(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030581
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】推定方法、学習済モデル生成方法、推定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20230301BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G06Q50/08
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135795
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】谷口 修
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 宏
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】海中にコンクリートを打設する場合の海中のコンクリート温度を推定する。
【解決手段】情報処理装置(10)は、コンクリートを打設する予定地域の海域の海中におけるコンクリート打設時の深度ごとの海水温を特定する第1ステップと、予定地域におけるコンクリートの打設時の気温を特定する第2ステップと、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定する第3ステップと、第1ステップで特定した深度ごとの海水温、前記第2ステップで特定した気温及び第3ステップで取得したコンクリート温度に基づき、予定地域の海域における海中での打設時のコンクリート温度を推定する第4ステップと、第4ステップで推定した結果を出力する第5ステップとを実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設する予定地域の海中におけるコンクリート打設時の深度ごとの海水温を特定する第1ステップと、
前記予定地域におけるコンクリートの打設時の気温を特定する第2ステップと、
コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定する第3ステップと、
前記第1ステップで特定した深度ごとの海水温、前記第2ステップで特定した前記気温及び前記第3ステップで特定した前記コンクリート温度に基づき前記予定地域における海中での打設時のコンクリート温度を推定する第4ステップと、
前記第4ステップで推定した結果を出力する第5ステップと、
を情報処理装置が実行する推定方法。
【請求項2】
前記第4ステップにおいては、前記第1ステップで取得した深度ごとの海水温、前記第2ステップで特定した前記気温及び前記第3ステップで特定した前記コンクリート温度を入力データとし、前記予定地域における海中での打設時のコンクリート温度を出力データとする機械学習により構築された第1の学習済モデルを用いて前記海中での打設時のコンクリート温度を推定する、
請求項1に記載の推定方法。
【請求項3】
前記予定地域の海域における過去の深度ごとの海水温の時系列データを取得する第6ステップ、
を前記情報処理装置が更に実行し、
前記第1ステップにおいては、さらに前記時系列データを入力データとし、前記予定地域の海域におけるコンクリート打設対象の深度ごとの海水温を出力データとする機械学習により構築された第2の学習済モデルを用いて前記コンクリート打設時の深度ごとの海水温を特定する、
請求項1又は2に記載の推定方法。
【請求項4】
前記コンクリートの打設現場の環境を表す環境データを取得する第7ステップ、
を前記情報処理装置が更に実行し、
前記第3ステップにおいては、前記環境データを入力データとし、前記打設現場受け入れ時のコンクリート温度を出力データとする機械学習により構築された第3の学習済モデルに前記環境データを入力することにより得られる前記打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項5】
前記環境データは、前記コンクリートの打設現場の気象情報を含む、
請求項4に記載の推定方法。
【請求項6】
コンクリートを打設した地域の海中における打設時期の深度ごとの海水温、並びに、当該地域における前記打設時期の気温、及び、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を含む説明変数と、当該地域における海中での打設時のコンクリート温度を示す目的変数とを取得する第8ステップと、
前記説明変数と前記目的変数とを用いて前記説明変数と前記目的変数との相関関係を機械学習させた前記第1の学習済モデルを生成する第9ステップと、
を前記情報処理装置が更に実行する請求項2に記載の推定方法。
【請求項7】
コンクリートを打設した地域の海中における打設時期の深度ごとの海水温、並びに、当該地域における前記打設時期の気温、及び、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を含む説明変数と、当該地域における海中での打設時のコンクリート温度を示す目的変数とを取得するステップと、
前記説明変数と前記目的変数とを用いて前記説明変数と前記目的変数との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成するステップと、
を情報処理装置が実行する学習済モデル生成方法。
【請求項8】
コンクリートを打設する予定地域の海中におけるコンクリート打設時の深度ごとの海水温を特定する第1特定部と、
前記予定地域におけるコンクリートの打設時の気温を特定する第2特定部と、
コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定する第3特定部と、
