(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030643
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】間隙水圧計ユニット
(51)【国際特許分類】
G01L 7/00 20060101AFI20230301BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20230301BHJP
G01V 9/02 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
G01L7/00 B
E02D1/00
G01V9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135880
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】592252027
【氏名又は名称】山内 常生
(71)【出願人】
【識別番号】594184159
【氏名又は名称】丹羽 章二
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】山内 常生
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 章二
【テーマコード(参考)】
2D043
2F055
2G105
【Fターム(参考)】
2D043AA07
2D043AB01
2D043AC01
2D043BA09
2D043BB01
2D043BB09
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC32
2F055DD20
2F055EE25
2F055FF49
2F055GG11
2F055HH03
2G105AA02
2G105EE01
2G105LL09
(57)【要約】
【課題】従来技術では、地すべり地等における複数の帯水層を対象とする間隙水圧の測定には高額の装置が必要であったし、口径が大きなボーリング孔を掘削する必要があり、掘削のための工事費や、間隙水圧計を設置するためのコストがかかっていた。
【解決手段】間隙水圧計の内部に、パイプを設け、そのパイプ内に下方に設置する間隙水圧計用の複合ケーブル(電源線や信号線より構成)を通す方法、ないしはそのパイプ内で間隙水圧を測定し、下方に設置する間隙水圧計用の複合ケーブルは内部に備えるパイプの脇を通す方法で、同じボーリング孔の深度が異なる複数の帯水層の間隙水圧を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯水層の間隙水圧を測定する間隙水圧計ユニットであって、
密閉空間を形成可能な上壁、下壁及び管壁を備え、該管壁の下部に貫通穴が設けられる測定用パイプと、
前記貫通穴を介して測定用パイプ内に浸入した前記帯水層の水の水位に基づき、前記間隙水圧を特定する水圧特定部と、
を備えてなる間隙水圧計ユニット。
【請求項2】
複合ケーブルを管軸方向に貫通させる、請求項1に記載のユニット。
【請求項3】
前記水圧特定部は、前記測定用パイプにおいて、前記浸入水の水面、前記上壁及び前記管壁で形成される密閉空間の圧力を測定する空間圧力測定部を備える、請求項1又は2に記載のユニット。
【請求項4】
前記水圧特定部は、前記上壁と前記浸入水の水面との距離を測定する測長部を備える、請求項1又は2に記載のユニット。
【請求項5】
前記水圧特定部は、前記測定用パイプの内側に配置された一対の電極間の容量変化を測定する容量変化測定部を備え、前記一対の電極はそれぞれ前記浸入水の水面から表出する領域と前記浸入水に埋没する領域とを備える請求項1に記載のユニット。
【請求項6】
前記一対の電極は前記測定用パイプの内面に、相対向するように配置される請求項5に記載のユニット。
【請求項7】
前記測定用パイプを軸方向に貫通し前記複合ケーブルを挿入可能な第2パイプが更に備えられる、請求項6に記載のユニット。
【請求項8】
前記測定用パイプを軸方向に貫通し前記複合ケーブルを挿入可能な第2パイプが更に備えられ、前記一対の電極の一方は前記測定用パイプの内面に貼設され、他方の電極は前記第2パイプの外面に貼設される、請求項5に記載のユニット。
【請求項9】
前記水圧特定部は、前記観察用パイプの内側に配置された筒状の電極であって絶縁物層で被覆された筒状電極と、
前記浸入水を他方極として前記筒状電極との間の容量変化を測定する容量変化測定部を更に備える、請求項1又は2に記載のユニット。
【請求項10】
前記測定用パイプの外側に配置された一対の電極間の容量変化を測定する容量変化測定部を備え、前記一対の電極はそれぞれ前記浸入水の水面より上方に位置する領域と前記浸入水の水面より下方に位置する領域とを備え、前記測定用パイプは絶縁物質で形成されている請求項1に記載のユニット。
【請求項11】
前記測定用パイプへ外装される保護パイプが更に備えられ、
前記測定用パイプと前記保護パイプとの間に前記一対の電極が配置され、
前記測定用パイプ、前記保護パイプ及び前記一対の電極とで形成される空間に複合ケーブルが挿通される、請求項10に記載のユニット。
【請求項12】
帯水層の間隙水圧を測定する間隙水圧計ユニットであって、
密閉空間を形成可能な上壁、下壁及び管壁を備え、該管壁の下部に貫通穴が設けられる測定用パイプと、
