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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030664
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電気機械式ブレーキ倍力装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B60T13/74 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135915
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
【テーマコード(参考)】
3D048
【Fターム(参考)】
3D048BB43
3D048BB45
3D048CC41
3D048HH18
3D048HH54
3D048HH55
3D048LL01
3D048NN02
3D048NN03
3D048NN09
3D048PP01
3D048PP06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブレーキペダルが踏まれた際に、制御ロッドが軸方向に直線運動する制御ロッドの作動によりモーター部を駆動させて、回転直動変換部により回転運動を前記スクリュー部材の直線運動に変換してスクリュー部材の直線運動により油圧ブレーキ用のブレーキ液を充填したマスタシリンダのピストンを移動させて電気機械式ブレーキ倍力装置において、スクリュー部材のねじ部の剪断や接触面の摩耗によりマスタシリンダのピストンとの接触機能不良の懸念を払拭する。
【解決手段】スクリュー部材81の先端面81aとピストン130との接続面130aとの間に、スクリュー部材81の先端面81aとピストン130の接続面130aに接する板状で剛性材により形成されているプッシュプレート44を介装した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端にブレーキペダルが連結されて前記ブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、前記制御ロッドの変位を検出する位置センサーを含むセンサー部と、前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、前記センサー部から得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、外周にねじを設けた筒状のスクリュー部材と内周面に前記スクリュー部材のねじ部に螺合するねじ部を設けた前記モーター部と連動する回転部材とからなり前記モーター部により回転する前記回転部材の回転運動を前記スクリュー部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、前記スクリュー部材の先端面に接続され、前記スクリュー部材の直線運動により動作するピストンを有する油圧ブレーキ用のブレーキ液を充填したマスタシリンダと、を備えた電気機械式ブレーキ倍力装置において、
前記スクリュー部材の先端面と前記マスタシリンダのピストンとの接続面との間に、前記スクリュー部材の先端面と前記ピストンの接続面に接する板状で剛性材により形成されているプッシュプレートが介装されていることを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項2】
前記プッシュプレートが、前記スクリュー部材を軸心としたドーナツ円盤状であるとともに、内径が前記スクリュー部材の中空部の内径と同一またはそれ以下であり、外径が前記ピストンの外径と同一またはそれ以上であることを特徴とする請求項1記載の電気機械式ブレーキ倍力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車においてブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅するための電気機械式ブレーキ倍力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のブレーキ操作を補助するために、ブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅させるブレーキ倍力装置が知られており、例えば特開昭54-90459号公報(特許文献1)に記載された発明のように、エンジンの負圧を利用した真空式ブレーキ倍力装置が一般的に用いられていた。
【0003】
ところで近年、世界各国においてカーボンニュートラルの動きが活発化しており、脱化石燃料の目標を果たすために、電気自動車や燃料電池自動車といったエンジンを動力源として備えない自動車への移行が今後の自動車業界における重要な課題となっている。
