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特開2023-30684浄水処理監視システム、浄水処理監視装置、情報処理装置、プログラム、及び浄水処理監視方法
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  • 特開-浄水処理監視システム、浄水処理監視装置、情報処理装置、プログラム、及び浄水処理監視方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030684
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】浄水処理監視システム、浄水処理監視装置、情報処理装置、プログラム、及び浄水処理監視方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20230301BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20230301BHJP
【FI】
B01D21/30 A
C02F1/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135942
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】長谷 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】久本 祐資
(72)【発明者】
【氏名】山口 太秀
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BB09
4D015CA14
4D015EA07
4D015EA32
4D015FA02
4D015FA15
(57)【要約】
【課題】特殊なセンサを設置することなく、凝集不良を精度よく判定する浄水処理監視システム、浄水処理監視装置、情報処理装置、プログラム、及び浄水処理監視方法を提供する。
【解決手段】浄水処理監視システムは、水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、複数の予測モデルの中から、水質情報取得手段により取得された水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、選択された1つの予測モデルと、画像取得手段により取得された画像とに基づいて、処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える浄水処理監視システム。
【請求項2】
前記判定手段は、凝集剤注入率不足による凝集不良、pH不適正による凝集不良及びアルカリ度不適正による凝集不良の何れであるかを判定する、請求項1に記載の浄水処理監視システム。
【請求項3】
水質情報は濁度を示す情報であり、
前記複数の予測モデルには、互いに異なる濁度範囲が対応付けられており、
前記選択手段は、前記原水の濁度が属する濁度範囲に対応する1つの予測モデルを選択する、請求項1又は2に記載の浄水処理監視システム。
【請求項4】
前記画像取得手段は、フロック形成池の最終段の画像を取得する、請求項1~3のいずれか一項に記載の浄水処理監視システム。
【請求項5】
前記画像は動画像である、請求項1~4のいずれか一項に記載の浄水処理監視システム。
【請求項6】
前記複数の予測モデルは、凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像と、フロックの凝集状態とを教師データとして機械学習される、請求項1~5のいずれか一項に記載の浄水処理監視システム。
【請求項7】
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える浄水処理監視装置。
【請求項8】
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える浄水処理監視システムを構成するために、
前記格納手段、前記水質情報取得手段、前記画像取得手段、前記選択手段及び前記判定手段の少なくとも一つを備える、情報処理装置。
【請求項9】
浄水処理を監視するコンピュータを、
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
して機能させる、プログラム。
【請求項10】
通信可能に接続された複数の情報処理装置によって構成され、
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える浄水処理監視システムにおける、前記複数の情報処理装置のうち1つの情報処理装置を、
前記格納手段、前記水質情報取得手段、前記画像取得手段、前記選択手段及び前記判定手段の少なくとも一つとして機能させる、プログラム。
【請求項11】
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納するステップと、
