(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030690
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】管路裏打ち用排気装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/34 20060101AFI20230301BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B29C63/34
F16L1/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135955
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA36
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD04
4F211SP15
4F211SP45
(57)【要約】
【課題】排気される蒸気の影響を抑制した管路裏打ち用排気装置を提供する。
【解決手段】本発明の管路裏打ち用排気装置38は、雨水排水管路Dを裏打ちするライニング材10に含浸された熱硬化性樹脂を加熱した蒸気が流れる蒸気排出流路382aが内部に形成され、蒸気排出流路382aの下流端に蒸気を外部に排気する排気口382bを有する排気ダクト382と、蒸気排出流路382aに外気を送り込む第2コンプレッサー383とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を裏打ちするライニング材に含浸された熱硬化性樹脂を加熱した蒸気が流れる蒸気排出流路が内部に形成され、該蒸気排出流路の下流端に蒸気を外部に排気する排気口を有する排気ダクトと、
前記蒸気排出流路に外気を送り込む外気供給装置とを備えたことを特徴とする管路裏打ち用排気装置。
【請求項2】
前記排気ダクトは、前記蒸気排出流路を画定するダクト本体と、前記外気供給装置から供給された外気を前記蒸気排出流路に流入させる枝管とを有し、
前記枝管は、前記蒸気排出流路における下流側に向かうに従って該蒸気排出流路に接近するように該蒸気排出流路に対して傾斜して設置されたものであることを特徴とする請求項1記載の管路裏打ち用排気装置。
【請求項3】
前記枝管は、前記蒸気排出流路における下流側部分で前記ダクト本体に接続したものであることを特徴とする請求項2記載の管路裏打ち用排気装置。
【請求項4】
前記ダクト本体は内周面が円筒形状をしたものであり、
前記枝管は、前記外気供給装置によって供給された外気を前記内周面に沿って旋回するように前記蒸気排出流路に流入させるものであることを特徴とする請求項2または3に記載の管路裏打ち用排気装置。
【請求項5】
前記排気口から排出される蒸気の騒音を抑制する消音装置を備え、
前記排気ダクトは、前記消音装置に連結されたものであることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載の管路裏打ち用排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ライニング材を加熱した蒸気を排気する管路裏打ち用排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
埋設されている雨水排水管路や下水道管路等の管路には、老朽化や地盤沈下あるいは地上圧力の変動等によって損傷しているものがある。損傷した管路を補修する場合、非開削で行うことが補修費用の低減や交通障害を最小限に抑える点からも好ましい。
【0003】
そこで、管路の非開削補修工法として、熱硬化性樹脂が含浸された筒状のライニング材を管路の内周壁に押し付け、その内周壁をライニング材によって裏打ちする技術が種々提案されている(例えば、特許文献1等参照)。また、新規に管路を埋設した場合であっても、埋設したての新設管路の内周壁をライニング材によって裏打ちすることがある。
【0004】
特許文献1において提案されている管路の裏打ち技術では、加熱手段によって加熱された高温の空気をライニング材の内側に送り込む。この高温の空気により、ライニング材が管路の内面に圧接されつつ加熱され、ライニング材の熱硬化性樹脂の硬化が進行する。そして、高温の空気の供給を所定時間継続することで、ライニング材の熱硬化性樹脂の硬化が完した後、硬化後の熱硬化性樹脂の強度を向上させることができる。なお、高温の空気の供給の後、必要に応じてライニング材の切断や切断した管口の仕上げを行っている。
【0005】
ところで、ライニング材への熱供給を効率的に行うため、高温の蒸気をライニング材の内側に送り込むことも行われている。高温の蒸気を用いる場合も、ライニング材に含浸された熱硬化性樹脂の硬化と強度向上が完了するまで、ライニング材の内側にその蒸気が順次送り込まれる。そして、ライニング材の内側を通過することで、ある程度の熱をライニング材に奪われた蒸気は、地上に設けられた排気ダクトから排気される。道路の近傍で蒸気を排出した場合、その排気された蒸気は白濁しているため、周囲を通行する車両の運転手などの視界の妨げになってしまう虞がある。この対策として、排気ダクトを高くまで延在させることが提案されている(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-52228号公報
【特許文献2】特開2018-89877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単に排気ダクトを高くしただけでは、排気されて周囲を浮遊している蒸気が自重や風などによって地上近傍まで降りてくる場合があり、その場合周囲を通行する車両の運転手などの視界の妨げになる虞がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、排気される蒸気の影響を抑制した管路裏打ち用排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の管路裏打ち用排気装置は、
管路を裏打ちするライニング材に含浸された熱硬化性樹脂を加熱した蒸気が流れる蒸気排出流路が内部に形成され、該蒸気排出流路の下流端に蒸気を外部に排気する排気口を有する排気ダクトと、
前記蒸気排出流路に外気を送り込む外気供給装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の管路裏打ち用排気装置によれば、前記蒸気排出流路を流れる蒸気に外気が加わるので、前記排気口から排気される蒸気の濃度が薄くなる。これにより、排気された蒸気が視界の妨げになることを抑制できる。
