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特開2023-3068電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003068
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20221228BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221228BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104010
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA13
5H050FA02
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA03
5H050GA04
5H050GA07
5H050GA08
5H050GA23
5H050GA27
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】電池用電極の製造効率及び品質を向上させることができる電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法を提供する。
【解決手段】帯状の集電体に対して積層された活物質であって、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内で搬送方向に搬送される活物質に対して、セパレータを供給するセパレータ供給部と、前記帯状の集電体に供給された活物質を、前記セパレータを介して圧縮する圧縮部とを備える、電池用電極製造装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の集電体に対して積層された活物質であって、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内で搬送方向に搬送される活物質に対して、セパレータを供給するセパレータ供給部と、
前記帯状の集電体に供給された活物質を、前記セパレータを介して圧縮する圧縮部と
を備える、電池用電極製造装置。
【請求項2】
前記活物質は、電解液を含み、
前記圧縮部は、前記帯状の集電体、前記活物質及び前記セパレータを挟み込んで圧縮することにより、前記活物質から前記セパレータに対して前記電解液を染み込ませる、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項3】
前記電解液は、前記活物質の各粒子に対して設けられた樹脂層に含まれる、請求項2に記載の電池用電極製造装置。
【請求項4】
前記セパレータ供給部は、帯状のセパレータシートを前記搬送方向に搬送しながら前記活物質に対して重ね合わせることにより、前記活物質に対して前記セパレータを供給する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池用電極製造装置。
【請求項5】
前記圧縮部によって圧縮された後の前記セパレータに対して、熱シール及び整形切断の少なくとも一方を含む後処理を実行する後処理部を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池用電極製造装置。
【請求項6】
前記後処理部は、前記搬送方向に搬送される前記活物質及び前記セパレータの動きに同期して、当該搬送方向に移動しながら前記後処理を実行する、請求項5に記載の電池用電極製造装置。
【請求項7】
前記圧縮部によって圧縮された後の前記セパレータのうち、前記電解液が染み込んだ領域の外の領域を熱シールする後処理部を更に備える、請求項2又は3に記載の電池用電極製造装置。
【請求項8】
帯状の集電体に対して積層された活物質であって、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内で搬送方向に搬送される活物質に対して、セパレータを供給し、
前記帯状の集電体に供給された活物質を、前記セパレータを介して圧縮する
ことを含む、電池用電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は高容量の二次電池であり、近年様々な用途で使用されている。例えば、リチウムイオン電池は、集電体層、活物質層及びセパレータを積層した単セルを複数用いて構成される。このような単セルは、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されているように、枚葉に製造することができる。具体的には、特許文献2に記載のように、集電体や活物質、セパレータを積層し、面プレスすることで、単セルにおける電池用電極を個別に製造することができる。但し、このような枚葉の手法は一般に時間がかかり、製造効率として高いとは言えない。
【0003】
製造効率向上の観点から、電池用電極の製造を連続的に行なうことが考えられる。例えば、シート状の集電体に対して活物質を連続的に供給し、これらを連続的にロールプレスすることで、電池用電極の活物質層を効率的に形成することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6633866号公報
【特許文献2】特開2019-186003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロールプレスによって活物質を圧縮する場合、ロールプレス用のローラの表面に活物質が付着してしまう場合がある。圧縮時にローラ表面に活物質が付着するとすれば、形成される活物質層の表面が不均一になったり、電池用電極における活物質の量が不安定になったりすることが懸念される。本発明は、電池用電極の製造効率及び品質を向上させることができる電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、帯状の集電体に対して積層された活物質であって、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内で搬送方向に搬送される活物質に対して、セパレータを供給するセパレータ供給部と、前記帯状の集電体に供給された活物質を、前記セパレータを介して圧縮する圧縮部とを備える、電池用電極製造装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法によれば、電池用電極の製造効率及び品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の電池用電極製造装置を用いて製造される電池の単セルの断面模式図である。
