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特開2023-30430インシュレータ、固定子、及びそれらを用いた回転電機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030430
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】インシュレータ、固定子、及びそれらを用いた回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20230301BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/52 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135556
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597034440
【氏名又は名称】川俣精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】望月 資康
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌明
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
(72)【発明者】
【氏名】福原 弘康
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604PB03
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】コイル導線を簡単な方法で適切に固定できるインシュレータ、固定子及び回転電機を提供する。
【解決手段】固定子は、複数の巻き線ブロックの一部を構成し互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアと、複数の巻き線ブロックの一部を構成し分割コアの各々に装着されるインシュレータと、複数の巻き線ブロックの一部を構成しインシュレータを介して分割コアに巻回される巻回部と、巻回部から引き出される渡り部とを有するコイル導線と、コイル導線の移動を規制する規制部材と、を備える。インシュレータは、渡り部を収容する収容部を有し、収容部は、互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、互いに連通し第1面と第2面とにそれぞれ形成された開口部と、を有する。規制部材は屈曲可能な部材で構成され、第1面の開口部及び第2面の開口部を挿通して収容部に収容された渡り部に巻き付けられた状態で固定可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状に配置された複数の巻き線ブロックと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記複数の分割コアの各々に装着されるインシュレータと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記インシュレータを介して前記複数の分割コアの各々に巻回される巻回部と、前記巻回部から引き出される渡り部とを有するコイル導線と、
前記コイル導線の移動を規制する規制部材と、を備え、
前記インシュレータは、前記渡り部を収容する収容部を有し、
前記収容部は、
互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、
互いに連通し、前記第1面と前記第2面とにそれぞれ形成された開口部と、を有し、
前記規制部材は屈曲可能な部材で構成され、前記第1面に形成された開口部及び前記第2面に形成された開口部を挿通して円環形状とした状態で固定可能に構成されている
固定子。
【請求項2】
前記収容部は、前記第1面と前記第2面とのうち少なくとも一方の端部に、前記規制部材を受け入れる凹部を有する
請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記第1面は、前記収容部の前記固定子コアの径方向内側の面を形成し、前記第2面は、前記収容部の前記固定子コアの径方向外側の面を形成し、
前記収容部は、前記第1面と前記第2面との間に設けられ、前記固定子コアの軸方向に窪ませて形成され、前記渡り部を収容する複数の溝部を有する
請求項1又は2に記載の固定子。
【請求項4】
前記第1面に形成された前記開口部は前記第1面を厚み方向に貫通して形成された貫通孔であり、
前記凹部は、前記第1面の前記開口部を前記固定子コアの軸方向に延長した領域に設けられている
請求項2に記載の固定子。
【請求項5】
前記第1面の前記開口部は、前記固定子コアの軸方向の長さ寸法が長径であり、前記固定子コアの周方向の長さ寸法が短径であるように形成されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の固定子。
【請求項6】
複数の前記規制部材を備え、
前記第1面は、前記収容部の前記固定子コアの周方向に関する中心から対称に配置された複数の前記開口部を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の固定子。
【請求項7】
コイル導線の渡り部を収容する収容部を備え、
前記収容部は、
互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、同一方向に窪ませて前記渡り部を相毎に分離して収容する複数の溝部と、
互いに連通し、それぞれ前記第1面と前記第2面とに向かい合って形成された開口部とを有する
インシュレータ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の固定子又は請求項7に記載のインシュレータを有する固定子と、回転子とを備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の本実施形態は、インシュレータ、固定子、及びそれらを用いた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機として、固定子と回転子とを備えたものがある。固定子は、例えば円環状の固定子コアと、固定子コアの内周面から径方向内側に向かって突出した複数のティースと、ティースに巻回されたコイル導線と、ティースに装着されティースとコイル導線との間の絶縁を確保するインシュレータと、を備える。
【0003】
回転子は、例えば固定子の径方向内側に回転自在に配置された略円柱状の回転子コアと、回転子コアに設けられた磁石と、を備える。コイル導線に電流を供給すると、各ティースに鎖交磁束が発生する。この鎖交磁束と回転子の磁石との間で時期的な吸引力や反発力が生じ、回転子が回転する。
【0004】