【0011】
また、本発明の管路裏打ち用排気装置において、
前記排気ダクトは、前記蒸気排出流路を画定するダクト本体と、前記外気供給装置から供給された外気を前記蒸気排出流路に流入させる枝管とを有し、
前記枝管は、前記蒸気排出流路における下流側に向かうに従って該蒸気排出流路に接近するように該蒸気排出流路に対して傾斜して設置されたものであってもよい。
【0012】
この管路裏打ち用排気装置によれば、前記外気供給装置から供給された外気が前記蒸気排出流路において前記排気口に向かう方向に流入するので、流入した外気が該蒸気排出流路を流れる蒸気とともに下流側へ流れて排気が促進される。その結果、ライニング材の内側にあたらしい高温の蒸気を送り込みやすくなる。
【0013】
ここで、前記枝管は、前記ダクト本体に接続したものであってもよい。また、前記枝管は、前記蒸気排出流路における下流側に向かって外気を送り込むものであってもよい。またさらに、前記枝管は、前記ダクト本体に対して15度以上75度以下の角度で傾斜したものであってもよい。加えて、前記ダクト本体は上方に向かって延在したものであってもよい。
【0014】
さらに、本発明の管路裏打ち用排気装置において、
前記枝管は、前記蒸気排出流路における下流側部分で前記ダクト本体に接続したものであってもよい。
【0015】
この管路裏打ち用排気装置によれば、前記外気供給装置から送り込まれた外気は比較的近傍にある前記排気口に向かいやすく上流側には逆流しにくいので、その外気が前記蒸気排出流路における蒸気の下流側への流れの抵抗になってしまうことが抑制される。これによっても、前記ライニング材の内側にあたらしい高温の蒸気を送り込みやすくなる。
【0016】
またさらに、本発明の管路裏打ち用排気装置において、
前記ダクト本体は内周面が円筒形状をしたものであり、
前記枝管は、前記外気供給装置によって供給された外気を前記内周面に沿って旋回するように前記蒸気排出流路に流入させるものであってもよい。
【0017】
この管路裏打ち用排気装置によれば、前記外気供給装置から供給された外気によって前記蒸気排出流路において旋回流が作り出され、該蒸気排出流路を流れる蒸気がその外気と混ざり合いながら旋回して前記排気口に向かう。そして、その蒸気は旋回しながら該排気口から排気されるので、排気された蒸気が拡散しやすい。これらにより、排気された蒸気の濃度がより薄くなるので視界の妨げになることをさらに抑制できる。
【0018】
ここで、前記枝管は、前記外気供給装置によって供給された外気を、前記排気ダクトの長手方向から見て前記内周面における接線方向から前記蒸気排出流路に送り込むものであってもよい。
【0019】
また、本発明の管路裏打ち用排気装置において、
前記排気口から排出される蒸気の騒音を抑制する消音装置を備え、
前記排気ダクトは、前記消音装置に連結されたものであってもよい。
【0020】
前記消音装置によって、排気される蒸気の騒音を抑制することができる。ここで、前記排気ダクトは、前記消音装置に着脱自在に連結されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、排気される蒸気の影響を抑制した管路裏打ち用排気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】管路の裏打ちに用いられるライニング材の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】管路裏打ちシステムを使用し、
図1に示したライニング材で裏打ちしている様子を模式的に示す断面図である。
【
図3】(a)は、
図2に示した排気ダクトを示す正面図であり、(b)は、同図(a)に示した排気ダクトのA-A断面図である。
【
図4】
図2に示した管路裏打ちシステムにより施工現場において雨水排水管路を裏打ちする工程を示すフローチャートである。
【
図5】ライニング材の内部空間に供給する加熱用蒸気の温度等の変化の一例をおおまかに表すグラフである。
【
図6】(a)は、
図3に示した排気ダクトの変形例を示す側面図であり、(b)は、同図(a)に示した排気ダクトの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、高速道路の路面の下に埋設され路肩側と中央分離帯側との間で高速道路の雨水を流す雨水排水管路を裏打ちする管路裏打ちシステムに本発明の管路裏打ち用排気装置を適用する例を用いて説明する。
【0024】
図1は、管路の裏打ちに用いられるライニング材の一実施形態を示す斜視図である。
【0025】
図1に示すライニング材10は、地中に埋設された雨水排水管路D(
図2参照)の内周壁を裏打ちする際に用いられるスリーブ状のものである。
図1には、スリーブ状のライニング材10が扁平につぶされた様子が示されている。このライニング材10は、ベースホース100とキャリブレーションホース110という2つのスリーブ状のライニング材が一体になったものである。以下、ライニング材10の径方向外側を単に外側と称し、径方向内側を単に内側と称する。ベースホース100はキャリブレーションホース110の外側に位置するものである。キャリブレーションホース110は、ベースホース100よりも厚みが薄いものである。
【0026】
ベースホース100は、基材層101と外側フィルム層102とを有する。
図1に示す基材層101は、ポリエステルの不織布である。なお、この基材層101は、ポリエステルに限らず、ナイロン、アクリル、ビニロンなどの有機繊維質材料からなる不織布であってもよいし、その有機繊維質材料からなる織布であってもよいし、カーボン繊維やガラス繊維などの無機繊維質材料からなる不織布あるいは織布であってもよく、さらには、有機繊維質材料と無機繊維質材料を組み合わせたのものであってもよい。
【0027】
図1に示す基材層101には、コンパウンドが含浸されている。基材層101に含浸するコンパウンドはビニルエステル(エポキシアクリレート)樹脂を主成分とするものである。なお、ビニルエステル樹脂に代えて、不飽和ポリエステル樹脂や、ウレタンアクリレート樹脂等を用いてもよい。ビニルエステル樹脂は、ラジカル重合性モノマーによって架橋する熱硬化性樹脂の一種である。コンパウンドには、架橋剤、粘度調整剤、充填剤(フィラー)、硬化剤(過酸化物等)、各種の添加剤等が含有されている。
【0028】
外側フィルム層102は、基材層101を外側から覆うものであり、基材層101に含浸されたコンパウンドが外側へ滲出することを抑える機能を有する。すなわち、外側フィルム層102は、不透水性のものである。
