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特開2023-30431インシュレータ、固定子、及びそれらを用いた回転電機。
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  • 特開-インシュレータ、固定子、及びそれらを用いた回転電機。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030431
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】インシュレータ、固定子、及びそれらを用いた回転電機。
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20230301BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135557
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】望月 資康
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌明
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604PB03
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】コイル導線を簡単な方法で適切に固定できるインシュレータ、固定子及び回転電機を提供する。
【解決手段】固定子は、円環状に配置された複数の巻き線ブロックと、複数の巻き線ブロックの一部を構成し、互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアと、複数の巻き線ブロックの一部を構成し、複数の分割コアの各々に装着されるインシュレータと、複数の巻き線ブロックの一部を構成し、インシュレータを介して複数の分割コアの各々に巻回される巻回部と、巻回部から引き出される渡り部とを有するコイル導線と、コイル導線の移動を規制する規制部材と、を備える。複数のインシュレータは、渡り部を収容する収容部を有し、収容部は、固定子コアの周方向に沿って延び固定子コアの軸方向に窪ませて形成された1又は複数の溝部を有する。規制部材は、1又は複数の溝部の各開口部を少なくとも部分的に覆った状態で収容部に装着される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状に配置された複数の巻き線ブロックと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記複数の分割コアの各々に装着されるインシュレータと、
前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記インシュレータを介して前記複数の分割コアの各々に巻回される巻回部と、前記巻回部から引き出される渡り部とを有するコイル導線と、
前記コイル導線の移動を規制する規制部材と、を備え、
前記複数のインシュレータは、前記渡り部を収容する収容部を有し、
前記収容部は、
前記固定子コアの周方向に沿って延び前記固定子コアの軸方向に窪ませて形成された1又は複数の溝部を有し、
前記規制部材は、前記1又は複数の溝部の各開口部を少なくとも部分的に覆った状態で前記収容部に装着される
固定子。
【請求項2】
前記規制部材は、前記固定子コアの軸方向に対して垂直な面を形成する頭部と、前記頭部から前記収容部に向けて突出する複数の脚部と、前記複数の脚部の各々の端部に設けられた爪部と、を有し、
前記収容部は、前記爪部を受ける複数の係止部を有する
請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記複数の脚部は、前記頭部における前記固定子コアの径方向内側端部と径方向外側端部とからそれぞれ突出して設けられている
請求項2に記載の固定子。
【請求項4】
前記頭部において前記固定子コアの前記径方向外側端部から突出して設けられた脚部に形成された前記爪部は、前記固定子コアの周方向に突出して形成されている
請求項3に記載の固定子。
【請求項5】
複数の前記規制部材を備え、
複数の前記規制部材の各々は、前記複数のインシュレータの各々に設けられた収容部に装着される
請求項1から4のいずれか一項に記載の固定子。
【請求項6】
前記規制部材は、複数の前記インシュレータに対して装着される
請求項1から4のいずれか一項に記載の固定子。
【請求項7】
互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアに装着されるインシュレータであって、
コイル導線の渡り部を収容する収容部を備え、
前記収容部は、
前記固定子コアの周方向に沿って前記固定子コアの軸方向に窪ませて形成された1又は複数の溝部と、
前記1又は複数の溝部に対して前記固定子コアの径方向内側に形成された壁部と、前記固定子コアの径方向外側に形成された壁部と、
前記径方向内側に形成された壁部と前記径方向外側に形成された壁部とにそれぞれ形成された、前記1又は複数の溝部の各開口部を少なくとも部分的に覆った状態で前記収容部に装着される規制部材を受けて固定する係止部と、を有する
インシュレータ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の固定子又は請求項7に記載のインシュレータを有する固定子と、回転子とを備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の本実施形態は、インシュレータ、固定子、及びそれらを用いた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機として、固定子と回転子とを備えたものがある。固定子は、例えば円環状の固定子コアと、固定子コアの内周面から径方向内側に向かって突出した複数のティースと、ティースに巻回されたコイル導線と、ティースに装着されティースとコイル導線との間の絶縁を確保するインシュレータと、を備える。
【0003】
回転子は、例えば固定子の径方向内側に回転自在に配置された略円柱状の回転子コアと、回転子コアに設けられた磁石と、を備える。コイル導線に電流を供給すると、各ティースに鎖交磁束が発生する。この鎖交磁束と回転子の磁石との間で時期的な吸引力や反発力が生じ、回転子が回転する。
【0004】
また、この種の回転電機として、固定子コアを複数の分割コアによって構成して、コイル導線の巻回作業を容易にし、占積率を高めたものが知られている。この回転電機で用いられる分割コアは、互いに組み合わされた状態で固定子コアの円環形状部を形成する概ね円弧状のバックヨーク部と、バックヨーク部から径方向内側に突出するティースとを有している。分割コアを有した複数の巻き線ブロックは、円環状のリング部材により円環状に配置されて固定子を構成する。
【0005】
