(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030617
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】管継手及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
F16L 37/088 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
F16L37/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135841
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 匡史
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 謙次
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106BA01
3J106BB02
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE21
3J106EA03
3J106EC01
3J106ED14
3J106EE02
3J106EF04
(57)【要約】
【課題】流体圧が作用している状態で振動などによって雌部材と雄部材との間で相対回転が繰り返されても、雄部材の雌部材からの抜けを防止することができる耐久性の高い管継手とその取付方法を提供する。
【解決手段】内周面に形成された第1係止溝5に拡縮径可能なCリング7を保持した筒状のアダプタ2と、外周面に第2係止溝15が形成された筒状であり、Cリング7を押し広げながら挿入されることによって、Cリング7を介してアダプタ2と連結するボディ3とを備え、Cリング7は、一部が切り欠かれた縦断面矩形の円形リングで構成されており、第1係止溝5のアダプタ2の開口側部分に、アダプタ2の開口方向に向かって縮径する第1テーパ面5aが設けられた構成とする。また、アダプタ2を機器に取り付けた後、アダプタ2にボディ3を連結する。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に形成された第1係止溝に拡縮径可能な弾性リング部材を保持した筒状の雌部材と、
外周面に第2係止溝が形成された筒状であり、前記弾性リング部材を押し広げながら挿入されることによって、前記弾性リング部材を介して前記雌部材と連結する雄部材と
を備え、
前記弾性リング部材は、一部が切り欠かれた縦断面矩形の円形リングで構成されており、
前記第1係止溝の前記雌部材の開口側部分に、前記雌部材の開口方向に向かって縮径する第1テーパ面が設けられている
管継手。
【請求項2】
前記第1係止溝より内径が小さい小内径部が、前記第1テーパ面に接続して前記雌部材の開口方向の反対側に設けられている
請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記小内径部は前記雌部材の軸方向に平行な面を有する
請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記雌部材の開口方向に向かって縮径する第2テーパ面が、前記小内径部に接続して前記雌部材の開口方向の反対側に設けられている
請求項2又は3に記載の管継手。
【請求項5】
前記第2係止溝の前記雄部材の開口側の端面は、前記雄部材の前記雌部材への差込部の軸方向に直角な平面で構成されている
請求項1~4のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項6】
前記弾性リング部材の軸方向一端の外周縁部又は軸方向両端の外周縁部にテーパ面が設けられている
請求項1~5のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の管継手の取付方法であって、
前記雌部材を機器に取り付けた後、前記雌部材に前記雄部材を連結する
