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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030659
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/22 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
F24F1/0007 361H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135906
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】504027657
【氏名又は名称】株式会社イーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】永江 公二
(72)【発明者】
【氏名】黒川 和哉
【テーマコード(参考)】
3L050
【Fターム(参考)】
3L050AA04
(57)【要約】
【課題】結露のないドレンパンによって水分の滴下や飛散を防止することができ低温度に冷却された空気を強力に吹き出すことができる空気調和装置を提供する。
【解決手段】利用側ハウジング11内に利用側熱交換器12及び利用側ファン13が設けられた利用側ユニット10と、熱源側ハウジング21内に熱源側熱交換器22、熱源側ファン23及び圧縮機が設けられ冷媒配管を介して利用側ユニット11に接続された熱源側ユニット20と、利用側ユニット10の下方に設けられ利用側ハウジング11から滴下する水分を受け止めるドレンパン30と、を具備し、ドレンパン30には、断熱部が設けられている。これにより、利用側ハウジング11から低温の水分が滴下してもドレンパン30の下面に結露が発生することを防止できる。よって、空調対象空間の床面等を結露水で濡らすことなく、利用側ユニット10から低温の空気を吹き出すことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用側ハウジング内に利用側熱交換器及び利用側ファンが設けられた利用側ユニットと、
熱源側ハウジング内に熱源側熱交換器、熱源側ファン及び圧縮機が設けられ冷媒配管を介して前記利用側ユニットに接続された熱源側ユニットと、
前記利用側ユニットの下方に設けられ前記利用側ハウジングから滴下する水分を受け止めるドレンパンと、を具備し、
前記ドレンパンの下面または上面には、断熱部が設けられていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記利用側ユニット及び前記熱源側ユニットは、移動可能な一つの架台上に配設されており、
前記ドレンパンは、前記架台の上部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記利用側熱交換器の伝熱管列数は、前記熱源側熱交換器の伝熱管列数より多いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記ドレンパンは、前記熱源側ハウジングから滴下する水分を受け止めることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記熱源側ユニットの下方に設けられ前記熱源側ハウジングから滴下する水分を受け止める熱源側ドレンパンを具備することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用側ユニットと熱源側ユニットが共通の架台上に設けられた移動可能な空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用側ユニットと熱源側ユニットを移動可能な架台上に一体的に備えたスポット空調用の空気調和装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、室内熱交換器を有する室内ユニットと、室外熱交換器を有する室外ユニットと、室内熱交換器及び室外熱交換器の吸込口が対向するように室内ユニット及び室外ユニットが載置された移動可能な架台と、を具備する空気調和機が開示されている。
【0004】