各分割コアには、絶縁材料で構成されたインシュレータが装着されている。インシュレータは、ティースに装着されて外周にコイル導線が巻回されるティース覆い部と、ティース覆い部から引き出されたコイル導線と他の分割コアから引き出されたコイル導線とを収容すると共に端子接続部に案内する渡り部収容部と、を有する。渡り部収容部は、ティース覆い部のコア径方向外側に概ね円弧状に一体に形成されている。渡り部収容部は、ティース覆い部から引き出されたコイル導線の渡り部と、他の分割コアから引き出されたコイル導線の渡り部とを固定子コアの円周方向に沿って案内する案内溝部が形成されている。案内溝部は、例えばU相、V相、W相などの複数の相に対応して相毎にコア径方向に互いに離れて複数段に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第566976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の回転電機は、ティース覆い部からコア径方向の外側に引き出されたコイル導線の渡り部が、渡り部収容部の対応する案内溝部に添うように単純に曲げられた構造である。そのため、固定子の組み立て時に、各コイルの渡り部を引き回しながら複数の分割コイルを組み付ける際に、ティース覆い部からコア径方向の外側に引き出されたコイル導線の渡り部や、他の分割コアから引き出されたコイル導線の渡り部等が、案内溝部から脱落してしまうことがある。この場合、コイル導線が所定の位置からずれてしまい、短絡等が生じる虞がある。
【0008】
そこで、コイル導線を簡単な方法で適切に固定できるインシュレータ、固定子及び回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の固定子は、円環状に配置された複数の巻き線ブロックと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、互いに組み合わされて円環状の固定子コアを構成する複数の分割コアと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記複数の分割コアの各々に装着されるインシュレータと、前記複数の巻き線ブロックの一部を構成し、前記インシュレータを介して前記複数の分割コアの各々に巻回される巻回部と、前記巻回部から引き出される渡り部とを有するコイル導線と、前記コイル導線の移動を規制する規制部材と、を備える。前記複数のインシュレータは、前記渡り部を収容する収容部を有し、前記収容部は、前記固定子コアの周方向に沿って延び前記固定子コアの軸方向に窪ませて形成された1又は複数の溝部を有する。前記規制部材は、前記1又は複数の溝部の各開口部を少なくとも部分的に覆った状態で前記収容部に装着される。
【0010】
本実施形態のインシュレータは、円環状の固定子コアに装着される。インシュレータは、コイル導線の渡り部を収容する収容部を備える。前記収容部は、前記固定子コアの周方向に沿って前記固定子コアの軸方向に窪ませて形成された複数の溝部と、前記複数の溝部に対して前記固定子コアの径方向内側に形成された壁部と、前記固定子コアの径方向外側に形成された壁部と、前記壁部にそれぞれ形成された、前記複数の溝部の各々の開口部を少なくとも部分的に覆った状態で収容部に装着される規制部材の爪部を受けて固定する係止部と、を有する。
【0011】
本実施形態の回転電機は、上記固定子又は上記インシュレータを有する固定子と、回転子とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態による回転電機の一例を固定子ケースを外して軸方向の一の側から見た概略図
図2図1に示す第1実施形態による回転電機の一例について規制部材を外した状態で示す概略図
図3】第1実施形態による回転電機の一例の巻き線ブロックを径方向内側から見た斜視図
図4】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを径方向内側から見た斜視図
図5】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを径方向外側から見た斜視図
図6】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを軸方向の一の側から見た図
図7】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを径方向内側から見た図
図8】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを径方向外側から見た図
図9】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを図8のX9-X9線に沿って見た断面図
図10】第1実施形態による回転電機の一例の規制部材の斜視図
図11】第1実施形態による回転電機の一例の規制部材を軸方向内側から見た図
図12】第1実施形態による回転電機の一例の規制部材を軸方向外側から見た図
図13】第1実施形態による回転電機の一例の規制部材を周方向一の側から見た図
図14】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを規制部材を装着した状態で径方向内側から見た斜視図
図15】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータに規制部材を装着した状態で収容部周辺を拡大して径方向外側から見た斜視図
図16】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを規制部材を装着した状態で軸方向の一の側から見た図
図17】第1実施形態による回転電機の一例の第2インシュレータを規制部材を装着した状態で図16のX17-X17線に沿って示す断面図
図18図16の収容部周辺を拡大して示す図
図19】第1実施形態による回転電機の一例の固定子の製造方法を表すフローチャート
図20】第2実施形態による回転電機の一例を固定子ケースを外して軸方向の一の側から見た概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について図1図19を参照して説明する。回転電機100は、図1に示すように、固定子10と、回転子11と、図示しない固定子ケースと、を備える。図1は、固定しケースを外した状態で回転電機100を軸方向の一の側から見た図である。以下の説明では、図1の紙面に直交する向きである回転子11の回転軸線Axと平行な方向を軸方向、回転子11の回転方向を周方向、軸方向及び回転方向に直交する回転子11の径方向を径方向と称する。図面においては、軸方向をA、周方向をC、径方向をRと記載する。なお、後述する固定子コア14の軸方向であるコア軸方向は、回転子11の回転軸線Axの延びる方向と一致する。固定子コア14の周方向であるコア周方向は、回転子11の回転方向つまり周方向と一致する。固定子コア14の径方向であるコア径方向は、回転子11の径方向と一致する。
【0015】
固定子10は、略円筒状に形成され固定子ケースの内周面に嵌合され固定されている。回転子11は、固定子10の径方向内側に配置され、固定子10に対して回転自在に設けられている。図示しない固定子ケースは、略円筒状に形成され、内部に固定子10を収容する。固定子10と固定子ケースとの軸方向は、回転軸線Axと一致している。
【0016】
