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特開2023-30504パドック撮像装置、馬情報配信システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030504
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】パドック撮像装置、馬情報配信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/695 20230101AFI20230301BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230301BHJP
   H04N 23/698 20230101ALI20230301BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230301BHJP
   H04N 21/2187 20110101ALI20230301BHJP
   H04N 21/234 20110101ALI20230301BHJP
   H04N 21/431 20110101ALI20230301BHJP
   H04N 21/4728 20110101ALI20230301BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230301BHJP
【FI】
H04N5/232 990
H04N7/18 F
H04N7/18 E
H04N5/232 380
H04N5/232 290
H04N21/2187
H04N21/234
H04N21/431
H04N21/4728
G03B15/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135673
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】505189763
【氏名又は名称】株式会社デジマース
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 秀忠
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
5C164
【Fターム(参考)】
5C054CF06
5C054CF07
5C054DA09
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC14
5C054FD03
5C054FD07
5C054FE16
5C054FE18
5C054FE23
5C054FE24
5C054FF02
5C054FF03
5C054GB01
5C054GB05
5C054HA31
5C122DA02
5C122EA65
5C122FA03
5C122FA16
5C122FA18
5C122FH10
5C122FH11
5C122FH14
5C122FH20
5C122FK28
5C122FK37
5C122FK42
5C122GC07
5C122GC14
5C122GC52
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB09
5C164FA14
5C164SA26P
5C164SB01P
5C164SD12S
5C164UB81P
5C164UD44P
(57)【要約】
【課題】周回路上の馬の状態を検討するのに適切な情報をユーザ端末に配信可能なパドック撮像装置、馬情報配信システムを提供する。
【解決手段】パドックシステム1は、周回路311A,311Bの全体を含む全体映像を取得するカメラ320A,320Bと、カメラ320A,320Bが取得した全体映像を、各競走馬の移動に追従し、各競走馬の移動位置に対応した大きさでトリミングすることにより、各競走馬が移動する映像であるトリミング映像を作成するトリミング映像作成部346dとを備え、周回路上の複数の競走馬の全てについて、それぞれトリミング映像を作成し、ユーザ端末30は、トリミング映像作成部346dが作成し、配信部46fから配信されたトリミング映像を表示する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発走前の競走馬を下見するパドックの周回路上を歩く複数の競走馬の撮像情報を取得するパドック撮像装置であって、
周回路の幅は、競走馬が幅方向に並ぶことなく1頭の競走馬が周回路に沿って移動するように設定されており、
周回路の全体又はほぼ全体を含む固定範囲の映像である全体映像を取得する映像取得部と、
前記映像取得部が取得した全体映像を、各競走馬の移動に追従し、各競走馬の周回路上の移動位置に対応した大きさでトリミングすることにより、各競走馬が移動する映像であるトリミング映像を作成するトリミング映像作成部と、
前記トリミング映像作成部が作成したトリミング映像を記憶する記憶部
とを備えることを特徴とするパドック撮像装置。
【請求項2】
前記トリミング映像作成部は、
トリミング映像として、競走馬の移動位置に応じて映像の大きさを補正することにより競走馬の大きさが同等であり、同一の大きさでトリミングした映像を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載のパドック撮像装置。
【請求項3】
周回路上の競走馬の位置と、その位置におけるトリミング範囲とを対応付けて記憶するトリミング範囲記憶部を備え、
前記トリミング映像作成部は、
前記トリミング範囲記憶部を参照することにより、全体映像を、周回路上の競走馬の位置に対応付いたトリミング範囲でトリミングしたトリミング映像を作成する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパドック撮像装置。
【請求項4】
発走前の競走馬を下見するパドックの周回路上を歩く複数の競走馬の下見の情報をユーザ端末に配信する馬情報配信システムであって、
請求項1~3のいずれかに記載のパドック撮像装置と、
前記記憶部に記憶したトリミング映像を、ユーザ端末に配信する配信部とを備え、
前記トリミング映像作成部は、
周回路上の複数の競走馬の全てについて、それぞれトリミング映像を作成し、
ユーザ端末は、
前記トリミング映像作成部が作成し、前記配信部から配信されたトリミング映像を表示する
ことを特徴とする馬情報配信システム。
【請求項5】
ユーザ端末は、
一時点におけるトリミング映像を表示する主表示部と、
一時点とは異なる複数の時点のトリミング映像を一覧で表示する一覧表示部とを備え、
前記一覧表示部は、
一時点よりも前の時点のトリミング映像、及び一時点よりも後のトリミング映像のうち少なくとも1つを表示し、
ユーザ端末は、
前記一覧表示部に表示されたトリミング映像の選択を受け付けることに応じて、前記主表示部の映像を選択されたトリミング映像に切り替える
ことを特徴とする請求項4に記載の馬情報配信システム。
【請求項6】
前記一覧表示部は、
時間間隔に応じた複数の時点のトリミング映像を、一覧表示する
ことを特徴とする請求項5に記載の馬情報配信システム。
【請求項7】
前記一覧表示部は、
前記周回路のうちコーナ部分に配置された前記映像取得部に基づいて作成されたトリミング映像と、直線部分に配置された前記映像取得部に基づいて作成されたトリミング映像とを、一覧表示する
ことを特徴とする請求項6に記載の馬情報配信システム。
【請求項8】
前記映像取得部は、複数の競馬場にそれぞれ設けられており、
各競馬場の前記映像取得部が取得した各トリミング映像と、各トリミング映像と同等の撮像角度である他競馬場の前記映像取得部が取得した他トリミング映像とを対応付けて記憶するトリミング映像対応記憶部を備える
ことを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の馬情報配信システム。
【請求項9】
前記記憶部は、
同一の競走馬に関して、各競馬場のパドックのトリミング映像に加えて、過去のレースの他競馬場のパドックのトリミング映像を記憶し、
前記配信部は、
各競馬場のパドックのトリミング映像と他競馬場のパドックのトリミング映像とを、馬体の大きさが同一になるように補正して、ユーザ端末に配信する
ことを特徴とする請求項8に記載の馬情報配信システム。
【請求項10】
前記記憶部に記憶した競走馬のトリミング映像を解析することにより、複数の方向からの競走馬の映像に基づいて馬体状態を解析する馬体状態解析部を備える
ことを特徴とする請求項4~9のいずれかに記載の馬情報配信システム。
【請求項11】
前記馬体状態解析部は、
前記記憶部に記憶したトリミング映像の競走馬の骨格の動きを検出し、検出した骨格の動きに基づいて馬体情報を解析する
ことを特徴とする請求項10に記載の馬情報配信システム。
【請求項12】
前記記憶部は、
過去のレースのパドックのトリミング映像を記憶し、
前記馬体状態解析部は、
発走前の競走馬の馬体状態に加えて、過去のトリミング映像に基づいて過去の競走馬の馬体状態を判定し、
発走前の競走馬の馬体状態及び過去の競走馬の馬体状態を比較し、
ユーザ端末は、
発走前の競走馬の馬体状態及び過去の競走馬の馬体状態の比較結果に関する情報を表示する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の馬情報配信システム。
【請求項13】
前記馬体状態解析部は、
発走前の競走馬の馬体状態と、複数の過去の競走馬の馬体状態のなかから最も良い馬体状態又は最も悪い馬体状態とを比較する
ことを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の馬情報配信システム。
【請求項14】
前記馬体状態解析部は、
馬が装着している馬具の情報、及び馬の生体情報のうち少なくとも1つを取得する
ことを特徴とする請求項10~13のいずれかに記載の馬情報配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周回路上を移動する馬の情報を配信するパドック撮像装置、馬情報配信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、馬に関する情報として、例えば、レース前のパドックの映像等の情報を有する番組を提供するレース情報提供システムがあった(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-48571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のシステムは、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態は、発走前の競走馬を下見するパドックの周回路上を歩く複数の競走馬の撮像情報を取得するパドック撮像装置であって、周回路の幅は、競走馬が幅方向に並ぶことなく1頭の競走馬が周回路に沿って移動するように設定されており、周回路の全体又はほぼ全体を含む固定範囲の映像である全体映像を取得する映像取得部と、前記映像取得部が取得した全体映像を、各競走馬の移動に追従し、各競走馬の周回路上の移動位置に対応した大きさでトリミングすることにより、各競走馬が移動する映像であるトリミング映像を作成するトリミング映像作成部と、前記トリミング映像作成部が作成したトリミング映像を記憶する記憶部とを備えることを特徴とするパドック撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態のパドックシステム1の構成を説明する図である。
