(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030685
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ガス検知システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/49 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
G01N21/49 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135943
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】猿谷 敏之
(72)【発明者】
【氏名】北川 雄真
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄太
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC13
2G059EE01
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG03
2G059GG09
2G059KK02
(57)【要約】
【課題】人体に危険を生じさせずにガス検知を高感度に行うことが可能なガス検知システムを提供する。
【解決手段】ガス検知システムは、第1、第2の変調信号により変調された、被測定ガスの吸収波長を含む第1、第2のレーザ光を、被測定空間に向けて出射する第1、第2の投光部と、第1、第2のレーザ光の、被測定空間からの戻り光を受け取る受光部と、受光部が受け取った戻り光の受光信号に基づき、被測定空間における被測定ガスの濃度を検知する制御部と、を備え、第1、第2の投光部は、第1、第2の投光部から被測定空間までの空間において、第1のレーザ光の第1のプロファイル及び第2のレーザ光の第2のプロファイルが重なり合う部分が存在する場合であっても、当該重なり合う部分、並びに、第1、第2のプロファイルが重なり合わない部分の全体にわたって、第1、第2のレーザ光の光パワーが予め定められた値を超えないように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変調信号により変調された、被測定ガスの吸収波長を含む第1のレーザ光を、被測定空間に向けて出射する第1の投光部と、
第2の変調信号により変調された、前記被測定ガスの吸収波長を含む第2のレーザ光を、前記被測定空間に向けて出射する第2の投光部と、
前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光の、前記被測定空間からの戻り光を受け取る受光部と、
前記受光部が受け取った前記戻り光の受光信号に基づき、前記被測定空間における前記被測定ガスの濃度を検知する制御部と、
を備え、
前記第1の投光部及び前記第2の投光部は、前記第1の投光部及び前記第2の投光部から前記被測定空間までの空間において、前記第1のレーザ光の第1のプロファイル及び前記第2のレーザ光の第2のプロファイルが重なり合う部分が存在する場合であっても、当該重なり合う部分、並びに、前記第1のプロファイル及び前記第2のプロファイルが重なり合わない部分の全体にわたって、前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光の光パワーが予め定められた値を超えないように構成される、
ガス検知システム。
【請求項2】
前記第2の投光部は、前記第1の変調信号と同一の前記第2の変調信号により変調された前記第2のレーザ光を出射する、請求項1に記載のガス検知システム。
【請求項3】
前記第2の投光部は、前記第1の変調信号と異なる前記第2の変調信号により変調された前記第2のレーザ光を出射し、
前記制御部は、
前記戻り光の受光信号を、前記第1のレーザ光に起因する第1の戻り光信号と、前記第2のレーザ光に起因する第2の戻り光信号とに分離し、
前記第1の戻り光信号に基づき、前記第1のレーザ光が到達した第1の空間における前記被測定ガスの濃度を検知し、
前記第2の戻り光信号に基づき、前記第2のレーザ光が到達した第2の空間における前記被測定ガスの濃度を検知する、
請求項1に記載のガス検知システム。
【請求項4】
前記第1の変調信号を生成する第1の波形発生器と、
前記第2の変調信号を生成する第2の波形発生器と、
を更に備え、
前記第1の投光部は、前記第1の波形発生器により生成された前記第1の変調信号により変調された前記第1のレーザ光を、前記被測定空間に向けて出射し、
前記第2の投光部は、前記第2の波形発生器により生成された前記第2の変調信号により変調された前記第2のレーザ光を、前記被測定空間に向けて出射する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のガス検知システム。
【請求項5】
前記受光部が受け取った前記戻り光の前記受光信号を前記第1の変調信号に基づき検波する第1のロックインアンプと、
前記受光部が受け取った前記戻り光の前記受光信号を前記第2の変調信号に基づき検波する第2のロックインアンプと、
を更に備え、
前記制御部は、前記第1のロックインアンプにより前記第1の変調信号に基づき検波した前記受光信号と、前記第2のロックインアンプにより前記第2の変調信号に基づき検波した前記受光信号とに基づき、前記被測定空間における前記被測定ガスの濃度を検知する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検知システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記受光部が受け取った前記戻り光の前記受光信号に対してフーリエ変換を行って、当該受光信号に含まれる前記第1のレーザ光に起因する第1の戻り光信号と、前記第2のレーザ光に起因する第2の戻り光信号とを取得し、