原水の水質情報を取得するステップと、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得するステップと、
前記複数の予測モデルの中から、取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択するステップと、
選択された前記1つの予測モデルと、取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定するステップと、
を含む、情報処理装置が実行する浄水処理監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水処理監視システム、情報処理装置、浄水処理監視装置、プログラム、及び浄水処理監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上水処理、下水処理、工業用水処理、工業排水処理などの各種水処理分野において、被処理水中の懸濁物質を除去する方法として、凝集沈殿法が利用されている。
【0003】
ここで、凝集沈殿法では、凝集剤を用いて被処理水中の懸濁物質を凝集させ、生成したフロック(凝集体)を沈殿させることにより、被処理水中から懸濁物質を除去する。そのため、凝集沈殿法を利用した水処理技術においては、凝集剤を用いたフロックの形成を良好に進行させることが肝要となる。
【0004】
そこで、例えば、運転員が巡視によってフロックの形成を監視することや、フロックの形成状態を監視する監視技術が知られている。監視技術としては、例えば、特許文献1には、フロックのゼータ電位を画像により測定し、pH調整剤又は凝集剤の注入を制御する技術が記載されている。特許文献2には、フロック粒径を測定するセンサを設置し、早期異常感知を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-136545号公報
【特許文献2】特開2015-192960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、十分に熟練していない運転員にとって、適切に監視を行うことは困難である。
【0007】
さらに、特許文献1及び2の技術を適用するためには、特殊なセンサを設置する必要があった。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、特殊なセンサを設置することなく、凝集不良を精度よく判定する浄水処理監視システム、浄水処理監視装置、情報処理装置、プログラム、及び浄水処理監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る浄水処理監視システムは、
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える。
【0010】
本発明の一実施形態に係る浄水処理監視システムは、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像と、フロックの凝集状態とを教師データとして機械学習される、水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルを用いて、前記画像取得手段により取得された前記画像から予測されるフロックの凝集状態を出力する出力手段と、
前記フロックの凝集状態に基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える。
【0011】
本発明の一実施形態に係る浄水処理監視装置は、
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える。
【0012】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える浄水処理監視システムを構成するために、
前記格納手段、前記水質情報取得手段、前記画像取得手段、前記選択手段及び前記判定手段の少なくとも一つを備える。
【0013】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
浄水処理を監視するコンピュータを、
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
して機能させる。
【0014】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
通信可能に接続された複数の情報処理装置によって構成され、
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する格納手段と、
原水の水質情報を取得する水質情報取得手段と、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の予測モデルの中から、前記水質情報取得手段により取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段と、