図2】第1実施形態の履歴情報記憶部45bの情報を説明する図である。
図3】第1実施形態のカメラ20、比較例のカメラ120が取得する映像を説明する図である。
図4】第1実施形態のパドックシステム1の処理の流れを説明する図である。
図5】第1実施形態のサーバ40の映像処理を説明する図である。
図6】第1実施形態のサーバ40の映像処理を説明する図である。
図7】第1実施形態のユーザ端末30の表示画面を説明する図である。
図8】第1実施形態のユーザ端末30の表示画面を説明する図である。
図9】第2実施形態のシステム201の構成を説明する図である。
図10】第2実施形態の馬体状態解析テーブル245e、種牡馬比較テーブル245fを示す図である。
図11】第2実施形態の競馬場Aのレース当日にパドックに存在する競走馬の単馬映像配信画面261を示す図である。
図12】第2実施形態の過去に競馬場Aのパドックに存在した競走馬の単馬映像配信画面261を示す図である。
図13】第2実施形態のパドックシステム201A,201Bで作成された単馬映像を説明する図である。
図14】第2実施形態の馬体状態解析画面263を示す図である。
図15】第2実施形態の種牡馬一致情報画面264を示す図である。
図16】第3実施形態のパドックシステム301の構成を説明する図である。
図17】第3実施形態のトリミング映像対応テーブル345cを示す図である。
図18】第3実施形態のパドック310A(周回路311A)のカメラ320Aが撮像した周回路311Aの全体映像を説明する図である。
図19】第3実施形態のパドック310A(周回路311A)のトリミング映像を示す図である。
図20】第3実施形態のパドック310B(周回路311B)のカメラ320Bが撮像した周回路311Bの全体映像を説明する図である。
図21】第3実施形態のパドック310B(周回路311B)のトリミング映像を示す図である。
図22】第3実施形態のトリミング映像比較画面362を示す図である。
図23】第3実施形態のトリミング映像比較画面362を示す図である。
図24】第3実施形態のトリミング映像から競走馬5の骨格305aを検出する態様を説明する図である。
図25】第4実施形態のパドックシステム401の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
[パドックシステム1の構成]
図1は、第1実施形態のパドックシステム1の構成を説明する図である。
図2は、第1実施形態の履歴情報記憶部45bの情報を説明する図である。
図3は、第1実施形態のカメラ20、比較例のカメラ120が取得する映像を説明する図である。
図3(A)は、実施形態のパドック10のうち4つのカメラ20が配置された部分を拡大して示し、また、これらのうちカメラ20cが取得した映像21を説明する図である。
図3(B)は、比較例の複数のカメラ120のうち1つが取得した映像121を説明する図である。
【0008】
パドックシステム1(馬情報配信システム)は、競馬場のパドック10の情報(実施形態ではパドック情報ともいう)をユーザ端末30に配信するシステムである。ユーザは、配信サービスを受ける際に、競馬場に居るか否かは限定されず、例えば、自宅に居てもよく、パドック10に居てもよい。
図1に示すように、パドック10は、競走馬5が周回する周回路11を備える。
なお、図1には、パドック10の周回路11は、一例としてオーバル形状である例を示すが、これに限定されず、競走馬5が周回できる形状(例えば、円形、楕円形、多角形等)であればよい。
【0009】
また、パドック10は、発走前の競走馬を下見する施設である。このため、パドック10の構成と、レース周回路の構成とは、大きく異なる。
すなわち、パドック10は、観客が馬体を観察しやすいように、十分に小さい施設である。このため、パドック10の周回路11の全長は、レース周回路よりも短く、また、その幅は、レース周回路よりも狭い。そして、厩務員は、競走馬を導く際には、パドック10の周回路11の幅方向の中央付近を、ゆっくりと歩かせる。
さらに、周回路は、1頭の競走馬が周回路11に沿って移動できる程度の幅に設定されている。2頭以上の競走馬が周回路11の幅方向において重なってしまえば、各競走馬を観察しにくくなるためである。なお、「1頭の競走馬が周回路11に沿って移動できる程度の幅」とは、一般的なパドックの周回路の幅であり、つまり、厩務員が1頭の競走馬をゆっくりと歩くように導ける程度であり、かつ、観客が競走馬を観察しやすい程度であるという概念である。このため、上記幅は、厩務員が競走馬を導いている状態で、2頭以上が並ぶことを想定した幅ではない。このため、幅の大きさの数値上は、周回路11の幅内に2頭以上の競走馬を、物理的に配置できる構成を含む概念である。
【0010】
これに対して、レース周回路は、疾走する複数の競走馬が競うことを前提としているので、競走馬が並んで走れるように十分な幅を有し、かつ、競走馬が幅方向のどの位置を通過するかが定まらない。このため、「1頭の競走馬が周回路11に沿って移動できる程度の幅」は、レース周回路の幅の概念を含まない。
【0011】
図1に示すように、一般的なパドック10は、周回路11よりも外側に観客が位置する観客席15が設けられている。観客席15は、階段状に形成されている。このため、観客は、周回路11を周回する競走馬5を、見下ろすよう観察する。
また、周回路11及び観客席15の間のスペースには、観客席15に居る観客が競走馬5に触ること等を抑制するために、植木等が配置された立入禁止エリア12が設けられている。
【0012】
パドックシステム1の構成の詳細を説明する。
パドックシステム1は、複数のカメラ20(映像取得部)、ユーザ端末30、サーバ40を備える。
ユーザ端末30及びサーバ40間は、インターネット通信網等を含む通信網2で接続されており、必要に応じて通信可能である。また、複数のカメラ20及びサーバ40間も、有線LAN、無線LAN、インターネット通信網等の通信網3で接続されており、必要に応じて通信可能である。
【0013】
なお、実施形態において、コンピュータとは、記憶装置、制御装置等を備えた情報処理装置をいい、各装置20,30,40は、それぞれ記憶部、制御部を備え、コンピュータの概念に含まれる。
記憶部は、各装置20,30,40の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶装置である。制御部は、各装置20,30,40の動作に必要な演算処理をしたり、各装置20,30,40を統括的に制御するための装置である。制御部は、例えば、CPU(中央処理装置)等を備える。制御部は、記憶部に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、実施形態の各種機能を実現している。
また、各装置20,30,40は、必要に応じて、各装置の操作者の操作を受け付ける操作部(キーボード、マウス、各種ボタン等)、操作者に各種情報を表示する表示部(液晶表示装置等)等を備える。なお、各装置20,30,40は、操作部及び表示部を兼用するタッチパネルを備えていてもよい。
【0014】
複数のカメラ20と、サーバ40間との間の通信方法は、限定されず、例えば、無線通信、有線通信の各種通信規格を利用することができる。但し、馬体の高精細な映像を通信可能であること、パドック10内に複数のカメラ20が通信可能なケーブルを敷設するのは困難であること等を考慮すると、通信方法は、大容量の情報を通信可能な無線規格(例えば、第5世代移動通信システム等)を利用することが好適である。
なお、図1には、複数のカメラ20のうち一部のみ符号を付した。また、各カメラを区別して説明する場合には、適宜、カメラ20a~20dと表記する。
【0015】
複数のカメラ20は、立入禁止エリア12に配置されており、周回路11に沿って、周回路11の周囲全周に連続して設置されている。各カメラ20の撮影方向(撮影レンズの光軸方向)、ポジション(高さ)は、固定されている。カメラ20の撮影方向は、周回路11の法線方向の外側から内側に向けた方向であり、また、水平方向(又はほぼ水平方向)である。さらに、複数のカメラ20のポジションは、馬体の真横(例えば腰の高さ程度)であり、全て等しい。
図3(A)に示すように、このため、各カメラ20は、馬体の右側の真横から撮影することができる。また、隣合うカメラ20の撮影範囲は、左右方向において若干重なっている。このため、複数のカメラ20は、パドック10の周回路11を外側から見た映像を、左右方向に隙間なく取得することができる。
また、カメラ20は、撮影範囲内の馬体がほぼ一定アングルになる程度に小さい画角であり、かつ、小さい間隔で配置されている。
なお、実施形態とは異なり、カメラ20を観客席15に配置して形態では、競走馬5を見下ろすように撮影することになる。このため、この形態では、競走馬5を真横から撮影した映像を取得することはできない。
【0016】
ここで、図3(B)の比較例のカメラ120は、実施形態よりも広角であり、大きい間隔で配置されている。この場合、隣合うカメラ120の映像121の端部(つまり隣合うカメラの映像121(撮影範囲)が重なる付近)に馬体が存在した場合に、馬体に対する斜め前からの角度(又は斜め後からの角度)は、大きくなってしまう。このため、比較例で取得される映像は、馬体を真横から撮影したものとして取り扱うことはできない。
【0017】
図3(A)に示すように、これに対して、実施形態のカメラ20は、映像21の端部(つまり隣合うカメラ20の映像21(撮影範囲)が重なる付近)に馬体が存在した場合であっても、映像の馬体に対する斜め前からの角度(又は斜め後からの角度)は、十分に小さい。このため、複数のカメラ20が取得した映像は、馬体を真横から撮影したものとして取り扱うことができる程度に、馬体を右側の真横から見たほぼ一定のアングルとなる。
【0018】
ユーザ端末30は、このシステムの配信サービスを利用するユーザの端末である。複数のユーザは、それぞれユーザ端末30を所有する。図1に示すように、ユーザ端末30は、例えば、携帯型情報端末、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等である。
ユーザ端末30は、操作部31、表示部32、記憶部35、制御部36を備える。
【0019】
サーバ40は、複数のカメラ20の撮像情報に基づいてパドック10の各種情報を作成して、ユーザ端末30に送信したりする。また、サーバ40は、ユーザ端末30の表示部32に各種情報を表示するWEBサーバとしても機能する。なお、パドックシステム1は、1台のサーバを備える形態に限定されず、各機能に対応した複数のサーバを備えていてもよい。この場合には、各サーバが、各機能に対応した記憶部、制御部等を備える。
