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特開2023-30411組電池システム及びエネルギー貯蔵システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030411
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】組電池システム及びエネルギー貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230301BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20230301BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20230301BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230301BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20230301BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20230301BHJP
   H01M 50/583 20210101ALI20230301BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20230301BHJP
   H01M 50/509 20210101ALI20230301BHJP
【FI】
H02J7/00 301E
H02J15/00 D
H02H7/18
H02J13/00 311A
H02J13/00 301A
H02J7/04 K
H02J7/00 302C
H02J7/02 F
H01M50/583
H01M50/50 201Z
H01M50/509
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135522
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 智行
(72)【発明者】
【氏名】山内 晋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智道
【テーマコード(参考)】
5G053
5G064
5G503
5H043
【Fターム(参考)】
5G053AA01
5G053AA14
5G053BA01
5G053BA06
5G053CA01
5G053EA09
5G053EB05
5G053EC01
5G064AC05
5G064AC08
5G064CB06
5G064CB10
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503BB02
5G503CC02
5G503DA07
5G503FA01
5G503GD02
5G503GD03
5H043AA04
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043CA21
5H043CA28
5H043FA02
5H043FA24
5H043GA02
5H043LA31F
5H043LA32F
(57)【要約】
【課題】DCDCコンバータを使用せず、電流を遮断した電池セルに高電圧が印加されるのを抑制する。
【解決手段】組電池システム10は、電源から供給される電流によって充電される複数の電池セル41が直列に接続された基本電池ユニット60を複数有し、複数の基本電池ユニット60を並列に接続した1又は複数の電池群61を備える組電池システム10であって、複数の電池セル41の各々は、電池セル41の電極間を流れる電流を遮断する電流遮断手段を有し、基本電池ユニット60の直列に接続された複数の電池セル41の直列数は、基本電池ユニット60の並列数、電源から供給される電流It、及び、電池セル41の抵抗成分Rに基づいて、決定される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される電流によって充電される複数の電池セルが直列に接続された基本電池ユニットを複数有し、前記複数の基本電池ユニットを並列に接続した1又は複数の電池群を備える組電池システムであって、
前記複数の電池セルの各々は、前記電池セルの電極間を流れる電流を遮断する電流遮断手段を有し、
前記基本電池ユニットにおいて直列に接続された前記複数の電池セルの直列数は、前記基本電池ユニットの並列数、前記電源から供給される電流、及び、前記電池セルの抵抗成分に基づいて、決定される、ことを特徴とする組電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記基本電池ユニットにおいて直列に接続された前記複数の電池セルの直列数は、以下の式に基づいて、決定される、ことを特徴とする組電池システム。
Ns<Th×(Np-1)/(It×R)
(Nsは、前記基本電池ユニットの直列に接続された前記複数の電池セルの直列数、Thは、電池セルの絶縁性能を示す値、Itは、前記電源から供給される電流、Npは、前記基本電池ユニットの並列数、Rは、前記電池セルの抵抗成分、である)