前記第1特定部が特定した深度ごとの海水温、前記第2特定部が特定した前記気温、及び前記第3特定部が特定した前記コンクリート温度に基づき前記予定地域における海中での打設時のコンクリート温度を推定する推定部と、
前記推定部が推定した結果を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする推定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記第1特定部、前記第2特定部、前記第3特定部、前記推定部及び前記出力部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海中に打設するコンクリートの海中温度を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マスコンクリートである海中のコンクリート構造物は、ひび割れ防止のため施工前に温度応力解析が行われる。解析の際、コンクリート構造物が海水と接する箇所の海水温を境界条件として設定する必要がある。従来では、経済性及び効率性の観点から、海水温の実測を行わず、気象庁などで測定されている対象地域の近傍の気温データを海水温の代替として用いることが行われている。また、特許文献1には、電力負荷値に関するデータを含む予測用入力データを予測モデルに入力し、予測モデルから生コンクリートの品質に関する予測用出力データを出力し、予測用出力データを用いて生コンクリートの品質を予測することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンクリートを打設する地域では気温と海水温とに差分があるため、従来の技術では、海中にコンクリートを打設する場合のコンクリート温度を適切に予測することはできなかった。また、特許文献1に記載の技術でも、海中に打設する場合のコンクリート温度を予測することはできなかった。
【0005】
本発明の一態様は、上記問題点に鑑みたものである。本発明の一態様は、コンクリートを海中に打設する場合の海中でのコンクリートの温度を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定方法は、コンクリートを打設する予定地域の海中におけるコンクリート打設時の深度ごとの海水温を特定する第1ステップと、前記予定地域におけるコンクリートの打設時の気温を特定する第2ステップと、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定する第3ステップと、前記第1ステップで特定した深度ごとの海水温、前記第2ステップで特定した前記気温及び前記第3ステップで特定した前記コンクリート温度に基づき前記予定地域における海中での打設時のコンクリート温度を推定する第4ステップと、前記第4ステップで推定した結果を出力する第5ステップと、を情報処理装置が実行する。
【0007】
上記の構成によれば、情報処理装置は、海中に打設する場合のコンクリートの海中温度を推定できる。
【0008】
上記推定方法において、前記第4ステップにおいては、前記第1ステップで取得した深度ごとの海水温、前記第2ステップで特定した前記気温及び前記第3ステップで特定した前記コンクリート温度を入力データとし、前記予定地域における海中での打設時のコンクリート温度を出力データとする機械学習により構築された第1の学習済モデルを用いて前記海中での打設時のコンクリート温度を推定してもよい。
【0009】
上記の構成によれば、情報処理装置は、海中に打設する場合のコンクリートの海中温度を推定できる。
【0010】
上記推定方法において、前記予定地域の海域における過去の深度ごとの海水温の時系列データを取得する第6ステップを前記情報処理装置が更に実行し、前記第1ステップにおいては、さらに前記時系列データを入力データとし、前記予定地域の海域におけるコンクリート打設対象の深度ごとの海水温を出力データとする機械学習により構築された第2の学習済モデルを用いて前記コンクリート打設時の深度ごとの海水温を特定してもよい。
【0011】
上記の構成によれば、情報処理装置は、コンクリートを打設する予定地域における海水温を実測することなく、より精度よく海中に打設する場合のコンクリートの海中温度を推定できる。
【0012】
上記推定方法において、前記コンクリートの打設現場の環境を表す環境データを取得する第7ステップを前記情報処理装置が更に実行し、前記第3ステップにおいては、前記環境データを入力データとし、前記打設現場受け入れ時のコンクリート温度を出力データとする機械学習により構築された第3の学習済モデルに前記環境データを入力することにより得られる前記打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定してもよい。
【0013】
上記の構成によれば、情報処理装置は、打設現場での受け入れ時のコンクリートの温度を実測することなく、コンクリートを海中に打設する場合のコンクリート受け入れ時の温度を推定できる。
【0014】
上記推定方法において、前記環境データは、前記コンクリートの打設現場の気象情報を含んでもよい。
【0015】
上記の構成によれば、情報処理装置は、打設現場での受け入れ時のコンクリートの温度を実測することなく、より精度よくコンクリートを海中に打設する場合のコンクリート受け入れ時の温度を推定できる。
【0016】
上記推定方法において、コンクリートを打設した地域の海中における打設時期の深度ごとの海水温、並びに、当該地域における前記打設時期の気温、及び、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を含む説明変数と、当該地域における海中での打設時のコンクリート温度を示す目的変数とを取得する第8ステップと、前記説明変数と前記目的変数とを用いて前記説明変数と前記目的変数との相関関係を機械学習させた前記第1の学習済モデルを生成する第9ステップと、を前記情報処理装置が更に実行してもよい。
