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  • 特開-空調装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030511
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/86 20180101AFI20230301BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20230301BHJP
【FI】
F24F11/86
F24F11/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135683
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】二渡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】平松 美紀
(72)【発明者】
【氏名】白川 拓也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA11
3L260AB01
3L260AB06
3L260BA80
3L260CA12
3L260CB02
3L260DA03
3L260EA04
3L260FB02
3L260FB25
(57)【要約】
【課題】 過冷却を抑制可能な空調装置の一例を開示する。
【解決手段】 制御部6は、測定温度の変化率が最初に負となった時から当該変化率が最初に正になるまで、それ以前に比べて大きな微分ゲインにて圧縮機2の操作量を決定する。これにより、測定温度が設定温度より大きい領域であっても、測定温度が下がり始めた時点で早めに圧縮機2の回転数を低下させることができるので、サーモオン、つまり圧縮機2が起動した時以降に室内が冷え過ぎことが抑制され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温が目標とする設定温度となるように調整する空調装置において、
空調を行うための冷熱を生成する冷凍機であって、圧縮機を有して構成された冷凍機と、
室内空気の温度を検出する温度センサと、
室内に供給する冷熱量を制御する供給熱量制御部とを備え、
前記供給熱量制御部は、前記温度センサにより検出された温度(以下、測定温度という。)と前記設定温度との偏差、及び前記測定温度の変化率を利用したPD制御又PID制御にて室内に供給する冷熱量を制御可能であり、
前記圧縮機が起動した時以降、前記測定温度の変化率が最初に負となった時を開始時とし、当該開始時以降、当該変化率が最初に正になった時を終了時とし、前記開始時と前記終了時との期間を抑制制御期間とし、
前記開始時以前の前記フィードバック制御に用いられる微分ゲインを通常ゲインとし、前記抑制制御期間中に前記フィードバック制御に用いられる微分ゲインを抑制微分ゲインとしたとき、
前記供給熱量制御部は、前記抑制微分ゲインを前記通常微分ゲインに比べて大きくする空調装置。
【請求項2】
前記供給熱量制御部は、前記圧縮機の回転数を制御することにより、室内に供給する冷熱量を制御する請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記冷熱で冷却された冷水を利用して室内を冷却する室内熱交換器を備え、
前記供給熱量制御部は、前記室内熱交換器に供給する冷水流量を制御することにより、室内に供給する冷熱量を制御する請求項1に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空調装置では、目標吹き出し温度設定を変更することにより、低熱負荷時においても圧縮機が頻繁に停止及び起動が繰り返されることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4503083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、圧縮機の頻繁な停止を抑制するので、例えば、冷房運転においては、冷房対象となる空間が過冷却となってしまうおそれがある。本開示は、左記点に鑑み、過冷却を抑制可能な空調装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
室温が目標とする設定温度(Tt)となるように調整する空調装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、空調を行うための冷熱を生成する冷凍機(1)であって、圧縮機(2)を有して構成された冷凍機(1)と、室内空気の温度を検出する温度センサ(7)と、室内に供給する冷熱量を制御する供給熱量制御部(6)とを備え、供給熱量制御部(6)は、温度センサ(7)により検出された温度(以下、測定温度(Ts)という。)と設定温度(Tt)との偏差(P)、及び測定温度(Ts)の変化率(D)を利用したPD制御又PID制御(以下、これらをフィードバック制御という。)にて室内に供給する冷熱量を制御可能であり、圧縮機(2)が起動した時以降、測定温度(Ts)の変化率が最初に負となった時を開始時とし、当該開始時以降、当該変化率が最初に正になった時を終了時とし、開始時と終了時との期間を抑制制御期間(Is)とし、開始時以前のフィードバック制御に用いられる微分ゲインを通常ゲイン(Kd1)とし、抑制制御期間(Is)中にフィードバック制御に用いられる微分ゲインを抑制微分ゲイン(Kd2)としたとき、供給熱量制御部(6)は、抑制微分ゲイン(Kd2)を通常微分ゲイン(Kd1)に比べて大きくすることである。