前記貫通穴を介して測定用パイプ内に浸入した前記帯水層の水の水位に基づき、前記間隙水圧を特定する水圧特定部と、を備えてなり、
前記測定用パイプの中に補助測定用パイプが挿入され、該補助測定用パイプは第2上壁及び第2管壁を備えた下型解放型であり、
前記水圧特定部は前記補助測定用パイプ内に配置され、前記浸入水の水面、前記第2上壁及び前記第2管壁で形成される密閉空間の圧力を測定する空間圧力測定部を備える
を備えてなる間隙水圧計ユニット。
【請求項13】
請求項1~12の何れかに記載の前記ユニットであって円柱状のユニットと、該ユニットと同径の円柱状のスペーサとをそれぞれの軸方向に連結してなる、間隙水圧測定装置。
【請求項14】
請求項2に記載の前記ユニットであって円柱状である第1ユニット及び第2ユニットと、これらのユニットと同径の円柱状のスペーサとを軸方向に連結してなり、少なくとも1つの前記スペーサは前記第1及び第2ユニットの間に配置され、前記第1ユニットを貫通した前記複合ケーブルは前記スペーサを貫通して前記第2ユニットに達する、間隙水圧測定装置。
【請求項15】
前記円柱状ユニット及び前記スペーサの外径はスエーデン式サウンディング試験で掘削されたボーリング孔に挿入可能な径である、請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
帯水層の間隙水圧を測定する間隙水圧の測定方法であって、
密閉空間を形成可能な上壁、下壁及び管壁を備え、該管壁の下部に貫通穴が設けられ測定用パイプを帯水層に設置し、
前記貫通穴を介して測定用パイプ内に浸入した前記帯水層の水の水位に基づき、前記間隙水圧を特定する、
間隙水圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地すべり地等における帯水層の間隙水圧を測定する、間隙水圧計ユニットに関わる。
【背景技術】
【0002】
国立研究開発法人の土木研究所により、2014年5月に「部分ストレーナ孔による間隙水圧観測の手引き(案)」(非特許文献1)が作成された。土木研究所が行った地すべり地における実態調査によれば、多くの現場では全区間ストレーナ孔による観測が採用され、すべり面の間隙水圧を正しく観測できないとされている。全区間ストレーナ孔による観測の場合、ボーリング孔内の水圧か水位に基づいて間隙水圧を観測している。同じ資料に、地すべり地で行われている間隙水圧観測の方法には、1)全区間ストレーナ孔、2)部分ストレーナ孔、3)埋設型間隙水圧計の3種類があると記載されている。
1)は、必ずしも対象とする帯水層の間隙水圧が正しく観測されない、
2)は、目的とする深度のすべり面近傍の帯水層の間隙水圧を観測できる、
3)は、深い深度のすべり面への設置やメンテナンス等に技術を要する、
等が明らかになっており、2)の方法の普及が期待されている。この他に、3)は間隙水圧計が高価であることも普及を妨げる要因になっている。
特許文献1の場合は、目的とする帯水層の間隙水圧が測定できるが、口径が大きなボーリング孔(φ80mm以上となっている)を掘削する必要があり、掘削工事に高額の経費が必要である。一方、特許文献2の如く、ボーリング孔を掘削することなく地中に圧入する間隙水圧計もあるが、非特許文献1により、深い深度のすべり面への設置やメンテナンス等に技術を要する、とされている。
【0003】
最近は気象庁が「これまでに経験したことのないような大雨になる」と注意を呼びかけることが多く、地すべりや堤防の決壊が頻発するようになった。堤防が決壊すると被害が甚大となり、堤防の強化は国家の最重要課題である。土木研究所が河川堤防の質的整備の推進を目的として、河川堤防モニタリング技術ガイドライン(案)(2020年9月30日)を作成したが、その中で、堤体内水位(浸潤線)の観測が不可欠であると指摘し、打ち込み式水位観測井方式を開発・公開した(非特許文献2、特許文献3)。非特許文献2による公開資料の写真から水位計は30mm程度の直径で堤体の深い場所に打ち込むことは簡単ではない。また、どの深さに観測対象となる帯水層があるか不明の場合、帯水層に関わる水位が観測できる深度に打ち込める保証がないことが欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3353714号
【特許文献2】特開平11-6777
【特許文献3】特許第5044852号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】土木研究所資料第4283号(2014年5月)
【非特許文献2】土研新技術ショーケース2020in東京(2020年9月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地すべり地には多数の帯水層があり、すべり面が明確でない場合は特定の帯水層を限定できず、土木研究所が推奨している手引き(案)の「部分ストレーナ孔による観測」ができなくなる。特許文献1の如くに多数の帯水層の間隙水圧を測定することが望ましいが、この技術では口径が大きなボーリング孔を掘削する必要があるし、掘削されたボーリング孔を間隙水圧の測定に限定して使用することになり、他の用途には使用できない。
河川の堤体であっても帯水層は複数あり、ボーリング孔を掘削しなければ堤体内のどの深度に帯水層があるか不明である。しかも、同じ間隙水圧計でもボーリング孔が深くなる地すべり地の場合と、深度が15m程度に限定される堤体では掘削するボーリング孔の口径が異なる。したがって、それぞれのボーリング孔の口径に適した外径の間隙水圧計ユニットを選択し、設置深度に適した設置方法を選択する必要がある。