回転子11は、シャフト12と、回転子コア13と、図示しない磁石とを有する。シャフト12は、円柱状に形成されて回転軸線Ax回りに回転する。回転子コア13は、シャフト12に固定されており、径方向中央に回転子コア13を軸方向に貫通する貫通孔131が形成されている。シャフト12は、貫通孔131に例えば圧入により固定されている。回転子コア13の外周部寄りに、図示しない複数の磁石が周方向に並んで取り付けられている。
【0017】
固定子10は、固定子コア14と、リング部材15と、インシュレータ30と、コイル導線60と、規制部材70とを有する。固定子コア14は、磁性体部材で全体として円筒状に形成されており、複数に分割可能に構成されている。固定子コア14は、複数この場合24個の分割コア16を含んで構成されている。複数の分割コア16を円環状のリング部材15に圧入し互いに組み合わせることにより、全体として円筒状である1つの固定子コア14が形成されている。なお、リング部材15の軸方向は、回転軸線Axと一致する。
【0018】
インシュレータ30は、絶縁性の部材で形成され、固定子コア14に装着されている。この場合、インシュレータ30は各分割コア16の少なくとも一部を被覆している。コイル導線60は、固定子コア14に巻回されている。本実施形態では、コイル導線60は集中巻き方式により固定子コア14に巻回されている。また、コイル導線60は、インシュレータ30の上から各分割コア16に巻回されている。
【0019】
規制部材70は、図1及び図2に破線で示されたコイル導線60の後述する渡り部63を覆うことで、渡り部63がインシュレータ30の軸方向外側へ移動することを規制する。これにより、規制部材70は渡り部63の脱落を抑制する機能を有する。図1は、規制部材70を装着した状態の回転電機100を示す。図2は、規制部材70を外した状態の回転電機100を示す。規制部材70は、絶縁性の部材で形成されている。
【0020】
コイル導線60は、分割コア16に巻回される巻回部61と、巻回部61の両側から外部に引き出される渡り部62、63と、を有している。第1渡り部62は、コイル導線60の巻き始め側から引き出された部分である。第2渡り部63は、コイル導線60の巻き終わり側から引き出された部分である。本実施形態では、コイル導線60は断面形状が矩形のいわゆる平角線であるが、これに限らない。他の実施形態では、コイル導線60は断面形状が円形のいわゆる丸線であっても良い。
【0021】
分割コア16は、例えば金属板を複数枚積層した構成である。分割コア16は、ケイ素鋼板等の軟磁性粉を加圧成型して形成しても良い。本実施形態では、24個の分割コア16のうち、3個おきつまり間に2個挟んで配置されたこの場合計8個の分割コア16はU相の分割コア16である。U相の分割コア16に隣接して3個おきに配置されたこの場合8個の分割コア16はV相の分割コア16である。U相の分割コア16とV相の分割コア16とに隣接して3個おきに配置されたこの場合計8個の分割コア16は、W相の分割コア16である。
【0022】
各分割コア16にインシュレータ30を介してコイル導線60を巻回することで、巻き線ブロック80が構成される。図3は、巻き線ブロック80の斜視図である。巻き線ブロック80は、分割コア16と、インシュレータ30と、コイル導線60とを含んで構成される。分割コア16は、軸方向視が略T字状に形成されている。分割コア16は、ティース17と、バックヨーク部18とを有している。ティース17は、バックヨーク部18から径方向内側に向かって突出して形成されている。ティース17は、少なくとも一部がインシュレータ30によって被覆される。つまり、インシュレータ30は、ティース17の周囲を被覆するように各分割コア16に装着されている。コイル導線60は、インシュレータ30の上から各ティース17に巻回されている。バックヨーク部18は、分割コア16の外周部において周方向及び軸方向に延びる面を形成する。バックヨーク部18は、分割コア16をリング部材15により環状に配置した際に固定子コア14の環状の磁路を形成する箇所である。バックヨーク部18は、軸方向に直交する断面形状の外周部が円弧状となるように形成されている。そのため、固定子コア14は、軸方向視において円環状に連なるバックヨーク部18から複数のティース17が径方向内側に向かって突出した形状となっている。
【0023】
ティース17は、ティース本体19と、鍔部20とを有する。ティース本体19は、径方向に沿って延び、インシュレータ30を介してコイル導線60の巻回を受ける部分である。鍔部20は、ティース本体19の径方向内側端部に接続され、ティース本体19から軸方向及び周方向に突出した面を形成する。ティース本体19と鍔部20とは一体成型されている。ティース本体19と、鍔部20と、バックヨーク部18とは、コイル導線60の巻回部61を巻回する空間であるスロットを囲んでいる。
【0024】
インシュレータ30は、軸方向に複数この場合2個に分割された部材を含んで構成される。この場合、インシュレータ30は、第1インシュレータ31と、第2インシュレータ32とを有する。第1インシュレータ31は、ティース17の軸方向の一の側から分割コア16に装着される。第2インシュレータ32は、ティース17の軸方向の他の側から分割コア16に装着される。この場合、第1インシュレータ31は、例えば図3に示すティース17の上方から分割コア16に装着され、第2インシュレータ32は、例えば図3に示すティース下方から分割コア16に装着される。インシュレータ30を分割コア16に装着すると、第1インシュレータ31と第2インシュレータ32とは隙間なく係合して、第1インシュレータ31と第2インシュレータ32との間からティース17は外部に露出しない構成となっている。インシュレータ30の上からティース17に巻回されるコイル導線60は、第1インシュレータ31側から巻き始められ、巻き終わり端は第2インシュレータ32側から引き出される。なお、以下の説明で、軸方向の第1インシュレータ31側を下側、第2インシュレータ32側を上側と称することがあるが、これは説明の便宜上であり、実際の上下方向とは一致しなくても良い。
【0025】
図4及び図5は、第2インシュレータ32を径方向内側及び径方向外側から見た斜視図である。図6は、第2インシュレータ32を軸方向に関して第1インシュレータ31から離れる側から見た図である。図7及び図8は、第2インシュレータ32をそれぞれ径方向内側及び外側から見た図である。図9は、図8のX9-X9線に沿って軸方向から見た第2インシュレータ32の断面図である。図9において、分割コア16及びコイル導線60の一部が破線で示されている。第2インシュレータ32は、覆い部33と、内壁部34と、外壁部35と、収容部40とを有する。覆い部33は、軸方向の断面形状がU字形状に形成されており、ティース本体19を軸方向の一の側及び周方向の両側から被覆する。内壁部34及び外壁部35は、覆い部33の径方向の内側端部及び外側端部に一体成型されて、軸方向及び周方向に延びる面を形成する。内壁部34は、鍔部20の外周側を被覆する。外壁部35は、バックヨーク部18の内周側を被覆する。
【0026】