また、この種の回転電機として、固定子コアを複数の分割コアによって構成して、コイル導線の巻回作業を容易にし、占積率を高めたものが知られている。この回転電機で用いられる分割コアは、互いに組み合わされた状態で固定子コアの円環形状部を形成する概ね円弧状のバックヨーク部と、バックヨーク部から径方向内側に突出するティースとを有している。分割コアを有した複数の巻き線ブロックは、円環状のリング部材により円環状に配置されて固定子を構成する。
【0005】
各分割コアには、絶縁材料で構成されたインシュレータが装着されている。インシュレータは、ティースに装着されて外周にコイル導線が巻回されるティース覆い部と、ティース覆い部から引き出されたコイル導線と他の分割コアから引き出されたコイル導線とを収容すると共に端子接続部に案内する渡り部収容部と、を有する。渡り部収容部は、ティース覆い部のコア径方向外側に概ね円弧状に一体に形成されている。渡り部収容部は、ティース覆い部から引き出されたコイル導線の渡り部と、他の分割コアから引き出されたコイル導線の渡り部とを固定子コアの円周方向に沿って案内する案内溝部が形成されている。案内溝部は、例えばU相、V相、W相などの複数の相に対応して相毎にコア径方向に互いに離れて複数段に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第566976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の回転電機は、ティース覆い部からコア径方向の外側に引き出されたコイル導線の渡り部が、渡り部収容部の対応する案内溝部に添うように単純に曲げられた構造である。そのため、固定子の組み立て時に、各コイルの渡り部を引き回しながら複数の分割コイルを組み付ける際に、ティース覆い部からコア径方向の外側に引き出されたコイル導線の渡り部や、他の分割コアから引き出されたコイル導線の渡り部等が、案内溝部から脱落してしまうことがある。この場合、コイル導線が所定の位置からずれてしまい、短絡等が生じる虞がある。
【0008】
そこで、コイル導線を簡単な方法で適切に固定できるインシュレータ、固定子及び回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の固定子は、円環状に配置された複数の巻き線ブロックと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記分割コアの各々に装着されるインシュレータと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記インシュレータを介して前記分割コアに巻回される巻回部と、前記巻回部から引き出される渡り部とを有するコイル導線と、前記コイル導線の移動を規制する規制部材と、を備える。前記インシュレータは、前記渡り部を収容する収容部を有し、前記収容部は、互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、互いに連通し、前記第1面と前記第2面とにそれぞれ形成された開口部と、を有する。前記規制部材は屈曲可能な部材で構成され、前記第1面の開口部及び前記第2面の開口部を挿通して前記収容部に収容された前記渡り部に巻き付けられた状態で固定可能に構成されている。
【0010】
本実施形態のインシュレータは、コイル導線の渡り部を収容する収容部を備える。前記収容部は、互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、前記第1面と前記第2面との間に設けられ、同一方向に窪ませて前記渡り部を相毎に分離して収容する複数の溝部と、互いに連通し、それぞれ前記第1面と前記第2面とに向かい合って形成された開口部とを有する。
【0011】
本実施形態の回転電機は、上記固定子又は上記インシュレータを有する固定子と、回転子とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態による回転電機の一例を固定子ケースを外して軸方向の一の側から見た概略図
図2図1に示す第1実施形態による回転電機の一例について規制部材を外した状態で示す概略図
図3】第1実施形態による回転電機の一例の巻き線ブロックを径方向内側から見た斜視図
図4】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを径方向内側から見た斜視図
図5】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを径方向外側から見た斜視図
図6】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを軸方向の一の側から見た図
図7】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを径方向外側から見た図
図8】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを図7のX8-X8線に沿って見た断面図
図9】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを図7のX9-X9線に沿って見た断面図
図10】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを規制部材を渡り部に巻き付けた状態で径方向内側から見た斜視図
図11】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを規制部材を渡り部に巻き付けた状態で軸方向の一の側から見た図
図12】第1実施形態による回転電機の一例の固定子の製造方法を表すフローチャート
図13】第1実施形態による回転電機の一例の固定子の製造方法における巻き付け工程を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について図1図13を参照して説明する。回転電機100は、図1に示すように、固定子10と、回転子11と、図示しない固定子ケースと、を備える。図1は、固定子ケースを外した状態で回転電機100を軸方向の一の側から見た図である。以下の説明では、図1の紙面に直交する向きである回転子11の回転軸線Axと平行な方向を軸方向、回転子11の回転方向を周方向、軸方向及び回転方向に直交する回転子11の径方向を径方向と称する。図面においては、軸方向をA、周方向をC、径方向をRと記載する。なお、後述する固定子コア14の軸方向であるコア軸方向は、回転子11の回転軸線Axの延びる方向と一致する。固定子コア14の周方向であるコア周方向は、回転子11の回転方向つまり周方向と一致する。固定子コア14の径方向であるコア径方向は、回転子11の径方向と一致する。
【0015】
固定子10は、略円筒状に形成され固定子ケースの内周面に嵌合され固定されている。回転子11は、固定子10の径方向内側に配置され、固定子10に対して回転自在に設けられている。図示しない固定子ケースは、略円筒状に形成され、内部に固定子10を収容する。固定子10と固定子ケースとの軸方向は、回転軸線Axと一致している。
【0016】
