(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030550
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】真空装置、電子デバイスの製造装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20230301BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20230301BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230301BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C23C14/56 G
C23C14/24 T
H01L21/68 A
H01L21/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135740
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 順平
【テーマコード(参考)】
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA01
4K029HA01
4K029KA01
4K029KA09
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BB04
5F131BB05
5F131BB23
5F131CA39
5F131CA47
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB76
5F131DB82
(57)【要約】
【課題】内部を減圧可能に構成される複数のチャンバーを備える真空装置において、複数のチャンバーを一体的に小スペースで輸送可能とし、組み立て時の手間を低減する。
【解決手段】第1チャンバー21と、第1チャンバー21に連結される第2チャンバー22と、第1チャンバー21と第2チャンバー22を支持する支持ユニット25と、を備える真空装置であって、支持ユニット25は、第1チャンバー21の底面が固定される第1固定面251aを有する第1台座251と、第2チャンバー22の底面が固定される第2固定面252aを有する第2台座252と、第1台座251と第2台座252を接続する接続部253と、を備え、支持ユニット25は、接続部253により第1固定面251aに沿った面と前記第2固定面252aに沿った面とのなす角の角度が変化するように屈曲する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンバーと、
前記第1チャンバーに連結される第2チャンバーと、
前記第1チャンバーと前記第2チャンバーを支持する支持ユニットと、
を備える真空装置であって、
前記支持ユニットは、前記第1チャンバーの底面が固定される第1固定面を有する第1台座と、前記第2チャンバーの底面が固定される第2固定面を有する第2台座と、前記第1台座と前記第2台座を接続する接続部と、を備え、
前記支持ユニットは、前記接続部により前記第1固定面に沿った面と前記第2固定面に沿った面とのなす角の角度が変化するように屈曲することを特徴とする真空装置。
【請求項2】
前記第1チャンバーと前記第2チャンバーの間に設けられ、第1チャンバーの内部から第2チャンバーの内部に至る基板が通過するための通路を開閉するゲートバルブをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の真空装置。
【請求項3】
前記支持ユニットの前記接続部には、前記ゲートバルブの弁体が移動するための空間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の真空装置。
【請求項4】
前記接続部は、ネジ部品の締結により互いに接続される複数の部材で構成され、
前記第1台座は、ネジ部品の締結により前記接続部と接続され、
前記複数の部材を互いに接続するための前記ネジ部品の軸部が挿通される貫通孔と、前記接続部と前記第1台座を接続するための前記ネジ部品の軸部が挿通される貫通孔のうち少なくとも一つは、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーの間で基板が移動する移動方向に長い長孔であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の真空装置。
【請求項5】
前記複数の部材を互いに接続するための前記ネジ部品の軸部が挿通される貫通孔と、前記接続部と前記第1台座を接続するための前記ネジ部品の軸部が挿通される貫通孔のうち少なくとも一つは、前記移動方向と直交する方向に長い長孔であることを特徴とする請求項4に記載の真空装置。
【請求項6】
前記支持ユニットは、前記第1台座と接続し、前記第1台座を下方から支持する支柱をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の真空装置。
【請求項7】
前記第2台座は、前記第1固定面に平行な方向に延びる回転軸部を備え、前記接続部に回転可能に支持され、
前記接続部は、所定の回転位置で前記回転軸部を締め付けて、前記第1台座に対する前記第2台座の位置を固定可能な軸クランプ部材を備えることを特徴とする請求項6に記載の真空装置。
【請求項8】
前記支持ユニットは、前記第2固定面の前記第1固定面に対する角度が略直角となるように屈曲可能であり、