【0007】
地すべり地のボーリング孔では、パイプ式ひずみ計や坑内傾斜計等により地盤の変動が測定されており、これらの観測とすべり面近傍の帯水層の間隙水圧の測定を同じボーリング孔で実施できることが好ましい。また、同じボーリング孔で、深さが違う多数の帯水層の間隙水圧が測定できることが好ましい。堤体であっても同様で多数の帯水層の間隙水圧が測定できる多段方式の間隙水圧計が好ましい。
これらの事情を考慮すると、ターゲットの帯水層の間隙水圧が測定できるようなユニット化された間隙水圧計(ストレーナと間隙水圧計の一体化)が好ましい。以下では、ユニット化された間隙水圧計を間隙水圧計ユニットあるいはユニットと記載する。間隙水圧計ユニットと地表の装置(データ処理装置・通信装置・電源装置等)との間を信号線や電源線で接続する必要があるが(以下では信号線等を複合ケーブルと記載する。)、ボーリング孔が深い場合には、複合ケーブルが長くなり設置工事が難しくなる。このような場合には、間隙水圧計ユニットの内部に複合ケーブル専用のパイプを設ける等、下方に設置された間隙水圧計・パイプ式ひずみ計・坑内傾斜計等の複合ケーブルがユニットを貫通できる構成が好ましい。かかる構成であれば、多数の観測装置を同じボーリング孔に設置する場合でも、複合ケーブルはユニット内部に収納でき設置工事が簡単になる。そして、ユニットで帯水層中の間隙水圧を観測すると同時に、パイプ式ひずみ計で地盤の変形を、坑内傾斜計で地盤の傾斜を観測する等、ボーリング孔で多目的の総合観測ができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
帯水層の間隙水圧を測定するためには、上下を閉塞した一定の長さのパイプの下部の管壁に貫通穴を設け、一定の長さの間隙水圧計としてボーリング孔の帯水層に設置する。そして、帯水層の上下で間隙水圧計の孔壁(パイプの孔壁)との間を遮水する。そうすると、帯水層の水が下部の管壁に設けられた貫通穴からパイプ内に浸透し、浸透した地下水によりパイプ内部の空気が圧縮され、パイプ内部の水面が上昇する。圧縮された空気と浸透した地下水の圧力が釣り合って静止したとき、内部の圧力を測定する。内部の圧力と水位は1:1で対応するから、水位を測定して圧力に換算してもよい。このよう方式の一定の長さの間隙水圧計ユニットであれば、ボーリング孔内の目的とする帯水層の深度にこのユニットを設置し、このユニットの上下で孔壁との間を遮水すれば、帯水層の間隙水圧が測定できる。さらに、このユニット内に、下方に設置する間隙水圧計等の複合ケーブルを通せば、同じボーリング孔の深度が異なる複数の帯水層に多数の間隙水圧計が設置でき、パイプ式ひずみ計や坑内傾斜計も設置できる。
住宅を建設する際に行われる地質調査に、口径が小さなボーリング孔を掘削するスエーデン式サウンディング試験(SWS)なる方法がある。この方法であれば、安価にボーリング孔が掘削でき、必要に応じてサンプルが取得できるし帯水層の深度もわかる。したがって、間隙水圧を観測する場合、SWSを実施し帯水層の深度を求めた後に、掘削されたボーリング孔に外径が小さな間隙水圧計ユニットを設置すれば、深度が分かった帯水層中の間隙水圧が測定できる。この方法はボーリング孔が浅くてよい堤体における間隙水圧の観測に適している。SWSで掘削されたボーリング孔を利用するためには外径が15mm程度の間隙水圧計を製作する必要がある。
【0009】
ボーリング孔は縦方向に掘削されることが多く、口径が小さいほど掘削経費が削減できる。したがって、間隙水圧計ユニットは外径が小さい縦方向に長いパイプ状の形状が好ましいことになる。
【発明の効果】
【0010】
上記の間隙水圧計ユニットをボーリング孔に挿入し、あらかじめ深度が分かっている帯水層の上下で遮水すれば、帯水層から地下水が管壁に設けた貫通穴からユニット内に浸透し、内部圧力と釣り合って静止する。設置したユニット内で圧力を観測すれば、深度が分かっている帯水層の間隙水圧が測定できる。
ユニットを設置する場合、地表の装置(データ処理装置・通信装置・電源装置等)との間を複合ケーブルで接続する必要がある。複合ケーブルが長くなると観測装置を設置する場合に複合ケーブルが設置工事の妨げとなって簡単ではない。同じボーリング孔に複数のユニットを設置する場合、設置工事はより困難になる。その理由は、下方のユニットの複合ケーブルが上部のユニットの側面を通るため帯水層の遮水をすることが難しくなる。しかし、ユニット内部を下方に設置したユニットの複合ケーブルが通る構成であれば複合ケーブルとユニットの設置工事が簡単になる。
上記のユニットをボーリング孔の最下部のすべり面近傍の帯水層に設置し、その上部を遮水すれば、土木研究所が普及を目的として非特許文献1で推奨している部分ストレーナ孔による間隙水圧観測ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは第1実施例の全体図、
図1Bは第1実施例の軸方向の断面図(ボーリング孔の方向を軸方向とする。)、
図1Cは第1実施例の軸方向と直交する断面図である。
【
図2】
図2A第2実施例の全体図、
図2B 第2実施例の軸方向の断面図(ボーリング孔の方向を軸方向とする。)である。
【
図4】
図4Aは第4実施例の軸方向の断面図、
図4Bは第5実施例の軸方向と直交する断面図である。
【
図5】