回転子11は、シャフト12と、回転子コア13と、図示しない磁石とを有する。シャフト12は、円柱状に形成されて回転軸線Ax回りに回転する。回転子コア13は、シャフト12に固定されており、径方向中央に回転子コア13を軸方向に貫通する貫通孔131が形成されている。シャフト12は、貫通孔131に例えば圧入により固定されている。回転子コア13の外周部寄りに、図示しない複数の磁石が周方向に並んで取り付けられている。
【0017】
固定子10は、固定子コア14と、リング部材15と、インシュレータ30と、コイル導線60と、規制部材70とを有する。固定子コア14は、磁性体部材で全体として円筒状に形成されており、複数に分割可能に構成されている。固定子コア14は、複数この場合24個の分割コア16を含んで構成されている。複数の分割コア16を円環状のリング部材15に圧入し互いに組み合わせることにより、全体として円筒状である1つの固定子コア14が形成されている。なお、リング部材15の軸方向は、回転軸線Axと一致する。
【0018】
インシュレータ30は、絶縁性の部材で形成され、固定子コア14に装着されている。この場合、インシュレータ30は各分割コア16の少なくとも一部を被覆している。コイル導線60は、固定子コア14に巻回されている。本実施形態では、コイル導線60は集中巻き方式により固定子コア14に巻回されている。また、コイル導線60は、インシュレータ30の上から各分割コア16に巻回されている。規制部材70は、絶縁性で屈曲可能な部材で長軸の帯状又は紐状に形成されている。規制部材70は、コイル導線60の一部、具体的には後述する渡り部63を包囲してインシュレータ30に固定することで、渡り部63の移動を規制する機能を有する。
【0019】
コイル導線60は、分割コア16に巻回される巻回部61と、巻回部61の両側から外部に引き出される渡り部62、63と、を有している。第1渡り部62は、コイル導線60の巻き始め側から引き出された部分である。第2渡り部63は、コイル導線60の巻き終わり側から引き出された部分である。本実施形態では、コイル導線60は断面形状が矩形のいわゆる平角線であるが、これに限らない。他の実施形態では、コイル導線60は断面形状が円形のいわゆる丸線であっても良い。
【0020】
分割コア16は、例えば金属板を複数枚積層した構成である。分割コア16は、ケイ素鋼板等の軟磁性粉を加圧成型して形成しても良い。本実施形態では、24個の分割コア16のうち、3個おきつまり間に2個挟んで配置された計8個の分割コア16はU相の分割コア16である。U相の分割コア16に隣接して3個おきに配置された計8個の分割コア16はV相の分割コア16である。U相の分割コア16とV相の分割コア16とに隣接して3個おきに配置された計8個の分割コア16は、W相の分割コア16である。
【0021】
各分割コア16にインシュレータ30を介してコイル導線60を巻回することで、巻き線ブロック80が構成される。図3は、巻き線ブロック80の斜視図である。巻き線ブロック80は、分割コア16と、インシュレータ30と、コイル導線60とを含んで構成される。分割コア16は、軸方向視が略T字状に形成されている。分割コア16は、ティース17と、バックヨーク部18とを有している。ティース17は、バックヨーク部18から径方向内側に向かって突出して形成されている。ティース17は、少なくとも一部がインシュレータ30によって被覆される。つまり、インシュレータ30は、ティース17の周囲を被覆するように各分割コア16に装着されている。コイル導線60は、インシュレータ30の上から各ティース17に巻回されている。バックヨーク部18は、分割コア16の外周部において周方向及び軸方向に延びる面を形成する。バックヨーク部18は、分割コア16をリング部材15により環状に配置した際に固定子コア14の環状の磁路を形成する箇所である。バックヨーク部18は、軸方向に直交する断面形状の外周部が円弧状となるように形成されている。そのため、固定子コア14は、軸方向視において円環状に連なるバックヨーク部18から複数のティース17が径方向内側に向かって突出した形状となっている。
【0022】
ティース17は、ティース本体19と、鍔部20とを有する。ティース本体19は、径方向に沿って延び、インシュレータ30を介してコイル導線60の巻回を受ける部分である。鍔部20は、ティース本体19の径方向内側端部に接続され、ティース本体19から軸方向及び周方向に突出した面を形成する。ティース本体19と鍔部20とは一体成型されている。ティース本体19と、鍔部20と、バックヨーク部18とは、コイル導線60の巻回部61を巻回する空間であるスロットを囲んでいる。
【0023】
インシュレータ30は、軸方向に複数この場合2個に分割された部材を含んで構成される。この場合、インシュレータ30は、第1インシュレータ31と、第2インシュレータ32とを有する。第1インシュレータ31は、ティース17の軸方向の一の側から分割コア16に装着される。第2インシュレータ32は、ティース17の軸方向の他の側から分割コア16に装着される。この場合、第1インシュレータ31は、例えば図3に示すティース17の上方から分割コア16に装着され、第2インシュレータ32は、例えば図3に示すティース下方から分割コア16に装着される。インシュレータ30を分割コア16に装着すると、第1インシュレータ31と第2インシュレータ32とは隙間なく係合して、ティース17は第1インシュレータ31と第2インシュレータ32との間から外部に露出しない構成となっている。インシュレータ30の上からティース17に巻回されるコイル導線60は、第1インシュレータ31側から巻き始められ、巻き終わり端は第2インシュレータ32側から引き出される。なお、以下の説明で、軸方向の第1インシュレータ31側を下側、第2インシュレータ32側を上側と称することがあるが、これは説明の便宜上であり、実際の上下方向とは一致しなくても良い。
【0024】
図4及び図5は、第2インシュレータ32を径方向内側及び径方向外側から見た斜視図である。図6は、第2インシュレータ32を軸方向に関して第1インシュレータ31から離れる側から見た図である。図7は、第2インシュレータ32を径方向外側から見た図である。図8は、図7のX8-X8線に沿って軸方向から見た第2インシュレータ32の断面図である。図8において、分割コア16及びコイル導線60の一部が破線で示されている。図9は、図7のX9-X9線に沿って周方向の一方側から見た第2インシュレータ32の断面図である。第2インシュレータ32は、覆い部33と、内壁部34と、外壁部35と、収容部40とを有する。覆い部33は、軸方向の断面形状がU字形状に形成されており、ティース本体19を軸方向の一の側及び周方向の両側から被覆する。内壁部34及び外壁部35は、覆い部33の径方向の内側端部及び外側端部に一体成型されて、軸方向及び周方向に延びる面を形成する。内壁部34は、鍔部20の外周側を被覆する。外壁部35は、バックヨーク部18の内周側を被覆する。
【0025】
収容部40は、外壁部35と一体に形成されている。収容部40は、外壁部35から径方向外側に膨出し、軸方向に突出して設けられている。この場合、収容部40は、軸方向に関して第1インシュレータ31との接続端部と離れる向きすなわち反第1インシュレータ31側に突出して設けられている。収容部40は、覆い部33側から径方向の外側に引き出されたコイル導線60の第2渡り部63や、他の分割コア16から引き出されたコイル導線60の第2渡り部63を収容する。収容部40は、軸方向視において、外周部がバックヨーク部18の外周部の形状に沿うように円弧状に形成されている。