この種の空気調和装置では、利用側ユニットの下方に、利用側熱交換器に付着して滴下する水分を受け止めて排水するためのドレンパンが設けられている。例えば特許文献1に開示された空気調和機では、室内ユニット設置台の上部にドレンパンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-11984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の空気調和装置は、通常の空気調和装置を設置することが難しい高温の大規模空間、例えば、工場、作業場、倉庫、体育館等のスポット空調用に使用されることから、好適な温度に冷却された空気を遠くまで届くように吹き出す必要がある。そのため、吸い込み空気温度と吹き出し空気温度との温度差を一般的な空気調和装置よりも大きくし、吹き出し空気温度を低くすることが求められる。
【0007】
しかしながら、吸い込み空気温度と吹き出し空気温度との温度差を大きくすると、蒸発器となる利用側熱交換器等から滴下する水分の温度が低くなると共に、ハウジングの壁面等にも結露によって水分が付着し、これら低温の水分がドレンパンに滴下する。このような低温の水分をドレンパンが受け止めることにより、ドレンパンの下面にも結露が発生することがあった。
【0008】
例えば、吸い込み空気温度と吹き出し空気温度との温度差を15度程度とした空気調和装置では、ドレンパンへ滴下する水分の温度が低く、ドレンパンの下面にも多くの水分が付着する。そして、その結露によって発生したドレンパンの下面の水分が空調対象空間の床面に滴下することもあった。
【0009】
また、熱源側ユニットにおいても同様に、熱源側熱交換器を蒸発器として利用する暖房運転等では、熱源側熱交換器に結露が発生する。また、熱源側熱交換器を凝縮器として利用する冷房運転等においても、圧縮機までの低温の冷媒配管やハウジングの壁面等に結露が発生して熱源側ユニットから水分が滴下する恐れがあった。しかし、従来技術の空気調和装置では、熱源側ユニットに好適なドレンパンが設けられていなかった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、結露のないドレンパンによって水分の滴下や飛散を防止することができ低温度に冷却された空気を強力に吹き出すことができる空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の空気調和装置は、利用側ハウジング内に利用側熱交換器及び利用側ファンが設けられた利用側ユニットと、熱源側ハウジング内に熱源側熱交換器、熱源側ファン及び圧縮機が設けられ冷媒配管を介して前記利用側ユニットに接続された熱源側ユニットと、前記利用側ユニットの下方に設けられ前記利用側ハウジングから滴下する水分を受け止めるドレンパンと、を具備し、前記ドレンパンの下面または上面には、断熱部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空気調和装置によれば、利用側ユニットと、冷媒配管を介して利用側ユニットに接続された熱源側ユニットと、利用側ユニットの下方に設けられ利用側ハウジングから滴下する水分を受け止めるドレンパンと、を具備し、ドレンパンの下面または上面には、断熱部が設けられている。これにより、利用側ハウジングから低温の水分が滴下してもドレンパンの下面に結露が発生することを防止できる。よって、空調対象空間の床面等を結露水で濡らすことなく、利用側ユニットから低温の空気を吹き出すことができる。よって、水分の飛散が少なく優れた冷却性能を発揮する空気調和装置が得られる。
【0013】
また、本発明の空気調和装置によれば、前記利用側ユニット及び前記熱源側ユニットは、移動可能な一つの架台上に配設されており、前記ドレンパンは、前記架台の上部に設けられても良い。これにより、工場や倉庫等の大空間において、空気調和装置を容易に移動することができ、水分を飛散させることなく、冷風を必要とする場所に低温度の空気を好適に吹き付けることができる。
【0014】
また、本発明の空気調和装置によれば、前記利用側熱交換器の伝熱管列数は、前記熱源側熱交換器の伝熱管列数より多くても良い。これにより、利用側ユニットに吸い込まれた周囲空気は利用側熱交換器の風上側から風下側に向けて十分に熱交換を繰り返しながら吹き出されるため、利用側ユニットの吸い込み空気温度と吹き出し空気温度との温度差を大きくできる。
【0015】
