(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003057
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 5/00 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
A46B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103995
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】田中 大
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB10
3B202AB19
3B202CA06
3B202CB08
3B202DB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中空構造を有し且つ歯を清掃するときに使用者の口腔内を傷付けない程に刷毛が口腔内の部位に加わる力を緩衝することができて、しかも、緩衝の度合を容易に加減して製作することができる歯ブラシを提供する。
【解決手段】先端側に刷毛が植設されるヘッド部12を構成するヘッド部材120と、ヘッド部材120と連結され、ヘッド部12を口腔内に誘導するために把持されるハンドル部を構成し、中空の筒状であり、かつ、弾性材料により形成される中空部材130とを備え、中空部材130は、その中心軸線から遠ざかる向きに鍔状に突出する鍔状部17を有し、鍔状部17は中空に形成され、その内部が中空の筒状部分の内部と連通することを特徴とする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に刷毛が植設されるヘッド部を構成するヘッド部材と、
前記ヘッド部材と連結され、前記ヘッド部を口腔内に誘導するために把持されるハンドル部を構成し、中空の筒状であり、かつ、弾性材料により形成される中空部材とを備え、
前記中空部材は、その中心軸線から遠ざかる向きに鍔状に突出する鍔状部を有し、
前記鍔状部は中空に形成され、その内部が前記中空の筒状部分の内部と連通する
ことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記ヘッド部材が基端側に開口を有し、
前記中空部材の先端が前記開口に装入され、
前記開口の開口端縁と前記中空部材の鍔状部とは前記中心軸線方向において隣り合う
ことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ハンドル部は前記鍔状部以外の部分において前記中心軸線から遠ざかる向きに膨出する膨出部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記ハンドル部は、前記鍔状部と前記膨出部との間に、前記中心軸線に近付く向きに括れる括れ部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記中空部材先端が前記開口に嵌入し、
前記中空部材先端の嵌入領域及び前記開口の被嵌入領域の何れか一方が、前記中心軸線から遠ざかる向きに突出する係着凸状部を有し、
前記嵌入領域及び前記被嵌入領域の何れか他方が、前記遠ざかる向きに凹む係着凹状部を有し、
前記係着凸状部と前記係着凹状部とが係着し、
前記ヘッド部材と前記中空部材とは脱着自在に連結するように構成される
ことを特徴とする請求項2ないし4の何れかに記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記嵌入領域及び前記被嵌入領域の何れか一方に、前記中心軸線の周方向に面するように設けられた被係止面を有し、かつ、前記嵌入領域及び前記被嵌入領域の何れか他方に、前記周方向において前記被係止面の反対向きに面するように設けられた係止面を有し、
前記係止面が前記被係止面を前記周方向に係止することにより、前記ヘッド部材と前記中空部材とはお互いの回転が制止されるように構成される
ことを特徴とする請求項5に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記中空部材先端の外側に雄ネジ部が設けられ、
前記開口の内側に、前記雄ネジ部が螺合可能な雌ネジ部が設けられ、
前記ヘッド部材と前記中空部材とは脱着自在に連結されるように構成される
ことを特徴とする請求項2ないし4の何れかに記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記鍔状部は、前記中心軸線方向視において略円形に形成される
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の歯ブラシ。
【請求項9】
前記鍔状部は、前記中心軸線方向において前記内部を挟むように対向して配置される略円環状の表面部と略円環状の裏面部とを有し、前記表面部及び前記裏面部のうちの少なくとも一方が、前記表面部及び前記裏面部のうちの他方から遠ざかるほど縮径する傾斜面、または、同じく縮径する凸状の部分球面を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯ブラシに関し、詳細には先端側に刷毛が植設されるヘッド部と、前記ヘッド部を口腔内に誘導するために把持されるハンドル部とを備える歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸部分の一部が中空の筒状に形成される中空構造の歯ブラシがある(特許文献1)。こうした従来の中空構造の歯ブラシは、その中空部分に、中空部分以外の部分を形成する合成樹脂などの材料が充填されていないため比較的軽量である。
【0003】
また、中空部分の寸法を変更することにより軸部分の撓み具合を調整することができる。すなわち、中空部分が前記軸部分の長手方向に細長いとき、その中空部分の長さ及び前記長手方向の位置を変更することによって、歯を清掃するときのかたさ具合を調整することができ、刷毛が口腔内の部位に加える力を緩衝することができる。
【0004】
これらにより、従来の中空構造の歯ブラシは軽く用いることができ、しかも、歯を清掃するときのかたさ具合を調整することができるため、使用者の体力の強弱、清掃するときの強さなどの多様なニーズに対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の中空構造の歯ブラシは、中空に形成された部分が略筒状に形成され、歯ブラシの長手方向に沿ってストレートに延びている。これにより、刷毛に力を入れようとしてヘッド部側とハンドル部側とを屈曲させるようなせん断力が歯ブラシに加わるとき、前記のストレート部分はせん断力に耐えにくく、力が集中する箇所において折れ曲がってしまう虞が大きい。あるいは、このように折れ曲がらないように強度を増せば、刷毛が口腔内の部位に加わる力を十分に緩衝することができない。
【0007】
また、このように歯ブラシが途中から折れ曲がってしまうときは、折れ曲がった箇所が使用者の口腔内を傷付けかねない。そして、いったん折れ曲がった後には容易に元の形状に復元せず、継続してその歯ブラシを使用することができない。
【0008】