【0017】
上記の構成によれば、情報処理装置が生成した学習済モデルを用いてコンクリートを海中に打設する場合のコンクリートの海中温度を推定できる。
【0018】
また、本発明に係る学習済モデル生成方法は、コンクリートを打設した地域の海中における打設時期の深度ごとの海水温、並びに、当該地域における前記打設時期の気温、及び、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を含む説明変数と、当該地域における海中での打設時のコンクリート温度を示す目的変数とを取得するステップと、前記説明変数と前記目的変数とを用いて前記説明変数と前記目的変数との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成するステップと、を情報処理装置が実行する。
【0019】
上記の構成によれば、情報処理装置が生成した学習済モデルを用いてコンクリートを海中に打設する場合のコンクリートの海中温度を推定できる。
【0020】
また、本発明に係る推定装置は、コンクリートを打設する予定地域の海中におけるコンクリート打設時の深度ごとの海水温を特定する第1特定部と、前記予定地域におけるコンクリートの打設時の気温を特定する第2特定部と、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定する第3特定部と、前記第1特定部が特定した深度ごとの海水温、前記第2特定部が特定した前記気温、及び前記第3特定部が特定した前記コンクリート温度に基づき前記予定地域における海中での打設時のコンクリート温度を推定する推定部と、前記推定部が推定した結果を出力する出力部と、を備える。
【0021】
上記の構成によれば、推定装置は、海中に打設する場合のコンクリートの海中温度を推定できる。
【0022】
また、本発明に係るプログラムは、前記推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記第1特定部、前記第2特定部、前記第3特定部、前記推定部及び前記出力部としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0023】
上記の構成によれば、海中に打設する場合のコンクリートの海中温度を推定できる。
【0024】
本発明の各態様に係る推定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記推定装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記推定装置をコンピュータにて実現させる推定装置のプログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、海中に打設する場合のコンクリートの海中温度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る海水温の時系列データの具体例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る推定方法の流れを示すフロー図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る学習方法の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態〕
<情報処理装置>
図1は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成を例示するブロック図である。情報処理装置10は、コンクリート構造物のひび割れ防止のための施工前の温度応力解析を行う装置であり、特に、コンクリートを打設する予定地域において海中にコンクリートを打設する際のコンクリートの海中温度を推定する。情報処理装置10は、本明細書に係る推定装置の一例である。また、情報処理装置10は、本明細書に係る学習済モデル生成装置の一例でもある。以下の説明では、コンクリート受け入れ時の温度を「コンクリート温度」ともいう。また、海中に打設した際のコンクリートの海中温度を「海中コンクリート温度」ともいう。
【0028】
情報処理装置10は、推定フェーズと学習フェーズとの2つのフェーズを実行する。推定フェーズは、海中コンクリート温度を推定するフェーズである。学習フェーズは、海中コンクリート温度の推定に用いる学習済モデルを機械学習により構築するフェーズである。情報処理装置10は、制御部11、記憶部12、通信IF13、及び入出力IF14を備える。制御部11は、推定フェーズ実行部110、及び学習フェーズ実行部150を備える。推定フェーズ実行部110は海中コンクリート温度を推定するフェーズを実行する。学習フェーズ実行部150は海中コンクリート温度の推定に用いる学習済モデルを機械学習により構築する。
【0029】
<推定フェーズに係る構成>
推定フェーズ実行部110は、第1特定部111、第2特定部112、推定部113、出力部114、第1取得部115、第2取得部116、及び第3特定部117を備える。
【0030】
(第1特定部)
第1特定部111は、コンクリートを打設する予定地域の海中におけるコンクリート打設時の深度ごとの海水温を特定する。第1特定部111は、一例として、記憶部12に記憶された第2の学習済モデルLM2に過去の海水温の時系列データを入力することにより得られる、コンクリートの打設時期の深度ごとの海水温を特定する。第2の学習済モデルLM2については後述する。なお、第1特定部111が海水温を特定する手法はこれに限定されず、他の手法が用いられてもよい。一例として、第1特定部111は、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置から海水温を示す情報を取得することにより、海水温を特定してもよい。