【0020】
サーバ40は、記憶部45、制御部46を備える。
記憶部45は、パドックプログラム45a、履歴情報記憶部45b(単馬映像記憶部)を備える。
パドックプログラム45aは、サーバ40の各種機能を実現するためのプログラムである。
図2に示すように、履歴情報記憶部45bは、各競走馬5の過去のレース情報を記憶する。履歴情報記憶部45bは、馬名と、過去のレース情報とを対応付けて記憶する。
過去のレース情報は、レース日、単馬映像(映像データ)、着順、馬状態(装具、毛ヅヤ点数)である。これらの情報の詳細は、後述する。
【0021】
制御部46は、事前選択部46a、パノラマ映像作成部46b、競走馬識別部46c、単馬映像作成部46d、映像解析部46e、配信部46fを備える。
各制御部の概要は以下の通りである(処理の詳細は、後述する)。
事前選択部46aは、ユーザが配信を希望する競走馬5の選択を、ユーザ端末30から受け付ける。
パノラマ映像作成部46bは、複数のカメラ20の映像に基づいてパノラマ映像25(図6(A)等参照)を作成する。
競走馬識別部46cは、パノラマ映像25に基づいて周回路11に登場して存在する競走馬5を識別する。
単馬映像作成部46dは、パノラマ映像25に基づいて単馬映像26(図6(B)等参照)を作成する。単馬映像26は、1頭の競走馬5が周回路11を移動する映像である。
映像解析部46eは、カメラ20が取得した映像を解析することにより、競走馬5が装着している馬具の情報、及び競走馬5の生体情報のうち少なくとも1つを取得する。
配信部46fは、パドック10の各種情報を、ユーザ端末30に送信する。
【0022】
[パドックシステム1の動作]
パドックシステム1の利用方法を説明しながら、パドックシステム1の動作について説明する。
図4は、第1実施形態のパドックシステム1の処理の流れを説明する図である。
図5図6は、第1実施形態のサーバ40の映像処理を説明する図である。
図7図8は、第1実施形態のユーザ端末30の表示画面を説明する図である。
【0023】
以下、2020年1月1日、第10レースのパドック10の各種情報を例に説明する。
ユーザは、パドック情報の配信を希望するレースに関して、競走馬5がパドック10に登場する以前(例えば、前日以前等)に、予め発表された出馬表に基づいて、自分がマークしている競走馬5を、事前選択することができる。
S1a,S1bにおいて、図7(A)に示すように、ユーザ端末30の制御部36、サーバ40の制御部46は、ユーザ端末30の操作に応じて、事前選択画面51をユーザ端末30の表示部32に表示する。
事前選択画面51は、レース名の入力、及び入力されたレースに出走する複数の競走馬5の馬名を表示することにより、競走馬5の選択を受け付ける画面である。図7(A)では、「2020年1月1日 第10レース 初夢走」が入力されることにより、その出走馬が表示されている。
ユーザは、各馬に対応した選択ボタン51aを選択操作することにより、競走馬5を選択することができる。図7(A)は、「馬番1 イチロー」を選択した例である。
【0024】
図7(B)に示すように、ユーザ端末30の制御部36、サーバ40の制御部46は、選択ボタン51aが操作されることに応じて、出走履歴選択画面52を表示する。出走履歴選択画面52は、過去のレースの出走履歴の情報の選択を受け付ける画面である。
出走履歴選択画面52は、事前選択画面51で選択された競走馬5の出走履歴を表示する。この場合、サーバ40の制御部46は、履歴情報記憶部45bを参照することにより、競走馬5の出走履歴を読み出す。なお、図7(B)には、出走履歴として、出走日及びその着順を表示したが、レース名等を表示してもよい。
後述するように、ユーザは、出走履歴を選択することにより、レース時のパドック情報に加えて、過去のレースに関する情報を確認することができる。ユーザは、例えば、成績が良かった出走履歴、成績が悪かった出走履歴、直前の出走履歴等を選択することができる。
図7(B)は、ユーザが図7(A)で選択した「馬番1 イチロー」について、2019年1月1日の出走履歴、2019年3月3日の出走履歴の2つを選択した例である。
【0025】
サーバ40の制御部46は、事前選択画面51で選択されたレース、競走馬5、出走履歴選択画面52で選択された出走履歴の情報を、記憶部45に記憶する。
なお、ユーザは、上記操作を繰り返すことにより、2以上の出走馬を事前選択することができる。
【0026】
以下のS2~S8は、現時点が2020年1月1日に到達することにより、第10レースの初夢走の出走馬がパドック10の周回路11を周回する場面の処理である。
S2において、パノラマ映像作成部46bは、パドック10に配置された複数のカメラ20の全ての映像を、取得する。
S3において、図5(A)に示すように、パノラマ映像作成部46bは、各カメラ20が取得した各映像21と、その隣に配置されたカメラ20が取得した他映像21とを隣合わせて配置し、これらを組み合わせる。図5(A)は、カメラ20bの映像21b、カメラ20cの映像21cの例である。
この場合、パノラマ映像作成部46bは、隣合うカメラ20の撮影範囲が重なった部分22を、歪み等を補正することにより、周方向(図5(A)では、左右方向)に連続した映像を作成する。前述したように、各カメラ20の映像は、馬体を右側の真横から見たほぼ一定アングルであるので、補正された部分も、より自然な映像となる。
【0027】
図5(B)、図6(A)に示すように、パノラマ映像作成部46bは、全ての隣合うカメラ20に関して上記処理を行う。これにより、パノラマ映像作成部46bは、周回路11を外側から見た画像であって、周回路11上に位置する全ての競走馬5の映像が含まれるパノラマ映像25(全周映像)を作成する。パノラマ映像25は、競走馬5が隣合う映像21(各映像及び他映像)を跨って移動可能であり、馬体を周回路11の外側からほぼ一定角度で観察したものとなる。
【0028】
S4において、図5(B)、図6(B)に示すように、単馬映像作成部46dは、パノラマ映像作成部46bが作成したパノラマ映像25をトリミングすることにより、単馬映像26を作成する。
トリミング範囲は、少なくとも馬体全体が収まる大きさであることが好適である。単馬映像作成部46dは、各馬が周回路11上を移動することに応じて、パノラマ映像25のトリミング範囲を追従させる。つまり、単馬映像作成部46dは、パノラマ映像25内を移動する馬体を追尾し、この追尾に合わせてトリミング範囲を移動する。移動する馬体は、常に、単馬映像26の中央(一定の位置)に配置される。なお、馬映像作成部は、馬体を追尾する場合に、例えば、馬番が示されているゼッケンをマーカとして利用することができる。
【0029】
また、パノラマ映像25は、周回路11を法線方向の外側から見たものであるので、単馬映像26は、常に、馬体を右側の真横から見たものとなる。
単馬映像作成部46dは、周回路11上に存在する全ての競走馬5について、それぞれ単馬映像26を作成する。また、単馬映像作成部46dは、1頭の競走馬5に関し、その競走馬5が周回路11上から居なくなるまで、単馬映像26の作成を継続する。
この場合、単馬映像作成部46dは、全て競走馬の単馬映像26内の馬体の大きさが、一定になるように補正してもよい。但し、競走馬は、パドック10の周回路11の幅方向の中央を通るように導かれる。このため、全ての競走馬の単馬映像26は、基本的に、馬体の大きさがほぼ同じである。そのため、単馬映像作成部46dは、単馬映像26の馬体の大きさを、補正しない構成でもよい。
【0030】
S5において、競走馬識別部46cは、各単馬映像26(つまりカメラ20が取得した映像)を解析することにより、周回路11上の競走馬5を識別する。競走馬識別部46cは、各単馬映像26の作成が開始されたら(S4)、即時に、この識別処理を行う。
競走馬5の識別方法は、例えば、馬番が表示されたゼッケンの画像を解析する方法等を用いることができる。さらに、競走馬識別部46cは、この馬番と、記憶部45に記憶した出走表とに基づいて、馬名を識別することができる。
なお、単馬映像作成部46dは、競走馬5を識別後には、S4で作成した単馬映像26と、競走馬識別部46cが識別した競走馬5の馬番とを対応付けて、順次、履歴情報記憶部45bに記憶していく。
【0031】
S6において、映像解析部46eは、単馬映像26を解析することにより、馬状態を解析する。解析対象は、競走馬5が装着している馬具、競走馬5の毛ヅヤ(生体情報)である。
馬具は、例えば、ブリンカー、チークビーシーズ、シャドーロール等である。解析方法としては、例えば、予めこれらの馬具の形状を記憶部45に記憶しておき、これに一致する形状が、単馬映像26内に存在するか否かを判定すればよい。
毛ヅヤ点数は、競走馬5の体毛のつやの度合いを点数で示したものである。毛ヅヤ点数は、例えば、単馬映像26内の馬体の光沢度に基づいて算出できる。
なお、上記解析項目は、一例であって、他の馬具(メンコ、バンデージ等)、他の生体情報(歩幅、呼吸数等)を有していてもよい。
単馬映像作成部46dは、馬状態の解析結果と、馬番とを対応付けて、履歴情報記憶部45bに記憶する。
【0032】
S7において、配信部46fは、単馬映像作成部46dが作成した単馬映像26を、ユーザ端末30に配信する。
この場合、配信部46fは、S5で競走馬識別部46cが識別した競走馬5と、S1bで事前選択された競走馬5とが一致するか否かを判定する。そして、配信部46fは、両者が一致した場合に、その競走馬5の単馬映像26を、ユーザ端末30に送信する。これにより、配信部46fは、複数の単馬映像26のうち、ユーザ端末30から要求された単馬映像26を配信する。また、配信部46fは、事前選択された競走馬5がパドック10に登場したと判定した場合に、その競走馬5の単馬映像26をユーザ端末30に配信することができる。
【0033】
また、配信部46fは、現時点の単馬映像26に加えて、以下の情報をユーザ端末30に送信する。
・S6で解析した馬状態の解析結果
・S1bで選択を受け付けた過去のレースにおける履歴情報
なお、履歴情報は、履歴情報記憶部45bに記憶した過去のレースの単馬映像26、馬状態の情報である。
【0034】
S8において、図8に示すように、ユーザ端末30の制御部36は、上記情報を受信すると、パドック情報画面60を表示部32に表示する。
パドック情報画面60は、表示領域として、現映像表示部61、過去映像表示部62、馬状態表示部63を有する。
【0035】
現映像表示部61は、現時点で作成された単馬映像26を表示する。つまり、現映像表示部61の単馬映像26は、リアルタイムの動画である。図8は、「馬番1のイチロー」の現時点(2020年1月1日)における単馬映像26を表示した例である。
過去映像表示部62は、過去の単馬映像26を表示する。図8の過去映像表示部62は、図2の履歴情報記憶部45bに基づいて、「馬番1のイチロー」の出走日2019年1月1日の単馬映像26(V0011)、及び出走日2019年3月3日の単馬映像26(V0013)を、並べて表示した例である。