図1に示す外側フィルム層102は、ナイロン(NY)をポリエチレン(PE)で挟み込んだ積層構造(PE/NY/PE)のものである。なお、ポリエチレンに代えて、ポリプロピレン等の他のポリオレフィンを用いてもよく、さらには、積層構造ではなく単層構造のものであってもよい。
【0029】
キャリブレーションホース110は、基材層111と伸長層112とを有する。
図1に示すキャリブレーションホース110の基材層111も、ベースホース100の基材層101と同じく、ポリエステルの不織布である。なお、この基材層111も、ポリエステルに限らず、ナイロン、アクリル、ビニロン等の有機繊維質材料からなる不織布であってもよいし、その有機繊維質材料からなる織布であってもよいし、カーボン繊維やガラス繊維などの無機繊維質材料からなる不織布あるいは織布であってもよく、さらには、有機繊維質材料と無機繊維質材料を組み合わせたのものであってもよい。
【0030】
図1に示すキャリブレーションホース110の基材層111にもコンパウンドが含浸されている。キャリブレーションホース110に用いるコンパウンドも、熱硬化性樹脂を主成分とするものであり、ここでの熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、および不飽和ポリエステルアクリレートから選ばれた熱硬化性樹脂を用いることができる。このコンパウンドにも、架橋剤、粘度調整剤、充填剤(フィラー)、硬化剤(過酸化物等)、各種の添加剤等が含有されている。
【0031】
伸長層112は、このライニング材10の最内周面を形成するポリウレタンからなる伸長性に優れたものである。すなわち、ベースホース100の外側フィルム層102よりも、伸長性に勝るものである。
【0032】
次に、
図1に示すライニング材を製造する方法について説明する。ここで説明する方法は工場内で実施される。
【0033】
まず、裏打ちする管路に適合した適宜の材料を用意する。ここで用意する材料には、コンパウンドを未含浸のベースホース100と、同じくコンパウンドを未含浸のキャリブレーションホース110が含まれる。これらのホース(100,110)は、裏打ちする管路の長さに応じた長さにカットされたスリーブ状のものであり、別々に用意される。ここで用意するベースホース100は、外側フィルム層102が外側に位置し、その外側フィルム層102の内側に基材層101が位置する。一方、キャリブレーションホース110は、伸長層112が外側に位置し、その伸長層112の内側に基材層111が位置する。すなわち、
図1に示すキャリブレーションホース110の状態とは表裏が逆の状態にある。
【0034】
また、ベースホース100に含浸するコンパウンドのもとになる、ベースホース用主剤、充填剤(フィラー)、硬化剤(過酸化物等)、および各種の添加剤も用意される。ここで用意されるベースホース用主剤は、熱硬化性樹脂であるビニルエステルを主成分(50重量%以上)とするものである。また、コンパウンドには、架橋剤および粘度調整剤も用いられる。さらに、ベースホース用主剤には、揺変性付与剤としてのシリカ、硬化促進剤としてのナフテン酸コバルト、および重合禁止剤等も用いられる。
【0035】
また、キャリブレーションホース110に含浸するコンパウンドのもとになる、キャリブレーションホース用主剤、充填剤(フィラー)、硬化剤、および各種の添加剤も用意される。キャリブレーションホース用主剤も、熱硬化性樹脂を主成分とするものである。キャリブレーションホース用のコンパウンドにも、架橋剤および粘度調整剤としてメタクリル酸エステルも用いられる。
【0036】
次いで、樹脂混合を行う。ここでは、ベースホース用主剤、充填剤、硬化剤、および各種の添加剤が混合され、ベースホース用コンパウンドが調製される。また、キャリブレーションホース用主剤、充填剤、硬化剤、および各種の添加剤も混合され、キャリブレーションホース用のコンパウンドも調製される。
【0037】
続いて、ベースホース100の基材層101に、調製したベースホース用コンパウンドを含浸する。また、キャリブレーションホース110の基材層111に、調製したキャリブレーションホース用コンパウンドを含浸する。ベースホース100の基材層101にはコンパウンドを飽和に含浸し、キャリブレーションホース110の基材層111にはコンパウンドを過飽和に含浸する。すなわち、コンパウンドの含浸率を、ベースホース100の基材層101よりもキャリブレーションホース110の基材層111の方を高くしておく。こうして、コンパウンドが含浸されたベースホース100と、コンパウンドが含浸された基材層111が内側に位置するキャリブレーションホース110とが別々に準備される。なお、ベースホース100の基材層101にコンパウンドを過飽和に含浸し、キャリブレーションホース110の基材層111にコンパウンドを飽和に含浸してもよい。
【0038】
次に、コンパウンドが含浸されたベースホース100の内側にキャリブレーションホース110を反転挿入する。反転挿入では、基材層111が内側に位置するキャリブレーションホース110をその基材層111が外側にくるようにめくり返しながら、キャリブレーションホース110をベースホース100の内側に挿入する。キャリブレーションホース110は、ベースホース100の一端側からベースホース100の内側に入れ込まれ、空気又は水の力によって反転挿入される。キャリブレーションホース110は、ベースホース100よりも厚みが薄いものであるため、反転挿入は容易に行われる。キャリブレーションホース110を反転挿入することで、ベースホース100の基材層101とキャリブレーションホース110の基材層111が接触し、
図1に示す、ベースホース100とキャリブレーションホース110という2つのスリーブ状の部材が一体になったライニング材10が完成する。
図1に示すように、ライニング材10の最外側面は外側フィルム層102によって構成されるとともにその最内側面は伸長層112によって構成され、外側フィルム層102と伸長層112の間に、熱硬化性樹脂を含浸した基材層101,111が配置される。その後、伸長層112の内側に、ライニング材10を加熱するための蒸気を供給するための蒸気供給チューブ36(
図2参照)を挿入しておく。
【0039】
完成したライニング材10は偏平にし、つづら折りにして折り畳んだ状態で低温保管する。なお、完成したライニング材10を巻き取った状態で低温保管してもよい。低温保管されているライニング材10は、折り畳んだ状態あるいは巻き取った状態のまま保冷車によって施工現場に運搬される。
