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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030662
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電気機械式ブレーキ倍力装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B60T13/74 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135912
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
【テーマコード(参考)】
3D048
【Fターム(参考)】
3D048BB45
3D048BB59
3D048CC41
3D048HH18
3D048HH42
3D048HH43
3D048HH51
3D048HH53
3D048KK02
3D048MM01
3D048NN07
3D048NN09
3D048PP01
3D048PP02
3D048PP04
3D048PP07
3D048PP10
(57)【要約】
【課題】電気機械式ブレーキ倍力装置において、最小限の部品で強度を確保しつつ設計上の制限や装置自体の大型化を回避する。
【解決手段】本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置1は、円筒状のカバー11およびドーナツ状の底板12を含むケーシング10と、前記カバー11と前記底板12の間に架設された複数本の支柱100とを有し、前記支柱100によってブラケット90を軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持するとともに、前記支柱100に戻しバネ110が外装されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のカバーおよびドーナツ状の底板を含むケーシングと、
ブレーキペダルに連結された入力ロッドと、
前記入力ロッドと連動してブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、
前記制御ロッドの変位を検出するセンサー部と、
前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、
前記センサー部から得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、
前記制御ロッドの外周に配置され、軸部材と回転部材とからなり、前記モーター部と連動する前記回転部材の回転運動を前記軸部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、
前記軸部材の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するブラケットと、
前記ブラケットを付勢して移動後に元の位置に戻すための戻しバネと、
前記制御ロッドおよび前記軸部材の先端側に接続され、前記制御ロッドまたは前記軸部材の直線運動により動作するマスタシリンダと、を備える電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
前記カバーと前記底板の間に架設された複数本の支柱を有し、
前記支柱によって前記ブラケットを軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持するとともに、前記支柱に前記戻しバネが外装されていることを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項2】
前記ブラケットが、中心部に貫通形成されて前記軸部材と接続するための接続孔と、前記接続孔と離間して形成された複数の通孔と、を有し、
前記支柱が前記通孔にそれぞれ挿通されている、
ことを特徴とする請求項1記載の電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項3】
前記支柱は、一方端に小径部と大径部が形成されているとともに他端にねじ部と段部が形成されており、
前記支柱の一方端は、前記小径部が前記ケーシングの底板に形成された取付孔に挿入されているとともに前記大径部が前記ケーシングの底板に接しており、
前記支柱の他端は、前記段部が前記ケーシングのカバーに形成された取付孔に接しており前記取付孔から外部に突出した前記ねじ部にナットが螺着されていることで、前記支柱が前記カバーと前記底板の間に架設されて固定されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項4】
前記電気機械式ブレーキ倍力装置が、
ブレーキペダルに連結された入力ロッドと、
前記入力ロッドと連動してブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、
