば水平方向(横行方向x)に載置台12を移動させる。載置台12とともに燃料タンク11が到達不可能範囲S2から到達可能範囲S1に移動する。移動機構16は例えば横行方向xに沿って伸縮する油圧シリンダやエアシリンダなどの伸縮機構で構成される。移動機構16の構成はこれに限らず、載置台12を水平方向に移動可能とする構成を有していればよい。例えば移動機構16はラックアンドピニオン機構で構成されてもよい。
図5では説明のため載置台12の移動方向を矢印で示している。
【0036】
到達可能範囲S1に移動してきた燃料タンク11を、吊具5が把持して載置台12から分離させる。その後、荷役機器1の近傍で待機しているシャシ15に、吊具5は燃料タンク11を載置させる。
図5では説明のため燃料タンク11が搬送される経路を矢印で示している。
【0037】
シャシ15に燃料タンク11を載置させる際の経路上に載置台12がある場合は、移動機構16により載置台12を移動させる。
図5に例示する実施形態では、移動機構16が載置台12を到達不可能範囲S2に移動させた後に、吊具5を降下させることで、その下方で待機しているシャシ15に燃料タンク11が載置される。
【0038】
次に別のシャシ15が別の燃料タンク11を荷役機器1の近傍まで搬送してくる。吊具5はシャシ15に載置されている燃料タンク11を吊り上げて、到達可能範囲S1に移動してきている載置台12に燃料タンク11を載置する。移動機構16により載置台12とともに燃料タンク11は到達可能範囲S1から到達不可能範囲S2に移動する。
【0039】
交換作業の際に到達可能範囲S1に燃料タンク11を移動させることができる。そのため吊具5による燃料タンク11の交換が可能となる。荷役作業の際には到達不可能範囲S2に燃料タンク11を移動させることができる。荷役作業の際に吊具5が燃料タンク11に衝突する不具合を回避できる。燃料タンク11の設置にともない荷役作業に不便が生じることを回避できる。
【0040】
図6に例示するように載置台12が、横行方向xおよび走行方向yに延設される平板状の底板12aとこの底板12aから立設されるガイド部材12bとを有していてもよい。移動機構16は、例えば底板12aと第一下部水平桁8とを連結する油圧シリンダ等の伸縮シリンダで構成される。移動機構16は、走行方向yを中心軸として載置台12を傾動させる。この実施形態では横行方向xにおける底板12aの一端を中心として、載置台12が傾動する。載置台12の傾動にともないガイド部材12bの少なくとも一部が、到達可能範囲S1の内側に移動する。
図6では説明のため載置台12が傾動する方向を矢印で示している。また荷役作業の際の載置台12の位置、つまり移動機構16が作動していないときの載置台12の位置を破線で示している。荷役作業の際にはガイド部材12bの全体が到達不可能範囲S2に位置する状態となる。
【0041】
移動機構16は、ガイド部材12bの少なくとも一部を到達不可能範囲S2から到達可能範囲S1に移動させる構成を有していればよい。例えば移動機構16がガイド部材12bのみを傾動させる構成を有していてもよい。この場合、底板12aは面方向が水平面と平行となる姿勢を維持する。
【0042】
移動機構16は、載置台12を水平方向に移動させるとともに、傾動させる構成を有していてもよい。移動機構16は載置台12の少なくとも一部または燃料タンク11の全部を、到達可能範囲S1と到達不可能範囲S2との間で移動させる構成を有していればよい。
【0043】
図6に例示するように吊具5を降下させると、吊具5はガイド部材12bに接触して案内されて、燃料タンク11の上面に到達する。吊具5は、ガイド部材12bに案内されることで到達不可能範囲S2にある燃料タンク11を把持することが可能となる。
【0044】
水素燃料を充填された新しい燃料タンク11を載置台12に載置する際には、燃料タンク11を把持した吊具5を降下させる。燃料タンク11の底面がガイド部材12bに接触して案内される。ガイド部材12bに案内される燃料タンク11は、底板12aの上面に到達する。
【0045】
図7に例示するように燃料タンク11を吊り上げる際に、吊具5と燃料タンク11との間に配置される補助吊具17を荷役機器1が備えていてもよい。補助吊具17は少なくとも一部が到達不可能範囲S2に侵入可能に構成されている。また補助吊具17は、到達不可能範囲S2において燃料タンク11を荷役可能に構成されている。
図7では説明のため到達可能範囲S1と到達不可能範囲S2との境界を一点鎖線で示している。
【0046】
補助吊具17は例えば吊り天秤などの構造体で構成できる。補助吊具17は吊り下げている燃料タンク11を横行方向xに沿って移動させる構成、または吊具5に対して補助吊具17が横行方向xに移動する構成の少なくとも一方を有していてもよい。吊具5と補助吊具17と燃料タンク11との相対位置が固定される状態で交換作業が実施される構成であってもよい。
【0047】
荷役作業の際には吊具5から補助吊具17が除去された状態となる。そのため荷役作業中に吊具5が到達不可能範囲S2に侵入することがない。荷役作業の際に吊具5が燃料タンク11に衝突する不具合を回避するには有利である。交換作業の際に補助吊具17を利用することで、荷役機器1は到達不可能範囲S2において燃料タンク11を交換できる。
【0048】
荷役機器1は、補助吊具17または前述の移動機構16の一方のみを備える構成であってもよい。また荷役機器1は、補助吊具17と移動機構16との両方を備える構成であってもよい。
【0049】
図8に例示するように燃料タンク11と発電機構13とが外殻構造体18の内側に配置される構成を有していてもよい。燃料タンク11と発電機構13とは水素燃料を供給するためのパイプ19で連結されている。燃料タンク11は、枠体の内部に複数のガス容器が配置されていてガス容器どうしが配管等で連結されるカードルで構成されている。
【0050】
この実施形態では外殻構造体18が載置台12に載置される状態となる。燃料タンク11は外殻構造体18を介して間接的に載置台12に載置される。燃料タンク11の交換作業の際に、載置台12に載置されている外殻構造体18を別の外殻構造体18に交換する構成としてもよい。この場合、交換作業の際に燃料タンク11と発電機構13との両方が交換される。交換作業の際に、燃料タンク11と発電機構13とを連結するパイプ19の着脱が不要となる。パイプ19を連結する際にパイプ19の内部の酸素を水素または窒素に置換する置換作業が不要となる。交換作業に必要となる時間を短縮するには有利である。
【0051】
外殻構造体18は例えば20ftコンテナや40ftコンテナなどの金属製の箱体で構成される。荷役機器1がコンテナを荷役する門型クレーン等で構成される場合は、荷役作業と同等の作業で外殻構造体18の搬送を行える。交換作業に必要となる時間を短縮するには有利である。
【符号の説明】
【0052】
1 荷役機器
2 上部水平桁
3 トロリ
4 ワイヤロープ
5 吊具
6 第一脚
7 第二脚
8 第一下部水平桁
9 第二下部水平桁
10 走行装置
11 燃料タンク
12 載置台
12a 底板
12b ガイド部材
13 発電機構
14 制御機構
15 シャシ
16 移動機構
17 補助吊具
18 外殻構造体
19 パイプ
x 横行方向
y 走行方向
z 上下方向
S1 到達可能範囲
S2 到達不可能範囲