管継手の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手は、拡縮径可能な弾性リング部材を介して互いに連結される雌部材(アダプタ)と雄部材(ボディ)を備える。この種の管継手は、商用車(トラックやバスなど)を含む自動車や建設機械、工作機械などにおいて一方の配管と他方の配管とをワンタッチで簡単に連結するために用いられ、このような管継手に関しては今までに種々の提案がなされている(例えば、特許文献1,2など参照)。
【0003】
特許文献1には、管継手の雌部材と雄部材とが弾性リング部材を介して連結されており、高圧流体が作用しても雌部材と雄部材との連結が不用意に解除されにくい管継手が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、雌部材と雄部材とが一旦連結されると両者を分離することができない管継手が開示されている。具体的には、流体圧が作用すると、圧力の上昇によって雄部材には挿入方向とは反対方向(雄部材が抜ける方向)の力が加わるが、この管継手は、弾性リング部材が雌部材の溝に入り込むことによって雌部材と雄部材が分離できないように構成されている。
【0005】
【0006】
図示の管継手101は、互いに連結される雌部材102と雄部材103とを備えている。上記雌部材102の内周面には、縦断面矩形の第1係止溝105が全周に亘って形成されており、この第1係止溝105には、一部が切り欠かれた拡縮径可能な弾性リング部材107が保持されている。他方、雄部材103の外周面には、第2係止溝115が形成されており、この雄部材103を雌部材102の内部に例えば上方から差し込めば、雌部材102の第1係止溝105に保持された弾性リング部材107が雄部材103によって押し広げられるため、雄部材103の雌部材102の内部への挿入が許容される。
【0007】
そして、
図17Aに示すように、雄部材103の第2係止溝115が雌部材102の第1係止溝105に合致した時点で、
図17Aに鎖線にて示すように拡径されていた弾性リング部材107が自身の弾性復元力によって実線にて示すように縮径されて雄部材103の第2係止溝115に嵌り込んで係止されるため、雌部材102と雄部材103とが弾性リング部材107を介して互いに連結される。このため、当該管継手101に流体圧が作用しても、雄部材103の雌部材102からの抜けが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5-054891号公報
【特許文献2】特開2008-180366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図16に示す従来の管継手101に流体圧が作用した状態で、例えば振動などによって雌部材102と雄部材103との間で相対回転が繰り返されると、
図17Bに示すように、弾性リング部材107の角部と雄部材103の第2係止溝115との接触部分が削れてテーパ面となり、両者が該テーパ面によって面接触する。このとき、雄部材103が流体圧によって図の上向きの力(雄部材103を引き抜く方向の力)が作用すると、弾性リング部材107と第2係止溝115とのテーパ面状の接触面には、
図17Bに示すように、接触面に対して垂直方向の力f
1が作用するため、この力f
1の水平分力f
11によって弾性リング部材107が拡径する(図示矢印方向に広がる)。このため、
図17Cに示すように、弾性リング部材107と雄部材103の第2係止溝115との係止状態が解除されて雄部材103が図の上方へと抜けるという問題が発生する。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、流体圧が作用している状態で振動などによって雌部材と雄部材との間で相対回転が繰り返されても、雄部材の雌部材からの抜けを防止することができる耐久性の高い管継手と該管継手の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る管継手は、内周面に形成された第1係止溝に拡縮径可能な弾性リング部材を保持した筒状の雌部材と、外周面に第2係止溝が形成された筒状であり、前記弾性リング部材を押し広げながら挿入されることによって、前記弾性リング部材を介して前記雌部材と連結する雄部材とを備え、前記弾性リング部材は、一部が切り欠かれた縦断面矩形の円形リングで構成されており、前記第1係止溝の前記雌部材の開口側部分に、前記雌部材の開口方向に向かって縮径する第1テーパ面が設けられている。