前記制御ロッドの変位を検出するセンサー部と、
前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、
前記センサー部から得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、
前記制御ロッドの外周に配置され、軸部材と回転部材とからなり、前記モーター部と連動する前記回転部材の回転運動を前記軸部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、
前記軸部材の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するブラケットと、
前記ブラケットを付勢して移動後に元の位置に戻すための戻しバネと、
前記制御ロッドおよび前記軸部材の先端側に接続され、前記制御ロッドまたは前記軸部材の直線運動により動作するマスタシリンダと、を備える、
ことを特徴とする請求項1,2または3記載の電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項5】
前記入力ロッドと、前記制御ロッドと、前記モーター部と、前記回転直動変換部と、前記ブラケットと、前記マスタシリンダとが、全て同軸に配置されている、
ことを特徴とする請求項4記載の電気機械式ブレーキ倍力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車においてブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅するための電気機械式ブレーキ倍力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のブレーキ操作を補助するために、ブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅させるブレーキ倍力装置が知られており、例えば特開昭54-90459号公報(特許文献1)に記載された発明のように、エンジンの負圧を利用した真空式ブレーキ倍力装置が一般的に用いられていた。
【0003】
ところで近年、世界各国においてカーボンニュートラルの動きが活発化しており、脱化石燃料の目標を果たすために、電気自動車や燃料電池自動車といったエンジンを動力源として備えない自動車への移行が今後の自動車業界における重要な課題となっている。
【0004】
そうなると、従来のエンジン搭載車と、電気自動車のようなエンジン非搭載車との相違点の一つとして、エンジンを有しないことにより、従来システムで用いられていたエンジンの負圧(吸気管負圧)が発生しないため、負圧を用いた各パーツが使用できなくなる問題が生じる。
【0005】
従って、真空式ブレーキ倍力装置に代わり、且つ自動ブレーキでも使用可能な高い制動力を得ることのできるブレーキ倍力装置が必要とされ、例えば特開2018-199448号公報(特許文献2)、再表2018/097278号公報(特許文献3)に記載された発明のように動力源としてモーターを備えた電気機械式のブレーキ倍力装置が知られている。
【0006】
これら従来の電気機械式のブレーキ倍力装置によれば、エンジンを有しない車であっても、電力により駆動するモーターを用いることによってブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅することを可能とすることができる。
【0007】
ここで、モーターの回転動作を直線動作に変換する際には、例えば特開2020-93787号公報(特許文献4)に記載されたように、ケーシング内に架設された支柱を用いて回転直動変換部材(スピンドル)を軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持することで変換可能であることが知られている。
【0008】
しかしながら、前記各特許文献に記載の従来発明のように、ケーシング内に各種部品を配置する場合、強度を確保しつつ配置する必要もあり、設計上の制限や装置自体の大型化を招く問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭54-90459号公報
【特許文献2】特開2018-199448号公報
【特許文献3】再表2018/097278号公報
【特許文献4】特開2020-93787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、電気機械式ブレーキ倍力装置において、最小限の部品で強度を確保しつつ設計上の制限や装置自体の大型化を回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置は、
円筒状のカバーおよびドーナツ状の底板を含むケーシングと、
ブレーキペダルに連結された入力ロッドと、
前記入力ロッドと連動してブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、