【0040】
次に、管路裏打ちシステム3の各機器について説明する。
【0041】
図2は、管路裏打ちシステムを使用し、
図1に示したライニング材で裏打ちしている様子を模式的に示す断面図である。この
図2には、片側2車線の高速道路HWの路肩側に管路裏打ちシステム3が設置された様子が示されている。また、
図2には、中央分離帯側の車線を走行している車両Vと、路肩側の車線に車両Vが進入することを防止するための三角コーンTCも示されている。なお、
図2には雨水排水管路Dが水平方向に延在しているように示されているが、雨水排水管路Dは、雨水を中央分離帯側に流下させるために実際には路肩側よりも中央分離帯側が下方に位置するようにほんの少し傾斜している。また逆に、路肩側に雨水を流下させる場合もある。その場合、雨水排水管路Dは、中央分離帯側よりも路肩側が下方に位置するようにほんの少し傾斜している。
【0042】
図2に示すように、高速道路HWには、側溝Gと、路肩側集水桝B1と、中央側集水桝B2と、雨水排水管路Dと、排水管Pとが形成されている。側溝Gは、高速道路HWの路肩に沿って延在している。側溝Gには、高速道路HWに降った雨水が流れ込んでくる。路肩側集水桝B1は、高速道路HWの延線方向に所定間隔で点在している。この路肩側集水桝B1は、側溝Gに流れ込んだ雨水が集められる集水桝である。中央側集水桝B2も、高速道路HWの延線方向に所定間隔で点在している。雨水排水管路Dは、高速道路HWの路面の下で路肩側集水桝B1と中央側集水桝B2とを接続したコンクリート製のものであり、地中に埋設されている。この雨水排水管路Dは、管路の一例に相当する。雨水排水管路Dによって、路肩側集水桝B1に集められた雨水は、中央側集水桝B2に流下する。排水管Pは、中央側集水桝B2に流下した雨水を高速道路HWの外部に排水する管である。
図2には、雨水排水管路Dに複数のひび割れC1~C4が生じた様子が示されている。また、
図2には、雨水排水管路Dが、その全長に亘ってライニング材10によって裏打ちされる様子が示されている。なお、
図2では、路肩側集水桝B1、中央側集水桝B2および雨水排水管路Dの大きさが誇張して示されている。
【0043】
管路裏打ちシステム3は、ボイラー31と、第1コンプレッサー32と、ミキシング装置33と、路肩側治具34と、供給用ホースSHと、排気用ホースCHと、中央側治具35と、蒸気供給チューブ36と、ドレン排出管37と、排気装置38とを備えている。この管路裏打ちシステム3は、雨水排水管路Dを裏打ちするために、施工現場に設置される。
【0044】
ボイラー31、第1コンプレッサー32およびミキシング装置33は、地上に停車した不図示のボイラー車に搭載されている。ボイラー31からは、例えば100℃を超えて加熱された過熱蒸気が送り出される。なお、ボイラー31から送り出される蒸気は、飽和蒸気であってもよい。第1コンプレッサー32とミキシング装置33も地上であってボイラー31の近傍に設置されている。第1コンプレッサー32は、外気(空気)を圧縮して送り出すものである。ボイラー31から送り出された過熱蒸気と第1コンプレッサー32から送り出された外気は、ともにミキシング装置33に供給されて混合される。以下、ミキシング装置33で混合されて送り出される過熱蒸気と外気の混ざり合った気体を加熱用蒸気と称する。ボイラー31とミキシング装置33をつなぐ配管には蒸気バルブ311が設けられており、第1コンプレッサー32とミキシング装置33をつなぐ配管には第1空気バルブ321が設けられている。蒸気バルブ311と第1空気バルブ321を操作して絞り量を調整することで、ミキシング装置33から送り出される加熱用蒸気の温度を調整したり、その加熱用蒸気の流量を調整することができる。
【0045】
路肩側治具34は、路肩側集水桝B1の下端近傍に配置されている。路肩側治具34は、路肩側栓部材341と、路肩側締付部材342と、チューブ締付部材343とを備えている。路肩側栓部材341は、蒸気供給管3411と蒸気排出管3412を有し、蒸気供給管3411と蒸気排出管3412の管内を除いて路肩側の端面が閉塞した円筒形状をしたものである。蒸気供給管3411と蒸気排出管3412は、その閉塞した路肩側の端面を貫通し、その端面に固定されている。
図2に示す加熱用蒸気の供給状態では、ライニング材10の路肩側端部は、路肩側締付部材342によって路肩側栓部材341の円筒部外周面に締め付けられることで路肩側栓部材341の円筒部に固定されている。また、加熱用蒸気の供給状態では、蒸気供給チューブ36の路肩側端部は、チューブ締付部材343によって蒸気供給管3411の外周面に締め付けられることで蒸気供給管3411に固定されている。
【0046】
供給用ホースSHは、一端がミキシング装置33に接続され、他端が路肩側栓部材341の蒸気供給管3411に接続されたホースである。また、排気用ホースCHは、一端が路肩側栓部材341の蒸気排出管3412に接続され、他端が排気装置38の後述する消音装置381に接続されたホースである。排気用ホースCHの途中には、排気用ホースCH内を流れる流体の流量を調整するための排気バルブCH1が設けられている。ライニング材10を加熱することである程度温度が低下した加熱用蒸気は蒸気排出管3412から排出されて排気用ホースCH内に流れ込む。以下、加熱の役割りが完了して蒸気排出管3412から排出された加熱用蒸気を単に蒸気と称する。
【0047】
中央側治具35は、中央側集水桝B2の下端近傍に配置されている。この中央側治具35は、中央側締結ドラム351と中央側締付部材352とを備えている。中央側締結ドラム351は、両端が開口した円筒形状のドラムである。
図2に示す加熱用蒸気の供給状態では、ライニング材10の中央側端部と蒸気供給チューブ36の中央側端部はともに、中央側締付部材352によって中央側締結ドラム351の外周面に締め付けられている。なお、中央側締結ドラム351を用いないで、ライニング材10の中央側端部と蒸気供給チューブ36の路肩側端部をまとめて縛り付けるだけでもよい。ただし、中央側締結ドラム351を用いることで、ライニング材10の中央側端部と蒸気供給チューブ36の中央側端部を強固に締め付けることが可能になる。後述するように、ライニング材10の内側と蒸気供給チューブ36の内側には加熱用蒸気が供給される。ライニング材10の中央側端部と蒸気供給チューブ36の中央側端部を強固に締め付けておくことで、加熱用蒸気がそれらの中央側端部から漏れ出てしまうことを防止できる。なお、ライニング材10として、中央側端部が事前に閉塞されたものを用いてもよい。同様に、蒸気供給チューブ36として、中央側端部が事前に閉塞されたものを用いてもよい。