そこで本発明は、中空構造を有し、かつ、歯を清掃するときに使用者の口腔内を傷付けない程に刷毛が口腔内の部位に加わる力を緩衝することができて、しかも、緩衝の度合を容易に加減して製作することができる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は先端側に刷毛が植設されるヘッド部を構成するヘッド部材と、 前記ヘッド部材と連結され、前記ヘッド部を口腔内に誘導するために把持されるハンドル部を構成し、中空の筒状であり、かつ、弾性材料により形成される中空部材とを備え、前記中空部材は、その中心軸線から遠ざかる向きに鍔状に突出する鍔状部を有し、前記鍔状部は中空に形成され、その内部が前記中空の筒状部分の内部と連通することを特徴とする歯ブラシを提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明の歯ブラシは、ハンドル部を構成する中空部材を備えることにより、その中空部材の内部に合成樹脂などの材料を充填しないため軽量である。そのため、例えば高齢者、幼児のように握力が弱い使用者であっても、本発明の歯ブラシを操作して容易に歯を清掃することができる。
【0011】
また、前記中空部材が弾性材料により形成されるため、使用者が把持する前記ハンドル部は弾性を有し、歯を清掃するときに、ヘッド部を経て口腔内の部位に加わる力を緩衝することができる。しかも、前記中空部材が弾性変形するため、前記ハンドル部は力を吸収して変形した後も自ら元の形状に復元する。そのため、使用者はその後も歯の清掃を継続することができる。
【0012】
さらに、前記筒状部分の内部と鍔状部の内部とが連通し、これらの単純な内部構造のために前記鍔状部の自在な変形が妨げられることは少ない。例えば、歯ブラシの中心軸線に対してヘッド部側の前記中空部材を屈曲させるようなせん断力が歯ブラシに加わるときに、前記鍔状部は前記ヘッド部側が屈曲しようとする内側の部分が圧縮され、また、前記屈曲しようとする外側の部分が伸びることができる。これにより、前記のせん断力が加わるときに、前記中空部材の前記鍔状部よりも前記ヘッド部寄りの側は、前記鍔状部よりも前記ヘッド部と反対の側に対していずれの向きにおいても傾くことができる。そして、前記ヘッド部材は前記中空部材に対して自在に揺動することができる。
【0013】
前記ヘッド部材が自由な向きに傾くことにより、使用者は口腔内の各部位に対して刷毛を万遍無く当てて清掃することができる。例えば、前記ヘッド部材が決まった向きにしか傾くことができないときは前記刷毛の一部しか当たらないことがある。これに対して、本発明の歯ブラシは刷毛全体を自在な方向、角度等に当てることができ清掃効果が高い。また、幼児、高齢者らがヘッド部をくわえたままで転倒しても、前記ヘッド部材が自由な向きに傾くことにより、本発明の歯ブラシは転倒時の全方位からの衝撃を緩衝することができ、前記ヘッド部が使用者の喉を突いて傷つけてしまう虞が小さい。
【0014】
これらのように、製作時に前記鍔状部の厚さ、形状、材質等の構成を調整することによって、前記中空部材に対して前記ヘッド部材が自在に傾くことのできる度合、すなわち、歯ブラシ全体のかたさを容易に加減することができる。こうして、本発明の歯ブラシは、歯を清掃するときに使用者の口腔内を傷付けない程に刷毛が口腔内の部位に加わる力を緩衝することができ、しかも、緩衝の度合を容易に調節して製作することができる。
【0015】
また、前記中空部材は、前記筒状部分の内部と前記鍔状部の内部とが連通する内部構造のため、材料が合成樹脂の場合に全体を一体に成形することができ、例えばブロー成形のような製造方法を採用することによって簡素且つ効率良く製作することができる。
【0016】
(2)また、前記ヘッド部材が基端側に開口を有し、前記中空部材の先端が前記開口に装入され、前記開口の開口端縁と前記中空部材の鍔状部とは前記中心軸線方向において隣り合ってもよい。
【0017】
すなわち、使用者が歯を清掃するために刷毛によって口腔内の部位を押すとき、ヘッド部材は、この部位から受ける反動力を、前記ヘッド部材と連結された中空部材に伝える。そして、前記反動力によって前記中空部材を屈曲させるようなせん断力が生じるときは、このせん断力が前記ヘッド部材の開口から前記中空部材に伝わる。このとき、本発明の歯ブラシは、前記開口の開口端縁と前記中空部材の鍔状部とが隣り合っているため、前記せん断力が前記鍔状部に効率良く伝わる。
【0018】
ところで、前記中空部材は、前記鍔状部の屈曲しようとする内側の部分が潰れ、また、前記屈曲しようとする外側の部分が伸びるように弾性変形することによって前記せん断力を緩衝する。そして、前記せん断力が前記鍔状部に効率良く伝わるため、前記中空部材は、前記鍔状部の厚さ、形状、材質等の構成を調整することによって、前記せん断力を緩衝する度合を容易に加減することができる。こうして、本発明の歯ブラシは、歯を清掃するときに使用者の口腔内を傷付けない程に刷毛が口腔内の部位に加わる力を緩衝することができ、しかも、緩衝の度合を容易に調節して製作することができる。
【0019】
(3)また、前記ハンドル部は前記鍔状部以外の部分において前記中心軸線から遠ざかる向きに膨出する膨出部を有していてもよい。
【0020】
すなわち、本発明の歯ブラシは、ハンドル部が弾性変形可能である上に膨出部を有するために、使用者が太い前記膨出部を手指又は手指及び掌によって把持することにより、高齢者、幼児らの弱い握力でも歯ブラシを容易に支持することができる。しかも、前記ハンドル部は中空部材により構成されているために柔らかく、握力の弱い使用者であっても中空の前記膨出部をしっかり握ることができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯を清掃する最中に手から落としてしまう虞が少ない。
【0021】
(4)また、前記ハンドル部は、前記鍔状部と前記膨出部との間に、前記中心軸線に近付く向きに括れる括れ部を有してもよい。
【0022】
すなわち、本発明の歯ブラシは括れ部を有するため、使用者がこの括れ部に手指を当てることにより、歯を清掃するときに歯ブラシの姿勢を安定させて支持することができる。特に、前記括れ部が鍔状部と膨出部との間に設けられているため、使用者は、例えば人差し指を前記括れ部に当て、中指、薬指などを前記膨出部に当てることによって、人差し指がヘッド部の位置、角度等を制御しつつ、中指、薬指などがハンドル部を確実に把持することが可能である。こうして、本発明の歯ブラシによって効率的な歯の清掃を行うことができる。
【0023】
(5)また、前記中空部材先端が前記開口に嵌入し、前記中空部材先端の嵌入領域及び前記開口の被嵌入領域の何れか一方が、前記中心軸線から遠ざかる向きに突出する係着凸状部を有し、前記嵌入領域及び前記被嵌入領域の何れか他方が、前記遠ざかる向きに凹む係着凹状部を有し、前記係着凸状部と前記係着凹状部とが係着し、前記ヘッド部材と前記中空部材とは脱着自在に連結するように構成されてもよい。
【0024】
すなわち、ヘッド部材と中空部材とが脱着自在に連結されるため、本発明の歯ブラシは、前記ヘッド部材及び前記中空部材のいずれかを交換することができる。そのため、例えば前記ヘッド部材及び前記中空部材の一方だけを捨てて残りを引き続き使用することができて無駄がなく、また、地球環境に対する負荷が小さい。
【0025】
また、前記ヘッド部材を前記中空部材から分離し、かつ、再度前記ヘッド部材を前記中空部材に装着することができる。そのため、使用者は、前記ヘッド部材を取り外して嵌入領域及び被嵌入領域を露出させて洗浄することができる。これにより、本発明の歯ブラシは常に清潔に保つことができる。
【0026】
そして、本発明の歯ブラシは前記ヘッド部材が前記中空部材に対して自由な向きに傾くことができるにもかかわらず、係着凸状部と係着凹状部とが係着するため、例えば歯の清掃中であっても前記ヘッド部材が前記中空部材から脱抜する虞が小さい。そのため、前記ヘッド部材を喉に詰めてしまうような事故を防ぐことができるので安心して使用することができる。