前記回転軸部から前記支柱の下方側の端部までの前記第1固定面と直交する方向の距離は、前記回転軸部から前記第2台座の前記接続部から遠い側の端部までの距離より大きいことを特徴とする請求項7に記載の真空装置。
【請求項9】
前記支持ユニットは、前記第2台座を下方から支持する脚部材と、前記第2台座と前記脚部材を接続する脚接続部材をさらに備え、
前記脚部材は、回転可能に前記脚接続部材に支持されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の真空装置。
【請求項10】
前記第1固定面と前記第2固定面とが平行のときに、前記脚部材は前記第2固定面に沿った面に垂直になり、
前記第1固定面と前記第2固定面とが平行ではないときに、前記脚部材は前記第2固定面に沿った方向に位置することを特徴とする請求項9に記載の真空装置。
【請求項11】
前記第1チャンバーは、基板を搬送するロボットハンドを備える旋回室であることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の真空装置。
【請求項12】
前記第2チャンバーは、前記第1チャンバーに対して前記基板の搬送方向の下流側に位置し、前記基板が載置されるステージを備えるパス室であって、
前記ステージは、前記基板の載置面に平行な第1方向への移動、前記第1方向と直交する前記基板の載置面に平行な第2方向への移動、前記第1方向と前記第2方向と直交する第3方向を回転軸とした回転、のうち少なくとも一つの駆動が可能であることを特徴とする請求項11に記載の真空装置。
【請求項13】
前記第1チャンバーに対して前記基板の搬送方向の上流側に連結される第3チャンバーをさらに備え、
前記支持ユニットは、前記第3チャンバーが固定される第3固定面を有する第3台座と、前記第1台座と前記第3台座を接続する第3台座用接続部と、を備え、
前記支持ユニットは、前記第3台座用接続部により前記第1固定面に沿った面と前記第3固定面に沿った面とのなす角の角度が変化するように屈曲することを特徴とする請求項12に記載の真空装置。
【請求項14】
前記第3チャンバーは、前記基板が載置される固定ステージを備えるパス室であることを特徴とする請求項13に記載の真空装置。
【請求項15】
基板に成膜を行う成膜室を備えた複数のクラスタ装置と、
隣り合う前記クラスタ装置の間にそれぞれ設けられ、前記基板の搬送方向の上流側から下流側の前記クラスタ装置に前記基板を搬送する中継装置と、
を有する電子デバイスの製造装置であって、
前記中継装置は、請求項1~14のいずれか1項に記載の真空装置を含むことを特徴とする電子デバイスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置、電子デバイスの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空装置においては、内部を減圧可能に構成される複数のチャンバーを備える装置が知られている。例えば、有機EL表示装置などの電子デバイスの製造装置は、一般的に複数のクラスタ装置と中継装置が交互に配設される。クラスタ装置は搬送室や成膜室などのチャンバーを有し、基板の成膜処理等が行われる。中継装置は旋回室やパス室などのチャンバーを有し、クラスタ装置間に配設され、基板の搬送等を行う。これらの装置のチャンバーはそれぞれが独立した架台に設けられており、それぞれのチャンバーが分離した状態で工場等へ輸送される。従って製造装置を組み立てる際は、各チャンバー同士を接続するためにチャンバーの高さ方向や水平方向の位置調整を行う必要がある。
【0003】
一方、特許文献1では、一つの架台で複数のチャンバーを支持している構成が開示されている。架台で支持されるチャンバーの両端に別のチャンバーが接続され、複数のチャンバーをいわゆる片持ち梁状態で支持することで、一つの架台で複数のチャンバーを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように一つの架台で複数のチャンバーを支持する構成は、輸送後の装置組み立て時の位置調整の手間を省く。しかし、装置が大型である場合、片持ち梁状態ではチャンバーの傾きや接続部の破損などの問題や輸送のサイズ制限による制約が想定されることから、同様の構成は採用できない。
【0006】
本発明は、内部を減圧可能に構成される複数のチャンバーを備える真空装置において、複数のチャンバーを一体的に小スペースで輸送可能とし、組み立て時の手間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の真空装置は、
第1チャンバーと、
前記第1チャンバーに連結される第2チャンバーと、
前記第1チャンバーと前記第2チャンバーを支持する支持ユニットと、
を備える真空装置であって、
前記支持ユニットは、前記第1チャンバーの底面が固定される第1固定面を有する第1台座と、前記第2チャンバーの底面が固定される第2固定面を有する第2台座と、前記第1台座と前記第2台座を接続する接続部と、を備え、
前記支持ユニットは、前記接続部により前記第1固定面に沿った面と前記第2固定面に沿った面とのなす角の角度が変化するように屈曲することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内部を減圧可能に構成される複数のチャンバーを備える真空装置にお
いて、複数のチャンバーを一体的に小スペースで輸送可能とし、組み立て時の手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電子デバイスの製造装置の一部を示す模式図である。
【