【請求項3】
請求項1において、前記電池セルの前記電流遮断手段によって電流が遮断されることによって発生するサージ電圧を吸収する吸収手段をさらに備える、ことを特徴とする組電池システム。
【請求項4】
請求項3において、前記吸収手段は、前記基本電池ユニットに並列に接続されたコンデンサ、バリスタ、ツェナーダイオード、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする組電池システム。
【請求項5】
請求項1において、前記複数の基本電池ユニットを並列に接続した電池群を、電流遮断機構を介して、直列に接続する、ことを特徴とする組電池システム。
【請求項6】
請求項1に記載の組電池システムと、
前記組電池システムに電流を供給する電源と、を備える、ことを特徴とするエネルギー貯蔵システム。
【請求項7】
請求項6において、前記電源は、前記電池セルの前記電流遮断手段によって電流が遮断されるときに、前記組電池システムに供給する電流を小さくする、ことを特徴とするエネルギー貯蔵システム。
【請求項8】
請求項6において、前記組電池システムの情報を管理する外部装置をさらに備え、前記外部装置は、前記組電池システムの情報を基にした信号を前記電源に送信することを特徴とするエネルギー貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池システム及びエネルギー貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続されるエネルギー貯蔵システムやエネルギー貯蔵システムを構成する組電池システムは、異常が発生しても火災に発展しないように、安全なシステムでなければならない。組電池システムを構成する電池セルには、異常時に電池セルに流れる電流を停止させる電流遮断機構が設けられるのが一般的である。電池セルの異常時には、電流遮断機構によって電池セルに流れる電流を遮断することができるが、複数の電池セルを直列および並列に接続した組電池システムにおいては、当該電流を遮断した電池セルに高電圧が印加される可能性がある。
【0003】
特許文献1には、複数のDCDCコンバータの入力側を直列に接続し、且つ、複数のDCDCコンバータの各々の出力側を組電池システムに接続することによって、各組電池システムに印加される電圧を小さくして電池セルに高電圧が印加されるのを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/007464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、組電池システムにDCDCコンバータが必要になるために、部品点数が増加する。また、DCDCコンバータのスイッチング損失による効率の低下が発生する。
【0006】
そこで、本発明は、DCDCコンバータを使用せず、電流を遮断した電池セルに高電圧が印加されるのを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の組電池システムは、電源から供給される電流によって充電される複数の電池セルが直列に接続された基本電池ユニットを複数有し、複数の基本電池ユニットを並列に接続した1又は複数の電池群を備える組電池システムである。複数の電池セルの各々は、電池セルの電極間を流れる電流を遮断する電流遮断手段を有し、基本電池ユニットにおいて直列に接続された複数の電池セルの直列数は、基本電池ユニットの並列数、電源から供給される電流、及び、電池セルの抵抗成分に基づいて、決定される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、DCDCコンバータを使用せず、電流を遮断した電池セルに高電圧が印加されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のエネルギー貯蔵システムを示すブロック図である。
図2】実施例1のACDCコンバータを示す図である。
図3】実施例1の制御部のハードウェアブロック図である。
図4】実施例1の組電池システムを示す図である。
図5】実施例1の電池セルの電流遮断機構を示す図である。
図6】従来の電池セルの接続を示す図及び実施例1の電池セルの接続を示す図である。
図7】電流を遮断した電池セルに印加される電圧を示す図である。
図8】実施例1のサージ電圧を吸収するコンデンサを示す図である。
図9】実施例1の効果を説明するための図である。
図10】実施例2の組電池システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0011】
<実施例1>
実施例1のエネルギー貯蔵システム1は、交流系統11に有効電力や無効電力を供給する。また、エネルギー貯蔵システム1は、高負荷の産業機器等に接続され、産業機器等の電力品質を向上させるものであっても良い。図1に示すように、エネルギー貯蔵システム1は、トランス12と、フィルタ13と、ACDCコンバータ14と、組電池システム10と、を備える。トランス12は、交流系統11に接続され、電磁誘導を利用して複数の巻線の間でエネルギーの伝達を行う。フィルタ13は、所定の周波数成分を除去する。