収容部40は、外壁部35と一体に形成されている。収容部40は、外壁部35から径方向外側に膨出し、軸方向に突出して設けられている。この場合、収容部40は、軸方向に関して第1インシュレータ31との接続端部と離れる向きすなわち反第1インシュレータ31側に突出して設けられている。収容部40は、覆い部33側から径方向の外側に引き出されたコイル導線60の第2渡り部63や、他の分割コア16から引き出されたコイル導線60の第2渡り部63を収容する。収容部40は、軸方向視において、外周部がバックヨーク部18の外周部の形状に沿うように円弧状に形成されている。
【0027】
収容部40は、基部41と、複数の案内壁42と、複数の案内溝部43と、引き出し溝部44と、引き回し通路45と、を有する。基部41は、軸方向視において概ね環状扇形状に形成されている。複数の案内壁42は、基部41から突出して設けられている。この場合、複数の案内壁42は、基部41から軸方向に関して第1インシュレータ31と接続する端部から離れる向きすなわち上方に向かって延びている。また、複数の案内壁42は、それぞれ径方向に対して概ね垂直な面を形成する。案内壁42は、第2渡り部63を案内壁42に沿って誘導するガイドとして機能する。
【0028】
複数この場合4個の案内壁42は、概ね等間隔に並べられている。径方向内側から外側に向かって順に、第1案内壁421、第2案内壁422、第3案内壁423、及び第4案内壁424と称する。第1案内壁421の径方向内側の面は、収容部40の径方向内側つまりティース17側の面である第1面401を形成する。第4案内壁424の径方向外側の面は、収容部40の径方向外側つまりバックヨーク部18側の面である第2面402を形成する。第2案内壁422及び第3案内壁423は、第1案内壁421と径方向外側の第4案内壁424との間に設けられている。
【0029】
複数の案内溝部43は、第1面401と第2面402との間に設けられている。複数の案内溝部43は、周方向に延び、第2渡り部63を相毎に径方向に分離して収容する。各案内溝部43は、隣接する案内壁42の間に形成されている。案内溝部43は、第2渡り部63が通る通路として機能する。引き出し溝部44は、各案内壁42の周方向の中央部を上端部から基部41との接続部分まで切り欠いて形成されている。このため、引き出し溝部44は、収容部40の径方向内側と外側とを連通している。引き出し溝部44は、巻回部61から引き出された第2渡り部63を径方向の外側に引き出す際の通路として機能する。
【0030】
案内溝部43は、径方向内側から外側に向かって順に、第1案内溝部431、第2案内溝部432、第3案内溝部433と称する。径方向内側の第1案内溝部431は、第1案内壁421と第2案内壁422との間に形成された案内溝部43である。中央部の第2案内溝部432は、第2案内壁422と第3案内壁423との間に形成された案内溝部43である。径方向外側の第3案内溝部433は、第3案内壁423と第4案内壁424との間に形成された案内溝部43である。
【0031】
本実施形態では、第1案内溝部431の内部にU相のコイル導線60の第2渡り部63Uが挿通される。第2案内溝部432の内部にV相のコイル導線60の第2渡り部63Vが挿通される。第3案内溝部433の内部にW相のコイル導線60の第2渡り部63Wが挿通される。各案内溝部431、432、433には、覆い部33側から引き出された第2渡り部63と、他の巻き線ブロック80から延びて来た第2渡り部63とが挿通される。本実施形態では、各案内溝部431、432、433には、それぞれ最大4本の第2渡り部63が挿通される。
【0032】
一又は複数この場合2個の引き回し通路45は、引き出し溝部44と収容部40の周方向端部との間において案内壁42を切り欠いて形成されている。この場合、引き回し通路45は、径方向内側の第1案内壁421以外の第2案内壁422、第3案内壁423及び第4案内壁424を上端部から基部41との接続部分まで切り欠いて形成されている。引き回し通路45によって、収容部40の内部と外部とを連通する開口部が形成されている。引き回し通路45は、図9に示すように、引き出し溝部44を通して径方向外側に引き出された第2渡り部63を、いずれかの案内溝部43を通して周方向の一方側に引き出すときに、第2渡り部63を引き回して方向転換することを可能にする空間を提供する。
【0033】
引き出し溝部44及び引き回し通路45によって、各案内壁421、422、423、424はそれぞれ周方向に複数個に分割されている。第1案内壁421は、引き出し溝部44によって、周方向に2つに分割されている。第2案内壁422、第3案内壁423及び第4案内壁424は、引き出し溝部44と引き回し通路45とによってそれぞれ周方向に4つに分割されている。
【0034】
基部41は、立ち上がり部411を有している。立ち上がり部411は、2つの引き回し通路45、45の間において、基部41の一部を軸方向に関して第1インシュレータ31から離れる方向に立ち上げて形成されている。そのため、第2案内壁422、第3案内壁423、及び第4案内壁424は、立ち上がり部411から突出する部分つまり引き回し通路45、45の間の部分において、立ち上がり部411以外から突出する部分つまり引き回し通路45、45の周方向外側の部分よりも軸方向の長さ寸法が短くなっている。
【0035】
立ち上がり部411は、引き出し溝部44によって、周方向に2つに分割されている。また、立ち上がり部411は、窪み部412を有する。窪み部412は、立ち上がり部411を第2面402側から周方向内側に向かって窪ませて形成されている。窪み部412の径方向の窪みの底部の位置は、概ね第3案内壁423の径方向外側の面と一致する。窪み部412は、図9に示すように、引き出し溝部44を通って収容部40の径方向外側に引き出された第2渡り部63を、周方向に約90°転回させて案内溝部43側に誘導する通路として機能する。
【0036】
図9は、コイル導線60の巻き終わり側を、収容部40に引き出し、第2渡り部63が収容部40に収容された状態を破線で示す。他のこの場合、第2渡り部63は、引き出し溝部44を通って径方向外側に引き出される。引き出された第2渡り部63は、窪み部412において立ち上がり部411の周囲を周方向一方側に引き回される。引き回し通路45に到達した第2渡り部63は、案内溝部431、432、又は433のいずれかの案内溝部43この場合第1案内溝部431を挿通される。案内溝部43から引き出された第2渡り部63は、隣接する分割コア16の収容部40に向けて延びる。
【0037】
なお、各案内壁421、422、423、424の自由端部つまり基部41から離れる側の端部は、概ね一平面上に存在する。当該平面は、軸方向に対して垂直な面を形成する。つまり、各案内壁421、422、423、424の自由端部の立ち上がり部411を考慮しない場合の基部41からの高さ寸法は、概ね同一に設定されている。
【0038】
収容部40は、図4図8等に示すように、係止部として、一又は複数この場合2個の穴部46と一又は複数この場合2個の凸部47とを有する。穴部46と凸部47とは、規制部材70を収容部40に着脱可能に固定する係止部として機能する。穴部46と凸部47とは、それぞれ収容部40の第1面401側と、第2面402側とに設けられている。穴部46は、第1案内壁421に設けられている。凸部47は、第4案内壁424に設けられている。複数の穴部46と複数の凸部47とは、それぞれ収容部40の周方向の中心線に対してつまり引き出し溝部44に対して対称に設けられている。
【0039】
