(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030498
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】トンネル漏水防止用の断熱面導水パネル
(51)【国際特許分類】
E21D 11/38 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
E21D11/38 B
E21D11/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135664
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】522404568
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー マスディック
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 豊
(72)【発明者】
【氏名】数井 節哉
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155CA04
2D155GC06
2D155HA01
2D155KB03
2D155KB12
2D155LA02
2D155LA03
2D155LA04
(57)【要約】
【課題】高い断熱性能を有し、設置厚みが小さく、面導水性を確保し、かつ、漏水が止水シートから表面側へ漏れ出すことがなく、しかも、設置工事が容易な断熱面導水パネルが望まれていた。
【解決手段】断熱面導水パネル1は、パネル本体10と、例えば3個の取付用ブラケット30と、正面側下方に備えられる押え板5とを含んでいる。パネル本体10は、正面側から裏面側へ向かって、表面パネル11、断熱層12及び止水シート13の3層構造を有している。3個の取付用ブラケット30は、それぞれ、下部パネル部材11Dの下後縁部114の裏面に当接されていて、表面パネル11、断熱層12、下後縁部114及び取付用ブラケット30を貫通するボルト6と、ボルト6の後端に螺合されたナット7によって、パネル本体10に固定されている。そして、固定された取付用ブラケット30の後方を被うように、止水シート13の下方部が垂れ下がっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体並びに取付用ブラケットを含み、
前記パネル本体は、
正面視が所定の縦長さ及び横長さを有する横長矩形で、所定の厚みを有する断熱層と、
前記断熱層の表面に積層される金属製の表面パネルと、
前記断熱層の裏面に積層され、正面視が前記断熱層の正面視と同様の横長矩形で、その下辺は前記断熱層の下辺よりも下方へ所定寸法垂れ下がるように、その縦長さが前記断熱層の縦長さよりも所定寸法長くされている止水シートと、を含み、
前記取付用ブラケットは、
全体が金属で形成され、正面視が矩形のパネル支持部と、前記パネル支持部の下端から直角に後方へ折れ曲がって後方へ突出している隙間確保部と、前記隙間確保部の後端から直角に下方へ折れ曲がって下方へ延びる正面視が矩形の取付部とを含み、
前記パネル支持部は、前記パネル本体の下部に固定されて前記パネル本体の下部を支持する上方支持面と、下方に連結すべきパネル本体の上部を固定するための下方支持面とを含み、
前記取付用ブラケットは、前記パネル支持部が、前記パネル本体の前記断熱層の裏面側で、かつ、前記止水シートの垂れ下がる下方部の手前側に位置するように配置されることを特徴とする、トンネル漏水防止用の断熱面導水パネル。
【請求項2】
前記パネル本体は、
前記表面パネルと一体に形成され、前記表面パネルの上辺全体から直角に後方へ折れ曲がり、前記断熱層の上端面を被う上側面部、及び当該上側面部の後辺から直角に下方へ折れ曲がり所定寸法突出している上後縁部を含む上部パネル部材と、
前記表面パネルと一体に形成され、前記表面パネルの下辺全体から直角に後方へ折れ曲がり、前記断熱層の下端面を被う下側面部、及び当該下側面部の後辺から直角に上方へ折れ曲がり所定寸法突出している下後縁部を含む下部パネル部材と、を含み、
前記取付用ブラケットの前記パネル支持部の上方支持面は、前記下部パネル部材の前記下後縁部に固定される、請求項1に記載のトンネル漏水防止用の断熱面導水パネル。