【0012】
(ACDCコンバータ14)
ACDCコンバータ14は、トランス12及びフィルタ13を介して交流系統11に電気的に接続される。ACDCコンバータ14は、2レベル変換器、3レベル変換器、又は、マルチレベル変換器である。ACDCコンバータ14が2レベル変換器の場合、少ない部品点数でACDCコンバータ14を構成することができる。ACDCコンバータ14が3レベル変換器の場合、フィルタ13を小さく構成することができる。ACDCコンバータ14がマルチレベル変換器の場合、フィルタ13を省略することができる。
【0013】
ACDCコンバータ14は、組電池システム10に電流を供給する電源である。図2は2レベル変換器で構成したACDCコンバータ14を示している。図2に示すように、ACDCコンバータ14は、位相が120°異なる三相の交流を直流化する回路である。ACDCコンバータ14の交流側端子24は、フィルタ13に接続され、直流側端子25は、組電池システム10に接続される。ACDCコンバータ14は、交流の電流を直流の電流に変換するブリッジ回路20と、平滑コンデンサ23と、制御部15と、を有する。ブリッジ回路20は、スイッチング素子21とダイオード22とを有する並列回路を6つ有する。各スイッチング素子21は、制御部15によって、オン又はオフに制御される。
【0014】
(制御部15)
制御部15は、所定の制御によって出力するゲートパルス信号を調整して、ACDCコンバータ14のスイッチング素子21のオン又はオフを制御する。所定の制御は、例えば定電圧制御、定電流制御、定電力制御である。また、制御部15は、BMS(バッテリーマネジメントシステム)16と通信可能に接続されている。そして、BMS16は、組電池システム10と通信可能に接続されており、組電池システム10の状態を収集する。組電池システム10の状態とは、例えば、電池セル41の電圧、電池セル41の温度、電池セル41の寿命などである。また、BMS16は、組電池システム10の状態を記憶し、組電池システム10のオペレーション、パフォーマンス及び寿命などを管理する。BMS16は、収集した組電池システム10の情報を基にした信号をACDCコンバータ14に送信する。例えば、BMS16は、電池セル41に異常が発生した場合や、異常が疑われる場合には、異常を示す信号を制御部15に送信する。そして、制御部15は、BMS16から出力される異常を示す信号に従って、スイッチング素子21のオン又はオフを制御し、組電池システム10に出力される電流を小さく又は停止する。図3に示すように、制御部15は、プロセッサ301と、通信インターフェース(以下、インターフェースをI/Fと略する)302と、主記憶装置303と、補助記憶装置304と、入出力I/F305と、上記した各ユニットを通信可能に接続するバス306と、を有する。
【0015】
プロセッサ301は、制御部15の各部の動作の制御を行う中央処理演算装置である。プロセッサ301は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。プロセッサ301は、補助記憶装置304に記憶されたプログラムを主記憶装置303の作業領域に実行可能に展開する。主記憶装置303は、プロセッサ301が実行するプログラム、当該プロセッサが処理するデータ等を記憶する。主記憶装置303は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。補助記憶装置304は、各種のプログラムおよび各種のデータを記憶する。補助記憶装置304は、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等を記憶する。補助記憶装置304は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ソリッドステートドライブ装置、ハードディスク(HDD、Hard Disk Drive)装置等である。
【0016】
通信I/F302は、外部装置であるBMS16との間でデータを送受信する手段として機能する。入出力I/F305は、入出力I/F305に接続される入力デバイスを操作するユーザからの操作指示等を受け付ける。入力デバイスは、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス、マイクロフォン等である。また、入出力I/F305には、例えば、LCD、EL(Electroluminescence)パネル、有機ELパネル等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスを接続することが可能である。入出力I/F305は、プロセッサ301で処理されるデータや情報、主記憶装置303や補助記憶装置304に記憶されるデータや情報を出力デバイス(例えば、図示しない、表示部や印刷装置)に出力する。
【0017】
(組電池システム10)