そして、このように温度差の大きい冷房運転においても、ドレンパンは、利用側熱交換器や利用側ハウジングに付着する凝縮水の滴下を受け止めて排水することができる。よって、空気調和装置は、空調対象空間への水分の飛散を抑えて好適な冷風を吹き出すことができ、スポット空調用として使用される場合でも、良好な空調効果を発揮する。また、熱源側熱交換器は、伝熱管列数が少ないので、優れた熱交換効率が得られる。よって、空気調和装置は、省エネルギー性に優れている。
【0016】
また、本発明の空気調和装置によれば、前記ドレンパンは、前記熱源側ハウジングから滴下する水分を受け止めても良い。これにより、熱源側ユニットから滴下する水分で空調対象空間の床面等が濡れてしまうことを防止できる。よって、圧縮機で吸引する冷媒の温度が低くなる空気調和運転を行うことができる。また、熱源側ユニットからの滴下する水分量が多くてもドレンパンで受け止めることができるので、熱源側熱交換器の凝縮水が多くなる暖房運転を行うこともできる。即ち、熱源側熱交換器を蒸発器として使用する暖房運転においても、水分の飛散が少ない高性能な空気調和運転が可能となる。
【0017】
また、本発明の空気調和装置は、前記熱源側ユニットの下方に設けられ前記熱源側ハウジングから滴下する水分を受け止める熱源側ドレンパンを具備しても良い。これにより、熱源側ユニットから滴下する水分を受け止めて排水し、空調対象空間の床面等が濡れてしまうことを防止できる。よって、温度差の大きい高性能な空気調和運転を行うことができる。また例えば、熱源側熱交換器を蒸発器として使用し、熱源側熱交換器の凝縮水が多くなる暖房運転等においても、熱源側ユニットからの水分の滴下を受け止めることができる。よって、空気調和装置は、高性能な暖房運転を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る空気調和装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る空気調和装置の架台の概略構成を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る空気調和装置のドレンパンの概略を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る空気調和装置のドレンパンの底板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る空気調和装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る空気調和装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、空気調和装置1は、空調運転を行う装置であり、架台40の上に載置された利用側ユニット10と熱源側ユニット20とを有する。空気調和装置1は、利用側ユニット10と熱源側ユニット20を一体化した移動可能な強力スポットエアコンである。
【0020】
利用側ユニット10は、主として利用側の空気を冷却または加熱して供給する装置である。利用側ユニット10は、一般的なパッケージエアコンの室内ユニットに相当する構成を有する。
【0021】
具体的には、利用側ユニット10は、金属板材料等から形成された略箱状の筐体である利用側ハウジングとしてのハウジング11を有する。ハウジング11の内部には、冷凍サイクルを構成する部品である利用側熱交換器12と利用側ファン13が設けられている。この利用側ファン13はプロペラファンであり、図示しないモータによって回転駆動される。
【0022】
熱源側ユニット20は、主として排気側の空気に対して放熱または吸熱する装置である。熱源側ユニット20は、一般的なパッケージエアコンの室外ユニットに相当する構成を有する。
【0023】
具体的には、熱源側ユニット20は、金属板材料等から形成された略箱状の筐体である熱源側ハウジングとしてのハウジング21を有する。ハウジング21の内部には、冷凍サイクルを構成する部品である熱源側熱交換器22と熱源側ファン23が設けられている。この熱源側ファン23もプロペラファンであり、図示しないモータによって回転駆動される。
【0024】
利用側ユニット10は、ハウジング11、利用側熱交換器12及び利用側ファン13が熱源側ユニット20と略同じ屋外設置仕様に配置されている。利用側ユニット10は、耐候性や防水性において熱源側ユニット20と略同等な仕様で形成されている。