【0031】
(第2特定部)
第2特定部112は、コンクリート打設予定地域におけるコンクリート打設時の気温を特定する。第2特定部112が特定するコンクリート打設予定地域の気温に関しては、通信IF13を経由して入手する外部の天気情報サイトよりコンクリート打設予定地域の時間ごとの温度のデータを用いるものとするが、第2取得部116が入手する環境データを用いるようにしてもよい。また、第2特定部112は過去の気温の時系列データを入力することにより得られる気温を特定する。第2特定部112は学習済モデルを構築してデータを入手するようにしてもよい。
【0032】
(第3特定部)
第3特定部117は、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定する。第3特定部117が特定するコンクリート温度は、予定地域においてコンクリートを海中ではなく気中に打設する場合のコンクリート温度である。第3特定部117は、一例として、記憶部12に記憶された第3の学習済モデルLM3に、コンクリートの打設現場の環境を表す環境データを入力することにより得られるコンクリート温度を特定する。第3の学習済モデルLM3については後述する。なお、第3特定部117がコンクリート温度を特定する手法はこれに限られず、他の手法が用いられてもよい。一例として、第3特定部117は、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置からコンクリート温度を取得することにより、コンクリート温度を特定してもよい。
【0033】
(推定部)
推定部113は、第1特定部111が特定した深度ごとの海水温、第2特定部112が特定した気温、及び第3特定部117が特定したコンクリート温度に基づき、予定地域における海中コンクリート温度を特定する。推定部113は、一例として、記憶部12に記憶された第1の学習済モデルLM1に、コンクリートを打設する予定地域の深度ごとの海水温、予定地域の気温、及びコンクリート温度を入力することにより、海中コンクリート温度を推定する。第1の学習済モデルLM1については後述する。なお、推定部113が海中コンクリート温度を推定する手法はこれに限られず、他の手法により海中コンクリート温度を推定してもよい。一例として、推定部113は、予定地域の深度ごとの海水温、予定地域の気温、及びコンクリート温度と、海中コンクリート温度とが対応付けられたテーブルを参照することにより、海中コンクリート温度を推定してもよい。
【0034】
(出力部)
出力部114は、推定部113で推定した結果を出力する。出力部114は、一例として、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置に推定結果を示す情報を出力してもよく、また、記憶部12の所定の記憶領域に推定結果を示す情報を書き込むことにより出力してもよい。
【0035】
(第1取得部)
第1取得部115は、予定地域の海域における過去の深度ごとの海水温の時系列データを取得する。第1取得部115は、一例として、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置から海水温の時系列データを受信してもよく、また、記憶部12の所定の記憶領域から時系列データを読み出すことにより時系列データを取得してもよい。第1取得部115は、一例として、約7~8km2の単位面積ごとの海水温を特定する。
【0036】
(第2取得部)
第2取得部116は、コンクリートの打設現場の環境を表す環境データを取得する。環境データは、一例として、コンクリートの打設現場の気象情報を含む。気象情報は、一例として、コンクリートバッチングプラントからコンクリートの打設現場までの天候、又は特定の気象の発生の有無を示す情報を含む。特定の気象は、一例として、台風、海流(黒潮、等)の流れ、エルニーニョ、ラニーニャ、又はモンスーンの発生の有無等である。第2取得部116は、一例として、通信IF又は入出力IFに接続された他の装置から所定の地域のコンクリート打設日の一時間ごとの天気情報(天気、気温、湿度、風力)等の環境データをリアルタイムで受信してもよく、また、記憶部12の所定の記憶領域から環境データを読み出すことにより環境データを取得してもよい。
【0037】
(記憶部)
記憶部12は、情報処理装置10が実行する処理に必要な各種のデータを記憶する。記憶部12は、第1の学習済モデルLM1、第2の学習済モデルLM2、及び第3の学習済モデルLM3を記憶する。第1の学習済モデルLM1、第2の学習済モデルLM2、及び第3の学習済モデルLM3は機械学習により構築されたモデルであり、一例として、再帰型ニューラルネットワークの学習手法により構築される。なお、第1の学習済モデルLM1、第2の学習済モデルLM2、及び第3の学習済モデルLM3は上述したものに限られず、畳み込みニューラルネットワークなどのニューラルネットワークモデル、線形回帰若しくは非線形回帰などの回帰モデル、又は、回帰木などの木モデルなどのアルゴリズムを用いて生成されるモデルであってもよい。
【0038】
(第1の学習済モデル)
第1の学習済モデルLM1は、推定部113が海中コンクリート温度を推定する際に用いる学習済モデルである。推定フェーズにおける第1の学習済モデルLM1の入力データは、(i)コンクリートを打設する予定地域おいて海中にコンクリートを打設する際の予定地域の気温、(ii)予定地域の深度ごとの海水温、及び(iii)打設現場でコンクリートを受け入れる際のコンクリート温度、を含む。推定フェーズにおける第1の学習済モデルLM1の出力データは、予定地域においてコンクリートを打設する時期における海中コンクリート温度を含む。
