(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030590
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】鉄道車両構体、及び、鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 17/06 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B61D17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135811
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大橋 健悟
(57)【要約】
【課題】裾絞り形状の鉄道車両構体において、少ない工数で妻構体を製作すること。
【解決手段】妻外板21と側外板40とを備え、妻外板21が、隣接する側外板40の内面に沿うように車体幅方向端部を車体上下方向に屈曲形成した補強部215A,215Bを備える鉄道車両構体9において、側外板40の腰板下部42が車内側に曲げ形成され、下部車体幅が上部車体幅より小さい裾絞り形状をなし、車体上下方向に沿って補強部215A,215Bの内側に一体的に設置され、側外板40の曲げ部分に対応して下部が車内側に屈折する隅柱25A,25Bを有し、妻外板21は、側外板40の腰板下部42から下端部43に対応する領域で補強部215A,215Bが欠落する欠落部217A,217Bを有し、隅柱25A,25Bを欠落部217A,217Bから露出させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妻外板と側外板とを備え、前記妻外板が、隣接する側外板の内面に沿うように車体幅方向端部を屈曲形成して設けられ、前記側外板に接合される補強部を備える鉄道車両構体において、
前記側外板の下部が車内側に曲げ形成され、下部車体幅が上部車体幅より小さい裾絞り形状をなし、
車体上下方向に沿って前記補強部の内側に一体的に設置され、前記側外板の曲げ部分に対応して下部が車内側に屈折する隅柱を有し、
前記妻外板は、前記側外板の曲げ部分から下端部に対応する領域で前記補強部が欠落する欠落部を有すること、
を特徴とする鉄道車両構体。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両構体において、
前記隅柱は、板材を屈曲形成したもの、あるいは、押出成形したものであること、
を特徴とする鉄道車両構体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する鉄道車両構体において、
前記隅柱は、前記欠落部の縁部が当接する段差を有し、
前記段差は、前記妻外板あるいは前記補強部の板厚と同じ大きさであること、
を特徴とする鉄道車両構体。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載する鉄道車両構体において、
前記隅柱は、車内側に屈折し始める位置で上柱部材と下柱部材に分割され、
前記下柱部材が前記側外板の曲げに対応して前記上柱部材に対して屈折するように前記上柱部材と前記下柱部材が溶接されていること、
を特徴とする鉄道車両構体。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載する鉄道車両構体において、
前記隅柱は、前記欠落部から外部に露出する部分に、前記妻外板と同様の表面処理が施されていること、
を特徴とする鉄道車両構体。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つに記載する鉄道車両構体において、
前記欠落部の縁部に沿って水密処理が施されていること、
を特徴とする鉄道車両構体。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つに記載する鉄道車両構体を備えることを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、妻外板と側外板を備える鉄道車両構体、及び、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、妻外板と側外板を備える鉄道車両構体が知られている。例えば、特許文献1には、妻外板の車体幅方向両端部を側外板の内面に沿うように屈曲させて、側外板を接合するための補強部を形成することにより、妻外板と側外板との接合を容易に行うと共に、雨水が妻外板側へ浸入することを防止する鉄道車両構体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道車両構体には、車室を広げるために、側外板の下部を車内側に曲げ形成し、下部車体幅を上部車体幅より小さくした裾絞り形状の鉄道車両構体がある。裾絞り形状の鉄道車両構体に、特許文献1に記載する妻構体の構造を適用する場合、妻外板を両側端部縦方向に隣接する側構体の側外板内面に沿う方向の側外板接合用の補強部を曲げ加工する際に、妻外板の車体幅方向端部を側外板の曲げ部分に沿うように車内側に屈折させることができなかった。