【請求項3】
前記取付用ブラケットは、前記パネル本体の下端沿いに、左方、中央及び右方に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の断熱面導水パネル。
【請求項4】
前記止水シートは、左右の側辺が前記断熱層の側辺よりも外側へ所定寸法突出していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の断熱面導水パネル。
【請求項5】
前記表面パネルの下辺に沿って配置され、上半分が前記表面パネルの下端部に当接し、下半分は前記表面パネルの下辺から下方へ垂下する押え板をさらに有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の断熱面導水パネル。
【請求項6】
前記取付用ブラケットは、前記上方支持面と前記下方支持面との境界部に切り起こしによって形成され、前記下方支持面から前方へ突出する当て部が備えられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の断熱面導水パネル。
【請求項7】
前記取付用ブラケットは、前記上方支持面と前記下方支持面との境界部が、当該断熱面導水パネルを設置するトンネルの内径に対応した微小角度曲げられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱面導水パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内壁に取り付けられる漏水防止板の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの内壁には、地山から滲み出す漏水を受けとめて内壁沿いに導くための面導水パネルが取り付けられることがある。
トンネルの内壁に設置される面導水パネルは、寒冷地においては、高い断熱性が求められる。冬季において、トンネル内へ入る寒気が面導水パネルの裏面を伝って流れる漏水を凍らせないようにするためである。また、面導水パネルは、設置後、トンネルの内径を狭めることのないように、できるだけ厚みが小さく、しかも、トンネルの内壁から浮き上がることなく、内壁に沿って設置できるものが望まれる。さらに、面導水工法に適用される面導水パネルは、トンネルの内壁と面導水パネルの裏面との間に、導水用の流路が確保できるものでなければならない。
【0003】
このような背景の元になされたトンネル漏水防止用の断熱面導水パネルの先行技術として、特許第6721235号公報に記載のトンネル漏水防止用の断熱面導水板が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術に係る断熱面導水板は、止水シートの裏面側に設けられたシーリング部材によって、トンネルの内壁と止水シートの裏面との間に隙間を作り、面導水路を確保するものであり、設置しやすく構造的にも簡易で優れたものである。
しかし、先行技術に係る断熱面導水板は、スクリューアンカーが止水シートを貫通することによってトンネル内壁に固定されるものであるから、スクリューアンカーによって形成された止水シートの孔から漏水が止水シートの表面側へと漏れ出る可能性がある。
【0006】
このため、高い断熱性能を有し、設置厚みが小さく、面導水性を確保し、かつ、漏水が止水シートから表面側へ漏れ出すことがなく、しかも、設置工事が容易な断熱面導水パネルが望まれていた。
本発明は、上記の要望に答えるべく改良されたトンネル漏水防止用の断熱面導水パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、パネル本体並びに取付用ブラケットを含み、
前記パネル本体は、正面視が所定の縦長さ及び横長さを有する横長矩形で、所定の厚みを有する断熱層と、前記断熱層の表面に積層される金属製の表面パネルと、前記断熱層の裏面に積層され、正面視が前記断熱層の正面視と同様の横長矩形で、その下辺は前記断熱層の下辺よりも下方へ所定寸法垂れ下がるように、その縦長さが前記断熱層の縦長さよりも所定寸法長くされている止水シートと、を含み、
