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特開2023-30603射出成形機および射出成形機の部品の寿命予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030603
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】射出成形機および射出成形機の部品の寿命予測方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135825
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 愛
(72)【発明者】
【氏名】下中 保知
(72)【発明者】
【氏名】竹堂 公貴
(72)【発明者】
【氏名】大川内 亮
(72)【発明者】
【氏名】江上 卓也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和也
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM14
4F206AM22
4F206AM24
4F206AP15
4F206AQ03
4F206AR11
4F206AR19
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP12
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP24
4F206JQ01
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】射出成形機に含まれる部品の寿命を簡単な構成で予測できる射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機は、電力のオンオフを行なうように構成される電気部品(SW1~SWn)と、電気部品の制御を行なう制御装置40とを備える。制御装置40は、電気部品(SW1~SWn)に接続される負荷の大きさを記憶する記憶部44と、記憶部44に記憶された負荷の大きさと電気部品がオンオフ動作を行なった動作回数とに基づいて、電気部品(SW1~SWn)の寿命を予測する演算部41とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の導通と非導通とを切替えるように構成される電気部品と、
前記電気部品の制御を行なう制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記電気部品に接続される負荷の大きさを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記負荷の大きさと前記電気部品が導通状態と非導通状態との間で遷移した動作回数とに基づいて、前記電気部品の寿命を予測する演算部とを含む、射出成形機。
【請求項2】
前記記憶部は、前記負荷の大きさの複数の区分にそれぞれ対応する複数の寿命回数を予め記憶しており、
前記演算部は、前記複数の寿命回数のうちの前記記憶部に記憶された負荷の大きさに対応する寿命回数に占める前記動作回数の比率である消耗度合いに基づいて、前記電気部品の寿命を予測する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
ユーザが外部接続機を接続する入出力基板をさらに備え、
前記電気部品は、前記入出力基板に搭載されたスイッチ素子であり、
前記演算部は、ユーザが外部接続機を変更した場合には、前記記憶部に記憶された負荷の大きさを更新し、
前記演算部は、ユーザが外部接続機を変更する前までに算出された消耗度合いに、ユーザが外部接続機を変更した後に登録された負荷の大きさに対応する消耗度合いを積算する、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記射出成形機は、
ユーザが外部接続機を接続する入出力基板をさらに備え、
前記電気部品は、前記入出力基板に搭載された第1スイッチ素子であり、
前記射出成形機は、
前記入出力基板に搭載された第2スイッチ素子をさらに備え、
前記演算部は、前記第2スイッチ素子が未使用であり、かつ、前記第2スイッチ素子に対応する消耗度合いが前記第1スイッチ素子に対応する消耗度合いよりも低い場合には、前記第1スイッチ素子に代えて前記第2スイッチ素子を使用可能であることをユーザに報知する、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項5】