【0005】
これに対して、妻外板の補強部の屈曲形成したうち、車内側に屈折する屈折部分を切り取り、側外板の曲げ部分に沿うように形成された別の外板部材を溶接により付け換える手法が考えられる。
【0006】
しかし、この手法では、車両走行時や車両洗浄時に、別の外板部材が妻外板から脱落しないように、溶接する必要がある。この場合、別の外板部材は、妻外板の車外側の最表面である見付け面になるため、溶接ビードに平滑処理やヘアライン仕上げを施す必要がある。よって、この手法は、妻構体の製作に工数がかかる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、裾絞り形状の鉄道車両構体において、少ない工数で妻構体を製作することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、(1)妻外板と側外板とを備え、前記妻外板が、隣接する側外板の内面に沿うように車体幅方向端部を屈曲形成して設けられ、前記側外板に接合される補強部を備える鉄道車両構体において、前記側外板の下部が車内側に曲げ形成され、下部車体幅が上部車体幅より小さい裾絞り形状をなし、車体上下方向に沿って前記補強部の内側に一体的に設置され、前記側外板の曲げ部分に対応して下部が車内側に屈折する隅柱を有し、前記妻外板は、前記側外板の曲げ部分から下端部に対応する領域で前記補強部が欠落する欠落部を有すること、を特徴とする。
【0009】
上記構成の鉄道車両構体は、妻外板の補強部の内側に一体的に設置された隅柱が、妻外板に設けた欠落部から外部に露出する。補強部は、側外板の曲げ部分から下端部までの領域で欠落し、隅柱は、側外板の曲げ部分に対応して下部が車内側に屈折している。そのため、妻外板の車幅方向端部は、補強部のうち側外板の曲げ部分に対応する部分を切り取って別の外板部材を溶接で付け換え、溶接ビード部分に平滑処理やヘアライン仕上げを施す手法を用いなくても、補強部の内側に隅柱を一体的に設置するだけで、側外板の曲げ部分に対応して下部を車内側に曲げ、側外板に接合可能な構造になる。よって、上記構成によれば、裾絞り形状の鉄道車両構体において、少ない工数で妻構体を製作することができる。
【0010】
(2)(1)に記載する鉄道車両構体において、前記隅柱は、板材を屈曲形成したもの、あるいは、押出成形したものであること、が好ましい。
【0011】
上記構成の鉄道車両構体は、補強部の内面に沿うように隅柱を形成したり、側外板の曲げに応じて隅柱の下部を車内側に屈折させたりしやすい。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載する鉄道車両構体において、前記隅柱は、前記欠落部の縁部が当接する段差を有し、前記段差は、前記妻外板あるいは前記補強部の板厚と同じ大きさであること、が好ましい。
【0013】
上記構成の鉄道車両構体は、補強部の位置と、欠落部から露出する隅柱の位置と、を簡単に揃え、隅柱が違和感なく見付け面を形成できる。
【0014】
(4)(1)から(3)の何れか1つに記載する鉄道車両構体において、前記隅柱は、車内側に屈折し始める位置で上柱部材と下柱部材に分割され、前記下柱部材が前記側外板の曲げに対応して前記上柱部材に対して屈折するように前記上柱部材と前記下柱部材が溶接されていること、が好ましい。
【0015】
上記構成の鉄道車両構体は、側外板の曲げに対応して屈折する隅柱を簡単に製作することができる。また、上柱部材と下柱部材とを溶接する部分が妻外板に隠れるので、隅柱の溶接部分に溶接ビードの平滑処理やヘアライン仕上げなどを行う範囲を最小限とすることができ、構体の組立に掛かる工数を抑制できる。
【0016】
(5)(1)から(4)の何れか1つに記載する鉄道車両構体において、前記隅柱は、前記欠落部から外部に露出する部分に、前記妻外板と同様の表面処理が施されていること、が好ましい。
【0017】
上記構成の鉄道車両構体は、欠落部と隅柱の境目が目立ちにくい。
【0018】
(6)(1)から(5)の何れか1つに記載する鉄道車両構体において、前記欠落部の縁部に沿って水密処理が施されていること、が好ましい。
【0019】
上記構成の鉄道車両は、欠落部と隅柱との間の隙間をなくし、雨水や車両洗浄水等が車内側に浸入することを防止できる。
【0020】
本発明の別態様は、(1)から(6)の何れか1つに記載する鉄道車両構体を備えることを特徴とする鉄道車両である。