【0007】
これにより、当該空調装置では、圧縮機(2)が起動した時以降に室内が冷え過ぎることが抑制され得る。なお、PD制御には、P-D制御、つまり微分先行型PD制御も含まれる。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る空調装置(冷凍機)を示す図である。
図2】第1実施形態に係る空調装置における測定温度、圧縮機の回転数及び時間との関係を示すグラフである。
図3】第2実施形態に係る空調装置を示す図である。
図4】第2実施形態に係る空調装置における測定温度、流量調整弁の開度及び時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0011】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された空調装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0012】
(第1実施形態)
<1.空調装置の構成>
本実施形態は、通信機器室やサーバ室等(以下、サーバ室という。)の空調を行う空調装置に本開示を適用したものである。なお、サーバ室には、少なくとも1台の情報通信技術用機器等が設置されている。
【0013】
図1に示される冷凍機1は、サーバ室内の空調を行うための冷熱を生成する。当該冷凍機1は、圧縮機2を有して構成された蒸気圧縮式冷凍機により構成されている。具体的には、冷凍機1は、圧縮機2、放熱器3、減圧器4及び蒸発器5、並びに制御部6及び温度センサ7等を有して構成されている。
【0014】
圧縮機2は、蒸発器5から流出した低圧の気相冷媒を圧縮する。放熱器3は、圧縮機2から吐出されて温度が上昇した高圧冷媒を冷却する。なお、本実施形態に係る放熱器3では、冷却された冷媒は、凝縮(液化)する。
【0015】
減圧器4は、放熱器3から流出した冷媒を減圧する。なお、本実施形態に係る減圧器4は、温度式膨張弁にて構成されている。温度式膨張弁は、蒸発器5の出口側における冷媒の過熱度が予め決められた値となるように、開度(減圧度)を自動調節する。
【0016】
蒸発器5は、減圧器4にて減圧された液相の冷媒を蒸発させて冷凍能力、つまり冷熱を生成する。具体的には、蒸発器5は、サーバ室に供給する空調風と当該冷媒とを熱交換し、当該空調風を冷却する。
【0017】
なお、室内ファン5Aは、空調風の風量を調節するための送風機である。室外ファン3Aは、放熱器3に冷却用の空気(本実施形態では、室外空気)を送風するための送風機である。
【0018】
制御部6は、圧縮機2、室内ファン5A及び室外ファン3A等の冷凍機1を構成する機器の作動を制御する。温度センサ7は、サーバ室内の空気温度を直接的又は間接的に検出する。当該温度センサ7の検出温度(以下、測定温度Tsという。)は、制御部6に入力されている。
【0019】
制御部6は、測定温度Tsが目標とする温度(以下、設定温度Ttという。)なるように、圧縮機2の回転数及び停止(以下、圧縮機2の作動状態という。)を決定する。つまり、制御部6は、室内に供給する冷熱量を制御する供給熱量制御部として機能する。
【0020】
なお、上記において、「サーバ室内の空気温度を直接的又は間接的に検出する」とは、蒸発器5に供給される空気の温度(以下、吸込温度という。)、蒸発器5からサーバ室に供給される空気の温度(以下、吹出温度という。)、又は現実のサーバ室内の空気温度を検出することをいう。
【0021】
このため、吸込温度を測定温度Tsとする場合の設定温度Ttと、吹出温度を測定温度Tsとする場合の設定温度Ttと、サーバ室内の空気温度を測定温度Tsとする場合の設定温度Ttとは、異なる値となる。
【0022】
なお、室内ファン5Aは、測定温度Tsが設定温度Ttなるように制御される。室外ファン3Aは、放熱器3内の冷媒圧力又は冷媒温度の増減に応じて制御される。
【0023】
<2.空調装置(特に、圧縮機)の制御>
制御部6は、圧縮機2の作動状態をPD制御(P-D制御も含む。)又PID制御する。具体的には、制御部6は、圧縮機2の回転数を変化させる際の操作量uを、偏差P及び変化率Dを利用して決定する。
【0024】
偏差Pは、測定温度Tsと設定温度Ttとの差である。変化率Dは、測定温度Tsの変化率Dである。そして、制御部6は、例えば、「u=Kp・P+Kd・D」を用いて圧縮機2の操作量uを決定する。
【0025】
Kpは比例ゲインである。本実施形態では、予め決められた固定値が常に比例ゲインとしてPD制御に利用される。Kdは微分ゲインである。本実施形態では、予め決められた2種類の微分ゲインがPD制御に利用される。
【0026】
すなわち、本実施形態に係る制御部6は、圧縮機2の作動状態の制御として、通常制御及び過冷却抑制制御が実行可能である。通常制御と過冷却抑制制御とでは、操作量の決定に用いられる微分ゲインの値が異なる。
【0027】