穴部46は、第1案内壁421の第1面401側を、径方向外側に向かって窪ませて形成されている。穴部46は、係止面46aと、傾斜面46bとを有する。係止面46aは、穴部46の基部41から離れる側の面を構成し、軸方向に対して垂直な面を形成する。なお、本明細書において垂直な面とは、対象に対して必ずしも90°の角度を成して交わる面を形成する必要はなく、対象に対して垂直な成分を主に含むベクトル方向に延びる面を意味する。傾斜面46bは、穴部46の基部41に近づく側の面を構成し、径方向に関して傾斜する面を形成している。傾斜面46bは、径方向外側に行くほど基部41から離れ、径方向内側に行くほど基部41に近づくように傾斜している。
【0040】
穴部46は、第1案内壁421の基部41側よりも、自由端側つまり基部41から離れる側の端部寄りに設けられている。例えば、穴部46は、第1案内壁421の軸方向の長さ寸法に関する中点よりも、自由端部側寄りに設けられている。また、穴部46は、第1案内壁421の自由端部から所定の距離離れた位置に設けられている。当該所定の距離は、第1案内壁421の軸方向の長さ寸法の1/2よりも短く設定されている。
【0041】
凸部47は、第4案内壁424の上端部に設けられている。ここで、第4案内壁424は、2つの周方向内側部4241と、複数この場合2つの周方向外側部4242とを含んで構成されている。凸部47は、周方向内側部4241の周方向外側端部において上端部を周方向外側に膨らませて形成されている。換言すると、凸部47は、周方向内側部4241の周方向外側端部において上端部を除いた基部41寄りの部分を周方向内側に凹ませることで形成されている。凸部47は、係止面47aを有する。係止面47aは、凸部47の基部41側の面を構成し、軸方向に対して垂直な面を形成する。凸部47の係止面47aは、穴部46の係止面46aと、概ね同一面上に形成される。つまり、頭部71から係止面47aまでの距離は、頭部71から係止面47aまでの距離と概ね同一に設定されている。
【0042】
規制部材70は、軸方向視において概ね矩形若しくは環状扇形又は円環状に形成されている。本実施形態では、規制部材70は、図10図13に示すように概ね矩形に形成されている。規制部材70は、案内溝部43の開口部側から各案内溝部431、432、433を少なくとも部分的に覆うことで、第2渡り部63が各案内溝部431、432、433から脱落することを抑制する。本実施形態では、各収容部40につき1つの規制部材70が装着される。規制部材70は、絶縁性の例えばプラスチック等の合成樹脂で形成することができる。規制部材70は、いわゆるスナップフィットによって、収容部40と互いに嵌め合って収容部40に装着される。
【0043】
規制部材70は、頭部71と、複数この場合4つの脚部72とを有する。頭部71は、概ね矩形又は環状扇形の板状に形成され、規制部材70の本体を構成する。頭部71は、軸方向に対して垂直な面を形成する。頭部71は、各案内溝部431、432、433の開口部を少なくとも部分的に覆って、各案内溝部431、432、433の開口部から第2渡り部63が飛び出すことを抑制する。脚部72は、頭部71から軸方向に関して基部41に近づく向きに突出して形成されている。脚部72の基部41寄りの端部は自由端部となっており、そのため、脚部72は弾性変形可能に構成されている。
【0044】
本実施形態では規制部材70の周方向の幅寸法は、図14図15等に示すように、収容部40の周方向の幅寸法又は弧の長さよりも短く設定されている。例えば、規制部材70の周方向の幅寸法は、収容部40の弧の長さの1/2以下に設定されている。規制部材70の周方向の幅寸法は、一の周方向内側部4241の周方向一の側の端部から、他の周方向内側部4241の周方向他の側の端部までの距離よりも大きく設定されている。また、規制部材70の周方向の幅寸法は、一の周方向外側部4242の周方向他の側の端部から、他の周方向内側部4241の周方向一の側の端部までの距離よりも小さく設定されている。そのため、規制部材70は、収容部40に装着された状態で、図15に示すように径方向外側から見た場合に、周方向に関して一の引き回し通路45から他の引き回し通路45までの範囲に収まっている。
【0045】
規制部材70が収容部40に装着された状態で、頭部71の基部41に近い側の面は、各案内壁421、422、423、424の自由端部つまり基部41から離れる側の端部或いは上端部に接している。本実施形態では、図15に示すように、頭部71の基部41に近い側の面は、各案内壁421、422、423、424の自由端部に接している。そのため、規制部材70は、第2渡り部63が軸方向に移動する空間を狭めることで、第2渡り部63の不要な移動を効果的に規制することができる。また、規制部材70を設けても規制部材70と収容部40との間に余計な隙間を設けず、できるだけ回転電機100の軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0046】
複数の脚部72は、頭部71の径方向内側端部から突出する複数この場合2個の内側脚部721と、径方向外側端部から突出する複数この場合2個の外側脚部722とを含んで構成されている。本実施形態では、2個の内側脚部721は、頭部71の周方向の一の側の端部と他の側の端部とからそれぞれ突出して設けられている。また、2個の外側脚部722は、頭部71の周方向の一の側の端部と他の側の端部とからそれぞれ突出して設けられている。なお、図10及び図11等に示すように、内側脚部721の周方向外側端部は、頭部71の周方向の端部の延長線上よりもやや内側に設けられている。一方、外側脚部722の周方向外側の端部は、図10図13等に示すように、頭部71の周方向の端部の延長線上に設けられている。そのため、作業者が規制部材70を収容部40に装着する際に取り付け方向を確認しやすくなり、取付け方向を間違えることが抑制される。
【0047】
各脚部721、722は、図10図13等に示すように、それぞれ爪部73を有する。爪部73は、規制部材70が収容部40に装着された状態で、穴部46又は凸部47と嵌り合って、規制部材70を収容部40に固定する。爪部73は、各脚部721、722の自由端部つまり頭部71から離れる側の端部から規制部材70の中心方向に向かって突出する。爪部73は係止面73aと、傾斜面73bとを有する。係止面73aは、爪部73の頭部71側の面であり、軸方向に対して垂直な面を形成する。傾斜面73bは、爪部73の頭部71と離れる側の面であり、軸方向に対して傾斜する面を形成する。
【0048】
内側脚部721に設けられた内側爪部731は、径方向に突出する。本実施形態では、内側爪部731は、内側脚部721から外側に向かって突出する。つまり、2つの内側脚部721に設けられた内側爪部731は、互いに同一の方向に突出する。図17は、規制部材70を装着した状態で第2インシュレータ32を図16のX17-X17に沿って示す断面図である。図18は、図17の収容部40部分を拡大して示す図である。図17及び図18に示すように、内側爪部731は、規制部材70が収容部40に装着された状態で、穴部46に受け入れられて嵌り合う。内側爪部731の係止面73aは、穴部46の係止面46aと接触又は近接している。内側爪部731の傾斜面73bは、径方向内側に行くほど基部41に近づき、径方向外側に行くほど基部41から離れるように傾斜している。