【発明の効果】
【0021】
従って、本発明によれば、裾絞り形状の鉄道車両構体において、少ない工数で妻構体を製作することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両構体を使用する鉄道車両の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る鉄道車両構体、及び、鉄道車両の実施形態について図面に基づいて説明する。本明細書では、妻外板の車体幅方向端部を側外板に接合し、前記側外板の下部が車内側に曲げ形成され、下部車体幅が上部車体幅より小さい裾絞り形状の鉄道車両構体、及び、鉄道車両について開示する。
【0024】
<鉄道車両1の概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両構体9を使用する鉄道車両1の外観斜視図である。鉄道車両1は、鉄道車両構体9の前後下面に台車10,10が取り付けられている。鉄道車両構体9は、一対の妻構体2,2と、一対の側構体4,4と、屋根構体6と、台枠8と、を備える。鉄道車両構体9は、下部車体幅が上部車体幅より小さくされた裾絞り形状をなし、車両限界を満たしつつ、車内空間が広げられている。
【0025】
具体的に、台枠8は、車両限界をクリアするように設けられている。一対の側構体4,4は、台枠8の車体幅方向両端部に配置されている。側構体4は、戸45や窓46が取り付けられ、車外側に側外板40が設けられている。側構体4および側外板40は、車体上下方向にストレート状に設けられており、腰板下部42が車内側に曲げ形成されている。なお、腰板下部42は「側外板の下部」の一例である。以下、側外板40の腰板下部42が車内側に曲がる曲げ部分を、「側外板曲げ部分P41」とする。
【0026】
一対の妻構体2,2は、台枠8の車長方向両端部に配置されている。妻構体2は、中央部に貫通口27を備え、車外側に妻外板21が設けられている。妻構体2及び妻外板21は、側構体4及び側外板40に対応して、車体幅方向両端部が車体上下方向にストレート状に設けられ、車体幅方向端部の下部が車内側に屈折(傾斜)している。屋根構体6は、一対の妻構体2,2と一対の側構体4,4の上部に配置されている。以下、妻外板21の車体幅方向端部(後述する板材211A,211Bの端部)が車内側に屈折する曲げ部分を、「妻外板曲げ部分P1A,P1B」とする。
【0027】
妻構体2(妻外板21)と側構体4(側外板40)とが接合する接合部90には、それぞれ、隅柱25(25A,25B)が車体上下方向に沿って設けられている。例えば、隅柱25A,25Bは、妻外板21の車体幅方向両端部の内側に設置されており、側外板曲げ部分P41に対応して、下部が車内側に屈折している。妻外板21の車体幅方向端部は、側外板40の側外板曲げ部分P41から下端部43までに対応する領域を切り欠かれ、欠落部217A,217Bが設けられている。その欠落部217A,217Bから、隅柱25A,25Bが外部に露出して、妻構体2の車外側の最表面となる見付け面を構成している。以下、隅柱25A,25Bが車内側に屈折する曲げ部分を、「隅柱曲げ部分P11A,P11B」とする。
【0028】
<妻構体2の構成について>
図2は、組立後の妻構体2を車内側から見た図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、
図2のB-B断面図である。
図5は、妻外板21を車外側から見た正面図である。
【0029】
図2~
図4に示すように、妻構体2は、妻外板21と、妻外板21の車内側に設けられるシャープレート23と、シャープレート23の車内側に設けられる複数の補強部材と、一対の隅柱25A,25Bと、上部フレーム26と、を備えている。
【0030】
図2に示すように、複数の補強部材は、一対の妻柱224,225と、鴨居222と、戸袋横桟221Aと、戸当たり横桟221Bと、横骨223A,223Bを含む。シャープレート23は、複数の補強部材や部品を取り付けるための取付孔や、大小複数の開口部を備え、補強部材や部品の取り付け位置を示す設置基準として利用される。
【0031】
図5に示すように、妻外板21は、成形性や加工性等を考慮して両側および中央上部の3枚の板材211A,211B,212を組み合わせて構成されている。中央部には、貫通口27を形成するための開口213が設けられている。
【0032】
図3に示すように、妻外板21(板材211A,211B)は、補強部215A,215Bと補強部216A,216Bが車体長さ方向車内側に屈曲形成されている。補強部216A,216Bは、貫通口27の車体幅方向縁部に沿って設けられている。補強部215A,215Bは、妻外板21の車体幅方向両端部(板材211A,211B)を車体上下方向に沿って車内側(側構体の方向)に曲げることで、設けられている。