以下のステップを含む、射出成形機の部品の寿命予測方法:
(a)電力の導通と非導通とを切替えるように構成される電気部品に接続される負荷の大きさを記憶するステップ;および、
(b)記憶された前記負荷の大きさと前記電気部品が導通状態と非導通状態との間で遷移した動作回数とに基づいて、前記電気部品の寿命を予測するステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機および射出成形機の部品の寿命予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機等の工場で用いられる成形機では、部品の故障に起因するマシントラブルが発生することがある。このようなマシントラブルを未然に防ぐため、部品を適切な時期に交換するなどの管理が必要である。
【0003】
特開2017-087587号公報(特許文献1)には、射出成形に用いられる部品の情報を管理する、射出成形用情報管理装置が開示されている。この装置では、1回のショットで部品にかかる負荷を表す物理量の値とその値でのショット回数との積の、部品の使用開始からの合計値を算出し、部品の劣化度を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-087587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の射出成形機では、部品の劣化度を算出するために用いる物理量を検知するためのセンサが必要である。このようなセンサを各所に取付けると、射出成形機の製造コストが増加してしまう。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、射出成形機に含まれる部品の寿命を簡単な構成で予測できる射出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態による射出成形機は、電力の導通と非導通とを切替えるように構成される電気部品と、電気部品の制御を行なう制御装置とを備える。制御装置は、電気部品に接続される負荷の大きさを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された負荷の大きさと電気部品が導通状態と非導通状態との間で遷移した動作回数とに基づいて、電気部品の寿命を予測する演算部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る射出成形機によれば、製造コストの増加を抑制しつつ、射出成形機に含まれる部品の寿命を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】射出成形機100の外観図である。
図2】射出成形機100の概略ブロック図である。
図3】外部接続機101の一例と接続形態の一例を示した図である。
図4】IO基板とPLCの接続部分の構成を示す回路図である。
図5】各スイッチ素子に対応する負荷の大きさの登録の様子を説明するための図である。
図6】負荷の登録処理の制御を説明するためのフローチャートである。
図7】寿命予測の処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
<射出成形機>
以下では、図1を用いて本実施の形態における射出成形機100について説明する。図1は、射出成形機100の外観図である。射出成形機100は、金型を型締めする型締装置10と、射出材料を溶融して射出する射出装置20と、表示装置30と、制御装置40とを備える。
【0012】
射出成形機100は、XY平面上に載置されている。XY平面に垂直な方向をZ軸方向とする。図1におけるZ軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。
【0013】
<型締装置>
型締装置10は、ベッド11と、固定盤12と、型締ハウジング13と、可動盤14と、タイバー15と、型締機構16と、金型17,18と、ボールねじ51とを備える。ベッド11は、固定盤12、型締ハウジング13、可動盤14等の型締装置10が備える構成を支持する。固定盤12は、ベッド11に固定されている。型締ハウジング13は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。同様に、可動盤14は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。
【0014】