組電池システム10は、最小単位である電池セル41が直列及び並列に接続されたシステムであって、これら電池セル41は、ACDCコンバータ14が出力する電圧によって充電される。組電池システム10を送電システムに利用するためには、組電池システム10は、例えば、40kVの充放電能力が必要である。この場合、電池セル41の充放電能力が4Vだとすると、電池セル41を1万個直列に接続する必要がある。電池セル41は、例えば、リチウムイオン電池や鉛蓄電池である。組電池システム10は、ACDCコンバータ14の直流側端子25と電気的に接続されている。組電池システム10は、ACDCコンバータ14が出力する直流電圧が印加されて、充電される。また、充電された組電池システム10は、ACDCコンバータ14を介して、交流系統11に放電される。
【0018】
組電池システム10の詳細を、図4を参照して説明する。複数の電池セル41を直列に接続したものをモジュール42と呼ぶ。複数のモジュール42を直列に接続したものをラック43と呼ぶ。複数のラック43を並列に接続したものをアセンブリ44と呼ぶ。複数のアセンブリ44を直列に接続したものをスタック45と呼ぶ。複数のスタック45を並列に接続したものをストレージ46と呼ぶ。そして、このストレージ46が、組電池システム10である。直列に接続された電池セル41の数によって、組電池システム10の電圧が決定される。また、並列に接続された電池セル41の数によって、組電池システム10の容量が決定される。
【0019】
アセンブリ44とアセンブリ44との間には、電流を遮断するサーキットブレーカ47が設けられている。サーキットブレーカ47は、モジュール42とモジュール42との間に設けても良いし、電池セル41と電池セル41との間に設けても良い。このサーキットブレーカ47は、過電流の発生時に電流を遮断するハードウェアであっても良いし、制御部15などによるソフトウェア制御によって電流を遮断するスイッチであっても良い。
【0020】
図5に示すように、電池セル41は、電流遮断機構51と、安全弁52とを有する。電流遮断機構51は、電極間を流れる電流を遮断する本発明の電流遮断手段として機能する。電流遮断機構51は、過電流もしくは高温状態に置かれた場合に、電池セル41の内部の圧力上昇により変形して電気的に開放状態となり、電池セル41の電極間を流れる電流を遮断する。また、安全弁52は、電池セル41の内圧が上昇した場合に破裂し、電池セル41の内部に発生したガスを放出する。実施例1の電池セル41は、電流遮断機構51及び安全弁52の両方を有するが、電池セル41は、電流遮断機構51及び安全弁52の何れか1つを有しているものであっても良い。また、電池セル41は、電池セル41の異常時に電流を遮断することができるものであれば、電流遮断機構51以外の構成を有していても良い。また、電流遮断機構51は、電池セル41の異常時にセル内部で電気的に開放するものであっても良いし、電池セル41の異常時に溶解して絶縁材となるセパレータであっても良い。セパレータは、例えば、Liイオンを通過させる透過膜であって、電池セル41の異常時に溶解して絶縁材となる。この場合も電気的に高抵抗であるので、電気的に開放とみなせる。
【0021】
図6の(a)は、従来の組電池システム100の電池セル41の接続を示し、図6の(b)は、実施例1の組電池システム10の電池セル41の接続を示す。従来の組電池システム100では、複数の電池セル41が直列に接続され、且つ、直列に接続された複数の電池セル41を有する基本電池ユニット60を複数有し、複数の基本電池ユニット60が並列に接続されている。電池セル41に異常がない場合、ACDCコンバータ14から組電池システム100に供給される電流Itは、並列に接続された複数の基本電池ユニット60に分流され、各基本電池ユニット60に電流Iが供給される。なお、実施例1の基本電池ユニット60は、モジュール42に対応する。
【0022】
図6の(a)の従来の組電池システム100において、基本電池ユニット60における電池セル41の直列数をNs、及び、基本電池ユニット60の並列数をNp、とする。また、ACDCコンバータ14から供給される電流をIt、各基本電池ユニット60に分流された電流をIとすると、It=Np×Iとなる。各電池セル41の抵抗成分をR、及び、電池セル41の電池電圧をEとすると、1つの電池セル41の両端電圧は、抵抗成分での電圧降下と電池電圧との和(=I×R+E)となる。そして、基本電池ユニット60における電池セル41の直列数がNsであるので、基本電池ユニット60の電圧V0は、V0=Ns×(I×R+E)となる。
【0023】
ある電池セル41で異常が発生して、電流遮断機構51又は安全弁52が作動すると、当該電池セル41及び当該電池セル41を含む基本電池ユニット60を流れる電流が遮断される。一方で、ACDCコンバータ14が定電流制御で動作している場合、ACDCコンバータ14から供給される電流Itは一定である。そのため、異常が発生していない基本電池ユニット60に流れる電流をI´とすると、I´=It/(Np-1)となる。
【0024】
異常が発生していない基本電池ユニット60の電圧V2は、流れる電流I´が通常時のIより大きくなるので、抵抗成分Rでの電圧降下が大きくなり、V2=Ns×(I´×R+E)となる。また、異常が発生した電池セル41を含む基本電池ユニット60の電圧V1は、電流が遮断されたことで抵抗成分Rでの電圧降下が無いので、V1=Ns×Eとなる。したがって、異常が発生した電池セル41に加わる電圧ΔVは、次の通りである。
ΔV=V2-V1