前記取付用ブラケットは、全体が金属で形成され、正面視が矩形のパネル支持部と、前記パネル支持部の下端から直角に後方へ折れ曲がって後方へ突出している隙間確保部と、前記隙間確保部の後端から直角に下方へ折れ曲がって下方へ延びる正面視が矩形の取付部とを含み、前記パネル支持部は、前記パネル本体の下部に固定されて前記パネル本体の下部を支持する上方支持面と、下方に連結すべきパネル本体の上部を固定するための下方支持面とを含み、
前記取付用ブラケットは、前記パネル支持部が、前記パネル本体の前記断熱層の裏面側で、かつ、前記止水シートの垂れ下がる下方部の手前側に位置するように配置されることを特徴とするトンネル漏水防止用の断熱面導水パネルである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた断熱性、耐蝕性及び防汚性を備え、かつ、導水性に優れ、設置厚みも小さく、設置工事が容易なトンネル漏水防止用の断熱面導水パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る断熱面導水パネル1の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る断熱面導水パネル1の背面図であり、止水シートの一部が切り欠かれて示された図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る断熱面導水パネル1の縦断面図である。
【
図4】
図4は、取付用ブラケット30の一例を示す図で、(A)は取付用ブラケット30の正面図、(B)は取付用ブラケット30の背面図、(C)は取付用ブラケット30の左側面図、(D)は取付用ブラケット30の平面図、(E)は取付用ブラケット30の底面図である。
【
図5】
図5は、取付用ブラケット30Bの他の例を示す図で、(A)は取付用ブラケット30Bの正面図、(B)は取付用ブラケット30Bの左側面図、(C)は取付用ブラケット30Bの平面図、(D)は取付用ブラケット30Bの底面図、(E)は取付用ブラケット30Bの斜視図である。
【
図6】
図6は、トンネルの内壁2に設置された状態の断熱面導水パネル1の縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図6における上下に連結された2枚の断熱面導水パネル1B及び1Cの連結部の構成を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は、上下2枚の断熱面導水パネル1A及び1Bを連結する場合の連結構造を表す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の実施形態に係る断熱面導水パネル50の構成を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る断熱面導水パネル60の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る断熱面導水パネル1の正面図であり、
図2は、断熱面導水パネル1の背面図であり、
図3は、断熱面導水パネル1の縦断面図である。なお、
図3では、断熱層12の厚み等が、図示の便宜上、誇張して示されている。
図1~3を参照して、断熱面導水パネル1は、トンネルの内壁に設置され、トンネル内壁の地山から滲み出す漏水を受け止めて、漏水をトンネル内壁沿いに下方へと導くための面導水パネルである。
【0011】
断熱面導水パネル1は、パネル本体10と、例えば3個の取付用ブラケット30と、正面側下方に備えられる押え板5とを含んでいる。
パネル本体10は、正面側から裏面側へ向かって、表面パネル11、断熱層12及び止水シート13の3層構造を有している。
断熱層12は、正面視が横長矩形をしており、一例として寸法を挙げれば、横2000mm、縦500mm、厚さ95mmとされている。また、断熱層12の厚さは、設置されるトンネルの冬季の雰囲気温度等により、50mmや30mmのものが用いられてもよい。
【0012】
断熱層12を構成する断熱材の材質は、特に限定されるものではない。断熱材として、例えばフェノールフォームを用いてもよい。フェノールフォームとしては、具体的には「フェノバボード」(商品名)が用いられてもよい。フェノバボードは、熱的にも化学的にも安定したフェノール樹脂と、非フロンガスを採用した高性能断熱材であり、熱伝導率が0.019W/m・kと低い値を有する断熱材である。このため、相対的に厚みの薄い断熱層12により、良好な断熱性を確保することができる。