タイバー15は、固定盤12と型締ハウジング13との間に配置され、固定盤12と型締ハウジング13とを連結する。タイバー15は、複数のバーを含む。図1に示した射出成形機100は、4本のバーを含むタイバー15が備えられている。なお、タイバー15は、5本以上のバーを含んでもよい。
【0015】
可動盤14は、固定盤12と型締ハウジング13との間でX軸方向にスライド可能であるように構成される。型締機構16は、型締ハウジング13と可動盤14との間に設けられる。実施の形態1における型締ハウジング13は、トグル機構を含んで構成される。なお、型締機構16は、直圧式の型締機構を含んで構成されてもよい。直圧式の型締機構とは、すなわち型締シリンダを意味する。
【0016】
金型17,18は、固定盤12と可動盤14との間に設けられる。金型17,18は、型締機構16によって開閉されるように構成されている。ボールねじ51は、モータ50の回転運動を直線運動に変換することにより、型締機構16を開閉させる。
【0017】
<射出装置>
射出装置20は、基台21と、加熱シリンダ22と、スクリュ23と、駆動機構24と、ホッパ25と、射出ノズル26と、ノズルタッチ装置27と、センサ55とを備える。基台21は、ベッド11のX軸の正方向側に配置され、駆動機構24等を支持する。スクリュ23は、加熱シリンダ22の内部に配置される。駆動機構24は、X軸方向を中心軸としてスクリュ23を回転させ、スクリュ23自体をX軸方向にスライドするように駆動させる。
【0018】
ホッパ25は、加熱シリンダ22のZ軸の正方向側に設けられる。射出ノズル26は、加熱シリンダ22のX軸の負方向側の端部に設けられる。ノズルタッチ装置27は、射出装置20をX軸方向にスライドさせて、射出ノズル26を金型18のスプルーブッシュに接触させる。センサ55は、一例では、射出ノズル26の近傍に配置される熱電対である。熱電対は、配置された箇所の温度を検出する温度センサである。なお、センサ55は、熱電対ではない他の温度センサであってもよい。
【0019】
基台21は、内部に制御装置40と、サーボアンプ53と、冷却ファン54と、リレー56とを備える。制御装置40は、CPU、メモリ等を搭載した制御基板52を含む。制御装置40は、熱電対等を含む各種センサ55の検出値を取得し、射出成形機100を統括的に制御する。各種センサの検出値とは、たとえば、加熱シリンダ22の温度情報、または、型締機構16、金型17,18、射出ノズル26等の各種可動部品の位置情報等を含む。
【0020】
サーボアンプ53は、対応するモータに対して三相交流電力を供給する。空冷用の冷却ファン54は、基台21の内部に配置されている発熱部品が過熱しないように送風または空気の吐出しをする。リレー56は、たとえば、サーマルリレーまたは電流リレー等のモータの過負荷を防止するためのリレーである。リレー56は、モータの過負荷を防止する以外の目的で使用されるリレーであってもよい。
【0021】
表示装置30は、射出成形機100のY軸の負方向側に設けられている。表示装置30は、ディスプレイ31と入力装置32とを備える。入力装置32は、たとえば、複数のボタンを含んで構成される。ある局面では、表示装置30は、複数のディスプレイおよびスピーカー等を備えてもよい。また、ディスプレイ31と入力装置32とは、タッチパネルとして一体的に設けられてもよい。なお、図1においては、横型の射出成形機の例を説明したが、実施の形態1の射出成形機100は、これに限られるものではなく、竪型の射出成形機であってもよい。
【0022】
射出成形機100は、ユーザが成形品の種類に応じて種々の外部接続機101を接続することが可能に構成されている。射出成形機100は、さらに、外部接続機101を接続するための入出力基板(以下、IO(Input-Output)基板と称する)45を備える。IO基板45は、制御装置40からの指令を受けて、外部接続機101を駆動するように構成される。
【0023】
<射出成形機の概略ブロック図>
図2は、射出成形機100の概略ブロック図である。制御装置40は、記憶部44と制御基板52とを備える。記憶部44は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)等を含んで構成され得る。制御基板52は、演算部41と、入力インターフェース42と、出力インターフェース43とが搭載されている。演算部41は、CPU41aとメモリ41bとを備える。
【0024】
メモリ41bは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含み、CPU41aにより実行されるプログラム等を記憶する。CPU41aは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。