図11】変形例に係る輸送状態の接続部の模式的正面図である。
【
図12】本発明の実施例に係る有機EL表示装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0011】
本発明は、内部を減圧可能に構成される複数のチャンバーを備える真空装置に関するものである。本発明は、例えば、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料膜)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、ガラス、高分子材料のフィルム、シリコンウェハ、金属などの任意の材料を選択でき、基板は、例えば、ガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが堆積された基板であってもよい。また、蒸着材料としても、有機材料、金属製材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択してもよい。なお、以下の説明において説明する真空蒸着装置以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む成膜装置にも、本発明を適用することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機発光素子、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機発光素子を形成する有機発光素子の製造装置は、本発明の好ましい適用例の一つである。以下、本発明を電子デバイスの製造装置に適用した場合を例に説明するが、本発明の真空装置はこれに限られず、複数のチャンバーを備える各種真空装置に適用可能である。
【0012】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
図1の製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置、またはVRHMD用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、4.5世代の基板(約700mm×約900mm)や6世代のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板が用いられる。該基板に有機EL素子の形成のための成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルに製作する。VRHMD用の表示パネルの場合、例えば、所定のサイズ(例えば、300mm)のシリコンウェハが用いられる。該シリコンウェハに有機EL素子の形成のための成膜を行った後、素子形成領域の間の領域(スクラ
イブ領域)に沿って該シリコンウェハを切り抜いて複数の小さなサイズのパネルに製作する。
【0013】
電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置の間をつなぐ中継装置2と、を含む。クラスタ装置1は、基板に対する処理(例えば、成膜)を行う複数の成膜装置11と、使用前後のマスクを収納する複数のマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13と、を具備する。搬送室13は、
図1に示すように、複数の成膜装置11及びマスクストック装置12のそれぞれと接続されている。
【0014】
搬送室13内には、基板及びマスクを搬送する搬送ロボット14が配置されている。搬送ロボット14は、上流側に配置された中継装置2のパス室22から成膜装置11へと基板を搬送する。また、搬送ロボット14は、成膜装置11とマスクストック装置12との間でマスクを搬送する。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板又はマスクを保持するロボットハンドが取付けられた構造を有するロボットである。
【0015】
成膜装置11(成膜室、又は蒸着装置とも呼ぶ)では、蒸発源に収納された蒸着材料がヒータによって加熱されて蒸発し、マスクを介し基板上に蒸着される。搬送ロボット14との基板の受け渡し、基板とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置11によって行われる。
【0016】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、二つのカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納された新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0017】
クラスタ装置1には、基板の流れ方向において上流側からの基板を当該クラスタ装置1に供給するパス室22、当該クラスタ装置1で成膜処理が完了した基板を下流側の他のクラスタ装置に供給するパス室22が連結される。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室22から基板受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つに搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板を複数の成膜装置11の一つから受け取って、下流側に連結された中継装置2のパス室22に搬送する。
【0018】