【0013】
断熱層12の表面に積層される表面パネル11は、金属板であり、鋼板やアルミ板を用いることができる。一例として、厚さ0.5mmのガルバニウム鋼板で構成されてもよい。また、本実施形態では、表面パネル11の上辺及び下辺には、それぞれ、上部パネル部材11U及び下部パネル部材11Dが、表面パネル11と一体に形成されている。上部パネル部材11U及び下部パネル部材11Dは、パネル本体10の上辺部及び下辺部を保護するために形成されたものである。特に、本実施形態の場合、断熱層12の厚さが、例えば95mmと厚いので、上部パネル部材11U及び下部パネル部材11Dを設けるのが望ましい。しかし、断熱層12の厚さが、50mmや30mmと相対的に薄い場合、断熱層12の表面に表面パネル11が積層され、表面パネル11の上辺及び下辺の上部パネル部材11U及び下部パネル部材11Dが省略された構成とすることもできる。
【0014】
図3を参照して、上部パネル部材11Uは、上側面部111及び上後縁部112を含んでいる。上側面部111は、表面パネル11の上辺全体から直角に後方へ折れ曲がり、断熱層12の上端面を被っている。上後縁部112は、上側面部111の後辺全体から直角に下方へ折れ曲がり、所定寸法下方へ突出している。下方へ突出している寸法は、例えば40mmであってもよい。
【0015】
下部パネル部材11Dは、下側面部113及び下後縁部114を含んでいる。下側面部113は、表面パネル11の下辺全体から直角に後方へ折れ曲がり、断熱層12の下端面を被っている。下後縁部114は、下側面部113の後辺全体から直角に上方へ折れ曲がり、所定寸法上方へ突出している。上方へ突出している寸法は、例えば40mmであってもよい。
【0016】
断熱層12の裏面には、止水シート13が積層されている。止水シート13は、正面視が断熱層12の正面視と同様の横長矩形をしている。止水シート13の下辺は、断熱層12の下辺よりも下方へ所定寸法垂れ下がっている。一例として、止水シート13の下辺は、断熱層12の下辺よりも90mm長く下方へ延び出ている。また、止水シート13の左側辺及び右側辺は、それぞれ、断熱層12の左側辺及び右側辺よりも外側(左側又は右側)へ所定寸法突出している。この寸法は、一例として、20mmであってもよい。止水シート13の下辺及び左右両側辺を、断熱層12の下辺及び左右両側辺よりも外側へ突出させることにより、多数枚の断熱面導水パネル1を上下及び左右に隣接して配置した際に、止水シート13の下辺及び左右両側辺が、隣接する断熱面導水パネル1の止水シート13とオーバーラップする。よって、各面導水パネル1の繋ぎ目(いわゆる目地部)を止水シート13が被うので、繋ぎ目(いわゆる目地部)からの漏水を防止できる。
【0017】
より具体的に説明をする。
上下に配置される複数枚の断熱面導水パネル1は、上方の断熱面導水パネル1が先に配置され、その下辺に備えられた取付用ブラケット30の取付部がトンネルの内壁に例えばアンカーボルトで固定される。そして、取付用ブラケット30によってトンネルの内壁に配置された断熱面導水パネル1の下方に、別の断熱面導水パネル1が連設される。その際、下方に連設される断熱面導水パネル1の上辺部が取付用ブラケット30のパネル支持部に取り付けられる。取付用ブラケット30のパネル支持部の後方には上方の断熱面導水パネル1の下辺よりも下方へ垂れ下がった止水シートが位置しているから、下方に連設される断熱面導水パネル1の上辺部も、垂れ下がった止水シートの前方に配置される。よって、断熱面導水パネル1の上下の繋ぎ目において、上方から下方へ垂れ下がった止水シートと、下方に配置された断熱面導水パネル1の止水シートとがオーバーラップすることになり、断熱面導水パネル1の裏面に沿って上から下へと流れ落ちる漏水は、全て止水シートの後方を流れ落ちる。
【0018】