【0039】
(第2の学習済モデル)
第2の学習済モデルLM2は、第1特定部111が予定地域において海中にコンクリートを打設する際の深度ごとの海水温を特定する際に用いる学習済モデルである。推定フェーズにおける第2の学習済モデルLM2の入力データは、予定地域の海域における過去の深度ごとの海水温の時系列データを含む。なお、入力データとしては、一般に公開されているCopernicus Marine Serviceなどのデータを利用してもよい。
第2の学習済モデルLM2の出力データは、予定地域におけるコンクリート打設時期の深度ごとの海水温を含む。
【0040】
海水温の時系列データは、一例として、海水温の3年分の測定データを含む。なお、海水温の時系列データは、過去の3年分の海水温の時系列データに限られず、例えば過去の10年分の海水温の時系列データであってもよい。
【0041】
時系列データは、一例として、予定地域における月ごとの海水温の平均値を羅列したデータである。なお、時系列データは、月ごとの平均値を羅列したデータに限られず、日ごとのデータでも他のデータであってもよい。時系列データは、一例として、毎日所定の時刻に測定された海水温を羅列したデータであってもよい。また、時系列データは、季節ごとに測定された海水温を羅列したデータであってもよい。また、時系列データには、海水温を示す各データの測定時期を示すデータが付されている。そのため、各データ間で何年間の時差・年差があるかも把握できる。
【0042】
図2は、海水温の時系列データの具体例である時系列データD1~D4を示す図である。
図2において、横軸は時期を示し、縦軸は海水温を示す。時系列データD1~D4は、予定地域における深度ごとの海水温の時系列データである。時系列データD1は、深度が-0.49mの海水温の時系列データである。時系列データD2は、深度が-13.5mの海水温の時系列データである。時系列データD3は、深度が-25.2mの海水温の時系列データである。時系列データD4は、深度が-30mの海水温の時系列データである。
【0043】
(第3の学習済モデル)
第3の学習済モデルLM3は、打設現場でのコンクリートの受け入れ時のコンクリート温度を第2特定部112が特定する際に用いる学習済モデルである。推定フェーズにおける第3の学習済モデルLM3の入力データは、第2取得部116が取得したコンクリートの打設現場の環境を表す環境データを含む。第3の学習済モデルLM3の出力データは、打設現場でのコンクリートの受け入れ時のコンクリート温度を含む。
【0044】
環境データは、上述したように、一例として、コンクリートの打設現場の気象情報を含む。気象情報は、上述したように、一例として、コンクリートバッチングプラントからコンクリートの打設現場までの天候、又は特定の気象の発生の有無を示す情報を含む。
【0045】
(通信IF・入出力IF)
通信IF13は、他のコンピュータと通信するためのインタフェースである。通信IF13には、ネットワークを介さずに他のコンピュータと通信を行うためのインタフェース、例えば、Bluetooth(登録商標)インタフェースが含まれ得る。また、通信IF13には、LAN(Local Area Network)を介して他のコンピュータと通信を行うためのインタフェース、例えば、Wi-Fi(登録商標)インタフェースが含まれ得る。入出力IF14には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力IF14としては、例えばUSBが挙げられる。
【0046】
<推定方法の流れ>
図3は、情報処理装置10が実行する推定方法の一例である推定方法M1の流れを示すフロー図である。推定方法M1に含まれる一部のステップは並行して、又は順序を替えて実行されてもよい。
【0047】
ステップM11において、第1取得部115は、予定地域の海域における過去の深度ごとの海水温の時系列データを取得する。ステップM11は本明細書に係る第6ステップの一例である。第1取得部115が取得する海水温の時系列データは、一例として、Copernicus Marine Service、気象庁などが公開している、過去の海水温の時系列データである。第1取得部115は、一例として、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置から時系列データを取得してもよく、また、記憶部12に記憶された時系列データを読み出すことにより取得してもよい。第1取得部115が取得する海水温の時系列データは、一例として、予定海域の平面方向(水平方向)の位置(X軸・Y軸)及び深度(深度方向をマイナスとするZ軸)を表す3次元座標により示される、深度が異なる複数の地点のそれぞれにおける海水温の時系列データである。
【0048】
ステップM12において、第1特定部111は、コンクリートを打設する予定地域の海域における打設時期の深度ごとの海水温を特定する。ステップM12は本明細書に係る第1ステップの一例である。本動作例において、第1特定部111は、海水温の時系列データを入力データとし、予定地域の海域における深度ごとの海水温を出力データとする、第2の学習済モデルLM2を用いて、コンクリートの打設時期におけるコンクリート打設予定の深度ごとの海水温を特定する。第1特定部111が特定する深度ごとの海水温は、一例として、予定地域の海域の平面方向の位置(X軸・Y軸)及び深度(深度方向をマイナスとするZ軸)を表す3次元座標により示される、深度が異なる複数の地点のそれぞれの海水温である。
【0049】