図5Aは第5実施例の軸方向の断面図、
図5Bは第5実施例の軸方向と直交する断面図である。
【
図6】
図6Aは第6実施例の軸方向の断面図、
図6Bは第6実施例の軸方向と直交する断面図である。
【
図7B】
図7Bは第7実施例の軸方向と直交する断面図である。
【
図8】
図8は間隙水圧計をボーリング孔の設置した状態の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明は上記したような課題を解決するためになされた。この発明は次のように規定される。即ち、帯水層の間隙水圧を測定する間隙水圧計ユニットであって、
密閉空間を形成可能な上壁、下壁及び管壁を備え、該管壁の下部に貫通穴が設けられる測定用パイプと、
前記貫通穴を介して測定用パイプ内に浸入した前記帯水層の水の水位に基づき、前記間隙水圧を特定する水圧特定部と、
を備えてなる間隙水圧計ユニット。
【0013】
このように規定される間隙水圧計ユニットを帯水層中に存在させたとき、帯水層の水が管壁に設けられた貫通穴を介して第1パイプ内に浸入する。浸入した地下水により観察用パイプ内部の空気が圧縮される。そして、圧縮された空気の圧力は帯水層の間隙水圧と釣り合うまで上昇する。圧力が釣り合った状態において、観察用パイプ内へ浸入した水の水位は安定する。この水位に基づき、帯水層の間隙水圧を測定することができる。
例えば、この水位で規定される水面、観察用パイプの上壁及び管壁で規定される空間の圧力は間隙水圧と釣り合っているので、この空間の圧力を測定することで、間隙水圧を特定できる。
上記において、貫通穴は帯水層の地下水を通過させる機能を備えればよい。従って、観察用パイプの下縁からスリット状に形成されたものでもよく。帯水層からの異物侵入を予防するため、透水性のフィルタを備えていてもよい。
【0014】
また、水位で規定される水面と観察用パイプの上壁との距離の変化を測定することにより、間隙水圧と釣り合った水面の高さに対応する当該空間の空気の体積と設置時の初期状態の空気の体積との体積比が求まる。体積比が求まればボイルの法則(温度が一定の時、一定量の気体の体積は圧力に半比例する)を適用することで初期状態の空気の圧力との比が求められ、その比より観察用パイプ内の空気の圧力が求まり、その圧力と釣り合っている帯水層中の間隙水圧を特定できる。
【0015】
観察用パイプに浸入した水は実質的に誘電体であるため、これを挟むように一対の電極を配置することで、水位の変化と一対の電極の容量とが比例の関係となる。既述のように水位の変化(空気の体積変化)から間隙水圧を特定できるので、当該容量と間隙水圧との関係を予め定めておけば、当該容量を測定から間隙水圧を特定できる。
観察用パイプに浸入した水にも若干の導電性があることに着目し、これを一方の電極として、観察用パイプ内に配置されかつ絶縁体で被覆された電極との間の容量の変化も、水位の変化に対応する。かかる変化に基づき、上記と同様に間隙水圧を特定できる。
【0016】
観察用パイプに備えられる水圧特定部が例えば一対の電極から構成される場合、その内部に空間をとりやすい。その結果、観察用パイプの軸方向に複合ケーブルを容易に貫通させられる。この複合ケーブルを挿通させた第2パイプを観察用パイプの軸方向へ貫通させることもできる。
複合ケーブルを貫通させることにより、複数の観察用パイプをシリアルに連結可能となる。
なお、水圧特定部はこの複合ケーブルからパワーや制御信号を受け取り、また測定結果の電気信号をこの複合ケーブルを介して、図示してない処理装置へ送る。
【0017】
複合ケーブルを貫通させることでシリアルに連結可能となった観察用パイプは、スペーサを介することにより、一つのボーリング孔に存在する複数の帯水層へそれぞれ位置させることができる。なお、スペーサは長さ調整可能でかつ複合ケーブルを貫通可能なものとする。
このボーリング孔とし、スエーデン式サウンディング試験で掘削されたものを利用することができる。この発明のユニットはその径を任意に設計でき、その結果、汎用的な上記試験で掘削されたボーリング孔に挿入可能とすることが容易である。
【0018】
この発明は、また、次のようにも規定できる(第1の局面)。
上下が閉塞され下部の管壁に貫通穴が設けられた第1パイプ内に、圧力測定手段と下方に設置された観測装置の複合ケーブルが通る第2パイプを備え、該第1パイプ内の圧力を該圧力測定手段により測定する間隙水圧計ユニット。
【0019】
第1の局面で規定される間隙水圧計ユニットであれば、ボーリング孔に挿入された後に、そのユニットの上下で外壁とボーリング孔の孔壁との間を遮水すれば(ここでは詳細を記述しない遮水方法により遮水する)、帯水層中の地下水が第1パイプの管壁に設けられた貫通穴を介して第1パイプ内に浸透し、浸透した地下水により第1パイプ内部の空気が圧縮される。そして、圧縮された空気の圧力は帯水層の間隙水圧と釣り合うまで上昇する。圧力が釣り合った状態において、第1パイプ内の空気圧ないしは水圧を圧力測定手段で測定すれば、帯水層の間隙水圧が求められる。
【0020】
この発明の第2の局面は次のように規定される。すなわち、
上下が閉塞され下部の管壁に貫通穴が設けられた第1パイプ内に、該第1パイプ内に浸透した地下水を流入させる上部が閉塞された第3パイプと圧力測定手段を備え、下方に設置された観測装置の複合ケーブルが該第1パイプと該第3パイプの間を通り、該第3パイプ内の圧力を該圧力測定手段により測定する間隙水圧計ユニット。
【0021】