【0025】
なお、演算部41は、専用のハードウェア回路により構成されてもよい。すなわち、演算部41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等により実現され得る。また、演算部41は、プロセッサおよびメモリ、ASIC、FPGA等を適宜組み合わせて実現してもよい。
【0026】
演算部41は、入力インターフェース42を介して、熱電対等の各種センサ55から検出値を受信する。演算部41は、出力インターフェース43を介して、駆動機構24、表示装置30およびIO基板45へ制御命令を送信する。演算部41は、各種センサの検出値を用いて、駆動機構24を駆動させる。演算部41は、各種センサの検出値に基づいて射出成形機100の状態を表示装置30に表示させる。演算部41は、各種センサの検出値に基づいてIO基板45に接続された外部接続機101を制御する。
【0027】
図3は、外部接続機101の一例と接続形態の一例を示した図である。外部接続機101は、射出成形後の成形品を金型からり出す取出し機103と、取出し機103を射出成形機のIO基板45に接続するPLC(Programmable Logic Controller)102とを含む。
【0028】
制御装置40は、IO基板45の端子からPLC102に制御信号を送る。PLC102は、IO基板45から制御信号を受けると、取出し機103の種々の駆動部品(アーム、チャックなど)を駆動する。
【0029】
図4は、IO基板とPLCの接続部分の構成を示す回路図である。PLC102は、内部回路110と入力端子が電気的に絶縁されており、フォトカプラで信号が送信される。PLC102の入力端子の仕様はいろいろあるが、図4ではDC入力のマイナスコモンタイプ(シンクタイプ)の例が示されている。なお、PLC102の入力端子は、たとえばDC入力のプラスコモンタイプ(ソースタイプ)であってもよい。
【0030】
IO基板45は、電源VDと、端子TG,T1~Tn,NC1~NCmと、スイッチ素子SW1~SWn,SF1~SFmとを含む。
【0031】
端子TGは、IO基板45の電源VDの基準電位であるコモングランドに接続される。スイッチ素子SW1~SWnの各々は、端子T1~Tnの対応する各々と電源VDのプラス端子との間に接続される。スイッチ素子SF1~SFmの各々は、端子NC1~NCmの対応する各々と電源VDのプラス端子との間に接続される。なお、スイッチ素子は、電力の導通と非導通とを切替えることができる素子であり、リレーまたはトランジスタなどで構成される。
【0032】
端子TGは、PLC102の対応するマイナスコモン端子に接続される。端子T1~Tnは、PLC102の対応する入力端子に接続される。端子NC1~NCmは、未使用状態の余っている端子である。
【0033】
なお、図3および図4に示す例は一例であり、取出し機103の取出しアーム、取出しチャックなどが接続される場合には、基板と直接接続される外部接続はPLC102が用いられる場合が多いが、エアジェットが接続される場合には、PLC102に代えて電磁弁を直接操作する場合もある。
【0034】
<負荷の登録処理>
図5は、各スイッチ素子に対応する負荷の大きさの登録の様子を説明するための図である。各スイッチ素子に対応する負荷の大きさは、たとえば、図5に示すように制御装置40の記憶部44に登録されている。
【0035】
負荷の大きさの登録については、以下の1)~3)のケースが考えられる。
1)ある電気部品の外部接続機が予めプリセットされている場合。
2)接続先の負荷を自動認識する場合。
3)負荷に関する情報をユーザから取得する場合。
【0036】
1)については、たとえば、ある電気部品の接続端子にどの外部接続機が接続されるかが1つに決まっており、接続される外部接続機の負荷が予め記憶されている場合である。ある電気部品の接続端子に接続可能な外部接続機を使用する、しないはユーザごとに異なる。たとえば、ある電気部品の接続端子に接続可能な外部接続機が取出し機である場合、取出し機を使わないユーザの射出成形機では、当該接続端子には何も接続されないことになる。したがって、制御装置40は、各接続端子に接続可能な外部接続機が接続されているか、いないかを判断し、予めその端子に対応するスイッチ素子に対して予め記憶されている負荷の大きさを記憶する。
【0037】