選択された前記1つの予測モデルと、前記画像取得手段により取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段と、
を備える浄水処理監視システムにおける、前記複数の情報処理装置のうち1つの情報処理装置を、
前記格納手段、前記水質情報取得手段、前記画像取得手段、前記選択手段及び前記判定手段の少なくとも一つとして機能させる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る浄水処理監視方法は、
水質情報に応じた複数の予測モデルを格納するステップと、
原水の水質情報を取得するステップと、
凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得するステップと、
前記複数の予測モデルの中から、取得された前記水質情報に対応する1つの予測モデルを選択するステップと、
選択された前記1つの予測モデルと、取得された前記画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態に係る浄水処理監視システム、浄水処理監視装置、情報処理装置、プログラム、及び浄水処理監視方法によれば、特殊なセンサを設置することなく、凝集不良を精度よく判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】代表的な水処理システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る浄水処理監視システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】情報処理装置の判定動作を示すフローチャートである。
図4】予測モデルに学習させる教師データの作成手順を示すフローチャートである。
図5】水質情報である濁度及び水温を示す情報と予測モデルとの対応を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
水処理システムは、例えば浄水場において河川等から取水した原水を処理する際に使用される。なお、水処理システムで処理する原水は、河川水等に限定されるものではない。
【0020】
ここで、図1に、水処理システムの一例の概略構成を示す。図1に示す水処理システム100は、着水井10と、薬品混和池20と、内部が3つのフロック形成部31,32,33に区画されたフロック形成池30と、沈殿池40とを備えている。
【0021】
水処理システム100では、着水井10から供給された原水と、凝集剤とが、薬品混和池20において撹拌器21を用いて混合される。また、薬品混和池20において原水と凝集剤とを混合して得られる凝集剤混和水が、フロック形成池30へと供給され、フロック形成池30内の第1フロック形成部31、第2フロック形成部32および第3フロック形成部33を順次流れる。
【0022】
フロック形成池30内では、各フロック形成部31,32,33に設けられた撹拌器34,35,36による撹拌下、凝集剤混和水中のフロックが成長する。処理水がフロック形成池30に留まる時間は、例えば約20~40分であるが、当該例に限られない。そして、フロック形成池30から流出した凝集剤混和水中のフロックは、沈殿池40において沈殿させられる。
【0023】
沈殿池40において沈殿したフロックは、沈殿池40の底部に設けられた掻き寄せ器41により掻き寄せられた後、沈殿池40外へと排出されて処理される。
【0024】
フロック形成池30内で成長したフロックを沈殿池40において沈殿させて得られる処理水は、ろ過槽50に供給される。ろ過槽50では、沈殿処理で取り除ききれなかった小さなフロック等を砂や砂利の層又はフィルタを通してろ過することで、取り除く。
【0025】
因みに、この水処理システム100では、薬品混和池20内およびフロック形成池30内の撹拌強度の大きさは、特に限定されることなく、公知の手法を用いて定めることができる。具体的には、撹拌強度の大きさは、例えば、原水の水質に対応させた撹拌強度の大きさを予め定めておき、測定した原水の水質に応じた大きさとなるように制御することができる。
【0026】
また、この水処理システム100は、凝集剤を用いたフロックの凝集不良を判定して外部に通知する装置として、処理水におけるフロックの凝集不良を判定する浄水処理監視装置60を備えている。
【0027】
更に、水処理システム100は、フロックの凝集不良の判定に必要な情報を浄水処理監視装置60に提供する装置として、着水井10内の原水の水質情報を取得する水質情報取得装置70と、処理水の画像を取得する画像取得装置80とを備えている。
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る浄水処理監視システムについて説明する。図2に示す浄水処理監視システムは、浄水処理監視装置60と、水質情報取得装置70と、画像取得装置80と、を備える。
【0029】
(水質情報取得装置の概要)