第2の局面で規定される間隙水圧計ユニットにおいて、第1パイプの下方の貫通穴から浸透した地下水を第3パイプ内に浸透させれば、第1の局面と同様に第3パイプ内部の空気が圧縮され、第3パイプ内の空気の圧力は帯水層の間隙水圧と釣り合うまで上昇する。圧力が釣り合った状態で、第3パイプ内で圧力測定手段により圧力を測定すれば帯水層の間隙水圧が求められる。
【0022】
第1パイプや第3パイプ内で圧縮された空気の圧力が帯水層の間隙水圧と釣り合った状態では第1パイプや第3パイプ内に浸透した地下水の水面も上昇する。上昇した水面の高さからパイプ内部の空気の体積と設置時の初期状態の空気の体積との体積比が求まる。体積比が求まればボイルの法則(温度が一定の時、一定量の気体の体積は圧力に半比例する)を適用することで初期状態の空気の圧力との比が求められ、その比よりパイプ内の空気の圧力が求まり、その圧力と釣り合っている帯水層中の間隙水圧が求まる。下方に設置された間隙水圧計等の観測装置の複合ケーブルを第2パイプ内、あるいは、第1パイプと第3パイプの間を通せば、同じボーリング孔に複数の間隙水圧計を設置できる。
【0023】
この発明の第3の局面は次のように規定される。すなわち、
第1の局面、第2の局面における圧力を、水位測定手段により検出したパイプ内に浸透した地下水の水位より演算で求める間隙水圧計ユニット。
【0024】
第3の局面で規定される間隙水圧計ユニットにおいて、ボーリング孔の軸方向に直交する断面の形状が高さによらず一定であれば、第1パイプないしは第3パイプ内に浸透した地下水による水面の高さから圧縮された状態の空気の体積が求まる。この圧縮後の空気の体積と初期状態の空気の体積との間の圧縮比より、ボイルの法則を適用することで圧縮された空気の圧力が求められる。そして、圧縮された空気の圧力と釣り合っている帯水層の間隙水圧が求められる。言い換えれば、水位検出手段で検出した水位から演算により帯水層の間隙水圧が求められる。
【0025】
この発明の第4の局面は次のように規定される。すなわち、
上下が閉塞され下部の管壁に貫通穴が設けられた第1パイプ内に、その内面に設けた絶縁物質で覆った第1電極と、下方に設置された観測装置の複合ケーブルが通っている第2パイプと、その外面に設けた絶縁物質で覆った第2電極を備え、該第1電極と該第2電極の間に浸透してきた地下水による電気容量の変化を検出し、電気容量の変化から地下水の水位を検出し、検出した水位から演算により帯水層の間隙水圧を求める間隙水圧計ユニット。
【0026】
第4の局面で規定される間隙水圧計ユニットでは、第1パイプの内面に設けた第1電極並びに第2パイプの外面に設けた第2電極は、第1パイプや第2パイプと電気的に絶縁されており、第1パイプに浸透する地下水とも絶縁されている。その結果、第1電極と第2電極間に電気容量が発生し、電極間に浸透した地下水の高さに対応して電気容量が変化する。この変化する電気容量を発振回路に組み込んで発振させれば、電気容量の変化に対応して回路から出力される周波数が変化する。
この出力される周波数の変化と第1パイプ内の水位変化の関係をあらかじめ求めておけば、その関係式を使うことで、周波数の変化から第1パイプ内の水位が検出でき、検出した水位変化から、第1パイプ内部の空気の圧縮比が求まり、ボイルの法則より圧縮された空気の圧力、言い換えれば帯水層の間隙水圧が演算により求められる。この場合、第1パイプ内部に設ける電極間には比誘電率が大きな(常温では80に近い)水が介在することになり、水位変化に伴う電気容量の変化が大きく水位変化が検出し易い。第2パイプ内部に下方に設置する間隙水圧計等の他の観測装置の複合ケーブルが通っている場合でも、複合ケーブルは第2電極の内部にあることから電気容量の変化には影響を与えることはなく水位変化の検出ができる。
【0027】
第4の局面における方法で帯水層の間隙水圧を求めるには、第1パイプ内部に設ける第1電極と第2電極で、第1パイプ内の水面の変化に対応する電気容量の変化が検出できれば良い。したがって、第1パイプの内面を軸方向に分割して(例えば120角で3分割する等)対向する位置に第1電極と第2電極を設け、これらの電極間に形成される電気容量の変化を検出しても、第1パイプ内部の水位が分かり、検出した水位より演算により帯水層の間隙水圧が求められることになる。
【0028】
この発明の第5の局面は次のように規定される。すなわち、
上下が閉塞され下部の管壁に貫通穴が設けられた第1パイプ内に、該パイプ内に下方に設置された観測装置の複合ケーブルが通る第2パイプと、第1パイプの内面に対向して備えられた絶縁物質で覆われた見込み角180度以下の第1電極と、第2電極を備え、
該第1電極と該第2電極の間に浸透してきた地下水の水位変化に伴う電気容量の変化を検出し、電気容量の変化から地下水の水位を検出し、検出した水位から演算により帯水層の間隙水圧を求める間隙水圧計ユニット。
【0029】
第5の局面で規定される間隙水圧計ユニットでは、第1電極と第2電極が絶縁された状態であり、第1電極と第2電極間に電気容量が発生し、浸透した地下水の高さに対応して誘電体の量が変わるため電気容量が変化する。この電気容量を発振回路等に組み込んで発振させれば、電気容量の変化に対応して回路から出力される周波数が変化する。そして、あらかじめ求めた水位と周波数変化の関係式より、周波数変化から水位変化が求まり、検出した水位より演算により帯水層の間隙水圧が求められる。
【0030】