2)については、具体的には、通信により判定する方法が考えられる。たとえば、通信機能のある取出し機と射出成形機とを接続した際に、通信により取出し機の型式を判断して該当する型式の取出し機に接続されるI/Oポートの負荷を事前に射出成形機の記憶部に記憶させておく、という方法が考えられる。つまり、接続された外部接続機が何であるかを制御装置40が判定し、記憶部44に記憶されている外部接続機とI/Oポートの負荷を対応させたテーブルデータから、接続された外部接続機の負荷を制御装置40が割り出す。このようにすれば、ある電気部品の接続端子に接続される外部接続機の候補が複数あっても、ユーザは何も入力する必要はない。
【0038】
3)については、具体的には、ユーザは、ある電気部品の接続端子にどの外部接続機を接続したのかを、ディスプレイ31に表示された外部接続機の一覧リストから入力装置32によって選択する。外部接続機とI/Oポートの負荷の大きさとを対応させたテーブルデータが記憶部44に予め記憶されている。制御装置40は、ユーザが電気部品の接続先候補一覧のリストから外部接続機を選択したときに、当該テーブルデータから、I/Oポートの負荷の大きさを特定する。この例では、制御装置40がユーザから取得する負荷に関する情報は、リストから選択された外部接続機の情報である。なお、ユーザが負荷に関する情報として負荷の大きさを入力しても良い。
【0039】
図4の例に示した場合では、図5に示すようにIO基板45の各スイッチ素子に対して、ユーザから取得した負荷に関する情報に基づいて特定された負荷の大きさが登録される。外部接続機101は、取出し機以外にも考えられ、また取出し機であっても中継する装置がPLCの場合と電磁弁の場合では負荷が異なる。しかし、IO基板45の各スイッチ素子に接続される要素は、取出し機等の射出成形機特有の装置であり、ある程度想定して候補のリストを用意しておくことが可能である。したがって、電流センサなどのセンサで負荷を検出しなくても簡易な方法で負荷を特定することができる。
【0040】
負荷の大きさの区分は、たとえば、大/中/小の3区分とすることができる。接続先機器の定格電流によって、区分を次のように決めることができる。
大:400mA以上
中:100mA以上400mA未満
小:100mA未満
たとえば、PLCおよび電流容量が小さいリレー等の負荷区分は「小」である。また、電流容量が大きいリレーおよび制御流量が小さい電磁弁等の負荷区分は「中」である。また、制御流量が大きい電磁弁等の負荷区分は「大」である。これらの区分は、接続される負荷の定格電流で判断することができる。なお、区分の数は、2区分であっても良いし、4区分以上であっても良い。
【0041】
また、図5の消耗度合いの欄は、後に説明する寿命予測処理の結果として表示される欄である。消耗度合いについては、後に式を示して説明する。
【0042】
図6は、負荷の登録処理の制御を説明するためのフローチャートである。まずステップS1において、演算部41は、負荷の登録に更新があるか否かを判断する。たとえば、成形品の品種変更に伴い、外部接続機101を変更する場合などに、負荷の登録に更新があると判断される。ステップS1において、演算部41は、接続の変更を自動的に検出しても良いし、ユーザが負荷接続変更を報知するボタンなどを操作したことを検出しても良い。更新がない場合には(S1でNO)、ステップS2の登録処理は行なわれない。
【0043】
負荷の登録に更新がある場合(S1でYES)、演算部41は、接続変更の自動検出、外部接続機101からのデータ通信、またはユーザの入力する負荷に関する情報に基づいて、図5に示すようなスイッチ素子と負荷の大きさとの対応関係を示すデータベースを更新し、ステップS2の処理が終了する。
【0044】
<寿命予測処理>
図7は、寿命予測の処理について説明するためのフローチャートである。ステップS11において、演算部41は、スイッチ動作回数の計数を行なう。演算部41は、取出し機などの外部接続機を操作するために、IO基板のスイッチ素子SW1~SWnのオンとオフとを適宜切替える。このため、演算部41は、各々のスイッチ素子をオンまたはオフさせるごと、すなわち導通状態と非導通状態との間で遷移させるごとにそのスイッチ素子に対応するスイッチ動作回数を1だけ加算する。たとえば、スイッチ素子がリレーである場合には、スイッチオン時には、電流が流れ始める際に、スイッチオフ時には電流が遮断される際に、微小なスパークが発生しスイッチ素子の寿命を短縮させる。
【0045】