ステップM13において、第1特定部111は、コンクリートの打設時期における深度ごとの海水温を、補正係数を用いて補正する。補正係数は一例として、第2の学習済モデルLM2の出力であるコンクリートの打設時期におけるコンクリート打設予定の深度ごとの海水温データと、コンクリートの打設時期における表層の海水温の実測値との差に基づき定められた係数である。海水温の実測値は、一例として、海洋コンクリート構造物の施工前において、床掘掘削又は基礎となる捨石投入などを行う際の表面付近の海水温である。実測データは、一例として、1週間程度の測定結果であってもよく、また、それ以上の期間でも以下の数日の測定結果であってもよい。
【0050】
ステップM14において、第2取得部116は、コンクリートの打設現場の環境を表す環境データを取得する。ステップM14は本明細書に係る第7ステップの一例である。環境データは、一例として、コンクリートの打設現場の気象情報を含む。第2取得部116は、一例として、ウエザーサイトや気象庁などが公開している予報を含む環境データを、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置から環境データを取得してもよい。
【0051】
ステップM15において、第2特定部112は、コンクリート打設予定地域におけるコンクリートの打設時期の気温を特定する。ステップM15は本明細書に係る第2ステップの一例である。本動作例において、第2特定部112は、通信IF13を経由して入手する外部の天気情報サイトよりコンクリート打設予定地域の打設予定時の時間ごとの温度のデータを用いて特定するが、ステップM14で取得した環境データからコンクリートの打設時期における気温を特定してもよい。なお、第2特定部112が打設時期の気温を特定する手法はこれに限定されず、他の手法が用いられてもよい。例えば、第2特定部112は、気象庁などが公開している過去の気温のうち、打設時期に対応する月の平均値を打設時期の気温として特定してもよい。なお、打設時期の気温を特定する方法はこれに限定されない。他の例として、第2特定部112は、予定地域における過去の気温を入力データとし、打設時期の気温を出力データとする機械学習により学習された学習済モデルに過去の気温の時系列データを入力することにより得られる気温を打設時期の気温として特定してもよい。
【0052】
ステップM16において、第3特定部117は、打設現場でのコンクリートの受け入れ時のコンクリート温度を特定する。ステップM16は本明細書に係る第3ステップの一例である。本動作例において、第3特定部117は、環境データを入力データとし、打設現場受け入れ時のコンクリート温度を出力データとする機械学習により構築された第3の学習済モデルLM3に環境データを入力することにより得られる打設現場受け入れ時のコンクリート温度を特定する。なお、入力される環境データとして、さらにウエザーサイトや気象庁からコンクリート打設日のコンクリート出荷場所から打設場所までの地域の時間ごとの天候、気温、湿度、風力等のリアルタイムの実績及び予報天気情報を用いてもよい。
【0053】
ステップM17(第4ステップの一例)において、推定部113は、ステップM12で第1特定部111が特定した予定地域の海域の深度ごとの海水温、ステップM15で第2特定部112が取得した予定地域の気温、及びステップM16で第2特定部112が特定した受け入れ時のコンクリート温度に基づき、予定地域の海域における打設後の海中コンクリート温度を推定する。本動作例では、推定部113は、ステップM12で取得した予定地域の海域における深度ごとの海水温、ステップM15で取得した予定地域の気温及びステップM16で特定したコンクリート温度を入力データとし、予定地域における海域での打設後の海中コンクリート温度を出力データとする、第1の学習済モデルLM1を用いて、海中コンクリート温度を推定する。
【0054】
ステップM18において、出力部114は、ステップM17で推定した結果を出力する。ステップM18は、本明細書に係る第5ステップの一例である。出力部114は、一例として、推定結果である海中コンクリート温度を示す情報を表示装置に表示することにより出力してもよく、また、スピーカから音声出力してもよい。また、表示装置による表示は海中コンクリートの温度の数値を表示してもよく、温度ごとの色別表示で表示してもよい。また、出力部114は、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置に推定結果を示す情報を出力してもよく、また、推定結果を示す情報を記憶部12の所定の記憶領域に書き込むことにより情報を出力してもよい。
【0055】
<本実施形態の推定フェーズに係る効果>
ところで、コンクリート構造物の温度応力解析では、打設するコンクリート温度も重要なパラメータとなる。一例として、日本コンクリート工学会のマスコンクリートのひび割れ制御に関する委員会報告(2006年)では、温度応力解析で使用する際の打設するコンクリート温度は、気温の推定値+5℃という値が示されている。一般的にはこの値が用いられるが、水中にコンクリートを打設する場合などコンクリート温度が上記と異なることが懸念される。コンクリート温度は、当日の天候、気温などに依存し、更に、海中に打設する場合には海水温の影響を受ける。
【0056】
本実施形態では、情報処理装置10は、コンクリートを打設する予定地域の海域の海水温、気温、及びコンクリート温度を用いて、予定地域の海域における海中コンクリート温度を推定する。これにより、本実施形態によれば、情報処理装置10は、海中にコンクリートを打設した場合のコンクリート温度をより適切に推定できる。
【0057】
また、本実施形態では、第1特定部111は、コンクリートの打設時期における深度ごとの海水温を、補正係数を用いて補正する。第1特定部111が第2の学習済モデルLM2に入力する海水温の時系列データの測定地点と、コンクリートの打設予定地域の海域のピンポイントのデータでない場合、第2の学習済モデルLM2を用いた推定の精度が充分でない場合もあり得る。それに対し本実施形態では、第1特定部111が補正係数を用いて海水温を補正することにより、海水温の推定精度が向上する。