前記第1の戻り光信号及び前記第2の戻り光信号に基づき、前記被測定空間における前記被測定ガスの濃度を検知する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検知システム。
【請求項7】
前記受光部は、光が入力されたことに応じて電気信号を出力する受光素子と、予め定められた画角から入射した光を前記受光素子へ位置づける光学系と、を備え、
前記第1の投光部は、前記被測定空間における前記光学系から見て前記画角の範囲に存在する位置へ向けて前記第1のレーザ光を出射し、
前記第2の投光部は、前記被測定空間における前記光学系から見て前記画角の範囲に存在する位置へ向けて前記第2のレーザ光を出射する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のガス検知システム。
【請求項8】
前記受光部は、前記光学系の前記画角を変位するための機構を更に備え、
前記機構により前記光学系の前記画角が変位された場合、前記第1の投光部は、前記変位された画角の範囲に存在する位置へ向けて前記第1のレーザ光を出射し、前記第2の投光部は、前記変位された画角の範囲に存在する位置へ向けて前記第2のレーザ光を出射する、
請求項7に記載のガス検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
メタンガス及び硫化水素ガス等のガスは、特定の波長の光を吸収することが知られている。特許文献1には、ガスのこのような性質を利用して、被測定ガスの吸収波長を含むレーザ光を被測定空間に向けて出射し、被測定空間を通過して反射された光の吸収波長における光量に基づいて被測定ガスの検知を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被測定空間を通過して反射する光は、反射及び散乱を伴ってから受光素子に入射するため、受光素子に入射する光のパワーは出射したレーザ光のパワーと比べて極めて小さくなる。そのため、被測定空間から離れた場所からレーザ光を出射して被測定ガスを検知するには、出射するレーザ光のパワーを大きくする必要がある。一方で、被測定空間に人間がいるような場合、出射するレーザ光のパワーを大きくすると、安全クラス1(JIS C6802)を超えるAEL(Accessible Emission Limit:被ばく放出限界)を人体に被ばくさせることになり、危険が生じる。したがって、従来の構成においては、被測定空間に人間がいる可能性がある場合、人体に危険を生じさせずに被測定空間から離れた位置からレーザ光を出射してガス検知を行うことができなかった。
【0005】
本開示の目的は、人体に危険を生じさせずにガス検知を高感度に行うことが可能なガス検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係るガス検知システムは、第1の変調信号により変調された、被測定ガスの吸収波長を含む第1のレーザ光を、被測定空間に向けて出射する第1の投光部と、第2の変調信号により変調された、前記被測定ガスの吸収波長を含む第2のレーザ光を、前記被測定空間に向けて出射する第2の投光部と、前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光の、前記被測定空間からの戻り光を受け取る受光部と、前記受光部が受け取った前記戻り光の受光信号に基づき、前記被測定空間における前記被測定ガスの濃度を検知する制御部と、を備え、前記第1の投光部及び前記第2の投光部は、前記第1の投光部及び前記第2の投光部から前記被測定空間までの空間において、前記第1のレーザ光の第1のプロファイル及び前記第2のレーザ光の第2のプロファイルが重なり合う部分が存在する場合であっても、当該重なり合う部分、並びに、前記第1のプロファイル及び前記第2のプロファイルが重なり合わない部分の全体にわたって、前記第1のレーザ光及び前記第2のレーザ光の光パワーが予め定められた値を超えないように構成される。このように、受光部は、第1のレーザ光及び第2のレーザ光の戻り光に基づき、被測定空間における被測定ガスの濃度を検知するため、一つの投光部のみを備えた構成よりもより詳細な被測定ガスの濃度に関する情報を取得することができる。第1の投光部及び第2の投光部は、第1の投光部及び第2の投光部から被測定空間までの空間の全体にわたってレーザ光の光パワーが予め定められた値を超えないように構成されるため、人体に危険を生じさせることを防止することができる。したがって、人体に危険を生じさせずにガス検知を高感度に行うことが可能である。
【0007】
一実施形態において、前記第2の投光部は、前記第1の変調信号と同一の前記第2の変調信号により変調された前記第2のレーザ光を出射する。このように、受光部は、同一の変調信号により変調された第1のレーザ光及び第2のレーザ光の戻り光に基づき、被測定空間における被測定ガスの濃度を検知する。そのため、一つの投光部のみを備えた構成と比べて、被測定空間から離れた位置からレーザ光を出射してガス検知を行うことができる。また、第1の投光部及び第2の投光部は、第1の投光部及び第2の投光部から被測定空間までの空間の全体にわたってレーザ光の光パワーが予め定められた値を超えないように構成されるため、人体に危険を生じさせることを防止することができる。したがって、人体に危険を生じさせずに被測定空間から離れた位置からガス検知を行うことが可能である。
【0008】