このように、ユーザ端末30は、現時点における単馬映像26と、過去のレースにおける単馬映像26とを比較可能に表示する。
馬状態表示部63は、馬状態の情報(各種装備の有無、毛ヅヤ点数)を表示する表示領域である。馬状態表示部63は、現時点の馬状態の情報、履歴情報記憶部45bに記憶された過去の2つの馬状態の情報(2019年1月1日、2019年3月3日)を、表形式で表示する。
【0036】
ユーザ端末30の制御部36、サーバ40の制御部46は、パドック10に馬が居なくなるまで、上記S2~S9の処理を継続する。そして、パドック10に馬が居なったことに応じて、「2020年1月1日、第10レース 初夢走」のパドック情報の取得に関する処理を終了する。
なお、図2には図示を省略するが、制御部46は、現レースのパドック10に関しても、日時、馬名、パドック10の各情報(S4の単馬映像26、S6の馬状態の解析結果)を対応付けて、履歴情報記憶部45bに記憶する。
【0037】
また、上記説明では、サーバ40は、事前選択された競走馬5のパドック情報を、ユーザ端末30に送信する例を示したが、現時点で周回路11上に存在する競走馬5の選択を受け付けて、その情報を配信することができる。
この場合には、ユーザ端末30の制御部36、サーバ40の制御部46は、図7(C)に示すような、競走馬選択画面53を表示部32に表示すればよい。
競走馬選択画面53は、事前選択画面51と同様な表示画面である。但し、競走馬選択画面53は、S5で識別された競走馬5、つまり、周回路11上に存在すると判定された競走馬5が表示される。そして、サーバ40の制御部46は、選択された競走馬5の単馬映像26を、ユーザ端末30に送信すればよい。
【0038】
S9において、サーバ40の制御部46は、レースが終了することにより、各競走馬5の成績を、履歴情報記憶部45bに記憶する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のパドックシステム1は、例えば、以下の作用、効果を奏する。
(1)ユーザは、マークしている競走馬5等を事前登録しておけば、レース当日に周回路11上にその競走馬5が存在するか否かをわざわざ確認することなく、その単馬映像26をユーザ端末30で確認できる。
ここで、競走馬5がパドック10に登場する順番は、馬番とは異なる場合がある。このため、ユーザは、馬番に基づいて競走馬5が周回路11に登場する時期を見計らおうとすれば、その競走馬5の映像を見落とす可能性があるが、本実施形態では、登場した競走馬5を見落としたりすることがない。
さらに、ユーザは、パドック10に登場した競走馬5のなかから、情報を希望する競走馬5を選択する手間がかからない。このため、ユーザは、パドック10の周回から発走前までの短い時間を、有効に活用できる。
【0040】
(2)単馬映像26は、周回路11を競走馬5が周回する際に、常に一定のアングル、ポジションから見た馬体の単馬映像26を作成することができる。また、厩務員は、競走馬5よりも内側に位置するので、単馬映像26は、厩務員が競走馬5を遮らない映像にすることができる。
さらに、競走馬5の調子を判定する際には、真横から見た馬体の情報が、重要である。サーバ40は、真横から観察した単馬映像26を作成できるので、競走馬5の調子を判別するために適切な単馬映像26を、ユーザ端末30に配信することができる。
これにより、サーバ40は、ユーザが競走馬5の調子を判断、検討等するために適切な情報を、ユーザ端末30に配信することができる。
【0041】
(3)ユーザは、現時点のパドック情報(単馬映像26、馬状態の情報)と、過去のレースにおけるパドック情報とを比較できるので、例えば、成績の良かった場合の馬体と、現時点の馬体とを、詳細に比較できる。また、ユーザは、自分の記憶に頼らずに、現時点の競走馬5の状態を正確に判断することができる。
(4)ユーザ端末30からの要求に応じて、複数の競走馬5のなかからユーザが選択した競走馬5の単馬映像26を配信できる。これに対して、従来のテレビジョン放送等では、放送局が競走馬5を独自に選択してその映像を配信していたため、ユーザは、自分がマークした競走馬5を、じっくりと観察することができなかった。
【0042】
パドック10の周回路11は、十分に短い。このため、複数のカメラ20は、その数が膨大にならず、低コストで設置できる。
なお、レース周回路は、パドック10の周回路11よりも十分に長いため、複数のカメラ20を設置しようとすれば、その数が膨大になってしまう。さらに、レース周回路は、疾走する競走馬が幅方向においていずれの位置を通過するかが定まっていないために、単馬映像を作成しても、馬体の大きさが安定しない。さらに、レース周回路の幅方向において、複数の競走馬が重なってしまえば、周回路の直近に設置したカメラの広角映像では、奥側の競走馬は、手前側の競走馬に隠れてしまうので、競走馬の順位を確認できない。このため、実施形態のシステムを、レース周回路に適用する動機付けはない。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
[システム201の構成]
図9は、第2実施形態のシステム201の構成を説明する図である。
図10は、第2実施形態の馬体状態解析テーブル245e、種牡馬比較テーブル245fを示す図である。
【0044】
第2実施形態のシステム201(馬情報配信システム)は、複数の競馬場A,B,C,・・・に設けられたパドックシステム201A,201B,201C,・・・間を通信網2で接続し、また、第1実施形態のシステムに各種機能を追加したものである。パドックシステム201A,201B,201C,・・・は、第1実施形態のパドック、サーバに対応した構成を備える。パドックシステム201A,201B,201C間は、各種情報を通信可能である。
本実施形態では、主に、パドックシステム201Aの構成、処理等について説明する。
なお、図9は、パドックシステム201B,201Cの詳細な構成の図示を省略したが、パドックシステム201B,201Cは、パドックシステム201Aと同様な構成を備える。
【0045】
パドックシステム201Aのサーバ240の記憶部245は、他競馬場情報記憶部245c、種牡馬情報記憶部245d、馬体状態解析テーブル245e、種牡馬比較テーブル245fを備える。
パドックシステム201A,201B,201Cは、各履歴情報記憶部等の情報を必要に応じて互いに送受信し、他パドックシステムの履歴情報記憶部の情報を取得して、各パドックシステムの履歴情報記憶部に記憶する。
【0046】
他競馬場情報記憶部245cは、パドックシステム201B,201Cの記憶部に記憶された各種情報(競馬場Aとは異なる他競馬場B,C・・・でのレース結果(開催日、着順等)、解析スコア、単馬映像等)と同様な情報を記憶する。解析スコアの詳細は、後述する。
種牡馬情報記憶部245dは、種牡馬に関する情報を記憶する。
種牡馬情報記憶部245dは、種牡馬の馬名、種牡馬の単馬映像、種牡馬の解析スコアを記憶している。
種牡馬の単馬映像は、種牡馬が過去のレースにおいてパドックの周回路に登場した際に、制御部246(単馬映像作成部46d)が作成したものである。
なお、種牡馬が競馬場Aでの出走履歴を有さない場合には、パドックシステム201Aのサーバ240は、他の競馬場のパドックシステムと通信することにより、種牡馬に関する上記情報を取得してもよい。
また、図示は省略するが、記憶部245は、競馬場Aのレースに出走する競走馬の馬名と、その種牡馬の馬名とを対応付けて記憶している。
【0047】
図10に示すように、馬体状態解析テーブル245eは、単馬映像に基づいて解析された馬体状態(馬体の状態)の解析結果に関する情報を記憶する。馬体状態解析テーブル245eの詳細は、後述する。
種牡馬比較テーブル245fは、競走馬の馬体及びその種牡馬の馬体を、単馬映像に基づいて比較した結果に関する情報を記憶する。種牡馬比較テーブル245fの詳細は、後述する。
【0048】
[パドックシステム201Aの処理]
システム201の各種処理を、パドックシステム201Aを例に説明する。
(単馬映像配信処理)
図11は、第2実施形態の競馬場Aのレース当日にパドックに存在する競走馬の単馬映像配信画面261を示す図である。
図12は、第2実施形態の過去に競馬場Aのパドックに存在した競走馬の単馬映像配信画面261を示す図である。
図11に示すように、パドックシステム201Aのサーバ240は、履歴情報記憶部245bの情報に基づいて、ユーザが選択した競走馬に関する単馬映像配信画面261を作成し、これをユーザ端末30に配信し表示部32に表示する。なお、ユーザ端末30における競走馬の選択操作は、詳細を省略するが、例えば、複数の競走馬を一覧で表示し、その一覧から選択操作を受け付ければよい。
【0049】
単馬映像配信画面261は、主再生映像261a、サムネイル映像261b~261d、タイムバー261eを表示する。
主再生映像261aの表示領域は、サムネイル映像261b~261dの各表示領域よりも大きい。複数のサムネイル映像261b~261dは、表示部32のうち主再生映像261aの表示部分(主表示部)よりも下側に部分(一覧表示部)に一覧で表示される。
主再生映像261aは、レース当日の単馬映像等である。ユーザは、レース当日の主再生映像261aを観察することにより、競走馬の詳細な状態を確認することができる。
【0050】
サムネイル映像261b~261dは、主再生映像261aの再生時点(一時点)よりも前の時点の単馬映像を表示する。実施形態では、複数のサムネイル映像261b~261dが、再生開始時点(再生開始後0秒の時点)から30秒間隔毎に、一覧表示される。サムネイル映像261b~261dは、静止画、動画のいずれでもよい。また、サムネイル映像261b~261dが動画である場合には、各時間間隔の単馬映像を繰り返し再生されてもよい。つまり、制御部246は、0秒から30秒までのサムネイル映像261b等を、繰り返し再生してもよい。
ユーザは、サムネイル映像261b~261dを観察することにより、複数の時点における競走馬の状態を比較することができる。
【0051】
タイムバー261eは、主再生映像261aの下側に表示される。タイムバー261eは、いわゆるシークバーであり、全再生時間を表すバーと、再生経過時間に応じて移動するスライダー261fとによって、再生時点を視覚的に示す。
図11の主再生映像261aは、現時点において競走馬がパドックの周回路上に存在している場面である。このため、競走馬の単馬映像は、記憶部245に記憶されると同時に、ユーザ端末30に配信される。また、主再生映像261aは、リアルタイムの映像である。
【0052】
図12の単馬映像配信画面261は、過去にパドックに存在した競走馬に関する。
このため、単馬映像配信画面261は、サムネイル映像261b~261dbに加えて、主再生映像261aの再生時点(一時点)よりも後の時点の単馬映像261gを加えた合計4つを、再生時間の全期間(実施形態では120秒)に対応して一覧で表示する。