【0025】
このような構成により、利用側ユニット10と熱源側ユニット20の部品の共通化を図り、空気調和装置1の生産性を向上させることができる。また、利用側ユニット10が屋外設置仕様に形成され、耐候性及び防水性が向上することにより、利用側熱交換器12の洗浄性能が高められる。
【0026】
利用側ユニット10の利用側熱交換器12は、冷媒配管28を介して熱源側ユニット20の熱源側熱交換器22に連結されている。詳しくは、利用側熱交換器12及び熱源側熱交換器22は、低圧の冷媒を圧縮して高圧にする図示しない圧縮機、高圧の冷媒を膨張させて低圧にする図示しない膨張弁、冷媒配管28及びその他の図示しない冷媒配管等を介して接続されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクル回路を構成している。冷凍サイクルで用いられる冷媒としては、例えば、HFC冷媒等が採用される。
【0027】
利用側ユニット10のハウジング11には、周囲空気を吸引する開口部である吸込口15と、空気を吹き出す開口部である吹出口16が形成されている。吸込口15には、外部から吸い込まれた空気と冷媒との間で熱交換を行う利用側熱交換器12が設けられている。これにより、例えば、冷房運転の際には、外部から吸い込まれた空気は、利用側熱交換器12内で蒸発する冷媒によって冷却される。
【0028】
吹出口16には、利用側熱交換器12と熱交換したハウジング11内の空気を外側に吹き出す利用側ファン13が設けられている。利用側ファン13は、例えば、プロペラファン等であり、図示しないモータによって回転駆動される。
【0029】
本実施形態に係る空気調和装置1では、特に強力な利用側ファン13が装着されている。具体的には、利用側ファン13は、例えば、吹出口16から風速8m/sで空気を吹き出す強力な送風能力を有している。これにより、工場等の大規模作業場において直進性の強い風を遠くまで届けることができ、作業する空間を狙ってその作業空間のみを効率良く冷房または暖房することができる。
【0030】
また、吹出口16には、利用側ファン13によって送られる空気の流れ方向を調整するための風向ガイド14が設けられている。風向ガイド14は、利用側ファン13の外周を囲む、例えば、略円筒状の形態を成す外周部を有する。風向ガイド14の外周部に囲まれた内部は空気が流れる吹出口16につながる開口となっており、そこには空気の流れを調整する図示しない可変式の風向調整板が設けられている。
【0031】
このような構成により、周囲の空気と温度差が十分に大きくなるように利用側熱交換器12で冷却または加熱された空気を、それを必要とする作業空間に向けて効率良く流すことができる。
【0032】
利用側ユニット10のハウジング11の前面には、熱源側ユニット20につながる冷媒配管28が挿通される配管取出口17が設けられている。配管取出口17は、例えば、ノックアウトホールである。
【0033】
熱源側ユニット20のハウジング21には、空気を吸引する開口部である吸込口25と、空気を吹き出す開口部である吹出口26が形成されている。吸込口25には、周囲から吸い込まれた空気と冷媒との間で熱交換を行う熱源側熱交換器22が設けられている。これにより、例えば、冷房運転の際には、熱源側熱交換器22内の冷媒は、吸込口25から流入する空気によって冷却され凝縮する。換言すれば、吸込口25から吸い込まれた空気は、熱源側熱交換器22内の冷媒と熱交換して加熱される。
【0034】
吹出口26には、熱源側熱交換器22と熱交換したハウジング21内の空気を外側に吹き出す熱源側ファン23が設けられている。熱源側ファン23は、例えば、プロペラファン等であり、図示しないモータによって回転駆動される。
【0035】
また、吹出口26には、熱源側ファン23によって送られる空気の吹き出し方向を調整するための風向ガイド24が設けられている。風向ガイド24は、熱源側ファン23の外周を囲むような、例えば、略四角形状の形態を成す外枠部を有し、金属板材料や樹脂製板材料等から形成されている。
【0036】
熱源側ユニット20のハウジング21には、利用側ユニット10につながる冷媒配管28が挿通される配管取出口27が形成されている。配管取出口27は、例えば、ノックアウトホールである。
【0037】