水質情報取得装置70の概要について説明する。水質情報取得装置70は、原水の水質情報を取得する装置である。本実施形態では、水質情報取得装置70は、着水井10内の原水の濁度を測定する濁度計である。なお、ここでいう「濁度」とは例えば、日本水道協会「上水試験方法」で定める濁度、JIS K0101「工業用水試験方法」で定める濁度又は「NTU」(Nephelometric Turbidity Unit)とすることができる。水質情報取得装置70は、水温、有機物濃度等も取得できる。
【0030】
(画像取得装置の概要)
画像取得装置80の概要について説明する。画像取得装置80は、凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する装置である。画像取得装置80は一般に、水質を検出する一般的な各種センサと比較して、安価である。なお、本明細書における「画像」は、静止画だけでなく動画も含む。取得される画像が動画である場合、データベースへの負荷を少なくするために一定間隔ごとにスナップ画像を取得するか、動画を細かく分割して画像を取得することが望ましい。
【0031】
本実施形態では、画像取得装置80は、フロック形成池30の最終段に設置されて、最終段の画像を取得するカメラである。最終段では、最終段よりも前の段と比較して、フロックがより肥大化するとともにフロキュレータの回転速度もより緩速である。そのため、画像取得装置80を最終段に設置することで、画像取得装置80はフロックをより明瞭に撮影することができ、撮影精度が向上される。また、浄水場において最終段にカメラが既に設置されていることがあり、既存のカメラを利用することで導入コストを低減させることができる。
【0032】
画像取得装置80は、フロック形成池30の最終段に設置されていてもよく、最終段よりも前の段に設置されてもよい。また、画像取得装置80は、薬品混和池20又は沈殿池40に設置されてもよい。薬品混和池20に設置されることにより、より早期にフロックの凝集状態を判定することができる。また、画像取得装置80を沈殿池40の入口に設置されることにより、画像を明瞭に取得することができる。画像取得装置80の設置位置は、フロックの凝集状態の早期判定の必要性と、取得される画像の明瞭さとのバランスから決められる。画像取得装置80の性能が良いほど、画像取得装置80をより前段側に設置することができ、フロックの凝集状態をより早期に判定し得る。なお、一般的に、薬品混和池20では、フラッシュミキサーの回転速度が、フロック形成池30に設けられたフロキュレータの回転速度と比較してより高速である。そのため、画像取得装置80を薬品混和池20に設置する場合には、より高精度な画像取得装置80を用いることが好ましい。また、画像取得装置80を薬品混和池20からフロック形成池30までの管路(流路)に設置してもよく、薬品混和池20が2段型である場合には画像取得装置80を後段の薬品混和池に設置するのが好ましい。
【0033】
(浄水処理監視装置の概要)
次に、浄水処理監視装置60の概要について説明する。浄水処理監視装置60は、処理水におけるフロックの凝集不良を判定する装置である。浄水処理監視装置60は、水処理場等の任意の場所に設置される。本実施形態では、浄水処理監視装置60は、浄水処理監視装置60外の水質情報取得装置70及び画像取得装置80を組み合わせて用いられる。
【0034】
(浄水処理監視装置のハードウェア構成)
次に、浄水処理監視装置60のハードウェア構成について詳細に説明する。浄水処理監視装置60は、通信部61と、表示部62と、操作部63と、記憶部64と、制御部66と、を備える。
【0035】
通信部61は、無線又は有線を介して外部装置と通信する1つ以上のインタフェースである。本実施形態において、通信部61は、水質情報取得装置70及び画像取得装置80と通信可能である。通信部61と、水質情報取得装置70及び画像取得装置80との間の通信は、例えばPLC等の任意の装置を介して実行されるが、当該装置を介さずに実行される構成も可能である。
【0036】
表示部62は、表示デバイスである。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ又はOEL(Organic Electroluminescence)ディスプレイ等であるが、これらに限られず任意の表示デバイスとすることができる。
【0037】
操作部63は、ユーザ操作を受け付ける入力インタフェースである。入力インタフェースは、例えばマウス等のポインティングデバイス、物理キー、又は表示部62と一体的に設けられたタッチパネル等であるが、これらに限られず任意の入力インタフェースとすることができる。
【0038】
記憶部64は、1つ以上のメモリを含む記憶装置である。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部64は、例えば一次記憶装置又は二次記憶装置として機能する。記憶部64は、例えば浄水処理監視装置60に内蔵されるが、任意のインタフェースを介して浄水処理監視装置60に外部から接続される構成も可能である。