【0049】
図10図12及び図15等に示すように、外側脚部722に設けられた外側爪部732は、外側脚部722から周方向に突出する。本実施形態では、外側爪部732は、外側脚部722からそれぞれ周方向内側すなわち場合規制部材70の周方向に関する中心に向かって突出する。つまり、2つの外側脚部722に設けられた外側爪部732は、互いに向かい合うように突出する。外側爪部732は、規制部材70が収容部40に装着された状態で、凸部47と嵌り合う。外側爪部732の係止面73aは、凸部47の係止面47aと接触又は近接している。本実施形態では、図15等に示すように外側爪部732の係止面73aは、凸部47の係止面47aと接触している。外側爪部732の傾斜面73bは、周方向内側に行くほど基部41から離れ、周方向外側に行くほど基部41に近づくように傾斜している。
【0050】
規制部材70を収容部40に装着する際、規制部材70を図15又は図17の紙面上方つまり軸方向に関して基部41から離れた位置から収容部40に近づけて行くと、脚部721、722の先端部がそれぞれ第1案内壁421と第4案内壁424とに接触する。そのまま規制部材70を軸方向に沿って同一方向に移動させると、脚部721、722は弾性を有するため歪み、脚部721、722の先端部が頭部71よりも規制部材70の外側に開いた状態となる。内側脚部721と第1案内壁421との接触点は内側爪部731の傾斜面73bに沿って移動し、内側爪部731は、第1案内壁421よりも径方向内側に位置するようになる。また、外側脚部722と第4案内壁424の周方向外側部4242との接触点は外側爪部732の傾斜面73bに沿って移動し、外側脚部722の外側爪部732は、周方向外側部4242よりも周方向外側に位置するようになる。更に規制部材70を軸方向に沿って移動させると、図17に示すように爪部731は第1案内壁421の穴部46に受け入れられ、内側脚部721の歪みが解消される。また、図15に示すように爪部732は第4案内壁424の凸部47の下方に形成される凹みに受け入れられて、外側脚部722の歪みが解消される。このようにして、規制部材70は収容部40に装着される。
【0051】
規制部材70が収容部40に装着された状態で規制部材70を軸方向に関して収容部40から離れる向きに引っ張った場合を検討する。この場合、内側爪部731の係止面73aは、穴部46の係止面46aと接触し、また、外側爪部732の係止面73aは、凸部47の係止面47aと接触する。このようにして、規制部材70の軸方向への移動が規制される。なお、各脚部721、722に十分な外力を加えて各脚部721、722の先端部が規制部材70の外側に開くように弾性変形させることで、爪部731、732と係止部としての穴部46及び凸部47との嵌め合いを解消することができる。この状態で規制部材70を、軸方向に関して収容部40から離れる方向に移動させることで、規制部材70を収容部40から取り外すことができる。つまり、規制部材70は、収容部40に着脱可能に装着される。
【0052】
なお、上述のように複数の穴部46及び複数の凸部47は、それぞれ収容部40の周方向の中心に対してこの場合引き出し溝部44に対して線対称に配置されている。これにより、第2渡り部63を固定した際に、収容部40の周方向全体に亘って、バランスよく固定することができる。
【0053】
このようにして構成された複数の巻き線ブロック80は、各相のものが例えばU相、V相、W相の順に周方向に連続して配置される。各巻き線ブロック80のインシュレータ30の覆い部33から引き出されたコイル導線60の巻き始め端と巻き終わり端とは、それぞれ結線されている。詳細は図示しないが、固定子10は、U相、V相、W相の3相で構成され、コイル導線60はスター結線されている。第1インシュレータ31側から引き出されたコイル導線60の巻き始め側である第1渡り部62は、中性点として3相の第1渡り部62が相互に結線されている。この場合、隣接する3個の巻き線ブロック80の第1渡り部62の端部は、例えば加圧通電熱溶着により結線されている。本実施形態では、溶着箇所は固定子10全体で8箇所となる。第2インシュレータ32の引き出し溝部44から引き出されたコイル導線60の巻き終わり側である第2渡り部63は、同相同士が結線されて、図1に示すように対応する相の給電端子90U、90V、90Wに接続される。
【0054】
固定子10の製造手順について図19を参照して説明する。固定子10の製造が開始すると(スタート)、ステップS11において、第1インシュレータ31及び第2インシュレータ32が分割コア16に装着される。ステップS12において、インシュレータ30の覆い部33を介して、コイル導線60の巻回部61が分割コア16のティース本体19に巻回される。ステップS13において、コイル導線60の巻き終わり側部分つまり第2渡り部63は、第2インシュレータ32の引き出し溝部44から収容部40側に引き出される。なお、巻き始め側部分は、第1インシュレータ31の詳細は図示しない収容部311側に引き出される。
【0055】
ステップS14において、コイル導線60が巻回された複数の巻き線ブロック80はリング部材15に圧入することによって収容される。これにより、分割コア16は円環状に配置されて固定子コア14が形成される。ステップS15において、第2渡り部63は、引き回し通路45を引き回されて収容部40の案内溝部43内に収容される。ステップS16において、第2渡り部63の端部はU相、V相、W相それぞれ相毎に溶接される。この場合、各相8本の第2渡り部63の端部は、例えば加圧しながら通電することで発生した熱によって溶接される加圧通電熱溶着又は抵抗溶接などの圧接によって溶接されて良い。
【0056】
ステップS17において、隣接する3つの巻き線ブロック80の第1渡り部62の端部が溶接される。これにより、コイル導線60の中性点側が結線される。第1渡り部62の端部は、加圧通電熱溶着又は抵抗溶接などの圧接によって溶接されて良い。ステップS18において、溶接されていない部分と、溶接された部分とを含む第1渡り部62は、第1インシュレータ31側の収容部311に収容される。
【0057】
ステップS19において、規制部材70が装着される。ステップS17において、規制部材70が収容部40に装着される。これにより、第2渡り部63は規制部材70によって収容部40に固定される。ステップS20において、固定子コア14は、詳細は図示しない固定子ケースに収容される。具体的には、複数の巻き線ブロック80を内部に円環配置して収納したリング部材15が固定子ケースに圧入される。このようにして、固定子10が製造される。
【0058】
更に、このようにして製造された固定子10は、任意の既知の方法により回転子11等と組み合わされて回転電機100が製造される。
【0059】
ここで、コイル導線60の渡り部63が収容部40から飛び出してしまうとコイル導線60の巻き崩れが生じる虞がある。縛り糸によって渡り部63を固定する方法も知られているが、縛り糸自体が周方向等にずれてしまうことがあり、渡り部63の飛び出しを十分に防ぐことができていなかった。
【0060】