また、本発明に係る管継手の取付方法は、雌部材を機器に取り付けた後、前記雌部材に雄部材を連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、雄部材を雌部材の内部に差し込んで弾性リング部材が雌部材の第1係止溝と雄部材の第2係止溝の双方に係止されることによって、雌部材と雄部材とが互いに連結され、管継手に流体圧が作用すると、弾性リング部材の角部が第1係合溝の第1テーパ面に係合する。弾性リング部材の角部の第1テーパ面との係合部に作用する力(第1テーパ面に対して垂直方向の力)の水平分力によって弾性リング部材が縮径し、該弾性リング部材の内周面が雄部材の第2係止溝へと押圧される。以上の結果、流体圧が作用している状態で振動などによる雌部材と雄部材との相対的な回転が起こりにくく、仮に回転が繰り返されても、雄部材の雌部材からの抜けが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る管継手を構成する雌部材と雄部材の締結前の状態を示す半裁縦断面図である。
【
図5】雌部材に雄部材を差し込む状態を示す管継手の半裁縦断面図である。
【
図6A】管継手の締結手順を示す
図5のC部拡大詳細図である。
【
図7】雌部材に雄部材を締結した状態を示す管継手の半裁縦断面図である。
【
図8A】本実施形態に係る管継手に流体圧が作用したときの弾性リング部材の挙動の変化を示す要部拡大断面図である。
【
図8B】
図8Aに続く弾性リング部材の挙動の変化を示す図である。
【
図8C】
図8Bに続く弾性リング部材の挙動の変化を示す図である。
【
図8D】
図8Cに続く弾性リング部材の挙動の変化を示す図である。
【
図9A】弾性リング部材の別形態を示す半裁正断面図である。
【
図9B】弾性リング部材のさらに別形態を示す半裁正断面図である。
【
図9C】弾性リング部材のさらに別形態を示す半裁正断面図である。
【
図9D】弾性リング部材のさらに別形態を示す半裁正断面図である。
【
図9E】弾性リング部材のさらに別形態を示す半裁正断面図である。
【
図9F】弾性リング部材のさらに別形態を示す半裁正断面図である。
【
図10A】第2実施形態の管継手に流体圧が作用したときの弾性リング部材の挙動の変化を示す要部断面図である。
【
図11】本発明の変形例1に係る管継手の雌部材と雄部材の締結前の状態を示す半裁縦断面図である。
【
図12】本発明の変形例2に係る管継手の雌部材の半裁縦断面図である。
【
図13】本発明の変形例3に係る管継手の雌部材の半裁縦断面図である。
【
図14】本発明の変形例4に係る管継手の雌部材の半裁縦断面図である。
【
図15】本発明の変形例5に係る管継手の雌部材の半裁縦断面図である。
【
図17A】従来の管継手に流体圧が作用したときの弾性リング部材の挙動の変化を示す
図16のD部拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は本実施形態に係る管継手を構成する雌部材と雄部材の締結前の状態を示す半裁縦断面図であり、
図2は
図1のA部拡大詳細図であり、
図3は
図1のB部拡大詳細図であり、
図4は弾性リング部材の平面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の管継手1は、金属製の雌部材であるアダプタ2と、樹脂製の雄部材であるボディ3とを備えている。例えば、アダプタ2は機器に接続され、ボディ3はブレーキ配管に接続されて用いられる。
【0017】
本実施形態では、アダプタ2は、鉛含有銅亜鉛合金(C3604)で構成され、ボディ3は、グラスファイバー(GF)で強化されたポリアミド12(PA12)で構成されているが、これらの材質は一例であって限定される訳ではない。アダプタ2を構成する材料は、金属または樹脂でもよい。金属は、真鍮材料、C6801などの鉛レス材、アルミ合金、鉄鋼材料、ステンレス材を使用可能である。ボディ3を構成する材料としては、GFで強化されたPPAなどを使用することができるが、樹脂だけでなく、真鍮鍛造品(C3771)や真鍮鉛レス材、アルミ合金、ステンレス合金なども使用可能である。