次に、左右に配置される複数枚の断熱面導水パネル1は、一例として、20mmの隙間を空けて配置される。そして、この隙間においては、例えば左側の断熱面導水パネル1の右側辺から突出した止水シート13の突出部と右側の断熱面導水パネル1の左側辺から突出した止水シート13の突出部とが重なり合う(オーバーラップする)。設置工事では、この重なり合った左右の突出部同士を、例えばブチルゴムの止水テープで繋ぎ合わせる。これによって、断熱面導水パネル1の左右の連設部の繋ぎ目は、止水シート13により隙間なく被われ、繋ぎ目からの漏水は発生しない。なお、止水シート13の重なり合った突出部同士を止水テープで繋ぎ合わせた後、左右の断熱面導水パネル1の目地部(20mmの隙間)は、例えば、目地パテによって化粧が施されてもよい。
【0019】
なお、本実施形態では、止水シート13の上辺は、断熱層12の上辺と合わされておらず、止水シート13の上辺は、断熱層12の裏面上部を被っている上部パネル部材11Uの上後縁部112の下辺に沿うように、断熱層12の裏面に積層されている。しかし、止水シート13の上辺を、断熱層12の上辺と一致させて、断熱層12の裏面に止水シート13が積層される構成としてもよい。
【0020】
止水シート13は樹脂製である。一例として、リサイクルペットボトルが中心の再生原料からなるA-PETプレートで形成されていてもよい。
次に、パネル本体10に取り付けられる取付用ブラケット30について説明する。
図1~3を参照して、取付用ブラケット30は、パネル本体10の下端沿いに、左方、中央及び右方に配置される3個の取付用ブラケット30を有していてもよい。一例として、正面視において、左方の取付用ブラケット30は、表面パネル11の左辺から内方(右側)へ75mm入った位置に取り付けられている。また、右方の取付用ブラケット30は、表面パネル11の右辺から内方(左側)へ75mm入った位置に取り付けられている。中央の取付用ブラケット30は、表面パネル11の左右方向長さの中央部、より具体的には、表面パネル11の横寸法は2000mmであるから、中央の取付用ブラケット30は、表面パネル11の左辺から内方(右側)へ1000mm入った位置で、かつ、表面パネル11の右辺から内方(左側)へ1000mm入った位置に取り付けられている。
【0021】
図3を参照して、3個の取付用ブラケット30は、それぞれ、下部パネル部材11Dの下後縁部114の裏面に当接されていて、表面パネル11、断熱層12、下後縁部114及び取付用ブラケット30を貫通するボルト6と、ボルト6の後端に螺合されたナット7によって、パネル本体10に固定されている。そして、固定された取付用ブラケット30の後方を被うように、止水シート13の下方部が垂れ下がっている。
【0022】
図4は、取付用ブラケット30の一例を示す図で、(A)は取付用ブラケット30の正面図、(B)は取付用ブラケット30の背面図、(C)は取付用ブラケット30の左側面図、(D)は取付用ブラケット30の平面図、(E)は取付用ブラケット30の底面図である。
図4を参照して、取付用ブラケット30は、全体がステンレス鋼板で形成されていてもよい。ステンレス鋼板の厚みは、例えば、2.5mmであってもよい。取付用ブラケット30は、パネル支持部31と、隙間確保部32と、取付部33とを有している。パネル支持部31は、正面視が縦長矩形をしており、正面側の上半分が上方支持面31Uを構成し、正面側の下半分が下方支持面31Dを構成している。パネル支持部31の正面には、電位差腐食防止の為に、例えば、樹脂等の絶縁被膜が施されていてもよい。上方支持面31Uには、パネル支持部31を正面側から裏面側へ貫通するボルト挿通孔34が形成されている。また、下方支持面31Dにも、パネル支持部31を正面側から裏面側へ貫通するボルト挿通孔35が形成されている。パネル支持部31の縦長さは、一例として120mmであってもよい。
【0023】
隙間確保部32は、パネル支持部31の下端から直角に後方へ折れ曲がって後方へ突出している。隙間確保部32の後方への突出寸法は、例えば、25mmであってもよい。
取付部33は、隙間確保部32の後端から直角に下方へ折れ曲がって下方へ延びている。取付部33は、正面視が矩形をしており、正面視の中心部に正面側から裏面側へ貫通するアンカーボルト挿入孔36が形成されている。取付部33の縦長さは、一例として40mmであってもよい。
【0024】
なお、後述するように、パネル支持部31における上方支持面31Uと下方支持面31Dとの境界310は、下方支持面31Dに対して上方支持面31Uが前方へ微小角度傾くように折り角がつけられていてもよい。