これに対し、以上説明した本実施形態によれば、固定子10は、巻き線ブロック80と、複数の分割コア16と、第1インシュレータ31及び第2インシュレータ32を含むインシュレータ30と、コイル導線60と、規制部材70とを備える。巻き線ブロック80は、円環状に配置されている。複数の分割コア16は、複数の巻き線ブロック80の一部を構成し互いに組み合わされて円環状の固定子コア14を構成する。インシュレータ30は、複数の巻き線ブロック80の一部を構成し、複数の分割コア16の各々に装着される。コイル導線60は、複数の巻き線ブロック80の一部を構成し、インシュレータ30を介して複数の分割コア16の各々に巻回される巻回部61と、巻回部61から引き出される渡り部としての第1渡り部62及び第2渡り部63とを有する。規制部材70は、コイル導線60の移動を規制する。第2インシュレータ32は、第2渡り部63を収容する収容部40を有する。収容部40は、1又は複数この場合3個の溝部として案内溝部431、432、433を有する。案内溝部431、432、433は、固定子コア14の周方向に沿って延び固定子コア14の軸方向に窪ませて形成されている。規制部材70は、複数の案内溝部431、432、433の各々の開口部を少なくとも部分的に覆った状態で収容部40に装着される。
【0061】
これによれば、規制部材70を収容部40に装着することで渡り部63が収容部40から脱落することが抑制できる。そのため、固定子10は、回転電機100における短絡等の発生を低減することができる。また、規制部材70は、収容部40に装着するだけで良いので、極めて簡単に渡り部63の脱落を抑制することができる。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる固定子10が提供される。
【0062】
なお、固定子10は、固定子コア14と、リング部材15と、複数の分割コア16と、第1インシュレータ31及び第2インシュレータ32を含むインシュレータ30と、コイル導線60と、規制部材70とを備える。固定子コア14は、円環状に形成されている。複数の分割コア16は、互いに組み合わされて固定子コア14を構成する。リング部材15は、円環状に形成されており、内部に複数の分割コア16を円環状に並べて収容する。
【0063】
規制部材70は、頭部71と、複数の脚部72と、爪部73と、を有する。頭部71は、固定子コア14の軸方向に対して垂直な面を形成する。複数の脚部72は、頭部71から収容部40に向けて突出する。爪部73は、複数の脚部72の各々の端部に設けられている。収容部40は、爪部73を受ける係止部としての複数の穴部46と複数の凸部47とを有する。
【0064】
これによれば、規制部材70と係止部としての穴部46及び凸部47との嵌め合いにより収容部40に装着されるので、きわめて容易に取り付けることができる。また、規制部材70は、一度収容部40に取り付ければ簡単には外れない構造である。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる固定子10が提供される。
【0065】
複数の脚部72は、頭部71における固定子コア14の径方向内側端部と径方向外側端部とからそれぞれ突出して設けられている。なお、本実施形態によれば、脚部72は頭部71を軸方向に延長した領域内に設けられている。
【0066】
これによれば、内側脚部721と外側脚部722とによって、規制部材70を径方向の内側と外側から収容部40に固定することができる。そのため、規制部材70を一層外れにくくすることができる。更に、本実施形態によれば脚部72は頭部71から径方向に関して内側又は外側に突出していないため、規制部材70の径方向の寸法を、ひいては回転電機100の径方向の寸法をできるだけ小さく設定することができる。
【0067】
ここで、回転電機100の外径をできるだけ小さくするためには、規制部材70の径方向外側の面を収容部40の径方向外側の面と同一面にする、いわゆる面一状態とすることが望ましい。この場合、例えば第4案内壁424の周方向内側部4241の径方向の厚みを薄くすることで、外側脚部722の径方向外側の面を、第2面402と面一に設計することも考えられる。しかし、この場合は、第4案内壁424の強度を低下させることとなる虞がある。
【0068】
これに対し、頭部71において固定子コア14の径方向外側端部から突出して設けられた外側脚部722に形成された外側爪部732は、固定子コア14の周方向に突出して形成されている。本実施形態では、外側爪部732は、固定子コア14の周方向内側に突出して形成されている。
【0069】
これによれば、案内壁424の強度を低下させることなく、外側脚部722の径方向外側の面を、第4案内壁424の径方向外側の面つまり第2面402と面一に設計することが容易となる。この場合、規制部材70が収容部40の外周面つまり第2面402から突出することがないため、回転電機100の外径に与える影響を抑制することができる。
【0070】
固定子10は、複数の規制部材70を備える。複数の規制部材70の各々は、複数の第2インシュレータ32の各々に設けられた収容部40に装着される。
【0071】
これによれば、規制部材70を、収容部40毎に装着するので、爪部73と係止部としての穴部46及び凸部47との嵌め合いを確実にすることが容易となる。また、規制部材70を射出成型などにより製造する際の金型が比較的小さくて済むので、製造原価を抑えることができる。
【0072】
本実施形態のインシュレータ30は、互いに組み合わされて円環状の固定子コア14を構成する複数の分割コア16に装着される。インシュレータ30は、コイル導線60の渡り部63を収容する収容部40を備える。収容部40は、複数の溝部としての案内溝部431、432、433と、壁部としての案内壁421、422、423、424と、係止部としての穴部46及び凸部47と、を有する。案内溝部431、432、433は、固定子コア14の周方向に沿って固定子コア14の軸方向に窪ませて形成されている。第1案内壁421は、複数の案内溝部431、432、433に対して固定子コア14の径方向内側に形成されている。第4案内壁424は、複数の案内溝部431、432、433に対して固定子コア14の径方向外側に形成されている。穴部46及び凸部47は、第1案内壁421及び第4案内壁424にそれぞれ形成された、複数の案内溝部431、432、433の各々の開口部を少なくとも部分的に覆った状態で収容部40に装着される規制部材70の爪部73を受けて固定する。
【0073】
これによれば、規制部材70を収容部40に装着することで渡り部63が収容部40から脱落することが抑制できる。そのため、インシュレータ30は、回転電機100における短絡等の発生を低減することができる。また、規制部材70は、いわゆるスナップフィットによって収容部40に簡単に装着されるので、極めて簡単に渡り部63の脱落を抑制することができる。したがって、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できるインシュレータ30が提供される。
【0074】
更に、本実施形態によれば、回転電機100は、固定子10又はインシュレータ30を有する固定子10と、回転子11とを備える。これによれば、上記に説明の通り、コイル導線60を簡単な方法で適切に固定できる回転電機100が提供される。
【0075】
(第2実施形態)