【0058】
<学習フェーズに係る構成>
次いで、学習フェーズに係る情報処理装置10の構成について、
図1を参照しつつ説明する。情報処理装置10の学習フェーズ実行部150は、
図1に示すように、第1教師データ取得部151、第1生成部152、第2教師データ取得部153、第2生成部154、第3教師データ取得部155、及び第3生成部156を備える。
【0059】
第1教師データ取得部151は、第1の学習済モデルLM1の機械学習に用いられる教師データを取得する。教師データは、(i)コンクリートを打設した地域における打設時期の気温、(ii)コンクリートを打設した地域の海域における打設時期の深度ごとの海水温、(iii)打設現場でコンクリートを受け入れた際のコンクリート温度を含む説明変数と、(iv)コンクリートを海中に打設した際の海中コンクリート温度を含む目的変数とを含む。
【0060】
第1生成部152は、第1教師データ取得部151が取得した教師データを用いて説明変数と目的変数との相関関係を機械学習させた第1の学習済モデルLM1を生成する。
【0061】
第2教師データ取得部153は、第2の学習済モデルLM2の機械学習に用いられる教師データを取得する。教師データは(i)所定の海域における、第1の時期の深度ごとの海水温の時系列データを含む説明変数と、(ii)上記所定の海域における、第2の時期の深度ごとの海水温を含む目的変数とを含む。所定の海域は、一例として、コンクリートを打設した海域である。第1の時期は、第2の時期よりも過去の時期であり、第2の時期は一例として、コンクリートを打設した時期である。第1の時期と第2の時期との差分が、推定フェーズにおける入力データに対応する時期と出力データに対応する時期との時間差となる。
【0062】
第2生成部154は、第2教師データ取得部153が取得した教師データを用いて説明変数と目的変数との相関関係を機械学習させた第2の学習済モデルLM2を生成する。
【0063】
第3教師データ取得部155は、第3の学習済モデルLM3の機械学習に用いられる教師データを取得する。教師データは(i)コンクリートの打設現場の環境を表す環境データを含む説明変数と、(ii)打設現場でのコンクリートの受け入れ時のコンクリート温度を含む目的変数とを含む。
【0064】
第3生成部156は、第3教師データ取得部155が取得した教師データを用いて説明変数と目的変数との相関関係を機械学習させた第3の学習済モデルLM3を生成する。
【0065】
第1教師データ取得部151、第2教師データ取得部153及び第3教師データ取得部155は、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置から教師データを取得してもよく、また、記憶部12の所定の記憶領域から教師データを読み出してもよい。
【0066】
<学習済モデル生成方法の流れ>
図4は、情報処理装置10が実行する学習済モデル生成方法の一例である学習済モデル生成方法M2の流れを示すフロー図である。学習済モデル生成方法M2に含まれる一部のステップは並行して、又は順序を替えて実行されてもよい。
【0067】
ステップM21において、第2教師データ取得部153は、(i)所定の海域における、第1の時期の深度ごとの海水温の時系列データを含む説明変数、及び(ii)上記所定の海域における、第2の時期の深度ごとの海水温を含む目的変数を含む第2の教師データを取得する。第2教師データ取得部153が取得する第1の時期の海水温の時系列データ、及び第2の時期の海水温のデータは、一例として、Copernicus Marine Service、気象庁などが公開している、過去の海水温の時系列データである。
【0068】
ステップM22において、第2生成部154は、第2教師データ取得部153が取得した教師データに含まれる説明変数と目的変数とを用いて説明変数と目的変数との相関関係を機械学習させた第2の学習済モデルLM2を生成する。第2生成部154は一例として、再帰型ニューラルネットワークの学習手法により第2の学習済モデルLM2を生成する。なお、第2の学習済モデルLM2の学習手法は上述したものに限定されず、他の学習手法が用いられてもよい。
【0069】
ステップM23において、第3教師データ取得部155は、(i)コンクリートの打設現場の環境を表す環境データを含む説明変数、及び(ii)打設現場での受け入れ時のコンクリート温度を含む目的変数を含む第3の教師データを取得する。第3教師データ取得部155は、一例として、気象庁などが公開している環境データを、通信IF13又は入出力IF14に接続された他の装置から環境データを取得する。また、第3教師データ取得部155が取得するコンクリート温度は、一例として、打設現場での受け入れ時のコンクリート温度の実測値である。気中のコンクリート温度は受入検査において計測されるため機械学習用のデータとして使用できる。
【0070】
ステップM24において、第3生成部156は、第3教師データ取得部155が取得した教師データに含まれる説明変数と目的変数とを用いて説明変数と目的変数との相関関係を機械学習させた第2の学習済モデルLM2を生成する。第3生成部156は一例として、再帰型ニューラルネットワークの学習手法により第3の学習済モデルLM3を生成する。なお、第3の学習済モデルLM3の学習手法は上述したものに限定されず、他の学習手法が用いられてもよい。
【0071】
ステップM25において、第1教師データ取得部151は、説明変数と目的変数とを含む第1の教師データを取得する。説明変数は、(i)コンクリートを打設した地域における打設時期の気温、(ii)コンクリートを打設した地域の海域における打設時期の深度ごとの海水温、及び(iii)打設現場でコンクリートを受け入れた際のコンクリート温度、を含む。目的変数は、(iv)上記地域においてコンクリートを海中に打設した際の海中コンクリート温度を含む。ステップM25は、本明細書に係る第8ステップの一例である。目的変数に含まれる海中コンクリート温度は、一例として、水中にコンクリートを打設する際にコンクリートに熱電対を埋め込んでおき、埋め込んだ熱電対により測定した温度である。