【0018】
上記アダプタ2は、円筒状の部材であって、軸中心部には、大小異径の円孔2a,2bによって形成される流路4が貫設されている。本実施形態では大小異径の円孔2a,2bの構成を示しているがこれは一例であり、同径の円孔であってもよい。そして、このアダプタ2の
図1の上下方向中間高さ位置の外周には、ナット部2Aが一体に形成されており、このナット部2Aの下方の下端部外周にはネジ部2Bが刻設されている。なお、ナット部2Aをスパナやレンチなどの不図示の工具によって回してネジ部2Bを不図示の機器のネジ孔にねじ込むことによって、当該アダプタ2を機器に取り付けることができる。なお、アダプタ2のネジ部形状は一例であって限定される訳ではない。テーパねじ、平行ねじとシール材、メタルシールなどでもよい。また、雌ネジでもよい。本実施形態ではナット部2Aを有する構成を示しているがこれは一例であり、アダプタ2のねじの内側に内六角を有する構成として六角レンチを用いて機器に取り付けられる構成であってもよい。この場合には、ナット部2Aの形状ではなく、外側は円柱形状でもよい。
【0019】
アダプタ2の大径側の円孔2aの内周面の上下には、断面矩形の第1係止溝5とリング溝6が全周に亘ってそれぞれ形成されており、第1係止溝5には、樹脂製の弾性リング部材であるCリング7が嵌合保持され、リング溝6には、シール部材であるリング状のOリング8が嵌装されている。なお、Oリング8を構成する材料としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)を使用可能である。また、Cリング7は、樹脂に限定されず、金属で構成されていてもよい。
【0020】
ここで、上記第1係止溝5は、アダプタ2の大径側の円孔2aの内周面の高さ方向において上部(アダプタ2の上端開口部側)に全周に亘って形成されている。
図2に詳細に示すように、第1係止溝5のアダプタ2の開口側部分に、アダプタ2の開口方向に向かって縮径する第1テーパ面5aが設けられている。さらに、第1係止溝5より内径が小さい小内径部5bが、第1テーパ面5aに接続してアダプタ2の開口方向の反対側に設けられている。小内径部5bは、アダプタ2の軸方向(
図2の上下方向)に平行な面(垂直面)を有する。さらに、アダプタ2の開口方向に向かって縮径する第2テーパ面5cが、小内径部5bに接続してアダプタ2の開口方向の反対側に設けられている。このように、アダプタ2の上端開口側部分には、
図2の上方に向かって縮径する2段の第1テーパ面5aと第2テーパ面5cが形成されており、これらの第1テーパ面5aと第2テーパ面5cとを繋ぐ内周面が小内径部5bを構成している。第1係止溝5の
図2の下端の底面5dは、アダプタ2の軸直角方向(
図2の左右方向)に平行なリング状の平面(水平面)とされている。底面5dと第2テーパ面5cとは、当該アダプタ2の軸方向に平行な垂直面5eにより互いに接続されている。
【0021】
アダプタ2に形成された第1係止溝5には、
図4に示すように、外周の一部が切り欠かれた拡縮径可能な樹脂製のCリング7が嵌合保持されている。ここで、Cリング7は、縦断面矩形の円形リングであって、アダプタ2にボディ3が連結されていない状態(Cリング7が初期状態(無負荷状態)にあるとき)においては、
図2に示すように、その内周面は、アダプタ2の大径側の円孔2aの内周面よりも図示のεだけ突出しており、当該Cリング7の外周面と第1係止溝5の垂直面5eとの間には図示の隙間δが形成されている。なお、本実施形態では、Cリング7は、ボディ3と同じ材質であるグラスファイバー(GF)で強化されたポリアミド12(PA12)で構成されているが、これに限定される訳ではない。
【0022】
ボディ3は、