なお、「過去にパドックに存在した」の「過去」とは、レース終了以降に限定されず、パドックに登場してからレース開始までを含む概念である。このため、例えば、2頭以上の競走馬が同時にパドックに存在している場合には、ユーザは、一方の競走馬のリアルタイムの単馬映像を、図11の単馬映像配信画面261で確認し、その後に、他方の競走馬の過去の単馬映像を、図12の単馬映像配信画面261で確認できる。また、ユーザは、所望の競走馬の馬体状態を、図12の単馬映像配信画面261で繰り返し確認できる。
【0053】
(単馬映像配信処理における操作受け付け)
ユーザは、単馬映像配信画面261が表示されている状態で、以下の操作をすることができる。
ユーザは、主再生映像261aの単馬映像よりも複数のサムネイル映像261b~261dのうち1つの単馬映像の方が、競走馬の状態を確認しやすいと判断する場合がある。この場合には、ユーザは、マウス等を操作することにより、そのサムネイル映像261b~261dの表示領域を選択すればよい。
ユーザ端末30は、ユーザの操作を受け付けると、操作情報をサーバ240に操作情報を送信する。
サーバ240は、ユーザの操作情報を受信したことに応じて、主再生映像261aの単馬映像を、選択されたサムネイル映像261b~261dの単馬映像の動画に切り替える。
これにより、ユーザは、所望の単馬映像を、大きな表示領域で確認することができる。
【0054】
また、サーバ240は、マウス等によるスライダー261fを移動する操作を受け付けると、主再生映像261aの単馬映像の再生を、移動後のスライダー261fに位置に応じた時点に、戻す又は進める。これにより、ユーザは、所望の時点の単馬映像を確認することができる。
【0055】
なお、サムネイル映像261b~261dの一覧表示は、一定時間毎(実施形態では30秒毎)であることに限定されない。また、サーバ240は、システム管理者の設定操作を受け付けて、例えば、任意の異なる時間間隔(例えば、1つ目を再生開始後10秒の時点のサムネイル映像、2つ目を再生開始後30秒の時点のサムネイル映像等)に設定してもよい。
【0056】
また、サーバ240は、時間に応じてサムネイル映像を一覧表示する形態から、周回路の位置に応じてサムネイル映像の一覧表示する形態に変形してもよい。
この場合には、記憶部245は、各カメラと、周回路の位置とを対応付けて記憶しておけばよい。周回路の位置は、図1の例では、2つの直線部分と、2つのコーナ部分の合計4つである。
そして、サーバ240の制御部246は、周回路の直線部分のサムネイル映像、コーナ部分のサムネイル映像を含むように、一覧表示を設定する。サムネイル映像の上側には、時間の表示に替えて、周囲路の位置情報(第1直線、第2直線、第1コーナ、第2コーナ等の文字表記)の表示にしてもよい。
直線部分のサムネイル映像は、直線部分に配置されたカメラに基づいて作成された単馬映像であり、コーナ部分のサムネイル映像は、コーナ部分に配置されたカメラに基づいて作成された単馬映像である。
【0057】
ここで、一般的にパドックは、屋外に設けられているので、馬体は、日光によって照らされる。また、馬体状態は、周回路上の競走馬の位置と、太陽の位置とに応じて、見え方が変わる場合がある。
競走馬が直線部分を歩いている間は、馬体に対する日光の照射角度が一定であるので、例えば、馬体の筋肉の動き等を詳細に確認しやすい。
一方、競走馬がコーナ部分を歩いている間は、馬体に対する日光の照射角度が次第に変化するので、馬体の筋肉の起伏や張り具合等を詳細に確認しやすい。
【0058】
このため、ユーザは、馬体を確認したい項目に応じたサムネイル映像を観察することができる。また、ユーザは、サムネイル映像を選択することにより、主再生映像261aを、競走馬の周回路上の位置に応じた単馬映像に切り替えることができる。
また、実施形態の単馬映像は、馬体の真横から映像を常時表示するので、構図が変化しない。このために、ユーザは、単馬映像を観察した場合に、競走馬が周回路上のいずれに位置に存在するかを、判別しにくい可能性がある。上記形態では、サムネイル映像に周囲路の位置情報を付記するので、ユーザは、サムネイル映像の単馬映像と、周回路上の位置との関係を、判別しやすい。
【0059】
(複数の競馬場の複数の単馬映像の比較)
図13は、第2実施形態のパドックシステム201A,201Bで作成された単馬映像を説明する図である。
図13(A)は、パドックシステム201Aで作成された単馬映像を示す図である。
図13(B)は、パドックシステム201Bで作成された単馬映像を示す図である。
図13(C)は、パドックシステム201Aから配信された単馬映像比較画面262を示す図である。
図13(C)に示すように、パドックシステム201Aは、ユーザ端末30の操作に応じて、単馬映像比較画面262をユーザ端末30に配信する。
単馬映像比較画面262は、同一の競走馬について、競馬場Aのパドックの単馬映像262aと、競馬場Bのパドックの単馬映像262bとを、並べて表示する。2つの単馬映像262a,262bの表示サイズ(表示領域の大きさ)は、同一である。
単馬映像262aは、競馬場Aのパドックシステム201Aで作成され、履歴情報記憶部245bに記憶されたものである。単馬映像262bは、競馬場Bのパドックシステム201Bで作成されたものであり、パドックシステム201Aが通信網2を介して取得して、他競馬場情報記憶部245cに記憶されたものである。
【0060】
図13(A)、図13(B)に示すように、パドックシステム201A,201Bで作成される単馬映像262a,262b内の馬体の大きさは、互いに異なる場合がある。
つまり、同一のパドックシステムであれば、全ての単馬映像内の馬体の大きさが同一であるが、異なるパドックシステム間では、構図の設定等に応じて、単馬映像内の馬体の大きさが異なる場合がある。
このように馬体の大きさが異なる2つの単馬映像262a,262bをそのまま配信しても、ユーザは、馬体状態を比較しにくい。
【0061】
そのため、パドックシステム201Aのサーバ240の制御部246は、単馬映像比較画面262を作成する際に、単馬映像262a,262bを編集することにより、馬体の大きさを同一にし、かつ、馬体を同一の位置に配置する。この場合、制御部246は、例えば、2つの単馬映像の馬体の輪郭を抽出することにより、2つの単馬映像の馬体の大きさを確認すればよい。そして、一方の単馬映像を、拡大することにより、2つの馬体を同一にすればよい。
図13は、単馬映像の262bの一部範囲を、単馬映像262aの構図に合わせて、トリミング及び拡大した例を示す。
【0062】
これにより、競馬場Aのパドックシステム201Aは、競馬場Aの単馬映像と、他の競馬場の単馬映像とを比較しやすい態様で、ユーザ端末30に表示することができる。
【0063】
(馬体状態解析処理)
図10に示すように、パドックシステム201Aのサーバ240の制御部246(馬体状態解析部)は、履歴情報記憶部245b、他競馬場情報記憶部245cに記憶されている競走馬の単馬映像を解析することにより馬体状態を解析し、解析結果を馬体状態解析テーブル245eに記憶する。
馬体状態の解析項目は、筋肉の起伏の度合い、筋肉の動きの度合い、馬体の毛ヅヤの度合い等である。
馬体状態の解析手法は、種々の方法を用いることができ、例えば、単馬映像内の馬体の陰影、光沢等の変化を、継続して観察、読み取ることにより、筋肉の起伏の度合い、筋肉の動きの度合い、馬体の毛ヅヤの度合い等を解析することができる。また、制御部246は、複数の馬体の解析結果に基づいて、例えばAI(人工知能)等の手法を用いて、これらの度合いを解析スコア(1~10点)で表す。なお、解析項目は、上記項目に限定されず、例えば、競走馬の落ち着き度合い、歩調、馬体重、馬体の輪郭等の項目を含んでいてもよい。
【0064】
ここで、このような物体の状態の解析手法は、物体の映像が、物体を一定の角度で撮像したものであり、物体が一定の大きさであり、また、長時間の映像である程、正確に行うことができ、信頼度が向上する。単馬映像は、これらの条件を満たす。このため、制御部246は、これらの解析スコアを、正確に算出できる。
図10の馬体状態解析テーブル245eは、馬名イチローの競走馬の馬体状態解析結果を示す。
馬体状態解析テーブル245eは、出走日、上記解析項目の解析スコア、一致スコア、レースでの着順、競馬場名を対応付けて記憶する。
【0065】
発走日は、馬名イチローのレース発走日である。図10の馬体状態解析テーブル245eの例では、「2020/1/1」、「2019/3/3」、「2019/2/2」の3つのレコードを有する。
「2020/1/1」のレコードは、当日である発走前の競走馬イチローがパドックに登場している際のものである。このため、「2020/1/1」の解析スコアは、競馬場Aのパドックシステム201Aの制御部246が、競馬場Aのパドックの周回路を周回している状態の競走馬イチローの単馬映像に基づいて、算出したリアルタイムの解析スコアである。また、着順の情報は、発走前であるため、記憶されていない。
なお、単馬映像は、時間経過に応じて、取得時間が長くなる。前述したように、解析スコアは、長時間である程、正確に算出できるため、リアルタイムの解析スコアは、時間経過に応じて、信頼度が向上する。この場合には、制御部246は、「2020/1/1」のレコードの解析スコアを、順次更新すればよい。
【0066】
「2019/3/3」、「2019/2/2」の解析スコアは、競走馬イチローが、それぞれ競馬場B,Cにおいて、過去に発走した際のレコードである。競馬場Aのパドックシステム201Aのサーバ240は、競馬場B,Cのパドックシステム201B,201Cから取得し他競馬場情報記憶部245cに記憶した単馬映像に基づいて、これらの2つのレコードの解析スコアを算出する。
なお、これらの2つのレコードの解析スコアは、競馬場B,Cのパドックシステム201B,201Cで算出されたものを、パドックシステム201Aが取得してもよい。
【0067】
一致スコアは、当日の発走前のパドックの馬体状態と、過去のレースの発走前のパドックの馬体との一致度合いを、点数(1~10点)で表したものである。
制御部246は、「2020/1/1」の解析スコアと、「2019/2/2」の解析スコアとを比較することにより一致スコアを算出し、算出した一致スコアを「2019/2/2」のレコードに記憶する。
同様に、制御部246は、「2020/1/1」の解析スコアと、「2019/3/3」の解析スコアとを比較し、一致スコアを「2019/3/3」のレコードに記憶する。
【0068】
制御部246は、一致スコアを算出する際には、レース結果である着順への影響度合いに基づいて、解析項目毎に重みづけをしてもよい。重みづけは、例えば、解析項目毎に異なる係数を設定すればよい。例えば、筋肉の起伏の方が毛ヅヤよりも着順に大きく影響する場合には、筋肉の起伏の解析スコアの係数を、毛ヅヤの解析スコアの係数よりも大きく設定すればよい。なお、制御部246は、各解析項目と過去のレース結果との関連性を、AIを用いて解析することにより、この重みづけの係数を算出してもよい。
【0069】
パドックシステム201Aは、このように馬体状態の正確な解析結果を解析スコアで表すことができ、また、複数のレースにおけるパドックの馬体状態の比較結果を一致スコアで表すことができる。