前記制御ロッドの変位を検出するセンサー部と、
前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、
前記センサー部から得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、
前記制御ロッドの外周に配置され、軸部材と回転部材とからなり、前記モーター部と連動する前記回転部材の回転運動を前記軸部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、
前記軸部材の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するブラケットと、
前記ブラケットを付勢して移動後に元の位置に戻すための戻しバネと、
前記制御ロッドおよび前記軸部材の先端側に接続され、前記制御ロッドまたは前記軸部材の直線運動により動作するマスタシリンダと、を備える電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
前記カバーと前記底板の間に架設された複数本の支柱を有し、
前記支柱によって前記ブラケットを軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持するとともに、前記支柱に前記戻しバネが外装されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、電気機械式ブレーキ倍力装置において、ケーシングを構成するカバーと底板の間に架設された支柱によって、ブラケットを軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持する機能と、外装した前記戻しバネを案内するスプリングガイド機能とを1つの部品で実現することができるため、最小限の部品で強度を確保しつつ設計上の制限や装置自体の大型化を回避することが可能となる。
【0013】
また、前記ブラケットが、中心部に貫通形成されて前記軸部材と接続するための接続孔と、前記接続孔と離間して形成された複数の通孔と、を有し、
前記支柱が前記通孔にそれぞれ挿通されている場合、比較的簡易な構造で容易にブラケットを軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持することが可能となる。
【0014】
更に、前記支柱は、一方端に小径部と大径部が形成されているとともに他端にねじ部と段部が形成されており、
前記支柱の一方端は、前記小径部が前記ケーシングの底板に形成された取付孔に挿入されているとともに前記大径部が前記ケーシングの底板に接しており、
前記支柱の他端は、前記段部が前記ケーシングのカバーに形成された取付孔に接しており前記取付孔から外部に突出した前記ねじ部にナットが螺着されていることで、前記支柱が前記カバーと前記底板の間に架設されて固定されている場合、前記支柱は前述の2つの機能に加えて前記ケーシングを構成する前記カバーと前記底板との間を梁のように架設して所定の位置関係に固定しつつ強度を向上させる機能をも果たすことができる。
【0015】
本発明における前記電気機械式ブレーキ倍力装置は、
ブレーキペダルに連結された入力ロッドと、
前記入力ロッドと連動してブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、
前記制御ロッドの変位を検出するセンサー部と、
前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、
前記センサー部から得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、
前記制御ロッドの外周に配置され、軸部材と回転部材とからなり、前記モーター部と連動する前記回転部材の回転運動を前記軸部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、
前記軸部材の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するブラケットと、
前記ブラケットを付勢して移動後に元の位置に戻すための戻しバネと、
前記制御ロッドおよび前記軸部材の先端側に接続され、前記制御ロッドまたは前記軸部材の直線運動により動作するマスタシリンダと、を備えることが望ましい。
【0016】
加えて、前記入力ロッドと、前記制御ロッドと、前記モーター部と、前記回転直動変換部と、前記ブラケットと、前記マスタシリンダとが、全て同軸に配置されている場合、全体としてコンパクトに構成することができるため特に望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気機械式ブレーキ倍力装置において、ケーシングを構成するカバーと底板の間に架設された支柱によって、ブラケットを軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持する機能と、外装した前記戻しバネを案内するスプリングガイド機能とを1つの部品で実現することができ、最小限の部品で強度を確保しつつ設計上の制限や装置自体の大型化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置の好ましい実施の形態を示す斜視図。