【0039】
記憶部64は、水質情報に応じた複数の予測モデルを記憶する。本実施形態では、記憶部64は、2度未満の原水濁度に対応する第1予測モデルと、2度以上10度未満の原水濁度に対応する第2予測モデルと、10度以上の原水濁度に対応する第3予測モデルと、を記憶する。これにより、例えば1つの予測モデルのみを記憶させる場合と比較して、各予測モデルによる予測精度が向上し得る。各予測モデルは、処理水の画像が入力されると、当該処理水の凝集状態を「正常」、「凝集剤注入率不足による凝集不良」、「pH不適正による凝集不良」及び「アルカリ度不適正による凝集不良」の何れかに分類して結果を出力する。
【0040】
本実施形態では、予測モデルの数は3つであるが、予測モデル数は2つでもよいし、4つ以上であってもよい。濁度をさらに細分化するなどして予測モデルの数を増やせば、凝集不良を判定する精度を向上させ得る。ただし、各予測モデルの学習データ数を重複なく増加させることが難しい場合もあるため、取得可能な学習データ数を考慮しながら、判定精度を向上させることができるよう、予測モデルの数を設定することが好ましい。
【0041】
本実施形態では、教師データによって学習済みの予測モデルが記憶部64に記憶されているが、学習前の予測モデルを記憶部64に記憶させてもよい。この場合には、後述する学習手段661によって予測モデルの学習が行われる。
【0042】
制御部66は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部66は、浄水処理監視装置60全体の動作を制御する。
【0043】
(浄水処理監視装置のソフトウェア構成)
次に、浄水処理監視装置60のソフトウェア構成について説明する。浄水処理監視装置60の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部64に記憶される。当該1つ以上のプログラムは、制御部66によって読み込まれると、制御部66を学習手段661、選択手段662、判定手段663、通知手段664、格納手段665、水質情報取得手段666及び画像取得手段667として機能させる。
【0044】
学習手段661は、教師データを予測モデルに学習させる手段である。学習手段661は、入力である画像と、出力である処理水のフロックの凝集状態との関係を予測モデルに機械学習させる手段である。出力に、フロックの凝集不良の原因を含むこともできる。凝集不良の原因は、凝集剤注入率不足、pH不適正及びアルカリ度不適正を含む。予測モデルは、例えば教師有り学習モデルである。機械学習には任意の手法を適用できる。
【0045】
選択手段662は、記憶部64に記憶された複数の予測モデルの中から、水質情報取得装置70により取得された水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する手段である。例えば、選択手段662は、水質情報取得装置70が取得する原水濁度が2度未満であるときには第1予測モデルを選択し、原水濁度が2度以上10度未満であるときには第2予測モデルを選択し、原水濁度が10度以上であるときには第3予測モデルを選択する。
【0046】
判定手段663は、選択された前記1つの予測モデルと、画像取得装置80により取得された前記画像とに基づいて、処理水におけるフロックの凝集不良を判定する手段である。判定手段663は、フロックの凝集不良の原因を推定させ出力させることもできる。
【0047】
通知手段664は、判定手段663によるフロックの凝集不良の判定結果を、表示部62を介して外部の人間(例えば監視員)に通知する手段である。通知手段664は、凝集不良やその原因を警告することができ、また表示部62に組み込まれてもよい。通知手段664は、判定結果を水処理システム100の制御装置(例えば凝集剤注入量の制御装置など)に通知してもよい。
【0048】
格納手段665は、データ又は情報を記憶部64に格納する手段である。本実施形態では、格納手段665は、水質情報に応じた複数の予測モデルを格納する。
【0049】
水質情報取得手段666は、原水の水質情報を水質情報取得装置70から取得する手段である。
【0050】
画像取得手段667は、凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を画像取得装置80から取得する手段である。
【0051】
(教師データの作成手順)
図3を参照して、教師データの作成手順について説明する。
【0052】
ステップS100:水質情報取得装置70は、原水の水質情報を測定する。本実施形態では、水質情報取得装置70は濁度計であり、原水の水質情報として着水井10内の濁度を示す情報を取得する。
【0053】
ステップS101:画像取得装置80は、凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する。本実施形態では、画像取得装置80はカメラであり、フロック形成池30の最終段若しくはそれよりも前の段、又は沈殿池40の入口もしくはその途中において、処理水の画像を取得する。画像取得装置80は処理水の中又は外に設置することができる。画像には動画が含まれる。