図1に示すように、横L字状に屈曲する円筒状の部材であって、垂直部3Aと、該垂直部3Aの上端部から直角に屈曲して水平に一体に延びる水平部3Bとを備えており、水平部3Bの開口側端部には、シールリング9、バックリング10、ロックリング11、ロックリングホルダ12及びリリースリング13が設けられている。また、このボディ3の内部には、大小異径の円孔3a,3bによって横L字状に屈曲する流路14が貫設されている。なお、本実施形態においては、ボディ3を横L字状に屈曲する部材で構成したが、ボディ3をT字状或いはY字状の部材で構成してもよい。
【0023】
また、ボディ3の垂直部3Aの外周の中間高さ位置にはフランジ部3Cが一体に形成されており、このフランジ部3Cよりも下方の部分は、アダプタ2の内部に差し込まれる差込部3A1を構成している。そして、この差込部3A1の下端外周縁には、下方に向かって縮径するテーパ面3cが形成されている。ここで、差込部3A1の外周面には、第2係止溝15が全周に亘って形成されている。この第2係止溝15においては、
図3に詳細に示すように、その上端部に、上方に向かって拡径するテーパ面15aが形成されており、第2係止溝15のボディ3の開口側の端面である下端の底面15bは、当該ボディ3の差込部3A1の上下方向の軸心に対して直角な平面(水平面)とされている。また、この第2係止溝15のテーパ面15aと下端の底面15bとは、垂直面15cによって互いに接続されている。
【0024】
次に、以上のように構成された管継手1のアダプタ2とボディ3との連結手順を
図5~
図7に基づいて以下に説明する。
【0025】
図5はアダプタ2にボディ3を差し込む状態を示す管継手1の半裁縦断面図、
図6A~
図6Cは管継手の締結手順をその工程順に示す
図5のC部拡大詳細図であり、
図7はアダプタ2にボディ3を締結した状態を示す管継手1の半裁縦断面図である。
【0026】
本実施形態の管継手1は、例えば、トラックなどの車両用エアブレーキ配管などのエア配管に用いることができる。本実施形態の管継手1は、アダプタ2をトルクドライバーなどの工具を用いて機器に先に取り付けることによって、挟ピッチでも管継手1同士が干渉しないように取り付けることが可能である。
【0027】
本実施形態の管継手1は、
図5に示すように、当該管継手1の垂直に固定されたアダプタ2の内部にボディ3の差込部3A1を上方から差し込んで用いる。
【0028】
上述のように、ボディ3の差込部3A1をアダプタ2の内部に上方から挿入すると、
図6Aに示すように、ボディ3の差込部3A1の下端外周縁に形成されたテーパ面3cが、アダプタ2の第1係止溝5に嵌合保持されているCリング7の上端内周縁に当接して該Cリング7を図示矢印方向に押し広げ、該Cリング7を拡径させる。すると、
図6Bに示すように、Cリング7が第1係止溝5内に埋没し、ボディ3の通過(押し込み)を許容する。
【0029】
そして、
図6Cに示すように、ボディ3の第2係止溝15がアダプタ2の第1係止溝5に合致すると、Cリング7を拡径させる力が解除されるため、該Cリング7が自身の弾性復元力によって縮径して元の初期状態に戻り、ボディ3の第2係止溝15に係止される。この結果、
図7に示すように、ボディ3をアダプタ2に上方から単に差し込むだけの簡単な操作によって、Cリング7を介してボディ3がアダプタ2に連結される。このため、例えば、トラックのボンネット内の限られたスペースにおいて、複数の管継手1同士の干渉を防ぎつつ管継手1を作業性良く取り付けることができる。
【0030】
次に、以上の手順によってアダプタ2とボディ3が締結された管継手1に流体圧が作用したときのCリング7の挙動を
図8A~
図8Dに基づいて以下に説明する。
【0031】
図8A~
図8Dは本実施形態に係る管継手1に流体圧が作用したときのCリング7の挙動を示す要部拡大断面図である。管継手1に流体圧が作用していないときには、Cリング7は
図6Cに示す状態にあるが、管継手1に流体圧が作用すると、つまり、アダプタ2の流路4とボディ3の流路14に例えば高圧エアが流れると、ボディ3は、アダプタ2から抜ける方向(
図8A~
図8Dの上方)の力を受ける。すると、ボディ3は、
図8Aに示すように、Cリング7の上端外周縁部の角部が係合点pにおいて第1係止溝5の第2テーパ面5cに係合するまで上動する。このCリング7の第1係止溝5の第2テーパ面5cへの係合点pにおいては、Cリング7に作用する力(第2テーパ面5cに対して直角方向の力)F