中継装置2は、基板の向きを変える旋回室21と、旋回室21の上流側と下流側のそれぞれにパス室22が設置され、上流側のクラスタ装置1から搬送された基板を下流側のクラスタ装置1へと搬送する。旋回室21には、上流側のパス室22から基板を受け取って基板を180°回転させ、下流側のパス室22に搬送するための搬送ロボット24が設けられる。これにより、上流側のクラスタ装置1と下流側のクラスタ装置1で搬入される基板の向きが同じになるため、基板処理が容易になる。
【0019】
本実施例におけるパス室22は、基板載置用のステージを備える。中継装置2の中で旋回室21の上流側に設置されるパス室22は、移動や回転を行わない固定ステージを備える。一方、旋回室21の下流側に設置されるパス室22はアライメント機構を備え、ステージは載置面に平行な第1方向への移動、載置面に平行かつ第1方向と直交する第2方向への移動、及び第1方向と第2方向と直交する第3方向を中心に回転する駆動が可能である。クラスタ装置1の搬送室13内に基板が搬送される前に、事前に中継装置2で基板のアライメントを行うことでアライメント工程を効率化することができる。
【0020】
なお、クラスタ装置1の下流側にはパス室22の代わりにバッファー室23が設けられても良い。クラスタ装置1の上流側及び/又は下流側に設置される中継装置2は、旋回室
21と、パス室22、バッファー室23の少なくとも1つとを含む。
【0021】
クラスタ装置1と中継装置2は、それぞれを構成する複数のチャンバーの内部が減圧可能に構成されている真空装置である。成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13、バッファー室23、旋回室21などは、有機発光素子の製造の過程で、高真空状態に維持される。パス室22は、通常、低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもよい。
【0022】
本実施例では、
図1を参照して、電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバーを有してもよく、これらの装置やチャンバーの配置が変わっても良い。例えば、本発明の一実施形態による電子デバイスの製造装置は、
図1に示すクラスタタイプでなく、インラインタイプであってもよい。つまり、基板とマスクをキャリアに搭載して、一列で並んでいる複数の成膜装置内を搬送させながら成膜を行う構成を有しても良い。また、クラスタタイプとインラインタイプを組み合わせたタイプの構造を有しても良い。例えば、有基層の成膜まではクラスタタイプの製造装置で行い、電極層(カソード層)の成膜工程から、封止工程及び切断工程などはインラインタイプの製造装置で行うこともできる。
【0023】
<中継装置>
図2~
図5を参照して、本発明の実施例に係る中継装置2について説明する。本実施例では、基板の搬送方向の上流側のチャンバーから下流側のチャンバーへと基板が搬送される長手方向をX方向、長手方向と直交する幅方向をY方向、長手方向及び幅方向と直交する高さ方向をZ方向としている。長手方向(X方向)は、各チャンバー間を基板が移動する移動方向でもある。
【0024】
本実施例の中継装置2は、クラスタ装置間で基板の搬送等を行う設置状態と、工場等へ装置が輸送されるための輸送状態の二種類の状態に切り替わるという特徴的な構成を有する。
図2(a)は、旋回室21とパス室22が接続し、旋回室21とパス室22の間で基板の搬送が可能な設置状態の中継装置2の構成を示す模式的平面図であり、
図2(b)はその模式的正面図である。
図3は、設置状態の中継装置2を示す模式的斜視図である。本実施例の中継装置2は、旋回室21(第1チャンバー)の上下流側それぞれにパス室22(第2チャンバー、第3チャンバー)が隣接して設けられ、旋回室21とパス室22を支持する支持ユニット25を備える。さらに、中継装置2は旋回室21とパス室22の間にゲートバルブ26を備え、ゲートバルブ26とパス室22はアダプタプレート27を介して接続される。
【0025】
支持ユニット25は、旋回室21を支持する台座251(第1台座)と、パス室22を支持する可動台座252(第2台座、第3台座)と、台座251と可動台座252を接続する接続部253と、を備える。旋回室21の底面は、台座251の固定面251a(第1固定面)に固定される。同様にパス室22の底面は、可動台座252の固定面252a(第2固定面、第3固定面)に固定される。さらに、支持ユニット25は、台座251を下方から支持する支柱構造254と、可動台座252を下方から支持する脚部材255と、脚部材255と可動台座252を接続する脚接続部材としての軸クランプ部材256と、を備える。
【0026】
本実施例の旋回室21は、上面から見ると六角形状であり、台座251を介して旋回室21を下方から支持する支柱構造254は六角形の各頂点を支持する支柱を含む複数の支柱で構成される。さらに、支柱構造254は、装置の組み立て時に高さ方向の位置調整を可能とするレベルアジャスタ2541を備える。
【0027】
本実施例のパス室22は上面から見ると長方形状であり、可動台座252に固定される。設置状態の中継装置2において、旋回室21が固定される台座251の固定面251aとパス室22が固定される可動台座252の固定面252aは平行になるように設けられる。可動台座252は、軸クランプ部材256を介して脚部材255に支持される。さらに、可動台座252は、複数の部材で構成される接続部253を介して台座251に接続される。すなわち設置状態において、可動台座252は脚部材255と接続部253に支持される。また、脚部材255はレベルアジャスタ2551を備え、支柱構造254と同様に高さ方向の位置調整が可能である。
【0028】