【0054】
一例では、1つの画像の中には約10個のフロックが含まれる。しかしながら、1つの画像に含まれるフロック数は、任意に定めることができる。また、スクリーンを背景として画像を撮影することで、背景色が統一されるとともに、撮影範囲が奥行き方向においてカメラからスクリーンの位置までに限定される。すなわち、スクリーンよりも遠い位置にある物体は撮影されなくなる。画像取得装置80が遠方を撮影した場合、撮影した画像からフロックの粒径を特定するのが難しくなる。一方で、撮影範囲を限定することで、例えば撮影した画像内でのフロックのピクセル数などからフロックの粒径が算出することがより容易になる。
【0055】
ステップS102:運転者や開発者は、ステップS101で画像を取得した処理水のフロックの凝集状態を決定する。凝集状態は予測モデルの正解ラベルとなる。本実施形態では、凝集状態は、「正常」、「凝集剤注入率不足による凝集不良」、「pH不適正による凝集不良」及び「アルカリ度不適正による凝集不良」の4つのいずれかとすることができる。正常と決定する条件の1つを、フロックの平均粒径及びフロック数(単位体積の処理水に含まれるフロックの数)が目標範囲に含まれていることとし得る。また、正常と決定する条件は、フロックの形状が正常(例えば球形状)であることを含み得る。これらの判断基準は学習時や判定時に取得される画像からも把握できる。そのため、予測モデルが行う凝集状態の予測は、画像で把握できるこれら判断基準に基づくと考えられる。
【0056】
処理水のフロックの凝集状態が正常であると決定する条件に、フロックの沈降速度が適切であることを含めてもよい。上述したように、画像は静止画でもよいし、動画像であってもよい。例えばフロックの沈降速度は静止画からも算出できるが、動画からはフロックの沈降速度がより容易に算出され得る。
【0057】
凝集状態が凝集不良である場合に、運転者や開発者は、その原因が凝集剤注入率不足による凝集不良、pH不適正による凝集不良及びアルカリ度不適正による凝集不良のいずれであるかを決定することもできる。この決定を行うために、処理水の凝集剤注入率、pH、アルカリ度等を測定してもよい。発明者らは、凝集状態が凝集不良である場合、撮影された画像に映るフロックについて、凝集剤注入率、pH、及びアルカリ度に応じて、以下のような傾向があることを発見した。
【0058】
具体的には、凝集剤注入率不足によりフロックの凝集状態が凝集不良である場合、フロックの平均粒径は目標範囲よりも小さくなり、フロックの形状は丸型であり、フロック数は目標範囲よりも少なくなる傾向がある。
【0059】
pHが高いためにフロックの凝集状態が凝集不良である場合、フロックの平均粒径は目標範囲程度であり、フロックの形状は球状ではなくなり、フロック数は目標範囲程度になる傾向がある。さらに、処理水が白濁する傾向がある。また、フロックの形状が球状でなくなると、フロックの密度が小さくなり、フロックが沈降しにくくなるので、沈降速度が遅くなる傾向がある。
【0060】
pHが低いためにフロックの凝集状態が凝集不良である場合、フロックの平均粒径は目標範囲よりも小さくなり、フロックの形状は丸型であり、フロック数は目標範囲程度になる傾向がある。
【0061】
アルカリ度が低いためにフロックの凝集状態が凝集不良である場合、フロックの平均粒径は目標範囲よりも小さくなり、フロックの形状は球状ではなくなり、フロック数は目標範囲よりも少なくなる傾向がある。さらに、処理水が白濁する傾向がある。
【0062】
ここで、凝集不良が発生しているときの上記傾向は、原水の水質情報に応じて顕著に現れたり、逆に微かに現れたりする。発明者らは、原水の水質情報のうち、例えば濁度に応じて上記傾向の現れ方が異なることを発見した。発明者らは、特に、濁度範囲を0度以上2度未満、2度以上10度未満、及び10度以上で分類すると、分類ごとに上記傾向の現れ方が異なる(例えば、濁度範囲ごとに上記傾向が顕著に現れたり、逆に微弱に現れたりする)ことを発見した。このため本実施形態では、互いに異なる濁度範囲を対応付けた複数の予測モデルを用意しておき、各予測モデルに対応する濁度範囲に属する教師データを用いて各予測モデルの学習が行われる。このため、例えば1つの予測モデルに教師データを学習させる場合と比較して、各予測モデルによる予測精度が向上し得る。
【0063】
上述の凝集不良の原因毎の傾向は、取得された画像から把握できる。そのため予測モデルが行う凝集不良の原因の予測は、画像で把握できる上述の傾向に基づくと考えられる。
【0064】
ステップS103:運転者や開発者は、水質情報取得装置70が測定した水質情報(例えば濁度を示す情報)と、画像取得装置80が取得した画像と、運転者や開発者が決定した処理水におけるフロックの凝集状態(正解ラベル)と、に基づいて、水質情報が対応付けられた1つの教師データ(画像及び正解ラベル)を生成する。