図2図1に示した実施の形態の平面図。
図3図1に示した実施の形態においてカバーを外した状態の平面図。
図4図2に示したA-A線断面図。
図5図2に示したB-B線断面図。
図6図1に示した実施の形態においてカバーを外した状態の斜視図。
図7図1に示した実施の形態の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1乃至図7は本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置の好ましい実施の形態を示す図であり、この電気機械式ブレーキ倍力装置1は、ケーシング10と、入力ロッド20と、付勢部材30と、制御ロッド40と、センサー部50と、モーター部60と、制御部70と、回転直動変換部80と、ブラケット90と、支柱100と、戻しバネ110と、マスタシリンダ120と、を有する。
【0021】
ケーシング10は、円筒状のカバー11とドーナツ状の底板12とからなる。なお、符号13は前記カバー11に形成した外部接続コネクタ装着用の窓、符号14は前記カバー11と前記底板12を固定するための固定ネジ、符号15は前記ケーシング10を自動車の車体に固定するための固定部材である。
【0022】
入力ロッド20は、全体として棒状を呈し、軸方向に移動可能かつ一定角度範囲で揺動可能であり、一方端側(制御ロッド40側)にはその端面において前記入力ロッド20の軸方向に伸びる接続穴21と、前記軸方向に伸びて前記接続穴21よりも小径であるバネ保持穴22とが連続して形成されており、他端側には周方向に回転自在でブレーキペダルBPと接続するためのブレーキペダル接続具23が取り付けられている。
【0023】
付勢部材30は、反発力を発揮するコイルバネ31と、リテーナー32とからなり、リテーナー32は全体として円錐形を呈し、内側にはすり鉢状の受け面33を有する。
【0024】
制御ロッド40は、全体として棒状を呈し、軸方向に移動可能であり、一方端側(入力ロッド20側)にはフランジ43によって位置検出用のマグネット42を脱落不能に外装した状態でボールスタッド41が固定されており、他端側にはプレート44と係合するための段部45と、コイルバネ46を外装するための小径の先端部47とが形成されている。
【0025】
センサー部50は、センサー基盤51と、位置センサー52とからなり、前記位置センサー52によって検出した前記マグネット42の変位量が信号として前記センサー基盤51を介して出力される。
【0026】
モーター部60は、固定子61と、回転子62と、前記回転子62と同期して回転する回転軸63と、前記回転軸63を周方向に回転可能に支持する2つの軸受64,65からなる。なお、符号66,67は回転数検知のための検出歯車であり、符号68は前記底板12から立設するように取り付けられて前記モーター部60を覆うモーターカバーである。
【0027】
制御部70は、電源ケーブル(図示せず)を介して外部から供給される電力を制御してモーター部60を駆動するためのモータードライバーの機能を有する制御基板71であって、前記制御基板71は前記位置センサー52および回転数センサー72とケーブル73,74を介して接続されており、各センサーからの信号を利用して前記モーター部60を駆動させるものである。
【0028】
なお、本実施の形態において前記回転数センサー72および対応する検出歯車66,67は2組設けられており、例えば異なる性能の回転数センサーを用いることで、モーター制御の高精度化と高速化を両立させることが可能であるが、回転数センサーおよび対応する検出歯車を1組のみ設けるものであってもよい。
【0029】
回転直動変換部80は、前記モーター部60の回転運動を直線運動に変換するための機構であって、外周にネジ条を形成した円筒状の軸部材81と、内周にネジ溝を形成しており前記軸部材81とネジ嵌合されたナット状の回転部材82と、前記回転部材82と前記回転軸63とを連結する円筒状の連結部材83とからなる送りねじ機構により構成されている。本実施の形態において、前記回転部材82と前記連結部材83は別体で形成して一体に結合したものであるが、一体成型したものであってもよい。
【0030】
ブラケット90は、平面視略正三角形であって、中心位置に接続孔91が、前記接続孔91と離間した各頂点付近に通孔92が形成されている。中心位置の前記接続孔91に前記軸部材81を挿入して固定するとともに、前記各頂点付近の通孔92にそれぞれ取り付けられたフランジブッシュ93を介して3本の支柱100に装着されることで軸回転不能且つ軸方向に移動可能に構成されており、前記軸部材81の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するものである。