【0004】
そうなると、従来のエンジン搭載車と、電気自動車のようなエンジン非搭載車との相違点の一つとして、エンジンを有しないことにより、従来システムで用いられていたエンジンの負圧(吸気管負圧)が発生しないため、負圧を用いた各パーツが使用できなくなる問題が生じる。
【0005】
従って、真空式ブレーキ倍力装置に代わり、且つ自動ブレーキでも使用可能な高い制動力を得ることのできるブレーキ倍力装置が必要とされ、例えば特開2018-199448号公報(特許文献2)、再表2018/097278号公報(特許文献3)に記載された発明のように動力源としてモーターを備えた電気機械式のブレーキ倍力装置が知られている。
【0006】
これら従来の電気機械式ブレーキ倍力装置によれば、エンジンを有しない車であっても、電力により駆動するモーターを用いることによってブレーキペダルを踏んだ際の踏力を増幅することを可能とすることができる。
【0007】
図5および図6は従来の電気機械式ブレーキ倍力装置の一例を示すものであり、基端にブレーキペダルBPが連結されて前記ブレーキペダルBPの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッド40と、前記制御ロッド40の変位を検出する位置センサーを含むセンサー部50と、前記制御ロッド40の変位に応じて作動する固定子61、回転子62および回転軸63を有するモーター部60と、前記センサー部50から得た情報を利用して前記モーター部60を駆動させる制御部70と、外周に雄ねじを設けた筒状のスクリュー部材81と内周面に前記スクリュー部材81の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を設けた前記モーター部60と連動する回転部材82とからなり前記モーター部60により回転する回転部材82の回転運動を前記スクリュー部材81の直線運動に変換する回転直動変換部80と、前記スクリュー部材81の先端面に接続され、前記スクリュー部材81の直線運動により動作するピストン130を有する油圧ブレーキ用のブレーキ液を充填したマスタシリンダ120と、を備えた電気機械式ブレーキ倍力装置2であり、前記ブレーキペダルBPが踏まれた際に、制御ロッド40が軸方向に直線運動する制御ロッド40の作動によりセンサー部50により検知して前記モーター部60を駆動させて、回転直動変換部80により回転運動を前記スクリュー部材81の直線運動に変換してスクリュー部材81の直線運動によりを有する油圧ブレーキ用のブレーキ液を充填したマスタシリンダ120のピストン130を移動させて電気機械式ブレーキ倍力を生じさせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭54-90459号公報
【特許文献2】特開2018-199448号公報
【特許文献3】再表2018/097278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記図5および図6に示した従来の電気機械式ブレーキ倍力装置2は、スクリュー部材81とマスタシリンダ120のピストン130との接触が、スクリュー部材81のねじ部の端面81aとピストン130の端面130aとなっている。
【0010】
そのため、スクリュー部材81のねじ部の剪断や接触面の摩耗によりマスタシリンダ120のピストン130との接触機能不良の懸念が挙げられる。
【0011】
本発明は斯かる問題点を解決するためになされたものであり、スクリュー部材81とマスタシリンダ120のピストン130との間の接触面を増大して、スクリュー部材81のねじ部の剪断や接触面の摩耗によりマスタシリンダ120のピストン130との接触機能不良の懸念を払拭して電気機械式ブレーキ倍力装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた電気機械式ブレーキ倍力装置は、基端にブレーキペダルが連結されて前記ブレーキペダルの操作に伴い軸方向に直線運動する制御ロッドと、前記制御ロッドの変位を検出する位置センサーを含むセンサー部と、前記制御ロッドの変位に応じて作動するモーター部と、前記センサー部から得た情報を利用して前記モーター部を駆動させる制御部と、外周にねじを設けた筒状のスクリュー部材と内周面に前記スクリュー部材のねじ部に螺合するねじ部を設けた前記モーター部と連動する回転部材とからなり前記モーター部により回転する前記回転部材の回転運動を前記スクリュー部材の直線運動に変換する回転直動変換部と、前記スクリュー部材の先端面に接続され、前記スクリュー部材の直線運動により動作するピストンを有する油圧ブレーキ用のブレーキ液を充填したマスタシリンダと、を備えた電気機械式ブレーキ倍力装置において、前記スクリュー部材の先端面と前記マスタシリンダのピストンとの接続面との間に、前記スクリュー部材の先端面と前記ピストンの接続面に接する板状で剛性材により形成されているプッシュプレートが介装されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、スクリュー部材の先端面と前記ピストンの接続面とがそれぞれの全面が剛性を有する受圧面になるのでスクリュー部材のねじ部の剪断や接触面の摩耗によりマスタシリンダのピストンとの接触機能不良の懸念を防止することができる。