図2図2は、同電池用電極製造装置の概略図である。
図3図3は、同電池用電極製造装置の斜視図である。
図4図4は、第2実施形態の電池用電極製造装置の斜視図である。
図5図5は、第2実施形態の電解液を染み込ませたセパレータを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を適用した第1実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、一部を省略して図示している場合がある。
【0010】
<組電池(二次電池)>
実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法は、例えば、リチウムイオン電池の製造に適用される。リチウムイオン電池は、複数のリチウムイオン単電池(単セル又は電池セルとも記載する)を組み合わせてモジュール化した組電池、或いは、このような組電池を複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックの形態で使用される。
【0011】
<単セル(電池セル)>
図1は、単セル10の断面模式図である。単セル10を複数組み合わせることで上記の組電池を作製することが可能である。例えば、単セル10は、2つの電極(電池用電極)としての正極20a及び負極20bと、セパレータ30とを有する。
【0012】
セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間に配置される。組電池において、複数の単セル10は、正極20aと負極20bとを同方向に向けて積層される。
【0013】
セパレータ30には、電解質が保持される。これにより、セパレータ30は、電解質層として機能する。セパレータ30は、正極20a及び負極20bの電極活物質層22の間に配置され、これらが互いに接触することを抑制する。これにより、セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間の隔壁として機能する。
【0014】
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液またはゲルポリマー電解質などが挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータなどを挙げることができる。
【0015】
正極20a及び負極20bは、それぞれ、集電体21と、電極活物質層22と、枠体35とを有する。電極活物質層22と集電体21とは、セパレータ30側からこの順に並ぶ。枠体35は、額縁状(環状)である。枠体35は、電極活物質層22の周囲を囲む。正極20aの枠体35と負極20bの枠体35とは、互いに溶着され一体化されている。以下の説明において、正極20a及び負極20bの電極活物質層22を互いに区別する場合、これらをそれぞれ正極活物質層22a、負極活物質層22bと呼ぶ。
【0016】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層21aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015-005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層21aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0017】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0018】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。また、導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0019】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0020】
正極集電体層21aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層21aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層21aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0021】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層22aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層22aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22aは、正極活物質層22aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0022】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物、金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0023】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0024】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0025】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0026】
正極活物質層22aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調節したもの、及び、特開平10-255805号公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0027】
正極活物質層22aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)等が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0028】
正極活物質層22aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0029】