さらに、本実施例の可動台座252は、幅方向(Y方向)を回転軸として回転可能に接続部253に支持されている。パス室22と旋回室21の接続を解除して、可動台座252を回転させると、パス室22は可動台座252と共に回転する。また、脚部材255も幅方向を回転軸として回転可能に軸クランプ部材256に支持されている。設置状態の中継装置2は、可動台座252と脚部材255をそれぞれ回転させることで、後述する輸送状態に切り替えることが可能である。可動台座252や脚部材255を回転可能とする構成について、詳細は後述する。
【0029】
図4(a)は、輸送状態の中継装置2の構成を示す模式的平面図であり、
図4(b)はその模式的正面図である。
図5は、輸送状態の中継装置2を示す模式的斜視図である。輸送状態の中継装置2において、支持ユニット25は、台座251の固定面251aと可動台座252の固定面252aがなす角度が略直角となるように屈曲する。さらに脚部材255は、可動台座252の固定面252aに平行な方向に延びるように可動台座252に対して折り畳まれる。本実施例の中継装置2は、可動台座252の回転中心となる回転軸部252bから支柱構造254の下方側の端部までの距離M1は、回転軸部252bから可動台座252の接続部253から遠い側の端部までの距離M2より大きくなるように構成される。このような構成とすることで、可動台座252が台座251に対して回転したときに、可動台座252が地面に干渉せずに支持ユニット25が略直角に屈曲し、中継装置2の輸送時のサイズを小さくできる。
【0030】
さらに、脚部材255が支柱構造254等と干渉することを避けるために、脚部材255は、可動台座252と接続した軸クランプ部材256に回転可能に支持され、可動台座252に対して折り畳み可能である。すなわち、輸送状態においては、可動台座252は接続部253のみによって支持される。なお、パス室22を含む可動台座252の重量が過大で接続部253による支持のみでは不十分な場合、可動台座252と支柱構造254を別部材で接続して、輸送時にはより強固に支持するような構成も変形例として考えられる。
【0031】
上述の通り、固定面252aの固定面251aに対する角度が変化するように支持ユニット25が屈曲可能に構成されることで、設置状態の中継装置2の長手方向の全長L1と比較して輸送状態の中継装置2の長手方向の全長L2を小さくすることができる。装置の最大辺となる全長が小さくなるように変形することで、輸送スペースの削減や輸送時のサイズ制限の抵触回避など輸送時に大きな利点が得られる。すなわち、本発明の中継装置2は、複数のチャンバーを一体的に輸送できるため、装置を設置する際の位置調整等を簡易的に行うことができる。さらには、単に各チャンバーや架台が接続された場合と比較して、装置のサイズを小さくして輸送することができるため、省スペース化に寄与し、輸送時のサイズ制限の抵触も免れうる。
【0032】
ゲートバルブ26は、ディスク261(弁体)とボディ262(弁胴)を備え、ディスク261の移動によって旋回室21の内部からパス室22の内部へと至る基板が通過するための通路を開閉する。ゲートバルブ26の旋回室21と接続する面と反対側の面には、
パス室22と接続するためのアダプタプレート27が設けられる。アダプタプレート27とパス室22はネジ部品(不図示)で接続され、パス室22の上面に設けられた蓋を外すことでネジ部品による締結作業が可能である。また、アダプタプレート27は、ゲートバルブ26との接続面とパス室22との接続面の両面にシールリング28が設けられるシール溝27aを備える。シール溝27aが設けられたアダプタプレート27を介して、ゲートバルブ26とパス室22を接続することで、ゲートバルブ26とパス室22の接続部から空気が漏れることを防ぐ。基板が通る道を塞ぐようにディスク261を上昇させてゲートバルブ26を閉状態とし、各チャンバーを密封してからポンプにて真空引きすることで、各チャンバーを低真空状態、もしくは高真空状態に保つことができる。
【0033】
輸送状態の中継装置2は、海上輸送時などに水分等がチャンバー内に入り込まないように、各チャンバーを密閉してもよい。そこで、輸送状態において、旋回室21の両端に設けられたゲートバルブ26を閉状態とすることで、旋回室21は密閉状態となる。さらに、パス室22は両端にブランク材41を取付けて密閉される。ブランク材41には、厚み5~20mm程度のSUS製の金属板等が用いられる。密閉後に、旋回室21とパス室22との内部をそれぞれ減圧することにより、内部を真空状態にして輸送する。
【0034】
<接続部253>
図6~
図9を参照して、台座251と可動台座252を接続する接続部253について説明する。以下、旋回室21に対して下流側に設けられたパス室22と接続する可動台座252(第2台座)や接続部253について図を用いて説明する。なお、旋回室21に対して上流側に設けられたパス室22と接続する可動台座252(第3台座)や接続部253(第3台座用接続部)は下流側と同様の構成であるため説明は省略する。
【0035】
図6(a)は輸送状態の接続部253の構成を示す模式的平面図であり、