【0048】
上述したように、蒸気供給チューブ36は、
図2に示す加熱用蒸気の供給状態では、路肩側端部が蒸気供給管3411に固定され、中央側端部が中央側締結ドラム351に固定されている。これにより、蒸気供給チューブ36は、ライニング材10の内側において路肩側集水桝B1から中央側集水桝B2まで延在している。換言すれば、蒸気供給チューブ36は、雨水排水管路Dの全長にわたって延在している。以下、ライニング材10の内側であって、蒸気供給チューブ36の外側の空間を内部空間ISと称する。蒸気供給チューブ36には、路肩側から中央分離帯側に向かって1mおきに直径1cm程度の丸孔362が設けられ、さらに最も中央分離帯側の中央側集水桝B2近傍部分にはスリット孔361が設けられている。スリット孔361は、例えば、幅が1~2cmで長さが10cm~20cm程度の大きさのものである。
図2では、スリット孔361と丸孔362は、かなり大きめに記載されている。
図2に示すように、スリット孔361と丸孔362は、雨水排水管路Dの延在方向に1列に並んでおり、蒸気供給チューブ36の周方向180度反対側にも丸孔362とスリット孔361が雨水排水管路Dの延在方向に1列に並んでいる。スリット孔361と丸孔362からは、供給用ホースSHと蒸気供給管3411を介してミキシング装置33から蒸気供給チューブ36内に送り出された加熱用蒸気が吹き出る。
【0049】
ドレン排出管37は、ライニング材10の中央分離帯側端部近傍に差し込まれている。
図2では、図示の都合上、ドレン排出管37がライニング材10の上側部分に差し込まれている様に描かれているが、実際にはドレン排出管37は、ライニング材10の下端部分に差し込まれている。加熱用蒸気は、ある程度の熱をライニング材10に奪われることで、ライニング材10の内部空間ISにおいて一部がドレンに変化する。ドレン排出管37にはバルブ371が設けられた配管が接続している。そのバルブ371を開けることで、内部空間ISで生じたドレンは、ライニング材10の外部に排出される。
【0050】
排気装置38は、消音装置381と、排気ダクト382と、第2コンプレッサー383とを備えている。この排気装置38は、管路裏打ち用排気装置の一例に相当する。消音装置381の内部には、排気用ホースCHの断面積よりも広い断面積の空間が形成されている。また、消音装置381の内部には消音材が配置されている。加熱用蒸気には、ボイラー31の炊き出し音等の音波がのっており、また加熱用蒸気が各部を通過する際に音が発生している場合もある。消音装置381は、これらの音を消音するものである。
【0051】
排気ダクト382は、消音装置381に着脱自在に連結されている。排気ダクト382の内部には、蒸気が流れる蒸気排出流路382a(
図3参照)が形成されている。排気ダクト382は、蒸気排出流路382aを通過した蒸気を外部に排気する排気口382bを有している。この排気ダクト382の構成については、後に詳述する。
【0052】
第2コンプレッサー383は、外気(空気)を圧縮して送り出すものである。この第2コンプレッサー383は、外気供給装置の一例に相当する。排気ダクト382と第2コンプレッサー383は給気ホースAHによって接続されている。その給気ホースAHには、第2空気バルブAH1が設けられている。この第2空気バルブAH1を操作して絞り量を調整することで、蒸気排出流路382aに送り込まれる外気の流量を調整することができる。
【0053】
図3(a)は、
図2に示した排気ダクトを示す正面図であり、
図3(b)は、同図(a)に示した排気ダクトのA-A断面図である。
【0054】
図3(a)および
図3(b)に示すように、排気ダクト382は、ダクト本体3821と枝管3822とを有している。ダクト本体3821は、上下方向に延在し、内周面382cが円筒形状をしている。なお、ダクト本体3821は、金属製の薄板で構成されており、外周面も円筒形状をしている。ダクト本体3821の上端には排気口382bが形成されている。また、ダクト本体3821の下端には、消音装置381(
図2参照)に排気ダクト382を取り付けるための切欠き382eが形成されている。図示されていないが、ダクト本体3821の周方向180度反対側にも同形状の切欠き382eが形成されている。消音装置381には、ダクト本体3821の内周とほぼ同一径の外周を有し、上方に向けて突出した不図示の突出部が設けられている。その突出部には周方向に突出した一対のボスが形成されている。その一対のボスをダクト本体3821の一対の切欠き382eに嵌め込み、排気ダクト382をその延在方向を回転中心方向として所定角度回転させることで、排気ダクト382は消音装置381に着脱自在に連結される。
図3(b)に示すように、ダクト本体3821の内部には、下流端が排気口382bになる蒸気排出流路382aが形成されている。消音装置381によって消音された蒸気は、消音装置381に設けられた上述の突出部を通って蒸気排出流路382aに流入する。
【0055】
枝管3822は、ダクト本体3821の延在方向の途中であって、蒸気排出流路382aにおける下流側部分でダクト本体3821に接続している。換言すれば、枝管3822は、ダクト本体3821によって画定された蒸気排出流路382aにおける上流端よりも下流端にある排気口382bに近い位置でダクト本体3821に接続している。枝管3822は、ダクト本体3821に合流する合流管ともいえる。枝管3822は、蒸気排出流路382aにおける下流側に向かうに従って蒸気排出流路382aに接近するように蒸気排出流路382aに対して45度傾斜して設置されている。この傾斜角度は、15度以上75度以下であることが好ましい。
図3(b)に示すように、ダクト本体3821と枝管3822の結合部には、結合口382dが形成されている。
図2に示したように、枝管3822の突出端には、第2コンプレッサー383から伸びた給気ホースAHが連結される。これにより、第2コンプレッサー383から供給された外気は、給気ホースAH内と枝管3822内を通って結合口382dから蒸気排出流路382aに送り込まれる。上述したように、蒸気排出流路382aに対する枝管3822の傾斜角度は、15度以上75度以下であることが好ましい。この傾斜角度が15度未満では、蒸気排出流路382aを流れている蒸気と第2コンプレッサー383から供給され蒸気排出流路382aに送り込まれる外気とが蒸気排出流路382aにおいて混ざり合うまでに時間がかかる。このため、一部が混ざり合わないまま排気口382bから排気されてしまう虞がある。また、枝管3822の傾斜角度が75度を超えていると、蒸気排出流路382aを流れている蒸気の下流側への流れを促進させる効果が弱まるうえに、蒸気排出流路382aに送り込まれた外気の一部が逆流して蒸気排出流路382aを流れている蒸気の流れを阻害する虞がある。