【0031】
なお、ブラケットの形状は平面視略正三角形に限らず、中心位置に形成された接続孔と離間した通孔が複数形成可能な形状であれば他の形状とすることも可能であり、例えば平面視菱形や平面視星形のような形状とすることもできる(図示せず)。
【0032】
支柱100は、一方端に小径部101と大径部102が形成されているとともに他端にねじ部103と段部104が形成されており、前記カバー11と前記底板12の間に3本が架設されている。前記小径部101を前記底板12に形成した取付孔16に挿入するとともに前記小径部101と隣接して形成された前記大径部102が前記底板12に接地することで位置決めを行い、且つ前記カバー11に形成した取付孔17から突出した支柱のねじ部103にナット105を装着することで固定されている。
【0033】
戻しバネ110は、前記ブラケット90を付勢して移動後に元の位置に戻すためのものであって、前記カバー11と前記底板12の間に掛設された3本の補強用の支柱100にそれぞれ外装されており、一方端は前記底板12に接し、他端は前記フランジブッシュ93に接している。
【0034】
マスタシリンダ110は、有底筒状で第1出力ポート122と第2出力ポート123を側面に形成したシリンダボア121と、前記シリンダボア121内に配置された第1ピストン130と、前記シリンダボア121内において前記第1ピストン130よりも底面側に配置された第2ピストン140とからなり、前記シリンダボア121の開口部を前記ケーシング10下方の開口部に向かい合わせて閉塞するように配置し、前記シリンダボア121の取付孔124および前記底板12の取付孔18を連通させた状態で挿通したボルト125およびナット126によって固定されている。
【0035】
第1ピストン130の両端部は、それぞれカップ状に形成され、隔壁131によって区画された断面H字状に形成されている。前記隔壁131の基端側(前記制御ロッド40側)に形成された凹部132にはリアクションディスクである弾性体133が嵌入されており、前記弾性体133に前記制御ロッド40の先端部47が接する。
【0036】
第2ピストン140の両端部は、それぞれカップ状に形成され、隔壁141によって区画された断面H字状に形成されている。前記隔壁141の基端側(前記第1ピストン130側)には凹部142が形成されており、前記凹部142に後述するリテーナロッド148が接する。
【0037】
マスタシリンダ120のシリンダボア121内には、第1ピストン130と第2ピストン140との間にプライマリ室127が形成され、シリンダボア121の底部と第2ピストン140との間にセカンダリ室128が形成される。また、前記プライマリ室127およびセカンダリ室128を含むシリンダボア121内は作動流体であるブレーキ液で満たされており、前記ブレーキ液は図示しないリザーバから供給されている。
【0038】
このとき、前記第1ピストン130の外周と前記シリンダボア121の内周の間に装着されたシール部材151,152および前記第2ピストン140の外周と前記シリンダボア121の内周の間に装着されたシール部材161,12によって、ブレーキ液は所定の区画外へ漏出することがない。
【0039】
マスタシリンダ120のプライマリ室127及びセカンダリ室128は、それぞれ、シリンダボア121の側面に形成された第1出力ポート122及び第2出力ポート123と接続されており、各出力ポートから別系統で出力されたブレーキ液の液圧を各車輪のブレーキ(図示せず)に供給して制動力を発生させるものである。
【0040】
第1ピストン130と第2ピストン140との間には、コイルバネ134が介装されており、コイルバネ134により、第1ピストン130と第2ピストン140とを互いに離間する方向に付勢している。コイルバネ134の内部には、第1ピストン130と第2ピストン140との間を所定の間隔に保つためのリテーナガイド136とリテーナロッド138とからなる伸縮部材135が配置されている。
【0041】
リテーナガイド136は、円筒状を呈し、先端には内方に突設されたストッパ部137が形成されている。リテーナロッド138は、棒状を呈し、基端には径方向外方に突設した鍔部139が形成されている。そして、リテーナガイド136内にリテーナロッド138を挿入することで、軸方向に沿う両者の相対移動が可能になり、リテーナガイド136のストッパ部137とリテーナロッド138の鍔部139とが干渉した時点で、伸縮部材135が所定の伸長となる。
【0042】
前記第2ピストン140と前記シリンダボア121の底部との間には、コイルバネ144が介装されており、コイルバネ144により、第2ピストン140と前記シリンダボア121の底部とを互いに離間する方向に付勢している。コイルバネ144の内部には、第2ピストン140と前記シリンダボア121の底部との間を所定の間隔に保つためのリテーナガイド146とリテーナロッド148とからなる伸縮部材145が配置されている。
【0043】