第4の局面と第5の局面では、第1パイプ内部には第2パイプが存在し、その第2パイプの内部には下方に設置された観測装置の複合ケーブルが通っているが、複合ケーブルの素材の比誘電率は、水の比誘電率より1桁近く小さい。したがって、第1電極と第2電極間に形成される電気容量では、比誘電率が大きな水が占める電気容量の割合が大きく水位変化が検出し易い。
【0031】
第4の局面と第5の局面では、第1電極と第2電極間に挟まれた地下水を誘電体として水位変化に伴う電気容量の増減を利用して間隙水圧を測定する方法であるが、地下水は導電体でありこの地下水を第2電極として用いることができる。この場合、第1電極を覆っている絶縁物質が誘電体となり、第1電極と第2電極である地下水との間に電気容量が形成され、水位変化に対応して第2電極の大きさが変化し、その変化に対応して電気容量が変化する。
【0032】
この発明の第6の局面は次のように規定される。すなわち、
上下が閉塞され下部の管壁に貫通穴が設けられた第1パイプ内に、該パイプ内に下方に設置された観測装置の複合ケーブルが通る第2パイプと、該第1パイプの内面に設けた絶縁物質で覆った第1電極を備え、
該第1パイプに浸透してきた地下水を第2電極とし、第1電極と第2電極の間に挟まれた絶縁物質により形成される、浸透してきた地下水の水位変化に伴う電気容量の変化を検出し、電気容量の変化から地下水の水位を検出し、検出した水位から演算により帯水層の間隙水圧を求める間隙水圧計ユニット。
【0033】
第6の局面で規定される間隙水圧計ユニットであれば、ユニットに浸透した地下水の高さに対応して、第1電極を覆っている絶縁物質に接触する第2電極の面積が変化し、第1電極と第2電極である地下水との間の電気容量が変化する。この場合、第1電極を覆っている絶縁物質の厚さが一定で、ユニット内の水平断面の形状が高さに依存せず同じであれば、浸透した地下水の高さに対応して電気容量が変化する。言い換えれば電気容量の変化から水位を検出し、検出した水位から演算により帯水層の間隙水圧を求めることができる。
【0034】
第1の局面から第6の局面の間隙水圧計ユニットであれば、深いボーリング孔であっても、土木研究所が普及を目的として非特許文献1で推奨している部分ストレーナ孔による間隙水圧観測ができる。
【実施例0035】
第1実施例について
図1A、
図1B、
図1Cで説明する。
図1Aは第1実施例の全体図、
図1Bは軸方向の断面図、
図1Cは軸に直交する方向の断面図である。ここには図示していないがユニットの上下で孔壁との間が遮水され、遮水された中間に位置する帯水層の地下水が第1パイプ(観察用パイプ)1の下方の貫通穴3から流入し、第1パイプ1内で空気圧と浸水した地下水圧(帯水層の間隙水圧)が釣り合った状態とする。
図1Bには水面Lの位置が記載してある。
この水面L、第1パイプ1の管壁5及び上壁7とで密閉空間Sが形成される。間隙水圧の変化に対応して水面Lが上下し、水面Lの位置により密閉空間Sの圧力が変化する。この圧力を空間圧力測定部10で測定する。測定結果の電気信号は、図示しないケーブルを介して、同じく図示しない複合ケーブルへ送られる。この複合ケーブルは、第1パイプ1の上壁7及び下壁9を貫通する第2パイプ11へ挿通される。
この第1実施例では空気圧力測定部10が上部の空気の部分にあるが、空気圧と浸水した地下水圧(帯水層の間隙水圧)が釣り合った状態であれば、下部の地下水中でも地下水と空気の中間でも、測定した圧力からその圧力と釣り合っている帯水層の間隙水圧が求められる。
【0036】
第2実施例について
図2A,
図2B,
図2Cで説明する。なお、
図1で説明した要素と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図2Aは第2実施例の全体図、
図2Bは軸方向の断面図、
図2Cは軸に直交する方向の断面図である。
この実施例の第1パイプ1内には上部が閉塞された地下水が浸透する第3パイプ20がありその第3パイプ20の上部に空間圧力測定部10がある。そして、該第1パイプ1と該第3パイプ20の間に複合ケーブル15が通っている。第1パイプ1内に地下水が流入すると第3パイプ20内にもその地下水が流入するような配置で、第3パイプ20は図示されていない方法で第1パイプ1に固定されており、第3パイプ20内の空気が帯水層の間隙水圧と釣り合うまで圧縮される。釣り合うまで圧縮された後に第3パイプ20内の空気の圧力を空間圧力測定部10で測定すれば、帯水層の間隙水圧が求められる。第3パイプ20において、その水面L3、上壁27及び管壁25で密閉空間S3が形成される。
この実施例では第1パイプ1内の水位も上昇するが、仕切り板を設けて第1パイプ1内の上部に地下が浸透しないようにする方法もある。仕切り板を設けた場合でも、地下水が第3パイプ20内に浸透して内部の空気の圧力と釣り合えば、帯水層の間隙水圧が測定できる。
【0037】
図3は第3実施例の軸方向の断面図である。
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。この第3実施例では上部に超音波送受信機17があり、超音波を利用して水面との間の距離の測定を行い、水面Lを検出しその検出した水位(水面の高さ)から間隙水圧を求める。浸透した地下水の水位が検出できれば、パイプ内の圧縮された空気の体積が分かり、その体積と初期状態の空気の体積(設置時の1気圧の空気の体積)との体積比が分かる。そして、その体積比よりボイルの法則で圧縮された空気の圧力が分かり、その圧力が帯水層中の間隙水圧になる。ここでは図示しないが、第2実施例の如く超音波送受信機を第3パイプ20内に備える場合でも第3パイプ20内で水位を検出しその水位から演算で圧力をもとめれば、帯水層中の間隙水圧が観測できる。