【0056】
次に、いままで説明してきたライニング材10を使用して管路裏打ちシステム3により雨水排水管路Dを裏打ちする管路ライニング工法について説明する。
【0057】
図4は、
図2に示した管路裏打ちシステムにより、施工現場において雨水排水管路を裏打ちする工程を示すフローチャートである。
【0058】
施工現場では、まず施工準備がなされる(ステップS1)。ここでは、高速道路の路肩側の車線を通行止めにし、保冷車でライニング材10を施工現場まで運搬する。次いで、雨水排水管路D内の洗浄と、雨水排水管路D内を走行するテレビカメラを用いた雨水排水管路Dの調査とが行われる(ステップS2)。この調査によって、雨水排水管路Dにおける損傷箇所の確認等がなされる。
【0059】
続いて、ライニング材10を内側に挿入されている蒸気供給チューブ36とともに雨水排水管路D内に引き込む(ステップS3)。ライニング材10は、蒸気供給チューブ36とともに保冷車から路肩側集水桝B1を通って雨水排水管路D内に引き込まれる。ここでは、まず中央側集水桝B2の入口近傍にウインチを設置してウインチに巻かれているワイヤの後端を中央側集水桝B2に挿入し、路肩側集水桝B1までワイヤを貫通させる。そして、ライニング材10の先頭部分を蒸気供給チューブ36の先頭部分とともにワイヤの後端部分で結束し、ウインチでワイヤを巻き取ることで、裏打ちする雨水排水管路D内にライニング材10を蒸気供給チューブ36とともに引き込む。ライニング材10と蒸気供給チューブ36の先頭部分が、裏打ちする雨水排水管路Dの、中央側集水桝B2との接続部分から出るまでワイヤを巻き取ったらウインチを停止して引き込みを完了する。引き込みの完了時点で、ライニング材10と蒸気供給チューブ36の中央分離帯側の端部は、雨水排水管路Dから中央側集水桝B2内に出ている。一方、ライニング材10の路肩側の端部は、雨水排水管路D内に引き込まれておらず、路肩側集水桝B1内に残っている。
【0060】
次に、ライニング材10を雨水排水管路D内でセットする(ステップS4)。このセットでは、まずライニング材10と蒸気供給チューブ36の先頭部分を結束しているワイヤを取り外す。そして、ライニング材10と蒸気供給チューブ36の中央分離帯側の端部を中央側締結ドラム351に押し付けて中央側締付部材352で中央側締結ドラム351に締め付ける。この結果、ライニング材10と蒸気供給チューブ36の中央分離帯側の端部は密閉される。また、蒸気供給チューブ36の路肩側端部に蒸気供給管3411を嵌め込み、蒸気供給チューブ36の外周側からチューブ締付部材343で締め付ける。さらに、ライニング材10の路肩側の端部に、路肩側栓部材341の円筒部を嵌め込み、ライニング材10の外周側から路肩側締付部材342で締め付ける。この結果、ライニング材10の間の路肩側も密閉され、蒸気供給チューブ36が接続された蒸気供給管3411と蒸気排出管3412のみがライニング材10の内外を繋いだ状態になる。
【0061】
加えて、ステップS4では、路肩側集水桝B1の入口近傍に、保冷車に代えてボイラー車を駐車する。これにより、第1コンプレッサー32、ミキシング装置33および排気装置38が地上に設置された状態になる。また、排気装置38を地上に設置する。そして、供給用ホースSHの一端をミキシング装置33に接続し、他端を路肩側栓部材341の蒸気供給管3411に接続する。また、排気用ホースCHの一端を路肩側栓部材341の蒸気排出管3412に接続し、他端を排気装置38の消音装置381に接続する。
【0062】
以上の準備が整ったら、排気バルブCH1を全開にして第1コンプレッサー32を起動し、ミキシング装置33、供給用ホースSH、蒸気供給管3411および蒸気供給チューブ36に外気を供給開始する。これにより蒸気供給チューブ36が円柱状に膨らみ、スリット孔361と丸孔362からライニング材10の内部空間ISに外気が吹き出し始める。蒸気供給チューブ36が膨らんだ後も外気の供給を続けると、スリット孔361と丸孔362から吹き出す外気の量が増加し、吹き出した外気によって内部空間ISが満たされていく。そして、排気バルブCH1を徐々に閉塞していくと、ライニング材10が膨らみ拡径していく。ライニング材10が十分に膨らむと、ライニング材10の外側フィルム層102が雨水排水管路Dの内周壁に押し付けられる。このライニング材10の雨水排水管路Dへの押し付け状態(圧力)を確認し、丁度よい押し付け状態になるように排気バルブCH1の開度を調整する(ステップS5)。
【0063】
続いて、蒸気バルブ311を開いてボイラー31から過熱蒸気を送り出し、ミキシング装置33でその過熱蒸気と第1コンプレッサー32からの外気を混合して内部空間ISに供給開始する。その際、蒸気バルブ311の開度を調整することで、ミキシング装置33から送り出される加熱用蒸気の温度を調整する。また、必要に応じて、第1空気バルブ321の開度と排気バルブCH1の開度を調整し、ミキシング装置33から送り出される加熱用蒸気の流量やライニング材10の雨水排水管路Dへの押し付け圧力を調整する。ミキシング装置33から送り出される加熱用蒸気は、80~100℃程度に調整される。この調整の詳細については、後に詳述する。送り出された加熱用蒸気は、スリット孔361と丸孔362から内部空間ISに吹き出し、伸長層112に接し、ライニング材10は、内周壁に押し付けられた状態が維持されるとともに加熱用蒸気によって加熱される。そして、後述するように予め実験によって求めた加熱時間が経過するまで加熱用蒸気の供給を継続する。また、加熱用蒸気の供給を開始したらすぐに、第2コンプレッサー383を起動し、第2空気バルブAH1を全開にして外気をダクト本体3821によって画定された蒸気排出流路382aに送り込む(ステップS6)。なお、ステップS5の段階で、蒸気バルブ311を開いてボイラー31から過熱蒸気を送り出し、加熱用蒸気を内部空間ISに供給するようにしてもよい。その場合、ステップS5の段階で第2コンプレッサー383wp起動して外気を蒸気排出流路382aに送り込むことが好ましい。
【0064】