【0027】
(6)また、前記嵌入領域及び前記被嵌入領域の何れか一方に、前記中心軸線の周方向に面するように設けられた被係止面を有し、かつ、前記嵌入領域及び前記被嵌入領域の何れか他方に、前記周方向において前記被係止面の反対向きに面するように設けられた係止面を有し、前記係止面が前記被係止面を前記周方向に係止することにより、前記ヘッド部材と前記中空部材とはお互いの回転が制止されるように構成されてもよい。
【0028】
すなわち、本発明の歯ブラシは、係止面と被係止面とを有するために中空部材に対する、中心軸線を中心にしたヘッド部材の回転が制止されている。そのため、前記ヘッド部材が脱着自在に前記中空部材に装着されるにもかかわらず、使用者がハンドル部を把持して歯を清掃する最中でも前記ヘッド部材は回転しない。これにより、使用者は刷毛の向きを所定の向きに保つことによって効率的に歯の清掃を行うことができる。
【0029】
(7)また、前記中空部材先端の外側に雄ネジ部が設けられ、前記開口の内側に、前記雄ネジ部が螺合可能な雌ネジ部が設けられ、前記ヘッド部材と前記中空部材とは脱着自在に連結されるように構成されてもよい。
【0030】
すなわち、ヘッド部材と中空部材とが脱着自在に連結されるため、本発明の歯ブラシは、前記ヘッド部材及び前記中空部材のいずれかを交換することができる。また、前記ヘッド部材を前記中間部材から分離し、かつ、再度前記ヘッド部を前記中間部材に装着することができる。さらに、本発明の歯ブラシは雄ネジ部と雌ネジ部とが螺合するため、例えば歯の清掃中であっても前記ヘッド部材が前記中空部材から脱抜する虞が小さい。
【0031】
(8)また、前記鍔状部は、前記中心軸線方向視において略円形に形成されてもよい。
【0032】
すなわち、鍔状部が中心軸線方向視において略円形なため、前記鍔状部には直線状の山折り又は谷折りが形成されない。そのため、直線状の山折り又は谷折りが形成されるときのように構造の変形する向きが特定の向きに制限されることが少ない。これにより、前記鍔状部は、さまざまな方向に変形しやすく、また、角が少ないため柔軟に変形することができる。
【0033】
そのため、本発明の歯ブラシのヘッド部材はより自由な向きに傾くことができ、また、口腔内の部位に加わる力をより容易に緩衝することができる。
【0034】
(9)また、前記鍔状部は、前記中心軸線方向において前記内部を挟むように対向して配置される略円環状の表面部と略円環状の裏面部とを有し、前記表面部及び前記裏面部のうちの少なくとも一方が、前記表面部及び前記裏面部のうちの他方から遠ざかるほど縮径する傾斜面、または、同じく縮径する凸状の部分球面を有してもよい。
【0035】
本発明の歯ブラシは、鍔状部の表裏の少なくとも一方の面が傾斜面又は凸状の部分球面を有するため、中空部材の、前記鍔状部のヘッド部寄りの側が傾くことによってこの一方の面と他方の面とが近付くように潰れる。発明者はこのとき、傾きを生じさせるために加える力がある程度の傾き(変形量)を超えると一定となることを見出した。そのため、本発明の歯ブラシは口腔内の清掃時に誤って一定の力よりもさらに大きな力を歯ブラシに加えるようなときでも、その力を適度に緩衝することができる。このように、本発明の歯ブラシの構造によっては、製作時に前記鍔状部の厚さ、形状、材質等の構成を調整することによって加わる力の緩衝の度合を容易に加減することができる。
【発明の効果】
【0036】
このように本発明では、軽量であり、歯を清掃するときに使用者の口腔内を傷付けない程に刷毛が口腔内の部位に加える力を緩衝することができ、しかも、設計及び製作に際して緩衝の度合を広い範囲で調節することができる構造の歯ブラシを提供することができる。特に、乳幼児、被介護者らの本人に対して保護者、介助者らの使用者が歯ブラシを操作して歯の清掃を行うときは、本人の口腔内に加わっている力の入り具合が使用者にとって分かりにくい。それに対して、本発明の歯ブラシは鍔状部の伸縮によってヘッド部材が自在に揺動するため、前記の加わっている力を十分に吸収することができて、こうした歯を清掃してもらっている本人の口腔内を保護する上においてきわめて有効である。
【0037】
そして、中空部材の材料として合成樹脂を用いる場合は、中空構造を有するためにそのぶん合成樹脂の使用量を減らすことができ、地球環境に対する負荷の低い歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシの正面図を表わす。(b)同じく歯ブラシの右側面図を表わす。
【
図2】
図1の歯ブラシをヘッド部材と中空部材とに分解した状態の斜視図を表わす。
【
図3】(a)~(c)
図1に示す歯ブラシのヘッド部材の正面図、右側面部分断面図及び底面図をそれぞれ表わす。
【
図4】(a)~(c)
図1に示す歯ブラシのヘッド部材の右側面部分断面図、前記右側面部分断面の拡大図及びアンダーカット部の拡大図をそれぞれ表わす。
【
図5】(a)~(d)
図1に示す歯ブラシの中空部材の平面図、側面図、正面図及び横断面図をそれぞれ表わす。
【
図6】
図1に示す歯ブラシの中空部材の縦断面図を表わす。
【
図7】
図1に示す歯ブラシの中空部材の部分右側面図を表わす。
【
図8】
図1に示す歯ブラシのヘッド部材と中空部材とを組み合わせた状態におけるヘッド部材の部分右側面断面図と中空部材の部分右側面図とを表わす。
【
図9】(a)~(c)
図1に示す歯ブラシが次第に後ろ向きに曲がる状態を平面視において表わす。
【
図10】(a)~(c)
図1に示す歯ブラシが次第に後ろ向きに曲がる状態をやや前寄りの右側面視において表わす。
【
図11】(a)~(c)
図1に示す歯ブラシが次第に後ろ向きに曲がる状態の右側面断面図をそれぞれ表わす。
【
図12】(a)
図1に示す歯ブラシの曲げ強度を測定するために用いた装置について測定を開始する前の状態を表わす。(b)同じく装置について測定を開始した後の状態を表わす。
【
図13】
図1に示す歯ブラシの曲げ強度を測定中の状態における右側面図を表わす。
【
図14】
図1に示す歯ブラシの曲げ強度の測定結果を表わす。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る歯ブラシの正面図を表わす。
【
図16】本発明の第3の実施形態に係る歯ブラシの部分正面図を表わす。
【
図17】(a)(b)本発明の第4の実施形態に係る歯ブラシの正面図及び右側面図をそれぞれ表わす。
【
図18】
図17に示す歯ブラシのヘッド部材と中空部材とを組み合わせた状態におけるヘッド部材の部分平面断面図と中空部材の部分平面図とを表わす。
【
図19】本発明の変更された実施形態に係る歯ブラシの部分正面図を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を、
図1~
図14を用いて説明する。
図1(a)の正面図及び
図1(b)の右側面図において11は歯ブラシである。歯ブラシ11は先端側にヘッド部12を有し、ヘッド部12を口腔内に誘導するために把持されるハンドル部13を有する。ヘッド部12には刷毛14が植設される。図においては、矢印Uの向きが歯ブラシ11の上方を示し、矢印Dの向きが同じく下方を示す。矢印Fの向きが同じく前方を示し、矢印Bの向きが同じく後方を示す。また、矢印Lの向きが同じく左方を示し、矢印Rの向きが同じく右方を示す。
【0040】
歯ブラシ11の中心軸線をC1の中心線により表わす。ヘッド部12のネック部12aの横断面及びハンドル部13の上下端付近の横断面がそれぞれ略円形に形成され、中心軸線C1は、これら各横断面の中心を上下方向に通過する。このネック部12aとは、ヘッド部12のうち刷毛14が植設される植毛面12bよりも下側に位置する部分を指す。植毛面12bには複数の植毛穴が穿設され、それぞれの植毛穴ごとに複数本の刷毛14が前後方向に植設される。