利用側ユニット10と熱源側ユニット20は、それぞれが空気を吸引する吸込口15と吸込口25を対向させるよう架台40上に設けられている。即ち、利用側ユニット10と熱源側ユニット20は、利用側熱交換器12側と熱源側熱交換器22側が対向するよう背中合わせに配設されている。
【0038】
換言すれば、利用側ユニット10と熱源側ユニット20は、それぞれが逆方向に空気を吹き出すよう、利用側ユニット10の吹出口16と熱源側ユニット20の吹出口26が外向きになるよう配設されている。
【0039】
上記のように、利用側ユニット10と熱源側ユニット20が、吸込口15と吸込口25を内向きに対向させて、逆方向に空気を吹き出すよう吹出口16と吹出口26が逆方向を向くよう配設されることにより、大規模工場や物流倉庫等に対する効率的な空気調和が実現する。
【0040】
即ち、冷却または加熱された空気を利用側ユニット10の吹出口16から空調対象の作業領域に効率良く強力に吹き付けることができる。そして、利用側ユニット10の吹出口16に対して反対側を向く熱源側ユニット20の吹出口26から、空調用の排熱空気を、空気調和を必要とする空間から離れた空間に吹き出すことができる。
【0041】
図2は、架台40の概略構成を示す斜視図である。
図1及び図2を参照して、架台40は、利用側ユニット10及び熱源側ユニット20を一体的に支える台である。架台40は、例えば、山形鋼、溝形鋼、板金加工鋼材、その他の鋼材等から形成されている。架台40の下部には、外周が上面視で略矩形枠状の形態を成す基台41が形成されている。熱源側ユニット20は、基台41の上部に固定されている。
【0042】
架台40には、利用側ユニット10を設置する利用側ユニット設置台42が形成されている。利用側ユニット設置台42は、利用側ユニット10の底部を熱源側ユニット20の底部よりも高い位置で支持できるよう、基台41の上部から上方に突出するよう形成されている。
【0043】
基台41の上部に利用側ユニット設置台42が設けられることにより、利用側ユニット10は高い位置に固定される。このように利用側ユニット10が高い位置に設けられることにより、利用側ユニット10の吹出口16の位置が高くなり、空調用の冷風や温風を作業空間に対して広く効率的に吹き流すことができる。
【0044】
利用側ユニット設置台42の上部には、ドレンパン30が設けられている。ドレンパン30は、利用側ユニット10の利用側熱交換器12やハウジング11に付着して滴下する水分を受け止めて図示しない配水管に排水するための部材である。ドレンパン30が設けられることにより、利用側ユニット10から滴下する水分を集めて好適に排水することができ、作業空間に水分が飛散することを防止することができる。
【0045】
基台41の下部の角部近傍には、車輪43が設けられている。車輪43は、例えば、ゴム車輪等を有するキャスタであり、一方の端辺側が所定の一方向に向かって移動可能な固定車、他方の端辺側が方向変更可能な自在車であっても良い。車輪43が設けられることにより、架台40は、利用側ユニット10及び熱源側ユニット20を一体的に支持した状態で移動可能に構成される。
【0046】
図3は、ドレンパン30の概略を示す斜視図である。
図3に示すように、ドレンパン30は、金属板材料等から形成された略皿状の部材である。具体的には、ドレンパン30は、略四角形状の底板31と、底板31の辺部から上方に曲折された側面板部32と、を有し、略箱状の形態を成している。
【0047】
側面板部32の上部には、必要な箇所に、外側に折り曲げられた支持板部33が形成されている。支持板部33は、架台40(図2参照)の利用側ユニット設置台42(図2参照)の上部に掛けられ、ドレンパン30を支持する部分である。このような形態により、ドレンパン30の取り付けを容易に行うことができる。
【0048】
ドレンパン30の底板31には、滴下した水分を排出する排水口34が形成されている。排水口34の下部には、ドレンパン30から排出した空気を流す図示しない排水管が接続される。
【0049】
また、底板31は、利用側ユニット10(図1参照)から滴下した水分が排水口34に流れるように、適度な角度で傾斜するよう形成されている。
このような構成により、ドレンパン30は、利用側ユニット10の利用側熱交換器12やハウジング11に付着して滴下する結露水を受け止めて排水することができる。
【0050】
図4は、ドレンパン30の底板31の断面図である。