【0070】
(馬体状態解析画面263)
図14は、第2実施形態の馬体状態解析画面263を示す図である。
競馬場のパドックシステム201Aのサーバ240は、ユーザ端末30によって選択を受け付けた競走馬に関して、馬体状態解析テーブル245eに基づいて馬体状態解析画面263を作成する。図14は、競走馬イチローが選択された例である。
図14に示すように、馬体状態解析画面263は、当日単馬映像263A、当日解析スコア263b、過去端末映像263c、過去解析スコア263d、一致スコア263e、過去レースの着順263fを表示する。
【0071】
当日単馬映像263Aは、レース当日のパドックの競走馬イチローの単馬映像である。当日単馬映像263Aは、リアルタイムの情報でもよい。
当日解析スコア263bは、当日の単馬映像に基づいて算出された解析スコアであり、また、馬体状態解析テーブル245eから読み出されたものである。
【0072】
同様に、過去端末映像263c、過去解析スコア263dは、競走馬イチローの過去のレースにおける単馬映像、解析スコアである。なお、過去解析スコア263d、一致スコア263e、過去レースの着順263fは、馬体状態解析テーブル245eから読み出されたものである。
この場合、サーバ240の制御部246は、馬体状態解析テーブル245eを参照することにより、当日である「2020/1/1」の馬体状態との一致スコアが8点であり、当日の馬体状態に最も近い「2019/2/2」のレコードを抽出する。
また、制御部246は、「2019/2/2」のレコードに対応する「2019/2/2」の競走馬イチローの単馬映像を、過去単馬映像として他競馬場情報記憶部245cから読み出す。
【0073】
サーバ240の制御部246は、このように作成した馬体状態解析画面263をユーザ端末30に表示する。
ユーザは、馬体状態解析画面263を確認することにより、当日の競走馬の馬体状態が、過去のどのレースの状態に近いかを確認することができる。また、ユーザは、過去のレースの着順263fを参照することにより、当日の競走馬の状態の良し悪しを確認、検討できる。
【0074】
なお、馬体状態解析画面263において、当日の単馬映像、当日解析スコア263bに対応させて抽出する過去レースは、馬体状態との一致度合いが高いレースであることに限定されず、例えば、以下のように変形してもよい。この場合には、馬体状態解析画面263において、その変更後の過去レースにおける過去端末映像263c、過去解析スコア263d、一致スコア263e、過去レースの着順263fが表示される。
(1)過去レースは、競走馬の当日よりも1つ前に出走したもの、つまり前走でもよい。この場合には、ユーザは、馬体状態解析画面263を確認することにより、当日の馬体状態と、直近のレースの馬体状態とを比較、検討することができる。
【0075】
(2)過去レースは、着順の成績が最もよかったものでもよい。ここで、着順が最もよかった際の馬体状態は、最もよい状態とみなすことができる。このため、ユーザは、馬体状態解析画面263を確認することにより、当日の馬体状態と、最も良い馬体状態とを比較できる。
また、これとは逆に、過去レースは、着順が最も悪かったものでもよい。この場合には、馬体状態解析画面263を確認することにより、当日の馬体状態と、最も悪い馬体状態とを比較できる。
【0076】
(3)過去レースは、当日のレースと同等の季節に行われたものでもよい。ここで、競走馬によっては、成績、馬体状態が、季節の影響を受ける場合がある。このため、ユーザは、馬体状態解析画面263を確認する際に、当日の馬体状態と、当日のレースと同等の季節に行われたレースの馬体状態とを比較することにより、当日の馬体状態と、同等の季節における状態との差異を確認することができる。
また、馬体表面の毛の状態は、季節によって異なる(夏毛、冬毛等)。このため、同等の季節の複数の単馬映像は、馬体表面の毛の状態の条件が、同等である可能性が高い。そのため、ユーザは、これらの単馬映像の解析スコアを比較すること、及びこれらの一致スコアを参照することによって、レース当日の競走馬の状態を、より正確に検討できる可能性が高い。
【0077】
このように、馬体状態解析画面263では、当日の馬体状態と、複数の種別の過去レースの馬体状態との比較結果を、ユーザ端末30に配信できる。なお、ユーザ端末30に選択画面を表示することにより、当日のレースの比較対象となる過去レースの種別を、選択できるようにしてもよい。
【0078】
(種牡馬比較解析処理)
図10に示すように、種牡馬比較テーブル245fは、馬名、解析スコア、種牡馬一致スコアを対応付けて記憶している。
馬名は、競走馬(イチロー,ジロー等)に加えて、これらの種牡馬ゴローを含む。
種牡馬ゴローの解析スコアは、種牡馬ゴローの過去の単馬映像に基づくものである。
種牡馬ゴローの過去の単馬映像は、記憶部245(履歴情報記憶部245b又は他競馬場情報記憶部245c)に記憶されている。サーバ240の制御部246は、その単馬映像に基づいて種牡馬ゴローの解析スコアを算出して、種牡馬比較テーブル245fに記憶する。また、制御部246は、種牡馬ゴローの過去の単馬映像を記憶することなく、種牡馬ゴローの解析スコアの情報のみを、記憶部245に記憶しておいてもよい。
【0079】
競走馬(イチロー,ジロー等)の解析スコアは、上記馬体状態解析テーブル245eの解析スコアと同様である。
種牡馬一致スコアは、制御部246が、馬体状態解析テーブル245eの一致スコアと同様に、各競走馬の解析スコアと、種牡馬ゴローの解析スコアとを比較することにより算出する。
【0080】
(種牡馬一致情報画面264)
図15は、第2実施形態の種牡馬一致情報画面264を示す図である。
競馬場Aのパドックシステム201Aのサーバ240は、ユーザ端末30の操作に応じて、種牡馬一致情報画面264を作成する。
図15に示すように、種牡馬一致情報画面264は、種牡馬ゴローが種牡馬である競走馬イチローの単馬映像264a及び種牡馬一致スコア264bと、競走馬ジローの単馬映像264c及び種牡馬一致スコア264dとを表示する。
【0081】
この場合、サーバ240の制御部246は、ユーザ端末30から種牡馬ゴローの馬名の入力を受け付けると、記憶部245を参照することにより、選択された当日レースにおいて、種牡馬ゴローを種牡馬とする競走馬イチロー,ジローを抽出する。
なお、ユーザ端末30は、種牡馬ゴローの馬名の入力を受け付ける代わりに、当日レースに出走する競走馬イチローの入力を受け付けてもよい。この場合には、サーバ240の制御部246は、記憶部245を参照することにより、競走馬イチローの種牡馬ゴローを抽出後、さらに種牡馬ゴローを種牡馬とする競走馬ジローを抽出すればよい。
【0082】
サーバ240の制御部246は、馬体状態解析画面263と同様に、当日のパドックの競走馬イチロー,ジローの単馬映像264a,264cを、種牡馬一致情報画面264に表示する。
競走馬イチロー,ゴローの種牡馬一致スコア264b,264dは、種牡馬比較テーブル245fから読み出されたものである。
サーバ240の制御部246は、このように作成した種牡馬一致情報画面264をユーザ端末30に表示する。
ユーザは、種牡馬一致情報画面264を確認することにより、競走馬イチロー,ゴローの馬体状態のうちどちらが種牡馬ゴローの馬体状態に近いかを確認することができる。
【0083】
ここで、競馬の分野では、ユーザは、発走前の競走馬の容姿と、その種牡馬の容姿とを比較することにより、競走馬がその種牡馬の資質をどの程度、引き継いでいるかを参照することがある。
しかし、ユーザにとっては、レース当日に、競走馬の馬体状態と、種牡馬の馬体状態とを比較することは困難であるという問題がある。これは、種牡馬は、レース当日にはパドックには存在しないし、また、引退後の種牡馬の馬体をユーザが確認する機会は、少ないため等である。
本実施形態では、種牡馬一致情報画面264をユーザ端末30に表示することにより、ユーザは、レース当日に、競走馬の馬体及びその種牡馬の馬体の一致度合いを確認できる。また、ユーザは、複数の競走馬が同じ種牡馬の産駒である場合にも、これら競走馬の種牡馬との一致度合いを容易に比較できる。
【0084】
なお、各競走馬(イチロー,ジロー等)の比較対象は、他競走馬であって、各競走馬と同じ種牡馬の産駒でもよい。この他競走馬は、現役、引退のいずれでもよい。
すなわち、競馬の分野では、同じ種牡馬の産駒(各競走馬、他競走馬)において、他競走馬の過去のレースの成績が上位であった際には、他競走馬の馬体状態は、各競走馬(イチロー,ジロー等)の馬体状態の参考にされる場合があるといった事情がある。このため、ユーザ端末が他競走馬の馬名等の入力を受け付けて、サーバ240がこの他競走馬と、各競走馬(イチロー,ジロー等)の馬体状態とを、比較してもよい。この場合にも、サーバ240は、記憶部245を参照することにより、他競走馬の種牡馬ゴローを抽出後、この種牡馬ゴローを種牡馬とする競走馬(イチロー,ジロー等)を抽出すればよい。そして、他競走馬の単馬映像に基づいて、各競走馬の馬体状態を解析、比較すればよい。
【0085】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
前述した実施形態では、複数のカメラ映像に基づいてパノラマ映像を作成後、さらに単馬映像を作成したが、本実施形態では、各競馬場に設定された1台の固定カメラの映像をトリミングすることにより各馬のトリミング映像を作成する。本実施形態では、単馬映像の代わりにトリミング映像を用いて、前述した実施形態と同様な処理、解析を行う。以下、主に前述した実施形態とは異なる部分について説明し、重複する説明を適宜省略する。
【0086】
図16は、第3実施形態のパドックシステム301の構成を説明する図である。
図17は、第3実施形態のトリミング映像対応テーブル345cを示す図である。
図18は、第3実施形態のパドック310A(周回路311A)のカメラ320Aが撮像した周回路311Aの全体映像を説明する図である。
図19は、第3実施形態のパドック310A(周回路311A)のトリミング映像を示す図である。
図20は、第3実施形態のパドック310B(周回路311B)のカメラ320Bが撮像した周回路311Bの全体映像を説明する図である。
図21は、第3実施形態のパドック310B(周回路311B)のトリミング映像を示す図である。
なお、本実施形態では、観客席、立入禁止エリア、厩務員等の図示、説明を適宜省略する。
【0087】
図16に示すように、パドックシステム301は、複数の競馬場のパドックの情報を、ユーザ端末30に配信するシステムである。図16のパドックシステム301は、簡略して2つの競馬場A,Bに関する構成を示すが、1又は3以上の競馬場についても同様な構成である。
パドックシステム301は、カメラ320A,320B(映像取得部)、サーバ340、ユーザ端末30を備える。
カメラ320A,320B、サーバ340、ユーザ端末30は、インターネット等の通信網3で接続されており、必要に応じて通信可能である。