正極活物質層22aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0030】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層21bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層21bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層21bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0031】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層22bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層22bを得る方法等は、正極活物質層22aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22aを得る方法と同様である。
【0032】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物などを用いることができるが、特に限定されない。
【0033】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0034】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0035】
負極活物質層22bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0036】
負極活物質層22bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層22aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0037】
負極活物質層22bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層22aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0038】
負極活物質層22bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0039】
<セパレータの具体例>
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマー電解質などが挙げられる。セパレータ30は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ30の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0040】
<枠体の具体例>
枠体35としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体35を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体35としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0041】
<製造装置及び電池用電極の製造方法>
次に、本実施形態の製造装置及び電池用電極の製造方法(以下、製造方法と略して呼ぶ)について説明する。例えば、電池製造装置及び製造方法では、まず正極20a及び負極20bが製造される。正極20aの製造方法と負極20bの製造方法とは、主に電極活物質層22に含まれる電極活物質が異なる。ここでは、電極20の製造方法として、正極20a及び負極20bの製造方法をまとめて説明する。
【0042】
図2は、製造装置1000の概略図である。例えば、製造装置1000は、チャンバ100、枠体供給装置200、活物質供給装置300、セパレータ供給装置400、ローラ500及びセパレータ回収装置600を含む。セパレータ供給装置は、セパレータ供給部の一例である。ローラ500は、圧縮部の一例である。
【0043】
チャンバ100は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバ100の内部は、図示しない減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約10Pa)である。
【0044】
例えば、チャンバ100の外部に集電体ロール21Rが配置され、集電体ロール21Rから引き出された帯状の集電体21Bが、スリットを通してチャンバ100の内部に搬送される。なお、集電体21Bは、前記集電体21が所定の形状に切り出される前のものである。集電体21Bは、搬送方向Dに沿って搬送される。例えば、集電体21Bは、ベルトコンベア等の搬送装置によって、所定の速度で搬送される。以下では、集電体21Bが搬送される方向を下流側D1、その反対方向を上流側D2として説明する。なお、集電体ロール21Rが配置されるチャンバ100の外部空間は、常圧であってもよいし、チャンバ100と異なるチャンバによって減圧されていてもよい。
【0045】
枠体供給装置200は、搬送される集電体21Bに対して枠体35を供給する。なお、図2では枠体供給装置200がチャンバ100の内部に配置される場合を示すが、枠体供給装置200はチャンバ100の外部に配置されてもよい。例えば、枠体供給装置200は、ロボットアームを有し、事前に製造された枠体35を、搬送される集電体21B上の所定の位置に配置する。なお、枠体35を集電体21Bに配置した後、集電体21B及び枠体35を挟み込むように、ローラ500と異なるロールプレスで圧縮することとしてもよい。
【0046】
なお、枠体35を製造する方法については特に限定されるものではない。例えば、枠体35は、高分子材料等の所定の材料から成るシート乃至ブロックに対する切削加工によって、所定の形状に形成することができる。一例を挙げると、枠体35は、所定の材料から成る素材シートから打ち抜くことで得られる。
【0047】
また、例えば、枠体35は、射出成形等の枠型を用いた手法によって、所定の形状に形成することができる。一例を挙げると、所定の形状の内部空間を有する金型が事前に作製され、当該金型に対する射出成形を行なうことにより、枠体35を所定の形状に形成することができる。
【0048】
また、例えば、枠体35は、基材上に所定の材料を吐出したり塗布したりすることで、所定の形状に形成することができる。一例を挙げると、枠体35は、ディスペンサーによって所定の形状に形成することができる。即ち、ディスペンサーによる制御の下、ノズルから基材に対して所定の材料を所定の量だけ吐出させることにより、枠体35を形成することができる。別の例を挙げると、スクリーン印刷機等のコーターによって、基材上に所定の材料を所定の形状に塗布することで、枠体35を形成することができる。