【0038】
第4実施例について
図4A,
図4Bにより説明する。
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図4Aは第4実施例の軸方向の断面図、
図4Bは第4実施例の軸に直交する方向の断面図である。この第4実施例では、第1パイプ1の内面全体に設けた絶縁物質で覆った第1電極31と、ユニットの内部にある第2パイプ11の外面全体に設けた絶縁物質で覆った第2電極33とで、これら電極間に浸透してきた地下水による容量変化を検出する。容量変化から水位を検出し、検出した水位変化から帯水層の間隙水圧を求める。容量変化から水位を検出する方法については以下で説明する。水位が検出できれば第2実施例で説明した如く、空気の圧縮比が求まりその圧縮比から帯水層の間隙水圧が求まる。
第1パイプ1の内部に配置される電極は、第1パイプ1の軸方向の全域にわたっているものが好ましい。これにより、水位が大きく変化しても、その水面から表出する領域と水面下の領域とが常に区分され、もって、水位の変化に容量の変化を追従させられるからである。
【0039】
平行平板で構成される第1電極と第2電極の間には、(1)式で示すように、電極間に挟まれる物質の比誘電率εと電極の面積Sに比例し、電極間の距離dに半比例する電気容量Cが生じる。
C=ε*S/d (1)
第4実施例の第1電極31と第2電極33は平行平板ではないが、第1電極31と第2電極33に挟まれた物質により電気容量が形成される。第4実施例の場合は下方部分に地下水があり、間隙水圧の増加と減少に対応して水面が昇降し、その水位変化に応じて電気容量が増減する。水の比誘電率は大きいため水位変化が小さくても電気容量の変化は大きく、水位変化が検出し易い。
【0040】
ここには図示してないが、例えば第1電極31と第2電極33間で形成される電気容量の変化を図示していない発振回路の一部に組み入れれば、水位変化に伴う電気容量の変化を発振回路の出力周波数の変化として検出することができる。前もって水位変化と発振回路の周波数変化との関係を求めておけば、その関係を用いて周波数変化から水位を検出でき、検出した水位から演算により帯水層の間隙水圧が求められる。
この第4実施例では、第2パイプ11が中央にあるが、必ずしもパイプは中央になくても水位変化と電気容量の変化が1:1で対応するような位置にあればよい。
なお、容量変化の検出には、本発明者らが提案するセンサ用出力装置を適用することが好ましい(WO2021-145428号公報参照)。
【0041】
第5実施例について
図5A,
図5Bにより説明する。なお、
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図5Aは第5実施例の軸方向の断面図であり、
図5Bは第5実施例の軸に直交する方向の断面図である。中央には第2パイプ11がある。この第5実施例は、第1パイプ1の内面に、見込み角180度以下の縦長の絶縁物質で覆われた第1電極41を設け、第1電極と180度離れた内面に、見込み角180度以下の絶縁物質で覆われた第2電極43を設け、これら電極間に浸透してきた地下水の水位変化に伴う電気容量の変化を周波数変化として検出し、その周波数変化から水位を検出し、検出した水位変化からユニット内の空気の圧縮比を求め、その圧縮比から帯水層の間隙水圧を求める。
【0042】
第5実施例では第1電極41と第2電極43が共に見込み角が約180度に近い大きさであるが、見込み角の大きさに制限はなく、第1電極41と第2電極43が接触せず互いに対向しており、水位変化に対応して第1電極41と第2電極43の間の電気容量が変化すればよい。この場合も図示していない発振回路の一部に電気容量を組み入れれば、電気容量の変化を発振回路の出力周波数の変化として検出することができる。そして、その出力周波数の変化から水位変化を求めることができ、その水位から演算により帯水層の間隙水圧を求めることができる。
【0043】
第5実施例では、第1パイプ1の内面に第1電極と41と第2電極43を設けた。しかし、
図2に示した第3パイプ20の内面に絶縁物質で覆われた第1電極と第2電極を設け、帯水層から浸透した地下水を第3パイプ20に流入させてその水位を検出してもよい。この場合、第1パイプ1と第3パイプ20の間を複合ケーブルが通ることになる。
【0044】
第3パイプ20内部に絶縁物質で覆われた電極を設ける場合、第3パイプ20の外径が大きければ電極を設ける作業がし易くなる。第3パイプ20の外径を大きくし第1パイプ1の内径に接する程度にしても、隙間に下方に設置した観測装置用の複合ケーブルが通ればよい。このような場合は、複合ケーブルは第1パイプ1の内面に沿って配置されることになる。
【0045】
第4実施例と第5実施例では、第1パイプ1内部を貫通している第2パイプ11が存在し、その第2パイプ11の内部には下方に設置された観測装置の複合ケーブルが通っているが、複合ケーブルの素材の比誘電率は、水の比誘電率より1桁近く小さい。したがって、第1電極41と第2電極間43に形成される電気容量では、比誘電率が大きな水が占める電気容量の割合が大きく水位変化が検出し易い。
【0046】
第6実施例について
図6A,
図6Bにより説明する。