このステップS6において、ライニング材10の中央分離帯側で内部空間ISに供給された加熱用蒸気は、路肩側栓部材341に設けられた蒸気排出管3412に向かって内部空間ISを流れ徐々に温度が低下していく。そして、蒸気排出管3412から排出された蒸気は、排気用ホースCHを通って消音装置381に送り込まれる。消音装置381を通過した蒸気は排気ダクト382の蒸気排出流路382aを流れ、第2コンプレッサー383から送り込まれた外気と混ざりあった後、或いは混ざり合いながら排気口382bから大気中に排気される。ここで、蒸気と外気の混合気体が排気口382bから排気され始めたら、その混合気体の色や蒸気の放出音等の状態に応じて第2空気バルブAH1の開度を調整してもよい。なお、このステップS6において内部空間IS内に生じたドレンは、上述したようにドレン排出管37とバルブ371が設けられた配管を通してライニング材10の外部に排出される。
【0065】
図5は、ライニング材の内部空間に供給する加熱用蒸気の温度等の変化の一例をおおまかに表すグラフである。この
図5に示すグラフでは、横軸は時間を表し、縦軸は温度(℃)を表す。また、実線のグラフが内部空間ISに供給する加熱用蒸気の温度をおおまかに表すグラフである。ここでの温度はミキシング装置33から送り出される加熱用蒸気の設定温度、すなわちミキシング装置33の設定温度になる。さらに、ライニング材10の路肩側端部および中央分離帯側端部それぞれでは、ライニング材10自身の温度、より詳しくはライニング材10の外側フィルム層102と雨水排水管路Dの間の温度を測定している。ただし、ライニング材10の両端部それぞれで、基材層101、基材層111、外側フィルム層102と基材層101の間または伸長層112と基材層111の間の温度を測定してもよい。なお、ライニング材10の底部における温度を測定してもよいしライニング材10の頂部における温度を測定してもよい。1点鎖線のグラフがライニング材10の中央分離帯側端部の測定温度をおおまかに表すグラフであり、点線のグラフがライニング材10の路肩側端部の測定温度をおおまかに表すグラフである。なお、ライニング材10の全長にわたって光ファイバを設置し、複数箇所でライニング材の温度を測定し、ミキシング装置33から送り出される加熱用蒸気の温度管理を行ってもよい。
【0066】
内部空間ISに供給する加熱用蒸気の温度変化に対して、ライニング材10の温度変化は遅れて生じる。さらに、ライニング材10の中央分離帯側端部における温度変化に対して、ライニング材10の路肩側端部における温度変化は遅れて生じる。
【0067】
上述のステップS6では、蒸気バルブ311を開いていき、最初に加熱用蒸気を約80℃まで上昇させ、暫くの間、約80℃の加熱用蒸気を内部空間ISに供給する。熱硬化性樹脂は、硬化する際に硬化発熱を生じるため、ライニング材10の温度は一旦温度上昇しピーク温度(
図5に示す例では約90℃)に達し、その後、温度は低下する。熱硬化性樹脂自体の温度は、自身の硬化発熱のピーク時には100℃を超える温度にまで上昇する。
図5では、2点鎖線で伸長層112の耐熱温度を表している。伸長層112の耐熱温度は120℃であり、この温度まで熱硬化性樹脂の温度が上昇すると、伸長層112が溶けてしまう。硬化発熱が生じる前から高い温度(例えば100℃)の加熱用蒸気を供給すると、硬化発熱分が重畳して熱硬化性樹脂の温度は120℃に達する恐れがある。このため、硬化発熱が生じるまでは、硬化発熱分を見越してやや低めの加熱用蒸気を供給するようにし、硬化発熱分が重畳しても熱硬化性樹脂の温度が120℃に達しないようにしている。
【0068】
一方、硬化発熱が生じた後、ライニング材10の温度が、温度上昇から温度低下に転じたことを検出した後は、加熱用蒸気の温度を上昇させる。より詳細には、ライニング材10の温度が、温度上昇から温度低下に転じたことを検出した後であって、さらにはライニング材10の温度がほぼ一定の温度に落ちついたことを検出したら、ミキシング装置33の設定温度を80℃から100℃に温度上昇させる。ライニング材10の温度が、温度上昇から温度低下に転じほぼ一定の温度に落ちついた時点で、熱硬化性樹脂の硬化は十分なレベルまで完了している。この状態から、さらに高い温度の加熱用蒸気を供給することで、熱硬化性樹脂の強度を高めることができる。
図5に示す例では、ライニング材10の温度が、ピーク温度とほぼ同じ温度まで加熱されている。なお、熱硬化性樹脂の強度向上の程度に合わせて、加熱用蒸気の温度(ミキシング装置33の設定温度)は決めればよい。例えば、ライニング材10を、ピーク温度(80℃)よりも高い温度まで加熱した方が強度向上が見込める場合には、上記耐熱温度(120℃)を超えない範囲でより高い温度まで加熱することが好ましい。
【0069】
温度上昇させた加熱用蒸気によって熱硬化性樹脂をさらに継続して加熱する場合、一定時間を超えると強度向上に変化がなくなるため、温度上昇させる加熱用蒸気の温度とともに加熱時間も予め実験によって求めておく。加熱時間としては、30分~90分があげられる。加熱用蒸気を供給し続けることで、ライニング材10が雨水排水管路Dの内周壁に押し付けられた状態で、基材層101,111に含浸されている熱硬化性樹脂が硬化するとともに強度を増し、雨水排水管路Dの内周壁がライニング材10によって裏打ちされ、雨水排水管路Dの内周壁の内側にライニング材10による新たな自立管路が形成される。
【0070】
そして、
図4に示すステップS7では、ボイラー31を停止して蒸気バルブ311を閉じることで、加熱用蒸気に代えて外気(常温の空気)を供給し、硬化したライニング材10を冷却する。
【0071】
その後、ライニング材10両端の管口仕上げを行う(ステップS8)。この管口仕上げでは、雨水排水管路Dの路肩側端部と中央分離帯側端部それぞれで、路肩側集水桝B1および中央側集水桝B2との接続部に合わせてライニング材10を切断し、その切断部分を養生する。
【0072】
最後に、ライニング材10の伸長層112によって形成された内周壁の状態をテレビカメラによって最終確認し(ステップS9)、施工現場の片付けを行って(ステップS10)、雨水排水管路Dを裏打ちする全工程が終了する。
【0073】
以上説明した排気装置38およびその排気装置38を用いた管路裏打ちシステム3によれば、蒸気排出流路382aを流れる蒸気に外気が加わるので、排気口382bから排気される蒸気の濃度が薄くなる。このため、排気口382bから排気される蒸気が透明に近くなる。また、外気が加わることで排気口382bから排気される蒸気の放出速度が増加し、排気された蒸気は上方に向かって飛散しやすくなる。これらにより、排気された蒸気が周囲を通行する車両の運転手など視界の妨げになってしまうことを抑制できる。さらに、排気される蒸気には、ライニング材10に含浸された樹脂の臭いが付加されてしまうこともあるが、外気が加わることでその臭いも薄くなる。これらにより、排気される蒸気の周囲への影響が抑制される。