取出し機の場合であっても、成形品を成形する1ショットあたりに、スイッチ素子SW1~SWnがオン状態とオフ状態との間で切り替わる回数は、接続される負荷である取出しアーム、取出しチャックなど使用する機構の形態およびアクチュエータの種類に依存し、一律ではない場合がありうる。このため、ショット数で寿命を管理すると、正確ではない。本実施の形態では、スイッチ動作回数を計数して寿命を計算するので、スイッチ素子SW1~SWnの各々について、正確な寿命を算出することができる。
【0046】
続いて、ステップS12において、演算部41は、記憶部44またはメモリ41bに、スイッチ素子SW1~SWnの各々の動作回数を積算することによって、負荷を積算する。
【0047】
さらにステップS13において、演算部41は、寿命の計算を行なう。寿命を示す消耗度合いの計算は、負荷の区分を大/中/小の3パターンとすると、たとえば、次式によってスイッチ素子ごとに算出することができる。
【0048】
消耗度合い=NL/JNL+NM/JNM+NS/JNS
なお、NLは、負荷区分が「大」の場合のスイッチ動作回数を示し、JNLは、負荷区分が「大」の負荷がスイッチ素子に接続された場合の寿命回数を示す。また、NMは、負荷区分が「中」の場合のスイッチ動作回数を示し、JNMは、負荷区分が「中」の負荷がスイッチ素子に接続された場合の寿命回数を示す。NSは、負荷区分が「小」の場合のスイッチ動作回数を示し、JNSは、負荷区分が「小」の負荷がスイッチ素子に接続された場合の寿命回数を示す。3つの区分の各々に対応する寿命回数JNL,JNM,JNSは、スイッチ素子の部品のデータシートなどに基づいて決定することができる。
【0049】
たとえば、スイッチ素子SW1に、負荷区分が「大」の負荷が接続され、接続変更がない場合には、NL=JNLとなったときに、消耗度合い=1となり、寿命に到達したと判断される。しかし、外部接続機の接続変更があり、途中で負荷区分が「大」の負荷から負荷区分が「中」の負荷に接続が変更される場合もある。このような場合には、消耗度合いは、外部接続機の接続変更があっても、リセットされず、引き続き積算される。
【0050】
たとえば、最初に区分「大」の負荷が接続され、NL/JNL=0.5まで消耗度合いが増加したとする。その後、区分「中」の負荷に接続変更されると、消耗度合い=0.5はそのまま保持され、NM/JNMがゼロからスイッチ動作回数が増えるにしたがって消耗度合いは増加していく。そして、NM/JNM=0.5となったときに、消耗度合いの積算値は合計で1となり、スイッチ素子の寿命に至ったと判断される。区分「小」の負荷に接続変更がされた場合なども、同様に考えることができる。
【0051】
以上のように、ステップS13の寿命は、途中で負荷の接続変更があった場合でも、消耗度合いが引き継がれていくことによって、スイッチ素子の寿命を正しく予測することができる。
【0052】
そしてステップS14において、寿命が報知される、たとえば、ディスプレイ31に寿命を示す消耗度合いの数値が表示される。IO基板45に搭載されている全てのスイッチ素子について、消耗度合いを一覧して表示しても良いし、IO基板45の交換を促すために、消耗度合いが最も大きい数値を示すスイッチ素子について、代表的にIO基板45の寿命を示すものとして表示しても良い。
【0053】
以上の説明では、消耗度合いは、1で寿命到達となるように示したが、パーセント(%)で表示しても良い。なお、図6の右欄には、パーセント表示した例を示す。また、消耗度合いを数値表示する際に、重み計数KL、KM、KSを次式のように各項に掛けても良い。
消耗度合い=KL×NL/JNL+KM×NM/JNM+KS×NS/JNS
また、ステップS14において、消耗度合いが、判定しきい値(たとえば、0.9または90%)に到達した場合に、IO基板45を交換するようにディスプレイ31に表示するようにしても良い。ただし、IO基板45を交換することが経済的でない場合もある。図4に示したように未使用の端子NC1~NCmがあり、消耗度合いが判定しきい値に近づいたスイッチ素子の数がm個以下である場合には、ステップS14において、接続変更すれば継続して使用することができる旨をディスプレイ31に表示するようにしても良い。
【0054】
以上説明した本実施の形態では、電力の導通と非導通とを切替えるように構成される電気部品の例として、IO基板に搭載されたスイッチ素子について説明したが、寿命を予測する電気部品は、電力の導通と非導通とを切替えるように構成されるリレー、トランジスタ、インバータなどであっても良い。
【0055】
(まとめ)