【0033】
図5に示すように、隅柱25A,25Bは、板材を屈曲形成したもの、あるいは、押出成形したものであり、妻外板21(板材211A,211B)の内面と補強部215A,215Bの内面に沿うように設置されている。隅柱25A,25Bの上端部は、アーチ型の上部フレーム26により繋がれている。上部フレーム26は、妻外板21の上端部の車内側に設置されている。
【0034】
<補強部215と隅柱25の具体的な構成>
補強部215と隅柱25の構成を具体的に説明する。
図6は、
図5のC部拡大図である。
図7は、
図6のF-F断面図である。
図8は、
図6のG-G断面図である。
図9は、
図6のH-H断面図である。
図10は、隅柱25の上面図である。
図11は、隅柱25の隅柱曲げ部分P11付近の拡大図である。以下では、特に区別する必要がない場合、各符号の添え字「A」、「B」を適宜省略する。また、
図6及び
図9に記載する水密処理部32は、見やすいように強調して記載している。
【0035】
図6及び
図7に示すように、補強部215は、エネルギー吸収部2152と、当接部2153とを備えている。当接部2153は、側外板40の内面に沿うように、妻外板21(板材211)に対して直角方向に設けられている。エネルギー吸収部2152は、妻外板21と当接部2153に対してほぼ同じ角度で傾斜するように設けられ、すれ違う車両の一方が脱線して他方の車両の一部に衝突するオフセット衝突時の衝突エネルギーを吸収し、鉄道車両構体9が車内側に変形するのを阻止する。
【0036】
図5及び
図6に示すように、妻外板21は、妻外板曲げ部分P1から下端部P2まで、補強部215が欠落する欠落部217を備えている。
図6に示すように、隅柱25は、欠落部217の上側縁部に対応する位置、換言すると、下部が車内側に屈折し始める位置で、上柱部材251と下柱部材252に分割されている。
【0037】
図7~
図9に示すように、上柱部材251と下柱部材252は、妻外板21の内面と補強部215の内面に接合するように、板材を屈曲形成したものである。上柱部材251と下柱部材252は、第1部分2511,2521と、第2部分2512,2522と、第3部分2513,2523と、第4部分2514,2524と、を備えている。隅柱25は、平面視において、第3部分2513,2523が、第1部分2511,2521に対して、直角方向に設けられている。そして、第2部分2512,2522は、それぞれ、第1部分2511,2521と第3部分2513,2523に対してほぼ同じ角度で傾斜するように設けられている。第4部分2514,2524は、第3部分2513,2523に対してほぼ直角に屈曲している。
【0038】
上柱部材251と下柱部材252は、ほぼ同じ板厚を有する。本形態では、上柱部材251と下柱部材252の平均板厚は、妻外板21若しくは補強部215の平均板厚の約2倍にされている。なお、隅柱25の板厚は、強度等の条件に応じて適宜設定してよい。例えば、下柱部材252の板厚を上柱部材251の板厚より厚くするなど、上柱部材251と下柱部材252の板厚が異なってもよい。
【0039】
図11に示すように、上柱部材251と下柱部材252は、突き合わせ溶接されて、1本の隅柱25を構成する。上柱部材251は、上端部から下端部までストレート状に設けられている。これに対して、下柱部材252は、ストレート状に設けられているが、上端部が側外板40の側外板曲げ部分P41に対応するように曲げ加工され、隅柱曲げ部分P11が形成されている。よって、上柱部材251の下端面と下柱部材252の上端面とを突き合わせ溶接するだけで、側外板40の側外板曲げ部分P41に対応して屈折する隅柱25を簡単に製作することができる。
【0040】
図10及び
図11に示すように、下柱部材252は、第2部分2522と第3部分2523を上柱部材251の第2部分2512と第3部分2513に対して、車体幅方向車外側に、補強部215の厚さ分だけずらした状態で、上柱部材251に接合されている。第1部分2511,2521と第4部分2514,2524は、外側に位置する面の位置が揃えられている。これにより、隅柱25は、第2部分2522の上端面2522aと第3部分2523の上端面2523aにより、補強部215の板厚分の段差256が隅柱曲げ部分P11に設けられている。
【0041】
図6に示すように、隅柱25は、段差256が欠落部217の上側縁部に当接される。そして、
図7および
図8に示すように、隅柱25は、上柱部材251の第1部分2511と下柱部材252の第1部分2521が車外側に妻外板21の内面に当接され、上柱部材251の第2部分2512と第3部分2513が補強部215のエネルギー吸収部2152の内面と当接部2153の内面に当接される。この状態で、隅柱25は妻外板21と補強部215に接合されている。
【0042】