【0041】
ハンドル部13は中心軸線C1より遠ざかる向きに膨出する上下二箇所の膨出部15を有し、また、中心軸線C1に近付く向きに括れる上下二箇所の括れ部16を有する。このとき、上から下への順に上段の括れ部16a、上段の膨出部15a、下段の括れ部16b及び下段の膨出部15bが配置される。また、ハンドル部13は上段の括れ部16aの上側に、中心軸線C1から遠ざかる向きに鍔状に突出する鍔状部17を有する。
【0042】
図2は、歯ブラシ11をヘッド部材120と中空部材130とが分かれるように上下方向に分解した状態の斜視図を表わす。ヘッド部材120は、中空部材130と組み合わされた状態でヘッド部12を構成する。中空の筒状に形成された中空部材130は、ヘッド部材120と組み合わされた状態でハンドル部13を構成する。このとき、中空部材130の下述する先端部131は、ヘッド部材120の内側に位置してヘッド部12の一部を構成する。ヘッド部材120の中心軸線C2と中空部材130の中心軸線C3とは、これらが組み合わされた状態で、歯ブラシ11の中心軸線C1と一致する。
【0043】
ヘッド部材120と中空部材130とは別体に形成される。ヘッド部材120は、ポリプロピレン(PP)、飽和ポリエステル(PET)、ポリアセタール(POM)等熱可塑性樹脂を含む各種の合成樹脂を材料とする、例えば射出成形による成形品である。
図3(a)(b)(c)は、それぞれヘッド部材120の正面図、右側面部分断面図及び底面図を示す。ヘッド部材120の下底側には下方に開口する開口部121が設けられている。開口部121は上側ほど縮径する略円錐台状の内部空間を有する。その内部空間の内周部分を被嵌入領域122とよぶ。ヘッド部材120の下端は外周が円形に形成され、開口部121の出口である開口端縁123を構成する。
【0044】
図4(a)は
図3(b)と同様にヘッド部材120の右側面部分断面図を示す。また、
図4(b)は
図4(a)のうちヘッド部材120の下底側を拡大した図を示す。被嵌入領域122は、径方向内向きに突出する略円環状のアンダーカット部124を有する。
図4(c)はアンダーカット部124の拡大図を示す。アンダーカット部124は被嵌入領域122の内側全周にわたって設けられる。このアンダーカット部124を設けることにより、被嵌入領域122のうちアンダーカット部124よりも上側の部分は、アンダーカット124の最も内側に位置する頂部に比べて一段径大な、径方向外向きに凹んでいる係着凹状部125を形成する。
【0045】
また、被嵌入領域122は、周方向に均一な間隔を空けて配置され且つ径方向外向きに凹むように形成される四箇所の被係止凹部126を有する。各被係止凹部126は、内側に下側ほど幅広な略四角推台状の空間を形成する。そして、各被係止凹部126は、平面視における時計向きCLに面する内壁である時計向き被係止面127aを有する。また、平面視における反時計向きUCに面し、周方向において各時計向き被係止面127aと対向する内壁である反時計向き被係止面127bを有する。従って、被嵌入領域122全体には四面の時計向き被係止面127aと四面の反時計向き被係止面127bとが形成される。
【0046】
中空部材130は、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)などの弾性を有する熱可塑性樹脂を含む各種の合成樹脂を材料とする、例えばブロー成形による成形品である。
図5(a)は中空部材130の平面図を表わす。
図5(c)は同じく正面図を表わす。
図5(b)は
図5(c)の姿勢から中心軸線C3を中心に中空部材130を反時計向きに30°回転させた状態の側面図を表わす。
図5(d)は上下方向の対応する位置における横断面及び底面を表わす。中空部材130の上端には上側ほど縮径する円錐台状の先端部131が設けられている。先端部131を含む、先端部131から鍔状部17の最上部までの外周部分を嵌入領域132とよぶ。ヘッド部材120と中空部材130とは、嵌入領域132が被嵌入領域122に嵌入することによって連結して組み合わされる。嵌入領域132は、ヘッド部材120と中空部材130とが連結された状態で、開口部121の径方向内側に位置してヘッド部12の一部を構成する。
【0047】
図5(d)の各横断面図及び
図6の中空部材130の縦断面図が示す通り、中空部材130は内部全体が一つの中空空間Eを成す中空構造を有する。すなわち、先端部131と鍔状部17とも中空構造を有し、かつ、筒状の中空部材130全体の中空空間と先端部131及び鍔状部17の中空空間とが連通して一つの中空空間Eを形成している。
【0048】
また、中空部材130は肉厚が全体に均一となるように形成されている。ここで言う肉厚を
図6において符号tにより表わす。
【0049】
中空部材130の横断面は、
図5(d)の各横断面図が示すように、鍔状部17が円形に形成され、上段の括れ部16aが鍔状部17よりも径小な円形に形成され、また、上下の各膨出部15a,15bが頂角の丸まった略正六角形に形成される。図示されていないが、下段の括れ部16bも頂角の丸まった略正六角形に形成される。
【0050】
図7は中空部材130の右側面図における先端部131近傍を拡大した部分図を示す。嵌入領域132は、上下方向の途中において全周に渡り且つ下向きに形成される段差133を有する。この段差133よりも下側の首状部分を首部134とよぶ。そして、段差133よりも上側に位置する先端部131は下端付近部分が首部134よりも一段径大であり、径方向外向きに突出している係着凸状部135を形成する。首部134の径と、アンダーカット124の最も内側に位置する頂部の径とが略同一する。
【0051】
また、嵌入領域132は、首部134の外周に均一な間隔を空けて配置され且つ径方向外向きに突出するように形成される四箇所の係止凸部136を有する。各係止凸部136は、下側ほど幅広な略四角推台状の形状を有するとともに、その底面は鍔状部17の表面部138と一体に形成されている。表面部138について詳しく下述する。そして、各係止凸部136は、平面視において時計向きCLに面する外壁である時計向き係止面137aを有する。また、平面視における反時計向きUCに面する外壁であり、周方向において各時計向き係止面137aと対向する反時計向き係止面137bを有する。従って、嵌入領域132全体には四面の時計向き係止面137aと四面の反時計向き係止面137bとが形成される。
【0052】
中空部材130は、鍔状部17を構成する表面部138と裏面部139とを有する。上側の表面部138及び下側の裏面部139は、鍔状部17の内部の中空空間Eを上下方向に挟むように配置され、それぞれが略円環状に形成され、かつ、それぞれの略円環状の外側周縁が互いに上下方向に連続して形成されている。これらのうちの表面部138は、上方ほど縮径する凸状の部分球面を有する。換言すれば、表面部138は裏面部139から遠ざかるほど縮径する凸状の部分球面を有する。
【0053】
図8は、ヘッド部材120と中空部材130とが脱着自在に連結している状態を示す。ヘッド部材120については
図3(b)、
図4(a)(b)と同様に部分右側面断面図が表わされている。中空部材130については