一実施形態において、前記第2の投光部は、前記第1の変調信号と異なる前記第2の変調信号により変調された前記第2のレーザ光を出射し、前記制御部は、前記戻り光の受光信号を、前記第1のレーザ光に起因する第1の戻り光信号と、前記第2のレーザ光に起因する第2の戻り光信号とに分離し、前記第1の戻り光信号に基づき、前記第1のレーザ光が到達した第1の空間における前記被測定ガスの濃度を検知し、前記第2の戻り光信号に基づき、前記第2のレーザ光が到達した第2の空間における前記被測定ガスの濃度を検知する。このように、第1のレーザ光に基づく第1の戻り光信号と、第2のレーザ光に基づく第2の戻り光信号とを区別して被測定ガスの濃度を検知するため、複数地点における被測定ガスの濃度を同時に検知することができる。
【0009】
一実施形態において、前記第1の変調信号を生成する第1の波形発生器と、前記第2の変調信号を生成する第2の波形発生器と、を更に備え、前記第1の投光部は、前記第1の波形発生器により生成された前記第1の変調信号により変調された前記第1のレーザ光を、前記被測定空間に向けて出射し、前記第2の投光部は、前記第2の波形発生器により生成された前記第2の変調信号により変調された前記第2のレーザ光を、前記被測定空間に向けて出射する。このように、第1の波形発生器及び第2の波形発生器を備えることで、第1、第2の波形発生器により生成した第1、第2の変調信号により変調された第1、第2のレーザ光により、ガス濃度を検知することができる。
【0010】
一実施形態において、前記受光部が受け取った前記戻り光の前記受光信号を前記第1の変調信号に基づき検波する第1のロックインアンプと、前記受光部が受け取った前記戻り光の前記受光信号を前記第2の変調信号に基づき検波する第2のロックインアンプと、を更に備え、前記制御部は、前記第1のロックインアンプにより前記第1の変調信号に基づき検波した前記受光信号と、前記第2のロックインアンプにより前記第2の変調信号に基づき検波した前記受光信号とに基づき、前記被測定空間における前記被測定ガスの濃度を検知する。このように、第1のロックインアンプ及び第2のロックインアンプを備えることで、第1、第2のレーザ光についての戻り光の信号を判別して、ガス濃度を検知することができる。
【0011】
一実施形態において、前記制御部は、前記受光部が受け取った前記戻り光の前記受光信号に対してフーリエ変換を行って、当該受光信号に含まれる前記第1のレーザ光に起因する第1の戻り光信号と、前記第2のレーザ光に起因する第2の戻り光信号とを取得し、前記第1の戻り光信号及び前記第2の戻り光信号に基づき、前記被測定空間における前記被測定ガスの濃度を検知する。このように、フーリエ変換を適用することで、第1、第2のレーザ光についての戻り光の信号を判別して、ガス濃度を検知することができる。
【0012】
一実施形態において、前記受光部は、光が入力されたことに応じて電気信号を出力する受光素子と、予め定められた画角から入射した光を前記受光素子へ位置づける光学系と、を備え、前記第1の投光部は、前記被測定空間における前記光学系から見て前記画角の範囲に存在する位置へ向けて前記第1のレーザ光を出射し、前記第2の投光部は、前記被測定空間における前記光学系から見て前記画角の範囲に存在する位置へ向けて前記第2のレーザ光を出射する。このように、受光部は、第1のレーザ光に起因する戻り光と第2のレーザ光に起因する戻り光とを受け取るため、両方の戻り光を用いて被測定空間における被測定ガスの濃度を検知することができる。
【0013】
一実施形態において、前記受光部は、前記光学系の前記画角を変位するための機構を更に備え、前記機構により前記光学系の前記画角が変位された場合、前記第1の投光部は、前記変位された画角の範囲に存在する位置へ向けて前記第1のレーザ光を出射し、前記第2の投光部は、前記変位された画角の範囲に存在する位置へ向けて前記第2のレーザ光を出射する。このように、受光部の光学系、並びに第1の投光部及び第2の投光部がレーザ光を出射する位置を変位させることで、広い空間における被測定ガスの濃度を検知することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一実施形態によれば、人体に危険を生じさせずにガス検知を高感度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】比較例に係るガス検知システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るガス検知システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図2の制御部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係るガス検知システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<比較例>
図1は、比較例に係るガス検知システム90の構成を示す図である。
図1に示すように、比較例に係るガス検知システム90は、受光部91、投光部94、及び制御部97を備える。受光部91は、受光レンズ等の光学系92、及び、フォトダイオード等の受光素子93を備える。投光部94は、コリメートレンズ等の光学系95、及び、レーザ光源96を備える。
【0017】
レーザ光源96の発振波長は、被測定ガスGの吸収波長に合わせて調整されている。レーザ光源96は、被測定ガスGの吸収波長を含むレーザ光を、光学系95を介して被測定ガスGに向けて出射する。出射されるレーザ光の光軸Lは、受光部91の光学系92の画角α内に位置づけられる。レーザ光は背景物体99により反射及び散乱する。レーザ光の戻り光は、受光部91の光学系92により、受光素子93に向けて集光される。制御部97は、受光素子93が受光した戻り光に含まれる被測定ガスGの吸収波長の光量減少から被測定ガスGの有無及び濃度を検知する。