取付用ブラケット30には、パネル支持部31の裏面に、ボルト挿通孔34,35に対応付けて、ナット7,38が固定されていてもよい。ナット7,38のパネル支持部31への固定方法としては、例えば、ナット7,38をスポット溶接等によってパネル支持部31の裏面に固定する方法でもよいし、あるいは、クリップナットを用いてパネル支持部31の裏面に固定する方法でもよい。
【0025】
ナット7を予め取付用ブラケット30に固定しておくことにより、パネル本体10の下端部に取付用ブラケット30を取り付ける際に、パネル本体10の正面側からボルト6を挿入し、そのボルト6の先端にナット7を螺合させる作業がし易いという利点がある。
図5は、取付用ブラケット30Bの他の例を示す図で、(A)は取付用ブラケット30Bの正面図、(B)は取付用ブラケット30Bの左側面図、(C)は取付用ブラケット30Bの平面図、(D)は取付用ブラケット30Bの底面図、(E)は取付用ブラケット30Bの斜視図である。
【0026】
図5を参照して、取付用ブラケット30Bも、例えば厚みが2.5mmのステンレス鋼板で形成されていてもよく、基本的な構成は、先に説明した取付用ブラケット30と同様であるから、同一又は対応する部位には同一の参照符号を付して、重複した説明は省略する。取付用ブラケット30Bの特徴は、パネル支持部31の上方支持面31Uの正面視において右側部分が上方から切り込まれてパネル支持部31に対して正面側へ直角に切り起こされた当て部39が設けられていることである。この当て部39は、取付用ブラケット30Bに対して、下方から断熱面導水パネル1を連結して取り付ける場合に、取り付ける断熱面導水パネル1のパネル本体10の上縁部をつき当てて、位置決めするのに利用される部位である。このように、パネル支持部31に当て部39を設けることにより、断熱面導水パネル1の連設作業がし易くなるという利点がある。
【0027】
なお、上述の
図4及び
図5を参照した説明では、取付用ブラケット30、30Bは、全体がステンレス鋼板で形成されている例を示したが、取付用ブラケット30、30Bは、例えばアルミの押し出し形成によって作られてもよい。取付用ブラケットは、防錆処理をした各種の金属材料で形成することが可能である。
図1~3を再び参照して、断熱面導水パネル1は、パネル本体10の正面側下方に取り付けられる押え板5を更に備えている。押え板5は、表面パネル11の下辺に沿って横方向に延びる。押え板5の上半分は表面パネル11の下方部表面に当接しており、押え板5の下半分は表面パネル11の下辺から下方へ突出している。押え板5は、一例として、表面パネル11と同じガルバニウム鋼板で形成されていてもよい。
【0028】
押え板5は、ボルト6によって、表面パネル11の正面側下方部表面に取り付けられている。ボルト6がステンレス製の場合は、ボルト6の頭部と表面パネル11との間には、電位差腐食防止の為に、例えばナイロンワッシャ8が介在されてもよい。
さらに、パネル本体10の上辺に沿って、左側、中央部及び右側にはボルト挿通孔9が形成されている。ボルト挿通孔9は、このパネル本体10(断熱面導水パネル1)を上方に設置された断熱面導水パネル1の下方へ連結設置する際に用いられる。ボルト挿通孔9は、表面パネル11、断熱層12及び上部パネル部材11Uの上後縁部112を貫通するように、形成されている。
【0029】
図6は、トンネルの内壁2に設置された状態の断熱面導水パネル1(1A,1B,1C)の縦断面図である。
図6では、トンネルの内壁2に沿って、3枚の断熱面導水パネル1A,1B及び1Cが上方から下方に向かって連設された状態が示されている。
図6を参照して、取付用ブラケット30は、断熱面導水パネル1Aの下方部に備えられているが、この取付用ブラケット30は、取付部33がアンカーボルト40でトンネルの内壁2に固定されている。また、取付用ブラケット30によって、断熱面導水パネル1Aの下方に連結された断熱面導水パネル1Bの上端部が保持されている。そして、断熱面導水パネル1Bの下部には、取付用ブラケット30が備えられている。取付用ブラケット30の取付部33もアンカーボルト40でトンネルの内壁2に固定されている。さらに、取付用ブラケット30によって、断熱面導水パネル1Bの下方に連結された断熱面導水パネル1Cの上端部が保持されている。
【0030】
図7は、