図7と同様に右側面から視ることのできる外形線が表わされている。ヘッド部材120と中空部材130とを組み立てるため、先端部131を開口部121に対して上向きに嵌入する。このとき、係着凸状部135は弾性変形して外径がわずかにアンダーカット124の最も内側に位置する頂部の径よりも小さくなってこの頂部を通過する。こうして、嵌入領域132と被嵌入領域122とが当接するとともに係着凸状部135と係着凹状部125とが係着する。また、アンダーカット124は段差133の下側に位置するため、先端部131を上向きに係止する。
【0054】
このように先端部131を開口部121に対して上向きに嵌入する際、各被係止凹部126に対して、対応する各係止凸部136が嵌まるように先端部131の中心軸線C1周りの開口部121に対する角度を調節する。各被係止凹部126に対して各係止凸部136が組み合わさることにより、周方向において、各時計向き係止面137aは各時計向き被係止面127aと対向する。また、各反時計向き係止面137bは各反時計向き被係止面127bと対向する。これにより、各係止面137a,137bが各被係止面127a,127bを周方向に係止することによりヘッド部材120と中空部材130とはお互いの回転が制止されるように構成される。
【0055】
逆に、中空部材130をヘッド部材120から取り外すためには、先端部131を開口部121から下向きに引き抜く。このときも、係着凸状部135は弾性変形して外径がわずかにアンダーカット124の最も内側に位置する頂部の径よりも小さくなってこの頂部を通過する。こうして、嵌入領域132と被嵌入領域122とが離隔するとともに係着凸状部135と係着凹状部125とが係脱する。これらにより、ヘッド部材120と中空部材130とは脱着自在に連結するように構成される。
【0056】
ヘッド部材120と中空部材130とが連結した状態において、
図1(a)(b)及び
図8が示すように、開口縁端123は表面部138側において鍔状部17と上下方向に隣り合う。
【0057】
図9(a)~(c)は、ヘッド部材120が中空部材130に対して次第に傾く状態を歯ブラシ11の平面から視た図を示す。
図9(a)はヘッド部材120が傾く前の状態を表わす。
図9(b)(c)は、一例として植毛面12bに対して後ろ向きに力を加える場合にヘッド部材120が後ろ向きに傾く状態を表わす。また、植毛面12bに対して加える力を緩めるときは、ヘッド部材120が元の姿勢に戻り、元の
図9(a)の状態に復元する。
【0058】
また、ヘッド部12に対して後ろ向き以外の向きに力を加える場合でも
図9(b)(c)と同様にヘッド部材120はその向きに傾く。歯ブラシ11は、左右前後の方向に依ってヘッド部材120の中空部材130に対する可能な傾きの大小、その傾きを得るために必要な力の大小などが異なるような構造を有していないため、ヘッド部材120が左右前後360°の向きに対して自在に傾くことができる。
【0059】
図10(a)~(c)は、ヘッド部材120が中空部材130に対して次第に傾く状態を歯ブラシ11のやや前寄りの右側面から視た図を示す。
図10(a)はヘッド部材120が傾く前の状態を表わす。
図10(b)(c)は、一例として植毛面12bに対して後ろ向きに力を加える場合にヘッド部材120が傾く状態を表わす。すなわち、ヘッド部材120の中心軸線C2と中空部材130の中心軸線C3とが成す角度は次第に大きくなる。
【0060】
図10(b)(c)が示すように、ヘッド部材120が傾くのに従い、中空部材130は弾性的に変形する。このとき、主に、鍔状部17の表面部138と裏面部139との後側部分が上下方向に押しつぶされる。また、その反対に、表面部138と裏面部139との前側部分が前後方向に伸びる。そして、係着凸状部135と係着凹状部125とが係着しているため、中空部材130がヘッド部材120から抜脱することはない。加える力を緩めるときは、弾性材料により形成される中空部材130の形状が復元してヘッド部材120が元の位置及び姿勢に戻る。
【0061】
図11(a)~(c)は、ヘッド部材120が中空部材130に対して次第に傾く状態を表わす右側面断面図である。図の通り、ヘッド部材120の傾きに従って、ヘッド部材120の被嵌入領域122に嵌まっている中空部材130の嵌入領域132も同様に傾く。これに伴い、嵌入領域132と隣接する鍔状部17が傾く。これらの傾きにより、表面部138と裏面部139とは、嵌入領域132と、上段の括れ部16aとの間に挟まっていることにより、後側においてお互いに近付くように潰れる。また、前側においてお互いに離れるように伸びる。
【0062】
このとき、ヘッド部材120の傾きが大きくない段階では、鍔状部17の形状が変形前の形状と大差ないため、表面部138と裏面部139とが元の立体構造を維持しようとして傾きを生じさせるために必要な力は傾きの大きさに伴って増大する。しかし、例えば
図11(c)の状態のように、ヘッド部材120の傾きがある程度大きくなった段階では、表面部139と裏面部139とが略当接する状態にあるため、元の立体構造から二次元構造に近い状態へと変化する。発明者は、この段階においてさらなる傾きを生じさせるために必要な力が、傾きの大きさにかかわらず一定のもので足りることを見出した。
【0063】
以上の構成により、歯ブラシ11は、ハンドル部13を構成する中空部材130を備えることにより、中空部材130の中空空間Eに合成樹脂などの材料を充填しないため軽量である。そのため、例えば高齢者、幼児のように握力が弱い使用者であっても、歯ブラシ11を操作して容易に歯を清掃することができる。
【0064】
また、中空部材130が弾性材料により形成されるため、使用者が把持するハンドル部13は弾性を有し、歯を清掃するときに、ヘッド部12を経て口腔内の部位に加わる力を緩衝することができる。しかも、中空部材130が弾性変形するため、ハンドル部12は力を吸収して変形した後も自ら元の形状に復元する。そのため、使用者はその後も歯の清掃を継続することができる。
【0065】
さらに、中空部材130の筒状部分の内部と鍔状部17の内部とが連通するので、これらの単純な内部構造のために鍔状部17の自在な変形が妨げられることは少ない。例えば、歯ブラシ11の中心軸線C1に対して先端部131、首部134のような中空部材130の上側部分を屈曲させようとするせん断力が歯ブラシ11に加わるときに、鍔状部17は、屈曲しようとする内側の部分が圧縮され、また、前記屈曲しようとする外側の部分が伸びることができる。これにより、前記のせん断力が加わるときに、中空部材130は鍔状部17よりも上側部分が、鍔状部17よりも下側部分に対していずれの向きにおいても傾くことができる。そして、ヘッド部材120は中空部材130に対して自在に揺動することができる。
【0066】
ヘッド部材120が自由な向きに傾くことにより、使用者は口腔内の各部位に対して刷毛を万遍無く当てて清掃することができる。例えば、ヘッド部材120が決まった向きにしか傾くことができないときは刷毛14の一部しか当たらないことがある。これに対して、歯ブラシ11は刷毛14全体を自在な方向、角度等に当てることができるので清掃効果が高い。また、幼児、高齢者らがヘッド部をくわえたままで転倒しても、ヘッド部材120が自由な向きに傾くことにより、歯ブラシ11は転倒時の全方位からの衝撃を緩衝することができ、ヘッド部12が使用者の喉を突いて傷つけてしまう虞が小さい。
【0067】
これらのような構造のため、製作時に鍔状部17の厚さ、形状、材質等の構成を調整することによって、中空部材130に対してヘッド部材120が自在に傾くことのできる度合、すなわち、歯ブラシ11全体のかたさを容易に加減することができる。こうして、歯ブラシ11は、歯を清掃するときに使用者の口腔内を傷付けない程に刷毛14が口腔内の部位に加わる力を緩衝することができ、しかも、緩衝の度合を容易に調節して製作することができる。