具体的には、制御部6は、通常制御時には、微分ゲインとして通常微分ゲインKd1を用い、過冷却抑制制御時には、微分ゲインとして抑制微分ゲインKd2を用いる。そして、抑制微分ゲインKd2は、通常微分ゲインKd1に比べて大きい値である。
【0028】
制御部6は、図2に示される抑制制御期間Isに過冷却抑制制御を実行する。抑制制御期間Isとは、開始時と終了時との期間をいう。開始時とは、圧縮機2が起動した時以降、測定温度Tsの変化率が最初に負となった時をいう。終了時とは、開始時以降、当該変化率が最初に正になった時をいう。
【0029】
つまり、制御部6は、圧縮機2が起動した時以降、測定温度Tsの変化率が最初に負となるまでは、通常微分ゲインKd1にて圧縮機2の操作量uを決定する。そして、制御部6は、測定温度Tsの変化率が最初に負となった時から当該変化率が最初に正になった時までは、抑制微分ゲインKd2にて圧縮機2の操作量uを決定する。
【0030】
なお、当該変化率が最初に正になった時以降は、制御部6は、通常微分ゲインKd1にて圧縮機2の操作量uを決定する。因みに、本実施形態に係る制御部6は、予め決められた間隔(以下、決定間隔という。)で操作量を決定し、かつ、測定温度Tsが上昇して設定温度Ttとなった時に圧縮機2を起動する。
【0031】
<3.本実施形態に係る空調装置の特徴>
制御部6は、測定温度Tsの変化率が最初に負となった時から当該変化率が最初に正になるまで、それ以前に比べて大きな微分ゲイン(抑制微分ゲインKd2)にて圧縮機2の操作量uを決定する。
【0032】
これにより、測定温度Tsが設定温度Ttより大きい領域であっても、測定温度Tsが下がり始めた時点で早めに圧縮機2の回転数を低下させることができるので、図2に示されるように、サーモオン、つまり圧縮機2が起動した時以降に室内が冷え過ぎことが抑制され得る。
【0033】
なお、図2は、圧縮機2の回転数変化幅が一定である状態を図示したが、変化幅が可変の場合には、特に、測定温度Tsが設定温度Ttより低く、かつ、測定温度Tsの変化率が負の状態で、圧縮機2の回転数の減少幅が大きくなるので、サーモオン後の冷え過ぎを防ぎやすくなる。
【0034】
(第2実施形態)
上述の実施形態では、蒸発器5にて室内に供給する空気を直接的に冷却する構成であった。これに対して、本実施形態に係る空調装置は、図3に示されるように、冷凍機1にて水等の媒体を冷却し、この冷却された媒体(以下、冷水という。)を室内に供給することにより、室内の冷房を実行する方式の空調装置である。
【0035】
以下の説明は、上述の実施形態に係る空調装置との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0036】
<1.空調装置の構成(図3参照)>
本実施形態に係る空調装置10は、熱源機11、冷水ポンプ12及び室内空調機13等を少なくとも備える。熱源機11は、複数の冷凍機1を有して構成されたチラーである。なお、熱源機11、つまり、各冷凍機1は、熱源機11から供給される冷水の温度が予め決められた温度となるように制御される。
【0037】
冷水ポンプ12は、冷水を熱源機11と室内空調機13との間で循環させるためのポンプである。本実施形態に係る冷水ポンプ12は、複数の一次ポンプ12A及び複数の二次ポンプ12Bを有して構成されている。
【0038】
各一次ポンプ12Aは、各冷凍機1の蒸発器5にて冷却された冷水を二次ポンプ12B側に送水する。各二次ポンプ12Bは、複数の室内空調機13それぞれに冷水を送水する。各一次ポンプ12A及び各二次ポンプ12Bは、吐出し圧力が予め決められた圧力となるように制御される。
【0039】
なお、一次送りヘッダ12Cは、複数の一次ポンプ12Aから吐き出された冷水を集合させるとともに、複数の二次ポンプ12Bに分配する。二次送りヘッダ12Dは、複数の二次ポンプ12Bから吐き出された冷水を各室内空調機13に分配供給する。
【0040】
一次戻りヘッダ12Eは、各室内空調機13から戻ってきた冷水を集合させる。二次戻りヘッダ12Fは、一次戻りヘッダ12Eに集合した冷水を複数の冷凍機1に分配供給する。
【0041】
複数の室内空調機13それぞれは、概ね、同一の構成である。具体的には、各室内空調機13は、室内熱交換器13A、流量調整弁13B及び送風機13C等を有するエアーハンドリングユニットにて構成されている。
【0042】
各室内熱交換器13Aは、冷水を利用してサーバ室内を冷却する冷却器である。つまり、各室内熱交換器13Aは、サーバ室内に供給される空気と熱源機11から送水されてきた冷水とを熱交換する。
【0043】
各流量調整弁13Bは、室内熱交換器13Aに供給する冷水の流量を調節するバルブである。各送風機13Cは、サーバ室内に供給する空気を送風する。なお、本実施形態に係る各送風機13Cは、例えば、サーバ室内のホットアイルから空気を吸引し、その空気をサーバ室内のコールドアイルに供給する。
【0044】
<2.流量調整弁等の制御>
本実施形態に係る制御部6は、主に流量調整弁13Bを制御する。つまり、本実施形態に係る制御部6は、流量調整弁13Bを介して室内熱交換器13Aに供給する冷水流量を制御することにより、室内に供給する冷熱量を制御する。
【0045】