図6(b)はその模式的正面図である。本実施例の接続部253は、台座251と接続する台座接続部材2531、パス室22の下面に接続されたピン部品38と係合する中間部材2532、及び可動台座252の回転軸部252bが挿通される軸クランプ部材2533の3種類の部材で構成される。台座接続部材2531は、台座251とネジ35で接続され、ゲートバルブ26のディスク261が移動する空間の脇を通るように長手方向(X方向)に延びる部材であり、中継装置2の幅方向両側にそれぞれ設けられる。中間部材2532は、中継装置2の幅方向(Y方向)に長い部材で、幅方向の両端で台座接続部材2531とネジ33、34により接続される。すなわち、台座251、台座接続部材2531及び中間部材2532で、ゲートバルブ26のボディ262と、ディスク261が移動する空間と、を囲むように接続部253は設けられている。さらに、中間部材2532には、パス室22に接続されたピン部品38が係合するピン穴2532aが設けられている。一対の軸クランプ部材2533は、中間部材2532の幅方向の両端とネジ32で接続する。さらに、軸クランプ部材2533は、回転軸支持穴2533aで可動台座252の回転軸部252bと係合して可動台座252を支持する。
【0036】
図7(a)は設置状態の接続部253の詳細構成を示す模式的正面図であり、
図7(b)は
図7(a)のネジ部品等を非表示にした模式的正面図である。軸クランプ部材2533は、回転軸支持穴2533a、切り欠き2533b、クランプネジ孔2533c、貫通孔2533d(非ネジ孔)、及び貫通長孔2533eを有する。回転軸支持穴2533aには、可動台座252の回転軸部252bが挿通される。切り欠き2533bは、回転軸支持穴2533aから軸クランプ部材2533の端部まで延びる。クランプネジ孔2533cと貫通孔2533dは、同一の中心軸で切り欠き2533bの面に垂直に延びており、クランプネジ31が挿通される。クランプネジ孔2533cにクランプネジ31を取り付けて締結することで、軸クランプ部材2533が弾性変形して回転軸支持穴2533aで可動台座252の回転軸部252bを締め付ける。すなわち、クランプネジ31を緩め
ることで可動台座252は台座251に対して回転させることが可能となり、クランプネジ31を締め付けることで可動台座252は台座251に対する所定の回転位置で固定可能である。
【0037】
貫通長孔2533eは、中間部材2532と接続するためのネジ32が挿通される孔であり、それぞれの軸クランプ部材2533に二つずつ設けられる。貫通長孔2533eは、可動台座252をアダプタプレート27に接続する際に、パス室22の旋回室21に対する長手方向位置を調整するために長手方向(X方向)に長い長孔形状である。貫通長孔2533eを二つ設けることで、可動台座252を強固に支持すると共に、ネジ32を緩めたときに軸クランプ部材2533が中間部材2532に対して回転することを防ぎ、装置の設置作業の作業性が向上する。可動台座252の位置を調整しながら、可動台座252をアダプタプレート27に接続して、中継装置2を設置状態にする作業の詳細については後述する。
【0038】
台座接続部材2531と中間部材2532は、側面側に取付けられるネジ33と、下面側に取付けられるネジ34によって接続される。台座接続部材2531は、縦壁部2531aを有し、縦壁部2531aに設けられた貫通孔2531bにネジ33が挿通される。台座接続部材2531の下面側に取付けられるネジ34は、中間部材2532の下部に設けられたネジ穴に挿通される。また、パス室22に接続されたピン部品38は、中間部材2532のピン穴2532aと係合する。
【0039】
図8(a)は接続部253の詳細構成を示す模式的下面図であり、
図8(b)は
図8(a)のネジ部品等を非表示にした模式的下面図である。また、
図9は接続部253の詳細構成を示す詳細図である。台座接続部材2531は、側面側の縦壁部2531aに設けられた貫通孔2531bに挿通されるネジ33と下面側に設けられた貫通長孔2531cに挿通されるネジ34で中間部材2532と接続される。貫通長孔2531cは、可動台座252をアダプタプレート27に接続する際に、パス室22の旋回室21に対する幅方向位置を調整するために幅方向(Y方向)に長い長孔形状である。すなわち、軸クランプ部材2533の貫通長孔2533eと台座接続部材2531の貫通長孔2531cは、互いに直交する方向に長い。また、台座接続部材2531の縦壁部2531aと、縦壁部2531aに対向する中間部材2532の端部と、の間には、中間部材2532がパス室22と共に台座接続部材2531に対して幅方向に移動するための隙間が5~20mm程度設けられる。
【0040】
なお、本実施例の接続部253は三種類の部材で構成されるとしたが、接続部253はより多くの複数の部材で構成されても良い。また、接続部253にはゲートバルブ26のディスク261が移動する空間を設けた構成であったが、ディスク261が上方に移動するゲートバルブ26を用いて、接続部253にはディスク261が移動する空間を設けずに構成する変形例も想定される。
【0041】
また、接続部に設けられる長孔についても、上述のような構成に限られるものではなく、例えば、接続部253と台座251を接続するためにネジが挿通される孔を長孔としても良い。
【0042】
<脚部材>
図10(a)は可動台座252に対して脚部材255が折り畳まれた状態を示す模式図であり、
図10(b)は脚部材255が可動台座252を支持する状態を示す模式図である。可動台座252には、中継装置2が設置状態のときに、可動台座252を支持する脚部材255が軸クランプ部材256を介して接続される。また、可動台座252が台座251に対して回転する際に、脚部材255が地面と干渉して回転できない事態を防ぐため
に、脚部材255も可動台座252に対して回転可能に軸クランプ部材256に支持される。
【0043】