【0068】
また、中空部材130は、前記筒状部分の内部と鍔状部17の内部とが連通する内部構造のため、材料が合成樹脂の場合に全体を一体に成形することができ、例えばブロー成形のような製造方法を採用することによって簡素且つ効率良く製作することができる。
【0069】
次に、使用者が歯を清掃するために刷毛14によって口腔内の部位を押すとき、ヘッド部材120は、この部位から受ける反動力を、ヘッド部材120と連結された中空部材130に伝える。そして、前記反動力によって中空部材130を屈曲させるようなせん断力が生じるときは、このせん断力がヘッド部材120の開口から中空部材130に伝わる。このとき、歯ブラシ11は、開口端縁123と鍔状部17とが隣り合っているため、前記せん断力が鍔状部17に効率良く伝わる。ところで、中空部材130は、鍔状部17の屈曲しようとする内側の部分が潰れ、また、前記屈曲しようとする外側の部分が伸びるように弾性変形することによって前記せん断力を緩衝する。そして、前記せん断力が鍔状部17に効率良く伝わるため、中空部材130は、鍔状部17の厚さ、形状、材質等の構成を調整することによって、前記せん断力を緩衝する度合を容易に加減することができる。こうして、歯ブラシ11は、歯を清掃するときに使用者の口腔内を傷付けない程に刷毛14が口腔内の部位に加わる力を緩衝することができ、しかも、緩衝の度合を容易に調節して製作することができる。
【0070】
次に、歯ブラシ11は、ハンドル部13が弾性変形可能である上に膨出部15を有するために、使用者が太い膨出部15を手指又は手指及び掌によって把持することにより、高齢者、幼児らの弱い握力でも歯ブラシ11を容易に支持することができる。しかも、ハンドル部13は中空構造を有する中空部材130により構成されているために柔らかく、握力の弱い使用者であっても中空の膨出部15をしっかり握ることができる。そのため、歯ブラシ11は、歯を清掃する最中に手から落としてしまう虞が少ない。
【0071】
また、歯ブラシ11は括れ部16を有するため、使用者が括れ部16に手指を当てることにより、歯を清掃するときに歯ブラシ11の姿勢を安定させて支持することができる。特に、上段の括れ部16aが鍔状部17と上段の膨出部15aとの間に設けられているため、使用者は、例えば人差し指を上段の括れ部16aに当て、中指、薬指などを各膨出部15a,15bに当てることによって、人差し指がヘッド部12の位置、角度等を制御しつつ、中指、薬指などがハンドル部13を確実に把持することが可能である。こうして、歯ブラシ11によって効率的な歯の清掃を行うことができる。
【0072】
次に、ヘッド部材120と中空部材130とが脱着自在に連結されるため、歯ブラシ11は、ヘッド部材120及び中空部材130のいずれかを交換することができる。そのため、例えばヘッド部材120及び中空部材130の一方だけを捨てて残りを引き続き使用することができて無駄がなく、また、地球環境に対する負荷が小さい。
【0073】
また、ヘッド部材120を中空部材130から分離し、かつ、再度ヘッド部材120を中空部材130に装着することができる。そのため、使用者は、ヘッド部材120を取り外して嵌入領域132及び被嵌入領域122を露出させて洗浄することができる。これにより、歯ブラシ11は常に清潔に保つことができる。
【0074】
さらに、歯ブラシ11は係着凸状部135と係着凹状部125とが係着するため、例えば歯の清掃中であってもヘッド部材120が中空部材130から脱抜する虞が小さい。そのため、ヘッド部材120を喉に詰めてしまうような事故を防ぐことができるので安心して使用することができる。
【0075】
しかも、歯ブラシ11は、係止面137a,137bと被係止面127a,127bとを有するために中空部材130に対する、中心軸線C2を中心にしたヘッド部材120の回転が制止されている。そのため、ヘッド部材120が脱着自在に中空部材130に装着されるにもかかわらず、使用者がハンドル部13を把持して歯を清掃する最中でもヘッド部材120は回転しない。これにより、使用者は刷毛14の向きを所定の向きに保つことによって効率的に歯の清掃を行うことができる。
【0076】
最後に、鍔状部17が中心軸線C3方向視において略円形なため、鍔状部17には四角形、多角形などのような直線状の山折り又は谷折りが形成されない。そのため、直線状の山折り又は谷折りが形成されるときのように、力が加わったときの変形する向きが特定の向きに制限されることは少ない。これにより、鍔状部17は、さまざまな方向に変形しやすく、また、角が少ないため柔軟に変形することができる。
【0077】
そのため、歯ブラシ11のヘッド部材120はより自由な向きに傾くことができ、また、口腔内の部位に加わる力をより容易に緩衝することができる。
【0078】
そして、歯ブラシ11は、鍔状部17の表面部138が凸状の部分球面を有するため、中空部材130の、鍔状部17よりも上側の部分が傾くことによって表面部138と裏面部139とが近付くように潰れる。発明者はこのとき、傾きを生じさせるために加える力がある程度の傾き(変形量)を超えると、その力が一定となることを見出した。そのため、歯ブラシ11は口腔内の清掃時に誤って一定の力よりもさらに大きな力が歯ブラシ11に加わるようなときでも、その力を適度に緩衝することができる。このように、本発明の歯ブラシ11の構造により、製作時に鍔状部17の厚さ、形状、材質等の構成を調整することによって加わる力の緩衝の度合を容易に加減することができる。
【0079】
[実施例]
発明者は、本発明の歯ブラシ11の曲げ強度を測定した。
図12(a)(b)は測定のために用いた装置の写真を示す。発明者は刷毛14を植設していない状態の歯ブラシ11を用意し、その中心軸線C1方向が水平方向と一致するとともに植毛面12bが上を向くように、中空部材130をクランプCによって写真の上下方向に挟んで歯ブラシ11を片持ちに保持した。その上で、先端に圧子Iを有する曲げ強度測定器を用いて、圧子Iを植毛面12bに当てつつ圧子Iを分速100mmの速度で下降させて圧子Iに加わる負荷(load)を測定した。圧子Iが下降する距離は最大25mmに設定した。また、負荷の測定単位はニュートン(N)を用いた。
図12(a)の写真が圧子Iを下降させる前の状態を表わし、
図12(b)の写真が圧子Iを25mm下降させた状態を表わす。
【0080】
本実施例において用いた本発明の歯ブラシ11は、
図13で示す上下方向の全長Lが183.5mmを有する。これに対して発明者は、歯ブラシ11の上端と、クランプCの歯ブラシ11上端に近い側の一端との間の距離である突出長さL1を80.0mmに設定した。歯ブラシ11は、ヘッド部12の長さである、上端から開口端縁123までのヘッド部長さL2が71.8mmである。これらにより、ハンドル部13の突出長さであるハンドル部突出長さL3は8.2mmであった。
【0081】
また、本実施例の歯ブラシ11は、ヘッド部材120及び中空部材130の材質としていずれもポリプロピレン(PP)を採用した。中空部材130の中空構造は、
図6に示すような均一の肉厚tにより形成され0.4mmの厚さを有する。
【0082】
その一方で発明者は、本実施例と比較するために、比較例1として中空構造を有しない歯ブラシを用意した。比較例1の歯ブラシも、本実施例の歯ブラシ11と同様に、突出長さL1が80.0mmとなるようにクランプCによって保持して測定した。比較例1の歯ブラシの材質としてポリプロピレン(PP)を採用した。
【0083】