【0014】
また、本発明において、前記プッシュプレートが、前記スクリュー部材を軸心としたドーナツ円盤状であるとともに、内径が前記スクリュー部材の中空部の内径と同一またはそれ以下であり、外径が前記ピストンの外径と同一またはそれ以上であることを特徴とする場合は、スクリュー部材の先端面とマスタシリンダのピストンの接続面のそれぞれ全域を受圧面とすることができることから、使用により生じるスクリュー部材のねじ部の剪断や接触面の摩耗によりマスタシリンダのピストンとの接触機能不良を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スクリュー部材の接続面と前記ピストンの接続面とがそれぞれの全面が剛性を有する受圧面になるのでスクリュー部材のねじ部の剪断や接触面の摩耗によりマスタシリンダのピストンとの接触機能不良の懸念を防止して、スクリュー部材とマスタシリンダのピストンとの作動を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置の好ましい実施の形態を示す断面図。
図2図1に示した実施の形態の異なる角度の断面図。
図3図1に示した実施の形態の要部を拡大した部分断面図。
図4】異なる実施の形態の要部を拡大した部分断面図であって、(a)はプッシュプレートの外径がピストンの外径よりも大径である場合の図、(b)はプッシュプレートの外径がピストンの外径よりも小径である場合の図。
図5】従来例を示す断面図。
図6図5に示した従来例の要部を拡大した部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、前記従来の電気機械式ブレーキ倍力装置2と同様の構成の箇所には同一の符号を示す。
【0018】
図1乃至図3は本発明である電気機械式ブレーキ倍力装置の好ましい実施の形態を示すものであり、この電気機械式ブレーキ倍力装置1は、ケーシング10と、入力ロッド20と、付勢部材30と、制御ロッド40と、センサー部50と、モーター部60と、制御部70と、回転直動変換部80と、ブラケット90と、支柱100と、戻しバネ110と、マスタシリンダ120と、を有する。
【0019】
ケーシング10は、円筒状のカバー11とドーナツ状の底板12とからなる。尚、図面1中、符号13は前記カバー11と前記底板12を固定するための固定ネジ、符号14は前記ケーシング10を自動車の車体に固定するための固定部材である。
【0020】
そして、入力ロッド20は、全体として棒状を呈し、軸方向に移動可能かつ一定角度範囲で揺動可能であり、一方端側(制御ロッド40側)にはその端面において前記入力ロッド20の軸方向に伸びる接続穴21と、前記軸方向に伸びて前記接続穴21よりも小径であるバネ保持穴22とが連続して形成されており、他端側には周方向に回転自在でブレーキペダルBPと接続するためのブレーキペダル接続具23が取り付けられている。
【0021】
また、付勢部材30は、反発力を発揮するコイルバネ31と、リテーナー32とからなり、リテーナー32は全体として円錐形を呈し、内側にはすり鉢状の受け面33を有する。
【0022】
更に、制御ロッド40は、全体として棒状を呈し、軸方向に移動可能であり、一方端側(入力ロッド20側)にはフランジ43によって位置検出用のマグネット42を脱落不能に外装した状態でボールスタッド41が固定されており、他端側にはプッシュプレート44と係合するための段部45と、コイルバネ46を外装するための小径の先端部47とが形成されている。
【0023】
センサー部50は、センサー基盤51と、位置センサー52とからなり、前記位置センサー52によって検出した前記マグネット42の変位量が信号として前記センサー基盤51を介して出力される。
【0024】
モーター部60は、固定子61と、回転子62と、前記回転子62と同期して回転する回転軸63と、前記回転軸63を周方向に回転可能に支持する2つの軸受64,65からなる。なお、符号66,67は回転数検知のための検出歯車であり、図面中、符号68は前記底板12から立設するように取り付けられて前記モーター部60を覆うモーターカバーである。
【0025】