最後に、再び図面を参照して、本実施の形態について総括する。本実施の形態の射出成形機100は、図2に示すように、電力の導通と非導通とを切替えるように構成される電気部品(SW1~SWn)と、電気部品の制御を行なう制御装置40とを備える。制御装置40は、電気部品(SW1~SWn)に接続される負荷の大きさを記憶する記憶部44と、記憶部44に記憶された負荷の大きさと電気部品が導通状態と非導通状態との間で遷移した動作回数とに基づいて、電気部品の寿命を予測する演算部41とを含む。
【0056】
このように、制御装置が制御する際に計数可能な電気部品の動作回数と記憶された負荷に基づいて寿命を予測するので、負荷の大きさを計測するようなセンサが不要であり簡単な構成で寿命予測が可能となる。
【0057】
好ましくは、記憶部44は、負荷の大きさの複数の区分「大」「中」「小」にそれぞれ対応する複数の寿命回数JNL,JNM,JNSを予め記憶している。たとえば、図6で説明したように、演算部41は、電気部品(SW1~SWn)に接続される負荷に関する情報をユーザから取得し、または自動的に検出して、負荷の大きさを記憶部44に記憶させる。そして図7に示すように、演算部41は、複数の寿命回数のうちの記憶部44に記憶された負荷の大きさに対応する寿命回数に占める動作回数の比率である消耗度合いに基づいて、電気部品(SW1~SWn)の寿命を予測する。
【0058】
より好ましくは、射出成形機100は、ユーザが外部接続機101を接続する入出力基板45をさらに備える。図4の例に示すように、電気部品(SW1~SWn)は、入出力基板45に搭載されたスイッチ素子SW1~SWnである。図6に示すように、演算部41は、ユーザが外部接続機101を変更した場合には(S1でYES)、記憶部44に記憶された負荷の大きさを更新する(S2)。たとえば、演算部41は、スイッチ素子SW1~SWnに接続される外部接続機101の負荷に関する情報をユーザから再取得し、負荷の大きさを記憶部44に記憶させる。演算部41は、ユーザが外部接続機101を変更する前までに算出された消耗度合いに対して、ユーザが外部接続機101を変更した後に登録された負荷の大きさに対応する消耗度合いを積算する。
【0059】
このような構成とすることによって、スイッチ素子の劣化度は積算されていくので、途中で外部接続機101を変更する場合があっても、正しく寿命を予測することができる。
【0060】
他の局面では、より好ましくは、射出成形機100は、ユーザが外部接続機101を接続する入出力基板45をさらに備える。電気部品は、入出力基板45に搭載された第1スイッチ素子SW1~SWnである。図4に示すように、射出成形機100は、入出力基板45に搭載された第2スイッチ素子SF1~SFmをさらに備える。第2スイッチ素子SF1~SFmが未使用であり、かつ、第2スイッチ素子SF1~SFmに対応する消耗度合いが第1スイッチ素子SW1~SWnに対応する消耗度合いよりも低い場合には、演算部41は、以下の報知を行なう。すなわち、演算部41は、第1スイッチ素子SW1~SWnに代えて第2スイッチ素子SF1~SFmを使用可能であることをユーザに報知する。
【0061】
このような構成とすることによって、入出力基板45を交換することが経済的でない場合に、入出力基板45の使用を継続することが可能となり、部品の寿命を延長することができる。
【0062】
本実施の形態は、他の局面では、射出成形機100の部品の寿命予測方法に関する。寿命予測方法は、電力の導通と非導通とを切替えるように構成される電気部品(SW1~SWn)に接続される負荷の大きさを記憶するステップ(図6:S2)を備える。寿命予測方法は、さらに、記憶された負荷の大きさと電気部品が導通状態と非導通状態との間で遷移した動作回数とに基づいて、電気部品の寿命を予測するステップ(図7:S11~S13)を備える。
【符号の説明】
【0063】
10 型締装置、11 ベッド、12 固定盤、13 型締ハウジング、14 可動盤、15 タイバー、16 型締機構、17,18 金型、20 射出装置、21 基台、22 加熱シリンダ、23 スクリュ、24 駆動機構、25 ホッパ、26 射出ノズル、27 ノズルタッチ装置、30 表示装置、31 ディスプレイ、32 入力装置、40 制御装置、41 演算部、41a CPU、41b メモリ、42 入力インターフェース、43 出力インターフェース、44 記憶部、45 入出力基板、50 モータ、51 ボールねじ、52 制御基板、53 サーボアンプ、54 冷却ファン、55 センサ、56 リレー、100 射出成形機、101 外部接続機、103 取出し機、110 内部回路、NC1~NCm,T1~Tn,TG 端子、SF1~SFm,SW1~SWn スイッチ素子、VD 電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7