=Ns×(I´×R+E)-Ns×E
=Ns×I´×R…(1)
そして、式(1)に、上記したI´=It/(Np-1)を代入すると、
ΔV=Ns×It/(Np-1)×R…(2)
となる。
【0025】
正常時の基本電池ユニット60の電圧V0と、異常が発生した電池セル41を含む基本電池ユニット60の電圧V1と、異常が発生していない基本電池ユニット60の電圧V2と、異常が発生した電池セル41に加わる電圧ΔVと、の関係は、図7に示す通りである。
【0026】
例えば、
電池セル41の抵抗成分R=0.001Ω
電池セル41の電池電圧E=4.0V
ACDCコンバータ14から組電池システム10に供給される電流It=100A
基本電池ユニットにおける電池セル41の直列数Ns=10000
基本電池ユニットの並列数Np=3
とすると、ΔV=10000×100/(3-1)×0.001=500Vとなる。つまり、上記した条件では、異常が発生した電池セル41に500Vが印加される。
【0027】
異常が発生した電池セル41には、上記した式(2)に示すように、電池セル41の直列数Ns、基本電池ユニット60の並列数Np、電流It、及び、抵抗成分Rから算出されるΔVが印加される。異常が発生した電池セル41に印加される電圧ΔVによって電池セル41が絶縁破壊しないように、電池セル41に印加される電圧ΔVが電池セル41の絶縁性能(安全率を加味した電池セル41の絶縁性能をThとする)を超えないように調整しなければならない。つまり、電池セル41に印加される電圧ΔVは、以下の式を満たす。
ΔV<Th…(3)
【0028】
上記した式(3)に上記した式(2)を代入すると、
Ns×It/(Np-1)×R<Th
となり、そして、基本電池ユニット60における電池セル41の直列数Nsは、以下の式(4)を満たす。
Ns<Th×(Np-1)/(It×R)…(4)
【0029】
基本電池ユニット60における電池セル41の直列数Nsは、上記した式(4)に基づいて、決定される。電池セル41の絶縁性能Thは選定される電池セル41の性能によるため、電池セル41の直列数Nsは、基本電池ユニット60の並列数Np、電流It、及び、抵抗成分Rに基づいて、決定される。そして、実施例1では、図6の(b)に示すように、決定した直列数Ns以下の数で電池セル41を直列に接続して、基本電池ユニット60とする。そして、決定した直列数Ns以下の数で接続された電池セル41を有する基本電池ユニット60を並列に接続する。複数の基本電池ユニット60を並列に接続した電池群61を直列に接続して、組電池システム10を構成する。図6の(b)の例では、4つの電池セル41が直列に接続された基本電池ユニット60を並列に3つ接続した電池群61を、直列に接続する。なお、直列数Nsは、上記した式(4)を満たす最大値を採用することが望ましい。なぜなら、電池セル41の直列数Nsを少なくすれば、異常が発生した電池セル41に印加される電圧ΔVが小さくなるが、少ない直列数Ns毎に並列接続しなければならず、回路構成が複雑になり、基本電池ユニット60の接続作業も煩雑になるからである。そのため、実施例1の基本電池ユニット60における電池セル41の直列数Nsは、上記した式(4)を満たす最大値を採用する。なお、抵抗成分Rは、電池の種別によって異なるほか、同種の電池であってもばらつきがあり、また、温度などの環境によっても変化するため、想定される範囲で最大の値を設定することが望ましい。
【0030】
図6の(a)に示した従来の組電池システム100と、図6の(b)に示した実施例1の組電池システム10とでは、充放電能力としては等価であるが、電流を遮断した電池セル41に印加される電圧は、実施例1の組電池システム10の電池セル41の方が小さい。なお、図6の(b)に示した実施例1の組電池システム10では、基本電池ユニット60を構成する電池セル41は4つであるが、この直列数は例示である。実施例1では、電池セル41の直列数は、上記したように、基本電池ユニット60の並列数Np、ACDCコンバータ14から供給される電流It、及び、電池セル41の抵抗成分Rの少なくとも1つに基づいて、決定される。
【0031】
図8に示すように、組電池システム10は、基本電池ユニット60と並列に接続されたコンデンサ80を備える。電池セル41の電流遮断機構51又は安全弁52によって電池セル41を流れる電流が遮断されると、配線のインダクタンス成分81によってサージ電圧が発生する。特に、電池群61を長い配線で直列に接続すると、配線のインダクタンス成分81が大きくなる。配線のインダクタンス成分81が大きくなると、サージ電圧(Ldi/dt)も大きくなるため、組電池システム10は、サージ電圧を吸収する吸収手段として、コンデンサ80を備える。なお、サージ電圧から回路を保護できれば、コンデンサ80は、バリスタであっても良いし、ツェナーダイオードであっても良いし、それらの組み合わせであっても良い。
【0032】
組電池システム10は、電池群61と電池群61との間に設けられた電流を遮断するサーキットブレーカ47を有しても良い。このサーキットブレーカ47が、本発明の電流遮断機構に対応する。サーキットブレーカ47の詳細は、図4に示した通りである。
【0033】
(実施例1の効果)