【0065】
運転者や開発者は、条件の異なる原水で上記手順を繰り返して、多数の教師データを収集する。なお、例えば原水の濁度は降雨等によって変動する。
【0066】
予測モデルに学習させる教師データの数をより増加させるために、開発者等は、バッチ試験(実験室での試験)を行うことができ、ミニプラント(浄水場と同様の処理を行う小型化されたプラント)の処理に基づいて教師データを作成することもできる。これらの場合、水質情報取得装置70及び画像取得装置80が、フロックの凝集状態の判定を行う実施設とは異なる場所に設置される。例えば開発者等は、原水の濁度、処理水の凝集剤注入率、pH及びアルカリ度のうち1つ以上の条件を変えながら、複数の教師データを作成する。開発者等は、水質情報取得装置70が取得した水質情報及び画像取得装置80が取得した画像を、フロックの凝集状態の判定を行う実施設で適用できるように適宜修正してもよい。
【0067】
開発者等は、バッチ試験及びミニプラントの処理が、フロックの凝集状態の判定を行う実設備における処理に対応するよう、水処理の内容や時間について留意する。
【0068】
(浄水処理監視装置の学習動作)
運転者や開発者は、操作部63を用いて、水質情報が対応付けられた教師データを、浄水処理監視装置60の学習手段65に入力する。
【0069】
学習手段65は、入力された原水の水質情報に対応する予測モデルに、教師データを学習させる。例えば本実施形態では、原水の水質情報としての濁度が3度である場合に、第2予測モデルに教師データを学習させる。このように入力された原水の水質情報に対応する予測モデルに、当該原水を処理した処理水の画像を含む教師データを学習させることで、予測モデルの精度を向上させることができる。
【0070】
学習が完了した予測モデル(学習済みモデル)は、凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を入力すると、当該処理水におけるフロックの凝集状態の予測結果を出力する。本実施形態では、出力される予測結果は、「正常」、「凝集剤注入率不足による凝集不良」、「pH不適正による凝集不良」及び「アルカリ度不適正による凝集不良」の何れかである。
【0071】
(浄水処理監視装置の判定動作)
次に、図4を参照して、浄水処理監視装置60の判定動作について説明する。
【0072】
ステップS200:水質情報取得装置70は、原水の水質情報を測定する。このステップは、上述したステップS100と同様である。
【0073】
ステップS201:画像取得装置80は、凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する。上述したステップS101と同様である。
【0074】
ステップS202:水質情報取得装置70が取得した水質情報と、画像取得装置80が取得した画像とは、浄水処理監視装置60に入力される。この入力を自動的に行うことができる。
【0075】
ステップS203:浄水処理監視装置60の選択手段662は、複数の予測モデルの中から、水質情報取得装置70により取得された水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する。例えば本実施形態では、水質情報としての原水の濁度が9度である場合に、第2予測モデルを選択する。
【0076】
ステップS204:浄水処理監視装置60の判定手段663は、選択された1つの予測モデルと、画像取得装置80により取得された画像とに基づいて、前記処理水におけるフロックの凝集不良を判定する。判定結果は、表示部62等に出力される。出力として、通知手段664によって、フロックの凝集不良やその原因を外部の人間(例えば監視員)に通知することもできる。
【0077】
具体的には、判定手段663は、画像取得手段667により取得された画像を予測モデルに入力する。判定手段663は、予測モデルから出力されたフロックの凝集状態の予測結果に基づいて、フロックの凝集不良を判定する。
【0078】
例えば、予測結果が「正常」である場合、判定手段663は、フロックの凝集不良は発生していない(すなわち、フロックが正常に凝集している)と判定する。
【0079】
また、予測結果が「凝集剤注入率不足による凝集不良」である場合、判定手段663は、フロックの凝集不良が発生しており、凝集剤注入率不足が原因であると判定する。
【0080】
また、予測結果が「pH不適正による凝集不良」である場合、判定手段663は、フロックの凝集不良が発生しており、pH不適正が原因であると判定する。
【0081】
また、予測結果が「アルカリ度不適正による凝集不良」である場合、判定手段663は、フロックの凝集不良が発生しており、アルカリ度不適正が原因であると判定する。
【0082】
運転者は、判定手段663が判定した判定結果に基づいて対処を行う。例えば凝集剤注入率不足による凝集状態の凝集不良と判断された場合、運転者は処理水に凝集剤を追加注入する。その後再度ステップS200~S204の処理を行い、フロックの凝集状態が正常になったか確認できる。