【0018】
このようなガス検知システム90において、投光部94から出射されたレーザ光の光パワーは、レーザ光が光学系95でコリメートされて、ほとんどビーム径が広がらなかったとしても、戻り光として受光部91において受光されるまでの間に大幅に減衰する。背景物体99により散乱する光の光パワーの減衰は、背景物体99における反射率及び散乱状態(例えば等方散乱)に依存する。戻り光は放射状に広がる散乱光であるため、戻り光の光パワー密度は、光学系92に到達するまでの間に、背景物体99から受光部91までの距離のおよそ2乗に反比例して減衰する。さらに、戻り光は大気中の塵などによっても散乱されるため、そのことも戻り光の光パワーの減衰に寄与する。これらのことから、一定寸法の光学系92の径で受光できる戻り光の光パワーは、レーザ光源96から出射されたレーザ光の光パワーと比べて極めて小さくなる。ある条件での実験では、30mの距離から戻ってくる戻り光の光パワーは、出射したレーザ光の光パワーと比べて約106の1にまで減衰した。
【0019】
比較例の構成において、受光部91と背景物体99との間の距離を長距離(例えば、50m~100m又はそれよりも大きな距離)にした、ガス検知を実現するためには、出射するレーザ光のパワーを大きくする必要がある。しかし、作業者がいるプラントなどでは、コリメートしたレーザ光により、安全クラス1(JIS C6802)を超えるAELを人体に被ばくさせることになり、危険が生じる。例えば、メタンガスの検出に使用される1600nm帯の波長では、CW(Continuous Wave:連続波)光源の場合、安全クラス1の上限となるAELは10mWである(JIS C6802より)。したがって、比較例の構成においては、被測定空間に人間がいる可能性がある場合、人体に危険を生じさせずに被測定空間から離れた位置からレーザ光を出射してガス検知を行うことができなかった。
【0020】
<実施形態>
本開示に係るガス検知システム100(100a,100b)は、分散して配置された複数の投光部から人体に危険を生じさせない光パワーのレーザ光を照射し、その戻り光に基づき光パワーを検知する。したがって、本開示に係る構成によれば、作業者に危険なレーザ被ばくを与えることなく、長距離空間のガスを検知することが可能となる。また、複数の投光部からレーザ光を出射することで、ガスの濃度に関する詳細な情報を取得することが可能である。以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0021】
(第1実施形態)
図2は、本開示の第1実施形態に係るガス検知システム100aの構成例を示す図である。ガス検知システム100aは、受光部1、複数の投光部4(4a,4b)、制御部7、変換部10、複数の駆動部11(11a,11b)、複数のFG(Function Generator)12(12a,12b)、複数のLIA(Lock In Amplifier、ロックインアンプ)13(13a,13b)、及び切替部14を備える。受光部1は、光学系2及び受光素子3を備える。投光部4(4a,4b)の各々は、光学系5(5a,5b)及びレーザ光源6(6a,6b)を備える。駆動部11、FG12、及びLIA13は、投光部4毎に一つずつ設けてもよい。
図2の例では、投光部4、駆動部11、FG12、及びLIA13の各々は、二つずつ設けられている。投光部4、駆動部11、FG12、及びLIA13は、三つ以上設けられてもよい。以下、一例として、メタンガスを被測定ガスGとして検知する場合を説明するが、ガス検知システム100aは、硫化水素等の他のガスを被測定ガスGとして検知してもよい。ガス検知システム100aは、光路上のガス濃度情報を得るための方式として、波長変調法(WMS:Wavelength Modulation Spectroscopy)を採用する。受光部1及び投光部4(4a,4b)は、例えば、被測定空間の背景物体9から数10m~100m程度離れた位置に設けられてもよい。
【0022】
制御部7はガス検知システム100aの動作を制御する。制御部7は、例えば、PC(Personal Computer)又はタブレット端末等の汎用の情報処理装置により実現されてもよい。また、制御部7は、専用の電子機器等により実現されてもよい。
【0023】
図3は、
図2の制御部7の構成例を示すブロック図である。
図3は、PC等の汎用の情報処理装置により実現された場合の制御部7の構成例を示す。
図3に示すように、制御部7は、プロセッサ71、記憶部72、通信部73、入力部74、及び出力部75を備える。
【0024】
プロセッサ71は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。プロセッサ71は、制御部7を構成する各構成部と通信可能に接続され、制御部7全体の動作を制御する。
【0025】
記憶部72は、HDD、SSD、ROM、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、及びRAMを含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部72は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部72は、制御部7の動作に用いられる又は制御部7の動作の結果得られた任意の情報を記憶する。例えば、記憶部72は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び通信部73によって受信された各種情報等を記憶してもよい。記憶部72は、制御部7に内蔵されているものに限定されず、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続されている外付けのデータベース又は外付け型の記憶モジュールであってもよい。