制御部70は、電源ケーブル(図示せず)を介して外部から供給される電力を制御してモーター部60を駆動するためのモータードライバーの機能を有する制御基板71であって、前記制御基板71は前記位置センサー52および回転数センサー72とケーブル73,74を介して接続されており、各センサーからの信号を利用して前記モーター部60を駆動させるものである。
【0026】
尚、本実施の形態において前記回転数センサー72および対応する検出歯車66,67は2組設けられており、例えば異なる性能の回転数センサーを用いることで、モーター制御の高精度化と高速化を両立させることが可能であるが、回転数センサーおよび対応する検出歯車を1組のみ設けるものであってもよい。
【0027】
回転直動変換部80は、前記モーター部60の回転運動を直線運動に変換するための機構であって、外周にネジ条を形成した円筒状のスクリュー部材81と、内周にネジ溝を形成しており前記スクリュー部材81とネジ嵌合されたナット状の回転部材82と、前記回転部材82と前記モーター部60の回転軸63とを連結する円筒状の連結部材83とからなる送りねじ機構により構成されている。本実施の形態において、前記回転部材82と前記連結部材83は別体で形成して一体に結合したものであるが、一体成型したものであってもよい。
【0028】
ブラケット90は、平面視略正三角形で中心位置および各頂点付近に通孔91,92が形成されている。中心位置の前記通孔91に前記スクリュー部材81を挿入して固定するとともに、前記各頂点付近の通孔92にそれぞれ取り付けられたフランジブッシュ93を介して3本の支柱100に装着されることで軸回転不能且つ軸方向に移動可能に構成されており、前記スクリュー部材81の軸回転を規制するとともに軸方向に連動して移動するものである。
【0029】
支柱100は、前記カバー11と前記底板12の間に3本が架設されており、一方端付近に形成された小径部101を前記底板12に形成した取付孔16に挿入するとともに前記小径部101と隣接して形成された大径部102が前記底板12に接地することで位置決めを行い、且つ前記カバー11に形成した取付孔17から突出した支柱の先端部103にナット104を装着することで固定されている。
【0030】
戻しバネ110は、前記ブラケット90を付勢して移動後に元の位置に戻すためのものであって、前記カバー11と前記底板12の間に掛設された3本の補強用の支柱100にそれぞれ外装されており、一方端は前記底板12に接し、他端は前記フランジブッシュ93に接している。
【0031】
マスタシリンダ120は、有底筒状で第1出力ポート122と第2出力ポート123を側面に形成したシリンダボア121と、前記シリンダボア121内に配置されたピストン130と、前記シリンダボア121内において前記ピストン130よりも底面側に配置された副ピストン140とからなり、前記シリンダボア121の開口部を前記ケーシング10下方の開口部に向かい合わせて閉塞するように配置し、前記シリンダボア121の取付孔124および前記底板12の取付孔18を連通させた状態で挿通したボルト125およびナット126によって固定されている。
【0032】
ピストン130の両端部は、それぞれカップ状に形成され、隔壁131によって区画された断面H字状に形成されている。前記隔壁131の基端側(前記制御ロッド40側)に形成された凹部132には弾性体133が嵌入されており、前記弾性体133に前記制御ロッド40の先端部47が接する。
【0033】
そして、本実施の形態では、殊に、前記スクリュー部材81の先端面81aと前記マスタシリンダ120のピストン130との接続面130aとの間に、前記スクリュー部材81の先端面81aと前記ピストン130の接続面130aに接する板状で例えば金属のような剛性材により形成されているプッシュプレート44が介装されている。
【0034】
また、前記プッシュプレート44は、前記スクリュー部材81を軸心としたドーナツ円盤状であるとともに、内径d1が前記スクリュー部材81の中空部の内径d3以下であり、外径d2が前記ピストン130の外径d4以上であることで、スクリュー部材81の先端面81aとマスタシリンダ120のピストン130の接続面130aの全域を受圧面とすることができる。
【0035】
より詳細に説明すると、図3に示したように、本実施の形態においては、前記プッシュプレート44の内径d1は前記スクリュー部材81の中空部の内径d3よりも小径であり、外径d2は前記ピストン130の外径d4と等しい径に形成されているが、図4(a)に示した実施の形態のように、プッシュプレート44の外径d5を前記ピストン130の外径d4よりも大径にすることや、図4(b)に示した実施の形態のように、前記プッシュプレート44の外径d6を前記ピストン130の外径d4よりも小径にすることも可能である。
【0036】