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図6Aは第6実施例の軸方向の断面図、
図6Bは第6実施例の軸方向と直交する方向の断面図である。中央には第2パイプ11がある。この第6実施例では第1パイプ1の内面に設けられた絶縁物質で覆われた第1電極51と、ユニット内に浸透した地下水53を第2電極とする。地下水にはイオンが存在し導電性があり電極として使用できる。この実施例では、第1電極51を覆う絶縁物質が誘電体となり、地下水が浸透すると第2電極の面積が変わり、第1電極と第2電極との間の電気容量が変化する。第4実施例の中で説明した(1)式によれば、電極間の距離が短いと電気容量が大きくなる。したがって、薄い絶縁物質で第1電極51を覆えば、水位変化により電気容量が大きく変化する。この地下水の水位変化に伴う電気容量の変化を、図示していない発振回路の周波数変化として検出し、電気容量の変化から水位を検出し、検出した水位から演算により帯水層の間隙水圧を求める。
【0047】
第6実施例では第2パイプ11は第1パイプ1と同心円状に配置されているが、地下水が第2電極であるためこの第2パイプ11は同心円状に配置する必要はなく、第1パイプ1の壁面に近い位置に配置してもよい。図示しないが、第1パイプ1の壁面に近い位置に配置すれば大きな空域ができる。この大きくなった空域部分を利用して電気容量の変化を検出してもよい。つまり、絶縁物質で覆った第1電極51と第2電極(地下水)を軸方向に平行に配置し、2つの電極間の電気容量の変化から地下水の水位を検出してもよい。
【0048】
第6実施例の如く、壁面に設けた絶縁物質で覆われた第1電極51と第1パイプ1内に浸透してきた地下水53を第2電極とする間隙水圧計ユニットの場合、第2パイプ11を設けなくても水位検出ができる。第2パイプ11がなければ、第1パイプ1の外径を小さくすることができ、細い口径のボーリング孔に設置できる。
【0049】
第7実施例について
図7A,
図7Bにより説明する。
図7Aは第7実施例の軸方向の断面図、
図7Bは第7実施例の軸方向と直交する方向の断面図である。なお、
図7において
図1と同一の機能を有する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
第7実施例では、中央の第1パイプ1の内部に帯水層の地下水を浸透させて、第1パイプ1の外壁に設けた絶縁物質で覆われた第1電極61と絶縁物質で覆われた第2電極63により、第1パイプ1内に浸透してきた地下水による電気容量の変化を、ここでは図示していない発振回路に組み込んで周波数変化に変換し、その周波数変化から水位を求め、水位変化より演算で間隙水圧を求める。第1電極61と第2電極63の間では、電極間に挟まれることになる絶縁物質と第1パイプ1の管壁5の物質、及び第1パイプ1に浸透してきた地下水による電気容量が生じるが、地下水の比誘電率が他の物質より1桁以上大きいことから、概ね電気容量の変化は地下水の水位変化を反映する。したがって、電気容量の変化から水位変化が求められる。
第1パイプ1の外部に配置される電極は、第1パイプ1の軸方向の全域にわたっているものが好ましい。これにより、水位が大きく変化しても、その水位かより上にある領域と水面より下にある領域とが常に区分され、もって、水位の変化に容量の変化を追従させられるからである。
【0050】
第7実施例は、よく知られた地盤の地質調査であるスエーデン式サウンディング試験(SWS)で掘削されたボーリング孔を使用する事例である。口径が20mm以下のアクリルパイプを保護パイプ71とし、その内部に口径が15mm以下の第1パイプ1を設け第1パイプ1内部の水位を測定する。SWSではボーリング孔を掘削する器具の先端のスクリューポイントの最大径は33mmと定められているが、試験後のボーリング孔の孔径は孔壁の迫出しがありこの大きさより小さくなる。堤体等のボーリング掘削を行い帯水層の深度を求めた後に、帯水層に間隙水圧計ユニットを設置するためには、ユニットの外径は小さいことが好ましい。間隙水圧計ユニットを孔底に設置できれば、土木研究所が普及を目的として非特許文献1で推奨している部分ストレーナ孔による間隙水圧観測に該当する観測ができる。
【0051】
第7実施例では、間隙水圧計の口径を小さくするため、第1パイプ1の外壁に設ける2枚の電極は第1パイプ1と保護パイプ71の隙間を埋める状態であり、2枚の電極の隙間部分に複合ケーブル73が配置されている。原理的には、間隙水圧計の外径は10mm程度にできるが、あまり細くすると発振回路を入れる空域や複合ケーブルを通す隙間が無くなるために、限界がある。
【0052】
図8に間隙水圧計ユニットの使用態様を示す。
図8において符号100はこの発明の間隙水圧計ユニット、符号101はスペーサを示す。符号110はボーリング孔、111は帯水層を示す。
間隙水圧計ユニット100とスペーサ101は同一径の円筒形であり、例えばスペーサ101を構成する円筒形部材として、間隙水圧計ユニットの第1パイプ(貫通穴のないもの)を共用できる。
スペーサ101の長さは任意に調整できるものとし、これにより、間隙水圧計ユニット100を帯水層111に位置させる。
間隙水圧計ユニット100とスペーサ101には第2パイプ113が貫通され、それらへ複合ケーブルが挿通される。これにより、地層に複数の帯水層が存在しても、1つのボーリング孔110を掘削するのみで、それぞれに間隙水圧計100をセット可能となる。