【0049】
より具体的には、枠体35は、ディスペンサーやコーター等によって、基材上に、所定の材料を所定の形状となるように吐出又は塗布し、乾燥後に基材から剥離させることで形成することができる。或いは、枠体35は、ディスペンサーやコーター等によって、基材上に、2液硬化樹脂やUV硬化用樹脂といった所定の材料を所定の形状となるように吐出又は塗布し、硬化後に基材から剥離させることで形成することができる。
【0050】
その他、枠体35は、種々の手法によって所定の形状に形成することが可能である。例えば、所定の形状となるように、所定の材料から成るシート乃至ブロックを組むことによって、枠体35を所定の形状に形成してもよい。また、例えば、所定の材料から成るシートを基材の長手方向に配置し、垂直方向に当該材料を吐出又は塗布することで、枠体35を所定の形状に形成してもよい。或いは、枠体35は、任意方式の3Dプリンタによって製造することもできる。
【0051】
また、図2においては予め製造された枠体35を集電体21B上に置くものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、枠体35は、集電体21Bの上で製造されてもよい。一例を挙げると、集電体21Bを基材とし、ディスペンサーやコーター等によって集電体21B上に所定の材料を所定の形状に吐出又は塗布することで、集電体21B上に枠体35を形成することができる。
【0052】
活物質供給装置300は、図2に示す通り、チャンバ100内で搬送される集電体21B上に活物質22cを供給する。活物質22cは、電極活物質及び導電助剤を含む、複数の電極用造粒粒子のことを意味する。例えば、活物質供給装置300は、内部に活物質を保持するホッパと、当該ホッパの開口を開閉するシャッタとを備える。活物質供給装置300は、シャッタを開閉することにより、搬送される集電体21B上の搬送方向Dにおける所望の位置に、所望の量の活物質22cを供給することができる。
【0053】
図2に示す各工程の後、帯状の集電体21Bを所定単位ごとに分割することで、図1に示した集電体層21が形成される。活物質供給装置300は、分割される前の集電体層21(即ち、集電体21B)に対して活物質22cを供給することで、集電体層21と活物質22cとを含む部材が複数連なった部材シートを製造する。
【0054】
セパレータ供給装置400は、当該部材シートに対して、セパレータ30を供給する。具体的には、セパレータ供給装置400は、集電体21Bに対して積層された活物質22c対して、セパレータ30を供給する。例えば、セパレータ供給装置400は、セパレータロール30Rと、当該セパレータロール30Rからセパレータシート30Bを引き出す駆動機構とから構成される。セパレータ供給装置400は、搬送方向Dに沿って所定速度で搬送される活物質22cに対して、セパレータシート30Bを同じ所定速度で搬送しながら重ね合わせる。より具体的には、セパレータ供給装置400は、搬送される部材シートの上方に位置するローラを駆動機構として備え、当該ローラにより、セパレータシート30Bを所定速度で搬送しながら部材シートに押し当てることで、活物質22cに対してセパレータ30を供給することができる。
【0055】
ローラ500は、集電体21B上に供給された活物質22cを圧縮することで、図1に示した活物質層22を形成する。具体的には、ローラ500は、集電体層21とセパレータ30との間に活物質22cを挟んだ状態で部材シート及びセパレータ30を挟み込んで圧縮する。即ち、ローラ500は、活物質22cを、セパレータ30を介して圧縮する。これにより、図1に示した単セル10のうち、一方の電極20及びセパレータ30から成る部材が製造される。
【0056】
セパレータ回収装置600は、セパレータシート30Bにおける余剰部分を回収する。即ち、セパレータシート30Bの全体がセパレータ30として使用されるのではなく、セパレータシート30Bの端部など、セパレータ30として切り出されない部分が生じる場合がある。セパレータ回収装置600は、このような余剰部分を回収する。なお、余剰部分が生じない場合、製造装置1000は、セパレータ回収装置600を備えないこととしてもよい。
【0057】
図2に示したように、製造装置1000は、集電体層21、活物質層22、セパレータ30及び枠体35を含む単セル10の部材を、連続的に製造することができる。言い換えると、製造装置1000は、セパレータ30と重ねた状態の電極20を、連続的に製造することができる。また、図2に示したように、製造装置1000において、活物質22cの圧縮は、ローラ500と活物質22cとの間にセパレータ30を挟んで行われる。従って、製造装置1000は、ローラ500への活物質22cの付着を防ぐことができる。即ち、製造装置1000は、活物質22cの圧縮により形成される活物質層22の表面が不均一になったり、電極20に含まれる活物質22cの量が不安定になったりすることを回避することができる。このように、製造装置1000は、電極20の製造効率及び品質を向上させることができる。
【0058】
ローラ500による圧縮工程の後、製造装置1000は、種々の後処理を更に行なってもよい。例えば、製造装置1000は、図3に示す後処理装置700を備える。後処理装置700は、後処理部の一例である。図3においては、後処理装置700として、熱シール装置701及び整形切断装置702を例示する。熱シール装置701は、枠体35に対するセパレータ30の熱シールを行なう。また、整形切断装置702は、搬送されるセパレータシート30Bから、セパレータ30を切り出す。
【0059】
具体的には、熱シール装置701は、搬送されるセパレータシート30Bのうち、セパレータ30として切り出される部分の縁部を加熱及び加圧することで、枠体35に接着する。これにより、単セル10において、セパレータ30と枠体35との隙間からの電解液等の漏出を予防することができる。また、整形切断装置702は、セパレータシート30Bからセパレータ30を切り出す。より具体的には、整形切断装置702は、セパレータシート30Bのうち、熱シール装置701によって枠体35に接着された部分の外側を切断することにより、枠体35に対して接着された状態のセパレータ30を切り出すことができる。
【0060】
ここで、後処理装置700は、搬送方向Dに搬送される活物質22c及びセパレータ30の動きに同期して、当該搬送方向に移動しながら、後処理を実行することとしてもよい。即ち、製造装置1000は、後処理のために搬送を停止させることなく、熱シール装置701や整形切断装置702を移動させてセパレータ30に対する相対的な位置を固定させることによって、後処理を実行してもよい。これにより、製造装置1000は、電極20の製造効率を更に向上させることができる。