【0026】
通信部73は、任意の通信技術によってガス検知システム100aの切替部14又はLIA13(13a,13b)等の他の装置と通信接続可能な、任意の通信モジュールを含む。通信部73は、さらに、他の装置との通信を制御するための通信制御モジュール、及び他の装置との通信に必要となる識別情報等の通信用データを記憶する記憶モジュールを含んでもよい。
【0027】
入力部74は、ユーザーの入力操作を受け付けて、ユーザーの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力部74は、物理キー、静電容量キー、ポインティングディバイス、出力部75のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイク等であるが、これらに限定されない。
【0028】
出力部75は、ユーザーに対して情報を出力し、ユーザーに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部75は、情報を画像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。なお、上述の入力部74及び出力部75の少なくとも一方は、制御部7と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。
【0029】
制御部7の機能は、本実施形態に係るガス検知システム100を機能させるために用いられうるコンピュータプログラム(プログラム)を、プロセッサ71に含まれるプロセッサで実行することにより実現されうる。すなわち、制御部7の機能は、ソフトウェアにより実現されうる。コンピュータプログラムは、制御部7の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、各ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させる。すなわち、コンピュータプログラムは、コンピュータを本実施形態に係る制御部7として機能させるためのプログラムである。
【0030】
コンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD(Digital Versatile Disc)又はCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行うことができる。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、ネットワークを介して、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムは流通されてもよい。プログラムはプログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0031】
コンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。このような処理は、サーバからコンピュータへのプログラムの転送を行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって実行されてもよい。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0032】
制御部7の一部又は全ての機能が、プロセッサ71に含まれる専用回路により実現されてもよい。すなわち、制御部7の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。また、制御部7は単一の情報処理装置により実現されてもよいし、複数の情報処理装置の協働により実現されてもよい。
【0033】
図2の説明に戻る。切替部14は、制御部7の制御に応じて、FG12(12a,12b)に生成させる変調信号を切り替える。切替部14は、FG12(12a,12b)に、同一の変調信号を生成させてもよいし、異なる変調信号を生成させてもよい。例えば、切替部14は、異なる変調信号として、投光部4(4a,4b)毎に周波数が異なる信号をFG12(12a,12b)に生成させてもよい。切替部14は、変調信号の波形に関する切替信号をFG12(12a,12b)の各々へ出力する。このように、切替部14は、変調信号を全ての投光部4(4a,4b)で同じにするか、又は、異なるものにするかを切り替えることができる。
【0034】
FG12(12a,12b)は、切替部14から入力された切替信号に基づき変調信号を生成する。FG12(12a,12b)は、変調信号として任意の波形の信号を生成することができるが、予め定められた特定周波数の信号を変調信号として生成する構成を有してもよい。FG12(12a,12b)の各々は、生成した変調信号を、対応する駆動部11(11a,11b)及びLIA13(13a,13b)へ出力する。
【0035】
駆動部11(11a,11b)は、入力された変調信号により変調された駆動信号を投光部4(4a,4b)へ出力する。また、駆動部11(11a,11b)は、レーザ光源6(6a,6b)の発振波長を調整するための信号を投光部4(4a,4b)へ出力する。これにより、レーザ光源6(6a,6b)は、被測定ガスGの吸収波長を含むレーザ光を出射するように調整される。例えば、メタンガスの吸収波長には1.65372μmが含まれるため、被測定ガスGがメタンガスである場合、レーザ光源6(6a,6b)は、このような波長を含む波長帯のレーザ光を出力するように調整されてもよい。