【0026】
収容部40は、基部41と、複数の案内壁42と、複数の案内溝部43と、引き出し溝部44と、引き回し通路45と、を有する。基部41は、軸方向視において概ね扇状に形成されている。複数の案内壁42は、基部41から突出して設けられている。この場合、複数の案内壁42は、基部41から軸方向に関して第1インシュレータ31と接続する端部から離れる向きすなわち反第1インシュレータ31側に延びている。また、複数の案内壁42は、それぞれ径方向に対して概ね垂直な面を形成する。案内壁42は、第2渡り部63を案内壁42に沿って誘導するガイドとして機能する。
【0027】
複数この場合4個の案内壁42は、等間隔に並べられており、径方向内側から外側に向かって、第1案内壁421、第2案内壁422、第3案内壁423、及び第4案内壁424の順に並んでいる。第1案内壁421の径方向内側の面は、収容部40の径方向内側つまりティース17側の面である第1面401を形成する。第4案内壁424の径方向外側の面は、収容部40の径方向外側つまりバックヨーク部18側の面である第2面402を形成する。第2案内壁422及び第3案内壁423は、径方向内側の第1案内壁421と径方向外側の第4案内壁424との間に設けられている。
【0028】
複数の案内溝部43は、第1面401と第2面402との間に設けられている。複数の案内溝部43は、周方向に延び、第2渡り部63を相毎に径方向に分離して収容する。各案内溝部43は、隣接する案内壁42の間に形成されている。案内溝部43は、第2渡り部63が通る通路として機能する。引き出し溝部44は、各案内壁42の周方向の中央部を上端部から基部41との接続部分まで切り欠いて形成されている。このため、引き出し溝部44は、収容部40の径方向内側と外側とを連通している。引き出し溝部44は、巻回部61から引き出された第2渡り部63を径方向の外側に引き出す際の通路として機能する。
【0029】
案内溝部43は、径方向内側から外側に向かって、第1案内溝部431、第2案内溝部432、第3案内溝部433の順に並んでいる。径方向内側の第1案内溝部431は、第1案内壁421と第2案内壁422との間に形成された案内溝部43である。中央部の第2案内溝部432は、第2案内壁422と第3案内壁423との間に形成された案内溝部43である。径方向外側の第3案内溝部433は、第3案内壁423と第4案内壁424との間に形成された案内溝部43である。
【0030】
本実施形態では、径方向内側の第1案内溝部431の内部にU相のコイル導線60の第2渡り部63Uが挿通される。中央部の第2案内溝部432の内部にV相のコイル導線60の第2渡り部63Vが挿通される。径方向外側の第3案内溝部433の内部にW相のコイル導線60の第2渡り部63Wが挿通される。各案内溝部43には、覆い部33から引き出された第2渡り部63と、他の巻き線ブロック80から延びて来た第2渡り部63とが挿通される。本実施形態では、各案内溝部43には、それぞれ最大4本の第2渡り部63が挿通される。
【0031】
一又は複数この場合2個の引き回し通路45は、引き出し溝部44と収容部40の周方向端部との間において案内壁42を切り欠いて形成されている。この場合、引き回し通路45は、径方向内側の第1案内壁421以外の第2案内壁422、第3案内壁423及び第4案内壁424を上端部から基部41との接続部分まで切り欠いて形成されている。引き回し通路45によって、収容部40の内部と外部とを連通する開口部が形成されている。引き回し通路45は、図8に示すように、引き出し溝部44を通して径方向外側に引き出された第2渡り部63を、いずれかの案内溝部43を通して周方向の一方側に引き出すときに、第2渡り部63を引き回して方向転換することを可能にする空間を提供する。
【0032】
引き出し溝部44及び引き回し通路45によって、各案内壁421、422、423、424はそれぞれ複数個に分割されている。径方向内側の第1案内壁421は、引き出し溝部44によって、周方向に2つに分割されている。径方向外側の第4案内壁424及び、中間部分の第2案内壁422及び第3案内壁423は、引き出し溝部44と引き回し通路45とによってそれぞれ周方向に4つに分割されている。
【0033】
基部41は、立ち上がり部411を有している。立ち上がり部411は、2つの引き回し通路45、45の間において、基部41の一部を軸方向に関して第1インシュレータ31から離れる方向に立ち上げて形成されている。そのため、第2案内壁422、第3案内壁423、及び第4案内壁424は、立ち上がり部411から突出する部分つまり引き回し通路45、45の間の部分において、立ち上がり部411以外から突出する部分つまり引き回し通路45、45の周方向外側の部分よりも軸方向の長さ寸法が短くなっている。
【0034】
立ち上がり部411は、引き出し溝部44によって、周方向に2つに分割されている。また、立ち上がり部411は、窪み部412を有する。窪み部412は、立ち上がり部411を第2面402側から周方向内側に向かって窪ませて形成されている。窪み部412の径方向の窪みの底部の位置は、概ね第3案内壁423の径方向外側の面と一致する。窪み部412は、図8及び図9に示すように、引き出し溝部44を通って収容部40の径方向外側に引き出された第2渡り部63を、周方向に約90°転回させて案内溝部43側に誘導する通路として機能する。
【0035】
図8は、コイル導線60の巻き終わり側を、収容部40に引き出し、第2渡り部63が収容部40に収容された状態を破線で示す。他のこの場合、第2渡り部63は、引き出し溝部44を通って径方向外側に引き出される。引き出された第2渡り部63は、窪み部412において立ち上がり部411の周囲を周方向一方側に引き回される。引き回し通路45に到達した第2渡り部63は、第1案内溝部431、第2案内溝部432、又は第3案内溝部433のいずれかの案内溝部43この場合第1案内溝部431を挿通される。案内溝部43から引き出された第2渡り部63は、隣接する分割コア16の収容部40に向けて延びる。
【0036】
なお、各案内壁421、422、423、424の自由端部つまり基部41から離れる側の端部は、概ね一平面上に存在する。つまり、各案内壁421、422、423、424の自由端部の立ち上がり部411を考慮しない場合の基部41からの高さ寸法は、概ね同一に設定されている。
【0037】
収容部40は、図4及び図5等に示すように、更に一又は複数の孔部46と、一又は複数の凹部47を有する。孔部46と凹部47とは、それぞれ径方向内側の第1案内壁421又は径方向外側の第4案内壁424に設けられている。本実施形態では、一又は複数の孔部46と、一又は複数の凹部47とは径方向内側の第1案内壁421に設けられている。この場合2個の孔部46は、第1案内壁421の引き出し溝部44よりも周方向外側部分において、第1案内壁421を厚み方向に貫通して形成された開口部である。孔部46は、軸方向を長軸とする長孔に形成されている。孔部46は、収容部40の内部と外部とを連通する。孔部46は、内部に規制部材70を挿通させ、第2渡り部63が収容部40に収容された状態で規制部材70が第2渡り部63を巻き付けることを可能にする。