カメラ320A,カメラ320Bは、パドック310A,310Bの撮像情報を取得する撮像装置の一部構成である。なお、実施形態において、撮像装置とは、カメラ320A,カメラ320Bの本体に限定されない。撮像装置とは、カメラ320A,カメラ320Bと、カメラ320A,カメラ320Bの制御、管理を行う構成(サーバ440の一部構成等)とを備える装置、システム等を含む概念である。また、撮像装置は、カメラ320A,カメラ320Bと、これらの制御、管理を行う管理装置とは、一体の構成でもよく、また、分離した構成であり、必要に応じて通信可能に接続された構成でもよい。
【0088】
カメラ320A,320Bは、取得した映像に対して拡大等の画像処理(後述する)がされても精細な映像となるように、十分な解像度を有するものを用いる。
カメラ320Aは、競馬場Aのパドック310Aに設置されている。
図16図18に示すように、カメラ320Aは、パドック310Aの周回路311Aの全体、又は周回路311Aの主要な部分(ほぼ全体)が画角に入るように、パドック310Aの施設内であって周回路311Aよりも外側の位置に固定されている。また、カメラ320Aは、周回路311Aの路面よりも十分に高い位置に設置されている。
このため、カメラ320Aが取得する周回路311Aの映像は、被写体として周回路311Aを含む固定範囲であり、固定された構図である。その映像は、馬体を横から見たものに限らず周回路311Aの位置に応じて馬体に対する角度(本実施形態では撮像角度ともいう)が異なり、また、馬体を斜め上方から見たものになる。
なお、図16には、カメラ320A及びサーバ340間が直接通信可能である構成を図示したが、カメラ320Aを管理する情報端末を競馬場Aに設置して、この情報端末がカメラ320Aの撮像映像をサーバ340に送信するようにしてもよい。
【0089】
カメラ320Bは、競馬場Bのパドック310Bに設置されている。カメラ320Bは、カメラ320Aと同様に、周回路311Bの全体が画角に入るようにパドック310Bの施設内に固定され、また、周回路311Bの路面よりも十分に高い位置に設置されている。
【0090】
サーバ340は、パドックシステム301を運営する運営者の施設等に設けられている。また、サーバ340は、クラウドサービスのクラウドサーバ等でもよい。サーバ340は、競馬場A,Bのカメラ320A,320Bから取得した撮像映像を管理、解析等の処理を行う。
なお、サーバ340は、前述した実施形態と同様に、各競馬場に設置されており、必要に応じて通信するような構成であってもよい。
【0091】
サーバ340の記憶部45は、トリミング映像対応テーブル345cを記憶する。
図17に示すように、トリミング映像対応テーブル345cは、競馬場Aの周回路311A上の各位置で取得したトリミング映像と、競馬場Bの周回路311B上の各位置で取得したトリミング映像とを、対応付けて記憶する。
ここで、図16に示すように、異なる競馬場である競馬場A,Bの周回路311A,311Bは、一般的に、大きさ、形状等が異なり、また、カメラ320A,320Bの設置位置が異なっている。
図18図20に示すように、このため、カメラ320A,320Bが撮像する競走馬5の撮像角度は、競走馬5の周回路311A,311B上の位置に応じて異なる。例えば、パドック310A,310Bの出入口から入った直後の位置において、競走馬の映像は、カメラ320Aでは競走馬5を正面から見た映像であり(図18のトリミング映像A1参照)、カメラ320Bでは競走馬5を左前から見た映像である(図20のトリミング映像B1参照)。
【0092】
トリミング映像対応テーブル345cは、2つの周回路311A,311Bにおいて、カメラ320A,320Bが撮像した競走馬5が、同等の撮像角度になる両者の位置を対応付けて記憶する。
システム運営者等は、例えば、競馬場A,Bにカメラ320A,320Bを設置時に、両者の撮影映像の馬体の撮像角度を比較することにより、これらの位置情報を、サーバ340に入力すればよい。
【0093】
サーバ340の制御部46は、トリミング映像作成部346dを備える。
後述するように、トリミング映像作成部346dは、カメラ320A,320Bから取得した周囲路311A,311Bの全体映像をトリミングすることにより、各競走馬5が周回路311A,311Bを移動するトリミング映像を作成する。
【0094】
[パドックシステム301の動作]
パドックシステム301の動作について説明する。
本実施形態の各種処理は、前述した実施形態の処理(図4等参照)と同様であるが、作成する映像がパノラマ映像、単馬映像等を作成する処理(図4のS2~S3参照)ではなく、トリミング映像である。以下、トリミング映像の作成処理等について説明する。
【0095】
(競馬場Aに関する処理)
競馬場Aに関するトリミング映像の作成処理は、以下の流れに従って行う。
(1)サーバ340のトリミング映像作成部346dは、カメラ320Aから取得した撮像映像を画像解析することにより、各競走馬5を追尾する。そして、各競走馬5を含む範囲をトリミングすることにより、各競走馬5のトリミング映像を作成する。
【0096】
図18に示すように、トリミング範囲は、周回路311Aに沿った四角形の範囲である。
トリミング映像作成部346dは、この四角形の範囲を、各競走馬5を中心としてトリミングする毎に規定してもよく、また、予め規定しておいてもよい。以下、後者の例を説明する。
【0097】
パドックの周回路は、前述した実施形態で説明したように、競走馬5が幅方向の中心付近を通過する程度に十分に狭い。このため、競走馬5は、周回路の幅方向のほぼ決まった位置を通過する。そのため、競走馬5の周回路311A上の位置に応じて、トリミング範囲を規定しておくことにより、周回路311A上の同一位置のトリミング映像は、競走馬5が異なっていたり、場面が異なっていても、同じ範囲でトリミングされる。これにより、競走馬5の周回路上の位置が同じ位置であれば、トリミング映像は、同じ構図である。このため、ユーザは、異なるトリミング映像を比較する際(現時点のトリミング映像と過去のトリミング映像を比較する際、各競走馬のトリミング映像と他競走馬のトリミング映像を比較する際等)に、馬体を比較しやすい。トリミング範囲に関する情報は、サーバ340の記憶部45(トリミング範囲記憶部)に記憶されている。
図18の例では、周回路311Aの中央(一点鎖線で示す)に競走馬5が位置する状態において、トリミング映像内の競走馬5が中央に配置されるように、トリミング範囲を規定している。
【0098】
(2)トリミング映像作成部346dは、トリミング映像を拡大、縮小することにより、トリミング映像を補正する。
ここで、馬体の大きさは、カメラ320Aから遠方になる程、小さくなる。このため、周回路311A上のトリミング範囲は、補正後において、馬体の大きさが同一であり、かつ、映像の大きさ(画面のサイズ)が同一になるように規定されている。
【0099】
以上の処理により、サーバ340のトリミング映像作成部346dは、周回路311A上の一頭の競走馬5の一連のトリミング映像を作成し、トリミング映像と、周回路311Aの位置とを対応付けて、履歴情報記憶部45b(トリミング映像記憶部)に記憶する。そして、周回路311A上の複数の競走馬5について、同様な処理を行い、複数の競走馬5についてそれぞれ、一連のトリミング映像を作成し、履歴情報記憶部45bに記憶する。
【0100】
また、サーバ340の映像解析部46eは、前述した実施形態で説明した馬体状態を解析する場合には、単馬映像ではなく、トリミング映像を用いて行う。馬体状態の項目(毛ヅヤ、種牡馬との比較処理等)は、前述した実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。この場合にも、映像解析部46eは、前述した実施形態と同様に、適宜、AIの手法を用いてもよい。
なお、トリミング映像は、馬体の全方位からの映像を含む。このため、競走馬5の馬体のうち一方の側面にのみ装着している馬具の情報等を取得することができる。
そして、配信部46fは、前述した実施形態と同様に、各種情報(トリミング映像、解析結果に関する情報)を、ユーザ端末30に配信する。
【0101】
(競馬場Bに関するトリミング映像の作成処理)
図20図21に示すように、サーバ340のトリミング映像作成部346dは、競馬場Bについても、競馬場Aと同様に、カメラ320Bが取得した全体映像に基づいて、周回路311B上の競走馬5の一連のトリミング映像を作成し、履歴情報記憶部45bに記憶する。さらに、映像解析部46eは、トリミング映像の解析等を行う。そして、配信部46fは、各種情報を、ユーザ端末30に配信する。
【0102】
[パドックシステム301のその他の処理]
また、本実施形態のパドックシステム301は、前述した実施形態の各種処理に加えて、以下の処理を行う。
(異なる競馬場A,Bの周回路311A,311Bのトリミング映像の配信処理)
図22図23は、第3実施形態のトリミング映像比較画面362を示す図である。
本実施形態においても、異なる競馬場A,Bの周回路311A,311B上の競走馬の映像を、比較可能な態様でユーザ端末30に配信する処理を行う(図13等参照)。
図22に示すように、本実施形態では、単馬映像ではなく、各周回路311A,311Bのトリミング映像を表示したトリミング映像比較画面362を配信する。このため、異なる競馬場A,Bの周回路311A,311Bのトリミング映像の撮影時間(撮像を開始してからの時間等)を、同期して配信しても馬体に対する撮像角度が異なるという事情がある。
このため、サーバ340の配信部46fは、異なる周回路311A,311Bのトリミング映像を配信する場合には、トリミング映像対応テーブル345cを参照することにより、両者の馬体に対する撮像角度を同等にする。
【0103】
図22のトリミング映像比較画面362は、競馬場Aの周回路311Aの当日の出走前の競走馬のトリミング映像の比較映像として、競馬場Bの周回路311Bの過去の同一競走馬の映像を表示する例である。
サーバ340の配信部46fは、周回路311Aの移動する競走馬のトリミング映像A1(馬体の前側からの映像)を配信する際には、トリミング映像対応テーブル345cを参照することにより、周回路311Aのトリミング映像A1に対応した周回路311Bのトリミング映像B3を読み出す。
図22に示すように、そして、配信部46fは、トリミング映像A1、及びその比較映像としてトリミング映像B3をユーザ端末30に配信する。なお、この場合、配信部46fは、前述した実施形態と同様に、トリミング映像に対して、拡大、トリミング等の処理を行ってもよい。
【0104】
図22図23に示すように、配信部46fは、競走馬が周回路311Aを移動することに応じて、周回路311Aの位置に対応した周回路311Bの競走馬のトリミング映像を、比較映像として、ユーザ端末30に配信する。図23のトリミング映像比較画面362は、周回路311Aのトリミング映像A5、及びこれに対応するトリミング映像B5が表示された例である。
これにより、配信部46fは、競走馬が周回路311Aを移動することに応じて、周回路311Aのトリミング映像と、同様な撮像角度な周回路311Aのトリミング映像とを、配信できる。