図6における上下に連結された2枚の断熱面導水パネル1B及び1Cの連結部の構成を拡大して示す断面図である。
図7を参照して、上方の断熱面導水パネル1Bの下方裏面側には、取付用ブラケット30が取り付けられている。より詳細には、断熱面導水パネル1Bの下後縁部114が取付用ブラケット30の上方支持面31Uに当接され、ボルト6及びナット7によって固定されている。そして、取付用ブラケット30の取付部33は、トンネルの内壁2に沿わされて、アンカーボルト40で固定される。よって、取付用ブラケット30の隙間確保部32により、取付用ブラケット30のパネル支持部31は、トンネルの内壁2から所定寸法、例えば25mm前方に浮き上がった状態となっている。そして、パネル支持部31により断熱面導水パネル1Bの下方が支持されているから、断熱面導水パネル1Bの下方部も、トンネルの内壁2から所定寸法浮き上がった状態、つまり、トンネルの内壁2との間に所定の隙間を有した状態で保持されている。
【0031】
また、断熱面導水パネル1Bの裏面には止水シート13が積層されており、止水シート13の下方部は取付用ブラケット30のパネル支持部31の後方とトンネル内壁2との間に位置している。よって、トンネル内壁2から滲み出す漏水は、止水シート13に阻まれて、トンネル内壁2と止水シート13との間の隙間を伝って下方へと導かれる。
取付用ブラケット30の下方支持面31Dには、断熱面導水パネル1Cの上後縁部112が当接される。また、断熱面導水パネル1Cの正面側上端部には、断熱面導水パネル1Bの正面側下端部に設けられた押え板5の下部が当接され、押え板5、断熱面導水パネル1Cの上後縁部112を含む上部及び取付用ブラケット30の下方支持面31Dは、ボルト6及びナット7によって固定される。
【0032】
この場合において、トンネル内壁2の曲率に沿って断熱面導水パネル1B及び1Cの接続部後方に隙間を開けなければならないことがある。そのため、取付用ブラケット30の上方支持面31Uと下方支持面31Dとの境界部が、断熱面導水パネルを設置するトンネルの内径に対応した微小角度(例えば、1~5°程度)曲げられていてもよい。
図8は、上下2枚の断熱面導水パネル1A及び1Bを連結する場合の連結構造を表す分解斜視図である。この図では、取付用ブラケット30Bが用いられる例が示されている。なお、
図8では、止水シート13は、省略された図となっている。
【0033】
図8において、先に説明した構成要素と同じ構成要素については、同一の参照符号を付し、重複した説明については省略する。
図9は、本発明の他の実施形態に係る断熱面導水パネル50の構成を説明するための図であり、(A)は断熱面導水パネル50の下方部分の縦断面図であり、(B)は取付用ブラケット30をパネル本体51に固定する際に用いる取付具52の斜視図である。
【0034】
図9(A)に示す断熱面導水パネル50は、パネル本体51が、正面側から裏面側へ向かって、表面パネル11、断熱層12及び止水シート13の3層構造を有している。断熱層12は、先に説明した実施形態に比べて相対的に厚みの薄いものが用いられている。一例として厚さ50mm~30mmとされている。
そして、パネル本体51には、表面パネル11の上辺及び下辺にそれぞれ連設された上部パネル部材及び下部パネル部材は備えられていない構造である。
【0035】
断熱層12の厚みが薄い場合は、断熱層12の表面に金属製の表面パネル11を積層することにより、上部パネル部材や下部パネル部材で上下縁部を補強しなくても、パネル本体51の耐汚染性、耐久性等に問題は生じない。
しかし、パネル本体51の下部に取付用ブラケット30を固定する際に、補助的に用いる取付具52が必要となる。
【0036】
取付具52は、
図9(B)に示すように、コ字状に折り曲げられた金属板製であり、正面板521、裏面板522及びそれらを繋いでいる側面板533を有している。正面板521及び裏面板522の間隔、即ち側面板533の幅tは、パネル本体51の厚さTとほぼ等しくされている。正面板521及び裏面板522には、それぞれ、ボルト挿通孔534,535が形成されている。
【0037】
パネル本体51の下部に取付用ブラケット30を固定した状態の縦断面の構成を
図9(A)に示す。