【0074】
また、枝管3822が、蒸気排出流路382aにおける下流側に向かうに従って蒸気排出流路382aに接近するように蒸気排出流路382aに対して傾斜して設置されているので、第2コンプレッサー383から蒸気排出流路382aに送り込まれる外気は、蒸気排出流路382aにおいて排気口382bに向かう方向に流入していく。このため、この外気が蒸気排出流路382aを流れる蒸気の下流側への流れの妨げとならず、かえって蒸気排出流路382aの下流側へ蒸気が流れやすくなるので排気口382bからの排気が促進される。その結果、ミキシング装置33から内部空間ISにあたらしい加熱用蒸気を送り込みやすくなっている。さらに、枝管3822は、蒸気排出流路382aにおける下流側部分でダクト本体3821に接続しているので、接続部から排気口382bまでが比較的近い位置になる。これにより、第2コンプレッサー383から送り込まれた外気は流れ抵抗の少なくなる排気口382bに向かって円滑に流れやすくなるので、その外気が蒸気排出流路382aを流れる蒸気の下流側への移動の妨げとなってしまうことは抑制される。その結果、ミキシング装置33から内部空間ISにあたらしい加熱用蒸気をより送り込みやすくなっている。加えて、排気ダクト382が、消音装置381に連結されたものであるので、排気される蒸気の騒音を抑制することができる。また、消音装置381が排気ダクト382よりも上流側にあるので、第2コンプレッサー383から供給された外気は、消音装置381を通過することなく消音装置381内で停滞して蒸気の排気を阻害する虞がない。さらに、排気ダクト382が消音装置381に着脱自在なので、例えば排気される蒸気の影響を考慮しなくてよい施工現場では、枝管3822がない排気ダクト382を消音装置381に連結して用いるなど施工現場の環境に応じて柔軟な対応が容易になる。
【0075】
続いて、排気装置38の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して重複する説明は省略することがある。
【0076】
図6(a)は、
図3に示した排気ダクトの変形例を示す側面図であり、
図6(b)は、同図(a)に示した排気ダクトの平面図である。
【0077】
図6(a)および
図6(b)に示すように、この変形例の排気ダクト382は、
図3に示した排気ダクト382とはダクト本体3821に対する枝管3822の接続位置が異なる。枝管3822は、第2コンプレッサー383(
図2参照)によって供給されて蒸気排出流路382aに送り込まれる外気がダクト本体3821の内周面382cに沿って旋回するようにダクト本体3821に接続されている。具体的には、枝管3822は、排気ダクト382の長手方向から見て、ダクト本体3821に対して、内周面382cにおける接線方向に突出している。これにより、第2コンプレッサー383によって供給された外気は、内周面382cにおける接線方向から蒸気排出流路382aにおける下流側に向かって蒸気排出流路382aに送り込まれる。
【0078】
この変形例の排気ダクト382を用いた排気装置38および排気装置38を用いた管路裏打ちシステム3においても、先の実施形態と同様の効果を奏する。その上、この変形例の排気ダクト382を用いることで、第2コンプレッサー383から送り込まれた外気によって蒸気排出流路382aにおいて旋回流が作り出される。その旋回流により、蒸気排出流路382aを流れる蒸気と第2コンプレッサー383から送り込まれた外気とが混ざり合いやすい。また、蒸気と外気が混ざり合った混合気体が排気口382bから旋回しながら排気されるので、排気された混合気体は大気中で拡散しやすい。これらにより、蒸気が周囲を通行する車両の運転手など視界の妨げになってしまうことをより確実に抑制できる。また、混合気体が大気中で拡散することで蒸気の臭いもより薄くなる。
【0079】
本発明は、これまでに説明した実施の形態や変形例に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、本実施形態では、高速道路HWの雨水を流す雨水排水管路Dを裏打ちする管路裏打ちシステム3に排気装置38を適用する例を用いたが、一般道の雨水を流す雨水排水管路、下水を流す下水道管路および電力ケーブルが収容された地中電線管路などの他の管路を裏打ちする管路裏打ちシステム3にこの排気装置38を適用してもよい。また、本実施形態における排気装置38を適用した管路裏打ちシステム3は、既設管路の管路補修に限らず、新設管路の内周面形成に用いることもできる。なお、本実施形態におけるライニング材10は、加熱することで硬化するものであればその形態は問わず、例えばシート状であってもよい。さらに、枝管3822は、ダクト本体3821に対して直角に接続するように設置されていてもよく、蒸気排出流路382aにおける上流側に向かうに従って蒸気排出流路382aに接近するように蒸気排出流路382aに対して90度を超えて傾斜して設置されていてもよい。ただし、これらの設置態様では、第2コンプレッサー383から蒸気排出流路382aに送り込まれる外気は、ある程度の割合で蒸気排出流路382aにおいて排気口382bとは反対方向に流入していくため、流入した外気が蒸気排出流路382aを流れる蒸気の下流側への流れの妨げになってしまう虞がある。その一方で、蒸気排出流路382aで乱流が発生するので蒸気排出流路382aを流れる蒸気と流入した外気が混ざり合いやすいという作用は見込める。またさらに、枝管3822は、蒸気排出流路382aにおける上流側部分でダクト本体3821に接続したものであってもよい。ただし、このように接続した場合、接続部から排気口382bまでが比較的遠くなるため、蒸気排出流路382aにおける下流側部分で接続した場合と比較して、第2コンプレッサー383から送り込まれた外気が蒸気排出流路382aの下流側に向かって円滑に流れにくくなる虞はある。その一方で、接続部から排気口382bまでの距離が長くなるので、蒸気排出流路382aにおいて流入した外気が蒸気と混ざり合いやすいという作用は見込める。
【0080】
なお、以上説明した各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
3 管路裏打ちシステム
10 ライニング材
38 排気装置(管路裏打ち用排気装置)
381 消音装置
382 排気ダクト
382a 蒸気排出流路
382b 排気口
383 第2コンプレッサー(外気供給装置)
3821 ダクト本体
3822 枝管
D 雨水排水管路