圧子Iを下降することにより歯ブラシ11のヘッド部材120が中空部材130に対して後ろ向きに傾いた。ヘッド部材120が傾くにつれ、歯ブラシ11の上端は後ろ向きに移動する。この上端の後ろ向きの移動距離を変形距離d(distance)とよび、下降時における本実施例の歯ブラシ11の変形距離dを測定した。また、比較例1についても、本実施例と同様に変形距離dを測定した。
【0084】
図14のグラフAは本実施例の歯ブラシ11について圧子Iを100mm/minの一定速度にて下降させたときの、それぞれの変形距離dにおける圧子Iに加わる負荷(N)を表わす。横軸がmm単位の変形距離dを表わし、縦軸が負荷(N)を表わす。また、グラフBは比較例1のそれぞれの変形距離dにおける圧子Iに加わる負荷(N)を表わす。
【0085】
グラフBが示すように、比較例1の歯ブラシは、変形距離dが大きくなるにつれほぼ比例して圧子Iに加わる負荷が増加する。これに対して、グラフAが示すように本実施例の歯ブラシ11は、変形が始まった直後は変形距離dに比例して負荷が増加したが、その後、変形距離dが増えても負荷が増加せず横ばいであった。また、本実施例の歯ブラシ11は負荷の大きさ自体が比較例1の歯ブラシよりも小さかった。
【0086】
これらによって発明者は、歯ブラシ11が、外部からの力に対して圧子Iに加わる負荷が小さいのであって、そのぶん力を緩衝することができる度合が比較例1の歯ブラシと比べて大きいことを見出した。また、歯ブラシ11に加わる負荷がある程度増えたことによって、一定の変形距離d、すなわち一定の傾きを超えた後はそれ以上増加せずに横ばいの値を示すことを見出した。このように、ある程度の傾き(変形量)を超えるときは、その傾きを生じさせるために加える力が一定となることを見出した。
【0087】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を、
図15を用いて説明する。
図15の正面図において21は歯ブラシであって、先端側にヘッド部22を有し、ヘッド部22を口腔内に誘導するために把持されるハンドル部23を有する。ヘッド部22には刷毛24が植設される。ハンドル部23は歯ブラシ21の中心軸線C1より遠ざかる向きに膨出する上下二箇所の膨出部25を有し、また、中心軸線C1に近付く向きに括れる上下二箇所の括れ部26を有する。このとき、上から下への順に上段の括れ部26a、上段の膨出部25a、下段の括れ部26b及び下段の膨出部25bが配置される。また、ハンドル部23は上段の括れ部26aの上側に、中心軸線C1から遠ざかる向きに鍔状に突出する鍔状部27を有する。
【0088】
ヘッド部22及びハンドル部23は、別体に形成されるヘッド部材220と中空部材230とにより構成される。ヘッド部材220は、中空部材230と組み合わされた状態でヘッド部22を構成する。中空の筒状に形成された中空部材230は、ヘッド部材220と組み合わされた状態でハンドル部23を構成する。中空部材230は内部全体が一つの中空空間Eを成す中空構造を有する。
【0089】
中空部材230は、鍔状部27を構成する表面部238と裏面部239とを有する。上側の表面部238及び下側の裏面部239は、鍔状部27の内部の中間空間Eを上下方向に挟むように配置され、それぞれが略円環状に形成され、かつ、それぞれの略円環状の外側周縁が互いに上下方向に連続して形成される。これらのうちの表面部238は、上方ほど縮径する傾斜面を有する。換言すれば、表面部238は裏面部239から遠ざかるほど縮径する傾斜面を有する。
【0090】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0091】
以上のように、歯ブラシ21は、鍔状部27の表面部238が傾斜面を有するため、第1の実施形態における凸状の部分球面を有する表面部138の場合と同様に、中空部材230の、鍔状部27よりも上側の部分が傾くことによって表面部238と裏面部239とが近付くように潰れる。発明者はこのとき、傾きを生じさせるために加える力がある程度の傾き(変形量)を超えると、その力が一定となることを見出した。そのため、歯ブラシ21は口腔内の清掃時に誤って一定の力よりもさらに大きな力が歯ブラシ21に加わるようなときでも、その力を適度に緩衝することができる。このように、本発明の歯ブラシ21の構造により、製作時に鍔状部27の厚さ、形状、材質等の構成を調整することによって加わる力の緩衝の度合を容易に加減することができる。
【0092】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を、
図16を用いて説明する。
図16の部分正面図において31は歯ブラシであって、先端側にヘッド部32を有し、ヘッド部32を口腔内に誘導するために把持されるハンドル部33を有する。ヘッド部32には図示されない刷毛34が植設される。ハンドル部33は歯ブラシ31の中心軸線C1より遠ざかる向きに膨出する上下二箇所の膨出部35を有し、また、中心軸線C1に近付く向きに括れる上下二箇所の括れ部36を有する。これらのうち、上段の括れ部36aだけが図示される。また、ハンドル部33は上段の括れ部36aの上側に、中心軸線C1から遠ざかる向きに鍔状に突出する、上下二段の鍔状部37を有する。上から下への順に上段の鍔状部37a及び下段の鍔状部37bが配置される。
【0093】
中空部材330は内部全体が一つの中空空間Eを成す中空構造を有する。すなわち、上下の鍔状部37a,37bがそれぞれ中空構造を有し、かつ、筒状の中空部材330全体の中空空間と、各鍔状部37a,37bとが連通して一つの中空空間Eを形成している。
【0094】
中空部材330は、各鍔状部37a,37bをそれぞれ構成する、上段の表面部338a、上段の裏面部339a,下段の表面部338b及び下段の裏面部338bとを有する。上下それぞれの段において、上側の各表面部338a,338b及び下側の各裏面部339a,339bは、各鍔状部37a,37bそれぞれの内部の中空空間Eを上下方向に挟むように配置され、それぞれが略円環状に形成され、かつ、それぞれの略円環状の外側周縁が互いに上下方向に連続して形成されている。これらのうちの各表面部338a,338bは、上方ほど縮径する傾斜面を有する。換言すれば、上段の表面部338aは上段の裏面部339aから遠ざかるほど縮径する傾斜面を有する。また、下段の表面部338bは下段の裏面部339bから遠ざかるほど縮径する傾斜面を有する。
【0095】
さらに、これらのうち上段の裏面部339aは、下方ほど縮径する傾斜面を有する。換言すれば、上段の裏面部339aは上段の表面部338aから遠ざかるほど縮径する傾斜面を有する。
【0096】
その他の構成は、第2の実施形態と共通する。
【0097】
以上のように、歯ブラシ31は二段の鍔状部37a,37bを有するため、一段の鍔状部だけを有する場合と比べて、製作時の各鍔状部37a,37bの厚さ、形状、材質等の構成を調整することにより、より広い範囲において、加わる力の緩衝の度合を加減することができる。また、
図16においては上段の鍔状部37aの外径と下段の鍔状部37bの外径とが略同一の場合の実施形態を示すが、これら以外にも、上下の寸法を違うものとすることによっても、より広い範囲において、加わる力の緩衝の度合を加減することができる。
【0098】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態を、
図17を用いて説明する。
図17(a)の正面図及び
図17(b)の右側面図において41は歯ブラシである。歯ブラシ41は先端側にヘッド部42を有し、ヘッド部42を口腔内に誘導するために把持されるハンドル部43を有する。ヘッド部42には刷毛44が植設される。
【0099】