【0072】
ステップM26において、第1生成部152は、第1教師データ取得部151が取得した教師データに含まれる説明変数と目的変数とを用いて説明変数と目的変数との相関関係を機械学習させた第1の学習済モデルLM1を生成する。第1生成部152は一例として、再帰型ニューラルネットワークの学習手法により第1の学習済モデルLM1を生成する。なお、第1の学習済モデルLM1の学習手法は上述したものに限定されず、他の学習手法が用いられてもよい。ステップM26は本明細書に係る第9ステップの一例である。
【0073】
<本実施形態の学習フェーズに係る効果>
本実施形態によれば、情報処理装置10は、コンクリートを打設した地域の海域の海中における打設時期の深度ごとの海水温、並びに、上記地域における打設時期の気温、及び、コンクリートの打設現場受け入れ時のコンクリート温度を含む説明変数と、上記地域の海域における海中での打設時のコンクリート温度を示す目的変数とを用いて両者の相関関係を機械学習させた第1の学習済モデルLM1を生成する。情報処理装置10が生成した第1の学習済モデルLM1を用いることにより、海中にコンクリートを打設する際のコンクリート温度をより適切に推定できる。
【0074】
〔付記事項1〕
上述の実施形態に係る情報処理装置10の機能は、単体の装置により実現されてもよく、また、複数の装置が協働するシステムにより実現されてもよい。例えば、推定フェーズ実行部110を実装する第1の装置と、学習フェーズ実行部150を実装する第2の装置とが別体の装置として構成され、第1の装置と第2の装置とが協働することにより上述の実施形態10が実現されてもよい。
【0075】
〔付記事項2〕
上述の実施形態では、推定部113は機械学習により構築された第1の学習済モデルLM1を用いて海中に打設する際のコンクリート温度を推定した。推定部113が海中に打設する際のコンクリート温度を推定する手法は上述の実施形態で示したものに限定されない。推定部113は一例として、過去の海水温、過去の気温、コンクリート温度及び海中コンクリート温度を対応付けて記憶したテーブルを参照して、海中に打設する際の海中コンクリート温度を推定してもよい。この場合、推定部113は例えば、過去の海水温、過去の気温、空気中に打設する際のコンクリート温度を取得し、取得した情報の組み合わせを上記テーブルから検索し、検索された組み合わせに対応する海中コンクリート温度を上記テーブルから読み出すことにより、海中に打設した際の海中コンクリート温度を特定する。
【0076】
〔付記事項3〕
第1の学習済モデルLM1、第2の学習済モデルLM2、及び第3の学習済モデルLM3の入力データ及び出力データは、上記実施形態で例示したものに限定されず、他のデータを含んでいてもよい。
【0077】
一例として、第2の学習済モデルLM2の入力データが、過去の海水温の測定地点を表す3次元座標データ、及び海水温を推定する推定地点を表す3次元座標データの一方又は両方を含んでいてもよい。3次元座標データは、平面方向(水平方向)の座標(X軸・Y軸)及び垂直方向の座標(深度)(深度方向をマイナスとするZ軸)を示すデータである。この場合、第2の学習済モデルLM2の教師データに含まれる説明関数は、第1の時期の海水温の測定地点を表す3次元座標データ、及び海水温を推定する推定地点を表す3次元座標データの一方又は両方を含む。
【0078】
また、一例として、第2の学習済モデルLM2の入力データが、全世界における気象現象及び全世界におけるCO2の排出量を示す時系列データを含んでいてもよい。全世界における気象現象は、一例として、エルニーニョ、ラニーニャ、台風若しくはモンスーンである。CO2の排出量を示す時系列データは、一例として、地球全体における年度ごとのCO2の排出量を示す時系列データである。この場合、第2の学習済モデルLM2の教師データに含まれる説明関数は、第1の時期における気象現象及びCO2の排出量を示す時系列データを含む。
【0079】
また、第2特定部112が学習済モデルを用いて気温を特定する場合、この学習済モデルの入力データが、過去の気温の時系列データに加えて、CO2の排出量を示す時系列データを含んでいてもよい。この場合、この学習済モデルの教師データに含まれる説明関数は、過去の気温の時系列データに加えてCO2の排出量を示す時系列データを含む。
【0080】
〔付記事項4〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0081】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置10の制御ブロック(特に推定フェーズ実行部110、学習フェーズ実行部150)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0082】
後者の場合、情報処理装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【符号の説明】
【0083】
10 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信IF
14 入出力IF
110 推定フェーズ実行部
111 第1特定部
112 第2特定部
113 推定部
114 出力部
115 第1取得部
116 第2取得部
117 第3特定部
150 学習フェーズ実行部
151 第1教師データ取得部
152 第1生成部
153 第2教師データ取得部
154 第2生成部
155 第3教師データ取得部
156 第3生成部