軸クランプ部材256は、回転軸支持穴、切り欠き、クランプネジ孔、貫通孔(非ネジ孔)を有し、ネジ36で可動台座252に接続される。回転軸支持穴は、脚部材255の回転軸部255aと係合する。切り欠きは、回転軸支持穴から軸クランプ部材256の端部まで延びる。クランプネジ孔と貫通孔は、同一の中心軸で切り欠きの面に垂直に延びており、クランプネジが挿通される。クランプネジ孔にクランプネジ37を取り付けて締結することで、軸クランプ部材256が弾性変形して回転軸支持穴で脚部材255の回転軸部255aを締め付ける。すなわち、クランプネジ37を緩めることで脚部材255は可動台座252に対して回転させることが可能となり、クランプネジ37を締め付けることで脚部材255は可動台座252に対して位置が固定される。上記のような構成とすることで、輸送状態においては脚部材255が可動台座252に対して折り畳まれた状態で固定され、脚部材255が支柱構造254と干渉することもない。
【0044】
なお、本実施例の中継装置2は、輸送状態においても脚部材255が可動台座252に接続される構成としたが、脚部材255を取り外して輸送することを前提とした回転機能を有さない構成としても良い。また、中継装置2が屈曲したときに脚部材255が支柱構造254と干渉しないために、脚部材255の長さを伸縮可能な構造としても良い。さらに、脚部材の本数を増やしてより強固に支持する構成なども変形例として当然想定しうる。
【0045】
<中継装置2の設置作業>
輸送状態で工場等に搬入された中継装置2を設置状態へと組み立てる方法について説明する。まず、中継装置2をクラスタ装置1と同じパスラインの高さにして接続するために、支柱構造254に設けられたレベルアジャスタ2541で高さ方向の位置調整が行われる。続いて、可動台座252の固定面252aが台座251の固定面251aと略平行となるように、軸クランプ部材2533の締結を緩めて可動台座252を回転させる。このとき、併せて軸クランプ部材256の締結も緩め、可動台座252とパス室22を支持できるように脚部材255を回転させる。そして、可動台座252の姿勢を固定して下方からパス室22を支持できるように脚部材255のレベルアジャスタ2551を用いて調整する。こうして、パス室22は可動台座252を介して接続部253と脚部材255に支持される。
【0046】
次に、パス室22と旋回室21を接続するため、パス室22の旋回室21に対する位置の微調整を行う。パス室22は、アダプタプレート27にネジ部品で接続されるため、ネジ締結用の孔位置が互いの部品で合うように各種方向における位置調整が必要となる。パス室22は、可動台座252の底部から挿通されるネジ部品により可動台座252に固定されており、パス室22の旋回室21に対する高さ方向の位置は、パス室22と可動台座252の間にシムテープを挟むことで微調整が可能である。さらに、長手方向(X方向)に長い貫通長孔2533eと幅方向(Y方向)に長い貫通長孔2531cによって、パス室22の旋回室21に対する水平方向位置の微調整が可能である。以上の構成により、複数のチャンバーを備える装置を一体的に小スペースで輸送することが可能であり、かつ輸送後はパス室22の旋回室21に対する位置を微調整して簡易的に接続して装置を組み立てることが可能である。
【0047】
なお、本発明の構成は上述の構成に限られたものではなく、種々の変更が可能である。例えば、中継装置2にパス室22の代わりにバッファー室23が設けられている構成や、旋回室21の代わりにクラスタ装置1の搬送室13の両端に接続部253を用いてパス室22を設ける構成等が考えられる。
【0048】
その他の変形例として、ピン部品38の代わりにネジ等を用いて、パス室22と接続部253を接続する構成も考えられる。
図11は、ネジ39を用いた変形例の設置状態の接続部253の詳細構成を示す模式的正面図である。本変形例においては、ネジ39が台座接続部材2531と中間部材2532に設けられた貫通孔を挿通して、パス室22の下面に設けられたネジ穴に挿通することで、パス室22と接続部253が接続される。このような構成とすることで、パス室22と接続部253が互いに近づく方向に締結力が働くため、単にピンを穴に係合させる場合と比較してより強固に接続することができる。また、輸送状態においては、ネジ39はパス室22の下面に取付けた状態として、台座接続部材2531と中間部材2532をボルトとナットなどの別部材で接続することで、ネジ穴や貫通孔への異物混入を防げる。なお、パス室22と中間部材2532の接続、及び中間部材2532と台座接続部材2531の接続に使用するネジと穴をそれぞれ個別に設けて接続する構成とすることも当然想定される。
【0049】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施例に係る真空装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を示し、有機EL表示装置の製造方法を例示する。
【0050】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図12(a)は有機EL表示装置50の全体図、
図12(b)は1画素の断面構造を表している。
【0051】
図12(a)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域501には、発光素子を複数備える画素502がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域501において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子502R、第2発光素子502G、第3発光素子502Bの組み合わせにより画素502が構成されている。画素502は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0052】