【0038】
規制部材70は、使用前は長軸方向に延びたつまり開いた状態であり、使用に際しては円環状に巻いた閉じた状態で固定することができる。規制部材70は、図9図11に示すように、移動を規制する対象物の周囲を円環状に巻いた閉じた状態で固定されることで、対象物と接した或いは近接した状態で対象物の移動を規制する。規制部材70は、絶縁性の例えばプラスチック等の合成樹脂で形成することができる。規制部材70を円環状に閉じた状態で固定する方法は、例えば規制部材70の部分間の係合による物理的な固定、熱溶着、接着剤による固定等が挙げられるが、これに限らない。本実施形態では、規制部材70は、円環状に閉じた状態で、規制部材70の部分間の係合による物理的な固定により簡便に固定される。この場合、規制部材70は、例えば結束バンドとして市販されているものを使用することができる。
【0039】
図6及び図7に示すように、複数この場合2個の孔部46は、収容部40の径方向の中心に対してこの場合引き出し溝部44に対して線対称に配置されている。これにより、第2渡り部63を固定した際に、収容部40の周方向全体に亘って、バランスよく固定することができる。
【0040】
図7及び図9等に示すように、孔部46は、第1案内壁421の軸方向に関して基部41寄りに設けられている。この場合、孔部46は、例えば第1案内壁421の軸方向の中点よりも基部41寄りに設定されている。つまり、孔部46の下端部46aつまり基部41側あるいは第1インシュレータ31との接続端部側の端部の位置は、第1案内壁421の軸方向の中点よりも基部41寄りに設定されている。また、孔部46の上端部46bつまり反基部41側あるいは反第1インシュレータ31との接続端部側の端部の位置は、第1案内壁421の軸方向の中点よりも基部41寄りに設定されている。
【0041】
また、孔部46の下端部46aの位置は、窪み部412の上端面412aつまり反第1インシュレータ31側の端面の位置よりも基部41に近づく位置に設定されている。孔部46の上端部46bの位置は、窪み部412の上端面412aの位置よりも軸方向に関して基部41から離れる位置に設定されている。また、孔部46の上端部46bの位置は、立ち上がり部411の上端面411aつまり軸方向に関して基部41から離れる側の面の位置よりも基部41から離れる位置に設定されている。
【0042】
この場合2個の凹部47は、第1案内壁421の自由端部つまり軸方向に関して基部41から離れる側の端部の一部を、基部41に向けて切り欠くことで凹ませて形成されている。凹部47は、孔部46を軸方向に関して基部41から離れる方向に延長した領域に設けられている。つまり、規制部材70で第2渡り部63を巻き付ける際、孔部46に挿通された規制部材70の一の端部は、収容部40に関して凹部47の外側を通過することとなる。規制部材70は、径方向内側の第1案内壁421の径方向内側つまり収容部40に関しては第1面401の外側を通ることで、第2渡り部63を巻き付ける際に、第2渡り部63と規制部材70自体を収容部40に固定する。
【0043】
凹部47の周方向の幅寸法は、規制部材70の幅寸法以上に設定されている。好ましくは、凹部47の周方向の幅寸法は、規制部材70の幅寸法よりも大きく設定されている。そのため、規制部材70は、孔部46を挿通して第2渡り部63を包囲する際に、少なくとも一部が凹部47に嵌り込む。凹部47は、第2渡り部63を包囲した状態で、規制部材70の周方向への移動を規制する。また、凹部47の周方向の幅寸法は、例えば規制部材70の幅寸法の1.2倍以下、好ましくは1.1倍以下に設定されている。これにより、規制部材70が少なくとも一部において凹部47に嵌った状態で、規制部材70の周方向への移動が更に規制される。
【0044】
凹部47の軸方向の深さ寸法は、例えば規制部材70の幅寸法の25%以上、好ましくは50%以上に設定することができる。本実施形態では、凹部47の軸方向の深さ寸法は、規制部材70の幅寸法以上に設定されている。そのため、図9図11に示すように、規制部材70は、凹部47に嵌って第2渡り部63に巻き付けられた状態で、収容部40の軸方向外側に突出することが抑制される。
【0045】
孔部46と凹部47とは、引き回し通路45の径方向延長線上に設けられている。つまり、孔部46と凹部47とは、引き回し通路45によって形成された径方向外側の第4案内壁424の開口部と対向する位置に設けられている。そのため、規制部材70は、第2渡り部63を巻き付けた状態で、図9図11に示すように、収容部40の径方向外側つまり第2面402側において、第2渡り部63と接触して第2渡り部63の移動を規制する。
【0046】
このようにして構成された複数の巻き線ブロック80は、各相のものが例えばU相、V相、W相の順に周方向に連続して配置される。各巻き線ブロック80のインシュレータ30の覆い部33から引き出されたコイル導線60の巻き始め端と巻き終わり端とは、それぞれ結線されている。詳細は図示しないが、固定子10は、U相、V相、W相の3相で構成され、コイル導線60はスター結線されている。第1インシュレータ31側から引き出されたコイル導線60の巻き始め側である第1渡り部62は、中性点として3相の第1渡り部62が相互に結線されている。この場合、隣接する3個の巻き線ブロック80の第1渡り部62の端部は、例えば加圧通電熱溶着により結線されている。本実施形態では、溶着箇所は固定子10全体で8箇所となる。第2インシュレータ32の引き出し溝部44から引き出されたコイル導線60の巻き終わり側である第2渡り部63は、同相同士が結線されて、図1に示すように対応する相の給電端子90U、90V、90Wに接続される。
【0047】
固定子10の製造手順について図12図13とを参照して説明する。固定子10の製造が開始すると(図12のスタート)、ステップS11において、第1インシュレータ31及び第2インシュレータ32が分割コア16に装着される。ステップS12において、インシュレータ30の覆い部33を介して、コイル導線60の巻回部61が分割コア16のティース本体19に巻回される。ステップS13において、コイル導線60の巻き終わり側部分つまり第2渡り部63は、第2インシュレータ32の引き出し溝部44から収容部40側に引き出される。なお、コイル導線60の巻き始め側部分つまり第1渡り部62は、第1インシュレータ31の詳細は図示しない収容部311側に引き出される。
【0048】
ステップS14において、コイル導線60が巻回された複数の巻き線ブロック80はリング部材15に圧入することによって収容される。これにより、分割コア16は円環状に配置されて固定子コア14が形成される。ステップS15において、第2渡り部63は、引き回し通路45を引き回されて収容部40の案内溝部43内に収容される。ステップS16において、第2渡り部63の端部はU相、V相、W相それぞれ相毎に溶接される。この場合、各相8本の第2渡り部63の端部は、例えば加圧しながら通電することで発生した熱によって溶接される加圧通電熱溶着又は抵抗溶接などの圧接によって溶接されて良い。