1の水平分力F
11によってCリング7が縮径する。
【0032】
また、Cリング7の底面7bは、ボディ3の第2係止溝15の底面15bに面接触し、この接触面には上向きの垂直抗力Nが作用する。このとき、接触面の摩擦係数をμとすると、Cリング7の底面7bには、μ・Nの摩擦力が作用する。この摩擦力μ・Nと係合点pに作用する力F
1の水平分力F
11は、大きさが同じで互いに逆方向に作用するため、Cリング7には矢印方向(時計方向)の偶力M(
図8B参照)が作用し、このCリング7の角部が
図8Bに示すように第1係止溝5の第2テーパ面5cの端部に達した時点で該Cリング7が偶力Mによって傾く。
【0033】
そして、Cリング7の角部の係合点pが第1係止溝5の第2テーパ面5cから外れると、
図8Cに示すように、Cリング7の上端部は、第1係止溝5の小内径部5bと第2係止溝15の垂直面15cとの間に形成される空間Sに入り込み、その角部は第1係止溝5の第1テーパ面5aに係合点qにおいて係合する。このとき、第1係止溝5の小内径部5bと第2係止溝15の垂直面15cとの間に形成される空間Sの幅wは、Cリング7の厚さtよりも大きくなり(w>t)、Cリング7の上端部が空間Sに入り込む。このため、Cリング7の倒れが第1係止溝5の小内径部5bによって規制されて小さく抑えられる。
【0034】
上記状態においては、Cリング7とボディ3は、Cリング7の角部が
図8Cに示すように第1係止溝5の第1テーパ面5aに係合点qにおいて係合するまで上方(ボディ3の抜け方向)に移動することができ、それ以上の移動、つまり、ボディ3のアダプタ2からの抜けが阻止される。このとき、Cリング7の角部の第1テーパ面5aへの係合点qには、第1テーパ面5aに対して垂直方向の力F
2が作用するため、この力F
2の水平分力F
21によってCリング7が縮径し、その内周面がボディ3の第2係止溝15の垂直面15cに押圧される。このため、Cリング7の第2係止溝15の底面15bへの係合代(掛かり代)ε2が
図8Aに示す係合代ε1よりも大きくなり(ε2>ε1)、ボディ3のアダプタ2からの抜けが一層防止される。このため、エア圧などの流体圧が作用している状態で振動などによってアダプタ2とボディ3との間で相対的な回転が繰り返されても、ボディ3のアダプタ2からの抜けが防止され、当該管継手1の回転に対する耐久性が高められる。
【0035】
そして、流体圧が作用している状態で振動などによってアダプタ2とボディ3との間で相対的な回転が繰り返されたために、
図8Dに示すように、Cリング7の角部が第1係止溝5の第2テーパ面5cとの摺擦によって削られてテーパ面7aが形成された場合であっても、Cリング7は、第1係止溝5の第1テーパ面5aに対して垂直な力F
3の水平分力F
31によって縮径方向に押圧される。この結果、Cリング7は、その内周面が第2係止溝15の垂直面15cに押圧されるため、該Cリング7の第2係止溝15との係合代(掛かり代)ε3が十分確保され、当該管継手1に流体圧が作用した状態であっても、ボディ3のアダプタ2からの抜けが防止される。
【0036】
ここで、Cリング7の別形態を
図9A~
図9Fに示すが、
図9Aに示すように、Cリング7の上端(軸方向一端)外周縁部の角部を斜めにカットし、この部分をテーパ面7cとしても良い。この場合、管継手1の組み付けに際してCリング7を上下逆にして組み付ける誤組みが発生する可能性があるため、
図9Bに示すように、Cリング7の上部と下部(軸方向両端部)の外周端縁の両角部を斜めにカットしてこの部分をそれぞれテーパ面7cとしても良い。その他、
図9Cに示すように、Cリング7の上端内周縁部の角部にテーパ面7cを形成し、
図9Dに示すように、Cリング7の上端内外周縁部の各角部にテーパ面7cをそれぞれ形成してもよい。或いは、
図9Eに示すように、Cリング7の上端内周縁部と下端外周縁部の各角部にテーパ面7cをそれぞれ形成し、
図9Fに示すように、Cリング7の下端内周縁部を除く上端内外周縁部と下端外周縁部の各角部にテーパ面7cをそれぞれ形成してもよい。