図12(b)は、
図12(a)のS-S線における部分断面模式図である。画素502は、複数の発光素子からなり、各発光素子は、基板503上に、第1電極(陽極)504と、正孔輸送層505と、発光層506R、506G、506Bのいずれかと、電子輸送層507と、第2電極(陰極)508と、を有している。これらのうち、正孔輸送層505、発光層506R、506G、506B、電子輸送層507が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層506Rは赤色を発する有機EL層、発光層506Gは緑色を発する有機EL層、発光層506Bは青色を発する有機EL層である。発光層506R、506G、506Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0053】
また、第1電極504は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層505と電子輸送層507と第2電極508は、複数の発光素子502R、502G、502Bで共通に形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極504と第2電極508とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極504間に絶縁層509が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層510が設けられている。
【0054】
図12(b)では正孔輸送層505や電子輸送層507は一つの層で示されているが、
有機EL表示素子の構造によっては、正孔ブロック層や電子ブロック層を備える複数の層で形成されてもよい。また、第1電極504と正孔輸送層505との間には第1電極504から正孔輸送層505への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極508と電子輸送層507の間にも電子注入層を形成することもできる。
【0055】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0056】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極504が形成された基板(マザーガラス)503を準備する。
【0057】
第1電極504が形成された基板503の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極504が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層509を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0058】
絶縁層509がパターニングされた基板503を粘着部材が配置された基板キャリアに載置する。粘着部材によって、基板503は保持される。第1の有機材料成膜装置に搬入し、反転後、正孔輸送層505を、表示領域の第1電極504の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層505は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層505は表示領域501よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0059】
次に、正孔輸送層505までが形成された基板503を第2の有機材料成膜装置に搬入する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板503の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層506Rを成膜する。
【0060】
発光層506Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層506Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層506Bを成膜する。発光層506R、506G、506Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域501の全体に電子輸送層507を成膜する。電子輸送層507は、3色の発光層506R、506G、506Bに共通の層として形成される。
【0061】
電子輸送層507まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極508を成膜する。
【0062】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層510を成膜して、基板503への成膜工程を完了する。反転後、上述の実施形態あるいは実施例で説明したように粘着部材を基板503から剥離することで、基板キャリアから基板503を分離する。その後、裁断を経て有機EL表示装置50が完成する。
【0063】
絶縁層509がパターニングされた基板503を成膜装置に搬入してから保護層510の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0064】
旋回室(第1チャンバー)…21、パス室(第2チャンバー)…22、支持ユニット…25、台座(第1台座)…251、固定面(第1固定面)…251a、可動台座(第2台座)…252、固定面(第2固定面)…251b、接続部…253