【0049】
ステップS17において、隣接する3つの巻き線ブロック80の第1渡り部62の端部が溶接される。これにより、コイル導線60の中性点側が結線される。第1渡り部62の端部は、加圧通電熱溶着又は抵抗溶接などの圧接によって溶接されて良い。ステップS18において、溶接されていない部分と、溶接された部分とを含む第1渡り部62は、第1インシュレータ31側の収容部311に収容される。
【0050】
ステップS19において、規制部材70の巻き付け工程が実行される。巻き付け工程の詳細を図13に示す。ステップS21において、規制部材70は収容部40に挿通される。この際、規制部材70は孔部46と引き回し通路45とを通って、収容部40の径方向に第1面401側から第2面402側までを貫通する。ステップS22において、各収容部40内に収容された複数の第2渡り部63は、共に規制部材70によって巻かれる。ステップS23において、規制部材70は円環状態に固定される。これにより、規制部材70を第2渡り部63の周囲に巻き付けることで、第2渡り部63は収容部40に固定される。このようにして、規制部材70の巻き付け工程が実行される。図12に戻り、ステップS20において、固定子コア14は、詳細は図示しない固定子ケースに収容される。具体的には、複数の巻き線ブロック80を内部に円環配置して収納したリング部材15が固定子ケースに圧入される。このようにして、固定子10が製造される(エンド)。
【0051】
更に、このようにして製造された固定子10は、任意の既知の方法により回転子11等と組み合わされて回転電機100が製造される。
【0052】
ここで、コイル導線60の第2渡り部63が収容部40から飛び出してしまうとコイル導線60の巻き崩れが生じる虞がある。縛り糸によって第2渡り部63を固定する方法も知られているが、縛り糸自体が周方向等にずれてしまうことがあり、第2渡り部63の飛び出しを十分に防ぐことができていなかった。
【0053】
これに対し、以上説明した本実施形態によれば、固定子10は、巻き線ブロック80と、複数の分割コア16と、第1インシュレータ31と、第2インシュレータ32とを含むインシュレータ30と、コイル導線60と、規制部材70とを備える。巻き線ブロック80は、円環状に配置されている。分割コア16は、巻き線ブロック80の一部を構成し、互いに組み合わされて円環状の固定子コア14を構成する。インシュレータ30は、巻き線ブロック80の位置部を構成し、複数の分割コア16の各々に装着される。コイル導線60は、巻き線ブロック80の一部を構成し、インシュレータ30を介して分割コア16に巻回される巻回部61と、巻回部61から引き出される第1渡り部62及び第2渡り部63とを有する。規制部材70は、コイル導線60の移動を規制する。第2インシュレータ32は、第2渡り部63を収容する収容部40を有する。収容部40は、第1面401及び第2面402と、開口部としての孔部46及び引き回し通路45と、を有する。第1面401と第2面402とは、互いに対向する面を形成する。孔部46及び引き回し通路45は、互いに連通し、それぞれ第1面401と第2面402とに形成された開口部である。規制部材70は屈曲可能な部材で構成され、第1面401の開口部である孔部46と、第2面402の開口部である引き回し通路45とを挿通して円環形状とした状態で固定可能に構成されている。つまり、規制部材70は、収容部40に収容された第2渡り部63に巻き付けられた状態で固定可能に構成されている。
【0054】
これによれば、規制部材70自体も、孔部46を挿通することで収容部40に固定されるため、規制部材70が周方向に移動することが規制されている。そのため、規制部材70によって効果的に第2渡り部63の脱落が抑制され、固定子10は、短絡等の発生を低減することができる。また、規制部材70は、孔部46及び引き回し通路45を挿通させて、円環状に固定するだけで良いので、極めて簡単に第2渡り部63の脱落を抑制することができる。また、規制部材70としては例えば結束バンドなどの入手が容易な部材を使用できる。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる固定子10が提供される。
【0055】
なお、固定子10は、固定子コア14と、リング部材15と、複数の分割コア16と、第1インシュレータ31と、第2インシュレータ32とを含むインシュレータ30と、コイル導線60と、規制部材70とを備える。固定子コア14は、円環状に形成されている。分割コア16は、固定子コア14を構成する。リング部材15は、円環状に形成されており、内部に複数の分割コア16を円環状に並べて収容する。
【0056】
収容部40は、第1面401と第2面402とのうち少なくとも一方の端部に、規制部材70を受け入れる凹部47を有する。本実施形態では、凹部47は第1面401の自由端部に設けられている。
【0057】
凹部47に規制部材70が嵌ることで、規制部材70自体の周方向への移動が更に抑制される。そのため、規制部材70が緩んでしまうことを抑制することができる。したがって、第2渡り部63が収容部40から脱落することを更に効果的に抑制することができる。
【0058】
ここで、固定子10のスロットの数が増えると収容部40に収容される第2渡り部63の最大本数が大きくなる。それに伴い、収容部40の容積が十分に大きくなければつまり第1面401及び第2面402が十分に広くなければ第2渡り部63を収容部40に収容できない。例えば案内溝部43が固定子10の径方向に窪ませて形成されている構成の場合、収容部40が固定子10の径方向外側に過度に突出してしまう虞がある。収容部40が分割コア16のバックヨーク部18よりも径方向外側に大きく突出した場合、回転電機100の径が大きくならざるを得ない。更に、そのような場合、分割コア16をリング部材15に圧入する際に、規制部材70が妨げとなってしまったり、圧入の際に発生する摩擦熱で破損してしまったりする虞がある。
【0059】
これに対し、第1面401は、収容部40の固定子コア14の径方向内側の面を形成する。第2面402は、収容部40の固定子コア14の径方向外側の面を形成する。収容部40は、第1面401と第2面402との間に設けられ、固定子コア14の軸方向に窪ませて形成され第2渡り部63を収容する複数の溝部としての第1案内溝部431、第2案内溝部432、及び第3案内溝部433を有する。
【0060】
これによれば、案内溝部43を固定子コア14の軸方向に窪ませて形成することで、スロット数が増えても、収容部40を径方向外側に過度に突出させる必要がないため、回転電機100の径が大きくなることを抑制できる。また、そのため、分割コア16をリング部材15に圧入する際に、規制部材70が妨げとなってしまったり、圧入の際に発生する摩擦熱で破損してしまったりすることを低減できる。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる固定子10が提供される。