【0037】
本実施形態の管継手1によれば、Cリング7の角部の第1テーパ面5aとの係合部に作用する力(第1テーパ面5aに対して垂直方向の力)F2,F3の水平分力F21,F31によってCリング7が縮径し、該Cリング7の内周面がボディ3の第2係止溝15へと押圧される。以上の結果、流体圧が作用している状態で振動などによってアダプタ2とボディ3との相対的な回転が繰り返されても、ボディ3のアダプタ2からの抜けが防止され、当該管継手1の回転に対する耐久性が高められる。
【0038】
また、本実施形態の管継手1によれば、Cリング7とボディ3との接触面での摩擦力が小さくなり、これによってCリング7とボディ3との接触面での摩耗量が少なくなり、ボディ3のアダプタ2からの抜けを防止できる。
【0039】
<第2実施形態>
本実施形態の管継手においては、第1係止溝205の構成が以下に説明するように第1実施形態と異なるが、この点を除いては第1実施形態と同様の構成である。
【0040】
図10A及び
図10Bは本実施形態に係る管継手に流体圧が作用したときのCリングの挙動を示す要部拡大断面図である。
【0041】
図10Aに示すように、第1係止溝205のアダプタ202の開口側部分に、アダプタ202の開口方向に向かって縮径する第1テーパ面205aが設けられている。第1係止溝205の
図10Aの下端の底面205dは、アダプタ202の軸直角方向(
図10Aの左右方向)に平行なリング状の平面(水平面)とされている。底面205dと第1テーパ面205aとは、当該アダプタ202の軸方向に平行な垂直面205eにより互いに接続されている。
【0042】
上記のような係止構造を有する管継手においては、
図10Aに示すように、アダプタ202とボディ203とが連結された状態では、Cリング207は、アダプタ202の第1係止溝205とボディ203の第2係止溝215の双方に係止されてボディ203のアダプタ202からの抜けを阻止している。
【0043】
管継手に流体圧が作用してボディ203がアダプタ202から抜ける方向(
図10Aの上方)の力を受けると、
図10Bに示すように、Cリング207の角部がアダプタ202に形成された第1係止溝205のテーパ面205aに係合点aで接触するとともに、ボディ203に形成された第2係止溝215に係合点bにおいて接触する。このとき、係合点aには第1係止溝205のテーパ面205aに垂直な力f
2が作用する。
【0044】
本実施形態の管継手によれば、Cリング207の角部のテーパ面205aとの係合部に作用する力(テーパ面205aに対して垂直方向の力)f2の水平分力f21によってCリング207が縮径し、Cリング207の内周面がボディ203の第2係止溝215へと押圧される。以上の結果、流体圧が作用している状態で振動などによってアダプタ202とボディ203との相対的な回転が繰り返されても、ボディ203のアダプタ202からの抜けが防止され、当該管継手の回転に対する耐久性が高められる。
【0045】
なお、Cリング207の角部と第2係止溝215の底面215bとの係合点bには、上向きの垂直抗力Nが作用し、係合点bにおける摩擦係数をμとすると、この係合点bには、図示矢印方向の摩擦力μ・Nが作用する。したがって、力f
2の水平分力f
21と摩擦力μ・NによってCリング207には
図10Bにおいて時計方向の偶力が作用し、この偶力によってCリング207が第1係止溝205と第2係止溝215の内部において倒れ、Cリング207の係合点bにおける第2係止溝215への係合代(掛かり代)が小さくなる場合がある。この場合には、第1実施形態に示すように、第1係止溝205に小内径部を設け、Cリング207が第1係止溝205と第2係止溝215の間の空間に入り込むような構成とすることで、Cリング207の倒れを第1係止溝205の小内径部によって規制して小さく抑えることができる。
【0046】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。例えば、第2テーパ面は、アダプタの軸直角方向に平行な面、即ち、第1係止溝の下端の底面と平行な面であってもよい。また、以上の実施形態とは逆にアダプタが雄部材、ボディが雌部材であってもよい。さらに、雌部材と雄部材をそれぞれ複数備えた管継手であってもよい。