図6及び
図8に示すように、隅柱25は、段差256により、欠落部217から露出する第2部分2522と第3部分2523の位置が、補強部215のエネルギー吸収部2152と当接部2153の位置に揃えられている。そのため、隅柱25は、妻外板21及び補強部215との間に殆ど段差を生じることなく欠落部217から露出し、違和感なく見付け面を形成する。なお、第4部分2514,2524は、妻外板21や補強部215に当接しないが、上柱部材251と下柱部材252の曲げ強度を向上させる。
【0043】
ここで、上柱部材251と下柱部材252との突き合わせ溶接面は、妻外板21および補強部215の裏側に隠れる。そのため、突き合わせ溶接面は、平滑処理やヘアライン仕上げなどの後処理を必要とせず、あるいは、平滑処理やヘアライン仕上げなどを行う範囲を最小限とすることができ、構体の組立に掛かる工数が抑制されている。
【0044】
下柱部材252は、車体外側に位置する面に、妻外板21と同様の表面処理が施されており、妻外板21と隅柱25との境目が目立ちにくくされている。表面処理は、少なくとも、欠落部217から外部に露出する部分に施されている。表面処理は、例えば、ヘアライン仕上げである。ヘアラインは、妻外板21に形成したヘアラインと同一方向に形成するとよい。なお、表面処理は、塗装等、ヘアライン仕上げと異なる方法で施されてもよい。
【0045】
図6及び
図9に示すように、妻外板21は、欠落部217の縁部を隅柱25に隅肉溶接することで水密処理部32が設けられ、雨水や洗浄水などが欠落部217と隅柱25との隙間から車内側に浸入することを防止されている。隅肉溶接は「水密処理」の一例である。なお、水密処理は、シール剤の塗布など、隅肉溶接と異なる方法で施してもよい。
【0046】
<鉄道車両構体9の製造手順>
妻構体2は、妻外板21の各板材211A,211B,212がプレス加工等で所定形状にそれぞれ成形される。板材211A,211Bは、曲げ加工により、補強部215A,215Bが形成される。また、板材211A,211Bは、打ち抜き加工や切断加工などにより、欠落部217A,217Bが設けられる。各板材211A,211B,212を溶接で連結することにより、妻外板21が組み上げられる。
【0047】
隅柱25A,25Bは、それぞれ、上柱部材251と下柱部材252が、板材をプレス加工等で所定形状にそれぞれ形成される、あるいは、押出成形にて所定の形状とすることにより、製作されている。下柱部材252は、車外側となる面に、表面処理が施される。上柱部材251と下柱部材252は、突き合わせ溶接される。妻外板21は、車体幅方向両端部に隅柱25A,25Bが溶接にて接合される。
【0048】
例えば、妻外板21と隅柱25は、妻外板21の内面と、補強部215のエネルギー吸収部2152と、当接部2153に対して、隅柱25の第1部分2511,2521と、第2部分2512と、第3部分2513とをそれぞれ当接させることにより、車体幅方向に位置決めされる。さらに、妻外板21と隅柱25は、欠落部217の上側縁部に対して段差256を突き当てることで、車体上下方向に位置決めされる。この状態で、妻外板21と隅柱25を溶接で接合する。これにより、隅柱25は、妻外板21と同様に表面処理を施された下柱部材252の第2部分2522及び第3部分2523が、妻外板21の欠落部217から補強部215のエネルギー吸収部2152及び当接部2153と同一面となるように露出し、補強部215から連続的に見付け面を形成する。
【0049】
そして、欠落部217の縁部を欠落部217から露出する隅柱25に隅肉溶接し、水密処理部32を形成する。
【0050】
隅柱25A,25Bが接合された妻外板21は、上部フレーム26が上端部P3に溶接される。また、妻構体2は、シャープレート23をプレス加工等で所定形状に成形するとともに、NC加工機等を使用して開口部や取付孔を形成する。さらに、各補強部材や各部品をそれぞれ作成し、シャープレート23に溶接する。そして、各補強部材や各部品を溶接されたシャープレート23を妻外板21に溶接にて接合する。これにより、妻構体2が組み上げられる。
【0051】
側構体4は、側外板40や骨部材などを組み上げて形成され、戸45や窓46が取り付けられる。鉄道車両構体9は、台枠8の車長方向端部に妻構体2を接合し、台枠8の車体幅方向両端部に側構体4を接合する。
【0052】
妻外板21は、補強部215の当接部2153と、欠落部217から露出する隅柱25の第3部分2523により、車体幅方向端部が側外板40の側外板曲げ部分P41に対応して車内側に屈曲しているので、雨水や車両洗浄液等が車内側に浸入しないように、側外板40が接合される。
【0053】