【0036】
投光部4(4a,4b)のレーザ光源6(6a,6b)は、駆動信号に基づき、変調信号により変調されたレーザ光を被測定ガスGに向けて出射する。光学系5(5a,5b)はコリメートレンズ等であり、レーザ光源6(6a,6b)から出射されたレーザ光を光学的に調整する。光学系5(5a,5b)は、出射されるレーザ光の光軸L(L
1,L
2)を、受光部1の光学系2の画角α内に位置づける役割を果たす。
図2の例では、投光部4a,4bは、光軸L(L
1,L
2)間の距離がdとなる位置に設けられている。
【0037】
投光部4(4a,4b)から出射されたレーザ光は、被測定空間の背景物体9において反射及び散乱し、その一部が戻り光として受光部1へ入射する。背景物体9は、被測定空間に存在する任意の物体である。戻り光が被測定ガスGを通過する際、その戻り光の光パワーは、被測定ガスGの吸収波長において減少する。
【0038】
受光部1の光学系2は受光レンズ等であり、受光素子3へ入射するように戻り光を光学的に調整する。受光素子3はフォトダイオード等の光電変換素子である。受光部1は、受光素子3で受光した戻り光の受光信号を変換部10へ出力する。
【0039】
変換部10は受光信号を変換する回路であり、増幅回路などを含む。変換部10は、増幅等の変換を行った受光信号をLIA13(13a,13b)の各々へ出力する。
【0040】
LIA13(13a,13b)は、変換部10から入力された受光信号を、FG12(12a,12b)から入力された変調信号により検波する。FG12(12a,12b)から入力される変調信号が異なる場合、LIA13(13a,13b)の各々は、対応する投光部4(4a,4b)から出射されたレーザ光についての戻り光の信号を受光信号から取り出すことができる。LIA13(13a,13b)は、変調信号により検波した受光信号を制御部7へ出力する。制御部7は、LIA13(13a,13b)の各々から入力された受光信号に基づき、被測定ガスGの吸収波長における光パワーの減衰を特定し、被測定ガスGの有無及び濃度を検知する。このように、本実施形態に係るガス検知システム100aは、変調信号に同期した吸収波長における光パワーの変化を計測することで、光路上のガス濃度情報を得る波長変調法を採用している。
【0041】
複数の投光部4(4a,4b)から照射されるレーザ光は、それぞれの光軸L(L1,L2)中心の光パワーを最大とした、ガウス分布のプロファイル(強度分布)を持つ。投光部4(4a,4b)の出射位置から背景物体9までの空間において、隣り合うレーザ光のプロファイルが重なり合っても、各レーザ光の光軸L(L1,L2)中心の最大光パワーを超えないよう、投光部4(4a,4b)の配置及びレーザ光のプロファイルの広がりは設定される。
【0042】
複数の投光部4(4a,4b)から照射するレーザ光の変調周波数を同じにした場合、被測定空間におけるレーザ光のパワーの最大値を低く保ったまま、投光部が一つの場合と比較して、受光部1に入射する戻り光の光パワーを強めることができる。すなわち、本実施形態に係るガス検知システム100aによれば、ガス検知の高感度化を図ることができる。したがって、受光部1は投光部4(4a,4b)が一つの場合と同じ程度の戻り光量を受光すればよいのであれば、投光部4(4a,4b)及び受光部1と背景物体9との距離を延ばすことができる。例えば、メタンガスの吸収波長の1600nm帯の場合、10mW未満のレーザ被ばくとなるよう、光軸L(L1,L2)の間の距離dをもって投光部4(4a,4b)を設置することにより、作業者がいるプラントなどでも安全なガス検知を行うことができる。
【0043】
また、複数の投光部4(4a,4b)から照射するレーザ光の変調周波数を、それぞれ異なる周波数とした場合は、LIA13(13a,13b)により、変調周波数ごとに受光信号を分離することができる。したがって、ガス検知システム100aは、一つの受光部1が受光した戻り光の受光信号から、複数の投光部4(4a,4b)の各々が出射したレーザ光の戻り光の強度を投光部4(4a,4b)ごとに判別することができる。したがって、ガス検知システム100aは、一つの受光部1を用いて、レーザ光を照射した被測定空間ごとのガス情報を同時に得ることが可能である。
【0044】
複数の投光部4(4a,4b)から照射するレーザ光の変調周波数を同じにした場合、ガス検知システム100aは、例えば安全クラス1(JIS C6802)を超えるAEL(被ばく放出限界)を人体に被ばくさせることなく、長距離空間のガス検知を実現する。また、複数の投光部4(4a,4b)から照射するレーザ光の変調周波数を、互いに異なる周波数に切り替えると、ガス検知システム100aは、照射した被測定空間ごとの被測定ガスGの濃度などの情報を、同時に得ることができる。したがって、ガス検知システム100aは、被測定ガスGの分布を把握することができる。さらに、ガス検知システム100aは、時系列で被測定ガスGの濃度情報を取得することにより、ガス濃度分布の時間的変化を知ることができる。
【0045】
(第2実施形態)
第1実施形態では、LIA13(13a,13b)により、受光信号から、各投光部4(4a,4b)から出射されたレーザ光の戻り光の受光信号を取り出す処理を行う例を説明したが、LIA13(13a,13b)を設けなくてもよい。第2実施形態では、制御部7がLIA13(13a,13b)と同等の機能を実現する。以下、第1実施形態に係る構成と同じ機能及び構成を有する構成要素には、第1実施形態と同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0046】
図4は、本開示の第2実施形態に係るガス検知システム100bの構成例を示す図である。