図4に示すように、ドレンパン30の底板31の下面には、断熱部35が設けられている。断熱部35は、例えば、発泡ポリエチレンシート等の合成樹脂製のシート状の断熱部材をドレンパン30の下面に粘着させることにより形成される。
このようにドレンパン30の下面に断熱部35が設けられることにより、低温の水分が滴下してもドレンパン30の下面に結露が発生することを防止できる。
【0051】
なお、図示を省略するが、断熱部35は、ドレンパン30の底板31の上面に設けられても良い。断熱部35がドレンパン30の上面に設けられる構成によっても、ドレンパン30の下面に結露が発生することを防止できる。
【0052】
図1ないし図4を参照して、空気調和装置1は、利用側ユニット10から空調対象空間に向かって吹き出す空気の温度を低くして利用側ユニット10の利用側熱交換器12やハウジング11から低温の水分が滴下しても、ドレンパン30の下面に結露が発生することがない。
【0053】
即ち、空気調和装置1は、空調対象空間の床面等を結露水で濡らすことなく、利用側ユニット10から低温の空気を吹き出すことができる。このように、本実施形態に係る空気調和装置1は、水分の飛散が少なく且つ優れた冷却性能を発揮する。
【0054】
前述のとおり、利用側ユニット10及び熱源側ユニット20は、移動可能な一つの架台40上に配設されており、ドレンパン30は、架台40の上部に設けられている。これにより、工場や倉庫等の大空間において、冷却を必要とする場所の近傍に空気調和装置1を容易に移動することができ、水分を飛散させることなく、冷房対象に対して低温度の空気を好適に吹き付けることができる。
【0055】
なお、図示を省略するが、ドレンパン30は、熱源側ハウジングであるハウジング21から滴下する水分も受け止めることができるよう配設されても良い。即ち、ドレンパン30は、大きなサイズに形成され、利用側ユニット10及び熱源側ユニット20の両方の下方を塞ぐように基台41の上部近傍に配設されていも良い。
【0056】
このような構成により、熱源側ユニット20から滴下する水分で空調対象空間の床面等が濡れてしまうことを防止できる。よって、利用側ユニット10から冷風を吹き出すために、熱源側ユニット20の圧縮機で吸引する冷媒の圧力が低く蒸発温度が低い空気調和運転を行うことができる。
【0057】
また、熱源側ユニット20から滴下する水分量が多くても大きなドレンパン30で受け止めることができるので、空気調和装置1は、熱源側熱交換器22からの凝縮水が多くなる暖房運転を行うこともできる。即ち、熱源側熱交換器22を蒸発器として使用する暖房運転においても、水分の飛散が少ない高性能な空気調和運転が可能となる。
【0058】
また例えば、熱源側ユニット20の下方に、熱源側ハウジングとしてのハウジング21から滴下する水分を受け止める図示しない熱源側ドレンパンが別途設けられても良い。これにより、熱源側ドレンパンで熱源側ユニット20から滴下する水分を受け止めて排水し、空調対象空間の床面等が濡れてしまうことを防止できる。よって、吸い込み空気と吹き出し空気の温度差が大きい高性能な冷房運転を行うことができる。
【0059】
また例えば、熱源側熱交換器22を蒸発器として使用し、熱源側熱交換器22に付着する凝縮水が多くなる暖房運転等においても、熱源側ユニット20からの水分の滴下を受け止めることができる。よって、このような熱源側ドレンパンを有する空気調和装置1は、高性能な暖房運転を行うこともできる。
【0060】
また、空気調和装置1の利用側熱交換器12及び熱源側熱交換器22は、例えばフィンアンドチューブ式の熱交換器であり、図示を省略するが、利用側熱交換器12の伝熱管列数は、熱源側熱交換器22の伝熱管列数より多くても良い。
【0061】
具体的には、利用側熱交換器12の伝熱管列数は、熱源側熱交換器22の伝熱管列数の2倍以上が好ましい。例えば、熱源側熱交換器22の伝熱管列数は2列のであるのに対し、利用側熱交換器12の伝熱管列数は4列である。
【0062】
これにより、利用側ユニット10に吸い込まれた周囲空気は利用側熱交換器12の風上側から風下側に向けて十分に熱交換を繰り返しながら吹き出されるため、利用側ユニット10の吸い込み空気温度と吹き出し空気温度との温度差を大きくできる。
【0063】
そして、このように温度差の大きい冷房運転においても、ドレンパン30は、利用側熱交換器12やハウジング11に付着する凝縮水の滴下を受け止めて排水することができる。よって、空気調和装置1は、空調対象空間への水分の飛散を抑えて好適な冷風を吹き出すことができ、スポット空調用として使用される場合でも、良好な空調効果を発揮する。