【0061】
また、後処理のために搬送を停止させる場合、製造効率の観点から、停止時間は短くする必要がある。そして、限られた停止時間の中で後処理を実行する必要が生じる。これに対して、熱シール装置701や整形切断装置702を移動させ、搬送を停止させずに後処理を実行する場合、このような時間制限は発生しない。従って、製造装置1000は、十分な時間をかけて各種後処理を実行し、電極20の品質を更に向上させることができる。
【0062】
なお、図3に示すように、整形切断装置702によってセパレータ30が切り出された後のセパレータシート30Bには、余剰部分がはしご状に残存する。図3に示すように、セパレータ回収装置600は、はしご状の余剰部分を巻き取って回収することができる。即ち、製造装置1000は、セパレータシート30Bの両端を残すようにセパレータ30を切り出すことで、余剰部分が一続きとなるようにし、回収を容易にすることができる。
【0063】
(第2実施形態)
上述した通り、単セル10におけるセパレータ30には、電解質として例えば電解液が保持される。このような電解液は、例えば、図2及び図3に示した各工程の後、セパレータ30に対して注液される。
【0064】
第2実施形態では、セパレータ30に対する電解液の注液工程を削減し、電極20の製造効率を更に向上させる場合について説明する。第2実施形態に係る製造装置1000は、第1実施形態で説明した製造装置1000と同様の構成を有する。以下、第1実施形態で説明した点については、図1図3と同じ符号を付して説明を省略する。
【0065】
第2実施形態において、上述した活物質22cは電解液を含む。ローラ500は、集電体21B、活物質22c及びセパレータ30を挟み込んで圧縮することにより、活物質22cからセパレータ30に対して、活物質22cに含まれていた電解液を染み込ませる。
【0066】
例えば、活物質22cは、ポリマー内に電解液を担持する。具体的には、活物質22cの各粒子には樹脂層を設けることができる。即ち、活物質22cは、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆活物質であってもよい。この場合、当該樹脂層に電解液を担持させることができる。
【0067】
或いは、活物質22cの各粒子に樹脂層を設けることなく、単に活物質22cと電解液とを混合させることとしてもよい。即ち、活物質供給装置300は、活物質22cと電解液とを混合したスラリーを、帯状の集電体21Bに供給してもよい。
【0068】
ローラ500は、電解液を含んだ活物質22cと、セパレータ30とを挟み込んで圧縮する。これによって、セパレータ30のうち図4及び図5において破線で示す領域に電解液が染み込む。即ち、第2実施形態に係る製造装置1000は、電解液の注液工程を削減することができる。
【0069】
なお、図4に示すように、後処理装置700による後処理や、セパレータ回収装置600による余剰部分の回収は、第1実施形態と同様に実行可能である。ここで、熱シール装置701は、セパレータ30のうち、電解液が染み込んだ領域の外の領域を熱シールすることが好ましい。即ち、電解液は可燃性の場合があり、熱シールの対象領域から電解液が染み込んだ領域を除外することで、不要なリスクを回避することができる。
【0070】
なお、上述した各種工程の後、帯状の集電体21Bから集電体21が適宜切り出されるなどして、電極20が製造される。また、一対の電極20(すなわち、正極20a及び負極20b)を、セパレータ30を介して互いに向かい合わせに積層するなどして、単セル10が製造される。例えば、図2に示した各種工程により、正極20a及び負極20bの一方の電極20と、セパレータ30とが積層された部材が製造される。当該部材に対して、他方の電極20を重ね合わせることにより、単セル10を製造することができる。なお、当該他方の電極20の製造方法については特に限定されるものではない。また、複数の単セル10を厚さ方向に積層し、複数の単セル10を外装体でシーリングすることなどにより、電池が製造される。
【0071】
以上説明したように、実施形態の製造装置1000は、帯状の集電体21Bに対して積層された活物質22cであって、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ100内で搬送方向Dに搬送される活物質22cに対して、セパレータ30を供給するセパレータ供給装置400と、集電体21Bに供給された活物質22cを、セパレータ30を介して圧縮するローラ500とを備える。これにより、製造装置1000は、電極20の製造効率及び品質を向上させることができる。
【0072】
また、製造装置1000は、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ100内で、集電体21B上への活物質22cの供給や、活物質22cの圧縮を行なう。これにより、製造装置1000は、活物質22cに空気が含まれにくくすることができる。従って、製造装置1000は、活物質22cの圧縮後の各種工程や電池の使用時等において、空気の膨張によって活物質層22の表面に凹凸が形成されるといった事態を回避することができる。
【0073】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。更に、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、枠体供給装置200は、活物質供給装置300よりも下流側D1に配置されてもよい。すなわち、集電体21B上に活物質22cを供給した後で、集電体21B上に枠体35を供給してもよい。この場合、枠体供給装置200は、集電体21B上に供給された活物質22cが枠体35の内部空間に入るように、集電体21B上に枠体35を供給する。この変形例のように構成することにより、集電体21B上に活物質22cを供給した後で、集電体21B上に枠体35を供給することができる。また、集電体21Bに枠体35を供給する前に集電体21B上にマスクを形成しておき、その後の任意のタイミングで、マスクの位置に枠体35を供給してもよい。或いは、製造装置1000は、枠体供給装置200を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 単セル
21B 集電体
22c 活物質
35 枠体
100 チャンバ
200 枠体供給装置
300 活物質供給装置
400 セパレータ供給装置
500 ローラ
600 セパレータ回収装置
700 後処理装置
701 熱シール装置
702 整形切断装置
1000 製造装置(電池用電極の製造装置)
D 搬送方向
D1 下流側
D2 上流側
図1
図2
図3
図4
図5