【0083】
以上述べたように、本実施形態によれば、浄水処理監視システムが、水質情報に応じた複数の予測モデルを記憶する記憶部64と、原水の水質情報を取得する水質情報取得装置70と、凝集沈殿プロセスにおける処理水の画像を取得する画像取得装置80と、複数の予測モデルの中から、水質情報取得装置70により取得された水質情報に対応する1つの予測モデルを選択する選択手段662と、選択された1つの予測モデル及び画像取得装置80により取得された画像に基づいて、処理水におけるフロックの凝集不良を判定する判定手段663と、を備える。本実施形態の浄水処理監視システムには特殊なセンサが設置されていないため、当該浄水処理監視システムは低コストで導入され得る。また、本実施形態の浄水処理監視システムでは、原水の水質情報に応じた複数の予測モデルを記憶することで、各予測モデルが、当該原水を処理した結果生じるフロックの凝集状態を、高い精度で予測し得る。
【0084】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0085】
例えば、上述した実施形態に係る浄水処理監視装置60の機能が、複数の情報処理装置に分割された構成も可能である。当該複数の情報処理装置のうち少なくとも1つが、例えばインターネット等のネットワークに接続されたサーバとして実現される構成も可能である。例えば、当該複数の浄水処理監視装置のうち、第1の浄水処理監視装置が、選択手段662、判定手段663、通知手段664、格納手段665、水質情報取得手段666、画像取得手段667のうちの一部の手段として機能し、第2の浄水処理監視装置が、残りの手段として機能してもよい。上記の複数の手段の分散配置の例はこれに限られず、任意の数の浄水処理監視装置に対して任意に分散させて配置することができる。
【0086】
上述の実施形態では、原水の水質情報として濁度を用いる例について説明した。しかしながら、濁度以外の水質情報が用いられてもよい。例えば原水の濁度に加えて水温を用いることが考えられる。かかる場合、記憶部64は、濁度の範囲と水温の範囲との組み合わせに対応する複数の予測モデルを記憶できる。例えば図5に示すように、記憶部64は、濁度の範囲及び水温の範囲の組み合わせに応じた合計6つの予測モデルを記憶できる。
【0087】
また上述した実施形態では、予測モデルが、フロックの形成状態を「正常」、「凝集剤注入率不足による凝集不良」、「pH不適正による凝集不良」及び「アルカリ度不適正による凝集不良」の4項目の何れかに分類する例について説明した。しかしながら、予測モデルが分類可能な項目数、及び、分類される各項目の内容は、当該例に限られない。例えば、「pH不適正による凝集不良」を、「pHが高いことによる凝集不良」と、「pHが低いことによる凝集不良」とに分けてもよい。さらに例えば、「凝集不良」を、「やや問題がある」と、「大きく問題がある」とに分けてもよい。また、出力される予測結果は、「正常」と「凝集不良」のいずれかであってもよい。
【0088】
また、上述した実施形態において、図2乃至図4を参照して浄水処理監視装置60の動作の例について説明した。しかしながら、上述した動作に含まれる一部のステップ、又は1つのステップに含まれる一部の動作が、論理的に矛盾しない範囲内において省略された構成も可能である。また、上述した動作に含まれる複数のステップの順番が、論理的に矛盾しない範囲内において入れ替わった構成も可能である。
【0089】
また、上述した実施形態において、浄水処理監視装置60の制御部66によって実現される各種の手段をソフトウェア構成として説明したが、少なくとも一部の手段は、ソフトウェア資源及び/又はハードウェア資源を含む概念であってもよい。例えば、通知手段664は、1つ以上のディスプレイ装置又は印刷装置等を含んでもよい。
【0090】
また、上述した実施形態に係る浄水処理監視装置60として機能させるために、コンピュータ又は携帯電話等の装置を用いることができる。当該装置は、実施形態に係る浄水処理監視装置60の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該装置のメモリに格納し、当該装置のプロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させることによって実現可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 着水井
20 薬品混和池
21 撹拌器
30 フロック形成池
31 第1フロック形成部
32 第2フロック形成部
33 第3フロック形成部
34 撹拌器
40 沈殿池
41 寄せ器
50 ろ過槽
60 浄水処理監視装置
61 通信部
62 表示部
63 操作部
64 記憶部
66 制御部
661 学習手段
662 選択手段
663 判定手段
664 通知手段
665 格納手段
666 水質情報取得手段
667 画像取得手段
70 水質情報取得装置
80 画像取得装置
100 水処理システム
図1
図2
図3
図4
図5