【0061】
第1面401に形成された開口部である孔部46は、第1面401を厚み方向に貫通して形成された貫通孔である。凹部47は、孔部46を軸方向に延長した領域に設けられている。
【0062】
これによれば、孔部46と凹部47とは軸方向に平行な一直線上に設けられている。そのため、規制部材70が孔部46と凹部47とを通ることで、規制部材70の第1面401の外側つまり収容部40の径方向内側に延びる部分の長さを最短にすることができる。よって、規制部材70に緩みが生じにくくなる。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる固定子10が提供される。
【0063】
ここで、コイル導線60の径又は幅寸法が異なると、収容部40に収容された渡り部全体の軸方向の寸法が変動する。例えば、コイル導線60の径又は幅寸法が小さく収容部40に収容された複数の第2渡り部63全体の軸方向の寸法が小さくなった場合について検討する。この場合、孔部46の位置を固定すると、孔部46を挿通した規制部材70で第2渡り部63を巻き付けしても、規制部材70と第2渡り部63との間に大きく隙間が空いてしまう虞がある。そのため、コイル導線60の径によっては、規制部材70が効果的に第2渡り部63の飛び出しを抑制できない可能性がある。
【0064】
これに対し、本実施形態では、第1面401の開口部である孔部46は、固定子コア14の軸方向の長さ寸法が長径、周方向の長さ寸法が短径となるように形成されている。本実施形態で、孔部46は、軸方向に長径を有する長孔である。他の実施形態では、孔部46は、例えば軸方向に長径を有する楕円径、又は軸方向に長辺を有する矩形若しくは角丸矩形であっても良い。
【0065】
これによれば、規制部材70の位置が孔部46の長軸の範囲内で移動可能なため、規制部材70が第2渡り部63を巻き付けする際に形成される円環形状の径を、コイル導線60の径又は幅寸法に応じて可変とすることができる。そのため、本実施形態の固定子10は、規制部材70と第2渡り部63との間に大きく隙間が空いてしまうことを抑制し、コイル導線60の径又は幅寸法によらずに第2渡り部63の飛び出しを効果的に抑制することができる。また、本実施形態の固定子10は、規制部材70の厚み寸法の変更にも対応できる。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる固定子10が提供される。
【0066】
固定子コア14は、複数この場合各分割コア16に2個の規制部材70を有する。第1面401は、収容部40の固定子コア14の周方向に関する中心から対称に配置された複数この場合2個の開口部としての孔部46を有する。
【0067】
これによれば、複数の規制部材70によって、バランスよく第2渡り部63を固定することができるので、より効果的に第2渡り部63の脱落を防止することができる。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる固定子10が提供される。
【0068】
本実施形態のインシュレータ30は、コイル導線60の第2渡り部63を収容する収容部40を備える。収容部40は、第1面401及び第2面402と、複数の溝部としての第1案内溝部431、第2案内溝部432、及び第3案内溝部433と、開口部としての孔部46及び引き回し通路45を有する。第1面401と第2面402とは、互いに対向する面を形成する。第1案内溝部431、第2案内溝部432、及び第3案内溝部433は、第1面401と第2面402との間に設けられ、同一方向に窪ませて第2渡り部63を相毎に分離して収容する。孔部46及び引き回し通路45は、互いに連通し、第1面401と第2面402とに向かい合って形成された開口部である。
【0069】
これによれば、インシュレータ30は、例えば結束バンドなどの規制部材70を孔部46に挿通することで、第2渡り部63を収容部40に固定し、規制部材70が周方向に移動することを規制することができる。そのため、規制部材70を使用することによって効果的に第2渡り部63の脱落が抑制され、固定子10は、短絡等の発生を低減することができる。また、規制部材70を孔部46及び引き回し通路45を挿通させて、円環状に固定するだけで良いので、インシュレータ30は、極めて簡単に第2渡り部63の脱落を抑制することができる。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できるインシュレータ30が提供される。
【0070】
更に、本実施形態によれば、回転電機100は、固定子10又はインシュレータ30を有する固定子10と、回転子11とを備える。これによれば、上記に説明の通り、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる回転電機100が提供される。
【0071】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態では、孔部46は長孔であったが、これに限らない。例えば、他の実施形態では、孔部46は、長孔、楕円、長角孔等に形成することができる。この場合も、上述の効果が奏される。また、孔部46は、円形や矩形、角丸矩形、多角形、角丸多角形であっても良い。この場合は、コイル導線60の径の変更に対応できる範囲が狭くなるが、このような実施形態も上述の他の効果を奏することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、第1面401と第2面402とは、収容部40の径方向内側の面と径方向外側の面とを形成しているが、これに限らない。例えば、第1面401と第2面402とは、収容部40の軸方向一の面と軸方向他の面とを形成する構成であっても良い。この場合、第1案内溝部431、第2案内溝部432、及び第3案内溝部433は、第1面401と第2面402との間に径方向に窪ませて形成される。このような実施形態では、例えばスロット数を増やした場合に、回転電機100の径が大きくなってしまう可能性があるが、上述のその他の効果を奏することができる。
【0073】
更に、上記実施形態では、規制部材70によって第2インシュレータ32の収容部40に収容される第2渡り部63を固定することについて説明したが、これに限らない。例えば、第1インシュレータ31の収容部311に収容する第1渡り部62を規制部材70によって固定しても良い。この場合、詳細は図示しないが、収容部311の径方向内側の面と外側の面とに形成されて互いに連通する開口部を設けることができる。規制部材70は、径方向内側の面と外側の面とに形成された開口部を挿通して、第1渡り部62を囲む円環形状とした状態で固定可能である。これにより、収容部311に収容された第1渡り部62の移動を規制することができる。また、この際、開口部を収容部311の周方向の中心から線対称に複数個設けることで、規制部材70によって第1渡り部62を固定した際に、収容部311の周方向全体に亘って、バランスよく固定することができる。更にまた、収容部311の径方向内側の面と外側の面とのうち少なくとも一方の端部に、規制部材70を受け入れる凹部を設けることで、規制部材70の移動を規制し、第1渡り部62の固定を一層確実にすることができる。