すなわち、流量調整弁13Bの開度が大きくなると、室内に供給する冷熱量が増大する。流量調整弁13Bの開度が小さくなると、室内に供給する冷熱量が減少する。そして、本実施形態に係る制御部6(以下、制御部6と略す。)は、流量調整弁13Bの開度を制御する。
【0046】
つまり、制御部6は、室内熱交換器13Aに供給する冷水量をPD制御(P-D制御も含む。)又PID制御する。具体的には、制御部6は、流量調整弁13Bの開度を変化させる際の操作量uを、偏差P及び変化率Dを利用して決定する。
【0047】
すなわち、制御部6は、例えば、「u=Kp・P+Kd・D」を用いて操作量uを決定する。なお、比例ゲインKp、抑制微分ゲインKd2及び通常微分ゲインKd1の具体的な値は、上述の実施形態と異なる値である。
【0048】
制御部6は、流量調整弁13Bの開度の制御として、通常微分ゲインKd1を用いた通常制御と微分ゲインとして抑制微分ゲインKd2を用いた過冷却抑制制御とが実行可能である。なお、本実施形態においても、抑制微分ゲインKd2は、通常微分ゲインKd1に比べて大きい値である。
【0049】
そして、制御部6は、図4に示される抑制制御期間Isに過冷却抑制制御を実行する。なお、抑制制御期間Isの定義は、第1実施形態と同じである。つまり、圧縮機2が起動した時以降、測定温度Tsの変化率が最初に負となった時から当該変化率が最初に正になった時までの期間をいう。
【0050】
つまり、制御部6は、圧縮機2が起動した時以降、測定温度Tsの変化率が最初に負となるまでは、通常微分ゲインKd1にて流量調整弁13Bの操作量uを決定する。そして、制御部6は、測定温度Tsの変化率が最初に負となった時から当該変化率が最初に正になった時までは、抑制微分ゲインKd2にて流量調整弁13Bの操作量uを決定する。
【0051】
なお、当該変化率が最初に正になった時以降は、制御部6は、通常微分ゲインKd1にて流量調整弁13Bの操作量uを決定する。因みに、本実施形態に係る制御部6は、予め決められた決定間隔で操作量を決定し、かつ、測定温度Tsが上昇して設定温度Ttとなった時に圧縮機2を起動する。
【0052】
<3.本実施形態に係る空調装置の特徴>
制御部6は、測定温度Tsの変化率が最初に負となった時から当該変化率が最初に正になるまで、それ以前に比べて大きな微分ゲイン(抑制微分ゲインKd2)にて流量調整弁13Bの操作量uを決定する。
【0053】
これにより、測定温度Tsが設定温度Ttより大きい領域であっても、測定温度Tsが下がり始めた時点で早めに流量調整弁13Bの開度を低下させることができるので、図4に示されるように、サーモオン、つまり流量調整弁13Bが起動した時以降に室内が冷え過ぎことが抑制され得る。
【0054】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、予め決められた固定の決定間隔で操作量を決定した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、抑制制御期間Isの決定間隔を抑制制御期間Is以外の状態時の決定間隔に比べて小さくしてもよい。
【0055】
上述の実施形態では、「u=Kp・P+Kd・D」を用いて操作量uを決定した。しかし、本開示に係るPD制御はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、操作量uの演算における傾きの影響を大きくすることが可能なPD制御又はPID制御であれば、十分である。
【0056】
したがって、いわゆるPD制御(P-D制御も含む。)又はPID制御も勿論のこと、「操作量uを決定するに当たり、偏差P及び変化率Dが何らかの手段により考慮される制御」であれば、本願でいうPD制御又はPID制御に相当する。このため、例えば、抑制微分ゲインKd2が測定温度Tsの関数として変化するPD制御又はPID制御であってもよい。
【0057】
上述の実施形態では、圧縮機2が起動した時以降における特定の期間(抑制制御期間Is)について、微分ゲイン(抑制微分ゲインKd2)を変更した。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0058】
すなわち、当該開示は、例えば、過冷却状態が発生する可能性を推定する推定部を設け、当該推定部により過冷却状態が発生すると推定(予測)されたときに微分ゲイン(抑制微分ゲインKd2)を変更する構成であってもよい。
【0059】
上述の第2実施形態では、冷凍機1(熱源機11)の制御においては、微分ゲインを変更する手法が採用されていなかった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、冷凍機1(熱源機11)の制御も第1実施形態と同様としてもよい。
【0060】
上述の実施形態では、常に予め決められた固定値が比例ゲインとしてPD制御に利用された。しかし、本開示に係るPD制御はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、抑制制御期間Isとそれ以外とで比例ゲインが異なる値であってもよい。
【0061】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0062】
1… 冷凍機 2…圧縮機 3… 放熱器 4… 減圧器
5… 蒸発器 6…制御部 7… 温度センサ
図1
図2
図3
図4