実施例1では、基本電池ユニット60の並列数Np、ACDCコンバータ14から供給される電流It、及び、電池セル41の抵抗成分Rに基づいて、基本電池ユニット60における電池セル41の直列数Nsを決定する。これにより、例えば、いずれか一つの基本電池ユニット60の電池セル41に異常が発生した場合に、異常が発生した電池セル41に印加されるΔVが閾値(電池セル41の絶縁性能を示す値)より大きくなるのを防ぐことができる。その結果、DCDCコンバータを使用せず、異常が発生した電池セル41に高電圧が印加されるのを抑制することができ、電池セル41が、ΔVによって絶縁破壊するのを抑制することができる。
【0034】
また、決定した直列数Nsの基本電池ユニット60を並列に接続することによって、図9に示すように、電流が流れない電池セル41の数を少なくすることができる。図9(a)の従来の組電池システム100では、電池セル41bに異常が発生すると、当該電池セル41bを含む基本電池ユニット60bを構成する少なくとも8個の電池セル41が使用できなくなる。これに対して、図9(b)の実施例1では、電池セル41aに異常が発生すると、当該電池セル41aを含む基本電池ユニット60aを構成する4個の電池セル41が使用できなくなるだけである。つまり、実施例1では、電池セル41aに異常が発生しても、使用できない電池セル41の数を従来の組電池システム100より少なくすることができる。
【0035】
組電池システム10がサージ電圧を吸収するコンデンサ80を備えることによって、電池セル41の電流遮断機構51又は安全弁52によって電流が遮断されたとしても、サージ電圧から回路を保護することができる。
【0036】
また、電池群61と電池群61との間に、サーキットブレーカ47を設けることによって、回路の許容電流を超えるなどの異常が発生した場合に、電流を遮断することができる。
【0037】
また、制御部15の通信I/F302は、BMS16から組電池システム10の状態に基づいた信号を受信することができ、BMS16は、組電池システム10の状態を記憶し、管理することができる。
【0038】
制御部15は、BMS16と通信可能に接続されており、BMS16から異常を示す信号を受信することができる。そして、制御部15は、異常を示す信号に従って、スイッチング素子21のオン又はオフを制御し、組電池システム10に出力される電流を小さく又は停止することができる。
【0039】
<実施例2>
実施例1では、決定した直列数以下の数で接続された電池セル41を有する基本電池ユニット60を並列に接続した。電池セル41単位で回路接続が困難で、モジュール42単位での回路変更が容易の場合には、モジュール42の単位で回路接続を行っても良い。図10(a)に示すように、実施例2の組電池システム10aは、直列に接続された複数のモジュール42を含む。組電池システム10aは、複数のモジュール42が直列に接続された基本電池ユニット60が並列に接続された電池群61を有する。つまり、実施例2の基本電池ユニット60は、ラック43に対応する。そして、複数の電池群61が直列に接続されている。モジュール42がN1個の電池セル41を直列に接続したものであり、基本電池ユニット60がM1個のモジュール42を直列に接続したものであるならば、実施例2の基本電池ユニット60においてN1×M1個の電池セル41が直列に接続される。この電池セル41の直列数が、基本電池ユニット60の並列数Np、ACDCコンバータ14から供給される電流It、及び、電池セル41の抵抗成分Rに基づいて、決定される。実施例2では、上記した式(4)に基づいて決定された直列数が、N1×M1個以下となるように、基本電池ユニット60において複数のモジュール42の数が決定される。例えば、決定した直列数が100個であり、モジュール42が23個の電池セル41が直列接続されたものであれば、100個以下となるように、モジュール42の数を4つに決定する。
【0040】
また、図10(b)の組電池システム10bに示すように、上記したモジュール42をアセンブリ44に置き換えることも可能である。この場合、図10(b)の基本電池ユニット60は、スタック45に対応する。なお、図10(b)の詳細は、図10(a)と同様であるので、その説明を割愛する。
【0041】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0042】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:エネルギー貯蔵システム 10、10a、10b:組電池システム 11:交流系統 12:トランス 13:フィルタ 14:ACDCコンバータ 15:制御部 16:BMS 20:ブリッジ回路 21:スイッチング素子 22:ダイオード 23:平滑コンデンサ 41:電池セル 42:モジュール 43:ラック 44:アセンブリ 45:スタック 46:ストレージ 51:電流遮断機構 52:安全弁 60:基本電池ユニット 61:電池群 80:コンデンサ 81:インダクタンス成分 301:プロセッサ 302:通信I/F 303:主記憶装置 304:補助記憶装置 305:入出力I/F 306:バス
図1
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