リテーナガイド146は、円筒状を呈し、先端には内方に突設されたストッパ部147が形成されている。リテーナロッド148は、中空棒状を呈し、基端には径方向外方に突設した鍔部149が形成されている。そして、リテーナガイド146内にリテーナロッド148を挿入することで、軸方向に沿う両者の相対移動が可能になり、リテーナガイド146のストッパ部147とリテーナロッド148の鍔部149とが干渉した時点で、伸縮部材145が所定の伸長となる。
【0044】
本実施の形態においては、ブレーキ倍力装置としての動作に直接関係する、前記入力ロッド20,前記制御ロッド40,前記モーター部60,前記回転直動変換部80,前記ブラケット90および前記マスタシリンダ120がすべて同軸に配置されている(図4図5参照)ため、全体として省スペースに構成することを可能としたものである。
【0045】
以下、本実施の形態である電気機械式ブレーキ倍力装置1の動作について説明する。
【0046】
電気機械式ブレーキ倍力装置1を自動車に取り付けた状態において、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだ際、ブレーキペダルBPに接続された入力ロッド20が軸方向に移動し、制御ロッド40が前記入力ロッド20に同期して直線運動する。
【0047】
このとき、前記制御ロッド40と前記軸部材81は同期しておらず、別個に軸方向に移動可能であるため、前記軸部材81の位置は変化せずに前記制御ロッド40のみが移動する。
【0048】
そして、前記制御ロッド40が前記コイルバネ46,134,144の付勢力に抗して前記第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる。
【0049】
また、前記制御ロッド40が移動すると、その変位を検知した位置センサー52から制御部70へ送られる信号を利用して前記制御部70がモーター部60へ電力および作動信号を供給する制御を行い、モーター部60が作動して回転する。
【0050】
加えて、回転軸63に装着された検出歯車66,67の回転数を検出することでモーター回転数を検出する回転数センサー72を別途備えており、前記制御部70がモーター部60へ電力および作動信号を供給する制御を行う際に、前記回転数センサー72からケーブル74を介して制御部70に送られる信号を利用することができる。
【0051】
前記モーター部60が回転する際、前記回転軸63と同期して前記連結部材83を介して前記回転部材82が回転するが、前記軸部材81は前記接続孔91によって一体に固定されている前記ブラケット90により軸回転が規制されているため、ねじ勘合している前記回転部材82の回転動作を直線動作に変換して軸線上の前記第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる方向に移動することとなる。
【0052】
このとき、前記ブラケット90も前記軸部材81と同期して前記戻しバネ110を圧縮しつつ軸線上の前記第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる方向に移動するが、前記フランジブッシュ93を介して前記支柱100により案内されながら摺動するためスムーズな動作を可能としている。
【0053】
そして、前記軸部材81がプレート44を介して前記コイルバネ134,144の付勢力に抗して前記第1ピストン130および第2ピストン140を前進させる。
【0054】
このように、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだ際の踏力が前記入力ロッド20,前記制御ロッド40を介して直接マスタシリンダ120の第1ピストン130、第2ピストン140に与えられ、それに加えて前記モーター部60の回転動作を軸部材81の直線動作に変換した押圧力が前記軸部材81を介してマスタシリンダの第1ピストン130、第2ピストン140に与えられることによって、電力により駆動するモーターを用いることによってブレーキペダルBPを踏んだ際の踏力を増幅することができる。
【0055】
そして、運転者によるブレーキペダルBPの踏み込みが解除されてブレーキペダルBPが元の位置に戻るにつれ、ブレーキペダルBPと連結された入力ロッド20および制御ロッド40も元の位置に復帰し、前記制御ロッド40が移動することで、その変位を検知した位置センサー52からの信号に応じて制御部70がモーター部60へ電力および作動信号を供給する制御を行い、前記モーター部60が作動して逆回転する。
【0056】
前記モーター部60が逆回転する際、前記回転軸63と同期して前記連結部材83を介して前記回転部材82が逆回転するが、前記軸部材81は前記ブラケット90により軸回転が規制されているため、ねじ勘合している前記回転部材82の回転動作を直線動作に変換して軸線上の前記第1ピストン130および第2ピストン140を後退させる方向に移動することとなる。
【0057】