図9(A)に示すように、パネル本体51の下部におけるブラケットの取付位置には、取付具52が配置される。よって、表面パネル11の正面側、パネル本体51の底面(下側面)側、及び断熱層12の裏面側が取付具52によって補強される。そして、取付具52の裏面板522の裏面に取付用ブラケット30のパネル支持部が当接され、ボルト6及びナット7により、取付用ブラケット30がパネル本体51に固定される。
【0038】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る断熱面導水パネル60の構成を説明するための図であり、(A)は断熱面導水パネル60の下方部分の縦断面図であり、(B)は取付用ブラケット30をパネル本体61に固定する際に用いる取付具62の斜視図である。また、(C)は取付具62の変形例である。
図10(A)に示す断熱面導水パネル60は、パネル本体61が、正面側から裏面側へ向かって、表面パネル11,断熱層12及び止水シート13の3層構造を有している。断熱層12は、断熱面導水パネル50のパネル本体51と同様に、厚さが比較的薄いものが用いられ、それゆえ、上部パネル部材及び下部パネル部材は備えられていない。
【0039】
取付具62は、
図10(B)に示すように、円筒体621と、円筒体621の後端に設けられたフランジ622とを有し、全体が金属製又は硬質樹脂製である。フランジ622は、正面視が、例えば円形をしている。円筒体621の軸方向長さt
0は、パネル本体61の断熱層12の厚さT
0と等しくされている。また、取付具62は、
図10(C)に示すように、フランジ622が、正面視で矩形であってもよい。
【0040】
パネル本体61の下部に取付用ブラケット30を固定した状態の縦断面の構成を
図10(A)に示す。
図10(A)に示すように、パネル本体61の下部におけるブラケット取付位置には、取付具62が配置される。具体的には、パネル本体61の下部におけるブラケット取付位置には、裏面側から断熱層12に穴が形成され、その穴に取付具62が円筒体621の先端側から挿入される。挿入状態において、取付具62は、円筒体621の先端が表面パネル11の裏面に当接し、取付具62のフランジ622は、断熱層12の裏面に当接している。そして、取付具62のフランジ622の裏面に取付用ブラケット30のパネル支持部が当接され、ボルト6及びナット7により、取付用ブラケット30がパネル本体61に固定される。
【0041】
なお、
図9に示す断熱面導水パネル50又は
図10に示す断熱面導水パネル60において、当該断熱面導水パネル50,60の上端部を取付用ブラケット30に固定する場合には、下端部を取付用ブラケット30に固定する場合に用いた取付具52又は取付具62を用いて固定するようにすればよい。
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、取付用ブラケットは、パネル本体の下端沿いに、左方、中央及び右方に配置されていてもよい。
また、止水シートは、左右両側辺が断熱層の左右両側辺よりも外側へ所定寸法突出していてもよい。
また、断熱面導水パネルは、表面パネルの下辺に沿って配置され、上半分が表面パネルの下端部に当接し、下半分は表面パネルの下辺から下方へ垂下する押え板をさらに有していてもよい。
【0043】
また、取付用ブラケットには、上方支持面と下方支持面との境界部に切り起こしによって形成され、下方支持面から前方へ突出する当て部が備えられていてもよい。
さらに、取付用ブラケットは、上方支持面と下方支持面との境界部が、当該断熱面導水パネルを設置するトンネルの内径に対応した微小角度曲げられてあってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1、1A、1B、1C、50、60 断熱面導水パネル
2 トンネルの内壁
5 押え板
6 ボルト
7、38 ナット
8 ナイロンワッシャ
9、34、35 ボルト挿通孔
10、51、61 パネル本体
11 表面パネル
11U 上部パネル部材
11D 下部パネル部材
111 上側面部
112 上後縁部
113 下側面部
114 下後縁部
12 断熱層
13 止水シート
30、30B 取付用ブラケット
31 パネル支持部
31U 上方支持面
31D 下方支持面
32 隙間確保部
33、52、62 取付部
36 アンカーボルト挿入孔
39 当て部
40 アンカーボルト