【0074】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10…固定子、11…回転子、15…固定子コア、16…分割コア、30…インシュレータ、31…第1インシュレータ(インシュレータ)、32…第2インシュレータ(インシュレータ)、40…収容部、401…第1面、402…第2面、45…引き回し通路(第2面の開口部)、43…案内溝部(溝部)、431,432,433…案内溝部(溝部)、46…孔部(第1面の開口部)、47…凹部、60…コイル導線、61…巻回部、62…第1渡り部(渡り部)、63…第2渡り部(渡り部)、70…規制部材、80…巻き線ブロック、100…回転電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状に配置された複数の巻き線ブロックと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記複数の分割コアの各々に装着されるインシュレータと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記インシュレータを介して前記複数の分割コアの各々に巻回される巻回部と、前記巻回部から引き出される渡り部とを有するコイル導線と、
前記コイル導線の移動を規制する規制部材と、を備え、
前記インシュレータは、前記渡り部を収容する収容部を有し、
前記収容部は、
互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、
互いに連通し、前記第1面と前記第2面とにそれぞれ形成された開口部と、を有し、
前記規制部材は屈曲可能な部材で構成され、前記第1面に形成された開口部及び前記第2面に形成された開口部を挿通して円環形状とした状態で固定可能に構成されており
前記収容部は、前記第1面と前記第2面とのうち少なくとも一方の端部に、前記規制部材を受け入れる凹部を有し、
前記第1面に形成された前記開口部は前記第1面を厚み方向に貫通して形成された貫通孔であり、
前記凹部は、前記第1面の前記開口部を前記固定子コアの軸方向に延長した領域に設けられている、
固定子。
【請求項2】
前記第1面は、前記収容部の前記固定子コアの径方向内側の面を形成し、前記第2面は、前記収容部の前記固定子コアの径方向外側の面を形成し、
前記収容部は、前記第1面と前記第2面との間に設けられ、前記固定子コアの軸方向に窪ませて形成され、前記渡り部を収容する複数の溝部を有する
請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記第1面の前記開口部は、前記固定子コアの軸方向の長さ寸法が長径であり、前記固定子コアの周方向の長さ寸法が短径であるように形成されている
請求項1又は2に記載の固定子。
【請求項4】
複数の前記規制部材を備え、
前記第1面は、前記収容部の前記固定子コアの周方向に関する中心から対称に配置された複数の前記開口部を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の固定子。
【請求項5】
互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアの各々に装着されるインシュレータであって、
コイル導線の渡り部を収容する収容部を備え、
前記収容部は、
互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、
前記第1面と前記第2面との間に設けられ、同一方向に窪ませて前記渡り部を相毎に分離して収容する複数の溝部と、
互いに連通し、それぞれ前記第1面と前記第2面とに向かい合って形成された開口部とを有し、
前記収容部は、前記第1面と前記第2面とのうち少なくとも一方の端部に、屈曲可能な部材で構成され、前記第1面に形成された開口部及び前記第2面に形成された開口部を挿通して円環形状とした状態で固定可能に構成された規制部材を受け入れる凹部を有し、
前記第1面に形成された前記開口部は前記第1面を厚み方向に貫通して形成された貫通孔であり、
前記凹部は、前記第1面の前記開口部を前記固定子コアの軸方向に延長した領域に設けられている、
インシュレータ。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の固定子又は請求項に記載のインシュレータを有する固定子と、回転子とを備える回転電機。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本実施形態の固定子は、円環状に配置された複数の巻き線ブロックと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記分割コアの各々に装着されるインシュレータと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記インシュレータを介して前記分割コアに巻回される巻回部と、前記巻回部から引き出される渡り部とを有するコイル導線と、前記コイル導線の移動を規制する規制部材と、を備える。前記インシュレータは、前記渡り部を収容する収容部を有し、前記収容部は、互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、互いに連通し、前記第1面と前記第2面とにそれぞれ形成された開口部と、を有する。前記規制部材は屈曲可能な部材で構成され、前記第1面の開口部及び前記第2面の開口部を挿通して前記収容部に収容された前記渡り部に巻き付けられた状態で固定可能に構成されている。前記収容部は、前記第1面と前記第2面とのうち少なくとも一方の端部に、前記規制部材を受け入れる凹部を有する。前記第1面に形成された前記開口部は前記第1面を厚み方向に貫通して形成された貫通孔である。前記凹部は、前記第1面の前記開口部を前記固定子コアの軸方向に延長した領域に設けられている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本実施形態のインシュレータは、互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアの各々に装着されるインシュレータであって、コイル導線の渡り部を収容する収容部を備える。前記収容部は、互いに対向する面を形成する第1面及び第2面と、前記第1面と前記第2面との間に設けられ、同一方向に窪ませて前記渡り部を相毎に分離して収容する複数の溝部と、互いに連通し、それぞれ前記第1面と前記第2面とに向かい合って形成された開口部とを有する。前記収容部は、前記第1面と前記第2面とのうち少なくとも一方の端部に、屈曲可能な部材で構成され、前記第1面に形成された開口部及び前記第2面に形成された開口部を挿通して円環形状とした状態で固定可能に構成された規制部材を受け入れる凹部を有する。前記第1面に形成された前記開口部は前記第1面を厚み方向に貫通して形成された貫通孔である。前記凹部は、前記第1面の前記開口部を前記固定子コアの軸方向に延長した領域に設けられている。