図4に示すように、ガス検知システム100bはLIA13(13a,13b)を備えない。変換部10は、受光部1から受光信号を入力すると、増幅等の変換を行う。変換部10は、変換した受光信号を制御部7へ出力する。なお、変換部10は、受光部1の中に設置してもよい。
【0047】
制御部7は、受光部1が受光した受光信号から、各投光部4(4a,4b)から出射されたレーザ光の戻り光の受光信号を取り出す処理を行う。具体的には、例えば、制御部7は、LIA13(13a,13b)と同様に、変換部10から入力された受光信号を、FG12(12a,12b)から出力される変調信号により検波してもよい。制御部7は、変調信号に基づき検波した受光信号に基づき、被測定ガスGの吸収波長における光パワーの減衰を特定し、被測定ガスGの有無及び濃度を検知してもよい。あるいは、例えば、制御部7は、変換部10から入力された受光信号をフーリエ変換することで、変調信号の周波数に対応する信号の強度を取得してもよい。そして、制御部7は、変調信号の周波数に対応する信号の強度に基づき、各投光部4(4a,4b)から出射されたレーザ光の戻り光の信号強度を取得し、被測定ガスGの濃度を検知してもよい。
【0048】
なお、
図2及び
図4のガス検知システム100(100a,100b)では、投光部4(4a,4b)毎に個別のレーザ光源6(6a,6b)が配置されているが、そのような構成に限られない。例えば、一つのレーザ光源が設けられ、そのレーザ光源が出力するレーザ光を、光ファイバー等で他の投光部4へ導き、光増幅器等で変調して出力するようにしてもよい。また、複数の投光部4(4a,4b)から出射される複数のレーザ光の光軸L(L
1,L
2)は、必ずしも平行な位置関係になくてもよい。例えば、複数の投光部4(4a,4b)は、各投光部4(4a,4b)からのレーザ光が重なり合っても被測定空間における被ばく量が基準値を超えない限り、被測定空間における同一の点に向けてレーザ光を出射してもよい。また、出射されるレーザ光のプロファイルは、光路上で必ずしも一定でなくてもよい。
図2及び
図4の例では、受光部1の光学系2として、集光するための凸レンズが使用されているが、これに代えて、凹面鏡が使用されてもよい。この場合、凹面鏡で集光する位置に受光素子3は配置される。また、変換部10は、受光部1の中に設置してもよい。
【0049】
また、
図2及び
図4のガス検知システム100(100a,100b)では、投光部4(4a,4b)毎にFG12(12a,12b)が設けられているが、FG12(12a,12b)を設けなくてもよい。例えば、制御部7が駆動部11(11a,11b)へ入力する変調信号を生成し、各駆動部11(11a,11b)へ直接、変調信号を出力してもよい。
【0050】
以上のように、本開示に係るガス検知システム100は、第1の投光部4a、第2の投光部4b、受光部1、及び制御部7を備える。投光部4aは、第1の変調信号により変調された、被測定ガスGの吸収波長を含む第1のレーザ光を、被測定空間に向けて出射する。投光部4bは、第2の変調信号により変調された、被測定ガスGの吸収波長を含む第2のレーザ光を、被測定空間に向けて出射する。受光部1は、第1のレーザ光及び第2のレーザ光の、被測定空間からの戻り光を受け取る。制御部7は、受光部1が受け取った戻り光の受光信号に基づき、被測定空間における被測定ガスGの濃度を検知する。投光部4a,4bは、投光部4a,4bから被測定空間までの空間において、第1のレーザ光の第1のプロファイル及び第2のレーザ光の第2のプロファイルが重なり合う部分が存在する場合であっても、光パワーが予め定められた値を超えないように構成される。すなわち、投光部4a,4bは、第1、第2のレーザ光の第2のプロファイルが重なり合う部分、並びに、第1、第2のプロファイルが重なり合わない部分の全体にわたって、第1、第2のレーザ光の光パワーが予め定められた値を超えないように構成される。投光部4(4a,4b)の出射位置から背景物体9までの範囲の中で、隣り合う照射光のプロファイルが重なり合っても、各距離の光軸中心の最大光パワーを超えないよう、投光部4(4a,4b)の配置及びプロファイルの広がりが設定されてもよい。言い換えると、配置した投光部4(4a,4b)の全レーザを照射しても、レーザ安全の基準(例えば、JIS C6802において)に照らして、レーザ安全クラス1に分類されるAELを満たすようにしてもよい。このように、受光部1は、第1のレーザ光及び第2のレーザ光の戻り光に基づき、被測定空間における被測定ガスGの濃度を検知するため、一つの投光部94のみを備えたガス検知システム90よりもより詳細な被測定ガスGの濃度に関する情報を取得することができる。投光部4a,4bは、投光部4a,4bから被測定空間までの空間の全体にわたってレーザ光の光パワーが予め定められた値を超えないように構成されるため、人体に危険を生じさせることを防止することができる。したがって、ガス検知システム100は、人体に危険を生じさせずにガス検知を高感度に行うことが可能である。
【0051】
また、投光部4bは、投光部4aの第1のレーザ光を変調する第1の変調信号と同一の第2の変調信号により変調された第2のレーザ光を出射してもよい。このように、受光部1は、同一の変調信号により変調された第1のレーザ光及び第2のレーザ光の戻り光に基づき、被測定空間における被測定ガスGの濃度を検知する。そのため、一つの投光部94のみを備えたガス検知システム90と比べて、被測定空間から離れた位置からレーザ光を出射してガス検知を行うことができる。また、投光部4a,4bは、投光部4a,4bから被測定空間までの空間の全体にわたってレーザ光の光パワーが予め定められた値を超えないように構成されるため、人体に危険を生じさせることを防止することができる。したがって、ガス検知システム100は、人体に危険を生じさせずに被測定空間から離れた位置からガス検知を行うことが可能である。