また、妻外板21は、欠落部217から露出する隅柱25の第1部分2521と第2部分2522の外面の位置が、妻外板21およびエネルギー吸収部2152の外面の位置に揃えられているので、接合部90が美観良く設けられる。妻構体2と側構体4を台枠8に接合したら、屋根構体6を妻構体2と側構体2に接合する。
【0054】
<まとめ>
以上説明したように、本形態の鉄道車両構体9は、妻外板21の補強部215の内側に一体的に設置された隅柱25が、妻外板21に設けた欠落部217から外部に露出する。補強部215は、側外板40の側外板曲げ部分P41から下端部43までの領域で欠落し、隅柱25は、側外板40の側外板曲げ部分P41に対応して下部が車内側に屈折している。そのため、妻外板21の車幅方向端部は、補強部のうち側外板曲げ部分P41に対応する部分を切り取って別の外板部材を溶接で付け換え、溶接ビード部分の平滑処理やヘアライン仕上げを施す手法を用いなくても、補強部215の内側に隅柱を一体的に設置するだけで、側外板40の側外板曲げ部分P41に対応して下部を車内側に曲げ、側外板40に接合可能な構造になる。よって、本形態によれば、裾絞り形状の鉄道車両構体9において、少ない工数で妻構体2を製作することができる。また、妻外板21と側外板41とを容易に接合できる。
【0055】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。例えば、
図12及び
図13に示す補強部215xと隅柱25xのように、エネルギー吸収部2152を省略し、当接部2153を妻外板21xに直接接続したり、上柱部材251xと下柱部材252xの第2部分2512,2522を省略し、第3部分2513,2523を第1部分2511,2521に直接接続したりする構成にしてもよい。
【0056】
例えば、隅柱25は、断面矩形状の中空柱材で構成してもよい。但し、上記実施形態のように、板材を屈曲形成して隅柱25を構成することで、補強部の内面に沿うように隅柱25を形成したり、側外板40が車内側に曲がる側外板曲げ部分P41に応じて隅柱25の下部を車内側に屈折させたりしやすい。また、隅柱25を軽量化しつつ、オフセット衝突に対する隅柱25の強度を確保できる。
【0057】
例えば、
図14に示す隅柱25yのように、
図11に示す段差256はなくてもよい。この場合、隅柱25yは、欠落部217から外部に露出する部分が補強部215より低い位置になるが、その段差は補強部215の板厚分と小さく、目立ちにくい。また、欠落部217と隅柱25yとの間に水密処理部32を設ければ、雨水や車両洗浄水等の浸入を防ぐことができる。ただし、上記実施形態のように、欠落部217の上側縁部が当接する段差256を、妻外板21または補強部215の板厚と同じ大きさで隅柱25に設けることで、補強部215の位置と、欠落部217から露出する隅柱25の位置と、を揃え、隅柱25が違和感なく見付け面を形成できる。また、補強部215および隅柱25と側外板40との接合面に水密処理を行わない場合でも、雨水等が車内側へ浸入することを抑制できる。
【0058】
例えば、
図14に示すように、第1部分25yaと、第2部分25ybと、第3部分25ycと、図示しない第4部分と、を備える隅柱25yを、1部品で構成してもよい。但し、上記実施形態のように、隅柱25が車内側に屈折し始める位置で上柱部材251と下柱部材252に分割され、下柱部材252が側外板40の曲げに対応して上柱部材251に対して屈折するように上柱部材251と下柱部材252が溶接されていることで、側外板40の側外板曲げ部分P41に対応して屈折する隅柱25を簡単に製作することができる。また、構体の組立に掛かる工数を抑制できる。1部品で隅柱25を構成する場合に、隅柱曲げ部分P11に段差256を設けてもよい。
【0059】
例えば、表面処理を省略してもよい。但し、上記実施形態の隅柱25のように、欠落部217から外部に露出する部分に妻外板と同様の表面処理が施されることにより、補強部215と隅柱25との境目が目立ちにくくなり、接合部90の美観がよい。
【0060】
例えば、水密処理を省略してもよい。但し、上記実施形態の隅柱25のように、欠落部217に沿って隅肉溶接等の水密処理を施すことにより、欠落部217と隅柱25との間の隙間をなくし、雨水や車両洗浄水等が車内側に浸入することを防止できる。例えば、水密処理が隅肉溶接である場合、半永久的に水密処理部32を維持し、雨水等の侵入を防止できる。
【0061】
上記実施形態で説明した鉄道車両構体9の製造手順は、一例であり、本発明の本質に矛盾が生じない範囲で製造手順を変更してもよい。隅柱25の第4部分2514,2524を省略してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 鉄道車両
9 鉄道車両用構体
21 妻外板
25A,25B,25 隅柱
40 側外板
42 腰板下部
43 下端部
215A,215B,215 補強部
217A,217B,217 欠落部