【0047】
ここで、本発明に係る管継手の種々の変形例を
図11~
図15に基づいて以下に説明する。
【0048】
<変形例1>
図11は本発明の変形例1に係る管継手の雌部材と雄部材の締結前の状態を示す半裁縦断面図であり、本変形例に係る管継手1Aにおいては、第1実施形態に係る管継手1(
図1参照)に対して雌部材と雄部材が逆になっている。すなわち、
図11の上方に配置された雌部材であるアダプタ2に対して、その下方に配置された雄部材であるボディ3が差し込まれてこれらのアダプタ2とボディ3とがワンタッチで簡単に連結される。なお、実際には、ボディ3が不図示の工具を用いて不図示の機器に締結された後、このボディ3がアダプタ2に下方から差し込まれて両者が連結される。
【0049】
ここで、
図11においては、
図1において示したものと同一要素には同一符号を付しており、アダプタ2においては、第1係止溝5にCリング7が篏合保持され、リング溝6にOリング8が篏装されている。また、ボディ3においては、差込部3A1の外周に第2係止溝15が形成されている。
【0050】
以上のように構成された本変形例に係る管継手1Aの基本構成は、第1実施形態に係る管継手1(
図1参照)と同じであるため、本変形例に係る管継手1Aにおいても、第1実施形態において得られたものと同様の効果が得られる。
【0051】
<変形例2>
図12は本発明の変形例2に係る管継手の雌部材の半裁縦断面図であり、本変形例においては、雌部材であるアダプタ2の上端内周部に全周に亘って形成されたリング溝16に異物防止用のOリング17を篏装しており、他の構成は第1実施形態に係るアダプタ2(
図1参照)の構成と同じである。したがって、
図12においては、
図1において示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0052】
<変形例3>
図13は本発明の変形例3に係る管継手の雌部材の半裁縦断面図であり、本変形例においては、雌部材であるアダプタ2の軸中心には同一径の円孔2cが貫設されており、この円孔2cの上下に形成された第1係止溝5とリング溝6にCリング7とOリング8がそれぞれ篏合保持されている。また、高さ方向(上下方向)においてナット部2Aとネジ部2Bとの間の外周にOリング18を篏装している。他の構成は第1実施形態に係るアダプタ2(
図1参照)の構成と同じである。したがって、
図13においては、
図1において示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0053】
<変形例4>
図14は本発明の変形例4に係る管継手の雌部材の半裁縦断面図であり、本変形例においては、変形例3に係るアダプタ2において、円孔2cの上端に形成されたリング溝16に異物防止用のOリング17を篏装しており、他の構成は変形例3に示す構成(
図13参照)と同じである。
【0054】
<変形例5>
図15は本発明の変形例5に係る管継手の雌部材の半裁縦断面図であり、本変形例においては、アダプタ2は、T字状の管状部材として構成されており、このアダプタ2には、3つの開口部(上下2つと側部の1つ)が形成されている。そして、3つの開口部の各々には、Cリング7とOリング8とがそれぞれ篏装されている。
【0055】
したがって、このアダプタ2には、エルボ型やY型の不図示のボディを3方向から差し込んで連結することができる。
【0056】
<管継手の取り付け方法>
上記の各実施形態及び変形例の管継手は、例えば、アダプタ2を機器に取り付けた後、アダプタ2にボディ3を連結して、取り付ける。
【符号の説明】
【0057】
1 管継手
2 アダプタ(雌部材)
3 ボディ(雄部材)
5 第1係止溝
5a 第1係止溝の第1テーパ面
5b 第1係止溝の小内径部
5c 第1係止溝の第2テーパ面
5d 第1係止溝の底面
5e 第1係止溝の垂直面
7 Cリング
7a Cリングのテーパ面
7b Cリングの底面
7c Cリングのテーパ面
15 第2係止溝
15a 第2係止溝のテーパ面
15b 第2係止溝の底面
15c 第2係止溝の垂直面