前記プッシュプレート44の外径が前記ピストン130の外径よりも小径・同径・大径のいずれの場合であっても、従来例のようにスクリュー部材81とピストン130とが直接接触することなく、且つ、直接接触するよりも広い受圧面で、前記ピストン130に対して前記スクリュー部材81が軸移動する力を加えることができる。
【0037】
副ピストン140の両端部は、それぞれカップ状に形成され、隔壁141によって区画された断面H字状に形成されている。前記隔壁141の基端側(前記ピストン130側)には凹部142が形成されており、前記凹部142に後述するリテーナロッド148が接する。
【0038】
マスタシリンダ120のシリンダボア121内には、ピストン130と副ピストン140との間にプライマリ室127が形成され、シリンダボア121の底部と副ピストン140との間にセカンダリ室128が形成される。また、前記プライマリ室127およびセカンダリ室128を含むシリンダボア121内は作動流体であるブレーキ液で満たされており、前記ブレーキ液は図示しないリザーバから供給されている。
【0039】
このとき、前記ピストン130の外周と前記シリンダボア121の内周の間に装着されたシール部材151,152および前記副ピストン140の外周と前記シリンダボア121の内周の間に装着されたシール部材161,162によって、ブレーキ液は所定の区画外へ漏出することがない。
【0040】
マスタシリンダ120のプライマリ室127及びセカンダリ室128は、それぞれ、シリンダボア121の側面に形成された第1出力ポート122及び第2出力ポート123と接続されており、各出力ポートから別系統で出力されたブレーキ液の液圧を各車輪のブレーキ(図示せず)に供給して制動力を発生させるものである。
【0041】
ピストン130と副ピストン140との間には、コイルバネ134が介装されており、コイルバネ134により、ピストン130と副ピストン140とを互いに離間する方向に付勢している。コイルバネ134の内部には、ピストン130と副ピストン140との間を所定の間隔に保つためのリテーナガイド136とリテーナロッド138とからなる伸縮部材135が配置されている。
【0042】
リテーナガイド136は、円筒状を呈し、先端には内方に突設されたストッパ部137が形成されている。リテーナロッド138は、棒状を呈し、基端には径方向外方に突設した鍔部139が形成されている。そして、リテーナガイド136内にリテーナロッド138を挿入することで、軸方向に沿う両者の相対移動が可能になり、リテーナガイド136のストッパ部137とリテーナロッド138の鍔部139とが干渉した時点で、伸縮部材135が所定の伸長となる。
【0043】
前記副ピストン140と前記シリンダボア121の底部との間には、コイルバネ144が介装されており、コイルバネ144により、副ピストン140と前記シリンダボア121の底部とを互いに離間する方向に付勢している。コイルバネ144の内部には、副ピストン140と前記シリンダボア121の底部との間を所定の間隔に保つためのリテーナガイド146とリテーナロッド148とからなる伸縮部材145が配置されている。
【0044】
リテーナガイド146は、円筒状を呈し、先端には内方に突設されたストッパ部147が形成されている。リテーナロッド148は、中空棒状を呈し、基端には径方向外方に突設した鍔部149が形成されている。そして、リテーナガイド146内にリテーナロッド148を挿入することで、軸方向に沿う両者の相対移動が可能になり、リテーナガイド146のストッパ部147とリテーナロッド148の鍔部149とが干渉した時点で、伸縮部材145が所定の伸長となる。
【0045】
以下、本実施の形態である電気機械式ブレーキ倍力装置1の動作について説明する。
【0046】
電気機械式ブレーキ倍力装置1を自動車に取り付けた状態において、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだ際、ブレーキペダルBPに接続された入力ロッド20が軸方向に移動し、制御ロッド40が前記入力ロッド20に同期して直線運動する。
【0047】
このとき、前記制御ロッド40と前記スクリュー部材81は同期しておらず、別個に軸方向に移動可能であるため、前記スクリュー部材81の位置は変化せずに前記制御ロッド40のみが移動する。
【0048】
そして、前記制御ロッド40が前記コイルバネ46,134,144の付勢力に抗して前記ピストン130および副ピストン140を前進させる。
【0049】
また、前記制御ロッド40が移動すると、その変位を検知した位置センサー52から制御部70へ送られる信号を利用して前記制御部70がモーター部60へ電力および作動信号を供給する制御を行い、モーター部60が作動して回転する。
【0050】