歯ブラシ41には上側のヘッド部材420と下側の中空部材430とが組み合わさっている。ヘッド部材420は、中空部材430と組み合わされた状態でヘッド部42を構成する。中空の筒状に形成された中空部材430は、ヘッド部材420と組み合わされた状態でハンドル部43を構成する。このとき、中空部材430の先端部431は、ヘッド部材420の内側に位置してヘッド部42の一部を構成する。ヘッド部材420の中心軸線C2と中空部材430の中心軸線C3とは、これらが組み合わされた状態で歯ブラシ41の中心軸線C1と一致する。
【0100】
ヘッド部材420と中空部材430とは別体に形成される。
図18はヘッド部材420と中空部材430とが組み合わされた位置における、ヘッド部材420の部分平面断面図と、中空部材430の部分平面図とを表わす。ヘッド部材420の下底側には下方に開口する開口部421が設けられている。開口部421は上側の円柱状の内部空間と、この上側の内部空間と連通し、かつ、前記上側の内部空間よりも径大な円柱状である下側の内部空間とを有する。これらを併せた内部空間の内周部分を被嵌入領域422とよぶ。ヘッド部材420の下端は外周が円形に形成され、開口部421の出口である開口端縁423を構成する。
【0101】
被嵌入領域422は、前記上側の内部空間の内周部分において雌ネジ部425を有する。雌ネジ部425においてヘッド部材420は径方向外向きに凹設されるネジ溝425aを有する。ネジ溝425aはヘッド部材420の中心軸線C2を中心に螺旋を描く。
【0102】
中空部材430は先端部431の外周に雄ネジ部435を有する。雄ネジ部435において中空部材430は径方向外向きに凸設されるネジ山435aを有する。ネジ山435aは中空部材430の中心軸線C3を中心に螺旋を描く。先端部431を含む、先端部431から鍔状部47の最上部までの外周部分を嵌入領域432とよぶ。ヘッド部材420と中空部材430とは、雌ネジ部425と雄ネジ部435とが螺合するとともに被嵌入領域422に嵌入領域432が嵌入して連結することによって組み合わされる。
【0103】
その他の構成は、第1の実施形態又は第2の実施形態と共通する。
【0104】
以上の構成により、ヘッド部材420と中空部材430とが脱着自在に連結されるため、歯ブラシ41は、ヘッド部材420及び中空部材430のいずれかを交換することができる。また、ヘッド部材420を中間部材430から分離し、かつ、再度ヘッド部420を中間部材430に装着することができる。さらに、歯ブラシ41は雄ネジ部435と雌ネジ部425とが螺合するため、例えば歯の清掃中であってもヘッド部材420が中空部材430から脱抜する虞が小さい。
【0105】
以上、本発明の実施形態について例示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0106】
例えば、ヘッド部材の材質はポリプロピレン(PP)、飽和ポリエステル(PET)、ポリアセタール(POM)などに限らず、刷毛を植設することができ、かつ、歯磨きに耐える強度を有する材料であれば、これら以外の合成樹脂又は合成樹脂以外の材料であってもよい。また、射出成形以外の製造方法によって形成されてもよい。
【0107】
また、中空部材の材質は低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)などに限らず、中空に形成することができ、弾性を有し、かつ、ヘッド部材を支持するのに耐える強度を有する材料であれば、これら以外の合成樹脂又は合成樹脂以外の材料であってもよい。また、ブロー成形以外の製造方法によって形成されてもよい。
【0108】
ヘッド部材の横断面又は下端が円形以外の形状に形成されてもよく、また、中空部材の横断面が円形、略正六角形以外の形状に形成されてもよい。ヘッド部材は、中空部材との接合構造を収めることができる形状であれば、例えば、横断面が多角形でもよい。また、中空部材の横断面は、手指及び掌によって容易に把持することができれば、例えば、六角形以外の多角形、正多角形以外の多角形などでもよい。
【0109】
中空部材の肉厚は全体に均一でなくともよく、ハンドル部に弾性を持たせ、ヘッド部が自在に傾くことができ、かつ、歯ブラシとしての必要な強度が有ればたとえ不均一であってもよい。
【0110】
係着凹状部及び係着凸状部は、それぞれ第1の実施形態において例示したような凹みと一段径大な突出部分とでなくともよく、ヘッド部材と中空部材とを確実且つ脱着自在に連結することができれば、例えば、係着凹状部が溝状であり、係着凸状部がその溝に嵌まることのできるリング状であってもよい。
【0111】
係着凹状部がヘッド部材に設けられ、係着凸状部が中空部材に設けられずとも、ヘッド部材と中空部材とが脱着自在且つ確実に連結するように構成されるのであれば、代りに係着凹状部は中空部材に設けられ、かつ、係着凸状部はヘッド部材に設けられてもよい。
【0112】
被係止凹部部、係止凸部、被係止面及び係止面について、ヘッド部材に設けられた凹部について被係止凹部及び被係止面と呼び、また、中空部材に設けられた凸部について係止凸部及び係止面と呼んだが、これらは便宜上区別するための命名であり、例えば、凹部について係止凹部及び係止面と呼び、かつ、凸部について被係止凸部及び被係止面と呼んでもよい。さらに、ヘッド部材と回転部材との相対的な回転を制止することができれば、例えば、ヘッド部材側に凸部が設けられ、中空部材側に凹部が設けられてもよい。
【0113】
鍔状部における部分球面又は傾斜面の配置は、第1~第4の実施形態における例示に限らず、ヘッド部材が中空部材に対して自在に揺動することができれば、例えば、裏面部が下方ほど縮径する凸状の部分球面を有してもよく、また、裏面部が下方ほど縮径する傾斜面を有してもよい。さらに、表面部と裏面部とが共にこれらの部分球面又は傾斜面を有し、しかも、表面部及び裏面部のうちの何れか一方が部分球面を、他方が傾斜面をそれぞれ有していてもよい。
【0114】
鍔状部の平面視における形状は円形に限らなくともよく、中空部材に対するヘッド部材の傾きに対する妨げが小さければ、例えば、楕円、長円、頂点に丸みを有する多角形などであってもよい。
【0115】
鍔状部は一段又は上下二段の構成に限らなくともよく、口腔内の部位に加わる力を吸収して変形した後に自ら元の形状に復元することができれば、例えば、上下三段又は四段以上の構成であってもよい。
【0116】
ヘッド部は上側ほど次第に細くなるような形状、また、第4の実施形態のように上下方向の途中から次第に細くなるような形状に限らなくともよく、歯を清掃する上での重さのバランスなどが悪くなければ、例えば、
図19の部分平面図が示すような途中から径が小さくなる二段の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、植設される刷毛によって使用者の歯を清掃するための歯ブラシに利用できる。
【符号の説明】
【0118】
11,21,31,41 歯ブラシ
12,22,32,42 ヘッド部
13,23,33,43 ハンドル部
14,24,34,44 刷毛
15,25,35 膨出部
16,26,36 括れ部
17,27,37,47 鍔状部
120,220,320,420 ヘッド部材
121,421 開口部
122,422 被嵌入領域
123,423 開口端縁
124 アンダーカット部
125 係着凹状部
126 被係止凹部
130,230,330,430 中空部材
131,431 先端部
132,432 嵌入領域
133 段差
135 係着凸状部
136 係止凸部
138,238,338 表面部
139,239,339 裏面部
425 雌ネジ部
435 雄ネジ部