【0064】
その結果、例えば、猛暑日等において吸い込み空気温度が40度を超えるような場合であっても、吹き出し空気温度を25度以下に下げることができる。よって、空気調和装置1は、従来技術の空気調和装置では難しかった熱中症対策としても有効となる好適な温度の冷風を利用者に送ることができる。
【0065】
また、熱源側熱交換器22の伝熱管列数は少ないので、熱源側熱交換器22の伝熱管列数を多くする場合のように、冷房時の消費電力に影響を与える心配がない。即ち、伝熱管列数の少ない熱源側熱交換器22によって、優れた熱交換効率が得られる。よって、空気調和装置1は、周囲が高温状態であっても好適な温度に冷却された空気を供給することが可能であり、且つ、消費電力が少なく省エネルギー性も優れている。
【0066】
なお、利用側熱交換器12の伝熱管列数が4列、熱源側熱交換器22の伝熱管列数が2列である例を挙げたが、利用側熱交換器12及び熱源側熱交換器22の伝熱管列数は、これに限定されるものではない。
【0067】
例えば、熱源側熱交換器22の伝熱管列数が2列の場合、利用側熱交換器12の伝熱管列数は3列以上であれば良い。また例えば、熱源側熱交換器22の伝熱管列数が3列の場合、利用側熱交換器12の伝熱管列数は4列以上であれば良い。
また、利用側熱交換器12の全体について伝熱管列数を増加させる構成に代えて、伝熱管列数を部分的に増加させる構成が採用されても良い。
【0068】
また、本実施形態に係る空気調和装置1では、特に強力な利用側ファン13が装着されている。具体的には、利用側ファン13は、送風能力が熱源側ファン23よりも大きくなるように設置されている。即ち、利用側ファン13の吹き出し風速は、熱源側ファン23の吹き出し風速よりも大きく設定されても良い。例えば、利用側ファン13は、吹出口16から風速8m/sで空気を吹き出す強力な送風能力を有している。
【0069】
また、利用側ファン13が熱源側ファン23と同じくプロペラファンであることから、部品の共通化を図りつつ、工場等の大規模作業場において送風の直進性が強く、周囲空気よりも温度差の大きな冷風を遠くまで届けることができる。よって、利用者が作業する空間を狙ってその作業空間のみを効率良く冷房または暖房することができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、利用側ユニット10及び熱源側ユニット20の台数、サイズ、配置等は、その他の設計仕様であっても良い。また、利用側熱交換器12及び熱源側熱交換器22の伝熱管列数等は変更可能であり、利用側熱交換器12及び熱源側熱交換器22の個数、サイズ、配置、形状等についても、その他の仕様を採用することができる。
【0071】
また、上述の実施形態に係る空気調和装置1は、利用側ユニット10と熱源側ユニット20が共通の架台40の上に載置され一体化された移動可能な構成であったが、これに限定されるものではない。空気調和装置1は、利用側ユニット10と熱源側ユニット20がそれぞれ別の位置に設置される構成でも良い。
【0072】
利用側ユニット10と熱源側ユニット20が一体化されず、離れた別の位置に設置される構成であっても、利用側ユニット10及び熱源側ユニット20の下方に、断熱部35を有するドレンパン30が設けられることにより、結露水の飛散を防止しつつ、吸い込み空気を大温度差の低温に冷却することができる。これにより、結露水の漏れがなく、好適に冷却された低温の空気を冷却対象に効率良く送ることができる空調性能及び省エネルギー性能に優れた空気調和装置1が得られる。
【0073】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 空気調和装置
10 利用側ユニット
11 ハウジング
12 利用側熱交換器
13 利用側ファン
14 風向ガイド
15 吸込口
16 吹出口
17 配管取出口
20 熱源側ユニット
21 ハウジング
22 熱源側熱交換器
23 熱源側ファン
24 風向ガイド
25 吸込口
26 吹出口
27 配管取出口
28 冷媒配管
30 ドレンパン
31 底板
32 側面板部
33 支持板部
34 排水口
35 断熱部
40 架台
41 基台
42 利用側ユニット設置台
43 車輪
図1
図2
図3
図4