加えて、回転軸63に装着された検出歯車66,67の回転数を検出することでモーター回転数を検出する回転数センサー72を別途備えており、前記制御部70がモーター部60へ電力および作動信号を供給する制御を行う際に、前記回転数センサー72からケーブル74を介して制御部70に送られる信号を利用することができる。
【0051】
前記モーター部60が回転する際、前記回転軸63と同期して前記連結部材83を介して前記回転部材82が回転するが、前記スクリュー部材81は前記ブラケット90により軸回転が規制されているため、ねじ勘合している前記回転部材82の回転動作を直線動作に変換して軸線上の前記ピストン130および副ピストン140を前進させる方向に移動することとなる。
【0052】
このとき、前記ブラケット90も前記スクリュー部材81と同期して前記戻しバネ110を圧縮しつつ軸線上の前記ピストン130および副ピストン140を前進させる方向に移動するが、前記フランジブッシュ93を介して前記支柱100により案内されながら摺動するためスムーズな動作を可能としている。
【0053】
そして、前記スクリュー部材81がプッシュプレート44を介して前記コイルバネ134,144の付勢力に抗して前記ピストン130および副ピストン140を前進させる。
【0054】
このように、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだ際の踏力が前記入力ロッド20,前記制御ロッド40を介して直接マスタシリンダ120のピストン130、副ピストン140に与えられ、それに加えて前記モーター部60の回転動作をスクリュー部材81の直線動作に変換した押圧力が前記スクリュー部材81を介してマスタシリンダのピストン130、副ピストン140に与えられることによって、電力により駆動するモーターを用いることによってブレーキペダルBPを踏んだ際の踏力を増幅することができる。
【0055】
このとき、本実施の形態では、前記スクリュー部材81の先端面81aと前記マスタシリンダ120のピストン130との接続面130aとの間に、前記スクリュー部材81の先端面81aと前記ピストン130の接続面130aに接する板状で例えば金属のような剛性材により形成されているプッシュプレート44が介装されている。
【0056】
そのため、スクリュー部材81とマスタシリンダ120のピストン130との間の接触面を増大して、スクリュー部材81による駆動力が確実にマスタシリンダ120のピストン130に伝動するばかりか、スクリュー部材81のねじ部の剪断や接触面の摩耗によりマスタシリンダ120のピストン130との接触機能不良の懸念を払拭することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,2 電気機械式ブレーキ倍力装置、10 ケーシング、11 カバー、12 底板、13 固定ネジ、14 固定部材、16 取付孔、17 取付孔、18 取付孔、20 入力ロッド、21 接続穴、22 バネ保持穴、23 ブレーキ接続具、30 付勢部材、31 コイルバネ、32 リテーナー、33 受け面、35 円錐バネ、36 固定金具、40 制御ロッド、41 ボールスタッド、42 マグネット、43 フランジ、44 プッシュプレート、45 段部、46 コイルバネ、47 先端部、50 センサー部、51 センサー基盤、52 位置センサー、60 モーター部、61 固定子、62 回転子、63 回転軸、64 軸受、65 軸受、66 検出歯車、67 検出歯車、68 モーターカバー、70 制御部、71 制御基板、72 回転数センサー、73 ケーブル、74 ケーブル、80 回転直動変換部、81 スクリュー部材、81a 先端面、82 回転部材、83 連結部材、90 ブラケット、91 通孔、92 通孔、93 フランジブッシュ、100 支柱、101 小径部、102 大径部、103 先端部、104 ナット、110 戻しバネ、120 マスタシリンダ、121 シリンダボア、122 第1出力ポート、123 第2出力ポート、124 取付孔、125 ボルト、126 ナット、127 プライマリ室、128 セカンダリ室、130 ピストン、130a ピストンの接続面、1131 隔壁、132 凹部、133 弾性体、134 コイルバネ、135 伸縮部材、136 リテーナガイド、137 ストッパ部、138 リテーナロッド、139 鍔部、140 副ピストン、141 隔壁、142 凹部、143 、144 コイルバネ、145 伸縮部材、146 リテーナガイド、147 ストッパ部、148 リテーナロッド、149 鍔部、151 シール部材、152 シール部材、161 シール部材、162 シール部材、BP ブレーキペダル、d1 プッシュプレートの内径、d2 プッシュプレートの外径、d3 スクリュー部材の中空部の内径、d4 ピストンの外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6