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  • 特開-木質材料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030586
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】木質材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 5/00 20060101AFI20230301BHJP
   B27K 5/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B27K5/00 Z
B27K5/02 E
B27K5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135806
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
(72)【発明者】
【氏名】勝野 聖世
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA30
2B230BA01
2B230BA17
2B230EA30
(57)【要約】
【課題】木材から外装材に好適な木質材料を製造するための木質材料の製造方法を提供する。
【解決手段】外装材として使用するための木質材料12を製造する方法であって、木材10の色を白太調に変化させるための所定の波長の可視光Aを所定の時間だけ木材10に対して照射し、白太調に変色した木質材料12を得るようにする。可視光Aとして、400~800nmの範囲の波長の光を3万~25万W/m・時の範囲で照射してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装材として使用するための木質材料を製造する方法であって、
木材の色を白太調に変化させるための所定の波長の可視光を所定の時間だけ木材に対して照射し、白太調に変色した木質材料を得ることを特徴とする木質材料の製造方法。
【請求項2】
400~800nmの範囲の波長の光を3万~25万W/m・時の範囲で照射することを特徴とする請求項1に記載の木質材料の製造方法。
【請求項3】
白太調に変色した木材の表面に塗料または透明硬質材の少なくとも一方を設けることによって、変色防止性に優れた木質材料を得ることを特徴とする請求項1または2に記載の木質材料の製造方法。
【請求項4】
木材が心材であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の木質材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材は、図4に示すように、中心に近い心材部分1と周辺の辺材部分2からなる。心材部分1は、一般に辺材部分2よりも密度が大きく、強度も高く、構造材としてよく使用されている。この心材部分1は、赤身を帯び、含水率が低いうえに腐りにくく、辺材部分2より耐朽性が高い。これに対し、辺材部分2は、白身を帯び、見た目が美しく仕上げ材としてよく使用されている。
【0003】
一方、従来の技術として、木材の変色を防止する方法が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。特許文献1は、木材に含まれるタンニンによる木材表面の変色を防止するための木材表面保護剤を用いるものである。特許文献2は、木材表面に木材の変色防止機能を有する塗膜を形成して変色を防止するものである。また、木材に耐候性を持たせて、屋外で使用する木製品として利用できるようにするための技術が知られている(例えば、特許文献3を参照)。この特許文献3は、木材に、光重合開始剤と熱重合開始剤を添加した樹脂液を含浸させた後、紫外線と熱により木材内で樹脂液を硬化固定して木材プラスチック複合体層を形成し、その後、木材の表面に塗装を施すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-53038号公報
【特許文献2】特開平11-34013号公報
【特許文献3】特開2002-103309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、建築用木材として利用頻度の高いスギについて、心材部分(赤身)と辺材部分(白太)のキセノン光による促進耐候性試験を行った。試験結果を図5に示す。この図より、心材部分(赤身)と辺材部分(白太)で、変色状況が異なることは明らかである。心材部分に対して辺材部分は色差変化が小さい。木質外装に必要な変色防止の点では、辺材部分のような白身が有効である。
【0006】
しかし、辺材部分は、柔らかく、害虫等の被害に遭いやすい。辺材部分を木質外装材に使用することは、耐朽性の点で比較的不利である。耐朽性の点では、心材部分を木質外装材に使用することが好ましいといえる。このため、耐朽性に優れる心材部分(赤身)を白身化して、仕上げ材などの外装材として使用可能にする技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、木材から外装材に好適な木質材料を製造するための木質材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る木質材料の製造方法は、外装材として使用するための木質材料を製造する方法であって、木材の色を白太調に変化させるための所定の波長の可視光を所定の時間だけ木材に対して照射し、白太調に変色した木質材料を得ることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法は、上述した発明において、400~800nmの範囲の波長の光を3万~25万W/m・時の範囲で照射することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法は、上述した発明において、白太調に変色した木材の表面に塗料または透明硬質材の少なくとも一方を設けることによって、変色防止性に優れた木質材料を得ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法は、上述した発明において、木材が心材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る木質材料の製造方法によれば、外装材として使用するための木質材料を製造する方法であって、木材の色を白太調に変化させるための所定の波長の可視光を所定の時間だけ木材に対して照射し、白太調に変色した木質材料を得るので、木材から外装材に