続いて、図20を参照して第2実施形態を説明する。本実施形態では、回転電機100は、上記第1実施形態の規制部材70に替えて、規制部材200を備える。1つの規制部材200は、複数の分割コア16に設けられた収容部40に対して装着される。この場合、規制部材200は、分割コア16の個数つまりスロット数Nの約数N1この場合2個、3個、4個、6個、12個、又は24個毎の連続する分割コア16に対して1個装着される構成とすることができる。本実施形態では、24個の分割コア16に対して、1つの規制部材200が装着される。つまり、固定子コア14全体に対して、1つの規制部材200が装着される。
【0076】
規制部材200は、第1実施形態の規制部材70を円環状又は環状扇形につなげた形状である。詳細は図示しないが、規制部材200は、円環状又は環状扇形の頭部と、頭部から突出して形成された脚部と、爪部とを有する。本実施形態では、規制部材200は、軸方向視において円環状に形成される。なお、規制部材200をスロット数Nの約数N1例えば2個、3個、4個、6個、又は12個毎の連続する分割コア16に対して1個装着される構成とした場合には、規制部材200は、軸方向視において環状扇形に形成することができる。
【0077】
詳細は図示しないが、規制部材200の爪部は、第1実施形態の規制部材70の爪部731、732と同様に構成されている。規制部材200の爪部は、対応する全ての収容部40に対して設けられていても良いし、対応する複数の収容部40のうち一部に対して設けられていても良い。後者の場合爪部73は、複数例えば3個おきの巻き線ブロック80の収容部40に設けられた穴部46及び凸部47に対応して設けられていても良い。
【0078】
更に、この場合、複数例えば3個おきの分割コア16に穴部46及び凸部47が設けられている第2インシュレータ32を装着し、残りの分割コア16には穴部46及び凸部47が設けられていない第2インシュレータ32を装着する構成としても良い。一方、全ての第2インシュレータ32に穴部46及び凸部47が形成されている構成とした場合、部品点数の増加や組付け作業の煩雑さを抑制することができる。
【0079】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0080】
更に、以上説明した本実施形態によれば、規制部材200は、複数のインシュレータ30に対して装着される。本実施形態では、規制部材200は、固定子コア14を構成する全ての分割コア16に装着されるインシュレータ30に対して装着される。
【0081】
これによれば、一つの規制部材200で複数のインシュレータ30に設けられた収容部40に収容された渡り部63を規制することができる。そのため、規制部材200の取付け作業の回数を低減することができるので、固定子10の製造が簡便となる。
【0082】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、外側爪部732を周方向内側に突出させ、凸部47を第4案内壁424の周方向内側部4241に形成する構成としたが、これに限らない。例えば、外側爪部732を周方向外側に突出させ、凸部47を第4案内壁424の周方向外側部4242に形成する構成としても良い。
【0083】
上記各実施形態では、径方向内側の爪部731は径方向外側に突出し、径方向内側の係止部としての穴部46は径方向外側に向かって窪んで形成されているが、径方向内側の爪部731は周方向に突出し、径方向内側の係止部としての穴部46は周方向に向かって窪んで形成されている構成であっても良い。この場合、穴部46は、第1案内壁421の上端部に切り欠きを設けて、爪部731を受け入れる構成とすることができる。
【0084】
更にまた、内側爪部731と外側爪部732とがいずれも径方向に突出する形状であっても良い。例えば、第4案内壁424の周方向内側部4241の上端部に第2面402よりも径方向外側に突出させて形成された突出部を形成することができる。また、周方向内側部4241の径方向外側つまり第2面402側に径方向内側に向かって窪ませた穴部を設けて、外側爪部732を受け入れる構成とすることができる。この場合、規制部材70、200が収容部40よりも径方向外側に突出することになるが、上記各実施形態の効果を概ね奏することができる。
【0085】
上記第1実施形態では、規制部材70の周方向の幅寸法は収容部40の周方向の幅寸法又は弧の長さよりも短く設定されているがこれに限らない。例えば、規制部材70の周方向の幅寸法を、収容部40の周方向の幅寸法又は弧の長さと同一に設定しても良い。この場合、例えば、穴部46を第1案内壁421の周方向端部寄りに設け、また凸部47を周方向外側部4242の周方向外側端部に設けることができる。このような構成では、収容部40の幅全体に亘って各案内溝部431、432、433の開口部が覆われるため、渡り部63の脱落を一層効果的に抑制することができる。
【0086】
更に、上記各実施形態では、規制部材70,200の頭部71が収容部40の端部から軸方向に基部41から離れる向きに突出する構成であるが、これに限らない。規制部材70,200の頭部71は、収容部40の軸方向端部から突出しない構成としても良い。この場合、例えば規制部材70と軸方向視に関して重なる領域において、各案内壁421、422、423、424の自由端部を軸方向に関して基部41に近づく方向に窪ませることができる。これによれば、固定子10の軸方向の長さ寸法が大きくなること、ひいては回転電機100の軸方向の長さ寸法が大きくなることを抑制できる。
【0087】
更に、上記各実施形態では、規制部材70によって第2インシュレータ32の収容部40に収容される第2渡り部63を固定することについて説明したが、これに限らない。例えば、第1インシュレータ31の収容部311に収容する第1渡り部62を規制部材70によって固定しても良い。この場合、詳細は図示しないが、収容部311は、周方向に沿って延び軸方向に窪ませて形成された1又は複数の溝部を有して良い。規制部材70は、収容部311に形成された溝部の開口部を少なくとも部分的に覆った状態で収容部311に装着可能である。これにより、収容部311に収容された第1渡り部62の移動を規制することができる。また、この際、収容部311は、規制部材70の爪部73を受ける複数の係止部を有していて良い。
【0088】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10…固定子、11…回転子、15…固定子コア、17…分割コア、30…インシュレータ、31…第1インシュレータ(インシュレータ)、32…第2インシュレータ(インシュレータ)、40…収容部、401…第1面、402…第2面、42…案内壁(壁部)、421…第1案内壁(壁部)、422…第2案内壁(壁部)、423…第3案内壁(壁部)、424…第4案内壁(壁部)、43…案内溝部(溝部)、431…第1案内溝部(溝部)、432…第2案内溝部(溝部)、433…第3案内溝部(溝部)、46…穴部(係止部)、47…凸部(係止部)、60…コイル導線、61…巻回部、62…第1渡り部、63…第2渡り部(渡り部)、70…規制部材(第1実施形態)、71…頭部、72…脚部、73…爪部、100…回転電機、200…規制部材(第2実施形態)
図1
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