なお、仮に前記モーター部60または制御部70の不良によって前記モーター部60が正常に逆回転できなかったとしても、前記コイルバネ134,144および戻しバネ110の付勢力によって前記軸部材81およびマスタシリンダの第1ピストン130、第2ピストン140が後退して作動前の元の位置へと復帰させることができる。
【0058】
以下、本発明の要点について、要部を表す斜視図である図6および要部断面図である図7を用いて説明する。
【0059】
本発明の要点は、3本の前記支柱100が、前記ケーシング10を構成する前記カバー11および前記底板12との間に架設されており、前記各支柱100によって前記ブラケット90を軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持するとともに、前記支柱100に前記戻しバネ110が外装されていることにある。
【0060】
より詳細に説明すると、前記支柱100の一方端は、前記小径部101が前記ケーシング10の底板12に形成された取付孔16に挿入されているとともに前記大径部102が前記ケーシング10の底板12に接しており、前記支柱100の他端は、前記段部104が前記ケーシング10のカバー11に形成された取付孔17に接しており前記取付孔17から外部に突出した前記ねじ部103にナット105が螺着されていることで、前記支柱100が前記カバー11と前記底板12の間に架設されて固定されている。
【0061】
また、前記支柱100は前記フランジブッシュ93を介して前記ブラケット90の通孔92にそれぞれ挿通されており、前記ブラケット90を軸回転不能且つ軸方向に移動可能に構成されている。そして、前記支柱100に外装された戻しバネ110の一方端は前記底板12に接し、他端は前記フランジブッシュ93に接して設置されている。
【0062】
このように前記支柱100は、前記ブラケット90を軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持する機能と、外装した前記戻しバネ110を案内するスプリングガイド機能と、前記ケーシング10を構成する前記カバー11と前記底板12との間を梁のように架設して所定の位置関係に固定しつつ強度を向上させる機能との3つの機能を単一の部品で兼ね備えることができる。
【0063】
本実施の形態において用いられる3本の戻しバネ110は、前記ブラケット90を付勢して移動後に元の位置に戻すために必要な荷重を三等分した荷重に設定されたものを用いており、このように戻しバネ110を複数本設けたことによって前記ブラケット90の姿勢の安定化や前記各戻しバネ110の応力緩和を果たすことができる。
【0064】
以上の通り、本発明によれば、電気機械式ブレーキ倍力装置において、ケーシングを構成するカバーと底板の間に架設された支柱によって、ブラケットを軸回転不能且つ軸方向に移動可能に保持する機能と、外装した前記戻しバネを案内するスプリングガイド機能とを1つの部品で実現することができ、最小限の部品で強度を確保しつつ設計上の制限や装置自体の大型化を回避することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 電気機械式ブレーキ倍力装置、10 ケーシング、11 カバー、12 底板、13 窓、14 固定ネジ、15 固定部材、16 取付孔、17 取付孔、18 取付孔、20 入力ロッド、21 接続穴、22 バネ保持穴、23 ブレーキ接続具、30 付勢部材、31 コイルバネ、32 リテーナー、33 受け面、35 円錐バネ、36 固定金具、40 制御ロッド、41 ボールスタッド、42 マグネット、43 フランジ、44 プレート、45 段部、46 コイルバネ、47 先端部、50 センサー部、51 センサー基盤、52 位置センサー、60 モーター部、61 固定子、62 回転子、63 回転軸、64 軸受、65 軸受、66 検出歯車、67 検出歯車、68 モーターカバー、70 制御部、71 制御基板、72 回転数センサー、73 ケーブル、74 ケーブル、80 回転直動変換部、81 軸部材、82 回転部材、83 連結部材、90 ブラケット、91 接続孔、92 通孔、93 フランジブッシュ、100 支柱、101 小径部、102 大径部、103 ねじ部、104 段部、105 ナット、110 戻しバネ、120 マスタシリンダ、121 シリンダボア、122 第1出力ポート、123 第2出力ポート、124 取付孔、125 ボルト、126 ナット、127 プライマリ室、128 セカンダリ室、130 第1ピストン、131 隔壁、132 凹部、133 弾性体、134 コイルバネ、135 伸縮部材、136 リテーナガイド、137 ストッパ部、138 リテーナロッド、139 鍔部、140 第2ピストン、141 隔壁、142 凹部、143 、144 コイルバネ、145 伸縮部材、146 リテーナガイド、147 ストッパ部、148 リテーナロッド、149 鍔部、151 シール部材、152 シール部材、161 シール部材、162 シール部材、BP ブレーキペダル
図1
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図7