好適な木質材料を得ることができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法によれば、400~800nmの範囲の波長の光を3万~25万W/m・時の範囲で照射するので、外装材に好適な木質材料を比較的短期間で製造することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法によれば、白太調に変色した木材の表面に塗料または透明硬質材の少なくとも一方を設けることによって、変色防止性に優れた木質材料を得るので、外装材に好適で変色防止性に優れた木質材料を製造することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法によれば、木材が心材であるので、木材の心材部分から外装材に好適な木質材料を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る木質材料の製造方法の実施の形態を示す説明図である。
図2図2は、キセノン光照射後の木材(心材)の色差変化を示す図である。
図3図3は、木材(辺材)の色差変化の一例を示す図である。
図4図4は、従来の木材の横断面図である。
図5図5は、従来の木材の色差変化(心材と辺材)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る木質材料の製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る木質材料の製造方法は、外装材として使用するための木質材料を製造する方法であって、木材の心材10の表面の色(赤身)を白太調に変化(白身化)させるための可視光Aを所定の時間だけ心材10に対して照射し、白太調に変色した木質材料12を得るものである。得られる木質材料12の色は白太調のため、仕上げ材などの木質外装材として使用するのに好適である。
【0019】
赤身の心材10を白身化するために照射する可視光Aは、例えばキセノン光や太陽光などを用いることができる。可視光Aおよびその積算光量は、例えば、400~800nmの波長の光を3万~25万W/m・時の範囲に設定することが好ましい。このような範囲に設定することで、外装材に好適な木質材料12を比較的短期間で製造することができる。
【0020】
本実施の形態によれば、可視光を比較的短時間(例えば、数日~数か月程度)照射することで赤身の心材を白身化(白太調に変化)することができ、白身化させた状態を保持することにより、色調の変化が小さい木質材料を得ることができる。したがって、木材の心材部分から、白身の仕上げ材のような外装材に好適な木質材料を得ることができる。また、心材の適用範囲が広がる。心材の適用により、木質外装材の基本的な耐朽性や強度を高めることができる。また、得られた木質材料を元から白身の木材と混在して使用しても全体として変化が少ない。
【0021】
図2は、キセノン光源からの光を照射した後のスギ心材を屋外暴露して、その色差変化を示したグラフである。図より、色差は、例えば5以下の殆ど変色がわからないといわれる範囲にあることがわかる。これにより、心材は、可視光の初期照射によって辺材のように白身化することがわかる。また、木材そのものの変色防止性も高まることがわかる。なお、紫外線の照射強度を120W/mに設定したときのキセノン光源(ランプ)の可視光(波長:400~800nm)の照射強度は約1120W/mであり、実験では照射250時間で変化が生じているので、1120W/m×250時間=28万W/m・時となる。図2の例では、この数値を上限値として、これより少ない照射に設定している。
【0022】
心材の白身化は、さらなる変色防止性の向上のために、塗料と透明硬質材の少なくとも一方の変色防止材を付加することを可能とする。すなわち、可視光の照射により白身化した心材の表面に対し、塗料と透明硬質材の少なくとも一方を設けてもよい。このようにすれば、色差変化をより一層抑えることができ、変色防止性が向上する。したがって、外装材に好適で変色防止性に優れた木質材料を得ることができる。
【0023】
参考として、スギ辺材の屋外暴露試験結果を図3に示す。キセノン光の照射条件は図5の場合と同じである。試験体1は、何ら処理を施していない辺材、試験体2は、キセノン光を照射した後の辺材、試験体3は、表面に変色防止材を設けた辺材、試験体4は、キセノン光を照射した後の表面に変色防止材を設けた辺材である。変色防止材は、塗料と透明硬質膜(シート)と接着層で構成される。この図より、試験体4は、試験体3に比べて、色差変化をより抑えており、変色防止性に優れることがわかる。また、試験体2、3は、試験体1に比べて、色差変化を抑えることがわかる。
【0024】
なお、上記の実施の形態においては、心材10の表面の色を白太調に変化させるための可視光Aを所定の時間だけ心材10に対して照射し、白太調に変色した木質材料12を得る場合を例にとり説明したが、本発明の木材は心材に限るものではない。例えば、木材の辺材の表面の色を白太調に変化させるための可視光を所定の時間だけ辺材に対して照射し、白太調に変色した木質材料を得るようにしてもよい。
【0025】
以上説明したように、本発明に係る木質材料の製造方法によれば、外装材として使用するための木質材料を製造する方法であって、木材の色を白太調に変化させるための所定の波長の可視光を所定の時間だけ木材に対して照射し、白太調に変色した木質材料を得るので、木材から外装材に好適な木質材料を得ることができる。
【0026】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法によれば、400~800nmの範囲の波長の光を3万~25万W/m・時の範囲で照射するので、外装材に好適な木質材料を比較的短期間で製造することができる。
【0027】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法によれば、白太調に変色した木材の表面に塗料または透明硬質材の少なくとも一方を設けることによって、変色防止性に優れた木質材料を得るので、外装材に好適で変色防止性に優れた木質材料を製造することができる。
【0028】
また、本発明に係る他の木質材料の製造方法によれば、木材が心材であるので、木材の心材部分から外装材に好適な木質材料を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る木質材料の製造方法は、建築分野に有用であり、特に、木材の心材部分から外装材に好適な木質材料を得るのに適している。
【符号の説明】
【0030】
10 心材(木材)
12 木質材料
A 可視光
図1
図2
図3
図4
図5