【0052】
また、投光部4bは、投光部4aの第1のレーザ光を変調する第1の変調信号と異なる第2の変調信号により変調された第2のレーザ光を出射してもよい。この場合、制御部7は、戻り光の受光信号を、第1のレーザ光に起因する第1の戻り光信号と、第2のレーザ光に起因する第2の戻り光信号とに分離してもよい。制御部7は、第1の戻り光信号に基づき、第1のレーザ光が到達した第1の空間における被測定ガスGの濃度を検知し、第2の戻り光信号に基づき、第2のレーザ光が到達した第2の空間における被測定ガスGの濃度を検知してもよい。このように、ガス検知システム100は、第1のレーザ光に基づく第1の戻り光信号と、第2のレーザ光に基づく第2の戻り光信号とを区別して被測定ガスGの濃度を検知するため、複数地点における被測定ガスGの濃度を同時に検知することができる。
【0053】
また、ガス検知システム100は、第1の変調信号を生成する第1の波形発生器としてのFG12aと、第2の変調信号を生成する第2の波形発生器としてのFG12bと、を備えてもよい。その場合、第1の投光部としての投光部4aは、FG12aにより生成された第1の変調信号により変調された第1のレーザ光を、被測定空間に向けて出射してもよい。第2の投光部としての投光部4bは、FG12bにより生成された第2の変調信号により変調された第2のレーザ光を、被測定空間に向けて出射してもよい。このように、FG12a,12bを備えることで、FG12a,12bにより生成した第1、第2の変調信号により変調された第1、第2のレーザ光により、ガス濃度を検知することができる。
【0054】
また、第1実施形態のように、ガス検知システム100aは、受光部1が受け取った戻り光の受光信号を第1、第2の変調信号に基づき検波する第1、第2のLIA13(13a,13b)を更に備えてもよい。制御部7は、第1のLIA13aにより第1の変調信号に基づき検波した受光信号と、第2のLIA13bにより第2の変調信号に基づき検波した受光信号とに基づき、被測定空間における被測定ガスGの濃度を検知してもよい。このように、ガス検知システム100aは、第1のLIA13a及び第2のLIA13bを備えることで、第1、第2のレーザ光についての戻り光の信号を判別して、ガス濃度を検知することができる。
【0055】
また、制御部7は、受光部1が受け取った戻り光の受光信号に対してフーリエ変換を行って、当該受光信号に含まれる第1のレーザ光に起因する第1の戻り光信号と、第2のレーザ光に起因する第2の戻り光信号とを区別して取得してもよい。制御部7は、第1の戻り光信号及び第2の戻り光信号に基づき、被測定空間における被測定ガスGの濃度を検知してもよい。このように、ガス検知システム100(100a,100b)は、フーリエ変換を適用することで、第1、第2のレーザ光についての戻り光の信号を判別して、ガス濃度を検知することができる。
【0056】
また、受光部1は、光が入力されたことに応じて電気信号を出力する受光素子3と、予め定められた画角αから入射した光を受光素子3へ位置づける光学系2とを備えてもよい。第1の投光部4aは、被測定空間における光学系2から見て画角αの範囲に存在する位置へ向けて第1のレーザ光を出射し、第2の投光部4bは、被測定空間における光学系2から見て画角αの範囲に存在する位置へ向けて第2のレーザ光を出射してもよい。このように、受光部1は、第1のレーザ光に起因する戻り光と第2のレーザ光に起因する戻り光とを受け取るため、両方の戻り光を用いて被測定空間における被測定ガスGの濃度を検知することができる。
【0057】
また、受光部1は、光学系2の画角αを変位するための機構を更に備えてもよい。そのような機構により光学系2の画角αが変位された場合、第1の投光部4aは、変位された画角αの範囲に存在する位置へ向けて第1のレーザ光を出射し、第2の投光部4bは、変位された画角αの範囲に存在する位置へ向けて第2のレーザ光を出射してもよい。このように、受光部1の光学系2、並びに第1の投光部4a及び第2の投光部4bがレーザ光を出射する位置を変位させることで、広い空間における被測定ガスGの濃度を検知することができる。このような機構は、例えば、受光部1及び投光部4(4a,4b)を支持し、水平軸及び鉛直軸を中心にモータにより回動することで受光部1及び投光部4(4a,4b)を任意の方向に向けることが可能な部材として提供されてもよい。このような機構は制御部7の制御に基づき、光学系2の画角αを変位させてもよい。
【0058】
また、ガス検知システム100は、投光部4(4a,4b)から出射する複数のレーザ光の発振波長を、同一の波長としてもよい。これにより、複数のレーザ光の変調周波数が同一の場合、一つの投光部94のみを備えたガス検知システム90と比べて、被測定空間から離れた位置からレーザ光を出射してガス検知を行うことができる。
【0059】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は一つのブロックは分割されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 受光部
2 光学系
3 受光素子
4 投光部
5 光学系
6 レーザ光源
7 制御部
9 背景物体
10 変換部
11 駆動部
12 FG
13 LIA
14 切替部
71 プロセッサ
72 記憶部
73 通信部
74 入力部
75 出力部
90 ガス検知システム
91 受光部
92 光学系
93 受光素子
94 投光部
95 光学系
96 レーザ光源
99 背景物体
100 ガス検知システム
G 被測定ガス