このように、パドックシステム301は、異なる競馬場A,Bに固定されたカメラ320A,320Bが取得した映像を、ユーザが比較しやすい態様で、配信できる。
【0105】
(競走馬の骨格検出処理)
図24は、第3実施形態のトリミング映像から競走馬5の骨格305aを検出する態様を説明する図である。
図24に太線で示すように、サーバ340の映像解析部46eは、トリミング映像を解析することにより、競走馬の骨格305aを検出する。この検出は、映像に基づく公知の骨格検出技術、骨格検出エンジン等を利用してもよい。
そして、映像解析部46eは、同一の競走馬について、当日レース前のトリミング映像の骨格305aの動きと、過去レースのトリミング映像の骨格305aの動きとを、比較する。そして、映像解析部46eは、骨格305aの動きに基づいて、脚の踏み込み角度、歩様(後肢の踏み込みの強さや前肢の出方のスムーズさ)等の項目をAI等の手法を用いて、両トリミング映像の一致度合いを、判定する。
映像解析部46eは、これらの骨格305aの動き、一致度合いに関する情報を、ユーザ端末30に配信する。
この場合の配信画面は、例えば、種牡馬一致情報画面(図15参照)と同様であり、つまり、骨格305aの動きを含む両トリミング映像と、一致度合い(一致スコア)とを表示すればよい。
【0106】
脚の踏み込み角度、歩様等の項目は、競走馬の調子を判定する際に、重要な判断材料となる。
このため、例えば、当日レース前の周回路のトリミング映像の骨格305aの動きと、過去の調子が良好であった際(つまりレース結果が良かった際)の周回路のトリミング映像の骨格305aの動きとの一致度合いが高い場合には、ユーザは、当日レース前の馬体状態が、良好であると推測できる。
逆に、当日レース前の周回路のトリミング映像の骨格305aの動きと、過去の調子が不調であった際(つまりレース結果が悪かった際)の周回路のトリミング映像の骨格305aの動きとの一致度合いが高い場合には、ユーザは、当日レース前の馬体状態が、不調であると推測できる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態のパドックシステム301は、単馬映像の代わりに、トリミング映像(周回路の全体映像から競走馬を含む映像をトリミングした映像)を利用することにより、前述した実施形態と同様な処理等を行うことができる。
また、競馬場に少なくとも1台の固定カメラを設置することにより、パドックを周回する競走馬の映像を配できるので、低コストでシステムを導入できる。また、固定カメラであるので、パドックの映像を配信する一般的な中継配信用のカメラに比べるとメンテナンスが容易であり、低コストでメンテナンスを行うことができる。さらに、また、この映像配信の際には、カメラを操作する撮影者等が不要であるので、人権費のコスト面でも利益がある。
【0108】
これに対して、従来のシステムは、パドック内に複数のカメラを配置する必要があるので、導入するためのコストが高かった。また、このような中継配信用のカメラは、固定カメラに比較すると、煩雑なメンテナンスが必要となり運用コストが高い。さらに、従来のシステムは、複数のカメラにそれぞれ撮影者を配置する必要があり、その上、1日のレース数が12レース等に及ぶ際には、1台のカメラに複数人の撮影者を配置する場合もあり、人権費のコストが高く、競馬主催者の負担になっていた。
【0109】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図25は、第4実施形態のパドックシステム401の構成を説明する図である。
パドックシステム401は、第3実施形態のパドックシステムのシステム構成を変更したものであり、つまり、各種制御、演算処理を行う構成の配置を、第3実施形態から変更したものである。すなわち、パドックシステム401は、撮像装置419Aがトリミング映像を作成するまでの処理を行い、サーバ440がトリミング映像の解析、ユーザ端末への配信処理等を行う。撮像装置419A及びサーバ440が行う一連の処理は、第3実施形態のカメラ及びサーバが行う一連の処理と同様である。
【0110】
パドックシステム401は、撮像装置419A、サーバ440、ユーザ端末30を備える。これらの装置419A,440,30間は、通信網3で接続されており、必要に応じて通信可能である。
なお、図25には、撮像装置419Aが競馬場Aに設置された構成を図示するが、他の競馬場にも同様な撮像装置が設置されている。
【0111】
撮像装置419Aは、カメラ420A、記憶部425、制御部426を備える。
カメラ420Aは、第3実施形態のカメラ320Aと同様な装置である。
記憶部425は、パドックプログラム425aを備える。
パドックプログラム425aは、カメラ420Aにおいて、トリミング映像を作成するためのプログラムである。
また、記憶部425は、トリミング映像を作成するために必要な各種情報(上記第3実施形態で説明した周回路上の位置に応じたトリミング範囲の情報等)を記憶する。
【0112】
制御部426は、トリミング映像作成部446dを備える。
トリミング映像作成部446dは、カメラ420Aが取得した周回路の全体映像に対して、上記第3実施形態で説明したトリミング映像作成部と同様な処理(競走馬の追尾、映像のトリミング、拡大、縮小等)を行うことにより、各競走馬のトリミング映像を作成する。
【0113】
上記構成により、撮像装置419Aは、カメラ420Aが取得した全体画像(図18等参照)に基づいて、トリミング映像(図19等参照)を作成するまでの処理を行う。
撮像装置419Aの制御部426は、作成したトリミング映像をサーバ440に送信する。
【0114】
サーバ440の制御部446は、撮像装置419から受信したトリミング映像を、記憶部445の履歴情報記憶部45bに記憶する。つまり、制御部446は、撮像装置419から取得したトリミング映像を、出走前の各競走馬に対応付けて管理する処理等を行う。また、制御部446は、第3実施形態で説明したように、トリミング映像に基づいた各種解析処理、ユーザ端末への配信処理等を行う。
【0115】
以上説明したように、本実施形態のパドックシステム401は、第3実施形態とは異なるシステム構成であっても、第3実施形態と同様な作用、効果を奏する。
なお、撮像装置419Aのうち記憶部425、制御部426等は、競馬場以外の施設に設けられていてもよい。
【0116】
ここで、パドックの各種情報をユーザに提供するためのシステムの構成、サービスの形態は、様々であり、限定されない。
その1つは、例えば、撮像装置419が取得した全体映像に基づいてトリミング映像を作成する映像の管理者等と、そのトリミング映像の各種解析処理、ユーザ端末への配信処理等を行うサービス運営者等(競馬場の運営者等)とが異なる形態である。この形態では、映像の管理者等が、トリミング映像をサービス運営者等に提供することにより、一連のサービスが成立するように構成されている。この形態では、撮像装置419の記憶部425、制御部426等を、サーバの形態で映像の管理者等の施設等に配置したシステムとして、このサーバがトリミング映像を、通信網3を介してサービス運営者等のサーバ440に配信するようにしてもよい。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、後述する変形形態等のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態の構成は、それらの一部のみ用いること、又は適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0118】
(変形形態)
(1)実施形態において、パドックの各種情報を配信するシステムの例を示したが、これに限定されない。このシステムは、各種競技(例えばトラック競技等)の情報配信に適用してもよい。また、工場の製造ラインにおいて、コンベア上を移動する製品の品質のチェック等に適用してもよい。
【0119】
(2)実施形態において、複数のカメラは、周回路よりも外側に配置された例を示したが、これに限定されない。図1に破線で示すように、複数のカメラは、周回路よりも内側に配置してもよく、また周回路よりも内側及び外側の両方に配置してもよい。この場合にも、実施形態と同様に、内側に配置する複数のカメラを、周回路に沿って全周に配置し、その撮影方向を周回路の法線方向の内側から外側に向けた方向にすることにより、サーバは、馬体を常に横側(左側)から見た単馬映像を作成することができる。
【0120】
(3)実施形態において、システムは、レース前のパドック情報を配信するものである例を示したが、これに限定されない。システムは、周回路上を周回する馬情報を配信するものであれば、その用途は限定されない。システムは、例えば、馬の各種せり(例えば、仔馬、繁殖馬のセリ等)のために、馬が周回路上を周回する際の情報を配信するために用いるものでもよい。この場合には、馬識別部(実施形態の競走馬識別部に相当)は、馬体に貼られた識別シールに基づいて馬を識別することができ、また、事前選択部は、せりの目録に基づいて馬の事前選択を受け付けることができる。
【0121】
(4)実施形態において、システムは、レース前のパドック情報を配信する単独のシステムである例を示したが、これに限定されない。システムは、競走馬の各種情報(出馬表、最新オッズ、レース結果等)を配信するアプリ―ケーションに連携するものでもよい。この場合には、このアプリケーションにおいて、ユーザがお気に入りの馬を登録可能な機能等を有していれば、システムにおいて、この馬を事前選択するようにしてもよい。
【0122】
(5)第2実施形態において、複数の競馬場のパドックシステムが、それぞれ、単馬映像の作成、解析スコアの算出、ユーザ端末への配信等を処理可能である例を示したが、これに限定されない。例えば、複数の競馬場の情報を統括して管理するサーバを備え、このサーバが上記処理の少なくとも一部を行ってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1,201A,201B,201C,301,401:パドックシステム
10,310A,310B,410A:パドック
11,311A,311B,411A:周回路
12:立入禁止エリア
20,20a~20d,320A,320B,420A:カメラ
25:パノラマ映像
26:単馬映像
32:表示部
36,46:制御部
40,240,340,440:サーバ
45,245:記憶部
45b:履歴情報記憶部
46,246:制御部
46a:事前選択部
46b:パノラマ映像作成部
46c:競走馬識別部
46d:単馬映像作成部
46e:映像解析部
46f:配信部
201:システム
245b:履歴情報記憶部
245c:他競馬場情報記憶部
245d:種牡馬情報記憶部
245e:馬体状態解析テーブル
245f:種牡馬比較テーブル
345c:トリミング映像対応テーブル
346d:トリミング映像作成部
419A:撮像装置
図1
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